以下に、本発明に係る作業車両の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係るトラクタの概略図である。図2は、図1のA−A矢視図である。図3は、図1のB−B矢視図である。図4は、図1のC−C矢視図である。なお、以下の説明では、本実施形態に係るトラクタ1の通常の使用態様時における前後方向、左右方向、上下方向を、各部位においてもそれぞれ前後方向、左右方向、上下方向として説明する。圃場等で作業を行う作業車両である、本実施形態に係るトラクタ1は、操舵用の車輪として設けられる前輪3と、駆動用の車輪として設けられる後輪4とを有している。このうち、後輪4には、トラクタ1の動力源として機体前部のボンネット6内に搭載されるエンジン(図示省略)で発生した回転動力を、複数の変速段を有する変速装置7(図7参照)で適宜減速して伝達可能になっており、後輪4は、この回転動力によって駆動力を発生する。また、この変速装置7は、エンジンで発生した回転動力を、必要に応じて前輪3にも伝達可能になっており、この場合は、前輪3と後輪4との四輪で駆動力を発生する。即ち、変速装置7は、二輪駆動と四輪駆動との切り替えが可能になっている。
また、後輪4の上方から前方にかけた位置には、後輪4を覆うことにより後輪4で巻き上げた土の飛散を抑えるフェンダー28が設けられている。さらに、トラクタ1の機体後部には、ロータリ(図示省略)等の作業機を装着可能な連結装置8が配設されている。
また、トラクタ1は、作業者がトラクタ1を操縦する際に入り込むキャビン10を備えている。このキャビン10は、上端にルーフ12を有しており、さらに、キャビン10を構成すると共にトラクタ1の上下方向に延びて形成される縦支柱であるピラー15を複数有している。即ち、キャビン10は、複数のピラー15として、フロントピラー16と、センターピラー17と、リアピラー18と、を有しており、これらのピラー15は、それぞれ機体左右方向における両側に1つずつが配設されている。
このうち、フロントピラー16は、機体前後方向におけるルーフ12の前端付近から下方に向かって形成されており、リアピラー18は、ルーフ12の後端付近から下方に向かって形成されている。また、センターピラー17は、機体前後方向におけるフロントピラー16とリアピラー18との間の位置に配設されており、ルーフ12から下方に向かって形成されている。これらのピラー15は、金属材料によって形成されており、キャビン10の強度を確保する部材になっている。
また、ピラー15には、ピラー15間に透明のガラス等からなるウインド22が取り付けられている。これにより、キャビン10は、閉塞された空間を内部に形成しつつ、ウインド22を介して内側から外部を視認することが可能になっている。また、キャビン10は、側面に開閉扉20を有しており、開閉扉20は、フロントピラー16とセンターピラー17との間に配設されている。この開閉扉20は、ヒンジ21によってセンターピラー17に連結されている。これにより、開閉扉20は、センターピラー17付近を軸として回動可能に配設され、この回動により、フロントピラー16とセンターピラー17との間を開閉することが可能になっている。この開閉扉20にも、透明のガラス等からなるウインド22が取り付けられており、開閉扉20が配設されている位置でも、ウインド22を介して内側から外部を視認することが可能になっている。また、キャビン10は、開閉扉20を閉めた際には、室内が概ね密閉された空間になる。
また、開閉扉20の前方に位置するフロントピラー16には、トラクタ1の後方を視認する際に用いるサイドミラー24が取り付けられている。さらに、機体前方側に配設されるウインド22の前方の上端には、発光することによってトラクタ1の前方を照らすワークランプ26が配設されている。このワークランプ26は、当該ウインド22の上端付近における左右両端付近の2箇所に配設されている。
さらに、キャビン10の外面における開閉扉20の下方には、キャビン10に対する昇降用のステップ30が配設されている。即ち、トラクタ1のキャビン10は地面から離れた比較的高い位置に位置しているため、ステップ30は、キャビン10に対して出入りする際に足を掛けて昇降することにより、キャビン10内への作業者の容易な出入りを可能にしている。このステップ30は、開閉扉20の下端付近から下方に向かって延在する支柱31を有しており、支柱31には、作業者がキャビン10内に出入りする際に足を掛ける複数の足掛部32が、機体上下方向に並んでそれぞれ接続されている。ステップ30は、このように複数の足掛部32を支柱31で支持することにより構成されており、このように構成されるステップ30は、トラクタ1の左右両側に配設されている。
図5は、図1に示すキャビン内の平面図である。図6は、図5に示すキャビン内の斜視図である。キャビン10内には、トラクタ1の作業者がトラクタ1の運転操作を行う際に座る操縦席40が配設されており、操縦席40の前方には、操舵輪である前輪3の操舵を行う際に操作をするハンドル41が配設されている。ハンドル41は、当該ハンドル41を回転可能に指示するハンドルポスト42の上端側に配設されている。このハンドルポスト42には、トラクタ1の走行時における進行方向を前進と後進とで切り替える前後進切替レバー43が、側方に配設されている。
また、ハンドルポスト42の下方側、即ち、操縦席40に作業者が座った場合における作業者の足元付近には、クラッチペダル45、ブレーキペダル46、アクセルペダル47が設置されている。このうち、ブレーキペダル46は、左側後輪4用のブレーキペダル46と右側後輪4用のブレーキペダル46との2つが設けられており、この2つのブレーキペダル46は、連結させることが可能になっている。このため、2つのブレーキペダル46を独立して操作した場合には、左右の後輪4に対して独立して制動力を発生させることが可能になっており、2つのブレーキペダル46を連結した状態で操作した場合には、左右の後輪4の双方に対して制動力を発生させることが可能になっている。
また、機体左右方向におけるキャビン10内の操縦席40の右側には、トラクタ1の各種運転操作を行う部材が備えられる操作パネル50が設けられている。この操作パネル50には、例えば、スロットルレバー51、主変速増減スイッチ52、副変速レバー53、サブコンレバー54、感度調整ダイヤル55、ドラフト比調整ダイヤル56が配設されている。
このうち、スロットルレバー51は、主に圃場での作業時に用いられ、アクセルペダル47と同様にエンジン回転数を調節することが可能になっており、さらに、任意の操作状態を維持することにより、エンジン回転数を任意の回転数で維持させることができるレバーになっている。また、主変速増減スイッチ52は、複数の変速段を有する変速装置7の変速段を切り替えることが可能なスイッチになっており、減速比が小さい変速段である高速側の変速段に切り替えるスイッチと、減速比が大きい変速段である低速側の変速段に切り替えるスイッチと、の2つのスイッチにより構成されている。
また、副変速レバー53は、路上走行時における速度領域である走行速と、圃場での作業時における速度領域である作業速と、に変速操作をする変速操作具として設けられる操作レバーになっている。この副変速レバー53は、作業速を選択した場合には、さらに、中速側と低速側とに切り替えることが可能になっている。詳しくは、副変速レバー53は、変速装置7での減速比により決定されるトラクタ1の走行時の速度領域を、高速と中速と低速とで切り替え可能になっており、走行速として高速が割り当てられ、作業速として中速と低速とが割り当てられている。このため、副変速レバー53は、高速に切り替えることにより走行速に切り替えることができ、中速または低速に切り替えることにより、作業速に切り替えることができる。さらに、副変速レバー53は、中立に切り替えることが可能になっており、副変速レバー53を中立に切り替えると、エンジンで発生した動力を前輪3や後輪4には伝達せず、トラクタ1が走行しないように変速装置7を切り替えることができる。
