JP2016069330A - 低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬及び治療用組成物 - Google Patents

低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬及び治療用組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2016069330A
JP2016069330A JP2014200397A JP2014200397A JP2016069330A JP 2016069330 A JP2016069330 A JP 2016069330A JP 2014200397 A JP2014200397 A JP 2014200397A JP 2014200397 A JP2014200397 A JP 2014200397A JP 2016069330 A JP2016069330 A JP 2016069330A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gpu
fluorescence
hypoxia
diagnostic agent
eye
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014200397A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6505408B2 (ja
Inventor
慎一 福田
Shinichi Fukuda
慎一 福田
哲郎 大鹿
Tetsuo Oshika
哲郎 大鹿
秀子 永澤
Hideko Nagasawa
秀子 永澤
健介 奥田
Kensuke Okuda
健介 奥田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Tsukuba NUC
Gifu City
Original Assignee
University of Tsukuba NUC
Gifu City
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of Tsukuba NUC, Gifu City filed Critical University of Tsukuba NUC
Priority to JP2014200397A priority Critical patent/JP6505408B2/ja
Priority to PCT/JP2015/077748 priority patent/WO2016052621A1/ja
Publication of JP2016069330A publication Critical patent/JP2016069330A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6505408B2 publication Critical patent/JP6505408B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/395Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins
    • A61K31/40Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having five-membered rings with one nitrogen as the only ring hetero atom, e.g. sulpiride, succinimide, tolmetin, buflomedil
    • A61K31/403Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having five-membered rings with one nitrogen as the only ring hetero atom, e.g. sulpiride, succinimide, tolmetin, buflomedil condensed with carbocyclic rings, e.g. carbazole
    • A61K31/404Indoles, e.g. pindolol
    • A61K31/4045Indole-alkylamines; Amides thereof, e.g. serotonin, melatonin
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K39/395Antibodies; Immunoglobulins; Immune serum, e.g. antilymphocytic serum
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K45/00Medicinal preparations containing active ingredients not provided for in groups A61K31/00 - A61K41/00
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K49/00Preparations for testing in vivo
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N21/00Investigating or analysing materials by the use of optical means, i.e. using sub-millimetre waves, infrared, visible or ultraviolet light
    • G01N21/62Systems in which the material investigated is excited whereby it emits light or causes a change in wavelength of the incident light
    • G01N21/63Systems in which the material investigated is excited whereby it emits light or causes a change in wavelength of the incident light optically excited
    • G01N21/64Fluorescence; Phosphorescence

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Investigating Or Analysing Materials By The Use Of Chemical Reactions (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

