JP2016078090A - 表層部に多孔構造を有する金属成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、金属成形体と樹脂成形体を工業的に有利な方法で、かつ高い接合強度で接合一体化できる技術は実用化されていない。
特許文献2には、特許文献1の発明において、さらに複数回重畳的にレーザースキャニングするレーザー加工方法の発明が開示されている。
さらにクロス方向へのレーザースキャンにより十分な表面粗し処理ができることから、接合強度は高くできることが考えられるが、表面粗さ状態が均一にならず、金属と樹脂との接合部分の強度の方向性が安定しないおそれがあるという問題がある。
例えば、1つの接合体はX軸方向への剪断力や引張強度が最も高いが、他の接合体は、X軸方向とは異なるY軸方向への剪断力や引張強度が最も高く、さらに別の接合体は、X軸およびY軸方向とは異なるZ軸方向への剪断力や引張強度が最も高くなるという問題が発生するおそれがある。
製品によっては(例えば、一方向への回転体部品や一方向への往復運動部品)、特定方向への高い接合強度を有する金属と樹脂の複合体が求められる場合があるが、特許文献1、2の発明では前記の要望には十分に応えることができない。
実施形態1〜3では、金属長尺コイル表面にレーザー照射して凹凸を形成することが記載されている。そして、段落番号10では、金属長尺コイル表面をストライプ状や梨地状に荒らすこと、段落番号19では、金属長尺コイル表面をストライプ状、点線状、波線状、ローレット状、梨地状に荒らすることが記載されている。
しかし、段落番号21、22の発明の効果に記載されているとおり、レーザー照射をする目的は、金属表面に微細で不規則な凹凸を形成し、それによりアンカー効果を高めるためである。特に処理対象が金属長尺コイルであることから、どのような凹凸を形成した場合でも、必然的に微細で不規則な凹凸になるものと考えられる。
よって、特許文献3の発明は、特許文献1、2の発明のようにクロス方向にレーザー照射して表面に微細な凹凸を形成する発明と同じ技術的思想を開示しているものである。
本発明は、加工速度と加工精度の両方を高めることができ、加工時における熱による悪影響を防止できる、表層部に多孔構造を有する金属成形体の製造方法と、前記製造方法を使用した複合成形体の製造方法を提供することを課題とする。
表層部に多孔構造を有する金属成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の表面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射する工程を有しており、
前記工程において、前記金属成形体のレーザー光の非照射面と照射面の少なくとも一部を冷却手段で冷却する、製造方法を提供する。
第一成形体である金属成形体と、第一成形体である金属成形体とは異なる構成材料からなる第2成形体が接合された複合成形体の製造方法であって、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により前記金属成形体のレーザー光の照射面に対して連続波レーザーを連続照射する工程、
前工程においてレーザー光が照射された金属成形体のレーザー光の照射面を含む部分と前記第2成形体となる構成材料を接触させて一体化させる工程を有している、複合成形体の製造方法を提供する。
例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム、亜鉛、チタン、銅、マグネシウムおよびそれらを含む合金、タングステンカーバイド、クロミウムカーバイドなどのサーメットから選ばれるものを挙げることができ、これらの金属に対して、アルマイト処理、めっき処理などの表面処理を施したものにも適用できる。
例えば、平板、直方体、立方体、円錐、角錐、円柱のほか、リング、筒、管、箱、半球、球、立体格子や木の枝のような複雑な形状のもの、針、ワイヤのような細いものでもよい。
連続波レーザーの照射速度は、2000〜20,000mm/secが好ましく、2,000〜18,000mm/secがより好ましく、2,000〜15,000mm/secがさらに好ましい。
連続波レーザーの照射速度が前記範囲であると、加工速度を高めることができ(即ち、加工時間を短縮することができ)、接合強度も高いレベルに維持することができる。
(I)図1、図2に示すように、レーザー照射面(例えば長方形とする)の一辺(短辺または長辺)側から反対側の辺に向かって1本の直線または曲線が形成されるように連続照射し、これを繰り返して複数本の直線または曲線を形成する方法。
