JP2016070156A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関の排気通路に装着される排気ガス浄化用の触媒の酸素吸蔵能力の推定の精度の一層の向上を図る。【解決手段】触媒内に酸素を充満させた状態で触媒の上流側の空燃比をリッチに変動させてから下流側の空燃比がリッチに変動するまでの期間において当該触媒の酸素放出量を推定する場合、触媒内に酸素を充満させた後触媒の上流側の空燃比をリッチに変動させるまでのディレイ時間を、内燃機関の一サイクルにおけるガスの空燃比の振動の大きさに応じて決定する。触媒内の酸素を放出させた状態で触媒の上流側の空燃比をリーンに変動させてから下流側の空燃比がリーンに変動するまでの期間において当該触媒の酸素吸蔵量を推定する場合には、触媒内の酸素を放出させた後触媒の上流側の空燃比をリーンに変動させるまでのディレイ時間を、内燃機関の一サイクルにおけるガスの空燃比の振動の大きさに応じて決定する。【選択図】図3

Description

本発明は、内燃機関における燃料噴射量を調整して空燃比を制御する制御装置に関する。
一般に、内燃機関の排気通路には、内燃機関の気筒から排出される排気ガス中に含まれる有害物質HC、CO、NOxを酸化/還元して無害化する三元触媒が装着されている。
触媒の酸素吸蔵能力(OSC:O2 Storage Capacity)は、経年劣化により減退する。触媒による排気ガスの浄化率は、触媒内に吸着できる酸素量に依存する。触媒の劣化が進行すると、排出される有害物質の量も増大する。一方で、触媒の劣化は、車両自体の運転性能にはほとんど影響を与えない。それ故、異常な排出ガス車が長期間、無意識に使用され続けるおそれがある。
そのような事象に対処するべく、触媒の経年劣化の度合いを自己診断するダイアグノーシス機能を車両に実装することも通例となっている(例えば、下記特許文献を参照)。具体的には、触媒から酸素を完全に放出した状態で、触媒に流入するガスの空燃比を強制的にリーンに操作し、触媒上流の空燃比センサの出力信号がリーンに切り替わってから触媒下流の空燃比センサの出力信号がリーンに切り替わるまでの間の経過時間を計測することにより、現在触媒に吸蔵している酸素量を推算する。下流側センサ出力がリーンに反転した瞬間の酸素吸蔵量が、当該触媒の最大酸素吸蔵能力となる。
触媒に酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵した状態で、触媒に流入するガスの空燃比を強制的にリッチに操作し、上流側センサ出力がリッチに切り替わってから下流側センサ出力がリッチに切り替わるまでの間の経過時間を計測することにより、触媒が放出した酸素の量、即ち酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵した状態を基準とした酸素吸蔵量を推算することもできる。下流側センサ出力がリッチに反転した瞬間の酸素吸蔵量が、当該触媒の最大酸素放出能力、換言すれば最大酸素吸蔵能力ということになる。
触媒のダイアグノーシスにおいては、最大酸素吸蔵能力の推算値を判定閾値と比較し、前者が後者を下回ったならば触媒が劣化したと判断する。そして、触媒が劣化した旨を運転者に報知して、触媒の交換を促す。
特開平05−133264号公報
複数の気筒を備える内燃機関にあっては、各気筒に充填される混合気の空燃比が常に均等になるとは限られない。吸気や霧化燃料の流れ方は気筒毎に異なることがあり、また各気筒に設置したインジェクタの燃料噴射性能にも個体差が存在し得ることから、気筒間で空燃比がばらつく可能性は否定できない。
そして、触媒のダイアグノーシス中に各気筒に流入する混合気の空燃比が相異なっていると、触媒の酸素吸蔵能力の推算値に誤差が混入してしまい、未だ十分な性能を有している触媒を劣化した触媒と誤判定したり、あるいは逆に劣化した触媒を劣化していない触媒と誤判定したりするおそれがある。
本発明は、排気ガス浄化用の触媒の酸素吸蔵能力の推定精度の一層の向上を図ることを所期の目的としている。