また、サブコンレバー54は、連結装置8に連結される作業機に対して供給する油圧を調節することのできるレバーになっており、油圧の調節によって、任意の作動状態で作業機を作動させることが可能になっている。また、感度調整ダイヤル55は、変速装置7で変速を行う際における速度等の変速状態を調整することができる調整手段になっている。
また、ドラフト比調整ダイヤル56は、連結装置8に作業機を連結して牽引作業を行う際における牽引負荷を調整する負荷調整手段になっている。詳しくは、トラクタ1には、連結装置8に、走行時における牽引負荷を検出する牽引負荷検出手段であるドラフトセンサ58(図8参照)が備えられており、連結装置8は、ドラフトセンサ58で検出した牽引負荷に応じて、上下方向における作業機の位置を調節することが可能になっている。例えば、ドラフトセンサ58で検出した牽引負荷が大きい場合には、連結装置8を作動させて作業機の位置を上方に移動させることにより、作業機が受ける圃場からの負荷を低減し、走行時の負荷を低減させることが可能になっている。
ドラフト比調整ダイヤル56は、このように上下方向における位置を調節することができる作業機の作業位置と、牽引負荷とのバランスを調節する部材になっており、例えば、左側に回すと、作業機の作業位置であるポジション優先になり、牽引負荷に対する感度が鈍くなる。この場合、作業機は、設定したポジションからの変動が少なくなり、上下方向における移動が少なくなる。また、ドラフト比調整ダイヤル56は、右側に回すと、牽引時における負荷優先になり、牽引負荷に対する感度が鋭くなる。この場合、作業機は、ドラフトセンサ58で検出した牽引負荷が大きくなると、牽引負荷が小さくなるように上方に移動し、ドラフトセンサ58で検出した牽引負荷が小さくなると、設定した作業位置まで下降することにより、牽引負荷が大きくなり過ぎないようにする。
図7は、図1に示すトラクタに備えられる変速装置の断面図である。変速装置7は、変速装置7の入力軸である変速装置入力軸60が、メインクラッチ61を介して連結されている。また、変速装置7は、エンジンで発生した動力を変速して各部に出力する変速機構65を内設しており、変速装置入力軸60は、この変速機構65の入力軸になっている。変速機構65は、前後進切替機構70と、主変速機構80と、Hi−Lo変速機構90と、副変速機構100と、を備えており、主変速機構80とHi−Lo変速機構90と副変速機構100とは、それぞれ複数の変速段を有している。
このうち、前後進切替機構70は、変速装置入力軸60に入力された動力を、前後進切替機構70の入力軸である主変速入力軸81に対して伝達可能になっており、その際に、前後進切替レバー43の操作に応じて、回転方向を切り替えて伝達することが可能になっている。
詳しくは、前後進切替機構70は、変速装置入力軸60上に配設される複数の前後進駆動ギヤ72と、主変速入力軸81上に配設される複数の前後進従動ギヤ73と、を有しており、それぞれ前進用と後進用との2組が設けられている。このうち、前進用の前後進駆動ギヤ72と前後進従動ギヤ73とは、直接噛み合っているのに対し、後進用の前後進駆動ギヤ72と前後進従動ギヤ73とは、カウンタギヤ74を介して噛み合っている。
また、前後進従動ギヤ73は、主変速入力軸81と一体となって回転可能になっている一方で、前後進駆動ギヤ72は、変速装置入力軸60に対して相対回転可能に配設されている。相対回転可能な各前後進駆動ギヤ72と変速装置入力軸60とは、それぞれ前後進切替クラッチ71によって、接続と解放とが切り替え可能になっている。前後進切替クラッチ71は、油圧によって作動する多板の摩擦クラッチ、即ち油圧クラッチとして構成されており、前進用と後進用の前後進駆動ギヤ72のそれぞれに対応して設けられている。前後進切替クラッチ71は、エンジンで発生した動力によって作動して油圧を発生する油圧ポンプ146(図8参照)で発生した油圧によって作動し、接続と解放とが切り替えられる。
前後進駆動ギヤ72と変速装置入力軸60とは、前後進切替クラッチ71が接続することにより、対応する前後進駆動ギヤ72と変速装置入力軸60とが接続し、前後進切替クラッチ71が解放することにより、対応する前後進駆動ギヤ72と変速装置入力軸60とが解放する。このため、前進用の前後進駆動ギヤ72に対応する前後進切替クラッチ71の接続時には、変速装置入力軸60に入力された動力は、この前後進駆動ギヤ72から、当該前後進駆動ギヤ72に噛み合う前後進従動ギヤ73に伝達された動力が、主変速入力軸81に伝達される。
また、後進用の前後進駆動ギヤ72に対応する前後進切替クラッチ71の接続時には、変速装置入力軸60に入力された動力は、カウンタギヤ74を介してこの前後進駆動ギヤ72に噛み合う前後進従動ギヤ73に対して伝達され、前後進従動ギヤ73に伝達された動力が、主変速入力軸81に伝達される。この場合、前後進従動ギヤ73には、カウンタギヤ74を介して動力が伝達されるため、伝達された動力によって回転をする主変速入力軸81の回転方向は、前進用の前後進駆動ギヤ72に対応する前後進切替クラッチ71の接続時における主変速入力軸81の回転方向の反対方向になる。
また、主変速機構80は、前後進切替機構70によって主変速入力軸81に伝達された動力を、Hi−Lo変速機構90の入力軸であるHi−Lo入力軸91に対して伝達可能になっており、その際に、主変速増減スイッチ52の操作に応じて、変速比を切り替えて伝達することが可能になっている。
詳しくは、主変速機構80は、主変速入力軸81上に配設される複数の主変速駆動ギヤ83と、Hi−Lo入力軸91上に配設されると共に主変速駆動ギヤ83に噛み合う複数の主変速従動ギヤ84と、を有している。これらの主変速駆動ギヤ83と主変速従動ギヤ84とは、噛み合っている主変速駆動ギヤ83と主変速従動ギヤ84とを1組として、4組が設けられており、4組の主変速駆動ギヤ83と主変速従動ギヤ84とは、それぞれ変速比が異なっている。
また、主変速従動ギヤ84は、Hi−Lo入力軸91と一体となって回転可能になっている一方で、主変速駆動ギヤ83は、主変速入力軸81に対して相対回転可能に配設されている。相対回転可能な各主変速駆動ギヤ83と主変速入力軸81とは、それぞれ主変速クラッチ82によって、接続と解放とが切り替え可能になっている。主変速クラッチ82は、前後進切替クラッチ71と同様に油圧によって作動し、接続と解放とが切り替えられる多板の摩擦クラッチとして構成されており、4つの主変速駆動ギヤ83のそれぞれに対応して設けられている。
主変速駆動ギヤ83と主変速入力軸81とは、主変速クラッチ82が接続することにより、対応する主変速駆動ギヤ83と主変速入力軸81とが接続し、主変速クラッチ82が解放することにより、対応する主変速駆動ギヤ83と主変速入力軸81とが解放する。このため、4つの主変速クラッチ82のうち、いずれかの主変速クラッチ82の接続時には、主変速入力軸81に入力された動力は、接続している主変速クラッチ82に対応する主変速駆動ギヤ83から、当該主変速駆動ギヤ83に噛み合う主変速従動ギヤ84に伝達された動力が、Hi−Lo入力軸91に伝達される。