(II)レーザー照射面の一辺側から反対側の辺に向かって連続的に直線または曲線が形成されるように連続照射し、今度は逆方向に間隔をおいての直線または曲線が形成されるように連続照射することを繰り返す方法(図16)。
(III)レーザー照射面の一辺側から反対側の辺に向かって連続照射し、今度は直交する方向に対して連続照射する方法。
(IV)レーザー照射面に対してランダムに連続照射する方法。
同じ連続照射条件であれば、1本の直線または1本の曲線を形成するための照射回数(繰り返し回数)が増加するほどレーザー照射面に対する粗面化(多孔構造)の程度が大きくなる。なお、照射回数が過度になると、返って粗面化の程度が小さくなる場合がある。
このときの間隔は、レーザー光のビーム径(スポット径)よりも大きくなるようにする。また、このときの直線または曲線の本数は、金属成形体のレーザー照射面の面積に応じて調整することができる。
そして、これらの複数本の直線または複数本の曲線を1群として、これを複数群形成することができる。
このときの各群の間隔は0.01〜1mmの範囲(図2に示すb2の間隔)で等間隔になるようにすることができる。
なお、図1、図2に示す連続照射方法に代えて、図3に示すように、連続照射開始から連続照射終了までの間、中断することなく連続照射する方法も実施することができる。
出力は4〜4000Wが好ましく、50〜2500Wがより好ましく、100〜2000Wがさらに好ましく、250〜2000Wがさらに好ましい。
ビーム径(スポット径)は5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、11〜80μmがさらに好ましい。
さらに出力とスポット径の組み合わせの好ましい範囲は、レーザー出力とレーザー照射スポット面積(π・〔スポット径/2〕2)から求められるエネルギー密度(W/μm2)より選択することができる。
エネルギー密度(W/μm2)は、0.1W/μm2以上が好ましく、0.2〜10W/μm2がより好ましく、0.2〜6.0W/μm2がさらに好ましい。
エネルギー密度(W/μm2)が同じであるとき、出力(W)が大きい方がより大きなスポット面積(μm2)に対してレーザー照射できることになるため、処理速度(1秒当たりのレーザー照射面積;mm2/sec)が大きくなり、加工時間も短くすることができる。
波長は300〜1200nmが好ましく、500〜1200nmがより好ましい。
焦点位置は-10〜+10mmが好ましく、−6〜+6mmがより好ましい。
連続波レーザーを使用するとき、パルス波レーザーを使用した場合に比べると、金属成形体のレーザー光の照射面およびその周囲の温度上昇が大きくなるため、金属成形体の一部が変形するなどの問題が生じるおそれがある。
このような問題の発生は、金属成形体の寸法(厚さ、太さなど)のほか、金属成形体の面積に対する連続波レーザー光の照射面積、金属成形体の形状、金属の種類も影響する。
金属成形体の寸法は、厚さや太さが大きい方が変形し難く、小さい方が変形し易くなる。
金属成形体面積に対するレーザー光の照射面積の割合は、前記割合が小さくなるほど変形し難く、前記割合が大きくなるほど変形し易くなる。
金属成形体の形状は、平面部よりも角部の方が変形しやくなることが考えられる。
このため、上記した照射条件でレーザー光を連続照射するとき、金属の種類に応じて冷却レベル(冷却面積や冷却温度など)と、寸法(厚さや太さ)、照射面積、形状の関係を調整することで変形を抑制または防止することができる。
例えば、金属成形体の厚さや太さが小さくなるほど冷却面積を大きくしたり、冷却温度を下げたりする方法、金属成形体面積に対するレーザー光の照射面積の割合が大きくなるほど冷却面積を大きくしたり、冷却温度を下げたりする方法、金属成形体の角部分にレーザー光を照射するときは冷却温度を下げる方法を適用することができる。
固体の冷却手段としては、熱伝導率(測定方法:レーザフラッシュ法,測定温度100℃)が100W/m・k以上である成形体を使用することができる。
熱伝導率が100W/m・k以上の材料としては、アルミニウム、ジュラルミン、金、銀、タングステン、銅(純銅)、マグネシウム、モリブデン、窒化アルミニウムから選ばれるものを使用することができる。
液体または気体と固体を組み合わせた冷却手段としては、液体または気体からなる冷媒を通した管を使用することができる。ここで、前記管として熱伝導率が100W/m・k以上の材料を使用することができる。
気体の冷却手段としては、冷風を使用することができる。
図4に示す平板形状の金属成形体10は、第1面11とその反対面の第2面12を有しており、第1面11側にレーザー光照射面(レーザー光照射領域)13を有している。
