JP2016016052A - 人工股関節 - Google Patents

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Abstract

【課題】微小クリアランスでの流体潤滑膜形成機能を有し、きしみ音発生や摩耗の少ない人工股関節を提供する。【解決手段】凹球部25を有する臼蓋ソケット22と、臼蓋ソケット22の凹球部25に嵌合して相対的摺動接触する人工骨頭26とを備えた人工股関節である。臼蓋ソケット22の凹球部25の人工骨頭摺動面30に、複数の微細溝にて構成される周期構造部32を有する環状領域31を設けた。【選択図】図1

Description

本発明は、人工股関節に関するものである。
人工股関節は、図13に示すように、骨盤の寛骨臼に装着される臼蓋ソケット51と、大腿骨に装着されるステム52と、臼蓋ソケット51の凹球部55に摺動自在に嵌合される骨頭53とを備える。また、ステム52と骨頭53とは頚部54を介して連結されている。
近年、人工股関節の長寿命化には摩耗粉の低減が有効となるため,摩耗の少ない摺動部材として金属やセラミックスによるハード・オン・ハードの人工股関節の開発が進められている。人工股関節における摺動は多方向であり静止荷重状態が不定期に発生する。そのため、リンギングが発生し、除荷後も密着状態となり流体潤滑膜が回復しないことがある。リンギングはきしみ音発生や摩耗の原因となるため、微小クリアランスでの流体潤滑膜形成機能を有する機能表面の創成が望まれている。
従来には、この図13に示すように、骨頭53の外球面である摺動面53aに複数の凹部56を設けることによる凹凸パターンを形成したものがある(特許文献1)。凹凸パターンを形成することによって、摩擦、摩耗を減少させることができ、人工股関節の寿命の延長を図るようにしている。この場合、凹部の配列ピッチ(0.8mm〜1.6mm)、凹部56の深さ(1μm〜10μm)、摺動面全体に対する凹部56の面積比率(30%〜70%)、円換算直径(0.2mm〜0.8mm)、材質等を限定したものである。
また、従来には、図14に示すように、臼蓋ソケット51の凹球部55の内面(摺動面)を、骨頭53からの最大荷重点が存在する高荷重領域60と、最大荷重点が存在しない低荷重領域61とに分離し、低荷重領域61に陥凹部62を設けているものがある(特許文献2)。この陥凹部62を設けることによって、潤滑性が十分に向上でき、局所摩耗が起こりにくいものとしている。この場合、陥凹部62の深さを0.1mm〜3.0mmとし、陥凹部62の面積比を3〜50%としている。
特許第3590992号公報 特開2011−87712号公報
前記特許文献1に記載のように構成した場合、凹部(ディンプル)は狭い領域内で正負等しい圧力を発生する。この際、キャビテーションが発生することにより正圧部のみが負荷容量に寄与する。しかしながら、正圧発生領域が狭いため圧力上昇が僅かしか得られない。このため、動圧発生効果が小さく、また、油溜り効果は混合潤滑特性に寄与するが、流体潤滑特性にほとんど寄与しない。
また、特許文献2では、幅の広い陥凹部62から流体が容易に流失するため、2面間の接近によるスクイーズ作用が著しく低下し,流体潤滑特性を悪化させる恐れがある。ここで、スクイーズとは、2面間のすきまが減少する際、すきま内の潤滑液の流出にともなう粘性抵抗により圧力が発生する現象である。
本発明は、上記課題に鑑みて、微小クリアランスでの流体潤滑膜形成機能を有し、きしみ音発生や摩耗の少ない人工股関節を提供する。
本発明の人工股関節は、凹球部を有する臼蓋ソケットと、この臼蓋ソケットの凹球部に嵌合して相対的摺動接触する人工骨頭とを備えた人工股関節であって、前記臼蓋ソケットの凹球部の人工骨頭との摺動面に、複数の微細溝にて構成される周期構造部を有する環状領域を設けたものである。
