JP2016008198A - 間質性膀胱炎の治療 - Google Patents

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山本 徳則
Tokunori Yamamoto
徳則 山本
雄二郎 広瀬
Yujiro Hirose
雄二郎 広瀬
康人 舟橋
Yasuto Funahashi
康人 舟橋
鈴木 哲
Satoru Suzuki
哲 鈴木
宜久 松川
Yoshihisa Matsukawa
宜久 松川
百万 後藤
Momokazu Goto
百万 後藤
中島 美砂子
Misako Nakajima
美砂子 中島
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Abstract

【課題】間質性膀胱炎の治療に有効な細胞製剤及びその用途等を提供することを課題とする。
【解決手段】歯髄幹細胞を含有する、間質性膀胱炎治療用の細胞製剤が提供される。治療効果を高めるために低濃度のマンノースが併用される、
【選択図】なし

Description

本発明は間質性膀胱炎に有効な細胞製剤及びその利用に関する。
従来の医療では治療困難な疾病に対する汎用的な代替技術として、幹細胞を利用した再生医療が注目されている。再生医療の適用が可能な又は期待される疾病は多く、臨床応用に向けた数多くの研究が行われている。生体内幹細胞として骨髄や脂肪由来の幹細胞がある(例えば特許文献1を参照)。脂肪由来の幹細胞は、脂肪組織に豊富に存在し、簡便な操作で大量に採取が可能であることや採取の際の患者への負荷が少ないことなどの利点を有する。実際、脂肪組織由来間葉系幹細胞(Adipose-derived stem cells: ASCs, ADSCs、Adipose-derived regeneration cells: ADRCs、Adipose-derived mesenchymal stem cells: AT-MSCs, AD-MSCsなどと呼ばれる)の臨床応用を目指し、各種疾患を治療標的とした研究が進められている(例えば特許文献2〜4を参照)。
国際公開第02/086108号パンフレット 国際公開第2008/018450A1号パンフレット 特開2009−001509号公報 特表2010−528107号公報
Miura et al. SHED: stem cells from human exfoliated deciduous teeth. Proceedings of the National Academy of Sciences (2003) Arthur et al. Adult human dental pulp stem cells differentiate toward functionally active neurons under appropriate environmental cues. Stem Cells (2008) vol. 26 (7) pp. 1787-95
間質性膀胱炎は、頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・炎症・膀胱痛などの症状を呈する難治性の疾患である。治療法の確立に向けて精力的な研究が行われているものの、未だ特効薬はない。間質性膀胱炎の患者における排尿時痛、排尿間隔を短縮させる治療法を確立できれば、患者の生活の質(QOL)は著しく改善する。
本発明は、間質性膀胱炎の治療に有効な細胞製剤及びその用途等を提供することを課題とする。
上記課題に取り組む中で本発明者らは、新たな幹細胞のソースとして歯髄に注目した。医療廃棄物であるヒト脱落乳歯歯髄幹細胞(stem cells from exfoliated deciduous teeth; SHED)や智歯由来の永久歯歯髄幹細胞(dental pulp stem cells; DPSC)は、神経系譜に近い性状を示す神経堤由来の細胞集団であり、神経細胞への分化誘導に高い反応性を示す(例えば非特許文献1、2を参照)。モデル動物を用いた詳細な検討の結果、歯髄幹細胞が間質膀胱炎に対して著効を示すことが判明した。また、低濃度のマンノースの併用が治療効果を高めることも明らかとなった。以下に示す本願発明は、主として以上の成果及び考察に基づく。
[1]歯髄幹細胞を含有する、間質性膀胱炎治療用の細胞製剤。
