JP2016037498A - 熱中症予防剤、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤、及び食品 - Google Patents

熱中症予防剤、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤、及び食品 Download PDF

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Abstract

【課題】高温環境下で、スポーツなどの過度な運動を行っても、体温及び筋肉温度の上昇抑制、体内の水分喪失の抑制、並びに3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素を活性化することにより、熱中症を予防することができる熱中症予防剤、及び食品の提供。【解決手段】α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有する熱中症予防剤、α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有する3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤、及び食品である。【選択図】なし

Description

本発明は、熱中症予防剤、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤、及び食品に関する。
従来より、熱中症は、高温環境下で、体内の水分やナトリウムなどの塩分のバランスが崩れることにより、高熱、失神、手足のしびれ、頭痛、吐き気、肝機能異常、腎機能障害などの症状を発症すると考えられている。そのため、運動中の体内水分の蓄積に効果的なグリセリンと水の混合による熱中症予防剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、深部体温の上昇を抑制して、積極的に熱中症の予防ができる卵白を加水分解して得られる卵白ペプチドを有効成分として含有する熱中症予防飲料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらの提案は、体温上昇の抑制、及び体内の水分喪失の抑制などの熱中症予防の効果が未だ不十分であるという問題があり、さらなる熱中症予防剤の開発が望まれている。
特開2004−123686号公報 特開2008−72968号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高温環境下で、スポーツなどの過度な運動を行っても、体温上昇の抑制、及び体内の水分喪失の抑制に優れ、熱中症を予防することができる熱中症予防剤、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤、及び食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、α−リノレン酸を含む油脂組成物を摂取することにより、高温環境下で、スポーツなどの過度な運動を行っても、体温及び筋肉温度の上昇抑制、体内の水分喪失の抑制に優れ、熱中症を予防することができるという知見を得た。
また、熱中症は、高熱に伴い、ミトコンドリア内における脂質代謝系酵素活性を低下させ、その結果、アデノシン三リン酸(以下、「ATP」ともいう。)供給不全を来たし、多臓器損傷、多臓器不全を引き起こすことも考えられる。ミトコンドリア内の脂質代謝系酵素としては、例えば、カルニチンアシルトランスフェラーゼIIや3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素などが知られている。本発明者らは、α−リノレン酸を含む油脂組成物を摂取することにより、脂質代謝に関与するβ−酸化系脂質代謝酵素である3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素の活性の低下を抑制することにより、熱中症を予防することができるという知見を得た。
前記脂質代謝は、下記反応式1〜6に示す反応により行われる。ただし、下記反応式1〜6中、Rは、飽和炭化水素基を表す。
下記反応式1に示すように、細胞質内に存在する脂肪酸は、ATPと反応して、カルボン酸に由来する構造単位に、アデノシン一リン酸(以下、「AMP」ともいう。)が修飾した脂肪酸アシルアデニル酸に変換される。次いで、前記脂肪酸アシルアデニル酸のカルボン酸に由来する構造単位に補酵素A(以下、「CoA」ともいう。)が求核攻撃することにより、AMPに由来する構造単位がCoAに由来する構造単位に置換されて脂肪酸アシルCoAに変換される。前記脂肪酸アシルCoAは、ミトコンドリア内において、β−酸化を受けて、アセチルCoAを産生し、クエン酸回路を通じてATPを供給する。しかし、前記脂肪酸アシルCoAは、単独ではミトコンドリア内膜を通過することができない。そのため、前記脂肪酸アシルCoAは、カルニチンアシルトランスフェラーゼIにより、CoAに由来する構造単位がカルニチンに由来する構造単位に置換されて脂肪酸アシルカルニチンに変換され、前記脂肪酸アシルカルニチンが、ミトコンドリア内膜を横切って存在するアシルカルニチントランスロカーゼによりミトコンドリア内に輸送される。
(反応式1)
Figure 2016037498
下記反応式2に示すように、ミトコンドリア内に輸送された前記脂肪酸アシルカルニチンは、カルニチンアシルトランスフェラーゼIIにより、カルニチンに由来する構造単位がCoAに由来する構造単位に置換されて、再び脂肪酸アシルCoAに変換される。
(反応式2)
Figure 2016037498
下記反応式3に示すように、反応式2により変換された前記脂肪酸アシルCoAは、アシルCoAデヒドロゲナーゼにより、トランス−Δ−エノイルCoAに変換される。
(反応式3)
Figure 2016037498
下記反応式4に示すように、前記トランス−Δ−エノイルCoAは、エノイルCoAヒドラターゼにより、L−β−ヒドロキシアシルCoAに変換される。
(反応式4)
Figure 2016037498
下記反応式5に示すように、前記L−β−ヒドロキシアシルCoAは、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素により、β−ケトアシルCoAに変換される。
(反応式5)
Figure 2016037498
下記反応式6に示すように、前記β−ケトアシルCoAは、β−ケトアシルCoAチオラーゼにより、アセチルCoA及びアシルCoAに変換される。
(反応式6)
Figure 2016037498
前記アセチルCoAは、その後、クエン酸回路に入り、ATPの産生に寄与する。一方、前記アシルCoAは、すべてがアセチルCoAに変換されるまで、前記反応式3〜6の反応を繰り返す。
以上より、前記反応式5の反応を触媒する3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素の活性が低下すると、それよりも下流に存在する反応式6で示される反応により十分量のアセチルCoAに変換されず、結果として、ATPの供給不全が引き起こされる。即ち、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性の低下により、ATP供給不足に陥り、多臓器損傷、多臓器不全が引き起こされることも考えられる。
前記知見に基づき本発明者が鋭意検討を重ねた結果、α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有する熱中症予防剤が、熱中症の予防に優れることを知見した。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有することを特徴とする熱中症予防剤である。
<2> α−リノレン酸の含有量が、油脂組成物中の脂肪酸全量に対して、30質量%以上である前記<1>に記載の熱中症予防剤である。
<3> α−リノレン酸を含む油脂組成物が、サチャインチオイル、エゴマ油、及びアマニ油から選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱中症予防剤である。