本発明の人工股関節によれば、荷重作用位置の変化が少ない臼蓋ソケット側の摺動面に周期構造部を有する環状領域を設けることによって、全ての揺動方向の摺動に対して動圧が得られ流体潤滑膜を形成することができる。
臼蓋ソケットの凹球部に人工骨頭が嵌合して相対的摺動接触する使用状態において、前記環状領域の中心が、人工骨頭からの最大荷重を受ける最大荷重点が存在しうる範囲内にあるのが好ましい。これによって、最大荷重点が存在しうる領域内に流体が導入されることで大きな動圧が得られる。ここで、最大荷重点とは、臼蓋ソケットの凹球部に人工骨頭が嵌合して相対的摺動接触する使用状態において、人工骨頭から臼蓋ソケットの凹球部における摺動面(内面)が最大荷重を受ける点である。
周期構造部を構成する微細溝は、前記環状領域の接線と30度以上の交差角度を有するように設定するのが好ましい。このように設定することによって、摺動面内(臼蓋ソケットの凹球部の内面と人工骨頭の外面との間)に流体が効率的に導入される。
前記環状領域の内周縁の平均半径が、臼蓋ソケットの凹球部に人工骨頭が嵌合して相対的摺動接触する使用状態において、人工骨頭と臼蓋ソケットとのヘルツ接触部の接触半径の0.5倍〜10倍であるのが好ましい。
周期構造部が前記環状領域全周に形成されるものであっても、周期構造部が環状領域に間欠的に形成されるものであってもよい。間欠的に形成されるものでは、周方向に沿って周期構造形成部と未形成部とが摺動方向に沿って交互に形成される。これによって、軸廻りの旋回において周期構造形成部と未形成部との境界で圧力が発生し、摺動方向に圧力勾配ができる(この作用をステップ効果と呼ぶ)。
周期構造部の周期ピッチが10μm以下であるのが好ましく、周期構造部の凹部の深さが1.0μm以下であるのが好ましい。
前記周期構造部は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成されているのが好ましい。
本発明の人工股関節では、全ての揺動方向の摺動に対して動圧が微小クリアランスで得られる流体潤滑膜を形成することができ、きしみ音発生を抑えることができるとともに、摩耗の少ない人工股関節を提供できる。
環状領域の中心が、人工骨頭からの最大荷重を受ける最大荷重点が存在しうる範囲内にあるように設定することによって、大きな動圧が得られ、きしみ音の発生や摩耗を大きく低減できる。
微細溝が、環状領域の接線と30度以上の交差角度を有するように設定することによって、摺動面内に流体が効率的に導入され、大きな動圧効果を得ることができる。
人工骨頭と臼蓋ソケットとのヘルツ接触部の接触半径の0.5倍〜10倍であれば、スクイーズ作用の低下を低く抑えながら摺動による大きな動圧効果を得ることができる。
周期構造部を構成する環状領域を間欠的とすることで、ステップ効果が生じ、軸廻りの旋回において大きな動圧効果を得ることができる。
周期構造部の周期ピッチを10μm以下とすることで潤滑剤の側方漏れを冗長的に抑えることができ、効率的な動圧を得ることができる。周期構造の凹凸を1.0μm以下とすることで、油膜変動が小さく高い負荷容量と剛性が得られるとともにスクイーズ作用の低下を抑制することができる。
周期構造部を、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成したものでは、機械加工では困難なサブミクロンの周期ピッチと凹凸深さをもつ周期構造を容易に得ることができる。
