JP2016067807A - ストロー管、並びに精液又は受精卵の凍結保存方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】精子・受精卵の凍結保存の際における別途の煩雑な手順などを必要とせず、なおかつ高い確実性で氷晶を形成させることが可能な植氷手段の提供。
【解決手段】中空部2内に精液又は受精卵を含む溶液が収容されるストロー管Aであって、一端A1側に形成された栓部1が、中空部2側から順に内側栓11、粉末層12、外側栓13の三層で構成され、粉末層が、吸湿凝固材粉末及び氷核物質を含有する混合粉末で形成されたストロー管Aであって、予めストロー管の栓部1内に含有させた氷核物質が凍結の際に氷核として機能し、精子・受精卵の凍結を行う際に、作業者が、従来の凍結手順のみにより、別途の煩雑な手順を行わなくても自動的に植氷させることができ、また、ストロー管内の精液又は受精卵を含む溶液と接する位置に予め氷核物質を留置させ、氷核の植え付けを行うことにより、高い精度・確実性で氷晶を形成させることができるような構成とする。
【選択図】図1
【解決手段】中空部2内に精液又は受精卵を含む溶液が収容されるストロー管Aであって、一端A1側に形成された栓部1が、中空部2側から順に内側栓11、粉末層12、外側栓13の三層で構成され、粉末層が、吸湿凝固材粉末及び氷核物質を含有する混合粉末で形成されたストロー管Aであって、予めストロー管の栓部1内に含有させた氷核物質が凍結の際に氷核として機能し、精子・受精卵の凍結を行う際に、作業者が、従来の凍結手順のみにより、別途の煩雑な手順を行わなくても自動的に植氷させることができ、また、ストロー管内の精液又は受精卵を含む溶液と接する位置に予め氷核物質を留置させ、氷核の植え付けを行うことにより、高い精度・確実性で氷晶を形成させることができるような構成とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、中空部内に精液又は受精卵を含む溶液が収容されるストロー管であって、一端側に形成された栓部が、中空部側から順に内側栓、粉末層、外側栓の三層で構成され、粉末層が吸湿凝固材粉末及び氷核物質を含有する混合粉末で形成されたストロー管、そのストロー管に精液又は受精卵を封入した精液封入ストロー及び受精卵封入ストロー、精液又は受精卵の凍結保存方法などに関連する。
人工授精や受精卵移植は、家畜改良の促進や優良種畜の高度利用を図る上で、極めて重要な技術であり、牛をはじめとする畜産分野などで世界的に広く利用されている。
人工授精は、自然交配の代わりに人為的に精液を雌の生殖器内に注入し、受精・妊娠させる技術である。例えば、牛などの人工授精では、ストロー管を用いた方法が最も一般的である。この方法では、まず、希釈精液をストロー管に封入し、急速凍結法により凍結し、液体窒素内で保存する。そして、人工授精の際には、ストロー管内の凍結精液を融解し、そのストロー管を注入器に装填し、注入器の先端を雌の子宮頚管内などまで押し進め、精液を注入する。人工授精用ストロー管として、例えば、特許文献1には、管の一端部内に、中栓、粉末糊、押栓が順次挿入された家畜精液アンプルが記載されている。
また、受精卵移植(胚移植)は、受精卵(胚)を雌個体の生殖器内に移植し妊娠させる技術である。その際、受精卵の保存にもストロー管が広く用いられている。例えば、牛などで広く実用化されている体内受精卵移植の場合、まず、供卵雌に過排卵処理及び人工授精を行った後、その雌から受精卵(桑実胚、胚盤胞)を採取し、耐凍剤などとともに1個ずつストロー管に封入し、緩慢凍結法、ガラス化保存法、超急速ガラス化保存法などにより凍結保存する。そして、受精卵移植の際には、ストロー管内の凍結胚を融解し、融解胚の収容された胚移植用ストローを移植器に装填し、その移植器の先端を受卵雌の子宮内まで押し進め、胚を移植する。受精卵移植用のストロー管として、例えば、特許文献2には、一端の開口側から、繊維層、ゼラチン層、合成繊維層が順次充填された受精卵収容ストローが記載されている。
人工授精や受精卵移植での凍結保存の際、精液又は受精卵を含む溶液を冷却していくと、過冷却状態(氷晶形成温度以下になっても氷晶が形成されない状態)となる。過度の過冷却状態が進んでから氷晶形成が起きると、氷晶が大きくなって細胞内凍結を生じ、細胞が障害される。そこで、冷却中にそれらの溶液が過度の過冷却になることを避けるため、植氷操作を行うことが好ましい。ここで、植氷とは、過冷却状態の溶液に、その温度で成長できる氷核を植え、氷晶形成を誘導することをいう。通常の植氷操作では、溶液の氷晶点近傍のそれよりも少し低い温度で氷核を植え付け、氷晶形成を誘起させる。植氷操作により、過冷却状態が過度になる前に細胞外液に氷晶形成を誘起でき、それによって細胞内凍結(細胞傷害)を抑制できる。