【課題】インビボで眼の低酸素領域を直接検出することが可能な診断薬、及び低酸素関連眼疾患の診断と治療を同時に実施することが可能な治療用組成物を提供する。【解決手段】低酸素蛍光プローブを有効成分として含有する、低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬、及び、上記の診断薬と血管新生阻害剤とを有効成分として含有する、低酸素関連眼疾患の治療用組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬及び治療用組成物に関する。
生体組織中の低酸素領域の存在は、各種の眼疾患、癌の悪性化等に関わっていることが知られている。
生体組織中の低酸素領域の検出用試薬としては、2−ニトロイミダゾール系の化合物であるピモニダゾール(pimonidazole)が広く利用されている。ピモニダゾールを用いた低酸素領域の検出は、ピモニダゾールが低酸素状態の細胞に結合することを利用して行う。より具体的には、まず、ピモニダゾールを生体に投与する。すると、ピモニダゾールが低酸素状態の細胞に結合する。続いて、対象組織をホルマリン固定等により固定した標本を作製し、抗ピモニダゾール抗体で染色し、低酸素状態の細胞に結合したピモニダゾールを検出する。これにより、低酸素領域を観察することが可能になる。しかしながら、ピモニダゾールを用いて低酸素領域を検出するためには、対象組織を固定する必要があり、インビボで低酸素領域を検出することはできない。
そこで、インビボで低酸素領域を検出することができる蛍光プローブの開発が行われている。例えば、特許文献1には、近赤外蛍光色素と、低酸素領域で還元的代謝により活性化されて求核性の生体分子と結合する低酸素結合部位と、リンカー結合とからなることを特徴とする低酸素領域イメージング用近赤外蛍光プローブが記載されている。
低酸素関連眼疾患における低酸素状態を推測する方法として、現在、蛍光眼底造影による間接的な評価が行われている。蛍光眼底造影は、蛍光物質であるフルオレセインを点滴で患者に投与して、眼底カメラで眼底の血管を撮影する方法である。この方法は、50年以上の歴史のある古い検査方法であるが、その有用性により眼科診療において欠かすことのできないものとなっている。
同様の蛍光眼底造影方法として、蛍光物質であるインドシアニングリーン(ICG)を点滴で患者に投与して、眼底カメラで眼底の血管を撮影する方法が知られている。インドシアニングリーンは近赤外領域の蛍光を発する蛍光物質であることから、インドシアニングリーンの蛍光と生体が発する自家蛍光との区別が容易である。また、近赤外光は生体組織透過性が高いことから、インドシアニングリーンにより、脈絡膜等の組織のより深い領域を観察することが可能である。
特開2010−203966号公報
しかしながら、蛍光眼底造影では、低酸素関連眼疾患が末期にまで進行し、毛細血管の閉塞が発生して初めて無血管野や新生血管が観察され、低酸素領域の存在を推測評価することが可能となる。このため、低酸素関連眼疾患の初期〜中期の低酸素領域を直接評価することはできない。また、蛍光眼底造影では、約20万人に1人の割合でアナフィラキシーショックにより死亡するという重篤な副作用が存在することが大きな問題となっている。
また、特許文献1に記載された低酸素領域イメージング用近赤外蛍光プローブは、蛍光のon−off機能を持たず常に発光していることから、バックグランドが高く、シグナル検出までに時間がかかる場合があった。
このような背景のもと、本発明は、インビボで眼の低酸素領域を直接検出することが可能な診断薬を提供することを目的とする。本発明はまた、低酸素関連眼疾患の診断と治療を同時に実施することが可能な治療用組成物を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
[1]低酸素蛍光プローブを有効成分として含有する、低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬。
[2]硝子体注射用である、[1]に記載の診断薬。
[3]前記低酸素蛍光プローブが下記式(1)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の診断薬。
[式(1)中、Rはそれぞれ独立にH、COOH、SO 、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、Rは存在しないか又は炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を表し、Rは電子吸引性置換基を表し、Rはアルキル基、−(CHCOO、−(CHSO 、又は−(CHを表し、Xは存在しないか又はCl、Br、I、若しくはPF6−を表し、nは1〜4の整数を表し、Aは1〜6の整数を表す。]
[4]前記低酸素蛍光プローブが下記式(2)で表される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の診断薬。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の診断薬と、血管新生阻害剤とを有効成分として含有する、低酸素関連眼疾患の治療用組成物。
[6]前記血管新生阻害剤が血管内皮増殖因子(VEGF)捕捉物質である、[5]に記載の治療用組成物。
[7]前記VEGF捕捉物質が抗VEGF抗体である、[6]に記載の治療用組成物。
本発明により、インビボで眼の低酸素領域を直接検出することが可能な診断薬を提供することができる。また、低酸素関連眼疾患の診断と治療を同時に実施することが可能な治療用組成物を提供することができる。
(a)は、終濃度0.5、1.0及び1.5μMの低酸素蛍光プローブ(GPU−327)の存在下、及び酸素濃度1%、5%及び20%の環境下で培養した血管内皮前駆細胞(EPC)における蛍光を検出した写真である。(b)〜(d)は、(a)の蛍光強度をグラフにしたものである。(e)は、終濃度0.5、1.0及び1.5μMのGPU−327の存在下、及び酸素濃度1%、5%及び20%の環境下で培養した臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の蛍光を検出した写真である。(f)〜(h)は、(e)の蛍光強度をグラフにしたものである。 (a)は、VEGFのmRNAの発現量を示すグラフである。(b)は、HIF−1αタンパク質及びラミンBタンパク質の発現を検出したウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。(c)は、(b)のタンパク質発現量をグラフにしたものである。 (a)及び(b)は、皮弁虚血マウスモデルを示す写真である。(c)は、蛍光観察の結果を示す写真である。 (a)は、インビボでGPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。(b)は、(a)で観察した眼の網膜の血管構造をインビトロで観察した結果を示す写真である。(c)は、(b)と同一のサンプルにおける、GPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。(d)は、(b)及び(c)の蛍光像を統合した写真である。(e)は、(a)〜(d)と同一の実験方法で作製したモデルの眼の横断切片をインビトロで観察した結果を示す写真である。(f)は、(e)と同一のサンプルにおける、GPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。(g)は、(e)及び(f)の蛍光像を統合した写真である。 (a)は、インビボでGPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。(b)は、(a)で観察した眼の網膜の血管構造をインビトロで観察した結果を示す写真である。(c)は、(b)と同一のサンプルにおける、GPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。(d)は、(b)及び(c)の蛍光像を統合した写真である。 (a)は、眼の横断切片をインビトロで観察した結果を示す写真である。(b)は、(a)と同一のサンプルにおける、GPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。(c)は、(a)及び(b)の蛍光像を統合した写真である。 (a)及び(b)は、蛍光観察の結果を示す写真である。(c)は、(b)において検出された蛍光強度をグラフにしたものである。 (a)、(b)及び(c)は、網膜静脈閉塞から2日後、1週間後及び2週間後に眼底カメラを用いて眼底を撮影した写真である。(d)、(e)及び(f)は、網膜静脈閉塞から2日後、1週間後及び2週間後に眼底カメラを用いてインビボでGPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。 蛍光眼底造影の結果を示す写真である。 (a)は、インビボでGPU−327の蛍光を検出した写真である。(b)は(a)で観察した眼の眼底を撮影した写真である。(c)は、(a)で観察した眼の網膜の血管構造をインビトロで観察した結果を示す写真である。(d)は、(c)と同一のサンプルにおける、ピモニダゾールによる染色の結果を示す写真である。(e)は、(c)及び(d)の蛍光像を統合した写真である。(c)、(d)、(e)における矢印は、網膜静脈の閉塞部位を示す。 (a)はPBS又はGPU−327の投与から60日後の網膜電図を示すグラフである。(b)は、各刺激輝度において測定されたa波について、左眼の振幅に対する右眼の振幅の比を示すグラフである。(c)は、各刺激輝度において測定されたb波について、左眼の振幅に対する右眼の振幅の比を示すグラフである。(d)はGPU−327投与群の眼の光学顕微鏡写真である。(e)はPBS投与群の眼の光学顕微鏡写真である。
[低酸素関連眼疾患の診断薬]
1実施形態において、本発明は、低酸素蛍光プローブを有効成分として含有する、低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬を提供する。
従来、インビボで眼の低酸素領域を可視化する手法は存在しなかった。これに対し、発明者らは、低酸素蛍光プローブを眼に適用することにより、インビトロ及びインビボの双方において、眼の低酸素領域を検出し、低酸素関連眼疾患の診断を行うことが可能であることを初めて明らかにした。
本実施形態の診断薬によれば、インビトロだけでなく、インビボにおいても眼の低酸素領域を直接検出することができる。これにより、従来できなかった、低酸素関連眼疾患の初期〜中期の低酸素領域の直接評価を実現することができる。
例えば若年者糖尿病網膜症の場合、網膜症の活動性が高く、進行も早いため、治療のタイミングを逃すと新生血管緑内障等の重篤な合併症を生じ、視力予後が非常に不良となる。このような疾患においては、適切な活動性評価、つまり低酸素状態の評価が非常に重要である。疾患の初期〜中期の低酸素領域の状態を直接評価することにより、より低侵襲の早期治療を行うことができる。
また、近年、失明の主要な原因である緑内障や強度近視による黄斑変性症等の疾患と、血流の低下との関連が指摘されている。本実施形態の診断薬を使用して眼の低酸素領域をインビボで観察することにより、これらの疾患の原因究明にも寄与できることが期待される。
(低酸素蛍光プローブ)
低酸素蛍光プローブとは、常酸素環境下と低酸素環境下において蛍光特性が変化する化合物である。低酸素蛍光プローブとしては、ヒトや動物に対する毒性が許容範囲内であれば特に限定されず、例えば、低酸素条件下の生体内における還元代謝によって蛍光特性が大きく変化する化合物が挙げられる。
低酸素蛍光プローブが発する蛍光の波長は特に限定されないが、近赤外領域(波長650〜1000nm)の蛍光であることが好ましい。近赤外蛍光は、生体が発する自家蛍光との区別が容易である。また、近赤外光は、生体組織への透過性が高く、生体内物質による吸収も限られている。
近赤外蛍光を発する低酸素蛍光プローブとしては、例えば、シアニン系色素誘導体、BODIPY系色素誘導体等が挙げられる。
