JP2016037653A - 溶射材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶射に供給する際の流動性が改善された溶射材料を提供すること。
【解決手段】本発明の溶射材料は、希土類元素のフッ化物と希土類元素のオキシフッ化物の少なくとも一方を含む顆粒からなる溶射材料であって、前記溶射材料は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法による小粒径側からの積算体積が50%になる粒径(D50)が20μm〜100μmであり、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法による小粒径側から粒径10μm以上になる最初のチャンネルまでの積算体積(CV0-10)が10%以下である。溶射材料の安息角は40°以下であることが好適である。溶射材料の圧縮度が25%以下であることも好適である。
【選択図】なし

Description

本発明は、希土類元素を含む溶射材料に関する。
半導体デバイスの製造におけるエッチング工程ではハロゲン系ガスが用いられる。これらのガスによるエッチング装置の腐食を防止するために、エッチング装置の内部は一般に、耐食性の高い物質を溶射することによってコーティングされている。そのような物質の一つとして、希土類元素を含む材料がしばしば用いられている。
希土類元素を含む溶射材料に関する従来の技術としては、例えば一次粒子の平均粒子径が10μm以下、アスペクト比が2以下、平均粒子径が20〜200μm、嵩べり度が30%以下である希土類元素のフッ化物の造粒粉末からなる溶射材料が知られている(特許文献1参照)。
また、イットリウムのオキシフッ化物を含み、更にイットリウムのフッ化物を含んでいてもよい顆粒からなる溶射材料であって、酸素含有量が好ましくは0.3質量%〜13.1質量%であり、破壊強度が好ましくは0.3MPa以上10MP未満である溶射材料も知られている(特許文献2参照)。
更に、希土類元素オキシフッ化物粒子の外形のアスペクト比が2以下、平均粒子径が10μm以上100μm以下、嵩密度が0.8g/cm3以上2g/cm3以下、炭素を0.5質量%以下、酸素を3質量%以上15質量%以下含有することを特徴とする希土類元素オキシフッ化物粉末溶射材料も知られている(特許文献3参照)。
これらのうち、特許文献2及び特許文献3の溶射材料は耐食性に優れており、溶射に供給する際の流動性も特許文献1の溶射材料に比べるとかなり改善されている。
しかしながら、更に流動性が改善された溶射材料が要望されている。
特開2002−115040号公報 特開2014−9361号公報 特開2014−40634号公報
したがって本発明の課題は、溶射に供給する際の流動性が改善された溶射材料を提供することである。
前記課題を解決すべく本発明者が鋭意研究したところ、驚くべきことに、粒径が特定値以下の粒子が特定の割合以下である溶射材料は、流動性が非常に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、希土類元素のフッ化物と希土類元素のオキシフッ化物の少なくとも一方を含む顆粒からなる溶射材料であって、
前記溶射材料は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法による小粒径側からの積算体積が50%になる粒径(D50)が20μm〜100μmであり、
レーザー回折・散乱式粒度分布測定法による小粒径側から粒径10μm以上になる最初のチャンネルまでの積算体積(CV0-10)が10%以下である、溶射材料を提供するものである。
本発明の溶射材料は、非常に流動性が良い。このためこの溶射材料を溶射に供給する際に、溶射材料の詰まりや脈動がなく均一に供給されるため、得られる溶射膜が均一で緻密なものとなる。特に本発明の溶射材料は流動性が良い状態を長時間維持できるため、連続的な溶射に適している。
図1は、実施例6で得られた溶射材料に係る体積基準の粒度分布図である。 図2は、比較例2で得られた溶射材料に係る体積基準の粒度分布図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の溶射材料は、希土類元素(Ln)のフッ化物(LnF3)及び希土類元素(Ln)のオキシフッ化物(LnOF)の少なくとも一方を含む顆粒を有するものである。本発明における希土類元素のオキシフッ化物(LnOF)は、希土類元素(Ln)、酸素(O)、フッ素(F)からなる化合物である。LnOFとしては、希土類元素(Ln)、酸素(O)、フッ素(F)のモル比がLn:O:F=1:1:1である化合物でも良い。あるいはLnOFは、前記のモル比がLn:O:F=1:1:1以外の化合物でも良い。例えば、Ln=Yの場合、LnOFとしては、YOFだけではなく、Y547やY769、Y469等も含み、これらのうち1種以上のオキシフッ化物を含むものである。