本発明では、内燃機関の排気通路に装着される排気ガス浄化用の触媒の上流側の空燃比を強制的に変動させてから下流側の空燃比が変動するまでの期間を利用して触媒の酸素吸蔵能力の推定を行うものであり、触媒内に酸素を充満させた状態で触媒の上流側の空燃比をリッチに変動させてから下流側の空燃比がリッチに変動するまでの期間において当該触媒の酸素放出量を推定する場合に、触媒内に酸素を充満させた後触媒の上流側の空燃比をリッチに変動させるまでのディレイ時間を、内燃機関の一サイクルにおけるガスの空燃比の振動の大きさに応じて決定し、または、触媒内の酸素を放出させた状態で触媒の上流側の空燃比をリーンに変動させてから下流側の空燃比がリーンに変動するまでの期間において当該触媒の酸素吸蔵量を推定する場合に、触媒内の酸素を放出させた後触媒の上流側の空燃比をリーンに変動させるまでのディレイ時間を、内燃機関の一サイクルにおけるガスの空燃比の振動の大きさに応じて決定する、内燃機関の制御装置を構成した。
本発明によれば、排気ガス浄化用の触媒の酸素吸蔵能力の推定精度の一層の向上を図り得る。
本発明の一実施形態における内燃機関及び制御装置の概略構成を示す図。 同実施形態の制御装置が実施する触媒のダイアグノーシスのためのアクティブ制御の内容を説明するタイミング図。 同実施形態の制御装置が実施する触媒のダイアグノーシスのためのアクティブ制御の内容を説明するタイミング図。 触媒の上流側の空燃比センサが出力する空燃比信号の時系列を例示するタイミング図。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、火花点火式の4ストロークエンジンであり、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させたことで生じる排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
排気通路4における触媒41の上流及び下流には、排気通路を流通する排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ43、44を設置する。空燃比センサ43、44はそれぞれ、排気ガスの空燃比に対して非線形な出力特性を有するO2センサであってもよく、排気ガスの空燃比に比例した出力特性を有するリニアA/Fセンサであってもよい。O2センサの出力特性は、理論空燃比近傍の範囲では空燃比に対する出力の変化率が大きく急峻な傾きを示し、それよりも空燃比が大きいリーン領域では低位飽和値に漸近し、空燃比が小さいリッチ領域では高位飽和値に漸近する、いわゆるZ特性曲線を描く。本実施形態では、触媒41の上流側の空燃比センサ43としてリニアA/Fセンサを想定し、下流側の空燃比センサ44としてO2センサを想定している。
本実施形態の内燃機関には、排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置2が付帯している。EGR装置2は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものであり、排気通路4における触媒41の上流側と吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流側とを連通するEGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における排気マニホルド42またはその下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所、具体的にはサージタンク33に接続している。
本実施形態の内燃機関の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関の温度を示唆する冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、触媒41の上流側における排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ43から出力される空燃比信号f、触媒41の下流側における排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ44から出力される空燃比信号g、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号h等が入力される。
