JP2016032004A - 磁性材料、及び磁性材料の製造方法、並びに希土類磁石 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気特性に優れる磁性材料、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】希土類元素REとFeとを含有する磁性材料であって、Fe3N相及びFe相の少なくとも一方からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相と、を含む結晶相を含有する磁性材料。希土類元素REとFeとを含有する磁性材料の製造方法であって、非晶質のRE2Fe17相を含有する、又は平均結晶粒径が50nm以下の結晶質のRE2Fe17相を含有するRE2Fe17合金を準備する準備工程と、前記RE2Fe17合金を、Nを含む雰囲気中で1T超の磁場を印加しながら加熱して窒化処理する窒化工程と、を備える磁性材料の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】希土類元素REとFeとを含有する磁性材料であって、Fe3N相及びFe相の少なくとも一方からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相と、を含む結晶相を含有する磁性材料。希土類元素REとFeとを含有する磁性材料の製造方法であって、非晶質のRE2Fe17相を含有する、又は平均結晶粒径が50nm以下の結晶質のRE2Fe17相を含有するRE2Fe17合金を準備する準備工程と、前記RE2Fe17合金を、Nを含む雰囲気中で1T超の磁場を印加しながら加熱して窒化処理する窒化工程と、を備える磁性材料の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、希土類磁石の材料となる磁性材料、及びその製造方法、並びに希土類磁石に関する。特に、磁気特性に優れる磁性材料、及びその製造方法に関する。
モータや発電機などに使用される永久磁石として、希土類元素(RE)と鉄(Fe)とを含有する希土類−鉄系化合物を主相とする希土類−鉄系合金(RE−Fe系合金)を用いた希土類磁石が広く利用されている。希土類磁石としては、Nd2Fe14B相を主相とするNd2Fe14B合金を用いたNd−Fe−B磁石(ネオジム磁石)が代表的である。その他、Sm2Fe17相を主相とするSm2Fe17合金を原料とし、これを窒化したSm2Fe17N3相を主相とするSm2Fe17N3合金を用いたSm−Fe−N磁石が知られている(特許文献1,2を参照)。
また、希土類磁石の高性能化を目指して、ナノコンポジット磁石の研究が進められている(特許文献1を参照)。ナノコンポジット磁石は、ナノサイズの微細な軟磁性相と硬磁性相とを有し、例えば、両相がナノメートルオーダーの間隔で周期的に配置されたナノコンポジット組織を有する。ナノコンポジット磁石は、軟磁性相と硬磁性相との間に働く交換相互作用により軟磁性相が硬磁性相に束縛されて、軟磁性相と硬磁性相とがあたかも単相磁石のように振る舞う。その結果、軟磁性相が持つ高い磁化と硬磁性相が持つ高い保磁力とを併せ持つことができ、磁気特性に優れる磁性材料として期待されている。
希土類磁石の更なる高性能化が求められており、磁気特性に優れる磁性材料の開発が強く望まれている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、磁気特性に優れる磁性材料を提供することにある。本発明の別の目的は、磁気特性に優れる磁性材料の製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、高い磁石性能を有する希土類磁石を提供することにある。
本発明の一態様に係る磁性材料は、希土類元素REとFeとを含有する磁性材料であって、Fe3N相及びFe相の少なくとも一方からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相と、を含む結晶相を含有する。
本発明の一態様に係る磁性材料の製造方法は、希土類元素REとFeとを含有する磁性材料の製造方法であって、非晶質のRE2Fe17相を含有する、又は平均結晶粒径が50nm以下の結晶質のRE2Fe17相を含有するRE2Fe17合金を準備する準備工程と、前記RE2Fe17合金を、Nを含む雰囲気中で1T超の磁場を印加しながら加熱して窒化処理する窒化工程と、を備える。
本発明の一態様に係る希土類磁石は、上記本発明の一態様に係る磁性材料を備える。
上記磁性材料は、磁気特性に優れる。上記磁性材料の製造方法は、磁気特性に優れる磁性材料を製造できる。上記希土類磁石は、高い磁石性能を有する。
《本発明の実施形態の説明》
本発明者らは、希土類磁石の更なる高性能化を目指して、新規な磁性材料の開発に取り組んだ。その結果、Fe3N相やFe相の軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相の硬磁性相とを含む新しい混晶化合物を見つけ、この化合物が磁性材料として有用であることを見出した。混晶化合物とは、2種以上の結晶相が混在した化合物のことである。
本発明者らは、希土類磁石の更なる高性能化を目指して、新規な磁性材料の開発に取り組んだ。その結果、Fe3N相やFe相の軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相の硬磁性相とを含む新しい混晶化合物を見つけ、この化合物が磁性材料として有用であることを見出した。混晶化合物とは、2種以上の結晶相が混在した化合物のことである。
まず、本発明者らは、現在実用化されている磁石の中で最高性能を持つNd−Fe−B磁石(Nd2Fe14B)に着目した。Nd−Fe−B磁石は、Nd2Fe14合金にBを添加したNd2Fe14B合金を磁性材料として使用したものである。Nd2Fe14Bにおいて、B(ホウ素)をBよりも原子半径の大きいN(窒素)に置き換えれば、結晶構造のFe−Fe間距離をより広げることができ、理論上、磁気特性(特に保磁力)の向上が期待できる。
