JP2016069678A - 医療用針の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属製基材の一端部に加工して得た加工面の平滑化及び鋭利化に加えて、この加工面上に形成される酸化物を低減可能な医療用針の製造方法を提供することである。【解決手段】一端部に加工して得た加工面を備える針状の金属製基材を、主要ガス及び反応ガスを主成分とする混合ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する本処理工程と、前記本処理工程後の前記金属製基材を、前記本処理工程より短い所定時間の間、主要ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する後処理工程と、を含み、前記主要ガスは、プラズマを発生させた際に、当該金属製基材と反応して酸化物を生成しない不活性イオンが発生すると共に、前記金属製基材と反応して酸化物を生成する活性イオンが発生しない気体であり、前記反応ガスは、プラズマを発生させた際に、少なくとも前記活性イオンが発生する気体である。【選択図】図1
Description
本発明は、医療用針の製造方法に関し、特に、プラズマにより処理する工程を含む医療用針の製造方法に関する。
人体に使用される注射針などの医療用針の大きさは、用途によっても異なるが、例えば、インスリン自己注射用でも一般的に用いられている31ゲージのものの外径は0.25mm程度である。このような径をもつ医療用針は、刺通時に刺通痛みや傷などを与え、このことにより特にインスリンを自己注射する患者には恐怖感や不安感を与えることになる。このため、従来、医療用針の刺通痛みを低減させることが望まれている。
医療用針の刺通痛みを低減する1つの方法は、針の外径を細くすることであり、すでに33ゲージの極細針が、刺通痛みを低減させた所謂無痛インスリン医療用針として市販されている。また、刺通針の針管胴部にテーパー部をもたせ、針先部分の径をシリンジに接続する基端部の径より小さくした医療用針も知られている。
一方、医療用針の針先は、通常、針管内の輸液量を確保できる、ある程度の大きさが必要とされる。このため、通常の針先の径を変えずに刺通時の痛みを低減させる方法が望まれている。医療用針の刺通痛みを低減させる1つの方法として、針管の表面平滑化による生体との摩擦抵抗の低下が挙げられる。
特許文献1には、アルゴン及び空気を主成分とする混合ガスで満たされた真空槽内でプラズマを発生させてプラズマ処理を行うことにより、金属製基材の一端部としての針先の加工面を平滑化及び鋭利化する医療用針の製造方法が開示されている。
ところで、特許文献1に記載の医療用針の製造方法によれば、一端部としての針先における加工面の平滑化及び鋭利化による刺通痛みの低減に加えて、針先の加工面上に形成される酸化物が少ない医療用針を製造することができるが、加工面上に形成される酸化物の低減に関して、更なる改善の余地があった。
本発明の目的は、金属製基材の一端部に加工して得た加工面の平滑化及び鋭利化に加えて、この加工面上に形成される酸化物を低減可能な医療用針の製造方法を提供することである。
本発明の第1の態様としての医療用針の製造方法は、一端部に加工して得た加工面を備える針状の金属製基材を、主要ガス及び反応ガスを主成分とする混合ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する本処理工程と、前記本処理工程後の前記金属製基材を、前記本処理工程より短い所定時間の間、主要ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する後処理工程と、を含み、前記主要ガスは、プラズマを発生させた際に、当該金属製基材と反応して酸化物を生成しない不活性イオンが発生すると共に、前記金属製基材と反応して酸化物を生成する活性イオンが発生しない気体であり、前記反応ガスは、プラズマを発生させた際に、少なくとも前記活性イオンが発生する気体であることを特徴とするものである。
ここで述べた「不活性イオン」は当該金属製基材と反応して酸化物を生成しないイオン、「活性イオン」は当該金属製基材と反応して酸化物を生成するイオンと定義する。
ここで述べた「不活性イオン」は当該金属製基材と反応して酸化物を生成しないイオン、「活性イオン」は当該金属製基材と反応して酸化物を生成するイオンと定義する。