本発明の溶射材料は、希土類元素のオキシフッ化物(LnOF)を含むことが好ましい。つまり、希土類元素フッ化物(LnF3)及び希土類元素(LnOF)のうち、LnOFのみを含むか、あるいは、LnF3及びLnOFの両方を含むことが好ましく、LnOFのみを含むことが特に好ましい。本発明の溶射材料がLnF3を含むか否かは、Cu−Kα線又はCu−Kα1線を用いるX線回折測定において、2θ=20度〜40度の範囲にLnF3に由来するピークが観察されるか否かにより判断することができる。同様に、本発明の溶射材料がLnOFを含むか否かは、前記のX線回折測定において、前記の範囲にLnOFに由来するピークが観察されるか否かにより判断することができる。本発明の溶射材料は、前記X線回折測定において、前記の範囲にLnOFのピークが観察されることが好ましい。
本発明の溶射材料は、LnOF及び/又はLnF3のみから構成されていてもよく、あるいは後述するとおり、LnOF及びLnF3に加えて他の物質を含んでいてもよい。本発明の溶射材料は、LnOF及び/又はLnF3を含む顆粒を有する粉体である。本発明の溶射材料は、LnOF及び/又はLnF3を含む顆粒からなることが好ましく、LnOFを含む顆粒のみからなるものであってもよい。しかし、本発明の溶射材料は、必要に応じて他の粉体を含有していてもよい。例えば、本発明の溶射材料は、顆粒以外の形態の粒子を有していてもよい。顆粒以外の形態の粒子としては、例えば、顆粒が一部粉砕されてその顆粒よりも微粒となった粒子等を挙げることができる。本発明の溶射材料が、顆粒及び顆粒以外の形態の粒子を有する場合、顆粒と顆粒以外の形態の粒子とは、その組成は一般に同じである。本発明にいう顆粒とは、後述するD50の値が、後述する範囲である粒子のことである。
本発明の溶射材料は、粒径が10μm以下の微粒子が少ないことを特徴の一つとしている。本発明者は、LnOFやLnF3を含む溶射材料の流動性について鋭意研究したところ、溶射材料中における10μm以下の微粒子の量が溶射材料の流動性と強く関係していることを知見した。具体的にいうと、本発明の溶射材料は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法による小粒径側から粒径10μm以上になる最初のチャンネルまでの積算体積(CV0-10)が10%以下であることにより、流動性が非常に高い、例えば流動性が良い状態を長時間維持できるものである。本発明の溶射材料の流動性を一層高める観点から、前記の積算体積(CV0-10)は、5%以下がより好ましく、3%以下が更に好ましく、2%以下が特に好ましく、1%以下がとりわけ好ましく、0%が最も好ましい。ここで、チャンネルとは、粒度分布図における各粒径範囲を示すもので、通常、各チャンネルの粒径範囲は小粒径側が狭く、大粒径側が広くなるように設定されている。ただし、通常、使用者は各チャンネルの粒径範囲の上下限値は確認できず、各チャンネルの代表粒径のみ確認できる。したがって、上記各チャンネルの粒径範囲は各隣接チャンネル間の代表値の差により推認できる。「小粒径側から粒径10μm以上になる最初のチャンネルまでの積算体積(CV0-10)」とは、具体的には、各チャンネルのうち、粒径(代表粒径)が10μm以上になる最初のチャンネル及びそれよりも小粒側のチャンネルに存在する粒子の積算体積をいう。この積算粒径(CV0-10)は例えば、日機装株式会社製のマイクロトラックHRA及びマイクロトラック3000シリーズ(例えば、MT−3100II、MT3200II、MT3300EXII、MT3300EXII等のMT−3000IIシリーズ)で測定することができる。これらのレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置はいずれも測定範囲の下限が1μm以下であり、上限が500μm以上であり、チャンネル数が50以上である。例えば、マイクロトラックHRA及びマイクロトラックMT3300EXI
Iにおいて、粒径(代表粒径)が10μm以上になる最初のチャンネルは、代表粒径が1
0.09μmのチャンネルである。具体的には積算粒径(CV0-10)は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。また、溶射材料の積算粒径(CV0-10)を上述の範囲内に設定するためには、例えば後述する好適な製造方法において、スラリー製造条件及び造粒条件を適切に設定すればよい。なお、ここでいう積算粒径(CV0-10)及び後述するD50は、溶射材料を前処理として超音波処理に付していない溶射材料について測定したものである。
本発明の溶射材料は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法による小粒径側からの積算体積が50%になる粒径(D50)が20μm〜100μmであることも特徴の一つとしている。このD50が20μm以上であることにより、本発明の溶射材料の製造が容易となる。また100μm以下であることにより本発明の溶射材料をフレーム中で完全に溶解させることができ、それによって、得られる溶射膜の平滑性を高めることができる。この観点からD50は25μm〜80μmが更に好ましく、25μm〜70μmが特に好ましい。溶射材料のD50を上述の範囲内に設定するためには、例えば後述する本発明の溶射材料の好適な製造方法において、造粒にスプレードライ法を採用し、造粒条件を適切に設定すればよい。溶射材料のD50も積算粒径(CV0-10)と同様に、レーザー回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置、例えば上記で挙げた日機装株式会社製のマイクロトラックHRAやマイクロトラック3000シリーズ等を用いて測定できる。具体的には、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
