JP2016025067A - ナトリウム二次電池の充放電方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Na4Ni3−xMx(PO4)2P2O7を正極活物質に用いるナトリウム二次電池の耐久性を改善する。【解決手段】ナトリウム二次電池の充放電方法は、一般式:Na4Ni3−xMx(PO4)2P2O7、(式中、MはCo、Mn、Fe、Mg、AlおよびCrから成る群から選択された少なくとも1種類の元素を示し、xは0≦x<3を満たす)で表される組成を有する正極活物質を備えたナトリウム二次電池の充放電方法であって、放電時の放電終端電位を3.5V以上、4.4V以下とする。【選択図】図1

Description

本発明は、ナトリウム二次電池の充放電方法に関する。
電気エネルギーを蓄え、効率的に使用する手段として二次電池が知られている。二次電池の中でも、リチウム二次電池は、電圧やエネルギー密度が高くメモリー効果が少ないなどの特徴を有していることから、自動車や携帯機器など様々な分野で利用されると共に、更なる性能向上の研究開発が進められている。
一方で、リチウム二次電池の普及に伴い、リチウムの価格の高騰や、リチウムの埋蔵量に対する懸念などの問題が出てきている。そのため、埋蔵量が豊富で、価格の低廉なナトリウムをリチウムの代わりに用いたナトリウム二次電池の研究開発が行われている。例えば、ナトリウム電池用正極活物質およびその製造方法が特許文献1に開示されている。特許文献1によれば、Na(POで表されるナトリウム電池用正極活物質は4.6〜4.9Vの高電位領域で作動する。
国際公開第2013/031331号
しかし、特許文献1に記載の正極活物質であるNaNi(POに関し、充放電サイクル試験を行ったところ、耐久性に問題があることを発明者らは今回新たに見出した。NaNi3−x(POは高電位領域で作動する正極活物質として非常に有望であり、ナトリウム二次電池の耐久性を改善することが可能な技術が望まれる。
本発明によれば、一般式:NaNi3−x(PO、(式中、MはCo、Mn、Fe、Mg、AlおよびCrから成る群から選択された少なくとも1種類の元素を示し、xは0≦x<3を満たす)で表される組成を有する正極活物質を備えたナトリウム二次電池の充放電方法であって、放電時の放電終端電位を3.5V以上、4.4V以下とする、ナトリウム二次電池の充放電方法が提供される。
本発明によれば、NaNi3−x(PO(M:Co、Mn、Fe、Mg、AlおよびCrから成る群から選択された少なくとも1種類の元素、x:0≦x<3)を正極活物質に用いるナトリウム二次電池の耐久性を改善することができる。
図1は、ナトリウム二次電池の構成例を示す概略側面図である。 図2は、実施例に係る正極活物質のサイクリックボルタモグラムである。 図3は、実施例に係るナトリウム二次電池の耐久試験の一例を示すフローチャートである。 図4は、実施例に係る容量維持率と放電終端電圧との関係を示すグラフである。
本実施の形態において、一般式:NaNi3−x(PO、(式中、MはCo、Mn、Fe、Mg、AlおよびCrから成る群から選択された少なくとも1種類の元素を示し、xは0≦x<3を満たす)で表される組成を有する正極活物質を備えたナトリウム二次電池の充放電方法であって、放電時の放電終端電位を(ナトリウム金属対極(Na+/Na)に対して)3.5V以上、4.4V以下とする、ナトリウム二次電池の充放電方法、が提供される。なお、本文中の電位は、全てナトリウム金属対極(Na+/Na)に対する値で記載する。
発明者らは、上記のNaNi3−x(POで表される組成を有する正極活物質を備えたナトリウム二次電池の充放電方法において、放電時の下限電位、すなわち放電終端電位を2.0Vとして充放電サイクル試験を行ったところ、放電容量の著しい低下が起こるという問題点を見出した。更に、このような放電容量の著しい低下が起こるという現象は、NaCo(POで表される組成を有する正極活物質を備えたナトリウム二次電池の充放電方法では起きないことを発見した。そのため、発明者らは、鋭意研究を行ったところ、NaNi3−x(POで表される組成を有する正極活物質を備えたナトリウム二次電池において、放電時の放電終端電位の範囲を3.5V以上、4.4V以下にすることで放電容量の低下を抑制できることを発見した。言い換えると、上記正極活物質中の所定元素がNi3−xの場合とCoの場合とで放電容量の劣化が大きく相違するという、物の構造に基づく効果の予測が困難な正極活物質の分野において、所定の元素としてNi3−xを選択し、かつ、放電時の放電終端電位の範囲として3.5V以上、4.4V以下の範囲を選択することにより、放電容量の劣化を抑制できるという、顕著な効果を得ることができた。上記正極活物質中の所定元素としてNiを含むNi3−xを用いることは、高電位領域で作動する正極活物質を得ることができ好ましい。
