JP2016069242A - 金属化合物複合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気抵抗が低減され、高いレート特性を有するリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いることができる、Liを含有する金属化合物複合体を提供すること。
【解決手段】下記の(A1)〜(A2):(A1)リチウムが層状に配列した層状結晶構造を有するリチウム含有金属酸化物、ならびに(A2)リチウム原子およびポリアニオンから構成されるリチウム含有錯体から選択される少なくとも1種類以上のリチウム含有成分(A)と、超伝導化合物とを含有することを特徴とする、金属化合物複合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気抵抗が低減された金属化合物複合体に関する。詳しくは、高いレート特性を有するリチウムイオン二次電池の正極活物質として好適に用いることができる、上記金属化合物複合体に関する。
超伝導現象は、特定の金属、合金、金属化合物などを臨界温度以下の温度に冷却した時に電気抵抗がゼロまで下がる現象である。これまでに、例えばNb−Ti、Nb、Sn、VGe、YBaCu7ーγ、BiSrCaCu10ーγ(以上において、γは数値である。)などが超伝導特性を示すとの報告がされている。特に、層状のCu−O面の結晶構造を持つYBaCu7−γ、BiSrCaCu10−γなどの銅酸化物系の超伝導化合物は、精力的な研究がなされている。これらの材料は、高温で超伝導特性を示すことに加えて、元素置換などでキャリアをドープすることによって超伝導温度を制御することができる。そのため、発現機構の解明、応用への展開に向けた研究がなされている。
銅酸化物系超伝導化合物は、超伝導マグネット、超伝導電力貯蔵などの強電分野;ジョセフソン素子、超高感度磁気測定装置などのクライオエレクトロニクス素子;磁気シールドなど、広範囲の分野への応用展開が期待されている。
一方で、近年の環境技術への関心の高まりに伴い、太陽光発電、風力発電などによって生み出された電気エネルギーの蓄電用途;電気自動車のバッテリー用途などにおいて、蓄電デバイスに対する期待はますます高くなっている。特に、蓄電デバイスの代表であるリチウムイオン二次電池には、さらなる高出力化が求められている。
リチウムイオン二次電池用の正極活物質は、一般に、1種類または複数種類のリチウム含有成分から構成される。現状実用化されている正極活物質である、組成式LiMeO{式中、MeはLi以外の1種類以上の金属元素、好ましくは遷移金属元素である。}で表される層状リチウム酸化物結晶は、絶縁体的な性質を持つため、電気抵抗が大きく、レート特性が悪いことが課題である。すなわち、定電流で放電した際には高い容量が得られるものの、高電流で放電した際の容量が低くなる問題である。
近年、高容量の正極活物質として注目を集めている、
LiMnOで表される層状リチウム含有金属酸化物;
前記組成式LiMnOで記載される層状リチウム酸化物結晶と、前記組成式LiMeO{式中、MeはLi以外の1種類以上の金属元素、好ましくは遷移金属元素である。}で表される層状リチウム酸化物結晶、または組成式Li1+kMn2−yMe’4―β{式中、Me’は、MnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦y≦0.5、および0≦β<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造とが固溶した結晶を有するリチウム含有金属酸化物;ならびに
LiFePOに代表されるポリアニオン系正極材料
のいずれも、電気抵抗が大きいため、レート特性に問題がある。
かかる問題に対して、いくつかの試みが行われてきた。例えば特許文献1には、上記LiMnOとLiMeOとが固溶した結晶を有するリチウム含有金属酸化物の一次粒子の表面を、ZrO、SnO、Al、TiOなどの金属酸化物で被覆して、容量を向上させる記載がある。しかしながら、ZrO、SnO、Al、およびTiOはいずれも電気絶縁体であるため、リチウム含有金属酸化物の抵抗は低減せず、従ってこの技術によるレート特性の向上効果は不十分である。
特開2013−206559号公報
かかる事情に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、電気抵抗が低減された、Liを含有する金属化合物複合体を提供することである。特に、高いレート特性を有するリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いることができる金属化合物複合体を提供することである。
超伝導化合物は、臨界温度以下の極低温において超伝導特性を発現する。しかしながら、リチウム含有成分と超伝導化合物とを組み合わせることにより、室温近傍の温度領域においてもリチウム含有成分の電気抵抗が低減され、レート特性を向上させる可能性があると本発明者らは考えた。
本発明者らは、上記の理論に従って鋭意検討を行った。その結果、Li含有成分と、超伝導化合物とを組み合わせた金属化合物複合体の電気抵抗が低減すること、および該金属化合物複合体を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は高いレート特性を発現することを見出して、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 下記の(A1)〜(A2):
(A1)リチウムが層状に配列した層状結晶構造を有するリチウム含有金属酸化物、ならびに
(A2)リチウム原子およびポリアニオンから構成されるリチウム含有錯体
から選択される少なくとも1種類以上のリチウム含有成分(A)と、
超伝導化合物と
を含有することを特徴とする、金属化合物複合体。
[2] 前記リチウム含有金属酸化物の有する層状結晶構造(A1)が、下記組成式(1):
LiMn1−xM’3−α・・・(1)
{式中、M’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦x<1、および0≦α<1の関係を満足する。}で表される層状結晶構造を含有する、[1]に記載の金属化合物複合体。
[3] 前記リチウム含有金属酸化物の有する層状結晶構造(A1)が、下記組成式(2):
LiMeO・・・(2)
{式中、MeはLi以外の1種類以上の金属元素である。}で表される層状結晶構造を含有する、[1]または[2]に記載の金属化合物複合体。
[4] 前記リチウム含有金属酸化物(A1)が、下記組成式(3):
Li1+kMn2−yMe’4―β・・・(3)
{式中、Me’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦y≦0.5、および0≦β<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造を更に有する、[2]または[3]に記載の金属化合物複合体。
[5] 前記超伝導化合物が、下記組成式(4):
BaCu7−γ・・・(4)
{式中、MはY、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびPrから選ばれる少なくとも1種類の金属元素であり、そして0≦a≦1.5、0≦b≦2.5、0≦c≦4、a+b+c=6、および0≦γ≦2の関係を満足する。}で表される金属化合物である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の金属化合物複合体。
[6] 前記超伝導化合物の少なくとも一部が、前記リチウム含有成分(A)の表面に被覆されている、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の金属化合物複合体。
[7] 前記超伝導化合物の含有量が、前記リチウム含有成分(A)の質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の金属化合物複合体。
[8] [1]〜[7]のいずれか1項に記載の金属化合物複合体を含有することを特徴とする、リチウムイオン二次電池用正極活物質。