本発明の溶射材料は、平均アスペクト比が2.0以下であることが好ましい。ここで、アスペクト比は顆粒の「長軸長さ/短軸長さ」であり、個々の顆粒のアスペクト比の算術平均値を平均アスペクト比という。溶射材料の平均アスペクト比が2.0以下であることで、更に顆粒の流動性がよく溶射装置へ安定的に供給できる。この観点から、溶射材料の平均アスペクト比は1.8以下が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.4以下が特に好ましい。平均アスペクト比の下限値は理論的に1.0であり、流動性の観点からは1.0に近いほど好ましいが、製造容易性の観点からは1.02以上が好ましい。溶射材料の平均アスペクト比を前記の範囲とするためには、例えば後述する本発明の溶射材料の好適な製造方法において、スラリー製造条件及び造粒条件を適切に設定すればよい。
平均アスペクト比は、顆粒のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影することで測定できる。観察倍率は、1000/D50〜50000/D50が好ましく、2000/D50〜40000/D50がより好ましく、3000/D50〜30000/D50が更に好ましい。他の顆粒と重なっていない顆粒20個以上のSEM写真を撮影する。必要であれば視野を変えて複数の写真を撮る。撮影した写真を必要があれば拡大コピーして、他の顆粒と重なっていない顆粒20個以上の長軸長さと短軸長さを測定する。得られた測定値から個々の顆粒のアスペクト比を計算した後、それらの算術平均値を計算して平均アスペクト比とする。アスペクト比の測定対象とする顆粒の数は、より好ましくは30個以上、更に好ましくは50個以上である。
本発明の溶射材料の安息角は、40°以下であることが好ましく、38°以下であることが更に好ましく、35°以下であることが一層好ましい。安息角とは、例えば、粉末を規定の高さから水平面上に落下させたときに生じる粉末の山の斜面が水平面に対してなす角度のことである。安息角が40°以下であると、溶射装置に供給する際の顆粒の流動性が十分に高いものとなり、均一な溶射膜を得やすい。安息角の下限には制限はないが、溶射材料の製造が容易であるという点で、20°以上が好ましい。安息角の具体的な測定方法は、後述する実施例において詳述する。溶射材料の安息角を前記の範囲とするためには、例えば後述する好適な製造方法において、スラリー製造条件及び造粒条件を適切に設定すればよい。
本発明の溶射材料は圧縮度が25%以下であることが好ましい。圧縮度は、タップ法見掛け嵩密度TD(g/cc)と静置法見掛け嵩密度AD(g/cc)を用いて下記式で定義される。
圧縮度(%)=(TD−AD)÷TD×100
本発明の溶射材料が、その圧縮度が25%以下であると、顆粒の流動性が一層よく溶射装置へ更に安定的に供給できる。この観点から圧縮度は20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが特に好ましい。圧縮度は顆粒の流動性の観点からは小さいほどよいが、溶射材料の製造の容易性という観点から2%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上が更に好ましい。前記のTD及びADは例えば多機能型粉体物性測定器マルチテスターMT−1001k型((株)セイシン企業製)を用いて後述の実施例に記載の方法により、測定することができる。なお、この測定器を用いた測定方法においては、圧縮度を求める際のTDを固めカサ密度ともいい、ADをゆるみカサ密度ともいう。圧縮度を前記の範囲とするためには、例えば後述する好適な製造方法において、スラリー製造条件及び造粒条件を適切に設定すればよい。
希土類元素(Ln)としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の16種類の元素を挙げることができる。本発明の溶射材料は、この16種類の希土類元素の少なくとも1種を含む。溶射材料の耐熱性、耐摩耗性及び耐食性などが更に一層高める観点から、これらの元素のうち、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)及びイッテルビウム(Yb)から選択される少なくとも1種の元素を用いることが好ましく、とりわけイットリウム(Y)を用いることが好ましい。
溶射材料が希土類元素のフッ化物(LnF3)を含む場合、この希土類元素のフッ化物(LnF3)の希土類元素(Ln)は、溶射材料に含まれる希土類元素のオキシフッ化物(LnOF)の希土類元素(Ln)と、通常、同じであるが、異なっていてもよい。また、溶射材料が希土類元素の酸化物(Ln23)を含む場合、この希土類元素の酸化物(Ln23)の希土類元素(Ln)は、溶射材料に含まれる希土類元素のオキシフッ化物(LnOF)の希土類元素(Ln)と、通常、同じであるが、異なっていてもよい。
