JP2016023932A - 未使用核燃料の処理システム及び未使用核燃料の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原子炉施設の使用済燃料プールに使用済核燃料集合体と共に貯蔵されている未使用核燃料集合体を、効率よく安全に解体及び除染することにより、原子炉施設から搬出した後、核燃料を低コストで再利用することのできる未使用核燃料の処理システム及び未使用核燃料の処理方法を提供する。【解決手段】未使用核燃料集合体を装荷し、前記未使用核燃料集合体の姿勢変更を補助する燃料保持架台301を含むと共に、前記未使用核燃料集合体を解体及び除染するのに用いる作業台500を有する未使用核燃料の処理システム、及び未使用核燃料集合体を装荷した燃料保持架台301を、鉛直状態から水平状態に姿勢を変更する姿勢変更工程、前記未使用核燃料集合体から燃料棒を引き抜く解体工程、及び前記燃料棒の表面を除染する除染工程を有する未使用核燃料の処理方法。【選択図】図8

Description

この発明は、未使用核燃料の処理システム及び未使用核燃料の処理方法に関し、特に、原子炉施設の使用済燃料プールに使用済核燃料集合体と共に貯蔵されている未使用核燃料の処理システム及び未使用核燃料の処理方法に関する。
原子炉の燃料としてはウランが主に使用されている。天然ウランに含まれる核分裂性のウラン235はわずか0.7%であり、残りの99%以上が核分裂を起こし難いウラン238である。
天然ウランに含有されるウラン235はわずかであるので、原子核に中性子を照射しても核分裂の連鎖反応が持続しない。したがって、世界で最も普及している軽水炉では、ウラン235の核分裂の連鎖反応を持続させるために、ウラン235の濃度を3〜5%まで高めた低濃縮ウランが使用され、また、ウラン235の核分裂で生成した中性子が原子核と反応し易くなるように、中性子の速度を減速させる減速材が使用されている。軽水炉では、この減速材として軽水が使用される。
低濃縮ウランを軽水炉で燃やすと、ウラン235が徐々に核分裂を起こしてエネルギーを出すのと同時に、核分裂の連鎖反応にほとんど寄与しないウラン238の一部がプルトニウム239に変化し、このプルトニウム239がウラン235と同様に核分裂を起こしてエネルギーを出す。
このようにしてウランの核分裂によってエネルギーが作り出されるが、実際に利用されるエネルギーは、天然ウランの潜在的なエネルギーの1%にも満たない。軽水炉で3〜4年間ウラン燃料が燃やされた後の使用済核燃料集合体には、ウラン235及びプルトニウム239がそれぞれ約1%残っているので、これらを使用済核燃料集合体から取り出して新たに核燃料として使用することができれば限りあるウラン資源の有効活用に繋がり、ウランの枯渇を先延ばしすることができる。こうした考えに基づいて軽水炉の核燃料サイクルの確立が進められている(図1参照)。
図1に示すように、原子力発電所で生じた使用済核燃料集合体は、核燃料として再利用するために、直接又は使用済燃料中間貯蔵施設を介して再処理工場へ輸送される。
再処理工場では、被覆管に燃料ペレットが収容された形態である燃料棒を細かくせん断し、これを溶解槽に入れて、被覆管に収容されていた燃料ペレットを硝酸で溶かし出し、被覆管等を取り除く。ここに、溶媒を加え、化学処理により核分裂生成物を分離し、さらにプルトニウムとウランとを分離する。
別々に取り出されたプルトニウムとウランとは精製装置で不純物が取り除かれ、硝酸成分を除く処理をした後に、再利用のための燃料原料製品として、一部のウラン燃料は転換加工施設へ、プルトニウム燃料と一部のウラン燃料とは混合されてMOX燃料加工施設へと輸送される。
転換加工施設へ輸送されたウラン燃料は、図1に示す核燃料サイクルに従ってウラン燃料が製造され、原子力発電所で再利用される。MOX燃料加工施設で製造されたMOX燃料もまた原子力発電所へ輸送されて、核燃料全体の3分の1程度の割合で原子炉に装填されて、再利用される。
ところで、原子力発電所等の原子炉施設で使用される核燃料は、一定の条件におかれると放射性物質が生じ、この放射性物質により環境汚染及び人体への被曝が生じるおそれがある。そのため、原子力事業者の安全に対する技術及び意識の向上への取り組みはもちろんのこと、原子力に関する国による厳重な管理がなされている。その最も基本的な法律として「原子力基本法」がある。ここでは原子力の研究、開発、及び利用を安全の確保を旨として推進すること、原子力規制委員会等の原子力を規制する組織を設置すること、原子炉の建設、核燃料物質の使用等を行うにあたり政府の規制に従わなければならないこと等を定めている。原子力に関する法律としては、この他にも核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(略称「原子炉等規制法」)、「放射線障害防止法」、及び「原子力災害対策特別措置法」等があり、いくつもの法令に基づいて原子力に関する安全規制が行われている。
これらの法令のうち、例えば「原子炉等規制法」及びこれに基づく規則では、核燃料物質及び核燃料物質によって汚染された物の運搬に関して、原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に従って保安のために必要な措置を講じなければならないことを定め、運搬に使用する容器について、予め原子力規制委員会の承認を受けること等を定めている。また、原子炉施設内にある設備の設置場所を変更する場合にも変更の許可の申請が必要であり、原子炉施設内で行われる作業については作業計画書等を提出して認可を得なければならない等、細部にわたって国による管理が行われている。
また、原子力発電所のような原子力の平和的利用においても、核物質及び技術の流用による核兵器保有国の増加防止(核拡散)、及び核物質の盗取防止(核物質防護)という点から、国際的に規制及び監視がなされている。すなわち、原子力発電所で核分裂性物質として使用されているウラン235及びプルトニウム239は、いずれもさらに処理をすることにより核兵器を製造することのできる核種であるので、このような核種を隠し持ってひそかに核兵器を製造しないように、また、このような核種やその製造技術が盗まれたりすることのないように、国際原子力機関(IAEA)により規制され、また、頻繁に査察が行われている。
例えば、原子力施設に存在する核物質の在庫量は、原子炉の運転、処理の実施、自然崩壊、核施設間の移動等で変動するが、これに伴う核物質の在庫量の増減は施設管理者により計量管理されることになっている。また、国が保有する核物質の在庫量及び原子力施設に関する情報をIAEAに逐次報告し、その報告の真偽がIAEAの査察官によって確認される。また、原子力発電所で生じた使用済核燃料集合体を再処理工場に輸送する際には、IAEAが定めた放射性物質安全輸送規則に基づく技術基準を満たしていることが国により厳しくチェックされる。
このように、安全面及び核兵器への転用の防止の観点から、原子力に関しては厳重な管理がなされているので、原子力事業者は原子力に関する法令を順守することに注力している。
ところで、原子炉施設の使用済燃料プールには、使用済核燃料集合体と共に未使用核燃料集合体も貯蔵されていることがある。使用済燃料プールは、使用済核燃料集合体が貯蔵されているため、使用済核燃料集合体に生成・付着している放射性のクラッドが剥離し水中に浮遊している。この放射性のクラッドが未使用核燃料集合体に付着している。そのため、原子力発電所の廃止措置等で未使用核燃料集合体を使用済燃料プールから取り出す場合には、未使用核燃料集合体であっても、使用済核燃料集合体と同様に、放射性物質で汚染された物質として取り扱う必要があり、原子力に関するいくつもの法令に基づいて規制及び管理がなされる。
したがって、放射性のクラッドが付着している未使用核燃料集合体は、使用済核燃料集合体と区別することなく、図1に示す軽水炉の核燃料サイクルに従って再処理工場へ輸送する、すなわち未使用核燃料集合体を使用済核燃料集合体と同様に取り扱って再処理工場に輸送すると考えるのが通常である。しかしながら、本発明の発明者らは、未使用核燃料集合体を、再処理工場へ輸送するのではなく、図1の黒矢印で示すように加工施設に輸送すれば、化学処理を経ることなく再利用できるので、低コストで未使用核燃料を再利用できると考えた。
未使用核燃料集合体は、使用済燃料プールの中に含まれていたクラッド等の放射性物質が付着し、汚染されている。したがって、未使用核燃料集合体に収容されている核燃料を加工施設に輸送する際には、放射性物質により環境の汚染及び人体への被曝が生じないようにしなければならない。
この発明の課題は、原子炉施設の使用済燃料プールに使用済核燃料集合体と共に貯蔵されている未使用核燃料集合体を、効率よく、安全に解体及び除染することにより、原子炉施設から搬出した後、核燃料を低コストで再利用することのできる未使用核燃料の処理システム及び未使用核燃料の処理方法を提供することである。
前記課題を解決するための手段は、
(1)原子炉施設の使用済燃料プールに使用済核燃料集合体と共に貯蔵されている未使用核燃料集合体を装荷し、前記未使用核燃料集合体の姿勢変更を補助する燃料保持架台を含むと共に、前記未使用核燃料集合体を解体及び除染するのに用いる作業台を有する未使用核燃料の処理システムである。
前記(1)の好ましい手段は、以下の通りである。
(2)前記作業台は、前記燃料保持架台を水平状態で自身の上に着脱可能に固定することのできる燃料保持架台受座を有する前記(1)に記載の未使用核燃料の処理システム。
(3)前記燃料保持架台受座は、その高さが1mより低い前記(2)に記載の未使用核燃料の処理システム。
(4)前記作業台は、前記未使用核燃料集合体から引き抜いた燃料棒を載置する解体・除染部を有し、前記解体・除染部は、前記未使用核燃料集合体に配置されている燃料棒の高さに合わせて高さを変更可能である前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の未使用核燃料の処理システム。
(5)前記作業台は、前記未使用核燃料集合体の軸線方向に沿って配置された少なくとも3つのボール式ガイドローラを有し、前記ボール式ガイドローラは、少なくとも2つのV溝を有し、前記V溝における2つの傾斜面にそれぞれ少なくとも1つのボールが回転可能に設けられている前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の未使用核燃料の処理システム。
(6)前記作業台は、前記燃料棒を転動可能に設けられた傾斜レールと前記傾斜レールの上方に設けられ、前記燃料棒の移送順序の入れ替えを不能にする制限枠とを有する前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の未使用核燃料の処理システム。
(7)前記作業台は、前記未使用核燃料集合体の軸線に直交する方向に移動する可動テーブルを有する前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の未使用核燃料の処理システム。
(8)前記作業台は、複数の前記可動テーブルを有し、前記可動テーブルは互いに独立して可動する前記(7)に記載の未使用核燃料の処理システム。
(9)前記作業台は、除染した燃料棒が配置される第2の燃料保持架台受座を有し、前記第2の燃料保持架台受座と前記燃料保持架台受座とが、並行に設置されている前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の未使用核燃料の処理システム。
(10)前記第2の燃料棒保持架台受座と前記燃料保持架台受座とは、未臨界を担保できる距離を離して設置されている前記(9)に記載の未使用核燃料の処理システム。
前記別の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(11)原子炉施設の使用済燃料プールに使用済核燃料集合体と共に貯蔵されている未使用核燃料集合体を装荷した燃料保持架台を、鉛直状態から水平状態に姿勢を変更する姿勢変更工程、
