JP2016061187A - 燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンに水温センサ等の温度センサを取り付けることなく、エンジン温度に基づいた燃料噴射制御を行うことが可能な燃料噴射制御装置を提供する。【解決手段】エンジンのクランクシャフトの回転に起因する磁束変化に基づいて発生するパルス状の電圧波形であるクランクパルスが、燃料噴射制御装置の入力端子に入力される。噴射量算出部が、入力端子に入力されるクランクパルスの振幅に依存するクランクパルス依存電圧、及びクランクパルスの波形から求まるエンジンの回転数に基づいて、エンジンへの燃料噴射量を算出する。燃料噴射制御部が、算出された燃料噴射量に基づいて、エンジンに装着された燃料噴射装置を制御する。【選択図】図2

Description

本発明は、エンジンの燃料噴射量を制御する燃料噴射制御装置に関する。
近年、車両等の移動体において、燃料噴射量を電子制御しながら、インジェクタからエンジンへ燃料を供給する燃料噴射制御装置が採用されている。下記の特許文献1に開示された装置では、エンジンの冷却水通路に水温センサが設けられている。電子制御ユニット(ECU)が水温センサから出力される電圧信号を読み取り、エンジン温度を検出する。さらに、エンジン回転数、エンジン温度、スロットルバルブの開度等に基づいて、燃料噴射量を算出する。
特開2012−202255号公報
エンジン温度に基づいて燃料噴射量を制御するために、水温センサや油温センサ等を備えると、エンジン制御装置のコスト低減を図ることが困難である。エンジン制御装置のコスト低減のために、水温センサや油温センサ等の温度センサを廃止すると、エンジン温度に基づく燃料噴射制御を行うことが困難である。
本発明の目的は、エンジンに水温センサ等の温度センサを取り付けることなく、エンジン温度に基づいた燃料噴射制御を行うことが可能な燃料噴射制御装置を提供することである。
本発明の第1の観点による燃料噴射制御装置は、
エンジンのクランクシャフトの回転に起因する磁束変化に基づいて発生するパルス状の電圧波形であるクランクパルスが入力される入力端子と、
前記入力端子に入力される前記クランクパルスの振幅に依存するクランクパルス依存電圧、及び前記クランクパルスの波形から求まる前記エンジンの回転数に基づいて、前記エンジンへの燃料噴射量を算出する噴射量算出部と、
算出された前記燃料噴射量に基づいて、前記エンジンに装着された燃料噴射装置を制御する燃料噴射制御部と
を有する。
本発明の第2の観点による燃料噴射制御装置は、第1の観点による燃料噴射制御装置に加えて、
前記入力端子から入力される前記クランクパルスの波高値を保持するピークホールド回路を有し、
前記噴射量算出部は、前記ピークホールド回路で保持されたピークホールド電圧から前記クランクパルス依存電圧を求めて、前記燃料噴射量を算出する。
本発明の第3の観点による燃料噴射制御装置は、第2の観点による燃料噴射制御装置に加えて、
前記入力端子から入力される前記クランクパルスを整流する整流回路と、
前記整流回路で整流された電圧波形を平滑化する平滑回路と
を有し、
前記噴射量算出部は、前記平滑回路で平滑化された電圧から前記クランクパルス依存電圧を求めて、前記燃料噴射量を算出する。
本発明の第4の観点による燃料噴射制御装置においては、第3の観点による燃料噴射制御装置に加えて、
前記噴射量算出部が、前記エンジンの始動時に、前記ピークホールド電圧から前記クランクパルス依存電圧を求め、前記エンジンの回転数が平滑化選択閾値を超えた後は、前記平滑回路で平滑化された電圧から前記クランクパルス依存電圧を求める。
本発明の第5の観点による燃料噴射制御装置は、第3の観点による燃料噴射制御装置に加えて、
前記エンジンのスロットル開度から基本燃料噴射量を算出する噴射量基本マップと、
前記クランクパルス依存電圧及び前記回転数から、燃料噴射量の補正量を算出する噴射量補正マップと
を有し、
前記噴射量算出部は、