<4> α−リノレン酸を含む油脂組成物が、サチャインチオイルである前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱中症予防剤である。
<5> α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有することを特徴とする3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤である。
<6> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱中症予防剤、又は前記<5>に記載の3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤を含有することを特徴とする食品である。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、高温環境下で、スポーツなどの過度な運動を行っても、体温及び筋肉温度の上昇抑制、体内の水分喪失の抑制に優れ、熱中症を予防することができる熱中症予防剤、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤、及び食品を提供することができる。また、本発明によれば、細胞内エネルギー源であるATPの産生に係る脂質代謝酵素である3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素を活性化し、高温環境下におけるATP供給不全を回避することにより、細胞機能不全に基づく多臓器損傷や多臓器不全に起因する熱中症を予防することができる。
図1は、油脂組成物の摂取における影響の評価1の35℃運動負荷前後の直腸温を示すグラフである。 図2は、油脂組成物の摂取における影響の評価1の35℃運動負荷による直腸温の上昇量を示すグラフである。 図3は、油脂組成物の摂取における影響の評価1の35℃運動負荷による脱水率を示すグラフである。 図4は、油脂組成物の摂取における影響の評価1の35℃運動負荷後の3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性を示すグラフである。 図5は、油脂組成物の摂取における影響の評価1の35℃運動負荷後の下肢骨格筋(腓腹筋)でのヒートショックプロテイン72の発現割合を示すグラフである。 図6は、油脂組成物の摂取における影響の評価1の35℃運動負荷後の左心室壁でのヒートショックプロテイン72の発現割合を示すグラフである。 図7は、油脂組成物の摂取における影響の評価2の35℃運動負荷における走行時間を示すグラフである。 図8は、油脂組成物の摂取における影響の評価2の23℃非運動暴露、又は35℃運動曝露による直腸温の上昇量を示すグラフである。
(熱中症予防剤、及び3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤)
本発明の熱中症予防剤は、α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明の3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤は、α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
<α−リノレン酸を含む油脂組成物>
前記α−リノレン酸を含む油脂組成物としては、α−リノレン酸を含んでいれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記α−リノレン酸は、n−3系多価不飽和脂肪酸であり、IUPAC名は、all−cis−9,12,15−オクタデカトリエン酸である。
前記α−リノレン酸の含有量としては、油脂組成物中の脂肪酸全量に対して、30質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、45質量%以上80質量%以下が特に好ましい。
前記α−リノレン酸を含む油脂組成物としては、例えば、サチャインチオイル(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:47.7質量%)、キャノーラオイル(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:7.7質量%)、ナタネ油 ハイエルシック(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:0質量%〜1質量%)、ナタネ油 ローエルシック(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:9質量%〜16質量%)、アマニ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:30質量%〜58質量%)、サフラワー油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:0質量%〜1質量%)、ヒマワリ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:0質量%〜1質量%)、大豆油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:3質量%〜8質量%)、トウモロコシ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:0質量%〜3質量%)、ラッカセイ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:0質量%〜1質量%)、ゴマ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:0質量%〜2質量%)、コメ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:0質量%〜1質量%)、オリーブ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:0質量%〜1質量%)、ヒマシ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:0質量%〜1質量%)、エゴマ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:30質量%〜65質量%)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、サチャインチオイル(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:47.7質量%)、エゴマ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:30質量%〜65質量%)、アマニ油(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:30質量%〜58質量%)が好ましく、サチャインチオイル(脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量:47.7質量%)がより好ましい。
前記α−リノレン酸を含む油脂組成物の脂肪酸組成について、表1〜表3に示す。なお、前記油脂組成物中の脂肪酸としては、下記の条件で測定することができる。
スクリューキャップ付き試験管(外径12mm、容量10mL、キャップ:プラスチック製、パッキン:シリコン製)に各油脂組成物40mg〜60mgを採取し、内部標準としてヘプタデカン酸6mg相当量加えた後、ヘキサン2mLを加え、撹拌して油脂組成物を溶解する。その後、窒素ガス下でヘキサンを留去し、0.5M/L 水酸化ナトリウム/メタノール溶液を加え、試験管内を窒素パージした後、蓋を締めて100℃、9分間加熱(適宜混和)してヒートブロックする。加熱後、氷で冷却した後、三ふッ化ホウ素−メタノール試液(和光純薬工業株式会社製)を加え、試験管内を窒素パージ蓋を締めて100℃で、7分間加熱(適宜混和)してヒートブロックする。次に、加熱後は、試験管を氷で冷却し、ヘキサン3mLを加え、振とう後、飽和食塩水5mLを加え、軽く振り混ぜ、1,500rpmで10分間遠心分離する。前記遠心分離により分離されたヘキサン層を下記条件のガスクロマトグラフ/水素炎イオン化型検出器(以下、「GC−FID」と称することもある)を用いて測定することができる。
