JP2016016176A - 有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法及び有機ハロゲン化合物無害化剤 - Google Patents

有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法及び有機ハロゲン化合物無害化剤 Download PDF

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Abstract

【課題】ダイオキシン類を再合成させることなく、また余分な廃棄物を発生させることなく、有機ハロゲン化合物を含有する固体を迅速に無害化することができる有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法及び有機ハロゲン化合物無害化剤を提供する。
【解決手段】有機ハロゲン化合物を含有する固体と薬剤とを接触させ、前記薬剤により前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化する、メカノケミカル処理によらない有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法であって、前記薬剤は、少なくとも一部がナノサイズの金属を分散剤に分散させた金属分散体を含み、前記固体と前記薬剤とを100℃以上250℃以下の温度で接触させ、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化する。
【選択図】図4

Description

本発明は、ダイオキシン類など有機ハロゲン化合物を含有する土壌、焼却灰、焼却飛灰、汚泥などの固体を無害化する有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法及び有機ハロゲン化合物無害化剤に関する。
ポリクロロビフェニル類(Poly-chlorinated biphenyls、以下、PCBsとする)は電気絶縁性や耐熱性に優れており、以前は絶縁油など幅広い用途に使用されていた。しかしながら、昭和43年のカネミ油症事件でその高い毒性が改めて問題となり、昭和47年以降製造禁止となった。その後、不要となったPCBsについて計画的な無害化処理を行っているものの、規模の小さい事業所等では40年以上の長期にわたり保管が続いている。
この間、容器の劣化等による漏洩事故が発生し、また、近年では「微量PCBs汚染廃電気機器等」由来の土壌汚染の可能性も指摘されており、土壌環境を取り巻く状況は決して楽観できない。このようななか、従来のPCBs汚染土壌の浄化技術は、熱分解が中心であった。しかしながら、近年ではダイオキシン類の発生抑制のために、投入エネルギー量の最小化を目指した生物学的な手法が精力的に検討されているものの、未だに至適条件の維持管理などに課題が残っている。
一方、外部環境に左右され難い新手法として、常温下、ナノ粒子化した金属粉末と汚濁水とを撹拌処理するPCBs分解法(例えば非特許文献1参照)に注目が寄せられ、さらに高効率化を図ったバイメタル法も開発された(例えば非特許文献2〜8参照)。但し、これらの手法も排水処理が必須である。
これらに対して、本件発明者らはこれまでに、金属カルシウムを利用する乾式PCBs分解技術を高度化し、土壌中へ安全に直接散布可能な金属Caナノ分散体法を開発した(例えば特許文献1参照)。金属Caナノ分散体法は、乾式処理法ゆえ廃液等が発生せず、さらに土壌中のどの有機・無機系夾雑物に対しても比較的耐性があり、脱塩素化処理技術として優れた方法である。
特許第5278834号公報
Environmental Science and Technology (1997), 31(7), 2154-2156. Chemosphere (2007), 66(6), 1031-1038. Bioresource technology (2010), 101(7), 2562-4. Environmental Science and Technology (2005), 39(9), 3314-3320. Chemosphere (2013), 91(2), 165-71. Abstracts, 39th Central Regional Meeting of the American Chemical Society, Covington, KY, United States, May 20-23 (2007), CRM-318. Huanjing Huaxue (2008), 27(6), 770-774. Chemical Engineering Journal (Amsterdam, Netherlands) (2011), 171(3), 919-925.
