JP2016069233A - 海水練り繊維補強コンクリートおよびコンクリート構造物 - Google Patents
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練り混ぜ水に海水を使用すると、コンクリートの乾燥収縮が大きくなることが知られており(非特許文献1)、収縮が大きいゆえに、コンクリート構造物にひび割れが発生しやすく、またそのひびは大きくなる傾向にある。
鉄筋コンクリート構造物が海水を含む場合、ひび割れが発生すると、そのひび割れが大きくなりやすいだけでなく、そこから塩分が浸透し、鉄筋の腐食膨張が起こり、コンクリート構造物の健全性そのものが阻害される。
一方、特許文献1では、高炉系セメントと海砂との混合物を海水で練り混ぜたことを特徴とする、海水練りコンクリート及びコンクリート構造物が提案されている。これにより、海水及び海砂を用いても、必要な耐久性を備えたコンクリートを得ることが可能となるとされているが、これは高炉系セメントに限定されており、また高炉系セメントは、その必要な硬化時間が一般的な普通ポルトランドセメントに比べて遅いことから、広範な使用には限界があった。
以上のような状況に鑑み、発明者らは、練り混ぜ水に海水を用いても、ひび割れが入りにくく、仮にひび割れが入ったとしても、そのひび割れが局所にとどまる、すなわちひび割れ同士がつながったり、大きく拡大しにくい繊維補強コンクリートを提供することを本発明の課題とした。
本発明における耐アルカリ性有機繊維は、ポリビニルアルコール系繊維であってもよい。
(耐アルカリ性有機繊維)
本発明において前記耐アルカリ性有機繊維は、海水で練り混ぜられたコンクリートが収縮し、ひび割れる際、コンクリート内部の応力が局所に集中することを防いでコンクリート構造物全体に分散させ、また、小さなひび割れ同士をつなぐ役割を果たし、繊維自身が若干抜け或いは伸びながらひび割れ間の距離が大きくなることを防ぐように機能する。特に練り混ぜ水として海水を用いると、乾燥収縮が大きくなることが知られているが、ヤング率が3〜100GPaであることによって、ひびが発生したとしても繊維が応力集中を防ぎ、ひび割れを分散、最小化できる。ヤング率が3GPa未満であると、海水練りコンクリートのように乾燥収縮が大きい場合、繊維がコンクリートの収縮応力に耐え切れず、ひびをコンクリート構造物全体に分散させることができない。一方、ヤング率が100GPaを超えると、その剛直さのために、コンクリートの混練中に粗骨材・細骨材との接触により繊維が著しく損傷を受け、構造体に対する補強効果や、応力やひび割れの分散効果が損なわれる。
前記耐アルカリ性有機繊維のヤング率は、5〜60GPaであることがより好ましく、10〜40GPaであることが更に好ましく、15〜35GPaであることが特に好ましい。
前記耐アルカリ性有機繊維の含有率が0.1体積%未満であると、繊維がコンクリート構造物の収縮を吸収しきれず、構造物全体に収縮応力を分散させることができないばかりか、繊維が存在しない部分でひび割れした場合、そのひび割れが大きくなる。また、繊維の含有率が5体積%を超えると、繊維同士が絡まりやすくなり、コンクリート中に繊維が均一に分散されにくくなり、コンクリート構造物内部の収縮応力を吸収しにくくなり、また、収縮応力を全体に分散させにくくなるばかりでなく、コンクリート構造物の内部に繊維の塊が存在することによって、コンクリート構造物の強度が低くなる可能性がある。
前記耐アルカリ性繊維の含有率は、コンクリート体積に対して0.3〜3体積%であることがより好ましく、0.5〜2.5体積%であることが更に好ましく、1〜2体積%であることが特に好ましい。
単繊維繊度が10000dtex以下であることによって、他の組成物との混ざりがよくなる。また、100dtex以上とすることによって、コンクリート練り混ぜ時に繊維同士が絡まりにくくなると同時に、コンクリート構造物内部の収縮応力を十分吸収し、またひび割れを最小限に抑えることができるようになる。
繊維長が5mm以上であることによって、繊維とコンクリートの接着性がよくなり、コンクリートから繊維が抜けることなく、十分にコンクリート構造物内部の収縮応力を吸収することができるようになる。また、繊維長が100mm以下であることによって、繊維がコンクリート中に均一に分散しやすくなる。
これらのうち、セメントとの接着性、強度等の点で、PVA系繊維が特に好ましく用いられる。
PVA系繊維は、紡糸後、必要に応じて延伸処理が行われてもよい。また、PVA系繊維で一般的に行われているアセタール化処理などが行われてもよい。
本発明の実施形態にかかる繊維補強コンクリートは、セメントと、骨材(細骨材、粗骨材)と、上記説明の耐アルカリ有機繊維とを含む。
本発明の繊維補強コンクリートは、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の混和材料(混和材・混和剤)を含んでいてもよい。
JIS A 1106 コンクリートの曲げ強度試験方法により行った。ミキサーで混練されたコンクリートを、断面が100mm×100mmで長さが400mmの角柱形状の型枠に流し込んだ後、20℃の室内で24時間封緘養生し脱型したものをプラスチックシートで包み、温度20℃・湿度65%の室内で28日養生して強度試験に供した。曲げ強度試験は最大容量2000kNの万能試験機にて、スパン300mmの三等分点載荷方式により行った。最大荷重までの載荷速度はJIS A 1106に準じ、最大荷重以後はタワミ速度でスパンの1/1500〜1/3000の範囲で制御した。尚、曲げ強度は、ひび割れ強度(LOP: Limit OF Proportionality)、及びひび割れ後最大強度(MOR:Modulus OF Rupture)として測定した。