低酸素蛍光プローブの低酸素条件下における蛍光特性の変化は、可逆的であっても不可逆的であってもよい。低酸素蛍光プローブの蛍光特性の変化が可逆的である場合には、低酸素環境が改善され、常酸素環境に近づくと蛍光特性が変化することから、酸素濃度の経時的な変化をモニターすることも可能になる。
より具体的な低酸素蛍光プローブとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
[式(1)中、Rはそれぞれ独立にH、COOH、SO 、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、Rは存在しないか又は炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を表し、Rは電子吸引性置換基を表し、Rはアルキル基、−(CHCOO、−(CHSO 、又は−(CHを表し、Xは存在しないか又はCl、Br、I、若しくはPF6−を表し、nは1〜4の整数を表し、Aは1〜6の整数を表す。]
上記の電子吸引性置換基としては、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化ヘテロアリール基、含窒素ヘテロアリール基、カルボニル基、スルホニル基、ホスホリル基、アルキニル基等が挙げられる。
低酸素蛍光プローブは、例えば、下記式(2)で表される化合物(以下、「GPU−327」という場合がある。)であってもよい。
GPU−327は蛍光をほとんど示さないが、生体に投与すると、低酸素領域において還元的代謝を受けて下記式(3)に示す化合物に変化して活性化され、近赤外領域の蛍光を発するようになる。また、下記式(3)に示す化合物は、タンパク質等の求核性の生体分子と結合し、低酸素領域にしばらく留まるため、低酸素領域を可視化することができる。下記式(3)に示す化合物は、一定期間経過後、代謝により体外に排泄される。
[式(3)中、Rはそれぞれ独立にNO、NH、NO又はNHOHを表す。但し、Rの全てが同時にNOになることはない。]
後述するように、発明者らは、GPU−327により、眼の低酸素領域をインビボで可視化することができることを明らかにした。また、GPU−327を生体に投与しても安全であることを確認した。
GPU−327を局所投与する場合の投与量は、例えば0.1〜1000μgであってよい。特に、GPU−327を硝子体注射により投与する場合の投与量は、例えば0.1〜50μgであってよく、例えば0.1〜10μgであってよい。また、GPU−327を全身投与する場合の投与量は、例えば1〜500mg/60kg体重であってよく、例えば1〜200mg/60kgであってよい。
(常酸素領域及び低酸素領域)
本明細書において、常酸素領域とは、酸素濃度約20%の通常の大気中において、培地中で培養中の細胞が接している酸素の濃度に相当する濃度の酸素が存在する領域を意味する。そして、低酸素領域とは、常酸素領域よりも酸素の濃度が少ない領域を意味する。いいかえると、「低酸素領域」とは、酸素の存在量が、細胞の生存又は細胞の健全な機能に必要な量よりも少ない領域を意味する。
(低酸素関連眼疾患)
本実施形態の診断薬で診断可能な低酸素関連眼疾患としては、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、網膜血管閉塞症、黄斑変性症、緑内障等が挙げられる。
(剤型及び投与方法)
本実施形態の診断薬は、全身投与してもよく、局所投与してもよい。局所投与の場合には、必要な診断薬の量がわずかで済み、アナフィラキシーショック等の副作用の危険性も低減することができる。局所投与の例としては、例えば硝子体注射が挙げられる。すなわち、本実施形態の診断薬は、硝子体注射用であってもよい。後述するように発明者らは、診断薬を硝子体注射で投与することにより、眼の低酸素領域を検出できることを明らかにした。
本実施形態の診断薬は、薬学的に許容される担体を混合した診断用組成物であってもよい。診断薬又は診断用組成物は、例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の形態で経口的に、あるいは、注射剤、坐剤、皮膚外用剤等の形態で非経口的に投与することができる。
薬学的に許容される担体(添加剤)としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、乳化剤、安定剤、希釈剤、増粘剤、湿潤剤、pH調整剤、注射剤用溶剤等が挙げられる。
賦形剤としては、有機系賦形剤、無機系賦形剤等が挙げられる。有機系賦形剤としては、乳糖、白糖等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース等のセルロース誘導体;アラビアゴム等が挙げられる。無機系賦形剤としては、硫酸カルシウム等の硫酸塩が挙げられる。
結合剤としては、上記の賦形剤、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
崩壊剤としては、上記の賦形剤;クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等のデンプン又はセルロースの誘導体;架橋ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
滑沢剤としては、タルク;ステアリン酸;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイロウ等のワックス類;硫酸ナトリウム等の硫酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等のラウリル硫酸塩;上記の賦形剤におけるデンプン誘導体等が挙げられる。
乳化剤としては、ベントナイト、ビーガム等のコロイド性粘土;ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウム等の陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤;ステアリン酸ポリグリセリル−10、ジステアリン酸ポリグリセリル−10、トリステアリン酸ポリグリセリル−10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル−10等の(ポリ)グリセリル脂肪酸エステル界面活性剤等が挙げられる。
安定剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール等のアルコール類;フェノール、クレゾール等のフェノール類が挙げられる。
希釈剤としては、水、エタノール、プロピレングリコール等が挙げられる。
増粘剤としては、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カラギナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、濃グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、炭酸やそれらのカリウム塩、ナトリウム塩又はアンモニウム塩、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
注射剤用溶剤としては、水、エタノール、グリセリン等が挙げられる。
本実施形態の診断薬又は診断用組成物は、低酸素蛍光プローブを有効成分として含有する。ここで、「有効成分として含有する」とは、本実施形態の診断薬又は診断用組成物が、本願発明の効果を奏する程度に低酸素蛍光プローブを含有していれば特に限定されないが、例えば、診断薬又は診断用組成物中に含まれる低酸素蛍光プローブの含有量が、0.001〜20質量%であることを意味し、例えば0.01〜10質量%であることを意味する。
診断薬又は診断用組成物の投与方法は特に限定されず、患者の症状、体重、年齢、性別等に応じて適宜決定すればよい。例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等は経口投与される。また、注射剤は、単独で、又はブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じて、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、腹腔内又は硝子体投与される。坐剤は直腸内投与される。皮膚外用剤は、患部に塗布、貼付又はスプレーされる。
診断薬又は診断用組成物の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、経口投与の場合には、投与単位形態あたり1〜500mg/60kg体重の有効成分(低酸素蛍光プローブ)を投与すればよい。また、注射剤で全身投与する場合には、例えば、投与単位形態あたり1〜500mg/60kg体重の有効成分を投与すればよい。また、硝子体注射により投与する場合には、投与単位形態あたり、例えば1〜50μgの有効成分を投与すればよく、例えば1〜10μgの有効成分を投与すればよい。また、坐剤の場合には、例えば、投与単位形態あたり1〜500mg/60kg体重の有効成分を投与すればよい。また、皮膚外用剤の場合には、例えば、投与単位形態あたり1〜500mg/60kg体重の有効成分を投与すればよい。
[低酸素関連眼疾患の治療用組成物]
1実施形態において、本発明は、上記の診断薬又は診断用組成物と、血管新生阻害剤とを有効成分として含有する、低酸素関連眼疾患の治療用組成物を提供する。
本実施形態の治療用組成物を患者に投与することにより、低酸素関連眼疾患の診断と治療を同時に実施することができる。
また、上述したように、本実施形態の治療用組成物が含有する低酸素蛍光プローブの低酸素条件下における蛍光特性の変化は、可逆的であっても不可逆的であってもよい。低酸素蛍光プローブの蛍光特性の変化が可逆的である場合には、低酸素環境が改善され、常酸素環境に近づくと蛍光特性が変化することから、酸素濃度の経時的な変化をモニターすることができる。したがって、当該低酸素蛍光プローブの蛍光を観察することにより、患者の眼の低酸素環境が改善したか否か、すなわち、治療効果が奏されたか否かを評価することもできる。
(血管新生阻害剤)
血管新生阻害剤としては、VEGF捕捉物質、VEGF受容体アンタゴニスト、VEGF受容体キナーゼ阻害剤、アンジオスタチン、エンドスタチン、フマギリン、フマギロール誘導体、血管新生抑制ステロイド等が挙げられる。
VEGF捕捉物質としては、例えば、ルセンティス(ラニビズマブ)、アバスチン(ベバシズマブ)等の抗VEGF抗体;マクジェン(ペガプタニブナトリウム)等のアプタマー;アイリーア等の融合タンパク質等が挙げられる。
フマギロール誘導体としては、例えば、O−モノクロロアセチルカルバモイルフマギロール、O−ジクロロアセチルカルバモイルフマギロール等が挙げられる。
(剤型及び投与方法)
本実施形態の治療用組成物は、全身投与してもよく、局所投与してもよい。局所投与の場合には、必要な治療用組成物の量がわずかで済み、アナフィラキシーショック等の副作用の危険性も低減することができる。局所投与の例としては、例えば硝子体注射が挙げられる。すなわち、本実施形態の治療用組成物は、硝子体注射用であってもよい。
本実施形態の治療用組成物の剤型及び投与方法としては、上記実施形態の診断薬又は診断用組成物と同様のものが挙げられる。また、本実施形態の治療用組成物の投与量は、含有する低酸素蛍光プローブ及び血管新生阻害剤の効果が奏される範囲において適宜設定することができる。
1実施形態において、本発明は、低酸素蛍光プローブを眼に投与する工程を備える、眼の低酸素領域をインビボで検出する方法を提供する。本実施形態の方法において、低酸素蛍光プローブの投与は、硝子体注射により行われてもよい。また、低酸素蛍光プローブとしては、上述したものと同様の化合物を使用することができる。
1実施形態において、本発明は、低酸素蛍光プローブを眼に投与する工程を備える、低酸素関連眼疾患をインビボで診断する方法を提供する。本実施形態の方法において、低酸素蛍光プローブの投与は、硝子体注射により行われてもよい。また、低酸素蛍光プローブとしては、上述したものと同様の化合物を使用することができる。