金属Caナノ分散体法の開発により排水処理工程を省略することが可能となったが、常温での反応であるために反応時間が長い。今日、ダイオキシン類の再合成を抑制し、かつ余分な廃棄物を発生させることなく従来以上に迅速に無害化できる技術が求められている。
本発明の目的は、ダイオキシン類を再合成させることなく、また余分な廃棄物を発生させることなく、有機ハロゲン化合物を含有する固体を迅速に無害化することができる有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法及び有機ハロゲン化合物無害化剤を提供することである。
本発明は、有機ハロゲン化合物を含有する固体と薬剤とを接触させ、前記薬剤により前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化する、メカノケミカル処理によらない有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法であって、前記薬剤は、少なくとも一部がナノサイズの金属を分散剤に分散させた金属分散体を含み、前記固体と前記薬剤とを100℃以上250℃以下の温度で接触させ、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法である。
本発明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記金属が鉄及び/又は金属カルシウムであり、前記分散剤が酸化カルシウムであることを特徴とする。
本発明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記薬剤は、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を含み、前記金属は、前記物質が放出する水を水素源とし、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする。
本発明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記分散剤が、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を含むことを特徴とする。
本発明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記薬剤は、前記金属分散体のほかに、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を含むことを特徴とする。
本発明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記金属分散体は、前記金属と前記分散剤との混合物を、金属の少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得られることを特徴とする。
本発明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記有機ハロゲン化合物を含有する固体が、土壌、焼却灰、焼却飛灰、汚泥又はこれら2種以上の混合物であることを特徴とする。
本発明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記有機ハロゲン化合物が、残留性有機汚染物質(POPs)であることを特徴とする。
本発明は、有機ハロゲン化合物を含有する固体と接触させ前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化させる薬剤であって、少なくとも一部がナノサイズの金属を分散剤に分散させた金属分散体と、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質とを含み、前記金属は、前記物質が放出する水を水素源とし、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする有機ハロゲン化合物無害化剤である。
本発明は、有機ハロゲン化合物を含有する固体と接触させ前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化させる薬剤であって、少なくとも一部がナノサイズの金属を分散剤に分散させた金属分散体からなり、前記分散剤は、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を含み、前記金属は、前記物質が放出する水を水素源とし、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする有機ハロゲン化合物無害化剤である。
本発明によれば、ダイオキシン類を再合成させることなく、また余分な廃棄物を発生させることなく、有機ハロゲン化合物を含有する固体を迅速に無害化することができる有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法及び有機ハロゲン化合物無害化剤を提供することができる。
本発明の実施例で使用したFe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体の表面観察、組成分析の結果を示す図である。 本発明の実施例で使用したFe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体のTG測定結果である。 本発明の実施例の各薬剤によるモデル土壌の無害化試験結果を示す図である。 本発明の実施例の各薬剤によるモデル土壌の無害化試験結果を示す図である。 本発明の実施例の各薬剤によるモデル土壌の無害化試験結果を示す図である。
