JP2016038260A - 超ウラン元素核変換方法および超ウラン元素核変換炉心 - Google Patents

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Abstract

【課題】高レベル放射性廃棄物の放射毒性を低減するための超ウラン元素核変換方法を提供する。【解決手段】プルトニウム239の核変換体系を用いてプルトニウム239の核変換を行うプルトニウム239に関する核変換ステップS02と、プルトニウム239核変換ステップS02の後に、燃焼チェーンの下流側の超ウラン核種の高次TRU核変換体系を設定する高次TRU核変換体系設定ステップS03、S05およびS07と、高次TRU核変換体系設定ステップS03、S05およびS07の後にそれぞれこの核変換体系を用いてTRU核種の核変換を行う高次TRU核変換ステップS04、S06およびS08を有する。【選択図】図2

Description

本発明の実施形態は、超ウラン元素の核変換方法および超ウラン元素核変換炉心に関する。
原子力の利用に伴って発生する高レベル放射性廃棄物の放射毒性は、ワンススルーサイクルすなわち核燃料を再処理しない場合、10万年以上に亘って自然界における放射性物質の放射毒性より高いレベルにある。なお、放射能のレベルを、放射線の被ばくによる人体への影響を考慮しての放射線の種類に応じた換算を行った結果として表示したものを、ここでは放射毒性と呼ぶこととする。
図20は、燃料取り出し後の放射毒性の時間変化を示すグラフである。実線で示す曲線は放射毒性の総合計、破線で示す曲線は超ウラン元素(TRU)、2点鎖線で示す曲線は核分裂生成物(FP)の合計を示す。また、細かい破線で示す曲線は、3種類のTRU元素すなわち、240Pu、242Pu、および241Amの合計を示す。500年程度が経過して以降は、TRUに起因する放射毒性が支配的である。TRU核種の長期に亘る放射毒性はその放射能の半減期の長さに起因している。したがって、放射性廃棄物の管理期間を短縮させ、環境負荷を低減するには、TRU核種を核変換によって短寿命核種に変換することが有効である。
TRU核種の核変換では,一般にエネルギーの高い高速中性子を用いる手法、ウランを用いない燃料を用いる手法、あるいは、双方を組みあわせた手法が知られている(特許文献1、2)。
しかしながら、熱中性子やこれよりエネルギーの高い領域の熱外中性子を用いて核変換を行おうとした場合、一般的な軽水炉や重水炉等では、プルトニウム240(240Pu)やプルトニウム242(242Pu)、アメリシウム241(241Am)等、放射毒性に対して寄与の大きい核種の核変換効率が低いこと、このためこれらを効率よく核変換することが課題となっている。
特開2013−033065号公報 米国特許出願公開第2002/0025016号明細書
上述した超ウラン元素核変換方法においては、一般的な軽水炉や重水炉等、熱中性子ないし熱外中性子を用いる場合において、放射毒性に対して寄与の大きないくつかの核種の核変換効率が低い。このため、TRU核種の長期に亘る放射毒性が高速炉と比較して減少しにくいことが課題であった。
TRU核種は、多くが中性子の熱エネルギー領域に大きな中性子吸収断面積を持つ。この吸収断面積による自己遮蔽効果によって、一般的な軽水炉や重水炉等では熱中性子の供給が減少する。その一方で中性子利用率の高い高速中性子領域での核分裂も高速炉に比べると発生しにくい。
このため、一般的な軽水炉や重水炉等のように、熱中性子ないしエネルギーが高い側に隣接するエネルギー領域の熱外中性子を用いる場合においては、TRU核種の高次化、多様化が進むことになる。特に240Puや242Pu、241Am等、使用済み燃料中で放射毒性の高い核種、またはその親核種であるこれらの核種がTRU元素に占める組成比が高くなり易い。
本発明の実施形態は上述した課題を解決するためになされたものであり、放射毒性への寄与の大きいTRU核種またはその親核種を核変換して放射毒性を減少させることを目的とする。
上述の目的を達成するため、本実施形態の超ウラン元素核変換方法は、プルトニウム239の核変換体系を用いてプルトニウム239の核変換を行うプルトニウム239核変換ステップと、前記プルトニウム239核変換ステップの後に、燃焼チェーンの下流側の超ウラン核種の高次TRU核変換体系を設定する高次TRU核変換体系設定ステップと、前記高次TRU核変換体系設定ステップの後に前記高次TRU核変換体系を用いて前記下流側の超ウラン核種の核変換を行う高次TRU核変換ステップと、を有することを特徴とする。