通常、磁性材料となる希土類−鉄系合金(RE−Fe系合金)は、希土類元素(RE)、鉄(Fe)、及びその他の成分元素を溶解し、鋳造して作製されている。しかし、Nを溶湯中に導入することは難しく、溶湯からRE2Fe14N合金は作製できないのが現状である。そこで、RE2Fe14N合金を作製するには、現在磁性材料として使用されているSm2Fe17N3合金などの窒素侵入型磁石と同様に、RE2Fe14合金を窒化してRE2Fe14合金にNを導入する方法が考えられる。ところが、RE2Fe14は結晶構造的に存在せず、現実問題としてRE2Fe14合金を溶湯から作製することはできない。また、REとFeとの原子比が2:14付近の非晶質合金を作製することが可能であるが、これを窒化処理すると、安定なRE2Fe17N3相が主として析出する。よって、単相のRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる磁性材料は、今まで実用化されていない。
本発明者らは、非晶質、又は平均結晶粒径が50nm以下の結晶質のRE2Fe17合金を特定の条件で窒化処理することで、非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相からRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相とFe3N相又はFe相とを結晶化させ、Fe3N相又はFe相とRE2Fe14Nx相とが混在する複合組織を有する新規な磁性材料の開発を行った。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものである。最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係る磁性材料は、RE(希土類元素)とFeとを含有する磁性材料であって、Fe3N相及びFe相の少なくとも一方からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相と、を含む結晶相を含有する。
上記磁性材料は、RE2Fe14Nx相(但し、xは0.5以上3以下)からなる硬磁性相を有することで、従来のRE−Fe−B磁石(RE2Fe14B)に比較して、磁気特性の向上が期待できる。また、上記磁性材料は、高磁化を有する軟磁性相(Fe3N相,Fe相)と高保磁力を有する硬磁性相(RE2Fe14Nx相)とが混在することで、両相の間に働く交換相互作用より両相が交換結合して、高磁化と高保磁力とを併せ持つ磁気特性を有することが期待される。したがって、上記磁性材料は、磁気特性に優れる。
(2)上記磁性材料の一形態としては、上記REがNd,Pr,Y及びCeから選択される少なくとも1種であることが挙げられる。
REがNd(ネオジム)、Pr(プラセオジウム)、Y(イットリウム)及びCe(セリウム)から選択される少なくとも1種であることで、RE2Fe14Nxの結晶構造において優れた磁気特性を発揮し得る。
(3)上記磁性材料の一形態としては、上記軟磁性相と上記硬磁性相とのナノコンポジット組織を有することが挙げられる。
ナノコンポジット組織を有することで、軟磁性相と硬磁性相とがナノサイズ(例えば平均結晶粒径が300nm以下、好ましくは100nm以下)であることにより、軟磁性相と硬磁性相との間に強い交換相互作用が働き、両相の交換結合により高磁化と高保磁力とを併せ持つことができ、磁気特性を更に改善できる。
(4)上記磁性材料の一形態としては、上記軟磁性相の平均結晶粒径が100nm以下であることが挙げられる。
軟磁性相の平均結晶粒径が100nm以下であることで、硬磁性相が軟磁性相を介して100nm以下の平均間隔をあけて配置されることになる。その結果、軟磁性相と硬磁性相とが強く交換結合し、硬磁性相の保磁力を維持しながら、軟磁性相の高い残留磁化を得ることができる。軟磁性相の結晶粒サイズが小さいほど(例えば50nm以下)好ましいが、10nm未満になると超常磁性的に振る舞うため、10nm以上が好ましい。
(5)本発明の一態様に係る磁性材料の製造方法は、RE(希土類元素)とFeとを含有する磁性材料の製造方法であって、以下の準備工程と、窒化工程とを備える。準備工程は、非晶質のRE2Fe17相を含有する、又は平均結晶粒径が50nm以下の結晶質のRE2Fe17相を含有するRE2Fe17合金を準備する。窒化工程は、前記RE2Fe17合金を、Nを含む雰囲気中で1T超の磁場を印加しながら加熱して窒化処理する。
上記磁性材料の製造方法は、非晶質のRE2Fe17相を含有するRE2Fe17合金(以下、「非晶質のRE2Fe17合金」と呼ぶ場合がある)、又は、平均結晶粒径が50nm以下の結晶質のRE2Fe17相を含有するRE2Fe17合金(以下、「ナノ結晶質のRE2Fe17合金」と呼ぶ場合がある)を1T超の磁場中で窒化処理する。これにより、Fe3N相及びFe相の少なくとも一方からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相とを含む結晶相を含有する磁性材料を製造できる。したがって、上記磁性材料の製造方法は、磁気特性に優れる磁性材料を製造できる。
非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相から、RE2Fe14Nx相と、Fe相又はFe3N相との結晶相を含有する複合組織が形成されるメカニズムは、次のように考えられる。非晶質又はナノ結晶質のRE2Fe17合金を、Nを含む雰囲気中で1T超の磁場を印加しながら加熱することで、非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相の窒化と結晶化とが起こると同時に、磁場中でのエネルギー安定性の高いFeが析出する。これにより、窒化・結晶化により生成されたRE2Fe17Nxの結晶がRE2Fe14Nxと、Fe又はFe3Nとに分離することで、RE2Fe14Nx相と、Fe相又はFe3N相とが複合(コンポジット)化されると考えられる。その結果、Fe3N相又はFe相からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相とが混在する複合組織が得られると考えられる。