したがって、NaNi3−x(PO(M:Co、Mn、Fe、Mg、AlおよびCrから成る群から選択された少なくとも1種類の元素、x:0≦x<3)で表される組成を有する正極活物質を備えたナトリウム二次電池の充放電方法において、放電時の放電終端電位を2.0Vとすると放電容量の著しい低下が起こるが、放電時の放電終端電位の範囲を3.5V以上、4.4V以下にすることにより、同様に、充放電サイクル試験において放電容量の低下を抑制することができる。すなわち、その充放電方法を採用することにより、ナトリウム二次電池の劣化を抑え、耐久性を改善することができる。
放電終端電位の範囲が3.5V以上、4.4V以下であるのは、放電終端電位が低過ぎると、放電容量の低下を抑制できず耐久性の改善が困難となり、高過ぎると、Naイオンが正極に戻りきらず容量を十分に使いきれなくなるからである。ここで、電位の下限は3.6Vが好ましく、3.7Vがより好ましい。電位の上限は、4.3Vが好ましく、4.0Vがより好ましい。
なお、充電時の上限電位、すなわち充電終端電位の範囲は、充電終端電位が低過ぎると、Naイオンが正極から出きらず容量を十分に使いきれなくなり、高過ぎると、過充電により正極の材料や電解液が酸化し劣化してしまうことから、5.0V以上、5.2V以下が好ましい。言い換えれば、NaNi3−x(POで表される組成を有する正極活物質を用いると、充電終端電位の上限として4.9Vを超えた電位範囲でナトリウム二次電池を動作させることができる。
また、xの範囲が0≦x<3であるのは、Niを含んだ正極活物質に特有の現象であること、Niを含んだ正極活物質の特性の改善であることなどから、Niが含まれる必要があるからである。ここで、Niが多いほど効果が顕著であることから、xの好ましい範囲は0≦x≦2.5であり、より好ましい範囲は0≦x≦2.0であり、更に好ましい範囲は0≦x≦1.5である。更により好ましい範囲は0≦x≦1.0である。
充放電方法において放電時の放電終端電位を3.5V以上、4.4V以下の範囲に変更することにより、ナトリウム二次電池の耐久性を向上できる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
まず、一般的に考え得る理由について考察する。一般に、電位が高いと電池内の構成要素は酸化され易い状態にある。上記のNaNi(POは、正極活物質として5.0V前後という極めて高電位の領域で作動する。すなわち、正極の電位が非常に高いので、非水電解液(有機電解液)や正極集電体などの正極に接している構成要素は非常に酸化され易い状態になる。したがって、非水電解液や正極集電体が酸化分解を起こす可能性がある。それゆえ、充放電サイクル試験で充放電が繰り返し行われると、有機電解液や正極集電体の劣化が進み、放電容量が低下すると考えられる。もしこのような推定劣化モードが正しいならば、充電時の充電終端電位を下げて、酸化され易さを低減する方法で対応すべきであり、放電時の放電終端電位を変化させても、酸化され易さには直接的に効果がないはずである。
しかし、本実施の形態では、放電時の放電終端電位を上げることで、放電容量の劣化を抑制できる。すなわち、上記の推定劣化モードからは導き出せない方法で、予測できない効果を得ている。したがって、上記推定モードとは異なる劣化が起きていると考えられる。その劣化は、ナトリウム二次電池を組んだときのNiの電位と放電終端電位との関係に原因があると考えられる。上記の正極活物質のNiはレドックス元素、すなわち電子の授受を行う元素として機能する。ナトリウム二次電池を組んだときのNiイオンの価数は2価であり、充電時に酸化されて3価または3価より大きな価数に変化し、放電時に還元されて2価に戻ると考えられる。また、ナトリウム二次電池を組んだときのNiの電位は、2.5〜2.7Vの範囲であり、放電時の放電終端電位の2.0Vよりも高い。したがって、Niは、放電の度に安定な電位よりも低い電位、すなわち還元され易い電位に曝されることになる。そのため、放電の度にNiイオンの一部が還元され、その価数が2価より小さな価数に変化し、その結果、正極活物質の結晶構造が劣化していると考えられる。以上のような理由から、放電終端電位をNiの安定な電位、すなわち2.5〜2.7V以上にすることで、Niイオンの過剰な還元を抑制でき、正極活物質の結晶構造の劣化を抑えられると考えられる。その結果として放電容量の低下を抑えることができると考えられる。すなわち、放電終端電位をNiの安定な電位以上にすることが重要と考えられる。