また、本実施形態の超ウラン元素核変換炉心は、核変換の対象とする超ウラン元素で構成されるTRU物質を核燃料物質に加えた燃料と、前記燃料において発生する中性子を減速させる減速材と、を有し、プルトニウム239を変換可能な中性子スペクトルを有する第1の領域と、選択された高次TRU核種を変換可能な中性子スペクトルを有する第2の領域が、それぞれ前記燃料の量と前記減速材の量の割合に基づいて形成される、ことを特徴とする。
本発明の実施形態によれば、放射毒性への寄与の大きいTRU核種またはその親核種を核変換して放射毒性を減少させることができる。
第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法で利用する主なTRU核種の燃焼チェーンを示す概念図である。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の手順を示すフロー図である。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法における各ステップにおける中性子スペクトルを示すグラフである。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換炉心における溶融塩燃料のピンセルの例を示す平面図であり、(a)は燃料の対減速材比が大きい場合、(b)は燃料の対減速材比が小さい場合を示す。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換炉心における燃料棒の例を示す平面図であり、(a)は燃料の対減速材比が大きい場合、(b)は燃料の対減速材比が小さい場合を示す。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換炉心における燃料集合体の例の概念的構成を示す平断面図である。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の実施前の主要な核種量の組成の例を示すグラフである。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の第1フェイズのための中性子エネルギースペクトルを示すグラフである。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の第1フェイズにおける主要な核種量の変化を示すグラフである。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の第2フェイズのための中性子エネルギースペクトルを示すグラフである。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の第2フェイズにおける主要な核種量の変化を示すグラフである。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の第3フェイズのための中性子エネルギースペクトルを示すグラフである。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の第3フェイズにおける主要な核種量の変化を示すグラフである。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の第4フェイズのための中性子エネルギースペクトルを示すグラフである。 第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の第4フェイズにおける主要な核種量の変化を示すグラフである。 第2の実施形態に係る超ウラン元素核変換炉心の概念的構成を示す斜視図である。 第3の実施形態に係る超ウラン元素核変換炉心の構成例を示す平面図である。 第4の実施形態に係る超ウラン元素核変換炉心の概念的構成を示す斜視図である。 第4の実施形態に係る超ウラン元素核変換炉心内の上下多領域集合体の概念的構成を示す側面図である。 燃料取り出し後の放射毒性の時間変化を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法および超ウラン元素核変換炉心について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法で利用する主なTRU核種の燃焼チェーンを示す概念図である。図1では放射毒性に影響の大きな核種に関わるものとして、原子番号94のプルトニウム(Pu)、原子番号95のアメリシウム(Am)および原子番号96のキュリウム(Cm)のそれぞれの同位体とその間の移行関係を示している。