上述の窒化処理について補足説明する。上記の製造方法では、1T超の磁場中で窒化処理することで、Feが非晶質から結晶化する結晶化温度に比べ低くても、磁場によりFe原子の結晶格子が大きく歪み、窒化反応を伴うことで、Fe原子が動き易くなり、低温でもFeの少なくとも一部が結晶化すると考えられる。そして、一定サイズのFeの結晶に成長すると、Fe原子が動き難くなるため、準安定なRE2Fe14NxとFe又はFe3Nとが複合した状態が得られると考えられる。窒化処理する際に磁場を印加することで、RE2Fe17相中のFeの窒化・結晶化が促進され、低温でもFeが析出し、RE2Fe14Nx相を生成できる。
(6)上記磁性材料の製造方法の一形態としては、上記REがNd,Pr,Y及びCeから選択される少なくとも1種であることが挙げられる。
REがNd,Pr,Y及びCeから選択される少なくとも1種であることで、RE2Fe14Nxの結晶構造において優れた磁気特性を発揮し得る。
(7)上記磁性材料の製造方法の一形態としては、上記窒化処理は、300℃以上500℃以下の温度に加熱することが挙げられる。
窒化処理の加熱温度を300℃以上とすることで、窒化・結晶化を促進でき、Fe3N相又はFe相、及びRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相が十分に生成され易い。窒化処理の加熱温度を500℃以下とすることで、Fe3N相やFe相の粗大化を抑制する他、RE2Fe14Nxの過剰窒化や窒素不均化反応によるFeNの多量生成を抑制できる。Fe3N相やFe相の粗大化を抑制することで、残留磁化及び保磁力の低下を抑制できる。またRE2Fe14Nxの過剰窒化を抑制したり、FeNの多量生成を抑制することで、生成されるRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相の減少による保磁力の低下を抑制できる。
(8)上記磁性材料の製造方法の一形態としては、上記窒化処理は、2T以上4T以下の磁場を印加することが挙げられる。
窒化処理の印加磁場を2T以上とすることで、窒化・結晶化とFeの析出を促進でき、Fe3N相又はFe相、及びRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相、及びが十分に生成され易い。窒化処理の印加磁場を4T以下とすることで、Fe3N相やFe相の粗大化を抑制できる。Fe3N相やFe相の粗大化を抑制することで、残留磁化及び保磁力の低下を抑制できる。
(9)本発明の一態様に係る希土類磁石は、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の本発明の一態様に係る磁性材料を備える。
上記希土類磁石は、磁気特性に優れる上記磁性材料を備えることで、高い磁石性能(例、高残留磁化、高保磁力)を有する。
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態に係る磁性材料、及びその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施形態に係る磁性材料、及びその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
[磁性材料]
本発明の実施形態に係る磁性材料は、REとFeとを含有する。REは、Sc,Y,ランタノイド及びアクチノイドから選択される少なくとも1種の希土類元素であり、例えばNd,Pr,Y,Ce,Dy,Tb,Smが挙げられる。特に、REとして、RE2Fe14Nxの結晶構造において優れた磁気特性を発揮し得る点で、Nd,Pr,Y及びCeから選択される少なくとも1種であることが好ましい。REは単一の元素でもよいし、一部を別の希土類元素で置換してもよい。また、Feの一部をCo,Cuなどの他の遷移金属元素やAl,Siで置換してもよい。
本発明の実施形態に係る磁性材料は、REとFeとを含有する。REは、Sc,Y,ランタノイド及びアクチノイドから選択される少なくとも1種の希土類元素であり、例えばNd,Pr,Y,Ce,Dy,Tb,Smが挙げられる。特に、REとして、RE2Fe14Nxの結晶構造において優れた磁気特性を発揮し得る点で、Nd,Pr,Y及びCeから選択される少なくとも1種であることが好ましい。REは単一の元素でもよいし、一部を別の希土類元素で置換してもよい。また、Feの一部をCo,Cuなどの他の遷移金属元素やAl,Siで置換してもよい。
(軟磁性相・硬磁性相)
図1右に示すように、磁性材料10は、Fe3N相及びFe相の少なくとも一方からなる軟磁性相11と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相12と、を含む結晶相を含有する。軟磁性相11は、Fe3N相又はFe相の結晶粒である。Fe相は、例えばα−Fe相である。一方、硬磁性相12は、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相の結晶粒である。なお、図1において、軟磁性相11と硬磁性相12との区別を明確にするため、軟磁性相11にはハッチングを付している。
図1右に示すように、磁性材料10は、Fe3N相及びFe相の少なくとも一方からなる軟磁性相11と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相12と、を含む結晶相を含有する。軟磁性相11は、Fe3N相又はFe相の結晶粒である。Fe相は、例えばα−Fe相である。一方、硬磁性相12は、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相の結晶粒である。なお、図1において、軟磁性相11と硬磁性相12との区別を明確にするため、軟磁性相11にはハッチングを付している。
