本実施形態に係る水晶素子の製造方法で製造される水晶素子110は、図1に示されているように、水晶片111および水晶片111に設けられている一対の電極部113から構成されている。本実施形態に係る水晶素子の製造方法で製造される水晶素子110は、電極部113に電圧が印加されると、電極部113(113a,113b)に挟まれている水晶片111の一部が所定の周波数で厚みすべり振動を開始する構成となっている。
水晶片111は、振動部111a、固定部111b、緩衝部111cおよび傾斜部111dから構成されており、安定した機械振動をする圧電材料、例えば、水晶部材により一体となるように形成されている。また、水晶片111は、平面視して、振動部111aの所定の一辺に沿って固定部111bが設けられており、振動部111aと固定部111bとの間に平板状の緩衝部111cが設けられており、この緩衝部111cの下面に振動部111aから固定部111bにかけて上下方向の厚みが厚くなっている傾斜部111dが設けられている。このとき、振動部111aの上面、固定部111bの上面および緩衝部111cの上面は、同一平面上に位置している。また、水晶片111には、緩衝部111cから傾斜部111dにかけて貫通する貫通穴112が形成されている。
振動部111aは、前述したように、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した水晶部材が用いられている。また、振動部111aは、略矩形形状の平板状に形成されており、その主面が、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心にX軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっている。例えば、振動部111aの主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸の負の方向をいて反時計回りに約37°回転させた面と平行となっている。
また、振動部111aには、振動部111aの対外に対向する面に、一対の電極部113の一部、具体的には、励振電極部114(114a,114b)が設けられている。振動部111aは、この励振電極部114に電圧が印加されると、励振電極部114に挟まれている振動部111aの一部が逆圧電効果および圧電効果により所定の周波数で厚みすべり振動をする。一般的に、厚みすべり振動の周波数は、振動部111aの上下方向の厚みによって厚みすべり振動のしやすさが異なるため、振動部111aの上下方向の厚みに依存している。具体的には、振動部111aの上下方向の厚みが薄い程、振動部111aの厚みすべり振動の周波数が高くなるというように、発振周波数は、振動部111aの上下方向の厚みに対して反比例するようになっている。従って、振動部111aの厚みすべり振動の周波数が高い場合、振動部111aの上下方向の厚みが薄く、かつ、厚みすべり振動がしやすいので、励振電極部114に挟まれている振動部111aの一部が振動しているときに振動部111aの縁部まで厚みすべり振動が漏れ振動してしまうこととなる。
ここで、励振電極部114が設けられている振動部111aの面を、振動部111aの主面とする、また、振動部111aの主面のうち、後述する固定部111bと同一平面上に位置している振動部111aの主面を振動部111aの上面とし、振動部111aの上面と反対側を向く振動部111aの面を振動部111aの下面とする。
ここで、振動部111aは、前述したように、略矩形形状の平板状となっており、平面視して、長辺の長さが0.8〜4.0mmとなっており、短辺の長さが0.6〜2.8mmとなっている。また、振動部111aの上下方向の厚みは、5〜22μmとなっている。
固定部111bは、本実施形態に係る水晶素子の製造方法で製造された水晶素子110を水晶デバイス(図示せず)として用いるとき、導電性接着剤等の保持部材(図示せず)によって水晶素子110を実装する基板(図示せず)に水晶素子110を接着、保持するためのものである。固定部111bには、一対の電極部113の一部、具体的には、引出部115(115a,115b)が二つ並んで設けられている。固定部111bは、引出部115が導電性接着剤等の保持部材によって基板の搭載パッド(図示せず)と電気的に接着されて、水晶素子110が基板に接着、保持され、実装される。
固定部111bは、前述したように、振動部111aと一体的に形成されており、例えば、水晶部材が用いられ、略矩形形状の平板状に形成されている。また、固定部111aは、水晶素子110の上面を平面視して、振動部111aの所定の一辺に沿って設けられており、固定部111aの所定の一面が、前述した振動部111aの上面と同一平面上に位置している。また、固定部111bは、水晶素子110の下面を平面視したとき、固定部111bの四隅のうち振動部111a側を向く二隅が円弧形状となっている。
ここで、振動部111aの上面と同一平面上に位置している固定部111bの面を固定部111bの上面とし、振動部111aの上面と反対側を向く固定部111bの面を固定部111bの下面とする。また、固定部111bの上面および固定部111bの下面を固定部111bの両主面とし、固定部111bの両主面につながっている固定部111bの面を固定部111bの側面とする。
固定部111bは、その上下方向の厚みが振動部111aの上下方向の厚みより少なくとも二倍以上の厚みとなっている。このため、吸着ノズル等で吸引し本実施形態に係る水晶素子の製造方法で製造された水晶素子110を移動させる場合、振動部111aの上下方向の厚みより厚い固定部111bを吸引し移動することが可能となり、上下方向の厚みが振動部と固定部とで同じとなっている水晶素子の場合のように吸引時に吸引が原因で水晶素子が破損することを低減させることができ、生産性を向上させることができる。また、水晶素子110を水晶デバイスとして用いる場合、上下方向の厚みが振動部と固定部とが同じとなっている水晶素子を実装する場合と比較して、固定部111bと振動部111aの上下方向の厚みの差の分だけ振動部111aを水晶デバイスの基板から離れた位置にすることができるので、振動部111aが基板と接触することを低減させつつ、振動部111aと導電性接着等の保持部材とが接触することを低減させることが可能となる。
また、固定部111bは、特に図示しないが、水晶素子110の上面を平面視して、固定部111bの長辺が振動部111aの短辺より長くなっていてもよい。固定部111bの長辺を振動部111aの短辺より長くすることにより、固定部111bに設ける一対の引出部115の間隔を広くすることができ、導電性接着剤等の保持部材により基板に実装するとき、導電性接着剤等の保持部材によって一対の引出部113が電気的に短絡することを低減させることが可能となる。また、固定部111b長辺を振動部111aの短辺より長くすることで、固定部111bの体積をより増やすことができ、水晶素子110の重心をより固定部111b側にすることが可能となり、導電性接着剤等の保持部材により基板に実装するとき、振動部111aの端部が基板に接触することをさらに低減させることが可能となる。