ここで、放電終端電位を上昇させることは、過放電を防止しているようにも見えるため、上記の放電容量の劣化は過放電の影響とも考え得る。しかし、上記の放電容量の劣化は、NaNi3−x(POを正極活物質に用いている場合に発生するが、NaCo(POを正極活物質に用いている場合には発生しない。すなわち、上記の放電容量の劣化はレドックス元素がNiの場合に特有の現象と考えられる。したがって、上記の放電容量の劣化に対する、過放電の影響は少ないと考えられる。なお、上記の放電容量の劣化がNaCo(POを正極活物質に用いている場合には発生しない理由としては、ナトリウム二次電池を組んだときのNaCo(PO内のCoの作動電位がNaNi(PO内のNiの作動電位よりも低い傾向にあることから、Co2+の耐還元電位はNi2+の耐還元電位より強いと推察される。従って、放電終端電位を2.0Vにした場合も、Co2+が還元に強いため、放電容量の低下は認められなかったと考えられる。
ところで、上記の正極活物質は、Niの化合物、または、NiおよびMのリン化物を表面に有することが好ましい。このようなリン化物は、電解液の分解に対して活性が低いと考えられる。そのため、正極活物質における電解液の分解に対して活性が高い箇所と電解液との接触を防止し、電解液の分解(劣化)を抑制できる。また、このようなリン化物は電子伝導性が良好である。そのため、正極活物質の電子伝導性が向上し、充放電効率や容量維持率等を改善することができる。そのようなリン化物としては、Niのリン化物、Coのリン化物、Mnのリン化物、Feのリン化物およびCrのリン化物が例示される。
また、上記の正極活物質が、NaNi(PO、(すなわち、x=0)で表されることが好ましい。NaNi(POは、正極活物質として極めて高電子伝導性を有し、4.1〜5.1Vという極めて高電位の領域で作動することができる。
以下、本発明の実施の形態に係るナトリウム二次電池について具体的に説明する。
図1は、本実施の形態に係るナトリウム二次電池の構成例を示す概略側面図である。ナトリウム二次電池1は、充放電可能なセルであり、正極11と、負極12と、正極11と負極12との間に介在する電解質層13とを備えている。電解質層13は、電解質を含み、更にセパレータを含み得る。正極11は、正極合剤を含む正極活物質層14と、正極活物質層14の集電を行う正極集電体16とを備え、更に正極集電体16に接続された正極リード(図示されず)を備えている。負極12は、負極合剤を含む負極活物質層15と、負極活物質層15の集電を行う負極集電体17とを備え、更に負極集電体17に接続された負極リード(図示されず)を備えている。なお、図1の例では、ナトリウム二次電池1は積層型であるが、本実施の形態はその例に限定されるものではなく、ナトリウム二次電池1は巻回型であってもよい。以下、ナトリウム二次電池1の各構成について説明する。
(正極)
正極11は、上記のように正極活物質層14と正極集電体16とを備えている。
(正極活物質層)
正極活物質層14は、正極活物質を含む正極合剤を備えている。
正極活物質は、上記のように、一般式:NaNi3−x(PO、(0≦x<3)で表される組成を有している。ここで、Mは、Co、Mn、Fe、Mg、AlおよびCrから成る群から選択された少なくとも1種類の元素である。特に、充電前の状態において、2価である元素が好ましい。充電前の状態で2価である元素は、充電時に3価以上の高酸化状態となり、高電位で作動が可能である。特に、CoおよびMnは、Niと同様の結晶構造を形成し得るのでより好ましい。MがCoおよびMnの少なくとも一方の場合、充放電時における結晶構造の可逆性と安定性を向上することができる。それにより、放電容量の劣化を抑え、耐久性を向上できる。