本発明の第1実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法は、有機ハロゲン化合物を含有する固体と薬剤とを接触させ、前記薬剤により前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化する、メカノケミカル処理によらない有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法であって、前記薬剤は、少なくとも一部がナノサイズの金属を分散剤に分散させた金属分散体を含み、前記固体と前記薬剤とを100℃以上250℃以下の温度で接触させ、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする。
第1実施形態における有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法の被処理物としては、脂肪族塩素化物、ダイオキシン類、PCBなどPOPsに汚染された土壌、焼却灰、焼却飛灰、汚泥又はこれら2種以上の混合物が挙げられる。
金属分散体は、少なくとも一部がナノサイズの金属(金属粒子)を分散剤に分散させたものであり、金属は、有機ハロゲン化合物を還元する還元剤として機能し、分散剤は、金属を酸素、二酸化炭素又は水から保護する保護剤としても機能する。
金属には、鉄Fe、金属カルシウムCaを、分散剤には、酸化カルシウムCaOを好適に使用することができる。これらから、金属分散体として金属/分散剤=Fe/CaO、Ca/CaO、Fe/Ca/CaO(金属/金属/分散剤)が挙げられる。金属と分散剤との割合は、重量比で1:1〜1:10が好ましいがこの割合に限定されるものではなく、重量比で1:20〜1:1000、さらに金属の混合割合を少なくしてもよい。
金属は、少なくとも一部がナノサイズの粒子を使用する。ここでナノサイズとは、粒径が数nm〜サブミクロンの大きさをいう。このような金属粒子は、固形状の金属と、分散剤との混合物を、粉砕機で固形状の金属の少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得ることが好ましい。このようにして得られる粉砕物は、ナノサイズの金属粒子を含む金属粒子が、分散剤に分散した金属分散体である。
上記方法で得られる金属分散体は、ナノサイズの金属粒子の表面が保護剤として機能する分散剤でコーティングされている。一般的に金属をナノサイズまで微細化すると、環境中では酸化し失活するが、金属分散体は、ナノサイズの金属粒子の表面を覆う分散剤が、該金属粒子の大部分が酸素、二酸化炭素又は水と直接接触することを阻止するので、ナノサイズの金属粒子は、大気中においても高い活性を維持することができる。
第1実施形態に示す有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法においては、有機ハロゲン化合物を含有する固体と前記金属分散体とを100℃以上250℃以下の温度で接触させる必要がある。より好ましい温度は、150℃以上200℃以下である。
本方法では、無害化処理温度を上記範囲内とすることで、ダイオキシン類の再合成を抑制し、有機ハロゲン化合物を迅速に分解(無害化)する。無害化処理温度が100℃未満では、十分な分解速度を得ることができない。分解速度を速めるには、温度は高い方が好ましいが、250℃を超えるとダイオキシン類の再合成が懸念される。
次に、BHCを含む土壌(以下、汚染土壌と記す)を例にとり、これを、ナノサイズの鉄Feが酸化カルシウムCa中に分散したFe/CaO金属分散体を用いて無害化する方法を説明する。
汚染土壌に金属分散体を添加し、これらを100℃以上250℃以下の温度に加熱する。これによりBHCは、脱ハロゲン化、環還元反応等により還元され無害化される。
金属分散体の汚染土壌に対する添加割合は、汚染土壌に含まれるBHCの量により異なるが、重量比で1/1〜1/20程度の量とすることができる。この値は、従来の酸化カルシウムを用いたメカノケミカル法で使用する酸化カルシウムの量に比較して少ない。この結果、汚染土壌を処理した後の量が、処理前の汚染土壌の量と比較しほとんど増加しない。この点は、本発明の特徴の一つである。
汚染土壌に含まれるBHCの分解速度(無害化速度)、分解率(無害化率)を高めるには、汚染土壌中のBHCと金属分散体との接触機会を高めることが重要である。このため汚染土壌と金属分散体とを攪拌混合することが好ましく、汚染土壌及び/又は金属分散体の表面を更新しながら汚染土壌と金属分散体とを攪拌混合することがより好ましい。このため加熱機能及び粉砕機能を備えるミルは、無害化処理装置として好ましい。
攪拌混合は、汚染土壌中のBHCと金属分散体との接触機会を高めるために行う操作であるから、攪拌強度は小さくてもよい。このため公知の粉体混合装置を使用することができる。また混合装置としてミルを使用する場合であっても遊星ボールミルに比較してミル内のエネルギー密度が小さいミルを使用して行うことができる。このようなミルとしてローラーミル、タワーミルが挙げられる。遊星ボールミルは、高いエネルギーを加えることが可能な一方で、所要動力が大きく、大型化も困難である。これに対してローラーミルは、石炭焚火力発電所の石炭の粉砕にも使用されていることからも分かるように、大型化の実績もあり、所要動力が小さい点に特徴があり(例えば化学工学便覧、改訂六版、846頁)、汚染土壌の処理を大規模に進めて行くには好ましいミルと言える。
メカノケミカル処理法の場合、BHCの分解に必要なエネルギーをミルを通じて与える必要があるが、本方法において、攪拌混合操作は、汚染土壌と金属分散体との接触機会を高めることができればよく、BHCの無害化に必要なエネルギーを攪拌混合操作を通じて与える必要はない。本方法では、ナノサイズに微細化した所定の金属を使用することで低エネルギー投入条件下でも、BHCを無害化させることができる。一般的にナノサイズに微細化した金属は、高い活性、反応性が得られる一方で、その高い活性、反応性により大気中の酸素、二酸化炭素又は水と反応し失活する。このためナノサイズに微細化した金属をそのまま使用してもBHCを無害化できない。しかしここでは、前記金属分散体を使用することで、ナノサイズに微細化した金属の活性を高い状態に維持し、低エネルギー投入条件下でも、BHCを無害化させることができる。