平板形状の金属成形体10の厚みは、ステンレス(SUS304)であれば厚さ0.2〜2.0mm、好ましくは0.4〜2.0mm、アルミニウム(A5052)であれば厚さ0.2〜1.0mm、好ましくは0.4〜1.0mmであるが、これらの範囲に制限されるものではない。
冷却手段として、1枚の冷却板20が使用されている。
金属成形体10の第2面12の全面は、冷却板20の第1面21の全面と当接されている。
冷却板20としては、熱伝導率が100W/m・k以上(測定方法:レーザフラッシュ法,測定温度100℃)の材料からなるものを使用することができる。
冷却板20の大きさや形状は特に制限されず、放熱効果を高めるため、金属成形体10よりも大きなものを使用することもできる。
冷却板20は、表面積を増大させて放熱効果を高めるため、第2面22や4つの側面が波形や独立した多数の凹凸などを有するものにすることもできる。
第2面12と冷却板20の第1面21が接触していることから、金属成形体10の熱は、第2面12から冷却板20に移行した後で放熱される。
このため、金属成形体10自体の温度上昇が抑制され、金属成形体10の熱による変形が防止される。
冷却手段として、大きな第1冷却板20と2枚の小さな第2冷却板30が使用されている。このように図4に示す実施形態よりも冷却面積が増加しているため、平板形状の金属成形体10も図4に示すものよりも薄いものを使用することができる。
金属成形体10の第1面11は、2枚の第2冷却板30の第2面32と当接され、金属成形体10の第2面12は、第1冷却板20の第1面21と当接されており、レーザー光照射面13が2枚の第2冷却板30で挟まれている。
第1冷却板20と第2冷却板30は、上記した熱伝導率が100W/m・k以上の材料からなるものを使用することができる。
第1冷却板20は、表面積を増大させて放熱効果を高めるため、第2面22や4つの側面が波形や独立した多数の凹凸を有するものにすることもできる。
第2冷却板30は、表面積を増大させて放熱効果を高めるため、第1面31や4つの側面が波形や独立した多数の凹凸などを有するものにすることもできる。
第1面11の一部と第2冷却板30の第2面32が接触し、第2面12の全部と第1冷却板20の第1面21が接触していることから、金属成形体10の熱は第1面11から第2冷却板30に移行した後で放熱され、第2面12から第1冷却板20に移行した後で放熱される。
このため、図4に示す実施形態よりもさらに金属成形体10自体の温度上昇が抑制され、金属成形体10の熱による変形が防止される。
図6では、冷却手段として、開口部42を有する上型40と下型41の組み合わせが使用されており、上型40と下型41の組み合わせにより内部に金属成形体20を嵌め込むことができる空間が形成されるようになっている。
このように図4および図5に示す実施形態よりも冷却面積が増加しているため、平板形状の金属成形体10も図4および図5に示すものよりも薄いものを使用することができる。
図6では、上型40と下型41の内部空間に金属成形体10が嵌め込まれており、第1面11は上型40の内側面と当接され、第2面12は下型41の内側面と当接された状態が図示されている。さらに金属成形体10の4つの側面は、上型40と下型41の側面の内側面と当接されている。
金属成形体10のレーザー光照射面13は、上型40の開口部42に面しており、上型40と下型41で包囲された状態になっている。レーザー光照射面13と開口部42の面積は同じでもよいが、開口部42の面積の方が少し大きくなるようにすることもできる。
上型40と下型41は、上記した熱伝導率が100W/m・k以上の材料からなるものを使用することができる。
上型40および下型41は、表面積を増大させて放熱効果を高めるため、外側面に波形や多数の独立した凹凸を有するものにすることもできる。
金属成形体10の第1面11の全部と上型40が接触し、第2面12の全部と下型41が接触しており、さらに金属成形体10の4つの側面の全部が上型40と下型41の内側面と接触していることから、金属成形体10の熱は全面から上型40および下型41に移行した後で放熱される。
このため、図4および図5に示す実施形態よりもさらに金属成形体10自体の温度上昇が抑制され、金属成形体10の熱による変形が防止される。
その他、金属成形体10と冷却管を接触させる方法、熱伝導率が100W/m・k未満の材料からなる成形体を介して金属成形体10と冷却管を接触させる方法を適用することもできる。
また図4〜図6に示す実施形態において、冷風を吹き付けて冷却するようにしてもよい。このときは、レーザー光照射面13に対しても冷風を吹き付けて冷却することもできる。
なお、図4〜図6に示すような冷却板20、冷却板30、上型40および下型41を使用せず、冷風だけを吹き付けて冷却するようにしてもよい。
