本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の柱状改良杭の自動造成システムに使用する地盤施工機1の全体構成を示す概略図である。地盤施工機1は、無端状の軌道帯輪3を有し、自走可能な構成になっている。リーダー4は撹拌工具11を支持し案内するための支柱である。リーダー4は、地盤に対して垂直な状態から水平な状態まで起伏動作が可能であるとともに、運転台5と一緒に旋回できる構成になっている。地盤施工機1を移動・運搬するときは、リーダー4を水平状態に倒し、本体の上部に水平状態で保持して移動する。リーダー4は支点9を中心に揺動可能に支持されており、運転台5での操作により油圧シリンダ6を動作させてリーダー4の起伏動作が行われる。
このリーダー4を起立させた状態で、リーダー4上を上下方向に移動可能に駆動ヘッド7が設けられており、駆動ヘッド7には油圧モータによる回転駆動部8が固定配置されている。回転駆動部8は先端側に撹拌工具11を固定したロッド10を回転駆動するためのものである。ロッド10は中空の管状の部材であり、内部の中空部を通して地盤改良剤を地盤中に注入することができる。ロッド10の先端側(下方側)には掘削や撹拌を行う撹拌工具11が固定されている。
撹拌工具11は地盤土壌を撹拌するための撹拌羽根と地盤を掘削するための掘削部とを備えている。また、撹拌工具11は地盤改良剤の注出口を備えており、ロッド10の中空部を通して供給された地盤改良剤を地盤中に注入することができる。この撹拌工具11により地盤中に円柱形状の柱状改良杭を造成する。
駆動ヘッド7は、昇降駆動部70(図2参照)によりリーダー4上を上下方向に移動することができる。駆動ヘッド7が移動されれば、回転駆動部8とともにロッド10および撹拌工具11も同じ量だけ移動される。例えば、撹拌工具11として下端側の掘削部と撹拌部を備えたものを使用し、ロッド10を回転駆動しながら下降させて、掘削と撹拌を行い地盤改良作業を行う。このとき撹拌工具11からは地盤改良剤を噴出させて地盤構成物に注入し、この地盤構成物を撹拌して地盤改良を行う。地盤改良剤は、セメントミルク等であり、ロッド10の中空部を通して供給される。
なお、地盤施工機1の撹拌工具11には、地盤改良剤を供給せず掘削作業のみを行う場合もある。また、撹拌工具11による掘削作業を行わずに撹拌作業のみを行う場合もある。掘削作業を行わない場合は、撹拌工具11に対して掘削送り(下降移動)を与えずに、撹拌工具11は上昇移動状態または停止状態とする。
図2は、地盤施工機1の制御部71に関する構成を示すブロック図である。制御部71は、回転駆動部8を制御して撹拌工具11の回転方向、回転速度および駆動トルクを設定・調整する。また、制御部71は、昇降駆動部70を制御して撹拌工具11の昇降位置、昇降速度を設定・調整する。さらに、制御部71は、地盤改良剤供給部75を制御して撹拌工具11への地盤改良剤の供給量を設定・調整する。
自動運転設定部77は、柱状改良杭の造成に必要な施工データを設定するための構成である。地盤施工機1の操作者は運転台5の内部に設けられた自動運転設定部77により柱状改良杭の造成に必要な施工データを設定したり、それらの施工データを修正したりすることができる。自動運転設定部77には、表示部771および入力部772が設けられている。表示部771には種々の造成条件、制御条件やパラメータ等を施工データとして設定するための設定画面を表示して、その設定画面で入力部772の操作によって設定データを入力する。
表示部771としては液晶表示パネルが使用でき、入力部772としては透明なタッチパネルが使用できる。具体的には透明タッチパネルと液晶表示パネルを重ねて使用し、表示画面上のオブジェクトを透明タッチパネルにより直接操作できるようにすることが好ましい。また、表示部771には地盤施工機1の現在の運転状態を表示でき、撹拌工具11の位置・回転速度・昇降速度、地盤改良剤の供給量等の種々のパラメータを常にモニターすることができる。
データ交換部773は、柱状改良杭の造成を自動運転によって行うために必要な施工データのセットを施工パターンとして一括して入出力するための構成である。地盤施工機1の外部で作成した施工パターンを入力したり、逆に地盤施工機1において施工中の施工パターンを出力したりすることができる。施工パターンの入出力にはフラッシュメモリ(不揮発性の半導体メモリ)を使用したメモリカードやUSB接続のフラッシュメモリ媒体(いわゆるUSBメモリ)、光ディスク、光磁気ディスクなどの可搬型記憶媒体を利用することができる。
また、データ交換部773は、無線通信等を利用してインターネットに接続可能であり、インターネット経由で所定のサーバーや事務所のホストコンピュータから施工パターンをダウンロードすることができる。そして、データ交換部773からインターネット経由で施工パターンをアップロードすることもできる。
このようにしてデータ交換部773から自動運転設定部77に取り込んだ施工パターンを利用して、自動運転による柱状改良杭の造成を行うことができる。施工パターンには柱状改良杭の造成に必要な施工データが全て含まれており、自動運転設定部77からこれらの施工データを実施するための制御信号を制御部71に送って自動運転による柱状改良杭の造成を行う。なお、自動運転設定部77に取り込んだ施工パターンの一部の施工データを現場での地盤状態などに応じて修正し、その修正した施工パターンによる施工を行うこともできる。
図3は、工程設定装置2の構成を示すブロック図である。工程設定装置2は地盤施工機1の外部(例えば、事務所の室内等)に置かれており、種々の施工実例や過去の施工データを参照することが容易な事務所内において、柱状改良杭の造成を行うための施工データの作成を効率的に行うことができる。
工程設定装置2の中心となる工程設定部20は、通常の個人用コンピュータに工程設定のためのソフトウェアを組み込んだものであり、柱状改良杭の造成に必要な多種多様な施工データを順を追って体系的に設定することができる。工程設定部20には、表示部21,入力部22,データ交換部23が設けられている。表示部21には種々の造成条件、制御条件やパラメータ等を施工データとして設定するための設定画面を表示して、その設定画面で入力部22によって設定データを入力する。