本発明の溶射材料はLnOFを含んでいることから、酸素を含有している。溶射材料に含まれる酸素の量は、溶射材料が希土類元素としてイットリウム(Y)を含む場合、0.3質量%〜14質量%が好ましく、3質量%〜12質量%が更に好ましい。
また、希土類元素としてスカンジウム(Sc)を含む場合、0.3質量%〜22質量%が好ましく、4質量%〜20質量%が更に好ましい。
また、希土類元素としてイットリウム(Y)及びスカンジウム(Sc)以外の元素を用い、イットリウム及びスカンジウムを含まない場合、溶射材料に含まれる酸素の量は、0.3質量%〜10質量%が好ましく、2質量%〜9質量%が好ましい。溶射材料に含まれる酸素の含有量を0.3質量%以上とすることで、溶射時に溶射材料をより一層安定に供給しやすく、そのことによって更に平滑な溶射膜が得られやすくなる。一方、酸素の含有量を14質量%以下又は10質量%以下とすることで、溶射膜の耐食性を低下させる一因となる物質である希土類の酸化物が溶射材料中に生成することが効果的に防止され、そのことによって溶射膜の耐食性の低下を効果的に防止することができる。溶射材料に含まれる酸素の量は、例えば後述する溶射材料の製造方法において、YF3を酸素含有雰囲気中で焼成するときの条件を適切に設定すればよい。
溶射材料に含まれる酸素の量は、例えば(株)堀場製作所製の酸素・窒素測定装置であるEMGA−920によって測定することができる。
本発明の溶射材料の好適な製造方法としては、希土類元素のフッ化物又は/及び希土類元素のオキシフッ化物を含む原料のスラリーを比較的高い濃度とし、かつスプレードライヤー(噴霧乾燥装置)に該スラリーを供給する際に該スラリーを加温する方法が挙げられる。この製造方法により、目的とする溶射材料が製造できる。ここで、希土類元素のフッ化物又は/及び希土類元素のオキシフッ化物を含む原料としては、各種公知な方法で製造されたものを用いることができる。また、前記原料における希土類元素のフッ化物又はオキシフッ化物としては、前述した16種の希土類元素(Ln)のうち、少なくとも1種の元素のフッ化物又はオキシフッ化物を用いることができる。
前述した本発明の溶射材料の好適な製造方法は、以下の第1〜第5工程を有することが更に好ましい。以下、各工程について詳述する。
・第1工程:希土類元素のフッ化物又は/及び希土類元素のオキシフッ化物を含む原料を製造する。
・第2工程:第1工程で得られた原料を粉砕する。
・第3工程:第2工程で得られた粉砕された原料を、溶媒と混合して、スラリーを得る。
・第4工程:第3工程で得られたスラリーを、600g/L〜2000g/Lの濃度とし、該濃度のスラリーを50℃〜100℃に加温した状態でスプレードライヤー(噴霧乾燥装置)に供給し、該スプレードライヤーによりスラリー中の原料を造粒して造粒物を得る。
・第5工程:第4工程で得られた造粒物を焼成して、希土類元素のオキシフッ化物及び希土類元素のフッ化物を含む顆粒を得る。
〔第1工程〕
希土類元素のフッ化物又は/及び希土類元素のオキシフッ化物を含む原料は、希土類元素のフッ化物を焼成することにより得るか、あるいは該フッ化物若しくはその焼成物と、希土類元素の酸化物、炭酸塩若しくはシュウ酸塩との混合物を焼成することにより得ることが好ましい。以下では、このスラリー原料の好適な製造方法を、(1)希土類元素のフッ化物を含み希土類元素のオキシフッ化を含まない原料を製造する場合と、(2)希土類元素のオキシフッ化物を含み希土類元素のフッ化物を含まないか、又は希土類元素のフッ化物と希土類元素のオキシフッ化物の両方を含む原料を製造する場合とに分けて説明する。
(1)希土類元素のフッ化物を含み希土類元素のオキシフッ化を含まない原料を製造する好適な方法においては、希土類元素のフッ化物を合成する。希土類元素のフッ化物は種々の方法で合成することができる。特に湿式合成を行うことが、均一な高純度品が容易に得られるという点から好ましい。希土類元素のフッ化物は、例えば希土類元素の酸化物、炭酸塩及び水酸化物等の酸に可溶な希土類元素の化合物を、硝酸若しくは塩酸によって溶解した液、又は希土類元素の硝酸塩及び塩化物等の水溶性化合物を、水若しくは水及び酸によって溶解した液と、フッ化水素酸及びフッ化アンモニウム等のフッ素含有水溶性化合物とを混合して、希土類元素のフッ化物の沈殿を生成させ、この沈殿の洗浄及びろ過を行い、更に乾燥することにより得られる。別の方法として、希土類元素の炭酸塩、シュウ酸塩、水酸化物又は酸化物などを水でスラリーとなし、このスラリーにフッ素含有水溶性化合物を添加して、希土類元素のフッ化物の沈殿を生成させ、この沈殿の洗浄及びろ過を行い、更に乾燥することにより得ることもできる。本方法では、これらの湿式合成により得られた希土類元素のフッ化物を、300℃〜600℃にて焼成する。ここで焼成時間は1〜48時間が好ましく、2〜36時間がより好ましい。
(2)希土類元素のオキシフッ化物を含み希土類元素のフッ化物を含まないか、又は希土類元素のフッ化物と希土類元素のオキシフッ化物の両方を含む原料を製造する好適な方法としては、以下の(2−1)又は(2−2)が挙げられる。
(2−1)前記(1)における焼成前の希土類元素のフッ化物を、750℃〜1100℃にて焼成する。焼成時間は1〜48時間が好ましく、2〜36時間がより好ましい。