本発明の実施形態を示す人工股関節の臼蓋ソケットの斜視図である。 人工股関節の簡略図である。 臼蓋ソケットの凹球部に形成される周期構造部の拡大図である。 臼蓋ソケットの凹球部の内面の簡略展開図である。 周期構造部を形成するためのレーザ表面加工装置の簡略図である。 実施例に用いた往復式ピン・オン・プレート試験装置を示す簡略図である。 前記図6に示す往復式ピン・オン・プレート試験装置に用いるピン試験片を示し、(a)は周期構造部を有さない鏡面ピンの簡略図であり、(b)は周期構造部を有する周期構造ピンの簡略図である。 周期構造ピンと鏡面ピンとの摺動速度と摩擦係数との関係を示すグラフ図である。 周期構造ピンと鏡面ピンとの摺動静止時間と起動摩擦係数との関係を示すグラフ図である。 算術平均粗さの定義を説明するためのグラフ図である。 リング・オン・ディスク試験に用いるリング試験片であって、(a)は周方向に沿って間欠的に摺動面が形成されている鏡面リングの簡略図であり、(b)は周方向に沿って間欠的に周期構造部が形成されている周期構造リングの簡略図である。 周期構造リングと鏡面リングとの摺動速度と摩擦係数との関係を示すグラフ図である。 従来の人工股関節の側面図である。 他の従来の人工股関節の臼蓋ソケットの凹球部の内面の簡略展開図である。
以下本発明の実施の形態を図1〜図14に基づいて説明する。
本発明に係る人工股関節は、図2に示すように、骨盤21の寛骨臼に装着される臼蓋ソケット22と、大腿骨23の髄腔に挿入されるステム24と、臼蓋ソケット22の凹球部25に嵌合される人工骨頭26とを備える。また、ステム24と骨頭26とは頚部27を介して連結されている。
臼蓋ソケット22は、凹球部25を有するお椀形状体であって、開口端面28が、外側下向きとなるように、骨セメント等で骨盤21の寛骨臼に固着される。また、骨頭26は球体にて構成され、臼蓋ソケット22の凹球部25に嵌合して相対的摺動接触する。
ステム24は、チタン、チタン合金、コバルト-クロム合金等の金属にて構成され、臼蓋ソケット22及び人工骨頭26は、ステム24と同様の金属、さらにはセラミック(ジルコニアやアルミナなど)やプラスチック(超高分子量ポリエチレンなど)から構成される。
そして、図1と図4とに示すように、臼蓋ソケット22の凹球部25の内面(人工骨頭摺動面30)に、複数の微細溝にて構成される周期構造部32を有する環状領域31を設けたものである。
周期構造部32は図3に示すように、微小の凹部5と微小の凸部6とが交互に所定ピッチで配設されてなるものである。周期構造部32の凹凸ピッチを10μm以下とし、凹部5の深さTを0.1μm以上1μm以下とするのが好ましい。
周期構造部32は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成している。具体的には、図5に示すフェムト秒レーザ表面加工装置を使用する。レーザ発生器11(チタンサファイアフェムト秒レーザ発生器)で発生したレーザ(例えば、パルス幅:120fs、中心波長800nm、繰り返し周波数:1kHz、パルスエネルギー:0.25〜400μJ/pulse)は、ミラー12により加工材料Wに向けて折り返され、メカニカルシャッタ13に導かれる。レーザ照射時はメカニカルシャッタ13を開放し、レーザ照射強度は1/2波長板14と偏光ビームスプリッタ16によって調整可能とし、1/2波長板15によって偏光方向を調整し、集光レンズ(焦点距離:150mm)17によって、XYθステージ19上の加工材料W表面に集光照射する。なお、フェムト秒レーザはフェムト秒(1000兆分の1秒)オーダーという極端に短い時間単位の中にエネルギーを圧縮した光源である。
アブレーション閾値近傍のフルエンスで直線偏光のレーザをワーク(加工材料)Wに照射した場合、入射光と加工材料Wの表面に沿った散乱光またはプラズマ波の干渉により、波長オーダのピッチと溝深さを持つグレーティング状の周期構造部を偏光方向に直交して自己組織的に形成される。このとき、フェムト秒レーザをオーバラップさせながら走査させることで、周期構造部32を広範囲に拡張することができる。
レーザのスキャンは、レーザを固定して加工材料Wを支持するXYθステージ19を移動させても、XYθステージ19を固定してレーザを移動させてもよい。あるいは、レーザとXYθステージ19を同時移動させてもよい。なお、前記図3は、前記フェムト秒レーザ表面加工装置にて形成した周期構造部32を電子顕微鏡で撮像した図である。
