JP2016033440A - 管内単相流用伝熱管 - Google Patents

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Abstract

【課題】管内の流体の流速が低流速域で、乱流を促進することなく、また、管内流体の圧力損失の増大を抑制しつつ、熱伝達率を著しく向上させることができる管内単相流用伝熱管を提供する。【解決手段】管内単相流用伝熱管は、管外面に溝が螺旋状に形成されたコルゲート管を曲げ加工されたものからなる。そして、管内に単相流流体をレイノルズ数3000以下で流し、この単相流流体と、管外の流体、物質又は輻射熱との間で、熱交換を行う。この管内単相流用伝熱管は、管外径ODが6乃至20mm、管内径IDが5乃至19mmであり、前記溝の管軸方向におけるピッチPcが、15乃至25mmであり、前記曲げの半径Rcoilが48乃至82mmである。また、前記コルゲート溝の深さをDcとしたとき、Dc/IDが、0.051乃至0.097であることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、管外の流体(自然冷媒、フロン冷媒、水等)の保有熱又は管外の物体(土壌熱等の固体物質等)の保有熱若しくはソーラーパネル等の輻射熱と、管内を流れる単相流流体(水、ブライン等)とを熱交換させる管内単相流伝熱管に関し、特に、管内の流体が低流速域、即ち、低レイノルズ数Re域(Reが3000以下)で乱流が増大することなく、また、管内流体の圧力損失を実質的に増大させることなく、熱伝達率を著しく向上させて、低流速域での使用に適した管内単相流用伝熱管に関する。
管内単相流用伝熱管は、管外面に1本の溝を螺旋状に形成したコルゲート管であり、銅又は銅合金管からなる。この管内単相流用伝熱管の具体的な用途としては、(a)ヒートポンプ給湯器(例えば、エコキュート)に使用される水―冷媒熱交換器に使用される伝熱管、(b)ガス給湯器内にて使用される水―水の二重管式熱交換器に使用される伝熱管、(c)太陽熱温水器のソーラーパネル内に設置されている温水配管、(d)地中に埋め込んで使用する土壌熱−水熱交換器配管用伝熱管がある。これらのコルゲート管からなる伝熱管において、一部が曲げ加工されたり、また、コイル状に巻回するように曲げ加工されたものがある。
管内外の流体間で熱交換させる機器は、省エネ化の取り組みがなされており、熱交換器単体での高性能化を図るとともに、熱媒体の搬送動力の低減による省エネ化を図るべく、取り組まれている。熱媒体の搬送動力の低減としては、通常は、熱媒体の流体を熱交換器内に送るためにポンプが使用されているが、搬送動力の低減策として、搬送流体の流量を低減させることにより、ポンプ運転動力を低減させる方法が採用されている。
また、熱交換器内において、長時間かけて流体を高温にさせる機器があり、その事例として代表的なものに、ヒートポンプ給湯器がある。このヒートポンプ給湯器は、水道水の給水口より直接熱交換器内に流体である水を送り込み、熱交換器内において長時間かけて流体を高温にさせるため、管内の流体の速度を低く設定していること、またこの水道水の圧力はポンプ等での搬送力に比較して低く、その結果、管内を通過する流体の速度が遅くなり、管内のレイノルズ数Reは3000以下で使用されることが多い。この低レイノルズ数領域では、管内の流体は層流域になり、層流域での熱伝達率は、乱流状態と比較して低下するため、使用する伝熱管自体の性能を向上させることにより、対応せざるを得ない。
これらの伝熱管は、二重管式熱交換器等に加工し、更に組み立てた後に、通常、給湯機器等の機器に組み込んで使用するが、熱交換器の占有スペースを小さくすることが多く、その際に、必要に応じて、伝熱管及び熱交換器を曲げ加工して、給湯機器等の機器内に組み込まれることが多い。この曲げ加工を施した場合、曲げ部分において、渦の発生等による圧力損失が増加し、ポンプ動力増加する等の問題点が生じる。
現状使用されている代表的な伝熱管として、平滑管、内面溝付管(特許文献1)、コルゲート管(特許文献2)、突起加工を施したコルゲート管(特許文献3)があり、コルゲート管を使用した熱交換器(特許文献4)も開示されている。
