JP2016006420A - 唾液試料の調製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】被験者から一定量の唾液を採取し、保存安定性と取扱い性に優れた唾液試料を調製する方法、及び当該方法により得られた唾液試料から有機酸を検出する方法の提供。
【解決手段】唾液を、唾液吸収部材に吸収させる吸収工程と、前記吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材を乾燥させる乾燥工程と、を有し、前記吸収工程において、前記唾液吸収部材に所定量の唾液を吸収させる、又は前記乾燥工程後、前記唾液吸収部材から、所定量の唾液由来の固形分が吸着している領域を切断して回収することにより、所定量の唾液に由来する固形分が唾液吸収部材に乾燥状態で保持された唾液試料を調製することを特徴とする、唾液試料の調製方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、被験者から一定量の唾液を採取し、保存安定性と取扱い性に優れた唾液試料を調製する方法、及び当該方法により得られた唾液試料から有機酸を検出する方法に関する。
唾液は、非侵襲的に容易に採取可能な生体試料であり、唾液中の有機酸等の生体分子の中にはバイオマーカーとして機能し得るものがある。このため、血液と同様、唾液も臨床検査等の検体として有用である。唾液は、通常、流涎として容器に採取されたり、濾紙やスワブに吸収させることにより採取される。唾液を採取するスワブとしては、例えば、唾液を採取し、その後放出するためのアプリケーターと海島バイコンポーネント繊維を含有するスワブ(例えば、特許文献1参照。)や、採取した唾液を培地等に擦り付けることによって放出可能なスワブ(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。また、DNAを解析するための生体試料を採取するために使用されるスワブであって、乾燥剤と共に収納されるスワブ(例えば、特許文献3参照。)も開示されている。
一方で、生体試料中の有機酸の中には、バイオマーカーとして有用なものがあり、これらの測定方法が開示されている。例えば、肝臓での脂肪酸異化を評価するバイオマーカーとして有用な3−ヒドロキシ酪酸(3−HB)の定量には、NADとD−3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを添加した後にNADHを検出する酵素分光光度法が使用されている(例えば、非特許文献1又は2参照。)。その他にもNADHの定量方法としては、3HBをアセト酢酸(AA)に酵素変換した後にp−ニトロベンゼンジアゾニウムフルオロホウ酸で誘導体化し、この誘導体を、分光光度又は紫外線により検出する高感度HPLC(高速液体クロマトグラフィー)アッセイにより定量する方法が報告されている(例えば、非特許文献3又は4参照。)。また、3−HBを直接検出する方法としては、誘導体化後にガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)法により検出する方法(例えば、非特許文献5又は6参照。)や、誘導体化せずに、正イオンモードのエレクトロスプレーイオン化(ESI)によるLC−MS/MS(液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析)法(LC−P−ESI−MS/MS)によって検出する方法(例えば、非特許文献7参照。)も報告されているが、これらの方法の検出感度は、酵素分光光度法と同様に低い。
一方で、消化器疾患患者において、代謝・消化・吸収能低下あるいは栄養過多状態により、栄養代謝異常が生じる。多くの消化器疾患では、糖・脂質代謝異常がみられるため、エネルギー供給源としてアミノ酸の重要性が高い。特に分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)は、飢餓や低栄養状態、長時間運動や代謝疾患時に、糖質・脂質に代わって骨格筋のミトコンドリア内で異化され、エネルギー源となる。骨格筋で異化されたBCAAは、アセチルCoAやスクシニルCoAに代謝される。BCAAは、ミトコンドリア内で共通の酵素反応によって、ミトコンドリア膜を通過できないCoAが結合される。具体的には、BCAAは、ミトコンドリア内でBCAT(BCAAアミノ基転移酵素)とBCKDH complex(分岐鎖αケト酸脱水素酵素複合体)によって、分岐鎖αケト酸(バリンからα−ケトイソ吉草酸へ、ロイシンからα−ケトイソカプロン酸(KIC)へ、イソロイシンからα−ケト−β−メチル吉草酸へ)を経て、CoA体(α−ケトイソ吉草酸からイソブチリルCoAへ、KICからイソバレリルCoAへ、α−ケト−β−メチル吉草酸からα−メチルブチリルCoAへ)に代謝される。BCAAの異化過程では、CoAの結合が必須であるが、バリンのみは、異化経路の途中で、特異的酵素反応によってCoAが一旦外され、中間代謝産物の3−ヒドロキシイソ酪酸(3−HIB)ができる。CoAが結合していない3−HIBは、分子量が小さいためミトコンドリア膜を通過し、一部が細胞外へ漏出する。実際に、飢餓状態や肝硬変患者では、骨格筋の萎縮と共に血清3−HIB濃度が上昇する。
