JP2016038283A - 時計用外装部品、時計用外装部品の製造方法および時計 - Google Patents

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【課題】所望の色調で美的外観に優れるとともに、製造時における材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい時計用外装部品を提供すること、材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい方法で、所望の色調で美的外観に優れる時計用外装部品を効率よく製造することができる時計用外装部品の製造方法を提供すること、また、所望の色調で美的外観に優れるとともに、製造時における材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい時計用外装部品を備えた時計を提供する。【解決手段】時計用外装部品は、基材P1と、系内で原料を気化させた後に気化物を凝縮させることにより形成した粒子P31をノズルから基材P1に向けて吹き付け粒子P31を堆積させることにより形成した被膜P3とを備え、被膜P3は、粒子P31の大きさを調整することにより、色調が調整される。【選択図】図1

Description

本発明は、時計用外装部品、時計用外装部品の製造方法および時計に関する。
時計には、実用品としての機能が求められるとともに、装飾品として優れた審美性(美的外観)が要求される。
このため、時計用外装部品には、各種金属材料等の優れた質感を有する材料が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
そして、さらなる審美性の向上のために、所定のパターンで装飾層(被膜)を設けることが行われている。
従来においては、所定のパターンで装飾層(被膜)を設けるためには、マスク(レジスト等)を配した状態で真空蒸着等の気相成膜を行ったり、基材の全面に成膜を行った後にエッチングで不要部分を除去する方法等が採用されたりしている。
しかしながら、これらの方法では、最終的な時計用外装部品に含まれる被膜の構成材料は、製造に用いる材料のごく一部であり、材料の無駄が多く、省資源の観点から好ましくなかった。
また、被膜形成用材料の回収、回収した材料のリサイクル、レジストの利用等に伴う工程増加や化学物質の使用が、環境負荷やコスト増大の問題を引き起こしていた。
また、従来においては、被膜の色調を調整することが困難であるという問題があった。
特開2008−150660号公報
本発明の目的は、所望の色調で美的外観に優れるとともに、製造時における材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい時計用外装部品を提供すること、材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい方法で、所望の色調で美的外観に優れる時計用外装部品を効率よく製造することができる時計用外装部品の製造方法を提供すること、また、所望の色調で美的外観に優れるとともに、製造時における材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい時計用外装部品を備えた時計を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の時計用外装部品は、基材と、
系内で原料を気化させた後に気化物を凝縮させることにより形成した粒子をノズルから前記基材に向けて吹き付け、前記粒子を堆積させることにより形成した被膜とを備え、
前記被膜は、前記粒子の大きさを調整することにより、色調が調整されたものであることを特徴とする。
これにより、所望の色調で美的外観に優れるとともに、製造時における材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい時計用外装部品を提供することができる。
本発明の時計用外装部品では、前記被膜は、前記粒子の平均粒径が異なる複数の領域を有しているものであることが好ましい。
これにより、例えば、同一の組成の材料で構成された被膜であっても、各部位で色調が異なるものとすることができ、時計用外装部品の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、被膜の形成に用いる原料の種類を少なくすることができ、時計用外装部品の生産性を優れたものとすることができるとともに、生産コストの低減にも有利である。また、例えば、時計用外装部品が破棄された場合のリサイクル等も好適に行うことができる。
本発明の時計用外装部品では、前記被膜は、前記粒子の平均粒径が10nm以上3000nm以下である領域を備えているものであることが好ましい。
これにより、粒子の構成材料が本来高い光沢感を有する金属材料で構成されたものであっても、高級感を残しつつ、黒みがかった光沢感が抑えられた落ち着きのある外観を効果的に得ることができる。また、被膜を緻密性が高く、不本意な凹凸の発生が効果的に防止されたものとすることができる。また、基材と被膜との密着性を特に優れたものとすることができ、時計用外装部品の耐久性を特に優れたものとすることができる。また、被膜の形成効率が特に優れたものとなり、時計用外装部品の生産性を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用外装部品では、前記被膜は、前記粒子の平均粒径が10nm以上3000nm以下である第1の領域に加え、前記粒子の平均粒径が0.2nm以上60nm以下である第2の領域を備えており、前記第1の領域を構成する前記粒子の平均粒径が、前記第2の領域を構成する前記粒子の平均粒径よりも大きいものであることが好ましい。
これにより、同一の組成を有する材料で構成された被膜において、色調が特に大きく異なる複数の領域、特に、高級感を残しつつ、黒みがかった光沢感が抑えられた落ち着きのある外観を呈する領域と、粒子の構成材料が本来有している光沢感が効果的に発揮された領域とを共存させることができ、時計用外装部品の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、このように、色調が大きく異なる部位を有することにより、デザイン性の幅をより広いものとすることができる。また、被膜を緻密性が高く、不本意な凹凸の発生が効果的に防止されたものとすることができる。また、基材と被膜との密着性を特に優れたものとすることができ、時計用外装部品の耐久性を特に優れたものとすることができる。また、被膜の形成効率が特に優れたものとなり、時計用外装部品の生産性を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用外装部品では、前記原料は、金属材料であることが好ましい。
これにより、色調(光沢感を含む)の調整の幅が広がり、時計用外装部品で表現することのできる色範囲を特に広いものとすることができる。また、色調の調整をしつつも、金属材料が本来有している高級感を時計用外装部品において、発揮することができる。このようなことから、時計用外装部品の美的外観を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用外装部品では、前記被膜の厚さは、0.1μm以上300μm以下であることが好ましい。
これにより、時計用外装部品の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、時計用外装部品の耐久性を特に優れたものとすることができる。また、時計用外装部品の生産性を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用外装部品は、カバーガラスであることが好ましい。
これにより、時計全体としての美的外観を特に優れたものとすることができる。また、被膜が浮き上がったような立体感のある外観を得ることができ、時計全体としてのデザイン性、高級感のさらなる向上を図ることができる。
本発明の時計用外装部品は、前記基材の観察者の視点とは反対の面側に、前記被膜が設けられていることが好ましい。
これにより、時計の耐久性を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって、安定的に優れた美的外観を発揮することができる。
本発明の時計用外装部品の製造方法は、被膜を形成すべき基材を準備する基材準備工程と、
系内で原料を気化させた後に気化物を凝縮させることにより形成した粒子をノズルから前記基材に向けて吹き付け、前記粒子を堆積させることにより被膜を形成する被膜形成工程とを有し、
前記被膜形成工程で形成する前記粒子の大きさを調整することにより、前記被膜を色調が調整されたものとして形成することを特徴とする。
これにより、材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい方法で、所望の色調で美的外観に優れる時計用外装部品を効率よく製造することができる時計用外装部品の製造方法を提供することができる。
本発明の時計は、本発明の時計用外装部品を備えたことを特徴とする。
