本発明は、病気や怪我などによって下肢に障害を負った人が、自立した元通りの生活もしくは元通りの状態に近い生活を送るために訓練を行うためのリハビリ用車椅子の技術に関する。
従来から、下肢に障害を有する人の機能回復を行う車椅子が公知となっている。例えば、特許文献1や特許文献2に示す技術である。特許文献1の技術は、車椅子の前部の車体フレームに設けた左右のペダル軸受と、該ペダル軸受に両端を軸承させた互い違いの両ペダルを有するペダル回転軸と、ペダル回転軸と車輪軸との間に設ける変速装置とからなり、前記ペダル軸には伸縮により長さを調節する回転径調節機構が設けられ、車椅子を押すことにより駆動車輪を回転させて足を載せたペダルを回転させ、脚のリハビリ運動ができるようにしていた。
また、特許文献2に示す技術は、車体フレームの前後に前輪と後輪が配置され、車体フレームの側方にシャフトを配置して、シャフトの前端に傾動自在にペダルを配置し、中途部を揺動自在に支持し、後端を後輪に固定した回転板にガイド部材を介して長手方向にスライド自在、かつ、回転自在に保持されるようにし、後輪の外側に配置されるハンドルリムを回転させると、利用者の足が上下方向に円弧運動を行うことができ、膝関節と股関節を同時に屈曲及び伸展させることを可能としていた。
しかし、足が動くようになって、足の筋力を鍛えようとする場合、前記技術では、ペダルと後輪が歯車や伝動軸を介して連結されていたので、ペダルを前に押す、または、下げるこぎはじめに最も力が必要であり、負荷変動が大きく、その負荷は変更することができないため、回復度合いに合わせた訓練を行うことができなかった。
特許第3831907号公報
特許第5391354号公報
そこで、本発明は、ペダルをこぐ初期の力を徐々に伝えることができ、そのこぐ力を回復に合わせて調節できるリハビリ用車椅子を提供しようとする。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、機体フレームに、訓練者が座る座部と背もたれ部と、左右一対の前輪と後輪とからなる走行部を備えたリハビリ用車椅子であって、前記座部の前下方には訓練者の足を載せる左右一対のペダルと、該ペダルを上下揺動自在に支持するアームと、該アームの回動により駆動される液圧ポンプと、前記後輪を回転駆動可能とする液圧アクチュエータと、該液圧アクチュエータと前記液圧ポンプを流体接続する液圧閉回路と、を備えるものである。
請求項2においては、前記液圧閉回路には可変絞りが設けられるものである。
請求項3においては、前記液圧ポンプは液圧シリンダで構成されるものである。
請求項4においては、前記液圧アクチュエータは液圧モータで構成されるものである。
請求項5においては、前記液圧アクチュエータは、液圧シリンダで構成され、液圧シリンダのピストンロッドにはラックが固定され、該ラックはピニオンに歯合されて、該ピニオンから後輪に動力を伝達する構成とするものである。
請求項6においては、前記液圧アクチュエータは、液圧シリンダで構成され、液圧シリンダのピストンロッドにはアームが連結され、該アームの回動軸にはピニオンが固定され、該ピニオンから後輪に動力を伝達する構成とするものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、こぎ始めと走行後の負荷変動が小さくなり、訓練者にかかる負担が小さくなり、その負荷は変更することが可能となり、機能の回復度合いに合わせて負荷を変更して訓練を行うことが可能となった。
本発明のリハビリ用車椅子の全体構成を示す側面図。
リハビリ用車椅子の後方斜視図。
ペダルとシリンダの側面図。
液圧回路図。
逆転を可能とした液圧回路図。
後輪を駆動することでペダルを揺動させる液圧回路図。
ラックとピニオンを用いた実施形態の液圧回路図。
同じく他の実施形態の液圧回路図。
アームとワンウェイクラッチを用いた実施形態の斜視図。
同じく液圧回路図。
図1、図2を参照して、リハビリ用車椅子1の全体的な構成について説明する。
以下の説明においては、図1に示した矢印Fの方向をリハビリ用車椅子1の進行方向、つまり前方向として、前後左右方向を規定するものとする。
リハビリ用車椅子1は、機体フレーム2に、訓練者が座る座部5と背もたれ部6と、左右一対の前輪3・3と後輪4・4とからなる走行部を備える。前記前輪3・3は、機体フレーム2の前下部の左右両側に配置され、キャスター輪で構成される。後輪4・4は、機体フレーム2の後部両側に配置され、前記前輪3・3よりも大径に構成している。前記座部5と背もたれ部6は、柔軟な布等で構成され、左右のサイドフレーム2a・2a間に張設される。座部5の前下方の左右両側には訓練者の足を載せるペダル7・7が配置され、該ペダル7・7はアーム12・12の前端に設けられ、アーム12・12は交互に昇降動作可能に構成している。
前記機体フレーム2は左右のサイドフレーム2a・2aと、左右のサイドフレーム2a・2aを連結する前後の連結フレーム2b・2bからなり、連結フレーム2b・2bは後面視X字状に構成して、左右のサイドフレーム2a・2aを近づけて幅狭く折り畳み可能に構成している。サイドフレーム2a・2aは、鋼管を折り曲げ溶接して枠状に構成しており、サイドフレーム2a・2aの前下部に前輪3・3を支持している。サイドフレーム2a・2aの後部に後輪4・4の車軸4a・4aを回転自在に支持している。サイドフレーム2a・2aの後上部には補助者が持つグリップ2c・2cが形成されている。
前記サイドフレーム2a・2aの前後中途部には取付板10・10が固定され、図3に示すように、該取付板10・10には、前記ペダル7・7を取り付けるアーム12・12と、該アーム12・12の回動により駆動される液圧ポンプとなる液圧シリンダ11・11が取り付けられる。以下左右一対が対称に設けられるため、左右一方について説明する。また、液圧ポンプ及び液圧アクチュエータを作動させる作動液は、本実施形態では油を用いているため作動油として説明する。なお、作動液は油に限定するものではなく、水やアルコール等の液体であればよい。
前記液圧シリンダ11は、上下方向に配置して上端が軸13により前後揺動自在に取付板10に支持される。液圧シリンダ11のピストンロッド11aの下端は軸14を介してアーム12の後端に枢支される。該アーム12は前後方向に配置されて、後中途部が軸15により上下揺動自在に取付板10に支持される。なお、アーム12後部に取付孔を所定間隔毎に開口し、ピストンロッド11a先端とアーム12の前後方向の取付位置を変更可能に構成することにより、ペダル7・7の揺動距離を変更することが可能となり、また、軸15の取り付け位置を変更可能に構成することにより、ペダル7・7の前後位置を変更することが可能となり、訓練者の身長や可動範囲に合わせることができる。
れている。
前記アーム12の前端にペダル7が取り付けられる。該ペダル7は足を載せられる程度の大きさの板体で構成され、ペダル7の前下面に支持軸16が横設され、該支持軸16の一端がアーム12の前部に回転自在に支持される。また、ペダル7の後部側面よりピン17が突設され、アーム12の該前上部にもピン18が横設され、該ピン18とピン17との間にバネ19を介装し、ペダル7の後部が上方に回動するように付勢している。なお、ペダル7の上方への回動は、ピン17がアーム12の下面に当接して規制される。但し、ペダル7の取付構造は限定するものではない。