−GC−FID−
・System:GC−4000Plus(ジーエルサイエンス株式会社製)
・Column:商品名:InertCap Pure−WAX 0.25mmI.D.×30m df=0.25μm(ジーエルサイエンス株式会社製)
・Column Temp.:150℃(5分間)→10℃/分間→250℃(20分間)
・Carrier Gas:ヘリウム(He)、100kPa
・Injection:Split 1:80 1.0μL、250℃
・検出:FID Range 10°、260℃
なお、ピーク位置確認のための標準物質は、脂肪酸メチル混合標準サンプル(商品名:RM−2、シグマ アルドリッチ社製)を用いることができる。
Figure 2016037498
Figure 2016037498
Figure 2016037498
<<サチャインチオイル>>
前記サチャインチオイルは、南米ペルーを原産地とするトウダイグサ科の一般名:「サチャインチ」(学名:「プルケネティア」、(Plukenetia))から抽出されるオイルであり、例えば、インカインチオイル、インカナッツオイル、インカグリーンナッツオイル、アマゾングリーンナッツオイル、グリーンナッツオイル、INCI名:「プルケネチアボルビリス種子油」などと呼ばれることもある。なお、前記INCI名は、日本化粧品工業連合会が規定する表示名称である。
前記サチャインチとしては、例えば、プルケネティア・ボルビリス(Plukenetia volubilis L.)、プルケネティア・ワイヤバンバナ(Plukenetia huayllabambana R.W.Bussmann, C.Tellez & A.Glenn)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、プルケネティア・ボルビリス(Plukenetia volubilis L.)が好ましい。
前記サチャインチオイルの熱量としては、サチャインチオイル100g当たり、800kcal〜1,000kcalが好ましく、850kcal〜950kcalがより好ましい。
前記サチャインチオイルの栄養成分としては、タンパク質、脂質、炭水化物、ナトリウム、コレステロール、ビタミンE、α−リノレン酸が含まれていることが知られている。
前記タンパク質の含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、0.01g〜0.5gが好ましく、0.05g〜0.2gがより好ましい。
前記脂質の含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、10g〜200gが好ましく、50g〜150gがより好ましい。
前記炭水化物の含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、0g〜10gが好ましく、0g〜2gがより好ましい。
前記ナトリウムの含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、0mg〜10mgが好ましく、0mg〜2mgがより好ましい。
前記コレステロールの含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、0g〜10gが好ましく、0g〜2gがより好ましい。
前記ビタミンEの含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、100mg〜300mgが好ましく、150mg〜250mgがより好ましい。
前記α−リノレン酸(Omega3)の含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、30g〜70gが好ましく、40g〜60gがより好ましい。
前記サチャインチオイルの品質基準としては、例えば、酸価、過酸化物価、ヨウ素価などが挙げられる。
前記酸価としては、コールドプレス等により搾油した、いわゆる生絞り油の場合は、3mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以下がより好ましい。前記酸価が3mgKOH/gを超えると、サチャインチオイル中の遊離脂肪酸が多くなり、サチャインチオイルが酸化されてしまう傾向にある。なお、前記酸価は、油脂組成物1g中に含まれる遊離脂肪酸を水酸化カリウムで滴定して求めることができるが、例えば、酸価測定用試験紙(商品名:「油脂劣化度判定試験紙 AV−CHECK」、株式会社J−オイルミルズ製)を用いて簡便に測定することもできる。なお、酸価は、サチャインチオイル中に含まれる遊離脂肪酸の量を表す。
前記過酸化物価としては、30meq/kg以下が好ましく、10meq/kg以下がより好ましく、5meq/kg以下が特に好ましい。前記過酸化物価が、30meq/kgを超えると、食品に異臭を生じ、風味、色調等を変化させ栄養成分が分解され、味覚への影響だけでなく人体に有害な作用を及ぼすことがある。なお、前記過酸化物価の測定法としては、酸化した油脂に酸性でヨウ化カリウムを作用させ、遊離してくるヨウ素を滴定法で求めるチオ硫酸ナトリウム滴定法などが挙げられるが、例えば、過酸化物価測定用試験紙(商品名:「POV試験紙」、柴田化学株式会社製)を用いて簡便に測定することができる。なお、過酸化物価は、サチャインチオイルが空気中の酸素により酸化され、生成した過酸化脂質の量を表し、サチャインチオイルの酸化の度合いを表す。
前記ヨウ素価は、油脂の不飽和度の指標であるが、α−リノレン酸(Omega3)の含有量が多いサチャインチオイルの場合は、不飽和脂肪酸の含有量、及びその劣化度を示す指標となる。前記ヨウ素価の測定方法としては、油脂組成物に過剰の一塩化ヨウ素を加えて反応させた後、未反応の一塩化ヨウ素(ICl)をヨウ化カリウム(KI)で分解し、生成した遊離ヨウ素(I)を0.1Nチオ硫酸ナトリウム(Na)溶液で滴定し、吸収された一塩化ヨウ素(ICl)の量に相当するヨウ素(I)の量を換算して、油脂100gに吸収されるヨウ素の重さ(g)を算出することで求めるウィイス−シクロヘキサン法などが挙げられる。
前記ヨウ素価としては、130mgI/100mg以上が好ましく、190mgI/100mg以上がより好ましい。前記ヨウ素価が、130mgI/100mg未満の場合は、不飽和脂肪酸含量自体が少ないか、不飽和脂肪酸が酸化されている可能性があり、前記酸価、前記過酸化物価、さらには脂肪酸組成測定値と合わせて品質の劣化を検証する必要がある。
前記サチャインチの抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、種子部などが挙げられ、この中でも、抽出効率の観点から、胚乳部がより好ましい。
前記サチャインチオイルの抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サチャインチの熟した実から種子を取り出し、洗浄消毒し皮をむいた後、粉砕機にて粉砕物を得、得られた前記粉砕物を圧搾機により圧力をかけ抽出液を搾り、前記抽出液をフィルターに通し、濾過する方法などが挙げられる。これによりサチャインチオイルを得ることができる。
前記圧搾機による抽出液の抽出方法としては、例えば、コールドプレス法、ホットプレス法などが挙げられる。これらの中でも、熱による劣化を防止する観点から、コールドプレス法が好ましい。前記コールドプレス法とは、熱を加えずに、圧力をかけてオイルを搾る方法をいう。前記コールドプレス法における温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0℃〜80℃が好ましく、5℃〜40℃がより好ましい。
前記サチャインチオイルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、商品名:「インカグリーンナッツ・インカインチオイル」(特定非営利活動法人アルコイリス製)、商品名:「パチャママ プレミアム・サチャインチオイル」(株式会社パチャママ製)、商品名:「農大サチャインチオイル」(株式会社メルカード東京農大製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<<エゴマ油>>