[2]低濃度のマンノースが併用される、[1]に記載の細胞製剤。
[3]歯髄幹細胞と低濃度のマンノースを含有する、[2]に記載の細胞製剤。
[4]低濃度のマンノースで処理された歯髄幹細胞を含有する、[2]に記載の細胞製剤。
[5]歯髄幹細胞を含有し、治療対象への投与の際にマンノースが同時に投与される、[2]に記載の細胞製剤。
[6]低濃度が、0.8%(w/v)以下の濃度である、[2]〜[5]のいずれか一項に記載の細胞製剤。
[7]低濃度が、0.2%(w/v)〜0.8(w/v)である、[2]〜[5]のいずれか一項に記載の細胞製剤。
[8]間質性膀胱炎治療用の細胞製剤を製造するための、歯髄幹細胞の使用。
[9]間質性膀胱炎治療用の細胞製剤を製造するための、歯髄幹細胞及び低濃度のマンノースの使用。
[10]間質性膀胱炎の患者に、治療上有効量の歯髄幹細胞を投与することを含む、間質性膀胱炎の治療法。
[11]間質性膀胱炎の患者に、治療上有効量の歯髄幹細胞と低濃度のマンノースを投与することを含む、間質性膀胱炎の治療法。
DPSC又はDPSCとマンノースの併用による、間質性膀胱炎に対する治療効果。シクロフォスファミド(CYP)の腹腔内注入によって膀胱炎を誘導した後、細胞培養液(MesenPRO培地)、ラットDPSC、又は低濃度マンノース(0.2%(w/v))を混和したラットDPSCを膀胱内注入し、2日後に病理組織をHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色に供した。左上:正常群、右上:CYP-培養液膀注群、左下:CYP-DPSC膀注群、右下:CYP-MN混和DPSC膀注群。 DPSC及びマンノースによる血流改善効果。シクロフォスファミド(CYP)の腹腔内注入によって膀胱炎を誘導した1日後、細胞培養液(MesenPRO培地)、ラットDPSC、又は低濃度マンノース(0.2%(w/v))を混和し1時間培養(MesenPRO培地、37℃)したラットDPSCを膀胱内注入し、注入から1日後に膀胱の血流を可視化し、血流量を定量化した。左:CYP群の処置後1日目、中央:DPSC膀注群の処置後1日目、右:CYP-MN混和DPSC膀注群の処置後1日目。正常群の血流は48±5ml/分/100g、CYP-培養液膀注群の血流は23±5 ml/分/100g、CYP-DPSC膀注群の血流は32±5 ml/分/100g、CYP-MN混和DPSC膀注群の血流は39±5 ml/分/100gであった。 DPSC又はDPSCとマンノースの併用による、間質性膀胱炎に対する治療効果。シクロフォスファミド(CYP)の腹腔内注入によって膀胱炎を誘導した1日後、細胞培養液(MesenPRO培地)、ラットDPSC、又は低濃度マンノース(0.2%(w/v))を混和し1時間培養(MesenPRO培地、37℃)したラットDPSCを膀胱内注入し、注入から1日後に膀胱内圧(CMG)を計測した。正常群(34.4±4.1分)と比較してCYP-培養液膀注群(上)(6.6±4.1分)は排尿間隔を短縮した。CYP-DPSC群(中央)(18.4±4.2分)は排尿間隔を延長した。CYP-MN混和DPSC膀注群(下)(22.6±3.6分)は排尿間隔を更に延長した。 膀胱尿中のフラクタルカイン量の測定。処置前後で各群(CYP-培養液膀注群、CYP-DPSC膀注群、CYP-MN混和DPSC膀注群)の膀胱尿を採取し、フラクタルカイン(Fractalkine)量を測定した。処置後の尿中フラクタルカイン量を比較して示した。 膀胱尿中の各種炎症性サイトカイン量の測定。処置前後で各群(CYP-培養液膀注群、YP-DPSC膀注群、CYP-MN混和DPSC膀注群)の膀胱尿を採取し、各種炎症性サイトカイン量を測定した。処置後の尿中炎症性サイトカイン量を比較して示した。
<細胞製剤の要素>
