JP2016032819A - 鍛接鋼管の製造工程におけるエッジヒータの加熱制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鍛接鋼管の内面側に発生する段差の形状を修正し、円滑な形状に改善することが可能なエッジヒータの加熱制御方法を提供する。【解決手段】エッジヒータ3の上流側で鋼帯の両エッジ部の肉厚tOP(mm)とtDR(mm)をそれぞれ測定し、肉厚偏差Δt=tOP−tDRに応じてエッジヒータ3の目標加熱温度TOP(℃)とTDR(℃)に温度差を付与し、肉厚の測定値が小さい方のエッジ部を他方よりも高い温度に加熱する。【選択図】図1
Description
本発明は、鍛接鋼管の製造ラインに設置される1対のエッジヒータの加熱制御方法に関するものである。
従来から鍛接鋼管は、図3に示すような製造ラインで製造されている。つまり、鋼帯1を連続的に加熱炉2に装入して加熱(1100〜1300℃)し、加熱炉2の出側に設置される1対のエッジヒータ3で鋼帯1の両エッジ部のみを更に加熱(1350〜1400℃)し、次いで成形ロール4を用いて鋼帯1を管状に成形して両エッジ部を対向させ、ノズル5から酸素を吹き付けながら鍛接ロール6で両エッジ部を鍛接して鍛接鋼管9とする。その後、ストレッチレデューサ(図示せず)で所定の外径、肉厚に仕上げる。図3中の矢印Aは鋼帯1の進行方向を示す。
このような鍛接鋼管9の製造方法は、電縫鋼管や継目無鋼管の製造方法と比べて、能率が高いという利点を有している。
しかしながら鋼帯1の両エッジ部において肉厚の不一致(以下、肉厚偏差という)がある場合は、鍛接鋼管9の鍛接衝合部7の内面側に、図4に示すような段差8が生じる。また、鋼帯1を管状に成形する際に、対向する両エッジ部にずれが生じた場合(以下、成形不良という)にも、鍛接衝合部7に段差8が生じる。鍛接鋼管9の外面側は、成形ロール4や鍛接ロール6で拘束されるので、段差8は内面側に発生し易い。なお、段差8の高低差は0.1〜0.2mm程度である。
内面側に段差が生じた鍛接鋼管は、それを使用するにあたって、
(a)段差に応力が集中して、亀裂が発生し易い、
(b)段差に水分が滞留して、腐食が進行し易い
等の使用上の問題が生じる。そこで上記(a)(b)の問題を未然に防止するために、出荷する前に検査を行なう。そして、その検査工程にて、
(c)鍛接衝合部に段差を有する鍛接鋼管は、検査工程で形状不良と判定され、歩留りの低下を招く
という製造上の問題が生じる。したがって、段差が発生するのを防止する、あるいは発生した段差の形状を修正するための技術が求められている。
(a)段差に応力が集中して、亀裂が発生し易い、
(b)段差に水分が滞留して、腐食が進行し易い
等の使用上の問題が生じる。そこで上記(a)(b)の問題を未然に防止するために、出荷する前に検査を行なう。そして、その検査工程にて、
(c)鍛接衝合部に段差を有する鍛接鋼管は、検査工程で形状不良と判定され、歩留りの低下を招く
という製造上の問題が生じる。したがって、段差が発生するのを防止する、あるいは発生した段差の形状を修正するための技術が求められている。
たとえば特許文献1には、成形ロールの中央に鋼帯を配置させるために、鋼帯の捩れに応じて成形ロールの位置を調整する技術が開示されている。この技術は、成形不良に起因する段差は防止できるが、肉厚偏差に起因する段差を防止するのは困難である。
特許文献2には、鋼帯のエッジ部を900℃以下の温度に高周波電流で加熱し、さらに接合した後、ビードを切削して電縫鋼管を製造する技術が開示されている。しかし、鍛接鋼管の製造工程における鋼帯の加熱温度は1000℃を超え、エッジ部はさらに高温であるから、特許文献2に開示された技術を鍛接鋼管の製造工程におけるエッジヒータに適用することはできない。また、鍛接ロールの出側における鍛接鋼管の温度、とりわけ鍛接衝合部の温度は高温であるから、ビードの機械加工(すなわち切削除去)も困難である。
つまり従来の技術では、肉厚偏差が原因で発生する段差の形状を修正する技術は未だ確立されていない。
