JP2016026933A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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泰史 川崎
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Abstract

【課題】 優れた密着性、ハードコート層等の各種の表面機能層が形成された後の外光反射による干渉ムラ軽減、および加熱によるエステル環状三量体の析出量の低減が必要な用途、例えば、タッチパネル等の透明電極用のフィルム部材、成形用フィルム等の部材等に好適に利用することができるポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 透明導電のパターニングを不可視化する用途に用いられる積層ポリエステルフィルムであり、金属酸化物および架橋剤を含有する塗布液から形成された塗布層をポリエステルフィルムの一方の面に有し、もう一方の面を180℃で10分間熱処理したときの表面へのエステル環状三量体の析出量が1.0mg/m以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、積層ポリエステルフィルムに関するものであり、例えば、タッチパネル等の透明電極等、ハードコート層等の表面機能層を形成後に、外光反射による干渉ムラの軽減が求められる用途に好適な積層ポリエステルフィルムに関するものである。
近年、ポリエステルフィルムは、各種の光学用フィルムに多く用いられ、各種ディスプレイ等の部材であるタッチパネル等の透明電極、反射防止フィルム、プリズムシート、光拡散シート、電磁波シールドフィルムや、インモールド転写フィルム、インモールドラベルフィルム等の用途に用いられている。これらの部材に用いられるベースフィルムには優れた透明性、視認性が要求される。
これらフィルムにはカール防止や傷つき防止、表面硬度等の性能を向上させるために、ハードコート加工されることが多い。基材として用いるポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、中間層として易接着の塗布層が設けられる場合が一般的である。そのため、ポリエステルフィルム、易接着の塗布層、ハードコート層の3層の屈折率を考慮しないと干渉ムラが発生してしまう。
干渉ムラのあるフィルムをタッチパネル等のディスプレイに使用すると、視認性の悪いものになってしまい、使用しづらいものとなってしまう。そのため干渉ムラ対策をすることが求められている。一般的には、干渉ムラを軽減させるための塗布層の屈折率は、基材のポリエステルフィルムの屈折率とハードコート層の屈折率の相乗平均付近と考えられ、この辺りの屈折率に調整することが理想的である。ポリエステルフィルムの屈折率が高いため、一般的には塗布層の屈折率を高く設計する必要がある。
干渉ムラの抑制のほかにも、ディスプレイの視認性を向上させるために高屈折率化された塗布層の必要性が高まっている。例えば、近年ではスマートフォン等の増加によって、タッチパネルの中でも透明電極をパターニングした静電容量方式が主流となりつつあり、ディスプレイの視認性をより向上させる目的で、ディスプレイの各層の屈折率差を小さくして透明電極のパターニングを不可視化する加工も必要となってきている(特許文献1、2)。
さらに、例えば、タッチパネルの導電層形成工程や成型のための加熱処理工程等、フィルムが高温にさらされる場合において、基材のポリエステルフィルム中に存在するオリゴマー、特にエステル環状三量体がフィルム表面に析出するという問題がある。エステル環状三量体の析出が多い場合、各工程における汚染の原因になる場合、白っぽく見えてしまい透明性が悪いものになる場合等の欠点があるために、加熱によるエステル環状三量体の析出が少ないフィルムが求められていた。
特開2011−134464号公報 特開2011−136562号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、ハードコート層等の表面機能層を形成後、外光反射による干渉ムラが少なく、かつ、加熱によるエステル環状三量体の析出量が少ない積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、透明導電のパターニングを不可視化する用途に用いられる積層ポリエステルフィルムであり、金属酸化物および架橋剤を含有する塗布液から形成された塗布層をポリエステルフィルムの一方の面に有し、もう一方の面を180℃で10分間熱処理したときの表面へのエステル環状三量体の析出量が1.0mg/m以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、ハードコート層等の種々の表面機能層を積層した際に外光反射による干渉ムラが少なく、種々の表面機能層との密着性に優れ、加熱によるエステル環状三量体の析出量が少ない基材フィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルムの滑り性を向上させるために、表層に後述するような粒子を含有するポリエステルフィルム、透明性を確保するために、中間層には粒子を含有しないポリエステルフィルムを配置する等、各種の特性を向上させることができるという点で、3層構成にすることが好ましい。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。この中でも、チタン化合物やゲルマニウム化合物は触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能であり、フィルム中に残留する金属量が少ないことから、フィルムの輝度が高くなるため好ましい。さらに、ゲルマニウム化合物は高価であることから、チタン化合物を用いることがより好ましい。
本発明においては、熱処理後のエステル環状三量体の析出量を抑えるために、エステル環状三量体の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造することが好ましい。エステル環状三量体の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えば、ポリエステル製造後に固相重合する方法が挙げられる。
