JP2016052965A - カーボンナノホーン及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】複合性能に優れるカーボンナノホーン及びその利用を提供する。【解決手段】合成されたままの状態で酸素含有基を備えるカーボンナノホーンを提供する。【選択図】なし

Description

本明細書は、製造されたままの状態で酸素含有基を備えるカーボンナノホーン及びその利用に関する。
カーボンナノホーンは、炭素の同素体の1つとして知られている。カーボンナノホーンは、いわゆるホーン状形態を備えており、概して閉鎖した先端部を有している。
カーボンナノホーンは、炭素6員環及び炭素5員環からなって、概して疎水性の高い化学構造を有している。また、カーボンナノホーンは、優れた化学的安定性ほか、電気伝導性や機械的強度を備え、様々な用途への適用が期待されている。
カーボンナノホーンは、例えば、炭素材料にレーザ光を照射して炭素を蒸発させて、集合体として得られることが開示されている(特許文献1)。この方法で得られるカーボンナノホーンは、閉鎖した先端部が外方に向かって放射状に突き出して集合した球状体を構成している。
一方、水中におけるアーク放電にてカーボンナノホーンを製造することも開示されている(特許文献2)。
特開2001−64004号公報 特開2012−20884号公報
上記のように、カーボンナノホーンは、製造方法によってもその特性に大きな構造があることがわかっている。特に、その表面構造や特性は必ずしも明らかでなく、また、製造方法がカーボンナノホーンの表面構造や特性に与える影響も必ずしも明らかではない。
各種特性から広い応用が期待されるカーボンナノホーンではあったが、特許文献1の方法で得られるカーボンナノホーンは疎水性でありかつ凝集性であった。また、特許文献2の方法で製造したカーボンナノホーンであっても、未だその複合性能は十分ではなかった。このため、それ自体の取扱性のほか、他の材料との複合性能、すなわち、他の材料とのブレンド性能、各種分散媒への分散性能等が劣る傾向があり、その優れた特性を発揮し難い点があった。
本明細書は、複合性能に優れるカーボンナノホーン及びその利用を提供する。
本発明者らは、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)からなる群から選択される1種又は2種以上を含むガスをアーク放電発生領域への導入ガスとして用いることで、酸素含有基をカーボンナノホーンの構造に導入できるという知見を得た。本明細書によれば以下の手段が提供される。
(1)合成されたままの状態で酸素含有基を備えるカーボンナノホーン。
(2)前記酸素含有基は、水酸基、カルボキシル基及びカルボニル基からなる群から選択される1種又は2種以上である、(1)に記載のカーボンナノホーン。
(3)アーク放電法によって合成されたままの状態のカーボンナノホーンである、(1)又は(2)に記載のカーボンナノホーン。
(4)種状又はつぼみ状のカーボンナノホーンの集合体である、(1)〜(3)のいずれかに記載のカーボンナノホーン。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、充填剤。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、分散剤。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、接点改善剤。
(8)(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、潤滑剤。
(9)(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、防護剤。
(10)(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、熱媒体剤。
(11)(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、放射性物質吸着剤。
(12)(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、放射線遮蔽剤。
(13)(1)〜(4)のいずれかにカーボンナノホーンを含有する、耐電防止剤。
(14)(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、細胞活性化剤。
(15)(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノホーンと、当該カーボンナノホーンが分散された分散媒と、を含む組成物。
(16)前記分散媒は、液相である、(15)に記載の組成物。
(17)前記液相は、水性媒体を含む、(16)に記載の組成物。
(18)前記液相は、有機溶媒を含む、(16)に記載の組成物。
(19)前記分散媒は、固相である、(15)に記載の組成物。
(20)前記固相は、有機ポリマー含有相である、(19)に記載の組成物。
(21)前記有機ポリマー含有相は、プラスチックを含む、(20)に記載の組成物。
(22)前記有機ポリマー含有相は、エラストマーを含む、(20)に記載の組成物。
(23)前記固相は、無機材料含有相である、(19)に記載の組成物。
(24)前記無機材料含有相は、金属を含む、(23)に記載の組成物。
(25)前記無機材料相は、セラミックスを含む、(23)に記載の組成物。
(26)カーボンナノホーンの製造方法であって、
アーク放電の発生温度以下の温度で撹拌流動性のある液性媒体中に配置されるようにした陰極と陽極との隙間に電圧を印加することにより前記液性媒体中の前記隙間に、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)からなる群から選択される1種又は2種以上を含むガスを導入しつつアーク放電発生領域を形成し、このアーク放電発生領域に準備された炭素材料から炭素蒸気を発生させてカーボンナノホーンを合成する工程と、
前記液性媒体を介して合成したカーボンナノホーンを回収する工程と、
を備える、製造方法。
(27)前記炭素材料の炭素の含有量は30%以上99.9999%以下である、(26)に記載の製造方法。
本カーボンナノホーンの製造方法の一例を示す図である。 本カーボンナノホーンの水分散性の評価結果を示す図である。 本カーボンナノホーン(ムース状体とパウダー状体のXPSの炭素について結果を示すスペクトルを示す図である。 本カーボンナノホーン(ムース状体とパウダー状体のXPSの酸素について結果を示すスペクトルを示す図である。 ムース状の本カーボンナノホーンのラマンスペクトルを市販のカーボンナノホーンのラマンスペクトルとともに示す図である。 ムース状の本カーボンナノホーンのIRスペクトルを示す図である。 パウダー状の本カーボンナノホーンのIRスペクトルを示す図である。 グラファイトのIRスペクトルを示す図である。
本明細書の開示は、合成されたままの状態で酸素含有基を備えるカーボンナノホーン及びその利用に関する。本明細書に開示されるカーボンナノホーン(以下、本カーボンナノホーンという。)は、酸素含有基をその構造体に備えるため、こうした酸素含有基を備えないカーボンナノホーンに比較して、それ自体の取扱性のほか、他の材料との複合性能、すなわち、他の材料とのブレンド性能、各種分散媒への分散性能が良好となる。この結果、カーボンナノホーン自体の特性を効果的に発揮できるほか、カーボンナノホーンと他の材料との複合効果も効果的に得ることができる。
(酸素含有基を備えるカーボンナノホーン)