本発明は間質性膀胱炎の治療に用いられる細胞製剤及びその用途に関する。本発明の細胞製剤は歯髄幹細胞を含有する。歯髄幹細胞は大別して2種類存在する。即ち、乳歯歯髄幹細胞と永久歯歯髄幹細胞である(S. Gronthos, M. Mankani, J. Brahim, P. G. Robey, S. Shi, Postnatal human dental pulp stem cells (DPSCs) in vitro and in vivo, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 97 (2000) 13625-30.;M. Miura, S. Gronthos, M. Zhao, B. Lu, L. W. Fisher, P. G. Robey, S. Shi, SHED: Stem cells from human exfoliated deciduous teeth, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 100 (2003) 5807-12.;国際公開第2006/010600号パンフレット)。本明細書では、慣例に従い、乳歯歯髄幹細胞のことをSHEDと略称し、永久歯歯髄幹細胞のことをDPSCと略称する。好ましくはSHEDを用いる。SHEDは、DPSCに比べ細胞の増殖能が高いこと、分化能もより高いと考えられること、採取が簡単であること等の利点を有する。
通常、歯髄幹細胞は、生体から分離された歯髄組織を出発材料とし、細胞集団(歯髄組織に由来する、歯髄幹細胞以外の細胞を含む)を構成する細胞として「単離された状態」に調製される。ここでの「単離された状態」とは、その本来の環境(即ち生体の一部を構成した状態)から取り出された状態、即ち人為的操作によって本来の存在状態と異なる状態で存在していることを意味する。
歯髄幹細胞は、歯髄細胞の中の接着性細胞として選別可能である。歯髄幹細胞の採取・調製法の一例を以下に示す。この採取・調製法では(1)歯髄の採取、(2)酵素処理、(3)細胞培養、(4)細胞の回収を順に行う。
(1)歯髄の採取
自然に脱落した乳歯(又は抜歯した乳歯、或いは永久歯)をクロロヘキシジンまたはイソジン溶液で消毒した後、歯冠部を分割し歯科用リーマーにて歯髄組織を回収する。
(2)酵素処理
採取した歯髄組織を基本培地(10%ウシ血清・抗生物質含有ダルベッコ変法イーグル培地)に懸濁し、2mg/mlのコラゲナーゼ及びディスパーゼで37℃、1時間処理する。5分間の遠心操作(5000回転/分)により酵素処理後の歯髄細胞を回収する。セルストレーナーによる細胞選別はSHEDやDPSCの神経幹細胞分画の回収効率を低下させるので原則、使用しない。
(3)細胞培養
細胞を4cc基本培地で再懸濁し、直径6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種する。5%CO2、37℃に調整したインキュベータにて3日間培養した後、コロニーを形成した接着性細胞を0.05%トリプシン・EDTAにて5分間、37℃で処理する。ディッシュから剥離した歯髄細胞を直径10cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種し拡大培養を行う。例えば、肉眼で観察してサブコンフルエント(培養容器の表面の約70%を細胞が占める状態)又はコンフルエントに達したときに細胞を培養容器から剥離して回収し、再度、培養液を満たした培養容器に播種する。継代培養を繰り返し行ってもよい。例えば継代培養を1〜8回行い、必要な細胞数(例えば約1×107個/ml)まで増殖させる。尚、培養容器からの細胞の剥離は、トリプシン処理など常法で実施することができる。以上の培養の後、細胞を回収して保存することにしてもよい(保存条件は例えば-198℃)。
(4)細胞の回収
次に、細胞を回収する。トリプシン処理等で培養容器から細胞を剥離した後、遠心処理を施すことによって細胞(歯髄由来幹細胞)を回収することができる。
<製剤化>
製剤のために、歯髄幹細胞又は歯髄幹細胞を含む細胞集団を生理食塩水、リンゲル液(酢酸リンゲル液、乳酸リンゲル液等)、緩衝液(例えばリン酸系緩衝液)等に懸濁する。治療上有効量の細胞が投与されるように、一回投与分の量として例えば1×105個〜1×1010個の細胞を含有させるとよい。細胞の含有量は、使用目的、対象疾患、適用対象(レシピエント)の性別、年齢、体重、患部の状態、細胞の状態などを考慮して適宜調整することができる。