前記未使用核燃料集合体から燃料棒を引き抜く解体工程、及び
前記燃料棒の表面を除染する除染工程
を有する未使用核燃料の処理方法である。
前記(11)の好ましい手段は、
(12)除染した燃料棒の汚染検査を行う汚染検査工程を有する前記(11)に記載の未使用核燃料の処理方法。
(13)除染した燃料棒を燃料集合体に組み立てる再組立工程を有する前記(11)又は(12)に記載の未使用核燃料の処理方法。
(14)前記再組立工程で組み立てられた燃料集合体は、前記未使用核燃料集合体を構成する燃料棒と同じ配列に組み立てられ、前記未使用核燃料集合体と同一の固有番号が付されている前記(13)に記載の未使用核燃料の処理方法。
(15)前記除染工程及び汚染検査工程は、2〜8本の燃料棒を1バッチとして処理及び移送を行う前記(12)〜(14)のいずれか一項に記載の未使用核燃料の処理方法。
この発明の未使用核燃料の処理システムは、未使用核燃料集合体を装荷し、未使用核燃料集合体の姿勢変更を補助する燃料保持架台を有するので、使用済燃料プールに鉛直状態に貯蔵されている未使用核燃料集合体を水平状態にする際に、未使用核燃料集合体が自重でたわんで燃料棒やその他の部材が変形するのを防止することができる。また、水平状態に姿勢変更した後の燃料保持架台を含む作業台で、未使用核燃料集合体を解体及び除染することができるので、作業者の高さ方向の移動がなく、水平方向の移動で処理作業を行うことができ、効率的で安全である。
この発明の未使用核燃料の処理方法は、未使用核燃料集合体を燃料保持架台に装荷した後に、鉛直状態から水平状態に姿勢を変更する姿勢変更工程を有するので、未使用核燃料集合体が自重でたわんで燃料棒やその他の部材が変形するのを防止することができる。また、未使用核燃料集合体を水平状態にした後に、未使用核燃料集合体から燃料棒を引き抜く解体工程及び前記燃料棒の表面を除染する除染工程を行うので、作業者の高さ方向の移動がなく、水平方向の移動で処理作業を行うことができ、効率的で安全である。
図1は、軽水炉の核燃料サイクルのシステムの説明図である。 図2(a)は、燃料集合体の一例を示す一部断面概略説明図である。図2(b)は、図2(a)におけるA−A断面を示す断面説明図である。図2(c)は、図2(a)に示す燃料集合体の上部タイプレート及びロッドスプリングを取り外した状態を示す一部断面概略説明図である。図2(d)は、図2(a)に示す燃料集合体の燃料棒を引き抜いた状態を示す一部断面概略説明図である。 図3は、原子炉建屋における使用済燃料プールの開口部のある作業フロアの一例を示す平面概略説明図である。 図4は、この発明に係る未使用核燃料の処理方法の工程の一例を示す工程図である。 図5は、チャンネルボックスの一例を示す斜視概略説明図である。 図6は、ピットに設置された燃料保持架台に燃料集合体が装荷される状態を示す斜視概略説明図である。 図7(a)は、この発明に係る未使用核燃料の処理方法で使用される台の一例を示す斜視概略説明図である。図7(b)は、図7(a)の台を2つ重ねた状態を示す斜視概略説明図である。 図8は、この発明における作業台の一例を示す斜視概略説明図である。 図9は、この発明における燃料棒取扱作業台の一例を示す側面概略説明図である。 図10(a)は、この発明における燃料棒取扱作業台に取り付けられた解体・除染部の一例を示す斜視概略説明図である。図10(b)は、図10(a)における解体・除染部の側面概略説明図である。 図11は、この発明における燃料棒サーベイ作業台に取り付けられたボール式ガイドローラの一例を示す斜視概略説明図である。 図12は、この発明における燃料棒サーベイ作業台の一例を示す側面概略説明図である。 図13は、この発明における再組立バッファ部に設けられた個別払出機構の一例を示す斜視概略説明図である。 図14は、この発明における燃料棒サーベイ作業台における可動テーブルの動きを説明するための説明図である。
この発明に係る未使用核燃料の処理方法は、原子炉施設の使用済燃料プールに使用済核燃料集合体と共に貯蔵されている未使用核燃料集合体を、解体及び除染する方法である。本発明に係る未使用核燃料の処理システムは、この未使用核燃料の処理方法を行うのに使用する処理システムである。未使用核燃料集合体から引き抜かれ、除染された燃料棒は、原子炉施設から搬出され、例えば加工施設に輸送して核燃料として再利用される。
原子炉施設としては、発電用原子炉、実験炉、研究炉等が挙げられる。
原子炉の種類としては、軽水炉及び重水炉が挙げられる。軽水炉は、原子炉の炉心から熱を取り出す機能を有する冷却材及び核分裂によって生じる高速の中性子の速度を減速する機能を有する減速材として、いずれも軽水を使用している。重水炉は、冷却材及び減速材として、いずれも重水を使用している。軽水炉としては、加圧水型軽水炉及び沸騰水型軽水炉を挙げることができる。
以下においては、原子炉施設として、発電用原子炉であって、沸騰水型軽水炉を例に挙げて、この発明に係る未使用核燃料の処理方法及び未使用核燃料の処理システムについて説明する。
原子力発電所は、原子炉本体が収まっている原子炉建屋、発電機が設置されているタービン建屋と補助建屋、原子炉及び発電機等を制御するコントロール建屋で構成される。
原子炉建屋には、気密性の高い鋼鉄板製の原子炉格納容器が収まっており、このほぼ中央に核分裂反応が起きる原子炉本体が原子炉圧力容器に収まって据え付けられている。原子炉本体は、燃料集合体及び制御棒等により構成される。制御棒は、燃料集合体と燃料集合体との間に配置され、この制御棒で核分裂がコントロールされ、原子炉の出力の調節及び原子炉の停止が行われる。
使用済燃料プールは、原子炉建屋内に原子炉格納容器と共に据え付けられており、沸騰水型軽水炉の場合、使用済燃料プール内は軽水で満たされている。使用済核燃料集合体は、使用済燃料プールに一定期間貯蔵されて、使用済核燃料の崩壊熱がある程度減少するまで冷却され、放出される放射線が遮断される。使用済燃料プールには、使用済核燃料集合体と共に未使用核燃料集合体も貯蔵されていることがある。使用済燃料プールに未使用核燃料集合体が貯蔵されていると、原子炉から取り出された使用済核燃料集合体の代わりに新しい燃料集合体を速やかに原子炉に装荷できるからである。
使用済燃料プールは、使用済核燃料集合体が貯蔵されているため、使用済核燃料集合体に生成・付着した放射性のクラッドが剥離し水中に浮遊している。この放射性のクラッドが未使用核燃料集合体に付着している。したがって、未使用核燃料集合体に収容されている核燃料を、例えば加工施設に輸送する際には、放射性物質により環境の汚染及び人体への被曝が生じないようにしなければならない。
本発明は、未使用核燃料集合体に収容されている未使用核燃料を原子炉施設から搬出し、再利用するにあたり、未使用核燃料集合体を、効率よく、安全に解体及び除染することのできる未使用核燃料の処理方法及び未使用核燃料の処理システムである。以下において、本発明に係る未使用核燃料の処理方法の一例を説明する。
(未使用核燃料の処理方法)
この実施形態の未使用核燃料の処理方法は、原子力発電所等の原子炉施設の使用済燃料プールから引き上げた未使用核燃料集合体から燃料棒を引き抜いて解体し、燃料棒の表面を除染し、除染した燃料棒を再度燃料集合体の形状に組み立てる方法であり、再組み立てした燃料集合体は加工施設へ輸送される。
まず、燃料集合体の構造について、図2を参照しつつ説明する。燃料集合体101は、燃料棒105とタイロッド109と水管110とが複数のスペーサ103と上部タイプレート102と下部タイプレート104とにより固定されている。スペーサ103は、燃料棒105とタイロッド109と水管110とが挿入される複数のセルを有し、複数のスペーサ103が燃料集合体101の軸線O方向に間隔をあけて配置されている。複数のスペーサ103とスペーサ103の数セル分の大きさでスペーサ103の中央付近に配置された水管110によってスケルトンが構成される。スペーサ103のセル内に、燃料棒105及びタイロッド109がそれぞれ挿入されて、水管110と共に燃料棒105及びタイロッド109が互いにほぼ平行に間隔をあけて配列され、正方格子配列に従った束状の構成体を形成する。この構成体は、両端部が上部タイプレート102と下部タイプレート104とにより固定されている。上部タイプレート102の貫通孔にタイロッド109及び水管110が嵌入されて、タイロッド109がロックナット108で螺合締結されている。上部タイプレート102には、ハンドル106が設けられている。ハンドル106は燃料集合体101を移動するときの被保持部としての役割を有し、例えばクレーン等のフックに連結する吊具をハンドル106に固定して燃料集合体101を移動する。なお、以下において、未使用核燃料集合体及び再組み立てした燃料集合体を、単に燃料集合体と称することもある。
燃料棒105及びタイロッド109は、円筒状の被覆管内に数百個の円柱状の燃料ペレットが積層するように収容されて構成されている。前記燃料ペレットは、二酸化ウランの粉末を成形し、焼き固めた円柱状のセラミックである。燃料ペレットには、ウラン235が3〜5%含まれ、ウラン238がその残分として含まれている。タイロッド109は、標準の燃料棒105よりも長く形成され、両端部にネジ部を有する点で標準の燃料棒105と異なるが、被覆管内に核燃料物質である燃料ペレットを収容する点で標準の燃料棒105と同じである。したがって、以下において、タイロッド109を単に燃料棒109と称することもある。
図3は、原子炉建屋における使用済燃料プールの開口部のある作業フロアの一例を示す平面概略説明図である。この作業フロア11において、未使用核燃料集合体を解体し、燃料棒の表面を除染し、除染した燃料棒を燃料集合体に組み立てて、一時的に貯蔵するまでの一連の処理作業を行う。使用済核燃料プールのある作業フロアで一連の処理作業を行うことで、除染した未使用核燃料を原子炉建屋外に搬出できるので、放射性物質が拡散するおそれがなく、安全である。また、放射性物質の付着した未使用核燃料集合体を原子炉建屋外に搬出するための特別な容器を準備する必要もない。
図3に示すように、作業フロア11の一角には、平面視四角形状の使用済燃料プール12がある。使用済燃料プール12は、作業フロア11の床面13と同じ高さに開口部を有し、この開口部から下方へ向かって所定の深さを有する。使用済燃料プール12には、使用済核燃料集合体と未使用核燃料集合体101とが貯蔵されている。使用済燃料プール12に隣接する作業フロア11の一角には、使用済核燃料集合体を収納して原子炉建屋外に搬送するためのキャスクを洗浄及び除染するのに通常用いられているピット14がある。このピット14は、作業フロア11の床面13と同じ高さに開口部を有し、この開口部から下方に向かって所定の深さを有する。未使用核燃料集合体101は、この既設のピット14を利用して、後述する燃料保持架台に装荷される。この実施形態の処理方法では、使用済燃料プール12とピット14との間に、未使用核燃料集合体101を解体し、除染し、再組み立てするための作業スペース15を設ける。また、この実施形態の処理方法では、作業フロア11に、未使用核燃料集合体101を解体して、燃料棒105,109を取り出した後に残される燃料棒以外の汚染部材を保管するための保管スペース16、除染済みの燃料集合体101の汚染検査をするための検査台18、除染済みの燃料集合体101を一時的に貯蔵するための貯蔵ラック19を設ける。