(2−2)前記(1)における焼成前又は焼成後の希土類元素のフッ化物に、希土類元素の酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩等を混合後、得られた混合物を600℃〜1100℃にて焼成する。この場合、希土類元素のフッ化物と、希土類元素の酸化物、炭酸塩若しくはシュウ酸塩との混合比率は、希土類元素のフッ化物100モル部に対して希土類元素の酸化物、炭酸塩若しくはシュウ酸塩が1モル部〜110モル部であることが好ましく、2モル部〜100モル部であることがより好ましく、5モル部〜90モル部であることが特に好ましい。また、いずれの混合比の場合も、焼成における焼成時間は1〜48時間が好ましく、2〜36時間がより好ましい。
ここで希土類元素のフッ化物又は/及び希土類元素のオキシフッ化物を含む原料を得るためには、(1)、(2−1)及び(2−2)の各方法のように、造粒前に焼成することが好ましい。また、焼成雰囲気は、(2−1)及び(2−2)のように希土類元素のフッ化物(LnF3)を原料として希土類元素のオキシフッ化物(LnOF)を生成させる場合、酸素含有雰囲気とすることが望ましい。酸素含有雰囲気としては、大気を用いることが、雰囲気調整が不要である点から簡便である。また、(1)のように希土類元素のフッ化物(LnF3)のみを含む原料を得る場合には、大気雰囲気下で焼成を行うことが簡便であるが、特に酸素含有量の少ない原料を得る場合には不活性雰囲気下で行ってもよい。このように造粒前に焼成することによって、造粒後に焼成したときに得られる顆粒の強度が大きくなる。また特に(2−1)の方法は、造粒前の焼成により目的とする組成の原料が得られる。また特に(2−2)の方法において、造粒前に焼成することは、造粒後の焼成により得られる顆粒が均一な組成となりやすい。第1工程で得られた原料が、希土類元素のフッ化物及び希土類元素のオキシフッ化物のいずれを含むかは、上述したX線回折測定において前記の範囲におけるピークの有無により確認することができる。また、第1工程で得られた原料は、希土類元素の酸化物を極力含まないことが好ましく、前記のX線回折測定において前記範囲に希土類元素の酸化物のピークが観察されないことが好ましい。
〔第2工程〕
本工程では、第1工程で得られた原料を粉砕する。粉砕には、乾式粉砕及び湿式粉砕のいずれもが使用可能である。粉砕は1段階で実施してもよく、あるいは2段階以上で実施してもよい。特に、第1工程で得られた原料が塊状になっている場合には、2段階以上の粉砕を行い、かつ各段階で適合した粉砕機を使用することが好ましい。2段階以上の粉砕を行う場合には、コストと手間の点から2段階での粉砕を行うことが好ましい。
本工程において、乾式粉砕を行わない直接湿式粉砕又は乾式粉砕後に湿式粉砕を行う場合には、本工程と、次に述べる第3工程とを兼ねて実施することが可能である。乾式粉砕を行う場合には、例えば擂潰機、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル及びピンミルなどの各種乾式粉砕機を用いることができる。一方、湿式粉砕を行う場合には、例えばボールミルやビーズミルなどの各種湿式粉砕機を用いることができる。
本工程における原料の粉砕の程度は、レーザー回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置を用いて測定したD50が0.3〜5μmとなる程度であることが好ましい。この程度の粉砕を行うことで、均一な顆粒を製造できるとともに、顆粒の破壊強度を高くすることができる。これらの観点から、D50は0.5〜3μmであることが更に好ましい。また、粉砕前に原料のD50が5μm以下であれば、粉砕しなくてもよい。
〔第3工程〕
本工程では、第2工程で得られた、粉砕された原料を溶媒に撹拌混合してスラリーを得る。溶媒の種類に特に制限はなく、例えば水や各種の有機溶媒を用いることができる。本工程において、スラリー中における原料の濃度は上述のように600g/L〜2000g/Lとし、好ましくは800g/L〜1800g/Lとする。本発明者は、スラリーの濃度をこの範囲内とし、更に、該スラリーをスプレードライヤーへの供給時に所定温度に加温することで、本発明の溶射材料が容易に得られることを見出したものである。また、スラリーの濃度をこの範囲内に設定することで、エネルギーの過度の消費を抑制することができ、またスラリーの粘度が適切なものになって噴霧を安定させることができる。なお、上述した特許文献1においては、スラリー中に結合剤を添加することを必須としていたが、本製造方法によれば結合剤を使用しなくても十分な破壊強度を有する顆粒が得られる。尤も、本製造方法において結合剤を用いることは妨げられない。
〔第4工程〕