1実施形態において、本発明は、低酸素蛍光プローブ及び血管新生阻害剤を眼に投与する工程を備える、低酸素関連眼疾患の治療方法を提供する。本実施形態の治療方法において、低酸素蛍光プローブとしては、上述したものと同様の化合物を使用することができる。また、血管新生阻害剤としては、上述したものと同様のものを使用することができる。
1実施形態において、本発明は、低酸素関連眼疾患の診断のための低酸素蛍光プローブを提供する。本実施形態において、低酸素蛍光プローブとしては、上述したものと同様の化合物を使用することができる。
1実施形態において、本発明は、低酸素関連眼疾患の治療のための組成物であって、低酸素蛍光プローブ及び血管新生阻害剤を有効成分として含有する組成物を提供する。本実施形態の組成物において、低酸素蛍光プローブとしては、上述したものと同様の化合物を使用することができる。また、血管新生阻害剤としては、上述したものと同様のものを使用することができる。
1実施形態において、本発明は、低酸素関連眼疾患の診断薬を製造するための低酸素蛍光プローブの使用を提供する。本実施形態において、低酸素蛍光プローブとしては、上述したものと同様の化合物を使用することができる。
1実施形態において、本発明は、低酸素関連眼疾患の治療用組成物を製造するための、低酸素蛍光プローブ及び血管新生阻害剤の使用を提供する。本実施形態において、低酸素蛍光プローブとしては、上述したものと同様の化合物を使用することができる。また、血管新生阻害剤としては、上述したものと同様のものを使用することができる。
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[実験例1]
(低酸素蛍光プローブの合成)
下記式(2)で表される低酸素蛍光プローブ(以下、「GPU−327」という場合がある。)を合成した。
GPU−327は、下記反応スキーム(I)にしたがって合成した。以下に各合成ステップの詳細を説明する。なお、下記の説明において1〜9の数字が付された各化合物は、反応スキーム(I)において1〜9の数字が付された各化合物に対応する。
(3,5−Dinitrobenzyl alcohol(2)の合成)
窒素雰囲気下に3,5−ジニトロ安息香酸(1,3.19g,15.0mmol)の無水THF溶液(25mL)に氷冷下撹拌しつつ0.95Mボラン−THF錯体のTHF溶液(20.0mL,19.0mmol)を20分かけて注意深く滴下した。氷冷下更に90分撹拌後、室温にて更に22時間撹拌した。水:酢酸(1:1,1.0mL)を注意深く反応混合物に滴下して反応を停止させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)及び水(10mL)を更に加えたのちにクロロホルム(30mL×3)で抽出を行った。溶媒を減圧溜去後、オレンジ色の固体が得られ、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル:n−ヘキサン=3:7)にて精製し、淡黄色固体の化合物2(2.47g,83%)を得た。H−NMR(CDCl,400MHz)δ:8.97(s,1H),8.59(s,2H),4.97(d,J=5.3Hz,2H),2.18(t,J=5.3Hz,1H).
(3,5−Dinitrobenzyl bromide(3)の合成)
3,5−ジニトロベンジルアルコール(2,1.97g,9.94mmol)のクロロホルム(20mL)溶液に、三臭化リン(1.7mL,17.9mmol)のクロロホルム(7.3mL)溶液を15分間かけて滴下し、その後塩化カルシウムによる防湿下に2時間加熱還流を行った。更に16.5時間室温で撹拌後、水(30mL)を反応混合物に注意深く加え、クロロホルム(35mL×6)で抽出を行った。有機層をまとめて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧溜去した。得られた黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル:n−ヘキサン=5:95〜20:80)にて精製し、淡黄色結晶の化合物3(2.25g,87%)を得た。m.p.94.0−95.5°C;H−NMR(CDCl,400MHz)δ:8.99(t,J=2.0Hz,1H),8.59(d,J=2.0Hz,2H),4.61(s,2H).
(3,5−Dinitrobenzyl iodide(4)の合成)
3,5−ジニトロベンジルブロミド(3,2.92g,11.2mmol)のアセトン(75mL)溶液に10%(w/w)ヨウ化ナトリウムのアセトン溶液(43.9mmol,75.0mL)を撹拌しながら75分かけて加え、更に4時間室温にて撹拌した。水(80mL)を反応混合物に加え、更にクロロホルム(80mL×3)にて抽出を行った。まとめた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。更に溶媒を減圧溜去して淡黄色固体の化合物4(3.39g,98%)を得た。m.p.90.0−93.0°C;H−NMR(CDCl,400MHz)δ:8.93(t,J=2.1Hz,1H),8.55(d,J=2.2Hz,2H),4.57(s,2H).
(5−Methoxy−2,3,3−trimethyl−3H−indole(6)の合成)
イソプロピルメチルケトン(0.64mL,5.97mmol)と4−メトキシフェニルヒドラジン塩酸塩(5,1.05g,6.01mmol)のエタノール(25.7mL)溶液を3時間加熱還流した。室温まで放冷後、溶媒を減圧溜去した。残渣をクロロホルム(40mL)に溶解し、水(30mL×2)で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧溜去した。茶色半固体の化合物6(1.05g,93%)を得た。H−NMR(CDCl,400MHz,)δ:7.43(d,J=8.2Hz,1H),6.85−6.80(m,2H),3.83(s,3H),2.24(s,3H),1.29(6H,s).
(1−(3,5−Dinitrobenzyl)−5−methoxy−2,3,3−trimethyl−3H−indolium iodide(7)の合成)
5−メトキシ−2,3,3−トリメチル−3H−インドール(6,189.3mg,1.00mmol)と3,5−ジニトロベンジルヨージド(4,462.0mg,1.50mmol)の無水THF(6.0mL)溶液を窒素雰囲気下に22時間加熱還流した。室温まで放冷後、生じた沈殿を濾取し、得られた固体をアセトン(3mL×3)及びジエチルエーテル(3mL)にて洗浄した。オレンジ色固体の化合物7(375.4mg,75%)を得た。H−NMR(CDCN,400MHz)δ:8.92(t,J=2.2Hz,1H),8.47(d,J=1.9Hz,2H),7.54(d,J=9.2Hz,1H),7.34(d,J=2.4Hz,1H),7.05(dd,J=8.9,2.7Hz,1H),5.84(s,2H),3.88(s,3H),2.80(s,3H),1.62(s,6H);13C−NMR(CDCN:CDOD:CDCl,125MHz,)δ:196.1,160.9,148.0,143.2,134.5,132.9,126.8,118.2,115.7,114.2,108.4,55.0,54.2,49.0,21.2;HRMS(ESI):Calcd for C1920[M−I]=370.1403,Found,370.1384.
(5−Methoxy−1,2,3,3−tetramethyl−3H−indolium iodide(8)の合成)
5−メトキシ−2,3,3−トリメチル−3H−インドール(6,193.2mg,1.02mmol)をヨウ化メチル(4.0mL)に溶解し、2時間加熱還流を行った後室温まで放冷した。生じた沈殿をn−ヘキサンにて処理して濾取し、得られた固体をn−ヘキサン(3mL×2)にて洗浄し、減圧乾燥を行って茶色粉末8(319.0mg,94%)を得た。H−NMR(CDCl,400MHz)δ:7.59(d,J=9.2Hz,1H),7.06−7.02(m,2H),4.23(s,3H),3.90(s,3H),3.04(s,3H),1.65(s,6H).
(5−Methoxy−1,3,3−trimethyl−2−{6−(N−phenylacetamido)hexa−1,3,5−trienyl}−3H−indolium iodide(9)の合成)
グルタコンアルデヒド・ジアニール塩酸塩(57.1mg,0.201mmol)、塩化アセチル(56.6μL,0.797mmol)及び無水酢酸(0.2mL)の混合物を110℃にて加熱し、ここに5−メトキシ−1,2,3,3−テトラメチル−3H−インドリウムヨージド(8,30.1mg,0.0909mmol)の無水酢酸(2.0mL)溶液を滴下し、さらに30分撹拌した。溶媒を50℃以下にて減圧溜去し、得られた残渣を塩化メチレン(0.4mL)に溶解し、ジエチルエーテル(100mL)に激しく撹拌しつつ加えた。生じた沈殿を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(塩化メチレン:n−ヘキサン:メタノール=20:4:0.5〜20:4:4)により精製し、赤色個体として化合物9(109.2mg)を定量的に得た。H−NMR(CDCl,400MHz)δ:8.14(d,J=13.8Hz,1H),7.73(dd,J=15.1,11.4Hz,1H),7.63−7.50(m,3H),7.44(s,1H),7.41(d,J=7.6Hz,1H),7.19(dd,J=8.0,1.5Hz,2H),7.11(br t,J=12.7Hz,1H),7.01(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),6.98(d,J=2.4Hz,1H),6.81(dd,J=14.5,11.2Hz,1H),5.38(dd,J=13.7,11.4Hz,1H),4.18(s,3H),3.89(s,3H),1.97(s,3H),1.71(s,6H);13C−NMR(CDCl,100MHz)δ:178.4,169.2,160.9,153.7,149.8,144.6,140.1,137.9,134.8,130.6,129.9,129.7,128.1,115.2,114.5,113.5,113.4,108.6,56.1,51.4,35.6,27.0,23.3;HRMS(ESI):Calcd for C2629[M−I]=401.2229,Found,401.2248.
(2−[7−{1−(3,5−Dinitrobenzyl)−5−methoxy−3,3−dimethylindolin−2−ylidene}hepta−1,3,5−trienyl]−5−methoxy−1,3,3−trimethyl−3H−indolium iodide(GPU−327)の合成)
化合物9(69.6mg,0.132mmol),無水酢酸ナトリウム(16.4mg,0.200mmol)及び1−(3,5−ジニトロベンジル)−5−メトキシ−2,3,3−トリメチル−3H−インドレニウムヨージド(7,49.7mg,0.0999mmol)をエタノール(10mL)に加え、アルゴン雰囲気下で45分間加熱還流した。溶媒を減圧溜去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(塩化メチレン:n−ヘキサン:メタノール=20:4:0.3〜20:4:0.8)及びODSフラッシュクロマトグラフィ(水:アセトニトリル=60:40〜36:64)により精製し、青色粉末としてGPU−327(13.8mg,18%)を得た。H−NMR(CDOD,400MHz)δ:8.92(t,J=2.0Hz,1H),8.44(d,J=1.9Hz,2H),7.97(br s,1H),7.66(br s,1H),7.42(br s,1H),7.39(d,J=8.1Hz,2H),7.19(d,J=2.2Hz,1H),7.08(d,J=2.0Hz,1H),7.03(dd,J=8.8,2.1Hz,1H),6.93(d,J=8.2Hz,1H),6.83(dd,J=8.6,2.5Hz,1H),6.51(br t,J=14.4Hz,2H),6.31(br s,1H),5.87(d,J=13.0Hz,1H),5.38(br s,2H),3.87(s,3H),3.81(s,3H),3.73(s,3H),1.76(s,6H),1.70(s,6H);13C−NMR(CDOD,125MHz)δ:177.1,167.0,161.2,158.5,155.6,154.6,150.3,146.9,145.3,142.5,142.0,137.6,137.1,128.0,127.7,126.8,118.9,115.3,114.4,114.3,110.6,110.2,109.7,108.9,101.6,79.5,56.5,56.4,51.8,46.1,32.6,28.6,27.3;HRMS(ESI):Calcd for C3739[M−I]=635.2864 Found,635.2875.
