JP2016053167A - 二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム、およびそれを用いた冷間成形用電池ケース包材 - Google Patents
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Abstract
【課題】延伸性が極めて良好で、長時間の連続運転が可能な二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム、及び防湿性、耐酸性、冷間成形性に優れた冷間成形用電池ケース包材、特にリチウムイオン二次電池等の電池用包材の提供。【解決手段】二軸延伸PBT系フィルムの主原料として、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対してポリエチレンテレフタレート樹脂を1〜30重量%の範囲で配合したPBT系樹脂組成物からなる、フィルムの4方向(0°、45°、90°、135°)全てで引張破断強度が170MPa以上、引張破断伸度が50〜150%、50%モジュラスが100MPa以上である二軸延伸PBT系フィルム。前記二軸延伸PBT系フィルムを基材層、バリア層、シーラント層、又は基材層、バリア層、バリア材補強層、シーラント層からなる冷間成形用電池ケース包材の基材層及び/又はバリア材補強層として用いられる二軸延伸PBT系フィルム。【選択図】なし
Description
本発明は延伸性が極めて良好で、長時間の連続生産が可能であり、かつフィルム物性バランスに優れた二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(以下、OPBT)系フィルム、およびそれを用いた冷間成形用包材、特にリチウムイオン二次電池等の電池用包材に関するものである。
ポリブチレンテレフタレート(以下、PBT)樹脂は、優れた機械的強度、耐熱性、耐薬品性、柔軟性、透明性、表面光沢性、耐候性、および低吸水性等の特性を有しており、従来から代表的なエンジニアリングプラスチックとして幅広い分野、用途で利用されてきた。特に、注目すべきPBT樹脂の特徴として、その他汎用プラスチックと比べて結晶化速度が著しく高い点が挙げられ、その特徴を活かして各種自動車部品や電気・電子部品等の射出成形用途でハイサイクル性を目的に、近年広く用いられている。
一方、フィルム用途では、主に一般惣菜向けとしてキャスト成形による未延伸PBTフィルム、または飲料ボトルのシュリンクラベル向けに一軸延伸PBTフィルムが製造されているが、これらの二軸延伸でないフィルムは強度や寸法安定性に問題があるため用途が限定され、特にコンバーティングフィルムなどに用いることはできない。また、OPBTフィルムに関しては、食品用包材向けにコンバーティングフィルムとして一般的に使用されている二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと比べると耐ピンホール性、耐衝撃性が優れており、また二軸延伸ナイロン6(以下、Ny)フィルムと比べると耐薬品性、防湿性が優れているものの、引張破断強度や寸法安定性、異方性等のフィルムの品質面で問題点があり、またPBT樹脂の特性により安定した二軸延伸が難しいことから、未だ実用化に至っていないのが現状である。
PBT樹脂は、周知の通り、その高い結晶化速度の影響により二軸延伸が極めて困難であり、ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)、Ny、ポリプロピレン(以下、PP)等の汎用プラスチックの二軸延伸技術をそのまま応用するだけでは安定製造は難しく、未だ実用化に至っていないのが現状である。特に、未延伸原反製膜時の結晶化を極力抑え、その低結晶状態を維持したまま延伸を行うことがPBT樹脂を安定的に二軸延伸フィルムにする大きなポイントと言える。そのPBT系樹脂からなる未延伸原反の結晶化抑制方法や製膜法、及び二軸延伸法に関して、これまで種々の方法が提案されている。特許文献1、特許文献2、および特許文献3では、チューブラー法同時二軸延伸法において、結晶性が比較的低い未延伸原反の製膜法とその低結晶状態を延伸工程まで維持する方法、また延伸温度、延伸倍率等の各種延伸条件の適正化を図ることによりPBT樹脂の二軸延伸性を向上させる方法、さらにはPBT樹脂に共重合PET樹脂を配合して未延伸原反の結晶性を抑制する方法等が提案されている。
一方、近年、携帯電話やパソコン等の小型モバイル向けのリチウムイオン二次電池用外装材として、種々のプラスチックフィルム、金属箔をラミネートして得られるラミネート型外装材が開発され主流になりつつあるが、そのラミネート型外装材、特に電池部材の収納スペースを常温にて金型で成形する冷間成形タイプに要求される特性、機能としては、高度な防湿性、耐酸性(電解質の劣化や加水分解により発生するフッ酸に対する耐性)、冷間成形性、密封性、耐突刺し性、耐ピンホール性、絶縁性、耐熱性、耐寒性等が挙げられるが、特に防湿性、耐酸性、冷間成形性は重要な要素となる。
冷間成形タイプのラミネート型外装材のラミネート構成としては、外側から基材層、バリア層、シーラント層、あるいは基材層、バリア層、バリア材補強層、シーラント層が一般的であるが、バリア層として主に用いられるアルミニウム箔は、成形時に生じる不均一変形により、ピンホールやクラックが生じ易いという欠点があった。その欠点を補うべく、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、および特許文献8では、基材層、および/またはバリア材補強層として機械的強度に優れた基材、例えば二軸延伸Nyフィルム、二軸延伸PETフィルム、二軸延伸PPフィルム、および未延伸または延伸PBTフィルムを積層する方法が提案されている。また、冷間成形性以外の要求特性として重要な防湿性、および耐酸性を付与するために、PETフィルムやPBTフィルム等のポリエステル系フィルム、あるいはPPフィルム等のポリオレフィン系フィルムを基材層および/またはバリア材補強層として用いる方法が提案されている。