現在、牛の人工授精の現場では、植氷操作を行わなくても融解後における精子生存性を実用レベルで維持できているため、精液の凍結保存の際、植氷操作の手順はほとんど行われていない。しかし、植氷操作を行って牛精液を凍結すると、融解後における精子生存性が向上することが明らかになっている。また、例えば、豚の人工授精では、精子の耐凍能や人工授精後の受胎率・産仔数に大きなばらつきがあり、その大きな要因が凍結・融解後の精子生存性の低下にあるとされている。そして、植氷操作を行って豚精液を凍結すると、融解後における精子生存性が向上することが明らかになっている。
一方、牛などの受精卵移植の現場では、氷晶点近傍のそれより低い温度にストロー管を保ちながら、ピンセットを液体窒素で冷却し、そのピンセットでストロー管の外側を挟むことによって行う植氷操作が実際に広く行われている。この操作は、比較的簡易な操作で植氷を行うことができる一方、人為的な操作によるため非効率であり、また、植氷が不確実になりやすい。
人工授精及び受精卵移植での凍結保存において、ヨウ化銀を氷核物質として用いる植氷操作が検討されている。ここで、氷核物質とは、氷晶形成の氷核として機能する物質である。例えば、非特許文献1では、ストロー管による豚精液の凍結保存において、直径3mmの固定化ヨウ化銀1個を精液とともにストロー管内に封入して凍結することで、融解後の精子生存性及び受胎率が向上したことが報告されている。また、例えば、特許文献3には、胚と固定化ヨウ化銀を入れた保存液をストロー管内に封入し、胚を凍結保存する技術が記載されている。
実公昭48-7582号公報
実開平8-862号公報
特公平3-1013号公報
「豚精液処理法が凍結融解後の精子生存性及び受胎性に及ぼす影響」、中島浄・土肥朋子、富山県畜産試験場研究報告第12号p9-14(1995).
上述の通り、人工授精や受精卵移植において、凍結保存の際の植氷操作は、融解後の精子・受精卵の生存性を向上させる上で重要である。しかし、確実性の高い植氷操作を行うためには、植氷のための特別な手順・工程などが別途必要であり、操作が煩雑となる。
そこで、本発明では、精子・受精卵の凍結保存において、別途の煩雑な手順などを必要とせず、なおかつ高い確実性で植氷することが可能な手段を提供することなどを目的とする。
本発明では、中空部内に精液又は受精卵を含む溶液が収容されるストロー管であって、一端側に形成された栓部が、前記中空部側から順に内側栓、粉末層、外側栓の三層で構成され、前記粉末層が、吸湿凝固材粉末及び氷核物質を含有する混合粉末で形成されたストロー管を提供する。
このストロー管では、栓部を形成する一端側において、内側栓と外側栓の間に粉末層を挟み込むとともに、粉末層に氷核物質を含有させておく。そして、例えば、精液又は受精卵を含む溶液をストロー管に注入し、中空部内にその溶液を貯留させると、その溶液は内側栓から浸潤し粉末層の辺りにまで到達する。精液又は受精卵の凍結保存の際には、精液又は受精卵を含む溶液が粉末層中の氷核物質にも接しているため、その氷核物質が凍結手順の際に氷核として機能し、氷晶形成が誘導される。また、精液又は受精卵を含む溶液が粉末層まで浸潤するため、粉末層中の吸湿凝固材粉末がその水分を吸湿してゲル状などに凝固する。これにより、凍結前から融解後に到るまで、ストロー管の栓部の側が略閉封され、そちら側からの溶液の漏洩・流失が防止される。
本発明では、予め、ストロー管の栓部内に氷核物質を含有させており、その氷核物質が凍結の際に氷核として機能するため、精子・受精卵の凍結手順を行う際に、その作業者は、従来の凍結手順のみで別途の煩雑な手順などを行わなくても自動的に植氷させることができる。
また、本発明では、精子・受精卵の凍結手順を行う際、精液又は受精卵を含む溶液と氷核物質が実際に接するため、氷核物質が凍結手順の際に氷核として有効に機能する。即ち、本発明では、精子・受精卵の凍結を行う作業者の人為的な操作によってではなく、ストロー管内の精液又は受精卵を含む溶液と接する位置に予め氷核物質を留置させることによって氷核の植え付けを行うため、高い精度・確実性で氷晶を形成させることができる。