前記クランクパルス依存電圧及び前記回転数を、前記噴射量補正マップに適用することにより、前記燃料噴射量の補正量を算出し、
前記噴射量基本マップを用いて算出された前記基本燃料噴射量を、前記補正量に基づいて補正することにより、前記燃料噴射量を算出する。
本発明の第6の観点による燃料噴射制御装置においては、第1〜第5の観点による燃料噴射制御装置に加えて、
前記クランクパルスを発生するクランクセンサと、前記エンジンのクランクシャフトに装着されたリラクタとのエアギャップの寸法のばらつきに起因する前記クランクパルスの波高値のばらつきを補償するためのエアギャップばらつき補償マップを有し、
前記噴射量算出部は、前記クランクパルス依存電圧を、前記エアギャップばらつき補償マップを用いて補償し、補償後の前記クランクパルス依存電圧を用いて前記燃料噴射量を算出する。
第1の観点による燃料噴射制御装置においては、クランクパルス依存電圧に基づいて燃料噴射量が算出される。クランクパルス依存電圧は、エンジン温度に応じて変化される。このため、燃料噴射量の算出に、エンジン温度を反映させることができる。
第2の観点による燃料噴射制御装置においては、クランクパルスの波高値が保持されるため、クランクパルスの波高値に基づいて、クランクパルス依存電圧を容易に算出することができる。
第3の観点による燃料噴射制御装置においては、クランクパルスを整流した後、平滑化するため、平滑化された電圧に基づいて、クランクパルス依存電圧を容易に算出することができる。
第4の観点による燃料噴射制御装置においては、エンジン始動時に、ピークホールド電圧に基づいて燃料噴射量が算出される。このため、エンジン回転数が低く、整流後のクランクパルスの十分な平滑化が行えない場合でも、クランクパルス依存電圧の精度を高めることができる。
第5の観点による燃料噴射制御装置においては、常温時の燃料噴射量である基本燃料噴射量を補正することにより、現時点のエンジン温度に適合した好適な燃料噴射量を算出することができる。
第6の観点による燃料噴射制御装置においては、エアギャップの寸法にばらつきがあっても、クランクパルス依存電圧を補償することにより、燃料噴射量の算出にエンジン温度を反映させることができる。
図1は、実施例による燃料噴射制御装置の機能を実現する電子制御ユニット、及びエンジンのブロック図である。 図2は、クランクパルス依存電圧検出部のブロック図、及びクランクセンサの概略図である。 図3Aは、周囲温度の異なる環境下において、クランクシャフトを回転させ、クランクパルスのピーク電圧を測定した結果を示すグラフであり、図3Bは、クランクパルス、全波整流後のクランクパルス、平滑化された電圧、及びピークホールド電圧の時間波形の一例を示すグラフである。 図4Aは、常温時に測定したエンジン回転数と、クランクパルス依存電圧との関係を示すグラフであり、図4Bは、噴射量補正マップの一例を示す図表である。
図1に、実施例による燃料噴射制御装置の機能を実現する電子制御ユニット20、及びエンジン10のブロック図を示す。実施例による燃料噴射制御装置で制御されるエンジン10は、ガソリンエンジン等の内燃機関である。エンジン10のクランクシャフトの回転角をクランクセンサ11が検出し、クランクパルスCPを発生する。クランクパルスCPは、電子制御ユニット20の入力端子21に入力される。
エンジン10の吸気路に、燃料を供給するためのインジェクタ(燃料噴射装置)15が装着されている。インジェクタ15は、電子制御ユニット20からの制御により、目標とする量の燃料をエンジン10に供給する。スロットル開度センサ13が、スロットルバルブ12の開度を測定する。スロットル開度センサ13の測定結果が、電圧信号として電子制御ユニット20に入力される。電子制御ユニット20の点火制御部27が、点火コイル14への通電を制御する。
電子制御ユニット20は、クランクパルス検出部22、クランクパルス依存電圧検出部23、中央処理ユニット(CPU)40、及びメモリ50を含む。CPU40は、A/D変換回路及び演算回路を含み、コンピュータプログラムを実行することにより、エンジン回転数算出部24、スロットル開度算出部25、切換判定部26、点火制御部27、噴射量算出部30、及び燃料噴射制御部38の機能を実現する。
