JP2016060865A - 硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 活性エネルギー線での硬化性に優れ、且つ高屈折率の硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物、その硬化物並びにその硬化物を含む積層体を提供すること。【解決手段】 多官能(メタ)アクリレート(a1)と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)とのマイケル付加物(A)と、重合開始剤(B)と、を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物、当該硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物及び硬化性樹脂組成物を透明基材上に塗布、硬化させてなることを特徴とする積層体。【選択図】 なし

Description

本発明は、屈折率の高い硬化物を与えうる硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び透明基材上にその硬化物が積層されてなる積層体に関する。
現在、画像表示部に直接触れることにより、情報を入力できるデバイスとしてタッチパネルが広く用いられている。タッチパネルは光を透過する入力装置を液晶表示装置等のディスプレイ画面上に配置したものであり、代表的な形式として、透明電極と指との間に生じる電流容量の変化を利用した静電容量式タッチパネルがある。
前記静電容量式タッチパネルには、通常、透明電極として2枚の透明導電性フィルムが用いられており、透明基材フィルム上に透明導電層が積層された一対の透明導電性フィルムは透明基材フィルム同士が向かい合うように粘着層を介して貼り合せられている。タッチパネル用の透明導電性フィルムとしては、透明基材フィルム上に、酸化錫を含有するインジウム酸化物(錫ドープ酸化インジウム、ITO)や酸化亜鉛等の金属酸化物による透明導電層を積層したものが一般的に用いられている。このような透明導電性フィルムは、金属酸化物層の反射及び吸収に由来する可視光短波長領域の透過率の低下により、全光線透過率が低下すると同時に、黄色の呈色が見られることが多い。そのため、タッチパネルの下に配置される表示装置の発色を正確に表現することが難しいという問題があった。
この問題を解決するために、導電層と基材との間に、導電層、基材のどちらよりも屈折率の高い高屈折率層を挿入したり、あるいは導電層、基材のどちらよりも屈折率の低い低屈折率層を挿入する方法が提案されたりしている(例えば、特許文献1参照)。更には、基材の屈折率と導電層の屈折率との中間の屈折率を有する中間層を設けることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
屈折率の調整のためには、有機物からなるバインダー樹脂に、各種金属酸化物微粒子を分散させる方法がよく知られているが、バインダー樹脂そのものの屈折率が予め高いものであれば、金属酸化物微粒子の配合割合を下げることが可能となり、塗液の保存安定性が向上するほか、バインダー樹脂の使用割合が高まれば、フィルム化した際のもろさの解消も図ることができると期待される。
屈折率の比較的高いUV硬化性のモノマーとしては、フルオレン骨格を有するアクリレートモノマーが知られている(例えば、特許文献3参照)が、その硬化性が低いため、さらなる改良が求められている。
特開平6−218864号公報 特開2004−47456号公報 特開2009−185272号公報
従って、本発明が解決しようとする課題は、活性エネルギー線での硬化性に優れ、且つ高屈折率の硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物、その硬化物並びにその硬化物を含む積層体を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、多官能(メタ)アクリレート(a1)と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)とのマイケル付加物を必須の成分として含有する硬化性組成物は、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、多官能(メタ)アクリレート(a1)と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)とのマイケル付加物(A)と、重合開始剤(B)と、を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物、その硬化物、並びに、当該硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、硬化させてなることを特徴とする積層体を提供するものである。
本発明によれば、従来の硬化性樹脂組成物よりも高屈折の硬化物を得ることができる。この硬化性樹脂組成物の必須の成分である、多官能(メタ)アクリレートと9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)との付加物は、マイケル付加により得ることができ、比較的穏やかな反応条件下で容易に得ることができる材料である。またHCAの含有率の調整も容易であることから、目的とする屈折率を有する硬化物を得ることが可能である。特にHCAを高含有率で用いた場合は、屈折率調製のために配合される金属酸化物微粒子の使用量を削減することができ、この結果、基材に塗布し硬化させてなるフィルムとした時のわれや剥がれを防止することも可能となる。更に、基材がプラスチックからなる場合、通常使用されるハードコート層としての使用もでき、屈折率の調整層とハードコート層の機能を兼備させること、あるいは、この2層に使用する樹脂組成物を同一とすることが可能となり、製造コストの大幅な削減にも寄与することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリレート(a1)と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)とのマイケル付加物(A)を用いることを必須とする。
なお、本願における(メタ)アクリレートとは、アクリレート単独、メタクリレート単独及びそれらの混合物の総称である。
