JP2016076098A - J−reitの買付及び売付のタイミングを判定するコンピュータ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】上場不動産投資証券(J-REIT)の適切な売買タイミングを判断するための情報を投資家用に作成すること。【解決手段】J-REITの時価評価ベースの純資産価値(NAV)に対する、投資口価格(P)の比率(P/NAV倍率)は市場における期待感をあらわすことから、各P/NAV倍率の生起回数をヒストグラム化して現在のP/NAV倍率の位置を表示したり、最高値及び最低値のP/NAV倍率を基準にして所定の割合に到達した上閾値及び下閾値を自動的に算出/表示/通知したりすることにより、ユーザが現在の市場価格の割安・割高の程度を容易に識別できる情報を作成できる。また、任意の期間について、P/NAV倍率の日次変化量に出来高のウェイトを乗じた値を累計し、累積ネット・モーメンタムとして棒グラフ表示する機能を備えることにより、相場の加速又は減速の勢いや加減速の分岐点を把握したり、相場が反転したりしたことを知ることができる情報を提供できる。【選択図】図1
Description
本発明は、不動産投資のための上場投資証券の売買時期を的確に判定して、投資家に情報を提供する技術分野に属する。
不動産投資のための上場投資証券とは、2000年11月30日に施行された「投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)」に基づく日本版の不動産投資信託、いわゆるJ-REIT(Japan-Real Estate Investment Trust)のことである。J-REITは、多くの投資家から集めた資金を用いて、オフィスビル、商業施設、物流施設、ホテル、住居などの複数の不動産に対して投資し、それら不動産物件の賃料収入や、売買で得られた収益を投資家に分配する。
つまり、J-REITは、証券取引所に上場することで株式会社の株式にあたる「投資証券」が発行され、証券会社経由で証券取引所において成立する日々の価格(投資口価格)により売買される。投資口価格は、証券取引所の売買立会時間中にJ-REITに投資することを希望する者と、売却を希望する者との間で行われる取引によって変動し、その価格の決まり方や取引の仕方は上場株式と異なることはない。J-REITは、上場株と同様に取引される投資商品である。
J-REITは、証券会社を介して売買可能な金融商品であるという特性から流動性が高く、且つ賃料などを分配金の源泉としているので、比較的安定した分配金が期待できる。一方で、景気変動の影響を受けて、不動産価格と賃料に関する思惑がつきまとう。加えて、J-REITの運営には多くの借入金をも利用しているのでレバレッジがかかっている。保有物件の価格変動がそのレバレッジ分だけ拡大して投資口価格に反映されることになる。海外の投資家や日本の金融機関の運用ポジションの変化による影響も大きく、J-REITの需給変動を通じて投資口価格の変動を拡大させている。
また、J-REITの投資家は、金融機関や外国投資家などといった一般の個人投資家以外の参加が圧倒的に多く、市場価格が個人投資家以外の都合で変動する可能性が高い。投資家の層が広い分だけ、J-REITの利回りは上がりにくい構造になっており、一般の個人投資家は、金融機関や外国投資家の動向を注視しながら、買われ過ぎ、売られ過ぎの状況判断を的確に見極めることが欠かせない。何年かおきに突発する金融ショックの際に、外国人投資家等がリスクオフに走って株式市場が急落する煽りを受けてJ-REITにも投げ売り状態が起きることがあるが、個人投資家はこのような極端な局面に遭遇したとき、いち早く買いの判断をして行動を起こすことが肝要となるのである。
それにもかかわらず、従来、個人投資家においては投資証券の売却または購入のタイミングをもっぱら勘と経験に基づいて決定するのが殆どであった。そこで、売買タイミングを決定する手法として、例えば、下記特許文献1が提案されている。これは、定性的データに基づく分析と定量的データに基づく分析を組み合わせて資産価格の変動を精度高く分析し、一般投資家の投資判断を支援するツールについて開示している。