下向きの矢印と(n,γ)は中性子捕獲反応を示す。中性子捕獲反応の結果、ガンマ線が放出されるとともに、同一の同位体内で質量数が1増加する。また、右上に向かう矢印はβ崩壊を示し、付記した時間はβ崩壊の半減期を示す。β崩壊の結果、ベータ線が放出されるとともに、質量数を維持しながら原子番号が1増加した元素となる。図1中の破線の囲みは、その核種が核分裂性物質であることを示す。
軽水炉等において使用した使用済み燃料に多く含まれるのはPuである。軽水炉や重水炉等の熱中性子ないし熱外中性子を利用する原子炉中において、プルトニウム239(239Pu)、プルトニウム241(241Pu)等の核分裂性物質は、燃焼に伴い核分裂によって多くは核分裂生成物(FP)へ核変換される。
図1中で斜線の下向き矢印は、巨大な共鳴吸収を利用して他核種への転換量向上に寄与できる中性子捕獲反応を示す。240Pu、242Pu、241Am、キュリウム244(244Cm)等は非核分裂性物質であり、燃焼に伴ってごく一部は核分裂してFPへ核変換されるものの、主として中性子捕獲して高次化すなわちより原子番号の大きな元素に変換されその割合が増加するか、あるいは、そのままの核種として蓄積する。
240Pu、242Pu、および241Amは、高レベル放射性廃棄物処分後500年経過時点での放射毒性(放射毒性指数)の70%以上を占めている。したがって、これら核種をFPへ核変換させることにより長期の環境影響を低減できる。
この際、主要な非核分裂性核種は1回ないし3回の中性子捕獲反応とβ崩壊によって核分裂性核種に核変換することができる。例えば図1に示すように、240Puは1回の中性子捕獲反応で241Puに核変換、242Puはアメリシウム243(243Am)および244Cmでの中性子捕獲を経由してキュリウム245(245Cm)に核変換することができる。
また、241Amは1回の中性子捕獲で核分裂性物質であるアメリシウム242(242Am)に核変換することができる。242Amは自身の核分裂の場合の他に、十数年の半減期でキュリウム242(242Cm)に移行し、242Cmの中性子捕獲を経由して核分裂性物質であるキュリウム243(243Cm)に核変換することができる。244Cmは、中性子捕獲反応によって核分裂性物質である245Cmに核変換することができる。
図2は、本実施形態に係る超ウラン元素核変換方法の手順を示すフロー図である。まず、239Pu核変換体系を設定する(ステップS01)。239Pu核変換体系は、239Puの核分裂が効果的に行われる中性子スペクトルを有する炉心の体系である。次に、この239Pu核変換体系において239Puを主に核変換する中性子照射を行う(ステップS02)。
次に、240Pu核変換体系を設定する(ステップS03)。240Pu核変換体系は、240Puの中性子捕獲反応が効果的に行われる中性子スペクトルを有する炉心の体系である。次に、この240Pu核変換体系において主に240Puを240Puの中性子捕獲反応により核変換する中性子照射を行う(ステップS04)。
次に、242Pu核変換体系を設定する(ステップS05)。242Pu核変換体系は、242Puの中性子捕獲反応が効果的に行われる中性子スペクトルを有する炉心の体系である。次に、この242Pu核変換体系において主に242Puを242Puの中性子捕獲反応により核変換する中性子照射を行う(ステップS06)。
次に、244Cm核変換体系を設定する(ステップS07)。244Cm核変換体系は、244Cmの中性子捕獲反応が効果的に行われる中性子スペクトルを有する炉心の体系である。次に、この244Cm核変換体系において主に244Cmを244Cmの中性子捕獲反応により核変換する中性子照射を行う(ステップS08)。
ここで、239Pu核変換体系での核変換を第1フェイズ核変換、240Pu核変換体系での核変換を第2フェイズ核変換、242Pu核変換体系での核変換を第3フェイズ核変換、および244Cm核変換体系での核変換を第4フェイズ核変換と呼ぶこととする。
ここで、239Pu核変換体系、240Pu核変換体系、242Pu核変換体系、および244Cm核変換体系は、それぞれに対応する中性子スペクトルが得られれば、1つの炉心全体の体系であってもよい。すなわち、中性子スペクトルの異なる少なくとも4つの炉心を準備して、第1フェイズ核変換から第4フェイズ核変換までが、順次、異なる炉心を用いて行われてもよい。この場合、4つの炉心は、1つの原子炉で順次構成を変更することによって所定の中性子スペクトルを得ることでもよいし、また、4つの異なる原子炉の炉心によって所定の中性子スペクトルを得ることでもよい。