これにより、所望の色調で美的外観に優れるとともに、製造時における材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい時計用外装部品を備えた時計を提供することができる。
本発明の時計は、本発明の時計用外装部品の製造方法を用いて製造された時計用外装部品を備えたことを特徴とする。
これにより、所望の色調で美的外観に優れるとともに、製造時における材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい時計用外装部品を備えた時計を提供することができる。
本発明の時計用外装部品の好適な実施形態を示す模式的な断面図である。 本発明の時計用外装部品をカバーガラスに適用した場合の好適な実施形態を示す模式的な平面図である。 本発明の時計用外装部品の製造方法の好適な実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。 被膜の形成に用いられる被膜形成装置の好適な実施形態を示す縦断面側面図である。 図4に示す被膜形成装置の主要部のブロック図である。 本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す断面図である。
以下、本発明の時計用外装部品、時計用外装部品の製造方法および時計を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<<時計用外装部品>>
まず、本発明の時計用外装部品について説明する。
本発明において、時計用外装部品とは、時計の構成部品であり、時計の使用時において、外部から視認可能な部品のことをいい、時計の外部に露出して用いられるもののほか、時計の内部に収納した部品も含む概念である。
時計用外装部品としては、例えば、カバーガラス(風防ガラス)、文字板、針(時針、分針、秒針等)、ベゼル、ケース、裏蓋、りゅうず、円盤針、日車、曜車、月齢板等の回転表示体等が挙げられる。
図1は、本発明の時計用外装部品の好適な実施形態を示す模式的な断面図、図2は、本発明の時計用外装部品をカバーガラスに適用した場合の好適な実施形態を示す模式的な平面図である。
図1に示すように、時計用外装部品P10は、基材P1と、下地層P2と、被膜P3と、保護膜P4とを備えている。
<基材>
基材P1は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、透明性を有するものであるのが好ましい。
これにより、例えば、時計用外装部品P10の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、例えば、時計用外装部品P10全体としての光の透過性を優れたものとすることができるため、時計用外装部品P10をソーラー時計(太陽電池を備えた時計)に好適に適用することができる。
また、例えば、時計用外装部品P10を備えた時計において、時計用外装部品P10の被膜P3が設けられた面とは反対側の面が外表面側(観察者側、視点側)を向くように配置した場合であっても、使用者等が被膜P3を好適に視認することができ、被膜P3を備えることによる効果を効果的に発揮させつつ、被膜P3等が摩擦等により損傷することをより確実に防止することができ、時計用外装部品P10、時計用外装部品P10を備えた時計の耐久性を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって、安定的に優れた美的外観を発揮することができる。
なお、本明細書において、「時計用外装部品P10の美的外観」とは、時計用外装部品P10を単独で観察した際の美的外観に加え、時計用外装部品P10が時計に組み込まれた状態での当該部位についての美的外観も含むものである。
基材P1の光の透過率(波長:600nmの光の透過率)は、特に限定されないが、85%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。
基材P1の好適な構成材料としては、例えば、サファイアガラス、石英、プラスチック等が挙げられる。
基材P1を構成するプラスチック材料としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン(COP)、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)、ポリモノクロロパラキシリレン(poly-monochloro-para-xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly-dichloro-para-xylylene)、ポリモノフルオロパラキシリレン(poly-monofluoro-para-xylylene)、ポリモノエチルパラキシリレン(poly-monoethyl-para-xylylene)等のポリパラキシリレン樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。
基材P1は、上記のような材料の中でも特に、環状ポリオレフィン(COP)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)から選択される少なくとも1種を含む材料で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、時計用外装部品P10全体としての強度を特に優れたものとすることができる。また、時計用外装部品P10の製造時においては、基材P1の成形の自由度が増す(成形のし易さが向上する)ため、より複雑な形状の時計用外装部品P10であっても、容易かつ確実に製造することができる。特に、環状ポリオレフィン(COP)を用いた場合、基材P1の成形性、基材P1と被膜P3との密着性等を、いずれもより高いレベルで優れたものとすることができる。また、ポリカーボネートは、各種プラスチック材料の中でも比較的安価で、時計用外装部品P10の生産コストのさらなる低減に寄与することができる。また、ABS樹脂は、特に優れた耐薬品性も有しており、時計用外装部品P10全体としての耐久性をさらに向上させることができる。
なお、基材P1は、前記以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、着色剤(各種発色剤、蛍光物質、りん光物質等を含む)、光沢剤、フィラー等が挙げられる。
また、基材P1は、各部位でその組成が実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、部位によって組成の異なるものであってもよい。例えば、基材P1は、基部と、該基部上に設けられた表面層を有するものであってもよい。また、傾斜的に組成が変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
また、基材P1の形状、大きさは、特に限定されず、通常、時計用外装部品P10の形状、大きさに基づいて決定される。
また、基材P1は、いかなる方法で成形されたものであってもよいが、基材P1の成形方法としては、例えば、圧縮成形、押出成形、射出成形、光造形等が挙げられる。
<被膜>
被膜P3は、系内で原料を気化させた後に気化物を凝縮させることにより形成した粒子P31をノズルから吹き付け、粒子P31を堆積させることにより形成したものである。
このような方法では、後に詳述するように、所望の部位に選択的に被膜P3を形成することができ、材料の無駄の発生を効果的に防止することができるという特徴を有している。また、マスク形成等の前処理、不要な成膜部分の除去等の後処理を、省略または簡略化することができる。また、優れた質感を有する被膜P3を形成することができる。したがって、美的外観に優れ、製造時における材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい時計用外装部品P10を提供することができる。
また、上記の方法では、所望のパターンの被膜P3を容易かつ確実に形成することができる。このため、例えば、デザイン性の高い複雑な形状の被膜、微細な形状を有する被膜であっても好適に形成することができる。また、時字等の指標として機能する被膜P3も好適に形成することができる。また、比較的厚い被膜P3であっても好適に形成することができるため、立体感に溢れた表現が可能となり、時計用外装部品P10全体、時計用外装部品P10を備えた時計全体としての審美性、高級感を特に優れたものとすることができる。特に、被膜P3の一部を時字等の指標として機能させる場合に、このような効果は顕著に発揮される。
また、上記の方法では、所定の形状のマスク(型)等を用いる必要がなく、オンデマンド性に優れているため、多品種、多品目の時計用外装部品P10の製造に好適に対応することができる。また、被膜P3として、例えば、シリアルナンバー等の各個体に固有のパターンを好適に設けることができる。
また、上記の方法では、揮発性溶媒等を用いる必要がないので、時計用外装部品P10が時計に組み込まれた状態で、揮発性成分(揮発性有機化合物)が揮発することによる問題(ムーブメントの故障、不具合の発生、カバーガラス等の曇り等)の発生を効果的に防止することができる。
また、被膜P3が、系内で原料を気化させた後に気化物を凝縮させることにより形成した粒子P31をノズルから吹き付け、粒子P31を堆積させることにより形成されたものであることにより、被膜P3の厚さが比較的薄い場合であっても、被膜P3の質感、美的外観を十分に優れたものとすることができる。