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、鍛接鋼管の内面側に発生する段差の形状を修正し、円滑な形状に改善することが可能なエッジヒータの加熱制御方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鍛接鋼管の製造工程において肉厚偏差に起因する段差を防止するのは困難であるものの、発生した段差を円滑な形状に修正することによって、上記(a)〜(c)の問題点を解消できることに着目した。そして、肉厚偏差に起因して発生する段差の形状を修正する技術について検討し、
(A)鋼帯の両エッジ部の肉厚をエッジヒータの上流側で測定すれば肉厚偏差の有無を判定できる、
(B)肉厚偏差が認められる場合は、肉厚が薄い方のエッジ部を他方(厚い方のエッジ部)よりも高い温度に加熱することによって、薄い方のエッジ部の変形抵抗を他方よりも減少させることができる、
(C)上記(B)によって肉厚が薄い方のエッジ部の変形抵抗を小さくすれば、鍛接ロールでアップセットを付加する際に、そのエッジ部を内面側に盛り上げることができる、
(D)上記(C)によって鍛接衝合部の内面側を円滑な形状に改善すれば、(a)〜(c)の問題を解消できる
という知見を得た。
(A)鋼帯の両エッジ部の肉厚をエッジヒータの上流側で測定すれば肉厚偏差の有無を判定できる、
(B)肉厚偏差が認められる場合は、肉厚が薄い方のエッジ部を他方(厚い方のエッジ部)よりも高い温度に加熱することによって、薄い方のエッジ部の変形抵抗を他方よりも減少させることができる、
(C)上記(B)によって肉厚が薄い方のエッジ部の変形抵抗を小さくすれば、鍛接ロールでアップセットを付加する際に、そのエッジ部を内面側に盛り上げることができる、
(D)上記(C)によって鍛接衝合部の内面側を円滑な形状に改善すれば、(a)〜(c)の問題を解消できる
という知見を得た。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、所定の帯幅W(mm)を有する鋼帯を所定の通板速度V(m/秒)で連続的に加熱炉に装入して加熱し、加熱炉の出側に設置される1対のエッジヒータで鋼帯の両エッジ部を更に加熱し、次いで成形ロールを用いて鋼帯を管状に成形して両エッジ部を対向させ、酸素を吹き付けつつ鍛接ロールで両エッジ部を鍛接する鍛接鋼管の製造工程におけるエッジヒータの加熱制御方法であって、エッジヒータの上流側で鋼帯の両エッジ部の肉厚tOP(mm)とtDR(mm)をそれぞれ測定し、肉厚偏差Δt=tOP−tDRに応じてエッジヒータの目標加熱温度TOP(℃)とTDR(℃)に温度差を付与し、肉厚の測定値が小さい方のエッジ部を他方よりも高い温度に加熱するエッジヒータの加熱制御方法である。
本発明の加熱制御方法においては、肉厚tOPとtDRを加熱炉の入側で測定することが好ましい。また、エッジヒータの片方の目標加熱温度TOPを肉厚tOP、通板速度V、帯幅Wに応じて設定し、他方の目標加熱温度TDRを肉厚偏差Δt、肉厚tDR、通板速度V、帯幅Wに応じて設定することが好ましい。さらに、エッジヒータと成形ロールの中間で鋼帯の両エッジ部の温度を測定し、その測定値に応じて目標加熱温度TOPとTDRを調整することが好ましい。
本発明によれば、鍛接鋼管の内面側に発生する段差の形状を修正し、円滑な形状に改善することができるので、産業上格段の効果を奏する。
図1は、本発明を適用する鍛接鋼管の製造ラインの例を模式的に示す配置図である。鋼帯1は、図1中の矢印Aの方向に進行して、連続的に加熱炉2内で加熱(1100〜1300℃)され、加熱炉2の出側に設置される1対のエッジヒータ3で鋼帯1の両エッジ部のみが更に加熱(1350〜1400℃)される。次いで成形ロール4を用いて鋼帯1を管状に成形して両エッジ部を対向させ、ノズル5から酸素を吹き付けながら鍛接ロール6で両エッジ部を鍛接して鍛接鋼管9とする。
図2は、エッジヒータ3の例を模式的に断面図であり、その断面は図1中の矢印Aに垂直な面である。図2示すように、エッジヒータ3は、鋼帯1の両エッジ部をそれぞれ加熱するために、合計2台(すなわち1対)が設置される。加熱手段として誘導加熱コイルを備えたエッジヒータ3を採用することによって、後述する目標加熱温度の変更に対応することが可能となる。
エッジヒータ3の上流側には、鋼帯1の肉厚を測定するための肉厚測定装置10が設置される。肉厚測定装置10は、加熱炉2とエッジヒータ3の中間に設置しても良いが、加熱炉2の入側に設置することが好ましい。その理由は、冷間で測定する方が肉厚の測定精度が向上するからである。肉厚測定装置10の断面図は省略するが、図2に示すエッジヒータ3と同様に、鋼帯1の両エッジ部の肉厚をそれぞれ測定するために、合計2台(すなわち1対)を設置する。そして、肉厚の測定値は演算装置11に伝送される。
