JP2016027276A - 配管連通部材 - Google Patents
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Abstract
Description
このような配管(流路)を所定方向に曲げて接続するために、一般には、エルボ(曲がり管)と呼ばれる曲げ加工された管状の継手が使用される。
エルボは、例えば炭素鋼やステンレス鋼等の金属製の管状部材を所定の曲率で曲げ加工して形成された継手であり、このエルボの両端に直線状の配管を接続することで、2本の配管を例えば90度や125度,180度などの所定間隔で接続・連通させることができる。
このため、流体が高圧・高温の状態で高速に搬送されるような配管構造については、厚みの小さい汎用のエルボでは磨耗・破断してしまうおそれがあった。
例えば、石油の製油所においては、石油や潤滑油などの精製工程で発生するガスを、配管を介して搬送・循環させて排出処理するようになっている。このような循環ガスは、非常に高温かつ高圧・高速で配管内を搬送・移動するようになっている。
さらに、上記のような循環ガスは、腐食性ガスである硫化水素やアンモニア等を含んでおり、このような腐食性物質の作用も加わり、配管の曲がり部分にはエロ―ジョンコロージョンと呼ばれる腐食も発生する。
このため、配管の曲がり部分に汎用のエルボを使用することは、肉厚が薄いために容易に破断等が生じるおそれがあり、石油プラント設備としては極めて危険であり、配管構造として使用することは不可能であった。
例えば、特許文献1には、例えば肉厚が30mmを超える炭素鋼鋼管を高周波曲げ加工によって曲げ、これを石油のパイプライン等に用いることが開示されている。
また、肉厚の金属管に特殊な曲げ加工を施すことから、曲げ加工された金属管自体が非常に高価であった。
さらに、曲げ加工された金属管では、例えば、掃除用のフランジを接続することができないという制限があった。
このため、設置場所や設置方法に制限のある場合や、多数の曲げ部分が高密度に配置される配管構造への適用は困難であった。
さらに、曲げ加工された金属管においても、流体の衝突によるエロージョン・コロージョンが発生するため、高価な金属管を頻繁に交換する必要が生じるという問題もあった。
より具体的には、本発明の配管連通部材は、基部が、ほぼ直方体形状の金属塊からなり、複数の各流路が、基部を構成する金属塊の直方体の異なる面から、それぞれ当該基部の内部に向かって穿設される構成としてある。
これによって、特に流動体を高圧・高温状態で搬送する配管の連結に好適な配管連通部材を実現することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る配管連通部材10を示す外観斜視図であり、(a)は配管を接続する前の配管連通部材を、(b)は配管連通部材を介して配管を接続した配管構造の一例を示している。
図2は、本実施形態に係る配管連通部材10を示す断面図であり、(a)は5B×4Bの配管サイズに対応した配管連通部材を、(b)は6B×4Bの配管サイズに対応した配管連通部材を示している。
これらの図に示すように、本実施形態に係る配管連通部材10は、気体や液体,固体(粉状体・粒状体)などの流体を流通・搬送するための複数の配管20,30,40を連結させる部材である。
本実施形態では、特に、流体が高圧・高温状態で搬送される石油プラント・製油所等に敷設される配管の連結・連通に用いられる配管連通部材となっている。
なお、図1(b)に示すように、上流側主配管20には、複数の熱交換部配管40が接続されており、図示しない上流側において行われる潤滑油の精製過程で発生するガスが複数の熱交換部配管40において熱交換・冷却処理され、上流側主配管20・下流側配管30を通って、さらに下流の図示しない排出処理工程に送られるようになっている。
以上のような配管構造における配管と配管の接続部に使用される本実施形態に係る配管連通部材10の具体的な構成について説明する。
本実施形態に係る配管連通部材10は、複数の配管が接続される基部11と、基部11の内部で連通・交差する複数の流路12とを備えた構成となっている。
基部11は、所定の金属塊によって構成されている。
本実施形態では、基部11は、ほぼ直方体形状の金属塊からなり、基部11の表面から当該基部11の内部に向かう直線方向に沿って複数の流路12(12a,12b)が穿設されるようになっている。