前記多官能(メタ)アクリレート(a1)としては、2官能以上の(メタ)アクリレートであって、HCAとマイケル付加できるものであれば良く、特に限定されるものではない。例えば、原料の工業的入手が容易であり、且つ温和な反応条件を選択できる等の観点から、下記一般式(1)
Figure 2016060865
〔式中、R’は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキルカルボニルオキシ基、CH=CHCOCH−、CH=C(CH)COCH−、繰り返し数が1以上で末端が水素原子或いは炭素数1〜18のアルキル基で封鎖された(ポリ)オキシアルキレン基、炭素数1〜12のアルキロール基、又は下記一般式(2)
Figure 2016060865
(式中、Rは(メタ)アクリロイル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜18のアルキルカルボニル基であり、tは0〜3の整数であり、uは0〜3の整数であって且つt+u=3である。)
で表される基であり、Rは(メタ)アクリロイル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜18のアルキルカルボニル基であり、rは2又は3であり、sは0又は1であって且つr+s=3である。〕
で表される化合物(a1−1)、シアヌレート環含有トリ(メタ)アクリレート(a1−3)、又はリン酸トリ(メタ)アクリレート(a1−4)であることが好ましい。
これらの中でも、多官能(メタ)アクリレート(a1)が、前記一般式(1)におけるR’が炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基、CH=CHCOCH−、CH=C(CH)COCH−、若しくは炭素数1〜3のアルキロール基であるもの、或いは前記一般式(2)で表される基であって且つRが水素原子若しくは炭素数1〜12のアルキルカルボニル基である化合物であることが特に好ましい。
多官能(メタ)アクリレート(a1)としては、具体的には以下の化合物が挙げられる。
まず、2官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート(例えば、化薬サートマー株式会社製SR−212等)、1,4−ジオールジアクリレート(例えば、大阪有機化学株式会社製ビスコート#195等)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製1,6HX−A)、エチレンオキシド(以下EOと略す)変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(例えば、サンノプコ株式会社製RCC13−361等)、エピクロルヒドリン(以下、ECHと略す)変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドR−167等)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(例えば、大阪有機化学株式会社製ビスコート#215等)、ジエチレングリコールジアクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADE−100)、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート(例えば、長瀬化成株式会社製デナコールアクリレートDA−722等)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学株式会社製ライトアクリレートHPP−A等)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドNPGDA等)、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、サンノプコ株式会社製フォトマー4160等)、プロピレンオキシド(以下、POと略す)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、化薬サートマー株式会社製SR−9003等)、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート(例えば、東亞合成株式会社製アロニックスM−233等)、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADE−200等)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADP−200等)、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール−ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADCシリーズ等)、ポリテトラメチレンジグリコールジアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製ライトアクリレートPTMGA−250等)、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製ライトアクリレート3EG−A等)、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート(例えば、ダイセルUCB株式会社製IRR214等)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(例えば、DIC株式会社製LUMICURE DCA−200)、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドR−604等)、トリグリセロールジアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製エポキシエステル80MFA等)が挙げられる。