(組織)
磁性材料10は、結晶相として、Fe3N相又はFe相からなる軟磁性相11とRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相12とを含有し、両相が混在する複合組織(コンポジット組織)である。高磁化を有する軟磁性相(Fe3N相,Fe相)と高保磁力を有する硬磁性相(RE2Fe14Nx相)とが混在する複合組織であることで、両相の間に働く交換相互作用より両相が交換結合して、高磁化と高保磁力とを併せ持つ磁気特性を有することが可能であり、磁気特性を改善できる。特に、磁性材料10は、軟磁性相11と硬磁性相12とがナノサイズであり、軟磁性相11と硬磁性相12とのナノコンポジット組織を有することが好ましい。ナノコンポジット組織を有することで、軟磁性相と硬磁性相との間に強い交換相互作用が働き、両相の交換結合により高磁化と高保磁力とを併せ持つことができ、磁気特性を更に改善できる。「ナノサイズ」とは、平均結晶粒径(結晶粒サイズ)が300nm以下、好ましくは100nmであることを意味する。ナノコンポジット組織としては、例えば、軟磁性相と硬磁性相とが層状に交互に配列した周期構造を有する形態や、粒状の軟磁性相が硬磁性相中に分散した分散構造を有する形態が挙げられる。磁性材料の組織構造としては、分散構造よりも周期構造の方が硬磁性相の周期間隔が小さくなり、磁気特性的に好ましいと考えられる。組織構造は、例えば、後述する窒化処理の条件によって制御することができる。
磁性材料10は、結晶相として、Fe3N相又はFe相からなる軟磁性相11とRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相12とを含有し、両相が混在する複合組織(コンポジット組織)である。高磁化を有する軟磁性相(Fe3N相,Fe相)と高保磁力を有する硬磁性相(RE2Fe14Nx相)とが混在する複合組織であることで、両相の間に働く交換相互作用より両相が交換結合して、高磁化と高保磁力とを併せ持つ磁気特性を有することが可能であり、磁気特性を改善できる。特に、磁性材料10は、軟磁性相11と硬磁性相12とがナノサイズであり、軟磁性相11と硬磁性相12とのナノコンポジット組織を有することが好ましい。ナノコンポジット組織を有することで、軟磁性相と硬磁性相との間に強い交換相互作用が働き、両相の交換結合により高磁化と高保磁力とを併せ持つことができ、磁気特性を更に改善できる。「ナノサイズ」とは、平均結晶粒径(結晶粒サイズ)が300nm以下、好ましくは100nmであることを意味する。ナノコンポジット組織としては、例えば、軟磁性相と硬磁性相とが層状に交互に配列した周期構造を有する形態や、粒状の軟磁性相が硬磁性相中に分散した分散構造を有する形態が挙げられる。磁性材料の組織構造としては、分散構造よりも周期構造の方が硬磁性相の周期間隔が小さくなり、磁気特性的に好ましいと考えられる。組織構造は、例えば、後述する窒化処理の条件によって制御することができる。
軟磁性相11はナノサイズであることが好ましく、軟磁性相11の平均結晶粒径(結晶粒サイズ)は、例えば10nm以上100nm以下、好ましくは20nm以上80nm以下である。硬磁性相12の平均間隔は軟磁性相11の平均結晶粒径に依存する。軟磁性相11の平均結晶粒径が100nm以下であることで、硬磁性相12が軟磁性相11を介して100nm以下の平均間隔をあけて配置されることになる。そのため、軟磁性相11と硬磁性相12とが強く交換結合し、硬磁性相12の保磁力を維持しながら、軟磁性相11の高い残留磁化を得ることができる。軟磁性相11の結晶粒サイズが小さ過ぎると、超常磁性が出現して残留磁化が生じない状態になるため、軟磁性相11の平均粒径は10nm以上が好ましい。磁性材料10中の軟磁性相の平均結晶粒径(結晶粒サイズ)は、X線回折(XRD)による回折ピークの半値幅からシェラーの式を用いて求めた値である。
一方、硬磁性相12もナノサイズであることが好ましく、硬磁性相12の平均結晶粒径(結晶粒サイズ)は、例えば20nm以上300nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下である。硬磁性相12の結晶粒サイズが小さいほど保磁力が高くなる傾向があるが、硬磁性相12の結晶粒サイズが小さくなり過ぎると保磁力が低下するため、硬磁性相12の平均結晶粒径は20nm以上が好ましい。また、硬磁性相12の結晶粒サイズが軟磁性相11より小さい(薄い)と、磁気特性の向上効果が低下することもあるため、硬磁性相12の平均結晶粒径は、軟磁性相11の平均結晶粒径よりも大きいことがよい。
[磁性材料の製造方法]
本発明の実施形態に係る磁性材料の製造方法は、準備工程と、窒化工程とを備える。以下、各工程について詳しく説明する。
本発明の実施形態に係る磁性材料の製造方法は、準備工程と、窒化工程とを備える。以下、各工程について詳しく説明する。
(準備工程)
準備工程は、非晶質のRE2Fe17相を含有する、又は平均結晶粒径が50nm以下の結晶質のRE2Fe17相を含有するRE2Fe17合金を準備する工程である。RE2Fe17合金は、REとFeとを含有し、RE2Fe17の組成を有する合金である。「RE2Fe17の組成」とは、REとFeとの原子比が2:17付近の組成であることを意味し、RE2Fe17合金は、例えば、REを8原子%以上12原子%以下含有し、残部がFe及び不可避的不純物の組成を有する。RE2Fe17合金は、RE2Fe17の組成となるように配合した合金の溶湯を超急冷法により急冷することで作製でき、急冷することにより非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相が生成され、非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相からなる組織を有するRE2Fe17合金(非晶質又はナノ結晶質のRE2Fe17合金)が得られる。超急冷法としては、メルトスパン法が挙げられる。冷却速度は、例えば2×105℃/秒以上、好ましくは1×106℃/秒以上である。