このように、精子・受精卵の凍結保存の際、簡易かつ高い確実性で植氷でき、過度の過冷却状態にならずに氷晶を形成させることができるため、精子又は受精卵の凍結保存の手順を効率的に行うことができ、凍結融解時の細胞傷害を抑制して融解後における精子又は受精卵の生存性を向上することができる。これによって、人工授精や受精卵移植の際の受胎率も向上でき、また、人工授精の場合は、一本当たりのストロー管に封入する精子数を減らすことができるため、採取した精子を効率的に利用することができる。
加えて、本発明では、ストロー管の中空部内の精液又は受精卵を含む溶液と氷核物質とが内側栓によって略隔離され、内側栓が隔壁として機能するため、精子又は受精卵と氷核物質とが直接接触しない。従って、本発明には、精液又は受精卵を含む溶液への氷核物質の混入、さらには人工授精や受精卵移植を受ける個体に対する氷核物質の曝露とそれによる安全性・毒性への懸念を極力排除できるという有利性がある。その他、本発明では、人工授精や受精卵移植の際に、氷核物質を分離又は回収する手順も不必要となる。
本発明により、精子・受精卵の凍結保存の際において、別途の煩雑な手順などをせずに、高い確実性で植氷することができる。
<本発明に係るストロー管について>
本発明は、中空部内に精液又は受精卵を含む溶液が収容されるストロー管であって、一端側に形成された栓部が、前記中空部側から順に内側栓、粉末層、外側栓の三層で構成され、前記粉末層が、吸湿凝固材粉末及び氷核物質を含有する混合粉末で形成されたストロー管を広く包含する。以下、図1を用いて、その例を説明する。なお、本発明は、この実施形態のみに狭く限定されない。
本発明は、中空部内に精液又は受精卵を含む溶液が収容されるストロー管であって、一端側に形成された栓部が、前記中空部側から順に内側栓、粉末層、外側栓の三層で構成され、前記粉末層が、吸湿凝固材粉末及び氷核物質を含有する混合粉末で形成されたストロー管を広く包含する。以下、図1を用いて、その例を説明する。なお、本発明は、この実施形態のみに狭く限定されない。
図1は、本発明に係るストロー管の例を示す長手方向断面の模式図である。
図1のストロー管Aは、底端A1及び上端A2の開口した細長円筒状部材で形成され、その筒内には、一端側(底端A1側)に形成された栓部1と、精液又は受精卵を含む溶液が収容される中空部2と、他端側(上端A2側)に形成された閉栓3とを備え、栓部1は、中空部2側から順に内側栓11、粉末層12、外側栓13の三層で構成されている。
ストロー管Aは、両端A1、A2が開口した中空の細長円筒状部材で形成される。ストロー管Aには、人工授精又は受精卵移植で用いられているものを広く採用できる。例えば、牛の人工授精又は受精卵移植などでは、無色又は着色透明で、容量が0.25mL又は0.5.mLであり、内径1.6〜3.0mm、長さ133mmの合成樹脂製のストロー管が汎用されており、本発明でも採用できる。
ストロー管Aの素材については、任意のものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂を押出成型したものが、使い捨て可能で生産性・操作性も高く、広く利用されている。
栓部1は、ストロー管Aの底端A1近傍に形成され、ストロー管Aの中空部2の底端A1側で略閉塞させる構造である。内側栓11、粉末層12、外側栓13の三層で構成される。
栓部1は、例えば、ストロー管の底端A1近傍の位置に、同底端A1側より、内側栓11、粉末層12、外側栓13を順次詰め込むことにより形成することができる。
内側栓11は、栓部1内の最も中空部2側に位置する層で、上端A2側が中空部2に、底端A1側が粉末層12に、側面がストロー管の内壁面に、それぞれ面している。
内側栓11は、中空部2内に収容される精液又は受精卵を含む溶液をストロー管A内に略隔離する機能を有し、同時に、その溶液を浸潤させ、粉末層12にまで到達させる機能を有する。
内側栓11の素材については、精液又は受精卵を含む溶液が浸潤できるものであればよく、公知のものを用いることができ、特に限定されない。例えば、脱脂綿、グラスファイバー、綿糸、セルロ−スやアセテ−トなどからなる半合成繊維、ポリエステル・ポリアミド・ポリアクリル・ポリオレフィンなどからなる合成繊維などを用いることができる。
なお、精液又は受精卵をストロー管Aに収容する手順において、例えば、ストロー管Aの底端A1側で吸入しながら(符号X1参照)上端A2側より精液又は受精卵を含む溶液を供給することで(符号X2参照)、その溶液をストロー管A内に収容する場合がある。従って、内側栓11は、栓部1形成後も、管A内外の空気の流通が可能な素材で形成することが好ましい。