つまり、主変速入力軸81とHi−Lo入力軸91との間では、接続した主変速クラッチ82に対応する主変速駆動ギヤ83と主変速従動ギヤ84とによって動力が伝達される。また、4組の主変速駆動ギヤ83と主変速従動ギヤ84とは、それぞれ変速比が異なっているため、主変速入力軸81とHi−Lo入力軸91との間では、接続する主変速クラッチ82によって、異なる変速比によって動力が伝達される。また、主変速クラッチ82は、これらのように主変速機構80が有する変速段に対応して複数設けられると共に、対応する変速段での動力の伝動時には接続し、対応する変速段での動力の遮断時には解放する変速用の油圧クラッチになっている。
また、Hi−Lo変速機構90は、主変速機構80によってHi−Lo入力軸91に伝達された動力を、副変速機構100側に伝達可能になっており、主変速増減スイッチ52の操作と主変速機構80の変速状態に応じて、変速比を切り替えて伝達することが可能になっている。詳しくは、Hi−Lo変速機構90は、Hi−Lo入力軸91上に配設される2つのHi−Lo駆動ギヤ94と、Hi−Lo変速機構90の出力軸であるHi−Lo出力軸92上に配設されると共にHi−Lo駆動ギヤ94に噛み合う2つのHi−Lo従動ギヤ95と、を有している。即ち、Hi−Lo駆動ギヤ94とHi−Lo従動ギヤ95とは、噛み合っているHi−Lo駆動ギヤ94とHi−Lo従動ギヤ95とを1組として、2組が設けられており、2組のHi−Lo駆動ギヤ94とHi−Lo従動ギヤ95とは、それぞれ変速比が異なっている。
また、Hi−Lo駆動ギヤ94は、Hi−Lo入力軸91と一体となって回転可能になっている一方で、Hi−Lo従動ギヤ95は、Hi−Lo出力軸92に対して相対回転可能に配設されている。相対回転可能な各Hi−Lo従動ギヤ95とHi−Lo出力軸92とは、それぞれHi−Lo切替クラッチ93によって、接続と解放とが切り替え可能になっている。Hi−Lo切替クラッチ93は、前後進切替クラッチ71や主変速クラッチ82と同様に油圧によって作動し、接続と解放とが切り替えられる多板の摩擦クラッチとして構成されており、2つのHi−Lo従動ギヤ95のそれぞれに対応して設けられている。
Hi−Lo従動ギヤ95とHi−Lo出力軸92とは、Hi−Lo切替クラッチ93が接続することにより、対応するHi−Lo従動ギヤ95とHi−Lo出力軸92とが接続し、Hi−Lo切替クラッチ93が解放することにより、対応するHi−Lo従動ギヤ95とHi−Lo出力軸92とが解放する。このため、2つのHi−Lo切替クラッチ93のうち、いずれかのHi−Lo切替クラッチ93の接続時には、Hi−Lo入力軸91に入力された動力は、接続しているHi−Lo切替クラッチ93に対応するHi−Lo従動ギヤ95に噛み合うHi−Lo駆動ギヤ94から、Hi−Lo従動ギヤ95に伝達された動力が、Hi−Lo出力軸92に伝達される。
つまり、Hi−Lo入力軸91とHi−Lo出力軸92との間では、接続したHi−Lo切替クラッチ93に対応するHi−Lo従動ギヤ95とHi−Lo駆動ギヤ94とによって動力が伝達される。また、2組のHi−Lo駆動ギヤ94とHi−Lo従動ギヤ95とは、それぞれ変速比が異なっているため、Hi−Lo入力軸91とHi−Lo出力軸92との間では、接続するHi−Lo切替クラッチ93により、異なる変速比によって動力が伝達される。また、Hi−Lo切替クラッチ93は、これらのようにHi−Lo変速機構90が有する変速段に対応して複数設けられると共に、対応する変速段での動力の伝動時には接続し、対応する変速段での動力の遮断時には解放する変速用の油圧クラッチになっている。
副変速機構100には、Hi−Lo出力軸92に設けられる副変速機構入力部材101によって、Hi−Lo変速機構90から動力を伝達することが可能になっている。副変速機構100は、Hi−Lo変速機構90から伝達された動力を、副変速レバー53の操作に応じて変速比を切り替えて、副変速機構100の出力軸である副変速出力軸104によって出力することが可能になっている。
詳しくは、副変速機構100は、副変速レバー53の操作によって作動し、副変速機構入力部材101から副変速出力軸104までの動力の伝達経路を切り替えることができる副変速シフター105を2つ備えている。副変速機構入力部材101は、Hi−Lo出力軸92における副変速機構100側の端部に設けられており、2つの副変速シフター105のうち、一方の副変速シフター105は、副変速出力軸104におけるHi−Lo出力軸92側の端部付近に配設されている。この副変速シフター105は、副変速機構入力部材101と副変速出力軸104との連結と非連結とを切り替えることが可能になっており、即ち、Hi−Lo出力軸92と副変速出力軸104との直結と非連結とを切り替えることが可能になっている。
また、副変速機構入力部材101は、副変速機構100が有する副変速第1カウンタ軸102に設けられる第1カウンタ軸ギヤ106に噛み合っている。また、副変速出力軸104には、当該副変速出力軸104に対して相対回転をする出力軸ギヤ108が複数備えられており、副変速第1カウンタ軸102に伝達された動力は、一部の出力軸ギヤ108に伝達可能になっている。Hi−Lo出力軸92と副変速出力軸104との直結と非連結との切り替えが可能な副変速シフター105は、この出力軸ギヤ108と副変速出力軸104とを接続することも可能になっている。この場合、Hi−Lo出力軸92からの動力は、Hi−Lo出力軸92から副変速出力軸104に直接伝達されるのではなく、副変速第1カウンタ軸102を介して副変速出力軸104に伝達される。
また、副変速機構100は、複数の第2カウンタ軸ギヤ107が設けられる副変速第2カウンタ軸103を有しており、複数の第2カウンタ軸ギヤ107は、副変速出力軸104に対して相対回転可能な複数の出力軸ギヤ108にそれぞれ噛み合っている。2つの副変速シフター105のうち他方の副変速シフター105は、複数の出力軸ギヤ108のうち、第2カウンタ軸ギヤ107から動力が伝達される出力軸ギヤ108と副変速出力軸104の接続と解放とを切り替えることが可能になっている。この副変速シフター105で、この出力軸ギヤ108と副変速出力軸104を接続した際には、Hi−Lo出力軸92からの動力は、Hi−Lo出力軸92から副変速出力軸104に直接伝達されるのではなく、副変速第1カウンタ軸102と副変速第2カウンタ軸103とを介して副変速出力軸104に伝達される。
副変速機構100は、このように2つの副変速シフター105によって、副変速出力軸104と、副変速機構入力部材101及び出力軸ギヤ108との接続状態を切り替えることにより、Hi−Lo出力軸92から副変速出力軸104への動力の伝達経路を、3つの経路のいずれかに切り替えることができる。また、副変速シフター105は、副変速レバー53に、ケーブルによって接続されており、副変速レバー53の操作に応じて作動する。これにより、副変速機構100は、Hi−Lo出力軸92から伝達された動力を、副変速レバー53の操作に応じて3段階の変速比で出力することが可能になっている。
副変速出力軸104におけるHi−Lo出力軸92側の端部の反対側の端部には、副変速機構100の出力部である副変速出力ギヤ109が設けられており、副変速出力ギヤ109は、後輪4用のデファレンシャルギヤと噛み合っている。これにより、副変速出力ギヤ109に伝達された動力、即ち、変速機構65で変速して出力された動力は、後輪4に伝達される。
また、変速装置7は、エンジンで発生した動力をPTO(Power take−off)軸(図示省略)側に伝達するPTO出力機構120を有している。このPTO出力機構120は、変速装置入力軸60から動力を受けることが可能になっており、PTO軸側への動力の伝達と遮断とを切り替えるPTOクラッチ121と、PTO軸側に動力を伝達する際に変速を行うPTO変速装置122と、を有している。