次に、電子制御ユニット20の各機能について説明する。
スロットル開度算出部25が、スロットル開度センサ13からの電圧信号に基づいて、スロットル開度THPを算出する。点火制御部27が、点火コイル14の通電制御を行う。
クランクパルス検出部22は、クランクセンサ11から入力されたクランクパルスCPに同期したデジタルパルス信号を生成する。このデジタルパルス信号に基づいて、エンジン回転数算出部24がエンジン回転数NEを算出する。
クランクパルス依存電圧検出部23は、クランクパルスCPに基づいて、クランクパルスCPの振幅に依存するクランクパルス依存電圧VCPを出力する。クランクパルス依存電圧検出部23に、切換判定部26から切換信号SSが入力される。クランクパルス依存電圧VCPは、切換信号SSに応じて、クランクパルスCPのピーク電圧値及びクランクパルスCPを平滑化した電圧値のいずれか一方に基づいて生成される。クランクパルス依存電圧検出部23の詳細な構成及び機能については、後に図2を参照して説明する。
切換判定部26は、クランクパルス依存電圧検出部23に切換信号SSを送出する。切換判定部26の詳細な処理については、後に図2を参照して説明する。
図2に、クランクパルス依存電圧検出部23のブロック図、及びクランクセンサ11の概略図を示す。
エンジン10のクランクシャフトにリラクタ16が装着されている。リラクタ16の外周に、周方向に沿って、磁性材料からなる複数の歯17が設けられている。複数の歯17の間の部分(歯間部)は、等しい回転角に対応する複数の歯間部と、相対的に大きな回転角に対応する1つの歯間部で構成される。相対的に大きな回転角に対応する歯間部を、基準歯間部という。
クランクセンサ11は、磁芯18、及び磁芯18に巻かれたピックアップコイル19を含む。磁芯18が、リラクタ16の歯17の先端から、ある間隔(エアギャップ)を隔てて配置されている。磁芯18自体を永久磁石で形成してもよいし、磁性材料からなる磁芯18を永久磁石に磁気的に結合させてもよい。
リラクタ16が回転すると、歯17と磁芯18との距離が周期的に変動する。歯17と磁芯18との距離の変動により、ピックアップコイル19と鎖交する磁束Φが変化する。この磁束Φの変化に起因して、ピックアップコイル19に誘導起電力Eが発生する。この誘導起電力Eのパルス状の時間波形が、クランクパルスCPに相当する。
誘導起電力Eの大きさは、ピックアップコイル19と鎖交する磁束Φと、ピックアップコイル19の巻き数Nとにより、
E=−N×dΦ/dt・・・(1)
と表される。ピックアップコイル19の断面積をS、ピックアップコイル19の断面内の磁束密度をBで表すと、
Φ=B×S・・・(2)
が成り立つため、式(1)は、
E=−N×d(B×S)/dt・・・(3)
と変形される。
ピックアップコイル19の断面積Sは一定であるため、式(3)は、
E=−N・S×dB/dt・・・(4)
と変形される。
式(4)からわかるように、誘導起電力Eの大きさは、磁束密度Bの時間変化に比例する。 永久磁石の残留磁束密度は負の温度係数を持つ。すなわち、永久磁石の温度が上昇すると、残留磁束密度が低下する。永久磁石の残留磁束密度が低下すると、エンジン回転数NEが一定であっても、ピックアップコイル19の断面内の磁束密度Bの時間変化dB/dtが小さくなる。永久磁石の温度は、エンジン温度を反映して変動する。このため、エンジン温度が上昇すると、誘導起電力Eの大きさ、すなわちクランクパルスCPの振幅が小さくなる。
図3Aに、周囲温度Tの異なる環境下において、クランクシャフトを回転させ、クランクパルスCPのピーク電圧を測定した結果を示す。横軸は、周囲温度Tを単位「℃」で表し、縦軸は、クランクパルスCPのピーク電圧Vppを単位「V」で表す。図3A中の三角記号、四角記号、及び丸記号は、それぞれクランクシャフトの回転数が2000rpm、1000rpm、及び500rpmのときのクランクパルスCPのピーク電圧Vppを示す。