本カーボンナノホーンは、後述するカーボンナノホーンの製造方法によって合成されたままの状態において酸素含有基を備えるカーボンナノホーンである。すなわち、本カーボンナノホーンは、カーボンナノホーンを合成したままの状態であって、酸素含有基を導入したり被膜を付与したりするなどの特別な処理や操作が施されていない裸のカーボンナノホーンであって、かつその構造体中の酸素含有基を備えているカーボンナノホーンをいう。
本カーボンナノホーンにおいて酸素含有基を確認するには、例えば、赤外線吸収スペクトル(IR)やX線光電子分光(XPS)によって特定することができる。
(酸素含有基)
酸素含有基としては、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基及びエーテル結合に基づくアルキルオキシ基等が挙げられる。
(水酸基)
本カーボンナノホーンの水酸基は、XPSにおいてケミカルシフト値が290eV近傍(286〜292eV程度)に観察されるピークにより確認することができる。このピークは、強いC−C結合のピーク(285eV付近)の弱いショルダーピークとして観察される。このピークは概して、アルコールC−O−H又はC−O−Cに由来すると推測される。したがって、当該ピークをカーボンナノホーンにおける水酸基、あるいはエーテル結合のピークと推測できる。なお、水酸基としては、アルコール性OHが推測されるが、本カーボンナノホーンにおいては、特に、フェノール性水酸基であることがより強く推測される。
換言すれば、本カーボンナノホーンは、XPSにおいて、C−C結合に由来すると考えられるケミカルシフト値が285eV付近のピークとともに、ケミカルシフト値が290eV付近(286〜292eV程度)に観察されるピーク(概してショルダー状である)を備えるカーボンナノホーンであるともいえる。
水酸基は、また、XPSにおける532eV近傍の酸素のピークによっても支持される。確認できる。さらに、本カーボンナノホーンは、IRスペクトルにおいて3300cm-1付近(3200〜3400cm-1)における吸収を検出することができる。この吸収は、O−H伸縮振動に由来しており、水酸基の存在を支持している。また、本カーボンナノホーンのIRスペクトルにおいては、O−H変角振動に由来すると推測される吸収(1200〜1250cm-1)も観察される。
(カルボニル基、カルボキシル基)
なお、本カーボンナノホーンのIRスペクトルにおいては、このほかC=C変角振動に由来すると推測される吸収(1600cm-1付近)を観察できる。さらに、本カーボンナノホーンのIRスペクトルにおいては、C=O伸縮振動に由来すると推測される吸収(1750cm-1付近)も観察される。さらにまた、
本カーボンナノホーンは、また、XPS分析において酸素原子について3%以上の組成比を備えることができる。好ましくは3.5%以上であり、より好ましくは4%以上である。また、好ましくは、7%以下である。
本カーボンナノホーンは、この他、例えば、以下の特徴も有することができる。
(ラマンスペクトル)
本明細書に開示されるカーボンナノホーンは、そのラマンスペクトルにおいて、グラファイト由来のGバンドを確認することができる。本カーボンナノホーンは、ラマン分光分析におけるG/D比が0.6以上1.5以下である。より好ましくは0.8以上1.2以下である。さらに、好ましくは、1.0以上であり、一層好ましくは1.1以上である。ラマン分光分析におけるGバンド(1350cm-1付近)は、グラファイトの主要なラマン活性モードであり、カーボンナノホーンの平面構造を示すsp2結合カーボンを表している。また、Dバンド(1590cm-1付近)は、乱れや欠陥に由来するモードとして知られており、カーボンナノホーンの開放端等に由来しており、こうしたバンドに寄与するsp2結合のアモルファスカーボンがある場合がある。
また、本カーボンナノホーンはそのG’バンドが弱く、バンド強度比G’/D=0.30であるのに対して、市販のカーボンナノホーンは、G’/D=0.85であった。以上のことから、本カーボンナノホーンは、G’/Dが0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.6以下であり、さらに好ましくは0.5以下であり、一層好ましくは0.4以下であり、より一層好ましくは0.3以下として市販のカーボンナノホーンと区別することができる。また、本カーボンナノホーンのバンド強度比G’/Gは、0.28であるのに対して市販のカーボンナノホーンは0.92であった。以上のことから、本カーボンナノホーンは、G’/Gが0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.6以下であり、さらに好ましくは0.5以下であり、一層好ましくは0.4以下であり、より一層好ましくは0.3以下として市販のカーボンナノホーンと区別することができる。
(嵩密度)
本カーボンナノホーンは、嵩密度が0.05g/ml以下であることが好ましい。嵩密度が当該数値以下であると、水分散性が良好になる傾向がある。好ましくは、0.03g/ml以下であり、より好ましくは0.025g/ml以下である。
(細孔容積)
本カーボンナノホーンは、細孔容積が0.8cm3/g以上であってもよい。細孔容積は、ガス吸着法をBJH法による細孔分布計算結果から求めることができる。ガスは、窒素ガスを用いることができる。より具体的には、定容法を用いて窒素による吸着脱離等温線を測定することによって求めることができる。好ましくは、細孔容積は、0.9cm3/g以上であり、より好ましくは1.0cm3/g以上である。上限は特に限定しないが、1.2cm3/g以下程度とすることができる。細孔容積の大きさは、カーボンナノホーンが高密度に凝集又は集積されたことを意味している。
(大きさ及び形状)
本カーボンナノホーンは、その平均長さが30nm以下であってもよい。本カーボンナノホーンの透過電子顕微鏡像によれば、これらは、平均長さが30nm以下である。本カーボンナノホーンは、一定範囲の径を有する凝集体を形成している。凝集形状は、従来のダリア状ではなく、概してたね状又はつぼみ状である。たね状カーボンナノホーンとは、球状の表面の角状の突起がほとんど見られないかあるいは全く見られない形状のカーボンナノホーン集合体をいい、つぼみ状カーボンナノホーンとは、球状の表面に角状の突起が多少見られる形状のカーボンナノホーンの集合体をいう。これらは黒鉛化度の相違を反映したものと考えられている。
本カーボンナノホーンの凝集体は、概して、平均凝集径20nm以上200nm以下の二次粒子を形成している。好ましくは、平均凝集径が20nm以上150nm以下であり、より好ましくは同径が20nn以上800nm以下であり、さらに好ましくは同径が20nm以上60nm以下である。
(水分散性)
本カーボンナノホーンは、以下の水分散性を有している。本カーボンナノホーン0.01gと精製水100mlとをあわせ、30分間超音波処理(強度は40W)を行った後、本カーボンナノホーンの黒色懸濁液を形成する。本カーボンナノホーンは、こうした懸濁状態を、少なくとも24時間以上、好ましくは36時間以上、より好ましくは48時間以上、さらに好ましくは60時間以上、一層好ましくは72時間以上、より一層好ましくは84時間以上、さらに一層好ましくは96時間以上できるものである。
(本カーボンナノホーンの用途)
本カーボンナノホーンは、従来、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンなどのカーボンナノ材料が適用されてきた用途に広く適用することができる。本カーボンナノホーンは、水酸基を製造された状態で備えているため、それ自体、良好な複合性能、ブレンド性能及び分散性能を有しており、有用である。また、本カーボンナノホーンは、その良好な複合性能に基づき新たな用途にも適用できる。