準備工程は、非晶質のRE2Fe17相を含有する、又は平均結晶粒径が50nm以下の結晶質のRE2Fe17相を含有するRE2Fe17合金を準備する工程である。RE2Fe17合金は、REとFeとを含有し、RE2Fe17の組成を有する合金である。「RE2Fe17の組成」とは、REとFeとの原子比が2:17付近の組成であることを意味し、RE2Fe17合金は、例えば、REを8原子%以上12原子%以下含有し、残部がFe及び不可避的不純物の組成を有する。RE2Fe17合金は、RE2Fe17の組成となるように配合した合金の溶湯を超急冷法により急冷することで作製でき、急冷することにより非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相が生成され、非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相からなる組織を有するRE2Fe17合金(非晶質又はナノ結晶質のRE2Fe17合金)が得られる。超急冷法としては、メルトスパン法が挙げられる。冷却速度は、例えば2×105℃/秒以上、好ましくは1×106℃/秒以上である。
冷却速度が速いほど、結晶粒成長が抑制され、微細な結晶からなる結晶質のRE2Fe17合金が得られ、更に冷却速度が速くなると、非晶質のRE2Fe17合金が得られる。冷却速度が2×105℃/秒以上であると、平均結晶粒径が50nm以下のナノ結晶のRE2Fe17相が生成され易く、ナノ結晶質のRE2Fe17合金を作製できる。冷却速度が3×105℃/秒以上、好ましくは4×105℃/秒以上であると、非晶質のRE2Fe17相が生成され易く、非晶質のRE2Fe17合金を作製できる。
ナノ結晶質のRE2Fe17合金は、平均結晶粒径が50nm以下の結晶組織を有する。平均結晶粒径が50nm以下であることで、後述する窒化工程において、RE2Fe17相の窒化・結晶化が起こると同時にFeが析出することで、RE2Fe14Nx相と、Fe相又はFe3N相とのナノコンポジット組織が得られ易い。一方、平均結晶粒径が50nm超の場合は、窒化工程において、RE2Fe17相の窒化・結晶化が起こり難く、Feが析出し難い。特に、非晶質のRE2Fe17合金は、後述する窒化工程において、RE2Fe17相の窒化・結晶化がより起こり易く、低温でもFeが析出し易いため、ナノコンポジット組織がより得られ易い点で好適である。結晶質のRE2Fe17合金におけるRE2Fe17相の平均結晶粒径は、RE2Fe17合金の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、100個以上の結晶粒について個々の等面積円相当径を測定して算出した平均値である。
図1左に示すように、RE2Fe17合金は適宜粉砕して、RE2Fe17合金粉末100としてもよい。RE2Fe17合金粉末100は、非晶質のRE2Fe17相101からなる粒子で構成されている。RE2Fe17合金粉末の平均粒子径は、例えば0.5μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上30μm以下である。「平均粒子径」とは、レーザ回折法で測定された体積基準の粒度分布において、小径側から累積体積が50%になる粒子径(D50:50体積%粒径)のことである。RE2Fe17合金の粉砕は、例えばジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、ブラウンミル、ピンミル、ディスクミル、ジョークラッシャーなどの公知の粉砕機を用いることができる。RE2Fe17合金の段階では粉砕せず、磁性材料の製造後、磁性材料を粉砕して粉末にしてもよい。
(窒化工程)
窒化工程は、RE2Fe17合金を、Nを含む雰囲気中で1T超の磁場を印加しながら加熱して窒化処理する工程である。窒化工程では、非晶質又はナノ結晶質のRE2Fe17合金を1T超の磁場中で窒化処理することにより、非晶質のRE2Fe17合金から、Fe3N相及びFe相の少なくとも一方からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相とを含む結晶相を含有する磁性材料を作製する。
窒化工程は、RE2Fe17合金を、Nを含む雰囲気中で1T超の磁場を印加しながら加熱して窒化処理する工程である。窒化工程では、非晶質又はナノ結晶質のRE2Fe17合金を1T超の磁場中で窒化処理することにより、非晶質のRE2Fe17合金から、Fe3N相及びFe相の少なくとも一方からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相とを含む結晶相を含有する磁性材料を作製する。
窒化工程のメカニズムは次のように推定される。非晶質又はナノ結晶質のRE2Fe17合金を、Nを含む雰囲気中で1T超の磁場を印加しながら加熱すると、非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相の窒化と結晶化とが起こると同時にFeが析出する。これにより、窒化・結晶化により生成されたRE2Fe17Nxの結晶がRE2Fe14Nxと、Fe又はFe3Nとに分離することで、RE2Fe14Nx相と、Fe相又はFe3N相とが複合(コンポジット)化されると考えられる。その結果、Fe3N相又はFe相からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相とを含む結晶相を含有する複合組織が形成され、軟磁性相と硬磁性相とがコンポジット化した組織が得られると考えられる。つまり、この窒化工程によって、窒化反応とコンポジット化とを両立でき、RE2Fe14Nx相と、Fe3N相又はFe相との混晶化合物が得られる。