前記エゴマ油は、シソ科のエゴマ(学名:Perilla frutescens var. frutescens)から抽出されるオイルである。
前記エゴマの抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、種子部などが挙げられる。
前記エゴマ油の抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記サチャインチオイルの抽出方法と同様の方法を用いることができる。
前記エゴマ油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、商品名:「エゴマオイル」(紅花食品株式会社製)、商品名:「えごま油」(太田油脂株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、商品名:「エゴマオイル」(紅花食品株式会社製)が好ましい。
<<アマニ油>>
前記アマニ油は、アマ科の成熟した亜麻(学名:Linum usitatissimum)から抽出されるオイルである。
前記亜麻の抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、種子部などが挙げられる。
前記アマニ油の抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記サチャインチオイルの抽出方法と同様の方法を用いることができる。
前記アマニ油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、商品名:「アマニオイル」(日本製粉株式会社製)、商品名:「亜麻仁オイル」(太田油脂株式会社)、商品名:「アマニ油」(株式会社朝日)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、商品名:「アマニオイル」(日本製粉株式会社製)が好ましい。
<<キャノーラオイル>>
前記キャノーラオイルは、主にセイヨウアブラナ(学名:Brassica napus L.)から採取した植物油脂の一種である菜種油のうち、キャノーラ品種から抽出されるオイルである。前記キャノーラ品種とは、エルシン酸(エルカ酸)及びグルコシノレートをほとんど含有量しない品種を意味する。
前記セイヨウアブラナの抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、抽出の効率を考慮すると、種子部から抽出することが好ましい。
前記キャノーラオイルの抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記サチャインチオイルの抽出方法と同様の方法を用いることができる。
前記キャノーラオイルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、商品名:「日清キャノーラ油」(日清オイリオグループ株式会社製)、商品名:「キャノーラ油」(昭和産業株式会社製)、商品名:「キャノーラ油」(日華油脂株式会社製)、商品名:「一番搾りキャノーラ油」(理研農産化工株式会社)、商品名:「キャノーラ白絞油」(加藤製油株式会社製)、商品名:「さらさら(登録商標)キャノーラ油」(株式会社J−オイルミルズ)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、商品名:「日清キャノーラ油」(日清オイリオグループ株式会社製)が好ましい。
前記α−リノレン酸を含む油脂組成物の純度としては、80%〜100%が好ましく、90%〜100%がより好ましく、95%〜100%が特に好ましい。
前記α−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、特に制限はないが、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、10質量%〜100質量%が好ましく、40質量%〜100質量%がより好ましい。10質量%未満であると、熱中症予防剤効果、又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素の活性化効果が不十分となることがある。
−剤型−
前記熱中症予防剤及び前記3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、顆粒剤、錠剤、坐剤、シロップ剤、注射剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤などが挙げられる。これらの中でも、使用の利便性の観点から、経口的に摂取できる剤型である、液剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、顆粒剤、錠剤、シロップ剤、トローチ剤が好ましく、液剤、顆粒剤、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、シロップ剤がより好ましい。
前記α−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量は、前記剤型により様々である。
前記α−リノレン酸を含む油脂組成物をそのままボトル詰めにした液剤の場合の前記α−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、30質量%〜100質量%が好ましい。
前記ハードカプセル剤又はソフトカプセル剤におけるα−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、30質量%〜95質量%が好ましい。
前記シロップ剤におけるα−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、30質量%〜100質量%が好ましい。
前記顆粒剤におけるα−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、30質量%〜70質量%が好ましい。
前記錠剤におけるα−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、10質量%〜50質量%が好ましい。
前記剤型において、あまりにもα−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量が少ない製剤は摂取量が多くなるため適さない。
−その他の成分−
前記熱中症予防剤、及び前記3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤は、前記α−リノレン酸を含む油脂組成物を有効成分として含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
前記その他の成分としては、前記熱中症予防剤、及び前記3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤を製造するにあたって通常用いられる補助的原料又は添加物などが挙げられる。
前記補助的原料又は前記添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、飽和脂肪酸;α−リノレン酸、γ−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ロイコトリエン、プロスタグランジン、トロンボキサン、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸;ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
−使用方法−
前記使用方法としては、α−リノレン酸を含む油脂組成物を経口的に1g/日〜3g/日摂取することが好ましい。前記摂取は、毎日の連用でもよく、頓服でもよい。
前記熱中症予防剤としては、例えば、外出前に服用することが好ましく、外出6時間前〜外出直前に摂取することが好ましい。
(食品)