これによって、複数の各流路12の基部11の表面側の端部開口に複数の配管20,30が接続されることにより、複数の配管20,30が基部11の内部において連通・接続されることになる。
より具体的には、基部11は、ほぼ立方体(正六面体)形状の金属塊によって構成され、立方体の表面の隣接する二つの表面から、基部11の内部に向かって二つの流路12a,12bが穿設されるようになっている。
また、基部11の立方体の表面のうち、流路12が形成される表面は、接続される配管側に向かって隆起された形状としてあり、接続部分における配管表面と基部11とが滑らかに連続する所謂「面一」状態で接続(溶接)されるようになっている。
また、立方体形状の基部11に形成した流路12は、基部11の表面から流路12に至るまでの距離(肉厚)が同じ長さで形成されるようになり、所望の肉厚を有する配管連通部材10を正確かつ確実に形成することができる。
また、金属管を曲げ加工する際に発生するしわや偏肉等の問題も一切生じない。
例えば水平/垂直方向に長い直方体(長方体)形状としたり、直方体(六面体)以外の多面体形状とすることもできる。
また、球体形状や楕円体形状とすることも可能である。
例えば、流路12は、基部11の表面の異なる三面から内部に向かって穿設して設けることができ、その場合、流路12は、基部11の内部において、1本の上流側から2本の下流側に、あるいは、2本の上流側から1本の下流側に分岐させることができる。
さらに、流路12は、直交して交差・連通するだけでなく、後述するように、複数の流路12を90度より大きい間隔で交差させて、上流側/下流側の流路12を傾斜させて設けることもできる(後述する図4(g),図5(g)参照)。
以上のような配管連通部材10には、図1,2に示すように、基部11に形成された流路12の端部開口に、それぞれ対応する大きさ・形状等の配管20,30が接続される。
本実施形態では、基部11の各流路12に接続される配管20,30は、溶接によって、複数の各流路12(12a,12b)に端部開口に接合されるようになっている。
具体的には、予め所定の寸法・形状で複数の流路12が形成・連通された基部11に対して、流路12と対応する同じ内径の配管20,30を用意し、基部11の表面に表れた流路12の端部開口に位置合わせして配管20,30を配置し、その状態で、流路12の端部開口と配管20,30の接合部分を溶接によって溶着・接合することができる。
このようなうら波は、流路12と配管20,30の溶接部分の継ぎ目や段差となり、エロージョン・コロージョンの原因となることがある。
すなわち、溶接によって配管内面側に出っ張るうら波が形成されることで、図3(a),(b)に示すように、うら波が流路12の内側に隆起して突出する凸部となり、そこに流体が衝突することでエロージョン・コロージョンが発生する可能性がある。
そこで、本実施形態では、通常の溶接によって接合された基部11の各流路12の端部開口と配管20,30の流路内面側を、図2及び図3(c)に示すように、凹凸の無い平坦化された形状となるようにうら波部分を含む流路内面の平面化・平坦化処理を行うようにしてある。
これによって、うら波による突出部分がなくなり、流体の衝突によるエロージョン・コロージョンが発生しなくなり、配管20,30及び流路12を移動する流体の流れをより滑らかなものとすることができる。
従って、上述した配管接続部分の内面の平坦化処理は、少なくとも下流側の流路12bと下流側配管30との接続部分に対して行うことが好ましく、上流側の流路12aと上流側主配管20の接続部分については、必ずしも平坦化処理を行わなくても良い。勿論、上流側の流路12aと上流側主配管20の接続部分についても平坦化処理を行っても良いことは言うまでもない。
以上のような基部11と配管20,30の接続と接続部分の平坦化処理については、図7を参照しつつ更に後述する。
以上のような基部11を構成する金属塊の材質としては、配管構造に適切な金属材料を選択することができる。同様に、基部11に接続される配管20,30,40についても適切な金属材料を選択することができる。
例えば、一般的には炭素鋼を採用することができ、より腐食に強い材質としてステンレス鋼や高ニッケル系合金などを採用することができる。