本工程では、第3工程で得られたスラリーを、スプレードライヤーで造粒して原料の造粒物を得る。スラリーは、50℃〜100℃、好ましくは55℃〜95℃、更に好ましくは60℃〜90℃に加温した状態で、スプレードライヤー(噴霧乾燥装置)に供給する。通常、スラリーのスプレードライヤーへの供給は、スラリー供給タンク中のスラリーを撹拌しながらポンプにてチューブを通して供給する。加温した状態でスラリーを供給するためには、スラリー供給タンクを加熱する方法やチューブに熱交換器を取り付ける方法がある。チューブのスプレードライヤー接続部分近傍に熱交換器を取り付ければ途中の温度低下はほとんどないが、その他の場合には温度低下を考慮して加熱温度を設定する必要がある。スプレードライヤーを運転するときのアトマイザーの回転数は5000min-1〜30000min-1とすることが好ましい。回転数を5000min-1以上とすることで、スラリー中での原料の分散を十分に行うことができ、それによって均一な造粒物を得ることができる。一方、回転数を30000min-1以下とすることで、目的とする粒径の顆粒が得られやすくなる。これらの観点から、アトマイザー回転数は6000min-1〜25000min-1とすることが更に好ましい。
スプレードライヤーを運転するときの入口温度は150℃〜300℃とすることが好ましい。入口温度を150℃以上とすることで、固形分の乾燥を十分に行うことができ、残存する水分が少ない顆粒を得やすくなる。一方、入口温度を300℃以下とすることで、無駄なエネルギーの消費を抑制できる。
〔第5工程〕
本工程では、第4工程で得られた造粒物を焼成して希土類元素のフッ化物又は/及び希土類元素のオキシフッ化物を含む原料の造粒顆粒を得る。この焼成の程度に応じて、顆粒の破壊強度を制御することができる。詳細には、焼成温度は300℃〜900℃であることが好ましい。焼成温度を300℃以上とすることで、造粒された顆粒の破壊強度を十分に高くすることができる。一方、焼成温度を900℃以下とすることで、造粒された顆粒の破壊強度が過度に高くなることを防止することができる。これらの観点から、焼成温度は350℃〜800℃とすることが更に好ましく、400℃〜700℃とすることが一層好ましい。また特に、原料が希土類元素のフッ化物及び希土類元素のオキシフッ化物のうち希土類元素のフッ化物のみを含む場合は、第5工程の焼成温度は300℃〜600℃に設定することが好ましい。
第5工程の焼成時間は、焼成温度が上述の範囲内であることを条件として、1時間〜48時間とすることが更に好ましく、2時間〜36時間とすることが一層好ましい。焼成は、一般に大気雰囲気下で行うことが簡便であるが、それ以外の雰囲気下、例えば不活性雰囲気下で焼成を行ってもよい。
このようにして得られた溶射材料は、各種の溶射に好適に用いられる。溶射方法の例としては、例えばプラズマ溶射やフレーム溶射(フレーム溶射としては特に高速フレーム溶射)が挙げられる。溶射の対象となる基材としては、例えばアルミニウム等の各種の金属、アルミニウム合金等の各種の合金、アルミナ等の各種のセラミックス、石英などが用いられる。
また、本発明の溶射材料は、溶射材料としてだけではなく、その他の用途、例えばセラミックス部品の材料としても好適に用いることができる。詳細には、本発明の溶射材料を、例えば通常のプレス法、CIP、HIP法等で製造されるセラミックス部品の原料として用いると、平滑性や耐パーティクル性などに優れたセラミックス部品を得ることができる。そのようなセラミックス部品は、例えば電子材料やその焼成時の治具に好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
本実施例では、オキシフッ化イットリウム(YOF)及びフッ化イットリウム(YF3)を含む顆粒からなる溶射材料を、以下の(ア)〜(エ)の工程にしたがい製造した。
(ア)第1工程
(i) 湿式合成によるフッ化イットリウム(YF3)乾燥物の製造
99.9質量%酸化イットリウム300kgを、撹拌した純水400L中に投入してスラリーを得た。そこへ15mol/Lの硝酸水溶液を5L/分の速度で550L添加した後、30分間撹拌を続けた。その後、真空ろ過を行い、Y23換算で270g/Lの溶解液1100Lを得た。
この溶解液を撹拌しながら、50質量%フッ化水素酸300Lを5L/分の速度で添加してフッ化イットリウムの沈殿を生成させた。沈殿の沈降、上澄液抜出、純水添加及びリパルプの各操作を2回実施した後、再度、沈降、上澄液抜出を行った。このようにして得られた泥状物を、ポリ四フッ化エチレン製のバットに入れて150℃で48時間乾燥させた。次いで、乾燥物を粉砕してフッ化イットリウム乾燥物を得た。このフッ化イットリウム乾燥物についてX線回折測定を行ったところ、YF3の回折ピークのみが観察され、オキシフッ化イットリウム(YOF)の回折ピークは観察されなかった。得られたフッ化イットリウム乾燥物のD50を測定したところ、6.2μmであった。
(ii)フッ化イットリウム乾燥物の焼成
(i)で得られたフッ化イットリウム乾燥物をアルミナ製の容器に入れ、大気雰囲気下、電気炉中で焼成した。焼成温度及び焼成時間は表1に示すとおりとした。焼成後の原料について、下記の条件のX線回折測定を行い、X線回折図を得た。このX線回折図において、LnOF、LnF3及びLn23のうち、ピークが観察されたものを、表1の焼成後の組成の項に記載した。表1に示す例では、実施例1の第1工程で得られた焼成後の原料において、X線回折測定により、YOF、YF3及びY23のうち、YOFが生成していることが確認された。
〔X線回折測定〕
・装置:UltimaIV(株式会社リガク製)
・線源:CuKα線
・管電圧:40kV
・管電流:40mA
・スキャン速度:2度/min
・ステップ:0.02度
・スキャン範囲:2θ=20度〜40度
(イ)第2工程及び第3工程
