JP2016065802A - 水銀を保持するための水銀保持剤ならびにそれを用いる水銀分析方法および水銀分析装置 - Google Patents

水銀を保持するための水銀保持剤ならびにそれを用いる水銀分析方法および水銀分析装置 Download PDF

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尚子 菱田
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幸次 谷田
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Abstract

【課題】水銀分析装置外部の密閉されていない開放雰囲気中において、試料容器に注入された、炭化水素を主成分とする液体試料が気化しても液体試料中の水銀を余すところなく保持することにより高精度で分析できる、水銀保持剤等を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、硫黄および/または硫黄化合物を含み、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガス雰囲気中で400〜500℃に加熱されて水銀が除去された10〜200メッシュの活性炭であり、炭化水素を主成分とする液体試料Sの水銀分析において液体試料S中の水銀を保持するための水銀保持剤Cである。【選択図】図1

Description

本発明は、ナフサ、灯油、ガソリン、重油、LPG(液化石油ガス)などの石油製品、または、ヘプタン、エチレングリコールなどの有機溶媒である、炭化水素を主成分とする液体試料中の水銀分析時に用いる水銀保持剤ならびにそれを用いる水銀分析方法および水銀分析装置に関する。
炭化水素を主成分とするナフサのような試料には、ジメチル水銀などとして水銀が含まれていることがある。これらの水銀は、ナフサから各種の石油化学製品を作るときに用いられるパラジウムや白金などの触媒の能力を劣化させる。このため、炭化水素を主成分とする試料中の水銀を測定して、水銀が一定量以上含まれているような場合は、これを除去するなどの対策を立てる必要がある。
従来、加熱気化水銀分析装置などを用い、密閉されていない開放雰囲気中において試料ボートに炭化水素を主成分とする液体試料を直接注入し、この試料ボートを試料加熱炉の中で加熱することにより、液体試料に含まれる水銀を気化させて測定している。しかし、ナフサ、石油化学製品などに含まれる金属水銀は揮発性が高いため、水銀分析装置の外部空間である密閉されていない開放雰囲気中において試料ボートに液体試料を直接注入すると、測定までの間に液体試料が気化することにより液体試料に含まれる水銀が試料ボートから揮散し、信頼性のある測定をすることができなかった。
そこで、試料ボートにナフサ、ヘプタンなどの液体試料を注入せず、水銀を吸着する、例えば、活性アルミナの吸着剤が充填されたカラムに液体試料を自動注入して測定するクローズドシステム(液体試料が注入から測定まで水銀分析装置の密閉された内部空間で処理されるシステム)の石油製品専用水銀分析装置がある(特許文献1)。
特開2009−53046号公報
しかし、前記石油製品専用水銀分析装置はクローズドシステムであるため、水銀分析装置外部の密閉されていない開放雰囲気中において、炭化水素を主成分とする液体試料を試料容器(試料ボート)に注入して炭化水素を主成分とする液体試料中の水銀を分析することができない。さらに、前記水銀分析装置は炭化水素を主成分とする液体試料専用装置であり、その他の試料に使用できないという問題があった。
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、水銀分析装置外部の密閉されていない開放雰囲気中において、試料容器に注入された、炭化水素を主成分とする液体試料が試料容器から気化しても液体試料中の水銀を余すところなく保持することにより高精度で水銀を分析できる、水銀保持剤ならびにそれを用いる水銀分析方法および水銀分析装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の第1構成にかかる水銀保持剤は、硫黄および/または硫黄化合物を含み、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガス雰囲気中で400〜500℃に加熱されて水銀が除去された10〜200メッシュの活性炭であり、炭化水素を主成分とする液体試料の水銀分析において液体試料中の水銀を保持する。