さらにポリエステルフィルムを3層以上の構成とし、ポリエステルフィルムの最外ポリエステル層にエステル環状三量体の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層を設計することで、熱処理後のエステル環状三量体の析出量を抑える方法が好ましい。
ポリエステル中に含まれるエステル環状三量体の含有量は、一般的な製造方法では約1重量%である。本発明においては、固相重合等により、エステル環状三量体の含有量を好ましくは0.7重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下としたポリエステル原料を用いることが効果的である。また、ポリエステルフィルムの最外ポリエステル層中に含まれるエステル環状三量体の含有量が0.7重量%以下のポリエステル原料が、最外ポリエステル層中の全ポリエステル原料の好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上であると、加熱後のエステル環状三量体の析出量を効果的に抑えることができる。
また、ポリエステルフィルムの最外ポリエステル層の膜厚は厚い方が内側のポリエステル層からのエステル環状三量体の析出が効果的に抑えられる。最外ポリエステル層の膜厚は好ましくは4μm以上、より好ましくは5μm以上である。4μmより薄い場合、効果が小さい懸念があり、ポリエステル原料のエステル環状三量体の含有量を少なくする方法による、エステル環状三量体の析出量の低減は難しい場合がある。
本発明のポリエステルフィルム中にはフィルムの耐候性の向上、タッチパネル等に用いられる液晶ディスプレイの液晶等の劣化防止のために、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01〜3μm、より好ましくは0.05〜2μmの範囲である。平均粒径が5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層等を形成させる場合等に不具合が生じる場合がある。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常5重量%未満、好ましくは0.0003〜3重量%の範囲である。粒子が無い場合、あるいは少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、良好なフィルムとなるが、滑り性が不十分となる場合があるため、塗布層中に粒子を入れることにより、滑り性を向上させる等の工夫が必要な場合がある。また、粒子含有量が5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜300μm、好ましくは25〜250μmの範囲である。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を乾燥したペレットを、単軸押出機を用いてダイから押し出し、得られた溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。
その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であることから、インラインコーティングが好ましく用いられる。
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に、延伸後のポリエステルフィルムの熱処理工程で、塗布層を高温で処理することができるため、塗布層上に形成され得る各種の表面機能層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。また、延伸前にコーティングを行う場合は、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。すなわち、インラインコーティング、特に延伸前のコーティングにより、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。
本発明においては、金属酸化物および架橋剤を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを必須の要件とするものである。
本発明のフィルムの塗布層は、屈折率を基材のポリエステルフィルムと同等付近に設計したものである。近年では、スマートフォン等の増加により、タッチパネルの中でも透明電極をパターニングした静電容量方式のタッチパネルが主流となりつつあり、画面の視認性をより向上させるために、干渉ムラ軽減とともに透明電極のパターニングを不可視化する加工の必要性が高まってきており、こうした加工の際には、基材のポリエステルフィルム上に屈折率の高いハードコート層等の表面機能層が設けられることが多い。特に表面機能層の屈折率が基材のフィルムと同程度の屈折率の場合には、塗布層の屈折率もそれらと同等に設計することで、光学的に各層の界面をなくすことで界面反射を減らし、干渉ムラを軽減するとともに、透明電極のパターンニングを不可視化する加工にも有効に使用できると本発明者らは考えた。
本発明のフィルムの塗布層の形成に使用する金属酸化物は、主に塗布層の屈折率調整のために使用するものである。特に高い屈折率を有する金属酸化物を使用することが好ましく、屈折率として1.7以上のものを使用することが好ましい。金属酸化物の具体例としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化亜鉛、アンチモンチンオキサイド、インジウムチンオキサイド等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種類以上使用してもよい。これらの中でも塗布層の形成に用いた場合に透明性に優れることから、酸化ジルコニウムや酸化チタンがより好適に用いられ、特に屈折率が高いことから酸化チタンが最適である。
金属酸化物は、使用形態によっては密着性が低下する懸念があるため、粒子の状態で使用することが好ましく、また、その平均粒径は透明性の観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