図4に示すように、液圧ポンプとなる前記液圧シリンダ11は、液圧閉回路8を介して液圧アクチュエータとなる液圧モータ23と接続される。液圧閉回路8はブリッジ接続した4つのチェックバルブ22と可変絞り25とホース(配管)からなる油路とを備える。図2に示すように、前記液圧モータ23は、左右一側(本実施形態では右側)のサイドフレーム2aの後部内側に配置され、チェックバルブ22を収納するバルブケース24は左右他側(本実施形態では左側)のサイドフレーム2aの後部内側に配置される。こうして、左右に液圧モータ23とバルブケース24を左右振り分け配置することで、重量バランスが偏らないようにし、取付作業やメンテナンスも容易にできるようにしている。
次に、後輪4・4の駆動部及び液圧閉回路8について図4より説明する。
右側の液圧シリンダ11Rの油室と液圧モータ23の吸入ポート23aを連通する油路21aには、液圧シリンダ11Rから液圧モータ23へ作動油を送油可能なチェックバルブ22aが配置され、右側の液圧シリンダ11Rの油室と液圧モータ23の吐出ポート23bを連通する油路21bには、液圧モータ23から液圧シリンダ11へ作動油を送油可能なチェックバルブ22bが配置される。
また、左側の液圧シリンダ11Lの油室と液圧モータ23の吸入ポート23aを連通する油路21cには、液圧シリンダ11Lから液圧モータ23へ作動油を送油可能なチェックバルブ22cが配置され、左側の液圧シリンダ11Lの油室と液圧モータ23の吐出ポート23bを連通する油路21dには、液圧モータ23から液圧シリンダ11へ作動油を送油可能なチェックバルブ22dが配置される。
前記油路21aと油路21bが合流した油路21e(油路21cと油路21dが合流した油路であってもよい)には可変絞り25が配置され、作動油の送油量を調節可能としている。可変絞り25には図示しないダイヤルやレバー等の操作部材を設けて、操作部材を操作することで容易に送油量を調節可能としている。
前記液圧モータ23の出力軸23c上にはワンウェイクラッチ26を介して出力歯車27が外嵌され、該出力歯車27には後輪4の車軸4a上に固設した減速歯車28と歯合されている。該減速歯車28には更に連動歯車29と歯合され、該連動歯車29は連動軸30の一端に固体されている。該連動軸30の他端には連動歯車29が固定され、左右の後輪4・4が同期して回転できるようにしている。前記連動軸30は曲げることが可能なフレキシブル軸やユニバーサルジョイント等で構成され、リハビリ用車椅子1を折り畳むときに曲げられるようにしている。また、前記後輪4の外側には、訓練者が手で後輪4を回転させるためのハンドリム9が同心状に一体的に固定されている。
このような構成とすることで、リハビリを行う訓練者が、座部5に座り、足をペダル7・7に載せて、例えば、右側のペダル7Rを押し下げると(踏み込むと)、アーム12Rが軸15を中心に前下がりに回動して、アーム12Rの後部が上昇され液圧シリンダ11Rを縮小させる。このとき、液圧シリンダ11Rはショックアブソーバの役目を果たし、急激に液圧シリンダ11Rを縮小させることはない。この液圧シリンダ11Rの縮小により、液圧シリンダ11R(油室)内の作動油は押し出されて、油路21a、チェックバルブ22a、可変絞り25を介して液圧モータ23に作動油が送油され、液圧モータ23を回転駆動する。なお、油路21bにはチェックバルブ22bが配設されているため、作動油は液圧モータ23の吐出ポート23b側に送油されることはない。
前記液圧モータ23の吐出ポート23bから吐出された作動油は、油路21d、チェックバルブ22dを介して左側の液圧シリンダ11L内に送油され、液圧シリンダ11Lを伸長させる。なお、吐出ポート23bから吐出された作動油は油路21bにも送油可能であるが、油路21aの油圧が高いため送油されることはない。左側の前記液圧シリンダ11Lが伸長すると、アーム12Lの前部が上昇されるように回動され、左側のペダル7Lが持ち上げられる。
そして、前記液圧モータ23が駆動されることにより、出力軸23cからワンウェイクラッチ26、出力歯車27、減速歯車28、車軸4aを介して右側の後輪4を前進回転させると同時に、連動歯車29、連動軸30、左側の連動歯車29、減速歯車28、車軸4aを介して左側の後輪4を前進回転させ、左右の後輪4・4が同じ回転数でリハビリ用車椅子1を前進させることができる。
また、左側のペダル7Lを押し下げると、液圧シリンダ11Lが縮小され、液圧シリンダ11L内の作動油が吐出されて、油路21c、チェックバルブ22c、可変絞り25を介して液圧モータ23の吸入ポート23aに送油される。なお、油路21dへはチェックバルブ22dが配設されているため送油されない。そして、液圧モータ23への作動油の供給方向が前記と同様であるため、液圧モータ23の出力軸23cは前記と同方向に回転され、後輪4・4は前進方向に回転され、リハビリ用車椅子1を前進させることができる。
前記液圧モータ23の吐出ポート23bから吐出された作動油は、油路21b、チェックバルブ22bを介して右側の液圧シリンダ11R内に送油され、液圧シリンダ11Rを伸長させる。なお、吐出ポート23bから吐出された作動油は油路21dにも送油可能であるが、油路21cの油圧が高いため送油されることはない。右側の前記液圧シリンダ11Rが伸長すると、アーム12Rの前部が上昇されるように回動され、右側のペダル7Rが持ち上げられる。こうして、ペダル7・7を交互に踏み込むことにより、液圧モータ23が駆動されて後輪4・4を前進回転させ、リハビリ用車椅子1を前進させることができる。
また、補助者がグリップ2c・2cを持って、リハビリ用車椅子1を移動させるときには、グリップ2cを持って押すことで、後輪4の回転は出力歯車27に伝えられるが、ワンウェイクラッチ26は液圧モータ23の出力軸23cに対して空回りするため、液圧モータ23は作動されず、ペダル7・7を揺動させることはない。
そして、訓練が進み、訓練者が更に大きな力が出せるようになった場合には、可変絞り25を操作して送通油量を減少させ、ペダル7・7を踏むための負荷を増加させることができる。こうして徐々に負荷を増加させることができるので、訓練用機器を変更することなく、体に大きな負担をかけることなく徐々に筋力をアップさせることができるようになるのである。
以上のように、機体フレーム2に、訓練者が座る座部5と背もたれ部6と、左右一対の前輪3・3と後輪4・4とからなる走行部を備えたリハビリ用車椅子1であって、前記座部5の前下方には訓練者の足を載せる左右一対のペダル7・7と、該ペダル7・7を上下揺動自在に支持するアーム12・12と、該アーム12・12の回動により駆動される液圧ポンプとなる液圧シリンダ11・11と、前記後輪4・4を回転駆動可能とする液圧アクチュエータとなる液圧モータ23と、該液圧モータ23と前記液圧シリンダ11・11とを流体接続する液圧閉回路8と、を備えるので、左右のペダル7を交互に踏み込んで下降させると、作動油が流れて液圧モータ23を回転させ、リハビリ用車椅子1を前進させることができる。このとき、ペダル7を踏み込むと液圧シリンダ11で構成される液圧ポンプを作動させるので、機械的にペダル7と後輪4を接続する構成に比べて、走行開始時と走行時の負荷変動が大きくなく、体にやさしい訓練をすることが可能となる。
また、前記液圧閉回路8には可変絞り25が設けられるので、ペダル7の踏み込み負荷を変更することができ、つまり、リハビリ用車椅子1を走行させるための力を変更できるようになり、訓練者の機能回復度合いに合わせて負荷を調節でき、訓練のための機器の変更を要せず、容易に機能回復訓練ができる。また、負荷の変更も自在に容易にできる。