表示部21としては通常の個人用コンピュータ用表示装置、例えば、液晶ディスプレイ等が使用でき、入力部22としてはマウス、キーボード等が使用できる。また、表示部21と入力部22の機能を兼ね備えたタッチパネル型表示装置を使用することもできる。
データ交換部23は、柱状改良杭の造成を自動運転によって行うために必要な施工データのセットを施工パターンとして一括して入出力するための構成である。工程設定装置2で作成した施工パターンを可搬型記憶媒体に保存したり、逆に地盤施工機1において可搬型記憶媒体に保存した施工パターンを工程設定装置2に入力することができる。可搬型記憶媒体としては、フラッシュメモリ(不揮発性の半導体メモリ)を使用したメモリカードやUSB接続のフラッシュメモリ媒体(いわゆるUSBメモリ)、光ディスク、光磁気ディスクなどが使用できる。
また、データ交換部23は、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)や無線LAN等を利用してインターネットに接続可能であり、インターネット経由で地盤施工機1に施工パターンを提供することができる。すなわち、地盤施工機1はインターネット経由で工程設定装置2から施工パターンをダウンロードすることができる。逆に、地盤施工機1から工程設定装置2に施工パターンをアップロードすることもできる。
図4は、工程設定装置2の表示部21に表示される表示画面の一例であり、柱状改良杭の造成条件等を設定するための柱状改良杭条件設定画面211である。工程設定装置2によって柱状改良杭造成のための施工データを作成するには、まず、この柱状改良杭条件設定画面211から造成条件等を設定する。
柱状改良杭条件設定画面211には、柱状改良杭の直径、深度等の数値条件を設定するための設定項目エリア2111と、設定した数値条件から求められた計算結果を表示する計算結果エリア2112と、柱状改良杭の単位長さに対応する各区間の表示を行う区間表示エリア2113、計算結果エリアおよび区間表示エリアの数値の表示態様を設定するための目標値エリア2114が表示されている。また、柱状改良杭条件設定画面211には、数値入力を行うための数値入力ボタン2115も表示されている。
まず、設定項目エリア2111に、柱状改良杭の長さすなわち改良長、柱状改良杭の最上部(最上面)の深度である空堀深度、柱状改良杭の直径である杭径を入力する。これらの数値は数値入力ボタン2115によって行う。数値入力ボタン2115には0〜9の数字を入力する「0」〜「9」ボタン、小数点を入力する「.」ボタン、数値入力を確定するための「ENT」ボタン、数値入力欄の消去を行うための「CLR」ボタンがある。
次に、設定項目エリア2111のセメント比重、セメント添加量、配合比を入力する。ここでは、地盤改良剤としてセメントと水とを混合したセメントミルクを想定している。セメント比重はセメント自体の比重である。セメント添加量とは柱状改良杭の地盤単位体積(1m3)当たりに注入するセメント自体の質量である。このセメント添加量にはセメントミルク中の水の質量は含まない。配合比とはセメントミルクを配合する際のセメントに対する水の質量割合である。例えば、配合比0.7のセメントミルクは、セメント100kgに対して水70kgを配合したものである。
羽根切回数とは撹拌工具11の撹拌羽根が通過する回数を表しており、撹拌工具11の回転数に羽根の枚数を乗じたものとなる。ここでは単位長さ(1m)当たりの羽根切回数として入力している。これは、撹拌工具11が単位長さだけ移動する間の羽根切回数を示している。羽根枚数は撹拌工具11に設けられた撹拌羽根の枚数である。管理トルクは撹拌工具11の回転駆動における最大トルクである。
設定項目エリア2111の数値入力欄への入力が全て終了すると、それらの数値から求められた計算結果が計算結果エリア2112に表示される。目標深度は、柱状改良杭の最下部(最下面)の深度である。この目標深度は改良長に空堀深度を加えた値となる。杭1本当たりの積算流量値は、1本の柱状改良杭に注入する地盤改良剤としてのセメントミルクの体積である。1m当たりの流量値は、柱状改良杭の単位長さ(1m)に注入するセメントミルクの体積である。
ここで、セメントミルクに関する数値は以下のようにして計算される。セメント添加量をM[kg/m3]とし、配合比をRとし、セメント比重をdとすると、セメント添加量Mに対応するセメントミルク体積V[L/m3]は次の式1のように計算される。ただし、セメントミルク体積Vは、セメント添加量Mを実現するために地盤単位体積(1m3)当たりに注入するセメントミルクの体積である。
V = M(1+dR)/d … 式1
また、杭径をDとし、改良長をTとすれば、1本の柱状改良杭の体積K[m3]は次の式2によって求められる。ただし、式2でπは円周率である。
K = πD2T/4 … 式2
したがって、1本の柱状改良杭に注入するセメントミルクの体積はVKとなる。また、柱状改良杭の1m当たりに注入するセメントミルクの体積はVK/Tとなる。
また、設定項目エリア2111の数値入力欄への入力が全て終了すると、区間表示エリア2113に柱状改良杭の単位長さに対応する各区間の表示が行われる。各区間は柱状改良杭の単位長さ:1mに対応する部分となる。本明細書においては、この単位長さ:1mに対応する区間を単位区間と呼ぶことにする。
ただし、単位区間の基準点位置は、地表面とする場合と杭天(柱状改良杭の最上面)とする場合がある。基準点切替ボタン2116を押すことにより基準点位置を両者のいずれかに切り替えることができる。現在の基準点位置が地表面であれば基準点切替ボタン2116には「GL」の表示がなされ、現在の基準点位置が杭天であれば基準点切替ボタン2116には「杭天」の表示がなされる。
単位区間の基準点位置が地表面の場合は、各単位区間は[0〜1.0],[1.0〜2.0],[2.0〜3.0],[3.0〜4.0],[4.0〜5.0]となるが、図4においては最初の単位区間の[0〜0.5]の部分が柱状改良杭ではなく空堀部となるため、最初の単位区間は[0.5〜1.0]となっている。単位区間の基準点位置が杭天の場合は、図4の設定数値での単位区間は[0.5〜1.5],[1.5〜2.5],[2.5〜3.5],[3.5〜4.5],[4.5〜5.0]となる。最後の単位区間は、柱状改良杭の最下面が5.0mであるため単位区間の長さも短縮されている。