また、例えば、人工授精や受精卵移植の手順において、精液又は受精卵を含む溶液をストロー管Aから脱出させる場合、底端A1側から押し出し棒を挿入して他端側(上端A2側)に向けて押し込み(符号X3参照)、収容物を管A外に脱出させる(符号X4参照)場合がある。従って、内側栓11は、ストロー管Aの内壁に接着固着せず、摺動自在な状態で設置されていることが好ましい。
内側栓11の長さ(長手方向の長さ、符号X5)は2.0〜4.5mmであることが好適であり、2.0〜4.0mmであることがより好適であり、2.0〜3.5mmであることが最も好適である。
内側栓11の長さを通常の長さ(例えば、外側栓13の長さ)よりも短くすることにより、精液又は受精卵を含む溶液を粉末層12にまで到達させる機能を維持できるため、精子・受精卵の凍結手順を行う際において、作業者は従来の凍結手順を変更せずに、高い確実性で自動的に植氷させることができる。
粉末層12は、内側栓11及び外側栓13に挟まれた層で、両者によって、粉末が、ストロー管の底端A1近傍の一定の位置に留置されている。
粉末層12は、吸湿凝固材粉末及び氷核物質を少なくとも含有する混合粉末で形成される。粉末層12は、原則的には、吸湿凝固材粉末と氷核物質の混合粉末で形成されていればよいが、この二つの粉末を含有していれば、目的・用途に応じて、他の物質の粉末などをさらに含有していてもよい。
粉末層12の長さは、(長手方向の長さ、符号X6)は1.0〜2.5mmであることが好適であり、1.2〜2.0mmであることがより好適である。粉末層12の長さを短くすることにより、例えば、精液又は受精卵をストロー管Aに収容する手順で、ストロー管Aの底端A1側から吸入する場合(符号X1参照)において、ストロー管A内外の空気の流通を確保でき、吸入圧の大幅な上昇を防止できる。
粉末層12中の吸湿凝固材粉末は、水分を吸収することで凝固・固形化し、さらにその状態を長期間維持できる素材である。吸湿凝固材粉末として、例えば、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ゼラチンパウダーなどの粉末材を採用できる。
栓部1内に吸湿凝固材粉末を含有させておくことで、精液又は受精卵を含む溶液をストロー管A内に収容し、その溶液が内側栓11を浸透して粉末層12にまで到達した際、その水分により、吸湿凝固材粉末が凝固・固形化し、ストロー管Aの底端A1側が自動的に密栓化される。これにより、ストロー管Aの底端A1側からの溶液の漏出を防止できる。
例えば、人工授精や受精卵移植の手順において、精液又は受精卵を含む溶液をストロー管Aから脱出させる場合、底端A1側から押し出し棒を挿入して他端側(上端A2側)に向けて押し込み、収容物を管A外に脱出させる場合があるため、粉末層12中の粉末は、管Aの内壁に接着固着しにくい素材であることが好ましい。
その観点より、吸湿凝固材粉末はアルギン酸ナトリウムであることが最も好ましい。吸湿凝固材粉末にアルギン酸ナトリウムの粉末を採用することにより、精液又は受精卵をストロー管Aに収容することで粉末層12が湿潤になった場合でも、氷核物質、特にヨウ化銀の粉末のストロー管A内壁面への付着を抑制できる。そのため、精子・受精卵の凍結する手順においても、作業者は従来の凍結手順を変更せずに、高い確実性で自動的に植氷させることができる。また、精液又は受精卵を含む溶液をストロー管Aから脱出させる際の操作の煩雑化を防止できる。
氷核物質は、氷晶形成の氷核として機能する物質である。栓部1内に氷核物質を含有させておくことで、精液又は受精卵の凍結保存の際、精液又は受精卵を含む溶液が粉末層12中の氷核物質にも接しているため、その氷核物質が凍結手順の際に氷核として機能し、氷晶形成が誘導される。従って、精子・受精卵の凍結手順を行う際、その作業者は、従来の凍結手順のみで別途の煩雑な手順などを行わなくても、高い確実性で自動的に植氷させることができる。
本発明では、氷核物質については、公知のものを採用でき、特に限定されないが、例えば、粉末層12における氷核物質がヨウ化銀であることが最も好適である。
ヨウ化銀は氷晶形成の氷核として有効に機能する物質であるため、氷核物質にヨウ化銀を採用することにより、精子・受精卵の凍結手順を行う際、別途の煩雑な手順を行わずに、高い確実性で植氷させることができる。
