JP2016037498A - 熱中症予防剤、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤、及び食品 - Google Patents
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Abstract
Description
また、熱中症は、高熱に伴い、ミトコンドリア内における脂質代謝系酵素活性を低下させ、その結果、アデノシン三リン酸(以下、「ATP」ともいう。)供給不全を来たし、多臓器損傷、多臓器不全を引き起こすことも考えられる。ミトコンドリア内の脂質代謝系酵素としては、例えば、カルニチンアシルトランスフェラーゼIIや3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素などが知られている。本発明者らは、α−リノレン酸を含む油脂組成物を摂取することにより、脂質代謝に関与するβ−酸化系脂質代謝酵素である3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素の活性の低下を抑制することにより、熱中症を予防することができるという知見を得た。
下記反応式1に示すように、細胞質内に存在する脂肪酸は、ATPと反応して、カルボン酸に由来する構造単位に、アデノシン一リン酸(以下、「AMP」ともいう。)が修飾した脂肪酸アシルアデニル酸に変換される。次いで、前記脂肪酸アシルアデニル酸のカルボン酸に由来する構造単位に補酵素A(以下、「CoA」ともいう。)が求核攻撃することにより、AMPに由来する構造単位がCoAに由来する構造単位に置換されて脂肪酸アシルCoAに変換される。前記脂肪酸アシルCoAは、ミトコンドリア内において、β−酸化を受けて、アセチルCoAを産生し、クエン酸回路を通じてATPを供給する。しかし、前記脂肪酸アシルCoAは、単独ではミトコンドリア内膜を通過することができない。そのため、前記脂肪酸アシルCoAは、カルニチンアシルトランスフェラーゼIにより、CoAに由来する構造単位がカルニチンに由来する構造単位に置換されて脂肪酸アシルカルニチンに変換され、前記脂肪酸アシルカルニチンが、ミトコンドリア内膜を横切って存在するアシルカルニチントランスロカーゼによりミトコンドリア内に輸送される。
(反応式2)
<1> α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有することを特徴とする熱中症予防剤である。
<2> α−リノレン酸の含有量が、油脂組成物中の脂肪酸全量に対して、30質量%以上である前記<1>に記載の熱中症予防剤である。
<3> α−リノレン酸を含む油脂組成物が、サチャインチオイル、エゴマ油、及びアマニ油から選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱中症予防剤である。
<4> α−リノレン酸を含む油脂組成物が、サチャインチオイルである前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱中症予防剤である。
<5> α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有することを特徴とする3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤である。
<6> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱中症予防剤、又は前記<5>に記載の3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤を含有することを特徴とする食品である。
本発明の熱中症予防剤は、α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明の3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤は、α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記α−リノレン酸を含む油脂組成物としては、α−リノレン酸を含んでいれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記α−リノレン酸は、n−3系多価不飽和脂肪酸であり、IUPAC名は、all−cis−9,12,15−オクタデカトリエン酸である。
スクリューキャップ付き試験管(外径12mm、容量10mL、キャップ:プラスチック製、パッキン:シリコン製)に各油脂組成物40mg〜60mgを採取し、内部標準としてヘプタデカン酸6mg相当量加えた後、ヘキサン2mLを加え、撹拌して油脂組成物を溶解する。その後、窒素ガス下でヘキサンを留去し、0.5M/L 水酸化ナトリウム/メタノール溶液を加え、試験管内を窒素パージした後、蓋を締めて100℃、9分間加熱(適宜混和)してヒートブロックする。加熱後、氷で冷却した後、三ふッ化ホウ素−メタノール試液(和光純薬工業株式会社製)を加え、試験管内を窒素パージ蓋を締めて100℃で、7分間加熱(適宜混和)してヒートブロックする。次に、加熱後は、試験管を氷で冷却し、ヘキサン3mLを加え、振とう後、飽和食塩水5mLを加え、軽く振り混ぜ、1,500rpmで10分間遠心分離する。前記遠心分離により分離されたヘキサン層を下記条件のガスクロマトグラフ/水素炎イオン化型検出器(以下、「GC−FID」と称することもある)を用いて測定することができる。
−GC−FID−
・System:GC−4000Plus(ジーエルサイエンス株式会社製)