正極活物質は、Niのリン化物、または、NiおよびMのリン化物を表面に有していてもよい。そのリン化物は、例えば正極活物質の表面に被覆層を設け、その被覆層に含まれていてもよい。リン化物としては、Niのリン化物、Coのリン化物、Mnのリン化物、Feのリン化物およびCrのリン化物が例示される。特に、NiP、NiPおよびNiPのNiのリン化物が好ましく、NiPが更に好ましい。被覆層に含まれるNiのリン化物、または、NiおよびMのリン化物の割合は、特に限定されないが、60wt%以上が好ましく、70wt%以上がより好ましく、80wt%以上が更に好ましい。リン化物の含有量が上記範囲にあることで、電解液の分解をより効果的に抑制することができる。リン化物の含有量は、例えばエネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDXなど)を用いて測定できる。また、リン化物は粒子状であってもよい。その場合、平均粒径は、1〜1000nmが好ましく、1〜100nmがより好ましく、1〜50nmが更に好ましい。リン化物の粒子の特定および平均粒径の算出は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)とそれに付属のエネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDXなど)を用いて測定できる。被覆層は電子導電性を向上させる材料、例えば炭素成分を含んでいてもよい。炭素成分の割合は、特に限定されないが、リン化物100重量部に対して、炭素成分は1重量部以上が好ましく、10〜1000重量部がより好ましく、50〜100重量部が更に好ましい。炭素成分の含有量が多過ぎるとイオン導電性が低下する可能性がある。被覆層の平均厚さは、特に限定されないが0.5〜100nmが好ましく、1〜50nmがより好ましく、1〜10nmが更に好ましい。平均厚さが厚過ぎるとイオン導電性が低下し、薄過ぎると電解液の分解を十分に抑制できない可能性がある。被覆層は、正極活物質の表面に存在していてもよい。正極活物質本体に対する被覆率は、10%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。被覆率は、100%であってもよい。被覆率は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定できる。リン化物の存在は、X線回折装置(XRD)で、リン化物のピーク強度から確認することができる。
正極合剤は、上記の正極活物質を含み、他の成分、例えば結着剤、導電助剤および電解質などを更に含んでもよい。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが例示される。導電助剤としては、VGCF(気相成長法炭素繊維、Vapor Grown Carbon Fiber)、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、活性炭および黒鉛のような炭素材並びに金属材などが例示される。正極合剤100質量%中の各構成材の割合は、好適には、正極活物質が25〜90質量%の範囲、固体電解質が10〜75質量%の範囲、導電助剤が0〜10質量%の範囲および結着剤が0〜10質量%の範囲である。
(正極活物質の製造方法)
正極活物質を製造する方法は特に限定されないが、好ましい方法として、以下に説明する製造方法が挙げられる。すなわち、少なくとも、Na源であるNa含有化合物、Ni源であるNi含有化合物、M源であるM含有化合物およびP源であるP含有化合物を含む原料混合物を、大気雰囲気下、150〜500℃で焼成する仮焼成工程と、仮焼成後、得られた仮焼成物を、大気雰囲気下、500〜800℃で焼成する本焼成工程と、を含む正極活物質の製造方法である。これにより、NaNi3−x(PO、(M:Co、Mn、Fe、Mg、AlおよびCrから成る群から選択された少なくとも1種類の元素、xは0≦x<3)で表される組成を有する正極活物質を得ることができる。
上記のNa含有化合物、Ni含有化合物、M含有化合物およびP含有化合物は特に限定されず、適宜選択することができる。各化合物は、1種を単独で用いてもよいし、或いは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、1つの化合物が、Na、Ni、MおよびPのうちの2種以上を含むものであってもよい。具体的には、Na含有化合物としては、NaCO、NaO、Na、NaPO、NaおよびCHCOONaなどが例示される。Ni含有化合物としては、(CHCOO)Ni、NiCOおよびNiOなどが例示される。M含有化合物のうち、Co含有化合物としては、CoCO、(CHCOO)Co、CoOおよびCoなど、Mn含有化合物としては、MnCOおよび(CHCOO)Mnなど、Fe含有化合物としては、FeO、FeおよびFe(NOなど、Mg含有化合物としては、Mg(NO、MgOおよびMgCOなど、Al含有化合物としては、Al(NO、AlおよびAl(OH)などCr含有化合物としては、CrおよびCr(NO)などがそれぞれ例示される。P含有化合物としては、NHPO、(NHHPO、HPO、NaおよびNaPOなどが例示される。ただし、原料混合物の調製方法は特に限定されず、任意の混合方法、攪拌方法等を採用することができる。