図3は、第1の実施形態に係る超ウラン元素核変換方法における各ステップにおける中性子スペクトルを示すグラフである。横軸は中性子のエネルギー(単位はeV)であり対数目盛である。縦軸は、中性子束密度の相対値である。
第1フェイズ核変換すなわち主に239Puを核分裂反応により核変換するフェイズにおける中性子スペクトルは、高速中性子成分の多い中性子スペクトルであり、239Puの核分裂反応の割合を大きくする。第2フェイズ核変換ないし第4フェイズ核変換のための中性子スペクトルは、第2フェイズにおいては240Pu、第3フェイズにおいては242Pu、第4フェイズにおいては244Cmについて、それぞれの中性子捕獲の共鳴吸収断面積が最大となる中性子エネルギーにおいて中性子束密度が大きくなるように調整された中性子スペクトルである。
以上のようなそれぞれのフェイズの中性子スペクトルを得るための中性子スペクトルの調整は、燃料と減速材の割合を調整することによって行う。燃料と減速材の割合を調整する方法としては、以下のような方法がある。
図4は、超ウラン元素核変換炉心における溶融塩燃料のピンセルの例を示す平面図であり、(a)は燃料の対減速材比が大きい場合、(b)は燃料の対減速材比が小さい場合を示す。図4(a)に示すピンセル体系10aにおいては、図示しない溶融塩燃料炉心の格子を構成するたとえば黒鉛ブロックなどの減速材12a内の円筒状の流路を溶融塩に核燃料の塩が混合した溶融塩燃料11aが通過する。図4(b)に示すピンセル体系10bにおいては、図示しない溶融塩燃料炉心の格子を構成するたとえば黒鉛ブロックなどの減速材12b内の円筒状の流路を溶融塩に核燃料の塩が混合した溶融塩燃料11bが通過する。ここで、黒鉛ブロックの格子間のピッチをP、黒鉛ブロックに形成された溶融塩燃料の流路孔の内径をDとする。
ピッチPの内径Dに対する比P/Dは、大きくなると燃料の対減速材比が小さくなる。すなわちP/Dは、減速材Mの燃料Fに対する比M/Fと同じ傾向を示す指標である。溶融塩燃料の場合の試算によって得られたそれぞれのフェイズについてのP/Dおよび減速材・燃料比M/Fを以下に示す。
第1フェイズでは、P/D=0〜0.05、M/F=0〜0.055
第2フェイズでは、P/D=11.5〜16.0、M/F=12.7〜17.6
第3フェイズでは、P/D=6.69〜9.36、M/F=7.38〜10.3
第4フェイズでは、P/D=3.60〜4.25、M/F=3.97〜4.69
なお、P/D=0、M/F=0とは、黒鉛ブロックなどの減速材がなく、溶融塩燃料のみの場合である。
図5は、超ウラン元素核変換炉心における燃料棒の例を示す平面図であり、(a)は燃料の対減速材比が大きい場合、(b)は燃料の対減速材比が小さい場合を示す。図5(a)に示す燃料棒15aと、図5(b)に示す燃料棒15bとは、それぞれの図示しない燃料集合体において互いに隣接する同士の間隔、すなわち燃料棒ピッチは図示のようにPであるが、それぞれの場合の燃料棒の径が異なる。すなわち、図5(a)の場合の燃料16aの燃料棒15a周囲の軽水などの減速材17aに対する比は、図5(b)の場合の燃料16bの燃料棒15b周囲の軽水などの減速材17bに対する比が小さい。すなわち、逆に、燃料棒15aの体系の方が燃料棒15bの体系よりも、減速材の燃料に対する比、すなわち減速材・燃料比M/Fが大きくなっている。
図6は、超ウラン元素核変換炉心における燃料集合体の例の概念的構成を示す平断面図である。燃料集合体20は、六角格子状に配列された複数の燃料棒21と減速棒22を有する。燃料棒21と減速棒22の割合によって減速材・燃料比M/Fを調整することができる。
以上、図4ないし図6に示したように、溶融塩燃料炉心の場合でも軽水炉炉心の場合でも、減速材・燃料比M/Fを幅広く調整することができる。
図7は、超ウラン元素核変換方法の実施前の主要な核種量の組成の例を示すグラフである。沸騰水型軽水炉の使用済燃料、具体的には、9×9燃料(A型)、4.23%濃縮度、取出し燃焼度45GWD/t、冷却無しすなわち崩壊時間を設けないTRU組成を用いた。
