JP2016069633A - 塗料剥離用水性プライマー組成物および塗料剥離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗装用器具類に付着した塗料を、塗装用器具類の変形や破損なく、少ない労力で容易に又確実に除去できる塗料剥離用水性プライマー組成物を提供する。【解決手段】ジカルボン酸成分およびグリコール成分を主成分として重縮合してなるポリエステル樹脂またはその塩と、水と含有することを特徴する塗料剥離用水性プライマー組成物において、ポリエステル樹脂が−SO3M(Mは水素、アルカリ金属、アンモニウムイオン、アルカノールアミンのいずれかを示す)で表される置換基を有することを特徴とする塗料剥離用水性プライマー組成物。【選択図】 なし
Description
本発明は、自動車の塗装工程をはじめとする各種被塗装物の塗装工程に使用される塗装用器具類に付着または堆積する硬化もしくは未硬化の塗料もしくは塗膜の効率的除去を可能にする塗料剥離用水性プライマー組成物および塗料剥離方法に関する。
自動車の塗装工程をはじめとする様々な被塗装物の塗装工程に塗装器具類が使用されているが、これら塗装器具類に塗料が付着または堆積すると、作業性や機能が低下することから、一定期間ごとに塗装器具類から硬化もしくは未硬化の塗料を剥離除去する必要がある。
自動車をはじめとする被塗装物を塗装する塗装工程において使用される塗装用器具類としては、例えば、マスキング治具、スノコおよび塗装ブース等が挙げられる。これら塗装器具類に付着する塗膜を除去する方法としては、従来より種々の方法が提案されている。例えばそのような方法として、(i)ジクロロメタンやシンナー等の有機溶剤を主成分とする塗料剥離剤を使用する方法、 (ii)苛性アルカリを主成分とする水性洗浄剤を加温して使用する方法、(iii)塗膜を焼却処理する方法、(iv) 塗膜にハンマーやスクレーパー等を用いて物理的な振動や衝撃を与える方法、および(v)塗料の付着を防止するシリコーン樹脂やフッ素樹脂を塗装器具類にコーティングする方法等が知られている。
しかしながら、方法(i)の場合には、塗料剥離剤の溶剤としてキシレン、ケトン等の引火性溶剤、あるいはジクロロメタン等の塩素系溶剤を使用するため、作業環境の保全と引火防止対策が必要となる。この方法は、毒性、臭気、引火性および廃液処理等の作業衛生性や環境汚染の点で多くの問題がある。特にジクロロメタンを主成分とする塗料剥離剤の使用は従来技術としては広く知られており、活用されてきたが、胆管癌の発症など人体への影響が懸念される現在では使用し難くなっている。方法(ii)は、アルカリ成分の濃度が高いことから安全性に問題がある。かつよく使用されている苛性アルカリについては、その濃度が5%以上である場合、毒物および劇毒物取締法における劇物として指定されることから取り扱いが煩雑となる。方法(iii)は、有毒な排ガスの発生を伴うので大気汚染の点で問題がある。さらに方法(iv)は、細部までの完全な剥離が困難なだけでなく、塗装器具類を変形または被損させる危険性が高く、作業効率が極めて低いという難点がある。方法(v)は、塗料の付着を完全には防止できず、コストが高いことや塗装ハジキ(repellency)が懸念されることから普及していない。前記の方法(i)から方法(v)を通じて、全体に付着塗料が除去しにくいという欠点があった。
その他の方法として、塗装器具類の塗料が付着する部分に予めプライマーをコーティングしておき、塗装工程で塗料がある程度、付着または堆積したあと、水溶性塗料剥離剤(特許文献1)や溶剤で剥離するものがある。水溶性塗料剥離剤で剥離する場合、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性アクリル系樹脂、エーテル化セルロースなど(特許文献2,3,4,5,6)では剥離性能が十分でない。
油タイプの塗装剥離用プライマーとしては、高粘度のグリースが、安価で効果もあるため広く用いられているが、溶剤系塗料に溶解され易かったり、また水性塗料をはじくため付着せず落下した塗料による塗装品不良につながる等、生産性低下を引き起こすことがある。また、グリース自体が高汚染性のため、周囲の環境の汚染も問題となる。
本発明は上述したような当該分野の実情に鑑み、自動車の塗装工程をはじめとする様々な被塗装物の塗装工程に使用されている塗装用器具類に付着または堆積する硬化もしくは未硬化の塗料もしくは塗膜を水溶性塗料剥離剤を使用し剥離する場合の、効率的除去を可能にする塗料剥離用水性プライマー組成物および塗料剥離方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。つまり、本発明は次の成分を含有する塗料剥離用水性プライマー組成物および塗料剥離方法に関する。
項1.ジカルボン酸成分およびグリコール成分を主成分として重縮合してなるポリエステル樹脂またはその塩と、水とを含有することを特徴する塗料剥離用水性プライマー組成物において、ポリエステル樹脂が−SO3M(Mは水素、アルカリ金属、アンモニウムイオン、アルカノールアミンのいずれかを示す)で表される置換基を有することを特徴とする塗料剥離用水性プライマー組成物。
項2.ポリエステル樹脂が−COOM’(M’は水素、アルカリ金属、アンモニウムイオン、アルカノールアミンのいずれかを示す)で表される置換基を有することを特徴とする項1に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