この場合、臼蓋ソケット22の凹球部25に人工骨頭26が嵌合して相対的摺動接触する使用状態において、環状領域31の中心Oが、人工骨頭26からの最大荷重を受ける最大荷重点が存在しうる範囲内にある。このため、最大荷重点がこの環状領域31内に入ることがない。臼蓋ソケット22の凹球部25の内面の最大荷重点に対応する人工骨頭26の外面の最大荷重点は、使用者の姿勢や動作によって大きく変位するが、臼蓋ソケット22側の最大荷重点はあまり変位しない。このため、臼蓋ソケット22の凹球部25において、環状領域31を設けるのが容易である。
周期構造部32を構成する微細溝は径方向に延びるものであって、図4に示すように、環状領域31の接線Lとの交差角θを30度以上としている。なお、図4では、交差角θが90度である。
ところで、荷重が0のときに点で接触する状態は点接触と呼ばれ、これらは荷重が加われば面で接触するようになる。また円筒と平面の接触のように荷重が0のときに線で接触する状態を線接触と呼び、これも荷重が加われば面で接触するようになる。これらの面での接触がヘルツ接触と呼ばれる。
このため、この人工股関節においても、荷重がかからない状態では、臼蓋ソケット22の凹球部25の内面(摺動面30)と、人工骨頭26の外面(摺動面35)とは点接触であるが、荷重が加われば面で接触するようになる。すなわち、ヘルツ接触することになる。そこで、本発明では、図4に示すように、環状領域31の内周縁31aの平均半径Raが、人工骨頭26と臼蓋ソケット22とのヘルツ接触部36の接触半径rの0.5倍〜10倍としている。なお、環状領域31の内周縁31aの平均半径をRaとし、環状領域31の外周縁31aの平均半径をRbとして、環状領域31の幅寸法である(Rb−Ra)を2mm以上としている。
本発明によれば、臼蓋ソケット22に周期構造部32を有する環状領域31を設けることによって、全ての揺動方向の摺動に対して動圧が微小クリアランスで得られる流体潤滑膜を形成することができる。これによって、きしみ音発生を抑えることができるとともに、摩耗の少ない人工股関節を提供できる。
臼蓋ソケット22の凹球部25に人工骨頭26が嵌合して相対的摺動接触する使用状態において、環状領域31の中心が、人工骨頭26からの最大荷重を受ける最大荷重点が存在しうる範囲内にあるように設定することによって、最大荷重点が存在しうる領域内に流体が導入されることで大きな動圧が得られ、きしみ音の発生や摩耗を大きく低減でき、高品質の人工股関節を得ることができる。
また、周期構造部32を構成する微細溝は、環状領域31の接線と30度以上の交差角度を有するように設定することによって、摺動面内(臼蓋ソケット22の凹球部25の内面と人工骨頭26の外面との間)に流体(関節液)が効率的に導入され、大きな動圧効果を得ることができる。なお、交差角が30未満では、流体(関節液)の導入効果が低く、動圧効果をあまり得ることができない。
環状領域31の内周縁の平均半径Rが人工骨頭26と臼蓋ソケット22とのヘルツ接触部36の接触半径rの0.5倍〜10倍であれば、スクイーズ作用の低下を低く抑えながら摺動による大きな動圧効果を得ることができる。なお、1倍未満では、環状領域31がヘルツ接触部36に入ることになる。このため、0.5倍未満では、環状領域31がヘルツ接触部36内に入り込み過ぎ、10倍を越えれば、環状領域31がヘルツ接触部36から離れ過ぎて、いずれの場合も、「スクイーズ作用の低下を低く抑えながら摺動による大きな動圧効果を得る」という作用効果を奏することができない。
細構構造の周期ピッチを10μm以下とすることで潤滑剤の側方漏れを冗長的に抑えることができ、効率的な動圧を得ることができる。周期構造部32の凹凸を1.0μm以下とすることで、油膜変動が小さく高い負荷容量と剛性が得られるとともにスクイーズ作用の低下を抑制することができる。