3官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、EO変性グリセロールアクリレート(例えば、第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアGE3A等)、PO変性グリセロールトリアクリレート(例えば、荒川化学株式会社製ビームセット720)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)(例えば、第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアPET−3等)、EO変性リン酸トリアクリレート(例えば、大阪有機化学株式会社製ビスコート3A)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMTPA)(例えば、第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアTMTP等)、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、ダイセルUCB株式会社製Ebecryl2047等)、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドTHE―330等)、(EO)或いは(PO)変性トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、DIC株式会社製LUMICURE ETA−300、第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアTMP−3P等)、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドD−330等)、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(例えば、日立化成株式会社製ファンクリルFA−731A等)等が挙げられる。
4官能の(メタ)アクリレートしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)(例えば、DIC株式会社製LUMICURE DTA−400等)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート(例えば、三菱レーヨン株式会社製ダイヤビームUK−4154等)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)(例えば、新中村化学株式会社製NKエステルA−TMMT等)等が挙げられる。
5官能または6官能(メタ)アクリレートしては、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート(例えば、化薬サートマー株式会社製SR−399E等)、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドD−310)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば、DIC株式会社製DAP−600等)、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートベース・多官能モノマー混合物(例えば、DIC株式会社製LUMICURE DPA−620等)等が挙げられる。
尚、本発明がこれら具体例によって何ら限定されるものではないことは勿論である。これらは単独での使用、或いは(メタ)アクリロイル基数が異なる複数の化合物を混合して用いても、更に、構造も異なる複数の化合物を混合して用いても良い。また、一般に市販入手可能な前記化合物(a1)としては、主成分となる目的化合物に対して(メタ)アクリロイル基数の異なる化合物の混合物であることが多い。使用に際しては、各種クロマトグラフィー、抽出等の精製方法で目的とする(メタ)アクリロイル基数の化合物を取り出して用いてもよいが、混合物のまま用いてもよい。
また、本発明で用いる前記多官能(メタ)アクリレート(a1)としては、ウレタン(メタ)アクリレート(a1−2)を使用することも可能である。前記ウレタン(メタ)アクリレート(a1−2)の製造方法としては何ら制限はなく、例えば、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレート(x1)とイソシアネート化合物との重付加反応等により得ることが可能である。
前記反応は、無触媒で行うことも可能であるが、反応効率等の観点からウレタン化触媒等の反応助剤等も使用できる。前記ウレタン化触媒としては、例えば、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられ、原料として用いる水酸基含有(メタ)アクリレート(x1)とイソシアネート化合物との総重量に対して、0.01〜10重量%用いるのが好ましい。
前記水酸基含有(メタ)アクリレート(x1)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーGAM等)等が挙げられる。
前記イソシアネート化合物としては、芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物の何れも用いることは可能であり、例えば、トルエンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、アダマンチルジイソシアネート等が挙げられ、得られる硬化物が黄変しにくいことから、脂肪族イソシアネートまたは脂環式イソシアネートを用いることが好ましい。即ち、ウレタン(メタ)アクリレート(a1−2)としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレート(x1)と脂肪族または脂環式イソシアネート化合物(x2)とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。
前記多官能(メタ)アクリレート(a1)とHCAとの使用割合としては、得られる硬化性樹脂組成物の使用用途、目的とする物性により適宜調整されるものであり、マイケル付加反応後に(メタ)アクリロイル基が1個以上残存する仕込み比であれば、なんら制限されるものではない。具体的には得られる硬化性、硬化物の高屈折率性を効率よく発現するため、前記多官能(メタ)アクリレート(a1)1モルに対して、通常HCAを(k−1)モル以下〔kは前記多官能(メタ)アクリレート(a1)1分子中の平均(メタ)アクリロイル基数〕で用いることが好ましく、[0.01〜(k−1)]モルの範囲であることがより好ましく、[0.05〜(k−1)]モルであることが特に好ましく、[0.1〜(k−1)]モルであることが最も好ましい。なお、HCAは市販されているものをそのまま使用することができる。不純物を含有する市販品を用いる場合は、必要に応じて精製してから用いてもよい。