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l等を出力する。
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、要求される燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、要求EGR量(または、EGR率)等といった運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
本実施形態のECU0は、気筒1に充填される混合気の空燃比、ひいては気筒1から排出され触媒41へと導かれる排気ガスの空燃比をフィードバック制御する。ECU0は、まず、吸気圧及び吸気温、エンジン回転数、要求EGR率等から、気筒1に充填される新気の量を算出し、これに見合った基本噴射量TPを決定する。
次いで、この基本噴射量TPを、触媒41の上流側及び/または下流側の空燃比に応じて定まるフィードバック補正係数FAFで補正する。一般に、フィードバック補正係数FAFは、空燃比センサ43、44を介して実測されるガスの空燃比と目標空燃比(平常時は理論空燃比近傍)との偏差に応じて調整され、実測空燃比が目標空燃比に対してリーンであるときには増加し、実測空燃比が目標空燃比に対してリッチであるときには減少する。
そして、内燃機関の状況に応じて定まる各種補正係数Kや、インジェクタ11の無効噴射時間TAUVをも加味して、最終的な燃料噴射時間(インジェクタ11に対する通電時間)Tを算定する。燃料噴射時間Tは、
T=TP×FAF×K+TAUV
となる。しかして、燃料噴射時間Tだけインジェクタ11に信号jを入力、インジェクタ11を開弁して燃料を噴射させる。
触媒41の上流側及び/または下流側の空燃比信号f、gを参照したフィードバック制御は、例えば、内燃機関の冷却水温が所定温度以上であり、燃料カット中でなく、パワー増量中でなく、内燃機関の始動から所定時間が経過し、空燃比センサ43、43が活性中、吸気圧が正常である、等の諸条件が全て成立している場合に行う。
また、本実施形態のECU0は、触媒41の最大酸素吸蔵能力を推定するとともに、推定した最大酸素吸蔵能力値を劣化判定値と比較して、当該触媒41が正常であるか異常であるかを判定するダイアグノーシスを行う。
触媒41の酸素吸蔵能力は既知の任意の手法を採用して推算することができるが、ここではその一典型例を示す。内燃機関の気筒1に空燃比リーンの混合気を供給して触媒41の酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵している状態から、気筒1に供給する混合気を意図的に空燃比リッチに操作するアクティブ制御を実行する。すると、上流側空燃比センサ43の出力信号fは即座に空燃比リッチを示す。これに対し、下流側空燃比センサ44の出力信号gは、上流側空燃比センサ43の出力信号fに遅れて空燃比リッチを示す。上流側空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リッチを示してから(または、混合気を空燃比リッチに操作してから)下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リッチを示すまでの間、触媒41に吸蔵していた酸素が放出されて酸素の不足が補われるためである。
上流側空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リッチを示してから、下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リッチを示すまでの間に経過した時間をTRとおき、このTRの間に供給した燃料の総重量をGF、理論空燃比とリッチ時の空燃比との差分をΔA/FRとおくと、TRの間に触媒41中で不足した酸素量は、
(α・ΔA/FR・GF
となる。αは、空気中に占める酸素の重量割合(≒0.23)である。