ここで、固定部111bは、前述したように、略矩形形状の平板状となっており、固定部111bの上面を平面視して、長辺の長さが0.6〜3.0mmとなっており、短辺の長さが0.26〜2.0mmとなっている。また、固定部111bは、その上下方向の厚みが30〜100μmとなっている。
緩衝部111cは、後述する傾斜部111dを設けることによって、固定部111bによる振動部111aの影響を低減しつつ、振動部111aの振動を徐々に軽減させるためのものである。緩衝部111cは、振動部111aと固定部111bと一体的に形成されており、例えば、水晶部材が用いられ、振動部111aの上下方向の厚みと同じ厚みとなるように平板状に形成されている。また、緩衝部111cは、所定の一面が振動部111aの上面および固定部111bの上面と同一平面上に位置している。緩衝部111cは、振動部111aと固定部111bとの間に設けられており、水晶素子110の上面を平面視したとき振動部111aの所定の一辺に沿って、緩衝部111c、固定部111bの順に並ぶように設けられている。従って、緩衝部111cは、振動部111aの所定の一辺を含む側面と接しつつ、固定部111bの振動部111a側を向く固定部111bの側面と接している。
ここで、振動部111aの上面および固定部111bの上面と同一平面上に位置している緩衝部111cの所定の一面を、緩衝部111cの上面とする。前述したように、振動部111a、固定部111b、緩衝部111cおよび傾斜部111dは一体的に形成されているため、実際に存在していない面ではあるが、緩衝部111cの上面と反対側を向く緩衝部111cの緩衝部111cの面を緩衝部111cの下面とする。また、緩衝部111cの上面および緩衝部111cの下面を緩衝部111cの主面とし、この緩衝部111cの両主面とつながっている緩衝部111cの面を緩衝部111cの側面とする。
緩衝部111cは、水晶素子110の上面を平面視したとき、振動部111a側を向く緩衝部111cの辺の両端が振動部111a側に凸となるように円弧形状となっており、固定部111b側を向く緩衝部111cの辺の両端が固定部111b側に凹となるように円弧形状となっている
ここで、緩衝部111cは、水晶素子110の上面を平面視して、振動部111aと接している辺から固定部111bに接している辺までの長さが、0.3〜0.7mmとなっている。また、緩衝部111cの上下方向の厚みは、振動部111aの上下方向の厚みと同じとなっており、5〜22μmとなっている。
傾斜部111dは、緩衝部111cに設けられることによって、固定部111bによる振動部111aの影響を低減しつつ、振動部111aの振動を徐々に減衰させるためのものである。また、傾斜部111dは、振動部111a、固定部111bおよび緩衝部111cと一体的に形成されている。傾斜部111dは、緩衝部111cの下面に設けられており、振動部111aの下面から固定部111bの下面にかけて徐々に上下方向の厚みが厚くなるように設けられている。また、傾斜部111dは、水晶素子110の下面を平面視して、振動部111aと接している辺の両端が振動部111a側に凸となるように円弧形状となっており、固定部111bと接している辺の両端が固定部111b側に凹となるように円弧形状となっている。ここで、傾斜部111dは、水晶素子110の下面を平面視して、振動部111aと接している傾斜部111dの辺から固定部111bと接している傾斜部111dの辺までの長さが、0.3〜1.5mmとなっている。
貫通穴112は、水晶片111の振動部111aと固定部111bとの間であって振動部111aから固定部111bにかけて徐々に厚みが厚くなっている箇所、具体的には、緩衝部111cおよび傾斜部111dに、緩衝部111cから傾斜部111dにかけて貫通するように形成されている。従って、貫通穴112を形成することで、振動部111aと緩衝部111cとが接している面積を小さくすることができる。このため、緩衝部111cが振動部111aに接していることによる振動部111aの振動への阻害を低減させることが可能となる。
また、貫通穴112は、水晶素子110の上面を平面視して、緩衝部111cの中央部に形成されている。従って、平面視して、振動部111aが、振動部111aの四隅のうち固定部111b側を向く二隅で、緩衝部111cと接触することとなり、水晶片111では、固定部111b側を向く振動部111aの二隅で振動部111aが緩衝部111cで固定されていると見なすことができる。一般的に、水晶片111に設けられている一対の電極部113に電圧が印加されると、電極部113の一部、具体的には、励振電極部114に挟まれている振動部111aが厚みすべり振動をする。このとき、平面視して、励振電極部114の中心から励振電極部114の外縁部側に向かって厚みすべり振動が伝搬し、さらに、励振電極部114の外縁部から振動部111aの外縁に向かって厚みすべり振動が伝搬する。従って、厚みすべり振動による振動部111aの変位量は、励振電極部114の中心で最も大きく、励振電極部114の中心から離れる程、変位量が小さくなっている。つまり、貫通穴112は、水晶素子110の上面を平面視して、緩衝部111cの中央部に形成することで、振動部111aの変位量が少ない部分が緩衝部111cに固定されている状態にすることができ、平面視して貫通穴112が中央にない場合と比較して、緩衝部111cによる振動部111aの影響によるクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、貫通穴112は、水晶素子110を平面視して、その開口部が略矩形形状となっており、その四隅が円弧形状となっている。このように、開口部の四隅を円弧形状にし、貫通穴112の開口部に丸みをもたせることで、水晶素子110の外部から応力が加わったとき、貫通穴112の開口部に向かう向きに加わる応力が四隅に集中することを低減させることが可能となり、貫通穴112の開口部からクラック等の破損が生じることを低減させることができる。ここで、貫通穴112の開口部は、略矩形形状となっており、長辺が0.3〜1.78mmとなっており、短辺が0.01〜0.12mmとなっており、四隅が半径0.05〜0.12mmのR面取りされた円弧形状となっている。なお、ここで貫通穴112の開口部が略矩形形状となっており、その四隅が円弧形状となっている場合について説明しているが、例えば、貫通穴112の開口部が楕円形状となっていてもよい。
電極部113(113a、113b)は、水晶片111の振動部111aに電圧を印加するためのものであり、一対で水晶片111に設けられている。電極部113は、励振電極部114(114a,114b)、引出部115(115a,115b)および配線部116(116a,116b)から構成されている。