汚染土壌に含まれる水、有機酸、アミン類、金属ヒドリド、及び/又はアルコール性ヒドロキシル基などは、上記無害化処理の過程で水素源として機能するので、これを除去する必要はない。なお、汚染土壌に多くの水分が含まれていると、金属分散体の添加量が増加し、さらに加熱に必要なエネルギーが増加するので予め脱水操作を行うことが望ましい。脱水操作は、ろ過、乾燥、又は酸化カルシウムCaOなどのような乾燥剤を添加することで行えばよい。
Fe/CaO金属分散体を用いたBHCの無害化メカニズムは、次のように考えられる。金属分散体において、鉄は、酸化カルシウムで取り囲まれており、高い活性を維持している。また鉄の一部は、酸化鉄、水酸化鉄に変化している。このため金属分散体の内部において、鉄と酸化鉄及び/又は水酸化鉄とからなる濃淡電池が形成される。
一方、金属分散体の表面は、汚染土壌と接触することで汚染土壌中、空気中、環境中の水分と反応し、水酸化カルシウムに変化している。このためBHCに、分解に必要な電子を供与するには、金属分散体内部から電子を取り出す手段が必要となる。
本方法の場合、鉄が存在するため鉄が金属分散体の表面と内部とを連絡する連絡路となる。さらに金属分散体の表面に分散している鉄が汚染土壌と接触することで、電極(陰極)として作用する。これにより金属分散体の表面が、水酸化カルシウムで覆われていても、BHCに電子を供与し続けることが可能となりBHCを迅速に分解することができる。
鉄及び金属カルシウムを酸化カルシウムに分散させたFe/Ca/CaO金属分散体も、同じメカニズムによりBHCを無害化する。なお、鉄及び金属カルシウムを酸化カルシウムに分散させたFe/Ca/CaO金属分散体では、金属カルシウムと酸化カルシウムとによる濃淡電池作用の他、異種金属である鉄と金属カルシウムとの腐食機構により濃淡電池と同様の作用が発揮されると考えられる。
次に、本発明の第2実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法を説明する。本方法と第1実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法とは、基本的な操作要領は同じであるが、使用する金属分散体が異なる。
濃淡電池が形成される金属と分散剤との組合せからなる金属分散体を薬剤として使用し、当該薬剤と有機ハロゲン化合物を含有する固体とを100℃以上250℃以下の温度で接触させることで、ダイオキシン類を再合成させることなく、また余分な廃棄物を発生させることなく、有機ハロゲン化合物を迅速に分解できることは、第1実施形態に説明の通りである。
我々は、さらに有機ハロゲン化合物の分解速度を速めるための検討を行い、次の知見を得た。従来のPCB分解技術は、分解温度が100℃以下あるいは300℃以上というのが定番であり、その中間の温度域で分解する技術はない。これは還元反応の場合、還元剤(電子源及び/又は水素源)が必要であるが、100℃以上となると水素源の供給が困難であり、一方、熱分解を起こすには300℃くらいの熱源が必要なことによる。
100℃以上となると水素源の供給が困難な点については、後述の2−クロロビフェニルの分解実験の結果からも伺える。薬剤にFe/CaO金属分散体を使用し、2−クロロビフェニルを含む土壌と当該薬剤とを150℃に加熱し、2−クロロビフェニルを分解させると、生成物にカップリング体が生じている。さらに分解温度が200℃を超えると熱分解が優勢になり、分解率がどの還元剤でも収束の方向に向かっている。一方、反応温度が100℃以下のケースでは、Ca/CaO金属分散体、Fe/CaO金属分散体などでも脱塩素化反応が土壌中の間隙水を利用し、進むことが明らかとなっている。(Y. Mitoma et al, Environ. Sci. Pollut. Res., 2013,DOI 10.1007/s11356-014-2830-y)
我々は、無機塩の結晶水を利用することで、脱ハロゲン化反応の“死の谷”となっていた100〜200℃付近の温度域で有機ハロゲン化合物を効率的に分解できることを見出した。
具体的には、第1実施形態と同様に金属分散体を使用するが、分散剤に100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を含む分散剤を使用する。当該分散剤が放出する水は、水素源として利用されるため、水を放出する分散剤は、固体水素供与体ということができる。100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質としては、水和物、水酸化物、水が配位された錯体などがあり、水和物には、結晶水を持つ化合物、分子の形で水を含む物質、包接化合物などがある。100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質は、無機物に限定されるものではなく、有機物であってもよく、例えばキトサン、シクロデキストリンが挙げられる。
分散剤は、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質のみで構成する他、他の物質と組合せて使用してもよい。100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質のみを使用する場合は、水酸化カルシウムCa(OH)、MgSO・7HO+Ca(OH)が、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質と他の無機化合物と組合せて使用する場合は、MgSO・7HO+CaOが例示される。