さらに、変速装置7は、エンジンで発生した動力を前輪3側に伝達する前輪側動力伝達機構130を有しており、前輪側動力伝達機構130は、副変速機構100の副変速第1カウンタ軸102から動力を受けることが可能になっている。この前輪側動力伝達機構130は、副変速機構100から受けた動力を前輪3側に伝達する際における回転速度の切り替えを行う前輪増速切替機構131を有している。
即ち、前輪増速切替機構131は、前輪3側に動力を伝達する際に、増速するか否かの切り替えが可能になっており、また、前輪3側に動力を伝達しない状態に切り替えることにより、四輪駆動と二輪駆動との切り替えも可能になっている。前輪側動力伝達機構130は、前輪3用のデファレンシャルギヤ側に出力可能になっており、これにより、前輪3には、前輪側動力伝達機構130から出力された動力の伝達が可能になっている。
図8は、変速機構での変速に関わる各装置の機能ブロック図である。本実施形態に係るトラクタ1は、変速装置7の変速制御等を電子制御によって行うことが可能になっており、このため、トラクタ1には、各部を制御するコントローラ140が備えられている。このコントローラ140は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、さらに入出力部が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。記憶部には、トラクタ1を制御するコンピュータプログラムが格納されている。このコントローラ140は、各部の情報を取得するセンサ類やスイッチ類と、実際に動作をするソレノイド等のアクチュエータ類が接続されている。
例えば、コントローラ140には、前後進切替レバー43や、主変速増減スイッチ52、感度調整ダイヤル55、ドラフト比調整ダイヤル56、ドラフトセンサ58等が接続されている。また、コントローラ140には、油圧ポンプ146で発生した油圧を制御して、各油圧装置に供給する油圧制御装置145が接続されている。このため、油圧制御装置145には、油圧の発生源である油圧ポンプ146と、油圧によって作動する前後進切替クラッチ71、主変速クラッチ82、Hi−Lo切替クラッチ93等が接続されている。
コントローラ140によってトラクタ1の制御を行う場合には、例えば、主変速増減スイッチ52等に対する作業者からの入力操作に基づいて、処理部が上記コンピュータプログラムを当該処理部に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて油圧制御装置145等のアクチュエータ類を制御することにより、トラクタ1の運転制御を行う。その際に処理部は、適宜記憶部へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。
本実施形態に係るトラクタ1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。トラクタ1の走行時には、主変速増減スイッチ52によって、主変速機構80及びHi−Lo変速機構90の変速指示を行い、アクセルペダル47やスロットルレバー51でエンジンの回転数を調節する。また、進行方向を切り替える場合には、前後進切替レバー43を操作することにより、前進と後進とを切り替える。これらの操作のうち、操作を電気的に検出するものについては、操作状態がコントローラ140に伝達され、伝達された情報に基づいてコントローラ140でアクチュエータ類を作動させることにより、エンジンの運転制御や変速装置7の変速制御を行い、任意の走行状態で走行する。
また、進路の調節はハンドル41を操作することにより行い、減速はブレーキペダル46を操作することにより行うが、ブレーキペダル46は減速時のみでなく、急旋回時にも使用する。即ち、急旋回する際には、旋回方向における内側の後輪4に対応するブレーキペダル46を操作して、この後輪4にのみ制動力を発生させることにより、前輪3を操舵することのみの旋回よりも、小回りすることができる。
また、トラクタ1は、圃場で作業を行ったり、路上を走行したりすることが可能になっているが、圃場と路上とでは、走行時における適切な速度領域が異なっている。このため、トラクタ1の走行時には、走行する場所等の走行状態に応じて副変速レバー53を操作することにより、副変速機構100の切り替え操作を行い、速度領域を切り替える。即ち、副変速レバー53を操作することによって、副変速を走行速と作業速とで切り替えることにより、走行時における速度領域を切り替える。
例えば、路上走行する場合には、副変速レバー53を、走行速である高速の選択位置に移動させる。また、作業速として、中速と低速とに切り替えが可能になっているので、圃場で作業を行う場合には、作業時の速度に応じて、中速の選択位置、または低速の選択位置に、副変速レバー53を移動させる。副変速レバー53を操作した際には、操作位置に応じて副変速機構100の副変速シフター105の状態が切り替えられるため、副変速機構100は、副変速シフター105の状態が切り替えられることにより、高速、中速、低速に切り替えられる。また、副変速レバー53を中立位置にした場合には、副変速シフター105は、副変速機構100で動力を伝達しない位置に移動する。これにより、変速装置7の変速機構65から、前輪3や後輪4には動力が伝達しない状態になるため、トラクタ1は走行しなくなる。
また、主変速機構80とHi−Lo変速機構90とは、副変速レバー53で切り替えられている速度領域に関わらず変速可能になっており、この変速は、主変速増減スイッチ52を操作することにより行う。主変速増減スイッチ52を操作した際には、主変速機構80とHi−Lo変速機構90とを合わせて、8つの変速段のいずれかに切り替えることが可能になっている。つまり、主変速機構80は、それぞれ変速比が異なる4つの変速段を有しており、Hi−Lo変速機構90は、変速比が異なる2つの変速段を有しており、これらを組み合わせることにより、それぞれ変速比が異なる8つの変速段を実現している。
主変速増減スイッチ52は、高速側の変速段に切り替えるスイッチと、低速側の変速段に切り替えるスイッチと、の2つのスイッチを有しているため、この2つのスイッチを操作することにより、主変速機構80とHi−Lo変速機構90とは、操作したスイッチに従って変速比が変化するように、順次変速段が切り替わる。
具体的には、8つの変速段のうち、1速〜4速は、Hi−Lo変速機構90の変速段を、減速比が大きい方の変速段であるLoにした状態において、主変速機構80の4つの変速段が、減速比が大きい側から減速比が小さくなる側に順に、それぞれ対応している。また、8つの変速段のうち、5速〜8速は、Hi−Lo変速機構90の変速段を、減速比が小さい方の変速段であるHiにした状態において、主変速機構80の4つの変速段が、減速比が大きい側から減速比が小さくなる側に順に、それぞれ対応している。このため、変速段を4速から5速に切り替える際には、Hi−Lo変速機構90の変速段をLoからHiに切り替えると共に、主変速機構80の変速段を、減速比が最も小さい変速段から、減速比が最も大きい変速段に切り替える。
これらのように、主変速機構80やHi−Lo変速機構90の変速段を切り替える際には、コントローラ140から油圧制御装置145に制御信号を送信し、油圧ポンプ146で発生した油圧を、コントローラ140からの制御信号に基づいて制御して主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93に供給する。