内面溝付管は、管内にらせん状の突起を多数設け、管内を通流する媒体の乱流を促進させて管壁面での速度境界層及び温度境界層の形成を抑制するものである。コルゲート管は、管の内面及び外面に、深い凹凸をらせん状に、かつ小ピッチにて形成したものである。このように形成された凹凸により、管内(管外も含めて)の流体が層流域にて流れる場合でも、乱流が促進されて熱伝達異率が向上する。更に、例えば、特許文献2のコルゲート管のコルゲートピッチは、3乃至10mmであり、特許文献3のコルゲート管のコルゲートピッチは10mmである。なお、特許文献3においては、コルゲート溝の他に、突起が形成されており、この突起がコルゲート溝内に15mmのピッチで形成されているので、管内面の突出部は、10mmよりも小さくなる。そして、このコルゲート管においては、このコルゲート溝として形成された凹凸により、管内の流体が層流域にて流れる場合でも、乱流が促進されて熱伝達率が向上する。これは、管外の流体も同様である。また、内面溝部に小突起を形成したコルゲート管の場合、この形成した小突起を設けることにより、伝熱性能が向上すると共に、圧力損失が小さくなる。特許文献4に記載のコルゲート管は、管内外面に深い凹凸を螺旋状にかつ小ピッチにて形成したものである。この凹凸により、乱流を促進されて熱伝達率が向上する。
特開2006−242553号公報 特開2007−218486号公報 WO2008/029639号公報 特開2012−122714号公報
しかしながら、平滑管は、文字どおり、内面及び外面に溝等がないものであり、管表面が平滑面である。このように、流体と接触する面が平滑であると、管内に流体を流したときに、管壁面に速度境界層及び温度境界層が形成され、その境界層が流体間の熱交換を阻害する。
また、内面溝付管は、管内面に多数の溝を設けたことにより、伝熱管の重量が増加し、これにより使用材料が増加して、コストが増大するという問題点がある(特許文献1)。また、層流域で使用した場合、溝を多数設けたことにより溝部での流体の流動性が悪くなり、管を曲げ加工した場合に,曲げ部での渦がより多く発生しやすくなり、圧力損失が増大する。
更に、コルゲート管においては、らせん状に深い凹凸を小ピッチに形成して乱流を促進させたことにより、管内流体の圧力損失が増大する(特許文献2,3)。また、圧力損失の増大により搬送動力が増加し、また管内にスケール等の堆積物が滞留することにより、極端な場合には、管内を閉塞させてしまうという問題点がある。更に、層流域で使用した場合に、突起ピッチが小さいことにより、突起間の部分での流体の流動性が悪くなり、曲げ加工を施した場合に、曲げ部において、渦がより一層発生しやすくなり、圧力損失が増大する。
更にまた、コルゲート管に突起加工を施した伝熱管においては、コルゲート突起及びコルゲート突起間の溝部に形成した小突起が高く、小突起の下流側にて流体に乱れの発生による渦が発生し、圧力損失が増大する(特許文献3)。この伝熱管で、曲げ加工を施した場合には、曲げ部での渦がより一層発生されやすくなり、圧力損失が増大する。
更にまた、特許文献4に記載されたコルゲート管も、螺旋状に深い凹凸を小ピッチで形成したことにより、突起間の部分での流体の流動性が悪くなり、曲げ加工を施した場合に曲げ部で渦がより一層発生しやすくなり、圧力損失が増大する。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、管内の流体の流速が低流速域で、乱流を促進することなく、また、管内流体の圧力損失の増大を抑制しつつ、熱伝達率を著しく向上させることができる管内単相流用伝熱管を提供することを目的とする。
本発明に係る管内単相流用伝熱管は、管外面に溝が螺旋状に形成されたコルゲート管を曲げ加工されたものからなり、
管内に単相流流体をレイノズル数3000以下で流し、この単相流流体と、管外の流体、物質又は輻射熱との間で、熱交換を行う管内単相流用伝熱管において、
管外径ODが6乃至20mm、管内径IDが5乃至19mmであり、