また、前記のように、被膜P3は、系内で原料を気化させた後に気化物を凝縮させることにより形成した粒子P31をノズルから吹き付け、粒子P31を堆積させることにより形成されたものであるが、以下の条件を満足するものである。すなわち、被膜P3は、粒子P31の形成条件を制御して粒子P31の大きさを調整することによって、色調が調整されたものである。
これにより、被膜P3の構成材料が本来有している色調(例えば、Auなら光沢感のある金色、Agなら光沢感のある銀色等)とは異なる色調も表現することができる。例えば、本来高い光沢感を有する金属材料で構成された被膜P3であっても、粒子P31を所定の大きさのものとすることにより、黒みがかった光沢感が抑えられた落ち着きのある外観が得られる。したがって、所望の色調で美的外観に優れる時計用外装部品P10を提供することができる。
また、例えば、被膜P3を、粒子P31の平均粒径が異なる複数の領域を有するものとすることにより、同一の組成の材料で構成された被膜P3であっても、各部位で色調が異なるものとすることができ、時計用外装部品P10の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、被膜P3の形成に用いる原料の種類を少なくすることができ、時計用外装部品P10の生産性を優れたものとすることができるとともに、生産コストの低減にも有利である。また、例えば、時計用外装部品P10が破棄された場合のリサイクル等も好適に行うことができる。
粒子P31の大きさの調整は、粒子P31の形成条件を調整することにより行うことができるが、より具体的には、例えば、原料を気化させる際の加熱温度、原料を気化させる際の系内の圧力、気化物の冷却温度、気化物の冷却速度、原料の気化物の搬送に用いるキャリアガスの種類・温度・流量(流速)等を調整することにより、好適に行うことができる。
図示の構成では、被膜P3は、構成する粒子P31の大きさが異なる複数の領域として、第1の領域P3Aと、第2の領域P3Bとを有している。具体的には、所定の平均粒径の粒子P31で構成された第1の領域P3Aと、第1の領域P3Aを構成する粒子よりも平均粒径が小さい粒子P31で構成された第2の領域P3Bとを有している。
これにより、同一の組成を有する材料で構成された被膜P3において、色調が特に大きく異なる複数の領域、特に、高級感を残しつつ、黒みがかった光沢感が抑えられた落ち着きのある外観を呈する領域(第1の領域P3A)と、粒子の構成材料が本来有している光沢感が効果的に発揮された領域(第2の領域P3B)とを共存させることができ、時計用外装部品P10の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、このように、色調が大きく異なる部位を有することにより、デザイン性の幅をより広いものとすることができる。また、被膜P3を緻密性が高く、不本意な凹凸の発生が効果的に防止されたものとすることができる。また、基材P1と被膜P3との密着性を特に優れたものとすることができ、時計用外装部品P10の耐久性を特に優れたものとすることができる。また、被膜P3の形成効率が特に優れたものとなり、時計用外装部品P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
第1の領域P3Aを構成する粒子P31の平均粒径は、粒子P31の組成にもよるが、10nm以上3000nm以下であるのが好ましく、30nm以上1500nm以下であるのがより好ましく、50nm以上1000nm以下であるのがさらに好ましい。
このような領域(第1の領域P3A)を備えることにより、粒子P31の構成材料が本来高い光沢感を有する金属材料(例えば、Au、Ag、Pt等)で構成されたものであっても、高級感を残しつつ、黒みがかった光沢感が抑えられた落ち着きのある外観を効果的に得ることができる。
また、被膜P3を緻密性が高く、不本意な凹凸の発生が効果的に防止されたものとすることができる。また、基材P1と被膜P3との密着性(下地層P2を介した密着性)を特に優れたものとすることができ、時計用外装部品P10の耐久性を特に優れたものとすることができる。また、被膜P3の形成効率が特に優れたものとなり、時計用外装部品P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
なお、本明細書では、「平均粒径」とは、質量基準の平均粒径のことを指すものとする。この平均粒径は、例えば、粒子を含むエアロゾルのモビリティーを測定し、エアロダイナミック径を求めることにより得ることができる。粒径の測定には、例えば、TSI社製微分型静電分級器等を用いることができる。なお、平均粒径は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡の測定結果から求めてもよい。
第2の領域P3Bを構成する粒子P31の平均粒径は、粒子P31の組成にもよるが、0.2nm以上60nm以下であるのが好ましく、0.5nm以上40nm以下であるのがより好ましく、1.0nm以上30nm以下であるのがさらに好ましい。
このような領域(第2の領域P3B)を備えることにより、粒子P31の構成材料が本来有している光沢感をより効果的に発揮させることができる。
特に、前述したような平均粒径の粒子P31で構成された第1の領域P3Aとともに、前述したような平均粒径の粒子P31で構成された第2の領域P3Bを有することにより、同一の組成を有する材料で構成された被膜P3において、色調が特に大きく異なる複数の領域を共存させることができ、時計用外装部品P10の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、このように、色調が大きく異なる部位を有することにより、デザイン性の幅をより広いものとすることができる。
また、被膜P3を緻密性が高く、不本意な凹凸の発生が効果的に防止されたものとすることができる。また、基材P1と被膜P3との密着性(下地層P2を介した密着性)を特に優れたものとすることができ、時計用外装部品P10の耐久性を特に優れたものとすることができる。また、被膜P3の形成効率が特に優れたものとなり、時計用外装部品P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
前記原料は、いかなるものであってもよいが、金属材料であるのが好ましい。
これにより、色調(光沢感を含む)の調整の幅が広がり、時計用外装部品P10で表現することのできる色範囲を特に広いものとすることができる。また、色調の調整をしつつも、金属材料が本来有している高級感を時計用外装部品P10において、発揮することができる。このようなことから、時計用外装部品P10の美的外観を特に優れたものとすることができる。
金属材料としては、例えば、Au、Pt、Ag、Pd、Rh、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Fe、Mn、V、Cu、Zn、Nb、Zr、Mo、Y、Eu、Sr、Si、Ga、Ge、Sb、W、Ir、Ru、In等や、これらのうち1種または2種以上を含む合金等が挙げられる。
中でも、前記原料は、Auを含むものであるのが好ましい。
Auは、本来優れた光沢感を有しており、優れた外観を有するものであるが、粒子P31の大きさを調整した際の色調の変化が大きいものであり、粒子P31の大きさを調整することによる色調の調整の効果がより顕著に発揮されるものである。また、Auは、粒子P31の大きさを調整することにより、光沢感を低下させた場合であっても、特に優れた外観を好適に保持することができる。このようなことから、時計用外装部品P10の美的外観を特に優れたものとすることができる。
被膜P3は、基材P1の全面に設けられたものであってもよいが、基材P1の一部を被覆するように設けられたものであるのが好ましい。これにより、前述したような本発明の効果がより顕著に発揮される。
被膜P3の平均厚さは、0.1μm以上300μm以下であるのが好ましく、0.05μm以上160μm以下であるのがより好ましく、0.10μm以上70μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、時計用外装部品P10の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、時計用外装部品P10の耐久性を特に優れたものとすることができる。また、時計用外装部品P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
<下地層>
図示の構成では、基材P1と被膜P3との間に、下地層P2が設けられている。
これにより、例えば、基材P1と被膜P3との密着性(下地層P2を介した密着性)を特に優れたものとすることができる。また、例えば、下地層P2を着色層として機能させることにより、時計用外装部品P10の美的外観のさらなる向上を図ることもできる。また、下地層P2をギャップ層として機能させることにより、被膜P3が浮き上がったような立体感のある外観を得ることができる。また、下地層P2を反射防止膜として機能させることにより、不本意な光の反射を防止することができ、時計用外装部品P10の美的外観のさらなる向上を図ることができる。また、下地層P2が反射防止膜として機能するものである場合において、時計用外装部品P10をカバーガラスに適用する場合、時刻等の視認性を特に優れたものとすることができ、時計の装飾品としての美的外観向上のみならず、実用品としての実用性も特に優れたものとすることができる。