・Column:商品名:InertCap Pure−WAX 0.25mmI.D.×30m df=0.25μm(ジーエルサイエンス株式会社製)
・Column Temp.:150℃(5分間)→10℃/分間→250℃(20分間)
・Carrier Gas:ヘリウム(He)、100kPa
・Injection:Split 1:80 1.0μL、250℃
・検出:FID Range 10°、260℃
なお、ピーク位置確認のための標準物質は、脂肪酸メチル混合標準サンプル(商品名:RM−2、シグマ アルドリッチ社製)を用いることができる。
前記サチャインチオイルは、南米ペルーを原産地とするトウダイグサ科の一般名:「サチャインチ」(学名:「プルケネティア」、(Plukenetia))から抽出されるオイルであり、例えば、インカインチオイル、インカナッツオイル、インカグリーンナッツオイル、アマゾングリーンナッツオイル、グリーンナッツオイル、INCI名:「プルケネチアボルビリス種子油」などと呼ばれることもある。なお、前記INCI名は、日本化粧品工業連合会が規定する表示名称である。
前記サチャインチオイルの栄養成分としては、タンパク質、脂質、炭水化物、ナトリウム、コレステロール、ビタミンE、α−リノレン酸が含まれていることが知られている。
前記タンパク質の含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、0.01g〜0.5gが好ましく、0.05g〜0.2gがより好ましい。
前記脂質の含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、10g〜200gが好ましく、50g〜150gがより好ましい。
前記炭水化物の含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、0g〜10gが好ましく、0g〜2gがより好ましい。
前記ナトリウムの含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、0mg〜10mgが好ましく、0mg〜2mgがより好ましい。
前記コレステロールの含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、0g〜10gが好ましく、0g〜2gがより好ましい。
前記ビタミンEの含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、100mg〜300mgが好ましく、150mg〜250mgがより好ましい。
前記α−リノレン酸(Omega3)の含有量としては、サチャインチオイル100g当たり、30g〜70gが好ましく、40g〜60gがより好ましい。
前記エゴマ油は、シソ科のエゴマ(学名:Perilla frutescens var. frutescens)から抽出されるオイルである。
前記アマニ油は、アマ科の成熟した亜麻(学名:Linum usitatissimum)から抽出されるオイルである。
前記キャノーラオイルは、主にセイヨウアブラナ(学名:Brassica napus L.)から採取した植物油脂の一種である菜種油のうち、キャノーラ品種から抽出されるオイルである。前記キャノーラ品種とは、エルシン酸(エルカ酸)及びグルコシノレートをほとんど含有量しない品種を意味する。
前記熱中症予防剤及び前記3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、顆粒剤、錠剤、坐剤、シロップ剤、注射剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤などが挙げられる。これらの中でも、使用の利便性の観点から、経口的に摂取できる剤型である、液剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、顆粒剤、錠剤、シロップ剤、トローチ剤が好ましく、液剤、顆粒剤、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、シロップ剤がより好ましい。
前記α−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量は、前記剤型により様々である。
前記α−リノレン酸を含む油脂組成物をそのままボトル詰めにした液剤の場合の前記α−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、30質量%〜100質量%が好ましい。
前記ハードカプセル剤又はソフトカプセル剤におけるα−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、30質量%〜95質量%が好ましい。
前記シロップ剤におけるα−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、30質量%〜100質量%が好ましい。
前記顆粒剤におけるα−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、30質量%〜70質量%が好ましい。
前記錠剤におけるα−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量としては、熱中症予防剤又は3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤全量に対して、10質量%〜50質量%が好ましい。
前記剤型において、あまりにもα−リノレン酸を含む油脂組成物の含有量が少ない製剤は摂取量が多くなるため適さない。