本発明の1つの実施形態として、前記本処理工程で用いる主要ガスと前記後処理工程で用いる主要ガスとは、同種の気体であることが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記主要ガスは、アルゴンであることが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記反応ガスは、空気であることが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記金属製基材の前記加工面は、パイプ状の針管の一端にその針管の長手方向の中心軸に対して鋭角をなす切断面と、前記切断面の先端側部分を両側から前記中心軸に対して線対称に研削して形成された一対の研削面と、前記一対の研削面同士が交差してなす管肉の稜線によって形成された刃縁と、を備えるものであることが好ましい。
本発明によれば、金属製部材の一端部に加工して得た加工面の平滑化及び鋭利化に加えて、この加工面上に形成される酸化物を低減可能な医療用針の製造方法を提供することができる。
以下、本発明に係る医療用針の製造方法の実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、共通の符号を付している。
図1は、本発明の1つの実施形態としての医療用針の製造方法を示すフローチャート図である。図1に示すように、本実施形態としての製造方法は、金属製の管材の一端部を研削及び引き抜き加工することにより、一端部に加工面を備える針状の金属製基材10を形成する研削工程S1と、この研削工程S1で加工された加工面を電解研磨(薬液:リン酸)等により研磨する研磨工程S2と、この加工面を備える針状の金属製基材10を、主要ガス及び反応ガスを主成分とする混合ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する本処理工程S3と、この本処理工程S3後の金属製基材10を、本処理工程S3より短い所定時間の間、主要ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する後処理工程S4と、を含むものである。なお、「医療用針」とは、注射針などの中空針のみならず、穿刺針などの中実針をも含む意味である。
[金属製基材10]
上述した製造方法における被処理部材としての針状の金属製基材10は、図2に示すランセット型のものである。図2(a)は針先部分を側面側から見た斜視図であり、図2(b)は正面側から見た斜視図である。図2に示すように、金属製基材10は、針管11の一端部に形成された針先12を備えている。針先12は、針管11の一端部に加工して得た加工面を有しており、この加工面は、針管11の長手方向の中心軸Oに対して鋭角をなす切断面13と、切断面13の先端側部分を両側から中心軸Oに対して線対称に研削して形成された一対の研削面(ベベル面)14と、その一対の研削面14同士が交差してなす管肉の稜線によって形成された刃縁15と、を備える。
上述した製造方法における被処理部材としての針状の金属製基材10は、図2に示すランセット型のものである。図2(a)は針先部分を側面側から見た斜視図であり、図2(b)は正面側から見た斜視図である。図2に示すように、金属製基材10は、針管11の一端部に形成された針先12を備えている。針先12は、針管11の一端部に加工して得た加工面を有しており、この加工面は、針管11の長手方向の中心軸Oに対して鋭角をなす切断面13と、切断面13の先端側部分を両側から中心軸Oに対して線対称に研削して形成された一対の研削面(ベベル面)14と、その一対の研削面14同士が交差してなす管肉の稜線によって形成された刃縁15と、を備える。
なお、研削面14と針管11の外周面とが交差する稜線によって研削面14の外縁16が形成されており、この外縁16の先端部と、最先端に尖鋭な刃先15aを含む刃縁15とにより、針先12の刃Aが形成されている。
このような構造の針先12は、針管の長手方向の中心軸に対して鋭角をなす単純な切断面しか有さない針先と比較して、刺通時に皮膚組織との接触面を少なくでき、刺通痛みを低減することができる。
[プラズマ処理]
次に、本実施形態の製造方法におけるプラズマ処理について説明する。本実施形態の製造方法では、上述した金属製基材10における、少なくとも加工面(研削面14等)をプラズマ処理する。プラズマ処理は、金属製基材10を、主要ガス及び反応ガスを主成分とする混合ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する本処理工程S3と、この本処理工程S3後の金属製基材10を、主要ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する後処理工程S4とを含む。