第2実施形態において金属分散体に含まれる金属には、第1実施形態と同様の金属を使用することができ、金属と分散剤との割合は、第1実施形態と同様である。金属分散体も、第1実施形態の金属分散体と同様に、固形状の金属と分散剤との混合物を、粉砕機で固形状の金属の少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得ることができる。
第2実施形態で使用する金属分散体として、金属/分散剤(金属/分散剤/分散剤)=Fe/Ca(OH)、Fe/CaO/MgSO・7HO、Fe/Ca(OH)/MgSO・7HO、Ca/Ca(OH)、Ca/CaO/MgSO・7HO、Ca/Ca(OH)/MgSO・7HOが挙げられる。
第2実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法は、基本的に第1実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法と同じである。
第2実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法では、処理中に金属分散体に含まれる水和物、水酸化物等が水を放出するので、金属分散体に含まれる金属は、水和物、水酸化物等が放出する水を水素源とし、有機ハロゲン化合物を還元し無害化する。このため水和物、水酸化物など100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を含まない金属分散体を使用する場合に比較して、早い分解速度及び高い分解率を得ることができ、さらに分解率が安定する。
なお、有機ハロゲン化合物を含有する固体と金属分散体とを150℃の温度で接触させ、有機ハロゲン化合物を分解する場合、金属分散体に含まれる、水を放出する物質は、150℃の温度で水を放出する必要がある。つまり金属分散体に含まれる、水を放出する物質は、無害化処理の温度において水を放出する必要があることは言うまでもない。
次に、本発明の第3実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法を説明する。第3実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法は、第2実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法と同様に、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を薬剤の1つとして使用する。但し、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質が、金属分散体に含まれておらず金属分散体と分離している点において、第2実施形態で使用する薬剤と異なる。
つまり第3実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法では、薬剤として、金属分散体と100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質とを使用する。金属分散体には、第1実施形態に示した金属分散体を、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質には、第2実施形態に示した100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質(固体水素供与体)を使用することができる。金属分散体と固体水素供与体との割合は、重量比で1:0.5〜1:10が好ましいがこの割合に限定されるものではない。
本発明の第3実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法においては、金属分散体及び100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質、例えば水和物を、有機ハロゲン化合物を含有する固体に添加し、これらを100℃以上250℃以下の温度、より好ましくは150℃以上200℃以下の温度に加熱すればよく、基本的な操作は、第1実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法と同じである。
第3実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法も第2実施形態の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法と同様に、金属分散体に含まれる金属が、水和物等が放出する水を水素源として有機ハロゲン化合物を還元し無害化するので、早い分解速度及び高い分解率を得ることができ、さらに分解率が安定する。
以上、第1から第3実施形態に示すように本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法は、メカノケミカル処理のように有機ハロゲン化合物の無害化に必要なエネルギーを、攪拌混合操作を通じて与える必要がないので大量処理も容易である。また本方法は、適切な薬剤を使用し、無害化処理温度を100℃以上とすることで有機ハロゲン化合物の分解速度及び分解率を高め、上限温度を250℃以下とすることでダイオキシン類の生成を抑制する。
また本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法は、余分な廃棄物を発生させないことの他、後述の実施例に示すように薬剤が凝集剤としても機能する点も特徴の1つである。このため無害化処理後の土壌からPCB等が溶出することを抑制できる。