しかしながら、特許文献1の場合、定性的分析及び定量的分析を実現する上で、資産価格に関するデータベースだけでなく、経済指標やニュースに関するあらゆる情報を記憶したデータベースが存在していることが前提である。そのため、実際の支援ツールを構築しようとすると、そのようなデータベースを準備できなければ支援ツールを実現できない。実際には、各種データベースを構築することはたやすいことではなく、その結果、支援ツールの提供も事実上、不可能に近い。
さらに、資産価格や経済指標の推移データの時間軸にニュースなどの定性的データが考慮された複雑な判断がされるということは、最終的な判断においてどのデータ要因がどの程度の影響を及ぼしているかについて詳細に把握することを極めて困難にしている。支援ツールによって得られる売却または購入のタイミングが妥当であるかを検証する際に、素人の投資家である程、多岐にわたるデータを用いた複雑なアルゴリズムが正しいのかを見極めることができない。
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなしたものであり、日本における不動産投資のための投資証券であるJ-REITの買付及び売付のタイミングの判断に特化し、株式売買などとは異なる不動産投資の特性を利用し、且つ不動産投資に固有のデータに基づき、大規模なシステム構築をすることなく、J-REITの投資に不慣れな投資家に対して不動産投資の売買タイミングを適切に提供する手法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る上場不動産投資証券(J-REIT)の買付及び売付のタイミング情報を提供するコンピュータ装置は、J-REITの各銘柄に関し、市場における投資口価格(P)を投資口一口あたりの時価評価ベース純資産額(NAV)で除して得られる値(P/NAV倍率)を、日次及び週次の少なくとも何れかで算出するP/NAV倍率算出手段と、算出した前記P/NAV倍率を時系列にデータベースに記憶する記憶手段と、ユーザの閲覧請求に応答して、ユーザが指定する銘柄に関する過去のP/NAV倍率を前記データベースから読み出し、(1)各P/NAV倍率に対する生起回数をヒストグラムで表示し、(2)直近のP/NAV倍率の値(現在値)を前記ヒストグラム上に表示し、(3)前記ヒストグラムにおける最も小さなP/NAV倍率を基準にして、隣接する次に大きなP/NAV倍率の生起回数を順次積算して得られる値が、前記ヒストグラムの各P/NAV倍率に関する生起回数の総数に対して所定の割合を超えたときのP/NAV倍率(下閾値)を前記ヒストグラム上に表示し、(4)前記ヒストグラムにおける最も大きなP/NAV倍率を基準にして、隣接する次に小さなP/NAV倍率の生起回数を順次積算して得られる値が、前記生起回数の総数に対して所定の割合を超えたときのP/NAV倍率(上閾値)を前記ヒストグラム上に表示するように構成された静態的情報表示手段と、前記現在値が前記下閾値よりも小さい、若しくは前記現在値が前記上閾値よりも大きい場合、前記ユーザにアラーム情報を提供する売買タイミング通知手段と、指定された前記銘柄に関し、当日の売買総額又は取引総口数で表される当日出来高に、当日と前日のP/NAV倍率の差を乗じた値を、任意の遡及期間について累計した結果を前記ユーザに提示する動態的情報表示手段とを備えることを特徴とする。
J-REITの収益源は不動産である商業ビルなどの賃料や売却益である。この賃料や売却益に応じて各期末の鑑定評価がされると、時価評価ベースの純資産価値(NAV)が算出され、各J-REIT発行体から決算報告書としてのバランスシート上の数字とは別に併せて公表される。NAVに対する、投資家が付けるJ-REITの市場価格である投資口価格(P)の比率(P/NAV倍率)は、J-REIT市場における期待感をあらわしている。本発明は、各P/NAV倍率の生起回数をヒストグラム化し、現在のP/NAV倍率が過去の実績の中でどこに位置づけられるかを特定するとともに、最高値及び最低値のP/NAV倍率を基準にして上閾値及び下閾値を自動的に算出/表示する静態的情報表示手段を有するため、J-REITに付けられた現在の市場価格の割安・割高の程度をユーザは容易に識別できる。また、直近の投資口価格(P)から算出されるP/NAV倍率がこれら上下の閾値を超えたとき、買い場又は売り場タイミングに入っていることをユーザに知らせる売買タイミング通知手段を有するため、ユーザは所望の銘柄のJ-REITを売買する好機を逃すことがない。