前記溝の管軸方向におけるピッチPcが、15乃至25mmであり、
前記曲げの半径が48乃至82mmであることを特徴とする。
この単相流用伝熱管は、銅又は銅合金製であることが好ましい。
この管内単相流用伝熱管において、前記コルゲート溝の深さをDcとしたとき、Dc/IDが、0.051乃至0.097であることが好ましい。
本発明においては、コルゲート管を構成する溝のピッチ(コルゲートピッチ)が、15乃至25mmと、従来よりも長い。そして、管外面の前記溝により管内面には突起が形成されるが、この突起間に形成された凹部の長さが長くなる。そうすると、低レイノルズ数の領域では、流速が遅く、層流状態となるが、この低流速の場合に、溝のピッチを大きくすると、管内を流れる単相流流体の主流(管中央部を通る流体)と、前記凹部内で対流している単相流流体の副流とが合流しやすくなり、伝熱性能が向上する。このため、低レイノルズ数領域でも、高い伝熱性能を達成できる。また、低レイノルズ数領域であるから、管内流体の圧力損失は十分に小さい。
(a)は、本発明の実施形態に係るコルゲート管からなる管内単相流用伝熱管を曲げた状態を示す左側面図、(b)は同じくその正面図である。 本発明の実施形態のコルゲート管を示す縦断面図である。 (a)、(b)は流速が遅い場合の流体の流れを示す模式図である。 (a)、(b)は流速が速い場合の流体の流れを示す模式図である。 本発明の実施形態に係るコルゲート管を平面上で左方に曲げた際に、管内を流れる流体の主流が基点(衝突点、コルゲート加工の突起3の側面)から流動する流れを示す平面図である。 曲げ加工の形態を、楕円形にしたコイルの模式図である。 曲げ加工の形態を、半円周の部分を、直線部分で連結したコイルの模式図である。 熱伝達係数及び摩擦係数等を測定する試験装置を示す図である。 本発明の実施形態に係るコルゲート管を、二重管式熱交換器に組み込んだ際の管端部での構造を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1(a)は、本発明の実施形態に係るコルゲート管からなる管内単相流用伝熱管を示す左側面図、図1(b)は同じくその正面図である。図2は、本実施形態のコルゲート管の縦断面図である。コルゲート管1は、平滑管の外面に、先端が先鋭な工具を押し当て、この状態で、例えば、管を回転させつつ管軸方向に移動させる等して、工具により1本の螺旋の溝2を管外面に形成することにより、コルゲート溝2を形成したものである。管内面には、管外面に溝2を形成することにより、突起3が形成され、更に、管内面には、この突起3間に、凹部4が形成される。なお、図2において、ODは管外径、IDは管内径、管肉厚はδ、コルゲート溝ピッチはPc、コルゲート溝の深さはDcで示す。また、コルゲート溝2は、1本の螺旋状の条により形成されているので、コルゲート溝2のねじれ角は、管の外径OD、コルゲート溝2のピッチPc、及び条数が決まれば、一義的に決まる。なお、コルゲート管の材質は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス、チタン等の熱が伝導する金属材料からなり、特に、銅又は銅合金のような熱伝導率が良好なものであれば、なお好適である。
本発明の実施形態においては、コルゲート管1は、例えば、図1に示すように、コイル状に曲げ加工されて、コイル10として、熱交換器内に組み込まれる。コルゲート管1を前述の如くして製造した直後はコルゲート管1は直管状をなしており、その後、コルゲート管1の両管端部を除いて、コルゲート管1をコイル状に曲げ加工することにより、コルゲート管1のコイル10を得る。なお、コルゲート加工と、曲げ加工とは、連続的に行っても良いし、コルゲート加工の後、直管状で出荷し、別の工場で曲げ加工しても良い。なお、このコルゲート管1の中心線によるコイル10の曲げ半径をRcoilとする。また、このコイル10のピッチをPcoilとする。