さらにナノサイズの所定の金属を所定の分散剤に分散させた金属分散体、さらには金属分散体と100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質とを含む薬剤は、本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法の無害化剤として好適に使用することができるので、当該金属分散体を調製しておくことで、簡単に有機ハロゲン化合物を含有する固体を無害化処理することができる。特に、金属に鉄Feを用いる鉄系の金属分散体は、コストと安全性の面で期待できる。
Fe/CaO金属分散体の調製
ステンレス製(SUS304)のジャー(内容量80mL)にステンレス製ボール(φ=10mm)を20個入れ、さらに30gの乾燥済み酸化カルシウムと6gの鉄粉を加えた。ジャー内部をアルゴンガスで十分に置換し、しっかり蓋をした後に、600rpmで30分間、遊星ボールミルで粉砕処理を行った。粉砕後、事前にアルゴン置換したグローブボックス内でジャーを開封し、微粉末粒子と微細化されていない残渣の質量をそれぞれ測定し、微粉末化したFe/CaO金属分散体のみ密閉容器に入れて保管した。保管は、デシケーター(CaOとシリカゲルで乾燥)で行った。
Fe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体は、3gの鉄粉と15gの水酸化カルシウムと9gの硫酸マグネシウム7水和物とを用い、上記Fe/CaO金属分散体の調製法と同じ要領で製造した。他の金属分散体についても同様である。
Fe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体の表面観察、組成分析をSEM−EDSにより行った。結果を図1に示す。図1に示したように各構成成分は120μm×150μmの区画において均一であり、その表面にFe成分はおよそ1.6w%存在した。この薬剤のTGの測定結果を図2に示した。図2に示すように140℃付近で結晶水が放出されることが確認された。
<各薬剤によるモデル土壌の無害化>
代表的な実験要領を以下に記載する。
PCBsの成分である2−クロロビフェニル(以下、2−CBと記す)を真砂土に分散させたモデル土壌(模擬汚染土壌)を用いた。0.3g模擬汚染土壌(2−CB含有量:100ppm)と、先に調製した0.2gの薬剤を10mL容の反応管に加え、振とう機で5秒間混合撹拌し、得られた混合物を撹拌子と共にSUS製反応器に入れた。アルゴンガスでSUS反応器内を十分に置換し、所定温度に加熱した後に撹拌処理を行った。2時間後に加熱を止め、常温付近まで放冷した。SUS反応器内の反応混合物をガラス管に移し、10mLの1M塩酸を加えて還元性物質を完全に失活させた。続いて、10mLのジエチルエーテルで抽出を行い、抽出液を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ液を茶褐色のサンプル瓶に保存した。分解物の確認はGC/MSで行った。GC/MS用の抽出液を分析する際に、未処理土壌に吸着して溶出しない2−CB量を予め考慮し、補正後の値を100%とした。
反応温度(無害化処理温度)は、150、200、250℃とした。なお、一部の薬剤については300℃、350℃のデータも取得した。表1に使用した薬剤を示した。Fe/CaO金属分散体+MgSO・7HOは、Fe/CaO金属分散体とMgSO・7HOと単に混合したものであり、Fe/CaO金属分散体とMgSO・7HOとを重量比で1:1とした。
結果を図3及び図4に示した。図3は、Fe/CaO金属分散体、Fe/Ca(OH)金属分散体、Fe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体の反応温度と原料残存率との関係を示し、Fe/CaO金属分散体では同一の実験を3回(但し、150℃においては7回)、Fe/Ca(OH)金属分散体では同一の実験を4回、Fe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体では同一の実験を3回(但し、200℃においては4回)行い、各々のデータをそのままプロットしたものである。反応時間は、2時間である。
Fe/CaO金属分散体においては、反応温度(処理温度)150℃で原料残存率は34.4〜93.3%であり、脱塩素化率に大きなばらつきが見られた。Fe/Ca(OH)金属分散体ではデータのばらつきが解消され、さらにFe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体では再現性良く脱塩素化反応が進行することが明らかとなった。Fe/Ca(OH)金属分散体とFe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体とを比較すると似たような挙動を示すが、200℃近辺では、Fe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体の脱塩素化率が高い。
Fe/CaO金属分散体の場合の150℃におけるデータの大きなばらつきは、脱塩素化を起こす反応場への水素源の供給が安定していないことに原因があると考えられる。分散剤をCaOに替えて、水分を補足する能力が低いCa(OH)を分散剤とすると、ばらつきは解消されてビフェニルを生じた。さらに、より好適な水素源であるMgSO・7HOを添加した系では再現性良く脱塩素化反応が進行することが明らかとなった。なお、Fe/CaO金属分散体は、20wt%程度がFe/Ca(OH)金属分散体に変化しており、Fe/Ca(OH)金属分散体は、1.2wt%の水分を保持し、140℃くらいで水を放出することを確認済である。