[9] 正極活物質として[8]に記載の正極活物質を用いることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
本発明にかかる金属化合物複合体は、電気抵抗が低減されたリチウム含有材料であり、例えば電池材料、セラミック材料、磁性材料、顔料、研磨材料などに利用可能である。本発明にかかる金属化合物複合体は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として高いレート特性を有するため、例えば電気自動車用、定置型電源用、モバイル機器の電源用などのリチウムイオン二次電池における正極材料として、好適に利用可能である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施することができる。
本実施形態にかかる金属化合物複合体は、リチウム含有成分(A)と、超伝導化合物とを含有することを特徴とする。
<リチウム含有成分(A)>
本実施形態にかかるリチウム含有成分(A)は、下記の(A1)〜(A2):
(A1)リチウムが層状に配列した層状結晶構造を有するリチウム含有金属酸化物、ならびに
(A2)リチウム原子およびポリアニオンから構成されるリチウム含有錯体
から選択される。
[リチウム含有金属酸化物(A1)]
本実施形態にかかるリチウム含有金属酸化物(A1)は、Liが層状に配列した層状結晶構造を有するリチウム含有金属酸化物であれば、特に限定されない。
本実施形態にかかるリチウム含有金属酸化物におけるLiが層状に配列した層状結晶構造は、好ましくは、下記組成式(1):
LiMn1−xM’3−α・・・(1)
{式中、M’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦x<1、および0≦α<1の関係を満足する。}で表される、Liが層状に配列した層状結晶構造、および下記組成式(2):
LiMeO・・・(2)
{式中、MeはLi以外の1種類以上の金属元素である。}で表される、Liが層状に配列した結晶構造からなる群より選択される1種以上の層状結晶構造を含有する。このような層状結晶構造を有するリチウム含有金属酸化物であれば、より効果を奏する。
組成式(1)で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造としては、空間群
Figure 2016069242
に帰属される結晶構造でもよいし、空間群C2/mに帰属される結晶構造でもよいし、もしくは空間群P312に帰属される結晶構造でもよいし、またはこれらが混在した構造でもよい。
組成式(1)で表されるLiが層状に配列した層状構造が、MnおよびLi以外の金属元素M’を有する場合、該M’は特に限定されるものではないが、本実施形態として好ましいものは、Ni、Co、Al、Mo、W、Ce、Nb、Mg、Fe、Cu、Ti、Sn、Pb、V、Zn、Ga、Ge、およびZrから選ばれる1種以上である。なかでも、3d軌道の有効核電荷が大きい金属元素が、リチウムイオン二次電池の起電力を向上させるという点で好ましく、
有効核電荷が6以上のFe、Co、およびNiから選ばれる1種以上がより好ましく、
最も有効核電荷が大きいNiが、特に好ましい。また、高容量を発現し易いとの観点からは、多くの価数状態をとれる金属元素、特に第6族の遷移金属元素であるMoおよびWから選ばれる1種以上も好ましい。
マンガンおよび金属元素M’は、組成式(1)で表されるリチウム含有金属酸化物内で均一に分散していることが好ましい。このことは、同種の金属元素が凝集していないことが好ましいことを意味する。この要件は、同種の金属元素の凝集が存在すると、その凝集部分が所望の結晶構造とは異なる構造になる可能性があるから、これを排除する趣旨である。
組成式(2)で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造としては、空間群
Figure 2016069242
に帰属される結晶構造を有するものが好ましい。組成式(2)で表される1種類以上の金属元素Meは特に限定されるものではないが、本実施形態として好ましいものは、Mn、Ni、Co、Ti、Al、Mg、Mo、W、およびVから選ばれる1種以上である。特に、Mn、Co、およびNiから選ばれる1種以上を含有していることにより、3d軌道の有効核電荷が大きい金属元素がリチウムイオン二次電池の起電力を向上させるという点で好ましい。
なお、組成式(2)で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造においては、金属元素Meに対する酸素原子の存在比が2倍等量の表記になっている。この表記は、理想的な結晶構造の場合を示している。実際の結晶においては、製造段階または充放電過程において、若干の酸素の欠損が発生することがあり、金属元素Meに対して酸素原子が2倍等量より僅かに少なくなる場合もあるが、その場合も本実施形態に含まれる。
本実施形態におけるリチウム含有金属酸化物は、前記組成式(1)で表される層状結晶構造と前記組成式(2)で表される層状結晶構造とが、粒子として互いに混ざった状態であってもよく、または、両者が互いに固溶した結晶構造を形成していてもよい。
本実施形態におけるリチウム含有金属酸化物としては、前記組成式(1)で表される層状結晶構造および前記組成式(2)で表される層状結晶構造から選ばれる1種以上の結晶構造と、下記組成式(3):
Li1+kMn2−yMe’4―β・・・(3)
{式中、Me’は、MnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦y≦0.5、および0≦β<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造と
が、粒子として互いに混ざった状態、または、両者が互いに固溶した結晶構造を形成した状態であるリチウム含有金属酸化物も好ましく用いられる。
組成式(3)で表されるスピネル結晶構造としては、空間群
Figure 2016069242
に帰属されるディスオーダー構造でもよいし、空間群P432に帰属されるオーダー構造でもよいし、その両方の構造が混じっていてもよい。スピネル結晶構造においては、kの値は一般的なスピネルでは0であるが、リチウムを過剰に含むスピネル構造の場合、0<k<1の値をとってもよい。その際、スピネル構造の一部または全体が岩塩構造などの、立方晶、斜方晶、正方晶などの他の結晶構造に近い構造に変形していてもよい。
組成式(3)で表されるスピネル構造が、マンガンおよびリチウム以外の1種類以上の金属元素Me’を有する場合、該Me’は特に限定されるものではないが、Niを含むことが好ましい。この場合、該Me’の割合を示すyの値は、0.5が最大値である。0.5を超えて、マンガンおよびリチウム以外の1種類以上の金属元素を導入しようとすると、スピネル構造ではない構造が生成してしまう可能性がある。
組成式(3)で表されるスピネル構造が含有する酸素の割合を示すβの値は、0に近い値をとる。β=0のとき、スピネル構造中の酸素原子が入るサイトにはすべて酸素原子が入っており、酸素欠損が無い状態となる。しかしながら、実際のスピネル構造では酸素欠損が多かれ少なかれ発生し、β>0となる場合が多い。但し、β<1でないとスピネル構造を形成することは困難である。
リチウム含有金属酸化物の結晶中で、結晶同士の固溶状態がどのように存在しているかは、例えば以下のようにして知ることができる。リチウム含有金属酸化物の結晶を収束イオンビームなどにより厚さ約100nm以下の薄片に加工し、透過型電子顕微鏡を用いて結晶内の原子配列を観察する。特に、透過型電子顕微鏡の光学系における球面収差を補正した球面収差補正型走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)およびCs−STEMに付随するエネルギー分散型X線分析装置を用いることにより、原子の配列および種類を高分解能で観察することができ、リチウム含有金属酸化物中における各結晶構造の平均サイズおよび分散状態を、画像観察から求めることができる。
[リチウム含有錯体(A2)]