図7に示す丸棒形状の金属成形体100は、周面101、第1端面102、反対側の第2端面を有しており、周面101にレーザー光照射面(レーザー光照射領域)105を有している。
丸棒形状の金属成形体100の太さ(直径)は、ステンレス(SUS304)であれば太さ0.2〜2.0mm、好ましくは0.4〜2.0mm、アルミニウム(A5052)であれば太さ0.2〜1.0mm、好ましくは0.4〜1.0mmであるが、これらの範囲に制限されるものではない。
冷却手段として、1つの第1冷却カップ110が使用されている。第1冷却カップ110は、第1周面111、第1閉塞端面112、第1開口部113を有している。
図7は、金属成形体100が第1冷却カップ111の第1開口部113から嵌め込まれた状態が示されており、金属成形体100の周面101は第1冷却カップ110の第1周面111の内側面と接触し、金属成形体100の第2端面は第1冷却カップ110の第1閉塞端面112の内側面と接触している。
第1冷却カップ110は、上記した熱伝導率が100W/m・k以上の材料からなるものを使用することができる。
第1冷却カップ110は、表面積を増大させて放熱効果を高めるため、周面111および閉塞端面112が波形や独立した多数の凹凸を有するものにすることもできる。
なお、第1冷却カップ110に代えて、金属成形体100の周面101だけに接触できる筒を使用することもできる。
第1冷却カップ110と金属成形体100の一部が接触していることから、金属成形体100の熱は周面101および第2端面から第1冷却カップ110に移行した後で放熱される。
このため、金属成形体100自体の温度上昇が抑制され、金属成形体100の熱による変形が防止される。
冷却手段として、第1冷却カップ110と第2冷却カップ120が使用されている。
このように図7に示す実施形態よりも冷却面積が増加しているため、丸棒形状の金属成形体100も図7に示すものよりも細いものを使用することができる。
第1冷却カップ110は、第1周面111、第1閉塞端面112、第1開口部113を有している。
第2冷却カップ120は、第2周面121、第2閉塞端面122、第2開口部123を有している。
図8は、金属成形体100の両端面側から第1冷却カップ110と第2冷却カップ120が嵌め込まれた状態が示されている。
金属成形体100の周面101は、第1冷却カップ110の第1周面111の内側面および第2冷却カップ120の第2周面121の内側面と接触している。
金属成形体100の周面101は、第1冷却カップ110の第1閉塞面112の内側面および第2冷却カップ120の第2閉塞面122の内側面と接触している。
第1冷却カップ110および第2冷却カップ120は、上記した熱伝導率が100W/m・k以上の材料からなるものを使用することができる。
第1冷却カップ110および第2冷却カップ120は、表面積を増大させて放熱効果を高めるため、第1周面111、第1閉塞端面112、第2周面121、第2閉塞端面122が波形や多数の独立した凹凸などを有するものにすることもできる。
なお、第1冷却カップ110と第2冷却カップ120の一方または両方に代えて、金属成形体100の周面101だけに接触できる1つまたは2つの筒を使用することもできる。
第1冷却カップ110および第2冷却カップ120と金属成形体100の一部が接触していることから、金属成形体100の熱は周面101および両端面から第1冷却カップ110および第2冷却カップ120に移行した後で放熱される。
このため、金属成形体100自体の温度上昇が抑制され、金属成形体100の熱による変形が防止される。
冷却手段として、縦方向または横方向に分割できる冷却容器130が使用されている。
このように図7および図8に示す実施形態よりも冷却面積が増加しているため、丸棒形状の金属成形体100も図7および図8に示すものよりも細いものを使用することができる。
冷却容器130は、周面131、第1端面132、第2端面133を有し、周面131には開口部134が形成されている。
図9は、冷却容器130内に金属成形体100が収容され、レーザー光照射面105が開口部131に面しており、冷却容器130で包囲された状態になっている。レーザー光照射面105と開口部134の面積は同じでもよいが、開口部134の面積の方が少し大きくなるようにすることもできる。
金属成形体100は、金属成形体100の外表面と冷却容器130の内表面が接触した状態で収容されている。
冷却容器130は、上記した熱伝導率が100W/m・k以上の材料からなるものを使用することができる。
冷却容器130は、表面積を増大させて放熱効果を高めるため、周面131、第1閉塞端面132、第2閉塞端面133が波形や多数の独立した凹凸などを有するものにすることもできる。