区間表示エリア2113の区間流量の欄は各単位区間における地盤改良剤の注入体積を計算して表示している。また、区間羽根の欄は各単位区間における羽根切回数を計算して表示している。これらの各欄の計算値は自動運転における各部制御の目標値として使用される。
区間表示エリア2113の区間流量および区間羽根の欄の数値の単位は、単位切替ボタン2117によって切り替えることができる。図4では、区間流量の単位が[L]、区間羽根の単位が[回]として表示されている。単位切替ボタン2117を押すことにより、区間流量の単位を柱状改良杭の単位長さ当たりの注入体積[L/m]に変更し、区間羽根の単位を柱状改良杭の単位長さ当たりの羽根切回数[回/m]に変更することができる。各欄の単位が[L]、[回]であれば単位切替ボタン2117には「L,回」と表示され、各欄の単位が[L/m]、[回/m]であれば単位切替ボタン2117には「L/m,回/m」と表示される。
目標値エリア2114は、計算結果エリア2112および区間表示エリア2113の数値の表示態様を設定するためのものである。「四捨五入」、「切り上げ」および「何もしない」のいずれか1つを選択して設定する。図4では「切り上げ」が設定されている。「四捨五入」では小数点以下の数値を四捨五入して計算結果を整数として表示する。「切り上げ」では小数点以下の数値を切り上げて計算結果を整数として表示する。「何もしない」では小数点以下の数値もそのままにして計算結果を表示する。
なお、柱状改良杭条件設定画面211の下段の「メニュー」ボタンは、初期メニューを表示するためのボタンである。また、「自動運転設定」ボタンは、この画面から杭造成自動運転パラメータ設定画面212(図5参照)に移行するためのボタンである。「前画面へ戻る」ボタンは、この画面に移行する前の元の画面に戻るためのボタンである。
図5は、工程設定装置2の表示部21に表示される杭造成自動運転パラメータ設定画面212を示す図である。図4の柱状改良杭条件設定画面211において「自動運転設定」ボタンを押すことによりこの杭造成自動運転パラメータ設定画面212に移行する。杭造成自動運転パラメータ設定画面212の中央部には自動運転の各工程のパラメータを設定するための工程設定エリア2121が表示されている。
工程設定エリア2121の上半分には撹拌工具11の先端部の深度位置の経時変化が折れ線グラフとして表示される。工程設定エリア2121の下半分には自動運転を行うための各工程の工程番号、各工程の内容、各工程に関するパラメータの表示設定を行う欄が表示されている。工程設定エリア2121の中央の行に各工程の工程番号が表示されている。自動運転の工程は工程番号1〜30までの30工程を設定することができる。なお、図5では工程番号1〜10までが表示されているが、表示されていない工程は工程設定エリア2121を横方向にスクロールさせることにより画面に表示させることができる。
工程番号の行の下には工程内容を選択するための工程選択行が表示されている。工程選択行の各欄に工程番号1から順番に施工する各工程を選択して設定していく。工程を設定したい工程選択欄を押す(タッチする)と、その工程選択欄に設定可能な種類の工程内容が一覧表示されるので、そのなかから設定すべき種類の工程を選択する。
工程選択欄に設定可能な工程の種類は、「停滞」、「先行堀下降」、「先行堀上昇」、「注入下降」、「注入上昇」、「撹拌下降」、「撹拌上昇」、「杭天部錬返し下降」、「杭天部錬返し上昇」、「着底部錬返し下降」、「着底部錬返し上昇」となっている。ただし、後述の2段施工が有効となっている場合は、「先行堀下降」、「先行堀上昇」、「注入下降」、「注入上昇」、「撹拌下降」、「撹拌上昇」のそれぞれに「上段」と「下段」の種別が付加される。例えば、「先行堀下降」は2段施工においては「上段先行堀下降」、「下段先行堀下降」の2種類に分かれる。
ここで、各工程の種類について、その内容を説明する。「停滞」は撹拌工具11を上昇も下降もせずに一定の深度位置に停止させておく工程である。地盤改良剤の地盤への注入は停止する。撹拌工具11の回転方向は正転と逆転のいずれかを設定できる。撹拌工具11を停滞させる時間(秒)を設定する。
「先行堀下降」は、地盤改良剤の地盤への注入は行わずに地盤の掘削のみを行って撹拌工具11を下降させる工程である。地盤改良剤の地盤への注入は停止し、撹拌工具11の回転方向は正転と逆転のいずれかを設定できる。また、撹拌工具11の下降速度を設定できる。「先行堀上昇」は、「先行堀下降」と同様で撹拌工具11を上昇させる工程である。
「注入下降」は、地盤改良剤の地盤への注入と撹拌を行いながら撹拌工具11を下降させる工程である。撹拌工具11の回転方向は正転と逆転のいずれかを設定できる。また、地盤改良剤の注入量と撹拌工具11の下降速度を設定できる。「注入上昇」は、「注入下降」と同様で撹拌工具11を上昇させる工程である。
「撹拌下降」は、地盤改良剤の地盤への注入は行わず、撹拌のみを行いながら撹拌工具11を下降させる工程である。地盤改良剤の地盤への注入は停止し、撹拌工具11の回転方向は正転と逆転のいずれかを設定できる。また、撹拌工具11の下降速度を設定できる。「撹拌上昇」は、「撹拌下降」と同様の工程で撹拌工具11を上昇させる工程である。
「杭天部錬返し下降」は、柱状改良杭の杭天部(最上部)の近傍で改良杭の撹拌を追加して行うための工程であり、地盤改良剤の地盤への注入は行わず、撹拌のみを行いながら撹拌工具11を下降させる工程である。地盤改良剤の地盤への注入は停止し、撹拌工具11の回転方向は正転と逆転のいずれかを設定できる。また、撹拌工具11の下降速度を設定できる。「杭天部錬返し上昇」は、「杭天部錬返し下降」と同様の工程で撹拌工具11を上昇させる工程である。
「着底部錬返し下降」は、柱状改良杭の着底部(最下部)の近傍で改良杭の撹拌を追加して行うための工程であり、地盤改良剤の地盤への注入は行わず、撹拌のみを行いながら撹拌工具11を下降させる工程である。地盤改良剤の地盤への注入は停止し、撹拌工具11の回転方向は正転と逆転のいずれかを設定できる。また、撹拌工具11の下降速度を設定できる。「着底部錬返し上昇」は、「着底部錬返し下降」と同様の工程で撹拌工具11を上昇させる工程である。