項3.ジカルボン酸成分がテレフタル酸、またはテレフタル酸の無水物、エステル、酸ハライド、もしくはそれらの組み合わせから選択されたテレフタル酸誘導体である、項1に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
項4.ジカルボン酸成分が−SO3Mで表される基を有することを特徴とする、項1〜3のいずれか1項に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
項5.ジカルボン酸成分がテレフタル酸、イソフタル酸またはこれらの組み合わせであり、グリコール成分がエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはこれらの組み合わせである項1に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
項6.前記ポリエステル樹脂ならびにその塩の濃度が塗料剥離用水性プライマー組成物の質量に対して1〜50質量%である項1〜5のいずれか1項に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
項7.項1〜6のいずれか1項に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物を塗装前に塗装器具類に塗布し、塗装後に塗料剥離剤を用いて塗装器具類から硬化もしくは未硬化の塗料を除去する塗料の剥離方法。
項2.ポリエステル樹脂が−COOM’(M’は水素、アルカリ金属、アンモニウムイオン、アルカノールアミンのいずれかを示す)で表される置換基を有することを特徴とする項1に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
項3.ジカルボン酸成分がテレフタル酸、またはテレフタル酸の無水物、エステル、酸ハライド、もしくはそれらの組み合わせから選択されたテレフタル酸誘導体である、項1に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
項4.ジカルボン酸成分が−SO3Mで表される基を有することを特徴とする、項1〜3のいずれか1項に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
項5.ジカルボン酸成分がテレフタル酸、イソフタル酸またはこれらの組み合わせであり、グリコール成分がエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはこれらの組み合わせである項1に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
項6.前記ポリエステル樹脂ならびにその塩の濃度が塗料剥離用水性プライマー組成物の質量に対して1〜50質量%である項1〜5のいずれか1項に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
項7.項1〜6のいずれか1項に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物を塗装前に塗装器具類に塗布し、塗装後に塗料剥離剤を用いて塗装器具類から硬化もしくは未硬化の塗料を除去する塗料の剥離方法。
本発明の塗料剥離用水性プライマー組成物の皮膜を表面に有する塗装用器具類は、不要な塗料が付着または堆積しても、水溶性塗料剥離剤を用いて処理すると付着または堆積した塗料に亀裂が生じ、亀裂内へ水溶性塗料剥離剤が浸透して皮膜を溶解、膨潤させるので、付着または堆積した塗料は塗装器具類の表面から浮かび上がって容易に、かつ部分的または完全に剥離する。従って、本発明の塗料剥離用水性プライマー組成物によると、塗装器具類の隅部や屈曲部等のように、塗料剥離が比較的困難な部位においても、短時間で付着または堆積した塗料を容易に剥離することができる。本発明によれば、塗装用器具類に付着した塗料を、塗装用器具類の変形や破損なく、少ない労力で容易に又確実に除去できる。
また、塗料剥離処理後は一般に水洗処理が行われるが、本発明のプライマー組成物から形成される皮膜は水で溶解除去されるので、塗料の剥がれ残りが存在せず、新たなプライマー組成物からの皮膜形成に際して、皮膜への塗料の密着は良好に維持される。
以下、本発明の塗料剥離用水性プライマー組成物について詳述する。本発明の塗料剥離用水性プライマー組成物はジカルボン酸成分およびグリコール成分を主成分として重縮合してなるポリエステル樹脂またはその塩と、水とを含有することを特徴する塗料剥離用水性プライマー組成物において、ポリエステル樹脂が−SO3M(Mは水素、アルカリ金属、アンモニウムイオン、アルカノールアミンのいずれかを示す)で表される置換基を有することを特徴とする。
Mとしては、水素;Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属;アンモニウムイオン;およびモノエタノールアルカノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン;から選ばれる1種以上を挙げることができる。
ポリエステル樹脂中の複数の繰り返し構造単位において、複数のMは同一であっても異なっていてもよい。Mとして好ましくはNa、Kである。
一つの実施形態において、ポリエステル樹脂は以下の式(1)で表わされる繰り返し構造単位を有する。
式中、R1は芳香族基または脂肪族基であり、R2は脂肪族基、脂環族基、または芳香族基であり、R1およびR2の少なくとも一方に、−SO3Mを有する。R1,R2の詳細はジカルボン酸成分およびグリコール成分に関して後述する。