本実施形態におけるリチウム含有錯体(A2)は、リチウム原子およびポリアニオンから構成される。前記ポリアニオンとしては、例えばPO 3−、SiO 4−、およびBO 3−から成る群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本実施形態におけるリチウム含有錯体(A2)として、好ましくは、
下記一般式(5):
LiMPO・・・(5)
{式中、MはFe、Mn、Co、およびNiから選択される金属原子である。}で表される構造を有するオリビン型錯体、
下記一般式(6):
LiMSiO・・・(6)
{式中、MはFe、Mn、およびCoから選択される金属原子である。}で表される構造を有する錯体、および
下記一般式(7)
LiMBO・・・(7)
{式中、MはFeおよびMnから選択される金属原子である。}で表される構造を有する錯体から成る群より選択される1種以上が好ましい。
上記一般式(5)で表される構造を有するオリビン型錯体は、電気化学的活性が高く、しかも電解液との反応性が低いことから、好ましく用いられる。一般式(5)中のMとしては、Feが好ましい。上記一般式(6)で表される構造を有する錯体は、ユニット内にリチウム原子を2個持っているから、高い電気容量が得られる点で好ましい。上記一般式(7)で表される構造を有する錯体は、比較的軽いBを含有するから、単位質量当たりの電気容量が高くなる点で好ましい。
本実施形態におけるリチウム含有錯体(A2)としては、上記一般式(5)で表される構造を有するオリビン型錯体を用いることが、特に好ましい。
[リチウム含有成分(A)]
本実施形態におけるリチウム含有成分(A)は、上記のリチウム含有複合酸化物(A1)およびリチウム含有錯体(A2)から成る群より選択される1種以上である。これらのうちのどちらかのみを使用することができ、あるいはこれらの双方を混合して用いることが可能である。
本実施形態におけるリチウム含有成分(A)としては、上記のリチウム含有複合酸化物(A1)またはリチウム含有錯体(A2)のどちらかを選択して使用することが好ましい。
本実施形態におけるリチウム含有成分(A)は、一般には、一次粒子と、該一次粒子が凝集した二次粒子とからなる粉体である。一次粒子は、それ自身が単結晶であってもよく、複数の単結晶が異なる面方位で結合したものであってもよい。二次粒子は、他の粒子との結合箇所が無く、1つの粒子として単離できる形態のものである。
一次粒子の平均粒子径である平均一次粒径は、特に限定されるものではない。しかしながら、平均一次粒径が大きくなりすぎると、放電時に大電流を流し難くなる。そのため、好適な平均一次粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。ただし、平均一次粒径が小さくなりすぎると電池としての耐久性(長期保存特性、充放電の繰り返しによる劣化特性など)が悪化するため、好適な平均一次粒径は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。
一次粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡像中の結晶の粒子径を複数測長して平均化することによって、あるいは、
不活性気体の物理吸着量を計測する比表面積測定(以下、BETと略す。)によって、
求めることができる。BET法によって求められた平均粒子径は、粒子を真球の球体と仮定して算出した数値である。
前記のようなリチウム含有成分(A)は、前記した特徴を有している限り、任意の方法によって製造されたものであってよい。リチウム含有成分(A)は、湿式合成法および乾式合成法のいずれによっても合成することができる。前記湿式合成法としては、例えば共沈法、ゲル化燃焼法などを;
前記乾式合成法としては、例えばスプレードライ法、固相法などを
それぞれ挙げることができる。
共沈法によるリチウム含有成分(A)の製造は、定法に従って行うことができる。例えばNi、Co、およびMnから選ばれる1種類以上を含む金属の塩を、所定の割合で含有する水溶液を調製し、該水溶液にアルカリを加えて得られる沈殿を乾燥した後、Li塩を所定量添加して焼成する方法により、製造することができる。前記Ni、Co、およびMnから選ばれる1種類以上を含む金属塩の一部を、アルカリによって生ずる沈殿にLi塩とともに後添加し、必要に応じて粉砕・混合したうえで、焼成に供してもよい。
前記
Ni塩として例えばNiSO・6HO、Ni(NO・6HOなどを;
Co塩として例えばCoSO・7HO、Co(NO・6HOなどを;
Mn塩として例えばMnSO・5HO、Mn(NO・6HOなどを、
それぞれ挙げることができる。
前記アルカリとしては、例えばNaCO、NaHCO、NaOH、KOH、NHOHなどの水溶液を挙げることができる。
得られた沈殿の乾燥は、好ましくは80〜150℃、より好ましくは80〜120℃において、好ましくは1〜72時間、より好ましくは5〜48時間行われる。
次いで、上記の操作によって得られた乾燥後の沈殿物にLi塩を混合して焼成することにより、リチウム含有金属酸化物を得ることができる。用いるLi塩としては、例えばLiNO、Li(CHCOO)・2HO、LiCO、LiOH・HO、LiOなどが挙げられる。Li塩を混合した後の焼成は、好ましくは600〜1,000℃、より好ましくは800〜950℃において、好ましくは1〜48時間、より好ましくは3〜24時間行われる。
スプレードライ法は、Li塩と、
Ni、Co、およびMnから選ばれる1種類以上の金属の塩と
を、所定の割合で含有する溶液または懸濁液を調製し、該溶液または懸濁液を噴霧乾燥した後に焼成する方法である。前記金属塩の一部を、噴霧乾燥して得られる粉体に後添加し、必要に応じて粉砕・混合したうえで、焼成に供してもよい。前記溶液または懸濁液の溶媒としては、水が好ましい。
スプレードライ法における原料金属塩の種類、溶液中の金属塩濃度、および焼成条件としては、それぞれ、前記共沈法の条件をそのまま採用することができる。溶液の代わりに懸濁液を使用する場合の金属塩濃度は、溶液の場合に準じて考えてよい。
ゲル化燃焼法は、酸化性の配位子を有する金属塩と、燃焼性の配位子を有する金属塩とからなる燃焼性ゲルを熱処理して、該燃焼性ゲルを瞬時に熱分解させることにより、均質で微細な微粉体酸化物の粉体を得る技術である。
前記酸化性の配位子を有する金属塩としては、例えば硝酸塩、硫酸塩などを;
前記燃焼性の配位子を有する金属塩としては、例えばクエン酸塩、酢酸塩、グリシン塩、シュウ酸塩などを、
それぞれ挙げることができる。これらの塩は、無水塩であっても含水塩であってもよい。酸化性の配位子を有する金属塩として硝酸塩を、燃焼性の配位子を有する金属塩としては酢酸塩を、それぞれ使用することが、最も好ましい。
前記酸化性の配位子を有する金属塩と燃焼性の配位子を有する金属塩との使用比率としては、燃焼性の配位子を有する金属塩/酸化性の配位子を有する金属塩の比が、2〜5(モル比)の範囲で用いることが好ましく、更に好ましくはこの比が2.5〜3.5となる範囲である。
ゲル化燃焼法においては、
先ず、上記のような酸化性の配位子を有する金属塩および燃焼性の配位子を有する金属塩を所定の割合で含有する水溶液を調製し、
次いで、前記水溶液から水を除去して均質な燃焼性ゲルとし、そして
この燃焼性ゲルを熱処理する。この熱処理によって得られた粉体を、更に粉砕・撹拌後、焼結を行って結晶の成長を調整してもよい。
前記の溶液から燃焼性ゲルを得るには、該溶液に対して加熱および減圧から選択される1種以上の操作を加えて溶媒を除去し、乾固する方法によることができる。
前記燃焼性ゲルの熱処理は、最高到達温度を好ましくは300℃〜500℃として行われる。ゲルに含まれる配位子を十分に分解させるため300℃以上の温度とすることが好ましく、粒子サイズおよび金属の分布が不均一になることを抑えるため500℃以下とすることが好ましい。最も好ましくは300℃〜400℃の範囲である。最高到達温度における保持時間としては、30分〜48時間が好ましく、1時間〜24時間がより好ましい。熱処理後の冷却速度は任意である。
以上のようにして、リチウム含有成分(A)が得られる。
[超伝導化合物]