上記の製造方法の詳細については、特許文献1のナトリウム電池用正極活物質の製造方法の項に記載された内容と同様とすることができる。
正極活物質がNiのリン化物、または、NiおよびMのリン化物を表面に有する場合には、上記の製造方法で製造された正極活物質を前駆体物質として、その前駆体物質を還元剤と共に焼成する還元工程を更に追加する。それにより、その前駆体物質の表面に存在するNi、または、NiおよびMを還元して、Niのリン化物、または、NiおよびMのリン化物とすることができる。ただし、その場合、前駆体物質の製造時の仮焼成工程を省略してもよい。
還元剤としては、前駆体物質の表面に存在するNi、または、NiおよびMを還元できれば特に限定されず、有機物および無機物の還元剤を用いることができるが、有機物の還元剤が好ましい。前駆体物質と共に有機物の還元剤を焼成することにより、有機物を炭化させることができる。それにより、炭化物成分を含む被覆層を前駆体物質の表面に形成することができる。
有機物の還元剤としては、アルコール類(メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールなど)、アスコルビン酸、エチレングリコール、グルタチオン、有機酸類(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸など)、還元性糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオースなど)および糖アルコール類(ソルビトールなど)などが例示される。無機物の還元剤としては、一酸化炭素およびカーボン材料が例示される。
前駆体物質と還元剤との比率(mol比)としては、前駆体物質の表面に存在するNi、または、NiおよびMを還元してNiのリン化物、または、NiおよびMのリン化物を生成できる程度であれば特に限定はない。例えば、還元剤が有機物の還元剤である場合、前駆体物質と還元剤との比率(mol比)としては、Ni、または、NiおよびMが1molに対して、還元剤に含まれる炭素が10mmol〜50molの範囲内が好ましく、100mmol〜50molの範囲内がより好ましく、300mmol〜20molの範囲内が更に好ましい。また、例えば、還元剤がスクロースなどの二糖類である場合、前駆体物質と還元剤との比率(重量比)としては、前駆体物質の重量1gに対して、還元剤が1mg〜1gの範囲内が好ましく、10mg〜1gの範囲内がより好ましく、10mg〜0.5gの範囲内がより好ましい。前駆体物質に対する還元剤の比率が少ないと、被覆層を形成することが困難となり、比率が多いと正極活物質の組成を制御することが困難となる。
還元工程において、前駆体物質および還元剤を焼成するときの焼成雰囲気としては、不活性ガス雰囲気が例示される。また、焼成温度としては、特に限定されないが、例えば450〜800℃の範囲内が好ましく、500〜750℃の範囲内がより好ましく、550〜700℃の範囲内が更に好ましい。焼成温度が低すぎると還元反応が十分に進まず、高過ぎると得られる正極活物質が変質する可能性がある。
(正極集電体)
正極集電体16は、上記の正極活物質層14の集電を行う機能を有する。正極集電体16の材料としては、所望の電子導電性を有し、電池内環境下においてナトリウムイオンと合金反応を起こさない材料であれば、その材料や構造、形状に特に制限はない。正極集電体16の材料としては、SUS、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタンおよび銅などの金属材料、カーボンペーパーおよびカーボンファイバーなどの炭素材料、窒化チタンなどの高電子伝導性セラミックス材料などが例示される。正極集電体16の形状としては、箔状、板状およびメッシュ状などが例示される。また、電池ケースが正極集電体16としての機能を兼ね備えていてもよい。
(負極)
負極12は、上記のように負極活物質層15と負極集電体17とを備えている。
(負極活物質層)
負極活物質層15は、負極活物質を含む負極合剤を備えている。
負極活物質は、ナトリウムイオンを放出・取り込み可能な物質であり、例えば、ハードカーボン、ナトリウム金属およびスズなどが例示される。
また、負極合剤は、上記の負極活物質を含み、他の成分、例えば結着剤、導電助剤および電解質などを更に含んでもよい。負極合剤における結着剤、導電助剤および電解質については、上述した正極合剤における結着剤、導電助剤および電解質を用いることができる。