[実験例2]
(GPU−327によるEPC及びHUVECの低酸素領域の可視化)
GPU−327の存在下で血管内皮前駆細胞(EPC)及び臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を培養し、GPU−327の低酸素選択性を検討した。
EPCは、臍帯血から単離し、10%ウシ胎児血清(FBS)及び塩基性線維芽細胞増殖因子(b−FGF)を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM培地)中で培養した。HUVECはキャンブレックス社より購入し、説明書にしたがって培養した。
EPC及びHUVECの培地に、終濃度0.5、1.0及び1.5μMのGPU−327を添加し、酸素濃度1%、5%及び20%の環境下で6時間培養した。続いて、リン酸緩衝液(PBS)で各細胞を洗浄し、結合しなかったGPU−327を除去した。
続いて、CCDカメラ(型式「H6741CE」、Tucsen社)及びICG用蛍光フィルター(オメガオプティカル社)を取り付けた蛍光顕微鏡(型式「BX51」、オリンパス社)を用いてGPU−327の蛍光を検出した。
結果を図1に示す。図1(a)は、各条件下のEPCにおける蛍光を検出した写真である。図1(b)〜(d)は、図1(a)の蛍光強度をグラフにしたものである。図1(e)は、各条件下のHUVECにおける蛍光を検出した写真である。図1(f)〜(h)は、図1(e)の蛍光強度をグラフにしたものである。図1(b)〜(d)及び(f)〜(h)中の「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。データは、スチューデントのt検定(Student’s t test)及び対応のあるt検定(Paired t test)を用いて解析した。複数の群を比較する場合、一元配置分散分析(one−way ANOVA)及びBonferroniの多重比較を使用した。以下、全ての実験例において、統計学的解析は、ソフトウエア(商品名「StatView ver.5.0」、SAS社)を使用して行った。グラフにおいて、y軸のエラーバーは標準偏差を示す。
その結果、常酸素条件下(酸素濃度20%)と低酸素条件下(酸素濃度5%又は1%)におけるGPU−327の蛍光強度に有意差があることが確認された。この結果は、GPU−327が低酸素領域を検出可能であることを示す。
[実験例3]
(EPC及びHUVECにおけるVEGF及びHIF−1αの発現レベルの測定)
実験例2の各酸素条件下で培養したEPC及びHUVECにおける血管内皮増殖因子(VEGF)及び低酸素誘導因子(HIF)−1αの発現レベルを測定した。VEGFの発現量は定量的RT−PCRにより測定した。より具体的には、まず、RNeasy Mini Kit(キアゲン社)を用いて各細胞から全RNAを抽出した。続いて、ReverTra−Plus(商標)(東洋紡社)を用いて全RNAからcDNAを合成し、定量的RT−PCRの鋳型に使用した。VEGF遺伝子増幅用プライマーとして、センスプライマー(5’−AGATGAGCTTCCTACAGCACAAC−3’、配列番号1)及びアンチセンスプライマー(5’−AGGACTTATACCGGGATTTCTTG−3’、配列番号2)を使用した。HIF−1αの発現量は、ウエスタンブロッティングにより測定した。
各細胞の核抽出物各30μgをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分離し、PVDF膜に転写した。続いて、1次抗体にウサギ抗HIF−1α抗体(Novus社)を使用し、2次抗体にセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ウサギIgG(インビトロジェン社)を使用して転写膜を染色し、enhanced chemiluminescence(ECL)システム(GEヘルスケア社)で検出した。対照として、ラミンBタンパク質を検出した。ラミンBタンパク質の検出は、1次抗体にヤギ抗ラミンB抗体(サンタクルーズ社)を使用し、2次抗体にHRP標識ウサギ抗ヤギIgG(インビトロジェン社)を使用して行った。
結果を図2に示す。図2(a)は、各細胞におけるVEGFのmRNAの発現量を示すグラフである。図2(b)は、各細胞におけるHIF−1αタンパク質及びラミンBタンパク質の発現を検出したウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。図2(c)は、図2(b)のタンパク質発現量をグラフにしたものである。図2(a)、図2(c)中の「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。
その結果、HUVECと比較して、EPCは低酸素条件に強く応答し、低酸素条件下でVEGF遺伝子発現量及びHIF−1αタンパク質発現量が有意に増加したことが明らかとなった。
一方、HUVECは、低酸素条件に対する応答が弱かったにもかかわらず、実験例2においては、低酸素条件でGPU−327の蛍光強度の有意な増加が認められた。この結果は、GPU−327が、VEGFやHIF−1αの発現を直接検出するものではなく、低酸素条件を検出するものであることを示す。
[実験例4]
(GPU−327の皮弁虚血マウスモデルへの適用)
GPU−327が、低酸素領域を正確に検出できることを確認し、GPU−327を眼以外の領域への適用可能性を検討することを目的として、皮弁虚血マウスモデルを用いた検討を行った。
図3(a)及び(b)は、皮弁虚血マウスモデルを示す写真である。図3(a)に示すように、半島形の切り込み(3cm×2cm)をマウスの背表面に作製した。これにより、切り込みの1方側のみに血液循環が存在し、虚血勾配が生じる。切り込み作製の2日後のマウスに、尾静脈投与によりGPU−327を投与し、ヒト用の眼底カメラ(型式「RC−2」、コーワ社)を用いてGPU−327の蛍光を観察した。
このモデルでは、虚血組織において酸素圧の勾配が生じる。皮弁の尾側の領域は、皮弁の頭側の領域の1/5の酸素圧となる。したがって、皮弁の尾側の縁の領域は最も酸素圧が低いため、GPU−327の蛍光が最も強くなると予想された。
図3(b)は、蛍光フィルター無しで撮影した写真であり、図3(c)は、蛍光フィルターを使用した蛍光像を示す写真である。その結果、GPU−327が、低酸素領域を正確に検出できることが確認された。しかしながら、上記の予想に反し、GPU−327の蛍光が最も強かったのは、皮弁の中央部分であった。この結果は、GPU−327が皮弁の尾側の縁の領域まで到達できていないことによると考えられた。
[実験例5]
(GPU−327の網膜動脈閉塞マウスモデルへの適用)
GPU−327を網膜動脈閉塞マウスモデルに適用し、低酸素領域を正確に検出できるか否かを検討した。
マウス尾静脈にローズベンガルを投与し、レーザー光を網膜動脈に照射することにより、網膜動脈を閉塞させて網膜内に局所的な低酸素状態を作製することができる。この方法により、網膜動脈閉塞マウスモデルを作製した。
より具体的には、まず、マウスを麻酔し、瞳を拡張させた。続いて、40mg/kgのローズベンガル(ナカライテスク社)を尾静脈内投与した後に、角膜にガラスカバーを載せ、スリットランプ クリプトンレーザー デリバリーシステム(型式「MC−7000」、ニデック社)を用いて、レーザー光を照射し、網膜動脈を閉塞させた。ローズベンガルの最大ピーク吸収波長は550nmである。レーザースポットのサイズは約50μmであった。レーザーパワーは約50mWであった。レーザーパルスの間隔は3秒間であった。血流を止めるために、2〜3回のレーザー光の照射が必要であった。各眼において、1本の動脈を閉塞させた。
網膜動脈閉塞マウスモデル作製の直後に、硝子体注射により0.2μg/μLの濃度のGPU−327を1μL投与した。2日後、眼底レンズ(型式「28D」、volk社)及びヒト用の眼底カメラ(型式「RC−2」、コーワ社)を用いてインビボでGPU−327の蛍光を観察した。その後、眼を摘出してインビトロで観察した。より具体的には、摘出した眼の網膜の血管構造を、蛍光標識されたイソレクチンB4で染色し、フラットマウントして蛍光顕微鏡で観察した。また、摘出した眼の細胞の核を4’,6’−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色し、横断切片を蛍光顕微鏡(BZX700、KEYENCE社)で観察した。また、蛍光顕微鏡(BZX700、KEYENCE社)を用いてGPU−327の蛍光を観察した。
図4(a)は、インビボでGPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。閉塞した動脈周囲のみで蛍光の増強を認めており、本方法により、眼の低酸素領域をインビボで直接検出することができることが明らかとなった。
図4(b)は、図4(a)で観察した眼の網膜の血管構造をインビトロで観察した結果を示す写真である。図4(c)は、図4(b)と同一のサンプルにおける、GPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。図4(d)は、図4(b)及び図4(c)の蛍光像を統合した写真である。図4(e)は、(a)〜(d)と同一の実験方法で作製したモデル眼の横断切片をインビトロで観察した結果を示す写真である。図4(f)は、図4(e)と同一のサンプルにおける、GPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。図4(g)は、図4(e)及び図4(f)の蛍光像を統合した写真である。この結果から、眼の低酸素領域をインビボで検出した結果は、インビトロで検出した結果と一致することが確認された。
以上の結果から、GPU−327により、網膜動脈閉塞マウスモデルの眼における低酸素領域を正確に検出できることが示された。
[実験例6]
(GPU−327の網膜静脈閉塞マウスモデルへの適用)
GPU−327を網膜静脈閉塞マウスモデルに適用し、低酸素領域を正確に検出できるか否かを検討した。
まず、実験例5と同様にしてマウスの網膜静脈にレーザー光を照射して網膜静脈を閉塞させ、網膜静脈閉塞マウスモデルを作製した。各眼において、3〜5個の静脈を閉塞させた。網膜静脈閉塞マウスモデル作製の直後に、硝子体注射によりGPU−327を投与した。2日後、眼底レンズ(型式「28D」、volk社)及びヒト用の眼底カメラ(型式「RC−2」、コーワ社)を用いてインビボでGPU−327の蛍光を観察した。その後、眼を摘出してインビトロで観察した。より具体的には、摘出した眼の網膜の血管構造を、蛍光標識されたイソレクチンB4で染色し、フラットマウントして蛍光顕微鏡で観察した。
図5(a)は、インビボでGPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。1本の動脈のみを閉塞させた動脈閉塞症モデルと比べ、各眼3〜5個の静脈を閉塞させた静脈閉塞症モデルではより広範囲の低酸素領域が認められた。本方法により、眼の低酸素領域をインビボで直接検出することができることが明らかとなった。
図5(b)は、図5(a)で観察した眼の網膜の血管構造をインビトロで観察した結果を示す写真である。図5(c)は、図5(b)と同一のサンプルにおける、GPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。図5(d)は、図5(b)及び図5(c)の蛍光像を統合した写真である。この結果から、眼の低酸素領域をインビボで検出した結果は、インビトロで検出した結果と一致することが確認された。