次に、本実施形態の製造方法におけるプラズマ処理について説明する。本実施形態の製造方法では、上述した金属製基材10における、少なくとも加工面(研削面14等)をプラズマ処理する。プラズマ処理は、金属製基材10を、主要ガス及び反応ガスを主成分とする混合ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する本処理工程S3と、この本処理工程S3後の金属製基材10を、主要ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する後処理工程S4とを含む。
なお、「主要ガス」とは、本処理工程及び後処理工程において、プラズマ化してプラズマを発生させた際に、被処理部材と反応して酸化物を生成しない不活性イオンが発生すると共に、被処理部材と反応して酸化物を生成する活性イオンが発生しない気体を意味するものである。したがって、例えば、被処理部材と反応しない不活性ガスを主要ガスとして用いることができ、具体的には、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)等の希ガスや、被処理部材の材料に応じて窒素(N2)等を用いることができる。本実施形態では、被処理部材としての金属製基材10がステンレス製であるため、上述した希ガスや窒素を主要ガスとして用いることが可能である。
また、「反応ガス」とは、本処理工程において、プラズマ化してプラズマを発生させた際に、被処理部材と反応して酸化物を生成する活性イオンが少なくとも発生する気体を意味するものである。したがって、例えば、酸素(O2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)等の、酸素のイオンを発生させる気体を少なくとも1種含む気体を用いることができる。
本実施形態の金属製基材10は、上述したようにステンレス製であるため、主要ガスとしてアルゴンを用い、反応ガスとして酸素(O2)を含む空気を用いている。主要ガスとしてアルゴンを用いることにより、例えばヘリウム、ネオン、窒素を主要ガスとして用いる場合と比較して、エッチング性能を向上させることができる。また、例えばクリプトンを主要ガスとして用いる場合と比較して、低コストなプラズマエッチングを実現することができる。更に、反応ガスとして空気を用いることにより低コスト化を実現することができる。
ここで、本処理工程S3では、主要ガスのみではなく、反応ガスを(好ましくは特定比率で)含む混合ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する。このような本処理を行うことにより、金属製基材10における加工面の粗度が非常に小さくなり、また先端が先鋭化することで、使用の際の痛みが格段に小さくすることができる。
また、後処理工程S4では、本処理工程S3後の金属製基材10を、本処理工程S3より短い所定時間の間、主要ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する。このような後処理を行うことにより、本処理工程S3において生成された金属製基材10の表面の酸化物を除去することができると共に、本処理工程S3より短い所定時間の間だけ後処理工程S4を実行することにより、金属製基材10の表面が粗くなることをも抑制することができる。
本処理工程S3において使用する混合ガスは主要ガスおよび反応ガスを主成分とするものであるが、主成分とは、体積比率で70%以上含むことを意味するものとする。すなわち、混合ガスにおける主要ガスと反応ガスとの合計濃度は70体積%以上である。この合計濃度は80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることがより好ましく、98体積%以上であることがより好ましく、99体積%以上であることがさらに好ましい。
混合ガスにおける主要ガスの分圧(MGP)は0.01〜10Paであることが好ましく、0.1〜2Paであることがより好ましく、0.2〜0.6Paであることがより好ましく、0.3〜0.5Paであることがさらに好ましい。