なお、コルゲート管1の曲げ加工の形態は、図1に示すコイル状のものに限らない。例えば、図6に示すように、曲げ加工の形態を、楕円形にした楕円コイル11としても良いし、図7に示すように、曲げ加工の形態を、半円周の部分を、直線部分で連結したような形状のコイル12としても良い。このコイルの形状は、種々のものが考えられる。図6に示す楕円形状のコイル11の場合は、その小径を曲げ半径Rcoilとする。また、図7に示すコイル12の場合は、半円部分の半径をRcoilとする。
図3及び図4は、溝ピッチPcと、管内部の単相流流体の流れとの関係を示す模式図である。図3は、流速が遅い(レイノルズ数Reが小さい)場合、図4は、流速が速い(レイノルズ数Reが大きい)場合を示す。なお、図3及び図4は、図2に示すコルゲート管の形状を模式的に示したものであり、実際には、これらの図に示すような角形の溝は形成されない。図4に示すように、流速が速い場合は、流体間の剪断力が大きく、図4(a)に示すように、溝ピッチPcが小さい場合でも、凹部4内の流体が凹部4内で十分に対流が形成され、拡散されて、主流と合流するため、伝熱効率が高い。一方、コルゲート溝のピッチPcが大きいと、図4(b)に示すように、主流からの流体が凹部4内に入り込み、凹部4内を流れるため、凹部4の両隅部でのみ対流拡散が生じることになり、凹部4の全体で流体の対流拡散が生じることがないので、伝熱効率が低下する。
これに対し、管内部の単相流流体の流速が遅い場合は、図3に示すように、管内の主流と、凹部4内の副流(対流)との間の剪断力が小さい。このため、図3(a)に示すように、コルゲート溝ピッチPcが小さい場合は、副流は、凹部4内で弱い対流を形成するが、この対流(副流)は主流と合流せず、凹部4内に留まりやすい。このため、流速が遅く、コルゲート溝ピッチPcが小さい場合は、伝熱効率が低い。
一方、図3(b)に示すように、管内の単相流流体の流速が小さい場合でも、コルゲート溝ピッチPcが大きい場合は、凹部4内の流体と主流とが接触する部分の面積が十分に大きいため、主流による剪断力が小さくても、凹部4内で対流した流体が主流と合流するため、伝熱効率が高い。
このように、本発明者等は、低レイノルズ数の流速が遅い場合には,コルゲート溝ピッチPcが大きい方が、伝熱効率が高いことを見出し、本発明を完成されたものである。そして、本発明は、単相流流体が低レイノルズ数で流速が遅い条件下でも、コルゲート溝ピッチPcを15mm以上とすることにより、乱流を促進させることなく、伝熱効率を高めることができることを、後述のごとく実証したものである。また、本発明においては、乱流が促進されないので、管内流体の圧力損失が増大して搬送動力が増加するようなことがなく、管内にスケール等の堆積物が滞留し、管内を閉塞させてしまこともない。
本実施形態においては、コルゲート管1からなる伝熱管が半径Rcoilのコイル状に曲げ加工される。図5は、コルゲート管1が平面視で左方に曲げ加工された状態を示す。このようにコルゲート管1を曲げ加工すると、図5に示すように、その内部を通流する流体は、コルゲート管1の曲げ部に流入する際において、コルゲート管1の中心を流れる流体(以下、主流という)がそのまま直進して流入し、曲げ加工部に形成されているコルゲート加工の突起3の側面に主流が衝突する。衝突した主流は、コルゲート加工の突起3が螺旋状に形成されているため、突起3間の凹部4の下流側面壁近傍に沿って上流側と下流側に分離して流れていく。即ち、図5の一点鎖線にて示す主流は、流体の通流方向の上流側で熱交換されながら、下流側に流れていく。そして、この主流が曲げ加工部において、コルゲート管の突起3に衝突すると、衝突した点である基点(衝突点)において、分流する。その後、分流した流体は上流側と下流側に旋回して流れる。
この分流した流体は、層流状態で(流れが乱れずに)管内面に形成された突起3間の凹部4の下流側に沿って、一部は上流側に戻りながら旋回して流れ、残部は下流側に旋回して流れて行く。その後、凹部4の下流側で旋回する流れが,凹部4にて形成された対流(副流)に合流して副流との伝熱性能が向上する。その後、更に図3(b)に示すように、凹部4内に位置する流体が、管中心部の主流と接触し、凹部4の部分で対流が生じ、この対流流体と主流とが合流して、より一層伝熱性能が向上する。