図5の設定では、2段施工が無効となっているので、工程番号1の工程選択欄から順番に上述の各工程から適切な工程を選択して設定する。各欄の工程を選択する際には、先行する工程の内容によって選択可能な工程の種類が制限される。例えば、最初(工程番号1)の工程には、撹拌工具11が下降する工程のみが設定可能であり、撹拌工具11が上昇する工程や「停滞」工程はこの時点では設定不可能である。また、地盤改良剤の地盤への注入を行わない撹拌工程や錬返し工程も設定不可能である。この時点での設定可能な工程は「先行堀下降」と「注入下降」だけである。
そこで、工程番号1の工程選択欄を押したときには、設定可能な工程である「先行堀下降」、「注入下降」と「設定なし」のみが一覧表示され、それらの選択肢の中から適切なものを選択することとなる。なお、「設定なし」は工程選択欄に工程を設定せず空き状態とする選択肢であり、「設定なし」とした工程選択欄には「−」が表示される。
このように、各工程選択欄に特定の工程を設定する際には、先行する工程の種類などの条件により選択可能な選択肢のみが表示されるため、工程設定時の設定ミスを防止することができる。また、選択可能な選択肢のみに制限されて表示されるため、選択肢の数が減少して設定作業を効率的に行うことができる。なお、工程選択行の右側には「工程数」として工程選択行に設定された工程の総数が表示される。
工程選択行の下方の各行は各工程に付随して設定する各種のパラメータを設定するための行である。工程選択行の1行下のスラリー流量の行は地盤改良剤の注入体積を設定するためのものである。スラリー流量の各設定欄は選択した工程が「注入下降」、「注入上昇」の場合のみに設定可能である。ここでは工程番号1に対して193[L]が設定され、工程番号2に対して200[L]が設定されている。
地盤改良剤の注入体積は、全ての「注入下降」、「注入上昇」工程での合計値が杭1本当たりの積算流量値(図4,5では393[L])以上となるように設定する。全ての注入工程での合計値は自動的に計算され、スラリー流量の行の右側に「合計」として表示される。なお、画面下端の「注入量均等割当」ボタンを押すと、杭1本当たりの積算流量値が全ての注入工程に均等に割り当てられる。
スラリー流量の行の下の基準吐出量の行は、地盤改良剤の注入を流量基準で行う場合の基準吐出量(基準流量)を設定するためのものである。地盤改良剤の注入は、流量基準で行う場合と速度基準で行う場合のいずれかを選択して行う。基準吐出量とその下の基準速度の行の右側に、「流量基準」と「速度基準」とを切り替えるボタンがある。図5の場合は「速度基準」が選択されている。
地盤改良剤の注入を「流量基準」で行う場合、基準吐出量[L/分](時間1分当たりの吐出体積:リットル)を設定する。設定値の範囲は「流量基準」の選択ボタンの右側に表示されている。基準吐出量を設定すると、スラリー流量の欄の設定値と基準吐出量の設定値により、撹拌工具11の昇降速度[m/分]が自動的に計算され、その昇降速度が基準速度の行の対応する欄に表示される。
基準吐出量の行の下の基準速度の行では、注入工程においては、地盤改良剤の注入を速度基準で行う場合の基準速度[m/分]を設定する。注入工程における設定値の範囲は「速度基準」の選択ボタンの右側に表示されている。基準速度を設定すると、スラリー流量の欄の設定値と基準速度の設定値により、地盤改良剤の吐出量[L/分]が自動的に計算され、その吐出量が基準吐出量の行の対応する欄に表示される。図5は、このように基準速度の設定値から地盤改良剤の吐出量が計算されて表示された状態である。
また、この基準速度の行では、注入工程以外の上昇、下降の工程においては、撹拌工具11の昇降速度[m/分]を設定する。注入工程以外であれば、「速度基準」の選択ボタンの右側に表示された範囲以外の数値も設定可能である。なお、「停滞」工程ではこの基準速度の欄は設定できない。
基準速度の行の下の停滞時間の行では、「停滞」工程において撹拌工具11を一定深度に保つ時間[秒]を設定する。この停滞時間の設定欄は、「停滞」工程の場合のみ有効であり、「停滞」工程以外の工程では設定できない。
停滞時間の行の下の羽根切確保制御の行は、羽根切確保制御を行う場合にオン(ON)を設定し、羽根切確保制御を行わない場合はオフ(OFF)を設定する。羽根切確保制御のオン・オフは、最終の撹拌工程(「撹拌下降」または「撹拌上昇」)にのみ設定することができる。図5においては工程番号7の「撹拌上昇」工程にのみ設定できる。羽根切確保制御がオンの場合、各単位区間での運転時の区間羽根切回数を計算し、運転時の区間羽根切回数の予測値が目標値(図4の区間表示エリア2113の区間羽根の欄の数値)を下回る場合には、目標値が達成できる昇降速度に変更制御する。
羽根切確保制御の行の下の回転方向の行は、各工程での撹拌工具11の回転方向を設定するためのものである。回転方向の各設定欄には既定値として、下降工程および「停滞」工程では「正転」が設定されており、上昇工程では「逆転」が設定されているが、必要に応じて「正転」、「逆転」の設定を変更することができる。
以上に説明した内容を各欄に設定して、工程設定エリア2121の工程番号1から順に必要な工程とパラメータを設定する。なお、杭造成自動運転パラメータ設定画面212の左側には杭条件を一覧表示した杭条件一覧エリア2122がある。杭条件一覧エリア2122の中にも設定・変更可能な数値欄がある。
「空堀深度」欄の下の「杭天部錬返距離」欄には、「杭天部錬返し下降」と「杭天部錬返し上昇」によって行う錬返し工程での追加撹拌を行う距離を設定する。既定値として0.5[m]が設定されているが必要に応じて変更することができる。
同様に、「目標深度」欄の上の「着底部錬返距離」欄には、「着底部錬返し下降」と「着底部錬返し上昇」によって行う錬返し工程での追加撹拌を行う距離を設定する。既定値として0.5[m]が設定されているが必要に応じて変更することができる。
また、杭条件一覧エリア2122の中にある2段施工ボタン2123は、杭造成を2段施工によって行うか否かの切り替えを行うボタンである。2段施工に関しては後に詳しく説明する。2段施工ボタン2123を押して2段施工を有効にすると、2段施工のためのパラメータが設定できるようになる。2段施工が有効であると2段施工ボタン2123には「有」が表示される。図5では2段施工が無効となっており、2段施工ボタン2123には「無」が表示されている。