本発明のフィルムの塗布層の形成に使用する架橋剤は、塗布層の強度の向上や各種の表面機能層との密着性の向上のために使用するものである。架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用できるが、例えば、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、メラミン化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これらの中でも特に密着性が向上するという観点から、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物が好適に用いられ、また、耐溶剤性等、塗布層の強度が向上するという観点からメラミン化合物が好適に用いられる。
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
イソシアネート系化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
また、本発明におけるイソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
カルボジイミド系化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
カルボジイミド系化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
さらに本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド系化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン構造を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
なお、これら架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
また、本発明のフィルムの塗布層の形成には、塗布外観の向上、塗布層上にハードコート層等の種々の表面機能層が積層されたときの干渉ムラの低減、透明性や密着性の向上等のためにポリマーを使用することも可能である。
ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でもハードコート層等の表面機能層との密着性向上、塗布外観向上の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。
ポリエステル樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸および、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、p−キシリレングリコ−ル、ビスフェノ−ルA−エチレングリコ−ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ−ル、ジメチロ−ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジメチロ−ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ−ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
アクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。また、接着性をより向上させるために、ヒドロキシル基、アミノ基を含有することも可能である。
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
ウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことである。通常ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネートの反応により作成される。ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
ポリカーボネートポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
各種の上塗り層との密着性を向上させるために、上記ポリオール類の中でもポリカーボネートポリオール類およびポリエステルポリオール類がより好適に用いられる。
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1 ,8−オクタンジアミン、1 ,9−ノナンジアミン、1 ,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
本発明におけるウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の構造中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、密着性に優れており好ましい。
また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。
例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。
かかるポリウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることが出来る。これにより、塗布前の液の状態での安定性に優れる上、得られる塗布層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
上述のポリマーの中でも、分子内にベンゼン環等の芳香族化合物を数多く含有させることができ、それにより屈折率を高くすることができるという観点から、特にポリエステル樹脂が好ましい。
また、さらに塗布層の屈折率をより調整しやすくするため、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ペリレン等の縮合多環式芳香族構造を有する化合物を併用することが好ましい。
ポリエステルフィルム上への塗布性を考慮すると、縮合多環式芳香族を有する化合物は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子化合物が好ましい。特にポリエステル樹脂にはより多くの縮合多環式芳香族を導入することができるためより好ましい。
縮合多環式芳香族をポリエステル樹脂に組み込む方法としては、例えば、縮合多環式芳香族に置換基として水酸基を2つあるいはそれ以上導入してジオール成分あるいは多価水酸基成分とするか、あるいはカルボン酸基を2つあるいはそれ以上導入してジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分として作成する方法がある。