作業フロア11は、使用済燃料プール12から引き上げられた未使用核燃料集合体101等の汚染部材を取り扱う汚染区域と、除染した燃料棒105,109及び汚染されていない部材等を取り扱う管理区域とに分けられる。図3では、汚染区域を白色、管理区域を灰色に色分けして示している。作業フロア11を汚染区域と管理区域とに分けて、汚染部材が管理区域を横切ることなく汚染区域内に限定して移動し、また、除染した後の燃料棒105,109や燃料集合体101が汚染区域を横切ることなく管理区域内に限定して移動できるように、作業スペース15、保管スペース16、貯蔵ラック19等が作業フロア11に配置される。このように、汚染区域と管理区域とに分けることで、汚染区域から管理区域への汚染拡散を防止することができる。なお、管理区域は必ずしも図3に示すように連結していなくてもよく、除染した燃料棒105,109を汚染しないような処置を施していれば、汚染区域を横切ってもよい。
図4は、この実施形態の未使用核燃料の処理方法の工程を示す工程図である。図4を参照しつつ、未使用核燃料集合体101を使用済燃料プール12から引き上げ、未使用核燃料集合体101を解体し、燃料棒105,109の表面を除染し、除染した燃料棒105,109の汚染検査を行い、除染した燃料棒105,109を燃料集合体101に組み立てて、一時的に貯蔵ラック19に貯蔵するまでの一連の工程について、具体的に説明する。図3では、汚染された燃料集合体101の移送方向を実線の矢印で示し、除染して燃料集合体101に組み立てられた後の燃料集合体101の移送方向を点線の矢印で示している。
未使用核燃料集合体101は、使用済燃料プール12内の使用済燃料貯蔵ラックに収納されている。まず、使用済燃料プール12から未使用核燃料集合体101を引き上げる(引上工程)。未使用核燃料集合体101を引き上げるには、既設の設備を用いて、新燃料を使用済燃料貯蔵ラックへ収納する際に通常行われている手順の逆の手順で行うのがよい。すなわち、原子炉格納容器内の原子炉炉心に収められている使用済核燃料集合体を使用済燃料プール12に移動すると共に新燃料を原子炉炉心に装荷するのに通常使用されている燃料取扱機(図示せず)を用いて、未使用核燃料集合体101の上部タイプレート102のハンドル106を掴み、未使用核燃料集合体101を使用済燃料プール12に設置されているチャンネル着脱機(図示せず)へ装荷する。図5に示すように、使用済燃料プール12に貯蔵されている未使用核燃料集合体101は、通常、チャンネルボックス21で覆われ、チャンネルファスナ22によって固定されている。したがって、まず、未使用核燃料集合体101をチャンネル着脱機に乗せた状態で、チャンネル着脱機を上昇させて、未使用核燃料集合体101のハンドル106を水中から露出させる。ここで、チャンネルファスナ22を取り外し、チャンネルボックス21専用吊具を用いて、チャンネルボックス21のみを天井に設けられているクレーンで引き上げる。この、チャンネルボックス21の取り外しは、天井クレーンでチャンネルボックス21を引き上げてもよいが、通常の使用済核燃料集合体のチャンネルボックス取り外しと同様に、吊具を連結したチャンネルボックス21を使用済燃料プール12のプール際に設置されたジブクレーンに吊り下げたまま、チャンネル着脱機で未使用核燃料集合体101を下降することによって取り外してもよい。チャンネルボックス21が取り外された未使用核燃料集合体101は、クレーンのフックに吊り下げて、気中に引き上げられる。未使用核燃料集合体101を気中に引き上げた後に、脱塩水すなわち汚染されていない水を未使用核燃料集合体101にかけて、未使用核燃料集合体101に付着しているプール水を洗い流す。その後、未使用核燃料集合体101を難燃性のシートで養生する。難燃性のシートで養生することによって完全に洗い流すことはできないクラッドなどの放射性物質の拡散防止を図ることができる。
使用済燃料プール12から引き上げられた未使用核燃料集合体101は、クレーンに鉛直方向に吊り下げられた状態で、ピット14に移送される。図6に示すように、ピット14には、燃料保持架台301が設置されている。原子炉施設によってはピット14がないところもある。このような原子炉施設では、床面13に燃料保持架台301が転倒しないような対策を施して起立させ、以下の手順を行ってもよい。
未使用核燃料集合体101は、鉛直状態でピット14に設置されている燃料保持架台301に装荷される(架台装荷工程)。未使用核燃料集合体101は、ピット14内で燃料保持架台301に装荷され、下部タイプレート104を軸線O方向に支持する底部303、上部タイプレート102を保持する上部タイプレート保持部304及びスペーサ103を保持するスペーサ保持部305によって固定される。未使用核燃料集合体101におけるスペーサ103を、スペーサ保持部305によって適度な荷重で保持することで、未使用核燃料集合体101の姿勢を変更する際の未使用核燃料集合体101の保持だけでなく、後述する解体工程において燃料棒105,109を引き抜く際の荷重に対しても燃料棒105,109が軸線方向に移動するのを防止することができる。なお、スペーサ保持部305は、複数のスペーサ103のうちの少なくとも一か所を保持していればよい。
未使用核燃料集合体101を燃料保持架台301に固定した後、未使用核燃料集合体101に取り付けられていた吊具を取り外し、代わりに燃料保持架台301の上端部に設けられている第1連結部307に吊具を取り付ける。燃料保持架台301をピット14の壁に固定していた固定部材を外し、クレーンを巻き上げて、燃料保持架台301を床面13まで持ち上げる。燃料保持架台301を作業スペース15に移動し、燃料保持架台301のローラ306が床面13に着地した状態でクレーンを巻き下げることで、未使用核燃料集合体101は燃料保持架台301と共に横倒しになり、鉛直状態から水平状態に姿勢を変更することができる(姿勢変更工程)。
未使用核燃料集合体101は、燃料保持架台301に装荷された状態で水平状態に姿勢が変更され、その後、未使用核燃料集合体101の解体、除染、及び再組立ての処理作業を行う。未使用核燃料集合体101を鉛直状態から水平状態に変更して作業を行うことで、作業者の高さ方向の移動がなく、水平方向の移動で作業が行えるので、効率よく、安全に作業を行うことができる。また、燃料集合体101は、一辺約13cm長さ約4mの細長い角棒状の形状を有している。未使用核燃料集合体101を鉛直状態から水平状態等に姿勢を変更するにあたり燃料保持架台301に装荷することにより、未使用核燃料集合体101が自重でたわんで燃料棒105,109やその他の部材が変形するのを防止することができる。
図8に示すように、燃料保持架台301は、燃料保持架台受座501の上に水平状態に載置されて固定される。したがって、燃料保持架台301と燃料保持架台受座501とは、着脱可能な構造となっている。燃料保持架台301と燃料保持架台受座501とで構成され、除染前の燃料集合体101を取り扱う設備を燃料集合体作業台500と称する。未使用核燃料集合体101は、このような水平状態で解体作業が行われる。
未使用核燃料集合体101は、図8に示す作業台300で、解体、除染、再組立てが行われる。作業台300は、燃料集合体作業台500と燃料棒取扱作業台601と燃料棒サーベイ作業台701と第2の燃料集合体作業台900とを有する。この作業台300で行われる未使用核燃料の処理工程の概要は以下の通りである。まず、燃料集合体作業台500で未使用核燃料集合体101から燃料棒105,109を引き抜く(解体工程)。未使用核燃料集合体101から引き抜いた燃料棒105,109は、燃料保持架台301の長手方向(X方向)に隣接して配置された燃料棒取扱作業台601で、除染すると共に汚染検査を行う(除染工程、汚染検査工程)。燃料棒取扱作業台601は、未使用核燃料集合体101から引き抜かれた燃料棒105,109を一時的に蓄え、除染し、再組立て前に一時的に燃料棒105,109を蓄える設備である。燃料棒取扱作業台601で除染され、汚染検査が行われた燃料棒105,109は、X方向に隣接して配置された燃料棒サーベイ作業台701に移送される。燃料棒サーベイ作業台701は、汚染検査の補助を行う設備であり、2回目の汚染検査を行う(第2汚染検査工程)。燃料棒サーベイ作業台701で2回目の汚染検査が行われた燃料棒105,109は、再度、燃料棒取扱作業台601に移送され、再組立て前に一時的に蓄えられる(再組立準備工程)。燃料集合体作業台500に並行に配置された第2の燃料集合体作業台900には、汚染されていない部材で構成された、燃料集合体101のスケルトン及び下部タイプレート104が装着されており、除染された燃料棒105,109は、この汚染されていない部材と共に燃料集合体101の形状に組み立てられ、再組み立てした燃料集合体101が得られる(再組立工程)。
図3に示すように、燃料集合体作業台500、解体・除染部602、及び払出スミヤサーベイ部603が配置されている空間には、グリーンハウス20が設置されている。この空間では未使用核燃料集合体101の解体及び除染が行われるので、未使用核燃料集合体101の表面に付着しているクラッド等の放射性物質が飛散し易い環境にある。したがって、この空間をグリーンハウス20で囲うことで、汚染区域から管理区域へ放射性物質が飛散するのを防ぎ、汚染拡散を防止することができる。また、グリーンハウス20が設置されていることにより、管理区域にいる作業者が誤って汚染区域にある部材に直接触れることがないので、汚染拡散を防止することができる。グリーンハウス20内は、局所排気によって負圧を維持し、グリーンハウス20内の放射性物質濃度の低減を図ることで、汚染拡散をより一層防止することができる。ただし、使用済燃料プール12から引き上げた未使用核燃料集合体101全面を難燃シート等で覆い、また、汚染区域と管理区域との境界を燃料集合体作業台500を設置した空間から十分に距離を置き、さらに、汚染区域の空気中放射性物質濃度を常時監視するなどの方法によって、管理区域が汚染するおそれがない場合には、解体作業を行う空間を必ずしもグリーンハウス20で囲っていなくともよい。
次に、作業台300で行われる未使用核燃料の各処理工程について説明する。
燃料集合体作業台500では、燃料保持架台301を燃料保持架台受座501に固定した後、未使用核燃料集合体101を養生していた難燃性のシートの上側のみを開放し、解体作業を開始する(解体工程)。未使用核燃料集合体101から引き抜かれた燃料棒105,109は、燃料棒取扱作業台601へ移送される。
燃料集合体101の解体作業は、次のようにして行う。まず、上部タイプレート102を取り外す。図2に示すように、例えば、沸騰水型軽水炉に用いられる9×9燃料B型の燃料集合体101は、上部タイプレート102の貫通穴に嵌入されたタイロッド109がロックナット108で螺合締結されている。したがって、まず、専用の工具を用いてロックナット108を取り外す。取り外したロックナット108は、ビニール袋に回収し、保管スペース16で保管する。なお、燃料集合体101は、組立ての際に、ロッドスプリング111が燃料棒105及びタイロッド109に装着され、ロッドスプリング111が圧縮された状態で上部タイプレート102が燃料棒105等の束状の構成体に対して固定される。このため、ロックナット108を外したところと外していないところとでロッドスプリング111の反力の差異が生じ、上部タイプレート102が傾き、ロックナット108とタイロッド109のネジ部との間で噛み込み等が生じやすくなる。しかしながら、この実施形態の燃料保持架台301には、上部タイプレート102を未使用核燃料集合体101の軸線O方向に押さえることにより、未使用核燃料集合体101を軸線O方向に移動させない押さえ機構が設けられているので、上部タイプレート102を取り外す際に、上部タイプレート102が傾くことなく軸線方向Oに沿って平行に取り外すことができる。取り外した上部タイプレート102は、ビニール袋に入れて保管スペース16で保管する。押さえ機構については後述する。
次いで、燃料棒105及びタイロッド109に装着されているロッドスプリング111を引き抜いて取り外す。取り外したロッドスプリング111は、ビニール袋に回収し、保管スペース16で保管する。