前記熱中症予防剤、及び前記3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤は、前記α−リノレン酸を含む油脂組成物を有効成分として含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
前記使用方法としては、α−リノレン酸を含む油脂組成物を経口的に1g/日〜3g/日摂取することが好ましい。前記摂取は、毎日の連用でもよく、頓服でもよい。
前記熱中症予防剤としては、例えば、外出前に服用することが好ましく、外出6時間前〜外出直前に摂取することが好ましい。
前記食品は、前記熱中症予防剤、及び前記3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤の少なくともいずれかを有効成分として含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
ここで、前記食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品、などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
<サチャインチオイル、又はキャノーラオイルの摂取における影響の評価>
27匹の6週齢の雄性Crl/CD(SD)ラット(日本チャールス・リバー株式会社製)を用いて、各条件における直腸温、脱水率、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性、及びヒートショックプロテイン72の発現割合を評価した。
・サチャインチオイル投与群:安静状態で飼育し、2.5μL/g/日のサチャインチオイルを経口投与した。
・キャノーラオイル投与群:安静状態で飼育し、2.5μL/g/日のキャノーラオイルを経口投与した。
・水投与群:安静状態で飼育し、0.5mL/日の常温の水道水を経口投与した。
前記キャノーラオイルとしては、市販のキャノーラオイル(商品名:「日清キャノーラ油」、日清オイリオグループ株式会社製;キャノーラオイル100g当たり、熱量:900kcal、タンパク質:0g、脂質:100g、炭水化物:0g、ナトリウム:0mg、コレステロール:0g、ビタミンE:31.4mg)を用いた。
スクリューキャップ付き試験管(外径12mm、容量10mL、キャップ:プラスチック製、パッキン:シリコン製)に各油脂組成物40mg〜60mgを採取し、内部標準としてヘプタデカン酸6mg相当量加えた後、ヘキサン2mLを加え、撹拌して油脂組成物を溶解した。その後、窒素ガス下でヘキサンを留去し、0.5M/L 水酸化ナトリウム/メタノール溶液を加え、試験管内を窒素パージした後、蓋を締めて100℃、9分間加熱(適宜混和)してヒートブロックで加熱した。加熱後、氷で冷却した後、三ふッ化ホウ素−メタノール試液(和光純薬工業株式会社製)を加え、試験管内を窒素パージ蓋を締めて100℃で、7分間加熱(適宜混和)してヒートブロックで加熱した。次に、加熱後は、試験管を氷で冷却し、ヘキサン3mLを加え、振とう後、飽和食塩水5mLを加え、軽く振り混ぜ、1,500rpmで10分間遠心分離した。前記遠心分離により分離されたヘキサン層を下記条件のガスクロマトグラフ/水素炎イオン化型検出器(GC−FID)を用いて測定した。
−GC−FID−
・System:GC−4000Plus(ジーエルサイエンス株式会社製)
・Column:商品名:InertCap Pure−WAX 0.25mmI.D.×30m df=0.25μm(ジーエルサイエンス株式会社製)
・Column Temp.:150℃(5分間)→10℃/分間→250℃(20分間)
・Carrier Gas:ヘリウム(He)、100kPa
・Injection:Split 1:80 1.0μL、250℃
・検出: FID Range 10°、260℃
なお、ピーク位置確認のための標準物質は、脂肪酸メチル混合標準サンプル(商品名:RM−2、シグマ アルドリッチ社製)を用いた。
前記サチャインチオイル投与群(11匹)を、サチャインチオイル投与(23℃非運動暴露)群(3匹)と、サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群(8匹)とに分けた。
前記キャノーラオイル投与群(9匹)を、キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群(3匹)と、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群(6匹)とに分けた。
前記水投与群(7匹)を、水投与(23℃非運動暴露)群(3匹)と、水投与(35℃運動暴露)群(4匹)とに分けた。群分けの結果を下記表5に示す。なお、「23℃非運動暴露」とは、23℃において、通常飼育を行うことを意味し、「35℃運動暴露」とは、35℃において、運動負荷を行うことを意味する。
・参考文献1:運動強度のとらえ方(伊藤朗:図説・運動生理学入門,p.129,医歯薬出版,1990)、http://www−user.yokohama−cu.ac.jp/〜sport/menu/staff/tamaki/edu/training.html
・参考文献2:健康づくりのための運動指針2006(厚生労働省:エクササイズガイド,p.7,2006)、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/undou01/pdf/data.pdf
前記体重は、投与開始から4週間毎日、電子天秤(装置名:「DZ−2000」、株式会社島津製作所製)により、各ラットの体重を測定した。投与期間中において各群間には有意な差はなかった(不図示)。また、前記摂食量においても、投与期間中において各群間には有意な差はなかった(不図示)。