混合ガスにおける反応ガスの分圧(AGP)は0.001Pa以上であることが好ましく、0.001〜1Paであることがより好ましく、0.005〜0.1Paであることがより好ましく、0.007〜0.05Paであることがより好ましく、0.007〜0.027Paであることがさらに好ましい。
混合ガスにおける主要ガスの分圧(MGP)が0.3〜0.5Paであり、かつ、前記反応ガスの分圧が0.007〜0.05Paであることが好ましい。使用の際により痛みの少ない医療用針が得られるからである。
プラズマを発生させる際の混合ガスの圧力は0.1〜10Paであることが好ましく、0.2〜1.2Paであることがより好ましく、0.3〜0.8Paであることがより好ましく、0.307〜0.55Paであることがさらに好ましい。
混合ガスにおける、反応ガスの分圧(AGP)と主要ガスの分圧(MGP)との比(AGP/MGP)が、0.01〜0.5であることが好ましく、0.01〜0.1であることがより好ましく、0.01〜0.08であることがより好ましく、0.02〜0.1であることがより好ましく、0.023〜0.054であることがさらに好ましい。使用の際により痛みの少ない医療用針が得られるからである。
また、上述したようにアルゴンと空気とからなる混合ガスを用いることが好ましいが、この場合、混合ガスにおけるアルゴンの分圧は0.01〜10Paであることが好ましく、0.1〜2Paであることがより好ましく、0.2〜0.6Paであることがより好ましく、0.3〜0.5Paであることがさらに好ましい。また、更に、混合ガスにおける空気の分圧は0.001Pa以上であることが好ましく、0.001〜1Paであることがより好ましく、0.005〜0.1Paであることがより好ましく、0.006〜0.05Paであることがより好ましく、0.007〜0.05Paであることがより好ましく、0.006〜0.027Paであることがさらに好ましい。
なお、本実施形態において、本処理工程S3で用いる主要ガスと後処理工程S4で用いる主要ガスとは、同種の気体としてアルゴンを使用しているが、例えば、本処理工程S3で用いる主要ガスと、後処理工程S4で用いる主要ガスとを異種の気体としてもよい。但し、同種の気体とすれば、本処理工程S3と後処理工程S4との間で別々に気体を準備する必要がないため、本実施形態のように同種の気体を用いることが好ましい。
[プラズマ装置20]
上述した製造方法における本処理工程S3及び後処理工程S4は、図3に示すプラズマ装置20により行うことができる。以下、プラズマ装置20について説明する。
上述した製造方法における本処理工程S3及び後処理工程S4は、図3に示すプラズマ装置20により行うことができる。以下、プラズマ装置20について説明する。
図3に示すプラズマ装置20は、アーク放電ホットフィラメント法を行うことができるものである。図3においてプラズマ装置20は、真空槽21と、真空槽21内へ混合ガスXを導入するためのガス導入部22と、真空槽21内に設置された、金属製基材10を保持するホルダー23と、このホルダー23に対向配置されたフィラメント24と、このフィラメント24に電流を供給するフィラメント用電源25と、を備える。また、プラズマ装置20は、フィラメント24を覆うように設置され、アーク放電電源26を備えるホローカソード電極27と、ホローカソード電極27の外面に設置されたコイル28及び絶縁体29と、金属製基材10にバイアス電圧を印加できるバイアス電圧電源30と、をさらに備える。
このようなプラズマ装置20では、ガス導入部22を用いて真空槽21内へ主要ガスと反応ガスとを主成分とする混合ガスXを導入して、この真空槽21内を満たした後、フィラメント24へ電流を供給することで、グロー放電を発生させて放電ガスのプラズマを発生させることができる。
ここでバイアス電圧は50〜1000Vとすることが好ましく、100〜800Vとすることがより好ましく、300〜600Vとすることがさらに好ましい。
また、本処理工程S3のプラズマ処理時間は、1〜50時間とすることが好ましく、1〜10時間とすることがより好ましく、1.5〜4時間とすることがより好ましく、2〜3時間とすることがさらに好ましい。更に、後処理工程S4のプラズマ処理時間は、1分〜5時間とすることが好ましく、1分〜1時間とすることがより好ましく、1.5分〜24分とすることがより好ましく、2分〜18分とすることが更に好ましい。
また、イオン電流密度は、0.1〜50mA/cm2とすることが好ましく、0.5〜10mA/cm2とすることがより好ましく、1〜2mA/cm2とすることがさらに好ましい。