具体的には、それぞれ複数が設けられる主変速クラッチ82とHi−Lo切替クラッチ93とのうち、選択する変速段に対応する主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93には、油圧を供給してこれらのクラッチを接続する。これにより、所望の主変速駆動ギヤ83と主変速入力軸81とを接続したり、Hi−Lo従動ギヤ95とHi−Lo出力軸92を接続したりして、所望の変速段で動力の伝達を可能にする。
また、この変速段以外の変速段に対応する主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93に対しては、油圧を供給しないため、これらのクラッチは解放する。これにより、これらの変速段の主変速駆動ギヤ83と主変速入力軸81や、Hi−Lo従動ギヤ95とHi−Lo出力軸92は、それぞれ相対回転をし、この変速段では動力の伝達は行われなくなる。
前後進切替レバー43を切り替えて、トラクタ1の進行方向を切り替える際も同様に、前後進切替レバー43の状態に基づいて、コントローラ140から油圧制御装置145に制御信号を送信する。これにより、油圧制御装置145は、油圧ポンプ146で発生した油圧を、コントローラ140からの制御信号に基づいて制御して前後進切替クラッチ71に供給する。
これにより、前後進切替レバー43で選択されている進行方向側の前後進切替クラッチ71には、油圧が供給され、前後進切替クラッチ71は、この油圧によって接続する。このため、前後進切替機構70は、前後進切替クラッチ71が接続した側の前後進駆動ギヤ72と変速装置入力軸60とが接続し、前後進切替機構70に伝達された動力は、前進方向または後進方向の回転で主変速機構80側に伝達される。
変速機構65での動力の伝達経路の切り替えは、これらのように行われるが、本実施形態に係るトラクタ1は、感度調整ダイヤル55を操作することにより、切り替え状態を調整することが可能になっている。感度調整ダイヤル55は、主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93の接続時における接続圧力の昇圧の度合いを変更調整する圧力調整具として構成されており、接続圧力の昇圧の度合いを変更調整することにより、変速段の切り替え時における変速動作の状態を調整することができる。
つまり、主変速機構80やHi−Lo変速機構90では、変速段の変速時には、変速元側の変速段に対応する主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93の接続圧力を降圧する一方で、変速先側の変速段に対応する主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93の接続圧力を昇圧することにより、接続する主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93を切り替える。感度調整ダイヤル55は、このように、接続する主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93を切り替える際に、変速先側の変速段に対応する主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93の接続圧力の昇圧の度合いを、変更調整することが可能になっている。
具体的には、感度調整ダイヤル55は、所定の範囲内で回動自在に設けられると共に、回動範囲の一端側が+、他端側が−として設定され、+と−との範囲内における任意の回動位置に調整することにより、接続圧力の昇圧の度合いを調整可能になっている。これらの感度調整ダイヤル55の+と−とは、感度調整ダイヤル55を右回り方向に回動させると、+側への回動になり、左回りの方向に回動させると、−側への回動になるように設けられており、接続圧力の昇圧の度合いを無段階で調整することが可能になっている。
図9は、変速時におけるクラッチの接続圧力の変化についての説明図である。変速時におけるクラッチの接続圧力の変化について、主変速機構80の変速段を切り替える場合について説明すると、感度調整ダイヤル55を中央にした状態では、変速元の変速段に対応する主変速クラッチ82の接続圧力である変速元接続圧力151は、短時間で降圧する。これに対し、変速先側の変速段に対応する主変速クラッチ82の接続圧力である変速先接続圧力152は、変速元接続圧力151が降圧を始める前に、規定圧力P1で規定時間保持し、その後に昇圧を行う。
変速先接続圧力152の昇圧は、変速元接続圧力151の降圧よりも緩やかなものになっており、このため、変速先接続圧力152は、変速元接続圧力151が降圧を完了した後も昇圧し、変速元接続圧力151の降圧の完了後、所定時間の経過後に、昇圧が完了する。変速段を切り替える際には、変速先の変速段に対応する主変速クラッチ82は、緩やかに接続することにより、変速先の変速段での動力の伝達も、緩やかに開始される。
また、感度調整ダイヤル55を−側に最大にした場合には、変速先接続圧力152は、感度調整ダイヤル55を中央にした場合よりも、さらに緩やかに昇圧する。この場合も、変速元接続圧力151が降圧を始める前に、規定圧力P1で規定時間保持し、その後に昇圧を行うが、この規定圧力P1の大きさや、規定圧力P1で保持する規定時間は、感度調整ダイヤル55を中央にした場合と変わらない。感度調整ダイヤル55を−側に最大にした場合には、規定圧力P1で保持する規定時間の経過後に、変速先接続圧力152を昇圧させる際の昇圧の度合いが、感度調整ダイヤル55を中央にした場合よりも緩やかになる。
また、この場合、感度調整ダイヤル55を中央にした際に、変速先接続圧力152が、接続を完了する圧力になるまでの時間と同程度の時間の経過後に、変速先接続圧力152は、急激に昇圧して、接続を完了する圧力になる。このため、感度調整ダイヤル55を−側に最大にした場合でも、変速時間自体は、感度調整ダイヤル55を中央にした場合と変わらず、変速の開始後、変速先の変速段における動力の伝達の開始の仕方が緩やかになる。
これに対し、感度調整ダイヤル55を+側に最大にした場合には、変速先接続圧力152は、感度調整ダイヤル55を中央にした場合よりも、急激に昇圧する。この場合も、変速元接続圧力151が降圧を始める前の規定圧力P1の大きさと規定時間は、感度調整ダイヤル55を中央にした場合と変わらない。感度調整ダイヤル55を+側に最大にした場合には、規定圧力P1で保持する規定時間の経過後に、変速先接続圧力152を昇圧させる際の昇圧の度合いが、感度調整ダイヤル55を中央にした場合よりも大きくなり、急激に昇圧する。
このため、変速先接続圧力152は、感度調整ダイヤル55を中央にした場合と比較して、短時間で、接続を完了する圧力になる。このため、感度調整ダイヤル55を+側に最大にした際には、変速先の変速段に対応する主変速クラッチ82は、急激に接続することにより、変速先の変速段での動力の伝達も、短時間で急激に開始される。
変速段の変速時における変速先接続圧力152は、このように感度調整ダイヤル55によって、昇圧の度合いを変更することが可能になっているが、変速先接続圧力152は、副変速レバー53が、走行速に切り替えられているか、作業側に切り替えられているかによって、変更範囲が異なっている。つまり、感度調整ダイヤル55による変速先接続圧力152の昇圧の変更範囲は、走行速時の変更範囲よりも、作業速時の変更範囲の方が、高い範囲まで変更可能になっている。