周期構造部32を、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成したものでは、機械加工では困難なサブミクロンの周期ピッチと凹凸深さをもつ周期構造を容易に得ることができる。
ところで、前記実施形態では、周期構造部32が環状領域31は全周にわたって形成されていたが、周期構造部32が環状領域31に周方向に沿って間欠的に形成されていてもよい。間欠的に形成されるものでは、周方向に沿って周期構造形成部と未形成部とが摺動方向に沿って交互に形成される。これによって、周期構造形成部と未形成部との境界で圧力が発生する。すなわち、周期構造形成部と未形成部によるステップ効果が生じ、軸廻りの旋回において動圧を得ることができる。なお、周期構造部32を間欠的に設ける場合、その配設ピッチや配置数としては、ステップ効果が生じ、軸廻りの旋回において動圧を得ることができる範囲で種々変更できる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、周期構造部32を形成する際に、パルスレーザであるフェムト秒レーザを用いたが、フェムト秒レーザ以外のピコ秒レーザやナノ秒レーザといったパルスレーザを使用することもできる。また、臼蓋ソケット22と人工骨頭26とは、金属やセラミックスによるハード・アンド・ハードによる摺動であっても、ソフト・アンド・ハードによる摺動であっても、ソフト・アンド・ソフトによる摺動であってもよい。
図6に示す往復式ピン・オン・プレート試験装置を用いた試験を行った。往復式ピン・オン・プレート試験装置を用いた試験とは、平盤体をプレート試験片1とし、円盤体をピン試験片2として、プレート試験片1の上面の摺動面1aにピン試験片2の下面の摺動面2aを載置し、ピン試験片2を図6の矢印Xのように直線状に往復動させる。この場合、プレート試験片1およびピン試験片2の材質をSUS440Cとし、ピン試験片2の直径D(図7参照)を5mmとした。また、プレート試験片1としては、図6の矢印Xの往復動(往復ピッチ6mm)にてピン試験片2がはみ出さない大きさとした。
また、ピン試験片2としては、図7(a)に示すように周期構造部を有さない鏡面ピン2Aと、図7(b)に示すように周期構造部32を有する周期構造ピン2Bとの2種類用意した。ここで、鏡面ピン2Aとは、摺動面2aの表面粗さ(算術平均粗さ)Raを0.02μm程度に仕上げたものである。算術平均粗さRaとは、図10に示すように、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線mの方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の数1の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
周期構造ピン2Bとは、摺動面2aの外周部に周期構造部32を形成したものであり、この場合、周期構造部32の内周側に形成されるランド部40(周期構造部を有さない部位)の表面粗さ(算術平均粗さ)Raを0.02μm程度に仕上げたものである。周期構造部32の幅(径方向幅)Eを0.5mm程度とした。(周期構造形成部はφ4mm〜φ5mmであるので、Eが0.5mmとなる。)潤滑剤としては、極性をもたず熱的・化学的に安定したPAO6(ポリ−α−オレフィン:37℃における粘度31.3cP)を用いた。
周期構造部32は、図5で記載したフェムト秒レーザ表面加工装置にて形成した。すなわち、直線偏光のフェムト秒レーザを加工しきい値近傍のエネルギー密度で材料表面に照射し、自己組織的に形成した。周期構造部32としては、動圧発生を目的とした周期間隔約700nm、凹凸深さ約200nmのグレーティング状の周期構造を形成した。
鏡面ピン2Aおよび周期構造ピン2Bに対し、加圧を0.5MPaとし、摺動速度を4mm/sから0.lmm/sまで段階的に減速させながら摺動速度と摩擦係数の関係を調べた。また、リンギングやスクイーズ効果への影響を調べるため,摺動速度を4mm/sとして定常状態から所定時間静止させた後,起動摩擦係数(起動後0.lsの平均摩擦係数)を計測した。