さらに、当日のP/NAV倍率と前日のP/NAV倍率の差分に取引量若しくは取引額を加重した値を、直近日から遡及した任意の期間について累計して棒グラフとして表示する動態的情報表示手段を有するため、ユーザは、相場が加速しているのか或いは減速しているのかという相場の勢いや、相場が反転したことを知ることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明を理解するための各用語の意味について説明する。
・投資口価格(P)は、J-REITの各銘柄に付けられた市場価格であり、本発明のために用いるのは各営業日の終値、週末の終値、及びこれらの両方の何れかとする。したがって、投資口価格は、証券取引所における売買価格のことであり、株式投資における「株価」と同義である。投資法人に対する投資単位を「投資口」と呼ぶことから、J-REITの市場価格を「投資口価格」と称している。本発明では、この投資口価格を「市場価格」と表現することもある。
まず、本発明を理解するための各用語の意味について説明する。
・投資口価格(P)は、J-REITの各銘柄に付けられた市場価格であり、本発明のために用いるのは各営業日の終値、週末の終値、及びこれらの両方の何れかとする。したがって、投資口価格は、証券取引所における売買価格のことであり、株式投資における「株価」と同義である。投資法人に対する投資単位を「投資口」と呼ぶことから、J-REITの市場価格を「投資口価格」と称している。本発明では、この投資口価格を「市場価格」と表現することもある。
・時価評価額ベースの純資産額(NAV:Net Asset Value)は、投資法人であるJ-REIT発行体の不動産ポートフォリオを時価評価して求めた資産額から負債額を差し引いて求められる(NAV=時価評価額ベースの資産額−負債額)。以下、時価ベースの純資産額(NAV)を、単に「純資産額」又は「NAV」と称する。J-REITの持つ資産の大半は不動産であることから時価評価との相性が良い。
また、純資産額(NAV)は、J-REIT発行体から期末決算ごとに発表される保有不動産の鑑定価格に基づき計算されるもので、この鑑定価格は決算報告書のバランスシートとは別に開示される。
また、純資産額(NAV)は、J-REIT発行体から期末決算ごとに発表される保有不動産の鑑定価格に基づき計算されるもので、この鑑定価格は決算報告書のバランスシートとは別に開示される。
・P/NAV倍率は、J-REITを評価する基準のひとつであり、投資口一口あたりの純資産額(NAV)に対して現在の投資口価格が何倍であるかを示している。一口あたりのNAVに対する、投資家が付けるJ-REIT投資口価格(P)の比率(P/NAV倍率)は、J-REIT市場における投資家の期待感をあらわしている。J-REIT市場に楽観が広がれば投資家は投資口価格(P)に高値を付けることを許容するため、P/NAV倍率は1.0を超えて上昇して割高となる。一方、J-REIT市場において悲観が蔓延しているときは、おのずと投資口価格(P)は低値が付くのでP/NAV倍率は1.0を割り込んで割安となる。
図1は、本発明の一実施形態である、上場不動産投資証券の買付及び売付のタイミング情報を提供するコンピュータ装置100の構成図である。コンピュータ装置100自体は、特に特別なものに限定せず、汎用的なコンピュータ端末又はサーバ等である。コンピュータ装置100は、P/NAV倍率算出手段1と、記憶手段2と、静態的情報表示手段3と、売買タイミング通知手段4と、動態的情報表示手段5とを含む構成である。