また、前記液圧ポンプは液圧シリンダ11で構成されるので、ペダル7の揺動で容易にシリンダの伸縮駆動に変更して、作動油を送油することが可能となる。但し、液圧ポンプは、回転式として、軸15上に配置して、ラジアルピストンポンプやアキシャルピストンポンプやベーンポンプやギヤポンプ等で構成することも可能である。
また、前記液圧アクチュエータは液圧モータ23で構成されるので、ペダル7をこぐ力が小さくても走行駆動することが可能となり、訓練を幅広く行える。また、液圧モータ23はラジアルピストン式やアキシャルピストン式やベーン式やギヤ式等で構成することができ、限定するものではない。
また、前記リハビリ用車椅子1では、ペダル7をこぐことにより、前進しかできなかったが、後進したり、フリーとして、補助者がリハビリ用車椅子1を容易に前後進させるようにすることも可能である。
つまり、図5に示すように、液圧閉回路8において、4ポート3位置切換の前後進切換バルブ41をチェックバルブ22(または可変絞り25)と液圧モータ23の間に設ける。前後進切換バルブ41は、図5(a)に示すように、(イ)位置では、前述した液圧シリンダ11から液圧モータ23の吸入ポート23aへのみ送油する油路を備える。図5(b)に示すように、(ロ)位置では、中立位置であり、液圧モータ23の吸入ポート23aと吐出ポート23bが流通自在とする油路を備え、液圧モータ23は回転自在となり、液圧シリンダ11・11へは作動油が送油されず、後輪4・4は回転自在となり、補助者がグリップ2c・2cを持って、前後進自在に操作できる。図5(c)に示すように、(ハ)位置では、図5(a)と逆に、液圧モータ23の吸入ポート23aと吐出ポート23bが入れ替わった状態となり、液圧シリンダ11からの作動油により液圧モータ23は逆転駆動され、ペダル7・7をこぐとリハビリ用車椅子1は後進する。
よって、訓練者は前後進切換バルブ41を(イ)位置または(ハ)位置に切り換え操作することにより、ペダル7・7をこいで容易に前後進させることができる。前後進切換バルブ41を中立位置(ロ)に切り換えることにより、補助者によって容易にリハビリ用車椅子1を前後進させることができる。
また、補助者がグリップ2c・2cを持って、リハビリ用車椅子1を押し引きする。または、訓練者がハンドリム9を持って後輪4・4を回転させることで、液圧モータ23を回転させ、ペダル7・7を上下に揺動させるようにして、強制的にペダル7・7を揺動させ、下肢の機能を回復できるようにすることもできる。
即ち、図6に示すように、液圧閉回路8において、強制駆動に切り換える強制駆動切換バルブ42と液圧シリンダ11R・11Lを互いに反対方向に伸縮させる機構として左右切換バルブ45を設ける。つまり、6ポート2位置切換の強制駆動切換バルブ42をチェックバルブ22(または可変絞り25)と液圧モータ23の間に設けるとともに、液圧シリンダ11R・11Lと強制駆動切換バルブ42との間に並列に油路43・44を設け、該油路43・44に左右切換バルブ45を設ける。
前記強制駆動切換バルブ42は、手動で切り替えるものであり、(U)位置で前述のペダル7・7をこぐことにより液圧モータ23を駆動してリハビリ用車椅子1を前進させるものであり、(V)位置に切り換えることで、左右切換バルブ45を介して液圧シリンダ11R・11Lに液圧モータ23から圧油を送油可能とする。なお、(V)位置ではチェックバルブ22からの油路はブロックされ、圧油は流れない。
前記左右切換バルブ45は液圧モータ23からの圧油を液圧シリンダ11Rまたは液圧シリンダ11Lへの送油を切り換えるものであり、ピストンロッド11aにラッチ機構を設けて、液圧シリンダ11の伸縮ストロ−クエンド位置に至ると左右切換バルブ45を自動的に切り換えるようにしている。即ち、左右切換バルブ45の切換操作杆45aは液圧シリンダ11Lのピストンロッド11aと平行に配置され、ピストンロッド11a先端からコ字状の当接体46が切換操作杆45a側へ突設されている。切換操作杆45aの先端には切換アーム47が固定され、切換アーム47の先端は当接体46の凹部内に臨むように配置される。但し、左右切換バルブ45は液圧シリンダ11Rの側方に設けることも可能であり、限定するものではなく、また、ラッチ機構は、切換アーム47とコ字状に構成した当接体46に限定するものではなく、2本棒体を突設してその間に切換アーム47を配置してもよい。
そして、液圧シリンダ11Lが伸長してストロークエンド近辺に至ると(図6aから図6b)、当接体46が切換アーム47に当接して回動し、左右切換バルブ45は液圧モータ23から右側の液圧シリンダ11Rへ送油する(Y)位置に切り換えられる。また、液圧シリンダ11Lが縮小してストロークエンド近辺に至ると(図6bから図6a)、当接体46が切換アーム47に当接して切換操作杆45aを押して液圧モータ23から左側の液圧シリンダ11Lへ送油する(X)位置に切り換える。
このように構成することで、足が少し動くように回復し鍛えたい場合には強制駆動切換バルブ42を(U)位置に切り換えて前記同様に、ペダル7・7を踏むことにより、液圧モータ23を駆動させてリハビリ用車椅子1を前進させる。そして、足を動かす機能が十分回復しておらず強制的に動かしたい場合には、強制駆動切換バルブ42を(V)位置に切り換える。この状態で、補助者がグリップ2c・2cを持って、リハビリ用車椅子1を押して前進させると、または、訓練者がハンドリム9を持って後輪4・4を前進回転させると、液圧モータ23が駆動されて液圧ポンプとして作用し、油路43、左右切換バルブ45を介して液圧シリンダ11Lに作動油を供給して伸長させ(左右切換バルブ45が(X)の位置の場合)、液圧シリンダ11Rからは油路44を介して作動油を吸入して縮小させる。このとき、右側のペダル7Rは下降され、左側のペダル7Lは上昇される。
液圧シリンダ11Lが伸長してピストンロッド11aがストロークエンド近辺に至ると、当接体46が切換アーム47に当接し切換操作杆45aを引っ張り、左右切換バルブ45を(Y)位置に切り換え、油路43からの圧油は液圧シリンダ11Rに送油され、液圧シリンダ11Rを伸長させ、液圧シリンダ11Lは縮小する。このとき、左側のペダル7Lは上昇から下降に切り換えられ、右側のペダル7Rは下降から上昇に切り換えられる。
液圧シリンダ11Lが縮小してピストンロッド11aがストロークエンド近辺に至ると、当接体46が切換アーム47に当接し切換操作杆45aを押し上げて、左右切換バルブ45を(X)位置に切り換え、油路43からの圧油は液圧シリンダ11Lに送油され、液圧シリンダ11Lを伸長させ、液圧シリンダ11Rは縮小する。このとき、左側のペダル7Lは下降から上昇に切り換えられ、右側のペダル7Rは上昇から下降に切り換えられる。
こうして、補助者がグリップ2c・2cを持って、リハビリ用車椅子1を押して前進させると、または、訓練者がハンドリム9を持って後輪4・4を前進回転させると、左右のペダル7L・7Rは強制的に交互に昇降される。なお、後輪4・4を後進回転させても、左右のペダル7L・7Rを強制的に交互に昇降させることができる。また、前記同様に前後進切換バルブ41を設けることも可能である。
また、図7に示すように、前記液圧アクチュエータは液圧モータ23を用いる代わりに、液圧シリンダ50R・50Lとラック51R・51Lとピニオン52R・52Lを用いて後輪4・4を駆動する構成とすることができる。この場合、液圧シリンダ50R・50Lのピストンロッド上にラック51R・51Lが長手方向に固定され、ラック51R・51Lにピニオン52R・52Lが歯合される。該ピニオン52R・52Lの支持軸52a・52a上には前記ワンウェイクラッチ26・26を介して出力歯車27・27が取り付けられ、出力歯車27・27は減速歯車28・28と歯合され、その他の構成は前記と同様の構成である。