ヨウ化銀としては、略顆粒状・略微粉末状など、固形のヨウ化銀を広く包含し、特に限定されない。また、ヨウ化銀の粒径などについても、目的・用途などに応じて適宜設定することができる。その他、ヨウ化銀として、固定化ヨウ化銀を用いてもよい。固定化ヨウ化銀は、公知の方法により入手できる。ヨウ化銀の固定化方法は、例えば、上述の特許文献3などにも記載されている。
粉末層12におけるヨウ化銀の含有率は21%〜70%であることが好適であり、23%〜60%であることがより好適であり、25%〜50%であることが最も好適である。
粉末層12中に少なくとも21%以上、より好適には23%以上、最も好適には25%以上のヨウ化銀を含有させることにより、精子・受精卵の凍結手順を行う際、高い確実性で自動的に植氷させることができる。一方、コストの観点からはヨウ化銀の混合割合が少ないほど有利であり、また、吸湿凝固材粉末を有効量含有させる必要がある。この観点より、粉末層12におけるヨウ化銀の好適な含有率は70%以下であり、より好適には60%以下、最も好適には50%以下である。即ち、この観点では、粉末層における氷核物質がヨウ化銀であり、前記粉末層中におけるヨウ化銀の含有率が21%〜70%であることが好適であり、粉末層における氷核物質がヨウ化銀であり、前記粉末層中におけるヨウ化銀の含有率が23%〜60%であることがより好適であり、粉末層における氷核物質がヨウ化銀であり、前記粉末層中におけるヨウ化銀の含有率が25%〜50%であることが最も好適である。
外側栓13は、栓部1内の最も外側に位置する層である。外側栓13は、原則的には、内側栓11と同じ素材を採用できるが、溶液不浸透性の素材を採用してもよい。
外側栓13は、内側栓11と同様、栓部1形成後も、管A内外の空気の流通が可能な素材で形成することが好ましく、また、管Aの内壁に接着固着せず、摺動自在な状態で設置されていることが好ましい。
外側栓13の長さ(長手方向の長さ、符号X7)は、特に限定されず、例えば、通常のストロー管と同様の長さ(例えば、約6mm)に設定してもよい。
中空部2は、ストロー管A内の中央付近に形成された中空部分で、栓部1と閉栓3との間の部分であり、精液又は受精卵を含む溶液を収容する部位である。
例えば、精液を凍結・冷凍保存・融解などする際には、公知の希釈液などで調製された精液をストロー管内に挿入し、中空部2に収容する。また、例えば、受精卵を凍結・冷凍保存・融解などする際には、公知の耐凍液・保存液などで調製された受精卵をストロー管内に挿入し、中空部2に収容する。なお、本発明に係る受精卵は、受精卵移植に供されるもの、即ち、受精卵から桑実胚・胚盤胞などにまで卵割・分化したものも広く包含する。
精液又は受精卵を含む溶液を収容する際には、中空部2の全領域がその溶液で満たされている必要はなく、目的・用途などに応じて、適宜、一又は複数の空気域(気泡域)や他の溶液を入れた領域などが形成されていてもよい。
精液又は受精卵を含む溶液を収容する手順は、公知のものを広く採用できる。例えば、ストロー管Aの底端A1側から吸入する(符号X1参照)とともに、上端A2側から精液又は受精卵を含む溶液を管A内に注入し(符号X2参照)、中空部2内に精液又は受精卵を含む溶液を収容してもよい。
閉栓3は、中空部2内に精液又は受精卵を含む溶液を収容した後における、ストロー管Aの他端側(上端A2側、即ちストロー管Aの両端のうち、栓部1の形成されたA1側の反対側)の閉封部位である。
ストロー管Aの一端側(底端A1側)に形成された栓部1と、他端側(上端A2側)に形成された閉栓3により、中空部2に収容された精液又は受精卵を含む溶液を略密閉し、その漏出を防止する。
他端側(上端A2側)の閉封方法(即ち、閉栓3の形成方法)は、公知の方法を広く採用でき、特に限定されない。例えば、中空部2内に精液又は受精卵を含む溶液を収容した後、他端側(上端A2側)に蝋又は上述の吸湿凝固材で閉栓してもよいし、熱圧着などにより閉封してもよい。
<本発明に係る精液封入ストローについて>
本発明は、上述のストロー管Aの中空部2内に精液を含む溶液が収容され、他端側が閉封された精液封入ストロー、並びにその精液封入ストローを用いる手順を含む人工授精方法を広く包含する。
本発明は、上述のストロー管Aの中空部2内に精液を含む溶液が収容され、他端側が閉封された精液封入ストロー、並びにその精液封入ストローを用いる手順を含む人工授精方法を広く包含する。