本発明の第1構成の水銀保持剤は、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガス雰囲気中で400〜500℃に加熱されるので、水銀保持剤中に不純物として含まれていた水銀は加熱気化されて除去される。他方、硫黄は445℃で気化し始めるので、水銀保持剤中に含まれている硫黄および/または硫黄化合物はほぼそのまま残存しており、水銀分析において水銀保持剤中に注入された液体試料が気化しても硫黄および/または硫黄化合物と液体試料中の水銀とが反応して、液体試料中の水銀は硫化水銀として水銀保持剤中に保持され、水銀は揮散することがない。さらに、水銀保持剤は10〜200メッシュであり、含まれている硫黄および/または硫黄化合物と液体試料中の水銀との反応面積が大きくなり効率よく水銀を保持することができる。
よって、本発明の第1構成の水銀保持剤によれば、水銀分析装置外部の密閉されていない開放雰囲気中において、試料容器に注入された、炭化水素を主成分とする液体試料が気化しても液体試料中の水銀を余すところなく保持することができるので、炭化水素を主成分とする液体試料の水銀分析において高精度で分析できる。
本発明の第2構成にかかる水銀分析方法は、本発明の第1構成にかかる水銀保持剤を用いて炭化水素を主成分とする液体試料中の水銀を定量する水銀分析方法であって、前記水銀保持剤を試料容器に収容し、前記試料容器に収容された前記水銀保持剤に液体試料を埋没するように注入器によって注入し、注入された液体試料を加熱して液体試料から水銀ガスを生成し、液体試料から生成された水銀ガスを水銀捕集ユニットによって捕集し、前記水銀捕集ユニットを加熱して水銀ガスを生成し、生成された水銀ガスを分析器に導入して液体試料中の水銀を定量する。
本発明の第2構成の水銀分析方法によれば、試料容器に収容された第1構成にかかる水銀保持剤に液体試料を埋没するように注入器によって注入して炭化水素を主成分とする液体試料中の水銀を分析するので、本発明の第1構成の水銀保持剤と同様の効果を奏することができる。
本発明の第3構成にかかる水銀分析装置は、硫黄および/または硫黄化合物を含む10〜200メッシュの水銀保持剤作製用活性炭またはその水銀保持剤作製用活性炭から水銀が除去された水銀保持剤に埋没するように注入された炭化水素を主成分とする液体試料を収容する試料容器と、前記試料容器を加熱する試料加熱手段と、前記水銀保持剤作製用活性炭を収容した前記試料容器をキャリアガスである、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガスを流しながら前記試料加熱手段によって400〜500℃に加熱して、前記水銀保持剤作製用活性炭から発生した水銀ガスを捕集して除去することにより、前記水銀保持剤を作製する保持剤作製手段と、前記水銀保持剤に埋没するように注入された液体試料を収容した前記試料容器が前記試料加熱手段によって加熱されて生成された水銀ガスを捕集する水銀捕集ユニットと、前記水銀捕集ユニットを加熱して水銀ガスを生成する加熱気化手段と、前記水銀捕集ユニットから生成された水銀ガスが導入され、液体試料中の水銀を定量する分析器と、を有する。
本発明の第3構成の水銀分析装置によれば、保持剤作製手段により、水銀保持剤作製用活性炭中に不純物として含まれている水銀を加熱気化して除去し、水銀保持剤作製用活性炭中に含まれている硫黄および/または硫黄化合物はほぼそのまま残存させて、本発明の第1構成と同様の水銀保持剤を作製し、その水銀保持剤に液体試料を埋没するように注入して分析するので、本発明の第1構成の水銀保持剤と同様の効果を奏することができる。
本発明の第4構成にかかる水銀分析方法は、水銀保持剤を用いて炭化水素を主成分とする液体試料中の水銀を定量する水銀分析方法であって、硫黄および/または硫黄化合物を含む10〜200メッシュの水銀保持剤作製用活性炭を試料容器に収容し、その試料容器をキャリアガスである、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガスを流しながら400〜500℃に加熱して、前記水銀保持剤作製用活性炭から発生した水銀ガスを捕集して除去することにより、前記水銀保持剤を作製し、前記水銀保持剤に液体試料を埋没するように注入器によって注入し、注入された液体試料を加熱して液体試料から水銀ガスを生成し、液体試料から生成された水銀ガスを水銀捕集ユニットによって捕集し、前記水銀捕集ユニットを加熱して水銀ガスを生成し、生成された水銀ガスを分析器に導入して液体試料中の水銀を定量する。