図4は、鉄系の薬剤に関するデータであり、反応温度は、設定温度に到達後、正味2時間保持した。図4に示すデータは、図3に示す試験結果の単純平均値である。150℃において、Fe/CaO金属分散体、Fe/Ca(OH)金属分散体、Fe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体を使用した場合の原料残存率は、それぞれ64.4%、37.2%、40.0%であった。
200℃において、Fe/CaO金属分散体、Fe/Ca(OH)金属分散体、Fe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体を使用した場合の原料残存率は、それぞれ25.2%、23.6%、15.4%であった。
250℃において、Fe/CaO金属分散体、Fe/Ca(OH)金属分散体、Fe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体を使用した場合の原料残存率は、それぞれ10.1%、13.1%、14.5%であった。
300℃において、Fe/CaO金属分散体、Fe/Ca(OH)金属分散体、Fe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体を使用した場合の原料残存率は、それぞれ7.6%、10.1%、9.3%であった。
図3及び図4に示されるように反応温度を高くすると、分解率は還元剤の種類に依存する割合が低下し、ほぼ一様な分解曲線を辿った。これにより150〜200℃の低温域では還元剤による電子移動還元機構が優先しており、200℃以上の高温域になると単に熱分解による機構が優先し、薬剤は塩素補足剤としての役割を担っていくと考えられる。
薬剤と分解率との関係では、反応温度150℃では、Ca/CaOが最も脱塩素化率が高く、Mg/CaOはFe/CaOと同程度の分解率であった。Fe/CaO/MgSO・7HO金属分散体とFe/CaO金属分散体+MgSO・7HOとはほぼ同じ分解率であり、水和物であるMgSO・7HOは、金属分散体に単に混合してもよい。
図3及び図4に示した薬剤以外の薬剤でも、反応温度と分解率との関係は、反応温度を一層高くすると、分解率は還元剤に依存する割合が低下し、ほぼ一様な分解曲線を辿った。
上記薬剤を使用し、常温下で分解実験を行ったところ、2時間では全く分解しなかった。但し、数週間では分解した。
<反応時間とモデル土壌の無害化率>
反応温度を200℃とし、反応時間を変化させ上記模擬汚染土壌の無害化試験を行った。薬剤には、Fe/CaO金属分散体を使用した。汚染土壌(2−CB、100ppm)に10〜40wt%のFe/CaO金属分散体を加え,反応開始からの脱塩素プロセスへの影響を確認した。
結果を図5に示した。短い反応時間で急激に脱塩素化反応が進行し、反応時間0.1時間、1時間で原料残存率は、それぞれ34.8%、20.4%となった。反応時間は、昇温や徐冷中の時間を加味せずに、設定温度となった時点でカウントを開始した。そのため一定温度となる以前に脱塩素化反応が進み始めたことが予想される。反応時間が0.1時間経過後は、緩やかに分解が進み、反応時間が8時間で原料残存率は10.6%であった。但し、この実験は、反応開始前に撹拌混合しておき、以降は放置する形式であったため土壌表面の高濃度汚染域が反応した後は、緩やかに分解が進んだと推察される。
<実汚染土壌の無害化>
PCBsにより汚染された実汚染土壌(初期濃度61ppm)2gに対して、20wt%の薬剤を実汚染土壌に直接投入し、所定温度で2〜4時間加熱処理を行い、処理後、全量を公定法に準拠してPCB分析を行った。なお、分解成分にダイオキシン類が生成した痕跡の有無を検討するために、ガス漏れ防止のアタッチメントを装着した反応管内で処理を行った際の残渣と、トラップに吸着したガスのPCBs及びダイオキシン類の分析を行った。
実汚染土壌の無害化試験1
薬剤にFe/Ca(OH)/MgSO・7HO金属分散体を使用し、円筒型反応器(撹拌なし)に実汚染土壌と薬剤とを充填し、分解温度150℃、2時間分解反応を行った。結果、土壌中PCB濃度は、13ppmであり、分解率は78.7%であった。分解後の土壌の溶出試験を行ったところ、溶出液にはわずか0.47ng/LのコプラナーPCBsが認められるのみであった。
実汚染土壌の無害化試験2
分解温度を200℃とし、実汚染土壌の無害化試験1と同じ要領で試験を行った。このとき併せて、ガス捕集成分のダイオキシン濃度分析を行った。結果、土壌中PCB濃度は、9.8ppmであり、分解率は83.9%であった。分解後の土壌の溶出試験を行ったところ、0.47ng/Lであった。ガス捕集成分のダイオキシン濃度は、全量換算で0.0018pgTEQとなり、ガス側にはほとんどダイオキシン類は存在しなかった。処理土壌には、ダイオキシン類(コプラナーPCBを含む)は890〜5000pgTEQ/g存在した。但し、イニシャル土壌(=未処理土壌)のダイオキシン類(コプラナーPCBを含む)は、42ppmであった。
実汚染土壌の無害化試験3
反応装置として撹拌子付きのSUS容器を使用し、撹拌しながら分解反応を行った。反応容器を変更した以外は、実汚染土壌の無害化試験1と同じ要領で試験を行った。結果、土壌中PCB濃度は、23ppmであり、分解率は62.3%となった。本実験においては、撹拌の効果は見られなかった。
実汚染土壌の無害化試験4
分解時間を4時間とした以外、実汚染土壌の無害化試験3と同じ要領で分解反応を行った。結果、土壌中PCB濃度は、14ppmであり、分解率は77.0%となった。
<γ−BHCの無害化試験1>
薬剤には、Fe/CaO金属分散体を使用し、反応温度150℃、反応時間は2時間とし、γ−BHC汚染土壌(γ−BHC含有量100ppm)の無害化試験を行った。薬剤は、γ−BHC汚染土壌に対して10wt%添加した。