液圧閉回路8は、液圧シリンダ11R・11Lのボトム室と液圧シリンダ50R・50Lのボトム室が油路53R・53Lによりそれぞれ連通され、液圧シリンダ50R・50Lのロッド室は油路54により連通され、油路54には可変絞り25が配設される。
このような構成において、右側のペダル7Rを踏み込むと、液圧シリンダ11Rが縮小され、液圧シリンダ11Rの作動油は液圧シリンダ50Rに送油され、液圧シリンダ50Rを伸長させる。液圧シリンダ50Rのピストンロッドが伸長されることで、ラック51Rが摺動し、ピニオン52Rを回転させ、ワンウェイクラッチ26、出力歯車27、減速歯車28を介して右側の後輪4を駆動するとともに、連動歯車29、連動軸30、連動歯車29、減速歯車28を介して左側の後輪4も駆動する。
そして、液圧シリンダ50Rが伸長されることで、ロッド室内の作動油が左側の液圧シリンダ50Lのロッド室に送油され、液圧シリンダ50Lを縮小させる。このとき、可変絞り25を通過するため、送油量が調節され、ペダル7にかかる負荷を調節することができる。前記液圧シリンダ50Lの縮小により、油路53を介して液圧シリンダ11Lに作動油が送油されて液圧シリンダ11Lを伸長させ、ペダル7Lを上昇させる。ペダル7Lを下降させた場合は前記と左右逆の作用となる。こうして、ペダル7L・7Rをこぐことにより後輪4・4を前進回転させることが可能となる。
以上のように、前記液圧アクチュエータは、液圧シリンダ50R・50Lで構成され、液圧シリンダ50R・50Lのピストンロッドにはラック51R・51Lが固定され、該ラック51R・51Lはピニオン52R・52Lに歯合されて、該ピニオン52R・52Lから後輪4・4に動力を伝達する構成とするので、簡単な構成で後輪4・4を駆動することが可能となる。
また、前記液圧シリンダ11R・11Lと液圧シリンダ50R・50Lは、合体させる構成とすることもできる。即ち、図8に示すように、液圧シリンダ11R・11Lは両ロッド型のシリンダで構成し、前側のロッド11aはアーム12と連結し、後側のロッド11bにはラック51を取り付け、ピニオン52と歯合させる。そして、左右の液圧シリンダ11R・11Lの後側のロッド室同士を油路54で連通する。その他の構成は前記と同様とする。このように構成することで、前記と同様にペダル7L・7Rをこぐことにより後輪4・4を前進回転させることが可能となる。
また、図9、図10に示すように、前記液圧アクチュエータは液圧モータ23を用いる代わりに、左右一対の液圧シリンダ60R・60Lと、アーム61R・61Lとワンウェイクラッチ63R・63Lを用いて後輪4・4を前進回転させることも可能である。液圧シリンダ60R・60Lは、それぞれシリンダブロック60a内に二つのピストン60b・60bと該ピストン60b・60bから延設されるピストンロッド60c・60cを平行に有し、該ピストン60b・60bの一方は縮小位置に配置され、他方は伸長位置に配置される。
液圧閉回路8は、前記液圧シリンダ11Rのボトム室と液圧シリンダ60Rの一方のボトム室とが油路53Rを介して連通され、前記液圧シリンダ11Lのボトム室と液圧シリンダ60Lの一方のボトム室とが油路53Lを介して連通される。液圧シリンダ60Rの他方のボトム室と液圧シリンダ60Lの他方のボトム室が油路66を介して連通されている。前記油路66には可変絞り25が配設され、流量を変更可能としている。液圧シリンダ60R・60Lにおける、ロッド室同士が油路で連通されている。こうして、それぞれの液圧シリンダ11R・11Lの一方のピストンロッド60cを縮小させると他方のピストンロッド60cが伸長されるようにしている。
液圧シリンダ60R・60Lから後輪4・4への動力伝達構成は左右対称であるため、右側について説明する。前記ピストン60b・60bから延設されるピストンロッド60c・60cの先端にはアーム61R・61Rと連結される。該ピストンロッド60c・60cの先端には連結ピンが設けられ、アーム61R・61Rの先端には長孔61a・61aが開口され、該長孔61a・61aに前記ピンが挿入されて連結される。前記アーム61R・61Rの回動基部はワンウェイクラッチ63R・63Rを介して回動軸62に軸支される。該回動軸62上にはピニオン64Rが固設され、該ピニオン64Rは車軸4a上に固設された伝動歯車65Rと歯合されている。
このような構成において、右側のペダル7Rを踏み込むと、液圧シリンダ11Rが縮小され、液圧シリンダ11Rの作動油は液圧シリンダ60Rに送油され、一方のピストンロッド60cが伸長され、他方のピストンロッド60cが縮小される。一方のピストンロッド60cが伸長されることで、アーム61Rが回動され、ワンウェイクラッチ63Rを介して回動軸62Rに伝えられ、回動軸62R上のピニオン64R、伝動歯車65R、車軸4aを介して右側の後輪4を前進回転させる。なお、他方のピストンロッド60cが縮小されるときにアーム61Rも回動されるがワンウェイクラッチ63Rにより空回りして動力は伝達されない。
そして同時に、前記他方のピストンロッド60cが縮小されることにより、ボトム室の作動油が油路66を介して左側の液圧シリンダ60Lのボトム室に送油されて一方のピストンロッド60cを伸長させ、アーム61Lを回動し、ワンウェイクラッチ63L、回動軸62L上のピニオン64L、伝動歯車65L、車軸4aを介して左側の後輪4を前進回転させる。更に、前記液圧シリンダ60Lの一方のピストンロッド60cの伸長により、他方のピストンロッド60cが縮小され、その圧油が液圧シリンダ11Lに送油されて液圧シリンダ11Lを伸長させ、ペダル7Lを上昇させる。ペダル7Lを下降させた場合は前記と左右逆の作用となる。こうして、ペダル7L・7Rをこぐことにより後輪4・4を前進回転させることが可能となる。こうして、左右の液圧シリンダ60R・60Lを油路66で連通することにより、連動軸30をなくすことができ、油路66は高圧ホースで構成され容易に曲げられるようにしているので、リハビリ用車椅子1を容易に折り畳むことができるようになる。なお、油路66に設けた可変絞り25を通過するときに、送油量を調節できるので、ペダル7にかかる負荷を調節することができる。
以上のように、前記液圧アクチュエータは、液圧シリンダ60R・60Lで構成され、液圧シリンダ60R・60Lのピストンロッド60c・60cにはアーム61R・61Lが連結され、該アーム61R・61Lの回動軸62R・62Lにはピニオン64R・64Lが固定され、該ピニオン64R・64Lから後輪4・4に動力を伝達する構成とするので、簡単な構成で後輪4・4を駆動することが可能となる。なお、前記ワンウェイクラッチ26・63はラチェット式として、正回転のみの回転と、逆回転のみの回転とを切り換える機構を設け、後輪4・4を前進または後進させるようにすることもできる。
1 リハビリ用車椅子
2 機体フレーム
3 前輪
4 後輪
5 座部
6 背もたれ部
7 ペダル
8 液圧閉回路
11 液圧シリンダ
12 アーム
23 液圧モータ
本発明は、病気や怪我などによって下肢に障害を負った人が、自立した元通りの生活もしくは元通りの状態に近い生活を送るために訓練を行うためのリハビリ用車椅子の技術に関する。