細胞の保護を目的としてジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン等を、細菌の混入を阻止することを目的として抗生物質等を、細胞の活性化、増殖又は分化誘導などを目的として各種の成分(ビタミン類、サイトカイン、成長因子、ステロイド等)を本発明の細胞製剤に含有させてもよい。サイトカインの例はインターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)及びエリスロポエチン(EPO)、アクチビン、オンコスタチンM(OSM)である。尚、CSF、G-CSF、EPO等は成長因子でもある。一方、成長因子の例は肝細胞増殖因子(HGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF、FGF2)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、神経成長因子(NGF)及び脳由来神経栄養因子(BDNF)である。さらに、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を本発明の細胞製剤に含有させてもよい。
適当な容器、例えば、注射器、アンプル、バイアル、プラスチック容器、輸液用バッグ等に格納ないし充填した状態で本発明の細胞製剤を提供することができる。
<適用疾患・適用対象>
本発明の細胞製剤は間質性膀胱炎に適用される。即ち、本発明の細胞製剤は、間質性膀胱炎に対して治療的効果及び/又は予防的効果を発揮する。治療的効果には、標的疾患に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であり、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。尚、予防的効果の典型的なものは、標的疾患に特徴的な症状の再発を阻止ないし遅延することである。
間質性膀胱炎は、頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・炎症・膀胱痛などの症状を呈し、重症例では著しく生活の質が低下する、膀胱の器質的疾患である。間質性膀胱炎の根本的な原因については未だ明らかにされていないが、三つの病態生理学的な機構(上皮機能不全、肥満細胞活性化、神経因性炎)が示唆されている。一部の患者に有効な治療法はあるもの、間質性膀胱炎の治療法に対するニーズは高い。
本発明の細胞製剤は、通常、標的疾患である間質性膀胱炎の予防又は治療に使用される。従って、典型的には、間質性膀胱炎を罹患ないし発症した患者又は潜在的患者(罹患ないし発症の可能性がある者)に対して本発明の細胞製剤が投与されることになるが、その効果を確認・検証することなどの実験目的で本発明の細胞製剤を使用することもできる。
<投与方法>
本発明の細胞製剤の投与経路は特に限定されない。例えば、静脈内注射、動脈内注射、門脈内注射、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、又は腹腔内注射によって本発明の細胞製剤を投与する。好ましくは、患部への局所注入により本発明の細胞製剤を投与する。即ち、本発明の細胞製剤は局所治療(フォーカル・セラピー)に特に適する。細胞製剤の投与量の例を示すと、例えば0.1ml〜100ml、好ましくは5ml〜60mlである。
投与スケジュールは、適用対象(患者)の性別、年齢、体重、病態などを考慮して作成すればよい。単回投与の他、連続的又は定期的に複数回投与することにしてもよい。複数回投与する際の投与間隔は特に限定されず、例えば1日〜1月である。また、投与回数も特に限定されない。投与回数の例は2回〜10回である。
<マンノースの併用>
本発明の細胞製剤では、治療効果を高めるためにマンノースを併用する。以下、併用の詳細を説明する。
(第1態様:低濃度のマンノースの含有)
第1態様の細胞製剤は歯髄幹細胞に加えて低濃度のマンノースを含有する。即ち、この態様の細胞製剤は、歯髄幹細胞と低濃度のマンノースを含有することによって特徴付けられる。本発明において「低濃度」とは0.8(w/v)以下の濃度である。従って、第1態様の細胞製剤は0.8%(w/v)以下の濃度でマンノースを含有する。濃度の下限値は、本発明に特徴的な効果、即ち、歯髄幹細胞の活性を高めるという効果を発揮できる限り特に限定されない。例えば、マンノースの濃度を0.2%(w/v)〜0.8(w/v)とする。マンノースは、木材、こんにゃく等に含まれるグルコマンナンやグアーガム等に含まれるガラクトマンナンを加水分解(酸分解、酵素分解など)することにより製造することができる。また、ヤシ油抽出残渣からも製造することができる(特開平11−137288、特開2010−22267)。一方、モリブデン酸塩を触媒としてグルコースから製造する方法や、微生物由来の酵素を利用した製造方法も報告されている(特開2001−231592)。