たとえば、本カーボンナノホーンを含有する充填剤として利用できる。本充填剤によれば、各種マトリックスに対して軽量化を図りつつその強度を維持及び向上させることができる。また、本カーボンナノホーンを含有する分散剤として利用できる。本分散剤によれば、本カーボンナノホーン自体が備える良好な分散性能により、他の被分散材料を分散することができる。また、本カーボンナノホーンを含有する接点改善剤として利用できる。本接点改善剤によれば、本カーボンナノホーンの良好な分散性能により、効果的に導電性を発揮することができる。また、本カーボンナノホーンを含有する潤滑剤として利用できる。本カーボンナノホーンは、良好な複合性能に基づき、優れた潤滑能を発揮することができる。また、本カーボンナノホーンを含有する、防護剤として利用できる。本カーボンナノホーンは、被防護体に対して本カーボンナノホーンを含む被膜を形成することで、外力による摩耗、破損、欠損を効果的に抑制することができる。また、本カーボンナノホーンを含有する、熱媒体剤として利用できる。本カーボンナノホーンが良好な複合性能を有しているため、本剤は、カーボンナノホーンが本来有する熱伝達性が効果的に発揮する。また、本カーボンナノホーンを含有する、放射性物質吸着剤としても利用できる。本剤は、本カーボンナノホーンが有する良好な複合性能により、カーボンナノホーンが本来的に有する放射性物質吸着能を効果的に発揮できる。また、本カーボンナノホーンを含有する、放射線遮蔽剤として利用できる。本剤は、本カーボンナノホーンが有する良好な複合性能により、カーボンナノホーンが本来的に有する放射線遮蔽能を効果的に発揮できる。本剤は、本カーボンナノホーンを含有する、帯電防止剤として利用できる。本剤は、本カーボンナノホーンが有する良好な複合性能により、カーボンナノホーンが本来的に有する帯電防止性能を効果的に発揮できる。また、本カーボンナノホーンを含有する、細胞活性化剤として利用できる。本剤は、本カーボンナノホーンが有する良好な複合性能により、カーボンナノホーンが本来的に有する細胞活性化能を効果的に発揮できる。
以上の用途を含む各種用途に本カーボンナノホーンを用いる場合、用途に適した各種剤は、当該用途に適合する材料や成分であって一般的に用いられているものを適用することができる。当業者であれば、本カーボンナノホーンを上記した各種用途に適合させるために公知の材料を適宜用いることで本剤を製造し使用することができる。
例えば、本カーボンナノホーンを充填剤として利用する場合には、本カーボンナノホーンのみを充填剤として用いることができるほか、被充填材料の種類や形態に必要に応じて適当な分散媒を用いることができる。分散媒については、後述する。また、本カーボンナノホーンを、分散剤として利用する場合には、本カーボンナノホーンが良好な分散性を有していることから、本カーボンナノホーンのみを他の材料を分散又は混合させるために用いることができるほか、本カーボンナノホーンを用いて分散又は混合しようとする材料の種類や形態に応じた分散媒を用いてもよい。また、本カーボンナノホーンを、接点改善剤として利用する場合には、鉱物油又はスクワラン等のなどの炭化水素類やオイルに分散させて、接点に対する塗布性や付着性を付与することができる。また、本カーボンナノホーンを潤滑剤として利用する場合には、固体潤滑剤(自己潤滑性のある固体材料)として利用できる。その場合、公知の固体潤滑剤であるグラファイト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、銀、鉛に替えて、あるいはこれらの1種又は2種以上と組み合わせて利用することができる。さらに、本カーボンナノホーンを防護剤として利用する場合には、固形の被防護材料に混合するほか、固形の被保護材料表面で被膜を形成可能な分散媒を伴う形態として、被保護材料表面に本カーボンナノホーンを含む被膜を形成するようにする。本カーボンナノホーンを熱媒体剤として利用するには、公知のいわゆる冷媒や熱媒等と混合して用いることができる。また、本カーボンナノホーンを放射性物質吸着剤としても利用する場合には、本カーボンナノホーン自体、あるいは本カーボンナノホーンを適当な固相又は液相の分散媒に本カーボンナノホーンを分散させた形態として、粉体、粒子状、シート状、意図的な三次元形状等の各種形状を付与して、土壌などの放射性物質汚染材料に混合、被覆、遮蔽等の形態を採るようにする。また、本カーボンナノホーンを放射線遮蔽剤として利用する場合にも、本カーボンナノホーンを放射線物質吸着剤と利用するときと同様の形態で利用することができる。また、本カーボンナノホーンを帯電電防止剤として利用する場合には、従来公知の帯電防止剤と同様にして適用することができる。また、本カーボンナノホーンを細胞活性化剤として利用する場合には、本カーボンナノホーン自体あるいは、適当な固相又は液相の分散媒に分散させた状態で、細胞、微生物、植物細胞及びヒトを含む各種動物細胞の培養媒体に付与することで細胞活性を向上させることができる。
本剤は、その用途等に応じ、後述する各種組成物の形態を採ることができる。また、各種の本剤における本カーボンナノホーンの含有量は特に限定しないで、用途に応じて適宜濃度を設定することができる。典型的には、0.01質量%〜100質量%とすることができる。
(本カーボンナノホーンを含む組成物)
本カーボンナノホーンは、また、各種分散媒に分散された状態の組成物とすることができる。本カーボンナノホーンを含む組成物(以下、本組成物という。)は、本カーボンナノホーンと、本カーボンナノホーンが分散された分散媒とを含むことができる。
本組成物における分散媒は、液相であってもよいし、固相であってもよいし、これらの双方を有する混合相であってもよい。
液相の分散媒としては、水性媒体、有機溶媒及びこれらの混液のいずれかを用いることができる。水性媒体としては、水、各種水溶液が挙げられる。また、有機溶媒としては,無極性溶媒であってもよいし、極性溶媒(プロトン性及び非プロトン性)であってもよい。有機溶媒としては、たとえば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン等の無極性溶媒や、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、酢酸、ギ酸等のカルボン酸類などの極性プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン等のフラン類、混液は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン性溶媒が挙げられる。有機溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、水性媒体と1種又は2種以上の有機溶媒との混液を液相としてもよい。この場合、水性媒体と1種又は2種以上の有機溶媒とは互いに相溶性を有していてもよいし、相分離するものであってもよい。
液相の分散媒としてはまた、常温で液体の油脂、脂肪酸等であってもよい。さらに、液相の分散媒としては、流動パラフィン、スクワランなどの炭化水素類であってもよい。
固相の分散媒としては、例えば、有機ポリマー含有相、無機材料含有相、及びこれらの混合相を用いることができる。有機ポリマー含有相における有機ポリマーとしては、樹脂、エラストマーが挙げられる。樹脂としては、公知の各種の天然樹脂や合成樹脂が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化ポリイミドなどの熱硬化樹脂が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネイト、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリヌクレオチドフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。また、カルド樹脂が挙げられる。