前述のように、工程設定エリア2121の上半分には撹拌工具11の先端部の深度位置の経時変化が折れ線グラフとして表示される。その折れ線グラフの領域の左側には撹拌工具11と柱状改良杭を模式的に示す図形が表示されている。柱状改良杭を示す図形には、地表面位置(GL)、空堀深度、目標深度の数値も示されており、さらに、杭天部錬返し工程の下端深度、着底部錬返し工程の上端深度も示されている。
なお、折れ線グラフの領域は、注入工程とそれ以外の工程で背景色が異なるように表示される。例えば、注入工程(「注入下降」、「注入上昇」)では背景色が水色で表示され、それ以外の工程では背景色が紫色で表示される。これにより注入工程の配置状態が一目で分かり、各工程の配置ミス等が発生しにくくなる。また、工程選択の行の各欄も工程の種類によって背景色が異なるように表示される。工程選択の各欄では、注入工程の水色に加えて「停滞」工程も他から区別して赤色に表示される。その他の工程は紫色で表示される。
また、工程選択の行の下の各パラメータの設定欄に関しては、数値等の入力設定が必要であるにもかかわらずまだ入力がなされていない設定欄を赤く表示している。これにより必要なパラメータの入力し忘れ等のミスを防止することができる。さらに、回転方向の行では、「正転」と「逆転」の背景色が異なって表示される。「正転」では背景色が緑色に表示され、「逆転」では背景色が赤色に表示される。これにより、「正転」と「逆転」の区別が一目で分かり、回転方向の設定ミス等が発生しにくくなる。
杭造成自動運転パラメータ設定画面212の右端上部の「フィード・スライド動作設定」ボタンは、撹拌工具11を昇降動作させるためのフィード動作とスライド動作の設定と、ロッド10の掴み替え動作に関する設定を行うためのものである。「フィード・スライド動作設定」ボタンを押すとこれらの設定を行うための画面を表示する。
ここで、フィード動作とスライド動作について説明する。フィード動作とは、駆動ヘッド7をリーダー4に沿って昇降移動させる動作であり、具体的には油圧モータとチェーンによる昇降駆動であって昇降ストロークは大きい。スライド動作とは、リーダー4全体を地盤施工機1の固定部に対して昇降移動させる動作であり、具体的には油圧シリンダによる昇降駆動であって昇降ストロークはフィード動作よりも小さい。
撹拌工具11の昇降駆動にはこのような2種類の駆動機構が利用できる。2種類の昇降駆動では、昇降ストロークや駆動力が異なるため、地盤の状態に応じて適切な昇降駆動を使用するようにすれば、効率的に柱状改良杭の造成を行うことができる。「フィード・スライド動作設定」ボタンにより移行した画面では、スライド動作を行う深度とストロークの設定や、ロッド10の掴み替え位置(深度)と掴み替え距離の設定等を行うことができる。
「フィード・スライド動作設定」ボタンの下の「拡張設定」ボタンは、撹拌工具11の回転駆動トルクや昇降速度に関する拡張設定を行うためのものである。「拡張設定」ボタンを押すと拡張設定を行うための画面を表示する。拡張設定の画面では、地表面から目標深度までを2〜10区画に分割してそれぞれの区画で回転駆動トルクや昇降速度の設定を行うことができる。なお、回転駆動トルクに関しては、自動設定/手動設定の切り替え、手動設定の場合のトルク値等を設定できる。なお、拡張設定における回転駆動トルクと昇降速度の設定は、地表面から目標深度までの最初の1ストロークに対してのみ有効であり、その後の工程では工程設定エリア2121に設定されたパラメータに従う。
また、拡張設定の画面では、注入上昇、上段注入上昇に関する拡張設定を行うこともできる。地表面近傍の設定深度より上方で、撹拌工具11の回転方向と上昇速度を設定することができる。この設定は工程設定エリア2121の設定値よりも優先され、設定深度より上方ではこちらの設定が使用される。地表面近傍の表層では、撹拌工具11の回転方向を通常上昇時の逆転よりも正転に設定した方が排泥を抑制できる場合がある。このような場合にこの拡張設定を使用する。
杭造成自動運転パラメータ設定画面212の下端の「工程クリア」ボタンは、工程設定エリア2121の全ての工程の設定値をクリアするものである。工程の設定を新たに開始する際などに使用する。杭造成自動運転パラメータ設定画面212の下端左側の「前画面へ戻る」ボタンは、この画面に移行する前の元の画面に戻るためのボタンである。また、杭造成自動運転パラメータ設定画面212の下端には、数値入力を行うための数値入力ボタンがある。
杭条件一覧エリア2122の下端には、回転減速制御に関するボタンと設定欄がある。回転減速制御とは、地表面近傍の表層において、撹拌工具11の回転速度を一定の割合で減速する制御である。回転減速制御のボタンを押して、回転減速制御の有効/無効を切り替えることができる。回転減速制御が有効であればボタンに「有効」が表示され、回転減速制御が無効であればボタンに「無効」が表示される。また、回転減速制御を行う深度範囲と減速割合を設定できる。回転減速制御を行うことにより地盤改良剤の飛散を防止することができる。
杭条件一覧エリア2122や工程設定エリア2121の各設定欄に必要な工程や数値などのパラメータを全て設定したら、パターン入出力ボタン2124を押して、現在設定されている全ての工程からなる自動運転データを施工パターンとして保存することができる。パターン入出力ボタン2124を押した後に表示される画面で「施工パターン保存」を選択し、現在の施工パターンにファイル名と保存先メディアを指定して保存する。
パターン入出力ボタン2124は施工パターンを保存するだけでなく、施工パターンを読み込む際にも使用する。パターン入出力ボタン2124を押した後に表示される画面で「施工パターン読込」を選択し、施工パターンが保存されたメディアとファイル名を指定して施工パターンを読み込む。施工パターンを読み込むと、杭条件一覧エリア2122や工程設定エリア2121には施工パターン内の各設定データが表示される。それらのデータを修正して新たな施工パターンとして保存することもできる。
このようにして作成、保存した施工パターンは、地盤施工機1の自動運転設定部77に読み込んで自動運転による柱状改良杭の造成に利用することができる。自動運転設定部77においても、図6の杭造成自動運転パラメータ設定画面212と同様の画面が表示できるので、例えば、施工パターンを記録したフラッシュメモリ媒体をデータ交換部773に接続し、適切な施工パターンを自動運転設定部77に読み込むことができる。地盤施工機1はその施工パターンに従って自動運転による柱状改良杭の造成を行うことができる。なお、自動運転設定部77においても、施工パターンの各工程の内容を修正したり、修正した施工パターンを新たな施工パターンとして保存することができる。