前記食品は、前記熱中症予防剤、及び前記3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤の少なくともいずれかを有効成分として含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
ここで、前記食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品、などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
前記食品としては、α−リノレン酸を含む油脂組成物を、その活性を妨げないように任意の食品に配合したものであってもよいし、α−リノレン酸を含む油脂組成物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。
前記食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、炭酸飲料、果実・果汁飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、茶飲料(緑茶、烏龍茶、紅茶など)、豆乳、野菜飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品や栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。
前記その他の成分としては、前記熱中症予防剤、及び前記3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤におけるその他の成分と同様のものを使用することができる。
前記食品における前記熱中症予防剤、又は前記3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤の添加量は、対象となる食品の種類に応じて異なり一概には規定することができないが、食品本来の味を損なわない範囲で添加すればよく、各種対象食品に対し、0.001質量%〜50質量%が好ましく、0.01質量%〜20質量%がより好ましい。また、顆粒、錠剤又はカプセル形態の食品の場合には、0.01質量%〜100質量%が好ましく、5質量%〜100質量%がより好ましい。
前記食品は、日常的に経口摂取することが可能であり、α−リノレン酸を含む油脂組成物の働きによって、極めて効果的に熱中症を予防することができる。
なお、本発明の熱中症予防剤、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤、及び食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(油脂組成物の摂取における影響の評価1)
<サチャインチオイル、又はキャノーラオイルの摂取における影響の評価>
27匹の6週齢の雄性Crl/CD(SD)ラット(日本チャールス・リバー株式会社製)を用いて、各条件における直腸温、脱水率、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性、及びヒートショックプロテイン72の発現割合を評価した。
前記Crl/CD(SD)ラットの飼育には、ラット専用の実験動物飼育装置(商品名:「クリーンラックCR−1000−HD3」、株式会社日本医化器械製作所製)を用いた。飼育条件は、室温23℃、相対湿度40%となるようにエアコンにより調整した。餌は、ラット専用飼料(商品名:「MF」、固型(直径12mmペレット)、オリエンタル酵母工業株式会社製)を用いて、水は水道水を用いて、それぞれ自由摂取させた。飼育照明は、タイマー付飼育照明を利用して、明期:12時間、暗期:12時間の明暗サイクルとした。なお、飼育は、1ケージに3匹ずつ収容した。
予備飼育開始1週間後、下記サチャインチオイル投与群(11匹)、下記キャノーラオイル投与群(9匹)、及び下記水投与群(7匹)の3群に分け、その後4週間、サチャインチオイル、キャノーラオイル、又は水道水を各群にそれぞれゾンデを用いて経口投与した。
・サチャインチオイル投与群:安静状態で飼育し、2.5μL/g/日のサチャインチオイルを経口投与した。
・キャノーラオイル投与群:安静状態で飼育し、2.5μL/g/日のキャノーラオイルを経口投与した。
・水投与群:安静状態で飼育し、0.5mL/日の常温の水道水を経口投与した。
前記サチャインチオイルとしては、Plukenetia volubilisの胚乳部(サチャインチオイル100g当たり、熱量:900kcal、タンパク質:0.1g、脂質:100g、炭水化物:0g、ナトリウム:0mg、コレステロール:0g、ビタミンE:200mg、α−リノレン酸:45g)をコールドプレス法にて搾油しフィルターで濾過したものを用いた。前記サチャインチオイルは、酸価:1mgKOH/g、過酸化物価:0meq/kg、ヨウ素価:202mgI/100mgと品質には問題の無いものであった。なお、前記酸価は、水酸化カリウム滴定法、過酸化物価はチオ硫酸ナトリウム滴定法、ヨウ素価はウィイス−シクロヘキサン法でそれぞれ測定した。
前記キャノーラオイルとしては、市販のキャノーラオイル(商品名:「日清キャノーラ油」、日清オイリオグループ株式会社製;キャノーラオイル100g当たり、熱量:900kcal、タンパク質:0g、脂質:100g、炭水化物:0g、ナトリウム:0mg、コレステロール:0g、ビタミンE:31.4mg)を用いた。
前記サチャインチオイル、及びキャノーラオイルの油脂組成物の脂肪酸組成について、下記の条件で測定した。結果を表4に示す。
スクリューキャップ付き試験管(外径12mm、容量10mL、キャップ:プラスチック製、パッキン:シリコン製)に各油脂組成物40mg〜60mgを採取し、内部標準としてヘプタデカン酸6mg相当量加えた後、ヘキサン2mLを加え、撹拌して油脂組成物を溶解した。その後、窒素ガス下でヘキサンを留去し、0.5M/L 水酸化ナトリウム/メタノール溶液を加え、試験管内を窒素パージした後、蓋を締めて100℃、9分間加熱(適宜混和)してヒートブロックで加熱した。加熱後、氷で冷却した後、三ふッ化ホウ素−メタノール試液(和光純薬工業株式会社製)を加え、試験管内を窒素パージ蓋を締めて100℃で、7分間加熱(適宜混和)してヒートブロックで加熱した。次に、加熱後は、試験管を氷で冷却し、ヘキサン3mLを加え、振とう後、飽和食塩水5mLを加え、軽く振り混ぜ、1,500rpmで10分間遠心分離した。前記遠心分離により分離されたヘキサン層を下記条件のガスクロマトグラフ/水素炎イオン化型検出器(GC−FID)を用いて測定した。
−GC−FID−
・System:GC−4000Plus(ジーエルサイエンス株式会社製)
・Column:商品名:InertCap Pure−WAX 0.25mmI.D.×30m df=0.25μm(ジーエルサイエンス株式会社製)
・Column Temp.:150℃(5分間)→10℃/分間→250℃(20分間)
・Carrier Gas:ヘリウム(He)、100kPa
・Injection:Split 1:80 1.0μL、250℃
・検出: FID Range 10°、260℃
なお、ピーク位置確認のための標準物質は、脂肪酸メチル混合標準サンプル(商品名:RM−2、シグマ アルドリッチ社製)を用いた。
Figure 2016037498
前記投与は、週6回4週間、明期である17:00〜17:30の間に行った。なお、実験終了1週間前から、あらかじめラットに商品名:「実験動物強制運動測定器」(株式会社シナノ製作所製)で、1日10分間の運動を1週間実施し、運動負荷に慣れさせた。また、実験終了1週間前から、小型デジタル温度計(装置名:「BAT−7001H」、バイオリサーチセンター株式会社製)を、1日1回、肛門から5cm挿入し、直腸温の測定にも慣れさせた。
投与開始から4週間経過後、前記サチャインチオイル投与群(11匹)、前記キャノーラオイル投与群(9匹)、及び前記水投与群(7匹)を下記のように群分けした。
前記サチャインチオイル投与群(11匹)を、サチャインチオイル投与(23℃非運動暴露)群(3匹)と、サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群(8匹)とに分けた。