上式は、TRの時点までに触媒41が放出した酸素の量を表している。供給した燃料の総重量GFは、ECU0において演算することができる。即ち、一回の燃料噴射機会における燃料噴射量は、空燃比を理論空燃比よりもリッチな(14.6よりも小さい)所定値とするために必要な量であり、その噴射量に単位時間当たりの膨張行程回数(エンジン回転数に比例)を乗じれば、単位時間当たりの燃料供給量となる。そして、単位時間当たりの燃料供給量に経過時間TRを乗じれば、供給した燃料の総重量GFとなる。要するに、下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リッチを示した時点での経過時間TRに基づいて、触媒41の最大酸素放出能力を算出することが可能である。この最大酸素放出能力は、最大酸素吸蔵能力と同義である。
厳密には、TRの期間において、運転者のアクセル操作等に起因して単位時間当たりの燃料供給量(または、一回の噴射量)は増減し得る。故に、TRの期間中の供給燃料の総重量GFは、単位時間当たりの供給量gF(t)をTRの範囲で時間積分して求めることが好ましい。また、本実施形態では、触媒31の上流にリニアA/Fセンサ11を配しており、触媒31に流入するガスの空燃比を実時間で計測することが可能である。よって、ΔA/FR(t)を理論空燃比とA/Fセンサ11を介して計測した実測空燃比との差分として、触媒31の最大酸素吸蔵能力を、TRの期間の時間積分として求めることができる。即ち;
α∫{ΔA/FR(t)・gF(t)}dt
あるいは、内燃機関の気筒1に空燃比リッチの混合気を供給して触媒41に酸素を全く吸蔵していない状態から、気筒1に供給する混合気を意図的に空燃比リーンに操作するアクティブ制御を実行する。すると、上流側空燃比センサ43の出力信号fは即座に空燃比リーンを示す。これに対し、下流側空燃比センサ44の出力信号gは、上流側空燃比センサ43の出力信号fに遅れて空燃比リーンを示す。上流側空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リーンを示してから(または、混合気を空燃比リーンに操作してから)下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リーンを示すまでの間、過剰な酸素が触媒41に吸着するためである。
上流側空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リーンを示してから、下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リーンを示すまでの間に経過した時間をTLとおき、このTLの間に供給した燃料の総重量をGF、リーン時の空燃比と理論空燃比との差分をΔA/FLとおくと、TLの間に触媒41中で過剰となった酸素量は、
(α・ΔA/FL・GF
となる。
上式は、TLの時点で触媒41が吸蔵している酸素の量を表している。供給した燃料の総重量GFはやはり、ECU0において演算することができる。即ち、一回の燃料噴射機会における燃料噴射量は、空燃比を理論空燃比よりもリーンな(14.6よりも大きい)所定値とするために必要な量であり、その噴射量に単位時間当たりの膨張行程回数を乗じれば単位時間当たりの燃料供給量となる。そして、単位時間当たりの燃料供給量に経過時間TLを乗じれば、供給した燃料の総重量GFとなる。要するに、下流側空燃比センサ44の出力信号が空燃比リーンを示した時点での経過時間TLに基づいて、触媒41の最大酸素吸蔵能力を算出することが可能である。
厳密には、TLの期間において、運転者のアクセル操作等に起因して単位時間当たりの燃料供給量(または、一回の噴射量)は増減し得る。故に、TLの期間中の供給燃料の総重量GFは、単位時間当たりの供給量gF(t)をTLの範囲で時間積分して求めることが好ましい。ΔA/FL(t)を理論空燃比とA/Fセンサ11を介して計測した実測空燃比との差分とすれば、触媒31の最大酸素吸蔵能力を、TLの期間の時間積分として求めることができる。即ち;
α∫{ΔA/FL(t)・gF(t)}dt
触媒41のダイアグノーシスは、触媒41の劣化の兆候を感知したことを契機として実施する。その兆候の例としては、内燃機関の運転中に刻々と変動する下流側空燃比センサ44の出力電圧gの振動の周波数が閾値よりも高く(または、振動の周期が閾値よりも短く)なったことや、上流側空燃比センサ43の出力電圧fの変動と下流側空燃比センサ44の出力電圧gの変動との時間差が閾値よりも短くなったこと等が挙げられる。