次に、2段施工による柱状改良杭の造成について説明する。図6は、1段施工と2段施工との相違点を示す図である。図6(a)が1段施工を示しており、図6(b)が2段施工を示している。2段施工では、柱状改良杭を上部の上段杭(0.5〜2.2m)と下部の下段杭(2.0〜6.5m)に分けて施工する。この例のように、上段杭と下段杭は境界部分を所定量オーバーラップさせる。
柱状改良杭の改良長が長いなどの理由により、目標深度までの途中でロッド10の掴み替えが必要な場合がある。このような場合、1段施工では図6(a)に示すように掴み替えCが4回必要になってしまう。これに対して、図6(b)に示すように2段施工を実施することにより、掴み替えCの回数を2回に減少させることができる。このため、柱状改良杭の造成を効率的に行うことができる。
図6(b)の2段施工では、上段杭と下段杭の境界位置を掴み替え位置に設定し、上段注入下降の後、下段の注入と撹拌を行ってから上段の注入と撹拌を行うようにして、掴み替えCの回数を減少させている。なお、図6(b)の2段施工においても、上段と下段のそれぞれに対して注入と撹拌が2ストローク行われており、図6(a)の1段施工と同等の造成工程が実施されている。
図7は、2段施工を実施する場合の杭造成自動運転パラメータ設定画面212を示す図である。図7の杭造成自動運転パラメータ設定画面212は、2段施工に関する部分以外は図6と同様であるため説明は省略する。2段施工による柱状改良杭の造成を実施する場合は、杭条件一覧エリア2122の2段施工ボタン2123を押して2段施工を有効とする。2段施工が有効であれば2段施工ボタン2123には「有」が表示される。
そして、2段施工ボタン2123の右側の下段上端深度と上段下端深度を設定する。上段下端深度は上段杭の下端深度であり、下段上端深度は下段杭の上端深度である。このように、上段杭の下端と下段杭の上端とは所定量(ここでは0.2m)だけオーバーラップしている。
2段施工ボタン2123の下のラップ部割増注入量の設定欄は、上段杭と下段杭のオーバーラップ部分に追加して注入する地盤改良剤の体積である。2段施工では柱状改良杭の造成工程が上段と下段に分かれるため、上段と下段の境界部分が強度不足となるおそれがある。このような境界部分の強度不足を防止するために、オーバーラップ部分に地盤改良剤を追加して注入する。
杭条件一覧エリア2122の中段に「杭1本当り積算流量」の表示欄があり、その下に「上段流量」と「下段流量」の表示欄がある。「上段流量」の値は上段杭に注入する地盤改良剤の目標体積を示し、「下段流量」の値は下段杭に注入する地盤改良剤の目標体積を示している。「上段流量」、「下段流量」それぞれの値は、上段杭の長さと下段杭の長さの比から自動的に計算されて表示される。ただし、「上段流量」、「下段流量」の計算においては、上段杭の長さは空堀深度から下段上端深度までとし、下段杭の長さは下段上端深度から目標深度までとしている。
この場合、「杭1本当り積算流量」の値は524Lに設定されている。上段杭の長さは1.5m、下段杭の長さは4.5mとなるので、「上段流量」の値は131L、「下段流量」の値は393Lとなる。
工程設定エリア2121の工程選択欄の選択可能な工程の種類は、2段施工が有効の場合は、「停滞」、「上段先行堀下降」、「上段先行堀上昇」、「上段注入下降」、「上段注入上昇」、「上段撹拌下降」、「上段撹拌上昇」、「下段先行堀下降」、「下段先行堀上昇」、「下段注入下降」、「下段注入上昇」、「下段撹拌下降」、「下段撹拌上昇」、「杭天部錬返し下降」、「杭天部錬返し上昇」、「着底部錬返し下降」、「着底部錬返し上昇」となる。
注入工程では、上段と下段のそれぞれの注入工程に対して地盤改良剤の注入体積を設定できる。注入体積の設定値は「スラリー流量」行の各欄に設定する。ただし、上段に対する注入体積の合計値が「上段流量」(上段目標値)の値以上となるようにし、下段に対する注入体積の合計値が「下段流量」(下段目標値)の値以上となるように設定する。上段と下段それぞれに対する注入体積の合計値は自動的に計算され、スラリー流量の行の右側に「上段」、「下段」として表示される。「上段」には上段杭に対する注入体積の合計値が表示され、「下段」には下段杭に対する注入体積の合計値が表示される。
なお、画面下端の「注入量均等割当」ボタンを押すと、上段杭に対する注入体積の目標値が上段杭の全ての注入工程に均等に割り当てられ、下段杭に対する注入体積の目標値が下段杭の全ての注入工程に均等に割り当てられる。
以上のように、柱状改良杭の造成を2段施工によって実施する場合でも、自動運転データを効率的に設定することができる。そして、設定した全ての工程からなる自動運転データを施工パターンとして保存することができ、その施工パターンを地盤施工機1の自動運転設定部77に読み込んで自動運転による柱状改良杭の造成に利用することができる。
地盤施工機1の自動運転設定部77に施工パターンを読み込んで自動運転による柱状改良杭の造成を行うのであるが、自動運転設定部77では、地盤改良剤の注入体積と羽根切回数を単位区間よりもさらに細かな分割単位区間によって制御している。工程設定装置2においては、図4に示すように柱状改良杭の杭天深度(空堀深度)から目標深度までを、単位長さ(1m)の単位区間に分割して、それぞれの単位区間における地盤改良剤の注入体積、羽根切回数を演算して施工データとして設定している。
自動運転設定部77では、それぞれの単位区間を4分割して長さ25cmの分割単位区間を設定する。そして、それぞれの分割単位区間における地盤改良剤の注入体積と羽根切回数を目標値として設定し、それらの目標値によって実際の制御を行う。すなわち、制御部71による回転駆動部8、昇降駆動部70および地盤改良剤供給部75の制御は、分割単位区間における目標値によって行われる。
自動運転設定部77が、単位区間をさらに細かく分割した分割単位区間を設定し、それぞれの分割単位区間における地盤改良剤の注入体積と羽根切回数を目標値として設定して実際の制御を行うようにしたので、地盤中に単位区間よりも小さな不均一層がある場合でも、区間全体に適切な地盤改良剤の注入と羽根切回数を実施することができ、部分的な注入不足や撹拌不足を防止することができる。