以上の結果から、GPU−327により、網膜静脈閉塞マウスモデルの眼における低酸素領域を正確に検出できることが示された。
[実験例7]
(GPU−327の脈絡膜虚血マウスモデルへの適用)
GPU−327を脈絡膜虚血マウスモデルに適用し、硝子体注射により投与したGPU−327が網膜を通過して脈絡膜まで到達することができるか否かを検討した。脈絡膜虚血マウスモデルでは、マウスの内頸動脈を結紮して脈絡膜のみならず眼球全体を虚血にする。
マウスを麻酔した後、片方の頸動脈を露出し内頸動脈を8−0シルク糸で2か所結紮した。内頸動脈からは眼動脈が分岐しており、結紮することにより眼球全体が虚血に陥る。臨床的には眼虚血症候群モデルであり、このモデルでは眼球全体が虚血となるため、網膜の表層のみならず脈絡膜という深層まで虚血になる。内頸動脈結紮直後に、硝子体注射により0.2μg/μLの濃度のGPU−327を1μL両眼に投与した。2日後、眼底カメラを用いてインビボでGPU−327の蛍光を観察した。
図6(a)は、眼の横断切片をインビトロで観察した結果を示す写真である。(b)は、(a)と同一のサンプルにおける、GPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。(c)は、(a)及び(b)の蛍光像を統合した写真である。
内頸動脈を結紮した側の眼球では蛍光強度の増強を認めたが、結紮していない側の眼球では蛍光の増強は認めなかった。横断切片では眼球全体が淡く蛍光が増強していた。特に視神経で強い蛍光の増強が認められた。硝子体注射されたGPU−327は脈絡膜や視神経等の眼球の深層部分まで到達することが明らかとなった。
[実験例8]
(GPU−327の未熟児網膜症マウスモデルへの適用)
GPU−327を未熟児網膜症マウスモデルに適用した。未熟児網膜症マウスモデルとは、まだ網膜血管が完成していない生後7日目の幼弱マウスを酸素濃度75%の条件下で生後12日目まで飼育することにより網膜血管の成長が停止し、生後12日目以降に再度常酸素条件下に戻すことにより、相対的虚血が起こり、その後網膜新生血管を認めるモデルである。
GPU−327の最適濃度を検討するために、生後12日目に常酸素条件下に戻してから6時間後の未熟児網膜症マウスモデルに、0.832、1.664、3.328μg/g体重のGPU−327を尾静脈注射した。0.832μg/g体重の投与量は、ヒトの蛍光眼底造影方法におけるICGの投与量である、25mg/60kg体重の2倍量に相当する。同様に、1.664及び3.328μg/g体重の投与量は、それぞれ、ヒトの蛍光眼底造影方法におけるICGの投与量の4倍量及び8倍量に相当する。
GPU−327の投与から1時間後に、眼底レンズ(型式「28D」、volk社)及びヒト用の眼底カメラ(型式「RC−2」、コーワ社)を用いて眼におけるGPU−327の蛍光を観察した。
図7(a)は、蛍光観察の結果を示す写真である。その結果、GPU−327の投与量依存的に蛍光強度の上昇が認められた。
また、生後12日目に常酸素条件下に戻してから2時間後、6時間後、1日後及び5日後の未熟児網膜症マウスモデルに、1.664μg/g体重のGPU−327を尾静脈注射し、経時変化を観察した(n=6)。GPU−327の投与から1時間後に、眼底レンズ(型式「28D」、volk社)及びヒト用の眼底カメラ(型式「RC−2」、コーワ社)を用いて眼におけるGPU−327の蛍光を観察した。対照として、生後12日目の通常のマウスに1.664μg/g体重のGPU−327を尾静脈注射したマウスの眼におけるGPU−327の蛍光を観察した。
図7(b)は、蛍光観察の結果を示す写真である。図7(c)は、図7(b)において検出された蛍光強度をグラフにしたものである。図7(c)中の「*」は、危険率1%未満で有意差があることを示す。
その結果、常酸素条件下に戻してから2時間後及び6時間後の未熟児網膜症マウスモデルにおいて、強い蛍光が観察された。
以上の結果から、GPU−327により、未熟児網膜症マウスモデルの眼における低酸素領域を正確に検出できることが示された。
[実験例9]
(GPU−327の網膜静脈閉塞ウサギモデルへの適用)
未熟児網膜症マウスモデルでは、網膜全体が低酸素状態になるため、網膜内の局所的な低酸素領域の検出には向いていない可能性が考えられた。そこで、GPU−327を網膜静脈閉塞ウサギモデルに適用し、低酸素領域を正確に検出できるか否かを検討した。
より具体的には、カバーガラスの代わりにコンタクトレンズ(商品名「transequator lens」、volk社)を使用し、レーザースポットのサイズを約125μmとし、レーザーパワーを150〜300mWとし、レーザーパルスの間隔を0.5秒間とし、1個の主要な静脈のみを閉塞させた点以外は、上述した網膜動脈閉塞マウスモデルと同様にして網膜静脈閉塞ウサギモデルを作製した。
網膜静脈閉塞ウサギモデル作製の直後に、硝子体注射により0.2μg/μLの濃度のGPU−327を50μL投与した。続いて、網膜静脈閉塞から2日後、1週間後及び2週間後に眼底カメラを用いて眼底を撮影し、また、眼底カメラを用いてインビボでGPU−327の蛍光を観察した。
図8(a)、図8(b)及び図8(c)は、網膜静脈閉塞から2日後、1週間後及び2週間後に眼底カメラを用いて眼底を撮影した写真である。また、図8(d)、図8(e)及び図8(f)は、網膜静脈閉塞から2日後、1週間後及び2週間後に眼底カメラを用いてインビボでGPU−327の蛍光を観察した結果を示す写真である。
レーザー照射直後に網膜静脈の怒張が生じ、また図8(a)に示すように、ヒトの網膜静脈閉塞症と同様に網膜静脈閉塞から2日後に軽度の網膜出血が認められたことから、モデル作製が成功したものと考えられた。また、図8(b)に示すように、網膜静脈閉塞から1週間後に、視神経の周囲におけるレーザーを照射した側の網膜の白色化が認められた。GPU−327の蛍光の増加は、眼のレーザー照射した側のみで観察され、GPU−327の蛍光は、網膜静脈閉塞から2週間後まで観察可能であった。また、硝子体腔では、GPU−327の蛍光の増加は観察されなかった。ウサギでは、ヒトと異なり大半の網膜が脈絡膜血流から還流されており、視神経乳頭周囲の一部の網膜のみが網膜血流から還流されている。今回の網膜静脈を閉塞されたモデルにおいても、脈絡膜血流還流領域は低酸素になっておらず、GPU−327の蛍光の増加も認められていない。GPU−327の蛍光の増加は、網膜動脈からの還流の領域でのみ認められた。
以上の結果は、GPU−327が十分な低酸素領域の検出性能を有していることを示す。また、GPU−327は、網膜に取り込まれた後に蛍光を発する形態に変化することが示された。
[実験例10]
(網膜静脈閉塞ウサギモデルの蛍光眼底造影)
フルオレセインを用いて、実験例9の網膜静脈閉塞から2週間後の網膜静脈閉塞ウサギモデルの蛍光眼底造影を行った。図9は、蛍光眼底造影の結果を示す写真である。その結果、新生血管、蛍光の漏れ、及び無血管野が観察された。
[実験例11]
(網膜静脈閉塞ウサギモデルの網膜の低酸素領域の検出におけるGPU−327とピモニダゾールとの比較)
実験例9の網膜静脈閉塞から2日後の網膜静脈閉塞ウサギモデルの眼における低酸素領域をGPU−327及びピモニダゾールで染色して比較した。
ピモニダゾールによる染色は次のようにして行った。まず、と殺の90分前のウサギに、400μMのピモニダゾール塩酸塩(ミリポア社)50μL(60mg/kg体重)を硝子体注射した。続いて、ウサギをと殺後、眼球を摘出し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。続いて、ブロッキング溶液で50倍に希釈したFITC標識抗ピモニダゾール抗体を用いて、眼球のホールマウントを室温で1時間染色した。また、TRITC標識イソレクチンB4を用いて対比染色も行った。
図10(a)は、インビボでGPU−327の蛍光を検出した写真である。図10(b)は図10(a)で観察した眼の眼底を撮影した写真である。図10(c)は、図10(a)で観察した眼の網膜の血管構造を、イソレクチンB4を用いた染色によりインビトロで観察した結果を示す蛍光像の写真である。図10(d)は、図10(c)と同一のサンプルにおける、ピモニダゾールによる染色の結果を示す蛍光像の写真である。図10(e)は、図10(c)及び図10(d)の蛍光像を統合した写真である。図10(c)、(d)、(e)における矢印は、網膜静脈の閉塞部位を示す。
図10(a)に示すように、GPU−327の蛍光は、網膜静脈閉塞部位の周辺のみではなく、より広い範囲で観察された。これに対し、図10(d)に示すように、ピモニダゾールによる染色では、網膜静脈閉塞部位の周辺のみが染色された。
ピモニダゾールは、酸素濃度1%程度の低酸素領域を検出できるといわれている。酸素濃度5%においてGPU−327の蛍光が有意に上昇した実験例2の結果と合わせて解釈すると、本実験例の結果は、GPU−327が、ピモニダゾールよりも軽度の低酸素領域を検出可能であることを示す。
[実験例12]
(GPU−327の安全性の検討)
ウサギの眼に、リン酸緩衝液(PBS)又はGPU−327を投与して、網膜電図の測定及び網膜病理学的評価を行い、GPU−327の安全性を検討した。
まず、PBS又はGPU−327の投与前に、瞳孔を拡張させ、全身麻酔及び局所麻酔を行った状態で少なくとも1時間の暗順応を行い、暗室にてウサギの網膜電図を測定した。網膜電図の測定は、次のようにして行った。まず、白色光発光ダイオード内蔵コンタクトレンズ電極(型式「LW−102」、メイヨー社)を両眼の角膜に装着し、接地電極を耳に取り付けた。続いて、網膜電図測定装置(型式「LE−3000」、トーメー社)を使用して、両眼の網膜電図を同時に測定した。周波数バンドは0.3〜300Hzに設定した。刺激輝度は360、3000及び20000cd/mに設定し、持続時間は1ミリ秒に設定した。網膜電図の測定は、少なくとも1時間の暗順応の後に、最も弱い刺激から始めた。バックグラウンド光は使用しなかった。各光強度において、4回の刺激を行い、平均値を算出した。
その結果、PBS又はGPU−327の投与前の網膜電図における振幅と潜時には、ウサギの右眼及び左眼で有意な差は認められなかった。
続いて、PBS又はGPU−327を、硝子体注射によりウサギの片方の眼のみに投与した。PBSの投与量は50μLとした。また、GPU−327の投与量は0.2μg/μLの溶液を50μLとした。もう片方の眼には何も投与せず、対照とした。
PBS又はGPU−327の投与から60日後に、上記と同様にして網膜電図を測定し、ウサギの右眼及び左眼(PBS投与対対照、又はGPU−327投与対対照)について振幅及び潜時を算出した。また、PBS及びGPU−327の硝子体投与による影響の関連性を調べるために、独立t検定(Unpaired t test)を行った。
図11(a)はPBS又はGPU−327の投与から60日後の網膜電図を示すグラフである。その結果、PBS投与群、GPU−327投与群共に、a波及びb波等の正常な網膜電図のパターンが観察された。また、図11(b)は、各刺激輝度において測定されたa波について、PBS投与対対照、又はGPU−327投与対対照の比を示すグラフである。また、図11(c)は、各刺激輝度において測定されたb波について、左眼の振幅に対する右眼の振幅の比を示すグラフである。PBS投与群とGPU−327投与群との間で網膜電図に有意な差は認められなかった。
続いて、光学顕微鏡を用いて、PBS投与群とGPU−327投与群の眼の網膜病理学的評価を行った。図11(d)はGPU−327投与群の眼の光学顕微鏡写真であり、図11(e)はPBS投与群の眼の光学顕微鏡写真である。
その結果、いずれの群においても視細胞層の萎縮等の異常は認められず、また、網膜、色素上皮層、視神経の炎症も認められなかった。
以上の結果から、GPU−327が安全であることが示された。
本発明により、インビボで眼の低酸素領域を直接検出することが可能な診断薬を提供することができる。また、低酸素関連眼疾患の診断と治療を同時に実施することが可能な治療用組成物を提供することができる。