下地層P2の平均厚さは、0.01μm以上10μm以下であるのが好ましい。
これにより、下地層P2は、前述したような機能をより効果的に発揮することができる。
下地層P2は、いかなる材料で構成されたものであってもよく、下地層P2の構成材料としては、例えば、TiN、AlN、SiN、GaN、SiO、SiON、MgF、ZrO、Al、TiO、SiO等が挙げられるが、下地層P2は、TiN、AlN、SiN、MgF、ZrO、Al、TiOおよびSiOよりなる群から選択される1種または2種以上を含む材料で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、基材P1と被膜P3との密着性(下地層P2を介した密着性)、特に、被膜P3が金属材料や金属酸化物、金属窒化物を含む材料で構成されたものである場合の密着性を特に優れたものとすることができる。また、TiN、AlNおよびSiNは、前述したような厚さで、高い透明性を有する材料であるため、時計用外装部品P10全体としての外観、光透過性に悪影響を及ぼすことをより効果的に防止することができる。
なお、図示の構成では、基材P1の被膜P3が設けられた側の面全体に下地層P2が設けられているが、例えば、下地層P2は、被膜P3と接触する部位のみに選択的に設けられたものであってもよい。また、下地層P2は、被膜P3が設けられた部位の一部のみに設けられたものであってもよい。
また、図示の構成では、1層の下地層P2を備えているが、本発明の時計用外装部品は、2層以上の下地層を備えるものであってもよい。
下地層P2は、各部位で均一な組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、厚さ方向に組成の異なる層が積層された積層体や、傾斜的に組成が変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
<保護膜>
図示の構成では、被膜P3の基材P1に対向する面とは反対の面側に、保護膜P4が設けられている。
これにより、被膜P3を構成する粒子P31の不本意の変性、劣化を効果的に防止することができる。その結果、時計用外装部品P10は、より長期間にわたって安定的に優れた美的外観を保持することができる。また、時計用外装部品P10は、より長期間にわたって安定した特性(例えば、光の透過性等)を発揮することができる。
保護膜P4としては、被膜P3を被覆するものであり、被膜P3を保護する機能を有するものであればよいが、例えば、反射防止膜を保護膜P4として用いてもよい。
これにより、前述したような保護膜としての機能が発揮されるとともに、外光の不本意な映り込みを効果的に防止することができ、時計用外装部品P10の美的外観を特に優れたものとすることができる。
保護膜P4の厚さは、特に限定されないが、0.2μm以上10μm以下であるのが好ましく、0.3μm以上7μm以下であるのがより好ましい。
これにより、時計用外装部品P10が大型化、厚型化するのを効果的に防止しつつ、前述したような機能をより効果的に発揮することができる。
なお、図示の構成では、基材P1の被膜P3が設けられた側の面全体に保護膜P4が設けられているが、例えば、保護膜P4は、基材P1の被膜P3が設けられた側の面の一部のみに選択的に設けられたものであってもよい。
図2に示す構成では、本発明の時計用外装部品が、カバーガラス(風防ガラス)に適用されており、被膜P3として所定の形状の模様(ロゴタイプ、商標)を有している。
カバーガラスは、時計の使用時において、観察者(使用者等)の視点に近い部位に存在するものであり、また、カバーガラスの背面側には、通常、文字板、針等の時刻表示部材が配されるため、観察者(使用者等)が視認する機会が多く、時計全体の外観において、大きな影響を与える部品である。
したがって、本発明の時計用外装部品がカバーガラス(風防ガラス)に適用されることにより、時計全体としての美的外観を向上させる効果がより顕著に発揮される。
また、本発明をカバーガラスに適用することにより、文字板、針等よりも観察者側に、被膜P3を配置することができる。これにより、被膜P3が浮き上がったような立体感のある外観を得ることができ、時計全体としてのデザイン性、高級感のさらなる向上を図ることができる。
また、針等の位置にかかわらず、被膜P3の視認性が優れたものとなるため、時計の使用者以外の者(他者)も容易にロゴタイプ(商標)を認識することができ、ブランドイメージの向上、宣伝効果も得られる。
また、カバーガラスにおいては、カバーガラス本体(基材)の背面側(観察者の視点とは反対側の面)に、被膜P3が設けられているのが好ましい。
これにより、被膜P3等が摩擦等により損傷することをより確実に防止することができ、本発明が適用されたカバーガラス(時計用外装部品)を備えた時計の耐久性を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって、安定的に優れた美的外観を発揮することができる。
また、文字板は、各種時計用外装部品の中でも特に、使用者等に観察されやすい部位であり、時計全体としての外観に特に大きな影響を与えるものである。
したがって、本発明が文字板(時計用文字板)に適用された場合に、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、被膜P3が、複数個の粒子P31が堆積することにより形成されたものであることにより、例えば、基材P1上の被膜P3が設けられていない領域だけでなく、被膜P3が設けられた領域においても光を透過することができるものとすることができる。これは、以下のような理由による。すなわち、複数個の粒子P31が堆積している構成であることにより、隣り合う粒子P31の間には隙間(空隙)が存在することとなる。そして、被膜P3に入射した光の一部は、粒子P31の隙間に入り込み、反射を繰り返すことにより、入射面とは反対側の面に出射する。
また、上記のような被膜P3は、厚さが比較的薄い場合であっても、被膜P3の質感、美的外観を十分に優れたものとすることができる。このため、被膜P3の実体部を(反射ではなく)透過する光の割合を多くしつつ、被膜P3の質感、美的外観を十分に優れたものとすることができる。
以上のようなことから、本発明の時計用外装部品を文字板に適用した場合、美的外観に優れ、かつ、光透過性にも優れたものとすることができる。したがって、本発明の時計用外装部品としての文字板(時計用文字板)は、ソーラー時計(太陽電池を備えた時計)に好適に適用することができる。
また、上記と同様の理由から、電波の透過性も優れたものとすることができるため、電波時計(GPS時計を含む)にも好適に適用することができる。
<<時計用外装部品の製造方法>>
次に、本発明の時計用外装部品の製造方法について説明する。
図3は、本発明の時計用外装部品の製造方法の好適な実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、本実施形態の製造方法は、基材P1を準備する基材準備工程(1a)と、基材P1の表面に下地層P2を形成する下地層形成工程(1b)と、下地層の表面に被膜P3を形成する被膜形成工程(1c)と、基材P1の被膜P3が設けられた面側に保護膜P4を形成する保護膜形成工程(1d)とを有している。
<基材準備工程>
基材準備工程では、前述したような基材P1を準備する(1a)。
本工程で用意する基材P1は、水洗、アルカリ洗、酸洗、有機溶媒による洗浄等の清浄化処理が施されたものであってもよい。
また、基材P1上に形成される層との密着性向上等を目的として表面処理が施されたものであってもよい。
<下地層形成工程>
次に、基材P1の表面に下地層P2を形成する(1b)。
本工程で形成する下地層P2としては、前述したような条件を満足するものであるのが好ましい。
下地層P2は、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、化学蒸着法(CVD)等の気相成膜法(乾式めっき法)、湿式めっき法、ディッピング等により形成することができる。
また、下地層P2の形成方法としては、例えば、下地層P2の構成材料で構成された粒子が気体中に分散してなるエアロゾルをノズルから、基材P1に向けて吹き付けて、その衝撃力によって下地層P2を形成する方法を採用してもよい。これにより、所望の部位に選択的かつ効率よく下地層P2を形成することができる。
また、下地層P2の形成方法としては、例えば、被膜P3と同様の形成方法を採用してもよい。これにより、所望の部位に選択的かつ効率よく下地層P2を形成することができる。
<被膜形成工程>
次に、下地層P2の表面の一部に、被膜P3を形成する(1c)。
被膜P3の形成は、系内で原料を気化させた後に気化物を凝縮させることにより形成した粒子P31をノズルから基材P1(下地層P2が設けられた基材P1)に向けて吹き付け、粒子P31を堆積(付着)させることにより行う。