次いで、タイロッド109及び燃料棒105を引き抜く。タイロッド109は、その両端部にネジ部を有し、ネジ部が下部タイプレート104にねじ込まれている。したがって、タイロッド109の上端部を掴んで又は治具を用いて反時計回りに回転させることでねじ込みを解除した後に引き抜く。燃料棒105は、タイロッド109と異なり、その両端部にネジ部を有しない。したがって、燃料棒105は、その上端部を掴んで又は治具を用いて軸線O方向に引き抜けばよい。
引き抜いた燃料棒105及びタイロッド109は、後述する再組立工程で元の位置と同じ位置に挿入するのが好ましい。燃料棒105及びタイロッド109にはそれぞれ固有番号が付されている。したがって、引き抜いた燃料棒105及びタイロッド109を元の位置と同じ位置に挿入することで、同じ番号配列になる。また、ハンドル106にも燃料集合体101固有の番号が付されている。燃料集合体101を組み立てる際に、同じ番号がハンドル106に記された新しい上部タイプレート102を使用することで、再組み立てされた燃料集合体101は元の未使用核燃料集合体101と同一の燃料集合体であるとみなされるので、計量管理が容易になる。
引き抜きの順序は、引き抜いた燃料棒105,109を再度燃料集合体101の形状に組み立てる再組立工程を考慮して決定する。再組立工程では、水平状態に置かれたスケルトンにおける正方格子配列のスペーサ103のセルの最下列から燃料棒105,109を順番に挿入するのが好ましい。燃料棒105,109を水平方向に移動してスペーサ103のセルに挿入する場合には、燃料棒105,109はたわみ易く、その先端部が垂れ下がり、セルに挿入できないおそれがある。したがって、目視により燃料棒105,109の挿入状態及び表面状態等を確認しつつ挿入するのが好ましい。目視による確認がし易い点で、再組立工程では、正方格子配列のスペーサ103のセルの最下列から燃料棒105,109を順番に挿入するのが好ましい。また、未使用核燃料集合体101から燃料棒105,109を引き抜いた後に、除染し、再組み立てするまでの工程で、計量管理の観点から引き抜いた燃料棒105,109の順序が入れ替わらないように移送し、引き抜いた順番に元の位置と同じ位置に挿入するのが好ましい。したがって、再組立工程を考慮すると、正方格子配列のスペーサ103のセルの最下列から燃料棒105,109を順番に引き抜くのが好ましい。
タイロッド109と燃料棒105とでは、タイロッド109の方を先に引き抜くのが好ましい。図2(b)に示すように、タイロッド109の数は、9×9燃料B型の燃料集合体101の場合、8本である。先に引き抜かれたタイロッド109は、再組立工程でスペーサ103のセルに燃料棒105よりも先に挿入される。タイロッド109は、通常、スペーサ103の平面に対して対称性を持って配置されているので、タイロッド109を挿入しておくことで、スペーサ103の位置が固定され、燃料棒105のスペーサ103のセルへの挿入が容易になる。なお、燃料棒105,109挿入に伴うスペーサ103の傾きや位置のずれを防止するように第2の燃料保持架台801がスペーサ103を確実に固定していれば、燃料棒105,109の解体順序はタイロッド109から先に引き抜くことに限定しなくてもよい。また、再組み立て後の計量管理が煩雑となっても、計量管理のシステムが対応できるのであれば、解体する前の燃料集合体と再組み立てした燃料集合体とで燃料棒105,109の配置が異なっていてもかまわない。
全てのタイロッド109及び燃料棒105を引き抜いた後には、未使用核燃料集合体101の下方に配置されている難燃性のシートの上に、燃料棒105,109の引き抜きに伴って発生した、被覆管を構成するジルカロイ等の微細な切粉が滞留している。ジルカロイの微粉末は可燃性物質であるため、火災防止の観点からこれらを回収し、金属の管に封入して、保管スペース16に保管するのが好ましい。
図8に示すように、未使用核燃料集合体101から引き抜いた燃料棒105,109は、燃料保持架台301の長手方向に隣接して配置された燃料棒取扱作業台601の解体・除染部602に載置される。解体・除染部602では、燃料集合体101から引き抜いた燃料棒105,109を載置して燃料棒105,109の除染を行う(除染工程)。除染は、燃料棒105,109を1本ずつ乾いたウエスで拭き取ることにより行う。
解体・除染部602で除染された燃料棒105,109は、払出サーベイ部603へ移送する。払出サーベイ部603では、ウエスによる汚染検査を行い、汚染検査の判定が出るまで燃料棒105,109を一時的に留め置く。払出サーベイ部603に載置されている間に、ウエスで燃料棒105,109の表面を拭き取り、ウエスに付着した放射性物質の量を測定し、β線及びγ線の各表面汚染密度が検出限界以下まで除染されていることを確認する汚染検査を行う(汚染検査工程)。払出サーベイ部603は、グリーンハウス20内にあり、燃料棒105,109は汚染区域にある。ウエスによる汚染検査は、汚染区域から管理区域に移送するための検査である。汚染検査の判定が合格であれば、燃料棒105,109を、管理区域にある燃料棒サーベイ作業台701へ移送し、ろ紙による2回目の汚染検査を行う。
燃料棒サーベイ作業台701では、ろ紙による2回目の汚染検査が行われる(第2汚染検査工程)。燃料棒サーベイ作業台701は、汚染検査の補助を行い、2回目の汚染検査を行う設備である。2回目の汚染検査では、ろ紙で燃料棒105,109の表面を拭き取り、ろ紙に付着した放射性物質の量を測定し、β線及びγ線の各表面汚染密度が検出限界以下まで除染されていることを確認する。燃料棒サーベイ作業台701は、グリーンハウス20の外にあり、燃料棒105,109は管理区域にある。ろ紙による2回目の汚染検査は、燃料棒105,109を管理区域の外に搬出するための検査である。
燃料棒サーベイ作業台701で2回目の汚染検査をしている間に又は2回目の汚染検査合格の判定を受けた後に、燃料棒105,109を燃料棒取扱作業台601のスミヤサーベイバッファ部604へ移送する。スミヤサーベイバッファ部604では、2回目の汚染検査の判定が出るまで燃料集合体105,109を一時的に留め置く。図9に示すように、スミヤサーベイバッファ部604は、払出サーベイ部603側から再組立バッファ部605に向かって下がる傾斜レール631を有する。傾斜レール631の上には、ガイドローラ633が設けられており、この上に燃料棒105,109が載置される。スミヤサーベイバッファ部604は回動板632を有する。回動板632は、ストッパー(図示せず)をかけているときにはガイドローラ633のよりも低い位置にあり、ストッパーを解除するとガイドローラ633よりも高い位置で再組立バッファ部605へ向かって下がる傾斜状態になり、ガイドローラ633の上に載置されている燃料棒105,109が傾斜レール631の上に送り出される。
2回目の汚染検査の判定が合格の場合には、ストッパーを解除することにより、ガイドローラ633に載置されていた燃料棒105,109は、傾斜レール631の上に送り出され、傾斜レール631の上面を転動して、再組立バッファ部605へ移動する。汚染検査の判定が不合格の場合には、ストッパーを解除せずに、燃料棒サーベイ作業台701へ燃料棒105,109を戻すことにより、再組立バッファ部605が汚染するのを防止することができる。
再組立バッファ部605では、2回目の汚染検査の判定が合格になった燃料棒105,109を蓄え、燃料棒105,109を1本ずつ再組立部606へ払い出す。再組立バッファ部605は、燃料棒105,109を1本ずつ再組立部606へ払い出す個別払出機構641を有し、作業者の操作により所望のタイミングで燃料棒105,109を1本ずつ再組立部606へ払い出すことができる。
再組立バッファ部605から払い出された燃料棒105,109は、再組立部606に載置される。再組立部606では、後述する第2の燃料集合体作業台900に装着された汚染されていない部材で構成されたスケルトンに、除染した燃料棒105,109を挿入して燃料棒集合体101を組み立てるための準備をする(再組立準備工程)。
再組立工程では、再組立部606にある除染及び汚染検査が終了した燃料棒105,109を、汚染されていない部材で構成されたスケルトンに挿入することで、燃料集合体101を組み立てる。スケルトンは、スペーサ103及び水管110から構成され、同じく汚染されていない下部タイプレート104と共に第2の燃料集合体作業台900に予め装着しておく。燃料集合体101の組立ては、上述したように、燃料集合体101の解体作業とは逆の手順で行うのがよい。すなわち、まず、除染したタイロッド109を、スペーサ103のセルの最下列から順番に挿入して下部タイプレート104にねじ込む。次いで、除染した燃料棒105を、スペーサ103のセルの最下列から順番に挿入する。燃料棒105よりも先にタイロッド109をスペーサ103のセルに挿入することで、スペーサ103の位置が固定され、燃料棒105のスペーサ103のセルへの挿入が容易になる。また、燃料棒105,109を最下列から挿入することで、燃料棒105,109の挿入状態及び表面状態等を目視により確認し易い。
除染された全ての燃料棒105,109を挿入した後に、ロッドスプリング111を各燃料棒105,109の先端に装着する。次いで、新しい上部タイプレート102を取り付ける。上部タイプレート102のグリッド部112には格子状に設けられた複数の貫通孔があり、この貫通孔に燃料棒105,109を通過させる。
上部タイプレート102を装着した後に、ロックナット108をタイロッド109の先端に取り付け、ロッドスプリング111が規定の長さに圧縮された状態になるまでロックナット108を締め付ける。ロックナット108の締め付けによって上部タイプレート102を前進させ、ロッドスプリング111を圧縮させると、タイロッド109のネジ部に過大な荷重が負荷され、ロックナット108とタイロッド109のネジ部とが噛み込むおそれがある。したがって、第2の燃料保持架台801は、解体用の燃料保持架台301と同様に、上部タイプレート102を軸方向に押さえ、締め付け操作中のロックナット108に荷重が負荷されないように、押さえ機構を有するのが好ましい。
上部タイプレート102のハンドル106には、解体する前の燃料集合体101の固有番号と同じ番号が付されている。また、燃料棒105,109には固有番号が付されており、これらは全て元の位置と同じ位置に配置されており、同じ番号配列になっている。したがって、再組み立てした燃料集合体101は、解体する前の燃料集合体101と同一の燃料集合体であるとみなされるので、計量管理が容易になる。
作業台300では、未使用核燃料集合体101から引き抜いた燃料棒105,109を、2〜8本単位、好ましくは4本単位で各種処理を行い、次の工程へ移送するのが好ましい。前記単位で処理及び移送を行うことにより、1日に丁度1体の未使用核燃料集合体101の解体、除染、及び再組立ての処理を終えることができ、効率が良い。また、汚染区域内での滞在時間を短くすることができる。
作業台300での燃料棒105,109及び可動テーブル730等の移動は、作業者により手動で行われるのが好ましい。全ての動作において、電気、圧空、ガス等を使用しないことで、火災を防止することができる。
このようにして、再組み立てされた燃料集合体101は、原子炉施設外へ出荷するための出荷検査が行われる。出荷検査は、燃料集合体101の製造元である加工施設から出荷する際に行われる検査と同様に、燃料集合体101を起立した状態で行うのが、従来の検査手法を踏襲できる点及び作業スペース等の点から好ましい。したがって、再組み立てした燃料集合体101は、第2の燃料保持架台801に装荷された状態で、第2の燃料保持架台受座901から分離し、水平状態から鉛直状態へ姿勢を変更し、第2の燃料保持架台801を起立できる場所へ移動する。すなわち、第2の燃料保持架台801を、図3に示す検査台18へ移動して起立させた状態で、出荷検査を行う(出荷検査工程)。
再組み立てした燃料集合体101は、出荷検査の後、第2の燃料保持架台801から外してビニール袋で養生し、貯蔵ラック19に保管する(貯蔵ラック保管工程)。