Claims (7)

  1. 低酸素蛍光プローブを有効成分として含有する、低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬。
  2. 硝子体注射用である、請求項1に記載の診断薬。
  3. 前記低酸素蛍光プローブが下記式(1)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の診断薬。
    [式(1)中、Rはそれぞれ独立にH、COOH、SO 、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、Rは存在しないか又は炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を表し、Rは電子吸引性置換基を表し、Rはアルキル基、−(CHCOO、−(CHSO 、又は−(CHを表し、Xは存在しないか又はCl、Br、I、若しくはPF6−を表し、nは1〜4の整数を表し、Aは1〜6の整数を表す。]
  4. 前記低酸素蛍光プローブが下記式(2)で表される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の診断薬。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の診断薬と、血管新生阻害剤とを有効成分として含有する、低酸素関連眼疾患の治療用組成物。
  6. 前記血管新生阻害剤が血管内皮増殖因子(VEGF)捕捉物質である、請求項5に記載の治療用組成物。
  7. 前記VEGF捕捉物質が抗VEGF抗体である、請求項6に記載の治療用組成物。
JP2014200397A 2014-09-30 2014-09-30 低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬及び治療用組成物 Expired - Fee Related JP6505408B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014200397A JP6505408B2 (ja) 2014-09-30 2014-09-30 低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬及び治療用組成物
PCT/JP2015/077748 WO2016052621A1 (ja) 2014-09-30 2015-09-30 低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬及び治療用組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014200397A JP6505408B2 (ja) 2014-09-30 2014-09-30 低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬及び治療用組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016069330A true JP2016069330A (ja) 2016-05-09
JP6505408B2 JP6505408B2 (ja) 2019-04-24