金属成形体100の外表面と冷却容器130の内表面が接触していることから、金属成形体100の熱は周面および両端面から冷却容器130に移行した後で放熱される。
このため、金属成形体100自体の温度上昇が抑制され、金属成形体100の熱による変形が防止される。
その他、金属成形体100と冷却管を接触させる方法、熱伝導率が100W/m・k未満の材料からなる成形体を介して金属成形体100と冷却管を接触させる方法を適用することもできる。
また図7〜図9に示す実施形態において、冷風を吹き付けて冷却するようにしてもよい。このときは、レーザー照射面105に対しても冷風を吹き付けて冷却することもできる。
なお、図7〜図9に示すような第1冷却カップ110、第2冷却カップ120、冷却容器130を使用せず、冷風だけを吹き付けて冷却するようにしてもよい。
管の外表面に対して連続波レーザーを連続照射するときには、次の方法で冷却することができる
(i)前記管の外表面のレーザー光の非照射面(第1非照射面)のみを冷却する方法。
(ii)前記管の外表面の厚さ方向反対面となる内表面(第2非照射面)のみを冷却する方法。
(iii)前記管の第1非照射面と第2非照射面の両方を冷却する方法。
(i)の冷却をするときは、図18に示すように、管10Bの外表面の第1非照射面に熱伝導率が100W/m・k以上の材料からなる管(管形状の冷却ジャケット)52を嵌め込む方法を適用することができる。このとき、冷却対象となる管10Bの外径と、冷却手段となる管52の内径を調節して、互いに接触するようにする。
(ii)の冷却をするときは、管10Bの内側に熱伝導率が100W/m・k以上の材料からなる棒(または管)51を嵌め込む方法を適用することができる。このとき、冷却対象となる管10Bの内径と冷却手段となる棒(または管)51の外径が同じになるか、冷却手段となる棒(または管)51の外径が僅かに小さくなるように調節する。
(iii)の冷却をするときは、(i)と(ii)の方法を組み合わせることができる。
(iv)前記箱底面の外表面のレーザー光の非照射面(第1非照射面)のみを冷却する方法。
(v)前記箱底面の外表面の厚さ方向反対面となる内表面(第2非照射面)のみを冷却する方法。
(vi)前記箱底面の第1非照射面と第2非照射面の両方を冷却する方法。
(iv)の冷却をするときは、箱底面の外表面の第1非照射面に熱伝導率が100W/m・k以上の材料からなる板を接触させる方法を適用することができる。
(v)の冷却をするときは、箱底面の内表面に熱伝導率が100W/m・k以上の材料からなる板を接触させる方法を適用することができる。
(vi)の冷却をするときは、(iv)と(v)の方法を組み合わせることができる。
図10(a)は、長尺状の金属成形体150に対して、所定間隔をおいてレーザー光を連続照射するときに冷却手段160により冷却する工程を示している。
例えば、板材やワイヤなどの長尺状の金属成形体150に対して10cmの間隔でレーザー光を連続照射するとき、冷却手段160は固定した状態で、冷却手段160の開口部161からレーザー光照射面151に対して図1〜図3のようにレーザー光を連続照射する。
このとき、レーザー光照射面151の周囲の金属成形体150は、冷却手段160により冷却される。
その後、長尺状の金属成形体150を10cmだけ移動させた後、同様の操作を実施して、これらの操作を繰り返す。
このように2つの冷却手段を使用して2段階で冷却することで、より冷却効果を高めることができる。
なお、図10(a)、(b)において、冷却手段160、170と冷風の吹きつけを併用することもできるし、冷却手段160、170に代えて冷風の吹き付けのみを使用することもできる。
このときの図4〜図6に示す金属成形体10のレーザー光照射面13の状態を図11〜図13により説明する。
図11に示すとおり、レーザー光(例えば、スポット径11μm)を連続照射して多数の線(図11では3本の線261〜263を示している。各線の間隔は50μm程度。)を形成することで多孔構造にする(即ち、粗面化する)ことができる。1本の直線への照射回数は1〜10回が好ましい。
このとき、粗面化されたレーザー光の照射面13を含む金属成形体10の表層部は、図12(a)、図13(a)〜(c)に示すようになっている。なお、「金属成形体10の表層部」は、表面から粗面化により形成された開放孔(幹孔または枝孔)の深さ程度までの部分であり、金属成形体の表面から50〜500μm程度の深さ部分である。