励振電極部114(114a,114b)は、振動部111aに電圧を印加するためのものである。励振電極部114は、一対となっており、振動部111aの両主面に互いが対向するように設けられている。また、励振電極部114は、励振電極部114に電圧が印加されたとき、平面視して、励振電極部114の中心から楕円形状、または、円形形状に振動が伝搬しているので、効率良く振動部111aを振動させるために平面視して、楕円形状、または、円形形状となっている。これにより、平面視して電極形状が略矩形形状の場合と比較して、緩衝部111cによる振動部111aへの影響をより低減させることができ、水晶素子110のクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
引出部115(115a,115b)は、水晶素子110の外部から励振電極部114に電圧を印加するためのものであり、固定部111bの下面に二つ並んで設けられている。引出部115は、水晶素子110を電子デバイスとして用いるとき、基板(図示せず)の搭載パッド(図示せず)と向かい合う位置に設けられ、導電性接着剤等の保持部材(図示せず)によって、搭載パッドと電気的に接着される。
配線部116(116a,116b)は、一対となっており、励振電極部114と引出部115とを電気的に接続するためのものである。一方の配線部116aは、一端が振動部111aの上面に設けられている一方の励振電極部114aと接続されつつ、他端が固定部111bの下面に設けられている一方の引出部115aに接続されるように、振動部111aの上面、貫通穴112の内壁面および固定部111bの下面に少なくとも設けられている。他方の配線部116bは、一端が振動部111aの下面に設けられている他方の励振電極部114bと接続されつつ、他端が固定部111bの下面に設けられている他方の引出部115bに接続されるように、振動部111aの下面、傾斜部111dおよび固定部111bの下面に少なくとも設けられている。
一方の配線部116aの一部を貫通穴112の内壁面に設けることにより、一方の励振電極部114aから一方の引出部115aまでの一方の配線部116aの長さを、貫通穴112の内壁面に設けない場合と比較して、短くすることができる。これにより、一方の配線部116aの長さを短くした分だけ、一方の配線部116a自身が持つ抵抗値を小さくすることができ、一方の配線部116aの抵抗によるクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、貫通穴112の内壁面に、配線部116aを設けることで、固定部111bの側面または振動部111aの側面に配線部116aの一部を設ける必要がなくなる。このため、水晶素子110を基板(図示せず)に実装するために吸着ノズル等で吸引し水晶素子110を移動させるとき、固定部111bの側面または振動部111aの側面に設けた場合のように、側面に設けられている配線部の一部が接触し剥離することを低減させることができる。
また、貫通穴112の内壁面に配線部116aの一部を設けることにより、固定部111bの側面または振動部111aの側面に配線部を設けた場合と比較して、水晶素子110の存在する雰囲気中の塵、埃等の異物が配線部116aに付着することを抑えつつ、クリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
次に、本実施形態に係る水晶素子の製造方法について説明する。本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、図2〜図5に示したように、水晶ウエハ形成工程、耐食膜形成工程、レジスト膜形成工程、第一露光工程、第二露光工程、現像工程、耐食膜除去工程、水晶片形成工程、剥離工程、電極部形成工程、および個片化工程から構成されている。なお、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、第一露光工程と第二露光工程とを別々に説明しているが、第一露光工程と第二露光工程とを同時に行ってもよい。
(水晶ウエハ形成工程)
水晶ウエハ形成工程は、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した平板状の水晶ウエハ10を形成する工程である。水晶ウエハ形成工程では、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した水晶部材が、その主面が各結晶軸と所定の角度となるように切断され、その上下方向の厚みが所定の厚みとなるまで研磨される。このとき、水晶ウエハ10の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心にX軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面、例えば、約37°回転させた面と平行となっている。また、水晶ウエハ10の上下方向の厚みは、本実施形態に係る水晶素子の製造方法で製造される固定部111bの上下方向の厚みと同じ厚みとなっている。
ここで、水晶ウエハ10は、例えば、略矩形形状の平板状となっており、長辺の長さが、10〜101.6mmとなっており、短辺の長さが、10〜101.6mmとなっており、上下方向の厚みが30〜100mmとなっている。なお、水晶ウエハ10が略矩形形状の平板状となっている場合について説明しているが、例えば、円形形状または楕円形形状の平板状となっていてもよい。
(耐食膜形成工程)
耐食膜形成工程は、水晶ウエハ10の上面に第一耐食膜20aを形成し、水晶ウエハ10の下面に第二耐食膜20bを形成する工程である。耐食膜形成工程では、スパッタリング技術または蒸着技術により、第一耐食膜20aが水晶ウエハ10の上面に形成され、第二耐食膜20bが水晶ウエハ10の下面に形成される。第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20bは、後述する水晶片形成工程において、エッチング溶液に浸漬させたときにエッチング溶液に溶解しない金属が用いられている。例えば、第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20bは、積層構造となっており、水晶ウエハ10の主面上にクロム、ニクロム、ニッケル、チタンのいずれか、または、いずれかを含む合金からなる下地金属層が形成された後、この下地金属層上に金からなる金属層が形成されている。ここで、第一金属層20aおよび第二金属層20bの上下方向の厚みは、例えば、1000〜5000Åとなっている。なお、第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20bが複数の金属が積層された場合について説明しているが、例えば、一層であってもよい。
(レジスト膜形成工程)
レジスト膜形成工程は、第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20b上に感光性レジストを塗布しレジスト膜30(30a,30b)を形成する工程である。感光性レジストは、光が照射されると変質する性質を有しており、例えば、ポジ型の感光性レジストが用いられる。レジスト膜形成工程では、例えば、スピンコータにより、感光性レジストが第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20b上に塗布され、第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20b上にレジスト膜30が形成される。ここで、第一耐食膜20aの上面に塗布され形成されたレジスト膜30を第一レジスト膜30aとし、第二耐食膜20bの上面に塗布され形成されたレジスト膜30を第二レジスト膜30bとする。