例えば、撹拌工具11が地盤中の礫層を貫通するときには、その礫層で地盤改良剤の注入体積や羽根切回数が増加してしまい、その分、礫層以外の部分での地盤改良剤の注入体積や羽根切回数が減少してしまう可能性がある。このように、単位区間による制御では、薄い不均一層により部分的な注入不足や撹拌不足が発生してしまう可能性がある。
本発明のように、単位区間をさらに細かく分割した分割単位区間によって地盤改良剤の注入体積と羽根切回数の目標値を設定して制御を行うことにより、区間全体に適切な地盤改良剤の注入と羽根切回数を実施することができ、部分的な注入不足や撹拌不足を防止することができる。
次に、地盤施工機1における地盤改良剤供給部75のさらに具体的な構成について説明する。図8は、地盤改良剤供給部75の構成例を示す図である。この構成例では、地盤改良剤供給部75は、地盤改良剤を撹拌工具11に対して送出・供給するためのポンプ装置752と、原料を混合して地盤改良剤を作成する地盤改良剤混合装置751とを含むものである。
ここで、地盤改良剤がセメントミルクであれば、その原料はセメントと水である。地盤改良剤混合装置751は、必要とされるセメントミルクの組成に応じて適正量の原料(セメント、水)を混合して適正な組成の地盤改良剤を作成する。地盤改良剤混合装置751で作成された地盤改良剤は、ポンプ装置752によって配管を介して撹拌工具11に向けて送出される。
これらの地盤改良剤混合装置751およびポンプ装置752は、地盤施工機1の本体から離れた位置に設置されている。そして、地盤改良剤混合装置751およびポンプ装置752は、地盤施工機1の本体から送られてくる無線通信信号に含まれる制御信号によって制御されている。例えば、ポンプ装置752においてはポンプの回転開始・停止、地盤改良剤の流量などが制御され、地盤改良剤混合装置751においては地盤改良剤の作成開始、地盤改良剤の追加作成の自動運転の開始・停止などが制御される。
地盤施工機1の本体と無線通信信号の送受信を行うために、無線送受信部753が設けられている。無線送受信部753と地盤改良剤混合装置751およびポンプ装置752との間は有線の信号ケーブルによって接続されている。このような構成により、地盤改良剤混合装置751およびポンプ装置752の制御が無線通信信号を介して可能となる。また、地盤改良剤混合装置751から地盤施工機1の本体に対してデータ要求信号を送り、地盤改良剤の追加作成に必要なデータを受信するというような双方向通信も可能である。
なお、図8の構成例では、1台の地盤改良剤混合装置751に対して1台の地盤施工機1本体が接続されているが、1台の地盤改良剤混合装置751に対して複数台の地盤施工機1本体を接続することもできる。図9は、1台の地盤改良剤混合装置751を複数台の地盤施工機本体に接続する場合の接続図である。1台の地盤改良剤混合装置751にn台の地盤施工機本体が接続される場合、n台の地盤施工機本体を施工機1〜nとして、n台のポンプ装置をポンプ1〜nとする。
図9に示すように、地盤改良剤混合装置751にポンプ1〜nを接続し、それぞれのポンプ装置に別々の地盤施工機本体を接続する。このように、地盤改良剤混合装置751に複数台の地盤施工機本体を接続する際には、ポンプ装置も地盤施工機本体と同じ台数だけ接続する。このようにして1台の地盤改良剤混合装置751を複数台の地盤施工機で共用することができる。なお、図9では図示を省略しているが、この場合も複数台の地盤施工機、複数台のポンプ装置、地盤改良剤混合装置751は無線送受信部によって互いに制御信号やデータの送受信が可能となっている。
以上のように、地盤施工機1本体から離間して配置された地盤改良剤混合装置751およびポンプ装置752を無線通信信号によって制御するようにしたので、地盤施工機1本体と地盤改良剤混合装置751およびポンプ装置752との間を長い信号ケーブルなどにより接続する必要がなくなり、地盤施工機1の設置作業が簡素化される。また、信号ケーブルの切断事故などによる制御上のトラブルも減少し、システムの信頼性が向上する。
次に、地盤改良剤混合装置751における地盤改良剤の追加作成の自動運転について説明する。通常は地盤改良の施工に必要な一日分の地盤改良剤を作成してから施工を行うわけであるが、地盤の状態や予定変更などにより予定量より多くの地盤改良剤が必要になる場合も往々にして発生する。このような場合に、従来は作業者が手動操作で追加分の地盤改良剤を作成していた。本発明における地盤施工機1では、地盤施工機1本体と地盤改良剤混合装置751とが通信を行って地盤改良剤の追加量を計算し、自動的に地盤改良剤の追加作成を行うことができる。これにより、地盤改良の施工における作業効率が大幅に向上する。
図10は、地盤改良剤混合装置751が地盤改良剤の追加作成を行うための処理手順を示すフローチャートである。地盤施工機1本体からの制御信号によって地盤改良剤の追加作成が指示されると、地盤改良剤混合装置751は図10の処理手順の実行を開始する。地盤改良剤の追加作成の処理手順が開始されると、まず、手順101において地盤改良剤混合装置751から地盤施工機1本体にデータ要求信号が送られる。地盤施工機1本体は今後必要とする地盤改良剤の分量(以下、必要量とする)のデータを地盤改良剤混合装置751に送り、地盤改良剤混合装置751はその必要量のデータを読み込む。
次に、手順102において、地盤改良剤混合装置751は装置内に残されている地盤改良剤の分量(以下、残量とする)を検出する。地盤改良剤の残量は残量センサーによって常時検出することができる。次に、手順103では、地盤施工機1本体での必要量が残量より大きいか否かの判断を行い、その判断結果に従って処理を分岐する。すなわち、必要量が残量より大きければ手順104に進み、必要量が残量以下であれば地盤改良剤の追加作成の処理手順を終了する。必要量が残量以下であれば地盤改良剤が十分にあるので追加作成する必要はない。
手順104では、追加作成すべき地盤改良剤の分量(以下、追加量とする)を計算する。追加量をA、必要量をN、残量をZとすると、追加量Aは、式A=N−Zによって計算できる。ただし、追加量Aは1回の作成作業によって作成できるとは限らない。地盤改良剤混合装置751では、1回で作成できる地盤改良剤の分量に上限がある。この上限値(最大値)を最大作成量Pmaxとする。追加量Aが最大作成量Pmaxより大きい場合は、追加量Aを複数回の作業に分けて作成することになる。