炭素鋼やステンレス鋼の鍛造品を所定の大きさの直方体形状に形成することで、基部11を構成することができる。また、基部11と同様の金属材料を筒状・管状に形成することで配管を構成することができ、上記のような炭素鋼又はステンレス鋼により、基部11に接続される配管(20,30)や、他の配管(40)を形成することができる。
但し、配管連通部材としての所定の強度を有し、流体によるエロージョン・コロージョンの発生を低減乃至抑止できる限り、基部11や配管20,30,40を構成する金属として、他の金属材料を用いることもできる。
そして、以上のような配管連通部材10は、接続される配管との関係において、基部11及び流路12が所定の大きさ(寸法)に形成されるようになっている。
すなわち、本実施形態に係る配管連通部材10は、接続される配管の内径に対応して流路12の内径が設定・形成され、その流路12の内径に対して、基部11の肉厚が所定の比率以上となるように大きさ(寸法)が設定されるようになっている。
条件1:肉厚B/内径A≧0.22
ここで、この条件1は、特に、B/A≧0.25であることが好ましく、さらに、B/A≧0.30であることがより好ましい。
また、この条件1の上限値としては、1.00≧B/Aであることが好ましく、特に、0.75≧B/A、さらに、0.50≧B/Aであることが好ましい。
また、後述するように、配管の曲がり角部分に発生するエロージョンについても、可能な限り低減乃至抑制することができるようになる。
この場合、上流側の流路12aの内径A1は70mmで、外径は最も小さい部分(流路端部近傍部分)が140mmに設定され、基部11の肉厚B1は最も薄い部分(開口端部近傍)が35mmに設定される。これを上述した条件1の式に当てはめると以下のようになる。
条件1:B1/A1=35/70=0.5≧0.22
また、下流側の流路12bの内径A2は70mmで、外径は最も小さい部分(流路端部近傍部分)が120mmに設定され、基部11の肉厚B2は最も薄い部分(開口端部近傍)が25mmに設定される。これを上述した条件1の式に当てはめると以下のようになる。
条件1:B2/A2=25/70=0.36≧0.22
この場合、上流側の流路12aの内径A3は97mmで、外径は最も小さい部分(流路端部近傍部分)が165mmに設定され、基部11の肉厚B3は最も薄い部分(開口端部近傍)が34mmに設定される。これを上述した条件1の式に当てはめると以下のようになる。
条件1:B3/A3=34/97=0.35≧0.22
また、下流側の流路12bの内径A4は70mmで、外径は最も小さい部分(流路端部近傍部分)が120mmに設定され、基部11の肉厚B4は最も薄い部分(開口端部近傍)が25mmに設定される。これを上述した条件1の式に当てはめると以下のようになる。
条件1:B4/A4=25/70=0.36≧0.22
この点を、市販されている汎用品の継手部材(エルボ)と比較すると以下のようになる。
汎用のエルボは、上述した表1に示すように、配管サイズ4Bの場合には、肉厚17.1mm,外径114.3mm,内径80.1mmとなっており、これを上述した条件1の式に当てはめると以下のようになる。
肉厚/内径=17.1/80.1=0.21≦0.22
このように、市販品の継手(エルボ)では条件1を充足することができず、従って、本実施形態に係る配管連通部材10で実現される強度や耐久性・安全性等の要求性能を満たすことはできない。
さらに、上記のように構成される配管連通部材10は、複数の流路12の、基部11内で交差する連通部分の曲がり角内側部分が、所定の曲率を有する曲面状に形成されるようになっている。
具体的には、本実施形態では、複数の流路12の曲がり角内側部分に形成される曲面状部の曲率半径をRとし、流路12の内径をAとした場合に、以下の条件1を満たすように形成されるようになっている。
条件2:曲率半径R/内径A=0.1〜2.5
ここで、この条件2は、特に、R/A=0.25〜2.0であることが好ましく、さらに、R/A=0.4〜1.5であることがより好ましい。
図4は、流路12の形状を説明するために流路12を真横から見た場合の外観を仮想的に示した図であり、また、図5は、図4に対応する流路を斜めから見た外観を仮想的に示した図である。
なお、図4において、二点鎖線で示す四角形は、図2(a),(b)で示した2種類の配管連通部材10A,10Bの基部外形を示すものである。