クランクシャフトの回転数が一定であれば、周囲温度Tが上昇するに従って、クランクパルスCPのピーク値が低下することがわかる。これは、式(4)の磁束密度Bが減少したことによって、その時間変化dB/dtが低下したためである。周囲温度Tが一定であれば、クランクシャフトの回転数が高くなるに従って、クランクパルスCPのピーク値が高くなる。これは、クランクシャフトの回転数が上昇したことにより、磁束密度Bの時間変化dB/dtが大きくなったためである。
図3Bの1段目に、クランクパルスCPの波形の一例を示す。リラクタ16の歯17(図2)が磁芯18(図2)の先端の近傍を通過するごとに、正方向及び負方向にピークを持つ1つの波形が現れる。図3Bの左半分に、エンジン温度がT1のときのクランクパルスCPの波形の一例を示し、図3Bの右半分に、エンジン温度がT1よりも高いT2のときのクランクパルスCPの波形の一例を示す。なお、エンジン回転数NEは同一である。温度が高くなると、クランクパルスCPの振幅が小さくなる。
図2に示すように、クランクパルス依存電圧検出部23は、整流回路60、平滑回路61、ピークホールド回路62、分圧回路63、及び切換回路64を含む。クランクパルスCPが、整流回路60で全波整流され、整流後のクランクパルスCPRが得られる。整流後のクランクパルスCPRの波形の一例を、図3Bの2段目に示す。エンジン温度が上昇すると、整流後のクランクパルスCPRのピーク値が低下する。全波整流に代えて、整流回路60で半波整流を行ってもよい。
平滑回路61が、整流後のクランクパルスCPRを平滑化することにより、平滑化された電圧VS1が得られる。図3Bの3段目に、平滑化された電圧VS1の波形の一例を示す。エンジン温度が上昇すると、平滑化された電圧VS1が低下する。平滑化された電圧VS1が、分圧回路63により分圧される。分圧された電圧VS2が、切換回路64の一方の入力端子に入力される。
ピークホールド回路62が、整流後のクランクパルスCPRの波形の波高値(ピーク値)を保持することにより、ピークホールド電圧VPHを出力する。ピークホールド電圧VPHは、切換回路64の他方の入力端子に入力される。ピークホールド電圧VPHの波形の一例を、図3Bの4段目に示す。エンジン温度が上昇すると、ピークホールド電圧VPHが低下する。
切換回路64が、切換判定部26から受信した切換信号SSに基づいて、ピークホールド回路62及び分圧回路63の一方を選択する。切換回路64は、例えばトランジスタ等のスイッチング素子で構成される。切換回路64で選択された回路の出力電圧が、クランクパルス依存電圧VCPとして噴射量算出部30に入力される。噴射量算出部30は、クランクパルス依存電圧VCPを一定周波数でサンプリングするとともに、デジタル化し、燃料噴出量を算出する演算を行う。
一般的に、平滑回路61から出力された電圧VS1がA/D変換回路の変換可能最大電圧(例えば5V)を超えるため、電圧VS1が、分圧回路63で分圧される。分圧回路6
3により分圧された電圧VS2は、A/D変換回路の変換可能最大電圧を超えない。エンジン始動時は、エンジン回転数NEが低いため、ピークホールド回路62で保持されるピークホールド電圧VPHは、A/D変換回路の変換可能最大電圧を超えない。このため、ピークホールド電圧VPHは、分圧されることなく、切換回路64に入力される。
切換回路64が分圧回路63を選択している場合には、A/D変換後のデジタル電圧値を、デジタル演算により、分圧前の電圧VS1に戻す。噴射量算出部30(図1)で演算対象となるクランクパルス依存電圧VCPは、分圧前の電圧VS1に相当する。
次に、切換判定部26の切換判定処理について説明する。図3Bに示した整流後のクランクパルスCPRの周期は、エンジン回転数NEに依存する。整流後のクランクパルスCPRの周期が、平滑回路61(図2)の時定数に比べて十分短い場合には、平滑化された電圧VS1はほぼ一定の値を維持する。ところが、整流後のクランクパルスCPRの周期が、平滑回路61(図2)の時定数と同程度か、それよりも長い場合には、平滑化された電圧VS1が脈動する。