JIS A 1129−3 モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法(ダイヤルゲージ方法)により行った。ミキサーで混練されたコンクリートを、予めゲージプラグをセットした断面が100mm×100mmで長さが400mmの角柱形状の型枠に流し込んだ後、20℃の室内で24時間封緘養生し脱型したものをプラスチックシートで包み、温度20℃・湿度65%の室内で28日養生して試験体を得た。その試験体の基長をコンパレータで測定した。屋外曝露による収縮率の測定については、(株)クラレ岡山事業所敷地内にて、桟木上に試験体を横に置いた状態で3年間屋外保管を行い、その後同様にコンパレータにて長さを測定し、長さ変化率を算出した。
長さ変化率 ε=((X01−X02)−(Xi1−Xi2))/L0
L0:基長
X01、X02:それぞれ基準とした時点における標準尺および供試体の測定値
Xi1、Xi2:それぞれ時点iにおける標準尺および供試体の測定値
JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法(8.5.1)」に準じて行った。まずJIS記載の方法に従って、繊維の繊度を求め、材料の密度と繊維の繊度から繊維径を計算した。アスペクト比は、繊維径と繊維長より計算した。
JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法」の「8.11 初期引張抵抗度」に準じて測定し、見掛ヤング率を算出した。
最大容量100Lの傾胴式ミキサーに、普通セメント(太平洋セメント(株)製)455重量部、粗骨材(岡山県御津産砕石:最大径20mm)700重量部、細骨材(佐賀県唐津市産海砂)900重量部、海水(岡山県沿岸の瀬戸内海より採取)205重量部、高性能AE減水剤(BASFジャパン(株)製「レオビルドSP−8N」)0.9重量部を1分間混練し、出来上がったプレーンコンクリートに、PVA繊維(株式会社クラレ製RF−4000;4000dtex×30mm、ヤング率30GPa、アスペクト比45)を1.5体積%添加し、1分間の追加混練をして、水硬性材料として繊維補強コンクリートを作製した。
次いで、断面が100mm×100mmで長さが400mmの角柱形状の型枠に流し込んだ後、20℃の室内で24時間封緘養生し脱型したものをプラスチックシートで包み、温度20℃・湿度65%の室内で28日養生して強度試験に供した。また、その28日養生後の製品を、(株)クラレ岡山事業所敷地内にて、桟木上に試験体を置いた状態で3年間屋外保管を行い、その後同様に強度試験に供した。
28日後曲げ強度、3年後曲げ強度、3年後供試体外観及び3年後の供試体の収縮率を表1に示す。
耐アルカリ性有機繊維を、ポリプロピレン繊維(萩原工業株式会社製バルチップ:3500dtex×30mm、ヤング率4.5GPa、アスペクト比38)に変更する以外は実施例1と同様にして、水硬性成形体を作製した。得られた結果を表1に示す。
角柱形状の成形体成形時に、断面径13mmの鉄筋を、供試体の断面中央部(100mm×100mmの中心)に来るように型枠に配置する操作を加える以外は実施例1と同様にして、鉄筋コンクリート構造物を作製した。得られた結果を表1に示す。
角柱形状の成形体成形時に、断面径13mmの鉄筋を、供試体の断面中央部(100mm×100mmの中心)に来るように型枠に配置する操作を加える以外は実施例2と同様にして、鉄筋コンクリート構造物を作製した。得られた結果を表1に示す。
使用する水を水道水とする以外は実施例1と同様にして、コンクリート構造物を作製した。得られた結果を表1に示す。
使用する水を水道水とする以外は実施例2と同様にして、コンクリート構造物を作製した。得られた結果を表1に示す。
PVA繊維の代わりに炭素繊維を0.5体積%添加する以外は実施例1と同様にして、コンクリート構造物を作製した。炭素繊維は、東邦テナックス株式会社製ベスファイト(ヤング率230GPa)を繊維長10mmの短繊維にカット(アスペクト比1000)して使用した。得られた結果を表1に示す。
PVA繊維を添加しない以外は実施例1と同様にして、水硬性成形体を作製した。得られた結果を表1に示す。
繊維を使用しない以外は実施例3と同様にして、コンクリート構造物を作製した。尚、鉄筋は断面径13mmのものが、供試体の断面中央部(100mm×100mmの中心)に来るように配置した。得られた結果を表1に示す。
使用する繊維の添加率を0.05体積%とする以外は実施例1と同様にして、コンクリート構造物を作製した。得られた結果を表1に示す。
Claims (6)
- セメントと骨材とヤング率が3〜100GPaの耐アルカリ性有機繊維を含み、前記耐アルカリ性有機繊維の含有量がコンクリート体積に対して0.1〜5体積%である、海水で練り混ぜたことを特徴とする、繊維補強コンクリート。
- 前記耐アルカリ性有機繊維のアスペクト比が10〜500である、請求項1に記載の繊維補強コンクリート。
- 前記耐アルカリ性有機繊維の単繊維繊度が100〜10000dtexである、請求項1または2に記載の繊維補強コンクリート。
- 前記耐アルカリ性有機繊維がポリビニルアルコール系繊維である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維補強コンクリート。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維補強コンクリートを硬化させることによって得られたコンクリート構造物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維補強コンクリートを硬化させることによって得られた鉄筋コンクリート構造物。
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