まず、図4,5の(a)に示す例は、円筒形状等に穿設されて連通された2つの流路12a,12bの曲がり角内側部分に曲面状部分を形成しない基準型の流路構成である。この場合、流路12の曲がり角部分の断面形状は、図6(a)に示すように、真円形に近い楕円形状(卵型形状)となる。
これを、図2(a)に示した内径70mmの流路12を備えた配管連通部材10に適用して、上述した条件2の式に当てはめると以下のようになる。
条件2:曲率半径R/内径A=30/70=0.43=0.1〜2.5
また、これを図2(b)に示した内径97mmの流路12を備えた配管連通部材10に適用して、上述した条件2の式に当てはめると以下のようになる。
条件2:曲率半径R/内径A=30/97=0.31=0.1〜2.5
これを、図2(a)に示した内径70mmの流路12を備えた配管連通部材10に適用して、上述した条件2の式に当てはめると以下のようになる。
条件2:曲率半径R/内径A=45/70=0.64=0.1〜2.5
また、これを図2(b)に示した内径97mmの流路12を備えた配管連通部材10に適用して、上述した条件2の式に当てはめると以下のようになる。
条件2:曲率半径R/内径A=45/97=0.46=0.1〜2.5
これを、図2(a)に示した内径70mmの流路12を備えた配管連通部材10に適用して、上述した条件2の式に当てはめると以下のようになる。
条件2:曲率半径R/内径A=80/70=1.14=0.1〜2.5
また、これを図2(b)に示した内径97mmの流路12を備えた配管連通部材10に適用して、上述した条件2の式に当てはめると以下のようになる。
条件2:曲率半径R/内径A=80/97=0.82=0.1〜2.5
これによって、流路12の内壁に係る流体の負荷を軽減乃至抑制することができ、配管の曲がり角部分に発生するエロージョンを可能な限り低減乃至抑制することができるようになる。
以上のような流路12の曲がり角内側に形成される曲面状部には、さらに、その曲面状部の曲面を横切る平面状部を形成することができる。
そのような曲面状部分を横切る平面状部分を備えることで、複数の流路12の曲がり角部分における流体の流れをより滑らかにすることができ、エロージョンによる負荷・影響をさらに低減乃至抑制することができる。
具体的には、本実施形態では、図4及び図5の(c),(e)に示すように、ほぼ90度に交差する流路12a,12bの曲がり角内側部分に形成された曲面状部に対して、当該曲面状部の曲面を横切るように平面状部を形成するようにしてある。
同様に、図4,5の(e)に示す例は、上述した図4,5の(d)に示した曲率半径45の曲面部分に平面状部を形成した場合である。この場合、流路12の曲がり角部分の断面形状は、図6(e)に示すようになり、曲がり角内側に向かって細くなる楕円形状(逆卵型形状)の底部(卵頭部)が水平方向に平面化された切頭卵型形状となる。
これによって、流路12の曲がり角部分を、底面側に向かって広がる流路断面形状に形成することができる。
これによって、流路12の曲がり角部分における流体の流れをさらに滑らかにすることができ、エロージョンをさらに低減乃至抑制することができるようになる。
さらに、本実施形態の配管連通部材10では、交差・連通する複数の流路12の間隔・角度を変更することができる。
流体が通過・搬送される流路の曲がり部分は、円滑な流体の流れを維持するためには、配管と配管の間隔・角度としては、2本の配管が90度以上の間隔で交差・接続されることが好ましい。
従って、本実施形態の配管連通部材10においても、上述した図1〜5で示した流路12の構成から明らかなように、複数(2本)の流路12は、互いにほぼ直交して連通する、ほぼ90度の間隔で交差するようになっている。
特に、流体が高速・高圧・高温状態で搬送される石油プラント等における配管構造では、エロージョンやコロージョンの抑制の観点から、配管の曲がり部分を90度以上の間隔で交差・連通させることが好ましい場合がある。
具体的には、図4,5の(a)〜(f)に示す例では、基部11に穿設する2本の流路12a,12bを、ほぼ直行するように90度間隔で交差するように形成してある。
これに対して、図4,5の(g)で示す例では、2本の流路12a,12bを90度以上の間隔で交差させるようにしてある。
これに対して、下流側の流路12bは、基板11の表面と直交する方向に対して、流下方向の外側方向に傾斜するように斜めに穿設するようにしてある。