例えば図1に示すように、RE2Fe17合金粉末100を、磁場を印加しながら加熱して窒化処理することで、非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相101からRE2Fe14Nx相とFe3N相又はFe相とが生成され、Fe3N相又はFe相からなる軟磁性相11と、RE2Fe14Nx相からなる硬磁性相12とが混在する組織が形成され、粉末状の磁性材料10が得られる。
(窒化処理の条件)
以下、窒化処理の条件について説明する。
以下、窒化処理の条件について説明する。
(雰囲気)
窒化処理は、Nを含む雰囲気中で行う。「Nを含む雰囲気」とは、窒素元素を含有する雰囲気のことであり、例えば、NH3ガス雰囲気又はNH3ガスとH2ガスとの混合ガス雰囲気、若しくは、N2ガス雰囲気又はN2ガスとH2ガスとの混合ガス雰囲気が挙げられる。
窒化処理は、Nを含む雰囲気中で行う。「Nを含む雰囲気」とは、窒素元素を含有する雰囲気のことであり、例えば、NH3ガス雰囲気又はNH3ガスとH2ガスとの混合ガス雰囲気、若しくは、N2ガス雰囲気又はN2ガスとH2ガスとの混合ガス雰囲気が挙げられる。
(加熱温度)
加熱温度は、非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相を窒化・結晶化すると同時にFeを析出させ、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相が生成される温度とする。加熱温度は、例えば300℃以上500℃以下とすることが挙げられる。加熱温度を300℃以上とすることで、窒化・結晶化を促進でき、Fe3N相又はFe相、及びRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相を十分に生成(析出)させ易い。加熱温度を500℃以下とすることで、Fe3N相やFe相の粗大化を抑制する他、RE2Fe14Nxの過剰窒化や窒素不均化反応によるFeNの多量生成を抑制できる。また、加熱温度を高くするほど、Feの窒化が進み、Fe3N相の割合が増え、Fe相の割合が減る傾向がある。更に、上記加熱温度の範囲において、低温側では、上述の周期構造の組織が形成され易く、高温側では、上述の分散構造の組織が形成され易い。加熱温度は、Fe3N相又はFe相の粗大化を抑制したり、周期構造の組織を形成する観点から、好ましくは400℃以下、370℃以下、350℃以下である。
加熱温度は、非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相を窒化・結晶化すると同時にFeを析出させ、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相が生成される温度とする。加熱温度は、例えば300℃以上500℃以下とすることが挙げられる。加熱温度を300℃以上とすることで、窒化・結晶化を促進でき、Fe3N相又はFe相、及びRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相を十分に生成(析出)させ易い。加熱温度を500℃以下とすることで、Fe3N相やFe相の粗大化を抑制する他、RE2Fe14Nxの過剰窒化や窒素不均化反応によるFeNの多量生成を抑制できる。また、加熱温度を高くするほど、Feの窒化が進み、Fe3N相の割合が増え、Fe相の割合が減る傾向がある。更に、上記加熱温度の範囲において、低温側では、上述の周期構造の組織が形成され易く、高温側では、上述の分散構造の組織が形成され易い。加熱温度は、Fe3N相又はFe相の粗大化を抑制したり、周期構造の組織を形成する観点から、好ましくは400℃以下、370℃以下、350℃以下である。
(印加磁場)
窒化処理する際に1T超の磁場を印加することで、非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相の窒化・結晶化とFeの析出が促進され、低温の窒化処理でもFeが析出し、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相が生成され易い。逆に、磁場を印加しない、又は印加磁場が1T以下の場合は、高温で窒化処理しないと窒化・結晶化が進行せず、Feも析出しないことから、RE2Fe14Nx相が生成され難い。しかし、高温で窒化処理すると、生成されるFe3N相やFe相が粗大化する他、RE2Fe14Nxが過剰に窒化したり、窒素不均化反応によりFeNが多量に生成されたりして、磁気特性が低下する虞がある。つまり、1T超の磁場を印加することにより、低温の窒化処理を可能とする。印加磁場は、例えば2T以上4T以下とすることが挙げられる。印加磁場を2T以上とすることで、窒化・結晶化とFeの析出を十分に促進でき、Fe3N相又はFe相、及びRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相を十分に生成(析出)させ易い。窒化処理の印加磁場を4T以下とすることで、Fe3N相やFe相の粗大化を抑制できる。
窒化処理する際に1T超の磁場を印加することで、非晶質又はナノ結晶のRE2Fe17相の窒化・結晶化とFeの析出が促進され、低温の窒化処理でもFeが析出し、RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相が生成され易い。逆に、磁場を印加しない、又は印加磁場が1T以下の場合は、高温で窒化処理しないと窒化・結晶化が進行せず、Feも析出しないことから、RE2Fe14Nx相が生成され難い。しかし、高温で窒化処理すると、生成されるFe3N相やFe相が粗大化する他、RE2Fe14Nxが過剰に窒化したり、窒素不均化反応によりFeNが多量に生成されたりして、磁気特性が低下する虞がある。つまり、1T超の磁場を印加することにより、低温の窒化処理を可能とする。印加磁場は、例えば2T以上4T以下とすることが挙げられる。印加磁場を2T以上とすることで、窒化・結晶化とFeの析出を十分に促進でき、Fe3N相又はFe相、及びRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相を十分に生成(析出)させ易い。窒化処理の印加磁場を4T以下とすることで、Fe3N相やFe相の粗大化を抑制できる。