本発明の第4構成の水銀分析方法によれば、本発明の第1構成と同様の水銀保持剤を作製して、その水銀保持剤に液体試料を埋没するように注入器によって注入して分析するので、本発明の第1構成の水銀保持剤と同様の効果を奏することができる。
本発明の第1実施形態の水銀分析方法で用いる水銀分析装置の概略ブロック図である。 本発明の第2実施形態である水銀分析装置の概略ブロック図である。
本発明の第1実施形態である水銀分析方法について説明する。まず、この水銀分析方法で用いる水銀分析装置1について説明する。図1に示すように、水銀分析装置1は、水銀保持剤Cと炭化水素を主成分とする液体試料Sとを収容する、例えばセラミックや石英製のボート形状の試料容器12と、試料容器12に収容された水銀保持剤Cに埋没するように注入器(図示なし)によって注入された液体試料Sを加熱する試料加熱手段11と、試料加熱手段11によって生成された水銀ガスを捕集する水銀捕集ユニット4と、水銀捕集ユニット4を加熱して水銀ガスを生成する加熱気化手段5と、水銀捕集ユニット4から生成された水銀ガスが導入され、液体試料S中の水銀を定量する、例えば水銀原子吸光分析装置である分析器20と、分析器20で測定した水銀ガスを捕集除去する水銀捕集除去部65と、を有する。
さらに、水銀分析装置1は、水銀保持剤Cが試料加熱手段11によって加熱されることにより生成される2価水銀を金属水銀に還元する還元炉14と、水銀保持剤Cが試料加熱手段11によって加熱されることにより生成される酸性ガスを除去する酸性ガス除去炉15と、試料加熱手段11で生成されるこれらのガスや水銀ガスを運ぶためのキャリアガスGを流すキャリアガス制御手段6と、キャリアガスGが流れるキャリアガス流路16と、を有する。
注入器は、例えばマイクロシリンジである。水銀捕集ユニット4は、充填材として、例えば金属水銀と反応してアマルガムを生成する金や銀などの粒状体やウール状細線、表面に金や銀などをコーティングした多孔質担体などが用いられる。
水銀分析装置1は試料加熱手段11によって生成された水銀を捕集する水銀捕集ユニット4を加熱気化手段5内に収容しており、水銀捕集ユニット4を加熱して捕集された水銀を気化させる。キャリアガス制御手段6は、キャリアガスGをキャリアガスGの導入部である試料加熱手段11の試料投入口13から吸引するポンプ61と、キャリアガスGの流量を制御する流量計62とを有する。分析器20は、液体試料S中の水銀を定量する。
なお、水銀分析装置1は炭化水素を主成分とする液体試料S以外の試料の分析にも用いることができる。
水銀保持剤Cは、硫黄および/または硫黄化合物を含み、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガス雰囲気中で400〜500℃に加熱されて水銀が除去された10〜200メッシュの活性炭であり、炭化水素を主成分とする液体試料Sの水銀分析において液体試料S中の水銀を保持する。10〜200メッシュの活性炭が混在していても単一のメッシュの活性炭であってもよい。水銀保持剤Cのメッシュは細かい方が好ましく、100〜200メッシュがより好ましい。硫黄が445℃で気化し始めるので、活性炭を440〜450℃で加熱するのがより好ましい。
水銀保持剤C中の硫黄および/または硫黄化合物の含有率について以下に説明する。例えば、硫黄化合物が硫酸第一鉄の場合について説明する。水銀保持剤C中に硫黄のみが含まれている場合の硫黄の含有率範囲は5〜20wt%(水銀保持剤C全量に対するwt%)であり、最適含有率は12.5wt%である。水銀保持剤C中に硫酸第一鉄のみが含まれている場合の硫酸第一鉄の含有率範囲は5〜20wt%(水銀保持剤C全量に対するwt%)であり、最適含有率は12.5wt%である。水銀保持剤C中に硫黄および硫酸第一鉄が含まれている場合、硫黄の含有率範囲は3〜10wt%、硫黄の最適含有率は8wt%であり、硫酸第一鉄の含有率範囲は5〜10wt%、最適含有率は5wt%である。
液体試料Sは、ナフサ、灯油、ガソリン、重油、LPG(液化石油ガス)などの石油製品、または、ヘプタン、エチレングリコールなどの有機溶媒である。炭化水素を主成分とするとは、液体試料Sの全量に対する炭化水素の含有率が50wt%以上であることをいう。