これによって、水平方向(横方向)に伸びる上流側の流路12aに対して、垂直方向(縦方向)に伸びる下流側の12bが外側に傾斜した状態で交差し、2本の流路12a,12bは90度より大きい間隔で交差することになる。
ここで、この複数の流路12a,12bが交差する間隔(角度)は、特に、91度〜120度、さらに、93度〜100であることが好ましい。
この範囲であれば、基部11に対して流路12を穿設形成する際にも支障がなく、また、傾斜した流路12に対して配管を接続・溶接するのにも問題がない。
すなわち、図4,5の(g)で示した例では、下流側の縦方向(垂直方向)に伸びる流路12bを、外側に所定角度(3〜10度)傾斜させるようにしてあるが、これを上流側の横方向(垂直方向)に伸びる流路12aを、上方に傾斜させることもできる。
また、縦方向及び横方向の双方の流路12a,12bを、それぞれ傾斜させて、両者を90度より大きい間隔で交差させることもできる。
以上のような構成からなる本実施形態の配管連通部材10は、上述した炭素鋼やステンレス鋼等の金属塊を用いて所定の大きさ・形状に形成された鍛造品を基部11とし、基部11に対して機械加工を行い、基部11の表面から内部に向かって切削・ボーリングを行って流路12を形成する。
流路12は、所定の角度で、所定の深さまでボーリング加工することで、基部11の中心部分において複数の流路12を交差・連通させることができる。
さらに、曲面部分に対して切削加工を行うことにより、曲面部分を横切る平面状部を形成することができる。
その後、完成した配管連通部材10に対して、基部11の表面に開口する流路12の端部に所定の配管を接続し、溶接により接合することで所望の配管構造を構築することができる(図1(b)参照)。
その場合に、配管連通部材10と配管の溶接部分、特に基部11の下流側の流路12と下流側の配管30との溶接部分には、流路内面側の平坦化処理を行うことができる。
以下、本実施形態に係る配管連通部材10と配管の溶接部分の平坦化処理の方法について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る配管連通部材と配管の接合部を平坦化する方法を模式的に示す説明図であり、流路を真横から見た図を示している。
なお、図7に示す例では、基部11の下流側に接続される下流側配管30及び下流側の流路12bについて平坦化処理を行う場合について説明する。
そこで、平坦化処理を行う場合には、まず、上述のようにして基部11に所定の形状・寸法の流路12を形成した配管連通部材10を用意するとともに、その配管連通部材10の流路12に対応した配管30を用意する。
ここで、本実施形態の平坦化処理は、ボーリング加工によって流路内面を切削することにより行うため、予め配管連通部材10に形成する流路12と、その流路12に接続する配管30は、それぞれ、ボーリング加工によって削り取られる分の厚みを考慮した内径のものとする。
具体的には、基部11に形成する下流側の流路12bは、例えば内径68mmとなるように形成し、また、この下流側の流路12bに接続される配管30は、例えば内径65mmの配管を用意する。
ここで、上述したように、基部11の流路12と配管30との接合部分には、溶接により管内にうら波が形成されることがある。
図7には、このように溶接によって接合部にうら波が形成された配管連通部材10と下流側配管30を模式的に示している。
同図に示すように、配管連通部材10と配管30の接続部分には、溶接により接合された溶接部(ビード)Wが、基部11と配管30の表面外側から流路12の内面側までに存在しており、管内に突出するうら波が形成される。
このような流体内面側に存在する溶接部Wのうら波に流体が衝突することでエロージョン・コロージョンが発生する可能性があることから、以下に示す平坦化処理を行うものである。
この状態で、配管30の配管連通部材10と接合されていない端部開口から、ボーリング器具を挿入し、配管30の内径を所定の寸法(例えば70mm)に切削し、さらに、これに連通している基部11の下流側流路12bも、同じ寸法(例えば70mm)に切削する。このようなボーリング加工は、配管30の長さ(例えば80mm)+配管連通部材10の厚み(例えば200mm)程度の長さを有する長尺のボーリング器具を配管30の自由端側から挿入して行うことができる。
このボーリング加工によって、流路内面が均一的に平坦化され、溶接により接合された溶接部Wのうら波が流路12の内面側に突出することもなくなり、基部11と配管30の内面が接合部分で滑らかに連続する所謂「面一」状態で接合されるようになる(図2参照)。