しかしながら、PBT樹脂の原反製膜法として、特許文献1、特許文献2で提案された方法では、急冷製膜という点で不十分であり、未延伸原反の結晶化をある程度までしか抑制出来ないため、その結果、安定した延伸が持続せず、連続生産の点で限界があった。また、特許文献3では、PBT樹脂に共重合PETを少量配合して延伸を安定化する方法は、延伸安定化の点では効果があったものの、共重合PETを配合したことにより、フィルム物性、特に強度物性が著しく低下し、コンバーティングフィルムとして使用するためには問題があった。
一方、防湿性、耐酸性、および冷間成形性に優れたラミネート型外装材に関しては、特許文献4、特許文献5で提案された基材層、および/またはバリア材補強層として、異方性が少なく、かつ引張強度が高い二軸延伸Nyフィルムを単独で用いる方法は、冷間成形性の点では優れている反面、フィルム自体が吸湿性を有すため、内容物が外部からの水分の侵入を極端に嫌う電解液等の場合、防湿性の点で問題があった。また、二軸延伸Nyフィルムは耐酸性も低いことから、電解液の劣化や加水分解により発生するフッ酸に対する耐性の点でも問題があった。また、特許文献5で提案された二軸延伸PETフィルム、あるいは二軸延伸PPフィルムを基材層、および/またはバリア材補強層として用いる方法は、防湿性、耐酸性の点では優れているものの、樹脂の特性や製法上、二軸延伸Nyフィルムと比べると冷間成形性が劣るという問題があった。さらに、特許文献6、特許文献7、特許文献8で提案された基材層、および/またはバリア材補強層として未延伸、あるいは延伸PBTフィルムを用いる方法は、PBTフィルムの性質やフィルム物性、および製造方法に関する具体的な記載が無く、また延伸PBTフィルムのうち、一軸延伸フィルムでは機械的強度が不十分であり、異方性も著しく大きいため、十分な冷間成形性が得られていなかった。
本発明者らは、フィルム物性のバランスに優れたOPBT系フィルムの主原料として、PBT樹脂に対してPET樹脂を1〜30重量%以下の範囲で配合したPBT系樹脂組成物を用いることにより、未延伸原反の結晶化を適度に抑制することが可能となり、その結果PBT樹脂単独の場合と比較して延伸の安定性が飛躍的に向上し、長時間の連続生産が可能となった。また、得られたOPBT系フィルムを冷間成形用電池ケース包材の主要基材として用いることにより、耐酸性、および防湿性を損なうこと無く、優れた冷間成形性を確保出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の物及び手段を提供する。
[1]PBT樹脂に対してPET樹脂を1〜30重量%以下の範囲で配合したPBT系樹脂組成物からなるOPBT系フィルムであって、該フィルムの4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての引張破断強度が170MPa以上、引張破断伸度が50%以上150%以下であることを特徴とするOPBT系フィルム。
[2]前記OPBT系フィルムが、4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.5以下であることを特徴とする上記[1]に記載のOPBT系フィルム。
[3]前記OPBT系フィルムが、4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての50%モジュラス値が100MPa以上のものであることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のOPBT系フィルム。
[4]前記OPBT系フィルムが、溶融押出した直後に200℃/秒以上の冷却速度で急冷製膜して得られた未延伸原反を、縦横それぞれ2.7〜4.5倍同時二軸延伸することにより得られることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルム。
[5]下記(a)のいずれか一種または二種以上と貼り合わせて用いられることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルム。
(a)二軸延伸ナイロン6フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸エチレン−ビニルアルコール系フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸芳香族ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニリデンフィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、各種コートフィルム、各種蒸着フィルム、未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン−酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルム、未延伸ポリビニルアルコールフィルム、未延伸ナイロン6フィルム、未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、紙、不織布、発泡ポリスチレン。
[6]印刷して使用されることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルム。