平滑化された電圧VS1が脈動している場合には、噴射量算出部30で演算の対象となるクランクパルス依存電圧VCPが、サンプリングのタイミングによって変動してしまう。このため、サンプリングされたクランクパルス依存電圧に、エンジン温度が正しく反映されない。平滑化された電圧VS1が脈動している場合には、切換判定部26は、切換回路64がピークホールド回路62を選択するように、切換回路64に切換信号SSを送信する。平滑化された電圧VS1がほぼ一定の値を維持している場合には、切換判定部26は、切換回路64が分圧回路63を選択するように、切換回路64に切換信号SSを送信する。
一例として、エンジン始動時は、エンジン回転数NEが十分高くないため、切換回路64によってピークホールド回路62が選択されている。エンジン回転数NEが平滑化選択閾値を超えると、切換判定部26が切換回路64に切換信号SSを送出し、選択される回路をピークホールド回路62から分圧回路63に切り換える。平滑化選択閾値として、例えばエンジン10が完爆状態に移行したと判定されるエンジン回転数NEを採用することができる。
図1、図4A、及び図4Bを参照しながら、噴射量算出部30(図1)の処理について説明する。噴射量算出部30は、エアギャップばらつき補償部31、噴射補正量算出部32、及び噴射量補正部33を含む。
噴射量算出部30は、クランクパルスCPの振幅に依存するクランクパルス依存電圧VCP、クランクパルスCPの波形から求まるエンジン回転数NE、及びスロットル開度THPに基づいて、エンジン10への燃料噴射量を算出する。燃料噴射量の算出時に、メモリ50に記憶されているエアギャップばらつき補償マップ51、噴射量補正マップ52、及び噴射量基本マップ53が参照される。
エアギャップばらつき補償部31は、クランクセンサ11と、リラクタ16の歯17(図2)との間のエアギャップの寸法のばらつきに起因するクランクパルスCPの波高値のばらつきを補償し、エアギャップばらつき補償後の電圧値V1を算出する。
噴射補正量算出部32は、電圧値V1及びエンジン回転数NEを、噴射量補正マップ52に適用することにより、燃料噴射量の補正量ΔFCを求める。エアギャップのばらつきが補償された電圧値V1は、エンジン回転数NE及びエンジン10(図1)の温度に依存する。従って、噴射補正量算出部32の処理は、エンジン温度に基づいて燃料噴射量の補
正量ΔFCを求める処理ということができる。
噴射量補正部33は、エンジン10のスロットル開度THP及び噴射量の補正量ΔFCに基づき、噴射量基本マップ53を用いて、燃料噴射量FC1を算出する。
次に、エアギャップばらつき補償部31の処理について、詳しく説明する。
図4Aに、常温時に測定したエンジン回転数NEと、クランクパルス依存電圧VCPとの関係を示す。図4A中の破線TYPは、エアギャップの寸法が代表的な値を持つエンジン10のエンジン回転数NEを変化させて測定されたクランクパルス依存電圧VCPを示す。実線INDは、エンジン10にクランクセンサ11を取り付けた後、個体ごとに常温時に測定されたクランクパルス依存電圧VCPを示す。個体ごとにエアギャップの寸法がばらついているため、実線INDは破線TYPからずれる。測定対象の個体のエアギャップが、代表的なエアギャップの寸法より小さい場合、実線INDは破線TYPの上にずれる。
あるエンジン回転数NEに着目したとき、破線TYPと実線INDとの差が、エアギャップばらつき補償量ΔVCPに相当する。エアギャップばらつき補償マップ51が、エンジン回転数NEとエアギャップばらつき補償量ΔVCPとの関係を定義している。エアギャップばらつき補償マップ51は、エンジン10の出荷前に、常温でクランクパルス依存電圧VCPを測定した結果に基づいて設定される。