これによって、流路内面側に突出する部分がなくなり、流体の衝突によるエロージョン・コロージョンの発生を防止することができる。
その後、配管連通部材10の上流側の流路12aに対しても、溶接によって上流側主配管20を溶接・接合することで、図1(b)に示すような配管構造が完成する。
このような段差は、後述する実施例(図8参照)からも明らかなように、流体が衝突する流路内壁部分、すなわち、エロージョン・コロージョンが発生する部分よりも上流側(上方)に位置しており、仮にそのような段差が存在していても、流体の流れに影響を及ぼすことはなく、当然ながらエロージョン・コロージョンの発生原因ともならず、特に問題とはならない。
但し、そのような段差は、平坦化処理を行った後に、さらにホーニング加工によって研磨加工することで、段差のない滑らかな流路とすることができる。このようなホーニング加工は、上述したボーリング加工後に、ボーリング加工と同様に下流側の配管30の自由端側の開口からホーニング器具を挿入して行うことができ、ボーリング処理された面に沿ってさらに平滑化加工を施すことができる。
このため、上述した図7に示す平坦化処理では、下流側の流路12bと下流側配管30との接続部分に対してのみ行う場合を説明した。すなわち、本実施形態の平坦化処理は、上流側の流路12aと上流側主配管20の接続部分については、必ずしも平坦化処理を行わなくても良い。但し、上流側の流路12aと上流側主配管20の接続部分についても平坦化処理を行うことができることも可能である。
以上のような本実施形態に係る配管連通部材10で連通・接続された配管構造を流れる流体としては、気体・液体・固体(粉状体・粒状態)のいずれも対称とすることができるが、特に本実施形態は、気体と液体の混合物からなる流体に好適に用いることができる。
このような気体と液体の混合物からなる流体としては、例えば石油プラント設備において行われる潤滑油の精製工程で生成され搬送・循環される「循環ガス」がある。
また、このような循環ガスの配管構造では、洗浄水を注入して、腐食性ガスとなる硫化水素やアンモニアを洗い流し、水素と分離している。
このような循環ガスの流体は、95〜99.5%の気体と5〜0.5%の液体の混合物からなっている。
本実施形態では、このような気体と液体の混合物である循環ガスの配管構造に好適に用いることができ、上述した所定の肉厚と流路径及び流路形状を有する配管連通部材10は、液滴粒子の衝突に対しても強い耐久性・耐腐食性を有することとなる。
勿論、それ以外の流体(気体・液体・固体及びそれらの混合物)の配管構造にも適用できることは言うまでもない。
また、基部11内の流路の曲がり角部分に所定の湾曲形状加工を施すことで、流体によるエロージョンの発生を低減乃至抑制することができ、信頼性・安全性に優れた配管構造を実現することができる。
さらに、配管連通部材10と配管を溶接により接合する場合に、流路内面側を平坦化することで、流路内に溶接によるうら波などが突出することをなくして、エロージョン・コロージョンの発生をより確実に抑制・防止することができる。
従って、特に流体が高圧・高温状態で搬送される石油プラント等の配管構造に好適な配管連通部材を実現することができる。
なお、本発明を以下の実施例により更に説明するが、本発明は下記実施例により何らかの制限を受けるものではない。
本発明の配管連通部材の摩耗防止効果を確認するため、以下に示す解析を行った。
また、上記流路モデルについて、配管連通部材の流路の交差部分を図4〜5に示したように、流路内部構造を改良していない場合と各種改良を行った場合について、「LES(Large Eddy Simulation)」による流動及び液滴粒子追跡衝突解析を行い、配管連通部材およびその後方領域の壁面摩耗を解析した。
[解析条件]
ガス平均流速:2.8m/s (上流側主配管部分の平均流速)
ガス密度:26kg/m3
粘度:0.00002Pa・s
液滴粒子密度:980kg/m3
液滴粒子流量:0.1kg/s
液滴粒子径:300μm
液滴粒子飛散(摩耗計測)時間:4.0〜8.0secの4秒間計測
この場合、上述した表1で示したように、流路12aの内径(A1)は70mm、外径は最も小さい部分(流路端部近傍部分)が140mm、基部11の肉厚(B1)は最も薄い部分(開口端部近傍)が35mmとなっており、条件1:B1/A1=35/70=0.5≧0.22となっている。