従来から、下肢に障害を有する人の機能回復を行う車椅子が公知となっている。例えば、特許文献1や特許文献2に示す技術である。特許文献1の技術は、車椅子の前部の車体フレームに設けた左右のペダル軸受と、該ペダル軸受に両端を軸承させた互い違いの両ペダルを有するペダル回転軸と、ペダル回転軸と車輪軸との間に設ける変速装置とからなり、前記ペダル軸には伸縮により長さを調節する回転径調節機構が設けられ、車椅子を押すことにより駆動車輪を回転させて足を載せたペダルを回転させ、脚のリハビリ運動ができるようにしていた。
また、特許文献2に示す技術は、車体フレームの前後に前輪と後輪が配置され、車体フレームの側方にシャフトを配置して、シャフトの前端に傾動自在にペダルを配置し、中途部を揺動自在に支持し、後端を後輪に固定した回転板にガイド部材を介して長手方向にスライド自在、かつ、回転自在に保持されるようにし、後輪の外側に配置されるハンドルリムを回転させると、利用者の足が上下方向に円弧運動を行うことができ、膝関節と股関節を同時に屈曲及び伸展させることを可能としていた。
しかし、足が動くようになって、足の筋力を鍛えようとする場合、前記技術では、ペダルと後輪が歯車や伝動軸を介して連結されていたので、ペダルを前に押す、または、下げるこぎはじめに最も力が必要であり、負荷変動が大きく、その負荷は変更することができないため、回復度合いに合わせた訓練を行うことができなかった。
特許第3831907号公報
特許第5391354号公報
そこで、本発明は、ペダルをこぐ初期の力を徐々に伝えることができ、そのこぐ力を回復に合わせて調節できるリハビリ用車椅子を提供しようとする。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、機体フレームに、訓練者が座る座部と背もたれ部と、左右一対の前輪と、左右一対の後輪とからなる走行部を備えたリハビリ用車椅子であって、
前記座部の前下方には訓練者の足を載せる左右一対のペダルと、該ペダルを上下揺動自在に支持する左右一対のアームと、該アームの回動により駆動される左右一対の液圧ポンプと、前記後輪を回転駆動可能とする液圧アクチュエータと、前記左右一対の液圧ポンプの相互間、及び、左右一対の液圧ポンプと前記液圧アクチュエータの間を流体接続する液圧回路とを備え、前記一方のペダルの押し下げ力による作動油が、液圧回路を介して送油され、前記アクチュエータを駆動すると共に、他方のペダルの押し上げ力として作用するものである。
請求項2においては、前記液圧回路には可変絞りが設けられるものである。
請求項3においては、前記液圧ポンプは液圧シリンダで構成されるものである。
請求項4においては、前記液圧アクチュエータは液圧モータで構成されるものである。
請求項5においては、前記液圧アクチュエータは、液圧シリンダで構成され、液圧シリンダのピストンロッドにはラックが固定され、該ラックはピニオンに歯合されて、該ピニオンから後輪に動力を伝達する構成とするものである。
請求項6においては、前記液圧アクチュエータは、液圧シリンダで構成され、液圧シリンダのピストンロッドにはアームが連結され、該アームの回動軸にはピニオンが固定され、該ピニオンから後輪に動力を伝達する構成とするものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、左右のペダルを交互に踏んでこぐことが可能となり、こぎ始めと走行後の負荷変動が小さくなり、訓練者にかかる負担が小さくなり、その負荷は変更することが可能となり、機能の回復度合いに合わせて負荷を変更して訓練を行うことが可能となった。
また、左右の液圧ポンプの間を液圧回路を構成する油路で連結するので、機械的な連動機構を少なくすることができ、左右の液圧ポンプの間の油路は高圧ホースで構成し、容易に曲げられるように出来るので、リハビリ用車椅子を容易に幅狭く折り畳むことができるようになるのである。
本発明のリハビリ用車椅子の全体構成を示す側面図。
リハビリ用車椅子の後方斜視図。
ペダルとシリンダの側面図。
液圧回路図。
逆転を可能とした液圧回路図。
後輪を駆動することでペダルを揺動させる液圧回路図。
ラックとピニオンを用いた実施形態の液圧回路図。
同じく他の実施形態の液圧回路図。
アームとワンウェイクラッチを用いた実施形態の斜視図。
同じく液圧回路図。
図1、図2を参照して、リハビリ用車椅子1の全体的な構成について説明する。以下の説明においては、図1に示した矢印Fの方向をリハビリ用車椅子1の進行方向、つまり前方向として、前後左右方向を規定するものとする。
リハビリ用車椅子1は、機体フレーム2に、訓練者が座る座部5と背もたれ部6と、左右一対の前輪3・3と後輪4・4とからなる走行部を備える。前記前輪3・3は、機体フレーム2の前下部の左右両側に配置され、キャスター輪で構成される。後輪4・4は、機体フレーム2の後部両側に配置され、前記前輪3・3よりも大径に構成している。前記座部5と背もたれ部6は、柔軟な布等で構成され、左右のサイドフレーム2a・2a間に張設される。座部5の前下方の左右両側には訓練者の足を載せるペダル7・7が配置され、該ペダル7・7はアーム12・12の前端に設けられ、アーム12・12は交互に昇降動作可能に構成している。
前記機体フレーム2は左右のサイドフレーム2a・2aと、左右のサイドフレーム2a・2aを連結する前後の連結フレーム2b・2bからなり、連結フレーム2b・2bは後面視X字状に構成して、左右のサイドフレーム2a・2aを近づけて幅狭く折り畳み可能に構成している。サイドフレーム2a・2aは、鋼管を折り曲げ溶接して枠状に構成しており、サイドフレーム2a・2aの前下部に前輪3・3を支持している。サイドフレーム2a・2aの後部に後輪4・4の車軸4a・4aを回転自在に支持している。サイドフレーム2a・2aの後上部には補助者が持つグリップ2c・2cが形成されている。
前記サイドフレーム2a・2aの前後中途部には取付板10・10が固定され、図3に示すように、該取付板10・10には、前記ペダル7・7を取り付けるアーム12・12と、該アーム12・12の回動により駆動される液圧ポンプとなる液圧シリンダ11・11が取り付けられる。以下左右一対が対称に設けられるため、左右一方について説明する。また、液圧ポンプ及び液圧アクチュエータを作動させる作動液は、本実施形態では油を用いているため作動油として説明する。なお、作動液は油に限定するものではなく、水やアルコール等の液体であればよい。
前記液圧シリンダ11は、上下方向に配置して上端が軸13により前後揺動自在に取付板10に支持される。液圧シリンダ11のピストンロッド11aの下端は軸14を介してアーム12の後端に枢支される。該アーム12は前後方向に配置されて、後中途部が軸15により上下揺動自在に取付板10に支持される。なお、アーム12後部に取付孔を所定間隔毎に開口し、ピストンロッド11a先端とアーム12の前後方向の取付位置を変更可能に構成することにより、ペダル7・7の揺動距離を変更することが可能となり、また、軸15の取り付け位置を変更可能に構成することにより、ペダル7・7の前後位置を変更することが可能となり、訓練者の身長や可動範囲に合わせることができる。
れている。
前記アーム12の前端にペダル7が取り付けられる。該ペダル7は足を載せられる程度の大きさの板体で構成され、ペダル7の前下面に支持軸16が横設され、該支持軸16の一端がアーム12の前部に回転自在に支持される。また、ペダル7の後部側面よりピン17が突設され、アーム12の該前上部にもピン18が横設され、該ピン18とピン17との間にバネ19を介装し、ペダル7の後部が上方に回動するように付勢している。なお、ペダル7の上方への回動は、ピン17がアーム12の下面に当接して規制される。但し、ペダル7の取付構造は限定するものではない。