但し、触媒41のダイアグノーシスの実施は、内燃機関の冷却水温が所定以上、内燃機関の負荷、気筒1に充填される吸気量、エンジン回転数、空燃比フィードバック制御による補正係数FAF及び触媒41の温度がそれぞれ所定範囲内、等といった諸条件がおしなべて成立していることを前提とする。
また、触媒41のダイアグノーシスは、一トリップ(イグニッションスイッチがONに操作されて内燃機関を始動してから、イグニッションスイッチがOFFに操作されて内燃機関を停止するまでの期間)毎に少なくとも一回実施することが好ましい。
図2に示しているように、アクティブ制御では、下流側空燃比センサ44の出力電圧gが所定のリッチ判定値に到達した、即ち出力gがリーンからリッチへと切り替わったタイミングで、制御目標空燃比をリーン側の所定空燃比に設定し、上流側空燃比センサ43の出力電圧fが当該制御目標に対応した値をとるように燃料噴射量を補正する。これにより、触媒41に流入するガスの空燃比を強制的にリーン化する。そして、上流側空燃比センサ43の出力電圧fが前記制御目標に対応した値に到達してから、下流側空燃比センサ44の出力電圧gが所定のリーン判定値に到達するまでの間の経過時間TL、即ち出力gが再度リーンへと切り替わるまでの経過時間TLを計測する。リッチ判定値とリーン判定値とは、相異なる値であってもよく、同一の値であってもよい。
並びに、下流側空燃比センサ44の出力gがリッチからリーンへと切り替わったタイミングで、制御目標空燃比をリッチ側の所定空燃比に設定し、上流側空燃比センサ43の出力電圧fが当該制御目標に対応した値をとるように燃料噴射量を補正する。これにより、触媒41に流入するガスの空燃比を強制的にリッチ化する。そして、上流側空燃比センサ43の出力電圧fが前記制御目標に対応した値に到達してから、下流側空燃比センサ44の出力電圧gが所定のリーン判定値に到達するまでの間の経過時間TR、即ち出力gが再度リッチへと切り替わるまでの経過時間TRを計測する。
ECU0は、酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵していた触媒41がその酸素の全てを放出するのに要した時間TR、及び、酸素を吸蔵していない触媒41が酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵するのに要した時間TLをそれぞれ一回以上計測し、計測したTR、TLを基に最大酸素吸蔵能力(α・ΔA/FR・GF)、(α・ΔA/FL・GF)を算出して、それらの平均値を求める。
触媒41が劣化したか否かの判断は、当該触媒41の最大酸素吸蔵能力(の複数回の推算値の平均)を判定閾値を比較することにより行う。即ち、最大酸素吸蔵能力が判定閾値未満であれば、当該触媒41は既に劣化しており十分な性能を発揮できないものと診断される。触媒41が劣化しているとの判断を下したECU0は、触媒41の異常の旨を示す情報(ダイアグノーシスコード)をメモリに記憶保持するとともに、触媒41の異常の旨を運転者の視覚または聴覚に訴えかける態様で出力して報知する。例えば、コックピット内のエンジンチェックランプを点灯させたり、ディスプレイに表示させたり、警告音を発したりして、触媒41の点検及び交換を促す。
ところで、複数の気筒1を備える内燃機関にあっては、各気筒1に充填される混合気の空燃比が常に均等になるとは限られない。吸気や霧化燃料の流れ方は気筒毎に偏りがある。また、各気筒1に設置しているインジェクタの燃料噴射性能にも、厳密には個体差が存在する。従って、気筒1間で混合気の空燃比にばらつきが生じる可能性は否定できない。
触媒41のダイアグノーシスのためのアクティブ制御中に、各気筒1に供給される混合気の空燃比が相異していると、触媒41の酸素吸蔵能力の推算値に誤差が混入する。その誤差により、未だ十分な性能を有している触媒41を劣化した触媒41と誤判定し、あるいは逆に劣化した触媒41を劣化していない触媒41と誤判定する懸念がある。
そこで、図3に示すように、本実施形態のECU0は、触媒41内に酸素を充満させた状態で触媒41の上流側の空燃比をリッチに変動させてから下流側の空燃比がリッチに変動するまでの期間TRに当該触媒41の酸素放出量(α・ΔA/FR・GF)を推定する場合において、触媒41内に酸素を充満させた後触媒41の上流側の空燃比をリッチに変動させるまでの間にディレイ時間DRを設ける。