積層ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、塗布層に含有する縮合多環式芳香族はナフタレン構造を有する化合物が好ましい。また、塗布層上に形成される各種表面機能層との密着性や、透明性が良好であるという点で、ポリエステル構成成分としてナフタレン構造を組み込んだ樹脂が好適に用いられる。当該ナフタレン構造としては、代表的なものとして、1,5−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
なお、縮合多環式芳香族には、水酸基やカルボン酸基以外にも、硫黄元素を含有する置換基、フェニル基等の芳香族置換基、ハロゲン元素基等を導入することにより、屈折率の向上が期待でき、塗布性や密着性の観点から、アルキル基、エステル基、アミド基、スルホン酸基、カルボン酸基、水酸基等の置換基を導入してもよい。
また、本発明のフィルムにおいて、塗布層の形成に、塗布層のブロッキング、滑り性改良を目的として上述の金属酸化物以外の粒子を併用してもよい。その平均粒径はフィルムの透明性の観点から好ましくは1.0μm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.2μm以下の範囲である。また、塗布層の膜厚にも依存するので一概ではないが、滑り性をより改善させるという観点から、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.05μm以上の範囲である。粒子の具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等が挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、上述した塗布層を設けた面と反対側の面にも塗布層を設けることも可能である。特に熱処理したときに表面へのエステル環状三量体の析出量をより抑えるため、エステル環状三量体の析出を抑制する塗布層を設けることが好ましい。前述したポリエステルフィルムを形成するポリエステル原料中のエステル環状三量体の含有量が少ないポリエステル原料を使用する方法と併用して、エステル環状三量体の析出を抑制する塗布層も設けると、エステル環状三量体の析出抑制効果が大きくなり、より好ましい形態となる(以下、金属酸化物および架橋剤を含有する塗布液から形成された塗布層を第1塗布層、エステル環状三量体の析出を抑制する塗布層を第2塗布層と略記することがある)。
第2塗布層の形成方法としては、加熱によるフィルム表面へのオリゴマー析出量を抑える材料を含有する塗布液から形成すればよく、材料面からポリエステル樹脂と化学的構造が異なる化合物や架橋可能な化合物が有効であり、例えば、メラミン化合物等の架橋剤、4級アンモニウム塩化合物、ポリビニルアルコール、各種金属化合物等が挙げられる。
メラミン化合物等の架橋剤とは、上述したような、第1塗布層の形成に用いられうる架橋剤を用いることができ、特にメラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物が有効である。
4級アンモニウム塩化合物とは、分子内に4級アンモニウム塩を含有する化合物のことであり、例えば、ピロリジニウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N−アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。さらに、これらを組み合わせて、あるいは他の樹脂と共重合させたものでも構わない。また、これらの4級アンモニウム塩の対イオンとなるアニオンとしては例えば、ハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等のイオンが挙げられる。
上記4級アンモニウム塩化合物の中でも耐熱安定性が優れているという点で、ピロリジニウム環を有する化合物がより好ましい。
ピロリジニウム環を有する化合物としては、例えば下記式(1)の構造を有するポリマーである。
Figure 2016026933
上記式(1)中、R、Rはそれぞれ独立してアルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲンである。また、RおよびRは化学的に結合していてもよく、例えば、−(CH−(m=2〜5の整数)、−CH(CH)CH(CH)−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=N−、−CH=CH−N=C−、−CHOCH−、−(CHO(CH−などが挙げられる。
式中のXは、ハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等を示す。
本発明において、上記(1)式のポリマーは、下記式(2)で表される化合物を、ラジカル重合触媒を用いて環化重合させることにより得られる。重合は、溶媒として水あるいはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、アセトニトリルなどの極性溶媒中で過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、第3級ブチルパーオキサイド等の重合開始剤により、公知の方法で実施できるが、これらに限定するものではない。本発明においては、(2)式の化合物と重合性のある炭素―炭素不飽和結合を有する化合物を共重合成分としてもよい。
Figure 2016026933
また4級アンモニウム塩化合物の数平均分子量は通常は1000〜500000、好ましくは2000〜100000、さらに好ましくは5000〜50000である。分子量が1000未満の場合は塗膜の強度が弱かったり、耐熱安定性に劣ったりする場合がある。また分子量が500000を超える場合は、塗布液の粘度が高くなり、取扱い性や塗布性が悪化する場合がある。
ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコール部位を有する化合物であり、例えば、ポリビニルアルコールに対し、部分的にアセタール化やブチラール化等された変性化合物も含め、従来公知のポリビニルアルコールを使用することができる。ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000の範囲のものが用いられる。重合度が100未満の場合、塗布層の耐水性が低下する場合がある。また、ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるものではないが、70モル%以上、好ましくは70〜99.9モル%の範囲であるポリ酢酸ビニルケン化物が実用上用いられる。
各種金属化合物とは、金属を含有する化合物のことであり、例えば、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、塩化セシウム、酢酸セシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、硝酸鉄、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III )酸カリウム、塩化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、沃化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、塩化パラジウム(II)ナトリウム、塩化銅(II)、臭化銅(II)、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銀、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化インジウム(III )、硝酸インジウム(III)等の金属塩化合物、チタントリエタノールアミネート、チタンラクテート、チタンアセチルアセトナト等のチタンキレート化合物、ジルコニウムアセチルアセトナト等のジルコニウムキレート化合物、アルミニウムアセチルアセトナート等のアルミニウムキレート化合物、コバルトアセチルアセトナト等のコバルトキレート化合物等の金属キレート化合物等が挙げられる。
本発明のフィルムの第2塗布層の形成には、塗布外観や透明性の向上等のために、第1塗布層の形成に用いられるような各種のポリマーを併用することも可能である。
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、本発明のフィルムの第2塗布層の形成に、塗布層のブロッキング性や滑り性改良等を目的として粒子を併用することも可能である。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、第1塗布層および第2塗布層の形成には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を使用してもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する第1塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、金属酸化物は、通常5〜50重量%の範囲、より好ましくは10〜45重量%の範囲、さらに好ましくは20〜40重量%の範囲である。これらの範囲より外れる場合は、ハードコート層等の表面機能層形成後の干渉ムラにより、視認性が良くない場合、塗布外観が悪化する場合、ハードコート層等の表面機能層との密着性が低下する可能性が懸念される場合がある。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する第1塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、架橋剤の合計量は、通常1〜50重量%の範囲、より好ましくは5〜40重量%の範囲、さらに好ましくは10〜30重量%の範囲である。これらの範囲より外れる場合は、ハードコート層等の表面機能層との密着性が低下する可能性が懸念される場合、塗布外観が悪化する場合、ハードコート層等の表面機能層形成後の干渉ムラにより、視認性が良くない場合がある。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する第1塗布層に用いられうる縮合多環式芳香族を有する化合物は、その化合物中で縮合多環式芳香族の占める割合は、好ましくは5〜80重量%の範囲であり、より好ましくは10〜60重量%の範囲である。また、第1塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、縮合多環式芳香族を有する化合物の含有量は、通常90重量%以下の範囲、好ましくは10〜80重量%の範囲、さらに好ましくは20〜70重量%の範囲である。これらの範囲で使用することにより、塗布層の屈折率の調整が容易となり、ハードコート層等の表面機能層を形成後の干渉ムラの軽減がしやすくなる。なお、縮合多環式芳香族の割合は、例えば、適当な溶剤または温水で塗布層を溶解抽出し、クロマトグラフィーで分取し、NMRやIRで構造を解析、さらに熱分解GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)や光学的な分析等で解析することにより求めることができる。
塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の膜厚は、通常0.001〜1μm、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.02〜0.2μmの範囲である。膜厚が上記範囲より外れる場合は、塗布層のブロッキングが悪化する場合や塗布外観が悪化する場合がある。
本発明のフィルムにおいて、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スプレーコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜270℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本発明における第1塗布層は干渉ムラ等をより高度に抑制するために、屈折率を基材のポリエステルフィルムと同等付近に調整したものである。例えば、本発明も含め、一般的な2軸延伸のポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、その屈折率は1.65程度であり、その場合、第1塗布層の屈折率は、好ましくは1.63〜1.67、より好ましくは1.64〜1.66であり、最適なのは1.65である。