鏡面ピン2Aおよび周期構造ピン2Bの摺動速度と摩擦係数の関係を図8に示す。周期構造形成により、全ての速度で摩擦係数低減が認められた。このとき,高速摺動時ほど鏡面ピン2Aと周期構造ピン2Bの摩擦係数比が大きく、周期構造による摩擦低減効果が大きくなった。周期構造ピンの摩擦係数はばらつき(標準偏差)が小さく、安定した値を示した。動圧発生は、周期構造の溝が流体を中央部に引き込む流体導入効果および周期構造形成部と未形成部境界のステップ効果に起因する。周期構造の方向が円周方向になると流体導入効果が消失するため、動圧発生が大きく低下することになる。
鏡面ピン2Aおよび周期構造ピン2Bの摺動静止時間と起動摩擦係数の関係を図9に示す。周期構造の有無にかかわらず摺動静止時間の増加とともに油膜が流失するため、起動摩擦係数は大きくなったが、周期構造ピンの起動摩擦係数は常に鏡面ピン2Aより低くなった。周期構造を形成すると静止時には油膜が流失しやすくなり、スクイーズ作用の低下は否めない。しかし、外周部の周期構造の溝部分には油膜が存在し、起動時の潤滑液供給が促進される。そのため、起動時には極めて速い応答速度で動圧が発生し、急速に油膜が回復することで起動摩擦係数が低減したと考えられる。したがって、起動摩擦係数を低下させるためには,周期構造形成による動圧発生の利得がスクイーズ作用の低下を上回るように設定する必要がある。
このため、臼蓋ソケット22の凹球部25の人工骨頭摺動面30に、複数の微細溝にて構成される周期構造部32を有する環状領域31を設ければ、スクイーズ作用の低下を低く抑えながら摺動による大きな動圧効果を得ることができ、摺動性に優れた人工股関節を構成できることが分かる。
リング・オン・ディスク試験を行った。この場合、ディスク試験片からなる固定側試験片(図示省略)と、リング試験からなる回転側試験片41(図11(a)(b)参照)とを用いた。図11(a)に示す回転側試験片41(41A)は、一方の面に周方向に沿って所定ピッチで配設される凸部42を設け、この凸部42の表面を摺動面42aとしている。このため、図11(a)に示す回転側試験片41を鏡面リング41Aと呼ぶ。また、図11(b)に示す回転側試験片41は、凸部42の摺動面に周期構造部32を設けている。この場合、周期構造部32は各凸部42の摺動面に回転方向前方側に設けられ、溝方向を周方向としている。このため、図11(b)に示す回転側試験片41を周期構造リング41Bと呼ぶ。
固定側試験片及び回転側試験片41(41A,41B)の材質をSUS440Cとし、凸部42の摺動面の表面粗さをRaを0.02μm程度に仕上げた。回転側試験片41(41A,41B)は、その外径D1を15mmとし、内径D2を10mmとし、固定側試験片の外径としては、固定側試験片と同等乃至固定側試験片よりも大きく設定する。また、周期構造部32は、図5で記載したフェムト秒レーザ表面加工装置にて形成した。この場合の周期構造部32としては、周期間隔約700nm、凹凸深さ約200nmのグレーティング状の周期構造を形成した。潤滑剤としては、PAO2(ポリ−α−オレフィン:37℃における粘度4.6cP)を用いた。
鏡面リング41Aおよび周期構造リング41Bに対し,加圧を0.5MPaとし、摺動速度を81.5mm/sから3.3mm/sまで段階的に減速させながら摺動速度と摩擦係数の関係を調べた。そして、この結果を図12に示す。
周期構造リング41Bにおいては、周期構造形成により、回転摺動においても全ての速度で摩擦係数低減が認められた。このとき、高速摺動時ほど鏡面リング41Aと周期構造リング41Bの摩擦係数比が大きく、周期構造部32による摩擦低減効果が大きくなった。また、動圧発生は、周期構造形成部と未形成部境界のステップ効果に起因するものである。