(負極集電体)
負極集電体17は、上記の負極活物質層15の集電を行う機能を有する。負極集電体17の材料としては、所望の電子導電性を有し、電池内環境下においてナトリウムイオンと合金反応を起こさない材料であれば、その材料や構造、形状に特に制限はない。負極集電体17の材料としては、銅、SUS、ニッケルおよびアルミニウムなどの金属材料等が例示される。負極集電体17の形状としては、箔状、板状およびメッシュ状などが例示される。また、電池ケースが負極集電体17としての機能を兼ね備えていてもよい。
なお、正極活物質層14および負極活物質層15は、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法およびスクリーン印刷法などの任意の塗布方法により、各材料を含むスラリーを正極集電体16および負極集電体17にそれぞれ塗布し、乾燥させ、必要に応じて、圧延することで電極活物質層を形成することができる。
(電解質層)
電解質層13の電解質としては、ナトリウムイオン伝導性を有していればよく、例えば、電解液やゲル状あるいは固体の電解質が挙げられる。ナトリウムイオン伝導性を有する電解液としては、例えば、ナトリウム塩を、非水溶媒に溶解した非水電解液が挙げられる。
非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)およびフルオロエチレンカーボネート(FEC)などの環状カーボネート、γ−ブチロラクトン(GBL)などの環状エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)などの鎖状カーボネートなどが例示される。これら非水溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、鎖状飽和炭化水素化合物の末端にCN基が結合したニトリル系化合物を、非水溶媒に混合して用いてもよい。ニトリル系化合物を非水溶媒に混合して非水電解液に添加することで、本実施の形態のナトリウム二次電池の正極活物質が作動するような高電位領域においても、分解しない安定な非水電解液を得ることができる。
ナトリウム塩としては、特に限定されず、例えば、NaPF、NaBF、NaClO、NaCFSO、(CFSONNa、NaN(FSO)およびNaC(CFSOなどが挙げられる。これらナトリウム塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。高電位領域においても安定なNaPFが特に好ましい。非水電解液において、ナトリウム塩の濃度は特に限定されない。
非水電解液は、ポリマーを添加してゲル化して用いることもできる。非水電解液のゲル化の方法としては、例えば、非水電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリマーを添加する方法が挙げられる。
電解質として電解液を用いる場合、正極11と負極12との間に、絶縁性多孔質体であるセパレータ(図示されず)を配置してもよい。その場合、セパレータに電解液を含浸させることで、正極と負極との絶縁を確保することができる。セパレータとしては、ポリエチレン多孔膜およびポリプロピレン多孔膜などの多孔膜並びに樹脂不織布およびガラス繊維不織布などの不織布等などが例示される。
正極11、電解質層13および負極12を収容する電池ケース(図示されず)としては、例えば、コイン型、平板型、円筒型およびラミネート型などの一般的な形状を有するものを用いることができる。正極11、電解質層13および負極12の順番で配置されている積層体を、繰り返し何層も重ねる構造を取る電池の場合には、安全性の観点から、正極11と負極12との間に上記のセパレータを備えることができる。また、各電極の集電体には、それぞれ外部との接続部となる端子を設けることができる。
本実施の形態では、NaNi3−x(PO(M:Co、Mn、Fe、Mg、AlおよびCrから成る群から選択された少なくとも1種類の元素;x:0≦x<3)の正極活物質を含むナトリウム二次電池において、その充放電における放電時の放電終端電位を3.5V以上、4.4V以下とすることにより、ナトリウム二次電池の劣化を抑制し耐久性を改善することができる。
以下、本発明の実施例を示す。以下の実施例は単に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
(1)正極活物質の評価
[実施例1]
(a)正極活物質の合成