図4に示すように、液圧ポンプとなる前記液圧シリンダ11は、液圧閉回路8を介して液圧アクチュエータとなる液圧モータ23と接続される。液圧閉回路8はブリッジ接続した4つのチェックバルブ22と可変絞り25とホース(配管)からなる油路とを備える。図2に示すように、前記液圧モータ23は、左右一側(本実施形態では右側)のサイドフレーム2aの後部内側に配置され、チェックバルブ22を収納するバルブケース24は左右他側(本実施形態では左側)のサイドフレーム2aの後部内側に配置される。こうして、左右に液圧モータ23とバルブケース24を左右振り分け配置することで、重量バランスが偏らないようにし、取付作業やメンテナンスも容易にできるようにしている。
次に、後輪4・4の駆動部及び液圧閉回路8について図4より説明する。右側の液圧シリンダ11Rの油室と液圧モータ23の吸入ポート23aを連通する油路21aには、液圧シリンダ11Rから液圧モータ23へ作動油を送油可能なチェックバルブ22aが配置され、右側の液圧シリンダ11Rの油室と液圧モータ23の吐出ポート23bを連通する油路21bには、液圧モータ23から液圧シリンダ11へ作動油を送油可能なチェックバルブ22bが配置される。
また、左側の液圧シリンダ11Lの油室と液圧モータ23の吸入ポート23aを連通する油路21cには、液圧シリンダ11Lから液圧モータ23へ作動油を送油可能なチェックバルブ22cが配置され、左側の液圧シリンダ11Lの油室と液圧モータ23の吐出ポート23bを連通する油路21dには、液圧モータ23から液圧シリンダ11へ作動油を送油可能なチェックバルブ22dが配置される。
前記油路21aと油路21bが合流した油路21e(油路21cと油路21dが合流した油路であってもよい)には可変絞り25が配置され、作動油の送油量を調節可能としている。可変絞り25には図示しないダイヤルやレバー等の操作部材を設けて、操作部材を操作することで容易に送油量を調節可能としている。
前記液圧モータ23の出力軸23c上にはワンウェイクラッチ26を介して出力歯車27が外嵌され、該出力歯車27には後輪4の車軸4a上に固設した減速歯車28と歯合されている。該減速歯車28には更に連動歯車29と歯合され、該連動歯車29は連動軸30の一端に固体されている。該連動軸30の他端には連動歯車29が固定され、左右の後輪4・4が同期して回転できるようにしている。前記連動軸30は曲げることが可能なフレキシブル軸やユニバーサルジョイント等で構成され、リハビリ用車椅子1を折り畳むときに曲げられるようにしている。また、前記後輪4の外側には、訓練者が手で後輪4を回転させるためのハンドリム9が同心状に一体的に固定されている。
このような構成とすることで、リハビリを行う訓練者が、座部5に座り、足をペダル7・7に載せて、例えば、右側のペダル7Rを押し下げると(踏み込むと)、アーム12Rが軸15を中心に前下がりに回動して、アーム12Rの後部が上昇され液圧シリンダ11Rを縮小させる。このとき、液圧シリンダ11Rはショックアブソーバの役目を果たし、急激に液圧シリンダ11Rを縮小させることはない。この液圧シリンダ11Rの縮小により、液圧シリンダ11R(油室)内の作動油は押し出されて、油路21a、チェックバルブ22a、可変絞り25を介して液圧モータ23に作動油が送油され、液圧モータ23を回転駆動する。なお、油路21bにはチェックバルブ22bが配設されているため、作動油は液圧モータ23の吐出ポート23b側に送油されることはない。
前記液圧モータ23の吐出ポート23bから吐出された作動油は、油路21d、チェックバルブ22dを介して左側の液圧シリンダ11L内に送油され、液圧シリンダ11Lを伸長させる。なお、吐出ポート23bから吐出された作動油は油路21bにも送油可能であるが、油路21aの油圧が高いため送油されることはない。左側の前記液圧シリンダ11Lが伸長すると、アーム12Lの前部が上昇されるように回動され、左側のペダル7Lが持ち上げられる。
そして、前記液圧モータ23が駆動されることにより、出力軸23cからワンウェイクラッチ26、出力歯車27、減速歯車28、車軸4aを介して右側の後輪4を前進回転させると同時に、連動歯車29、連動軸30、左側の連動歯車29、減速歯車28、車軸4aを介して左側の後輪4を前進回転させ、左右の後輪4・4が同じ回転数でリハビリ用車椅子1を前進させることができる。
また、左側のペダル7Lを押し下げると、液圧シリンダ11Lが縮小され、液圧シリンダ11L内の作動油が吐出されて、油路21c、チェックバルブ22c、可変絞り25を介して液圧モータ23の吸入ポート23aに送油される。なお、油路21dへはチェックバルブ22dが配設されているため送油されない。そして、液圧モータ23への作動油の供給方向が前記と同様であるため、液圧モータ23の出力軸23cは前記と同方向に回転され、後輪4・4は前進方向に回転され、リハビリ用車椅子1を前進させることができる。
前記液圧モータ23の吐出ポート23bから吐出された作動油は、油路21b、チェックバルブ22bを介して右側の液圧シリンダ11R内に送油され、液圧シリンダ11Rを伸長させる。なお、吐出ポート23bから吐出された作動油は油路21dにも送油可能であるが、油路21cの油圧が高いため送油されることはない。右側の前記液圧シリンダ11Rが伸長すると、アーム12Rの前部が上昇されるように回動され、右側のペダル7Rが持ち上げられる。こうして、ペダル7・7を交互に踏み込むことにより、液圧モータ23が駆動されて後輪4・4を前進回転させ、リハビリ用車椅子1を前進させることができる。
また、補助者がグリップ2c・2cを持って、リハビリ用車椅子1を移動させるときには、グリップ2cを持って押すことで、後輪4の回転は出力歯車27に伝えられるが、ワンウェイクラッチ26は液圧モータ23の出力軸23cに対して空回りするため、液圧モータ23は作動されず、ペダル7・7を揺動させることはない。
そして、訓練が進み、訓練者が更に大きな力が出せるようになった場合には、可変絞り25を操作して送通油量を減少させ、ペダル7・7を踏むための負荷を増加させることができる。こうして徐々に負荷を増加させることができるので、訓練用機器を変更することなく、体に大きな負担をかけることなく徐々に筋力をアップさせることができるようになるのである。
以上のように、機体フレーム2に、訓練者が座る座部5と背もたれ部6と、左右一対の前輪3・3と後輪4・4とからなる走行部を備えたリハビリ用車椅子1であって、前記座部5の前下方には訓練者の足を載せる左右一対のペダル7・7と、該ペダル7・7を上下揺動自在に支持するアーム12・12と、該アーム12・12の回動により駆動される液圧ポンプとなる液圧シリンダ11・11と、前記後輪4・4を回転駆動可能とする液圧アクチュエータとなる液圧モータ23と、該液圧モータ23と前記液圧シリンダ11・11とを流体接続する液圧閉回路8と、を備えるので、左右のペダル7を交互に踏み込んで下降させると、作動油が流れて液圧モータ23を回転させ、リハビリ用車椅子1を前進させることができる。このとき、ペダル7を踏み込むと液圧シリンダ11で構成される液圧ポンプを作動させるので、機械的にペダル7と後輪4を接続する構成に比べて、走行開始時と走行時の負荷変動が大きくなく、体にやさしい訓練をすることが可能となる。