このTRU組成の主要部分は、239Puが47.48%、240Puが26.36%、241Puが12.53%、242Puが6.33%、237Npが4.52%、238Puが2.32%、243Amが0.30%、241Amが0.12%、244Cmが0.03%、242Cmが0.02%である。各元素の合計値では、Puが95.01%、Np(237Np)が4.52%、Amが0.42%、Cmが0.05%と、Puが大部分を占めており、その約半分が239Puである。
次に、図8ないし図15を引用しながら、第1フェイズから第4フェイズまでの核変換の試算例について説明する。試算例は、トリウム系列の燃料を有する溶融塩炉を用いた変換である。サイクルごとに233Uを加えて反応度体系を維持している。試算は47サイクル約60年間での変換について行っている。
図8は、第1フェイズのための中性子エネルギースペクトルを示すグラフである。まず、239Puを主に核変換する本第1フェイズでは、高速中性子成分の多い中性子スペクトルである。
図9は、第1フェイズにおける主要な核種量の変化を示すグラフである。本第1フェイズにおいては、239Puの中性子吸収反応に対する核分裂反応の比を高くすることによって、239Puの中性子捕獲反応による240Puへの移行をできる限り抑えることによって、図9に示すように239Puが急減している。また、240Puについても漸減している。
図10は、第2フェイズのための中性子エネルギースペクトルを示すグラフである。第2フェイズ核変換すなわち主に240Puを中性子捕獲反応により核変換するフェイズにおける中性子スペクトルは、240Puの共鳴捕獲断面積における吸収反応断面積が増加するような中性子スペクトルである。240Puの共鳴捕獲断面積のピークに対応する中性子のエネルギーは、1.06×10eVすなわち1.06eVであり、この中性子エネルギー付近での中性子束密度が高いスペクトルである。
図11は、第2フェイズにおける主要な核種量の変化を示すグラフである。240Puの捕獲反応率が増加し、240Puの241Puへの核変換が促され、かつ241Puの熱領域における核分裂断面積において効率よく核分裂することによってFPへの核変換が促進されている。また、第1フェイズで239Puを大幅に変換したことによって、239Puの捕獲反応による240Puへの変換が大幅に減少する。この結果、第2フェイズにおいて240Puは大幅に減少している。なお、本第2フェイズにおいては、242Puは漸増している。
図12は、第3フェイズのための中性子エネルギースペクトルを示すグラフである。第3フェイズ核変換すなわち主に242Puを中性子捕獲反応により核変換するフェイズにおける中性子スペクトルは、242Puの共鳴捕獲断面積における吸収反応断面積が増加するような中性子スペクトルとなる。242Puの共鳴捕獲断面積のピークに対応する中性子のエネルギーは、2.68×10evすなわち2.68evであり、この中性子エネルギー付近での中性子束密度が高いスペクトルである。
図13は、第3フェイズにおける主要な核種量の変化を示すグラフである。242Puの243Puを経由した243Amへの核変換は、243Amの共鳴捕獲断面積が10barn(10×10−24cm)以上の反応断面積を持つ領域が約10eVまで広がり、242Puの共鳴捕獲断面積と比較して約7barn程度断面積が高い。これにより242Puの243Pu、243Amおよび244Amを経由した244Cmへの核変換が促進される。また、第2フェイズで240Puを大幅に変換したことによって、240Puの捕獲反応を経た242Puへの変換が大幅に減少する。このように243Puを主に核変換するフェイズにおける中性子スペクトルを用いることによって243Amの共鳴捕獲断面積を利用して積極的に244Cmへ核変換することができ、242Puはほとんど減少している。なお、本第3フェイズにおいては、240Puはほぼ消滅している。また、244Cmは漸増している。
図14は、第4フェイズのための中性子エネルギースペクトルを示すグラフである。第4フェイズ核変換すなわち主に244Cmを中性子捕獲反応により核変換するフェイズにおける中性子スペクトルは、242Puの共鳴捕獲断面積における吸収反応断面積が増加する様な中性子スペクトルとなる。242Puの共鳴捕獲断面積のピークに対応する中性子のエネルギーは、7.67×10eVすなわち7.67eVであり、この中性子エネルギー付近での中性子束密度が高いスペクトルである。