(第一露光工程)
第一露光工程は、水晶ウエハ10の上面に形成されているレジスト膜30上に第一マスクM1を設け、所定のパターンで水晶ウエハ10の上面に形成されているレジスト膜30を露光する工程である。第一露光工程では、例えば、露光機が用いられ、水晶ウエハ10の上面に形成されているレジスト膜30(第一レジスト膜30a)上に、所定のパターンの第一マスクM1が配置され、第一マスクM1越しに紫外光が照射される。このため、第一マスクM1によって、第一レジスト膜30aには、紫外光が照射される部分と紫外光が照射されない部分が存在することとなる。また、第一マスクM1を水晶ウエハ10上に配置するとき、振動部111aとなる部分から固定部111bへ向かう向きが水晶ウエハ10のX軸の正の向きと同じ向きになるように配置する。
第一露光工程では、第一マスクM1越しに紫外光を第一レジスト膜30aに照射することで、例えば、水晶片111となる部分、具体的には、振動部111a、固定部111bおよび緩衝部111cとなる部分に光を照射せず、固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部、および、振動部111a側を向く固定部111aの辺と反対側を向く固定部111bの辺に沿った縁部に光を照射している。このとき、振動部111aと固定部111bとの間であって緩衝部111cとなる部分の一部にも光を照射している。
(第二露光工程)
第二露光工程は、水晶ウエハ10の下面に形成されているレジスト膜30上に第二マスクM2を設け、所定のパターンで水晶ウエハ10の下面に形成されているレジスト膜30を露光する工程である。第二露光工程では、例えば、露光機が用いられ、水晶ウエハ10の下面に形成されているレジスト膜30(第二レジスト膜30b)上に、所定のパターンの第二マスクM2が配置され、第二マスク越しに紫外光が照射される。このため、第二マスクM2によって、第二レジスト膜30bには、紫外光が照射される分と紫外光が照射されない部分とが存在することとなる。また、第二マスクM2を水晶ウエハ10上に配置するとき、振動部111aとなる部分から固定部111bへ向かう向きが水晶ウエハ10のX軸の正の向きと同じ向きになるように配置する。
第二露光工程では、第二マスクM2越しに紫外光を第二レジスト膜30bに照射することで、例えば、固定部111bとなる部分に光を照射せず、振動部111a、傾斜部111d、固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部、および、振動部111a側を向く固定部111aの辺と反対側を向く固定部111bの辺に沿った縁部に光を照射している。このとき、固定部111bのX軸に平行な辺に沿った縁部にも光を照射している。
(現像工程)
現像工程は、露光されたレジスト膜30が形成されている水晶ウエハ10を所定の溶液に浸漬させ、水晶ウエハ10の上面を平面視して、水晶片111となる部分にレジスト膜30が残留し、水晶ウエハ10の下面を平面視して、水晶片111の固定部111bとなる部分にレジスト膜30が残留するように、レジスト膜30の不要な部分を除去し現像する工程である。従って、現像工程では、露光されたレジスト膜30が形成されている水晶ウエハ10を所定の溶液に浸漬させることで、光が照射されている部分のレジスト膜30を剥離させている。
ここで、現像工程後に、光が照射されず水晶ウエハ10上に残留しているレジスト膜30をレジストマスク31(31a,31b)とし、第一レジスト膜30aであって水晶ウエハ10上に残留しているものを第一レジストマスク31aとし、第二レジスト膜30bであって水晶ウエハ10上に残留しているものを第二レジストマスク31bとする。
現像工程後の水晶ウエハ10の上面を平面視すると、前述したように、第一露光工程において、水晶片111となる部分に光を照射せず、固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部、および、振動部111a側を向く固定部111aの辺と反対側を向く固定部111bの辺に沿った縁部に光を照射しているので、固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部、および、振動部111a側を向く固定部111aの辺と反対側を向く固定部111bの辺に沿った縁部のレジスト膜30が除去され第一耐食膜20aが露出されつつ、水晶片111となる部分にレジスト膜30が残留されている。また、第一露光工程において振動部111aと固定部111bとの間であって緩衝部111cとなる部分の一部にも光を照射しているので、振動部111aと固定部111bとの間であって緩衝部111cとなる部分の一部のレジスト膜30が除去され第一耐食膜20aが露出されている。従って、第一レジストマスク31aは、水晶ウエハ10の上面を平面視したとき、水晶片111となる部分、具体的には、振動部111a、固定部111bおよび緩衝部111cとなる部分に設けられている。
現像工程後の水晶ウエハ10の下面を平面視すると、前述したように、第二露光工程において、固定部111bとなる部分に光を照射せず、振動部111a、傾斜部111d、固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部、および、振動部111a側を向く固定部111aの辺と反対側を向く固定部111bの辺に沿った縁部に光を照射しているので、振動部111a、傾斜部111d、固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部、および、振動部111a側を向く固定部111aの辺と反対側を向く固定部111bの辺に沿った縁部のレジスト膜30が除去され第二耐食膜20bが露出されつつ、固定部111bとなる部分のレジスト膜30が残留している。また、固定部111bのX軸に平行な辺に沿った縁部にも光を照射しているので、固定部111bのX軸に平行な辺に沿った縁部に沿った部分もレジスト膜30が除去され第二耐食膜20bが露出された状態となっている。従って、第二レジストマスク31bは、水晶ウエハ10の下面を平面視したとき、固定部111b部分に設けられている。
(耐食膜除去工程)
耐食膜除去工程は、現像後の水晶ウエハ10を所定の溶液に浸漬させて、第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20bのレジスト膜30が形成されていない部分を除去する工程である。耐食膜除去工程前の水晶ウエハ10は、水晶ウエハ10の上面上に第一耐食膜20a、第一レジストマスク31aの順で形成されつつ、水晶ウエハ10の下面上に第二耐食膜20b、第二レジストマスク31bの順で形成されている。また、耐食膜除去工程前の水晶ウエハ10は、現像工程により不要なレジスト膜30が除去されているので、第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20bの一部が露出されている状態となっている。耐食膜除去工程では、レジスト膜30が形成されていない部分、つまり、露出している第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20bが、所定の溶液に浸漬されることで、除去されている。