なお、コンピュータ装置100が他の機能も含むことを排除するものではないが、本発明と密接な関係がないので説明は省略する。
なお、コンピュータ装置100が他の機能も含むことを排除するものではないが、本発明と密接な関係がないので説明は省略する。
P/NAV倍率算出手段1は、NAVデータベース6及びPデータベース7と接続し、データの読出し及び書込みを行う。NAVデータベース6は、J-REIT発行体から発表される鑑定評価に基づく純資産額(NAV)及び投資口総数を記憶する。期末決算の決算報告書と併せて純資産額(NAV)が発表されるため、NAVデータベース6はその都度更新される。Pデータベース7は、各銘柄のJ-REIT市場、すなわち証券取引所で売買された日次や週次の投資口価格の終値(P)を時系列に記憶し、その都度更新される。
P/NAV倍率算出手段1は、NAVデータベース6から直近の純資産額(NAV)を読み出し、純資産額(NAV)を構成している投資口総数に基づき一口あたりのNAV(投資口一口あたりの純資産額)を求める。例えば、或る銘柄のJ-REITが80億円のNAVであり、10万口の投資口で構成されている場合、一口あたりのNAVは80億円÷10万=8万円となる。
次に、P/NAV倍率算出手段1は、Pデータベース7から更新後の投資口価格(P)を読み出すと、一口あたりのNAVで除算したP/NAV倍率を算出する。現在の投資口価格を7万円とすると、上記例の場合、P/NAV倍率=7万円÷8万円=0.875倍となる。ここで、NAV倍率が1倍を下回っている水準というのは、REITの保有する純資産額よりも、J-REIT市場で評価されている金額(時価総額)が小さいことになるので、現在の市場では当該銘柄が低く評価されており、割安であると判断できる。逆に、NAV倍率が1倍を上回っている水準というのは、純資産額よりも高い評価がJ-REIT市場でなされており、当該銘柄が割高であると判断できる。
記憶手段2は、算出したP/NAV倍率をP/NAVデータベース8に時系列に記憶する。なお、図1では、コンピュータ装置100内に記憶手段2及びP/NAVデータベース8を備える構成を示しているが、P/NAVデータベース8を外部に配置し、通信可能に接続する構成にしてもよい。或いは、コンピュータ装置100がユーザ要求を受けとるたびに、NAVデータベース6及びPデータベース7からユーザが指定した純資産額(NAV)及び投資口価格(P)を読み出してP/NAV倍率を算出し、静態的情報表示手段3に受け渡す構成にした場合は、P/NAVデータベース8を省略してもよい。
静態的情報表示手段3はP/NAVデータベース8からユーザが指定したJ-REIT銘柄のP/NAV倍率を読み出すと、上場された時点から或いは過去の一定期間(例えば、5年等)において各P/NAV倍率となった頻度を算出し、それを図2に示すようなヒストグラムで表示する。図2に示すとおり、横軸はP/NAV倍率、縦軸はその発生頻度をあらわす。プロットのためのP/NAV倍率の刻み幅は、例えば、0.01又は0.05等であるが、必ずしもこれに制限されない。図2に示すヒストグラムの場合、日次及び/又は週次の投資口価格(P)から算出したP/NAV倍率を0.01の刻み幅で出力した例である。
上述したように、NAV倍率が略1.0というのは、J-REITの保有する純資産額が市場においてその鑑定価格相当に評価されているのに対し、1.0よりも大きなNAV倍率は高い評価がついたケースであるので、グラフの右方向(数値の増大)は期待感の拡大をあらわし、グラフの左方向(数値の減少)は期待感の縮小をあらわしている。多くのJ-REITについてこのヒストグラムを表示させれば、図2のように1.0をはさんだ形状となるであろうが、必ずしも1.0付近がピークではなく、複数のピークをもつ可能性もある。また、上場後の不動産市場と金融市場の推移によっては、市場評価は高止まりして、グラフの右方向に偏った分布形状となる場合もある。