次に、手順105では、追加量Aが最大作成量Pmaxより大きいか否かの判断を行い、その判断結果に従って処理を分岐する。すなわち、追加量Aが最大作成量Pmaxより大きければ手順106に進み、追加量Aが最大作成量Pmax以下であれば手順107に進む。手順106では、作成量を最大作成量Pmaxとして地盤改良剤の作成を行う。これは、追加量Aが最大作成量Pmaxより大きいため、追加量Aを複数回の作業に分けて作成する場合である。手順106が終了すると、手順102に戻る。手順102に戻った時点では地盤改良剤の作成量だけ残量が増えることになる。これらの手順102〜106を必要な回数だけ繰り返す。
地盤改良剤混合装置751では、1回で作成できる地盤改良剤の分量に下限値(最小値)も存在する。この下限値を最小作成量Pminとする。最小作成量Pminより少ない分量では地盤改良剤混合装置751の混合作業を正常に遂行することができない。手順105から手順107に進んだ場合は、手順107で追加量Aが最小作成量Pminより小さいか否かの判断を行い、その判断結果に従って処理を分岐する。すなわち、追加量Aが最小作成量Pminより小さければ手順108に進み、追加量Aが最小作成量Pmin以上であれば手順109に進む。
手順108では、作成量を最小作成量Pminとして地盤改良剤の作成を行う。これは、追加量Aが最小作成量Pminより小さいため、作成量を最小作成量Pminとして適正な地盤改良剤の混合が遂行できるようにしたものである。この場合は作成後の残量が必要量よりも大きくなるが、この点によって施工に支障を生じるようなことはない。手順107から手順109に進んだ場合は、作成量を追加量Aとして地盤改良剤の作成を行う。手順108または手順109が終了すれば地盤改良剤の追加作成の処理手順全体が終了する。
このように、地盤改良剤混合装置751は地盤施工機1本体と通信を行って地盤改良剤の追加量を計算し、自動的に地盤改良剤の追加作成を行うことができる。これにより、地盤改良の施工における作業効率が大幅に向上する。
1台の地盤改良剤混合装置751に対して複数台の地盤施工機本体が接続されている場合も、上述の手順と同様にして自動的に地盤改良剤の追加作成を行うことができる。1台の地盤改良剤混合装置751にn台の地盤施工機本体が接続されている場合を考える。n台の地盤施工機本体を施工機1〜nとして、それぞれの必要量をN1,N2,…,Nnとする。n台の地盤施工機全体の必要量Nは、N=N1+N2+…+Nnとなる。
図11は、複数の地盤施工機本体を対象とする地盤改良剤混合装置751が地盤改良剤の追加作成を行うための処理手順を示すフローチャートである。地盤改良剤の追加作成が指示されると、地盤改良剤混合装置751は図11の処理手順の実行を開始する。地盤改良剤の追加作成の処理手順が開始されると、まず、手順301において地盤改良剤混合装置751からn台の施工機1〜nにデータ要求信号が送られる。施工機1〜nはそれぞれの必要量N1〜Nnのデータを地盤改良剤混合装置751に送り、地盤改良剤混合装置751はそれらの必要量N1〜Nnのデータを読み込む。
次に、手順302において、地盤改良剤混合装置751はそれぞれの必要量N1〜Nnから全体の必要量Nを求める。次に、手順303において、地盤改良剤混合装置751は装置内に残されている地盤改良剤の残量を検出する。地盤改良剤の残量は残量センサーによって常時検出することができる。
次に、手順304では、全体の必要量が残量より大きいか否かの判断を行い、その判断結果に従って処理を分岐する。すなわち、必要量が残量より大きければ手順305に進み、必要量が残量以下であれば地盤改良剤の追加作成の処理手順を終了する。必要量が残量以下であれば地盤改良剤が十分にあるので追加作成する必要はない。
手順305では、地盤改良剤の追加量を計算する。追加量をA、必要量をN、残量をZとすると、追加量Aは、式A=N−Zによって計算できる。ただし、追加量Aは1回の作成作業によって作成できるとは限らない。地盤改良剤混合装置751では、1回で作成できる地盤改良剤の分量に上限があり、この上限値(最大値)が最大作成量Pmaxである。追加量Aが最大作成量Pmaxより大きい場合は、追加量Aを複数回の作業に分けて作成する。
次に、手順306では、追加量Aが最大作成量Pmaxより大きいか否かの判断を行い、その判断結果に従って処理を分岐する。すなわち、追加量Aが最大作成量Pmaxより大きければ手順307に進み、追加量Aが最大作成量Pmax以下であれば手順308に進む。手順307では、作成量を最大作成量Pmaxとして地盤改良剤の作成を行う。手順307が終了すると、手順303に戻る。手順303に戻った時点では地盤改良剤の作成量だけ残量が増えることになる。これらの手順303〜307を必要な回数だけ繰り返す。
地盤改良剤混合装置751では、1回で作成できる地盤改良剤の分量に下限値(最小値)があり、この下限値が最小作成量Pminである。手順306から手順308に進んだ場合は、手順308で追加量Aが最小作成量Pminより小さいか否かの判断を行い、その判断結果に従って処理を分岐する。すなわち、追加量Aが最小作成量Pminより小さければ手順309に進み、追加量Aが最小作成量Pmin以上であれば手順310に進む。
手順309では、作成量を最小作成量Pminとして地盤改良剤の作成を行う。手順308から手順310に進んだ場合は、作成量を追加量Aとして地盤改良剤の作成を行う。手順309または手順310が終了すれば地盤改良剤の追加作成の処理手順全体が終了する。
このように、複数台の地盤施工機本体が接続された地盤改良剤混合装置751であっても地盤施工機本体と通信を行って地盤改良剤の追加量を計算し、自動的に地盤改良剤の追加作成を行うことができる。これにより、地盤改良の施工における作業効率が大幅に向上する。
以上のように、本発明によれば、施工パターンを事務所等に配置した工程設定装置2によって作成し、その施工パターンを地盤施工機1の自動運転設定部77に読み込んで自動運転による柱状改良杭の造成に利用することができる。種々の施工実例や過去の施工データを参照することが容易な事務所等において施工パターンの作成を行うことができるため、多種多様な条件やパラメータの設定を効率的に行って施工パターンを作成することができる。