耐食膜除去工程後の水晶ウエハ10の上面を平面視すると、水晶片111となる部分に第一レジストマスク31aが形成され、固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部、および、振動部111a側を向く固定部111aの辺と反対側を向く固定部111bの辺に沿った縁部の水晶ウエハ10の上面が露出している。また、耐食膜除去工程後の水晶ウエハ10の下面を平面視すると、固定部111bとなる部分に第二レジストマスク31bが形成され、振動部111a、傾斜部111d、固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部、および、振動部111a側を向く固定部111aの辺と反対側を向く固定部111bの辺に沿った縁部の水晶ウエハ10の下面が露出している。
ここで、不要な部分が除去された第一耐食膜20aを第一耐食マスク21aとし、不要な部分が除去された第二耐食膜20bを第二耐食マスク21bとする。従って、耐食膜除去工程後の水晶ウエハ10は、水晶ウエハ10の上面上に第一耐食マスク21a、第一レジストマスク31aが所定のパターンで形成されつつ、水晶ウエハ10の下面上に第二耐食マスク21b、第二レジストマスク31bが所定のパターンで形成されている。
(水晶片形成工程)
水晶片形成工程は、第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20bのレジスト膜30が形成されていない部分が除去された水晶ウエハ10を、所定のエッチング溶液に浸漬させ、露出している水晶ウエハ10をエッチングすることで、振動部111aから固定部111bへ向かう向きが水晶ウエハ10のX軸の正の向きと同じ向きになるようにしつつ、固定部111bの一部を水晶ウエハ10に固定するように水晶片111を形成すると共に、振動部111aと固定部111bとの間に平板状の緩衝部111cと、緩衝部111cの下面に振動部111aから固定部111bにかけて上下方向の厚みが厚くなっている傾斜部111dと、を形成する工程である。水晶片形成工程では、水晶ウエハ10の一部がレジストマスク31、第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20bで保護されず露出されている状態で、水晶ウエハ10を所定のエッチング溶液に浸漬させるので、この露出されている水晶ウエハ10の一部がエッチングされる。このとき、水晶ウエハ10の各結晶軸によってエッチングされる速度が異なっている。
固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部、および、振動部111a側を向く固定部111bの辺と反対側を向く固定部111bの辺に沿った縁部に着目すると、水晶片形成工程前の状態では、水晶ウエハ10が露出されている。従って、水晶片形成工程において、所定のエッチング溶液に浸漬させることで、露出している水晶ウエハ10の両主面からエッチングを開始させ、水晶ウエハ10の上面から下面にかけて貫通する空間を形成することができる。ここで、この固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部、および、振動部111a側を向く固定部111bの辺と反対側を向く固定部111bの辺に沿った縁部に形成された空間を、水晶片形成用貫通穴12とする。
水晶片形成用貫通穴12を、固定部111b側を向く振動部111aの辺を除く振動部111aの三辺に沿った縁部に形成することで、水晶片111を固定部111bのX軸に平行な辺で、隣接する水晶片111または水晶ウエハ10に、連結させた状態で固定させることが可能となる。このため、振動部111a側を向く辺と反対側を向く固定部111bの辺の縁部において水晶ウエハ10と連結するように水晶ウエハ10に固定させる場合と比較して、水晶片111同士を連結させることが可能となり、一枚の水晶ウエハ10内に形成する水晶片111の数量を多くすることができ、生産性を向上させることが可能となる。
固定部111bとなる部分に着目すると、水晶ウエハ10の上面には第一耐食マスク21aおよび第一レジストマスク31aが形成され、水晶ウエハ10の下面には第二耐食マスク21bおよび第二レジストマスク31bが形成されている。このとき、水晶ウエハ10の下面を平面視すると、固定部111bとなる部分に形成されている第二レジストマスク31bは、略矩形形状となっており、振動部111a側を向く二隅が円弧形状となっている。従って、水晶片形成工程において、所定のエッチング溶液に浸漬させたとき、固定部111bとなる部分は、水晶ウエハ10の上面および下面のどちらからも、エッチングが開始されない。
振動部111aとなる部分に着目すると、水晶ウエハ10の上面には第一耐食マスク21aおよび第一レジストマスク31aが形成されており、水晶ウエハ10の下面では水晶ウエハ10の下面が露出している。従って、水晶片形成工程において、所定のエッチング溶液に浸漬させたとき、振動部111aとなる部分は、水晶ウエハ10の下面からのみエッチングが開始され、所定の時間、エッチング溶液に浸漬させることで、振動部111aとなる部分の上下方向の厚みを調整している。ここで、固定部111bの上下方向の厚み、つまり、水晶ウエハ10の上下方向の厚みが、振動部111aの上下方向の厚みより2倍以上にすることで、振動部111aの上下方向の厚みとなるまでエッチング溶液に浸漬させることにより、水晶片形成用貫通穴12を同時に形成することが可能となる。この結果、水晶片形成用貫通穴12と振動部111aとなる部分とを同時に形成することが可能となり、それぞれ別々に形成する場合と比較して、生産性を向上させることが可能となる。
緩衝部111cおよび緩衝部111cの下面に設けられている傾斜部111dとなる部分に着目すると、水晶ウエハ10の上面には第一耐食マスク21aおよび第一レジストマスク31aが形成されており、水晶ウエハ10の下面では水晶ウエハ10の下面が露出している。また、水晶ウエハ10の下面を平面視したとき、前述したように、固定部111bとなる部分には第二耐食マスク21bおよび第二レジストマスク31bが形成されており、振動部111aとなる部分は水晶ウエハ10が露出している。また、緩衝部111cおよび傾斜部111dとなる部分は、水晶ウエハ10が互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有しており、それぞれの結晶軸によってエッチングの進行速度が異なっていることを利用して、形成される。具体的には、水晶ウエハ10の主面をX軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心にX軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面、例えば、約37°回転させた面と平行にしつつ、振動部111aから固定部111bへ向かう向きがX軸の正の向きと同じになるようにすることで、水晶片形成工程では、水晶ウエハ10の下面側において、エッチングされない固定部111bとエッチングされる振動部111aとの間に、傾斜面を容易に形成することができ、平板状の緩衝部111cとこの緩衝部111cの下面に設けられ振動部111aから固定部111bにかけて徐々に上下方向の厚みが厚くなっている傾斜部111dとを形成することが可能となる。