−SO3Mで表される置換基は、該基を有するジカルボン酸成分(例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸等のアルカリ金属塩、酸ハライド、ならびにこれらのエステル化合物)または該基を有するグリコール成分(例えば1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸ナトリウム)を、対応するグリコール成分またはジカルボン酸成分とともに重縮合させることにより、ポリエステル樹脂中に導入することができる。−SO3M基を有することにより、ポリエステル樹脂に優れた親水性が付与される。
−SO3Mで表される置換基を有するジカルボン酸成分またはグリコール成分は、ポリエステル樹脂を構成する成分の全量に対して0.5〜30モル%の範囲であることが好ましく、1〜20モル%の範囲であることがより好ましく、3〜15モル%の範囲であることが特に好ましい。前記範囲とすることで、ポリエステル樹脂に特に優れた親水性が付与される。
ジカルボン酸成分には、ジカルボン酸のほか該ジカルボン酸の無水物、エステル、酸ハライド、もしくはそれらの組み合わせ等の誘導体であってグリコールと反応してエステル結合を形成するものも含まれる。
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェン酸、ナフタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、イコタン酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタール酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、チオジプロピオン酸等を挙げることができる。これらのジカルボン酸は1種単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのジカルボン酸のうち、反応の容易性、得られる樹脂の耐久性からテレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸およびこれらの組み合わせを用いることが好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸およびこれらの組み合わせを用いることがより好ましい。
グリコール成分には、グリコールのほか該グリコールのジアセテート化合物等のグリコール誘導体であってジカルボン酸成分と反応してエステル結合を形成するものも含まれる。
グリコールとしては、脂肪族ジオール、脂環族ジオールまたは芳香族ジオールが挙げられる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール等のポリエチレングリコール;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール;1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4´−ジヒドロキシビフェノール、4,4´−メチレンジフェノール、4,4´−イソプロピリデンジフェノール、1,5−ジヒドロキシナフタリン、2,5−ジヒドロキシナフタリン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビスフェノールSを挙げることができる。これらのグリコールは1種単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのグリコールのうち、反応の容易性、得られる樹脂の耐久性から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびこれらの組み合わせを用いることが好ましい。
ジカルボン酸とグリコールは、それぞれ1種類を反応させてもよいし、複数種のジカルボン酸またはグリコールと、1種類の対応するグリコールまたはジカルボン酸とを反応させてもよいし、複数種のジカルボン酸と複数種のグリコールとを反応させてもよい。好ましくは複数種のジカルボン酸と複数種のグリコールとを反応させる。一つの実施形態では、ジカルボン酸はテレフタル酸、イソフタル酸またはこれらの組み合わせであり、グリコールはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはこれらの組み合わせである。
本発明のポリエステル樹脂はまた、−COOM’で表される置換基を有していてもよい。
M’としては、水素;Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属;アンモニウムイオン;およびモノエタノールアルカノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン;から選ばれる1種以上を挙げることができる。M’は−SO3Mの上記Mと同じであっても異なっていてもよいが、好ましくは同じである。M’はジカルボン酸成分の重合していない末端の位置に存在し得る。
本発明のポリエステル樹脂は、さらに三価以上の多価カルボン酸成分に由来する構造単位を有していてもよい。すなわち、前述のジカルボン酸成分、グリコール成分、−SO3M基を有するジカルボン酸成分またはグリコール成分とともに、多価カルボン酸を重縮合させたポリエステル樹脂を使用してよい。この場合、多価カルボン酸成分のうちの2つのカルボキシル基は多価カルボン酸成分とグリコール成分とのエステル結合の形成に使用されるが、エステル形成に使用されなかった残りのカルボキシル基は、ポリエステル樹脂のフリーの側鎖の置換基−COOM’となり得る。上記(1)において、本発明のポリエステル樹脂が三価以上の多価カルボン酸成分を有する場合、R1がフリーの側鎖として−COOM’を有し得る。