例えばナフサである炭化水素を主成分とする液体試料S中の水銀分析方法について説明する。まず、硫黄および/または硫黄化合物(例えば、硫酸第一鉄)を含む水銀保持剤C、例えば0.5cm(立方センチメートル)を試料容器12に収容する。次に、液体試料Sを注入器で例えば0.05cm採取し、注入器の先端を試料容器12に収容された水銀保持剤Cに見えなくなる深さまで挿入し、液体試料Sを水銀保持剤Cに埋没するように注入する。試料容器12に収容する水銀保持剤Cの量は0.5cmに限らず0.5〜0.7cmであればよい。液体試料Sの注入量は0.05cmに限らず0.05〜0.1cmであればよい。
このように、液体試料Sの量に対し約10倍量の水銀保持剤Cの中に液体試料Sが埋没するように注入され、注入された液体試料Sのすべてが水銀保持剤Cに埋もれた状態で接触するので、液体試料Sが気化しても硫黄および/または硫黄化合物と液体試料S中の水銀とが反応して、液体試料S中の水銀は硫化水銀として水銀保持剤C中に保持され、水銀は揮散することがない。
液体試料Sが注入された試料容器12を試料投入口13から試料加熱手段11の位置まで挿入する。
ポンプ61により試料投入口13からキャリアガスである空気G1を吸入し、流量計62で所定の流量(例えば0.2L/min)を流しながら、試料加熱手段11で水銀保持剤Cを室温から徐々に850℃まで、例えば、ステップ加熱で階段状に昇温する。この加熱により、水銀保持剤Cに保持されていた硫化水銀は水銀と硫黄に加熱分解される。試料加熱手段11で加熱された水銀保持剤Cから発生したガスは空気G1によって運ばれ、還元炉14、酸性ガス除去炉15、除湿器17を通り、加熱気化手段5によって150〜200℃に加熱された水銀捕集ユニット4に入り、水銀が捕集される。水銀捕集時には、水銀ガス以外の他のガスが水銀捕集ユニット4で捕集されないように加熱温度は150〜200℃が好ましい。
試料加熱手段11で加熱された水銀保持剤Cから発生した2価の水銀は、600℃に加熱された還元炉14で還元されて金属水銀となる。この金属水銀は、400℃に加熱された酸性ガス除去炉15を通過する。水銀保持剤Cに保持されていた硫化水銀が加熱分解されて生成した硫黄は、酸性ガス除去炉15で取除かれる。
水銀捕集ユニット4で水銀が捕集された後、加熱気化手段5内の水銀捕集ユニット4が600〜700℃に加熱されて加熱気化された水銀を、ポンプ61で空気G1を吸入しながら流量を流量計62で、例えば0.5L/minに調節して分析器20に導入して液体試料S中の水銀を定量する。
本発明の第1実施形態の水銀分析方法で用いた水銀保持剤Cは、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガス雰囲気中で400〜500℃に加熱された活性炭であり、水銀保持剤C中に不純物として含まれていた水銀は加熱気化されて除去される。他方、硫黄は445℃で気化し始めるので、水銀保持剤C中に含まれている硫黄および/または硫黄化合物はほぼそのまま残存している。水銀分析において、水銀保持剤C中に注入された液体試料Sが気化しても、液体試料S中の水銀は、硫黄および/または硫黄化合物と反応して硫化水銀となって水銀保持剤C中に保持され、揮散することがない。さらに、水銀保持剤Cは10〜200メッシュであり、含まれている硫黄および/または硫黄化合物と液体試料S中の水銀との反応面積が大きく、液体試料S中の水銀を確実に硫化水銀として保持することができる。
したがって、この水銀保持剤Cを用いる本発明の第1実施形態の水銀分析方法によれば、試料容器12に収容された水銀保持剤Cに液体試料Sを埋没するように注入器によって注入して炭化水素を主成分とする液体試料S中の水銀を分析するので、水銀分析装置外部の密閉されていない開放雰囲気中において、試料容器12に注入された、炭化水素を主成分とする液体試料Sが気化しても液体試料S中の水銀を余すところなく保持することがでて、炭化水素を主成分とする液体試料Sの水銀分析において高精度で分析できる。
炭化水素を主成分とする液体試料S中の水銀を保持する水銀保持剤Cとして、本発明の第1実施形態の水銀分析方法で用いた水銀保持剤Cと硫黄および/または硫黄化合物(例えば、硫酸第一鉄)を含まない活性炭とを用い、ヘプタンに金属水銀を分散させたものを液体試料Sとして、それぞれ2回比較実験を行った測定結果を表1に示す。測定値Aは本発明の第1実施形態で用いた水銀分析装置1によって測定した測定値であり、測定値Bはクローズドシステムの水銀分析装置(図示なし)を用いて測定した測定値である。回収率は測定値Bに対する測定値Aの比率であり百分率(%)で表示している。
Figure 2016065802