Family

ID=55630646

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014200397A Expired - Fee Related JP6505408B2 (ja) 2014-09-30 2014-09-30 低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬及び治療用組成物

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6505408B2 (ja)
WO (1) WO2016052621A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023216992A1 (zh) * 2022-05-07 2023-11-16 杭州康柏睿格医药科技有限公司 花菁素-海藻糖类化合物、其制备方法及用途

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014520076A (ja) * 2011-05-09 2014-08-21 ビセン メディカル, インコーポレイテッド 炭酸脱水酵素標的化剤およびそれの使用方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014520076A (ja) * 2011-05-09 2014-08-21 ビセン メディカル, インコーポレイテッド 炭酸脱水酵素標的化剤およびそれの使用方法

Non-Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
OKUDA, K. ET AL., DEVELOPMENT OF A NOVEL HYPOXIA-ACTIVATABLE NEAR-INFRARED FLUORESCENT PROBE FOR TUM, JPN6015049195, ISSN: 0003858179 *
丸山貴大, 治療−抗VEGF抗体硝子体注射−, 東邦医学会雑誌, 2011, VOL.58, NO.3, P.212-213, JPN6015049193, ISSN: 0003858180 *
大塚寛樹他, 高齢者の感覚器障害 眼疾患−診断と最新の治療 網膜血管閉塞症, 月刊臨床と研究, 2014.09.20, JPN6015049194, ISSN: 0003858181 *
朴文他, 生体内の低酸素環境を検出する蛍光プローブの開発, 酸素ダイナミクス研究会プログラム・抄録集, 20, JPN6015049191, ISSN: 0003858177 *
津田聡他, 低酸素応答生理活性蛍光プローブを用いた網膜低酸素領域のIN VIVOイメージング, 日本眼科学会雑, JPN6015049192, ISSN: 0003858178 *

Also Published As

Publication number Publication date
JP6505408B2 (ja) 2019-04-24
WO2016052621A1 (ja) 2016-04-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2023059991A (ja) 糖尿病性網膜症及び他の眼の疾患を治療するための方法
TWI396532B (zh) 用視黃基衍生物治療眼疾之方法及組合物
US11160880B2 (en) Compositions and methods for assessing eye vasculature
ES2789849T3 (es) Composiciones y procedimientos para el tratamiento y diagnóstico de trastornos oculares
Mendrinos et al. Long‐term results of the effect of intravitreal ranibizumab on the retinal arteriolar diameter in patients with neovascular age‐related macular degeneration
Yeh et al. Pars plana vitrectomy and endoresection of a retinal vasoproliferative tumor
Evans et al. Molecular probes for imaging of hypoxia in the retina
Gao et al. Pirfenidone alleviates choroidal neovascular fibrosis through TGF-β/smad signaling pathway
JP6505408B2 (ja) 低酸素関連眼疾患のインビボ用診断薬及び治療用組成物
EP3380194B1 (en) Composition for blocking angiogenesis
Takahashi et al. Time course of collateral vessel formation after retinal vein occlusion visualized by OCTA and elucidation of factors in their formation
JP2017051181A (ja) 緑内障モデル、評価対象薬剤の緑内障予防乃至治療効果の評価方法、及び眼圧調整剤
Feenstra et al. Imaging of hypoxia in retinal vascular disease
JP2023509336A (ja) 過剰血管新生に関連する眼疾患を治療する化合物
EP1467761B1 (en) Treatment of neovascular ophthalmic disease
JP7280353B2 (ja) 黄斑変性予防又は治療用組成物
WO2023211929A1 (en) Probes and methods for targeted visualization of nlrp3 inflammasomes
WO2021158219A1 (en) Compounds and compositions for retinal injury detection and methods of using same
Sundaram et al. Medical retina
Kuriakose Management of Macular Edema Secondary to Branch Retinal Vein Occlusion with Intravitreal Bevacizumab and Macular Grid Laser
髙橋元 Time course of collateral vessel formation after retinal vein occlusion visualized by OCTA and elucidation of factors in their formation
GLANCE SUPPLEMENTAL MATERIAL, PART 1—Experimental Procedures for the Preparation of Each of the Four Components of the Paper Strips
Tonse Visual Outcome after Frequency Doubled Nd YAG 532 nm Green Laser Treatment in Exudative Diabetic Maculopathy

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171002

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20171017

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20171108

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20171108

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171219

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180814

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181010

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181106

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181226

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190312

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190327

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6505408

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees