JP2016050715A - 吸着式冷凍機を備える空調システム - Google Patents
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Abstract
Description
吸着式冷凍機の冷凍能力は、蒸発させることができる冷媒の量に応じて決まるからである。
そのため、吸着式冷凍機では、吸着材を収容した吸着器を少なくとも2つ備えており、一方の吸着器の吸着材に蒸発した冷媒を吸着させている間は、他方の吸着器の吸着材に吸着されている冷媒を放出させるようにして、蒸発した冷媒を吸着させる吸着器を交互に切り替えることで、冷媒の連続的な蒸発を可能にして、蒸発する冷媒の総量を増やしている。
吸着式冷凍機が発揮する冷凍能力を用いて空調空気を冷却するように構成された吸着式冷凍機を備える空調システムにおいて、
前記吸着式冷凍機は、
蒸発器で蒸発させた冷媒の吸着/放出が可能な吸着材を有する吸着器を備えると共に、前記吸着器による前記蒸発させた冷媒の吸着/放出を切り替えながら前記蒸発器で前記冷媒を蒸発させて、冷凍能力を発揮するように構成されており、
前記吸着材は、
前記空調空気の温度と前記吸着器の温度との差に応じて決まる前記吸着器内の蒸気圧力比が大きくなるにつれて、前記冷媒の吸着量が増大する特性を有しており、
前記空調空気の温度を目標温度に向けて冷却している途上であるときに相当する蒸気圧力比の領域での前記吸着材の吸着率の変化率が、
前記空調空気の温度を前記目標温度周りで保持しているときに相当する蒸気圧力比の領域での前記吸着材の吸着率の変化率よりも大きい
ことを特徴とする吸着式冷凍機を備える空調システム。
ここで、吸着材の吸着量が多くなると、蒸発器から蒸発させることができる冷媒の総量が多くなるので、吸着式冷凍機の冷凍能力が高くなる。
よって、例えば夏季での冷房運転の開始直後のように、空調空気の温度と目標温度との差が大きく、最も冷房性能が必要とされる状況下での冷凍性能が高くなる。これにより、空調空気の温度を、目標温度まで速やかに冷却できるので、空調空気の温度を目標温度に向けて冷却しているときの空調が安定していない状態(過渡領域)で、十分な冷却性能を発揮できる。
図1は、実施の形態にかかる吸着式冷凍機1を備える空調システムの概略図である。
空調システムでは、車室内に吹き出す空気(空調空気)の流路R1上にクーラコア2が設けられており、クーラコア2を通過する空気Airと、クーラコア2内を通流する熱交換媒体M1との間での熱交換により、クーラコア2を通過する空気Airを冷却するようになっている。
ここで、実施の形態では、冷媒M2として例えば水を用いており、熱交換媒体M1として、例えば、水にエチレングリコール系の不凍液を混合した流体を用いている。
ここで、本明細書における用語「吸着材」は、冷媒蒸気M2gを保持する特性を有する有機系の高分子材料であって、この材料の表面に、冷媒蒸気M2gを吸着させるもの(一般的な吸着材)だけではなく、材料の内部に冷媒蒸気M2gを収容するもの(いわゆる収着材)の両方を意味している。
実施の形態では、熱交換媒体M2、M3として、水を用いている。
室外熱交換器8では、熱交換媒体M3が外気温(室外空気の温度)に応じた温度に冷却されるようになっており、例えば夏季のように外気温が約35度の場合には、熱交換媒体M3は、外気温に応じて決まる所定温度(例えば約40度)に冷却(調温)される。
実施の形態では、熱交換媒体M4は、当該熱交換媒体M4の沸点よりも低い温度に加熱されるようになっており、熱交換媒体M4が水である場合には、約80度に加熱されるようになっている。
実施の形態では、吸着器4の各々は、蒸発器3から延びる上流側の配管61と、凝縮器9まで延びる下流側の配管62とに、バルブ65、66を介して接続されており、バルブ65、66の開閉により、配管61、62との連通/遮断が切り替えられるようになっている。
これにより、凝縮器9で液化した冷媒M2は、凝縮器9と蒸発器3とを接続する配管51を通って、蒸発器3に供給されるようになっており、液化した冷媒M2は、蒸発器3で再び蒸発して(気化して)、熱交換媒体M1の冷却に用いられるようになっている。
空調システムにおいて冷房運転が開始されると、吸着式冷凍機1では、図示しないポンプが稼働して、クーラコア2と蒸発器3とを接続する配管55内の熱交換媒体M1が、クーラコア2と蒸発器3との間で循環する。
これと同時に、蒸発器3での冷媒M2の蒸発が開始されて、蒸発コア3aでは、冷媒M2の蒸発による気化熱で、クーラコア2との間を循環する熱交換媒体M1が冷却されることになる。
蒸発器3で冷媒M2を連続的に蒸発させるためには、蒸発器3内の圧力上昇を抑える必要があるので、蒸発器3で発生した冷媒蒸気M2gを、吸着器4の吸着材Sに吸着させることで、蒸発器3内の圧力上昇を抑えている。
そのため、吸着式冷凍機1では、冷媒蒸気M2gの吸着を行っている吸着器4での冷媒蒸気M2gの吸着量が上限吸着量まで到達すると、冷媒蒸気M2gの供給先を、他の吸着器4に切り替えるようになっている。
具体的には、冷媒蒸気M2gの脱着を行う吸着器4と、凝縮器9とを、配管62を介して連通させると共に、排熱回収器7で加熱された熱交換媒体M4で、吸着器4の吸着コア41を加熱する。
これにより、吸着器4内の吸着材Sが加熱されて、吸着材Sに吸着されていた冷媒蒸気M2gが吸着材Sから脱離するので、吸着材Sが、冷媒蒸気M2gを吸着可能な状態に賦活されることになる。
また、吸着器4において、冷媒蒸気M2gの吸着と、冷媒蒸気M2gの放出とを交互に繰り返すことで、吸着式冷凍機1で使用する吸着器4の数を抑えて、吸着式冷凍機1の大型化を防止している。
吸着式冷凍機1の蒸発器3で得られる冷却能力(冷凍能力)は、蒸発器3と吸着器4と凝縮器9との間を循環する冷媒M2の流量と、冷媒M2の潜熱量に応じて決まる。
ここで、実施の形態の吸着式冷凍機1では、同じ冷媒M2が、蒸発器3と吸着器4と凝縮器9との間を循環するので、蒸発器3が発揮する冷却能力は、冷媒M2の流量に依存する。そのため、冷媒M2の流量を増やすことで、冷却能力を向上させることができる。
これは、(1)冷媒M2の吸着量/脱着量を増やしただけで、蒸発器3での冷媒M2の気化量が増えていない場合には、冷媒M2の流量を増やすことができないために冷却能力を向上させることができない、(2)蒸発器3では、冷媒M2の気化熱を用いて、空気Airとの間で熱交換を行う熱交換媒体M1を冷却しており、気化量が少ないと熱交換媒体M1の冷却に必要な冷却能力を確保できない、ためである。
例えば、図2の熱交換媒体(冷媒M2)の飽和蒸気圧曲線に示すように、冷媒M2の飽和蒸気圧は、排熱回収器7で加熱された熱交換媒体M4の温度(例えば80度)から、室外熱交換器8で冷却された熱交換媒体M3の温度(例えば40度)を経て、車室内の冷房の目標温度(例えば25度)に向けて温度が低下するにつれて、2次曲線的な傾向で低下する。
これは、吸着材Sに冷媒蒸気M2gを吸着させる際には、室外熱交換器8で冷却された熱交換媒体M3により吸着器4が冷却されるが、熱交換媒体M3は、室外熱交換器8において、室内温度に関係なく略一定である外部空気との熱交換により冷却されるので、熱交換媒体M3の温度が外気温に応じて決まる温度周りで保持されるからである。
ここで、図2を用いて説明をすると、冷房運転の開始時の蒸発器3内と吸着器4内の温度が約40度である場合、蒸発器3内の温度が目標設定温度に向けて低下する一方で、吸着器4の温度は、当初の約40度の温度のままで保持される。
そうすると、蒸発器3内での冷媒M2の飽和蒸気圧P(図2参照)が、冷房運転の開始時の飽和蒸気圧Plから、温度が25度であるときの飽和蒸気圧Peに向けて低下する一方で、吸着器4内での冷媒M2の飽和蒸気圧が、冷房運転の開始時の飽和蒸気圧Plのままで保持される。
蒸気圧力比Rは、吸着器4での飽和蒸気圧Plに対する蒸発器3での飽和蒸気圧Peの比率(R=Pe/Pl)である。
そうすると、熱交換媒体M1が循環する蒸発器3内の温度もまた低下するので、蒸発器3内の温度の低下に伴って蒸発器3での飽和蒸気圧Peもまた低下する。
図3の場合には、温度が40度(吸着時の温度)の時の吸着材Sの特性が、Ct40で示されており、温度が90度(脱着時の温度)の時の吸着材の特性が、Ct90で示されている。
図3に示す特性の吸着材Sでは、低冷房負荷時(蒸気圧力比Rが0.4)における吸着材での冷媒の吸着率の温度による差(図2、Δa)を大きくすることで、冷却能力を確保している。
しかし、車室内の温度を目標冷房温度に向けて変化させている途上の過渡領域(高冷房負荷時)での、吸着量については考慮されていない。
そのため、外気温と目標冷房温度との差が大きい際に冷房運転を開始した直後の蒸気圧力比Rが0.5よりも大きい領域では、吸着材での冷媒の吸着率Cの温度による差(図3、Δb)が小さいために、十分な冷房能力を確保することができなかった。
図4は、実施の形態にかかる吸着材Sでの冷媒吸着率と、蒸気圧力比との関係を説明する図であり、温度が30度(吸着時の温度)の時の吸着材Sの特性が、Ct30で示されており、温度が80度(脱着時の温度)の時の吸着材の特性が、Ct80で示されている。
(A)車室内を空調する空気の温度を、目標冷房温度に向けて冷却している途上であるときに相当する蒸気圧力比Rの領域(図中、蒸気圧力比が0.4〜1.0の過渡領域)での吸着材Sの冷媒吸着率Cが、空調空気の温度を目標冷房温度周りで保持しているときに相当する蒸気圧力比Rの領域(図中、蒸気圧力比が0.3〜0.4の安定領域)での吸着材Sの冷媒吸着率Cよりも大きい。
そのため、過渡領域での吸着材Sの冷媒吸着率Cを、安定領域での吸着材Sの冷媒吸着率Cよりも大きくすることで、過渡領域において蒸発器3で蒸発させる冷媒M2の総量を増やして、冷凍能力を向上させることができるからである。
過渡領域と安定領域とで、吸着材Sの冷媒吸着率Cが大きく異なる場合には、冷媒M2の流量が、過渡領域から安定領域に移行する際に急激に変化することに伴って、車室内に供給される空気Airの温度調整が難しくなるが、冷媒M2の流量を徐々に減少させることで、車室内に供給される空気Airの温度調整が精度良く行えるようになる。
これにより、蒸発器3では、より多くの冷媒の連続的な蒸発が可能になるので、強力な冷凍能力が必要となる過渡領域での冷媒M2の流量を確保して、車室内の温度を目標設定温度に向けて速やかに変化させることが可能になる。
ここで、脱着時の蒸気圧力比Rは、脱着温度における冷媒M2の飽和蒸気圧を、吸着温度における冷媒M2の飽和蒸気圧で除算して求められる(脱着時の蒸気圧力比R=脱着温度における冷媒M2の飽和蒸気圧/吸着温度における冷媒M2の飽和蒸気圧)。
なお、冷媒吸着率Cの上限は、吸着材Sの特性にて実現可能な最大の数値である。
(1)吸着式冷凍機1が発揮する冷凍能力を用いて車室内の空調に用いられる空気Airを冷却するように構成された吸着式冷凍機1を備える空調システムにおいて、
吸着式冷凍機1は、蒸発器3で蒸発させた冷媒M2の吸着/放出が可能な吸着材Sを有する吸着器4を備えると共に、吸着器4による媒蒸気M2gの吸着/放出を切り替えながら蒸発器3で冷媒M2を蒸発させて、冷凍能力を発揮するように構成されており、
吸着材Sは、
空気Airの温度と吸着器4の温度との差に応じて決まる蒸気圧力比Rが大きくなるにつれて(1に近づくにつれて)、冷媒M2の吸着量が増大する特性を有しており、
空気Airの温度を目標冷房温度(目標温度)に向けて冷却している途上であるときに相当する蒸気圧力比Rの領域(過渡領域)での吸着材Sの吸着率Cの変化率ΔXが、