本実施形態における超伝導化合物は、超伝導特性を発現することが公知のものであれば特に限定されない。例えばNb−Ti、Nb、Sn、VGe、BiSrCaCu10などの化合物;
層状のCu−O面の結晶構造を持つ、例えばYBaCu7―γ、BiSrCaCu10―γなどの銅酸化物系超伝導化合物;
LnFeAsO1−γ、AFeAs2−γ、AFeAs{Aはアルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる1種類以上の元素}で表される化合物
などが好ましく用いられる。中でも特に、下記組成式(4):
BaCu7−γ・・・(4)
{式中、MはY、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびPrから選ばれる少なくとも1種類の金属元素であり、そして0≦a≦1.5、0≦b≦2.5、0≦c≦4、a+b+c=6、および0≦γ≦2の関係を満足する。}で表される超伝導体化合物において、より効果が奏される。Mは上記の金属元素から選ばれた少なくとも1種類の金属元素であればいずれでもよいが、本実施形態として好ましいものは、Y、Dy、Ho、およびErから選ばれる少なくとも1種類である。
上記組成式(4)におけるaの範囲は、0≦a≦1.5であり、好ましくは0.5≦a≦1.2、さらに好ましくは0.8≦a≦1.1である。この範囲から逸脱すると、超伝導化合物としての結晶構造をとり難くなるため好ましくない。
上記組成式(4)におけるbの範囲は、0≦b≦2.5であり、好ましくは1.0≦b≦2.4、さらに好ましくは1.5≦b≦2.2である。この範囲から逸脱すると、超伝導化合物としての結晶構造をとり難くなるため好ましくない。
上記組成式(4)におけるcの範囲は、0≦c≦4であり、好ましくは1≦c≦3.5、さらに好ましくは2≦c≦3.2である。この範囲から逸脱すると、超伝導化合物としての結晶構造をとり難くなるため好ましくない。
上記組成式(4)におけるγの範囲は、0≦γ≦1.5であり、好ましくは0.5≦γ≦1.2、さらに好ましくは0.8≦γ≦1.1である。この範囲から逸脱すると、超伝導化合物としての結晶構造をとり難くなるため好ましくない。
[金属化合物複合体の製造方法]
上記リチウム含有成分(A)と超伝導化合物とを含有する金属化合物複合体を得る方法は特に限定されるものではなく、公知の方法、またはこれに当業者による適宜の変更を加えた方法を任意に用いることができる。例えば
リチウム含有成分(A)と超伝導化合物を各々別々に製造した後に、固体の粒子同士を混合してもよいし、
リチウム含有成分(A)を予め製造した後に、液相中で超伝導化合物の構成元素を含む原料をリチウム含有成分(A)に付着させ、次いで焼成を行って製造してもよいし、
これら以外の公知の方法のいずれも用いることができる。
本実施形態における金属化合物複合体の製造方法としては、上記のうちの後者の方法(液相中で製造する方法)が好ましい。
金属化合物複合体を液相中で製造する場合、具体的な製造方法としては、例えば超伝導化合物を構成する元素を含む可溶性塩を水などの溶媒に溶解して得られた溶液中に、リチウム含有成分(A)を浸漬した後、溶媒を減圧加熱下における蒸発により、またはろ過により除去し、次いで高温において焼成する方法などが挙げられる。
この方法において、超伝導化合物を構成する元素を含む可溶性塩としては、特に限定されるものではないが、例えば硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、有機酸塩などが挙げられる。中でも水への溶解性が良好であること、加熱により金属以外の成分を容易に除去でき、残留塩が少ないことから、硝酸塩または酢酸塩が好ましく用いられる。
前記溶液中におけるこれらの塩の濃度は、金属化合物複合体における所望の超伝導化合物含有量に応じて適宜に選択される。例えば1×10−8〜1モル/Lとすることができ、好ましくは1×10−8〜1×10−1モル/Lであり、より好ましくは1×10−6〜1×10−3モル/Lである。
上記溶液中にリチウム含有成分(A)を浸漬する際の温度としては、50〜100℃とすることが好ましく、80〜100℃とすることがより好ましい。浸漬時間は、10分〜24時間とすることが好ましく、2〜12時間とすることがより好ましい。
浸漬後、超伝導化合物を構成する元素を含む可溶性塩を含有させたリチウム含有成分(A)を焼成する。焼成温度は、超伝導化合物の結晶構造が形成する温度以上であればよく、含有させる超伝導化合物の種類によって適宜変更することができる。しかしながら、焼成温度が高すぎるとリチウム含有成分(A)の結晶成長が進行し過ぎ、レート特性が悪化するため好ましくない。このような観点から、焼成温度は、600℃より高く、950℃より低い温度とすることが好ましい。より好ましくは700〜900℃である。焼成時間は、好ましくは30分〜48時間であり、より好ましくは1〜12時間である。
この焼成工程により、超伝導化合物が生成され、リチウム含有成分(A)と超伝導化合物とを含有する金属化合物複合体を得ることができる。焼成時の周囲雰囲気としては、例えば大気中、酸素雰囲気下、不活性ガス雰囲気下(例えば窒素中、アルゴン中など)、炭化水素系ガス雰囲気下(例えばエチレンガス雰囲気下、プロピレンガス雰囲気下など)などを採用することができる。
本実施形態にかかる金属化合物複合体において、リチウム含有成分(A)および超伝導化合物の存在形態は、特に限定されない。超伝導化合物は、リチウム含有成分(A)の粒子表面に存在してもよいし、または内部に存在していてもよい。超伝導化合物は、金属化合物複合体中で、偏在していてもよいし、均一に分散していてもよい。好ましくは、超伝導化合物の少なくとも一部がリチウム含有成分(A)の表面に被覆されている状態であり、リチウム含有成分(A)の表面の被覆率が高いほど効果を奏する。
本実施形態にかかる金属化合物複合体におけるリチウム含有成分(A)および超伝導化合物各々の含有量は、既知の誘導結合プラズマ発光分析法(以下、ICPと略す。)によって求めることができる。
超伝導化合物の含有量は、リチウム含有成分(A)の質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上3質量%以下の範囲である。前記超伝導化合物の量が0.1質量%未満であると、金属化合物複合体の電気抵抗の低減が不十分であり、本発明の効果が奏されない場合がある。また、前記超伝導化合物の量が10質量%超過であると、金属化合物複合体の体積当たりに占める超伝導化合物の体積割合が過多になり、該金属化合物複合体をリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合に、容量が減少してしまうため、好ましくない。
超伝導化合物がリチウム含有成分(A)に被覆されている場合、該被覆層の平均膜厚は、0.1nm以上100nm以下が好ましく、0.5nm以上50nm以下の場合がより好ましい。被覆層の平均膜厚が0.1nmより薄いと、超伝導化合物の効果が限定される。一方、被覆層の平均膜厚が100nmより厚いと、金属化合物複合体の体積当たりに占める超伝導化合物の体積割合が過多になり、該金属化合物複合体をリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、容量が減少するため、好ましくない。被覆層の平均膜厚は、例えばICPおよびBETによって測定することができる。具体的には、
ICPによって、金属化合物複合体が有する単位重量当たりの超伝導化合物の質量割合を測定し、
前記超伝導化合物の質量割合を公知の比重を用いて、被覆層の体積に換算し、そして
BETによって測定されたリチウム含有成分(A)単体の比表面積で割り返すことにより、超伝導化合物の平均膜厚を算出することができる。
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態における金属化合物複合体を、正極活物質としてリチウムイオン二次電池に用いる際の一例を以下に示す。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液、およびセパレーター、ならびにそれらを収納して電気的接続および絶縁をとるための外装体からなる。
(正極)