特に、本工程は、粒子P31の大きさを調整することにより、形成される被膜P3の色調を調整するように行う。
これにより、被膜P3の構成材料が本来有している色調(例えば、Auなら光沢感のある金色、Agなら光沢感のある銀色等)とは異なる色調も表現することができる。例えば、本来高い光沢感を有する金属材料で構成された被膜P3であっても、粒子P31を所定の大きさのものとすることにより、黒みがかった光沢感が抑えられた落ち着きのある外観が得られる。したがって、所望の色調で美的外観に優れる時計用外装部品P10を提供することができる。
また、被膜P3を、粒子P31の平均粒径が異なる複数の領域(第1の領域P3Aおよび第2の領域P3B)を有するものとすることにより、同一の組成の材料で構成された被膜P3であっても、各部位で色調が異なるものとすることができ、時計用外装部品P10の美的外観を特に優れたものとすることができる。
また、系内での粒子P31の形成条件(系内で原料を気化させて凝縮させて粒子P31を形成する際の条件)を調整することによって粒子P31の大きさを調整することにより、幅広い範囲にわたって、粒子P31の大きさを好適に調整することができるとともに、異なる大きさの複数種の粒子P31を好適に形成することができる。また、被膜P3の条件が異なる種々の時計用外装部品P10の製造にも好適に対応することができる。
なお、例えば、予め、所定の大きさに調整された粒子状の原料を用いて、これをエアロゾルとして噴射する方法を用いて、上記のような効果を得ようとした場合、以下のような問題を生じる。すなわち、粒子の大きさの異なる複数種の原料を予め要しておく必要があるため、装置の大型化を招く。また、形成すべき被膜の構成ごとに、予め用意する原料中に含まれる粒子の大きさを異なるものとしなければならず、多種の原料が必要となる。また、使い切らなかった原料は無駄となるため、本発明の課題を解決することができない。また、原料の組成や原料を構成する粒子の大きさ(特に、小粒径の粒子の場合)等によっては、保存時等に粒子の凝集が起こりやすく、所望の色調を確実に得ることが困難である。
粒子P31の大きさの調整は、例えば、原料を気化させる際の加熱温度、原料を気化させる際の系内の圧力、気化物の冷却温度、気化物の冷却速度、原料の気化物の搬送に用いるキャリアガスの種類・温度・流量(流速)等の各種条件を調整することにより、好適に行うことができる。
例えば、キャリアガスとしては、第1の領域P3Aを形成する際には、第2の領域P3Bを形成するときよりも、分子量が大きいものを用いるのが好ましい。例えば、第1の領域P3Aを形成する際のキャリアガスとしては、Ne、Ar等を好適に用いることができ、第2の領域P3Bを形成する際のキャリアガスとしては、He等を好適に用いることができる。
また、本工程では、形成される被膜P3が、前記原料とは異なる組成になるように、原料の気化から粒子P31の衝突付着までの間に、原料が関与する化学反応を行ってもよい。
これにより、前述したような粒子P31の調整による色調の調整とともに、化学反応に伴う組成の変化による色調の調整も行うことができ、表現することのできる色範囲がより広いものとなり、より好適に所望の色調を得ることができる。
前記化学反応は、原料の組成を変更するものであればいかなるものであってもよいが、例えば、炭化反応、還元反応、酸化反応、窒化反応、硫化反応等が挙げられる。中でも、前記化学反応としては、酸化反応、窒化反応および硫化反応よりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
これらの金属化合物(金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物)は、一般に、落ち着きのある高級感に溢れた外観を呈するものである。また、これらの金属化合物(金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物)は、一般に、対応する金属材料との色調の違いが大きいものである。したがって、時計用外装部品の美的外観を特に優れたものとすることができる。
また、特殊な試薬(ガス等)を用いなくても、確実に所望の化学反応を好適に進行させることができるため、時計用外装部品の生産性を優れたものとすることができ、時計用外装部品の生産コストの低減の観点からも有利である。
また、これらの化学反応は、反応の制御が容易であるため、容易かつ確実に、所望の割合(反応量)で化学反応を進行させることができる。したがって、所望の物性(色調を含む)の被膜をより好適に形成することができる。また、グラデーションのある外観の被膜等も好適に形成することができる。
また、これらの化学反応では、形成される被膜の表面に不本意な凹凸が発生しにくい。したがって、美的外観に優れた時計用外装部品をより好適に製造することができる。
なお、原料として金属材料を用い、金属酸化物を含む材料で構成された被膜P3を形成する場合には、反応性ガスとして酸素等の酸化性ガスを好適に用いることができる。
また、原料として金属材料を用い、金属硫化物を含む材料で構成された被膜P3を形成する場合には、反応性ガスとして硫化水素等の硫化性ガスを好適に用いることができる。
また、原料として金属材料を用い、金属窒化物を含む材料で構成された被膜P3を形成する場合には、反応性ガスとしてアンモニア等の窒化性ガスを好適に用いることができる。
また、原料として金属材料を用い、金属炭化物を含む材料で構成された被膜P3を形成する場合には、反応性ガスとしてアセチレン等の炭化性ガス(炭素含有率の高いガス)を好適に用いることができる。
本工程では、例えば、原料として金属酸化物を用い、金属材料を含む材料で構成された被膜P3を形成することができる。
なお、原料として金属酸化物を用い、金属材料を含む材料で構成された被膜P3を形成する場合には、反応性ガスとして水素等の還元性ガスを好適に用いることができる。
本工程で用いる被膜形成装置については、後に詳述する。
<保護膜形成工程>
次に、基材P1の被膜P3が設けられた面側に保護膜P4を形成する(1d)。
本工程で形成する保護膜P4としては、前述したような条件を満足するものであるのが好ましい。
保護膜P4は、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、化学蒸着法(CVD)等の気相成膜法(乾式めっき法)、湿式めっき法、ディッピング等により形成することができる。
<被膜形成装置>
次に、被膜P3の形成に用いる被膜形成装置について説明する。
図4は、被膜の形成に用いられる被膜形成装置の好適な実施形態を示す縦断面側面図、図5は、図4に示す被膜形成装置の主要部のブロック図である。なお、以下では、説明の便宜上、図4において、互いに直交する3つの軸として、x軸、y軸およびz軸を図示している。x軸は、水平方向のうちの一方向に沿った軸であり、y軸は、水平方向であって前記x軸に対し垂直な方向に沿った軸であり、z軸は、鉛直方向(上下方向)に沿った軸である。また、図示した各矢印の先端側を「正側(+側)」、基端側を「負側(−側)」とする。また、図4中の上側を「上(上方)」と言い、下側を「下(下方)」と言う。また、図4においては、基材P1上に設けられた下地層P2の図示を省略している。
図4、図5に示すように、被膜形成装置1は、第1のチャンバー(蒸気発生室)15と、第2のチャンバー(成膜室)16と、連結管2と、ガス供給手段3(3A、3B、3C、3D、3E)と、加熱手段4と、圧力調整手段5と、移動手段6と、制御部7とを備えている。
第1のチャンバー15は、気密性を維持することができるよう構成され、その内部に被膜P3の形成に用いる固体の母材(原料)P3’を収納することができる。
第2のチャンバー16は、第1のチャンバー15と独立して設けられている。この第2のチャンバー16も、気密性を維持することができるよう構成され、その内部に複数の基材P1を収納することができる。
なお、第1のチャンバー15、第2のチャンバー16内の室温は、例えば、水冷により、すなわち、配管を通過する冷媒により、調整可能に構成されている。第1のチャンバー15、第2のチャンバー16内の温度は、例えば、20℃以上90℃以下に調整することができる。
連結管2は、第1のチャンバー15と第2のチャンバー16とを連結するものであり、その内腔部22が、第2のチャンバー16で気化した母材P3’が通過する流路として機能する。
連結管2は、その一端に開口した第1の開口部(一端開口部)25が第1のチャンバー15内に臨んでおり、他端に開口した第2の開口部(他端開口部)21が第2のチャンバー16内に臨んでいる。これにより、第1のチャンバー15と第2のチャンバー16とは、連結管2を介して、連通する。
図4に示すように、第1の開口部25は、第1のチャンバー15内の加熱手段4が有する容器(るつぼ)43にその上側から対向しているのが好ましい。これにより、前記気化した母材P3’が第1の開口部25に向かって迅速に流入することができる。
また、第2の開口部21は、第2のチャンバー16に収納された基材P1の面方向に対して平行に配されている。そして、前記気化した母材P3’は、連結管2(内腔部22)を通過する過程で粒子P31となり、当該粒子が第2の開口部21から基材P1に吹き付けられる。これにより、被膜P3が基材P1上(特に、本実施形態では、下地層P2の表面)に形成される。このように、連結管2では、第2の開口部21側の部分がノズル部24として機能する。