前記多官能(メタ)アクリレート(a1)とHCAとの反応は、通常のマイケル付加反応の方法に従えば良く、HCAであることによる特別の配慮は特に必要ではなく、無溶媒でも溶媒存在下でも製造できる。溶媒を使用する場合には、前記多官能(メタ)アクリレート(a1)及びHCAの溶解性、沸点、使用する設備等を考慮し適宜、選択されるものであるが、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン(以下、MEKと略記する。)、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略記する。)等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性化合物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素類等が挙げられ、単独でも2種以上の溶媒を混合して使用しても良い。これらの中でもエステル類、芳香族系炭化水素類、ケトン類、エーテル類等を用いることが好ましく、エステル類、エーテル類を用いることが特に好ましい。
この反応は、無触媒で行うことも可能であるが、反応効率の面から、適宜、触媒等の反応助剤を選択して使用することも可能である。前記反応助剤として、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコラート類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]−オクタン等のアミン類、水素化ナトリウム、水素化リチウム等の金属水素化物類、ベンジルトリメチルアンモニウム・ヒドロキシド、テトラアンモニウム・フルオライド等のアンモニウム塩、過酢酸等の過酸化物等が挙げられ、好ましくは金属アルコラート類、アミン類、アンモニウム塩であり、特に好ましくはアミン類である。前記反応助剤の使用量としては、特に制限されるものではないが、原料として用いる前記多官能(メタ)アクリレート(a1)1モルに対して0.01〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%である。
さらに、用いる多官能(メタ)アクリレート(a1)によっては、熱も反応活性化エネルギー源として単独使用または併用使用することが可能である。反応温度としては通常、0℃〜還流温度であり、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜70℃である。反応時、溶媒などを使用した場合、溶質濃度としては通常2〜90重量%であり、好ましくは20〜80重量%である。原料として用いるHCAは固いフレーク状なので、無溶媒の場合は、HCAの融点(約120℃)付近まで一旦加熱して溶かしたほうが良いし、溶媒を用いる場合は先にHCA溶液にしたほうが好ましい。このようにして得られた生成物は、抽出などによる洗浄、およびカラムクロマトグラフィー等で精製して使用することも可能であるが、そのまま使用することも可能である。特に(メタ)アクリロイル基数の多い多官能(メタ)アクリレート(a1)を用いた場合には、HCAが付加する場所を制御することは通常困難であり、付加した場所が異なる種々の化合物からなる混合物であるマイケル付加物(A)が得られるが、この場合においても、単離・精製によって単一物質を取り出す必要はなく、マイケル付加反応の位置が異なる種々の化合物からなる混合物として使用することが可能である。
以上の如く、前記多官能(メタ)アクリレート(a1)と、HCAとのマイケル付加反応を経由することで、強酸触媒などを必要とした縮合反応を経ることなく、より簡便且つ穏和な条件下でHCA由来構造を含む(メタ)アクリレートを製造できる。また、現在市販品として入手が容易である、或いは合成が容易である様々な多官能(メタ)アクリレートを出発原料として使用することが可能であるため、硬化性樹脂組成物の使用目的、用途また要求特性に対して、構造或いは1分子中のHCA由来構造含有率、残存する(メタ)アクリロイル基含有量を適宜調整するといった変更が容易であり、より有効な製造方法といえる。
本発明の硬化性樹脂組成物には、重合開始剤(B)を含むことが必要である。重合開始剤(B)としては、通常(メタ)アクリレート類を重合させることができる化合物であれば良く、特に限定されないが、光重合開始剤であることが好ましく、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントラキノン等の水素引き抜きによってラジカルを発生するタイプの化合物等が挙げられる。これらの化合物は、メチルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の第三アミンと併用するのが一般的である。
更に、光重合開始剤として、例えば、分子内開裂によってラジカルを発生するタイプの化合物も挙げられる。具体的には、例えば、ベンゾイン、ジアルコキシアセトフェノン、アシルオキシムエステル、ベンジルケタール、ヒドロキシアルキルフェノン、ハロゲノケトン等が挙げられる。
また、必要により、光重合開始剤と併用して、ハイドロキノン、ベンゾキノン、トルハイドノキノン、パラターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤類などを添加することもできる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記マイケル付加物(A)を重合開始剤(B)で硬化させることで硬化物を得ることができるが、硬化性、及び目的とする硬化物の性能に応じて、その他の(メタ)アクリレート(a2)を併用することができる。
前記その他の(メタ)アクリレート(a2)としては、分子中にアクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を含む化合物であれば、種々の化合物を制限なく用いることができる。その他の(メタ)アクリレートとしては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレート等のいずれでも良い。このような化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イシステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族エステル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アロニックス M−5700(東亞合成工業株式会社製)、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングルコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングルコール(メタ)アクリレート、AR−200、MR−260、AR−200、AR−204、AR−208、MR−200、MR−204、MR−208(以上、大八化学株式会社製)、ビスコート 2000、ビスコート 2308(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ライトエステルHOA−MS、ライトエステル HOMS(以上、共栄社化学株式会社製)、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、FANCRYL FA−512A、FANCRYL FA−512M(以上、日立化成工業株式会社製)等が挙げられ、単独でも2種以上の混合物としても用いることが出来る。