[7]食品包装用、絞り成形用の基材として使用されることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルム。
[8]外側から基材層、バリア層、シーラント層、または基材層、バリア層、バリア材補強層、シーラント層の順に積層されてなる冷間成形用電池ケース包材において、基材層および/またはバリア材補強層として、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルムを用いることを特徴とする冷間成形用電池ケース包材。
[9]前記基材層および/またはバリア材補強層が、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルムを含む複数のフィルムで構成されていることを特徴とする上記[8]に記載の冷間成形用電池ケース包材。
[1]PBT樹脂に対してPET樹脂を1〜30重量%以下の範囲で配合したPBT系樹脂組成物からなるOPBT系フィルムであって、該フィルムの4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての引張破断強度が170MPa以上、引張破断伸度が50%以上150%以下であることを特徴とするOPBT系フィルム。
[2]前記OPBT系フィルムが、4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.5以下であることを特徴とする上記[1]に記載のOPBT系フィルム。
[3]前記OPBT系フィルムが、4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての50%モジュラス値が100MPa以上のものであることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のOPBT系フィルム。
[4]前記OPBT系フィルムが、溶融押出した直後に200℃/秒以上の冷却速度で急冷製膜して得られた未延伸原反を、縦横それぞれ2.7〜4.5倍同時二軸延伸することにより得られることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルム。
[5]下記(a)のいずれか一種または二種以上と貼り合わせて用いられることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルム。
(a)二軸延伸ナイロン6フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸エチレン−ビニルアルコール系フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸芳香族ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニリデンフィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、各種コートフィルム、各種蒸着フィルム、未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン−酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルム、未延伸ポリビニルアルコールフィルム、未延伸ナイロン6フィルム、未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、紙、不織布、発泡ポリスチレン。
[6]印刷して使用されることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルム。
[7]食品包装用、絞り成形用の基材として使用されることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルム。
[8]外側から基材層、バリア層、シーラント層、または基材層、バリア層、バリア材補強層、シーラント層の順に積層されてなる冷間成形用電池ケース包材において、基材層および/またはバリア材補強層として、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルムを用いることを特徴とする冷間成形用電池ケース包材。
[9]前記基材層および/またはバリア材補強層が、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のOPBT系フィルムを含む複数のフィルムで構成されていることを特徴とする上記[8]に記載の冷間成形用電池ケース包材。
本発明者らは、OPBT系フィルムの主原料として、PBT樹脂に対してPET樹脂を1〜30重量%以下の範囲で配合したポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を用いることにより、未延伸原反の結晶化を適度に抑制することが可能となり、その結果ポリブチレンテレフタレート樹脂単独の場合と比較して延伸の安定性が飛躍的に向上し、長時間の連続生産が可能となった。また、得られたOPBT系フィルムを冷間成形用電池ケース包材の主要基材として用いることにより、耐酸性、および防湿性を損なうこと無く、あらゆる形状や成形深さの冷間成形加工時においてもアルミニウム箔の破断やピンホール等の発生を抑え、安定した成形性を確保することが可能となった。