なお、連結管2の平均内径は、特に限定されないが、例えば、1mm以上10mm以下であるのが好ましい。また、第2の開口部21の内径は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上1mm以下であるのが好ましい。
また、連結管2の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料を用いることができる。
また、連結管2の外周部には、当該連結管2の温度を調整する温度調整機構90が設けられている。この温度調整機構90により、連結管2を通過する前記気化した母材P3’、粒子P31の温度を好適に調整することができる。これにより、被膜P3の形成に用いられる粒子P31の大きさを容易かつ確実に制御することができる。また、前記気化した母材P3’、粒子P31が関与する化学反応も好適に調整することができる。また、この温度調整機構90により、連結管2を加熱することにより、連結管2を通過する粒子P31が連結管2の内周部(内壁)に付着するのを防止することができる。なお、連結管2の温度としては、特に限定されず、例えば、30℃以上300℃以下が好ましく、50℃以上300℃以下がより好ましい。
図4に示すように、ガス供給手段3は、第1のチャンバー15内にガスを供給するものである。
ガス供給手段から供給されたガスは、気化した母材P3’を冷却しつつ連結管2、第2のチャンバー(成膜室)16へと導く機能を有している。すなわち、ガス供給手段から供給されたガスは、キャリアガスとして機能する。そして、この冷却により、気化した母材P3’は、搬送過程において、凝集し、所定の大きさの粒子P31となる。
図示の構成では、5つのガス供給手段3(3A、3B、3C、3D、3E)を備えており、これらは、第1のチャンバー15内に、それぞれ異なる種類のガスを供給するものである。
例えば、ガス供給手段3Aがヘリウム等の不活性ガス(第1の不活性ガス)を供給するものであり、ガス供給手段3Bが窒素、ネオン、アルゴン等の不活性ガス(第1の不活性ガスよりも分子量の大きい第2の不活性ガス)を供給するものであり、ガス供給手段3Cが酸素等の酸化性ガスを供給するものであり、ガス供給手段3Dが硫化水素等の硫化性ガスを供給するものであり、ガス供給手段3Eがアンモニア等の窒化性ガスを供給するものとすることができる。
このように、異なる複数種のガスを供給することができるように構成されていることにより、形成される粒子P3の大きさの調整を容易かつ確実に行うことができる。
また、反応性ガスを用いることにより、前述したような化学反応を好適に進行させることができる。特に、複数種の反応性ガスを供給することができるように構成されていることにより、粒子P31の反応の程度の調整に加え、異なる種類の反応(例えば、金属材料の酸化反応と硫化反応等)を組み合わせて行うことができる。これにより、例えば、製造される時計用外装部品P10の美的外観のさらなる向上を図ることができる。
ガス供給手段3(3A、3B、3C、3D、3E)は、ガスが充填されたタンク31(31A、31B、31C、31D、31E)と、タンク31と第1のチャンバー15とを連結する連結管32(32A、32B、32C、32D、32E)と、連結管32の途中に設置された電磁弁33(33A、33B、33C、33D、33E)とを有している。
タンク31は、ガスを気密的に貯留することができるものである。
タンク31と第1のチャンバー15とは、連結管32を介して、連通している。この連結管32は、硬質のものであってもよいし、可撓性を有するものであってもよい。
また、連結管32には、その長手方向の途中に電磁弁33が設置されている。電磁弁33は、連結管32を開閉するものである。そして、電磁弁33が開状態のときに、タンク31と第1のチャンバー15とが連通する。これにより、タンク31から第1のチャンバー15へのガスの供給が行われる。また、電磁弁33が閉状態のときに、タンク31と第1のチャンバー15との連通が遮断される。これにより、タンク31から第1のチャンバー15へのガスの供給が停止する。
また、電磁弁33A、33B、33C、33D、33Eは、それぞれ、開度の調整が可能に構成されている。
これにより、ガスの流量を好適に調整することができる。
また、各タンク31A、31B、31C、31D、31Eに収納されたガスの流量を、個別に調整することができるため、各ガスの流量(配合比率、分圧)を好適に調整することができる。これにより、被膜P3の形成に用いられる粒子P31の大きさを容易かつ確実に制御することができる。また、気化した母材P3’、粒子P31の反応の程度の調整等を好適に行うことができる。
加熱手段4は、第1のチャンバー15内の母材P3’を気化するまで加熱するものである。加熱手段4は、第1のチャンバー15内に設置された容器43と、容器43の外周側に配置されたコイル44と、コイル44に交流電圧を印加する電圧印加部としての交流電源(高周波電源)41と、交流電源41とコイル44との間に配置されたスイッチ42とを有している。
容器43は、有底筒状をなす部材で構成され、その内部に母材P3’を収納することができる。
なお、容器43の内径としては、特に限定されず、例えば、3mm以上6mm以下であるのが好ましい。また、容器43の構成材料としては、特に限定されず、例えば、炭素等を用いることができる。
容器43の外周側には、コイル44が同心的に配置されている。このコイル44は、導電性材料で構成された素線441を巻回して形成されたものである。また、コイル44の内周部442と、容器43の外周部431とは、離間しているのが好ましい。
素線441を構成する導電性材料としては、特に限定されず、例えば、タングステン等のような比較的電気抵抗が高い材料を用いることができる。
交流電源41は、コイル44と電気的に接続されており、当該コイル44に交流電圧を印加することができる。そして、スイッチ42を操作することにより、コイル44に交流電圧を印加する電圧印加状態と、その印加を停止する印加停止状態とに切り替えることができる。電圧印加状態では、すなわち、加熱手段4を作動させることにより、母材P3’を容器43ごと加熱することができる。これにより、母材P3’は、融点で溶融して、さらに融点を超える程度にまで加熱される。このとき、母材P3’は、蒸発して、連結管2の内腔部22をガス供給手段3から供給されたガスとともに流下する。この気化した母材P3’は、連結管2を通過する過程で冷却されて粒子P31となり、第2の開口部21から基材P1(下地層P2が設けられた基材P1)に吹き付けられる。そして、この粒子P31は、基材P1(下地層P2が設けられた基材P1)に衝突して付着することとなり、その結果、被膜P3が形成される。また、前述したように、気化した母材(原料)P3’は、成膜過程(蒸発から衝突付着までの間)において、少なくとも一部が、化学反応により組成が変化するものであってもよい。
なお、交流電圧の印加によって供給される電力は、1kW以上90kW以下であるのが好ましく、5kW以上50kW以下であるのがより好ましい。また、交流電圧の周波数は、300MHz以上600MHz以下であるのが好ましく、400MHz以上500MHz以下であるのがより好ましく、450MHzであるのがさらに好ましい。このような数値範囲により、固体の母材P3’を過不足なく加熱して確実に気化させることができる。
圧力調整手段5は、第2のチャンバー16内の圧力を第1のチャンバー15内の圧力よりも低くするものである。
図4に示すように、圧力調整手段5は、第2のチャンバー16内を吸引するポンプ51と、ポンプ51と第2のチャンバー16とを連結する連結管52と、連結管52の途中に設置された電磁弁53とを有している。
ポンプ51は、第2のチャンバー16内のガスGを吸引するものである。この吸引により、第2のチャンバー16内のガスGが連結管52を介して排出され、よって、第2のチャンバー16内の圧力が第1のチャンバー15内の圧力よりも確実に低くなる。これにより、粒子P31が第2のチャンバー16内に確実に流出することができ、よって、被膜P3を確実に形成することができる。
なお、第2のチャンバー16内の圧力としては、第1のチャンバー15内の圧力にもよるが、例えば、第1のチャンバー15内の圧力が0.1気圧以上10気圧以下である場合、0.1気圧未満とすることができる。
また、ポンプ51としては、特に限定されず、例えば、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ、メカニカルブースターポンプ、ロータリーポンプ等を用いることができる。
ポンプ51は、連結管52を介して、第2のチャンバー16と連結されている。この連結管52は、硬質のものであってもよいし、可撓性を有するものであってもよい。
また、連結管52には、その長手方向の途中に電磁弁53が設置されている。電磁弁53は、連結管52を開閉するものである。そして、電磁弁53が開状態のときに、ポンプ51の吸引力により、第2のチャンバー16内を吸引することができ、よって、第2のチャンバー16内を減圧することができる。また、電磁弁53が閉状態のときに、ポンプ51の吸引力が第2のチャンバー16内に及ぶのが阻止される。