エアギャップばらつき補償部31は、現時点のエンジン回転数NEに基づき、エアギャップばらつき補償マップ51を用いて、クランクパルス依存電圧VCPを補償し、補償後の電圧値V1を算出する。具体的には、現時点のエンジン回転数NEをエアギャップばらつき補償マップ51に適用して、エアギャップばらつき補償量ΔVCPを求める。クランクパルス依存電圧検出部23から入力されたクランクパルス依存電圧VCPを、エアギャップばらつき補償量ΔVCPだけ増減させることにより、補償後の電圧値V1を算出する。
エンジン始動時には、切換回路64(図2)でピークホールド回路62が選択されており、この時のエンジン回転数NEは、最初の2つのクランクパルスCPの時間間隔に基づいて算出される。従って、エンジン10のクランキング開始後、最初の2つのクランクパルスCPを受信した時点で、エアギャップばらつき補償部31の処理が実行可能になる。リラクタ16(図2)の相対的に広い幅を持つ基準歯間部が特定されていない場合には、クランクパルスCPの時間間隔からエンジン回転数NEを算出することができない。この場合には、基準歯間部が検出された直後の2つのクランクパルスCPの時間間隔に基づいて、エンジン回転数NEが算出される。
次に、噴射補正量算出部32の処理について、詳しく説明する。
図4Bに、噴射量補正マップ52の一例を示す。エアギャップばらつき補償後の電圧値V1とエンジン回転数NEとの種々の組み合わせについて、補正量ΔFCが定義されている。図4Bに示した例では、電圧値V1がV1(1)であり、エンジン回転数NEがNE(1)であるときの補正量ΔFCがΔFC(1)と定義されている。
噴射補正量算出部32は、エアギャップばらつき補償後の電圧値V1と、エンジン回転数NEとを、噴射量補正マップ52に適用することにより、補正量ΔFCを決定する。
次に、噴射量補正部33の処理について説明する。
噴射量基本マップ53が、スロットル開度THPと、常温時の燃料噴射量である基本燃料噴射量FC0との対応関係を定義する。噴射量補正部33は、スロットル開度THPを、噴射量基本マップ53に適用することにより、基本燃料噴射量FC0を求める。補正量ΔFCに基づいて基本燃料噴射量FC0を補正することにより、燃料噴射量FC1が算出される。
算出された燃料噴射量FC1が、燃料噴射制御部38に入力される。燃料噴射制御部38は、算出された燃料噴射量FC1に相当する量の燃料がエンジン10に供給されるように、インジェクタ15を制御する。
上記実施例では、噴射補正量算出部32と、噴射量補正部33とが、別々の機能ブロックで実現されているが、両者を統合して1つの機能ブロックとしてもよい。統合された機能ブロックは、エアギャップばらつき補償後の電圧値V1、エンジン回転数NE、及びスロットル開度THPに基づいて、燃料噴射量FC1を算出する。この場合には、噴射量補正マップ52及び噴射量基本マップ53も、1つのマップに統合される。統合されたマップでは、エアギャップばらつき補償後の電圧値V1、エンジン回転数NE、及びスロットル開度THPの3つのパラメータと、燃料噴射量FC1との対応関係が定義されている。
エアギャップが公差の範囲内でばらついても、クランクパルス依存電圧VCPに与える影響がほとんどない場合には、エアギャップばらつき補償部31及びエアギャップばらつき補償マップ51を省略してもよい。
上記実施例では、エンジン10の温度が反映されたクランクパルス依存電圧VCPに基づいて、常温時の基本燃料噴射量FC0が補正され、燃料噴射量FC1が算出される。このため、水温センサ、湯温センサ等の温度センサを装着することなく、エンジン温度に基づく好適な燃料噴射量FC1を求めることができる。温度センサを省略することができるため、エンジンコストを削減することが可能になる。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
10 エンジン
11 クランクセンサ
12 スロットルバルブ
13 スロットル開度センサ
14 点火コイル
15 インジェクタ
16 リラクタ
17 歯
18 磁芯
19 ピックアップコイル
20 電子制御ユニット
21 入力端子
22 クランクパルス検出部
23 クランクパルス依存電圧検出部
24 エンジン回転数算出部