ディレイ時間DRは、アクティブ制御中に触媒41の下流側の空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リーンを示してから、気筒1に供給する混合気の空燃比を強制的にリッチに操作するまでの間の待機時間である。このディレイ時間DR中は、その直前の時期と同様、空燃比リーンの混合気を気筒1に供給して触媒41への酸素の吸蔵を促進する。これにより、気筒1毎の空燃比のばらつき如何によらず、触媒41に完全に酸素を吸着させることができる。即ち、気筒1毎の空燃比のばらつきの影響による触媒41の酸素吸蔵能力の推定誤差を十分に低減せしめることが可能となる。
並びに、本実施形態のECU0は、触媒41内の酸素を放出させた状態で触媒41の上流側の空燃比をリーンに変動させてから下流側の空燃比がリーンに変動するまでの期間TLに当該触媒41の酸素吸蔵量(α・ΔA/FL・GF)を推定する場合において、触媒41内の酸素を放出させた後触媒41の上流側の空燃比をリーンに変動させるまでの間にディレイ時間DLを設ける。
ディレイ時間DLは、アクティブ制御中に触媒41の下流側の空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リッチを示してから、気筒1に供給する混合気の空燃比を強制的にリーンに操作するまでの間の待機時間である。このディレイ時間DL中は、その直前の時期と同様、空燃比リッチの混合気を気筒1に供給して触媒41からの酸素の放出を促進する。これにより、気筒1毎の空燃比のばらつき如何によらず、触媒41から完全に酸素を脱離させることができる。即ち、気筒1毎の空燃比のばらつきの影響による触媒41の酸素吸蔵能力の推定誤差を十分に低減せしめることが可能となる。
尤も、ディレイ時間DRは触媒41に過剰に酸素を供給する状態であり、ディレイ時間DLは触媒41内の酸素を過剰に消費する状態であるといえる。もし、内燃機関の各気筒1毎の混合気の空燃比のばらつきが小さいならば、長いディレイ時間DR、DLを設けることが触媒41の酸素吸蔵能力の推定精度の向上に寄与しないばかりか、却って有害物質の排出量を増加させることにもなってしまう。
よって、本実施形態のECU0は、気筒1間の空燃比のばらつきの度合いが大きいほどディレイ時間DR、DLを長く設定し、ばらつきの度合いが小さいほどディレイ時間DR、DLを短く設定する。ばらつきの度合いが十分に小さいときには、ディレイ時間DR、DLを0とすることもあり得る。
図4に、触媒41の上流側の空燃比センサ43の出力する空燃比信号fを例示する。図4中、上段は気筒1毎の空燃比のばらつきが小さい場合の空燃比信号fの時系列であり、下段は気筒1毎の空燃比のばらつきが大きい場合の空燃比信号fの時系列である。また、横方向即ち時間軸方向に並ぶ罫線の間隔TCは、内燃機関の一サイクル(吸気−圧縮−膨張−排気の一連が一サイクルである)の期間を表している。三気筒エンジンであれば、一サイクルが720°CA(クランク角度)である。
各気筒1毎の空燃比のばらつきの度合いは、上流側空燃比センサ43の出力信号fを参照して知得することができる。即ち、図4に示しているように、空燃比信号fの振動の振幅、換言すれば極大値と極小値との差が大きいほど、気筒1毎の空燃比のばらつきが大きいものと考えられる。気筒1毎の空燃比のばらつきの度合いの大きさは、アクティブ制御の実行開始直前(触媒41のダイアグノーシス開始直前)の空燃比信号fの時系列を基に判断することが好適である。
但し、空燃比信号fの振動は、気筒1毎の空燃比のばらつき以外の要因によっても発生し得る。例えば、運転者がアクセルペダルを強く踏み込んで大きな加速を得ようとしたときには、燃料噴射量を増量するパワー増量補正を実行するため、空燃比が変動する。また、車両の減速時に燃料噴射を一時的に中断する燃料カットによっても、空燃比は変動する。これらの事象に起因した空燃比信号fの変化を、気筒1毎の空燃比のばらつきに起因する空燃比信号fの振動と切り分けるために、以下に述べる何れかの処理を実行することが望ましい。