(第2態様:低濃度のマンノースによる歯髄幹細胞の処理)
第2態様の細胞製剤では、予め低濃度のマンノースで処理された歯髄幹細胞が用いられる。当該細胞製剤は、低濃度のマンノースの処理によって活性が高められた歯髄幹細胞を含有する細胞製剤となる。「予め低濃度のマンノースで処理」とは、製剤化に先だって、歯髄幹細胞を低濃度のマンノースに接触させることを意味する。典型的には、調製段階において或いは調製後に、培養液中に低濃度のマンノースが存在する条件下で歯髄幹細胞(又は歯髄幹細胞を含有する細胞集団)を培養することによって、上記条件を満たす歯髄幹細胞を得ることができる。ここでの「低濃度のマンノース」とは、0.8%(w/v)以下のマンノース濃度をいう。例えば0.2%(w/v)〜0.8(w/v)のマンノース濃度が採用される。処理時間ないし培養時間は特に限定されないが、例えば1時間〜3週間である。低濃度のマンノースが存在する条件を維持しつつ、継代培養を行っても良い。後述の実施例に示した実験結果を踏まえると、低酸素濃度条件下で培養することが好ましい。低酸素条件を併用することにより、歯髄幹細胞の活性の更なる向上が期待できる。
(第3態様:マンノースの同時投与)
第2態様の細胞製剤は、それ自体にマンノースを含むのではなく、その投与の際に同時にマンノースが投与されるという特徴を有する。ここでの「同時」は厳密な同時性を要求するものではない。例えば、細胞製剤にマンノースを混合した後に対象へ投与する等、細胞製剤とマンノースの投与が時間差のない条件下で実施される場合は勿論のこと、細胞製剤を投与後、速やかにマンノースを投与する、或いはこの逆の順序で細胞製剤とマンノースを投与する等、細胞製剤の投与とマンノースの投与が実質的な時間差のない条件下で実施される場合もここでの「同時」の概念に含まれる。後者の場合には、歯髄幹細胞の活性を高めるというマンノースの効果が良好に発揮されるように、両者(細胞製剤とマンノース)の投与の時間差を可及的に短く設定することが好ましい。例えば、片方の投与後10分以内、好ましくは5分以内、更に好ましくは1分以内に他方を投与する。
本発明では、歯髄幹細胞の活性を高めるために、低濃度のマンノースが歯髄幹細胞に接触する状態が形成されることが重要である。従って、投与に先立って細胞製剤とマンノースを混合するのであれば、混合物中のマンノース濃度が0.8%(w/v)以下、例えば0.2%(w/v)〜0.8(w/v)となるようにマンノースの使用量を調整することが好ましい。細胞製剤とマンノースを別々に投与する場合においては、生体内での拡散や循環などを考慮し、マンノース濃度を高めに設定するとよい(例えば0.2%(w/v)〜2%(w/v)のマンノース溶液を投与する)。
間質性膀胱炎に対する新規治療法を開発すべく、以下の検討を行った。
<間質性膀胱炎ラットモデルに対する作用(in vivo実験)>
間質性膀胱炎の動物モデルとして、免疫抑制剤であるシクロフォスファミド(CYP)を用いた膀胱炎モデルが広く用いられている。このモデルは、主症状である膀胱の炎症、排尿回数の増加、及び膀胱痛が投与後数時間でピークを迎え、その後わずか数日で回復するモデルである(Arms L, Girard BM, Malley SE, Vizzard MA. Expression and function of CCL2/CCR2 in rat micturition reflexes and somatic sensitivity with urinary bladder inflammation. Am J Physiol Renal Physiol. 2013 Jul 1;305(1):F111-22. doi: 10.1152/ajprenal.00139.2013. Epub 2013 Apr 17)。
(1)方法
ラットに対してCYPを腹腔内注入して膀胱炎を誘導した1日後、細胞培養液(MesenPro培地)、ラットDPSC、又は低濃度マンノース(0.2%(w/v))を混和し1時間培養(MesenPRO培地、37℃)したラットDPSCを膀胱内注入し、注入から1日後に膀胱内圧(CMG)の計測及び病理組織の検討を行った。また、膀胱血流を可視化し、血流量を定量化した。さらには、膀胱尿中サイトカインの測定を行った。DPSCの投与量は約2 x 105細胞とした。CYPを投与しないラット(正常群:n=3)、CYP腹腔内注入後に細胞培養液を膀注したラット(CYP-培養液膀注群:n=3)、CYP腹腔内注入後にDPSCを膀注したラット(CYP-DPSC膀注群:n=3)、CYP腹腔内注入後に低濃度マンノース混和DPSCを膀注したラット(CYP-MN混和DPSC膀注群:n=3)の間で比較検討した。