このようにして、未使用核燃料集合体101の解体、除染、再組立てを行い、貯蔵ラック19に保管する。
使用済燃料プール12に貯蔵されている未使用核燃料集合体101全てについて解体、除染、再組立てが完了した後、貯蔵ラック19に保管している燃料集合体101を輸送容器に梱包する。前記輸送容器は、法令上の基準を満たし、未臨界を確保することができるように設計された容器を使用する必要がある。未使用核燃料集合体は、解体及び除染され、同じ形状の燃料集合体に組み立てられているので、輸送容器として燃料集合体101の製造元である加工施設から出荷する際に通常使用される容器を用いることができる。輸送容器に梱包された燃料集合体は、例えば加工施設へ輸送される。
この実施形態の未使用核燃料の処理方法によると、未使用核燃料集合体101を水平状態にした後に、未使用核燃料集合体101を解体及び除染して、燃料集合体101に組み立てるので、作業者の高さ方向の移動がなく、水平方向の移動で処理作業を行うことができ、効率的で安全である。また、未使用核燃料集合体101を燃料保持架台301に装荷してから姿勢を変更するので、未使用核燃料集合体101が自重でたわんで燃料棒105,109やその他の部材が変形するのを防止することができる。
この実施形態の未使用核燃料の処理方法によると、未使用核燃料集合体101に付着していた放射性物質を除染した後に、例えば加工施設に輸送されるので、加工施設に輸送する過程で放射性物質による環境の汚染及び人体への被曝が生じるおそれがない。また、原子炉施設に搬入されたときと同じ燃料集合体101という形状で搬出できるので、搬入の際に使用した容器を使用して搬出することができ、未使用核燃料を輸送するための容器を別に用意する必要がなく、低コストである。また、搬入の際に使用した容器設計であれば設計上の安全性が確認されており、法令上の規制も少ない。さらに、燃料ペレットが燃料棒105,109に収容された燃料集合体101の形状で搬出されるので、計量するのが容易であり、燃料棒105,109から燃料ペレットを取り出して搬出するよりも、計量管理が容易である。
この実施形態の未使用核燃料の処理方法により再組み立てされた燃料集合体101が加工施設に輸送された場合には、未使用核燃料は、加工施設で物理的に、例えばウラン酸化物(U、UO)の粉末及び円柱状のペレット等の様々な形状に加工することができる。加工された核燃料は、原子力発電所等の原子炉施設等に輸送され、再利用することができる。このように、未使用核燃料が、再処理工場ではなく、加工施設に輸送されると、化学処理を経ずに、例えば物理的な形状等の加工を行うだけで再利用できる状態にすることができるので、工程数を低減することができ、低コストである。また、加工施設へ輸送された未使用核燃料は、そのまま他の原子炉施設へ輸送して再利用すること、及び加工施設で物理的な形状の加工を行い、再度燃料集合体を形成して軽水炉で再利用すること等、再利用の自由度を高めることができる。なお、未使用核燃料の再利用に際しては、燃料ペレットや燃料棒は解体せずに、再利用する場合がある。
次に、この発明に係る未使用核燃料の処理システムの一例を説明する。
(未使用核燃料の処理システム)
この実施形態の未使用核燃料の処理システムは、原子力発電所等の原子炉施設の使用済燃料プールから引き上げた未使用核燃料集合体を解体及び除染して、燃料集合体の形状に組み立てるのに使用される未使用核燃料の処理システムである。
未使用核燃料集合体101は、使用済燃料プール12に鉛直状態で貯蔵されている。未使用核燃料集合体101は、使用済燃料プール12から鉛直状態で引き上げられる。まず、鉛直状態の未使用核燃料集合体101を水平状態に姿勢を変更する。未使用核燃料集合体101の姿勢を水平状態にした後に、解体及び除染して、燃料集合体101に組み立てる処理作業を行うことで、作業者の高さ方向の移動がなく、水平方向の移動で作業が行えるので、効率よく、安全に作業を行うことができる。未使用核燃料集合体101の姿勢を変更する際には、未使用核燃料集合体101の姿勢変更を補助するための燃料保持架台301に装荷するのが好ましい(図6)。未使用核燃料集合体101を燃料保持架台301に装荷することで、姿勢を変更する際に、未使用核燃料集合体101が自重でたわんで燃料棒やその他の部材が変形するのを防止することができる。
燃料保持架台301は、未使用核燃料集合体101の姿勢変更を補助することができる限り、その形状は特に限定されない。一例として、図6に示す燃料保持架台301について説明する。燃料保持架台301は、バック枠板302と底部303と上部タイプレート保持部304とスペーサ保持部305とローラ306と第1連結部307と第2連結部308とを有する。バック枠板302は、未使用核燃料集合体101の全長よりも長く、剛性の高いステンレス鋼等の部材によって形成されている。バック枠板302は、未使用核燃料集合体101の軸線O方向の強度を補強し、鉛直状態から水平状態に姿勢を変更する際に未使用核燃料集合体101がたわむことによる変形を防止する。底部303は、バック枠板302の一方の端部からこれに垂直方向に延在し、略角形状を有している。底部303には下部タイプレート104が当接し、底部303は燃料集合体101を軸線O方向に支持する。底部303におけるバック枠板302が設けられている側の面には、この面から突出するようにノズル部107の形状に適合した枠が設けられており、ノズル部107が保持可能になるよう形成されている。上部タイプレート保持部304は、未使用核燃料集合体101を装荷したときに、上部タイプレート102のグリッド部112を保持可能な位置に設けられ、未使用核燃料集合体101が径方向に移動しないように形成されている。上部タイプレート保持部304は、未使用核燃料集合体101が径方向に移動しないように保持するだけでなく、上部タイプレート102を下部タイプレート104側に向かって押さえる押さえ機構を有するのが好ましい。押さえ機構を有することで、上部タイプレート102を取り外す際に、上部タイプレート102が傾くことなく軸線O方向に沿って平行に取り外すことができる。押さえ機構としては、例えば、上部タイプレート保持部304がグリッド部112を外周方向から保持可能になるようグリッド部112の外形に合わせて形成されたコの字帯状体である場合に、グリッド部112の上面に接触可能にコの字帯状体から軸の中心に向かって突出した突起部(図示せず)を挙げることができる。スペーサ保持部305は、未使用核燃料集合体101を装荷したときに、スペーサ103を保持可能な位置に設けられ、未使用核燃料集合体101が径方向に移動しないように形成されている。スペーサ保持部305は、複数のスペーサ103のうちの少なくとも一か所を保持する。上部タイプレート保持部304とスペーサ保持部305とは、未使用核燃料集合体101を装荷し易いように開閉可能に形成されている。ローラ306は、底部303におけるバック枠板302とは反対側の面に少なくとも一つ設けられ、鉛直状態での移動、鉛直状態から水平状態への姿勢の変更、又は水平状態から鉛直状態への姿勢の変更を行うのに使用される。第1連結部307は、バック枠板302の上端部すなわちバック枠板302における底部303とは反対側の端部の少なくとも2か所に設けられ、クレーンのフックに連結されて、燃料保持架台301を鉛直状態の姿勢での移動又は鉛直状態と水平状態との間の姿勢変更に使用される。第2連結部308は、バック枠板302の短手方向の両端部で長手方向の端部付近の適当な位置に少なくとも4か所に設けられ、クレーンのフックに連結されて、水平状態の姿勢での移動に使用される。
燃料集合体101を燃料保持架台301に装荷する際、燃料保持架台301は、ピット14の底面に置かれた台401の上に載置され、その上端部がピット14の開口部の壁に固定されている。台401は、燃料保持架台301の上端部がピット14の開口部の壁に固定することができるように燃料保持架台301の高さを調節する設備である。台401は、ピット14の深さに応じてその高さが調整できるように形成されている。図7(a)に示すように、例えば、台401は、略角形状の底面部411と上面部412とを有し、両者が2つの支持板413によって結合されている。上面部412の上には燃料保持架台301の移動を防ぐためのL字状の突起414が設けられている。台401を高くする場合には、図7(b)に示すように、例えば2つの台401を重ねて、一方の上面部412と他方の底面部411とを連結固定すればよい。
また、燃料保持架台301は、燃料保持架台301の軸線A方向における少なくとも一か所において、ピット14の壁にベルト等で固定されている。このように、燃料保持架台301の底部303、上端部、及び中間部の少なくとも3か所においてピット14の壁に固定されているので、地震等で水平力がかけられた場合でも燃料保持架台301が座屈するのが防止される。
図8に示すように、燃料保持架台301に装荷された未使用核燃料集合体101は、燃料保持架台受座501の上に水平状態に載置されて固定される。したがって、燃料保持架台301と燃料保持架台受座501とは、着脱可能な構造となっている。燃料保持架台301と燃料保持架台受座501とで構成される設備を燃料集合体作業台500と称し、燃料集合体作業台500で除染前の燃料集合体101が取り扱われる。除染前の燃料集合体101から引き抜いた燃料棒105,109を取り扱う設備を、燃料棒取扱作業台601及び燃料棒サーベイ作業台701と称する。除染した燃料集合体101を取り扱う設備を第2の燃料集合体作業台900と称する。燃料集合体作業台500と燃料棒取扱作業台601と燃料棒サーベイ作業台701と第2の燃料集合体作業台900とで構成される設備を作業台300と称し、この作業台300で、除染前の燃料集合体101の解体、燃料棒105,109の除染、燃料集合体101の再組立てが行われる。
燃料保持架台301が固定される燃料保持架台受座501は、燃料保持架台301の位置及び高さを固定して、燃料集合体101の解体作業を行い易くする設備である。燃料保持架台受座501は、1m弱の高さを有する。燃料保持架台301をそのまま床面13に置くのではなく、適度な高さを有する燃料保持架台受座501に固定することで、作業者がかがむ等の動作をすることなく、燃料集合体101の解体作業を行うことができ、作業者の負担を低減できると共に、効率的に作業できる。また、作業中に燃料棒105,109が落下して燃料棒105,109が衝撃を受けるような状況が生じた場合に、高さ1mからの落下であれば燃料棒の被覆管に亀裂が発生する等の損傷を受けることがなく、安全である。なお、燃料保持架台受座501だけでなく、作業台300全体が1m弱の高さを有するので、上述したように効率的であり、安全である。さらに、燃料保持架台301と燃料保持架台受座501とを分離及び合体できる構造にすることで、燃料保持架台受座501をアンカー等で床面13に固定することができ、耐震性を確保することができる。なお、この実施形態の燃料保持架台受座501は、1m弱の高さを有するが、効率的で安全である点で、0.5〜1mの高さを有するのが好ましく、0.8〜1mの高さを有するのが特に好ましい。この高さ1mは、沸騰水型軽水炉用の別の設計の燃料集合体や、加圧水型軽水炉用その他の原子力発電所用の燃料集合体にも適用することができる。
燃料保持架台受座501は、燃料保持架台301を適度な高さに固定できる限り、その形状に特に限定はない。一例として図8に示す燃料保持架台受座501について説明する。燃料保持架台受座501は、燃料保持架台301を水平状態で載置可能な軸線方向の長さを有する。燃料保持架台受座501は、軸線方向に沿って配置される少なくとも3つの台形状のフレームを有し、各台形状のフレームが、その底辺部材の中心を結ぶ棒材によって結合されている。各台形状のフレームの上部の2つの角部には、燃料保持架台301を固定するための固定部材が設けられている。燃料保持架台受座501は、アンカー等によって床面13に固定されており、耐震性を有する。燃料保持架台受座501は、剛性の高いステンレス鋼等の部材によって形成されている。なお、燃料保持架台受座501は、床面13との水平方向荷重による移動や転倒を十分に防ぐことができる設計となっていれば、必ずしもアンカー等によって床面13と固定していなくてもよい。