結果、γ−BHCは、完全消滅した。但し、1,3,5−トリクロロベンゼン(1,3,5−TriCB)とフェノールが1:1の割合で生成した。即ち、57%の原料は完全に分解し、43%の原料は、1,3,5−TriCB及びフェノールへ変換している。ガス側の分析(トラップ液の分析)を行ったがγ−BHCは存在しなかった。2塩素置換体などの低分子量体も存在しなかった。
<γ−BHCの無害化試験2>
薬剤には、Fe/CaO/MgSO・7HO金属分散体を使用し、反応温度150℃、反応時間は2時間とし、γ−BHC汚染土壌(γ−BHC含有量100ppm)の無害化試験を行った。薬剤は、γ−BHC汚染土壌に対して10wt%添加した。
結果、γ−BHCは、完全消滅した。薬剤にFe/CaO金属分散体を使用したγ−BHCの無害化試験1と異なり、1,3,5−TriCBは生成しなかった。但し、フェノールが生成した。薬剤にFe/CaO/MgSO・7HO金属分散体を使用した場合、塩素体が残っていないため、脱塩素化効率は向上している。
BHCの分解機構は次のように考えられる。Fe/CaO金属分散体を使用し、常温でγ−BHC汚染土壌を無害化処理すると、Fe表面でラジカル反応的に脱塩素反応が進み、1,3−ジクロロベンゼンなどを生成し徐々に脱塩素化反応が進む。これに対して150℃でγ−BHC汚染土壌を無害化処理すると、上記の通り1,3,5−TriCBとフェノールとが1:1で生成した。このときBHCは残っていない。水素源が不足し、モノクロロ体まで完全に進んでおらず、一方で、モノクロロ体に到達したものは求核置換反応を受けフェノールへと変換された。
一方、薬剤にFe/CaO/MgSO・7HO金属分散体を使用した場合、同じくBHCは完全に消失し、さらに1,3,5−TriCBも残っていない。結果的にフェノールのみ生成した。十分な水素源が供給され、還元条件下ではモノクロロ体まで容易に還元が進み、周辺のアルカリ剤により求核置換反応を受け、フェノールが生成したものと思われる。

Claims (10)

  1. 有機ハロゲン化合物を含有する固体と薬剤とを接触させ、前記薬剤により前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化する、メカノケミカル処理によらない有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法であって、
    前記薬剤は、少なくとも一部がナノサイズの金属を分散剤に分散させた金属分散体を含み、
    前記固体と前記薬剤とを100℃以上250℃以下の温度で接触させ、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
  2. 前記金属が鉄及び/又は金属カルシウムであり、前記分散剤が酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
  3. 前記薬剤は、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を含み、前記金属は、前記物質が放出する水を水素源とし、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
  4. 前記分散剤が、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を含むことを特徴とする請求項3に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
  5. 前記薬剤は、前記金属分散体のほかに、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を含むことを特徴とする請求項3に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
  6. 前記金属分散体は、前記金属と前記分散剤との混合物を、金属の少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得られることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
  7. 前記有機ハロゲン化合物を含有する固体が、土壌、焼却灰、焼却飛灰、汚泥又はこれら2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
  8. 前記有機ハロゲン化合物が、残留性有機汚染物質(POPs)であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
  9. 有機ハロゲン化合物を含有する固体と接触させ前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化させる薬剤であって、
    少なくとも一部がナノサイズの金属を分散剤に分散させた金属分散体と、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質とを含み、
    前記金属は、前記物質が放出する水を水素源とし、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする有機ハロゲン化合物無害化剤。
  10. 有機ハロゲン化合物を含有する固体と接触させ前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化させる薬剤であって、
    少なくとも一部がナノサイズの金属を分散剤に分散させた金属分散体からなり、前記分散剤は、100℃以上250℃以下の温度で水を放出する物質を含み、
    前記金属は、前記物質が放出する水を水素源とし、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする有機ハロゲン化合物無害化剤。
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