また、緩衝部111cおよび傾斜部111dとなる部分は、前述しように、水晶片形成工程においてエッチング溶液に浸漬させたときに、結晶軸によってエッチング速度が異なることを利用して形成しているので、水晶ウエハ10の下面側において、固定部111bとなる部分に形成されている第二レジストマスク31bは、略矩形形状となっており、振動部111a側を向く二隅が円弧形状となっている場合には、エッチング溶液に浸漬させたときにできる傾斜面もこの固定部111bの形状とほぼ相似した形状となる。従って、固定部111bとなる部分に形成されている第二耐食マスク21bおよび第二レジストマスク31bの形状によって、傾斜部111dとなる部分が、振動部111a側に凸となるように振動部111a側を向く傾斜部111dの辺の両端が円弧形状にしつつ、固定部111b側に凹となるように固定部111b側を向く傾斜部111dの辺の両端が円弧形状にすることが容易にできる。また、緩衝部111cの下面に傾斜部111dが設けられていることから、緩衝部111cと傾斜部111dとは同形状となるので、緩衝部111cとなる部分を、振動部111a側に凸となるように振動部111a側を向く緩衝部111cの辺の両端が円弧形状にしつつ、固定部111b側に凹となるように固定部111b側を向く緩衝部111cの辺の両端が円弧形状にすることが容易にできる。
また、緩衝部111cおよび傾斜部111dとなる部分は、水晶片形成工程前では、水晶ウエハ10の上面を平面視すると、水晶ウエハ10の上面であって緩衝部111cとなる部分の一部に第一耐食膜20aおよび第一レジスト膜30aが形成されておらず水晶ウエハ10の上面が露出しつつ、水晶ウエハ10の下面を平面視すると、水晶ウエハ10の下面が露出した状態となっている。従って、水晶片形成工程において、所定のエッチング溶液に浸漬させることがで、水晶ウエハ10の上面および水晶ウエハ10の下面からエッチングが開始されることとなり、緩衝部111cから傾斜部111dにかけて貫通している空間を容易に形成することができる。ここで、この緩衝部111cから傾斜部111dにかけて貫通している空間を、貫通穴112とする。
固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に着目する。水晶片形成工程までは、水晶ウエハ10の上面を平面視すると、第一耐食マスク21aおよび第一レジストマスク31aが形成されており、水晶ウエハ10の下面を平面視すると、固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に沿って水晶ウエハ10の下面が露出している。従って、水晶片形成工程において、所定のエッチング溶液に浸漬させることで、水晶ウエハ10の下面からエッチングが開始されることとなり、固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に沿って溝を容易に形成することができる。ここで、この固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に沿って形成されている溝を、割断溝11とする。
割断溝11は、後述する個片化工程において、水晶片111の固定されている部分を折り取りまたは切断する部分に形成されており、少ない力で水晶片111を折り取りまたは切断するためのものである。また、割断溝11は、平面視して、X軸と平行な向きの長さが、固定部111bのX軸に平行な辺の長さ以下となっており、例えば、0.2〜2.0mmとなっている。また、割断溝11は、平面視して、平面視して、固定部111bのX軸に平行な辺に沿って設けられており、割断溝11の開口部のX軸と垂直な方向の長さが、隣接しあう振動部111a間の長さ以下となっており、例えば、30〜50μmとなっている。割断溝11は、上下方向の深さが固定部111bの上下方向の半分以上であって、固定部111bの下面と振動部111aの下面との長さ以下となっており、例えば、15〜50μmとなっている。また、割断溝11の上下方向の深さは、それぞれの結晶軸によってエッチングの進行速度が異なっていることを利用して、割断溝11のX軸に垂直な向きの長さを指定することで、割断溝11の上下方向の深さを決定することが可能である。
(剥離工程)
剥離工程は、エッチングされた水晶ウエハ10に残留している第一耐食膜20a、第二耐食膜20bおよびレジスト膜30を剥離させる工程である。剥離工程では、剥離工程では、まず、レジスト膜30を溶解することができる第一剥離液に浸漬させて、第一レジストマスク31aおよび第二レジストマスク31bを溶融させ、第一レジストマスク31aおよび第二レジストマスク31bを除去する。次に、第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20bを溶解することができる第二剥離液に浸漬させ、第一耐食マスク21aおよび第二耐食マスク21bを溶解させ、第一耐食マスク21aおよび第二耐食マスク21bを除去する。
(電極部形成工程)
電極部形成工程は、水晶片111の所定の位置に、所定の金属パターンの電極部113を形成する工程である。電極部形成工程では、例えば、蒸着技術またはスパッタリング技術を用いて電極部113を形成している。なお、ここで、電極部形成工程において、蒸着技術またはスパッタリング技術を用いて電極部113を形成する方法について説明しているが、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて電極部113を形成してもよい。電極部113は、例えば、積層構造となっており、水晶片111の表面上に、クロム、ニクロム、ニッケル、チタンのいずれか、または、いずれかを含む合金からなる下地金属層が形成された後、この下地金属層上に金、銀、不純物が添加されている金、または、不純物が添加されている銀からなる金属層が形成されている。ここで、下地金属層の上下方向の厚みは、10〜100Åとなっており、下地金属層上に積層される金属層の上下方向の厚みが100〜1000Åとなっている。なお、電極部113が積層されている場合について説明しているが、例えば、金、銀、不純物が添加されている金、または、不純物が添加されている銀が用いられた一層であってもよい。