また、下流側の流路12bの内径(A2)は70mm、外径は最も小さい部分(流路端部近傍部分)が120mm、基部11の肉厚(B2)は最も薄い部分(開口端部近傍)が25mmとなっており、条件1:B2/A2=25/70=0.36≧0.22となっている。
以下に示す実施例1〜7について、得られた結果を図8及び9に示す。
図8は、本発明の一実施形態に係る配管連通部材によるエロージョン抑制効果を説明するために、下流側配管側から見た流路の外観及びエロージョン分布を示す図であり、図8(a)〜(g)は、図4〜6(a)〜(g)に示した配管連通部材10に対応している。
また、図9は、図8(a)〜(g)に示した各配管連通部材のエロージョン量を示す数値を示す表及びグラフである。
実施例1は、図4〜6の(a)に示した、流路の曲がり角部分に曲面加工を行っていない配管連通部材を使用した場合である。
図8(a)及び図9に示すように、エロージョン量は5.43e-10(kg/m2)(m2)となった。
また、上流側主配管20の底面からエロージョン領域中心部までの距離は約55mmであった。
実施例2は、図4〜6の(b)に示した、流路の曲がり角部分に曲率半径30の曲面加工をした配管連通部材を使用した場合である。
図8(b)及び図9に示すように、エロージョン量は4.48e-10(kg/m2)(m2)となった。
また、上流側主配管20の底面からエロージョン領域中心部までの距離は約90mmであった。
実施例3は、図4〜6の(c)に示した、流路の曲がり角部分に曲率半径30の曲面加工をして、さらに平面状のカット加工をした配管連通部材を使用した場合である。
図8(c)及び図9に示すように、エロージョン量は4.11e-10(kg/m2)(m2)となった。
また、上流側主配管20の底面からエロージョン領域中心部までの距離は約90mmであった。
実施例4は、図4〜6の(d)に示した、流路の曲がり角部分に曲率半径45の曲面加工をした配管連通部材を使用した場合である。
図8(d)及び図9に示すように、エロージョン量は3.89e-10(kg/m2)(m2)となった。
また、上流側主配管20の底面からエロージョン領域中心部までの距離は約90mmであった。
実施例5は、図4〜6の(e)に示した、流路の曲がり角部分に曲率半径45の曲面加工をして、さらに平面状のカット加工をした配管連通部材を使用した場合である。
図8(e)及び図9に示すように、エロージョン量は3.70e-10(kg/m2)(m2)となった。
また、上流側主配管20の底面からエロージョン領域中心部までの距離は約85mmであった。
実施例6は、図4〜6の(f)に示した、流路の曲がり角部分に曲率半径80の曲面加工をした配管連通部材を使用した場合である。
図8(f)及び図9に示すように、エロージョン量は3.47e-10(kg/m2)(m2)となった。
また、上流側主配管20の底面からエロージョン領域中心部までの距離は約95mmであった。
実施例7は、図4〜6の(g)に示した、流路の曲がり角部分に曲率半径30の曲面加工をして、さらに下流側(縦方向)の流路を外側に10度傾斜させた配管連通部材を使用した場合である。
図8(g)及び図9に示すように、エロージョン量は2.70e-10(kg/m2)(m2)となった。
また、上流側主配管20の底面からエロージョン領域中心部までの距離は約80mmであった。
曲面形状は、曲率半径をR30→R45→R80と大きくするに従って、エロージョン量(エロージョン積分値)が減少することが分かった。
さらに、配管連通部材の流路の間隔を90度よりも大きくして、下流側の流路を垂直方向(縦方向)に対して傾斜させることにより、流路の間隔をほぼ90度にした場合よりもエロージョン量(エロージョン積分値)が減少することが分かった。
実施例8として、図4〜6の(a)に示した流路について、同一の流路に対して、溶接による接合部内面に形成されたうら波を含む流路内面について、平坦化処理を行わない流路と、平坦化処理を行った流路とで、エロージョン量の変化を対比した解析結果を図10に示す。
具体的な解析条件等は、上述した図4〜6の(a)に示した流路についての実施例1と同様である。
これに対して、同一の流路について、流路内面の平坦化処理を行って、流路内面に溶接によるうら波が存在しない流路の場合には、エロージョン量は、総量で5.43e-10(kg/m2)(m2)、最大値で1.58e-08(kg/m2)(m2)となった。