以下に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(OPBT系フィルムの原料) PBT系フィルムに用いられる主原料は、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであれば特に限定されるものでは無いが、具体的にはグリコール成分としての1,4−ブタンジオール、二塩基酸成分としてのテレフタル酸を主成分としたホモタイプが好ましい。また、最適な機械的強度特性を付与するためには、PBT系樹脂のうち、融点200〜250℃、IV値1.10〜1.35dl/gの範囲のものが好ましく、さらには融点215〜225℃、IV値1.15〜1.30dl/gの範囲のものが特に好ましい。
(OPBT系フィルムの原料) PBT系フィルムに用いられる主原料は、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであれば特に限定されるものでは無いが、具体的にはグリコール成分としての1,4−ブタンジオール、二塩基酸成分としてのテレフタル酸を主成分としたホモタイプが好ましい。また、最適な機械的強度特性を付与するためには、PBT系樹脂のうち、融点200〜250℃、IV値1.10〜1.35dl/gの範囲のものが好ましく、さらには融点215〜225℃、IV値1.15〜1.30dl/gの範囲のものが特に好ましい。
また、本発明のPBT樹脂には、PET樹脂をPBTに対して1〜30重量%以下の範囲で適宜配合することが可能であり、PET樹脂を配合することによりPBT樹脂の結晶化を適度に抑制することで延伸安定性が格段に向上する。配合するPET樹脂は、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであれば特に限定されるものでは無いが、得られるフィルムの強度物性の観点からグリコール成分としてのエチレングリコール、二塩基酸成分としてのテレフタル酸を主成分としたホモタイプが特に好ましい。最適な機械的強度特性を付与するためには、PET系樹脂のうち、融点240〜265℃、IV値0.55〜0.90dl/gの範囲のものが好ましく、さらには融点245〜260℃、IV値0.60〜0.80dl/gの範囲のものが特に好ましい。PET樹脂を30重量%より多く配合すると、未延伸原反の柔軟性が失われ、結果として延伸引取り時の原反割れによるパンクが発生するため好ましくない。なお、必要に応じて滑剤、アンチブロッキング剤、無機増量剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、結晶化抑制剤、結晶化促進剤等の添加剤を加えても差し支えない。また、用いるポリエステル系樹脂ペレットは加熱溶融時の加水分解による粘度低下を避けるため、加熱溶融前に水分率が0.05wt%以下、好ましくは0.01wt%以下になるように十分予備乾燥を行った上で使用するのが好ましい。
(PBT系未延伸原反の製造方法)OPBT系フィルムを安定的に製造するには、延伸前未延伸原反の結晶化を極力抑制する必要があり、押出されたPBT系溶融体を冷却して製膜する際、該ポリマーの結晶化温度領域をある速度以上で冷却する、すなわち原反冷却速度が重要な因子となる。その原反冷却速度は200℃/秒以上、好ましくは250℃/秒以上、特に好ましくは350℃/秒以上であり、高い冷却速度で製膜された未延伸原反は極めて低い結晶状態を保っているため、延伸時のバブルの安定性が飛躍的に向上する。さらには高速での製膜も可能になることから、生産性も向上する。冷却速度が200℃/秒未満では、得られた未延伸原反の結晶性が高くなり延伸性が低下するばかりでなく、極端な場合には延伸バブルが破裂し、延伸が継続しない場合がある。
原反製膜方式は、前記原反冷却速度を満たす方法であれば特に限定されるものでは無いが、急冷製膜の点では内外直接水冷式がもっとも適している。その内外直接水冷式による原反製膜法の概要を以下に説明する。まず、PBT系樹脂は210〜280℃の温度に設定された押出機によって溶融混練され、Tダイ製膜の場合は、シート状の溶融樹脂を水槽に浸漬することにより内外とも直接水冷する。一方、環状製膜の場合は、押出機に下向きに取り付けられた環状ダイより下方に押し出され、溶融管状薄膜が成形される。
次に環状ダイに連結されている冷却マンドレルに導かれ、冷却マンドレル各ノズルから導入された冷却水が溶融管状薄膜の内側に直接接触して冷却される。同時に、冷却マンドレルと組み合わせて使用される外部冷却槽からも冷却水が流され、溶融管状薄膜の外側にも冷却水が直接接触して冷却される。内部水、および外部水の温度は30℃以下が好ましく、急冷製膜の観点では20℃以下が特に好ましい。30℃より高くなると、原反の白化や冷却水の沸騰による原反外観不良等を招き、延伸も徐々に困難になる。
(OPBT系フィルムの製造方法)PBT系未延伸原反は、25℃以下、好ましくは20℃以下の雰囲気温度に保ちつつ延伸ゾーンまで搬送する必要があり、当該温度管理下では滞留時間に関係無く、製膜直後の未延伸原反の結晶性を維持することが出来る。この延伸開始点までの結晶化制御は、前記未延伸原反の製膜技術とともに、PBT系樹脂の二軸延伸を安定して行う上で重要なポイントと言える。