また、エラストマーとしては、天然ゴム及び合成ゴムなどの加硫ゴムや、ウレタンゴム、シリコンゴム及びフッ素化ゴムなどの熱硬化性樹脂系エラストマーが挙げられる。また、エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系及びアミド系などの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
また、無機材料含有相は、無機材料相における無機材料としては、金属、セラミックスが挙げられる。金属としては、公知の各種金属及び2種以上の金属を含む合金が挙げられる。
本組成物は、分散媒の形態に応じた形態を採ることができる。分散媒が液体等液相の場合には、本組成物は特定の三次元形態を取らないが、分散媒が固相の場合には、固相によって所望の三次元形態を採る場合もある。
(カーボンナノホーンの製造方法)
本明細書に開示されるカーボンナノホーンの製造方法(以下、本製造方法ともいう。)は、本カーボンナノホーンの製造に適した方法である。本製造方法は、アーク放電の発生温度以下の温度で撹拌流動性のある液性媒体中に配置されるようにした陰極と陽極との隙間に一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)からなる群から選択される1種又は2種を含むガスを導入しつつ、前記液性媒体中の前記隙間に前記陰極と前記陽極に電圧を印加することによりガスアーク放電発生領域を形成し、前記アーク放電発生領域に準備された炭素材料から炭素蒸気を発生させてカーボンナノホーンを合成する工程と、前記液性媒体を介して合成したカーボンナノホーンを回収する工程と、を備えることができる。本製造方法によれば、本カーボンナノホーンを効率的に製造することができる。
本製造方法は、液性媒体中に存在する特定の領域、すなわち、陰極と陽極との隙間にアーク放電領域と前記ガスによるキャビティとの双方を形成することができる。これにより効率的にカーボンナノホーンを合成できる。さらに、液性媒体中に形成されるアーク放電領域において一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)からなる群から選択される1種又は2種以上を含むガスが導入されてガスキャビティが形成されるため、炭素蒸気から合成されたカーボンナノホーンに酸素含有基が効率的に導入される。すなわち、本製造方法によれば、アーク放電により合成されたままの状態で酸素含有基が導入されたカーボンナノホーンを得ることができる。なお、本明細書において、ガスキャビティとは、ガスの導入によって液性媒体中に形成されるものであって、液性媒体によって直接囲繞された形態のキャビティをいう。したがって、本明細書におけるガスキャビティは、隔離壁などによって液性媒体から区画された形態を包含することを意図しない。
本明細書において「放電」とは、電極間にかかる電位差によって電極間に存在するガスに絶縁破壊が生じ、電子が放出され電流が流れることである。このとき放出される電流を放電電流と呼ぶことができる。放電には、例えば、火花放電、コロナ放電、ガス分子が電離してイオン化が起こり、プラズマを生み出しその上を電流が走る現象である。そのため、プラズマアーク放電と呼ぶこともできる。この途中の空間ではガスが励起状態になり高温と閃光を伴う。アーク放電は、高電流の状態であれば常温でも発生することができるうえ、真空状態を必ずしも必要としないため、好適である。
本明細書において「陽極」及び「陰極」とは、電気伝導性を有する可能性のある電極をいう。例えば、電極には金属、セラミックス、炭素を含む材料を用いることができる。また電極は、金属、セラミックス、炭素から選択された1種類もしくは複数の材料から形成されていてもよい。電極表面の一部分もしくは全部に添加物が散布されていてもよいし、塗布されていてもよいし、メッキまたはコートされていてもよい。こうした各種の電極材料は当業者であれば適宜従来技術を参照して取得することができる。好適には、アーク放電による陰極の消耗を防ぐため、電極のうち、少なくとも陰極は金属やセラミックス材料によって形成されることが好ましい。
本明細書において「黒鉛」とは、炭素を含む材料をいう。本明細書では炭素を含む陽極を黒鉛陽極と呼ぶ。黒鉛陽極はアーク放電を発生させるための電極であると同時に、生成目的のカーボンナノ粒子の原料とすることができる。その場合には、消耗する黒鉛陽極を繰り返し交換できるように設計することが好ましい。また、陽極に黒鉛を用いない場合には、電極とは別に、カーボンナノ材料の原料としての黒鉛を準備する。電極に黒鉛を含まない場合には、電極の消耗を防ぐことができ、低コストでカーボンナノ材料を製造することができる。なお、黒鉛は、どのような形態であってもよく、板状等の適切な形状を適宜選択することができる。また、陽極に黒鉛陽極を用いるか、電極とは別の黒鉛を準備するかは、適宜装置の設計に応じて選択することができる。本実施形態では、陽極に黒鉛陽極を用いるものとして説明する。
黒鉛は炭素単体でもよいが、添加物を含有もしくは内蔵されていてもよい。または、黒鉛表面の一部分もしくは全部に添加物が散布されていてもよいし、塗布されていてもよいし、メッキまたはコートされていてもよい。例えば、添加物として鉄やニッケルなどの金属を用いた場合、カーボンナノホーンに金属ナノ粒子を内包、すなわち、閉じた短い単層カーボンナノホーンが球状に凝集しているナノ粒子であるカーボンナノホーン凝集体の中心付近に、金属ナノ粒子を入れることが可能である。また、Ptなどの金属をコーティンしてあってもよい。Ptは導電性や触媒活性に優れており、こうした陽極を用いることで貴金属が複合化されたカーボンナノホーンを得ることができる。こうした各種の炭素を含む材料は当業者であれば適宜従来技術を参照して取得することができる。
本製造方法においては、炭素材料の炭素の含有量は30%以上99.99999%以下であることが好ましい。30%未満の炭素含有量であると、ムース状(ペースト状)のカーボンナノホーンを製造しにくくなるからである。ムース状(ペースト状)のカーボンナノホーンの製造性及び他態様のカーボンナノホーンの製造効率や得られるカーボンナノホーンの結晶性を考慮すると、炭素含有量は好ましくは40%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、一層好ましくは60%以上、さらに一層好ましくは70%以上、より一層好ましくは80%以上である。
本明細書において「液性媒体」とは、アーク放電の発生温度以下の温度で撹拌流動性を有する物質をいう。例えば、液性媒体としては、水、又は水と水以外の溶媒(有機溶媒)を含む混液、シリコーンオイル、油、水溶液、液体ヘリウム、液体窒素等を用いることもできる。その中でも水は安価で、かつ入手も容易であり、取り扱いも容易であるため好適である。さらに、水媒質は、アーク放電下では通常状態の水よりもクラスタ構造が小さくなり、酸化還元電位を高くすることができる。水媒質のクラスタ構造の縮小と酸化還元電位の上昇によって、カーボンナノホーンの形成を促進することができる。
本明細書において、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)からなる群から選択される1種又は2種を含むガスは、好ましくは、少なくともCO又はCO2を含有している。CO又はCO2を含有することでプラズマ放電によるOH、H、Oラジカル生成がN2などの不活性ガスを利用する場合よりも高くなるため、酸素含有基を備えるナノホーンが合成可能となると考えられる。なお、こうした酸素含有基を備えるカーボンナノホーンは、親水性が高いため、特に水面上に堆積される傾向がある。ガスは、好ましくは、COとCO2とを含んでいる。導入されるガスは、一酸化炭素及び二酸化炭素の他にN2などの不活性ガスを含んでいてもよい。不活性ガスとの混合により、酸素含有基の導入比率を制御でき、得られるカーボンナノホーンの親水性/疎水性制御が可能となる。本カーボンナノホーンを製造する観点からは、より好ましくは、これら2種のガス(CO及びCO2)が導入ガスの体積%の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、一層好ましくは90%以上、より一層好ましくは95%以上、さらに一層好ましくは98%以上である。