本発明の範囲においては、塗布層の屈折率と塗布層の絶対反射率の間には関連性があり、高い屈折率の場合は高い反射率となる。すなわち、本発明における第1塗布層の絶対反射率は、その最小値が400〜800nmの任意の波長において、通常5.5〜6.5%の範囲、好ましくは5.6〜6.4%の範囲、さらに好ましくは5.7〜6.3%の範囲である。反射率がこの範囲から外れた場合、塗布層上に基材のポリエステルフィルムと同等付近の高い屈折率を有するハードコート等の表面機能層を設けた際に干渉ムラが強くなり、視認性が低下する場合がある。
ポリエステルフィルムの第1塗布層とは反対側の面を180℃で10分間熱処理したときに表面へのエステル環状三量体の析出量は少ないほど、各工程における汚染や透明性の悪化度合いが小さいため好ましく、1.0mg/m以下であることが必須であり、好ましくは0.5mg/m以下、さらに好ましくは0.3mg/m以下の範囲である。
本発明のポリエステルフィルムには、第1塗布層の上にハードコート層等の表面機能層を設けるのが一般的である。ハードコート層に使用される材料としては、特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物等の硬化物が挙げられる。これらのうち生産性及び硬度の両立の観点より、活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物の重合硬化物であることが特に好ましい。
活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物は特に限定されるものでない。例えば、公知の活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートを一種類以上混合したもの、活性エネルギー線硬化性ハードコート用樹脂材として市販されているもの、あるいはこれら以外に本実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。
活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリール(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性の二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ) アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレート等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物に含まれるその他の成分は特に限定されるものではない。例えば、無機又は有機の微粒子、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等が挙げられる。また、ウェットコーティング法において成膜後乾燥させる場合には、任意の量の溶媒を添加することができる。
ハードコート層の形成方法は、有機材料を用いた場合にはロールコート法、ダイコート法等の一般的なウェットコート法が採用される。形成されたハードコート層には必要に応じて加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射を施し、硬化反応を行うことができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)ポリエステル原料中の含有エステル環状三量体量の測定方法
ポリエステル原料を約200mg秤量し、クロロホルム/ヘキサフルオロ−2−イソプロパノールの比率3:2の混合溶媒2mlに溶解させる。溶解後、クロロホルム20mlを追加した後、メタノール10mlを少しずつ加える。沈殿物を濾過により除去し、さらに沈殿物をクロロホルム/メタノールの比率2:1の混合溶媒で洗浄し、濾液・洗浄液を回収し、エバポレーターにより濃縮、その後、乾固させる。乾固物をDMF(ジメチルホルムアミド)25mlに溶解後、この溶液を液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製:LC−7A 移動相A:アセトニトリル、移動相B:2%酢酸水溶液、カラム:三菱化学(株)製『MCI GEL ODS 1HU』、カラム温度:40℃、流速:1ml/分、検出波長:254nm)に供給して、DMF中のエステル環状三量体量を求め、この値をクロロホルム/ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール混合溶媒に溶解させたポリエステル原料量で割って、含有エステル環状三量体量(重量%)とした。DMF中のエステル環状三量体量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。なお、標準試料の作成は、予め分取したエステル環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。
(3)平均粒径の測定方法
TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
(4)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、塗布層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
(5)ポリエステルフィルムにおける第1塗布層表面からの絶対反射率の評価方法
あらかじめ、ポリエステルフィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT―50)を貼り、分光光度計(日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V−570 および自動絶対反射率測定装置 ARM−500N)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンス Fast、データ取区間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minで塗布層面を波長範囲400〜800nmの絶対反射率を測定し、その最小値における反射率を評価した。
(6)干渉ムラの評価方法