また、前記液圧閉回路8には可変絞り25が設けられるので、ペダル7の踏み込み負荷を変更することができ、つまり、リハビリ用車椅子1を走行させるための力を変更できるようになり、訓練者の機能回復度合いに合わせて負荷を調節でき、訓練のための機器の変更を要せず、容易に機能回復訓練ができる。また、負荷の変更も自在に容易にできる。また、前記液圧ポンプは液圧シリンダ11で構成されるので、ペダル7の揺動で容易にシリンダの伸縮駆動に変更して、作動油を送油することが可能となる。但し、液圧ポンプは、回転式として、軸15上に配置して、ラジアルピストンポンプやアキシャルピストンポンプやベーンポンプやギヤポンプ等で構成することも可能である。また、前記液圧アクチュエータは液圧モータ23で構成されるので、ペダル7をこぐ力が小さくても走行駆動することが可能となり、訓練を幅広く行える。また、液圧モータ23はラジアルピストン式やアキシャルピストン式やベーン式やギヤ式等で構成することができ、限定するものではない。
また、前記リハビリ用車椅子1では、ペダル7をこぐことにより、前進しかできなかったが、後進したり、フリーとして、補助者がリハビリ用車椅子1を容易に前後進させるようにすることも可能である。つまり、図5に示すように、液圧閉回路8において、4ポート3位置切換の前後進切換バルブ41をチェックバルブ22(または可変絞り25)と液圧モータ23の間に設ける。前後進切換バルブ41は、図5(a) に示すように、(イ)位置では、前述した液圧シリ ダ11から液圧モータ23の吸入ポート23aへのみ送油する油路を備える。図5(b) に示すように、(ロ)位置では、中立位置であり、液圧モータ23の吸入ポート23aと吐出ポート23bが流通自在とする油路を備え、液圧モータ23は回転自在となり、液圧シリンダ11・11へは作動油が送油されず、後輪4・4は回転自在となり、補助者がグリップ2c・2cを持って、前後進自在に操作できる。図5(c)に示すように、(ハ)位置では、図5(a)と逆に、液圧モータ23の吸入ポート23aと吐出ポート23bが入れ替わった状態となり、液圧シリンダ11からの作動油により液圧モータ23は逆転駆動され、ペダル7・7をこぐとリハビリ用車椅子1は後進する。よって、訓練者は前後進切換バルブ41を(イ)位置または(ハ)位置に切り換え操作することにより、ペダル7・7をこいで容易に前後進させることができる。前後進切換バルブ41を中立位置(ロ)に切り換えることにより、補助者によって容易にリハビリ用車椅子1を前後進させることができる。
また、補助者がグリップ2c・2cを持って、リハビリ用車椅子1を押し引きする。または、訓練者がハンドリム9を持って後輪4・4を回転させることで、液圧モータ23を回転させ、ペダル7・7を上下に揺動させるようにして、強制的にペダル7・7を揺動させ、下肢の機能を回復できるようにすることもできる。即ち、図6に示すように、液圧閉回路8において、強制駆動に切り換える強制駆動切換バルブ42と液圧シリンダ11R・11Lを互いに反対方向に伸縮させる機構として左右切換バルブ45を設ける。つまり、6ポート2位置切換の強制駆動切換バルブ42をチェックバルブ22(または可変絞り25)と液圧モータ23の間に設けるとともに、液圧シリンダ11R・11Lと強制駆動切換バルブ42との間に並列に油路43・44を設け、該油路43・44に左右切換バルブ45を設ける。
前記強制駆動切換バルブ42は、手動で切り替えるものであり、(U)位置で前述のペダル7・7をこぐことにより液圧モータ23を駆動してリハビリ用車椅子1を前進させるものであり、(V)位置に切り換えることで、左右切換バルブ45を介して液圧シリンダ11R・11Lに液圧モータ23から圧油を送油可能とする。なお、(V)位置ではチェックバルブ22からの油路はブロックされ、圧油は流れない。
前記左右切換バルブ45は液圧モータ23からの圧油を液圧シリンダ11Rまたは液圧シリンダ11Lへの送油を切り換えるものであり、ピストンロッド11aにラッチ機構を設けて、液圧シリンダ11の伸縮ストロ−クエンド位置に至ると左右切換バルブ45を自動的に切り換えるようにしている。即ち、左右切換バルブ45の切換操作杆45aは液圧シリンダ11Lのピストンロッド11aと平行に配置され、ピストンロッド11a先端からコ字状の当接体46が切換操作杆45a側へ突設されている。切換操作杆45aの先端には切換アーム47が固定され、切換アーム47の先端は当接体46の凹部内に臨むように配置される。但し、左右切換バルブ45は液圧シリンダ11Rの側方に設けることも可能であり、限定するものではなく、また、ラッチ機構は、切換アーム47とコ字状に構成した当接体46に限定するものではなく、2本棒体を突設してその間に切換アーム47を配置してもよい。
そして、液圧シリンダ11Lが伸長してストロークエンド近辺に至ると(図6aから図6b)、当接体46が切換アーム47に当接して回動し、左右切換バルブ45は液圧モータ23から右側の液圧シリンダ11Rへ送油する(Y)位置に切り換えられる。また、液圧シリンダ11Lが縮小してストロークエンド近辺に至ると(図6bから図6a)、当接体46が切換アーム47に当接して切換操作杆45aを押して液圧モータ23から左側の液圧シリンダ11Lへ送油する(X)位置に切り換える。
このように構成することで、足が少し動くように回復し鍛えたい場合には強制駆動切換バルブ42を(U)位置に切り換えて前記同様に、ペダル7・7を踏むことにより、液圧モータ23を駆動させてリハビリ用車椅子1を前進させる。そして、足を動かす機能が十分回復しておらず強制的に動かしたい場合には、強制駆動切換バルブ42を(V)位置に切り換える。この状態で、補助者がグリップ2c・2cを持って、リハビリ用車椅子1を押して前進させると、または、訓練者がハンドリム9を持って後輪4・4を前進回転させると、液圧モータ23が駆動されて液圧ポンプとして作用し、油路43、左右切換バルブ45を介して液圧シリンダ11Lに作動油を供給して伸長させ(左右切換バルブ45が(X)の位置の場合)、液圧シリンダ11Rからは油路44を介して作動油を吸入して縮小させる。このとき、右側のペダル7Rは下降され、左側のペダル7Lは上昇される。
液圧シリンダ11Lが伸長してピストンロッド11aがストロークエンド近辺に至ると、当接体46が切換アーム47に当接し切換操作杆45aを引っ張り、左右切換バルブ45を(Y)位置に切り換え、油路43からの圧油は液圧シリンダ11Rに送油され、液圧シリンダ11Rを伸長させ、液圧シリンダ11Lは縮小する。このとき、左側のペダル7Lは上昇から下降に切り換えられ、右側のペダル7Rは下降から上昇に切り換えられる。
液圧シリンダ11Lが縮小してピストンロッド11aがストロークエンド近辺に至ると、当接体46が切換アーム47に当接し、切換操作杆45aを押し上げて、左右切換バルブ45を(X)位置に切り換え、油路43からの圧油は液圧シリンダ11Lに送油され、液圧シリンダ11Lを伸長させ、液圧シリンダ11Rは縮小する。このとき、左側のペダル7Lは下降から上昇に切り換えられ、右側のペダル7Rは上昇から下降に切り換えられる。こうして、補助者がグリップ2c・2cを持って、リハビリ用車椅子1を押して前進させると、または、訓練者がハンドリム9を持って後輪4・4を前進回転させると、左右のペダル7L・7Rは強制的に交互に昇降される。なお、後輪4・4を後進回転させても、左右のペダル7L・7Rを強制的に交互に昇降させることができる。また、前記同様に前後進切換バルブ41を設けることも可能である。