25 スロットル開度算出部
26 完爆判定部
27 点火制御部
30 噴射量算出部
31 エアギャップばらつき補償部
32 噴射補正量算出部
33 噴射量補正部
38 燃料噴射制御部
40 中央処理ユニット(CPU)
50 メモリ
51 エアギャップばらつき補償マップ
52 噴射量補正マップ
53 噴射量基本マップ
60 整流回路
61 平滑回路
62 ピークホールド回路
63 分圧回路
64 切換回路
CP クランクパルス
CPR 全波整流されたクランクパルス
FC0 基本燃料噴射量
FC1 燃料噴射量
NE エンジン回転数
SS 切換信号
THP スロットル開度
V1 エアギャップばらつき補償後の電圧値
VCP クランクパルス依存電圧
VPH ピークホールド電圧
VS1 平滑化された電圧
VS2 平滑後分圧された電圧
ΔFC 燃料噴射量の補正量
ΔVCP エアギャップばらつき補償量

Claims (6)

  1. エンジンのクランクシャフトの回転に起因する磁束変化に基づいて発生するパルス状の電圧波形であるクランクパルスが入力される入力端子と、
    前記入力端子に入力される前記クランクパルスの振幅に依存するクランクパルス依存電圧、及び前記クランクパルスの波形から求まる前記エンジンの回転数に基づいて、前記エンジンへの燃料噴射量を算出する噴射量算出部と、
    算出された前記燃料噴射量に基づいて、前記エンジンに装着された燃料噴射装置を制御する燃料噴射制御部と
    を有する燃料噴射制御装置。
  2. さらに、前記入力端子から入力される前記クランクパルスの波高値を保持するピークホールド回路を有し、
    前記噴射量算出部は、前記ピークホールド回路で保持されたピークホールド電圧から前記クランクパルス依存電圧を求めて、前記燃料噴射量を算出する請求項1に記載の燃料噴射制御装置。
  3. さらに、
    前記入力端子から入力される前記クランクパルスを整流する整流回路と、
    前記整流回路で整流された電圧波形を平滑化する平滑回路と
    を有し、
    前記噴射量算出部は、前記平滑回路で平滑化された電圧から前記クランクパルス依存電圧を求めて、前記燃料噴射量を算出する請求項2に記載の燃料噴射制御装置。
  4. 前記噴射量算出部は、前記エンジンの始動時に、前記ピークホールド電圧から前記クランクパルス依存電圧を求め、前記エンジンの回転数が平滑化選択閾値を超えた後は、前記平滑回路で平滑化された電圧から前記クランクパルス依存電圧を求める請求項3に記載の燃料噴射制御装置。
  5. さらに、
    前記エンジンのスロットル開度から基本燃料噴射量を算出する噴射量基本マップと、
    前記クランクパルス依存電圧及び前記回転数から、燃料噴射量の補正量を算出する噴射量補正マップと
    を有し、
    前記噴射量算出部は、
    前記クランクパルス依存電圧及び前記回転数を、前記噴射量補正マップに適用することにより、前記燃料噴射量の補正量を算出し、
    前記噴射量基本マップを用いて算出された前記基本燃料噴射量を、前記補正量に基づいて補正することにより、前記燃料噴射量を算出する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料噴射制御装置。
  6. さらに、
    前記クランクパルスを発生するクランクセンサと、前記エンジンのクランクシャフトに装着されたリラクタとのエアギャップの寸法のばらつきに起因する前記クランクパルスの波高値のばらつきを補償するためのエアギャップばらつき補償マップを有し、
    前記噴射量算出部は、前記クランクパルス依存電圧を、前記エアギャップばらつき補償マップを用いて補償し、補償後の前記クランクパルス依存電圧を用いて前記燃料噴射量を算出する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃料噴射制御装置。
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