図4に示すように、移動手段6は、基材P1を第2の開口部21に対し、y軸方向に向かって移動させるものである。図4、図5に示すように、移動手段6は、複数の基材P1を搬送するステージ(テーブル)61と、ステージ61をy軸方向に向かって移動させるy軸モーター62yと、y軸モーター62yの駆動を制御するy軸モータードライバー63yとを有している。また、移動手段6は、ステージ61をx軸方向に向かって移動させることもでき、その移動を行なうx軸モーター62xと、x軸モーター62xの駆動を制御するx軸モータードライバー63xとを有している。
ステージ61は、例えばステンレス鋼等のような金属材料で構成された板状をなす部材である。このステージ61は水平に支持されている。
y軸モーター62yは、例えばサーボモータであり、ボールねじ(図示せず)等を介して、ステージ61と連結されている。そして、y軸モーター62yが回転することにより、その回転力がボールねじを介してステージ61に伝達される。これにより、ステージ61上に載置された複数の基材P1をステージ61ごと、y軸方向に向かって移動させることができる。
また、y軸モーター62yは、y軸モータードライバー63yと電気的に接続されている。
このy軸モータードライバー63yの制御により、y軸モーター62yの回転数を変化させることができる。これにより、ステージ61が移動する際の速さ、すなわち、移動手段6の作動時の速さが可変となる。そして、当該速さの大小に応じて、形成される被膜P3の厚さをそれぞれ調整することができる。例えば、速さが「大」のときは、「薄い」被膜P3が形成され、速さが「小」のときは、「厚い」被膜P3が形成される。
x軸モーター62xは、y軸モーター62yと同様に、例えばサーボモータであり、ボールねじ(図示せず)等を介して、ステージ61と連結されている。そして、x軸モーター62xが回転することにより、その回転力がボールねじを介してステージ61に伝達される。これにより、ステージ61上に載置された複数枚の基材P1をステージ61ごと、x軸方向に向かって移動させることができる。
また、x軸モーター62xは、x軸モータードライバー63xと電気的に接続されている。
ガス供給手段3、加熱手段4、圧力調整手段5および移動手段6の各作動は、それぞれ、制御部7により制御される。制御部7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が内蔵されたパーソナルコンピューター(PC)である。
図5に示すように、制御部7は、ガス供給手段3の電磁弁33と、加熱手段4の交流電源41およびスイッチ42と、圧力調整手段5のポンプ51および電磁弁53と、移動手段6のx軸モータードライバー63xおよびy軸モータードライバー63yと、温度調整機構90とにそれぞれ電気的に接続されている。そして、制御部7は、これらをそれぞれ独立して作動させることができる。なお、制御プログラムは、制御部7に内蔵された記憶部(記録媒体)71に予め記憶されている。
なお、記憶部71は、例えば、RAM(Random Access Memory:揮発性、不揮発性のいずれをも含む)、FD(Floppy Disk(Floppyは登録商標))、HD(Hard Disk)、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)等のような、磁気的、光学的記録媒体、もしくは半導体メモリーで構成されている。
次に、被膜形成工程における被膜形成装置1の作動について、詳細に説明する。
被膜形成工程では、図4に示すように、連結管2の第2の開口部21を基材P1に対向するように、ステージ61を連結管2の第2の開口部21に対し位置合わせを行なう。なお、この位置合わせは、CCD(Charge Coupled Device)カメラを用いて、当該CCDカメラで撮像された画像に基づいて行われる。
また、このとき、被膜形成装置1では、圧力調整手段5が作動している。これにより、第2のチャンバー16内の圧力が第1のチャンバー15内の圧力よりも低くなる。なお、この状態は、基材P1(下地層P2が形成された基材P1)に対する被膜P3の形成が完了するまで維持される。
また、被膜形成装置1では、加熱手段4も作動している。これにより、前述したように、容器43内の母材P3’が気化する。そして、当該気化した母材P3’は、第1のチャンバー15内の圧力と第2のチャンバー16内の圧力との差により、連結管2を通過していく。
さらに、被膜形成装置1では、ガス供給手段3も作動している。
そして、移動手段6を作動させる、すなわち、ステージ61をy軸正方向に向かって移動させる。
以上のようにガス供給手段3、加熱手段4、圧力調整手段5、移動手段6が作動することにより、第1のチャンバー15内で気化した母材P3’は、第2のチャンバー16に向かって連結管2を確実に通過する。この通過の際、前記気化した母材P3’は、所定の大きさの粒子P31となり、当該粒子P31は、第1のチャンバー15に導入されたガスによって、円滑に連結管2を通過することができる。粒子P31は、第2の開口部21から排出されて、各基材P1に対し順に吹き付けられて付着する。ここで、基材P1に吹き付けられる粒子P31は、制御された形成条件により、所望の大きさに調整されたものである。これにより、基材P1の所望の部位に、所望の形状を有し、所望の色調で美的外観に優れた被膜P3を迅速に形成することができる。また、気化した母材(原料)P3’は成膜過程(蒸発から衝突付着までの間)において、少なくとも一部が、化学反応により組成が変化したものとすることもできる。これにより、表現することのできる色範囲がより広いものとなり、被膜P3の色調の調整をより好適に行うことができるとともに、被膜P3の物性(硬度、弾性率等)を好適に調整することができる。
前述したような本発明の時計用外装部品の製造方法によれば、材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい方法で、所望の色調で美的外観に優れた時計用外装部品を効率よく製造することができる時計用外装部品の製造方法を提供することができる。
<<時計>>
次に、本発明の時計について説明する。
本発明の時計は、上述したような本発明の時計用外装部品を備えるものである。
これにより、美的外観に優れるとともに、製造時における材料の無駄が少なく、環境への負荷の小さい時計用外装部品を備えた時計を提供することができる。
なお、本発明の時計は、少なくとも1つの時計用外装部品として、本発明の時計用外装部品を備えるものであればよく、それ以外の部品としては、公知のものを用いることができるが、以下に、本発明の時計の構成の一例について説明する。
図6は、本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す断面図である。
図6に示すように、本実施形態の腕時計(携帯時計)P100は、胴(ケース)P82と、裏蓋P83と、ベゼル(縁)P84と、ガラス板(カバーガラス)P85とを備えている。また、ケースP82内には、時計用文字板P7と、太陽電池P94と、ムーブメントP81とが収納されており、さらに、図示しない針(指針)等が収納されている。
ガラス板P85は、通常、透明性の高い透明ガラスやサファイア等で構成されている。これにより、時計用文字板P7や針等の視認性を十分に優れたものとすることができるとともに、太陽電池P94に十分な光量の光を入射させることができる。
ムーブメントP81は、太陽電池P94の起電力を利用して、指針を駆動する。
図6中では省略しているが、ムーブメントP81内には、例えば、太陽電池P94の起電力を貯蔵する電気二重層コンデンサー、リチウムイオン二次電池や、時間基準源として水晶振動子や、水晶振動子の発振周波数をもとに時計を駆動する駆動パルスを発生する半導体集積回路や、この駆動パルスを受けて1秒毎に指針を駆動するステップモーターや、ステップモーターの動きを指針に伝達する輪列機構等を備えている。
また、ムーブメントP81は、図示しない電波受信用のアンテナを備えている。そして、受信した電波を用いて時刻調整等を行う機能を有している。
太陽電池P94は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。そして、太陽電池P94で変換された電気エネルギーは、ムーブメントの駆動等に利用される。
太陽電池P94は、例えば、非単結晶シリコン薄膜にp型の不純物とn型の不純物とが選択的に導入され、さらにp型の非単結晶シリコン薄膜とn型の非単結晶シリコン薄膜との間に不純物濃度の低いi型の非単結晶シリコン薄膜を備えたpin構造を有している。
胴P82には巻真パイプP86が嵌入・固定され、この巻真パイプP86内にはりゅうずP87の軸部P871が回転可能に挿入されている。
胴P82とベゼルP84とは、プラスチックパッキンP88により固定され、ベゼルP84とガラス板P85とはプラスチックパッキンP89により固定されている。
また、胴P82に対し裏蓋P83が嵌合(または螺合)されており、これらの接合部(シール部)P93には、リング状のゴムパッキン(裏蓋パッキン)P92が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部P93が液密に封止され、防水機能が得られる。