前記キャノーラオイル投与群(9匹)を、キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群(3匹)と、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群(6匹)とに分けた。
前記水投与群(7匹)を、水投与(23℃非運動暴露)群(3匹)と、水投与(35℃運動暴露)群(4匹)とに分けた。群分けの結果を下記表5に示す。なお、「23℃非運動暴露」とは、23℃において、通常飼育を行うことを意味し、「35℃運動暴露」とは、35℃において、運動負荷を行うことを意味する。
Figure 2016037498
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、前記キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、及び前記水投与(35℃運動暴露)群について、室温35℃、相対湿度40%環境下において、30分間の運動負荷を与えた。一方、前記サチャインチオイル投与(23℃非運動暴露)群、前記キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群、及び前記水投与(23℃非運動暴露)群について、室温23℃、相対湿度40%環境下において、安静飼育した。なお、室温35℃、相対湿度40%環境下における30分間の運動は、熱中症を引き起こす状態である。前記運動負荷は、装置名:「実験動物強制運動測定器」(株式会社シナノ製作所製)を使用し、相対運動強度50%程度の負荷に相当する20m/minで実施した。なお、表中、及び図中のアスタリスク(*)は、Student’s t−検定によるサチャインチオイル投与群と、キャノーラオイル投与群又は水投与群との比較結果を示し、一つのアスタリスク(*)は危険率が5%未満で有意な差があることを表す。
前記「運動負荷」は、ヒトにおけるランニング程度の運動であり、6メッツの運動強度に相当する。
・参考文献1:運動強度のとらえ方(伊藤朗:図説・運動生理学入門,p.129,医歯薬出版,1990)、http://www−user.yokohama−cu.ac.jp/〜sport/menu/staff/tamaki/edu/training.html
・参考文献2:健康づくりのための運動指針2006(厚生労働省:エクササイズガイド,p.7,2006)、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/undou01/pdf/data.pdf
<体重及び摂食量>
前記体重は、投与開始から4週間毎日、電子天秤(装置名:「DZ−2000」、株式会社島津製作所製)により、各ラットの体重を測定した。投与期間中において各群間には有意な差はなかった(不図示)。また、前記摂食量においても、投与期間中において各群間には有意な差はなかった(不図示)。
(実施例1)
<直腸温>
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、前記キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、及び前記水投与(35℃運動暴露)群の35℃における運動負荷前後の直腸温は、小型デジタル温度計(装置名:「BAT−7001H」、バイオリサーチセンター株式会社製)を肛門から5cm挿入し測定した。結果を表6、図1及び図2に示す。また、熱中症発病率は、直腸温上昇量が6℃以上であったラットの割合を基にして求めた。ラットにおいて、平温よりも6℃以上直腸温が上昇した状態は、熱中症状態である。結果を表6に示す。表6及び図1に示すように、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群及び水投与(35℃運動暴露)群では運動負荷前後で有意な差はないが、サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群では、水投与(35℃運動暴露)群及びキャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群に対して、運動負荷後において有意(危険率5%未満)に直腸温の上昇が抑制されていた。また、表6及び図2に示すように、サチャインチオイル投与群では、水投与(35℃運動暴露)群に対して、運動負荷後の直腸温の上昇が有意(危険率5%未満)に抑制されていた。この結果から、サチャインチオイルの摂取が体温の上昇を抑制することが確認された。
Figure 2016037498
なお、前記表6中、35℃運動負荷後の直腸温の値は、平均±標準誤差で示した。また、35℃運動負荷後のサチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群におけるアスタリスク(*)は、35℃運動負荷後のキャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群及び水投与(35℃運動暴露)群に対しての有意差(危険率5%未満)である。
(実施例2)
<脱水率>
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、及び水投与(35℃運動暴露)群の前記脱水率は、電子天秤(商品名:「DZ−2000」、株式会社島津製作所製)により、35℃における運動負荷前後の各ラットの体重を測定し、下記式1により脱水率(体重減少率)を算出した。結果を表7及び図3に示す。
脱水率(体重減少率)=(運動負荷前の体重−運動負荷後の体重)÷運動負荷前の体重×100・・・式1
表7及び図3に示すように、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群及び水投与(35℃運動暴露)群間では有意な差はないが、サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群では、水投与(35℃運動暴露)群に対して、有意(危険率5%未満)に脱水が抑制されていた。この結果から、サチャインチオイルの摂取が、脱水を抑制することが確認された。
Figure 2016037498
なお、前記表7中、脱水率の値は、平均±標準誤差で示した。また、サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群におけるアスタリスク(*)は、水投与(35℃運動暴露)群に対しての有意差(危険率5%未満)である。
<ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性、及びヒートショックプロテイン72>
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、及び水投与(35℃運動暴露)群の35℃運動負荷終了直後、前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、前記サチャインチオイル投与(23℃非運動暴露)群、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群、水投与(35℃運動暴露)群、及び水投与(23℃非運動暴露)群のラットの右脚の下肢骨格筋(腓腹筋)、左心室壁を摘出し、−80℃の液体窒素で凍結保存した。
前記凍結保存した前記下肢骨格筋(腓腹筋)及び前記左心室壁の入ったチューブにSKミル用粉砕玉クラッシャー(商品名:「sk−100−DLC10」、株式会社トッケン製)を入れ、SKミルホルダー(商品名:「sk−100」、株式会社トッケン製)に装填し液体窒素で凍結させてから、振盪を20秒間で1,600回行った。粉砕した前記下肢骨格筋(腓腹筋)及び前記左心室壁に、5倍量のHomogenization buffer:500mLと、Tris−HCl(メルク社製):3.94gと、EDTA・2Na(和光純薬工業株式会社製)0.181gとを加え、塩酸及び水酸化ナトリウムでpH7.4に調整し、蒸留水でメスアップしたもの)を加えてホモジネートした。その後、軽く手で振盪し、冷却遠心分離(商品名:「5415R」、エッペンドルフ株式会社製)を用いて4℃、14,000rpmで15分間遠心した後、上澄み液を得た。
(実施例3)
−3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性−