正極およびその製造方法の一例を以下に示す。
正極は、集電体と、該集電体上に形成された正極合剤層とから成る。本実施形態における金属化合物複合体は、この正極合剤層における正極活物質として適用することができる。
正極活物質は、本実施形態における金属化合物複合体のみからなっていてもよいし、該金属化合物複合体とこれ以外の正極活物質との混合物であってもよい。本実施形態における金属化合物複合体以外の活物質としては、例えばコバルト酸リチウム、ニッケル−コバルト−マンガン系複合酸化物、オリビン型リン酸鉄リチウム、スピネル系複合酸化物などを挙げることができる。正極活物質中に占める前記金属化合物複合体の含有量は、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、100質量%であってもよい。
正極合剤層は、正極活物質以外に、導電助剤およびバインダーを含有することが好ましい。ここで、導電助剤としては、電子を伝導できる公知のものであれば特に限定されないが、例えばグラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラックなどに代表される炭素材料が好適である。バインダーとしては、正極に含まれる2種類以上の構成材料を結着できるものであれば特に限定されないが、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムなどに代表されるポリマー材料が好適である。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
前記集電体としては、特に限定されないが、例えば、金属箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル、カーボンクロス、カーボンペーパーなどが好適である。前記金属箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、および発泡メタルを構成する金属としては、例えばアルミニウム、チタン、ステンレスなどが好適である。
正極は、例えば以下の操作によって形成することができる。
金属化合物複合体を含む正極活物質と、必要に応じて、上記の導電助剤、バインダーなどを加えて混合した正極合剤を、例えばN−メチルピロリドン(NMP)のような適当な溶剤に分散させて、正極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この正極合剤含有ペーストを集電体上に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、必要に応じてこれをさらに加圧して厚みを調整して集電体上に正極合剤層を形成することにより、正極が製造される。
(負極)
本実施形態に用い得る負極としては、リチウムイオン二次電池に用いられる負極として従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。
負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な材料から成ることが好ましい。すなわち、負極としては、リチウム金属を用いるか、あるいは
集電体と、該集電体上に負極合剤層とから成る負極を用いることが好ましい。後者の態様における負極活物質としては、炭素負極活物質、リチウムと合金形成が可能な元素を含む負極活物質、ケイ素酸化物負極活物質、スズ酸化物負極活物質、リチウム含有化合物(例えばチタン酸リチウムなど)から成る負極活物質などより選ばれる1種以上が好ましい。この場合の負極活物質は、1種で、または2種以上を組合せて用いることが可能である。
前記の炭素負極活物質としては、例えばハードカーボン、ソフトカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、カーボンブラックなどが挙げられる。コークスとしては、例えばピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなどが挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものである。
前記のリチウムと合金形成が可能な元素を含む負極活物質としては、金属または半金属の単体、合金または化合物であり、これらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。本明細書において、「合金」には、全体として金属の性質を有するものであれば、非金属元素が含まれていてもよい。従って、本明細書における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含まれる。金属元素および半金属元素としては、例えばチタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)などが挙げられる。
これらの中でも、長周期型周期表における4族または14族の金属元素および半金属元素が好ましく、特に好ましくはチタン、ケイ素、およびスズから選ばれる1種以上である。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン,ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、およびクロム(Cr)からなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、およびクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
チタン化合物、スズ化合物、およびケイ素化合物としては、例えば、酸素または炭素を有するものが挙げられ、チタン、スズまたはケイ素に加えて、上述の第2の構成元素を有していてもよい。
負極の製造方法の一例は、例えば以下のとおりである。
上記負極活物質に、必要に応じて、導電助剤、バインダーなどを加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製する。バインダーとしては負極に含まれる2種類以上の構成材料を結着できるものであれば特に限定されない。特に、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンの架橋ゴムラテックス、アクリル系ラテックス、ポリフッ化ビニリデンなどが、バインダーとして好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
次いで、この負極合剤含有ペーストを集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成する。得られた負極合剤層を、必要に応じて加圧して厚みを調整して集電体上に負極合剤層を形成することにより、負極が製造される。負極における集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔などの金属箔により構成される。なお、負極活物質は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(電解液)
リチウムイオン二次電池に用いられる電解液としては、少なくとも溶媒とリチウム塩とを含有し、二次電池の電解液として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。前記溶媒としては、実質的に水を含有しない非水系溶媒から成ることが好ましい。
非水系溶媒としては、特に制限はなく、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられ、中でも、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