一方、図5に示すように、直管部から曲げ加工部分に遷移する領域と異なり、図1に示す円筒コイルのように連続して曲げ加工した部分においては、主流が遠心力により外周側に主流が移動していき、曲げ外周側の管内面の突起3に主流が衝突して管上部及び管下部に分流される。その後、凹部4の下流側で旋回する流れが、凹部4にて形成した対流(副流)に合流して、副流との伝熱性能が向上する。その後、更に凹部4内に位置する流体が、管中心部の主流と接触し、凹部4の部分で対流が生じ、この対流流体と主流とが合流して、より一層伝熱性能が向上する。
本実施形態においては、コルゲート管1からなる伝熱管が半径Rcoilのコイル状に曲げ加工される。このようにコルゲート管1を曲げ加工すると、図5に示すように、その内部を通流する冷媒は、コルゲート管1の曲げ部において、コルゲート加工の突起3に衝突して、その一部が上流側に戻ってくる。即ち、コルゲート管1の中心を流れる流体(以下、主流という)は、流体の通流方向の上流側で熱交換されながら下流側に流れていく。そして、この主流が曲げ加工部において、コルゲート管の管壁に衝突すると、衝突した点を基点(衝突点)にして、管上部及び管下部に分流される、この分流した流体は、層流状態で(流れが乱れずに)管内面に形成された突起3間の凹部3に沿って、一部は上流側に戻りながら旋回して流れ、残部は下流側に旋回して流れて行く。その後、凹部3内に位置する流体が、管中心部の主流と接触し、凹部4の部分で対流が生じ、この対流流体と主流とが合流して、より伝熱性能が向上する。
次に、本発明のコルゲート管からなる単相流用伝熱管の構成について説明する。
「伝熱管の管外径OD:6乃至20mm、管内径ID:5乃至19mm」
先ず、例えば、伝熱管の外径ODは、6乃至20mm、内径IDは、5乃至19mmである。管内には、水及びブライン等の単相流流体が流れる。一方、管外の熱媒体は、本発明の伝熱管を使用する分野により異なる。本発明の伝熱管の使用分野が、ヒートポンプ給湯器のように水−冷媒熱交換器の場合には、管外面に自然冷媒又はフロン冷媒が流れ、使用分野が、ガス給湯器のように水−水熱交換器に使用される二重管式熱交換器の場合は、管外にも水等の単相流体が流れる。また、他の技術分野においても、例えば、太陽熱温水器のソーラーパネルの温水配管に本発明の伝熱管を使用する場合は、輻射線等の電磁波が管外面に吸収されて生じる輻射熱が伝熱管に作用する。また、本発明の伝熱管を地中に埋め込んで、土壌と管外面とが接触する水−土壌熱交換器の分野に伝熱管を使用する場合は、土壌に蓄積された熱と管外面との間で熱交換が生じる。
このようにして、これらの管内の流体と管外の流体又は物質との間で、熱交換をする。このような用途に使用される単相流用伝熱管としては、外径及び内径が、例えば、上記範囲である。また、本発明は、管内を流れる単相流流体のレイノルズ数Reは3000以下であることが好ましい。好ましくは、この管内を流れる単相流流体のレイノルズ数Reは2000以下である。本発明の伝熱管は、このような低レイノルズ数の流体に適している。
「コルゲート溝ピッチPc:15乃至25mm」
コルゲート溝ピッチPcは、15乃至25mmである。コルゲート溝ピッチPcを上記範囲にすることにより、衝突点で流体が凹部4に分流して旋回する際、凹部4内への流体の流入が促進され、流体が乱流促進されずに、流体通流方向の上流側及び下流側に旋回しやすくなる。更には、凹部4内の流体と、管中心部の主流とが接触する面積が大きくなり、凹部4内で対流した流体が、主流と合流しやすくなり、伝熱性能が向上する。
コルゲート溝ピッチPcが15mmより小さくなると、衝突点で流体が凹部4に分流して旋回する際、凹部4内への流体の流入が阻害され、分流流体が乱流促進されて、圧力損失が増大すると共に、凹部4内での対流が阻害されて、伝熱性能が低下する。また、コルゲートピッチPcが25mmよりも大きくなると、衝突点で流体が凹部4に分流して旋回する際、凹部4内への流体の流入が容易になるが、旋回流が弱くなって凹部4での対流が阻害され、凹部4内の流体と管中心部の主流との合流が促進されず、伝熱性能が低下する。従って、コルゲート溝ピッチPcは、15乃至25mmとする。