なお、金属の種類によっても強度が最大となる照射回数は若干異なるが、1本の直線への照射回数が10回を超える回数である場合には、粗面化のレベルをより高めることができ、複合成形体1において金属成形体10と樹脂成形体20の接合強度を高めることができるが、合計照射時間が長くなる。このため、目的とする複合成形体1の接合強度と製造時間との関係を考慮して、1本の直線への照射回数を決めることが好ましい。1本の直線への照射回数が10回を超える回数であるとき、好ましくは10回超〜50回以下、より好ましくは15〜40回、さらに好ましくは15〜35回である。
開放孔230は、厚さ方向に形成された開口部231を有する幹孔232と、幹孔232の内壁面から幹孔232とは異なる方向に形成された枝孔233からなる。枝孔233は、1本または複数本形成されていてもよい。
内部空間240は、トンネル接続路250により開放孔230と接続されている。
なお、多数の開放孔230が一つになって溝状の開放空間245が形成されていてもよい。
また、同様に開放孔230の枝孔233やトンネル接続路250が形成される詳細も不明であるが、一旦形成された孔や溝の底部付近に滞留した熱によって、孔や溝の側壁部分が溶融する結果、幹孔232の内壁面が溶融して枝孔233が形成され、さらに枝孔233が延ばされてトンネル接続路250が形成されるものと考えられる。
なお、連続波レーザーに代えてパルスレーザーを使用したときには、金属成形体の接合面には開放孔や溝が形成されるが、開口部を有していない内部空間と、前記開放孔と前記内部空間を接続する接続通路は形成されない。
第2成形体となる構成材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、第1の成形体の金属成形体で使用している金属よりも融点の低い金属から選ばれるものを使用することができる。
この工程では、
レーザー光が照射された金属成形体10の接合面13を含む部分を金型内に配置して、樹脂成形体となる樹脂を射出成形する工程、または
レーザー光が照射された金属成形体10の接合面13を含む部分を金型内に配置して、少なくとも接合面13と樹脂成形体となる樹脂を接触させた状態で圧縮成形する工程、
のいずれかの方法を適用することができる。
その他、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の成形方法として使用される公知の成形方法も適用することができる。
熱可塑性樹脂を使用した場合には、溶融した樹脂に圧力などをかけることで、金属成形体に形成された孔や溝やトンネル接続路内に樹脂を入り込ませた後、樹脂を冷却固化させることで複合成形体を得られる方法であればよい。射出成形や圧縮成形のほか、射出圧縮成形などの成形方法も使用することができ、さらに溶射法も適用することができる。
熱硬化性樹脂を使用した場合には、液状或いは溶融状態の樹脂に圧力などをかけることで、金属成形体に形成された孔や溝やトンネル接続路内に樹脂を入り込ませた後、樹脂を熱硬化させることで複合成形体を得られる成形方法であればよい。射出成形や圧縮成形のほか、トランスファー成形などの成形方法も使用することができる。
なお、射出成形法と圧縮成形法で熱硬化性樹脂(プレポリマー)を使用したときは、後工程において加熱などをすることで熱硬化させる。
熱可塑性樹脂は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。例えば、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができる。
公知の繊維状充填材としては、炭素繊維、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を挙げることができる。
炭素繊維は周知のものであり、PAN系、ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等のものを用いることができる。
無機繊維としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維等を挙げることができる。
金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる繊維を挙げることができる。
有機繊維としては、ポリアミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維、ジアミンとジカルボン酸のいずれか一方が芳香族化合物である半芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維などの合成繊維や天然繊維(セルロース系繊維など)や再生セルロース(レーヨン)繊維などを用いることができる。