このことから、3−HIBは骨格筋におけるアミノ酸異化状態を反映する指標、すなわち骨格筋におけるBCAA異化マーカーとしての利用が期待される。しかしながら、生体試料中の微量の3−HIBを充分な感度で検出できる方法は、現在までには報告されていない。例えば、3−HIBを直接検出する方法としては、誘導体化せずに、負イオンモードのエレクトロスプレーイオン化(ESI)によるLC−MS/MS法(LC−N−ESI−MS/MS)によって検出する方法(例えば、非特許文献7参照。)が報告されているが、当該方法は感度が低いため、例えば血清中の3−HIBを検出するためには多量の血清を必要とする。また、GC−MS法により、血液中の3−HBを検出した場合には、3−HIBは3−HBとはクロマトグラフィーによっては分離できなかったことが報告されている(例えば、非特許文献8参照。)。
3−HBや3−HIB以外の有機酸の検出方法としては、マロン酸をジ−(1−メチル−3−ピペリジニル)マロン酸に誘導体化した後、LC−P−ESI−MS/MS)によって検出する方法(例えば、非特許文献9参照。)が報告されている。当該方法では、マロン酸にアミン残基を導入してマロン酸エステルとすることにより、イオン化が促進され、検出感度が顕著に増大した。
また、BCAAの1つであるロイシンの代謝産物として、3−ヒドロキシイソ吉草酸(3−HMB)が挙げられる。ロイシンは、他のBCAAと同様にミトコンドリア内でKICを経てCoA体(イソバレリルCoA)に代謝されるが、KICの5〜10%程度がミトコンドリア膜を通過し、細胞質内においてKIC−dioxygenaseによって3−HMBに代謝される。3−HMBの作用としては、mTOR経路により蛋白合成促進、ユビキチン/プロテアソーム経路の抑制による蛋白質分解抑制、HMB−CoAから変換されたヒドロキシメチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)によるコレステロール合成促進による筋鞘安定化等が知られている。これらの作用により、3−HMBは、BCAA由来の肝臓蛋白(アルブミン等)合成マーカーや骨格筋肥大のマーカーとしての利用が期待される。実際に、3−HMBは筋肉増強効果を目的としたサプリメントとして利用されていることから、3−HMBを摂取した場合の血中動態を検討するため、3−HMB摂取後のラットの血中3−HMB濃度を、誘導体化せずにLC−N−ESI−MS/MSによって測定したことが報告されている(例えば、非特許文献10参照。)。また、HILIC(親水性相互作用クロマトグラフィー)−MS/MSにより、3−HBと3−HMBを誘導体化せずに同時測定する方法も報告されているが、当該測定方法では、3−HMBの検出限界は0.4μMであり、生体試料中(血液や唾液など)の3−HMBは、3−HBや3−HMBより微量であるため、より高感度に検出する方法が求められている(例えば、非特許文献11参照。)。
また、3−HB等と構造類似の有機酸として、2−ヒドロキシ酪酸(2−HB)がある。2−HBは、スレオニンとメチオニンの代謝産物であるαケト酪酸が、NADH依存性のLDHやLDHのアイソザイムである2−HB脱水素酵素(α−HBDH)による異化反応の副産物として生成される。また、αケト酪酸は、スクシニルCoAの前駆体であるプロピオニルCoAに代謝されることから、2−HBの上昇は、LDHやα−HBDHによるαケト酪酸の異化亢進か、αケト酪酸からプロピオニルCoAへの代謝不全によって生じる。さらに、αケト酪酸は、強力な抗酸化物質であるグルタチオンの前駆体アミノ酸であるシステインがシスタチオンより代謝される際の副産物としても産生されるため、グルタチオンの生成とも関連している。2−HBは、非糖尿病者のインスリン抵抗性やグルコース不耐性を予測する早期マーカーとして利用できるとの報告がある(例えば、非特許文献12参照。)。これは、インスリン抵抗性やグルコース不耐性発症には、肝臓での脂質過酸化や酸化ストレスが関与しており、肝臓でのグルタチオン生成亢進や脂質過酸化に伴うNADHやNADの増加によるものと考えられる。この検討では、UHPLC−MSやHILIC−MS/MS装置にて、血清中や全血中の2−HBを測定しているが、血清中の濃度(1μg/mL=約9.6μM以上)より微量な生体試料(唾液など)での測定は、これまで検討されていない(例えば、非特許文献11及び非特許文献2参照。)。
特開2014−16367号公報 特表2007−523663号公報 特開2014−10132号公報