出発原料として、Na源およびP源としてはNa(Na含有化合物かつP含有化合物)、Ni源としては(CHCOO)Ni(Ni含有化合物)、およびP源としてはNHPO(P含有化合物)を用いた。ゲル化剤としては、グリコール酸を用いた。まず、出発原料を、Na:Ni:P=4:3:4(mol比)となるように秤量し、グリコール酸と共に硝酸水溶液(酸性溶液)中に溶解し、80℃で撹拌した。次に、得られたゲルを回収し、大気雰囲気下、700℃で50時間焼成を行った。続いて、得られた粉末1gとスクロース0.5gとを秤量して混合した。得られた混合物をAr雰囲気下、700℃で5時間焼成を行った。このようにして、正極活物質NaNi(POを得た。
(b)正極の作製
正極材料として、得られたNaNi(PO(正極活物質)、炭素(導電助剤)、およびPVdF(結着剤)を用いた。分散剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。まず、正極材料を、NaNi(PO:炭素:PVdF=87:8:5(重量比)となるように秤量し、N−メチル−2−ピロリドン中に分散させてスラリーを調製した。次に、得られたスラリーをアルミニウム箔(正極集電体)上に塗布して乾燥、圧延することにより、正極集電体と正極活物質層とが積層した正極を得た。
(c)評価用セルの作製
上記の正極と、Na金属の負極と、非水電解液と、セパレータとを用いてコイン型の評価用セルを作製した。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを50:50(vol.%)で混合した混合溶媒に、ナトリウム塩(NaPF)を1.0mol/dm溶解させた非水電解液を用いた。セパレータとしては、ポリプロピレン多孔質膜とポリエチレン多孔質膜とポリプロピレン多孔質膜とがこの順序で積層した多孔質膜を用いた。
(d)評価方法
上記のようにして作製された評価用セルを用い、負極をNa対極として、サイクリックボルタンメトリー(CV)を以下に示す条件にて行った。結果を図2に示す。
条件:
電位範囲:3.9−5.1V
走査速度:0.01mV/s
温度:25℃
サイクリックボルタンメトリー(CV)の測定装置:VMP3(北斗電子)
(e)評価結果
図2は、サイクリックボルタンメトリー(CV)の測定結果(サイクリックボルタモグラム)を示している。縦軸は電流密度(mA/g)を示し、横軸はナトリウム対極に対する正極電位を示す。充電に相当する酸化反応の電流および放電に相当する還元反応の電流が4.1〜5.1Vという極めて高い電位の領域に観測され、酸化反応および還元反応のピークが4.4〜5.0Vという極めて高い電位の領域に確認された。すなわち、実施例1で作製された活物質が、ナトリウム二次電池の正極活物質として使用可能であり、且つ、超高電位で作動することが確認された。また、還元反応のピークが4.4V付近に存在していることから、放電反応を完全に進行させる(Naイオンを正極に戻し切る)ためには、正極電位を4.4V以下にすることが必要である。言い換えると、放電終端電位を4.4Vより高く設定すると、NaNi(PO正極の放電容量の一部を引き出すことができなくなるので、放電終端電位は4.4V以下にすることが好ましい。また、25℃という低温域で、上記のような高電位作動性を示した。
(2)ナトリウム二次電池の評価
[実施例2〜3]
(a−1)評価用セルの作製
上記の(1)、(c)の評価用セルの作製と同様の評価用セルを2個(それぞれ実施例2〜3用)作製した。
(b−1)評価方法
上記のようにして作製された評価用セルについて、耐久試験を行った。この耐久試験は、評価用セルに対して所定の充電終端電位への充電と所定の放電終端電位への放電とを所定の回数繰り返して実行する充放電サイクル試験である。ここでは、充電終端電位を一定とし、放電終端電位を変えて、複数サイクルの充放電を行った場合での放電容量(容量維持率)を比較し、放電終端電位と放電容量または容量維持率との関係を調べた。
耐久試験の条件を以下に示す。
条件:
電流密度:34mA/g(0.2C)
充電終端電位(上限電位):5.1V
放電終端電位(下限電位):3.5V、4.0V
サイクル数:100回
充放電時の電池電圧の測定装置:BTS2004(ナガノ)