静態的情報表示手段3は、直近のP/NAV倍率を算出して、これがヒストグラム上のどこに位置付けられるかを決定する。ヒストグラム上に直近のP/NAV倍率を「現在値」として表示することにより、ユーザは所望のJ-REIT銘柄に対する現在の投資家の期待感が過去一定期間の範囲でどこに位置づけられるかを視覚的に容易に把握することができる。例えば、上述した例の場合、P/NAV倍率=0.875であるので、そのJ-REIT銘柄の現在の市場評価はかなり低く、割安であることが瞬時にわかる。
ところで、2014年9月1日時点で東京証券取引所に上場されているJ-REITは、46銘柄である。J-REITは各銘柄によって特徴があり、例えば、東京に集中投資をする銘柄、大阪をメインに投資をする銘柄、全国の主要都市に万遍なく収益物件を保有する銘柄、といった具合に地域で分けることや、オフィスビル、ファミリータイプマンション、商業施設、物流施設、ホテルのそれぞれに特化しているもの、いくつかを組み合わせて複合的に運用をしているもの、さらに大型物件を中心に運用をしているもの、中小規模の物件に限っているものと様々である。
そのため、J-REITは、住居・オフィス・商業施設・物流施設・ホテルなどの投資対象の相違によってカテゴリー分けをすることができる。また、テナントとの間で締結する賃貸借の契約期間には一般的な長さがあり、それは上述したカテゴリーによって異なる。例えば、一般住居と、ホテルとでは物件の需給や、借主の入れ替り頻度が大きく異なることから同列に扱うことはできない。契約期間が短い程、物件の需給を反映して実際の賃料収入の増減スピードが速くなり、これが投資口価格の変動に直結する。投資にあたっては用途カテゴリーの違いを理解し、各カテゴリー内での市況や賃料の動きを把握する必要がある。
したがって、P/NAV倍率は用途カテゴリー単位でも算出する意義がある。また、用途カテゴリー内の各構成銘柄を単純平均するのではなく加重平均法に基づくのが好ましい。つまり、時価総額の大きな銘柄の投資口価格が10円変動した方が、時価総額がその十分の一である銘柄の投資口価格が50円変動した場合よりも、そのカテゴリーのP/NAV倍率に与える影響が大きくなる。そこで、各銘柄の時価総額の大小を反映させた加重平均を用いて、用途カテゴリー別のP/NAV倍率を算出することが望ましい。
次に、静態的情報表示手段3は、ヒストグラム内で最小値のP/NAV倍率の生起回数B1から順に各生起回数を積算した値ΣBを算出する。例えば、図2に示す最小値のP/NAV倍率は0.83であり、その生起回数をB1とする。次に大きなP/NAV倍率は0.84であり、その生起回数をB2とする。以下同様とする。今、最小値のP/NAV倍率を基準にしてその生起回数B1に隣接するP/NAV倍率の生起回数B2,B3,…を加算する処理を、積算値ΣB(=B1+B2+…)がヒストグラム内の総生起回数の3割を超えるまで行う。超えたときのP/NAV倍率を下閾値Bとすると、下閾値Bから最小P/NAV倍率側の左方向を「買い場」と決定する。
同様に、ヒストグラム内で最大値のP/NAV倍率を基準にしてその生起回数S1に隣接するP/NAV倍率の生起回数S2,S3,…を加算する処理を、積算値ΣS(=S1+S2+…)が、総生起回数の2割を超えるまで行う。例えば、図2に示す最大値のP/NAV倍率は1.53であり、その生起回数をS1とする。次に小さなP/NAV倍率は1.52であり、その生起回数をS2とする。以下同様とする。今、ΣS(=S1+S2+…)が、総生起回数の2割を超えたときのP/NAV倍率を上閾値Sとすると、上閾値Sから最大P/NAV倍率側の右方向を「売り場」と決定する。
さらに、売買タイミング通知手段4は、静態的情報表示手段3が直近の投資口価格(P)から算出したP/NAV倍率が、「買い場」又は「売り場」に入っていることをユーザに知らせるため、アラーム情報を出力する。例えば、ユーザ端末10からコンピュータシステム100に特定のJ-REIT銘柄が入力され、静態的情報表示手段3がユーザ端末10に図2に示すヒストグラムを表示させる際に、売買タイミング通知手段4は、現時点が「買い場」又は「売り場」に入り、売買するのに好適なタイミングであることを知らせるメッセージをユーザ端末10の画面上に表示する。或いは、ユーザのメールアドレスに当該メッセージを送信してもよい。売買タイミング通知手段4によるメッセージ通知によって、ユーザは、複雑な計算の手間をかけずに、しかも日々変化するJ-REITの値動きをユーザ自身が常時観察していなくても、売買機会の逸失を確実に回避することができる。