(i)上流側空燃比センサ43の出力する空燃比信号fを、内燃機関の一サイクルの周期に対応する周波数帯のみを通過させるバンドパスフィルタによって処理する。そして、そのフィルタ処理後の周波数成分の信号の振幅を計測することで、気筒1毎の空燃比のばらつきの度合いを知得する。これは、気筒1毎の空燃比のばらつきに起因する空燃比信号fの振動の周期が、内燃機関の一サイクルの周期に近いことに基づく。
(ii)あるいは、空燃比信号fの時系列から、内燃機関の一サイクル(720°CA)単位での移動平均を算出し、その移動平均の時系列を元の空燃比信号fの時系列から減算する。そして、その減算結果の信号の振幅を計測することで、気筒1毎の空燃比のばらつきの度合いを知得する。移動平均をとることは一種のローパスフィルタ処理であり、移動平均の時系列は気筒1毎の空燃比のばらつき以外の要因による空燃比信号fの変化の成分を抽出したものと見なすことができる。
本実施形態では、内燃機関の排気通路4に装着される排気ガス浄化用の触媒41の上流側の空燃比を強制的に変動させてから下流側の空燃比が変動するまでの期間を利用して触媒41の酸素吸蔵能力の推定を行うものであり、触媒41内に酸素を充満させた状態で触媒41の上流側の空燃比をリッチに変動させてから下流側の空燃比がリッチに変動するまでの期間TRにおいて当該触媒41の酸素放出量(α・ΔA/FR・GF)を推定する場合に、触媒41内に酸素を充満させた後触媒41の上流側の空燃比をリッチに変動させるまでのディレイ時間DRを、内燃機関の一サイクルにおけるガスの空燃比の振動の大きさに応じて決定し、または、触媒41内の酸素を放出させた状態で触媒41の上流側の空燃比をリーンに変動させてから下流側の空燃比がリーンに変動するまでの期間TLにおいて当該触媒41の酸素吸蔵量(α・ΔA/FL・GF)を推定する場合に、触媒41内の酸素を放出させた後触媒41の上流側の空燃比をリーンに変動させるまでのディレイ時間DLを、内燃機関の一サイクルにおけるガスの空燃比の振動の大きさに応じて決定する、内燃機関の制御装置0を構成した。
本実施形態によれば、各気筒1間での混合気の空燃比のばらつき、偏りの影響を排除して、触媒41の酸素吸蔵能力の推定の精度をより一層向上させることができる。従って、未だ必要十分な性能を有している触媒41を劣化した触媒であると誤判定したり、あるいは逆に劣化した触媒41を劣化していない触媒41であると誤判定したりするリスクが非常に小さくなる。誤判定のリスクの低減は、触媒41に使用する貴金属の量を減らすことにもつながり、コストの低廉化に資する。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態には限られない。各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両等に搭載される内燃機関の制御に適用することができる。
0…制御装置(ECU)
1…気筒
11…インジェクタ
4…排気通路
41…触媒
43…触媒上流の空燃比センサ
44…触媒下流の空燃比センサ
f…触媒上流の空燃比信号
g…触媒下流の空燃比信号

Claims (1)

  1. 内燃機関の排気通路に装着される排気ガス浄化用の触媒の上流側の空燃比を強制的に変動させてから下流側の空燃比が変動するまでの期間を利用して触媒の酸素吸蔵能力の推定を行うものであり、
    触媒内に酸素を充満させた状態で触媒の上流側の空燃比をリッチに変動させてから下流側の空燃比がリッチに変動するまでの期間において当該触媒の酸素放出量を推定する場合に、触媒内に酸素を充満させた後触媒の上流側の空燃比をリッチに変動させるまでのディレイ時間を、内燃機関の一サイクルにおけるガスの空燃比の振動の大きさに応じて決定し、
    または、触媒内の酸素を放出させた状態で触媒の上流側の空燃比をリーンに変動させてから下流側の空燃比がリーンに変動するまでの期間において当該触媒の酸素吸蔵量を推定する場合に、触媒内の酸素を放出させた後触媒の上流側の空燃比をリーンに変動させるまでのディレイ時間を、内燃機関の一サイクルにおけるガスの空燃比の振動の大きさに応じて決定する、内燃機関の制御装置。
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