なお、主要ガスの分圧(MGP)および反応ガスの分圧(AGP)は、ガス導入部22によって真空槽21内へ混合ガスXを導入する際の、主要ガスおよび反応ガスの流量を流量計(オリフィス等)を用いて測定し、その測定値と真空槽21の容量から算出することができる。また、混合ガスの圧力は、このようにして測定し、算出した主要ガスおよび反応ガスの分圧の合計として求めることができる。
また、本実施形態としての製造方法における研削工程S1では、図2に示すようなランセット型の針先12を有する金属製基材10が形成され、この研削工程S1により生じる研削バリなどが、研磨工程S2により取り除かれる。そして、研磨工程S2により研磨された金属製基材10を、上述したプラズマ装置20内のホルダー23に設置し、本処理工程S3及び後処理工程S4が行われる。なお、本実施形態では、研削工程S1の後に上述した研磨工程S2を行っているが、この研磨工程S2を省くことも可能である。
図4(a)〜図4(d)は、異なる処理が施された4つの金属製基材の針先の加工面をそれぞれ示すものである。図4(a)は、上述した研削工程S1及び研磨工程S2のみを行った金属製基材を示している。図4(b)は、上述した研削工程S1と研磨工程S2とに加えて、プラズマ装置20を用いて、アルゴンで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって120分間のプラズマ処理を行った金属製基材を示している。また、図4(c)は、上述した研削工程S1と研磨工程S2とに加えて、プラズマ装置20を用いて、アルゴン及び空気の混合ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって上述の本処理工程S3のみを120分間行い、上述の後処理工程S4は行っていない金属製基材を示している。更に、図4(d)は、上述した研削工程S1及び研磨工程S2に加えて、プラズマ装置20を用いて、本処理工程S3(120分間)及び後処理工程S4(10分間)を行った金属製基材、すなわち本実施形態としての製造方法により製造された医療用針を示している。換言すれば、図4(a)〜図4(c)は比較例としての製造方法により製造された医療用針である。
なお、図4(b)〜図4(d)に示す金属製基材は、プラズマ装置20として、永田精機株式会社製の注射針用イオンエッチング処理装置の型番『IPFS−T−1』を用いて、ガス圧0.4Pa、アーク放電電流35A、及びバイアス電圧300Vでプラズマ処理を行ったものである。また、図4(c)及び図4(d)に示す金属製基材は、本処理工程S1において、主要ガスとしてのアルゴンの分圧(MGP)0.36Pa、反応ガスとしての空気の分圧(AGP)0.04Paである。
図5は、図4(a)に示す金属製基材の酸化物の有無を示す図である。図4(a)に示す金属製基材の針先の加工面は、比較的平滑な面ではあるが、研削跡や研磨跡が残っていることがわかる。また、図5に示すように、図4(a)に示す金属製基材の針先の加工面には、酸化物が形成されていないこともわかる。
図6は、図4(c)に示す金属製基材の酸化物の有無を示す図である。図4(c)に示す金属製基材の針先の加工面は、平滑な面であることがわかる。また、図6に示すように、図4(c)に示す金属製基材の針先の加工面には、酸化物が形成されていることがわかる。
図7は、図4(d)に示す金属製基材の酸化物の有無を示す図である。図4(d)に示す金属製基材の針先の加工面、すなわち本実施形態としての製造方法により製造された医療用針の針先の加工面は、平滑な面であることがわかる。また、図7に示すように、図4(d)に示す金属製基材の針先の加工面には、酸化物が形成されていないことがわかる。
なお、図5〜図7は、1本の金属製基材の一部を拡大して示したものであり、各図における3本の縦線は観察用の光の当たっている部分である。
また、図8は、図4(d)に示す金属製基材を製造する過程において、研削工程S1及び研磨工程S2を終えた後の本処理工程S3を行う前の状態の針先部分と、本処理工程S3及び後処理工程S4を終えた後の状態の針先部分をそれぞれ示す図である。図8に示すように、本処理工程S3及び後処理工程S4により、加工面の平滑化に加えて、針先の鋭利化が実現できていることがわかる。
このように、本実施形態としての医療用針の製造方法によれば、本処理工程S3により金属製基材10の一端部の加工面を平滑化及び鋭利化し、刺通痛みを低減することができると共に、後処理工程S4により、金属製基材10の一端部の加工面を平滑及び鋭利な状態に維持したまま、この加工面から酸化物を取り除くことができる。