該多価カルボン酸に由来する−COOM’基(M’は上述の通りである)は、ポリエステル樹脂の水溶性向上に寄与するため、好ましい。−COOM’基は、アルカリ金属化合物やアルカノールアミン、アンモニア等で中和することにより水系溶媒に溶解可能となる。
三価以上の多価カルボン酸成分としては、ヘミメリット酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、トリメジン酸、メロファン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリット酸、等を挙げることができる。
本発明のポリエステル樹脂ならびにその塩は、市販されているものを用いたり、市販されているテレフタル酸、置換ジカルボン酸、グリコール等を原料として用いて合成することができる。各成分はそれぞれ従来公知の一般的な方法によって製造できる。
本発明におけるポリエステル樹脂ならびにその塩を製造する場合、前記成分を反応物として、当該分野における慣用技術により合成できる。合成は通常、ジカルボン酸成分とグリコールのエステル交換反応と、それに続いて行われるエステル重縮合反応とから構成される。反応の任意の時期に触媒として従来公知の触媒(例えば、チタン、アンチモン、マグネシウム、カルシウム等)を添加してもよい。
本発明におけるポリエステル樹脂ならびにその塩の市販品としては、互応化学工業株式会社製 プラスコートZ-221、Z-446、Z-561、RZ-105、RZ-570、高松油脂株式会社製 ペスレジンA-110、東洋紡績株式会社製 バイロナールMD-1200、東亞合成株式会社製 アロンメルトPES-1000シリーズ、PES-2000シリーズを挙げることができる。
本発明に使用されるポリエステル樹脂の分子量(数平均分子量)は10,000〜1,000,000である。塗料剥離用水性プライマー組成物が短時間で塗装器具類の隅部や屈曲部等のような塗料剥離が比較的困難な部位においても、付着または堆積した塗料を容易に剥離する性能を発揮するためには、隅々まで十分な膜厚をもって皮膜される必要があるため、分子量は大きいほどよい。ポリエステル樹脂の分子量の測定方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)、粘度法、光散乱法などが挙げられる。
本発明で使用されるポリエステル樹脂は、上述したジカルボン酸、グリコール、多価カルボン酸以外の他の成分を含んで重縮合したものでもよく、例えばペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジメチロールプロパン等の多官能性化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。かかる他の成分の構造単位は、樹脂全体に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましく、1質量%以下が最も好ましい。
本発明の塗料剥離用水性プライマー組成物は、前述のポリエステル樹脂ならびにその塩と残部に水が含まれる。
本発明の塗料剥離用水性プライマー組成物におけるポリエステル樹脂ならびにその塩が占める割合は特に限定されるものではないが、通常1〜50質量%であり、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。
本発明の塗料剥離用水性プライマー組成物は、成分以外の親水性付与剤、非イオン性界面活性剤等の界面活性剤、レベリング剤、抗菌剤、抗カビ剤、増粘剤、防錆剤等、消泡剤の添加剤を含み得る。これら添加剤としては、従来公知のものを用いることができる。塗料剥離用水性プライマー組成物におけるこれらの添加剤の配合量は、通常0〜10質量%程度であり、好ましくは0.5〜5質量%程度、より好ましくは1〜3質量%程度である。
本発明の塗料剥離用水性プライマー組成物は、被塗装物を塗装器具類により塗装する前に、塗装用器具類の表面に予め処理する。塗装用器具類の表面に浸漬法、噴霧法、シャワー塗布法等によって上記本発明の塗料剥離用水性プライマー組成物を付着させた後、自然乾燥または加熱乾燥(例えば60〜90℃)によって水分を蒸発させることによって塗装用器具類の表面に皮膜を形成させる。
塗装器具類としてはハンガー、治具、スノコ等の塗装用具、塗装装置、塗装ロボットアームおよび塗装ブースの内壁や床部材等を挙げることができる。
塗料剥離用水性プライマー組成物の皮膜の厚さは特に限定はされないが、通常は10〜100μm、好ましくは15〜50μmである。皮膜の厚さが10μm以上であると剥離効果が得られ、塗料が効果的に除去できる。また、100μm以下であると乾燥性や皮膜自体の除去性が良好であり、また、塗料剥離用水性プライマー組成物の皮膜の上に塗料が付着堆積した状態で物理的衝撃が加わったときに塗料はがれ(チッピング)が起こることによる不良品の発生が防止される。
なお、塗料は公知の任意の1つまたは複数の塗料であってもよく、そのような塗料は市販されている。
