JP2016065273A - スカンジウムの回収方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るスカンジウムの回収方法は、ニッケル酸化鉱を硫酸により浸出し、得られた浸出液をイオン交換樹脂に通液し、次いで溶媒抽出処理を経てスカンジウムを回収するスカンジウムの回収方法であって、その溶媒抽出処理では、溶媒抽出の抽出剤にアミン系抽出剤を用いることにより、被処理溶液中に含まれるトリウムを抽出剤中に抽出して抽出後に被処理溶液中に残留するスカンジウムと分離する。
【選択図】図1
Description
図1は、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法の一例を示すフロー図である。このスカンジウムの回収方法は、ニッケル酸化鉱を硫酸等の酸により浸出して得られた、スカンジウムと不純物であるトリウムとを含有する酸性溶液から、スカンジウムとトリウムとを分離して、スカンジウムのみを簡便に且つ効率よく回収するものである。
<2−1.ニッケル酸化鉱の湿式製錬処理工程>
スカンジウム回収の処理対象となるスカンジウムとトリウムとを含有する酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液を用いることができる。
浸出工程S11は、例えば高温加圧容器(オートクレーブ)等を用いて、ニッケル酸化鉱のスラリーに硫酸を添加して240℃〜260℃の温度下で撹拌処理を施し、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを形成する工程である。なお、浸出工程S11における処理は、従来知られているHPALプロセスに従って行えばよく、例えば特許文献1に記載されている。
中和工程S12は、上述した浸出工程S11により得られた浸出液に中和剤を添加してpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物と中和後液とを得る工程である。この中和工程S12における中和処理により、ニッケルやコバルト、スカンジウム等の有価金属は中和後液に含まれるようになり、鉄、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分が中和澱物となる。
硫化工程S13は、上述した中和工程S12により得られた中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る工程である。この硫化工程S13における硫化処理により、ニッケル、コバルト、亜鉛等は硫化物となり、スカンジウム等は硫化後液に含まれることになる。
本実施の形態においては、上述のようにしてニッケル酸化鉱を硫酸により浸出して得られた、スカンジウムとトリウムとを含有する酸性溶液である硫化後液を、スカンジウム回収処理の対象溶液として適用することができる。ところが、そのスカンジウムとトリウムとを含有する酸性溶液である硫化後液には、スカンジウムやトリウムの他に、上述の硫化工程S13における硫化処理で硫化されずに溶液中に残留したアルミニウムやクロム等が含まれている。このことから、この酸性溶液を溶媒抽出に付すにあたり、スカンジウム溶離工程S2として、予め酸性溶液中に含まれる不純物を除去してスカンジウム(Sc)を濃縮し、スカンジウム溶離液(スカンジウム含有溶液)を生成させることが好ましい。
吸着工程S21では、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる。キレート樹脂の種類は特に限定されず、例えばイミノジ酢酸を官能基とする樹脂を用いることができる。
アルミニウム除去工程S22では、吸着工程S21でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去する。なお、アルミニウムを除去する際、pHを1以上2.5以下の範囲に維持することが好ましく、1.5以上2.0以下の範囲に維持することがより好ましい。
スカンジウム溶離工程S23では、アルミニウム除去工程S22を経たキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得る。スカンジウム溶離液を得るに際して、溶離液に用いる硫酸の規定度を0.3N以上3N未満の範囲に維持することが好ましく、0.5N以上2N未満の範囲に維持することがより好ましい。
クロム除去工程S24では、スカンジウム溶離工程S23を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、吸着工程S21でキレート樹脂に吸着したクロムを除去する。クロムを除去する際に、溶離液に用いる硫酸の規定度が3Nを下回ると、クロムが適切にキレート樹脂から除去されないため、好ましくない。
次に、溶媒抽出工程S3では、スカンジウム溶離工程S2により得られたスカンジウム含有溶液、すなわち、スカンジウムと不純物であるトリウムとを含有する酸性溶液を抽出剤に接触させ、スカンジウムを含有する抽残液を得る。
抽出工程S31では、スカンジウム含有溶液と、抽出剤を含む有機溶媒とを混合して、有機溶媒中に不純物(トリウム)を選択的に抽出し、トリウムを含有する有機溶媒と抽残液とを得る。本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法においては、この抽出工程S31において、アミン系の抽出剤を用いた溶媒抽出処理を行うことを特徴としている。アミン系抽出剤を用いて溶媒抽出処理を行うことにより、より効率的に且つ効果的に不純物であるトリウムを抽出してスカンジウムと分離することができる。