更に多官能性の(メタ)アクリレートを併用することも可能であり、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(数平均分子量:150〜1000)、 プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(数平均分子量:150〜1000)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、前記マイケル付加物(A)を得るために使用する多官能(メタ)アクリレートとして例示したものを何れも用いることができる。
更に、上記以外の市販品としては、例えば、ネオマー NA−305、ネオマー BA−601、ネオマー TA−505、ネオマー TA−401、ネオマー PHA−405X、ネオマー TA705X、ネオマー EA400X、ネオマー EE401X、ネオマー EP405X、ネオマー HB601X、ネオマー HB605X(以上、三洋化成工業株式会社製)、KAYARAD HY−220、KAYARAD HX−620、KAYARAD D−310、KAYARAD D−320、KAYARAD D−330、KAYARAD DPHA、KAYARAD DPCA−20、KAYARAD DPCA−30、KAYARAD DPCA−60、KAYARAD DPCA−120(以上、日本化薬株式会社製)等も挙げられる。これらは、単独でも、2種以上をどのような組み合わせで用いても良い。
また、得られる硬化物の表面の平滑性を向上させる目的で、フッ素系、シリコーン系、炭化水素系等の各種レベリング剤を、本発明の効果を阻害しない範囲の添加量で(例えば、0.005〜1質量%)添加することができる。更に、塗膜硬度を向上させる目的で、シリカゲル等の無機微粒子(粒径5〜100nm)を、本発明の効果を阻害しない範囲の添加量で(例えば0.1〜50質量%)添加することができる。
更に、本発明の硬化性樹脂組成物には、有機溶剤を含んでいてもよい。ここで用いることできる有機溶剤としては、例えば、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素系、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、イソホロンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
その他、各種添加剤、例えば、帯電防止剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、光増感剤、消泡剤、無機充填剤、カップリング剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤等などを配合材料としてもよい。
本発明の硬化物は前記硬化性樹脂組成物を硬化させてなる。重合開始剤(B)の種類に応じた硬化反応を起こさせればよく、例えば、光重合開始剤を用いた場合、活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、ガンマ線などを挙げることができる。照射条件は、硬化性樹脂組成物の組成に応じて定められるが、紫外線照射の場合、通常積算光量が10〜5,000mj/cmとなるように照射するのが好ましく、積算光量が50〜1,000mj/cmとなるように照射するのがより好ましい。また、電子線を照射する場合には1〜5Mradの照射量であることが好ましい。これらの中でも、扱いが簡便な点で紫外線硬化が好ましい。
本発明の積層体は前記硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化層をフィルム状基材上に有するものである。
前記フィルム状基材としては、例えば、プラスチックフィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリカーボネートなどから製造されたフィルム等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物の硬化層をフィルム基材上に形成する為の塗装手段としては、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、スプレーコート法、リップコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法等が挙げられる。塗装する際には、硬化させた硬化層の厚さが0.1〜400μmとなる様に塗装するのが好ましく、なかでも1〜50μmとなる様に塗装するのがより好ましい。
有機溶剤を含有している硬化性樹脂組成物を用いるときは、基材フィルム上に硬化性樹脂組成物の層を形成した後、通常有機溶剤を除去する。有機溶剤を除去する方法としては、そのまま放置して揮発するのを待っても良いし、乾燥機等を用いて乾燥させても良いが、有機溶剤を除去する際の温度は、通常、70〜130℃、乾燥時間は10秒〜10分の範囲であることが好ましい。
前記方法等で硬化性樹脂組成物からなる層を形成した後、該層に活性エネルギー線を照射する、あるいは加熱して、本発明の積層体を得ることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物からなる層を所謂ハードコート層として用いる場合は、前述のプラスチックフィルムに直接硬化層を積層させればよい。また、本発明の硬化性樹脂組成物に金属酸化物微粒子を配合してなる組成物とした場合には、硬化層の屈折率を容易に高めることも可能であるため、ハードコート層上の形成される光学調整層としても使用可能である。更にはハードコート層の機能と、光学調整層の機能を兼備する硬化層としての使用や、ハードコート層と光学調整層の材料の統一化も可能であり、本発明は、積層体(フィルム)の薄膜化、製造工程の簡略化によるコスト削減効果をも有する。