同時二軸延伸法は、例えばチューブラー方式やテンター方式が挙げられるが、縦横の強度バランスの点で、チューブラー法が特に好ましい。図1はチューブラー法同時二軸延伸装置の概略図である。延伸ゾーンに導かれた未延伸原反1は、一対の低速ニップロール2間に挿通された後、中に空気を圧入しながら延伸用ヒーター3で加熱するとともに、延伸終了点に冷却ショルダーエアーリング4よりエアーを吹き付けることにより、チューブラー法によるMD、およびTD同時二軸延伸フィルム7を得た。延伸倍率は、延伸安定性や得られたOPBT系フィルムの強度物性、透明性、および厚み均一性を考慮すると、MD、およびTDそれぞれ2.7〜4.5倍の範囲であることが好ましい。延伸倍率が2.7倍未満である場合、得られたOPBT系フィルムの引張強度や衝撃強度が不十分となり好ましくない。また4.5倍超の場合、延伸により過度な分子鎖のひずみが発生するため、延伸加工時に破断やパンクが頻繁に発生し、安定的に生産出来ない。延伸温度は、40〜80℃の範囲が好ましく、特に好ましくは45〜65℃である。前記の高い冷却速度で製造した未延伸原反は、結晶性が低いため、比較的低温域の延伸温度で安定して延伸可能である。80℃を超える高温延伸では、延伸バブルの揺れが激しくなり、大きな延伸ムラが発生して厚み精度の良好なフィルムは得られない。一方、40℃未満の延伸温度では、低温延伸による過度な延伸配向結晶化が発生し、フィルムの白化等を招き、場合によって延伸バブルが破裂し延伸継続困難となる。このように二軸延伸加工を施すことにより、特に強度物性が飛躍的に向上し、かつ異方性が小さいOPBT系フィルムを得ることが出来る。
得られたOPBT系フィルムを熱ロール方式またはテンター方式、あるいはそれらを組み合わせた熱処理設備に任意の時間投入し、180〜240℃、特に好ましくは190〜210℃で熱処理を行うことにより、熱寸法安定性に優れたOPBT系フィルムを得ることができる。熱処理温度が220℃よりも高い場合は、ボーイング現象が大きくなり過ぎて幅方向での異方性が増加する、または結晶化度が高くなり過ぎるため強度物性が低下してしまう。一方、熱処理温度が185℃よりも低い場合は、フィルムの熱寸法安定性が大きく低下するため、ラミネートや印刷加工時にフィルムが縮み易くなり、実用上問題が生じる。
OPBT系フィルムの厚みは、特に制限されるものでは無いが、一般コンバーティングフィルムとして用いる場合は5〜50μm、好ましくは10〜20μmである。厚みが5μmよりも小さい場合は、ラミネート包材の耐衝撃性が低くなり、冷間成形性が不十分となる。一方、50μmを超えると形状維持の強度は向上するものの、特に破断防止や成形性の向上への効果は小さく、体積エネルギー密度を低下させるだけである。
OPBT系フィルムの4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)における引張破断強度は、いずれも170MPa以上、50%モジュラス値は100MPa以上、および4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比は1.5以下に調整することが好ましく、これにより、いかなる形状、成形深さの場合においても、冷間成形時にアルミニウム箔が破断し難くなり、安定した成形性を確保することが出来る。いずれか一方向でも引張破断強度が170MPa未満、50%モジュラス値が100MPa未満の場合、あるいは4方向の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.5より大きい場合、冷間成形時にアルミニウム箔、あるいは二軸延伸PBTフィルム自体が容易に破断するようになり、安定した成形性が得られない。一方、引張破断伸度は50%以上150%以下であり、好ましくは100%以上150%以下である。150%より大きい、あるいは50%より小さい場合、印刷やポリエステル系基材と貼り合わせる際の張力により、フィルムの破断や伸び等が発生しやすくなるため好ましくない。このような特性をもつフィルムは、上述した製造方法により安定して得られる。
本発明のOPBT系フィルムは、単独で用いることも可能だが、一種または二種以上の他基材と貼り合わせるコンバーティングフィルムとして用いることが出来る。代表的なものとして、二軸延伸ナイロン6フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸エチレン−ビニルアルコール系フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸芳香族ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニリデンフィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、各種コートフィルム、各種蒸着フィルム、未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン−酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルム、未延伸ポリビニルアルコールフィルム、未延伸ナイロン6フィルム、未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、紙、不織布、発泡ポリスチレン等が挙げられる。
本発明のOPBT系フィルムは、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷といった既知の印刷方法により印刷を施して用いることも出来る。
(冷間成形用電池ケース包材の構成)冷間成形用電池ケース包材は、前記OPBT系フィルムのいずれか一方、あるいは両方の面に、1層あるいは2層以上他の基材を積層して構成される。具体的には、外側から基材層、バリア層、シーラント層の3層構成、あるいは基材層、バリア層、バリア材補強層、シーラント層の4層構成等が挙げられ、基材層および/またはバリア材補強層は、前記OPBT系フィルム単独、もしくはOPBT系フィルムと二軸延伸Nyフィルム、二軸延伸PETフィルム、二軸延伸PPフィルム等の他基材と併用して構成することが出来る。バリア層としては、高い防湿性を付与するための純アルミニウム箔、またはアルミニウム−鉄系合金の軟質材、ステンレス箔、および銅箔、シーラント層としては密封性や耐薬品性を付与するために未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン−酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルムが挙げられる。一般に、アルミニウム箔層を含むラミネート包材は、冷間成形時にアルミニウム箔層の破断やピンホールが生じ易いため冷間成形性は必ずしも十分では無い。しかしながら、本発明のOPBT系フィルムを含む冷間成形用電池ケース包材は、優れた成形性、耐衝撃性、および耐ピンホール性を有するため、冷間での張出し成形や深絞り成形等の際に、アルミニウム箔層の破断を抑制できる。さらに、OPBT系フィルムは耐酸性、防湿性にも優れていることから、内容物が外部からの水分の侵入を極端に嫌う電解液等の場合に特に有効といえる。