上述した抽出工程S31において、スカンジウム含有溶液から不純物であるトリウムを抽出させた溶媒中にスカンジウムが僅かに共存する場合には、抽出工程S31にて得られた抽出液を逆抽出する前に、その有機溶媒(有機相)に対してスクラビング(洗浄)処理を施し、スカンジウムを水相に分離させて抽出剤から回収することが好ましい(スクラビング工程S32)。
逆抽出工程S33では、抽出工程S31にて不純物(トリウム)を抽出した有機溶媒から、不純物(トリウム)を逆抽出する。具体的に、この逆抽出工程S33では、抽出剤を含む有機溶媒に逆抽出溶液(逆抽出始液)を添加して混合することによって、抽出工程S31における抽出処理とは逆の反応を生じさせてトリウムを逆抽出し、トリウムを含む逆抽出後液を得る。
次に、スカンジウム回収工程S4において、溶媒抽出工程S3における抽出工程S31にて得られた抽残液、及び、スクラビング工程S32でスクラビングを行った場合には、そのスクラビング後の洗浄液から、スカンジウムを回収する。
シュウ酸塩化工程S41は、溶媒抽出工程S2で得られた抽残液及び洗浄液に対して所定量のシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウムの固体として析出、沈殿させて分離する工程である。
焙焼工程S42は、シュウ酸塩化工程S41で得られたシュウ酸スカンジウムの沈殿物を水で洗浄し、乾燥させた後に、焙焼する工程である。この焙焼工程S42における焙焼処理を経ることで、スカンジウムを極めて高品位な酸化スカンジウムとして回収することができる。
[スカンジウム含有溶液の調製]
ニッケル酸化鉱を特許文献1に記載の方法等の公知の方法に基づき、硫酸を用いて加圧酸浸出し、得られた浸出液のpHを調整して不純物を除去した後、硫化剤を添加してニッケルを分離して硫化後液を用意した。なお、表1に硫化後液の組成を示す。
〔抽出工程〕
表2に示す組成の溶解液100リットルを抽出始液とした。これに、アミン系抽出剤(ダウケミカル社製,PrimeneJM−T)を溶剤(シェルケミカルズジャパン社製,シェルゾールA150)を用いて5体積%に調整した有機溶媒50リットルを混合させて室温で60分間撹拌し、スカンジウムを含む抽残液を得た。なお、抽出時にはクラッドが形成されることはなく、静置後の相分離も迅速に進行した。
次に、抽出工程で得られたスカンジウムを含む50リットルの有機溶媒(抽出有機相)に、濃度1mol/lの硫酸溶液を、相比(O/A)が1の比率となるように50リットル混合し、60分間撹拌して洗浄した。その後、静置して水相を分離し、有機相は再び濃度1mol/lの新たな硫酸溶液50リットルと混合して洗浄し、同様に水相を分離した。このような洗浄操作を合計5回繰り返した。
次に、洗浄後の抽出有機相に、濃度1mol/lの炭酸ナトリウムを、相比O/A=1/1の比率となるように混合して60分間撹拌して逆抽出処理を施し、不純物(トリウム)を水相に逆抽出した。
実施例1にて使用した、表1に示す同組成の硫化後液に対して、実施例1と同じ手法でイオン交換処理及び濃縮処理を行い、得られた水酸化スカンジウムを硫酸で再び溶解することによって、表5に示す組成のキレート溶離液(水酸化物溶解液)を得て、溶媒抽出前元液とした。
Claims (6)
- ニッケル酸化鉱を硫酸により浸出し、得られた浸出液をイオン交換樹脂に通液し、次いで溶媒抽出処理を経てスカンジウムを回収するスカンジウムの回収方法において、
前記溶媒抽出処理では、溶媒抽出の抽出剤にアミン系抽出剤を用いることにより、被処理溶液中に含まれるトリウムを該抽出剤中に抽出して抽出後に該被処理溶液中に残留するスカンジウムと分離することを特徴とするスカンジウムの回収方法。 - 前記被処理溶液中のトリウムを抽出した後の抽出剤に、洗浄液としての1.0mol/l以上3.0mol/l以下の濃度の硫酸溶液を混合し、該抽出剤中に含まれるスカンジウムを該洗浄液中に分離するスクラビングを行い、スクラビング後の洗浄液からスカンジウムを回収することを特徴とする請求項1に記載のスカンジウムの回収方法。
- 抽出後の抽出剤に炭酸塩を添加して逆抽出を行うことにより逆抽出後の抽出剤と逆抽出液とを得て、抽出剤中に抽出したトリウムを逆抽出液中に分離して回収することを特徴とする請求項1に記載のスカンジウムの回収方法。
- スクラビング後の抽出剤に炭酸塩を添加して逆抽出を行うことにより逆抽出後の抽出剤と逆抽出液とを得て、抽出剤中に抽出したトリウムを逆抽出液中に分離して回収することを特徴とする請求項2に記載のスカンジウムの回収方法。
- 逆抽出後の抽出剤を、前記被処理溶液中のトリウムを抽出する抽出剤として繰り返し用いることを特徴とする請求項3又は4に記載のスカンジウムの回収方法。
- 前記溶媒抽出処理に付される被処理溶液は、
前記ニッケル酸化鉱を高温高圧下で硫酸により浸出して浸出液を得る浸出工程と、
前記浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物と中和後液とを得る中和工程と、
前記中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程と
を有するニッケル酸化鉱の湿式製錬処理により得られる前記硫化後液であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のスカンジウムの回収方法。
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