例えば、(1)ストロー管Aの一端側(底端A1側)に、内側栓11、粉末層12、外側栓13の構成部材を順に挿入し、栓部1を形成する手順と、(2)ストロー管Aの底端A1側から吸入する(符号X1参照)とともに、上端A2側から精液を含む溶液を管A内に注入する(符号X2参照)ことで、そのストロー管の中空部2内に精液を含む溶液を注入・収容する手順と、(3)他端側(上端A2側)を閉封する手順と、を少なくとも含む方法により、精液封入ストローを作製できる。
続いて、本発明に係る人工授精方法では、例えば、(4)この精液封入ストローを凍結し、保存する手順と、(5)その精液封入ストローを融解し、人工授精用の注入器に装填する手順と、(6)その注入器を用いて精液を注入する手順と、を含む。
本発明に係る精液封入ストローを用いることで、精液の凍結・保存手順は、従来方法と同様の手順で行うことができる。そして、本発明に係る精液封入ストローが栓部1内に氷核物質を含有しているため、従来の凍結手順を変更せずに、高い確実性で自動的に植氷させ、氷晶を形成できる。
本発明に係る精液封入ストローを用いることで、精液の融解手順は、従来方法と同様の手順で行うことができる。本発明に係る精液封入ストローでは自動的な植氷操作により高い確実性で氷晶を形成しており、凍結融解時の細胞傷害を抑制しているため、融解後における精子の生存性が高い。
精液封入ストローの融解後、他端側(上端A2側)の閉栓3近傍をストローカッターなどで切り落とし(符号X8参照)、そのストロー管Aを人工授精用の注入器に装填する。
そして、人為的な作業で、注入器の先端を雌の子宮頚管内などまで押し進め、注入器の操作によって、ストロー管Aの一端側(底端A1側)から押し出し棒を管内に挿入し(符号X3参照)、ストロー管Aの他端側(上端A2側)へ収容物を押し出すことで、精液がストロー管から脱出し(符号X4参照)、雌の子宮頚管内などに注入される。
本発明では、自動的な植氷操作により高い確実性で氷晶を形成しており、融解後における精子の生存性が高いため、一本当たりのストロー管に封入する精子数を減らすことができるため、採取した精子を効率的に利用することができ、また、人工授精による受胎率も向上できる。
<本発明に係る受精卵封入ストロー>
本発明は、上述のストロー管Aの中空部2内に受精卵を含む溶液が収容され、他端側が閉封された受精卵封入ストロー、並びにその受精卵封入ストローを用いる手順を含む受精卵移植方法を広く包含する。
本発明は、上述のストロー管Aの中空部2内に受精卵を含む溶液が収容され、他端側が閉封された受精卵封入ストロー、並びにその受精卵封入ストローを用いる手順を含む受精卵移植方法を広く包含する。
例えば、(1)ストロー管Aの一端側(底端A1側)に、内側栓11、粉末層12、外側栓13の構成部材を順に挿入し、栓部1を形成する手順と、(2)ストロー管Aの底端A1側から吸入する(符号X1参照)とともに、上端A2側から受精卵を含む溶液を管A内に注入する(符号X2参照)ことで、そのストロー管の中空部2内に受精卵を含む溶液を収容する手順と、(3)他端側(上端A2側)を閉封する手順と、を少なくとも含む方法により、受精卵封入ストローを作製できる。
続いて、本発明に係る受精卵移植方法では、例えば、(4)この受精卵封入ストローを凍結し、保存する手順と、(5)その受精卵封入ストローを融解し、受精卵移植用の注入器に装填する手順と、(6)その注入器を用いて受精卵を移植する手順と、を含む。
本発明に係る受精卵封入ストローを用いることで、受精卵の凍結・保存手順は、従来方法と同様の手順で行うことができる。そして、本発明に係る受精卵封入ストローが栓部1内に氷核物質を含有しているため、従来の凍結手順を変更せずに、高い確実性で自動的に植氷させ、氷晶を形成できる。
本発明に係る受精卵封入ストローを用いることで、受精卵の融解手順は、従来方法と同様の手順で行うことができる。本発明に係る受精卵封入ストローでは自動的な植氷操作により高い確実性で氷晶を形成しており、凍結融解時の細胞傷害を抑制しているため、融解後における受精卵の生存性が高い。
受精卵封入ストローの融解後、他端側(上端A2側)の閉栓3近傍をストローカッターなどで切り落とし(符号X8参照)、直接、又は耐凍液除去手順後に収容したストロー管を受精卵移植用の注入器に装填する。
そして、人為的な作業で、注入器の先端を雌の子宮内などまで押し進め、注入器の操作によって、ストロー管Aの一端側(底端A1側)から押し出し棒を管内に挿入し(符号X3参照)、ストロー管Aの他端側(上端A2側)へ収容物を押し出すことで、受精卵がストロー管から脱出し(符号X4参照)、受精卵が雌の子宮内などに移植される。