表1の測定結果に示すように、硫黄、硫黄化合物(硫酸第一鉄)を含まない活性炭を用いた測定値の回収率は89.4%、89.9%であるが、水銀保持剤Cを用いた測定値の回収率は98.1%、101.0%で、ほぼ100%であり、良好な回収率である。なお、比較実験に用いたクローズドシステムの水銀分析装置は特許文献1に記載された石油製品専用水銀分析装置である。
上記の比較実験により、本発明の第1実施形態の水銀分析方法で用いた水銀保持剤Cは、水銀分析装置1外部の密閉されていない開放雰囲気中において、試料容器12に注入された、炭化水素を主成分とする液体試料Sが気化しても液体試料S中の水銀を余すところなく保持することができ、炭化水素を主成分とする液体試料Sの水銀分析において高精度で分析できることが確認できた。
本発明の第1実施形態の水銀分析方法で用いる水銀分析装置1の変形例について以下に説明する。変形例の水銀分析装置は、最大100個の試料容器12を収納することができ、逐次、試料容器12を試料投入口13に搬送して試料加熱手段11の位置まで挿入する自動試料交換機(図示なし)を備えている。変形例の水銀分析装置を用いて分析するときは、本発明の第1実施形態の水銀分析方法と同様にして試料容器12に収容された水銀保持剤Cに液体試料Sを埋没するように注入器によって注入し、水銀保持剤Cと液体試料Sとが収容された試料容器12を自動試料交換機に所望の個数だけ収納して、変形例の水銀分析装置を作動させることにより自動測定することができる。
以下、本発明の第2実施形態である水銀分析装置2について説明する。図2に示すように、この水銀分析装置2は、硫黄および/または硫黄化合物を含む10〜200メッシュの水銀保持剤作製用活性炭Aまたはその水銀保持剤作製用活性炭Aから水銀が除去された水銀保持剤Cに埋没するように注入された炭化水素を主成分とする液体試料Sを収容する試料容器12と、試料容器12を加熱する試料加熱手段11と、水銀保持剤作製用活性炭Aを収容した試料容器12をキャリアガスGである、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガスを流しながら試料加熱手段11によって400〜500℃に加熱して、水銀保持剤作製用活性炭Aから発生した水銀ガスを捕集して除去することにより、水銀保持剤Cを作製する保持剤作製手段30と、キャリアガスGを、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガスまたは空気G1のいずれかに切り替える切替バルブ31と、を有する。本実施形態では窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガスは窒素ガスG2を用いる。
さらに、水銀分析装置2は、本発明の第1実施形態で用いた水銀分析装置1と同様の、水銀捕集ユニット4と、加熱気化手段5と、分析器20と、還元炉14と、酸性ガス除去炉15と、キャリアガス制御手段6と、キャリアガス流路16と、水銀捕集除去部65と、を有する。本発明の第2実施形態である水銀分析装置2では、切替バルブ31と、キャリアガス制御手段6と、試料加熱手段11とは保持剤作製手段30によって制御される。
本発明の第2の実施形態の水銀分析装置2の動作について説明する。水銀保持剤作製用活性炭A、例えば0.5cmを試料容器12に収容する。
水銀保持剤作製用活性炭Aが収容された試料容器12を試料投入口13から試料加熱手段11の位置まで挿入する。
次に、保持剤作製手段30によって、切替バルブ31、キャリアガス制御手段6、試料加熱手段11を制御して、窒素ガスG2をキャリアガス流路16に流しながら水銀保持剤作製用活性炭Aが収容された試料容器12を、例えば450℃に加熱して、水銀保持剤作製用活性炭A中に不純物として含まれる水銀を水銀捕集除去部65に捕集して除去し、水銀保持剤作製用活性炭Aに含まれている硫黄および/または硫黄化合物はほぼそのまま残存させて水銀保持剤Cを作製する。このときの加熱温度は450℃に限らず、400〜500℃の温度範囲であればよい。硫黄が445℃で気化し始めるので、440〜450℃で一定時間加熱するのがより好ましい。
作製された水銀保持剤Cと試料容器12とを室温に冷却する。
冷却された試料容器12を試料投入口13から取り出す。
液体試料Sを注入器で例えば0.05cm採取し、注入器の先端を試料容器12に収容された水銀保持剤Cに見えなくなる深さまで挿入し、液体試料Sを水銀保持剤Cに埋没するように注入する。
液体試料Sが注入された試料容器12を試料投入口13から試料加熱手段11の位置まで挿入する。
次に、保持剤作製手段30によって切替バルブ31とポンプ61とを制御して、試料投入口13から空気G1を吸入し、本発明の第1実施形態である水銀分析方法と同様にして液体試料S中の水銀を定量する。