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、及び水投与(35℃運動暴露)群の前記下肢骨格筋(腓腹筋)から得られた前記上澄み液を用いて、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性を「中谷昭 マウス骨格筋・心筋ミオグロビン含量及び酵素活性について 奈良教育大学紀要 40(2) 29−34、1991」に記載の方法により測定した。結果を表8及び図4に示す。表8及び図4に示すように、サチャインオイル投与(35℃運動暴露)群は、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群及び水投与(35℃運動暴露)群に対して、有意(危険率5%未満)に3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性が上昇していた。この結果から、サチャインチオイルの摂取がβ−酸化系脂質代謝を活性化させ、ATPの供給促進に寄与することが確認された。
Figure 2016037498
なお、前記表8中、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性の値は、平均±標準誤差で示した。また、サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群におけるアスタリスク(*)は、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群及び水投与(35℃運動暴露)群に対しての有意差(危険率5%未満)である。
(実施例4)
−ヒートショックプロテイン72の発現割合−
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、前記サチャインチオイル投与(23℃非運動暴露)群、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群、水投与(35℃運動暴露)群、及び水投与(23℃非運動暴露)群における前記上澄み液を用いて、前記下肢骨格筋(腓腹筋)及び前記左心室壁中のヒートショックプロテイン72を熱ストレスの指標として下記方法により分析した。
前記上澄み液を用いて、電気泳動後、ウエスタンブロッティングを行い、用いた発光基質(商品名:「ECL plus」、GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)の発光輝度を画像解析ソフト(商品名:「CS Analyzer ver 2.0」、アトー株式会社製)によって解析し、ヒートショックプロテイン72の各群の発現量を測定した。その後、35℃運動負荷による前記ヒートショックプロテイン72の発現割合を下記のように求めた。
−−ヒートショックプロテイン72の発現割合の算出方法−−
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現割合=前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量÷前記サチャインチオイル投与(23℃非運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量の平均値
キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現割合=キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量÷キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量の平均値
前記水投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現割合=前記水投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量÷前記水投与(23℃非運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量の平均値
各群の発現割合の結果を表9、図5及び図6に示す。表9、図5及び図6に示すように、下肢骨格筋(腓腹筋)(図5)及び左心室壁(図6)では、サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群は、水投与(35℃運動暴露)群及びキャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群に対して、有意(危険率5%未満)にヒートショックプロテイン72の発現上昇が抑制されていた。この結果から、サチャインチオイルの摂取が、それぞれの筋肉細胞における熱ストレスを抑制することができることが確認された。この結果は、サチャインチオイルの摂取が、筋肉温度の上昇を抑制したことを示唆するものと考えられる。
Figure 2016037498
なお、前記表9中、ヒートショックプロテイン72の発現割合の値は、平均±標準誤差で示した。また、サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群におけるアスタリスク(*)は、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群及び水投与(35℃運動暴露)群に対しての有意差(危険率5%未満)である。
(油脂組成物の摂取における影響の評価2)
<エゴマ油、アマニ油、又はキャノーラオイルの摂取における影響の評価>
32匹の6週齢の雄性Crl/CD(SD)ラット(日本チャールス・リバー株式会社製)を用いて、各条件における走行時間、及び直腸温を評価した。
前記Crl/CD(SD)ラットは、油脂組成物の摂取における影響の評価1と同様にして、飼育をした。
予備飼育開始1週間後、下記エゴマ油投与群(12匹)、下記アマニ油投与群(10匹)及び下記キャノーラオイル投与群(10匹)、の3群に分け、その後4週間、エゴマ油、アマニ油、又はキャノーラオイルを各群にそれぞれゾンデを用いて経口投与した。
・エゴマ油投与群:安静状態で飼育し、0.196μL/g/日のエゴマ油を経口投与した。
・アマニ油投与群:安静状態で飼育し、0.207μL/g/日のアマニ油を経口投与した。
・キャノーラオイル投与群:安静状態で飼育し、0.25mL/日のキャノーラオイルを経口投与した。
前記エゴマ油としては、商品名:エゴマオイル(紅花食品株式会社製)、前記アマニ油としては、商品名:アマニオイル(日本製粉株式会社製)、前記キャノーラオイルとしては、商品名:「日清キャノーラ油」、日清オイリオグループ株式会社製を用いた。
前記エゴマ油、前記アマニ油、及び前記キャノーラオイルの油脂組成物の脂肪酸組成について、油脂組成物の摂取における影響の評価1におけるサチャインチオイル、及びキャノーラオイルと同様にして測定した。結果を表10に示す。
Figure 2016037498
投与は、油脂組成物の摂取における影響の評価1と同様にして行った。
投与開始から4週間経過後、前記エゴマ油投与群(12匹)、前記アマニ油投与群(10匹)、及び前記キャノーラオイル投与群(10匹)を下記のように群分けした。
前記エゴマ油投与群(12匹)を、エゴマ油投与(23℃非運動暴露)群(6匹)と、エゴマ油投与(35℃運動暴露)群(6匹)とに分けた。
前記アマニ油投与群(10匹)を、アマニ油投与(23℃非運動暴露)群(5匹)と、アマニ油投与(35℃運動暴露)群(5匹)とに分けた。
前記キャノーラオイル投与群(10匹)を、キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群(5匹)と、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群(5匹)とに分けた。群分けの結果を下記表11に示す。なお、「23℃非運動暴露」とは、23℃において、通常飼育を行うことを意味し、「35℃運動暴露」とは、35℃において、運動負荷を行うことを意味する。
Figure 2016037498