(カーボンナノホーンを合成する工程)
本製造方法におけるカーボンナノホーンの合成工程は、陰極と陽極との間に電圧を印加することで、電極間に放電電流を流してアーク放電を生じさせることができる。
カーボンナノホーン合成工程の一例を図1に示す。図1は、本発明の一実施形態であるカーボンナノホーンの製造装置、特にカーボンナノホーンの製造に適した製造装置を示す。図1に示すように、液性媒体槽10は、黒鉛陽極12と陰極14とが隙間34を隔てて対向するように備えている。なお、陰極14と黒鉛陽極12の形状と配置は限定しないが、重力に対して垂直に対向して配置されていれば、後述する陰極14の回動による水性媒体の撹拌が容易であるだけでなく、アーク放電が安定するため好適である。また、水性媒体槽10は液性媒体20を保持可能に形成されており、ガラス,セラミックス、金属、樹脂などからなる容器を用いることができる。
図1に示すように、黒鉛陽極12を電源22の+極26に接続し、陰極14を電源22の−極24に接続することによって、黒鉛陽極12と陰極14との間に電圧を印加することができる。このときの電極間にかかる電位差によって隙間34に存在する気体もしくは液体に絶縁破壊が生じ、隙間34に電子を流す(放電)ことができ、アーク放電領域を形成できる。
アーク放電は液性媒体中に発生させることが好ましい。こうすることでアーク放電によって発生する炭素蒸気を速やかに液性媒体で冷却してカーボンナノホーンを生成させることができる。このためには、対向する電極間の空間が液性媒体内にあるように電極が配置されるほか、こうした空間からアーク放電中に液性媒体あるいはその気化体が完全には排除されないように不活性ガスの導入経路等を構成することが好ましい。また、液性媒体は、生成させたカーボンナノホーンを搬送することもできる。例えば、陰極14と黒鉛陽極12とは、対向する端部がいずれも液性媒体20中に露出されていることが好ましい。この端部間に形成される隙間34がアーク放電発生領域となるが、両端部が液性媒体20に露出されている結果、アーク放電発生領域は液性媒体20中に形成されることになる。
液性媒体は、なかでも、水、又は水を含む混液、水溶液等を用いることが好ましい。その中でも水は安価で、かつ入手も容易であり、取り扱いも容易であるため好適である。さらに、水媒質は、アーク放電下では通常状態の水よりもクラスタ構造が小さくなり、酸化還元電位を高くすることができる。水媒質のクラスタ構造の縮小と酸化還元電位の上昇によって、カーボンナノホーンの形成を促進することができる。
アーク放電の発生のための電圧の印加時間は特に限定されないが、短時間であれば、生成されるカーボンナノホーンが再び蒸発することを防ぐことができるため好ましい。短時間のアーク放電を繰り返し実行することで、大量のカーボンナノホーンを製造することができる。また、印加する電圧は、直流電圧であっても交流電圧であってもよいが、直流電圧または直流パルス電圧を印加してアーク放電を発生させることが好ましい。印加する電圧は、電圧20Vで電流100A以上であることが好ましい。100A未満ではカーボンナノホーンの生成量が低下するためである。より好ましくは140A以上の直流電圧が好適である。
既述のガスを、液性媒体中の前記隙間に導入して、アーク放電発生領域にガスキャビティを形成することで、陰極からの電子の放出を促進するとともに、アーク放電発生領域で一時的に発生するカーボンナノホーンの中間体の発生を促進することができる。ガスをアーク放電発生領域に導入することによって、ガスの一部が解離し、荷電粒子が発生する。この荷電粒子がアーク放電発生領域の導電率を高め、放電を生じやすくすることができる。さらにガスはアーク放電により加熱され、分子振動励起や、解離、電離が進行しプラズマ状態が形成する。こうした活性状態のエネルギープロファイル下で高エンタルピーとなったガスは膨張し、ジュール加熱により推進エネルギーが得られ、陰極からの電子放出が加速することによって、多くの黒鉛蒸気を発生することができる。
また、ガスをアーク放電発生領域に導入することで、アーク放電によって発生した炭素蒸気をガスに取り込み、アーク放電発生領域外の液性媒体中に拡散することができる。ガスがバブル状に水中を拡散すると同時に、このガスに含まれた炭素蒸気を液性媒体で急冷して、カーボンナノホーンを生成させることができる。このとき生成したカーボンナノホーンは、液性媒体表面付近に浮遊する傾向にある。アーク放電発生領域に復帰することがないため、再度の炭素蒸気化は免れる。また、アーク放電発生領域で生成したカーボンナノホーンやその中間体もガスに取り込まれてアーク放電発生領域外の液性媒体へと拡散されてカーボンナノホーンとして水性媒体表面に浮遊されるため、再度の炭素蒸気化が免れている。これらの結果により炭素蒸気から一旦生成したカーボンナノホーンが再び蒸発して炭素蒸気となることを抑制して、カーボンナノホーンの収量を高めることができる。
図1に示すように、例えばアーク放電発生領域である隙間34にガスを導入する方法としては、ガスをボンベ28から、供給路16を経て隙間34に送り込ませる方法を採ることができる。生成した炭素蒸気等を確実にアーク放電発生領域外の液性媒体中に拡散させ、電極への付着物を抑制するには、アーク放電を発生させるのに先立って予めガスを送り込ませることが好ましい。
(液性媒体中の窒素による液性媒体中に含まれるガスの置換工程)
本カーボンナノホーンの製造方法においては、アーク放電による合成に先立ってあるいは、合成とともに、液性媒体中に窒素を導入して液性媒体中のガスを置換する工程を行うことが好ましい。液性媒体中に窒素を導入することにより、水などの液体媒体に含まれる酸素などのガスを除去して窒素で置換することができる。液性媒体から酸素を除去することで、製造されたままの状態で酸素含有基を備えるカーボンナノホーンの製造量又は製造効率を増大させることができる。
好ましくは、窒素導入により液性媒体中の酸素などのガスを予め除去後にCO又はCO2ガスを導入して合成工程を実施する。導入ガスの窒素からCO及び/又はCO2への移行にあたっては、当初窒素ガスのみを導入し、その後、窒素の一部をCO及び/又はCO2で置換し、徐々に置換率を向上させるような形態で合成工程を行ってもよい。こうしたN2ガスとCO及び/又はCO2とのガス比率については、種々の態様で実施可能である。
(カーボンナノホーンを回収する工程)
本実施形態におけるカーボンナノホーンを回収する工程は、炭素蒸気が急冷されることによって生成したカーボンナノホーンを回収するための工程である。カーボンナノホーンを回収する方法は特に限定されない。カーボンナノホーンが分散する液性媒体を回収し、固液分離等によりカーボンナノホーンを回収してもよいし、液性媒体表面にムース状になって浮遊するカーボンナノホーンを、液性媒体表面から回収してもよい。なお、ムース状カーボンナノホーンは、単層カーボンナノホーンの比率が高い。さらに、液性媒体表面から飛散するカーボンナノホーンを含むガスを回収して、気固分離により、カーボンナノホーンを回収してもよい。
なお、液性媒体槽の底部付近に沈殿堆積したカーボンナノホーンは、多層カーボンナノホーンである比率が高い。
なお、固液分離手段や気固分離手段は、公知の各種の手段を特に限定しないで用いることができる。