「曲げ半径Rcoil:48乃至82mm」
コイル10の曲げ半径Rcoilが48mmより小さくなると、伝熱管内を通流する流体が、伝熱管内面の衝突点から分流して旋回する際に、流体に作用する遠心力が強くなりすぎると共に、突起3間の凹部4内の流体が管壁から離脱して、主流が乱れ、管壁と主流との合流が阻害されて、伝熱性能が阻害され、圧力損失が増大する。また、コイル10の曲げ半径が82mmを超えると、衝突点から分流して旋回する際に、流体に作用する遠心力が弱くなる。このことにより、圧力損失は低下するものの、衝突点で分流した流体が上流側及び下流側へ流れる際の流動性が低下するため、伝熱性能が低下する。従って、曲げ加工の曲げ半径Rcoilは、48乃至82mmとする。
「Dc/ID:0.051乃至0.097」
コルゲート溝2の深さ(管内面の凹部4の深さ)をDcとすると、Dc/IDを0.051乃至0.097とすることにより、衝突点で流体が凹部4に分流して旋回する際、凹部4内の流体が乱流促進されずに、上流側及び下流側に旋回しやすくなる。これにより,凹部4内での対流が阻害されにくくなり、管中心部の主流と、凹部4内で対流した流体との接触及び合流が促進され、伝熱性能が促進される。
Dc/IDが0.051よりも小さい場合、衝突点で流体が凹部4に分流して旋回する際、凹部4内の流体が、凹部4内より主流側に流れやすくなり、管中心部の主流と凹部4内の流体との間の対流が阻害されて、伝熱性能が低下する。また、Dc/IDが0.097より大きい場合は、衝突点で流体が凹部4に分流して旋回する際、凹部4内の流体が乱流促進されずに、上流側及び下流側に流れやすくなるものの、溝深さDcが深くなることにより曲げ部での管中心部の主流流体が乱流促進されて圧力損失が増大する。従って、Dc/IDは0.051乃至0.097とする。
「溝ねじれ角βc:40°以上」
コルゲート溝2は、1本の螺旋状の条により形成されている。この場合、溝ねじれ角βcは、管の外径OD、コルゲート溝のピッチPc、及び条数が決まれば一義的に決まるので、溝ねじれ角βcは、管外径OD及びコルゲート溝ピッチPcにより決まる。例えば、この溝ねじれ角βcは、実施例に記載のように、54°等種々の値をとることができる。また、伝熱管1の肉厚δは、例えば、実施例に記載のように、0.613mm等、種々の値をとることができる。
なお、本発明においては、管軸方向にみて、凹部4内に管軸と平行な平坦部を形成することができる。これにより、管内を流れる単相流流体の乱流化を抑制することができると共に、衝突点を基点に、管上部及び管下部の凹部4内に分流された流体が、旋回して流れやすくなり、凹部4内の流体と、管中心部の主流とが接触する面において、凹部4内で対流している副流と、主流とが、より一層合流しやすくなり、伝熱性能が向上する。この平坦部の管軸方向の長さLfは、コルゲート溝のピッチPcの0.40乃至0.80倍とすることが好ましい。即ち、Lfは0.40Pc乃至0.80Pcとすることが好ましい。
また、本発明の実施形態の伝熱管を、用途に応じて、例えば、二重管式熱交換器に加工して使用する場合は、平滑管の管内に本実施形態の伝熱管を挿入して、二重管構造にする。二重管式熱交換器の場合、本実施形態の伝熱管を平滑管の管内に挿入し、図6又は図7に示すコイル状等で使用する場合、この挿入された状態で管を曲げ加工することにより、コイル状に曲げ、所望のコイル形態に加工する。その際に、本実施形態の伝熱管の曲げ半径がRcoilになるように、曲げ加工の程度を適宜調整する。図9は、二重管式熱交換器の外管として使用する平滑管30の管内に、本実施形態の伝熱管31が挿入された管端部の状態を示している。この二重管は、曲げ加工された後に、その管端部には、例えば、T継手32(図9に破線にて示す)等を差し込み、平滑管30とT継手32との差込部分及び伝熱管31とT継手32とをろう付け等で接合することにより、T継手が取り付けられる。なお、T継手32の上方に分岐して延びる部分は、熱交換器への組込み時に応じてその方向を適宜決めて組み付け、流体の出入口配管と接続される。なお、本実施形態の伝熱管を二酸化炭素冷媒を使用した給湯器で使用する場合、本実施形態のコルゲート管1の外周面に、二酸化炭素冷媒を通流させるための細管を螺旋状に巻回する。