<直腸温>
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、前記キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、及び前記水投与(35℃運動暴露)群の35℃における運動負荷前後の直腸温は、小型デジタル温度計(装置名:「BAT−7001H」、バイオリサーチセンター株式会社製)を肛門から5cm挿入し測定した。結果を表6、図1及び図2に示す。また、熱中症発病率は、直腸温上昇量が6℃以上であったラットの割合を基にして求めた。ラットにおいて、平温よりも6℃以上直腸温が上昇した状態は、熱中症状態である。結果を表6に示す。表6及び図1に示すように、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群及び水投与(35℃運動暴露)群では運動負荷前後で有意な差はないが、サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群では、水投与(35℃運動暴露)群及びキャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群に対して、運動負荷後において有意(危険率5%未満)に直腸温の上昇が抑制されていた。また、表6及び図2に示すように、サチャインチオイル投与群では、水投与(35℃運動暴露)群に対して、運動負荷後の直腸温の上昇が有意(危険率5%未満)に抑制されていた。この結果から、サチャインチオイルの摂取が体温の上昇を抑制することが確認された。
<脱水率>
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、及び水投与(35℃運動暴露)群の前記脱水率は、電子天秤(商品名:「DZ−2000」、株式会社島津製作所製)により、35℃における運動負荷前後の各ラットの体重を測定し、下記式1により脱水率(体重減少率)を算出した。結果を表7及び図3に示す。
脱水率(体重減少率)=(運動負荷前の体重−運動負荷後の体重)÷運動負荷前の体重×100・・・式1
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、及び水投与(35℃運動暴露)群の35℃運動負荷終了直後、前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、前記サチャインチオイル投与(23℃非運動暴露)群、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群、水投与(35℃運動暴露)群、及び水投与(23℃非運動暴露)群のラットの右脚の下肢骨格筋(腓腹筋)、左心室壁を摘出し、−80℃の液体窒素で凍結保存した。
−3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性−
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、及び水投与(35℃運動暴露)群の前記下肢骨格筋(腓腹筋)から得られた前記上澄み液を用いて、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性を「中谷昭 マウス骨格筋・心筋ミオグロビン含量及び酵素活性について 奈良教育大学紀要 40(2) 29−34、1991」に記載の方法により測定した。結果を表8及び図4に示す。表8及び図4に示すように、サチャインオイル投与(35℃運動暴露)群は、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群及び水投与(35℃運動暴露)群に対して、有意(危険率5%未満)に3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性が上昇していた。この結果から、サチャインチオイルの摂取がβ−酸化系脂質代謝を活性化させ、ATPの供給促進に寄与することが確認された。
−ヒートショックプロテイン72の発現割合−
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群、前記サチャインチオイル投与(23℃非運動暴露)群、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群、キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群、水投与(35℃運動暴露)群、及び水投与(23℃非運動暴露)群における前記上澄み液を用いて、前記下肢骨格筋(腓腹筋)及び前記左心室壁中のヒートショックプロテイン72を熱ストレスの指標として下記方法により分析した。
−−ヒートショックプロテイン72の発現割合の算出方法−−
前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現割合=前記サチャインチオイル投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量÷前記サチャインチオイル投与(23℃非運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量の平均値
キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現割合=キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量÷キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量の平均値