さらに、回収したカーボンナノホーンを適宜乾燥することによって、所望の水分量のカーボンナノホーンを得ることができる。乾燥方法は特に問わないで、公知の各種方法を採用できる。例えば、高温条件下にて水性媒体を蒸発する方法でもよいし、真空を利用してもよいし、飽和水蒸気量以下の水分を含有する気体中に置いて除水する方法でもよい。また、化学反応によって脱水してもよい。
なお、液性媒体表面から得られたムース状のカーボンナノホーンはそのままの状態で各種用途に使用することができるほか、乾燥して用いることができる。ムース状カーボンナノホーンは概して8質量%以上10質量%以下程度のカーボンナノホーンを含有している。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。以下の実施例では、本発明の製造方法によるカーボンナノホーンの製造を説明する。
(カーボンナノホーンの製造)
図1に示すカーボンナノホーン製造装置に備えられる水深約35cmの流体槽に黒鉛陽極と陰極を1mm離した状態で重力に対して垂直に対向するように設置した。黒鉛陽極は直径6mm、長さ100mmの円筒形状で、炭素純度99.999%で15グラムのカーボンロッドを用いた。流体槽に20リットルの水道水を満たしたのち、流体槽に蓋をして密閉した。黒鉛陽極と陰極に20V、120Aの直流電圧を印加し、陰極内の導入路に規定値(35〜40リットル/分)のCOガスを導入し、粒子を生成した。この間、黒鉛陽極と陰極の間が1mmを維持するように、陰極を支持する支持部を自動制御することによって調整した。
流体槽中の水面付近の水をポンプにて経時的に吸引し、UFろ過膜を通して、水とムース状体をろ別した。ろ別したムース状体をスプレードライにて乾燥し、精製された粒子を得た。粒子を電子顕微鏡にて観察し、種状(シード状)又はつぼみ状に二次凝集した単層カーボンナノホーンが多く含まれることを確認した。
また、流体槽の水面から飛散するガスを回収して、パウダー状のカーボンナノホーンを得た。回収したカーボンナノホーンを電子顕微鏡にて観察し、種状(シード状)又はつぼみ状に二次凝集した単層カーボンナノホーンが多く含まれることを確認した。
カーボンロッドが80%消費する時間はおよそ30秒程度であり、ムース状及びパウダー状のカーボンナノホーンを合わせて毎分平均で約3グラム程度のカーボンナノホーンが得られた。
(水分散性評価)
実施例1で製造したカーボンナノホーン(ムース状のカーボンナノホーンのスプレードライしたもの)の水分散性を評価した。カーボンナノホーン0.01gを採取し、精製水100mlと混合した。その後、30分間、超音波浴中に混合液のはいった容器を載置して、超音波処理(40W)した。その後、6日間静置(15℃、52%RH)して、分散状態の変化をみた。なお、商業的に入手したカーボンナノホーン(レーザアブレーション法によって製造されたもの)についても同様に操作して対照例とした。結果を図2に示す。
図2に示すように、分散状態を観察したところ、実施例1で製造したカーボンナノホーンは、超音波による上記分散処理によって一定の分散液を得ることができた。その後、約6日間にわたり、この状態を維持した。これに対して、対照例では、分散処理後もほとんどのカーボンナノホーンが水表面に凝集して少量が分散したにすぎず、この状態は6日間変化することがなかった。
以上の結果から、実施例1で製造したカーボンナノホーンは、水分散性が良好であることがわかった。
(導電性評価)
実施例1で合成したムース状カーボンナノホーンのスプレードライ品の水分散液(20wt%)5mlを、長方形(幅5.25mm×長さ17.5mm)のタングステン板の表面に塗布後、加熱して乾燥した。その後、同じタングステン板を、カーボンナノホーンを塗布したタングステン板のカーボンナノホーン塗布面の端部に重ねて、抵抗値を測定した。対照例として、商業的に入手したレーザアブレーション法によるカーボンナノホーンについても同様に操作し抵抗値を測定した。その結果、抵抗率は、1.44×103Ωcmであった。これに対して、対照例のカーボンナノホーンは抵抗値を検出できないほど低抵抗であった。
以上の結果から、実施例1で合成したカーボンナノホーンは、低い電導性を示していた。これは、タングステン表面における均一分散の結果であると考えられる。
(XPS)
実施例1で合成したカーボンナノホーンについてXPSを用いて評価した。本実施例では実施例1で合成したカーボンナノホーンであって泡(ムース)状体のスプレードライ品と、同様に実施例1で合成した水表面から飛散したカーボンナノホーン含有ガスからパウダー状体として回収したカーボンナノホーンとについて評価した。なお、以下の条件を用いた。結果を図3及び図4に示す。また、結果を表1に示す。
Instrument model: PHI VersaProbe II
Xray source: Al 1486.6 eV mono at 24.8 W
Beam diameter: 100.0 um
Neutralizer: 1.0 V 0.0 uA
Analyser mode: FAT
---------------------------
Spectral Region Definitions
---------------------------

No Transition Start (eV) End (eV) Inc (eV) Time/DataPt (s) Pass Energy (eV)
3 N1s 411.00 391.00 -0.10 0.800 93.90
2 O1s 543.00 523.00 -0.05 2.400 46.95
1 C1s 300.00 275.00 -0.03 2.400 23.50
[表1]
粉状体 C 90.91% C6.10% O3.00%
ムース状体 C90.16% C4.97% O4.87%
図3及び図4に示すように、532eV近傍の酸素のピークについては、ムース状体が粉状体よりも大きかった。炭素については、両者はほぼ同等であった。これらの結果から、実施例1で合成したカーボンナノホーンのうちムース状体のカーボンナノホーンは、酸素を多く含むものであることがわかった。また、この酸素は、XPSにおいてケミカルシフト値が290eV近傍(286〜292eV程度)に観察されるピークにより確認することができる。このピークは、強いC−C結合のピーク(285eV付近)の弱いショルダーピークとして観察される。このピークの存在から、カーボンナノホーンはフェノール性OHなどの水酸基に由来する酸素含有基を備えるものと考えられた。
また、表1に示すように、粉状体及びムース状体カーボンナノホーンは、XPSによれば、結晶性カーボン(グラファイトカーボン)が90%であり、アモルファスカーボンが5〜6%であり、酸素が3〜5%であった。ムース状体カーボンナノホーンが、酸素含有量が高いと言う結果であった。
(ラマンスペクトル及びIRスペクトル)
本実施例では、実施例1で合成したムース状カーボンナノホーンのスプレードライ品及びパウダー状カーボンナノホーンについてラマンスペクトル及びIRスペクトルを測定した。ラマンスペクトルは、照射レーザ波長532nmで測定した。これらの結果を、図5に示す。本実施例では、実施例1で合成したムース状体及びパウダー状体として回収したカーボンナノホーンについて測定したが、両者は同等のラマンスペクトルを呈したので、ムース状体のラマンスペクトルを図5に示す。なお、比較のために、商業的に入手可能なレーザアブレーション法で製造したカーボンナノホーンについても同様に測定し。そのラマンスペクトルを合わせて図5に示す。また、図6には、ムース状カーボンナノホーンとパウダー状カーボンナノホーンとグラファイトのIRスペクトルを示す。
図5に示すように、ラマンスペクトルによれば、ムース状体のカーボンナノホーンは、1330cm-1付近(いわゆるDバンドである。)及び1590cm-1付近(いわゆるGバンドである。)に強いピークを備える一方、2670cm-近傍(いわゆるG’バンドであり、Dバンドの倍音である。)及び2920cm-1近傍に弱いピークを認めた。これに対して、商業的に入手したレーザアブレーション法によるカーボンナノホーンでは、1330cm-1近傍及び1590cm-1近傍に強いピークを認めるほか、2660cm-1近傍にも強いピークを認めた。