前記OPBT系フィルムを含む冷間成形用電池ケース包材の総厚みは200μm以下であることが好ましい。厚みが200μmを超える場合、冷間成形によるコーナー部の成形が困難となり、シャープな形状の成形品が得られない場合がある。
バリア層であるアルミニウム箔層の厚みは20〜100μmであることが好ましい。これにより、成形品の形状を良好に保持することが可能となり、また酸素や水分等が包材内へ侵入することを防止できる。アルミニウム箔層の厚みが20μm未満である場合、ラミネート包材の冷間成形時にアルミニウム箔層の破断が生じ易く、また、破断しない場合でもピンホール等が発生し易くなるため、包材中に酸素や水分等が侵入してしまう場合がある。一方、アルミニウム箔層の厚みが100μmを超える場合、冷間成形時の破断やピンホール発生防止の効果も大きく改善されるわけではなく、総厚みが厚くなるだけで好ましくない。
以下に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。 <実施例1> (OPBT系フィルムの製造)
PBT樹脂ペレット(ホモタイプ、融点=224℃、IV値=1.26dl/g)に対しPET樹脂ペレット(ホモタイプ、融点=258℃、IV値=0.60dl/g)を5重量%配合したPBT系樹脂組成物を140℃で5時間熱風乾燥機にて乾燥し押出機中、シリンダーおよびダイ温度215〜275℃の各条件で溶融混練して溶融管状薄膜を環状ダイより下方に押し出した。引き続き、冷却マンドレルの外径を通しカラプサロールで折り畳んだ後、引取ニップロールにより1.2m/minの速度で製膜引取りを行った。溶融管状薄膜に直接接触する冷却水の温度は内側、外側ともに20℃であり、原反冷却速度は416℃/秒であった。未延伸原反の厚みは185μm、折径は143mmであり、PBT系樹脂組成物中にはあらかじめ滑剤としてステアリン酸マグネシウムを1000ppm添加した。以上の条件で製膜した未延伸原反1を20℃の雰囲気中で低速ニップロール2まで搬送し、図1に示す構造のチューブラー同時二軸延伸装置にて縦横同時二軸延伸を行った。延伸倍率はMDが3.5倍、TDが3.5倍であり、延伸温度は60℃であった。次に、この二軸延伸フィルム7を熱ロール式、およびテンター式熱処理設備にそれぞれ投入し、210℃で熱処理を施すことにより本発明のOPBT系フィルムを得た。なお、OPBT系フィルムの厚みは15μmであった。
PBT樹脂ペレット(ホモタイプ、融点=224℃、IV値=1.26dl/g)に対しPET樹脂ペレット(ホモタイプ、融点=258℃、IV値=0.60dl/g)を5重量%配合したPBT系樹脂組成物を140℃で5時間熱風乾燥機にて乾燥し押出機中、シリンダーおよびダイ温度215〜275℃の各条件で溶融混練して溶融管状薄膜を環状ダイより下方に押し出した。引き続き、冷却マンドレルの外径を通しカラプサロールで折り畳んだ後、引取ニップロールにより1.2m/minの速度で製膜引取りを行った。溶融管状薄膜に直接接触する冷却水の温度は内側、外側ともに20℃であり、原反冷却速度は416℃/秒であった。未延伸原反の厚みは185μm、折径は143mmであり、PBT系樹脂組成物中にはあらかじめ滑剤としてステアリン酸マグネシウムを1000ppm添加した。以上の条件で製膜した未延伸原反1を20℃の雰囲気中で低速ニップロール2まで搬送し、図1に示す構造のチューブラー同時二軸延伸装置にて縦横同時二軸延伸を行った。延伸倍率はMDが3.5倍、TDが3.5倍であり、延伸温度は60℃であった。次に、この二軸延伸フィルム7を熱ロール式、およびテンター式熱処理設備にそれぞれ投入し、210℃で熱処理を施すことにより本発明のOPBT系フィルムを得た。なお、OPBT系フィルムの厚みは15μmであった。
(原反冷却速度の測定方法)前記原反冷却速度は下記に示した式により算出した。溶融薄膜、および原反温度は接触式の放射温度計にて測定した。また、冷却開始点は溶融薄膜が冷却水、または冷却装置に接触する部分、冷却終了点は未延伸原反の温度が30℃に到達する部分をいう。
原反冷却速度(℃/秒)=(冷却開始点直前の溶融薄膜温度−冷却終了点の原反温度)(℃)/(冷却開始点〜冷却終了点間距離)(m)×冷却開始点〜冷却終了点間の原反の通過速度(m/秒)
原反冷却速度(℃/秒)=(冷却開始点直前の溶融薄膜温度−冷却終了点の原反温度)(℃)/(冷却開始点〜冷却終了点間距離)(m)×冷却開始点〜冷却終了点間の原反の通過速度(m/秒)
(延伸バブルの安定性)延伸時のバブル安定性は、目視にて下記4段階で評価した。
◎: 延伸バブルの揺れが無く安定性に優れ、長時間の連続生産可能
○: 延伸バブルの揺れはほとんど無く、連続生産性に支障が無い
△: 延伸バブルの揺れ大きく、長時間の連続生産は困難
×: 短時間で延伸バブルの破裂やフィルムの破断が発生
◎: 延伸バブルの揺れが無く安定性に優れ、長時間の連続生産可能
○: 延伸バブルの揺れはほとんど無く、連続生産性に支障が無い
△: 延伸バブルの揺れ大きく、長時間の連続生産は困難