第1工程で得られた焼成品を純水とともにビーズミルに入れて湿式粉砕した。マイクロトラックHRAにて測定したD50が1.0μm〜2.0μmになるように粉砕を実施した。粉砕後、更に純水を加えて濃度調整を行い、下記表1の濃度のスラリーとなした。
(ウ)第4工程
第3工程で得られたスラリーをスプレードライヤー(大河原化工機(株)製)を用いて造粒・乾燥し、造粒物を得た。スラリーをスプレードライヤーに供給する際には、スラリーを下記の表1に記載の温度に加温した。加温は、上述したように、スプレードライヤーに接続するチューブを加温する方法により行った。スプレードライヤーのアトマイザーの回転数は、表1に示すとおりとした。その他のスプレードライヤーの操作条件は以下のとおりとした。
・スラリー供給速度:300mL/min
・入口温度:200℃
(エ)第5工程
第4工程で得られた造粒物をアルミナ製の容器に入れ、大気雰囲気下、電気炉中で焼成して造粒顆粒を得た。焼成温度は600℃、焼成時間は12時間とした。このようにして、目的とする溶射材料を得た。
〔実施例2ないし10及び比較例1ないし3〕
実施例1の第4工程の造粒において、スラリー濃度として表1に示す条件を採用した以外は実施例1と同様にして溶射材料を得た。
〔比較例4〕
実施例1の第4工程において、スラリー濃度及びスラリーをスプレードライヤーに供給する際の加温温度について、表1に示す条件を採用した以外は実施例1と同様にして溶射材料を得た。
〔実施例11、比較例5〕
実施例1の第3工程におけるスラリー濃度及び/又は第4工程における加温温度について、表1に示す条件を採用し、更に同工程におけるアトマイザー回転数について表1に示す条件を採用した以外は実施例1と同様にして溶射材料を得た。
〔実施例12、実施例13〕
実施例1の第1工程において得られたフッ化イットリウム(YF3)乾燥物を焼成する代わりに、以下の組成の混合物を焼成した以外は実施例1と同様にして溶射材料を得た。下記の<混合物の組成>においてYF3乾燥物としては、実施例1の第1工程において得られたYF3乾燥物を用いた。またY23としては、日本イットリウム株式会社製酸化イットリウム(D50:3.3μm)を使用した。
<混合物の組成>
実施例12:YF3乾燥物10kgとY23 8kgとの混合物
(モル比 YF3:Y23=100:52)
実施例13:YF3乾燥物7kgとY23 10kgとの混合物
(モル比 YF3:Y23=100:92)
〔実施例14〜実施例16〕
実施例1の第1工程において、表1に示す焼成条件を採用した以外は実施例1と同様にして溶射材料を得た。ただし、実施例16のみ第5工程の焼成条件を300℃、12時間とした。
〔実施例17〕
本実施例は、イットリウム以外の希土類元素を含む溶射材料を製造した例である。
(ア)第1工程
(i)サマリウムのフッ化物の湿式合成
実施例1における第1工程で用いた酸化イットリウムに代えて、酸化サマリウムを用いた。酸化サマリウムの使用量は以下の表2に示すとおりとした。この酸化サマリウムを、撹拌した純水40L中に投入してスラリーを得た。そこへ15mol/Lの硝酸水溶液を5L/分の速度で55L添加した後、30分間撹拌を続け、真空ろ過を行い、溶解液を得た。この溶解液を撹拌しながら、50質量%フッ化水素酸30Lを5L/分の速度で添加して沈殿を生成させた。沈殿の沈降、上澄液抜出、純水添加及びリパルプの各操作を2回実施した後、再度、沈降、上澄液抜出を行った。このようにして得られた泥状物をポリ四フッ化エチレン製のバットに入れて150℃で48時間乾燥させた。次いで、乾燥物を粉砕してサマリウムのフッ化物を得た。
(ii)サマリウムのフッ化物の焼成
(i)で得られたフッ化物をアルミナ製の容器に入れ、大気雰囲気下、電気炉中で焼成した。焼成温度及び焼成時間は上記表1に示す条件を採用した。
(イ)第2工程〜第5工程
実施例7と同様にした。これによって、目的とする溶射材料を得た。
〔実施例12ないし16〕
本実施例も、実施例11と同様に、イットリウム以外の希土類元素を含む溶射材料を製造した例である。実施例11において、第1工程で用いた酸化サマリウムに代えて、以下の表2に示す希土類元素の酸化物を、同表に示す使用量で用いた。これ以外は実施例11と同様にして、目的とする溶射材料を得た。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた溶射材料について平均粒径D50を下記の方法で測定した。また、積算体積(CV0-10)、安息角(°)、圧縮度(%)を下記の方法で測定した。また平均アスペクト比及び酸素含有量(質量%)を上述の方法で測定した。また、以下に述べる方法で、形成された溶射膜の表面粗さを測定した。また、以下に述べる方法で、溶射時に顆粒を供給するときの流動性を評価した。それらの結果を以下の表3に示す。また、実施例6で得られた溶射材料について、下記の方法で積算体積(CV0-10)を測定した際に得られた体積基準の粒度分布図を図1に示す。比較例2で得られた溶射材料について同様にして得られた体積基準の粒度分布図を図2に示す。これらの図から、比較例2で得られた溶射材料には10μm以下の微粒子が多く含まれているのに対し、実施例6で得られた溶射材料には、この範囲の微粒子がほとんど存在しないことが判る。