本カーボンナノホーンがG/D=1110/1060=1.05であったのに対し、市販のカーボンナノホーンは:G/D=530/560=0.95であり、良好な結晶性を示した。
また、本カーボンナノホーンのG’バンドが弱く、バンド強度比G’/D=0.30であるのに対して、市販のカーボンナノホーンは、G’/D=0.85であった。以上のことから、本カーボンナノホーンは、G’/Dが0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.6以下であり、さらに好ましくは0.5以下であり、一層好ましくは0.4以下であり、より一層好ましくは0.3以下として市販のカーボンナノホーンと区別することができる。また、本カーボンナノホーンのバンド強度比G’/Gは、0.28であるのに対して市販のカーボンナノホーンは0.92であった。以上のことから、本カーボンナノホーンは、G’/Gが0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.6以下であり、さらに好ましくは0.5以下であり、一層好ましくは0.4以下であり、より一層好ましくは0.3以下として市販のカーボンナノホーンと区別することができる。
また、本カーボンナノホーンは、G’バンドの半値幅は210cm-1以下であることがわかった。
また、図6に示すように、ムース状及びパウダー状のIRスペクトルからは、水酸基に由来すると考えられる3300cm-1付近、C−O結合に由来すると考えられる1250cm-1付近、及びCOOに由来すると考えられる1750cm-1付近にそれぞれ吸収を認めることができた。これに対して、グラファイトにおいては、こうした吸収を観察できなかった。なお、パウダー状体には、2900cm-1付近においても強い吸収を観察できたので、C−H結合に由来するものと考えられパウダー状とムース状の違いであることがいえると考えられる。
(メッキ液への適用)
実施例1で合成したムース状カーボンナノホーンのスプレードライ品をスファミン酸ニッケルめっき液中に添加してハルセル試験を行い、電流密度とめっき膜表面状態について評価を行った。
めっき液の組成は以下のとおりとした。以下のめっき液は、純水に実施例1のムース状のカーボンナノホーンをいれてスターラーで撹拌しながらホウ酸を15g添加し、ホウ酸が完全に溶解してから、NS−160を添加し、スターラー撹拌と超音波撹拌とを60分づつ交互に数回返し建浴した。
NS−160(スルファミン酸ニッケルの市販めっき液、昭和化学製)500ml/l
ホウ酸30g/l
カーボンナノホーン2g/l
このめっき液を用いて、総電流2A〜8A、通電時間5分、超音波条件KAIJO PHENIX 600FMの目盛6として、めっきを行った。なお、ハルセル試験片は、流水洗浄後、酸洗い(5%硫酸に浸漬10秒)後に、水洗浄した後、めっき処理に供した。その結果、カーボンナノホーンを含むめっき液は、超音波処理を行うことで、試験片表面に均一にカーボンナノホーン凝集体粒子を付与することができた。
(表面保護剤への適用)
プレス加工に汎用されているプレス加工油にカーボンナノホーンを添加して分散させたものを、プラス加工油として用いた場合の表面損傷の抑制について評価した。なお、カーボンナノホーンとしては、実施例1で合成したムース状カーボンナノホーンのスプレードライ品を用い、プレス加工油に10質量%となるように添加して用いた。
評価は、ムース状カーボンナノホーンのスプレードライ品に高温高圧用潤滑剤を10質量%添加した潤滑材を試料潤滑材とした。アルミ圧延加工したパイプに試料潤滑材を塗布後、その表面をデジタルマイクロスコープの試料片として観察しやすいように一部切除した。その試料片に潤滑油に配合されているナノホーンの色(黒)をデジタルマイクロスコープで確認し目視により、その差異を比較し数値化した。また、その表面をデジタルマイクロスコープを利用して、観察倍率3000倍及び5000倍で行った。その結果、カーボンナノホーンを含まない潤滑材でプレス加工した場合には、幅25〜90μmの線状の表面損傷が多数確認されたが、カーボンナノホーン含有プレス加工油によれば、8〜10μmの線状の表面損傷及び同程度の直径を有するピット状表面損傷が確認されたものの、表面損傷割合は大幅に低減されていた。
(低摩擦化剤への適用)
本実施例では、カーボンナノホーンを含むことによるゴム成型体における摩擦係数の変化を評価した。ゴムとしては、EPDMを用い、実施例1で合成したムース状(水分80wt%)のカーボンナノホーンのスプレードライ品が10質量%となるようにゴム組成物を調製し、この組成物を常法により加硫しゴム試験片(182mm×257mmx2mmn)とし、摩擦係数評価に供した。なお、評価は、HEIDON 14DRを用い、測定子として10mmステンレス球、加重200g、試験速度600mm/分、試験幅30mmで行った。なお、カーボンナノホーンを含有していない以外は同じようにして対照の試験片を作製し、評価に供した。
結果は、対照試験片の摩擦係数(静摩擦係数2.43、動摩擦係数2.03)であるのに対し、カーボンナノホーン含有試験片の摩擦係数(静摩擦係数1.20、動摩擦係数0.95)であった。この結果から、ゴムに本カーボンナノホーンを添加することで摩擦係数が低下することがわかった。
(接点改善剤への適用)
本実施例では、カーボンナノホーンを含むことによる導電性の改善(接点改善)への影響を評価した。実施例1で合成したパウダー状(80wt%の含水率(20%がCNH))のカーボンナノホーンのスプレードライ品をスクアランオイルに対して0.01質量%、0.05質量%、0.1質量%、0.5質量%及び1質量%となるように添加した試料を調製して、試験用のプラグに塗布して、試験用コンセントに装着して、抵抗値を測定した。なお、対照として、市販されている人工ダイヤモンドのスクワランオイル懸濁液を用いた。結果(抵抗値×10−3)を以下に示す。なお、()内は、塗布前の抵抗値に対する拭き取り後の抵抗値の割合%である。
種類 塗布前 拭き取り前 拭き取り後
人工ダイヤモンド 75.1 70.3 62.4(0.831)
0.01%CNH 64.0 56.6 63.0(0.984)
0.05%CNH 87.5 82.0 70.6(0.807)
0.1%CNH 78.5 64.7 57.7(0.735)
0.5%CNH 105 87.3 70.5(0.672)
1%CNH 115 54.0 70.1(0.610)
以上のとおり、カーボンナノホーン濃度に応じて、抵抗が低減し、またインピーダンス特性が30%〜70%向上し、人工ダイヤモンドと同等又はそれ以上の効果があることがわかった。
人工ダイヤモンドと同等又はそれ以上の効果があることがわかった。
本実施例では、カーボンナノホーンについてプラスチックの充填剤としての評価を行った。実施例1で合成したパウダー状(80wt%の含水率(20%がCNH))のカーボンナノホーンのスプレードライ品を熱可塑性樹脂ポリカーボネート、ポリプロピレン、及び熱硬化性樹脂であるポリアミドにそれぞれ所定濃度となるように添加して所定形状の試験片を得て、以下の試験を行った。
(弾性率)
熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを用い、カーボンナノホーンを1質量%及び5質量%となるように、添加して、弾性係数を測定した(初回負荷0.1mm)。その結果、CNHなしの場合には弾性係数は1600N/mm2であったのに対し、1質量%添加時には2600N/mm2、5質量%添加時には3000N/mm2であった。これらの結果から、カーボンナノホーンの添加により熱可塑性樹脂の弾性率を大きく向上させることがわかった。