本発明では、自動的な植氷操作により高い確実性で氷晶を形成しており、融解後における受精卵の生存性が高いため、受精卵移植による受胎率も向上できる。
<本発明に係る精液又は受精卵の凍結保存方法>
本発明は、上述のストロー管Aの中空部2内に精液又は受精卵を含む溶液を収容し、他端側A2を閉封する手順と、ストロー管A内に収容された精液又は受精卵を凍結する手順と、を含む精液又は受精卵の凍結保存方法を広く包含する。
本発明は、上述のストロー管Aの中空部2内に精液又は受精卵を含む溶液を収容し、他端側A2を閉封する手順と、ストロー管A内に収容された精液又は受精卵を凍結する手順と、を含む精液又は受精卵の凍結保存方法を広く包含する。
上述のように、本発明に係るストロー管Aは栓部1内に氷核物質を含有しているため、従来の凍結手順を変更せずに、高い確実性で自動的に植氷させ、氷晶を形成することができる。
そのため、例えば、本発明に係るストロー管Aの中空部2内に精液又は受精卵を含む溶液を充填し、他端側A2を閉封した後、ストロー管A内に収容された精液又は受精卵を凍結することにより、凍結融解時の細胞傷害を抑制でき、融解後における精子又は受精卵の生存性を高くできる。
実施例1では、本発明に係るストロー管を試作するとともに、精液凍結保存の際の氷晶形成に有効な粉末層の組成、即ち吸湿凝固材粉末とヨウ化銀との混合比率を検討した。
0.5mL容量のストロー管の一方の開口端から、内側栓用の脱脂綿、粉末層用の混合粉末、外側栓用の脱脂綿を順次挿入し、ストロー管の一端側に、三層で構成された栓部を形成した。
混合粉末に含有させる吸湿凝固材粉末にはポリビニルアルコール粉末を採用し、混合粉末として、ポリビニルアルコール粉末とヨウ化銀粉末を混合したものを用いた。ヨウ化銀には、ナカライテスク社製の顆粒(純度98%)を刃付粉砕機で微粉末状にしたものを用いた。一つのストロー管当たりのヨウ化銀の挿入量を10gとし、粉末中のヨウ化銀の含有率が容積比でそれぞれ10%、20%、30%、50%になるように、ヨウ化銀10gと所定量のポリビニルアルコール粉末を混合し、その混合粉末を各ストロー管に挿入した。
なお、一般的な牛人工授精用ストローでは、内側栓及び外側栓の長さは両者とも6mm程度にするのが通常であるが、本発明者による予備試験の結果、内側栓の長さを2.0〜4.5mmの範囲に設定し、内側栓の長さを通常よりも短くした方が、精液凍結の際、氷晶を形成しやすいことが分かった。そこで、本実施例では、内側栓の長さが約3.5mm、外側栓の長さが約6.0mmになるようにした。
試作したそれぞれのストロー管の中空部内に、吸引により6.5%グリセロール水溶液を収容して他端側を閉封した後、それらのストロー管を、-7℃のアルコールバス(富士平工業株式会社製プログラムフリーザー「ET-1」)内に横置きし、肉眼で氷晶形成を評価した。氷晶形成の評価は次の基準で行った。ストロー管をアルコールバス内に置いてから1分以内に内側栓側より封入液に氷晶が形成されたものを3点、同1〜1.5分以内に内側栓側より封入液に氷晶が形成されたものを2点、同1.5〜5分以内に内側栓側より封入液に氷晶が形成されたものを1点、5分経過後も封入液に氷晶が形成されなかったものを0点。
その結果、粉末層におけるヨウ化銀の含有率が10%であった試作ストロー管では、試作した計5本中、4本で5分以内に氷晶が形成され、残りの1本は5分経過後も氷晶は形成されず、評価点は15点満点で4点であった。粉末層におけるヨウ化銀の含有率が20%であった試作ストロー管では、試作した計10本中、4本で1分以内に氷晶が形成され、5本で5分以内に氷晶が形成され、残りの1本は5分経過後も氷晶は形成されず、評価点は30点満点で17点であった。粉末層におけるヨウ化銀の含有率が30%であった試作ストロー管では、試作した計10本中、5本で1分以内に氷晶が形成され、2本で1.5分以内に氷晶が形成され、3本で5分以内に氷晶が形成され、評価点は30点満点で22点であった。粉末層におけるヨウ化銀の含有率が50%であった試作ストロー管では、試作した計5本の全てで1分以内に氷晶が形成され、評価点は15点満点であった。
以上のように、粉末層におけるヨウ化銀の含有率が30%及び50%であった場合、全てのストロー管で氷晶が形成された。コストの観点からはヨウ化銀の混合割合が少ないほど有利であり、また、吸湿凝固材粉末の凝固作用を維持するために吸湿凝固材粉末の含有割合もある程度維持する必要がある。それらの観点も考慮し、粉末層におけるヨウ化銀の含有率は21%〜70%が好適であり、23%〜60%がより好適であり、25%〜50%が最も好適であると判断した。