以下、本発明の効果を実証するために、本発明の範囲に入る実施例と、本発明の範囲から外れる比較例とについて説明する。
まず、単相流流体の伝熱性能の試験方法について説明する。図8はこの試験装置を示す模式図である。本試験装置においては、加熱側及び給湯側の双方に水を媒体として使用した。熱交換槽13内には加熱水が貯留されており、この加熱水は、加熱水タンク21から、配管22aを介して供給され、配管22bを介して、加熱水タンク21に戻される。熱交換槽13内には、伝熱管15が水平に配置されており、この伝熱管15内には、給湯水タンク11から、給湯水が、配管12aを介して供給され、伝熱管15を通流した後、配管12bを介して、給湯水タンク11に返戻される。加熱水タンク21は、加熱水の温度が、恒温循環装置24により、一定温度(32℃,37℃又は42℃)になるように、制御される。また、給湯水タンク11は、給湯水の温度が、恒温循環装置18により、20℃に一定に制御される。
給湯水は混合器20a、20bを介して、伝熱管15に出入りするが、この伝熱管15への給湯水の出入口温度は、この伝熱管の出入口に設置した混合器20a、20bにおいて、白金測温抵抗体を使用して、測定することができる。給湯水の流量は、バルブ25により、一定流量になるように、段階的に調節する。また、熱交換槽13内の伝熱管15の平均温度は、温度変化に伴う電気抵抗値の変化により測定することができる。そして、この伝熱管15の出入口に設置した圧力タップの圧力を配管16により差圧変換器17に導き、差圧変換器17を、1kPa、10kPa,50kPa,又は200kPaに切り替えて測定する。なお、熱交換槽13内は撹拌器14により撹拌され、給湯水タンク11内は撹拌器19により撹拌され、加熱水タンク21内は撹拌器23により加熱されて、水の温度の均一化が図られている。伝熱管15は、図1に示す形状を有するコイルであり、コイル巻き数nは5.5である。曲げ加工は、所定のコイル直径に合わせた曲げ加工治具を製作し、この曲げ加工治具を使用して直管状コルゲート管をコイルに曲げ加工した。
冷却水の熱交換量Qsは、給湯水流量をW、定圧比熱をcp、給湯出口温度をTsout、給湯入口温度をTsinとして、下記数式1により求めることができる。また、熱伝達係数αiは、熱流束をqi、電圧降下により求めた管平均温度をTwi、管の熱伝導を考慮して修正した管内壁面温度をTwm、給湯水の出入口温度の算術平均温度をTsnとして、下記数式2により求めることができる。但し、qi、Twi、Tsnは、夫々下記数式3,4,5により求めることができる。なお、Lは有効伝熱長さ,diは最大内径、doは外径、λは銅の熱伝達率、δは肉厚を表す。そして、管内ヌッセルト数Nui及びレイノルズ数Reは、下記数式6及び数式7により求まる。但し、ρは給湯水の密度、viは給湯水の流速、μは給湯水の粘性である。そして、ΔPを圧力損失、xを試験区間の長さとして、摩擦係数fiは下記数式8により求まる。
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本発明の第1実施例として、伝熱管の形状寸法の相違による圧力損失及び熱伝達係数についての影響について説明する。各試験伝熱管の形状寸法を下記表1乃至表3に示す。また、各試験伝熱管のヌッセルト数及び摩擦係数を、下記表4乃至表6に示す。
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上記表1〜表3において、基準1は平滑管である。また、基準2は直管状のコルゲート管である。実施例1〜9は、本発明の請求項3の範囲に入る実施例であり、実施例10〜12は、本発明の請求項1のみを満たす実施例である。比較例1〜7は、本発明の範囲から外れるコルゲート管コイルである。実施例1〜12及び比較例1〜7は、図1に示す形状を有するコイル状伝熱管であり、図2に示す形状のコルゲート管を使用した伝熱管である。なお、条数は1である。