また、同一のプラズマ装置20中のガスを入れ替えることにより、本処理工程S3と後処理工程S4との両方を行うことができるため、異なる装置を用いる必要が無く、製造工程を簡素化することができる。また、本実施形態の本処理工程S3及び後処理工程S4を、化学処理により代替することも考えられるが、本実施形態の本処理工程S3及び後処理工程S4は、化学処理と比較して、環境負荷が小さく、処理後のワーク洗浄も不要である。
更に、本実施形態の本処理工程S3では、反応ガスを用いているため、タングステン製のフィラメント24の存在によって真空槽21内に酸化タングステンが付着する。プラズマ装置の真空槽内の清掃は、通常、ブラシ等を用いて酸化タングステン等の付着物を除去すること、及び真空槽内に不活性ガスのプラズマを充満させることにより行うが、本実施形態では後処理工程S4を含むことにより、金属製基材10の加工面上の酸化物の除去に加えて、真空槽21内の酸化タングステン(酸化物)についても除去することができ、真空槽21内の清掃頻度を減少させることができる。
なお、本実施形態では、被処理部材として図2に示すランセット型の金属製基材10を用いたが、ランセット型の金属製基材に限られるものではなく、例えば、セミランセット型、バックカット型、円錐形、多角錐形、ヘラ型およびこれらの変形型の金属製基材を使用することも可能である。
本発明は、医療用針の製造方法に関し、特に、プラズマにより処理する工程を含む医療用針の製造方法に関する。
10:金属製基材
11:針管
12:針先
13:切断面
14:研削面
15:刃縁
15a:刃先
16:研削面の外縁
20:プラズマ装置
21:真空槽
22:ガス導入部
23:ホルダー
24:フィラメント
25:フィラメント用電源
26:アーク放電電源
27:ホローカソード電極
28:コイル
29:絶縁体
30:バイアス電圧電源
A:刃
O:針管の中心軸
X:混合ガス
11:針管
12:針先
13:切断面
14:研削面
15:刃縁
15a:刃先
16:研削面の外縁
20:プラズマ装置
21:真空槽
22:ガス導入部
23:ホルダー
24:フィラメント
25:フィラメント用電源
26:アーク放電電源
27:ホローカソード電極
28:コイル
29:絶縁体
30:バイアス電圧電源
A:刃
O:針管の中心軸
X:混合ガス
Claims (5)
- 一端部に加工して得た加工面を備える針状の金属製基材を、主要ガス及び反応ガスを主成分とする混合ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する本処理工程と、
前記本処理工程後の前記金属製基材を、前記本処理工程より短い所定時間の間、主要ガスで満たされた雰囲気内で発生させたプラズマによって処理する後処理工程と、を含み、
前記主要ガスは、プラズマを発生させた際に、当該金属製基材と反応して酸化物を生成しない不活性イオンが発生すると共に、前記金属製基材と反応して酸化物を生成する活性イオンが発生しない気体であり、
前記反応ガスは、プラズマを発生させた際に、少なくとも前記活性イオンが発生する気体であることを特徴とする医療用針の製造方法。 - 前記本処理工程で用いる主要ガスと前記後処理工程で用いる主要ガスとは、同種の気体であることを特徴とする、請求項1に記載の医療用針の製造方法。
- 前記主要ガスは、アルゴンであることを特徴とする、請求項2に記載の医療用針の製造方法。
- 前記反応ガスは、空気であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の医療用針の製造方法。
- 前記金属製基材の前記加工面は、パイプ状の針管の一端にその針管の長手方向の中心軸に対して鋭角をなす切断面と、前記切断面の先端側部分を両側から前記中心軸に対して線対称に研削して形成された一対の研削面と、前記一対の研削面同士が交差してなす管肉の稜線によって形成された刃縁と、を備えるものであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の医療用針の製造方法。
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2014
- 2014-09-29 JP JP2014199448A patent/JP2016069678A/ja active Pending
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