×: 短時間で延伸バブルの破裂やフィルムの破断が発生
(OPBT系フィルムの引張破断強伸度の評価方法) OPBT系フィルムの引張破断強伸度は、オリエンテック製―テンシロン(RTC−1210−A)を使用し、試料幅15mm、チャック間100mm、引張速度200mm/minの条件で、0℃(MD)方向/45°方向/90°(TD)方向/135°方向の4方向についてそれぞれ測定を行った。得られた応力−ひずみ曲線に基づいて求めた、各方向での引張破断強度、破断伸度、50%モジュラス値、および4方向の引張破断強度のうち最大値と最小値の比を表1に示した。
<実施例2〜4、比較例1> 実施例1において、PBT樹脂に対するPET樹脂の配合率を表1に記載した条件に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例5、比較例2> 実施例1において、PBT樹脂に対するPET樹脂の配合率、および延伸倍率を表1に記載した条件に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<比較例3> 実施例1において、PET樹脂を用いずにPBT樹脂のみを用いた以外は実施例1と同様に行った。
<比較例4〜5> 実施例1において、延伸倍率を表1に記載した条件に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例6> 得られたOPBT系フィルムを含むラミネート包材の冷間成形性を評価した。具体的には、PBT樹脂に対してPET樹脂を10重量%配合したOPBT系フィルムをアルミニウム箔(AA8079−O材、厚み30μm)の外側に、未延伸ポリプロピレンフィルム〔パイレンフィルムCT−P1128(商品名)、東洋紡績製、厚み30μm〕を内側に配置し、それぞれドライラミネート(ドライ塗布量4.0g/m2)することによりラミネート包材を得た。なお、ドライラミネート用の接着剤としては、東洋モートン(株)TM−K55/東洋モートン(株)CAT−10(配合比100/8)を用いた。また、ドライラミネート後のラミネート包材は、60℃で72時間エージングを行った。このようにして得られたラミネート包材は、23℃×50%の環境下で2時間調湿後、圧縮用金型(38mm×38mm)を用いて、未延伸ポリプロピレンフィルム側から最大荷重10MPaで冷間(常温)にて成形し、ピンホールやクラックなどの欠陥が発生しない最高成形深さを0.5mmピッチで評価した。
(耐酸性の評価方法)
得られたラミネート包材の基材層表面に、濃塩酸、および濃フッ酸を一滴ずつ滴下し、室温にて1時間放置した。放置後、滴下した酸を除去し、フィルムの白化、溶解の有無を目視にて確認した。
得られたラミネート包材の基材層表面に、濃塩酸、および濃フッ酸を一滴ずつ滴下し、室温にて1時間放置した。放置後、滴下した酸を除去し、フィルムの白化、溶解の有無を目視にて確認した。
(防湿性の評価方法)
得られたOPBT系フィルムの防湿性の評価方法は、JISZ0208に準じて40℃×90%RH環境下での水蒸気透過性(透湿度)を測定し、50g/m2・24Hr未満の場合は◎、50以上〜100g/m2・24Hr以下の場合は○、100g/m2・24Hrより大きい場合は×という基準で評価した。
得られたOPBT系フィルムの防湿性の評価方法は、JISZ0208に準じて40℃×90%RH環境下での水蒸気透過性(透湿度)を測定し、50g/m2・24Hr未満の場合は◎、50以上〜100g/m2・24Hr以下の場合は○、100g/m2・24Hrより大きい場合は×という基準で評価した。
<実施例7〜11> 実施例5において、基材層、および/またはバリア材補強層を表2に記載した構成に変えた以外は実施例5と同様に行った。
<実施例12、比較例6> 実施例5において、PBT樹脂に対するPET樹脂の配合率、または延伸倍率を表2に記載した構成に変えた以外は実施例5と同様に行った。
<比較例7〜11> 実施例5において、基材層、および/またはバリア材補強層を表1に記載した二軸延伸フィルムに変えた以外は実施例5と同様に行った。なお、二軸延伸NyフィルムはBN−RX((株)興人製、厚み15μm)、二軸延伸PETフィルムはFE2001(フタムラ化学(株)製、厚み25μm)、および二軸延伸PPフィルムはMF20(サントックス製、厚み25μm)を用いた。
表1に示すように、OPBT系フィルムの主原料として、PBT樹脂に対してPET樹脂を1〜30重量%以下の範囲で配合したPBT系樹脂組成物を用いることにより、未延伸原反の結晶化が適度に抑制されることにより、延伸バブルの揺れが無く、延伸の安定性が格段に向上し、長時間の連続運転が可能なレベルまで生産性が向上した。また、得られたOPBT系フィルムは、異方性が少なく、かつ引張破断強度が高く、引張破断伸度が低いという特徴を有していることが分かった。一方、表2に示すように、得られたOPBT系フィルムを、冷間成形用電池ケース包材の基材層、および/またはバリア材補強層として用いることにより、耐酸性、および防湿性を損なうことなく、優れた冷間成形性を確保すること可能となった。
本発明のOPBT系フィルムが利用される分野、および用途としては、異方性が少なく、機械的性質や寸法安定性が良好で、一種または二種以上の他基材とラミネート、あるいは印刷等の二次加工適性に優れていることから、乾燥食品、水物食品、保香食品、レトルト食品等の一般食品包装用コンバーティングフィルムとして利用可能である。また、異方性が少なく、張出し成形、深絞り成形などの冷間(常温)成形性に優れており、かつ防湿性、耐酸性も良好なため、水分や酸素の侵入を極度に嫌う電解液を使用したリチウムイオン二次電池の電池ケース用外装材の主要基材にもっとも適しているが、それ以外の一次電池、二次電池などにおいても使用可能である。その他の用途としては、冷間成形性、ヒートシール性、耐薬品性にも優れているため、医薬品用PTP包材や化粧品、写真用薬品その他腐食性の強い有機溶剤を含む内容物のための容器用材料としても利用可能な包材であり、さらには弁当容器、トレー、丼容器他、多様な形状の容器向けに深絞りが可能な熱成形用包材の主要基材としても好適に用いることが出来る。