燃料保持架台301及び燃料保持架台受座501(燃料集合体作業台500と称する)とそれぞれ同じ構造を有する第2の燃料保持架台801及び第2の燃料保持架台受座901(第2の燃料集合体作業台900と称する)が、これらに並行に配置されている。第2の燃料集合体作業台900は、燃料棒取扱作業台601及び燃料棒サーベイ作業台701で未使用核燃料集合体101から引き抜いた燃料棒105,109を除染及び汚染検査をした後に、再度、燃料集合体の形状に組み立て、再組み立てした燃料集合体101を水平状態から鉛直状態に姿勢を変更するための設備である。第2の燃料保持架台801には、スペーサ103及び水管110で構成されるスケルトン及び下部タイプレート104の汚染されていない部材が予め装着されており、除染された燃料棒105,109は、この汚染されていない部材と共に燃料集合体101に組み立てられる。
除染及び汚染検査をする、燃料棒取扱作業台601及び燃料棒サーベイ作業台701の後方に第2の燃料集合体作業台900が配置されるのではなく、燃料集合体作業台500と第2の燃料集合体作業台900とが、作業フロア11に並行に配置されることで、原子炉建屋の限られた面積の作業フロア11での作業スペース15を最小化することができる。
燃料集合体作業台500と第2の燃料集合体作業台900とは、所定の距離を離して設置されている。前記距離は、燃料集合体作業台500と第2の燃料集合体作業台900に燃料集合体101が置かれているときに燃料集合体同士が未臨界を担保できる距離である。前記距離は、処理を行っている核燃料の量によっても異なるが、1体の燃料集合体の解体、除染、再組立ての処理を行っている場合には、少なくとも30cmである。この距離30cmは、沸騰水型軽水炉用の別の設計の燃料集合体や、加圧水型軽水炉用その他の原子力発電所用の燃料集合体にも適用することができる。
未使用核燃料集合体101から引き抜いた燃料棒105,109は、燃料棒取扱作業台601で、除染及び汚染検査が行われ、燃料集合体101に組み立てるための準備をする。
燃料棒取扱作業台601は、未使用核燃料集合体101から引き抜いた燃料棒を除染し、汚染検査をするために一時的に留め置き、燃料集合体に組み立てるために一時的に留め置くことができる限り、その構造は特に限定されない。一例として、図8及び図9に示す燃料棒取扱作業台601について説明する。燃料棒取扱作業台601は、格子状に配置されたステンレス鋼製の支柱部610と燃料棒105,109を積載及び移送するのに用いられるアルミ製のフレーム部620とを有する。支柱部610は、アンカー等で床面13に固定され、耐震性を有するように形成されている。フレーム部620は、解体・除染部602、払出サーベイ部603、スミヤサーベイバッファ部604、再組立バッファ部605、及び再組立部606を有する。これらは、支柱部610に固定され、互いに並行に配置されている。フレーム部620のこれら各種作業が行われる領域が互いに並行に配置されることで、原子炉建屋の限られた面積の作業フロア11での作業スペース15を最小化することができる。
解体・除染部602は、未使用核燃料集合体101から引き抜いた燃料棒105,109を載置し、除染を行う領域である。図8及び図10に示すように、この実施形態の解体・除染部602は、段切替部611とローラ部613とを8つ有し、これらがX方向に所定の間隔をあけて配置されている。ローラ部613は、燃料棒105,109の軸方向の移動を補助すると共に、隣接する燃料棒105,109同士が接触しない構造を有するので、隣接する燃料棒105,109同士の接触による汚染を防止することができる。この実施形態のローラ部613は、9個のガイドローラ612がY方向に一列に配置されて構成されている。したがって、解体・除染部602には、最大9本の燃料棒105,109を載置し、除染を行うことができる。ガイドローラ612は、例えば全周にわたってV型の溝を有する車輪である。ガイドローラ612は、未使用核燃料集合体101を構成している燃料棒105,109同士のピッチと同じになるように配置され、これによって未使用核燃料集合体101から引き抜かれる燃料棒105,109の水平方向の湾曲が防止される。また、解体・除染部602は、ローラ部613の高さが調整できるようになっている。ローラ部613の高さを最も低い位置に設定したとき、燃料棒集合体101に正方格子配列に配置されている燃料棒105,109をその最下列から平行に引き抜いて載置できるように、段切替部611に取り付けられたローラ部613が設置されている。燃料集合体101の正方格子配列の最下列より上の列から燃料棒105,109を引き抜くときには、切替段部611でローラ部613の高さを変更することができ、これによって燃料棒105,109の鉛直方向のたわみを防止して平行に引き抜くことができる。また、ローラ部613は、切替段部611に着脱可能に形成されており、交換することができる。したがって、ローラ部613からの汚染を防止することができる。ローラ部613はアルミ等の除染し易い部材で形成されるのが好ましい。なお、この実施形態における解体・除染部602は、X方向に沿って8つの段切替部611とローラ部613とが配置されているが、燃料棒105,109を保持することができればよく、例えば少なくとも3つの段切替部611とローラ部613とが配置される。また、この実施形態における解体・除染部602は、Y方向に9つのガイドローラ612が配置されているが、燃料棒を1本ずつ処理する場合にはガイドローラ612は1つであってもよく、少なくとも1つ配置されていればよい。9×9燃料B型の燃料集合体101の場合は燃料棒105,109が9行及び9列で格子状に配列されているので、燃料集合体101の一行に配置される数と同じ数すなわち9つのガイドローラが配置されているのが、効率性の点から好ましい。また、ローラ部613はX方向のみの移動に制限するローラでなく、図11に示すボール式ガイドローラ621と同様の構造を有していてもよい。
払出サーベイ部603は、汚染検査の判定が出るまで燃料棒105,109を一時的に留め置く領域である。払出サーベイ部603は、解体・除染部602にY方向に隣接し、解体・除染部602よりも高い位置に設置されている。図8及び図11に示すように、払出サーベイ部603は、X方向に延在するアルミ製の板624と、その上にX方向に所定の間隔をあけて一列に配置された8つのボール式ガイドローラ621とにより構成されている。ボール式ガイドローラ621は、燃料棒105,109の回転及び軸方向への移動を補助すると共に、隣接する燃料棒105,109同士を接触させない構造を有する。例えば、ボール式ガイドローラ621は、Y方向に4つのV溝が設けられ、このV溝における2つの傾斜面622にそれぞれ2つずつのボール623がボール受座625に嵌合されて回転可能に設けられている。払出サーベイ部603では、4本の燃料棒105,109を載置して、汚染検査の判定が出るまで留め置くことができる。ボール式ガイドローラ621は、隣接する燃料棒105,109同士を接触させない構造を有するので、隣接する燃料棒105,109同士を接触による汚染を防止することができる。ボール式ガイドローラ621は、アルミ製の板624に着脱可能に形成されており、交換することができるので、ボール式ガイドローラ621からの汚染を防止することができる。ローラ部613はアルミ等の除染し易い部材で形成されるのが好ましい。なお、この実施形態における払出サーベイ部603は、X方向に沿って8つのボール式ガイドローラが配置されているが、燃料棒105,109を保持することができればよく、例えば少なくとも3つのボール式ガイドローラ621が配置される。また、この実施形態のボール式ガイドローラ621は、Y方向に4つのV溝が設けられているが、V溝の数は特に限定されない。燃料棒105,109を1本ずつ処理する場合には、V溝は1つであってもよい。複数本の燃料棒105,109を1バッチとして処理するのが効率的である点で、2〜8つのV溝が設けられているのが好ましい。また、この実施形態のボール式ガイドローラ621は、2つの傾斜面622にそれぞれ2つずつのボール623が回転可能に設けられているが、2つの傾斜面622にそれぞれ少なくとも1つのボール623が回転可能に設けられていればよい。
スミヤサーベイバッファ部604は、燃料棒サーベイ作業台701で行われている2回目の汚染検査の判定が出るまで燃料集合体105,109を一時的に留め置く領域である。スミヤサーベイバッファ部604は、払出サーベイ部603にY方向に隣接する位置に設置されている。図8及び図9に示すように、スミヤサーベイバッファ部604は、支柱部610の上に格子状に配置されたアルミ製の板を有する。格子状のアルミ製の板のうち払出サーベイ部603の端部から再組立バッファ部605にわたって配置された複数の板は、払出サーベイ部603から再組立バッファ部605に向かって下がる傾斜レール631になっている。この実施形態では、スミヤサーベイバッファ部604には、X方向に沿って8つの傾斜レール631が配置されているが、燃料棒105,109を保持できればよく、例えば少なくとも3つの傾斜レール631が配置される。傾斜レール631は、その上に燃料棒105,109を置くと転動し、その上に設置されたローラ部634に燃料棒105,109を置くと転動しない程度の傾斜角度を有し、傾斜角度は、例えば2〜5°である。傾斜レール631における払出サーベイ部603側すなわち高部側の端部領域の上面には、ローラ部634がそれぞれ設けられている。ローラ部634は4つのガイドローラ633を有し、ガイドローラ633はY方向に所定の間隔をあけて設けられ、4本の燃料棒105,109を間隔をあけて載置できる構造になっている。したがって、スミヤサーベイバッファ部604では、最大4本の燃料棒105,109を載置して、2回目の汚染検査の判定が出るまで留め置くことができる。この実施形態では、ローラ部634は4つのガイドローラ633を有するが、燃料棒105,109を1本ずつ処理する場合には、ガイドローラ633は1つであってもよい。複数本の燃料棒105,109を1バッチとして処理するのが効率的である点で、2〜8つのガイドローラ633を有するのが好ましい。ガイドローラ633は、例えば全周にわたってV型の溝を有する車輪である。ガイドローラ633は、燃料棒105,109の軸線方向への移動を補助すると共に、隣接する燃料棒105,109同士を接触させない構造を有する。ガイドローラ633は、隣接する燃料棒105,109同士を接触させない構造を有するので、隣接する燃料棒105,109同士の接触による汚染を防止することができる。ガイドローラ633は、傾斜レール631に着脱可能に形成されており、交換することができるので、ガイドローラ633からの汚染を防止することができる。また、各傾斜レール631に対してX方向に隣接して複数の回動板632が設けられ、傾斜レール631を貫通するように設けられた軸棒Bを中心にして、これらの回動板632が回動可能に形成されている。定常状態で、回動板632は、ストッパー(図示なし)により回動板632の上面が傾斜レール631よりも低い位置に固定されている。ストッパーを解除することにより、回動板632が軸棒Bを中心にして回転して、回動板632の上面が、ガイドローラ633よりも高い位置で傾斜面となり、ガイドローラ633に載置されていた燃料棒105,109が傾斜レール631の上面に移動して、再組立バッファ部605に向かって転動する。