また、表4〜表6において、Nui比は、管内ヌッセルト数Nuiを示し、基準1の平滑管に対する比で示した。また、fi比は、摩擦係数であり、流体の流動抵抗を示し、圧力損失の大きさを示す特性である。このfi比も、基準1の平滑管に対する比で示した。更に、管内ヌッセルト数Nui比及び摩擦係数fi比のいずれも、(1)、(2)、(3)は、夫々、レイノルズ数Reが3000、2000、1000の場合の特性である。つまり、例えば、レイノルズ数Reが3000のときの管内ヌッセルト数の平滑管(基準1)に対する比はNui比(1)であり、同じく摩擦抵抗の平滑管(基準1)に対する比はfi比(1)である。管内ヌッセルト数Nuiが大きい程、伝熱性能が高く、摩擦係数fiが小さい程、圧力損失が小さく、伝熱管として優れている。
本発明の比較例2〜7は、管内ヌッセルト数Nui(1)が1.76〜1.81であるのに対し、本願請求項1のみを満たす実施例10〜12は、管内ヌッセルト数Nui(1)が1.88〜2.02、本願請求項3も満たす実施例1〜9は、管内ヌッセルト数Nui(1)が1.99〜2.02である。従って、本発明の実施例1〜12は、比較例2〜7よりも伝熱性能が向上しており、更に、請求項3を満たす実施例1〜9は、請求項1のみを満たす実施例10〜12よりも管内ヌッセルト数の下限値が高く、伝熱性能が高いことが示されている。一方、圧力損失(摩擦係数(1))は、本発明の比較例2〜7が2.87〜3.41、実施例10〜12が2.98〜3.07、実施例1〜9が2.98〜3.02である。従って、本発明の実施例1〜12は、比較例2〜7と、圧力損失は同等レベルであるいえる。よって、本発明の実施例1〜12は比較例2〜7と圧力損失は同程度であるのに対し、伝熱性能が比較例2〜7よりも著しく高い。一方,比較例1は、管内ヌッセルト数(1)が2.83と高く、実施例1〜12よりも伝熱性能が優れているが、比較例1の摩擦抵抗(圧力損失)は、fi比(1)が6.52であり、本発明の実施例(fi比(1)の最大値3.07)よりも極めて高く、比較例1の伝熱管は、使用しにくいことがいえる。他のNui(2)及びfi(2)並びにNui(3)及びfi(3)も同様である。
一方、基準2の直管状コルゲート管は、実施例1のコイル状コルゲート管に対し、基準2が直管、実施例1が曲げ半径Rcoilが60mmのコイルであること以外は、他の形状因子が同一であるが、両者を対比すると、実施例1は基準2よりも伝熱性能が高く、曲げ部を有することにより、管内を通流する冷媒が突起3にて衝突して分流することによる伝熱性能の向上が得られている。しかしながら、曲げ部を有することにより、実施例1は基準2よりも圧力損失が高い。しかしながら、基準2と比較例1〜7との対比から、伝熱性能の差が小さく、比較例1〜7は、伝熱性能が直管コルゲート管と同程度で、伝熱性能の向上が得られていないことがわかる。
本発明は、低レイノルズ数の流体が流れる用途の伝熱管として、この低レイノルズ数の範囲で、圧力損失の増大を抑制しつつ、伝熱性能を著しく高めることができるため、極めて有益である。
1:伝熱管、2:コルゲート溝、3:突起、4:凹部、15:伝熱管

Claims (3)

  1. 管外面に溝が螺旋状に形成されたコルゲート管を曲げ加工されたものからなり、
    管内に単相流流体をレイノズル数3000以下で流し、この単相流流体と、管外の流体、物質又は輻射熱との間で、熱交換を行う管内単相流用伝熱管において、
    管外径ODが6乃至20mm、管内径IDが5乃至19mmであり、
    前記溝の管軸方向におけるピッチPcが、15乃至25mmであり、
    前記曲げの半径Rcoilが48乃至82mmであることを特徴とする管内単相流用伝熱管。
  2. 前記コルゲート管の材質が、銅又は銅合金からなることを特徴とする請求項1に記載の管内単相流用伝熱管。
  3. 前記コルゲート溝の深さをDcとしたとき、Dc/IDが、0.051乃至0.097であることを特徴とする請求項1又は2に記載の管内単相流用伝熱管。
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