耐久試験の手順(フローチャート)を図3に示す。図中、「i」は充放電サイクル数を示す。「N」は目標充放電サイクル数を示し、ここではN=100である。「E1」は充電時の正極電位を示す。「J1」は充電終端電位を示し、ここではJ1=5.1Vである。「E2」は放電時の正極電位を示す。「J2」は放電終端電位を示し、ここではJ2=3.5〜4.0Vである。図に示されるように、まず、ステップ100では、充放電サイクル数iが1サイクル目として認識される。ステップ101では、測定装置を用いた評価用セル(ナトリウム二次電池)への充電が行われる。充電は、正極電位E1が充電終端電位J1となるまで行われる(ステップ102)。充電の終了後、ステップ103では、測定装置を用いた評価用セルの放電が行われる(ステップ104)。放電は、正極電位E2が放電終端電位J2となるまで行われる。放電の終了後、ステップ105では、充放電サイクル数iが目標充放電サイクル数Nに達したか否かが判別される。充放電サイクル数iが目標充放電サイクル数Nに達していない場合、充放電サイクル数iを1つ増やして(ステップ106)、ステップ101に戻り、ステップ101〜105を実行する。充放電サイクル数iが目標充放電サイクル数Nに達した場合、プロセスは終了する。そして、1サイクル目の放電容量と、100サイクル目の放電容量を求め、(100サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100により、容量維持率(%)を求める。
[比較例1〜2]
(a−2)評価用セルの作製
上記の(2)、(a−1)の評価用セルの作製と同様の評価用セルを2個(それぞれ比較例1〜2用)。
(b−2)評価方法
放電終端電位(下限電位)を2.0V、3.0Vとした以外は、上記の(2)、(b−1)の評価方法と同様の評価方法を実行した。
[参考例1]
(a−3)評価用セルの作製
Ni源((CHCOO)Ni(Ni含有化合物))の代わりにCo源((CHCOO)Co(Co含有化合物))を用いた以外は、上記の(2)、(a−1)の評価用セルの作製と同様の評価用セルを作製した。この場合、正極活物質は、NaCo(POである。
(b−3)評価方法
放電終端電位(下限電位)を2.0V、充電終端電位(上限電位)を4.7Vとした以外は、上記の(2)、(b−1)の評価方法と同様の評価方法を実行した。
(c)評価結果
下記の表1は、耐久試験の結果を示している。表1を参照すると、比較例1〜2に示すように、放電終端電位が2.0V、3.0Vの場合、100サイクル目の容量維持率はそれぞれ3%、14%と極めて低い値となった。すなわち、劣化が激しく耐久性が低いことが判明した。一方、実施例2〜3に示すように、放電終端電位が3.5V〜4.0の場合、100サイクル目の容量維持率は47〜55%以上と高い値となった。すなわち、劣化が少なく耐久性が高いことが判明した。図4は、表1に基づく、放電終端電圧と100サイクル目の容量維持率との関係を示すグラフである。図4に示すように、耐久試験後の容量維持率は、放電終端電圧を3.5V以上にすることにより劇的に改善した。すなわち、容量維持率の低下を抑制する(耐久性を高める)観点から、放電終端電圧の下限としては3.5V以上が必要であることが分った。容量維持率の低下をより抑制する場合、例えば容量維持率を50%以上にする場合には3.6V以上が好ましく、例えば容量維持率を52%以上にする場合には、3.7V以上が好ましいことが分った。なお、参考例1に示すように、正極活物質がNaCo(POの場合、放電終端電圧を2.0Vにしても、100サイクル経過後の容量維持率は95%と高く、劣化の程度は小さいことが分った。
Figure 2016025067
1 ナトリウム二次電池
11 正極
12 負極
13 電解質層
14 正極活物質層
15 負極活物質層
16 正極集電体
17 負極集電体

Claims (4)

  1. 一般式:NaNi3−x(PO、(式中、MはCo、Mn、Fe、Mg、AlおよびCrから成る群から選択された少なくとも1種類の元素を示し、xは0≦x<3を満たす)で表される組成を有する正極活物質を備えたナトリウム二次電池の充放電方法であって、
    放電時の放電終端電位を3.5V以上、4.4V以下とする
    ナトリウム二次電池の充放電方法。
  2. 前記正極活物質は、Niのリン化物、または、Ni及びMのリン化物を表面に有する、請求項1に記載のナトリウム二次電池の充放電方法。
  3. 前記Mは、CoおよびMnのうちの少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載のナトリウム二次電池の充放電方法。
  4. 前記正極活物質が、NaNi(PO、で表される、請求項1または2に記載のナトリウム二次電池の充放電方法。
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