前記エゴマ油投与(35℃運動暴露)群、前記アマニ油投与(35℃運動暴露)群、前記キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群について、油脂組成物の摂取における影響の評価1と同様にして、30分間の運動負荷を与えた。一方、前記エゴマ油投与(23℃非運動暴露)群、前記アマニ油投与(23℃非運動暴露)群、前記キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群について、油脂組成物の摂取における影響の評価1と同様にして、安静飼育した。なお、表中、及び図中のアスタリスク(*)は、Student’s t−検定によるエゴマ油投与群、又はアマニ油投与群と、キャノーラオイル投与群との比較結果を示し、一つのアスタリスク(*)は危険率が5%未満で有意な差があることを表し、二つのアスタリスク(**)は危険率が1%未満で有意な差があることを表す。
<体重及び摂食量>
前記体重は、油脂組成物の摂取における影響の評価1と同様にして、各ラットの体重を測定した。投与期間中において各群間には有意な差はなかった(不図示)。また、前記摂食量においても、投与期間中において各群間には有意な差はなかった(不図示)。
(実施例5)
−走行時間−
前記エゴマ油投与(35℃運動暴露)群、前記アマニ油投与(35℃運動暴露)群、及び前記キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群について、35℃における30分間の運動負荷時の走行時間を測定した。なお、運動負荷中に走行できなくなったラットが生じた場合は、運動負荷開始から走行不可となる時間を走行時間とし、平均値を求め、走行時間とした。結果を表12及び図7に示す。
Figure 2016037498
なお、前記表12中、35℃運動負荷後の走行時間は、平均±標準誤差で示した。また、35℃運動負荷後のアマニ油投与(35℃運動暴露)群におけるアスタリスク(*)は、35℃運動負荷後のキャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群に対しての有意差(危険率5%未満)である。
表12及び図7に示したように、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群に対して、エゴマ油投与(35℃運動暴露)群、アマニ油投与(35℃運動暴露)群は、走行時間が長いことが分かった。特に、アマニ油投与(35℃運動暴露)群は、他の群よりも走行時間が長いことが分かった。このことは、35℃の酷暑条件でも活動できる時間が長く、その分、熱中症になりにくい状態であることを間接的に示すものである。
(実施例6)
−直腸温−
前記エゴマ油投与(35℃運動暴露)群、前記アマニ油投与(35℃運動暴露)群、及び前記キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群について、35℃における運動負荷前後の直腸温を、油脂組成物の摂取における影響の評価1と同様にして測定した。また、前記エゴマ油投与(23℃非運動暴露)群、前記アマニ油投与(23℃非運動暴露)群、及び前記キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群について、23℃における非運動暴露前後の直腸温についても、油脂組成物の摂取における影響の評価1と同様にして測定した。なお、35℃運動暴露における各ラットの直腸温の結果は、35℃の運動暴露時の走行時間が異なるため、運動負荷前後の直腸温の変化量を30分間走行当たりの直腸温の変化(℃/30分間)として解析した。また、熱中症発病率は、直腸温の上昇量が6℃以上であったラットの割合を基に求めた。ラットにおいて、平温よりも6℃以上直腸温が上昇した状態は、熱中症状態である。結果を表13及び図8に示す。
Figure 2016037498
なお、表13中、「23℃非運動暴露後、又は35℃運動曝露後の直腸温」でのエゴマ油投与(23℃非運動曝露)群、及びアマニ油投与(23℃非運動曝露)群におけるアスタリスク(**)は、キャノーラオイル投与(23℃非運動曝露)群に対しての有意差(危険率1%)であり、エゴマ油投与(35℃運動曝露)群、及びアマニ油投与(35℃運動曝露)群におけるアスタリスク(**)は、キャノーラオイル投与(35℃運動曝露)群に対しての有意差(危険率1%)である。また、「30分間走行当たりの直腸温の変化」でのエゴマ油投与(23℃非運動曝露)群、及びアマニ油投与(23℃非運動曝露)群におけるアスタリスク(*)は、キャノーラオイル投与(23℃非運動曝露)群に対しての有意差(危険率5%)であり、アマニ油投与(35℃運動曝露)群におけるアスタリスク(*)は、キャノーラオイル投与(35℃運動曝露)群に対しての有意差(危険率5%)である。
表13及び図8に示すように、23℃非運動曝露群において、キャノーラオイル投与(23℃非運動曝露)群は、直腸温がほとんど変化しなかった。これに対して、エゴマ油投与(23℃非運動曝露)群、及びアマニ油投与(23℃非運動曝露)群は、キャノーラオイル投与(23℃非運動曝露)群と比較して、有意(危険率1%未満)な直腸温の上昇が認められ、また、キャノーラオイル投与(23℃非運動曝露)群と比較して、有意(危険率5%未満)な30分間走行当たりの直腸温の上昇の変化が認められた。これは、α−リノレン酸を含む油脂組成物を摂取することにより、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性が高まったためであると考えられる。
一方、35℃運動暴露群において、キャノーラオイル投与(35℃運動曝露)群は、30分間あたり7.54℃の直腸温の上昇の変化が認められた。これに対して、アマニ油投与(35℃運動曝露)群の直腸温上昇量は、5.32℃と有意(危険率5%未満)に低い値を示し、エゴマ油投与(35℃運動曝露)群の直腸温上昇量においても、6.33℃と低い傾向(危険率10%未満(p<0.1))を示した。また、キャノーラオイル投与(35℃運動曝露)群の熱中症発症率は80%であるのに対し、エゴマ油投与(35℃運動曝露)群、及びアマニ油投与(35℃運動曝露)群の熱中症発症率は、それぞれ60%、及び40%と熱中症発症率が低くなることが分かった。
このことから、アマニ油、及びアマニ油を摂取することにより、酷暑での運動に起因する熱中症の発症を防止することができると考えられる。
本発明の熱中症予防剤は、優れた高温環境下で、スポーツなどの過度な運動を行っても、体温及び筋肉温度の上昇抑制、並びに体内の水分喪失の抑制をすることができるため、熱中症予防剤として利用可能である。また、細胞内エネルギー源であるATPの産生に係る脂質代謝酵素である3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素を活性化し、高温環境下におけるATP供給不全を回避することにより、細胞機能不全に基づく多臓器損傷や多臓器不全に起因する熱中症を予防することができる。

Claims (6)

  1. α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有することを特徴とする熱中症予防剤。
  2. α−リノレン酸の含有量が、油脂組成物中の脂肪酸全量に対して、30質量%以上である請求項1に記載の熱中症予防剤。
  3. α−リノレン酸を含む油脂組成物が、サチャインチオイル、エゴマ油、及びアマニ油から選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の熱中症予防剤。
  4. α−リノレン酸を含む油脂組成物が、サチャインチオイルである請求項1から3のいずれかに記載の熱中症予防剤。
  5. α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有することを特徴とする3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載の熱中症予防剤、又は請求項5に記載の3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤を含有することを特徴とする食品。
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