肉厚測定装置10で測定した両エッジ部の肉厚のうち、片方をtOP(mm)、他方をtDR(mm)とし、さらに鋼帯1の帯幅をW(mm)、通板速度をV(m/秒)として、エッジヒータ3の目標加熱温度の調整について、以下に説明する。
演算装置11は、tOPとtDRに基づいて、肉厚偏差Δt=tOP−tDRを算出する。つまり肉厚偏差が生じていない場合は、Δt=0となる。tOPとtDRが異なる場合は、Δt≠0となる。
肉厚tDRがtOPよりも薄い場合(Δt>0)は、演算装置11がΔtに応じて、肉厚tDRと同じ側のエッジヒータ3の目標加熱温度TDR(℃)を他方の目標加熱温度TOP(℃)よりも高い温度に変更する。逆に、肉厚tOPがtDRよりも薄い場合(Δt<0)は、肉厚tOPと同じ側のエッジヒータ3の目標加熱温度TOPを他方の目標加熱温度TDRよりも高い温度に変更する。
なお、Δt/((tOP+tDR)/2)が0.01未満であれば、鍛接衝合部の段差は発生しないので、目標加熱温度を変更する必要はない。
演算装置11がΔtに応じて設定した目標加熱温度TOPとTDRは、出力制御装置12に伝送され、その出力制御装置12が1対のエッジヒータ3の目標加熱温度に応じて、それぞれに供給する電力を調整する。目標加熱温度の変更は製造ラインの稼働中に生じるが、エッジヒータ3の加熱手段として誘導加熱コイルを採用することによって、製造ラインの稼働に支障なく対応できる。
演算装置11によって目標加熱温度TOPとTDRを設定するための計算式は、加熱炉2の加熱温度や処理能力、鍛接ロール6のアップセット等の製造ラインの特性に応じて適宜制定する。たとえば、片方のエッジ部の目標加熱温度TOPを肉厚tOP、通板速度V、帯幅Wに基づく関数、すなわちTOP=f(tOP,V,W,α)とし、他方のエッジ部の目標加熱温度TDRを肉厚偏差Δt、肉厚tDR、通板速度V、帯幅Wに基づく関数、すなわちTDR=f(Δt,tDR,V,W,β)とする。αとβは、製造ラインの特性に応じて定める係数である。
このようして、肉厚が薄い方のエッジ部を他方(厚い方のエッジ部)よりも高い温度に加熱する。その結果、薄い方のエッジ部の変形抵抗が他方よりも小さくなるので、鍛接ロール6でアップセットを付加する際に、肉厚が薄い方のエッジ部が内面側に盛り上がって、鍛接衝合部7の内面側を円滑な形状に改善できる。
このようして、肉厚が薄い方のエッジ部を他方(厚い方のエッジ部)よりも高い温度に加熱する。その結果、薄い方のエッジ部の変形抵抗が他方よりも小さくなるので、鍛接ロール6でアップセットを付加する際に、肉厚が薄い方のエッジ部が内面側に盛り上がって、鍛接衝合部7の内面側を円滑な形状に改善できる。
また、エッジヒータ3と成形ロール4の中間に温度測定装置13を設置して、鋼帯1の両エッジ部の温度をそれぞれ測定し、その測定値を演算装置11に伝送することによって、目標加熱温度TOPとTDRを調整して、加熱制御の精度向上を図ることができる。
図1に示すように、鋼帯1(帯幅W:445mm)を連続的に加熱炉2に装入(通板速度V:60m/秒)して加熱し、加熱炉2の出側に設置される1対のエッジヒータ3で鋼帯1の両エッジ部を更に加熱し、次いで成形ロール4を用いて鋼帯1を管状に成形して両エッジ部を対向させ、ノズル5から酸素を吹き付けながら鍛接ロール6で両エッジ部を鍛接して鍛接鋼管9を製造した。加熱炉2の加熱温度は1250℃とした。エッジヒータ3の加熱手段は誘導加熱コイルとした。
加熱炉2の入側に1対の肉厚測定装置10を設置して、鋼帯1の両エッジ部の肉厚tOPとtDRを測定し、そのデータを演算装置11に伝送した。
そして演算装置11にて、肉厚偏差Δt=tOP−tDRを算出し、そのΔtに基づいて、エッジヒータ3の目標加熱温度TOPとTDR(℃)を算出した。その計算式は下記の通りである。目標加熱温度TOPとTDRは、出力制御装置12に伝送され、その出力制御装置12が1対のエッジヒータ3の目標加熱温度に応じて、それぞれに供給する電力を調整した。また、エッジヒータ3と成形ロール4の中間に温度測定装置13を設置して、鋼帯1の両エッジ部の温度をそれぞれ測定し、その測定値を演算装置11に伝送することによって、温度測定装置13の測定値が目標加熱温度TOPおよびTDRとなるように、フィードバック制御を行なった。