なお、「買い場」又は「売り場」を決定するための下閾値B及び上閾値Sのそれぞれは、各P/NAV倍率の生起回数の積算量が総生起回数に対して3割、2割を超えたときのP/NAV倍率であるとして設定したが、必ずしもこれに限定されるわけではなく、下閾値B<上閾値Sの条件下で任意に設定可能である。下閾値B及び上閾値Sは、J-REITの用途カテゴリー(住居・オフィス・商業施設・物流施設・ホテルなど)に応じて決定することが望ましい。
次に、本実施形態のコンピュータ装置100が有する動態的情報表示手段5について図3を参照しながら説明する。図2に示すヒストグラム上に現在値を表示することは、過去の実績からみて現在の市場価値がどこに位置づけられるかを容易に把握するのに有益であり、現時点の期待感がどの程度のものであるか、売買するのに好適な「買い場」又は「売り場」タイミングに突入しているかを統計データに基づき判断することができる。しかしながら、このヒストグラムには時間的要素が含まれておらず、静態的情報を知るためのものである。現時点をベースにした比較的短い期間で市場(相場)が刻々と変化している様子を把握することはできない。
そこで、遡った任意の日から直近までのP/NAV倍率の動きを分析することで、J-REIT市場のダイナミックな動きをユーザに提供し、これにより、ユーザが投資タイミングを決定することを支援する。
図3は、横軸が遡及営業日数、縦軸が累積ネット・モーメンタムを示した棒グラフである。ユーザが遡及したい任意の日数を入力したり、当該日数にマウスのカーソルなどを移動させると、その遡及日からのP/NAV倍率の累積値が棒グラフで表示される。棒グラフの表示とともに累積ネット・モーメンタムの具体的な値を表示したり、或いは、ユーザが表示された各棒にカーソルを当てると、その棒があらわす累積ネット・モーメンタムの値が表示されるようにする。
図3は、横軸が遡及営業日数、縦軸が累積ネット・モーメンタムを示した棒グラフである。ユーザが遡及したい任意の日数を入力したり、当該日数にマウスのカーソルなどを移動させると、その遡及日からのP/NAV倍率の累積値が棒グラフで表示される。棒グラフの表示とともに累積ネット・モーメンタムの具体的な値を表示したり、或いは、ユーザが表示された各棒にカーソルを当てると、その棒があらわす累積ネット・モーメンタムの値が表示されるようにする。
図3は、直近時点を0とし、横軸の左方向に向かって営業日が遡及することとし、直近の過去における累積ネット・モーメンタムを表示している。例えば、直近一日分のネット・モーメンタム(m1)は、当日の終値に基づくP/NAV倍率と、前日の終値に基づくP/NAV倍率の差から算出する。具体的には、当日のP/NAV倍率から前日のP/NAV倍率を差引き、この差に当日の出来高(V)を乗じた値(+5)が遡及営業日T1分のモーメンタムである。累積モーメンタムは、遡った任意の日のmからその後の任意の日までのmを加算した累計値である。また、出来高(V)は、市場での取引量であり、具体的には各銘柄の当日の売買総額若しくは取引口数である。
モーメンタム(mi)を式であわすと、以下のようになる。
モーメンタム(mi)=(i日前のP/NAV倍率 − i-1日前のP/NAV倍率)×i日前の売買総額(若しくは取引口数)
なお、売買総額若しくは取引口数は、日次及び/又は週次で更新される出来高データベース9から取得する。
モーメンタム(mi)=(i日前のP/NAV倍率 − i-1日前のP/NAV倍率)×i日前の売買総額(若しくは取引口数)
なお、売買総額若しくは取引口数は、日次及び/又は週次で更新される出来高データベース9から取得する。