また、図7に示すように、前記液圧アクチュエータは液圧モータ23を用いる代わりに、液圧シリンダ50R・50Lとラック51R・51Lとピニオン52R・52Lを用いて後輪4・4を駆動する構成とすることができる。この場合、液圧シリンダ50R・50Lのピストンロッド上にラック51R・51Lが長手方向に固定され、ラック51R・51Lにピニオン52R・52Lが歯合される。該ピニオン52R・52Lの支持軸52a・52a上には前記ワンウェイクラッチ26・26を介して出力歯車27・27が取り付けられ、出力歯車27・27は減速歯車28・28と歯合され、その他の構成は前記と同様の構成である。
液圧閉回路8は、液圧シリンダ11R・11Lのボトム室と液圧シリンダ50R・50Lのボトム室が油路53R・53Lによりそれぞれ連通され、液圧シリンダ50R・50Lのロッド室は油路54により連通され、油路54には可変絞り25が配設される。
このような構成において、右側のペダル7Rを踏み込むと、液圧シリンダ11Rが縮小され、液圧シリンダ11Rの作動油は液圧シリンダ50Rに送油され、液圧シリンダ50Rを伸長させる。液圧シリンダ50Rのピストンロッドが伸長されることで、ラック51Rが摺動し、ピニオン52Rを回転させ、ワンウェイクラッチ26、出力歯車27、減速歯車28を介して右側の後輪4を駆動するとともに、連動歯車29、連動軸30、連動歯車29、減速歯車28を介して左側の後輪4も駆動する。
そして、液圧シリンダ50Rが伸長されることで、ロッド室内の作動油が左側の液圧シリンダ50Lのロッド室に送油され、液圧シリンダ50Lを縮小させる。このとき、可変絞り25を通過するため、送油量が調節され、ペダル7にかかる負荷を調節することができる。前記液圧シリンダ50Lの縮小により、油路53を介して液圧シリンダ11Lに作動油が送油されて液圧シリンダ11Lを伸長させ、ペダル7Lを上昇させる。ペダル7Lを下降させた場合は前記と左右逆の作用となる。こうして、ペダル7L・7Rをこぐことにより後輪4・4を前進回転させることが可能となる。
以上のように、前記液圧アクチュエータは、液圧シリンダ50R・50Lで構成され、液圧シリンダ50R・50Lのピストンロッドにはラック51R・51Lが固定され、該ラック51R・51Lはピニオン52R・52Lに歯合されて、該ピニオン52R・52Lから後輪4・4に動力を伝達する構成とするので、簡単な構成で後輪4・4を駆動することが可能となる。
また、前記液圧シリンダ11R・11Lと液圧シリンダ50R・50Lは、合体させる構成とすることもできる。即ち、図8に示すように、液圧シリンダ11R・11Lは両ロッド型のシリンダで構成し、前側のロッド11aはアーム12と連結し、後側のロッド11bにはラック51を取り付け、ピニオン52と歯合させる。そして、左右の液圧シリンダ11R・11Lの後側のロッド室同士を油路54で連通する。その他の構成は前記と同様とする。このように構成することで、前記と同様にペダル7L・7Rをこぐことにより後輪4・4を前進回転させることが可能となる。
また、図9、図10に示すように、前記液圧アクチュエータは液圧モータ23を用いる代わりに、左右一対の液圧シリンダ60R・60Lと、アーム61R・61Lとワンウェイクラッチ63R・63Lを用いて後輪4・4を前進回転させることも可能である。液圧シリンダ60R・60Lは、それぞれシリンダブロック60a内に二つのピストン60b・60bと該ピストン60b・60bから延設されるピストンロッド60c・60cを平行に有し、該ピストン60b・60bの一方は縮小位置に配置され、他方は伸長位置に配置される。
液圧閉回路8は、前記液圧シリンダ11Rのボトム室と液圧シリンダ60Rの一方のボトム室とが油路53Rを介して連通され、前記液圧シリンダ11Lのボトム室と液圧シリンダ60Lの一方のボトム室とが油路53Lを介して連通される。液圧シリンダ60Rの他方のボトム室と液圧シリンダ60Lの他方のボトム室が油路66を介して連通されている。前記油路66には可変絞り25が配設され、流量を変更可能としている。液圧シリンダ60R・60Lにおける、ロッド室同士が油路で連通されている。こうして、それぞれの液圧シリンダ11R・11Lの一方のピストンロッド60cを縮小させると他方のピストンロッド60cが伸長されるようにしている。
液圧シリンダ60R・60Lから後輪4・4への動力伝達構成は左右対称であるため、右側について説明する。前記ピストン60b・60bから延設されるピストンロッド60c・60cの先端にはアーム61R・61Rと連結される。該ピストンロッド60c・60cの先端には連結ピンが設けられ、アーム61R・61Rの先端には長孔61a・61aが開口され、該長孔61a・61aに前記ピンが挿入されて連結される。前記アーム61R・61Rの回動基部はワンウェイクラッチ63R・63Rを介して回動軸62に軸支される。該回動軸62上にはピニオン64Rが固設され、該ピニオン64Rは車軸4a上に固設された伝動歯車65Rと歯合されている。
このような構成において、右側のペダル7Rを踏み込むと、液圧シリンダ11Rが縮小され、液圧シリンダ11Rの作動油は液圧シリンダ60Rに送油され、一方のピストンロッド60cが伸長され、他方のピストンロッド60cが縮小される。一方のピストンロッド60cが伸長されることで、アーム61Rが回動され、ワンウェイクラッチ63Rを介して回動軸62Rに伝えられ、回動軸62R上のピニオン64R、伝動歯車65R、車軸4aを介して右側の後輪4を前進回転させる。なお、他方のピストンロッド60cが縮小されるときにアーム61Rも回動されるがワンウェイクラッチ63Rにより空回りして動力は伝達されない。
そして同時に、前記他方のピストンロッド60cが縮小されることにより、ボトム室の作動油が油路66を介して左側の液圧シリンダ60Lのボトム室に送油されて一方のピストンロッド60cを伸長させ、アーム61Lを回動し、ワンウェイクラッチ63L、回動軸62L上のピニオン64L、伝動歯車65L、車軸4aを介して左側の後輪4を前進回転させる。更に、前記液圧シリンダ60Lの一方のピストンロッド60cの伸長により、他方のピストンロッド60cが縮小され、その圧油が液圧シリンダ11Lに送油されて液圧シリンダ11Lを伸長させ、ペダル7Lを上昇させる。ペダル7Lを下降させた場合は前記と左右逆の作用となる。こうして、ペダル7L・7Rをこぐことにより後輪4・4を前進回転させることが可能となる。こうして、左右の液圧シリンダ60R・60Lを油路66で連通することにより、連動軸30をなくすことができ、油路66は高圧ホースで構成され容易に曲げられるようにしているので、リハビリ用車椅子1を容易に折り畳むことができるようになる。なお、油路66に設けた可変絞り25を通過するときに、送油量を調節できるので、ペダル7にかかる負荷を調節することができる。
以上のように、前記液圧アクチュエータは、液圧シリンダ60R・60Lで構成され、液圧シリンダ60R・60Lのピストンロッド60c・60cにはアーム61R・61Lが連結され、該アーム61R・61Lの回動軸62R・62Lにはピニオン64R・64Lが固定され、該ピニオン64R・64Lから後輪4・4に動力を伝達する構成とするので、簡単な構成で後輪4・4を駆動することが可能となる。なお、前記ワンウェイクラッチ26・63はラチェット式として、正回転のみの回転と、逆回転のみの回転とを切り換える機構を設け、後輪4・4を前進または後進させるようにすることもできる。
1 リハビリ用車椅子
2 機体フレーム
3 前輪
4 後輪
5 座部
6 背もたれ部
7 ペダル
8 液圧閉回路
11 液圧シリンダ
12 アーム
23 液圧モータ