図15は、第4フェイズにおける主要な核種量の変化を示すグラフである。第4フェイズ核変換における中性子スペクトルは、第2フェイズ核変換および第3フェイズ核変換における中性子スペクトルに比べて熱中性子が25%程度少ない。244Cmの共鳴捕獲断面積のエネルギー領域が240Puの共鳴捕獲断面積と比較して高いエネルギー領域であることから、244Cmの245Cmへの核変換を促進し2000barnを超える245Cmの熱中性子での核分裂断面積を活用して245CmをFPへ核変換することができる。
また、第2フェイズで240Puを大幅に変換したことによって、240Puの捕獲反応を経て、242Amのベータ崩壊による244Cmへの変換が大幅に減少する。また、本第4フェイズにおいては、240Puはほぼ消滅している。また、246Cmは漸減している。
以上のように、燃焼チェーンの上流側にある239Puから順次下流側の超ウラン核種の核変換を行って上流側の核種から変換されてくる生成ルートを閉鎖することによって、確実にTRUの核変換を行うことができる。
以上のように、本実施形態によれば、放射毒性への寄与の大きいTRU核種またはその親核種を核変換して放射毒性を減少させることができる。
[第2の実施形態]
図16は、第2の実施形態に係る超ウラン元素核変換炉心の概念的構成を示す斜視図である。本第2の実施形態においては、多領域炉心110が、第1フェイズ領域111、第2フェイズ領域112、第3フェイズ領域113、および第4フェイズ領域114に分割されている。
第1フェイズ領域111では第1フェイズ用の中性子スペクトルを、第2フェイズ領域112では第2フェイズ用の中性子スペクトルを、第3フェイズ領域113では第3フェイズ用の中性子スペクトルを、第4フェイズ領域114では第4フェイズ用の中性子スペクトルを有する。
それぞれの領域は、多領域炉心110の高さ方向を占有し、径方向および周方向に分割されている。また、図16のように周方向には分割されず、径方向にのみ分割されていてもよい。
この様に構成された本第2の実施形態においては、各フェイズの領域を同時に炉心が備えることによって、燃料集合体を原子炉施設の外部に持ち出す必要がなく、外部の貯蔵施設を必要としない。
[第3の実施形態]
図17は、第3の実施形態に係る超ウラン元素核変換炉心の概念的構成を示す斜視図である。本第3の実施形態は、第2の実施形態の変形であり、多領域炉心120は、第1フェイズ領域121、第2フェイズ領域122、第3フェイズ領域123、および第4フェイズ領域124に分割されている。それぞれの領域は、多領域炉心120の高さ方向に分割されている。
この様に構成された本第3の実施形態においても、第2の実施形態と同様に、各フェイズの領域を同時に炉心が備えることによって、燃料集合体を原子炉施設の外部に持ち出す必要がなく、外部の貯蔵施設を必要としない。
[第4の実施形態]
図18は、第4の実施形態に係る超ウラン元素核変換炉心の概念的構成を示す斜視図である。多領域炉心130は、燃料集合体131、減速集合体132および上下多領域集合体133を有する。燃料集合体131は、燃料棒を集合体要素として有する。また減速集合体132は、減速棒を集合体要素として有する。また、上下多領域集合体133は、燃料棒と減速棒の両者を有する。
図19は、上下多領域集合体の概念的構成を示す側面図である。上下多領域集合体133は、燃料棒133aの領域と、減速棒133bの領域が上下に分割されている。燃料棒133aの領域と、減速棒133bの領域は、結合部133cにより結合されている。燃料棒133aの上端は上部タイプレート133dで支持されている。減速棒133bの下端は、下部タイプレート133eで支持されている。
上下多領域集合体133は、上側が減速棒133b、下側が燃料棒133aの場合でもよい。また、2領域のみでなく、たとえば、上下に、燃料棒133a、減速棒133b、燃料棒133aのように3つ以上が結合されていてもよい。また、燃料集合体131と減速集合体132に代えて、あるいは加えて、図6に示した燃料棒と減速棒を有する集合体としてもよい。
以上のように、本第4の実施形態では、多領域炉心130内を径方向および軸方向に3次元的に分割して、それぞれにおいて所定の中性子スペクトルを得ることができる。この結果、多領域炉心130の柔軟な運用を計画することができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10a、10b…ピンセル体系、11a、11b…溶融塩燃料、12a、12b…減速材、15a、15b…燃料棒、16a、16b…燃料、17a、17b…減速材、20…燃料集合体、21…燃料棒、22…減速棒、110…多領域炉心、111…第1フェイズ領域、112…第2フェイズ領域、113…第3フェイズ領域、114…第4フェイズ領域、120…多領域炉心、121…第1フェイズ領域、122…第2フェイズ領域、123…第3フェイズ領域、124…第4フェイズ領域、130…多領域炉心、131…燃料集合体、132…減速集合体、133…上下多領域集合体、133a…燃料棒、133b…減速棒、133c…結合部、133d…上部タイプレート、133e…下部タイプレート