1日前と2日前に関するモーメンタム(m2)についても同様に算出し、例えば、モーメンタム(m2)が+5とする。累積ネット・モーメンタム(M2)は、モーメンタムの和(m2+m1)となる。遡及営業日T2の累積ネット・モーメンタムとしてT2が+5、T1が+10の棒グラフを表示する。i日前のP/NAV倍率よりも(i-1)日前のP/NAV倍率が大きいとモーメンタム(mi)はマイナスの値となる。図3に示す棒グラフは各日のモーメンタム(mi)の値を遡る日から直近の日に向けて加算した累積ネット・モーメンタム(Mi)をあらわしており、Miはプラスの値にも、マイナスの値にもなり得る。
なお、図3のマイナス領域は、遡及日からの累積ベースで見ると、直近の価格より割安でも売りたい方が割安での買いを上回った状況を示している領域で、プラスの領域は、遡及日からの累積ベースで見ると、直近の価格より割高でも買いたい方が割高での売りを上回った状況を示している領域である。
また、実際の累積ネット・モーメンタム(Mi)の値に適宜の数値を乗じることにより縦軸の値を調整し、見やすいグラフ表示にする処理を行うようにしてもよい。
また、実際の累積ネット・モーメンタム(Mi)の値に適宜の数値を乗じることにより縦軸の値を調整し、見やすいグラフ表示にする処理を行うようにしてもよい。
累積ネット・モーメンタムがプラスであれば、値上がると予測した投資家の割合が大きく、買いの圧力の方が売りの勢いを上回っていること、累積ネット・モーメンタムがマイナスであれば売りの圧力の方が買いの勢いを上回っていることを意味しているが、図3が示すとおり、営業6日前〜営業1日前の間における累積ネット・モーメンタムの傾き線Xと、営業9日前〜営業6日前の間における累積ネット・モーメンタムの傾き線Yは、傾斜方向が逆となっている。これは、J-REIT市場において指定した銘柄が値下がりする圧力の流れが6日前を分岐点として変わったことを示している。
また、営業6日前〜営業1日前を詳しく見ると、6日前〜3日前についての傾き線X1に較べ、3日前〜1日前の傾き線X2は、傾斜角が大きい。これは、営業6日前から上昇の圧力を示し始めた市場が更に強含みの度合いを増していると判断するべきである。市場の勢いがこのまま強くなると予測する投資家に対しては、今の内が買いのタイミングであると判断することを後押しする情報となるであろう。
不動産投資の特性から、上昇傾向や下降傾向といった変化にはある程度の周期性があり、一旦下降局面に入ると暫くは下降局面が継続し、また転じて上昇局面に入ると暫くは上昇局面が継続することが知られている。そのため、「売り場」において上昇局面が相当期間継続した後に下降局面に転じた場合には、保有している不動産を売却すべきであり、逆に、「買い場」において下降局面が相当期間継続した後上昇の局面に転じた場合には、新たに取得すべきフェーズに入ったと判断するのが合理的である。
本発明のコンピュータ装置100は、J-REIT市場における投資家の期待感(P/NAV倍率)を“見える化”するためにあり、しかも前日と比較した期待感に市場での取引量である出来高を乗じることでその期待感の強さをも客観的に示すために累積ネット・モーメンタムを算出する。累積ネット・モーメンタムは、遡及期間に於いて期待感がどのように遷移しているかを示しているので、図2に示すヒストグラムでは表せなかった時間的要素が考慮されていることを意味する。
本発明のコンピュータ装置100によれば、静態的情報表示手段3からの情報によって、ある銘柄に関する現在の市場価格が割安な状況(買い場)の中にあり、かつ、動態的情報表示手段5からの情報によって、縮小してきた期待感が直近の任意の日数で見られる変化量の累積値(累積ネット・モーメンタム)によって反転したことから、現在が買付けタイミングとして好適であると判定することができる。同様に、静態的情報表示手段3からの情報によって、ある銘柄に関する現在の市場価格が割高な状況(売り場)の中にあり、かつ、動態的情報表示手段5からの情報によって、拡大してきた期待感が直近の任意の日数で見られる変化量の累積値(累積ネット・モーメンタム)によって反転したことから、現在が売り付けタイミングとして好適であると判定することができる。このように、静態的情報と動態的情報を併せて提供することにより、J-REITの値動きに不慣れな投資家に対して適切な売買タイミングの決定を支援することを可能にするものである。