ウィリアムソン(Williamson)、他2名、バイオケミカル・ジャーナル(Biochemical Journal)、1962年、第82巻、第90ページ。 ローン(Laun)、他6名、クリニカル・アンド・エクスペリメンタル・メディシン(Clinical and Experimental Medicine)、2001年、第1巻、第201ページ。 ヤマト(Yamato)、他4名、バイオロジカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリティン(BIOLOGICAL and PHARMACEUTICAL BULLETIN)、2003年、第26巻、第397ページ。 ヤマト(Yamato)、他8名、アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、2009年、第384巻、第195ページ。 ヘイル(Heil)、他9名、バイオメディカル・サイエンシズ・アンド・アプリケーションズ(Biomedical Sciences and Applications)、2000年、第379巻、第313ページ。 ハッサン(Hassan)、他1名、ジャーナル・オブ・アナリティカル・トキシコロジー(Journal of Analytical Toxicology)、2009年、第33巻、第502ページ。 サニー(Sunny)、他9名、アメリカン・ジャーナル・オブ・フィロソフィー−エンドクリノロジー・アンド・メタボリズム(American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism)、2010年、第298巻、第E1226ページ。 デ・ロジェール(Des Rosiers)、他6名、アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、1988年、第173巻、第96ページ。 ホンダ(Honda)、他7名、ジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ(Journal of Lipid Research)、2009年、第50巻、第2124ページ。 デスパンデ(Deshpande)、他6名、バイオメディカル・クロマトグラフィー(Biomedical Chromatography)、2013年、第27巻、第142〜147ページ。 ソレンセン(Sorensen)、他6名、クリニカル・バイオケミストリー(Clinical Biochemistry)、2013年、第46巻、第1877〜1883ページ。 ガル(Gall)、他11名、プロス・ワン(PLoS One)、2010年、第5巻、第e10883ページ。 シイナ(Shiina)、他2名、ケミストリー・レターズ(Chemistry Letters)、2002年、第31巻、第286ページ。 タグチ(Taguchi)、「Introduction to Quality Engineering: Designing Quality into Products and Process」、1986年、アジア生産性機構発行。
本発明は、被験者から一定量の唾液を採取し、保存安定性と取扱い性に優れた唾液試料を調製する方法、及び当該方法により得られた唾液試料から有機酸を検出する方法の提供を目的とする。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[9]の唾液試料の調製方法、下記[10]〜[14]の有機酸の検出方法、下記[15]の有機酸濃度の経時的変化の測定方法を提供するものである。
[1] 本発明に係る第一の唾液試料の調製方法は、唾液を、唾液吸収部材に吸収させる吸収工程と、前記吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材を乾燥させる乾燥工程と、を有し、前記吸収工程において、(i)前記唾液吸収部材に所定量の唾液を吸収させること、又は(ii)前記乾燥工程後、前記唾液吸収部材から、所定量の唾液由来の固形分が吸着している領域を切断して回収することにより、所定量の唾液に由来する固形分が唾液吸収部材に乾燥状態で保持された唾液試料を調製することを特徴とする。
[2] 前記[1]の唾液試料の調製方法においては、前記唾液吸収部材が短冊状又は棒状であり、前記吸収工程において、前記唾液吸収部材の一方の端部を唾液に接触させ、毛細管現象により唾液を吸い上げることにより当該唾液吸収部材に唾液を吸収させ、前記乾燥工程後、前記唾液吸収部材の唾液由来の固形分が吸着している領域のうち、吸い上げられた唾液の先端から8mm以上離れている領域から、所定の面積分又は体積分の領域を切断したものを、唾液試料として回収することが好ましい。