空気Airの温度を目標温度周りで保持しているときに相当する蒸気圧力比Rの領域(安定領域)での吸着材Sの吸着率Cの変化率ΔYよりも大きい
ことを特徴とする吸着式冷凍機1を備える空調システムとした。
ここで、吸着材Sに対する冷媒蒸気M2g吸着量が多くなると、蒸発器3から蒸発させることができる冷媒M2の総量が多くなるので、吸着式冷凍機1の冷凍能力が高くなる。
よって、例えば夏季での冷房運転の開始直後のように、車室内を空調するための空気Airの温度(車室内の実際の温度)と目標温度との差が大きく、吸着式冷凍機1の冷凍性能の発揮が最も必要とされる状況下での冷凍性能が高くなるので、空気Airの温度を、目標温度まで速やかに冷却できる。これにより、空気Airの温度を目標温度に向けて冷却しているときの空調が安定していない状態(過渡領域)で、十分な冷凍性能を発揮して、車室内の空間を適切に冷房できる。
よって、夏季の車両始動初期で車室内温度が高い状態で、高い冷凍能力を発揮させることができるので、車室内の温度を速やかに目標設定温度まで下げたい意向を持つユーザの要求に速やかに応えることができる。
上記のように構成して、過渡領域での吸着率Cを向上させた吸着材とすることで、必要とされる冷凍性能が同じであっても、従来の吸着材よりも少ない量の吸着材で必要とされる冷凍性能を発揮できる。
これにより、吸着器4の小型化が可能になるので、吸着式冷凍機1を備える空調システム全体のサイズの小型化が可能となり、空調システムの車両への搭載性が向上する。
2 クーラコア
3 蒸発器
3a 蒸発コア
4 吸着器
6 配管
7 排熱回収器
8 室外熱交換器
9 凝縮器
9a 凝縮コア
41 吸着コア
42 容器
50 30度以上
51 配管
55 配管
61 配管
62 配管
65 バルブ
67 切替弁
75 排気ガス管
90 70度以上
Air 空気
C 冷媒吸着率
ENG エンジン
M1、M3、M4 熱交換媒体
M2 熱交換媒体(冷媒)
R1 流路
S 吸着材
Claims (3)
- 吸着式冷凍機が発揮する冷凍能力を用いて空調空気を冷却するように構成された吸着式冷凍機を備える空調システムにおいて、
前記吸着式冷凍機は、
蒸発器で蒸発させた冷媒の吸着/放出が可能な吸着材を有する吸着器を備えると共に、前記吸着器による前記蒸発させた冷媒の吸着/放出を*1切り替えながら前記蒸発器で前記冷媒を蒸発させて、冷凍能力を発揮するように構成されており、
前記吸着材は、
前記空調空気の温度と前記吸着器の温度との差に応じて決まる前記吸着器内の蒸気圧力比が大きくなるにつれて、前記冷媒の吸着量が増大する特性を有しており、
前記空調空気の温度を目標温度に向けて冷却している途上であるときに相当する蒸気圧力比の領域での前記吸着材の吸着率の変化率が、
前記空調空気の温度を前記目標温度周りで保持しているときに相当する蒸気圧力比の領域での前記吸着材の吸着率の変化率よりも大きい
ことを特徴とする吸着式冷凍機を備える空調システム。 - 前記冷媒の吸着時の吸着材温度における吸着率が、前記冷媒の放出時の吸着材温度における吸着率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の吸着式冷凍機を備える空調システム。
- 前記空調空気の温度を目標温度に向けて冷却している途上であるときに相当する蒸気圧力比の領域での前記吸着材の吸着率は、
前記空調空気の温度を前記目標温度周りで保持しているときに相当する蒸気圧力比の領域での前記吸着材の吸着率の1.2倍以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸着式冷凍機を備える空調システム。
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