熱可塑性樹脂としてポリカーボネートを用い、カーボンナノホーンを1質量%、5質量%、8質量%及び10質量%となるように、添加して、弾性係数を測定した(初回負荷0.1mm)。その結果、CNHなしの場合には弾性係数は1800N/mm2であったのに対し、1質量%添加時には2500N/mm2、5質量%添加時には2700N/mm2、8質量%添加時には、3000N/mm2であり、10質量%添加時には、3000N/mm2であった。これらの結果から、カーボンナノホーンの添加により熱可塑性樹脂の弾性率を大きく向上させることがわかった。
(機械的特性:破壊試験)
熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを用い、実施例1で合成したパウダー状のカーボンナノホーン(80wt%の含水率(20%がCNH))のスプレードライ品を1質量%及び10質量%となるように、添加して、破壊試験を行った。その結果、機械的強度はポリプロピレンのみとPPに対してCNHを5wt%添加したものでは、後者は約22%強度が増加した。またPPにCNH1wt%配合したものとPPにSWCNT1wt%での比較ではCNHの方が約9.7%強度が増加した。
(機械的特性:硬さ)
熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを用い、実施例1で合成したパウダー状(80wt%の含水率(20%がCNH))のカーボンナノホーンを2質量%及び5質量%となるように、添加して、硬さ試験を行った。その結果、無添加のポリプロピレンの高度が0.100GPA近傍であったのに対して、2質量%CNH添加及び5質量%添加ポリプロピレンでは、それぞれ、0.115GPA及び0.122GPAであり、硬さが大幅に増大していた。
(カーボンナノホーンの製造)
図1に示すカーボンナノホーン製造装置に備えられる水深約35cmの流体槽に黒鉛陽極と陰極を1mm離した状態で重力に対して垂直に対向するように設置した。黒鉛陽極は直径6mm、長さ100mmの円筒形状で、炭素純度99.999%で15グラムのカーボンロッドを用いた。流体槽に20リットルの水道水を満たしたのち、N2ガスを40l/minで30〜60秒間、水中に導出攪拌(バブリング)させた。この条件下で大気とその中に含まれている酸素と置換を行った。このバブリングにより、水中に含まれていた酸素が概して窒素により置換されたと考えられる。
次いで、流体槽に蓋をして密閉した。黒鉛陽極と陰極に20V、120Aの直流電圧を印加し、陰極内の導入路に規定値(35〜40リットル/分)のCOガスを導入し、粒子を生成した。この間、黒鉛陽極と陰極の間が1mmを維持するように、陰極を支持する支持部を自動制御することによって調整した。
流体槽中の水面付近の水をポンプにて経時的に吸引し、UFろ過膜を通して、水とカーボンナノホーンをろ別し、ムース状カーボンナノホーンを得た。また、同時に、流体槽の水面から飛散するガスを回収して、パウダー状のカーボンナノホーンを回収した。
本実施例におけるパウダー状カーボンナノホーンは、N2置換しないときには、0.7g/15gのカーボンロッドの合成量であったが、予めN2置換することで、15gのカーボンロッドにつき、約1.1gを合成できた。また、ムース状カーボンナノホーンは、N2置換なしで1.1L/15gカーボンロッドの合成量であったのに対して、N2置換ありであると、1.6L/15gカーボンロッドの合成量であった。
なお、本実施例で得られたカーボンナノホーンについても、実施例1で得られたカーボンナノホーンと同様の特徴を見出すことができた。
以上の結果から明らかなように、液性媒体中の酸素を窒素で置換しておくことで、カーボンナノホーンの生産量が増大することがわかった。

Claims (27)

  1. 合成されたままの状態で酸素含有基を備えるカーボンナノホーン。
  2. 水酸基、カルボキシル基及びカルボニル基からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のカーボンナノホーン。
  3. アーク放電法によって合成されたままの状態のカーボンナノホーンである、請求項1又は2に記載のカーボンナノホーン。
  4. 種状又はつぼみ状のカーボンナノホーンの集合体である、請求項1〜3のいずれかに記載のカーボンナノホーン。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、充填剤。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、分散剤。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、接点改善剤。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、潤滑剤。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、防護剤。
  10. 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、熱媒体剤。
  11. 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、放射性物質吸着剤。
  12. 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、放射線遮蔽剤。
  13. 請求項1〜4のいずれかにカーボンナノホーンを含有する、耐電防止剤。
  14. 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含有する、細胞活性化剤。
  15. 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノホーンと、当該カーボンナノホーンが分散された分散媒と、を含む組成物。
  16. 前記分散媒は、液相である、請求項15に記載の組成物。
  17. 前記液相は、水性媒体を含む、請求項16に記載の組成物。
  18. 前記液相は、有機溶媒を含む、請求項16に記載の組成物。
  19. 前記分散媒は、固相である、請求項15に記載の組成物。
  20. 前記固相は、有機ポリマー含有相である、請求項19に記載の組成物。
  21. 前記有機ポリマー含有相は、プラスチックを含む、請求項20に記載の組成物。
  22. 前記有機ポリマー含有相は、エラストマーを含む、請求項20に記載の組成物。
  23. 前記固相は、無機材料含有相である、請求項19に記載の組成物。
  24. 前記無機材料含有相は、金属を含む、請求項23に記載の組成物。
  25. 前記無機材料相は、セラミックスを含む、請求項23に記載の組成物。
  26. カーボンナノホーンの製造方法であって、
    アーク放電の発生温度以下の温度で撹拌流動性のある液性媒体中に配置されるようにした陰極と陽極との隙間に電圧を印加することにより前記液性媒体中の前記隙間に一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)からなる群から選択される1種又は2種以上を含むガスを導入しつつアーク放電発生領域を形成し、このアーク放電発生領域に準備された炭素材料から炭素蒸気を発生させてカーボンナノホーンを合成する工程と、
    前記液性媒体を介して合成したカーボンナノホーンを回収する工程と、
    を備える、製造方法。
  27. 前記炭素材料の炭素の含有量は30%以上99.9999%以下である、請求項26に記載の製造方法。
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