りゅうずP87の軸部P871の途中の外周には溝P872が形成され、この溝P872内にはリング状のゴムパッキン(りゅうずパッキン)P91が嵌合されている。ゴムパッキンP91は巻真パイプP86の内周面に密着し、該内周面と溝P872の内面との間で圧縮される。この構成により、りゅうずP87と巻真パイプP86との間が液密に封止され防水機能が得られる。なお、りゅうずP87を回転操作したとき、ゴムパッキンP91は軸部P871と共に回転し、巻真パイプP86の内周面に密着しながら周方向に摺動する。
なお、上記の説明では、時計の一例として、ソーラー電波時計としての腕時計(携帯時計)を挙げて説明したが、本発明は、腕時計以外の携帯時計、置時計、掛け時計等の他の種類の時計にも同様に適用することができる。また、本発明は、ソーラー電波時計を除くソーラー時計や、ソーラー電波時計を除く電波時計等、いかなる時計にも適用することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記のようなものに限定されるものではない。
例えば、本発明の時計用外装部品、時計では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、時計用外装部品が、基材、被膜に加え、下地層および保護膜を備える場合について中心的に説明したが、本発明の時計用外装部品は、基材と被膜とを備えるものであればよく、下地層、保護膜のうち少なくとも一方を備えていないものであってもよい。
また、前述した実施形態では、被膜が、構成する粒子の大きさが異なり色調が異なる領域として2種の領域(第1の領域および第2の領域)を有する場合について代表的に説明したが、本発明において、被膜は、構成する粒子の大きさが異なり色調が異なる、3種以上の領域を有していてもよい。また、構成する粒子の大きさ(色調)は傾斜的に変化するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、被膜が基材の一方の面側に設けられた場合について説明したが、被膜は、基材の両方の面側に設けられたものであってもよい。
また、本発明の時計用外装部品が、反射防止膜等の膜を備えるものである場合、当該膜の形成部位は、特に限定されず、例えば、前述した保護膜に対応する部位であってもよいし、基材の内部(例えば、基材本体と表面層との間等)、基材の被膜が設けられた面とは反対側の面上等であってもよい。
また、本発明の時計用外装部品の製造方法においては、必要に応じて、前処理工程、中間処理工程、後処理工程を行ってもよい。
また、前述した実施形態では、連結管の内部において、気化した原料(母材)が凝縮して、粒子になる場合について説明したが、気化した原料(母材)が粒子になる部位は、連結管以外の部位であってもよい。
また、前述した実施形態では、連通管の温度を調整する温度調整機構を有し、これにより、連通管の内部で化学反応が進行する場合について説明したが、化学反応は、他の部位で進行するものであってもよい。例えば、化学反応は、第1のチャンバーの内部や、第2のチャンバーの内部で進行するものであってもよいし、粒子と基材との衝突時に進行するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、原料の化学反応に寄与する反応性ガスを第1のチャンバー内に供給するものとして説明したが、反応性ガスは、第1のチャンバー以外の部位(例えば、第2のチャンバー内等)に供給するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、系内で原料を気化させた後に、原料と反応性ガスとを化学反応させることにより、原料とは異なる組成の被膜を形成する場合について中心的に説明したが、原料と反応する物質は、ガス状の物質でなくてもよい。
また、本発明においては、被膜の形成過程において、化学反応を行わなくてもよい。
また、被膜形成装置は、連通管以外の部位に温度調整機構を備えていてもよい。
また、被膜形成装置の連結管の開口部は、前述した実施形態ではz軸負方向を向いているが、これに限定されず、例えば、x軸正方向、x軸負方向、y軸正方向、y軸負方向またはz軸正方向を向いていてもよい。
また、被膜形成装置の移動手段は、前記実施形態では基材を連結管のノズル部に対しy軸正方向に向かって移動させるよう構成されているが、これに限定されず、例えば、連結管のノズル部を基材に対しy軸正方向に向かって移動させるよう構成されていてもよい。
また、被膜形成装置の移動手段は、ステージをz軸方向にも移動させることができるよう構成されていてもよい。また、ステージを回転可能に構成されていてもよい。
また、被膜形成装置は、基材に対し被膜を形成する際には、前記実施形態ではステージを移動させつつ、その形成を行なっていたが、これに限定されず、例えば、各基材上にノズルが位置するごとに、ステージの移動を停止し、その形成を行なってもよい。
また、前述した実施形態では、被膜形成装置が連結管の温度を調整する温度調整機構を備えるものとして説明したが、被膜の形成には、前記温度調整機構を備えていないものを用いてもよい。
P100……腕時計(携帯時計)
P10……時計用外装部品
P1……基材
P2……下地層
P3……被膜
P3A……第1の領域
P3B……第2の領域
P3’……母材(原料)
P31……粒子
P4……保護膜
P7……時計用文字板
P81……ムーブメント
P82……胴(ケース)
P83……裏蓋
P84……ベゼル(縁)
P85……ガラス板(カバーガラス)
P86……巻真パイプ
P87……りゅうず
P871……軸部
P872……溝
P88……プラスチックパッキン
P89……プラスチックパッキン
P91……ゴムパッキン(りゅうずパッキン)
P92……ゴムパッキン(裏蓋パッキン)
P93……接合部(シール部)
P94……太陽電池
1……被膜形成装置
2……連結管
21……第2の開口部(他端開口部)
22……内腔部
24……ノズル部
25……第1の開口部(一端開口部)
3、3A、3B、3C、3D、3E……ガス供給手段
31、31A、31B、31C、31D、31E……タンク
32、32A、32B、32C、32D、32E……連結管
33、33A、33B、33C、33D、33E……電磁弁
4……加熱手段
41……交流電源(高周波電源)
42……スイッチ
43……容器(るつぼ)
431……外周部
44……コイル
441……素線
442……内周部
5……圧力調整手段
51……ポンプ
52……連結管
53……電磁弁
6……移動手段
61……ステージ(テーブル)
62x……x軸モーター
62y……y軸モーター
63x……x軸モータードライバー
63y……y軸モータードライバー
7……制御部
71……記憶部(記録媒体)
15……第1のチャンバー(蒸気発生室)
16……第2のチャンバー(成膜室)
90……温度調整機構
……ガス

Claims (11)

  1. 基材と、
    系内で原料を気化させた後に気化物を凝縮させることにより形成した粒子をノズルから前記基材に向けて吹き付け、前記粒子を堆積させることにより形成した被膜とを備え、
    前記被膜は、前記粒子の大きさを調整することにより、色調が調整されたものであることを特徴とする時計用外装部品。
  2. 前記被膜は、前記粒子の平均粒径が異なる複数の領域を有しているものである請求項1に記載の時計用外装部品。
  3. 前記被膜は、前記粒子の平均粒径が10nm以上3000nm以下である領域を備えているものである請求項1または2に記載の時計用外装部品。
  4. 前記被膜は、前記粒子の平均粒径が10nm以上3000nm以下である第1の領域に加え、前記粒子の平均粒径が0.2nm以上60nm以下である第2の領域を備えており、前記第1の領域を構成する前記粒子の平均粒径が、前記第2の領域を構成する前記粒子の平均粒径よりも大きいものである請求項3に記載の時計用外装部品。
  5. 前記原料は、金属材料である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の時計用外装部品。
  6. 前記被膜の厚さは、0.1μm以上300μm以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の時計用外装部品。
  7. 時計用外装部品は、カバーガラスである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の時計用外装部品。
  8. 時計用外装部品は、前記基材の観察者の視点とは反対の面側に、前記被膜が設けられている請求項1ないし7のいずれか1項に記載の時計用外装部品。
  9. 被膜を形成すべき基材を準備する基材準備工程と、
    系内で原料を気化させた後に気化物を凝縮させることにより形成した粒子をノズルから前記基材に向けて吹き付け、前記粒子を堆積させることにより被膜を形成する被膜形成工程とを有し、
    前記被膜形成工程で形成する前記粒子の大きさを調整することにより、前記被膜を色調が調整されたものとして形成することを特徴とする時計用外装部品の製造方法。
  10. 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の時計用外装部品を備えたことを特徴とする時計。
  11. 請求項9に記載の方法を用いて製造された時計用外装部品を備えたことを特徴とする時計。
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