非水系溶媒の具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、および1,2−ジフルオロエチレンカーボネートに代表される環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、およびγ−バレロラクトンに代表されるラクトン;メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、およびメチルトリフルオロエチルカーボネートに代表される鎖状カーボネート;アセトニトリル、プロピオノニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、およびアクリロニトリルに代表されるモノニトリル;メチルプロピオネートに代表される鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンに代表される鎖状エーテルカーボネート化合物などが挙げられる。
リチウム塩としては、非水系二次電池の電解液に用いられているものであれば特に制限はなく、いずれのものであってもよい。リチウム塩としては、特に制限はないが、無機リチウム塩であることが好ましい。無機リチウム塩は、通常の非水系電解質として用いられているものであれば特に限定されず、いずれのものを用いもよい。そのような無機リチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、Li1212−e〔eは0〜3の整数〕などの他、多価アニオンと結合されたリチウム塩などが挙げられる。
リチウム塩は、非水系電解液中に0.1〜3mol/Lの濃度で含有されることが好ましく、0.5〜2mol/Lの濃度で含有されることがより好ましい。
(セパレーター)
本実施形態に用い得るセパレーターとしては、リチウムイオン二次電池に用いられる従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。中でも、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。そのようなセパレーターとしては、例えば織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが挙げられ、これらの中でも、合成樹脂製微多孔膜が好ましい。合成樹脂製微多孔膜としては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンから選ばれる1種以上を主成分として含有するポリオレフィン系微多孔膜が好適に用いられる。不織布としては、例えばセラミック(例えばガラスなど)製、ポリオレフィン製、ポリエステル製、ポリアミド製、液晶ポリエステル製、アラミド製などの、耐熱製の微多孔膜が用いられる。これらの織布、不織布、および合成樹脂製微多孔膜は、それぞれ、アルミナ、シリカなどから選択される1種類以上の無機物を内部に含んでいてもよく、該無機物によって表面が被覆されていてもよい。
セパレーターは、1種の微多孔膜を単層または複数積層したものであってもよく、2種以上の微多孔膜を積層したものであってもよい。
(外装体)
本実施形態のリチウムイオン二次電池に用い得る外装体は、電池の外装体として従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。外装体の材料としては、例えばステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属、あるいはその金属の表面を樹脂で被覆したラミネートフィルムなどが挙げられる。
(リチウムイオン二次電池の製造方法)
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池は、上述の電解液、金属化合物複合体を用いて製造した正極、負極、およびセパレーターを用いて、公知の方法により製造される。例えば、正極と負極とを、その間にセパレーターを介在させた積層体とし、
該積層体を巻回して、積層体の巻回体に構成する態様;
該積層体を折り曲げて、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレーターが介在する多層構造の積層体に構成する態様;
該積層体を複数層に積層して、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレーターが介在する多層構造の積層体に構成する態様
などによって、電極積層体を構成する。次いで、該電極積層体を電池ケース(外装)内に収容して、電解液をケース内部に注液し、上記積層体を電解液に浸漬して封印することによって、リチウムイオン二次電池を製造することができる。あるいは、ゲル化させた電解液を含む電解質膜を予め作製しておき、正極、負極、該電解質膜、およびセパレーターを用いて、上述の方法に準じて電極積層体を形成した後、該電極積層体を電池ケース内に収容してリチウムイオン二次電池を製造する方法も可能である。
リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形、ラミネート形などが好適に採用される。
上記のようにして製造されたリチウムオン二次電池は、初回充電により電池として機能し得る。ここで、初回充電の際に電解液の一部が分解することにより、安定化する。初回充電の方法について特に制限はないが、0.001〜0.3Cで行われることが好ましく、0.002〜0.25Cで行われることがより好ましく、0.003〜0.2Cで行われることがさらに好ましい。なお、1Cとは電池が1時間で放電される電流値である。また、初回充電の途中に定電圧充電を経由して行われることも好ましい結果を与える。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<リチウム含有金属酸化物(A1)の製造>
以下の硫酸塩:
MnSO・5HO(関東化学株式会社製)2,563.5g、
NiSO・6HO(関東化学株式会社製)931.5g、および
CoSO・7HO(関東化学株式会社製)569.4g
を純水に溶解させて合計8,100mlとした水溶液Aを調製した。
炭酸ナトリウムNaCO(関東化学株式会社製)1,717.2gを純水に溶解させ、さらに28質量%アンモニア水(関東化学株式会社製)546.9mlを加えて合計8,100mlとした水溶液Bを調製した。
撹拌機構と、不活性ガスをバブリングさせる機構とを有する反応槽中に、硫酸ナトリウムNaSO(関東化学株式会社製)710.2gを純水に溶解させて合計5,000mlとした水溶液Cを入れた。この水溶液Cに対し、撹拌下に窒素ガスを吹き込みつつ、かつ、10分ごとに約520mlずつ反応槽から液を抜き出しつつ、前記の水溶液Aおよび水溶液Bを、各25.8mL/分の速度で同時に水溶液C中に滴下させ、水に難溶性の金属塩の粒子を生成させた。300分後に滴下を止め、反応槽内の液を回収し、ろ過して、沈殿およびろ液を得た。
得られた沈殿につき、純水中で10分撹拌した後にろ過をする作業を繰り返し、ろ液の導電率が30mS/cm以下になるまで沈殿を洗浄した。
洗浄後の沈澱を80℃で真空乾燥させたもの2.00gと、平均一次粒径2μm以下に粉砕した炭酸リチウムLiCO(本荘ケミカル株式会社製)0.953gとをよく混合した後、大気中、500℃において5時間焼成した後、再度混合して、さらに大気下900℃において5時間焼成することにより、リチウム含有金属酸化物(A1)を得た。
このリチウム含有金属酸化物(A1)についてX線構造解析を行ったところ、組成式(1):
LiMn1−xM’3−α・・・(1)
{式中、M’は、NiおよびCoから選ばれ、0≦x<1、そして0≦α<1の関係を満足する。}で表される層状結晶構造、および下記組成式(2):
LiMeO・・・(2)
{式中、Meは、Mn,NiおよびCoから選ばれる。}で表される層状結晶構造の2つの結晶構造が固溶した構造を有していることが分かった。
このリチウム含有金属酸化物(A1)の一部を採り、マイクロウェーブ(アナリティクイエナ社製、TOPwave(登録商標))により酸分解してICP測定(Perkin Elmer社製、Optima8300)を行った。その結果、上記リチウム含有金属酸化物(A1)における金属元素の組成比は、Li:Mn:Ni:Co=0.62:0.28:0.076:0.054(モル比)であることが分かった。これより、上記組成式(1)中のM’としてNiが存在していることが推定され、
また、上記組成式(2)中のMeとして、Mn、Ni、およびCoの3種の金属元素が共存していることが確認された。