[3] 前記[1]又は[2]の唾液試料の調製方法においては、前記唾液が、液体状態で唾液容器に収容されているものであることが好ましい。
[4] 前記[1]又は[2]の唾液試料の調製方法においては、前記吸収工程を、前記唾液吸収部材を被検者の口腔内において唾液と接触させることにより行うことが好ましい。
[5] 前記[4]の唾液試料の調製方法においては、前記唾液吸収部材が短冊状又は棒状であり、前記吸収工程において、前記唾液吸収部材の一方の端部を被検者の口に入れて、毛細管現象により唾液を吸い上げることにより当該唾液吸収部材に唾液を吸収させ、前記乾燥工程後、前記唾液吸収部材の唾液由来の固形分が吸着している領域のうち、被検者の口腔内において唾液と直接接触していなかった領域であり、かつ吸い上げられた唾液の先端から8mm以上離れている領域から、所定の面積分又は体積分の領域を切断したものを、唾液試料として回収することが好ましい。
[6] 前記[1]〜[5]のいずれかの唾液試料の調製方法においては、前記乾燥工程前に、前記吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材に、抗菌剤を含有させることが好ましい。
[7] 前記[1]〜[3]のいずれかの唾液試料の調製方法においては、前記吸収工程において、唾液と抗菌剤の混合物を前記唾液吸収部材に吸収させることが好ましい。
[8] 前記[1]〜[3]のいずれかの唾液試料の調製方法においては、前記唾液吸収部材が、予め抗菌剤を保持していることが好ましい。
[9] 本発明に係る第二の唾液試料の調製方法は、唾液を、唾液吸収部材に吸収させる吸収工程と、前記吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材を、抗菌剤を含有する溶液中に浸漬させる抗菌剤処理工程と、を有し、前記吸収工程において、(i)前記唾液吸収部材に所定量の唾液を吸収させること、又は(ii)前記吸収工程後、前記唾液吸収部材から所定量の唾液由来の固形分が吸着している領域を切断して回収したものを、前記抗菌剤を含有する溶液中に浸漬させることにより、所定量の唾液に由来する固形分と唾液吸収部材を含有する溶液である唾液試料を調製することを特徴とする。
[10] 前記[6]〜[9]のいずれかの唾液試料の調製方法においては、前記抗菌剤が、第四級アンモニウム塩系抗菌剤であることが好ましい。
[11] 前記[1]〜[10]のいずれかの唾液試料の調製方法においては、前記吸収工程において前記唾液吸収部材に吸収させる唾液量が、前記唾液吸収部材の最大吸収量であることも好ましい。
[12] 前記[1]〜[11]のいずれかの唾液試料の調製方法においては、前記所定量が、1〜50μLであることが好ましい。
[13] 前記[1]〜[12]のいずれかの唾液試料の調製方法においては、前記唾液吸収部材が、合成樹脂繊維からなることが好ましい。
[14] 前記[1]〜[8]のいずれかの唾液試料の調製方法においては、前記乾燥工程における乾燥が、自然乾燥であることが好ましい。
[15] 本発明に係る唾液中の有機酸の検出方法は、前記[1]〜[14]のいずれかの唾液試料の調製方法により得られた唾液試料を、極性有機溶剤に浸漬させることにより、前記唾液試料から唾液由来の有機酸を抽出する抽出工程と、前記抽出工程の後、有機酸が抽出された極性有機溶剤を、唾液由来有機酸検出用試料として、前記唾液試料から分離して回収する回収工程と、前記回収工程により回収された唾液由来有機酸検出用試料中の有機酸を下記一般式(1)−1〜(1)−3(式(1)−1〜3中、R及びRは、一方が炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)のいずれかで表される誘導体化試薬とエステル結合させることにより誘導体を合成し、当該誘導体を、正イオンモードのエレクトロスプレーイオン化LC−MS/MS(液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析)法により検出する検出工程と、を有することを特徴とする。
Figure 2016006420
[16] 前記[15]の唾液中の有機酸の検出方法においては、前記極性有機溶剤が、アセトニトリルであることが好ましい。
[17] 前記[15]又は[16]の唾液中の有機酸の検出方法においては、前記抽出工程において、前記唾液試料を、予め内部標準物質を含有させた極性有機溶剤に浸漬させることが好ましい。
[18] 前記[15]〜[17]のいずれかの唾液中の有機酸の検出方法においては、前記誘導体化試薬が2−ピリジンメタノール、1−ピペリジンエタノール、及び2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