実施例2では、混合粉末に含有させる吸湿凝固材粉末をアルギン酸ナトリウムにして、本発明に係るストロー管を試作した。
実施例1と同様、0.5mL容量のストロー管の一方の開口端から、内側栓用の脱脂綿、粉末層用の混合粉末、外側栓用の脱脂綿を順次挿入し、ストロー管の一端側に、三層で構成された栓部を形成した。混合粉末として、アルギン酸ナトリウムとヨウ化銀粉末を混合したものを用いた。粉末層中のヨウ化銀の含有率を容積比で30%に調整した。内側栓の長さを3.0mm、粉末層の長さを2.0mm、外側栓の長さを6.0mmにした。
試作したストロー管の中空部内に、吸引により6.5%グリセロール水溶液を収容した。その結果、その溶液が内側栓及び粉末層にまで浸潤した。次に、他端側を閉封した後、実施例1と同様に凍結処理を行った。その結果、実施例1と同様、短時間で氷晶を形成されることができた。
次に、凍結したストロー管を融解し、栓部の形成された側に押し出し棒を挿入して他端側に向けて押し込み、収容物を脱出させた。その結果、混合粉末がストロー管の内壁面に付着することなく、管内で栓部を円滑に移動させることができ、かつ収容物を円滑に脱出させることができた。
上述の通り、人工授精・受精卵移植などにおいて、凍結保存の際の植氷操作は、融解後の精子・受精卵の生存性を向上させる上で重要である。それに対し、本発明に係るストロー管では、精子・受精卵の凍結保存の手順において自動的に植氷する機能が付加されている。従って、本発明は、別途の煩雑な手順などを必要とせず、なおかつ高い確実性で植氷できる点で、精子・受精卵などの凍結保存に有用である。
特に、本発明では、ストロー管内の精液又は受精卵を含む溶液と接する位置に予め氷核物質を留置させることによって氷核の植え付けを行うため、凍結融解時の細胞傷害を抑制して融解後における精子又は受精卵の生存性を向上することができ、さらに人工授精や受精卵移植の際の受胎率を向上できる。従って、牛・豚・馬などの非ヒト哺乳動物の人工授精・受精卵移植における凍結の手順、さらにはヒトを含む哺乳動物の人工授精・受精卵移植における凍結の手順などにおいて、有用な可能性がある。
その他、近年、牛の人工授精では受胎率が低下しており、問題となっている。それに対し、本発明は、凍結融解時の細胞傷害を抑制して融解後における精子の生存性を向上することができるため、牛の人工授精における受胎率の向上にも有効な可能性がある。
1 栓部
11 内側栓
12 粉末層
13 外側栓
2 中空部
3 閉栓
A ストロー管
11 内側栓
12 粉末層
13 外側栓
2 中空部
3 閉栓
A ストロー管
Claims (7)
- 中空部内に精液又は受精卵を含む溶液が収容されるストロー管であって、
一端側に形成された栓部が、前記中空部側から順に内側栓、粉末層、外側栓の三層で構成され、
前記粉末層が、吸湿凝固材粉末及び氷核物質を含有する混合粉末で形成されたストロー管。 - 前記粉末層における氷核物質がヨウ化銀であり、
前記粉末層中におけるヨウ化銀の含有率が21%〜70%である請求項1記載のストロー管。 - 前記吸湿凝固材粉末がアルギン酸ナトリウムである請求項1又は請求項2記載のストロー管。
- 前記内側栓の長さが2.0〜4.5mmである請求項1〜3のいずれか一項記載のストロー管。
- 請求項1〜4のいずれか一項記載のストロー管の前記中空部内に精液を含む溶液が収容され、他端側が閉封された精液封入ストロー。
- 請求項1〜4のいずれか一項記載のストロー管の前記中空部内に受精卵を含む溶液が収容され、他端側が閉封された受精卵封入ストロー。
- 請求項1〜4のいずれか一項記載のストロー管の前記中空部内に精液又は受精卵を含む溶液を収容し、他端側を閉封する手順と、
前記ストロー管内に収容された精液又は受精卵を凍結する手順と、を含む精液又は受精卵の凍結保存方法。
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JP2014203015A JP2016067807A (ja) | 2014-10-01 | 2014-10-01 | ストロー管、並びに精液又は受精卵の凍結保存方法 |
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2014
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