ポリエステルフィルムの第1塗布層側に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート60重量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート15重量部、五酸化アンチモン25重量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)1重量部、メチルエチルケトン200重量部の混合塗液を乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、紫外線を照射して硬化させハードコート層を形成した。得られたフィルムを3波長域型蛍光灯下にて、目視で第1塗布層側の干渉ムラを観察し、干渉ムラが確認できないものを◎、薄くまばらな干渉ムラが確認されるものを○、薄いが線状の干渉ムラが確認できるものを△、明瞭な干渉ムラが確認されるものを×とした。
(7)第1塗布層の密着性の評価方法
上記(6)の評価と同様にハードコート層を形成した。得られたフィルムに対して、60℃、90%RHの環境下で50時間後、10×10のクロスカットをして、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後の剥離面を観察し、剥離面積が5%未満ならば◎、5%以上10%未満なら○、10%以上50%未満なら△、50%以上ならば×とした。
(8)第2塗布層表面に析出するエステル環状三量体(エチレンテレフタレート環状三量体)析出量の測定方法
ポリエステルフィルムを空気中、180℃で10分間加熱する。その後、熱処理をした当該フィルムを上部が開いている縦横10cm、高さ3cmになるように、測定面(第2塗布層)を内面として箱形の形状を作成する。次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF(ジメチルホルムアミド)4mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収し、液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製:LC−7A 移動相A:アセトニトリル、移動相B:2%酢酸水溶液、カラム:三菱化学(株)製『MCI GEL ODS 1HU』、カラム温度:40℃、流速:1ml/分、検出波長:254nm)に供給して、DMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m)とした。DMF中のエステル環状三量体量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。なお、標準試料の作成は、予め分取したエステル環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、エチルアシッドフォスフェートを生成ポリエステルに対して30ppm、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して100ppmを窒素雰囲気下、260℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、テトラブチルチタネートを生成ポリエステルに対して50ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.3kPaまで減圧し、さらに80分、溶融重縮合させ、極限粘度0.63のポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して900ppmを窒素雰囲気下、225℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、正リン酸を生成ポリエステルに対して3500ppm、二酸化ゲルマニウムを生成ポリエステルに対して70ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.4kPaまで減圧し、さらに85分、溶融重縮合させ、極限粘度0.64のポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行い、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとし、反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.65、エステル環状三量体(エチレンテレフタレート環状三量体)の含有量が0.97重量%のポリエステル(C)を得た。
<ポリエステル(D)の製造方法>
ポリエステル(C)を、予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.75、エステル環状三量体の含有量が0.46重量%のポリエステル(D)を得た。
<ポリエステル(E)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、溶融重合前に平均粒径2μmのシリカ粒子を0.3重量部添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(E)を得た。
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・金属酸化物:(I) 平均粒径15nmの酸化チタン粒子
・オキサゾリン化合物:(IIA)
オキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマー エポクロスWS−500(株式会社日本触媒製、1−メトキシ−2−プロパノール溶剤約38重量%を含有するタイプ)
・エポキシ化合物:(IIB) ポリグリセロールポリグリシジルエーテル。
・イソシアネート系化合物:(IIC)
ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー158重量部、メトキシポリエチレングリコール(OH価=81mgKOH/g)26重量部、ジエチルジエチレングリコール27.8重量部、ジオクチルチンラウレート0.001重量部を85℃で反応させた。その後、放冷し、メチルエチルケトンオキシム66重量部を滴下し、反応させた。引き続き、1,6−ヘキサメチレンジオール系ポリカーボネートジオール(OH価=56mgKOH/g)115重量部、トリメチロールプロパン(OH価=1254mgKOH/g)1.2重量部、ジメチロールプロピオン酸(OH価=837mgKOH/g)7.6重量部、ジメチルジプロピレングリコール50重量部を加え、攪拌後、イソホロンジイソシアネート40.3重量部を加え、反応させた。放冷後、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー8.2重量部を添加し、攪拌後、トリエチルアミン5.8重量部を添加し、攪拌した。この混合液に水450重量部を滴下し、15%のジエチレントリアミン水溶液21重量部を滴下・攪拌し得られたブロックイソシアネート系化合物。