また、実施例及び比較例で得られた溶射材料について、上記の条件のX線回折測定を行ってX線回折図を得、得られたX線回折図に基づき組成を調べたところ、いずれの実施例及び比較例においても、表1に示す第1工程における焼成後の組成と同じであった。
〔D50及び積算体積(CV0-10)〕
D50及び積算体積(CV0-10)は、日機装株式会社製マイクロトラックHRAにて測定した。測定の際には、分散媒として2質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、マイクロトラックHRAの試料循環器のチャンバーに試料(顆粒)を装置が表示する適正濃度範囲のほぼ中央になるまで添加した。
〔安息角〕
安息角は、多機能型粉体物性測定器マルチテスター MT−1001k型((株)セイシン企業製)を用いて安息角(°)を測定した。粉末を落下させる高さ等の各測定条件は、この測定器に規定されたとおりとした。
〔圧縮度〕
圧縮度は、多機能型粉体物性測定器マルチテスター MT−1001k型((株)セイシン企業製)を用いてゆるみカサ密度(AD)と固めカサ密度(TD)を測定し、圧縮度(%)=(TD−AD)÷TD×100にて圧縮度を計算した。なお、固めカサ密度の測定はストローク18mm、タッピング回数180回にて実施した。
〔溶射膜の表面粗さ〕
基材として100mm角のアルミニウム合金板を、各実施例及び比較例について10枚ずつ使用した。この基材の表面にプラズマ溶射を行った。溶射材料の供給装置として、プラズマテクニック製のTWIN−SYSTEM 10−Vを用いた。プラズマ溶射装置として、スルザーメテコ製のF4を用いた。撹拌回転数50%、キャリアガス流量2.5L/min、供給目盛10%、プラズマガスAr/H2、出力35kW、装置−基材間距離150mmの条件で、膜厚約100μmになるようにプラズマ溶射を行った。プラズマ溶射は各実施例、比較例とも10枚の基材に対して連続して行った。これによって得られた1枚目と10枚目の溶射膜の表面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)(JIS B 0601:2001)を、触針式表面粗さ測定器(JIS B0651:2001)で測定した。
〔溶射時に顆粒を供給するときの流動性(相対供給量)〕
上述した「溶射膜の表面粗さ」の測定を行うために使用した溶射材料の供給装置であるプラズマテクニック製のTWIN−SYSTEM 10−Vを用いた。この供給装置を、プラズマ溶射装置を繋げずに、撹拌回転数50%、キャリアガス流量2.5L/min、供給目盛10%の条件で運転し、運転開始1分〜2分及び19分〜20分の顆粒の供給量を測定し、実施例1の運転開始1分〜2分の供給量を100とした相対供給量及び1分〜2分の供給量に対する19分〜20分の供給量の割合(%)を計算した。供給量が多いほど流動性がよく、1分〜2分の供給量に対する19分〜20分の供給量の割合(%)が大きいほど流動性が良い状態を長時間維持可能であることを示す。
表3に示す結果から、D50が20μm〜100μmでありかつ積算体積(CV0-10)が10%以下である実施例1ないし21の溶射材料は、相対供給量が多い状態を長時間維持できる、つまり流動性が良い状態を長時間維持できることが判る。また、各実施例の溶射材料を用いて溶射を行うと、10枚目においても表面粗さの小さな溶射膜が得られることが判る。一方、積算体積(CV0-10)が10%超である各比較例の溶射材料は、流動性が比較的低く、また経時的に流動性が低下することが判る。また、比較例2〜5の溶射材料を用いて連続的に溶射を行うと、溶射開始から時間を経て得られる溶射膜の表面粗さが粗いものとなることが判る。なお、比較例1の溶射材料はプラズマ供給装置内に顆粒が詰まり動かなくなったため、10枚目の溶射ができなかった。

Claims (6)

  1. 希土類元素のフッ化物と希土類元素のオキシフッ化物の少なくとも一方を含む顆粒を有する溶射材料であって、
    前記溶射材料は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法による小粒径側からの積算体積が50%になる粒径(D50)が20μm〜100μmであり、
    レーザー回折・散乱式粒度分布測定法による小粒径側から粒径10μm以上になる最初のチャンネルまでの積算体積(CV0-10)が10%以下である、溶射材料。
  2. 安息角が40°以下である、請求項1に記載の溶射材料。
  3. 圧縮度が25%以下である、請求項1又は2に記載の溶射材料。
  4. 平均アスペクト比が2.0以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶射材料。
  5. 希土類元素(Ln)が、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)及びイッテルビウム(Yb)から選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶射材料。
  6. 希土類元素(Ln)がイットリウム(Y)である請求項5に記載の溶射材料。
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