特に、加熱温度を300℃以上500℃以下、印加磁場を2T以上4T以下とすることで、Fe3N相又はFe相(軟磁性相)及びRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相(硬磁性相)が生成され易く、また、両相の平均結晶粒径を100nm以下に制御し易いため、ナノコンポジット組織を形成できる。
(処理時間)
窒化処理の時間は、窒化・結晶化が十分に進行し、Fe3N相又はFe相からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx相からなる硬磁性相とを有する組織が形成される時間であれば、特に制限はなく、例えば1時間以上12時間以下とすることが挙げられる。
窒化処理の時間は、窒化・結晶化が十分に進行し、Fe3N相又はFe相からなる軟磁性相と、RE2Fe14Nx相からなる硬磁性相とを有する組織が形成される時間であれば、特に制限はなく、例えば1時間以上12時間以下とすることが挙げられる。
[磁性材料の効果及び用途]
本発明の実施形態に係る磁性材料は、結晶磁気異方性が高いRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相を有することで、従来に比較して、磁気特性(特に保磁力)の向上が期待できる。また、磁性材料は、高磁化を有する軟磁性相(Fe3N相,Fe相)と高保磁力を有する硬磁性相(RE2Fe14Nx相)とを含有し、両相が混在することから、両相の間の交換相互作用(交換結合)により、高磁化と高保磁力とを併せ持つ磁気特性を有することが期待される。したがって、上記磁性材料は、磁気特性に優れ、希土類磁石の材料に好適に利用できる。この磁性材料は、優れた磁気特性を有することから、希土類磁石の高性能化が可能である。
本発明の実施形態に係る磁性材料は、結晶磁気異方性が高いRE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相を有することで、従来に比較して、磁気特性(特に保磁力)の向上が期待できる。また、磁性材料は、高磁化を有する軟磁性相(Fe3N相,Fe相)と高保磁力を有する硬磁性相(RE2Fe14Nx相)とを含有し、両相が混在することから、両相の間の交換相互作用(交換結合)により、高磁化と高保磁力とを併せ持つ磁気特性を有することが期待される。したがって、上記磁性材料は、磁気特性に優れ、希土類磁石の材料に好適に利用できる。この磁性材料は、優れた磁気特性を有することから、希土類磁石の高性能化が可能である。
[希土類磁石]
本発明の実施形態に係る希土類磁石は、上記磁性材料を備える。この希土類磁石は、磁気特性に優れる磁性材料を含有することから、高い磁石性能(例、高残留磁化、高保磁力)を有しており、着磁することによって、永久磁石として優れた性能を発揮できる。希土類磁石における磁性材料の含有量は、例えば60体積%以上とすることが挙げられる。希土類磁石としては、例えばボンド磁石が挙げられる。ボンド磁石は、粉末状の磁性材料を樹脂と混合し成形した後、樹脂を固化させたものであり、磁性材料と樹脂とを含む。ボンド磁石の樹脂には、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を使用できる。ボンド磁石の耐熱性は樹脂の耐熱温度に依存することから、耐熱温度の高い樹脂を用いることが好ましい。樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
本発明の実施形態に係る希土類磁石は、上記磁性材料を備える。この希土類磁石は、磁気特性に優れる磁性材料を含有することから、高い磁石性能(例、高残留磁化、高保磁力)を有しており、着磁することによって、永久磁石として優れた性能を発揮できる。希土類磁石における磁性材料の含有量は、例えば60体積%以上とすることが挙げられる。希土類磁石としては、例えばボンド磁石が挙げられる。ボンド磁石は、粉末状の磁性材料を樹脂と混合し成形した後、樹脂を固化させたものであり、磁性材料と樹脂とを含む。ボンド磁石の樹脂には、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を使用できる。ボンド磁石の耐熱性は樹脂の耐熱温度に依存することから、耐熱温度の高い樹脂を用いることが好ましい。樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
《実施例1》
磁性材料の試料を製造し、製造した磁性材料の試料について評価した。
磁性材料の試料を製造し、製造した磁性材料の試料について評価した。
Ndを25質量%(11.4原子%)含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる組成を有する合金の溶湯を、メルトスパン法により急冷(冷却速度5×105℃/以上)して、厚さ10μm程度の薄片状のNd2Fe17合金を作製した。このNd2Fe17合金は、非晶質のNd2Fe17相からなる非晶質合金である。得られた非晶質のNd2Fe17合金を粉砕した後、篩にかけて、粒子径が30μm以下のNd2Fe17合金粉末を準備した。
次に、Nd2Fe17合金粉末をNH3ガス(50体積%)とH2ガス(50体積%)の混合ガス気流雰囲気中、表1に示す磁場を印加しながら340℃で8時間加熱して窒化処理した。以上のようにして、表1に示す試料No.1−1〜No.1−6の磁性材料を製造した。なお、試料No.1−1では、窒化処理時に磁場を印加していない。
試料No.1−1〜No.1−6の磁性材料について、磁気特性を評価した。具体的には、振動試料型磁力計(東英工業株式会社製 VSM−5SC−5HF型)を用いて残留磁化及び保磁力を測定した。各試料の残留磁化及び保磁力を表1に示す。