<超伝導化合物との混合(金属化合物複合体の製造)>
硝酸イットリウム・六水和物{Y(NO・6HO(関東化学株式会社製)}4.3mg、硝酸バリウム{Ba(NO(関東化学株式会社製)}5.99mg、および硝酸銅・三水和物{Cu(NO3)・3HO(関東化学株式会社製)}7.9mgを純水100mLに溶解させ、溶液を得た。その溶液中に、上記で合成したリチウム含有金属酸化物(A1)1.5gを浸漬させ、100℃において4時間撹拌して粉体を得た。
得られた粉体を、大気中120℃において180分乾燥した後、大気中、850℃において5時間焼成することにより、目的とするリチウム含有金属酸化物(A1)と超伝導化合物とからなる金属化合物複合体を得た。
ICP測定により、上記で得た金属化合物複合体における超伝導化合物YBaCuの含有量は、リチウム含有金属酸化物(A1)の質量に対して0.5質量%であることが分かった。
<リチウムイオン二次電池の製造>
本実施例においては、前述のようにして得られた金属化合物複合体を正極活物質として用いた。
この正極活物質と、導電助剤であるグラファイトの粉末(TIMCAL社製、KS−6)およびアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製、HS−100)と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製、L#7208)とを、固形分比として80:5:5:10の質量比で混合して混合物を得た。得られた混合物に、分散溶媒としてN−メチルピロリドンを、固形分30質量%となるように投入して更に混合して、正極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して、厚さ60μmの正極を得た。なお、この正極の厚さは、アルミニウム箔の厚さを含む値である。
ステンレス製の円盤型電池ケース(外装体)中に、負極として直径16mmに打ち抜いたリチウム金属箔(厚さ0.5mm)を挿入した。その上に、ポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレーター、ガラス繊維製のセパレーター(ADVANTEC社製、GA−100、膜厚約500μm)、および上記で製造した正極を直径16mmに打ち抜いたものを、この順で挿入した。次いで、電池ケース内に、電解液を1.0mL注入して、正極、負極、およびセパレーターを電解液に浸漬した後、電池ケースを密閉することにより、リチウムイオン二次電池を製造した。前記電解液としては、エチルメチルカーボネート(EMC)およびエチレンカーボネート(EC)から成る容量比7:3の混合溶媒中に、1mol/LのLiPFを溶解した溶液を用いた。
<電池評価>
得られたリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」ともいう。)を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、恒温槽PLM−73S)内に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、充放電装置ACD−01)に接続した。次いで、その電池を0.1Cの定電流で充電し、4.7Vに到達した後、4.7Vの定電圧において電流が0.05mA以下になるまで充電した。次いで、0.1Cの定電流で2.0Vまで放電した。
次に、その電池につき、0.3Cの定電流において充電し始め、4.6Vに到達した後、4.6Vの定電圧において電流が0.05mA以下になるまで充電し、次いで、2.0Vまで定電流放電する充放電サイクルを、定電流放電の際の電流値を0.3C、0.3C、1C、1C、2C、2C、5C、および5Cと、この順で変量して、計8回行った。
最後の5Cにおける放電容量を計測したところ、155mAh/gであった。
[実施例2]
実施例1の<超伝導化合物との混合(金属化合物複合体の製造)>における超伝導化合物の各原料の使用量を各2倍に変更した以外は実施例1と同様にして金属化合物複合体を製造した。ICP測定により、該金属化合物複合体における超伝導化合物YBaCuの含有量は、リチウム含有金属酸化物(A1)の質量に対して1.0wt%であることが分かった。
この金属化合物複合体を正極活物質として用いた以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、電池評価を行った。最後の5Cにおける放電容量は160mAh/gであった。
[実施例3]
実施例1の<超伝導化合物との混合(金属化合物複合体の製造)>における超伝導化合物の各原料の使用量を10倍に変更した以外は実施例1と同様にして金属化合物複合体を製造した。ICP測定により、該金属化合物複合体における超伝導化合物YBaCuの含有量は、リチウム含有金属酸化物(A1)の質量に対して5.0質量%であることが分かった。
この金属化合物複合体を正極活物質として用いた以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、電池評価を行った。最後の5Cにおける放電容量は145mAh/gであった。
[実施例4]
実施例1の<超伝導化合物との混合(金属化合物複合体の製造)>における超伝導化合物の各原料の使用量を20倍に変更した以外は実施例1と同様にして金属化合物複合体を製造した。ICP測定により、該金属化合物複合体における超伝導化合物YBaCuの含有量はリチウム含有金属酸化物(A1)の質量に対して10.0質量%であることが分かった。
この金属化合物複合体を正極活物質として用いた以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、電池評価を行った。最後の5Cにおける放電容量は130mAh/gであった。
[実施例5]
<リチウム含有金属酸化物(A1)の製造>
以下の硫酸塩:
MnSO・5HO(関東化学株式会社製)79.6g
NiSO・6HO(関東化学株式会社製)26.0g、および
FeSO・7HO(関東化学株式会社製)3.12g
を純水に溶解させて合計220mlとした水溶液Aを調製した。
炭酸ナトリウムNaCO(関東化学株式会社製)46.6gを純水に溶解させ、さらに28質量%アンモニア水(関東化学株式会社製)14.6mlを加えて合計220mlとした水溶液Bを調製した。
撹拌機構と、不活性ガスをバブリングさせる機構とを有する反応槽中に、硫酸ナトリウムNaSO(関東化学株式会社製)を純水に溶解させて合計200mlとした水溶液Cを入れた。これを撹拌させながら窒素ガスを吹き込みつつ、かつ、10分ごとに100mlずつ反応槽から液を抜き出しつつ、前記水溶液Aおよび水溶液Bを、各5ml/分の速度で同時に水溶液C中に滴下させて、水に難溶性の金属塩の粒子を生成させた。40分後に滴下を止め、反応槽内の液を回収し、ろ過、水洗、および乾燥して、沈殿Dを得た。この沈澱Dを乾燥させたもの2.00gと、平均粒子径2μm以下に粉砕した炭酸リチウムLiCO(本荘ケミカル株式会社)0.318gとをよく混合した後、大気中、800℃において5時間焼成し、リチウム含有金属酸化物Aを得た。X線構造解析により、このリチウム含有金属酸化物Aがスピネル構造を有していることが分かった。
上記のリチウム含有金属酸化物に対して、さらに炭酸リチウム処理(リチウム導入処理)を行った。先ず、処理温度を決定するための予備実験を行った。上記のリチウム含有金属酸化物A1.41gと、炭酸リチウムLiCO0.286gとをよく混合した後、そのうちの少量を採ってTG−DTA分析を行った。その結果、425℃からこの混合物の重量減と示唆熱の減少が認められ、500℃で示唆熱減少が極小値をとることが分かった。
そこで、前記リチウム含有金属酸化物Aと炭酸リチウムとの混合物を大気中、650℃において5時間焼成し、リチウムを酸化物内に追加で導入した後、さらに800℃で5時間焼成し、リチウム含有金属酸化物(A1)を得た。