以上説明してきたとおり、J-REITの投資口価格は、そのJ-REITが保有している実物不動産の時価ベースの評価価格よりも変動幅が上にも下にも大きいという特徴がある。だからこそ、投資家は、優良物件を機動的に時価評価額(投資口の純資産でみればNAV)よりも安くも、高くも買う機会があるということになる。本発明によれば、不動産・賃料に対する市場の期待感の変化を本願固有の投資口価格以外の指標も利用しながら計量化し、できるだけ割安な局面をとらえて購入し、できるだけ割高な局面をとらえて売却することで投資効率を上げることを可能にできるのである。従来のように勘や経験のみに依存することなく、客観的に買付及び売付のタイミングを的確に把握し、且つ視覚的に認識することができるという技術的効果を奏している。
1 P/NAV倍率算出手段
2 記憶手段
3 静態的情報表示手段
4 売買タイミング通知手段
5 動態的情報表示手段
6 NAVデータベース
7 Pデータベース
8 P/NAVデータベース
9 出来高データベース
10 ユーザ端末
100 コンピュータ装置
2 記憶手段
3 静態的情報表示手段
4 売買タイミング通知手段
5 動態的情報表示手段
6 NAVデータベース
7 Pデータベース
8 P/NAVデータベース
9 出来高データベース
10 ユーザ端末
100 コンピュータ装置
Claims (1)
- 上場不動産投資証券(J-REIT)の買付及び売付のタイミング情報を提供するコンピュータ装置であって、
J-REITの各銘柄に関し、市場における投資口価格(P)を投資口一口あたりの時価評価ベース純資産額(NAV)で除して得られる値(P/NAV倍率)を、日次及び週次の少なくとも何れかで算出するP/NAV倍率算出手段と、
算出した前記P/NAV倍率を時系列にデータベースに記憶する記憶手段と、
ユーザの閲覧請求に応答して、ユーザが指定する銘柄に関する過去のP/NAV倍率を前記データベースから読み出し、
(1)各P/NAV倍率に対する生起回数をヒストグラムで表示し、
(2)直近のP/NAV倍率の値(現在値)を前記ヒストグラム上に表示し、
(3)前記ヒストグラムにおける最も小さなP/NAV倍率を基準にして、隣接する次に大きなP/NAV倍率の生起回数を順次積算して得られる値が、前記ヒストグラムのP/NAV倍率の総生起回数に対して所定の割合を超えたときのP/NAV倍率(下閾値)を前記ヒストグラム上に表示し、
(4)前記ヒストグラムにおける最も大きなP/NAV倍率を基準にして、隣接する次に小さなP/NAV倍率の生起回数を順次積算して得られる値が、前記総生起回数に対して所定の割合を超えたときのP/NAV倍率(上閾値)を前記ヒストグラム上に表示する、
ように構成された静態的情報表示手段と、
前記現在値が前記下閾値よりも小さい、若しくは前記現在値が前記上閾値よりも大きい場合、前記ユーザにアラーム情報を提供する売買タイミング通知手段と、
指定された前記銘柄に関し、当日の売買総額又は取引総口数で表される当日出来高に、当日と前日のP/NAV倍率の差を乗じた値を、任意の遡及期間について累計した結果を前記ユーザに提示する動態的情報表示手段と、
を備えたコンピュータ装置。
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JP2014206279A JP5874988B1 (ja) | 2014-10-07 | 2014-10-07 | J−reitの買付及び売付のタイミングを判定するコンピュータ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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- 2014-10-07 JP JP2014206279A patent/JP5874988B1/ja active Active
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