1 未延伸原反 2 低速ニップロール
3 延伸用ヒーター
4 冷却ショルダーエアーリング
5 カラプサロール
6 高速ニップロール
7 二軸延伸フィルム
3 延伸用ヒーター
4 冷却ショルダーエアーリング
5 カラプサロール
6 高速ニップロール
7 二軸延伸フィルム
Claims (9)
- ポリブチレンテレフタレート樹脂に対してポリエチレンテレフタレート樹脂を1〜30重量%の範囲で配合したポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物からなる二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムであって、該フィルムの4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての引張破断強度が170MPa以上、引張破断伸度が50%以上150%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム。
- 前記二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムが、4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム。
- 前記二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムが、4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての50%モジュラス値が100MPa以上のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム。
- 前記二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムが、溶融押出した直後に200℃/秒以上の冷却速度で急冷製膜して得られた未延伸原反を、縦横それぞれ2.7〜4.5倍同時二軸延伸することにより得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム。
- 下記(a)のいずれか一種または二種以上と貼り合わせて用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム。
(a)二軸延伸ナイロン6フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸エチレン−ビニルアルコール系フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸芳香族ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニリデンフィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、各種コートフィルム、各種蒸着フィルム、未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン−酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルム、未延伸ポリビニルアルコールフィルム、未延伸ナイロン6フィルム、未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、紙、不織布、発泡ポリスチレン。 - 印刷して使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム。
- 食品包装用、絞り成形用の基材として使用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム。
- 外側から基材層、バリア層、シーラント層、または基材層、バリア層、バリア材補強層、シーラント層の順に積層されてなる冷間成形用電池ケース包材において、基材層および/またはバリア材補強層として、請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを用いることを特徴とする冷間成形用電池ケース包材。
- 前記基材層および/またはバリア材補強層が、請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを含む複数のフィルムで構成されていることを特徴とする請求項8に記載の冷間成形用電池ケース包材。
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JP2016104565A (ja) * | 2015-12-01 | 2016-06-09 | 興人フィルム&ケミカルズ株式会社 | 二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム、およびそれを用いた冷間成形用電池ケース包材 |
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- 2015-09-28 JP JP2015189427A patent/JP2016053167A/ja active Pending
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