X線構造解析により、該リチウム含有金属酸化物(A1)が、スピネル構造と、概ねC2/mの空間群に帰属できるLiMn1−xM’3−α{式中、M’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0<x<1、および0≦α<1の関係を満足する。}の組成を有していることが分かった。該リチウム含有金属酸化物(A1)をマイクロウェーブ(アナリティクイエナ社製、TOPwave(登録商標))により酸分解し、ICP測定(Perkin Elmer社製、Optima8300)によって求めた金属元素の組成比は、Li:Mn:Ni:Fe=0.49:0.39:0.11:0.01(モル比)であることがわかった。
正極活物質としてこのリチウム含有金属酸化物(A1)を用いた以外は実施例2と同様にして、超伝導化合物を含有する金属化合物複合体を得た。ICP測定により、この金属化合物複合体における超伝導化合物YBaCuの含有量は、リチウム含有金属酸化物(A1)の質量に対して1.0質量%であることが分かった。
この金属化合物複合体を正極活物質として用いた以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造した。
このリチウムイオン二次電池を、25℃に設定した恒温槽内に収容し、充放電装置に接続した。次いで、その電池につき、0.1Cの定電流において充電し始め、5.0Vに到達した後、5.0Vの定電圧において電流が0.05mA以下になるまで充電し、次いで、0.1Cの定電流で2.0Vまで放電した。次に、その電池を0.3Cの定電流において充電し始め、4.9Vに到達した後、4.9Vの定電圧において、電流が0.05mA以下になるまで充電し、次いで、2.0Vまで定電流放電する充放電サイクルを、電流値を0.3C、0.3C、1C、1C、2C、2C、5C、および5Cとこの順で変量して、計8回行った。
最後の5Cにおける放電容量は140mAh/gであった。
[実施例6]
本実施例では、リチウム含有金属酸化物(A1)としてコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製)を用いた。それ以外は実施例2と同様にして、金属化合物複合体を製造した。ICP測定により、この金属化合物複合体における超伝導化合物YBaCuの含有量は、リチウム含有金属酸化物(A1)の質量に対して1.0質量%であることが分かった。
正極活物質として上記のリチウム含有金属酸化物(A1)を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
このリチウムイオン二次電池を、25℃に設定した恒温槽内に収容し、充放電装置に接続した。次いで、その電池につき、0.1Cの定電流において充電し始め、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧において電流が0.05mA以下になるまで充電し、次いで、0.1Cの定電流で3.0Vまで放電した。次に、その電池を0.3Cの定電流において充電し始め、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧において、電流が0.05mA以下になるまで充電し、次いで、3.0Vまで定電流放電する充放電サイクルを、電流値を0.3C、0.3C、1C、1C、2C、2C、5C、および5Cとこの順で変量して、計8回行った。
最後の5Cにおける放電容量を計測したところ、135mAh/gであった。
[比較例1]
本比較例では、実施例1で用いたリチウム含有金属酸化物(A1)に超伝導化合物を含有させず、そのまま正極活物質として用いた。
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、電池評価を行った。最後の5Cにおける放電容量は123mAh/gであった。
[比較例2]
本比較例では、実施例5で用いたリチウム含有金属酸化物(A1)に超伝導化合物を含有させず、そのまま正極活物質として用いた。
実施例5と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、電池評価を行った、最後の5Cにおける放電容量は118mAh/gであった。
[比較例3]
本比較例では、実施例6で用いたリチウム含有金属酸化物(A1)のコバルト酸リチウムに超伝導化合物を含有させず、そのまま正極活物質として用いた。
実施例6と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、電池評価を行った。最後の5Cにおける放電容量は122mAh/gであった。
本発明にかかる金属化合物複合体は、電気抵抗が低減されたリチウム含有材料である。従って、該金属化合物複合体は、例えば電池材料、セラミック材料、磁性材料、顔料、研磨材料などに利用可能である。本発明にかかる金属化合物複合体は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として高いレート特性を有するため、電気自動車用、定置型電源用、モバイル機器などにおける電源用の正極材料として、好適に利用可能である。

Claims (9)

  1. 下記の(A1)〜(A2):
    (A1)リチウムが層状に配列した層状結晶構造を有するリチウム含有金属酸化物、ならびに
    (A2)リチウム原子およびポリアニオンから構成されるリチウム含有錯体
    から選択される少なくとも1種類以上のリチウム含有成分(A)と、
    超伝導化合物と
    を含有することを特徴とする、金属化合物複合体。
  2. 前記リチウム含有金属酸化物の有する層状結晶構造(A1)が、下記組成式(1):
    LiMn1−xM’3−α・・・(1)
    {式中、M’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦x<1、および0≦α<1の関係を満足する。}で表される層状結晶構造を含有する、請求項1に記載の金属化合物複合体。
  3. 前記リチウム含有金属酸化物の有する層状結晶構造(A1)が、下記組成式(2):
    LiMeO・・・(2)
    {式中、MeはLi以外の1種類以上の金属元素である。}で表される層状結晶構造を含有する、請求項1または2に記載の金属化合物複合体。
  4. 前記リチウム含有金属酸化物(A1)が、下記組成式(3):
    Li1+kMn2−yMe’4―β・・・(3)
    {式中、Me’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦y≦0.5、および0≦β<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造を更に有する、請求項2または3に記載の金属化合物複合体。
  5. 前記超伝導化合物が、下記組成式(4):
    BaCu7−γ・・・(4)
    {式中、MはY、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびPrから選ばれる少なくとも1種類の金属元素であり、そして0≦a≦1.5、0≦b≦2.5、0≦c≦4、a+b+c=6、および0≦γ≦2の関係を満足する。}で表される金属化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属化合物複合体。
  6. 前記超伝導化合物の少なくとも一部が、前記リチウム含有成分(A)の表面に被覆されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属化合物複合体。
  7. 前記超伝導化合物の含有量が、前記リチウム含有成分(A)の質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属化合物複合体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属化合物複合体を含有することを特徴とする、リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  9. 正極活物質として請求項8に記載の正極活物質を用いることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
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