電極部113(113a、113b)は、前述したように、励振電極部114(114a,114b)、引出部115(115a,115b)、および、配線部116(116a,116b)から構成されている。励振電極部114は、一対となっており、一方の励振電極部114aが振動部111aの上面に形成されており、他方の励振電極部114bが振動部111aの下面に形成されている。水晶ウエハ10の上面を平面視して、一方の励振電極部114aの中心部が振動部111aの上面の中心部とほぼ重なる位置に位置しており、水晶ウエハ10の下面を平面視して、他方の励振電極部114bの中心部が振動部111aの下面の中心部とほぼ重なる位置に位置している。引出部115は、一対となっており、固定部111bの下面に二つ並んで形成されている。配線部116は、一対となっており、励振電極部114と引出部115とを電気的に接続するように水晶片111の表面に形成されている。一方の配線部116aは、一端が一方の励振電極部114aに接続されつつ他端が一方の引出部116aに接続されるように、振動部111aの上面、貫通穴112の内壁面、および、固定部111bの下面に少なくとも形成されている。他方の配線部116bは、一端が他方の励振電極部114bに接続されつつ他端が他方の引出部116bに接続されるように、振動部111aの下面、傾斜部111dの傾斜面、および、固定部111bの下面に少なくとも形成されている。
また、電極部形成工程では、配線部116aの一部を貫通穴112の内壁面に形成している。従って、配線部116aによって、振動部111aの上面、つまり、水晶素子110の上面に形成されている一方の励振電極部114aと固定部111bの下面、つまり、水晶素子110の下面に形成されている一方の引出部115aとを電気的に接続させるとき、固定部111bの側面、または、振動部111aの側面に形成し電気的に接続させる必要がないので、隣接する水晶片111間の距離を固定部111bの側面、または、振動部111aの側面に配線部116aの一部を形成する場合と比較して短くすることができる。このため、隣接する水晶素子110間の長さを短くすることができると共に、1枚の水晶ウエハ10内の水晶素子110の取数を増やすことができ、生産性を向上させることが可能となる。
また、電極部形成工程では、振動部111aと固定部111bとの間であって傾斜部111dの面が傾斜しているので、緩衝部111cから傾斜部111dにかけて貫通している貫通穴112の内壁面に電極部113の一部、具体的には、配線部116を、蒸着技術またはスパッタリング技術により形成するときに、傾斜部111dがない場合と比較して、蒸着源またはスパッタターゲットから飛来する金属分子が振動部111aの影になることを低減させることが可能となる。
(個片化工程)
個片化工程は、水晶片111の固定されている部分を折り取り、または、切断し、水晶片111を個片化する工程である。個片化工程では、例えば、水晶ウエハ10の下面であって固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に沿って形成されている割断溝11内に、金属板等の固い板をX軸に平行な向きとなるようにし、割断溝11の開口部から割断溝11の底面に向かう向きに押しつけることで、割断溝11の底面に応力を加え、水晶片111の固定されている部分、つまり、固定部111bのX軸に平行な辺の縁部を容易に破損させることが可能となる。従って、個片化工程では割断溝11を利用することで、金属板等の固い板の位置を固定しつつ、水晶片111が連結されている部分が少ないので少ない応力で容易に個片化することができ、生産性を向上させることができる。
また、このとき、水晶ウエハ10の下面を平面視して、略矩形形状の固定部111bの四隅のうち振動部111a側を向く二隅が丸みを帯びているため、固定部が矩形形状の場合と比較して、固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に形成されている割断溝11に応力を集中させることができ、応力が分散することによる生じる固定部111bのX軸に平行な辺の縁部にばりの発生を低減させることが可能となる。この結果、水晶片111の固定部111bのばりを起点とした水晶片111の破損を低減させることができ、生産性を向上させることができる。ここで、ばりとは、水晶片111の一部が凸状にでた不規則な形状の突起のことである。
本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、水晶ウエハ10に第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20bを形成後、第一耐食膜20aおよび第二耐食膜20b上にレジスト膜30(30a,30b)を形成し、このレジスト膜30を露光、現像し、エッチングすることで水晶片111を形成している。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、従来の水晶素子の製造方法のように、ラップ棒を用いて振動部111aを研磨する必要がなくなる。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、ラップ棒による研磨で生じる振動部の破壊をなくすことができ、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、振動部111aから固定部111bへ向かう向きが水晶ウエハ10のX軸の正の向きと同じになるようにしつつ、水晶ウエハ10の上面を平面視して、水晶片111となる部分に第一耐食膜20aおよびレジスト膜30を残留させ、かつ、水晶ウエハ10の下面を平面視して、固定部111bとなる部分に第二耐食膜20bおよびレジスト膜30を残留させた状態の水晶ウエハ10を、所定のエッチング溶液に浸漬させてエッチングし水晶片111を形成している。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、結晶軸によってエッチング速度が異なることを利用し、固定部111bから振動部111aへ向かう向きをX軸の正の向きと同じにすることで、振動部111aと固定部111bとの間に平板状の緩衝部111cを形成しつつ、この緩衝部111cの下面に振動部111aから固定部111bにかけて上下方向の厚みが徐々に厚くなっている傾斜部111dを形成することが容易にできる。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、従来の製造方法で製造した水晶素子と比較して、固定部111bによる振動部111aの振動への影響を低減させ、クリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させた水晶素子110を製造することができ、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、水晶片形成工程において、水晶片形成用貫通穴12および貫通穴112となる部分を水晶ウエハ10の上面および下面からエッチングし、振動部111aとなる部分を水晶ウエハ10の下面からエッチングすることで、水晶片111を形成している。