前記水投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現割合=前記水投与(35℃運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量÷前記水投与(23℃非運動暴露)群のヒートショックプロテイン72の発現量の平均値
<エゴマ油、アマニ油、又はキャノーラオイルの摂取における影響の評価>
32匹の6週齢の雄性Crl/CD(SD)ラット(日本チャールス・リバー株式会社製)を用いて、各条件における走行時間、及び直腸温を評価した。
・エゴマ油投与群:安静状態で飼育し、0.196μL/g/日のエゴマ油を経口投与した。
・アマニ油投与群:安静状態で飼育し、0.207μL/g/日のアマニ油を経口投与した。
・キャノーラオイル投与群:安静状態で飼育し、0.25mL/日のキャノーラオイルを経口投与した。
前記エゴマ油投与群(12匹)を、エゴマ油投与(23℃非運動暴露)群(6匹)と、エゴマ油投与(35℃運動暴露)群(6匹)とに分けた。
前記アマニ油投与群(10匹)を、アマニ油投与(23℃非運動暴露)群(5匹)と、アマニ油投与(35℃運動暴露)群(5匹)とに分けた。
前記キャノーラオイル投与群(10匹)を、キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群(5匹)と、キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群(5匹)とに分けた。群分けの結果を下記表11に示す。なお、「23℃非運動暴露」とは、23℃において、通常飼育を行うことを意味し、「35℃運動暴露」とは、35℃において、運動負荷を行うことを意味する。
前記体重は、油脂組成物の摂取における影響の評価1と同様にして、各ラットの体重を測定した。投与期間中において各群間には有意な差はなかった(不図示)。また、前記摂食量においても、投与期間中において各群間には有意な差はなかった(不図示)。
−走行時間−
前記エゴマ油投与(35℃運動暴露)群、前記アマニ油投与(35℃運動暴露)群、及び前記キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群について、35℃における30分間の運動負荷時の走行時間を測定した。なお、運動負荷中に走行できなくなったラットが生じた場合は、運動負荷開始から走行不可となる時間を走行時間とし、平均値を求め、走行時間とした。結果を表12及び図7に示す。
−直腸温−
前記エゴマ油投与(35℃運動暴露)群、前記アマニ油投与(35℃運動暴露)群、及び前記キャノーラオイル投与(35℃運動暴露)群について、35℃における運動負荷前後の直腸温を、油脂組成物の摂取における影響の評価1と同様にして測定した。また、前記エゴマ油投与(23℃非運動暴露)群、前記アマニ油投与(23℃非運動暴露)群、及び前記キャノーラオイル投与(23℃非運動暴露)群について、23℃における非運動暴露前後の直腸温についても、油脂組成物の摂取における影響の評価1と同様にして測定した。なお、35℃運動暴露における各ラットの直腸温の結果は、35℃の運動暴露時の走行時間が異なるため、運動負荷前後の直腸温の変化量を30分間走行当たりの直腸温の変化(℃/30分間)として解析した。また、熱中症発病率は、直腸温の上昇量が6℃以上であったラットの割合を基に求めた。ラットにおいて、平温よりも6℃以上直腸温が上昇した状態は、熱中症状態である。結果を表13及び図8に示す。
一方、35℃運動暴露群において、キャノーラオイル投与(35℃運動曝露)群は、30分間あたり7.54℃の直腸温の上昇の変化が認められた。これに対して、アマニ油投与(35℃運動曝露)群の直腸温上昇量は、5.32℃と有意(危険率5%未満)に低い値を示し、エゴマ油投与(35℃運動曝露)群の直腸温上昇量においても、6.33℃と低い傾向(危険率10%未満(p<0.1))を示した。また、キャノーラオイル投与(35℃運動曝露)群の熱中症発症率は80%であるのに対し、エゴマ油投与(35℃運動曝露)群、及びアマニ油投与(35℃運動曝露)群の熱中症発症率は、それぞれ60%、及び40%と熱中症発症率が低くなることが分かった。
このことから、アマニ油、及びアマニ油を摂取することにより、酷暑での運動に起因する熱中症の発症を防止することができると考えられる。
Claims (6)
- α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有することを特徴とする熱中症予防剤。
- α−リノレン酸の含有量が、油脂組成物中の脂肪酸全量に対して、30質量%以上である請求項1に記載の熱中症予防剤。
- α−リノレン酸を含む油脂組成物が、サチャインチオイル、エゴマ油、及びアマニ油から選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の熱中症予防剤。
- α−リノレン酸を含む油脂組成物が、サチャインチオイルである請求項1から3のいずれかに記載の熱中症予防剤。
- α−リノレン酸を含む油脂組成物を含有することを特徴とする3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤。
- 請求項1から4のいずれかに記載の熱中症予防剤、又は請求項5に記載の3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化剤を含有することを特徴とする食品。
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