以下に本発明を具体的な製造例、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例中の部及び%は、特に記載のない限り、すべて質量基準である。
合成例1
撹拌機、空気導入管、コンデンサー、温度計を備えた反応装置に、メトキシプロピルアセテート(PGMAC)142部、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製、HCA)216部(1モル)を仕込み、系内温度100℃で均一溶解するまで撹拌した。次いで、ジブチルヒドロキシトルエン1.7部、パラメトキシフェノール0.3部およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)352部(1モル)を仕込んだ。触媒としてジメチルベンジルアミン2.8部を添加した後、空気を導入しながら100℃で8時間反応させ、マイケル付加物A1の溶液(固形分80%)714.8部を得た。
合成例2〜4
合成例1において、表1に記載の原料及び仕込み量とする以外は、合成例1と同様にして、マイケル付加物(A2)〜(A4)を得た。
Figure 2016060865
なお、表1における原料の略称は以下の通り。
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
尚、得られたマイケル付加物の分子量(Mn:数平均分子量、Mw:重量平均分子量)は、以下の測定方法によって測定した。
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC−8220
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムTSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSKgel SuperHZM−M×4
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
実施例1
合成例1で得られたマイケル付加物(A1)の溶液12.5部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.4部、メトキシプロパノール1.8部を混合し、固形分が70%の組成物(1)を得た。組成物(1)の粘度を配合直後と85℃、24時間放置後にそれぞれ測定した。組成物(1)を用いて下記の方法でフィルム上にハードコート層を形成し、屈折率(プリズムカプラ法)を測定した。また、ヘーズ(JIS K7136準拠)をハードコート層形成直後と85℃、24時間放置後にそれぞれ測定した。硬化性については、乾燥膜厚1μmの塗工物に対し、積算光量100mJ/cmとなるように空気雰囲気で紫外線を照射した後、指触により判定した(○:硬化、×:未硬化)。未硬化のものは、追加で100mJ/cmずつ照射していき、合計500mJ/cmまで照射を行った。
ハードコート層の形成方法
組成物(1)をPETフィルム(125μm)に乾燥膜厚が5μmとなるようにバーコーターを用いて塗工した。80℃で1分間溶剤を乾燥させた後、高圧水銀灯(80W/cm)で積算光量が500mJ/cmとなるように空気雰囲気で紫外線を照射し、ハードコート層を得た。
実施例2〜4
実施例1において、組成物の配合材料/配合量を表2記載のものとする以外は、実施例1と同様にして組成物を調製後、各種評価を行った。結果を表2下部に示す。
Figure 2016060865
実施例1〜4は、1.58以上の高屈折率と、500mJ/cm以下のUV照射で優れた硬化性を示した。また、85℃、24時間の高温環境においても組成物粘度と塗工物ヘーズがほとんど変化しなかった。
比較例1〜3
実施例1において、組成物の配合材料/配合量を表3記載のものとする以外は、実施例1と同様にして組成物を調製後、各種評価を行った。結果を表3下部に示す。
Figure 2016060865
比較例1は、実施例1と同じPETA/HCA比率になるように混合したが、溶けなかった。比較例2は、PETAに最大限溶ける量のHCAを用いた。比較例2はHCAとPETAを反応させず、単に混合した系である。HCAとPETAは相溶性が悪く、HCAを10wt%程度しか配合できないので、高屈折率化できなかった。また、高温環境では組成物の増粘、塗工物の白化が見られた。比較例3は市販の高屈折率モノマーを用いた系である。高屈折率だが、UV硬化性に劣ることを確認した。

Claims (7)

  1. 多官能(メタ)アクリレート(a1)と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)とのマイケル付加物(A)と、重合開始剤(B)と、を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
  2. 前記マイケル付加物(A)が、前記多官能(メタ)アクリレート(a1)中に含まれる(メタ)アクリロイル基の官能基数kに対して、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)を(k−1)モル以下でマイケル付加反応させたものである請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 更に前記マイケル付加物(A)以外の(メタ)アクリレート(a2)を含有するものである請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 前記重合開始剤(B)が光重合開始剤である請求項1〜3の何れか1項記載の硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4の何れか1項記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
  6. 請求項1〜4の何れか1項記載の硬化性樹脂組成物を透明基材上に塗布、硬化させてなることを特徴とする積層体。
  7. 透明基板上にハードコート層を積層させた後、請求項1〜3の何れか1項記載の硬化性樹脂組成物を前記ハードコート層上に塗布、硬化させてなることを特徴とする積層体。
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