本発明の第2実施形態の水銀分析装置2によれば、保持剤作製手段30により、水銀保持剤作製用活性炭A中に不純物として含まれている水銀を加熱気化して除去し、水銀保持剤作製用活性炭A中に含まれている硫黄および/または硫黄化合物はほぼそのまま残存させて、本発明の第1実施形態の方法で用いたのと同様の水銀保持剤Cを作製し、その水銀保持剤Cに液体試料Sを埋没するように注入して分析するので、本発明の第1実施形態の方法と同様の効果を奏することができる。さらに、この水銀分析装置2は炭化水素を主成分とする液体試料S以外の試料の水銀分析にも用いることができる。
なお、本発明の第1および第2実施形態では、ボート形状の試料容器12を用いたが、ボート形状に限らず、カップ形状、円筒形状などであってもよい。また、上記の本発明の第1および第2実施形態では、分析器20として原子吸光分析装置を用いたが、原子蛍光分析装置であってもよい。
1、2 水銀分析装置
4 水銀捕集ユニット
5 加熱気化手段
11 試料加熱手段
12 試料容器
20 分析器
30 保持剤作製手段
A 水銀保持剤作製用活性炭
C 水銀保持剤
G キャリアガス
S 液体試料

Claims (4)

  1. 硫黄および/または硫黄化合物を含み、
    窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガス雰囲気中で400〜500℃に加熱されて水銀が除去された10〜200メッシュの活性炭であり、
    炭化水素を主成分とする液体試料の水銀分析において液体試料中の水銀を保持するための水銀保持剤。
  2. 請求項1に記載の水銀保持剤を用いて炭化水素を主成分とする液体試料中の水銀を定量する水銀分析方法であって、
    前記水銀保持剤を試料容器に収容し、
    前記試料容器に収容された前記水銀保持剤に液体試料を埋没するように注入器によって注入し、
    注入された液体試料を加熱して液体試料から水銀ガスを生成し、
    液体試料から生成された水銀ガスを水銀捕集ユニットによって捕集し、
    前記水銀捕集ユニットを加熱して水銀ガスを生成し、生成された水銀ガスを分析器に導入して液体試料中の水銀を定量する水銀分析方法。
  3. 硫黄および/または硫黄化合物を含む10〜200メッシュの水銀保持剤作製用活性炭またはその水銀保持剤作製用活性炭から水銀が除去された水銀保持剤に埋没するように注入された炭化水素を主成分とする液体試料を収容する試料容器と、
    前記試料容器を加熱する試料加熱手段と、
    前記水銀保持剤作製用活性炭を収容した前記試料容器をキャリアガスである、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガスを流しながら前記試料加熱手段によって400〜500℃に加熱して、前記水銀保持剤作製用活性炭から発生した水銀ガスを捕集して除去することにより、前記水銀保持剤を作製する保持剤作製手段と、
    前記水銀保持剤に埋没するように注入された液体試料を収容した前記試料容器が前記試料加熱手段によって加熱されて生成された水銀ガスを捕集する水銀捕集ユニットと、
    前記水銀捕集ユニットを加熱して水銀ガスを生成する加熱気化手段と、
    前記水銀捕集ユニットから生成された水銀ガスが導入され、液体試料中の水銀を定量する分析器と、
    を有する水銀分析装置。
  4. 水銀保持剤を用いて炭化水素を主成分とする液体試料中の水銀を定量する水銀分析方法であって、
    硫黄および/または硫黄化合物を含む10〜200メッシュの水銀保持剤作製用活性炭を試料容器に収容し、
    その試料容器をキャリアガスである、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガスを流しながら400〜500℃に加熱して、前記水銀保持剤作製用活性炭から発生した水銀ガスを捕集して除去することにより、前記水銀保持剤を作製し、
    前記水銀保持剤に液体試料を埋没するように注入器によって注入し、
    注入された液体試料を加熱して液体試料から水銀ガスを生成し、
    液体試料から生成された水銀ガスを水銀捕集ユニットによって捕集し、
    前記水銀捕集ユニットを加熱して水銀ガスを生成し、生成された水銀ガスを分析器に導入して液体試料中の水銀を定量する水銀分析方法。
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