このような開放孔230などの開口径より小さな繊維径の繊維状充填材を使用したときには、金属成形体の開放孔230などの内部に繊維状充填材の一部が張り込んだ状態の複合成形体が得られ、金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められるので好ましい。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー100質量部に対する繊維状充填材の配合量は5〜250質量部が好ましい。より望ましくは、25〜200質量部、さらに望ましくは45〜150質量部である。
開放孔230と(幹孔232と枝孔233)開放空間245の内部には、それぞれの開口部分から樹脂が入り込んでおり、内部空間240の内部には、開放孔230や開放空間245の開口部から入り込んだ樹脂がトンネル接続路250を通って入り込んでいる。
このため、本発明の製造方法により得られた複合成形体1は、開放孔230や開放空間245内のみに樹脂が入り込んだ複合成形体と比べると、図14において金属成形体10と樹脂成形体300の接合面13に対して、金属成形体10の端部を固定した状態で樹脂成形体300を平行方向(図14のX方向)に引っ張ったときのせん断接合強度(S1)と、金属成形体10と樹脂成形体300の接合面13に対して垂直方向(図14のY方向)に引っ張ったときの引張り接合強度(S2)の両方が高くなる。
金型内に、接合面が粗面化された融点の高い第1金属成形体を接合面が上になるように配置する。
その後、例えば周知のダイカスト法を適用して、溶融状態の融点の低い金属(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、マグネシウムおよびそれらを含む合金)を金型内に流し込む。
このようにすることで、第1金属成形体の図12、図13に示すような開放孔230、内部空間240、開放空間245、開放孔230の枝孔233やトンネル接続路250内に、第2金属成形体を構成する溶融金属が侵入する。
前工程の処理のとおり、溶融金属(第2金属成形体を構成する融点の低い金属)は、開放孔230、内部空間240、開放空間245、開放孔230の枝孔233やトンネル接続路250内に侵入しているため、前記開放孔230などに侵入した金属によるアンカー効果がより強く発揮されることになる。
このため、このようにして得られた第1金属成形体と第2金属成形体からなる金属成形体同士の複合成形体の接合強度は、第1金属成形体の表面に対して、エッチング処理などの化学的処理またはサンドブラスト処理などの物理的処理をした後で、公知のダイカスト法を適用して得た金属成形体同士の複合成形体の接合強度よりも高くすることができる。
表1に示す材質および厚さで、図15に示す形状の金属板10A(30mm×30mm)であり、厚み(表1)を変化させたものを使用し、20mm×6mmの領域13に対して、表1に示す条件で、図16に示す照射パターンにて連続波レーザーを照射した。
連続波レーザーの照射時には、実施例では純銅からなる冷却板20と冷却板30を図5のように配置して、金属板10Aを冷却した。
図17(a)、(b)は、連続波レーザー光の照射前後の状態を示す図であり、図17(b)は、理解し易いように変形した場合を誇張して示している。
変形量は、平面61を有する測定台60の上に連続波レーザー光の照射後の金属板10Aを載せ、対向する両辺側の面と測定台60の平面61の間の間隔d1、d2をスケールルーペ(3010S:池田レンズ工業(株)製)で測定して求めた。測定数は5であり、(5×d1+5×d2)/10から求めた平均値を表1に示す。
表2に示す材質および厚さで、図15に示す形状の金属板10A(30mm×30mm)であり、厚み(表2)を変化させたものを使用し、20mm×6mmの領域13に対して、表2に示す条件で、図16に示す照射パターンにて連続波レーザーを照射した。
連続波レーザーの照射時には、実施例では純銅からなる冷却板20と冷却板30を図5のように配置して、金属板10Aを冷却した。
連続波レーザー光の照射後の金属板10の変形量を実施例1〜4と同様にして測定した。結果を表2に示す。
表3に示す材質および厚さの金属パイプを使用して、図18に示すようにして冷却しながら、表2に示す条件で図19に示すようにして連続波レーザーを照射した。
図18(a)に示すように、連続波レーザー光の照射時において、金属パイプ10Bは、内側に純銅の冷却棒51が挿入され、外側には純銅の冷却ジャケット52が嵌め込まれている。
金属パイプ10B:長さ80mm、外径8mm、内径6mm(厚さ1mm)であり、
冷却棒51:長さ120mm、外径6mm
冷却ジャケット52:長さ40mm±0.5mm,内径8mm
連続波レーザー光の照射後、金属管10Bから冷却棒51を取り出し、冷却ジャケット52を取り外した。