具体的には、副変速レバー53が走行速に切り替えられている場合には、時間に対する変速先接続圧力152の昇圧の度合いが、副変速レバー53が作業速に切り替えられている場合における、時間に対する変速先接続圧力152の昇圧の度合いの約1/2になる。このため、副変速レバー53が作業速に切り替えられている場合には、副変速レバー53が走行速に切り替えられている場合に対して、感度調整ダイヤル55を調節することによる、時間に対する変速先接続圧力152の昇圧の度合いの変更範囲が大きくなる。
また、動力を伝動する変速段を切り替える際において、主変速クラッチ82を作動させる作動油の油温が、予め設定される設定温度以下の時には、感度調整ダイヤル55による調整を規制し、変速先接続圧力152の昇圧を、予め設定する昇圧によって行う。例えば、油圧ポンプ146によって油圧を発生する作動油の油温が20℃以下の時には、感度調整ダイヤル55の操作に関わらず、変速先接続圧力152の昇圧を、予め設定されてコントローラ140の記憶部に記憶されている昇圧によって行う。このように予め設定される昇圧は、作動油の油温が設定温度より高い場合の昇圧よりも、変速先接続圧力152が緩やかに高くなるように設定される。
なお、この場合における作動油の温度は、作動油の流路上に設けられる温度センサ(図示省略)によって検出する。温度センサで検出した油温が、予め設定されている設定温度以下の場合には、コントローラ140によって、感度調整ダイヤル55での調整に対する変速先接続圧力152の昇圧を規制し、変速先接続圧力152の昇圧を、予め設定する昇圧によって行うように、油圧制御装置145を制御する。
変速装置7の変速時において、主変速機構80の変速段の変速時には、これらのように感度調整ダイヤル55により、変速先接続圧力152の昇圧の度合い、即ち昇圧カーブを変更調整することができるが、感度調整ダイヤル55を操作した際には、Hi−Lo変速機構90の変速段の変速時も、変速先接続圧力152の昇圧カーブが同様に変更される。つまり、主変速機構80とHi−Lo変速機構90とは、これらが組み合わされることにより、1速〜8速の変速段に切り替えられるため、Hi−Lo変速機構90において、Hi側の変速段とLo側の変速段との間で変速が行われる場合も、主変速機構80と同様の制御が行われる。
また、4速と5速との間の変速は、主変速機構80とHi−Lo変速機構90との双方で変速が行われるため、これらの間で変速をする際には、主変速機構80とHi−Lo変速機構90との双方で、変速先接続圧力152の昇圧カーブが、感度調整ダイヤル55によって変更調整される。
また、トラクタ1は、圃場で作業を行う場合には、作業の内容に応じた作業機を連結装置8に連結して作業機を牽引し、PTO出力機構120によって作業機を作動させながら作業を行う。この場合、作業機を牽引する際の牽引負荷をドラフトセンサ58によって検出し、必要に応じて作業機を昇降させる等の、牽引負荷に応じた制御を行う。
また、作業機を牽引しながらの圃場での作業中に変速機構65の変速段を変速する際に、ドラフトセンサ58で検出した牽引負荷が設定値以上の場合には、変速先接続圧力152の昇圧カーブを、昇圧の度合いが高い側に補正する。つまり、ドラフトセンサ58で検出した牽引負荷が設定値以上の場合には、感度調整ダイヤル55の調整位置に関わらず、いずれの調整位置においても、変速先接続圧力152の昇圧カーブを、急速に昇圧する側に補正する。これにより、作業機の牽引時における牽引負荷が設定値以上の場合には、変速段の変速時に、変速先の変速段で比較的早期に動力の伝達が開始される。
なお、この場合における牽引負荷の設定値は、変速先の変速段での動力の伝達を早期に開始させる必要がある牽引負荷として予め設定され、コントローラ140の記憶部に記憶されている。コントローラ140は、記憶部に記憶されている設定値と、ドラフトセンサ58によって検出した牽引負荷とを比較し、比較した結果に応じた制御信号を油圧制御装置145に送信して油圧制御装置145を制御する。
また、このように作業機を連結装置8に連結して圃場で作業を行う際には、ドラフト比調整ダイヤル56を操作することにより、作業機の作業位置と、牽引負荷とのバランスを調整しながら作業を行う。その際に、コントローラ140は、変速機構65が有する変速段の変速時における、変速先接続圧力152の昇圧カーブを、ドラフト比調整ダイヤル56の調整操作に応じて変更する。
具体的には、ドラフト比調整ダイヤル56が、作業機の作業位置を重要視する位置であるポジション位置、即ち、ドラフト比調整ダイヤル56が最も左側に回された位置になっている場合は、ドラフト比調整ダイヤル56がそれ以外の場合よりも、変速時における変速先接続圧力152の昇圧の度合いを高め、接続圧力を急速に昇圧させるようにする。コントローラ140は、このように変速先接続圧力152の昇圧が急速に行われ、変速時における変速先の変速段で、早期に動力の伝達が開始されるように、油圧制御装置145を制御する。
以上の実施形態に係るトラクタ1は、感度調整ダイヤル55によって、主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93における変速先接続圧力152の昇圧の度合いを変更調整することができるので、路上と圃場とで、変速時における変速段の切り替わり方を調整できる。路上走行のように走行負荷が小さい時は、変速先接続圧力152を低い圧から緩やかに昇圧してなめらかに変速し、圃場での走行のように走行負荷が大きい時は変速先接続圧力152を急速に昇圧することにより、動力の遮断が少なくなるように変速するように、調節できる。この結果、作業者の好みに応じた変速を行うことができる。
また、感度調整ダイヤル55による変速先接続圧力152の昇圧の変更範囲は、副変速レバー53を走行速にした時の変更範囲よりも、副変速レバー53を作業速にした時の変更範囲の方が、高い範囲まで変更可能であるため、圃場での作業時に、動力の遮断に起因する減速を、より確実に防止できる。また、走行速では、変速先接続圧力152が急激に高くなり過ぎることに起因する変速ショックを防止できる。この結果、走行速と作業速のいずれを選択した場合でも、走行状況に適した変速を行うことができる。
また、変速段を切り替える際に、作動油の油温が、予め設定される設定温度以下の時には、感度調整ダイヤル55による調整を規制し、変速先接続圧力152の昇圧を、予め設定する昇圧によって行うため、油温が低いことに起因して変速制御が不適切に行われることを抑制できる。つまり、油温が低い場合、作動油は粘度が高くなるため、油圧によって主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93を作動させる際に、これらのクラッチに対して油圧を適切に付与することができず、クラッチが所望の動作を行わないことがある。この場合、変速元のクラッチが解放する前に、変速先のクラッチが接続されてしまう、いわゆる2重噛みが発生してしまう可能性がある。このため、作動油の油温が設定温度以下の時は、感度調整ダイヤル55による調整を規制して、変速先接続圧力152を、例えば緩やかに昇圧するようにすることにより、変速元のクラッチが解放してから変速先のクラッチを接続することができ、2重噛みを抑制することができる。この結果、作動油の油温が低いことに起因して発生する変速の不具合を抑制することができる。
また、変速先接続圧力152は、変速元接続圧力151が降圧を始める前に、規定圧力P1で規定時間保持し、その後に昇圧を行うため、変速元接続圧力151が低くなる前に、変速先接続圧力152が高くなることを抑制することができる。この結果、より精度良く変速を行うことができ、2重噛みを防ぎつつ、動力の伝達が途切れないように変速することができる。