再組立バッファ部605は、2回目の汚染検査の判定が合格になった燃料棒105,109を蓄え、燃料棒105,109を1本ずつ再組立部606へ払い出す領域である。図8及び図9に示すように、再組立バッファ部605は、傾斜レール631における低部側の端部領域であり、その端部領域の上面にスミヤサーベイバッファ部604から転動してきた燃料棒105,109が蓄えられる。再組立バッファ部605には、傾斜レール631のY方向の長さに応じて複数の燃料棒105,109を蓄えることができる。再組立バッファ部605は、X方向に所定の間隔をあけて一列に配置された、燃料棒105,109を1本ずつ再組立部606へ払い出す個別払出機構641を有する。この実施形態では、再組立バッファ部605には、傾斜レール631に隣接して8つの個別払出機構641が設けられているが、燃料棒105,109を1本ずつ再組立部606へ払い出すことができればよく、例えば少なくとも3つの個別払出機構641が設けられる。個別払出機構641は、例えば、図13に示すように、クランク機構等により上下運動して隣接する燃料棒105,109の間に挿入されることで他の燃料棒105,109から分離しつつ、1本の燃料棒105,109を持ち上げる分離部642と、傾斜レール631における最下部、すなわち再組立部606に最も近い燃料棒105,109の移動を止める壁及びこの壁の頂部に設けられ、再組立部606に向かって下がる傾斜面を有する払出部643とを有する。この個別払出機構641では、分離部642を上方に移動させることで隣接する燃料棒105,109が分離されると同時に、1本の燃料棒105,109が持ち上げられ、払出部643の頂部の傾斜面を転動して再組立部606に向かって1本の燃料棒105,109が払い出される。分離部642を下方に移動させると、傾斜レール631上にある燃料棒105,109が払出部643の壁で止められて、再組立バッファ部605に複数の燃料棒105,109が蓄えられる。個別払出機構641は、作業者の操作により所望のタイミングで燃料棒105,109を1本ずつ再組立部606へ払い出すことができる。傾斜レール631の上方には、制限枠651が設けられている。制限枠651は、燃料棒105,109の飛越を防止し、燃料棒105,109の移送順序が入れ替わらないように形成されている。例えば、制限枠651は、傾斜レール631の上面から燃料棒105,109の直径よりも高くこの直径の2倍よりも低い位置に傾斜レール631と並行に設けられている。また、傾斜レール631と制限枠651との間に燃料棒105,109が配置されるように、傾斜レール631及び制限枠651のX方向の位置が設定されている。なお、制限枠651は、燃料棒105,109の飛越を防止することができる限り、その形状及び数は特に限定されず、例えば少なくとも1つの板状の制限枠が傾斜レール631の上方に傾斜レール631の傾きに沿って設けられる。
再組立部606は、後述する第2の燃料集合体作業台900に装着されたスケルトンに除染した燃料棒105,109を挿入して燃料棒集合体101の形状に再組み立てするための準備をする領域である。図8及び図9に示すように、再組立部606は、作業台601における解体・除染部602が設けられている側とは反対側の側面上方部に設けられ、解体・除染部602と同様の構造を有する。したがって、再組立部606は、解体・除染部602と同様に、燃料棒105,109を挿入する際に、燃料棒105,109の鉛直方向及び水平方向の湾曲を防止することができる。
燃料棒取扱作業台601の払出サーベイ部603に載置されている間に汚染検査が行われ、検出限界以下まで除染されていることが確認された後に、燃料棒105,109は、燃料棒サーベイ作業台701に移送される。燃料棒サーベイ作業台701は、払出サーベイ部603のX方向に隣接して配置されている。燃料棒サーベイ作業台701は、汚染検査の補助を行い、2回目の汚染検査を行う設備である。燃料棒サーベイ作業台701では、ろ紙による汚染検査が行われる。
燃料棒サーベイ作業台701は、払出サーベイ部603から移送された燃料棒105,109の2回目の汚染検査をするために一時的に留め置き、スミヤサーベイバッファ部604へ燃料棒105,109を移送することができる限り、その構造は特に限定されない。一例として、図12に示す燃料棒サーベイ作業台701について説明する。燃料棒サーベイ作業台701は、図8に示すように、燃料棒取扱作業台601にX方向に隣接して配置され、その幅は特に限定されないが、この実施形態の燃料棒サーベイ作業台701は払出サーベイ部603及びスミヤサーベイバッファ部604の合計幅の少なくとも2倍の幅を有する。図12に示すように、燃料棒サーベイ作業台701は、格子状に配置されたステンレス製の支柱部710と、支柱部710の上にX方向に間隔をあけて配置され、Y方向に延在する複数枚のアルミ製の板720と、アルミ製の板720の上にX方向に延在する2つのアルミ製の可動テーブル730とを有する。支柱部710は、アンカー等で床面13に固定され、耐震性を有するように形成されている。この実施形態では、可動テーブル730は、払出サーベイ部603及びスミヤサーベイバッファ部604それぞれの幅と同じ幅すなわちY方向長さを有し、2つの可動テーブル730の可動範囲は2つの可動テーブル730の合計幅の2倍である。可動テーブル730は、払出サーベイ部603と同様に、テーブル部731と、その上にX方向に所定の間隔をあけて一列に配置された8つのボール式ガイドローラ732とにより構成され、4本の燃料棒を間隔をあけて載置できる構造になっている。ボール式ガイドローラ732は、図11に示すボール式ガイドローラ621と同様の構造を有している。ボール式ガイドローラ732は、燃料棒の回転及び軸方向への移動を補助すると共に、隣接する燃料棒105,109同士を接触させない構造を有している。ボール式ガイドローラ732は、隣接する燃料棒105,109同士を接触させない構造を有するので、隣接する燃料棒105,109同士の接触による汚染を防止することができる。ボール式ガイドローラ732は、テーブル部731に着脱可能に形成されており、交換することができるので、ボール式ガイドローラ732からの汚染を防止することができる。ボール式ガイドローラ732はアルミ等の除染し易い部材で形成されるのが好ましい。可動テーブル730は、払出サーベイ部603とスミヤサーベイバッファ部604の高さと同じであるので、燃料棒105,109が鉛直方向にたわむことなく平行に移送することができる。なお、この実施形態では、可動テーブル730は、払出サーベイ部603と同様にX方向に沿って8つのボール式ガイドローラ732が配置され、4本の燃料棒105,109を載置できるように形成されているが、払出サーベイ部603と同様に、例えば少なくとも3つのボール式ガイドローラが配置され、V溝は1つであってもよく、複数本の燃料棒105,109を1バッチとして処理するのが効率的である点で、2〜8つのV溝が設けられているのが好ましい。また、V溝における2つの傾斜面には、それぞれ少なくとも1つのボールが回転可能に設けられていればよい。
可動テーブル730はY方向に可動できるようにテーブル部731の下面にローラ等が設けられている。したがって、払出サーベイ部603から燃料棒105,109を受け取る際には、可動テーブル730を払出サーベイ部603の軸線と一致する位置に配置し、スミヤサーベイバッファ部604へ移送する際には、可動テーブル730をスミヤサーベイバッファ部604の軸線と一致する位置に配置することで、燃料棒105,109を水平方向に湾曲することなく移送することができる。スミヤサーベイバッファ部604に移送した燃料棒105,109について、再度汚染検査が必要になった場合に、2つの可動テーブル730が独立して可動するので、燃料棒105,109を燃料棒サーベイ作業台701に戻して、再度汚染検査をすることができる。
可動テーブル730及び燃料棒105,109の動きについて、図14を参照しつつ説明する。図14において、一方の可動テーブルを第1可動テーブル730a、他方の可動テーブルを第2可動テーブル730bと称する。第1可動テーブル730a及び第2可動テーブル730bを燃料棒サーベイ作業台701のY方向の中央に配置したとき、第1可動テーブル730aは払出サーベイ部603のX方向に隣接する位置に配置され、第2可動テーブル730bはスミヤサーベイバッファ部604のX方向に隣接する位置に配置される。燃料棒サーベイ作業台701は、X方向から見て、4つの可動テーブル730を設置できる幅を有する。図14において、可動テーブル730の位置を左から順に第1位置(1)、第2位置(2)、第3位置(3)、第4位置(4)と称する。また、以下においては4本の燃料棒105,109を1バッチとして処理及び移送を行う場合について説明する。
ステップ0では、未使用核燃料集合体101の解体が開始され、燃料棒サーベイ作業台701には燃料棒105,109が載置されていない。ステップ1では、第1可動テーブル730aが第2位置(2)に固定され、払出サーベイ部603から1バッチ目の4本の燃料棒105,109が第1可動テーブル730aに払い出される。グリーンハウス20内では、2バッチ目の燃料棒105,109が引き抜かれ、除染される。ステップ2では、第2可動テーブル730bが第2位置(2)に移動され、払出サーベイ部603から2バッチ目の4本の燃料棒105,109が第2可動テーブル730bに払い出される。このとき、1バッチ目の燃料棒105,109は、ろ紙による2回目の汚染検査が行われている。その後、2バッチ目の汚染検査が行われる。ステップ3では、第1可動テーブル730aが第3位置(3)に、第2可動テーブル730bが第4位置(4)に移動される。ステップ4では、ろ紙による2回目の汚染検査の合格判定を受けて、1バッチ目の燃料棒105,109をスミヤサーベイバッファ部604に払い出す。ステップ5では、第1可動テーブル730aが第2位置(1)に移動され、3バッチ目の燃料棒105,109が払出サーベイ部603から払い出される。ステップ6では、第2可動テーブル730bが第3位置(3)に移動され、2バッチ目の燃料棒105,109をスミヤサーベイバッファ部604に払い出す。ステップ6の後の状態は、ステップ1の後の状態と同じであることから、これ以降はステップ2〜ステップ6の動作が繰り返される。このように、2つの可動テーブル730a,730bを可動させて燃料棒105,109をバッチ単位で移動させることで、燃料棒105,109を滞留させることなく、また燃料棒105,109の順序が入れ替わることなく、第2汚染検査工程を行うことができる。
なお、第2汚染検査工程に用いる放射線測定器の検出効率が高く、第2汚染検査工程に要する時間がその前工程の燃料棒105,109の払い出しを律速するものでない場合、図14に示すように第1及び第2の可動テーブル730a,730bを設けることなく、第1可動テーブルだけで燃料棒105,109を次の工程に払い出してもよい。
なお、作業台300及び台401等の、燃料集合体101、燃料棒105,109を扱う設備は、全て難燃性又は不燃性の材料で形成されているのが、防災上の観点から好ましい。
作業台300が設置されている領域には、テレビカメラが設置されているのが好ましい。テレビカメラを設置することによって、あるいは、予め設置されたテレビカメラの視界内にこの領域を設定することによって、燃料棒105,109が燃料集合体101に組み立てられる前に、作業台300が設置されている作業スペース15から持ち出されないように管理することができる。
この実施形態の未使用核燃料の処理システムは、未使用核燃料集合体101を装荷し、未使用核燃料集合体101の姿勢変更を補助する燃料保持架台301を有するので、使用済燃料プール12に鉛直状態に貯蔵されている未使用核燃料集合体101を水平状態にする際に、未使用核燃料集合体101が自重でたわんで燃料棒105,109やその他の部材が変形するのを防止することができる。また、水平状態に姿勢変更した後の燃料保持架台301を含む作業台300で、未使用核燃料集合体101を解体及び除染することができるので、作業者の高さ方向の移動がなく、水平方向の移動で処理作業を行うことができ、効率的で安全である。