一方、各群について処置前後に膀胱尿を採取し、尿中の各種サイトカインを測定した。
(2)結果
HE染色による病理組織の検討結果を図1に示す。正常群と比較してCYP-培養液膀注群は炎症病変を反映する著しい粘膜浮腫が生じていた。CYP-DPSC膀注群、CYP-MN混和DPSC膀注群では浮腫が軽減していた。
一方、血流量を比較した結果、正常群と比較しCYP-培養液膀注群は明らかに膀胱血流が低下していた。CYP+DPSC膀注群及びCYP-MN混和DPSC群で血流は改善した(図2)。CYP+DPSC膀注群に比べ、CYP-MN混和DPSC群の改善の程度は高い。
膀胱内圧計測の結果を図3に示す。図示のごとく、正常群(34.4±4.1分)と比較してCYP-培養液膀注群(5.6±5.1分)は排尿間隔の著しい短縮を認めた。一方、CYP-培養液膀注群と比較してCYP-DPSC膀注群(18.4±4.2分)では排尿間隔が延長した。CYP-MN混和DPSC膀注群(22.6±3.6分)では排尿間隔の更なる延長が認められた。即ち、間質性膀胱炎モデル対するDPSCの膀注及びマンノースの併用は排尿間隔を延長し、治療に寄与した。このように、間質性膀胱炎モデルにおいて、DPSCの投与が治療効果をもたらすこと、及び低濃度のマンノースの併用によってその治療効果が増強されることが明らかとなった。
尿中サイトカインの測定結果を図4及び5に示す。DPSCの膀注は歯髄幹細胞遊走サイトカインであるフラクタルカイン(Fractalkine)の分泌を促進させ再生を促した。また、DPSCの膀注によって各種炎症性サイトカインの分泌が抑制された。マンノースを併用すると各種炎症性サイトカインの分泌量は一層低下した。
(3)まとめ
以上の通り、間質性膀胱炎に対してDPSCの膀胱内注入が有効な治療法であることが示された。また、マンノースの併用によって治療効果が高められること、即ち、DPSCとマンノースの併用が優れた治療効果をもたらすことが明らかとなった。一方、DPSCが再生サイトカインの分泌促進及び多彩な炎症性サイトカイン抑制作用を有していること、並びにマンノースの併用によって炎症性サイトカイン抑制作用が増強されることが示され、治療効果が裏づけられた。
本発明の細胞製剤は歯髄幹細胞を有効成分とし、間質性膀胱炎の治療/予防に使用される。マンノースを併用することにより、治療効果の増大が図られる。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (11)

  1. 歯髄幹細胞を含有する、間質性膀胱炎治療用の細胞製剤。
  2. 低濃度のマンノースが併用される、請求項1に記載の細胞製剤。
  3. 歯髄幹細胞と低濃度のマンノースを含有する、請求項2に記載の細胞製剤。
  4. 低濃度のマンノースで処理された歯髄幹細胞を含有する、請求項2に記載の細胞製剤。
  5. 歯髄幹細胞を含有し、治療対象への投与の際にマンノースが同時に投与される、請求項2に記載の細胞製剤。
  6. 低濃度が、0.8%(w/v)以下の濃度である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の細胞製剤。
  7. 低濃度が、0.2%(w/v)〜0.8(w/v)である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の細胞製剤。
  8. 間質性膀胱炎治療用の細胞製剤を製造するための、歯髄幹細胞の使用。
  9. 間質性膀胱炎治療用の細胞製剤を製造するための、歯髄幹細胞及び低濃度のマンノースの使用。
  10. 間質性膀胱炎の患者に、治療上有効量の歯髄幹細胞を投与することを含む、間質性膀胱炎の治療法。
  11. 間質性膀胱炎の患者に、治療上有効量の歯髄幹細胞と低濃度のマンノースを投与することを含む、間質性膀胱炎の治療法。
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