また、感度調整ダイヤル55は、左回転側に調節すると、変速先接続圧力152の昇圧が緩やかになって、走行負荷の低い状態に適したものになり、右回転側に調節すると、変速先接続圧力152が急速に昇圧するようになって、走行負荷の高い状態に適したものになり、その間は無段階で徐々に変化させることができるようになっている。この結果、変速先接続圧力152の昇圧カーブを、様々な作業条件に応じたものにすることができ、様々な作業条件に応じて適切に変速を行うことができる。
また、作業機を牽引して行う圃場で作業時に、ドラフトセンサ58で検出した牽引負荷が設定値以上の場合には、変速先接続圧力152の昇圧カーブを、昇圧の度合いが高い側に補正するため、牽引負荷が高い状態での走行中における変速時に、駆動輪に伝達する動力が途切れることを抑制できる。つまり、牽引負荷が大きい場合には、変速装置7で駆動輪側に伝達する動力も大きいため、この動力の伝達が途切れると、変速ショックが発生することがある。このため、牽引負荷が設定値以上の場合には、変速先接続圧力152の昇圧カーブを高い側に補正して、駆動輪に伝達する動力が途切れること抑制することにより、変速時のショックを軽減できる。この結果、牽引負荷が大きい状態での乗り心地を確保することができ、また、動力の伝達が途切れることに起因する速度の低下を抑えることができる。
また、ドラフト比調整ダイヤル56がポジション位置のときは、変速段の変速時に、変速先接続圧力152を急速に上昇させるため、牽引負荷が高くなる可能性がある状態での変速時に、駆動輪に伝達する動力が途切れることを抑制できる。つまり、ドラフト比調整ダイヤル56がポジション位置のときは、牽引負荷に応じて作業機を昇降させない、或いは、昇降の度合いを低減するため、牽引負荷が大きい場合でも、作業機はそのままの位置で、作業を継続することになる。このため、牽引負荷が大きい状態でも、そのまま作業を続けるため、変速にかかる時間が長いと、動力が途切れることに起因して、変速時にショックが発生することがある。従って、ドラフト比調整ダイヤル56がポジション位置のときは、変速先接続圧力152を急速に上昇させることにより、変速時に、駆動輪に伝達する動力が途切れること抑制することができ、変速時のショックを軽減できる。この結果、作業機の位置を優先させて作業を行う際における乗り心地を確保することができ、また、動力の伝達が途切れることに起因する速度の低下を抑えることができる。
〔変形例〕
なお、実施形態に係るトラクタ1では、変速段の変速時において、変速先接続圧力152は、変速元接続圧力151が降圧を始める前に、規定圧力P1で規定時間保持し、その後に昇圧を行っているが、変速先接続圧力152は、変速元接続圧力151が確実に降圧した後に、昇圧するようにしてもよい。例えば、変速時において変速元接続圧力151が、変速先接続圧力152を昇圧させてもよいことを示す圧力である規定圧力P2を設定し、変速元接続圧力151が規定圧力P2以下になったら、規定圧力P1で保持している変速先接続圧力152を昇圧させてもよい。変速段の変速時には、変速元接続圧力151が規定圧力P2以下になってから、変速先接続圧力152を昇圧させることにより、変速元接続圧力151と変速先接続圧力152とが共に圧力が高い状態になったり、共に圧力が低い状態になったりすることを抑制することができる。これにより、変速時における変速段の2重噛みを防止でき、また、変速機構65で動力が伝達されない時間が長くなることを防止でき、変速動作のばらつきが少ない変速を実現できる。この結果、変速フィーリングを安定化させることができる。
また、実施形態に係るトラクタ1では、ドラフトセンサ58で検出した牽引負荷が設定値以上の場合に、変速先接続圧力152の昇圧カーブを高い側に補正しているが、変速先接続圧力152の昇圧カーブは、ドラフトセンサ58で検出する牽引負荷の値に応じて、自動的に変更するようにしてもよい。つまり、牽引負荷が設定値以上であるか否かに応じて、変速先接続圧力152の昇圧カーブを補正するのではなく、牽引負荷の大きさに応じて、変速先接続圧力152の昇圧カーブを適宜変更するようにしてもよい。例えば、ドラフトセンサ58で検出した牽引負荷が大きくなるに従って、変速先接続圧力152が昇圧する度合いを高め、急速に昇圧するようにしてもよい。これにより、牽引負荷に応じて、適切なタイミングで変速を行うことができ、最適な変速フィーリングを実現することができる。
また、連結装置8は、連結する作業機を昇降させることができるが、変速先接続圧力152の昇圧カーブは、この作業機の昇降に応じて変更させてもよい。例えば、作業機が上昇している状態では、牽引負荷は小さくなるため、このような場合には、ドラフト比調整ダイヤル56の状態に関わらず、変速先接続圧力152が緩やかに昇圧するようにしてもよい。これにより、牽引負荷が小さいときに、変速先の変速段のクラッチが急激に接続することを抑制でき、変速時のフィーリングを、より確実に向上させることができる。
また、実施形態に係るトラクタ1では、感度調整ダイヤル55が+側に最大の場合には、変速先接続圧力152が急速に昇圧する昇圧カーブにしているが、感度調整ダイヤル55が+側に最大の場合には、全圧指示値で、ON/OFFバルブと同等の接続になるようにしてもよい。これにより、変速先接続圧力152を、より短時間に昇圧することができるため、動力の遮断をより少なくでき、より確実に変速ショックを低減することができる。
また、感度調整ダイヤル55の操作に応じた変速先接続圧力152に対して補正をする場合には、作動油の油温や牽引負荷、副変速レバー53やドラフト比調整ダイヤル56の操作等以外に基づいて行ってもよい。例えば、トラクタ1の前後方向の傾斜、即ち、ピッチングを検出するセンサを設け、トラクタ1が坂を上っているか下っているかに応じて、感度調整ダイヤル55の操作に応じた変速先接続圧力152に対して補正を行ってもよい。トラクタ1が上り坂を走行するか、下り坂を走行するかで走行負荷が異なるため、この分、変速先接続圧力152を補正することにより、より精度良く、作業者の好みに応じた変速を行うことができる。
また、実施形態に係るトラクタ1では、感度調整ダイヤル55を操作して変速先接続圧力152の昇圧カーブを調整することにより、作業者の好みに応じた変速を実現しているが、所望の変速状態は、変速先接続圧力152の昇圧カーブを調整すること以外によって実現してもよい。図10は、クラッチの接続圧力のオーバーラップを変更する場合の説明図である。変速先接続圧力152は、例えば、図10に示すように、感度調整ダイヤル55を−側にするに従って、変速元接続圧力151とのオーバーラップが少なくなるようにし、感度調整ダイヤル55を+側にするに従って、変速元接続圧力151とのオーバーラップが多くなるようにしてもよい。
つまり、主変速機構80の変速時で説明をすると、変速元接続圧力151に対する変速先接続圧力152のオーバーラップを少なくする際には、変速元の変速段に対応する主変速クラッチ82の解放がほぼ完了してから、変速先の変速段に対応する主変速クラッチ82の接続を開始する。これにより、変速先の変速段は、変速元の変速段で動力の伝動がほぼ行われなくなってから、動力を伝動し始める。
これに対し、変速元接続圧力151に対する変速先接続圧力152のオーバーラップを多くする際には、変速元の変速段に対応する主変速クラッチ82の解放が完了する前に、変速先の変速段に対応する主変速クラッチ82の接続を開始する。これにより、変速先の変速段は、変速元の変速段で動力の伝動が、完全に行われなくなる状態になる前に、少しずつ動力の伝動を開始し、変速元の変速段で動力の伝動が行われなくなった後、短時間で、動力の伝達経路が、変速先の変速段に切り替わる。