この実施形態の未使用核燃料の処理システムによると、未使用核燃料集合体101に付着していた放射性物質を除染した後に、例えば加工施設に輸送されるので、加工施設に輸送する過程で放射性物質による環境の汚染及び人体への被曝が生じるおそれがない。また、原子炉施設に搬入されたときと同じ燃料集合体101という形状で搬出できるので、搬入の際に使用できる容器と同じ設計の容器を使用して搬出することができ、未使用核燃料を輸送するための容器を別に用意する必要がなく、低コストである。また、搬入の際に使用した容器であれば設計上の安全性が確認されており、法令上の規制も少ない。さらに、燃料ペレットが燃料棒105,109に収容された状態で搬出されるので、計量するのが容易であり、燃料棒105,109から燃料ペレットを取り出して搬出するよりも、計量管理が容易である。
この実施形態の未使用核燃料の処理システムを用いて再組み立てされた未使用核燃料集合体101が加工施設に輸送された場合には、未使用核燃料は、加工施設で物理的に、例えばウラン酸化物(U、UO)の粉末及び円柱状のペレット等の様々な形態に加工することができる。加工された核燃料は、原子力発電所等の原子炉施設等に輸送され、再利用することができる。このように、未使用核燃料が、再処理工場ではなく、加工施設に輸送されると、化学処理を経ずに、例えば物理的な形状等の加工を行うだけで再利用できる状態にすることができるので、工程数を低減することができ、低コストである。また、加工施設へ輸送された未使用核燃料は、そのまま他の原子炉施設へ輸送して再利用すること、及び加工施設で物理的な形状の加工を行い、再度燃料集合体を形成して軽水炉で再利用すること等、再利用の自由度を高めることができる。
この発明に係る未使用核燃料の処理方法及び未使用核燃料の処理システムは、前記実施形態に限定されることなく、この発明の課題を達成することができる限り適宜変更をすることができる。
例えば、以下の変更がある。
本明細書では沸騰水型軽水炉に装荷される燃料集合体101で、全ての燃料棒105の長さが一致している実施例を記載したが、燃料集合体の設計によっては一部の燃料棒の長さが他の大多数の燃料棒の長さよりも短い「部分長燃料棒」を含むものもある。この場合、前記実施形態の未使用核燃料の処理方法に記載したように手動で燃料棒を引き抜く際に上端部を直接手で掴んで引き抜くことは困難なため、部分長燃料棒に限定して延長工具を連結し、延長工具を掴んで引き抜く、あるいは、燃料集合体の再組立工程で延長工具を連結したままスケルトンに挿入することとしてもよい。
部分長燃料棒は、他の燃料棒と隣接した状態でスケルトンに挿入することは困難であるため、解体の順序としてタイロッドを全て引き抜いた後に、あるいはタイロッドの引き抜きよりも先に部分長燃料棒を引き抜いて、タイロッドよりも先に部分長燃料棒を汚染していないスケルトンに挿入する手順としてもよい。
前記実施形態では計量管理を容易にするために再組み立てする燃料集合体101の燃料棒105,109の配置は解体する未使用核燃料集合体101と一致させることとしていたが、原子炉施設での計量管理や除染した燃料集合体を受け入れる加工工場での計量管理のシステム・ルールが対応していれば、必ずしも燃料棒の配置は完全に一致していなくてもよい。
本明細書では燃料棒105,109の第2の汚染検査工程で可動テーブル730を2つ並べ、その可動範囲を可動テーブル7302つ分の幅の2倍にとり、2回目の汚染検査の判定が出るまでの待ち時間の間に可動テーブル730を払い出し側すなわち払出サーベイ部603側に移動させて別の可動テーブル730に1回目の汚染検査が合格となった燃料棒105,109を受け入れる実施例を記載しているが、2回目の汚染検査の時間が律速とならない測定器を使用している場合には可動テーブル730を1個にして、運用してもよい。
本明細書では、除染した燃料棒105,109を汚染していない部材のスケルトンに挿入し、燃料集合体101の形状に組み立てることで輸送上の規制や計量管理を容易にする実施例が記載されている。しかし、搬出に使用する輸送容器が燃料棒の形状で梱包すること、あるいは燃料棒を燃料集合体の形状でなく燃料棒梱包体といった形状に梱包することで輸送することが設計上認められている型式のものであれば、1体の燃料集合体から引き抜いた全ての燃料棒が過不足なく1体の燃料棒梱包体、又は1基の輸送容器に梱包され、解体する前の燃料集合体に付された固有番号と燃料梱包体又は輸送容器との対応を付けることが可能であれば、必ずしも燃料集合体の形状に組み立てなくてもよい。
本明細書では、未使用核燃料集合体101の解体及び除染を行う作業エリアをグリーンハウス20で囲むことで汚染の拡大を防止する実施例が記載されているが、使用済燃料プールから引き上げた未使用核燃料集合体全面を難燃シート等で覆い、また、汚染区域と管理区域との境界を燃料集合体作業台500を設置した空間から十分に距離を置き、さらに、汚染区域の空気中放射性物質濃度を常時監視するなどの方法によって、管理区域が汚染するおそれがない場合には、解体及び除染作業を行う空間を必ずしもグリーンハウスで囲っていなくともよい。
本明細書の実施例では、燃料保持架台受座501等の作業台300は床面13にアンカー等で固定することによって耐震性を担保することとしているが、燃料保持架台受座501等の設計が水平方向荷重による移動や転倒を十分に防ぐことができるものとなっていれば、必ずしもアンカー等によって床面と固定していなくてもよい。
本明細書では、実施例として沸騰水型原子力発電施設から、沸騰水型原子炉用燃料集合体を搬出するための未使用核燃料の処理方法及び処理システムを記載したが、この発明に係る未使用核燃料の処理方法及び処理システムは、加圧水型原子力発電施設から加圧水型原子炉用燃料集合体を搬出する場合に適用することができる。
本明細書では、ピット14に燃料保持架台301を固定して、この燃料保持架台301に未使用核燃料集合体101を装荷する実施例が記載されているが、床面13に燃料保持架台301が転倒しないような対策を施して起立させ、架台装荷工程を実施してもよい。
本明細書の実施例では、引き抜いた燃料棒105,109の位置と再組立ての際の燃料棒105,109の挿入位置とを一致させ、移送途中での燃料棒105,109の追い越しが発生しないような管理を行っているが、除染が完了した燃料棒105,109を蓄積しておき、再組立てにおいては燃料棒に刻字されたバーコードの読み取りで燃料棒を識別することによって挿入位置を指定するような自動管理を行ってもよい。
11 作業フロア
12 使用済燃料プール
13 床面
14 ピット
15 作業スペース
16 保管スペース
18 検査台
19 貯蔵ラック
20 グリーンハウス
21 チャンネルボックス
22 チャンネルファスナ
101 燃料集合体
102 上部タイプレート
103 スペーサ
104 下部タイプレート
105,109 燃料棒
106 ハンドル
107 ノズル部
108 ロックナット
109 タイロッド
110 水管
111 ロッドスプリング
112 グリッド部
300 作業台
301 燃料保持架台
302 バック枠板
303 底部
304 上部タイプレート保持部
305 スペーサ保持部
306 ローラ
307 第1連結部
308 第2連結部
401 台
411 底面部
412 上面部
413 支持板
414 突起
500 燃料集合体作業台
501 燃料保持架台受座
601 燃料棒取扱作業台
602 解体・除染部
603 払出サーベイ部
604 スミヤサーベイバッファ部
605 再組立バッファ部
606 再組立部
610 支柱部
611 段切替部
612,633 ガイドローラ
613,634 ローラ部
620 フレーム部
621,732 ボール式ガイドローラ
622 傾斜面
623 ボール
624 板
625 ボール受座
631 傾斜レール
632 回動板
641 個別払出機構
642 分離部
643 払出部
651 制限枠
701 燃料棒サーベイ作業台
710 支柱部
720 板
730,730a,730b 可動テーブル
731 テーブル部
801 第2の燃料保持架台
900 第2の燃料集合体作業台
901 第2の燃料保持架台受座

Claims (15)

  1. 原子炉施設の使用済燃料プールに使用済核燃料集合体と共に貯蔵されている未使用核燃料集合体を装荷し、前記未使用核燃料集合体の姿勢変更を補助する燃料保持架台を含むと共に、前記未使用核燃料集合体を解体及び除染するのに用いる作業台を有する未使用核燃料の処理システム。
  2. 前記作業台は、前記燃料保持架台を水平状態で自身の上に着脱可能に固定することのできる燃料保持架台受座を有する請求項1に記載の未使用核燃料の処理システム。
  3. 前記燃料保持架台受座は、その高さが1mより低い請求項2に記載の未使用核燃料の処理システム。
  4. 前記作業台は、前記未使用核燃料集合体から引き抜いた燃料棒を載置する解体・除染部を有し、前記解体・除染部は、前記未使用核燃料集合体に配置されている燃料棒の高さに合わせて高さを変更可能である請求項1〜3のいずれか一項に記載の未使用核燃料の処理システム。
  5. 前記作業台は、前記未使用核燃料集合体の軸線方向に沿って配置された少なくとも3つのボール式ガイドローラを有し、前記ボール式ガイドローラは、少なくとも2つのV溝を有し、前記V溝における2つの傾斜面にそれぞれ少なくとも1つのボールが回転可能に設けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の未使用核燃料の処理システム。
  6. 前記作業台は、前記燃料棒を転動可能に設けられた傾斜レールと前記傾斜レールの上方に設けられ、前記燃料棒の移送順序の入れ替えを不能にする制限枠とを有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の未使用核燃料の処理システム。
  7. 前記作業台は、前記未使用核燃料集合体の軸線に直交する方向に移動する可動テーブルを有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の未使用核燃料の処理システム。
  8. 前記作業台は、複数の前記可動テーブルを有し、前記可動テーブルは互いに独立して可動する請求項7に記載の未使用核燃料の処理システム。
  9. 前記作業台は、除染した燃料棒が配置される第2の燃料保持架台受座を有し、前記第2の燃料棒保持架台受座と前記燃料保持架台受座とが、並行に設置されている請求項1〜8のいずれか一項に記載の未使用核燃料の処理システム。
  10. 前記第2の燃料棒保持架台受座と前記燃料保持架台受座とは、未臨界を担保できる距離を離して設置されている請求項9に記載の未使用核燃料の処理システム。
  11. 原子炉施設の使用済燃料プールに使用済核燃料集合体と共に貯蔵されている未使用核燃料集合体を装荷した燃料保持架台を、鉛直状態から水平状態に姿勢を変更する姿勢変更工程、
    前記未使用核燃料集合体から燃料棒を引き抜く解体工程、及び
    前記燃料棒の表面を除染する除染工程
    を有する未使用核燃料の処理方法。
  12. 除染した燃料棒の汚染検査を行う汚染検査工程を有する請求項11に記載の未使用核燃料の処理方法。
  13. 除染した燃料棒を燃料集合体に組み立てる再組立工程を有する請求項11又は12に記載の未使用核燃料の処理方法。
  14. 前記再組立工程で組み立てられた燃料集合体は、前記未使用核燃料集合体を構成する燃料棒と同じ配列に組み立てられ、前記未使用核燃料集合体と同一の固有番号が付されている請求項13に記載の未使用核燃料の処理方法。
  15. 前記除染工程及び汚染検査工程は、2〜8本の燃料棒を1バッチとして処理及び移送を行う請求項12〜14のいずれか一項に記載の未使用核燃料の処理方法。
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