Claims (9)

  1. プルトニウム239の核変換体系を用いてプルトニウム239の核変換を行うプルトニウム239核変換ステップと、
    前記プルトニウム239核変換ステップの後に、燃焼チェーンの下流側の超ウラン核種の高次TRU核変換体系を設定する高次TRU核変換体系設定ステップと、
    前記高次TRU核変換体系設定ステップの後に前記高次TRU核変換体系を用いて前記下流側の超ウラン核種の核変換を行う高次TRU核変換ステップと、
    を有することを特徴とする超ウラン元素核変換方法。
  2. 複数の前記高次TRU核変換ステップを有し、
    複数の前記高次TRU核変換ステップ相互間は、燃焼チェーンにおいて上流側のTRU核種の核変換ステップから下流側のTRU核種の核変換ステップの順に行う、
    ことを特徴とする請求項1に記載の超ウラン元素核変換方法。
  3. 前記高次TRU核変換ステップは、
    前記プルトニウム239変換ステップの後に、プルトニウム240核変換体系を設定するプルトニウム240用体系設定ステップと、
    前記プルトニウム240用体系設定ステップの後に、前記プルトニウム240核変換体系を用いてプルトニウム240の核変換を行うプルトニウム240変換ステップと、
    前記プルトニウム240変換ステップの後に、プルトニウム242核変換体系を設定するプルトニウム242用体系設定ステップと、
    前記プルトニウム242用体系設定ステップの後に、前記プルトニウム242核変換体系を用いてプルトニウム242の核変換を行うプルトニウム242変換ステップと、
    前記前記プルトニウム242変換ステップの後に、キュリウム244核変換体系を設定するキュリウム244用体系設定ステップと、
    前記キュリウム244用体系設定ステップの後に、前記キュリウム244核変換体系を用いてキュリウム244の核変換を行うキュリウム244変換ステップと、
    を有することを特徴とする請求項2に記載の超ウラン元素核変換方法。
  4. それぞれの前記各変換ステップは、減速材の量と燃料の量との比を調整した炉心を用いて行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の超ウラン元素核変換方法。
  5. 核変換の対象とする超ウラン元素で構成されるTRU物質を核燃料物質に加えた燃料と、
    前記燃料において発生する中性子を減速させる減速材と、
    を有し、
    プルトニウム239を変換可能な中性子スペクトルを有する第1の領域と、選択された高次TRU核種を変換可能な中性子スペクトルを有する第2の領域が、それぞれ前記燃料の量と前記減速材の量の割合に基づいて形成される、
    ことを特徴とする超ウラン元素核変換炉心。
  6. 前記燃料は、前記核燃料物質であるトリウムと前記TRU物質とを溶融塩に加えた溶融塩燃料であり、
    前記減速材は、互いに並列に設けられて鉛直方向に延びてそれぞれに前記溶融塩燃料が通過する貫通孔が鉛直方向に形成されている、
    ことを特徴とする請求項5に記載の超ウラン元素核変換炉心。
  7. 前記燃料を有し鉛直方向に延びて互いに並列に配された燃料集合体と、
    前記減速材を有し鉛直方向に延びて前記燃料集合体と並列に配された減速集合体と、
    を有することを特徴とする請求項5に記載の超ウラン元素核変換炉心。
  8. 前記燃料および前記減速材を有し鉛直方向に延びて互いに並列に配された燃料集合体を有することを特徴とする請求項5に記載の超ウラン元素核変換炉心。
  9. 鉛直方向の複数の領域に分割されそれぞれの領域に交互に配された前記燃料と前記減速材を有し鉛直方向に延びて互いに並列に配された燃料集合体をさらに有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の超ウラン元素核変換炉心。
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