10分経過後、金属管10B内に再度冷却棒51を挿入したとき、挿入できるか、挿入できないかで、変形の有無を評価した。結果を表3に示す。
実施例1の金属板を使用して、下記の方法で射出成形して、図14に示すような複合成形体1を得た。
実施例1の金属板は変形がないため、複合成形体1における金属成形体10と樹脂成形体300は互いに密着していた。
<射出成形>
樹脂:GF60%強化PA66樹脂(プラストロンPA66−GF60−01(L7):ダイセルポリマー(株)製),ガラス繊維の繊維長:11mm
樹脂温度:320℃
金型温度:100℃
射出成形機:ファナック製ROBOSHOT S2000i100B)
本発明の製造方法で得られた金属成形体は、研磨材、触媒粒子などの微粒子の担体として使用することができるほか、樹脂成形体との複合成形体の製造用としても使用することができる。
11 第1面
12 第2面
13 レーザー光の照射面
20 第1冷却板
21 第1面
22 第2面
30 第2冷却板
31 第1面
32 第2面
40 上型
41 下型
42 開口部
Claims (11)
- 表層部に多孔構造を有する金属成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の表面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射する工程を有しており、
前記工程において、前記金属成形体のレーザー光の非照射面と照射面の少なくとも一部を冷却手段で冷却する、製造方法。 - 前記金属成形体の表面を冷却手段により冷却するとき、前記レーザー光の非照射面に対して、熱伝導率が100W/m・k以上である成形体を接触させて冷却する、請求項1記載の製造方法。
- 前記金属成形体の表面を冷却手段により冷却するとき、前記レーザー光の照射面を包囲する前記レーザー光の非照射面に対して、熱伝導率が100W/m・k以上である成形体を接触させて冷却する、請求項1記載の製造方法。
- 前記金属成形体の表面を冷却手段により冷却するとき、前記レーザー光の照射面側の第1非照射面と前記第1非照射面の厚さ方向反対面側の第2非照射面の両方に対して、熱伝導率が100W/m・k以上である成形体を接触させて冷却する、請求項1記載の製造方法。
- 熱伝導率が100W/m・k以上である成形体が、アルミニウム、ジュラルミン、金、銀、タングステン、銅、マグネシウム、モリブデン、窒化アルミニウムから選ばれるものである、請求項2〜4のいずれか1項記載の製造方法。
- 前記金属成形体の表面を冷却手段により冷却するとき、前記レーザー光の非照射面に対して冷媒を通した管を接触させて冷却する、請求項1記載の製造方法。
- 前記金属成形体の表面を冷却手段により冷却するとき、前記レーザー光の照射面を包囲する前記レーザー光の非照射面に対して冷媒を通した管を接触させて冷却する、請求項1記載の製造方法。
- 前記金属成形体の表面を冷却手段により冷却するとき、前記金属成形体のレーザー光の非照射面と照射面の少なくとも一部に対して冷風を吹き付けて冷却する、請求項1記載の製造方法。
- 前記金属成形体の表面に対してレーザー光を連続照射する工程が、
連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、
レーザー出力が250〜2000W、レーザービーム径(スポット径)が10〜100μmであり、
前記レーザー出力とスポット面積(π×〔スポット径/2〕2)から求められるエネルギー密度(W/μm2)が0.2〜10W/μm2の範囲になるようにレーザー光を連続照射する工程である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。 - 第一成形体である金属成形体と、第一成形体である金属成形体とは異なる構成材料からなる第2成形体が接合された複合成形体の製造方法であって、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により前記金属成形体のレーザー光の照射面に対して連続波レーザーを連続照射する工程、
前工程においてレーザー光が照射された金属成形体のレーザー光の照射面を含む部分と前記第2成形体となる構成材料を接触させて一体化させる工程を有している、複合成形体の製造方法。 - 前記第2成形体となる構成材料が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、第1の成形体の金属成形体で使用している金属よりも融点の低い金属から選ばれるものである、請求項10記載の複合成形体の製造方法。
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