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、振動部111aの上下方向の厚みが水晶ウエハ10の上下方向の厚み(水晶ウエハ10の上下方向の厚み)の半分以下であれば、振動部111aを形成すると同時に水晶片形成用貫通穴12および貫通穴112を形成することが可能となり、それぞれ別々に形成する場合と比較して生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、現像工程において、水晶ウエハ10の上面を平面視して、水晶片111となる部分の緩衝部111cの一部にレジスト膜30を残留させず、耐食膜除去工程において、レジスト膜30が残留していない部分の第一耐食膜20aを除去し、緩衝部111cの一部の水晶ウエハ10を露出させ、水晶片形成工程において、緩衝部111cの一部を水晶ウエハ10の両主面側からエッチングし、緩衝部111cから傾斜部111dにかけて貫通している貫通穴112を形成している。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、容易にこの貫通穴112を形成することができ、かつ、振動部111aと緩衝部111cとが接している面積を貫通穴112によって小さくすること可能となる。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法で製造される水晶素子110は、貫通穴112を形成することで、振動部111aの振動が緩衝部111cにより阻害されることを、貫通穴112が形成されていない場合と比較して低減させることができ、クリスタルインピーダンス値が大きくなることをより低減させることが可能となる。この結果、本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、貫通穴112が形成されていない場合と比較してクリスタルインピーダンス値が大きくなることをより低減させることができるので、水晶素子110の歩留りを向上させることが可能となり、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、現像工程において、水晶ウエハ10の上面を平面視して、固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に沿ってレジスト膜30を除去し、耐食膜除去工程において、水晶ウエハ10の上面を平面視して、固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に沿って第一耐食膜20aを除去し、この固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に沿って水晶ウエハ10を露出させ、水晶片形成工程において、固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に沿って溝(割断溝11)を形成し、個片化工程において、この溝(割断溝11)の底面に応力を加えることで、水晶片111となる部分を個片化している。従って、本発明の実施形態に係る水晶素子の製造方法では、固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に沿って溝(割断溝11)を形成し、この溝(割断溝11)を利用することで、金属板等の固い板の位置を割断溝11内で固定した状態で応力を加えることができるので、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、個片化工程において、固定部111bのX軸に平行な辺の縁部に沿って形成されている割断溝11の底面に金属板等の固い板を押し当て応力を加えることで、水晶片111となる部分を個片化している。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、水晶片111となる部分が、水晶片111の固定部111bのX軸に平行な辺の縁部で隣接する水晶片111となる部分、または、水晶ウエハ10と連結された状態となっている。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、振動部111a側を向く辺と反対側を向く固定部111bの辺の縁部において水晶ウエハ10と連結するように水晶ウエハ10に固定させる場合と比較して、水晶片形成用貫通穴12を小さくすることができ、一枚の水晶ウエハ10内に形成する水晶片111の数量を多くすることができ、生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、個片化工程前の水晶ウエハ10の上面を平面視すると、矩形形状の固定部111bの四隅のうち振動部111a側を向く二隅が円弧形状となっているため、固定部111bが矩形形状の場合と比較して、固定部111bのX軸に平行な縁部に形成されている割断溝11に応力を集中させることができ、応力が分散することによる生じる固定部111bのX軸に平行な辺の縁部にばりの発生を低減させることが可能となる。従って、本実施形態に係る水晶素子110の製造方法は、水晶片111の固定部111bに生じたばりを起点とした水晶片111の破損を低減させることができ、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、緩衝部111cから傾斜部111dにかけて貫通するように形成されている貫通穴112の内壁面に配線部116aの一部を形成している。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、配線部116aによって、振動部111aの上面、つまり、水晶素子110の上面に形成されている一方の励振電極部114aと固定部111bの下面、つまり、水晶素子110の下面に形成されている一方の引出部115aとを電気的に接続させるとき、固定部111bの側面、または、振動部111aの側面に形成し電気的に接続させる必要がないので、隣接する水晶片111間の距離を固定部111bの側面、または、振動部111aの側面に配線部116aの一部を形成する場合と比較して短くすることができる。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、隣接する水晶素子110間の長さを短くすることができ、一枚の水晶ウエハ10内の水晶素子110の取数を増やすことができ、生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、振動部111aと固定部111bとの間であって傾斜部111dの面が傾斜しているので、電極部形成工程において、緩衝部111cから傾斜部111dにかけて貫通している貫通穴112の内壁面に電極部113の一部、具体的には、配線部116を、蒸着技術またはスパッタリング技術により形成するときに、傾斜部111dがない場合と比較して、蒸着源またはスパッタターゲットから飛来する金属分子が振動部111aの影になることを低減させることが可能となり、生産性を向上させることができる。