・メラミン化合物:(IID) ヘキサメトキシメチルメラミン
・縮合多環式芳香族を有するポリエステル樹脂:(IIIA)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(mol%)
・ポリエステル樹脂(IIIB)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・ウレタン樹脂(IIIC)
カルボン酸水分散型ポリエステルポリウレタン樹脂である、ハイドランAP−40(DIC株式会社製)
・4級アンモニウム塩化合物:(IVA)
主鎖にピロリジニウム環を有する下記組成で重合したポリマー
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/ジメチルアクリルアミド/N−メチロールアクリルアミド=90/5/5(mol%)。数平均分子量約30000。
・ポリビニルアルコール樹脂:(IVB)
ケン化度88モル%、重合度500のポリビニルアルコール。
・粒子:(VA) 平均粒径0.07μmのシリカ粒子
・粒子:(VB) 平均粒径0.02μmのアルミナ変性シリカ粒子
実施例1:
ポリエステル(D)、(E)をそれぞれ94%、6%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:6:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す水系の塗布液A1を塗布し(第1塗布層の形成)、反対面に下記表2に示す水系の塗布液B1を塗布し(第2塗布層の形成)、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗布層の膜厚(乾燥後)が0.10μmの第1塗布層、0.05μmの第2塗布層を有する厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの第1塗布層の絶対反射率を測定したところ、最小値は5.6%であり、ハードコート層を形成後のフィルムには強い干渉ムラはなく、密着性も良好であった。また、エステル環状三量体の析出量も少なく良好であった。このフィルムの特性を下記表3に示す。
実施例2〜39:
実施例1において、塗布剤組成を表1または表2に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表3または表4に示すとおり、塗布層の密着性や干渉ムラレベルは良好であった。
比較例1〜3:
実施例1において、塗布剤組成を表1または表2に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、下記表5に示すとおり、密着性が劣る場合、明瞭な干渉ムラが観察できる場合が見られた。
比較例4:
実施例1において、第1塗布層を設けないこと以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、下記表5に示すとおり、密着性が劣るものであった。
比較例5:
ポリエステル(C)、(E)をそれぞれ94%、6%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:6:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す水系の塗布液A3を塗布し(第1塗布層の形成)、反対面に下記表2に示す水系の塗布液C3を塗布し(第2塗布層の形成)、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗布層の膜厚(乾燥後)が0.03μmの第1塗布層、0.05μmの第2塗布層を有する厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムのエステル環状三量体の析出量は、下表5に示すとおり、多いものであり、工程の汚染や、加熱後の白化による視認性の悪化が懸念されるものであった。
比較例6:
比較例5において、第2塗布層を設けないこと以外は比較例5と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、下記表5に示すとおり、エステル環状三量体の析出量が多いものであった。
Figure 2016026933
Figure 2016026933
Figure 2016026933
Figure 2016026933
Figure 2016026933
本発明のフィルムは、例えば、タッチパネル等の透明電極等、ハードコート層等の表面機能層を形成後に、外光反射による干渉ムラの軽減と加熱によるエステル環状三量体の析出量の低減が求められる用途に好適に利用することができる。

Claims (4)

  1. 透明導電のパターニングを不可視化する用途に用いられる積層ポリエステルフィルムであり、金属酸化物および架橋剤を含有する塗布液から形成された塗布層をポリエステルフィルムの一方の面に有し、もう一方の面を180℃で10分間熱処理したときの表面へのエステル環状三量体の析出量が1.0mg/m以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
  2. 金属酸化物が酸化チタンまたは酸化ジルコニウムである請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
  3. 塗布液中に縮合多環式芳香族を有する化合物を含有する請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  4. 180℃で10分間熱処理したときに表面へのエステル環状三量体の析出量が3.0mg/m以下である面に塗布層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
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