TOP=f(tOP,V,W,α)
TDR=f(Δt,tDR,V,W,β)
エッジヒータ3の目標加熱温度の変更は、製造ラインの操業を継続しながら、支障なく行なうことができた。
TOP=f(tOP,V,W,α)
TDR=f(Δt,tDR,V,W,β)
エッジヒータ3の目標加熱温度の変更は、製造ラインの操業を継続しながら、支障なく行なうことができた。
このようして、肉厚が薄い方のエッジ部を他方(厚い方のエッジ部)よりも高い温度に加熱しながら、1本の鋼帯1から鍛接鋼管9を製造した後、室温まで冷却して、鍛接衝合部7の形状を検査した。その結果、形状不良の判定は皆無であった。
1 鋼帯
2 加熱炉
3 エッジヒータ
4 成形ロール
5 ノズル
6 鍛接ロール
7 鍛接衝合部
8 段差
9 鍛接鋼管
10 肉厚測定装置
11 演算装置
12 出力制御装置
13 温度測定装置
2 加熱炉
3 エッジヒータ
4 成形ロール
5 ノズル
6 鍛接ロール
7 鍛接衝合部
8 段差
9 鍛接鋼管
10 肉厚測定装置
11 演算装置
12 出力制御装置
13 温度測定装置
Claims (4)
- 所定の帯幅W(mm)を有する鋼帯を所定の通板速度V(m/秒)で連続的に加熱炉に装入して加熱し、前記加熱炉の出側に設置される1対のエッジヒータで前記鋼帯の両エッジ部を更に加熱し、次いで成形ロールを用いて前記鋼帯を管状に成形して前記両エッジ部を対向させ、酸素を吹き付けつつ鍛接ロールで前記両エッジ部を鍛接する鍛接鋼管の製造工程におけるエッジヒータの加熱制御方法であって、前記エッジヒータの上流側で前記鋼帯の前記両エッジ部の肉厚tOP(mm)とtDR(mm)をそれぞれ測定し、肉厚偏差Δt=tOP−tDRに応じて前記エッジヒータの目標加熱温度TOP(℃)とTDR(℃)に温度差を付与し、前記肉厚の測定値が小さい方のエッジ部を他方よりも高い温度に加熱することを特徴とするエッジヒータの加熱制御方法。
- 前記肉厚tOPとtDRを前記加熱炉の入側で測定することを特徴とする請求項1に記載のエッジヒータの加熱制御方法。
- 前記エッジヒータの片方の前記目標加熱温度TOPを前記肉厚tOP、前記通板速度V、前記帯幅Wに応じて設定し、他方の前記目標加熱温度TDRを前記肉厚偏差Δt、前記肉厚tDR、前記通板速度V、前記帯幅Wに応じて設定することを特徴とする請求項1または2に記載のエッジヒータの加熱制御方法。
- 前記エッジヒータと前記成形ロールの中間で前記鋼帯の前記両エッジ部の温度を測定し、その測定値に応じて前記目標加熱温度TOPとTDRを調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエッジヒータの加熱制御方法。
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JP2022126989A (ja) * | 2021-02-19 | 2022-08-31 | Jfeスチール株式会社 | 鍛接鋼管及びその製造方法 |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH01118312A (ja) * | 1987-10-29 | 1989-05-10 | Nkk Corp | エッジヒータの制御装置 |
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- 2014-07-31 JP JP2014155650A patent/JP2016032819A/ja active Pending
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JPH01118312A (ja) * | 1987-10-29 | 1989-05-10 | Nkk Corp | エッジヒータの制御装置 |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2022126989A (ja) * | 2021-02-19 | 2022-08-31 | Jfeスチール株式会社 | 鍛接鋼管及びその製造方法 |
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