また、試料No.1−1〜No.1−6の磁性材料について、XRD装置(株式会社リガク製 SmartLab)を用いて結晶相の分析を行うと共に、XRDによる回折ピークの半値幅からシェラーの式を用いてFe3N相又はFe相(軟磁性相)の平均結晶粒径(結晶粒サイズ)を求めた。各試料のFe3N相又はFe相の平均結晶粒径を表1に示す。
XRDによる結晶相分析の結果から、窒化処理時に磁場を印加していない、又は1Tの磁場を印加した試料No.1−1,No.1−2は、結晶相として、Nd2Fe14Nx相、及びFe3N相又はFe相が検出されなかった。そのため、試料No.1−1,No.1−2では、Feが析出せずにNd2Fe17N3の結晶状態のままで存在していると考えられる。これに対し、窒化処理時に1T超の磁場を印加した試料No.1−3〜No.1−6は、結晶相として、Nd2Fe14Nx(x=0.5〜3)相、及びFe3N相又はFe相の存在が確認でき、Fe3N相又はFe相(軟磁性相)と、Nd2Fe14Nx相(硬磁性相)とが混在する組織を有すると考えられる。
また、表1から、窒化処理の印加磁場を2T以上とした試料No.1−3〜No.1−6は、残留磁化が0.6T以上で、且つ保磁力が300kA/m以上であり、試料No.1−1,No.1−2に比較して、残留磁化及び保磁力が高く、磁気特性に優れることが分かる。試料No.1−3〜No.1−6の磁気特性が向上した理由は、Nd2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相を有すると共に、軟磁性相(Fe3N相,Fe相)が共存することから、両相間の交換相互作用により、高い保磁力を得られながら、残留磁化も増加したものと考えられる。試料No.1−3〜No.1−6では、窒化処理の印加磁場を2T以上とすることにより、非晶質のNd2Fe17相の窒化・結晶化とFeの析出が促進されたことで、Nd2Fe14Nx相、及びFe3N相又はFe相が十分に生成され、Nd2Fe14Nx相、及びFe3N相又はFe相の存在割合が多いと考えられる。これに対し、試料No.1−2では、印加磁場が低いため、Nd2Fe14Nx相とFe相やFe3N相への分離反応が緩慢で、Nd2Fe17N3の結晶が多く残っており、結晶性の高いNd2Fe14Nx相とFe相やFe3N相の混晶体として十分に存在していないと考えられ、磁気特性の向上への寄与が小さいと考えられる。
特に、窒化処理の印加磁場を2T〜4Tとした試料No.1−3〜No.1−5は、Fe3N相又はFe相(軟磁性相)の平均粒径が100nm以下であり、ナノコンポジット組織を有すると考えられる。一方、試料No.1−6は、高磁場の影響により、Fe3N相又はFe相の粗大化が進行したものと考えられる。そして、試料No.1−3〜No.1−5は、残留磁化が0.7T以上で、且つ保磁力が500kA/m以上であり、試料No.1−6に比較して、磁気特性が大幅に改善されていることが分かる。これは、試料No.1−3〜No.1−5では、Fe3N相又はFe相の平均粒径が100nm以下のナノコンポジット組織を有することから、磁気特性が大幅に向上したものと考えられる。
本発明の磁性材料は、希土類磁石の材料に好適に利用できる。本発明の磁性材料の製造方法は、希土類磁石に利用される磁性材料の製造に好適に利用できる。本発明の希土類磁石は、モータや発電機などの各種電気機器に使用される永久磁石として好適に利用できる。
100 RE2Fe17合金粉末
101 RE2Fe17相
10 磁性材料
11 軟磁性相(Fe3N相又はFe相)
12 硬磁性相(R2Fe14Nx相)
101 RE2Fe17相
10 磁性材料
11 軟磁性相(Fe3N相又はFe相)
12 硬磁性相(R2Fe14Nx相)
Claims (9)
- 希土類元素REとFeとを含有する磁性材料であって、
Fe3N相及びFe相の少なくとも一方からなる軟磁性相と、
RE2Fe14Nx(x=0.5〜3)相からなる硬磁性相と、を含む結晶相を含有する磁性材料。 - 前記REがNd,Pr,Y及びCeから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の磁性材料。
- 前記軟磁性相と前記硬磁性相とのナノコンポジット組織を有する請求項1又は請求項2に記載の磁性材料。
- 前記軟磁性相の平均結晶粒径が100nm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の磁性材料。
- 希土類元素REとFeとを含有する磁性材料の製造方法であって、
非晶質のRE2Fe17相を含有する、又は平均結晶粒径が50nm以下の結晶質のRE2Fe17相を含有するRE2Fe17合金を準備する準備工程と、
前記RE2Fe17合金を、Nを含む雰囲気中で1T超の磁場を印加しながら加熱して窒化処理する窒化工程と、を備える磁性材料の製造方法。 - 前記REがNd,Pr,Y及びCeから選択される少なくとも1種である請求項5に記載の磁性材料の製造方法。
- 前記窒化処理は、300℃以上500℃以下の温度に加熱する請求項5又は請求項6に記載の磁性材料の製造方法。
- 前記窒化処理は、2T以上4T以下の磁場を印加する請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の磁性材料の製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の磁性材料を備える希土類磁石。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016149396A (ja) * | 2015-02-10 | 2016-08-18 | Tdk株式会社 | R−t−b系焼結磁石 |
-
2014
- 2014-07-28 JP JP2014153331A patent/JP2016032004A/ja active Pending
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