プライマー組成物の皮膜を表面に有する塗装用器具類を、各々の目的に応じて塗装工程で使用すると、該プライマー組成物の皮膜表面上に塗装膜が形成され、該塗装用器具類は塗料剥離剤を含有する溶液で洗浄処理に付される。塗料剥離剤としては、従来から当該分野において使用されている塗料剥離剤から、付着塗料の種類や付着厚および被処理対象物の材質等に応じて適宜選択すればよい。塗料剥離剤としては、例えば水;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩を含むアルカリ水溶液;ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、フェニルメチルエーテルなどの芳香族エーテル;エタノールアミンなどのアルカノールアミン;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;DMF,DMSO、グリコールエーテル、グリコールアセテート、アニソールなどのアルコキシアリール;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウムなどのアリールスルホン酸塩;およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。一つの実施形態では、塗料剥離剤は水、芳香族アルコール、およびアリールスルホン酸塩を含む中性塗料剥離剤である。別の実施形態では、塗料剥離剤は水、芳香族アルコール、アリールスルホン酸塩、およびアルカリ金属塩を含むアルカリ性塗料剥離剤である。
塗料剥離剤は、アルカリ性タイプ(pH8超)または中性タイプ(pH6〜8)のいずれでもよい。
剥離剤の使用方法としては浸漬して用い、剥離温度としては、5℃〜100℃、好ましくは50℃〜90℃、さらに好ましくは70℃〜90℃である。
本発明の塗料剥離用水性プライマー組成物は、塗装用器具類に付着した未硬化塗膜一般に対して適用できるものである。
以下、本発明を実施例によってさらに説明する。
剥離性能評価
[実施例1〜9および比較例1〜11]
実施例および比較例の塗料剥離用水性プライマー組成物は各種市販のスルホン酸基を有するポリエステル樹脂ならびにその塩もしくはポリエステルカルボン酸ならびにその塩の水分散液に水を加え、不揮発成分を調整して試験に用いた。
[実施例1〜9および比較例1〜11]
実施例および比較例の塗料剥離用水性プライマー組成物は各種市販のスルホン酸基を有するポリエステル樹脂ならびにその塩もしくはポリエステルカルボン酸ならびにその塩の水分散液に水を加え、不揮発成分を調整して試験に用いた。
冷間圧延鋼板(SPCC−SD)の平板テストピース(70mm×50mm×0.8mm)をアセトン脱脂後、#240の紙やすりで研磨し、表1または表2の配合処方によって調整した塗料剥離用水性プライマー組成物に浸漬した。
テストピースを引き上げ、乾燥処理(60℃,60分)することによって表面上に塗料剥離用水性プライマー組成物からなる皮膜を形成させた。このテストピースを、自動車部品塗装用塗料(白色塗料OP-30-P 日本ペイント株式会社製)に浸漬、引き上げることより塗料を塗布し、その後、焼付け(140℃,30分)を行った。焼付け塗装後、50℃に加温した水溶性塗料剥離剤に浸漬し、塗料が完全に剥離除去されるまでの時間を測定した。剥離性能評価の結果を表1および表2に、水溶性塗料剥離剤A,Bの組成を表3に示した。
表1より、本発明のプライマー組成物を用いれば、一般的には剥離しにくい中性の剥離剤を用いても塗料もしくは塗膜の剥離時間が短く、十分な剥離性能を有することが分かる。
Claims (7)
- ジカルボン酸成分およびグリコール成分を主成分として重縮合してなるポリエステル樹脂またはその塩と、水とを含有することを特徴する塗料剥離用水性プライマー組成物において、ポリエステル樹脂が−SO3M(Mは水素、アルカリ金属、アンモニウムイオン、アルカノールアミンのいずれかを示す)で表される置換基を有することを特徴とする塗料剥離用水性プライマー組成物。
- ポリエステル樹脂が−COOM’(M’は水素、アルカリ金属、アンモニウムイオン、アルカノールアミンのいずれかを示す)で表される置換基を有することを特徴とする請求項1に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
- ジカルボン酸成分がテレフタル酸、またはテレフタル酸の無水物、エステル、酸ハライド、もしくはそれらの組み合わせから選択されたテレフタル酸誘導体である、請求項1に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
- ジカルボン酸成分が−SO3Mで表される基を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
- ジカルボン酸成分がテレフタル酸、イソフタル酸またはこれらの組み合わせであり、グリコール成分がエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはこれらの組み合わせである請求項1に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
- 前記ポリエステル樹脂ならびにその塩の濃度が塗料剥離用水性プライマー組成物の質量に対して1〜50質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗料剥離用水性プライマー組成物を塗装前に塗装器具類に塗布し、塗装後に塗料剥離剤を用いて塗装器具類から硬化もしくは未硬化の塗料を除去する塗料の剥離方法。
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