これらのように、オーバーラップを変化させた場合には動力の伝達経路が切り替わる時間が変化するため、感度調整ダイヤル55を操作することによって所望の変速状態を実現する際には、感度調整ダイヤル55の操作に応じてオーバーラップを調整してもよい。
具体的には、感度調整ダイヤル55を−側に最大にした場合には、変速先接続圧力152は、感度調整ダイヤル55を中央にした場合に対して、変速元接続圧力151に対するオーバーラップを少なくする。即ち、変速元接続圧力151の降圧に対して、変速先接続圧力152を昇圧させるタイミングを遅らせる。これにより、変速元の変速段での動力の伝達がほぼ完了した後、変速先の変速段で動力の伝達を開始する。
これに対し、感度調整ダイヤル55を+側に最大にした場合には、変速先接続圧力152は、感度調整ダイヤル55を中央にした場合に対して、変速元接続圧力151に対するオーバーラップを多くする。即ち、変速元接続圧力151の降圧に対して、変速先接続圧力152を早めに昇圧させる。これにより、変速元の変速段での動力の伝達が完了する前に、変速先の変速段で動力の伝達を開始し始め、動力の伝達経路が、短時間で変速先の変速段に切り替わる。
変速段を切り替える際には、主変速機構80のみでなく、Hi−Lo変速機構90も変速することにより、変速段を切り替えるため、感度調整ダイヤル55を操作した際には、主変速クラッチ82のみでなく、Hi−Lo切替クラッチ93も、接続圧力のオーバーラップが変化する。
これらのように、感度調整ダイヤル55を操作することによって、主変速クラッチ82やHi−Lo切替クラッチ93における接続圧力のオーバーラップを変更調整することにより、路上と圃場とで、変速時における変速段の切り替わり方を調整することができる。これにより、路上走行のように走行負荷が小さい時は、接続圧力のオーバーラップを大きくして緩やかに変速することにより、スムーズに変速し、圃場での走行のように走行負荷が大きい時は、接続圧力のオーバーラップを小さくして短時間で変速することにより、動力の遮断が少なくなるように変速するように、調節できる。この結果、作業者の好みに応じた変速を行うことができる。
また、変速時におけるクラッチの接続圧力のオーバーラップを変更可能とする場合において、副変速レバー53が走行速に切り替えられた際には、感度調整ダイヤル55の設定状態に関わらず、オーバーラップを0にしてもよい。つまり、変速元接続圧力151が完全に降圧した後、変速先接続圧力152を昇圧させてもよい。これにより、走行負荷が小さい状態での路上走行時における変速ショックを低減することができる。
また、変速時におけるクラッチの接続圧力のオーバーラップを変更可能とする場合においても、作動油の油温に応じてオーバーラップを変更させてもよく、例えば、油温が設定温度以下の時には、感度調整ダイヤル55の状態に関わらず、オーバーラップを0にしてもよい。これにより、作動油の粘度が高いことによりクラッチが所望の動作をしないことに起因して、2重噛みが発生してしまうことを抑制でき、作動油の油温が低いことに起因して発生する変速の不具合を抑制することができる。また、このように、作動油の油温に応じてオーバーラップを変更させる際には、設定温度の上下でオーバーラップについての制御を切り替えるのではなく、作動油の油温に応じて、オーバーラップの量を段階的に補正するようにしてもよい。これにより、作動油の油温が設定温度を跨いで変化することに起因して、変速フィーリングが急激に変わってしまうことを抑制できる。
また、変速時におけるクラッチの接続圧力のオーバーラップを変更可能とする場合においても、作業機の昇降に応じてオーバーラップを変更させてもよく、例えば、作業機が上昇している状態では、感度調整ダイヤル55の状態に関わらず、オーバーラップが小さくなるようにしてもよい。これにより、牽引負荷が小さいときに、変速段が短時間で切り替わることに起因するショックを抑制でき、変速時のフィーリングを、より確実に向上させることができる。
また、変速時におけるクラッチの接続圧力のオーバーラップを変更可能とする場合においても、ドラフト比調整ダイヤル56がポジション位置の時とそれ以外の時とで、オーバーラップを変更してもよく、例えば、ドラフト比調整ダイヤル56がポジション位置の時は、オーバーラップを大きくしてもよい。これにより、牽引負荷が大きくなる可能性のある、ドラフト比調整ダイヤル56がポジション位置の時には、変速段が切り替わる時間が短くなり、動力が途切れ難くなるため、変速時のショックを軽減できる。従って、作業機の位置を優先させて作業を行う際における乗り心地を確保することができ、また、動力の伝達が途切れることに起因する速度の低下を抑えることができる。
また、変速時におけるクラッチの接続圧力のオーバーラップを変更可能とする場合においても、牽引負荷に応じてオーバーラップを変更してもよく、例えば、ドラフトセンサ58で検出した牽引負荷が設定値以上の場合には、オーバーラップを大きくしてもよい。これにより、変速時に、駆動輪に伝達する動力が途切れることを抑制でき、変速時のショックを軽減できる。この結果、牽引負荷が大きい状態での乗り心地を確保することができ、また、動力の伝達が途切れることに起因する速度の低下を抑えることができる。
また、変速時におけるクラッチの接続圧力は、変速先接続圧力152の昇圧カーブとオーバーラップとの双方を、感度調整ダイヤル55に応じて変更してもよい。昇圧カーブとオーバーラップとの双方を変更することにより、変速状態を調整する際における手法が増えるため、変更範囲を大きくすることができ、より確実に、作業者の好みに応じた変速を行うことができる。
また、実施形態に係るトラクタ1では、感度調整ダイヤル55は、操縦席40の側方に設けられる操作パネル50に配設されているが、感度調整ダイヤル55は、これ以外の場所に配設されていてもよい。図11は、スイッチボックスの正面図である。図12は、図11のD−D矢視図である。感度調整ダイヤル55は、例えば、スイッチボックス160に配設してもよい。このスイッチボックス160は、各種のスイッチ類やダイヤル類等が配設されるスイッチパネル161を備え、開閉可能な蓋部162を備えている。スイッチボックス160は、蓋部162を開くことにより、スイッチパネル161上のスイッチ類やダイヤル類を操作することができ、蓋部162を閉じた際には、蓋部162がスイッチパネル161を覆うことにより、スイッチ類やダイヤル類の操作を行うことができなくなるようになっている。
感度調整ダイヤル55は、このように構成されるスイッチボックス160のスイッチパネル161に配設してもよい。このように、蓋部162を有するスイッチボックス160内に配設することにより、作業者が不意に感度調整ダイヤル55に触れることを抑制することができ、意図せずに変速先接続圧力152が変更されることを抑制することができる。
また、感度調整ダイヤル55は、スイッチボックス160内には入れず、操縦席40の右後方等、作業者が操縦席40に座った状態で触れ難い位置に配設してもよい。このように、作業者が触れ難い位置に感度調整ダイヤル55を配設することによっても、作業者が不意に感度調整ダイヤル55に触れることを抑制することができ、意図せずに変速先接続圧力152が変更されることを抑制することができる。
また、実施形態に係るトラクタ1では、副変速機構100は、副変速シフター105を作動させることによって変速を行うように構成されているが、主変速機構80やHi−Lo変速機構90と同様に、副変速機構100も、油圧クラッチによって変速できるように構成してもよい。この場合、副変速機構100の変速も、変速先の変速段に対応する油圧クラッチの接続圧力の昇圧の度合いやオーバーラップを、感度調整ダイヤル55によって変更調整できるようにしてもよい。