ステップ効果は周期構造部32の方向が摺動方向と同じ円周方向で最大となり、摺動方向と直交する半径方向で最小となる。ただし,油膜厚さを0.2μmとした場合、半径方向の周期構造でも円周方向の周期構造の20%〜70%の動圧が得られることが無限溝数理論から算出されており、周期構造の方向は往復摺動特性とのバランスを考慮して設定する必要があるが、半径方向の周期構造とすることも可能である。
周期構造部32を構成する微細溝は、環状領域31の接線と30度以上の交差角度θを有するものとすれば、大きな動圧効果を得ることができ、また、周期構造部32を構成する環状領域31を間欠的とすることで、ステップ効果が生じ、軸廻りの旋回において大きな動圧効果を得ることができることが分かる。
5 凹部
22 臼蓋ソケット
25 凹球部
26 人工骨頭
30 人工骨頭摺動面
31 環状領域
32 周期構造部
36 ヘルツ接触部
本発明の人工股関節は、凹球部を有する臼蓋ソケットと、この臼蓋ソケットの凹球部に嵌合して相対的摺動接触する人工骨頭とを備えた人工股関節であって、前記臼蓋ソケットの凹球部の人工骨頭との摺動面に、複数の微細溝にて構成される周期構造部が周方向に沿って間欠的に形成される環状領域を設け、前記環状領域が、揺動方向の摺動と軸廻りの旋回に対して動圧を生じるものである。
期構造部が環状領域に間欠的に形成される。間欠的に形成されるものでは、周方向に沿って周期構造形成部と未形成部とが摺動方向に沿って交互に形成される。これによって、軸廻りの旋回において周期構造形成部と未形成部との境界で圧力が発生し、摺動方向に圧力勾配ができる(この作用をステップ効果と呼ぶ)。

Claims (9)

  1. 凹球部を有する臼蓋ソケットと、この臼蓋ソケットの凹球部に嵌合して相対的摺動接触する人工骨頭とを備えた人工股関節であって、
    前記臼蓋ソケットの凹球部の人工骨頭との摺動面に、複数の微細溝にて構成される周期構造部を有する環状領域を設けたことを特徴とする人工股関節。
  2. 臼蓋ソケットの凹球部に人工骨頭が嵌合して相対的摺動接触する使用状態において、前記環状領域の中心が、人工骨頭からの最大荷重を受ける最大荷重点が存在しうる範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の人工股関節。
  3. 周期構造部を構成する微細溝は、前記環状領域の接線と30度以上の交差角度を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の人工股関節。
  4. 前記環状領域の内周縁の平均半径が、臼蓋ソケットの凹球部に人工骨頭が嵌合して相対的摺動接触する使用状態において、人工骨頭と臼蓋ソケットとのヘルツ接触部の接触半径の0.5倍〜10倍であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の人工股関節。
  5. 周期構造部が前記環状領域全周に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の人工股関節。
  6. 周期構造部が前記環状領域に周方向に沿って間欠的に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の人工股関節。
  7. 周期構造部の周期ピッチが10μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の人工股関節。
  8. 前記周期構造部の凹部の深さが1.0μm以下であることを特徴とする特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の人工股関節。
  9. 前記周期構造部は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の人工股関節。
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