従って、流路内面の平坦化処理を行って溶接によるうら波を除去することにより、溶接によるうら波が残ったままの流路と比較して、エロージョン量は、最大値で1/50程度に、総量で1/5程度に低減・抑制することができることが分かった。
同様に、上述した実施形態では、本発明に係る配管連通部材を介して搬送される流体として、石油から潤滑油を生成する際に発生するガスを例にとって説明したが、本発明の配管連通部材はそのようなガスを搬送する場合のみに限られない。
すなわち、本発明は、気体や液体,固体(粉状体・粒状体)を搬送・移動・循環させるための配管を接続するためであれば、どのような設備・施設において、どのような流体を搬送等させる場合であっても適用できるものである。
11 基部
12 流路
20 上流側主配管
30 下流側配管
40 熱交換部配管
Claims (15)
- 複数の配管を連通させるための配管連通部材であって、
金属塊からなる基部と、
前記基部の表面から当該基部の内部に向かう直線方向に沿って穿設される複数の流路と、を備え、
前記複数の各流路が、互いに交差する直線方向に沿って形成されるとともに、前記基部の内部において各流路が連通し、
前記複数の各流路の、前記基部の表面側の端部開口に配管が接続されることにより、当該複数の配管が連通される
ことを特徴とする配管連通部材。 - 前記基部が、ほぼ直方体形状の金属塊からなり、
前記複数の各流路が、前記基部を構成する金属塊の直方体の異なる面から、それぞれ当該基部の内部に向かって穿設される
ことを特徴とする請求項1記載の配管連通部材。 - 前記流路の内径をAとし、
前記流路の流路方向と直行する方向の、前記基部の表面から当該流路までの厚みをBとした場合に、
B/A≧0.22を満たす
ことを特徴とする請求項1又は2記載の配管連通部材。 - 前記複数の流路の、前記基部内で交差する連通部分の曲がり角内側部分が、所定の曲率を有する曲面状に形成される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の配管連通部材。 - 前記曲面状部の曲率半径をRとし、
前記流路の内径をAとした場合に、
R/A=0.1〜2.5を満たす
ことを特徴とする請求項4記載の配管連通部材。 - 前記曲面状部に、当該曲面状部の曲面を横切る平面状部を形成した
ことを特徴とする請求項4又は5記載の配管連通部材。 - 前記複数の流路が、前記基部の内部において90度以上の間隔で交差する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の配管連通部材。 - 前記複数の流路が、前記基部の内部においてほぼ90度間隔で交差する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項記載の配管連通部材。 - 前記複数の流路が、前記基部の内部において90度〜135度の間隔で交差する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項記載の配管連通部材。 - 前記流路を流れる流体が、気体と液体の混合物からなる
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項記載の配管連通部材。 - 前記流路を流れる流体が、95〜99.5%の気体と5〜0.5%の液体の混合物からなる
ことを特徴とする請求項10記載の配管連通部材。 - 前記基部を形成する金属塊の材質が炭素鋼又はステンレス鋼である
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項記載の配管連通部材。 - 前記複数の各流路の端部開口に溶接により接合される前記複数の配管を備える
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項記載の配管連通部材。 - 前記複数の各流路の端部開口と前記配管との接合部の流路内面側を、凹凸の無い平坦化形状に形成した
ことを特徴とする請求項13記載の配管連通部材。 - 前記配管の材質が炭素鋼又はステンレス鋼である
ことを特徴とする請求項13又は14記載の配管連通部材。
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