[19] 前記[15]〜[18]のいずれかの唾液中の有機酸の検出方法においては、前記有機酸が3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシイソ吉草酸、2−ヒドロキシ酪酸、及び乳酸からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
[20] 本発明に係る有機酸濃度の経時的変化の測定方法は、同一の被験者から経時的に調製された複数の唾液試料に対して、前記[15]〜[19]のいずれかの唾液中の有機酸の検出方法を行い、前記被験者の唾液中の有機酸濃度の経時的変化を調べることを特徴とする。
本発明に係る唾液試料の調製方法により、簡便に、被験者から一定量の唾液を採取し、保存安定性と取扱い性に優れた唾液試料を調製することができる。
また、本発明に係る有機酸の検出方法や有機酸濃度の経時的変化の測定方法は、本発明に係る唾液試料の調製方法により調製された唾液試料中の有機酸を、特定の誘導体化試薬を用いて誘導体化した後にLC−P−ESI−MS/MSによって検出する方法であり、これらの方法により、極少量の唾液から、3−HIBや3−HB、3−HMB、2−HB、乳酸等の有機酸を高感度に検出することができる。
2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HB(2PM−3−HB)の典型的なP−ESI MSスペクトラムを示した図である。 参考例1において、2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を示した図である。 図2AのMSスペクトラムを示した図である。 参考例1において、2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HIBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を示した図である。 図2CのMSスペクトラムを示した図である。 参考例1において、2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HBと3−HIBを含む試料のm/z 196を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを示した図である。 図2Eの3−HIBピークのMS/MSスペクトラムを示した図である。 参考例2において、1−ピペリジンエタノールで誘導体化された3−HBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を示した図である。 図3AのMSスペクトラムを示した図である。 参考例2において、1−ピペリジンエタノールで誘導体化された3−HIBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を示した図である。 図3CのMSスペクトラムを示した図である。 参考例2において、1−ピペリジンエタノールで誘導体化された3−HBと3−HIBを含む試料のm/z 216を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを示した図である。 図3Eの3−HIBピークのMS/MSスペクトラムを示した図である。 参考例3において、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジンで誘導体化された3−HBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を示した図である。 図4AのMSスペクトラムを示した図である。 参考例3において、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジンで誘導体化された3−HIBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を示した図である。 図4CのMSスペクトラムを示した図である。 参考例3において、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジンで誘導体化された3−HBと3−HIBを含む試料のm/z 216を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを示した図である。 図4Eの3−HIBピークのMS/MSスペクトラムを示した図である。 参考例4において、2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HB(2PM−3−HB)と[13]同位体の典型的なSRMクロマトグラムを示した図である。 参考例5において、2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HBと3−HIBと3−HMBと2−HBと3−HB−13を含む試料の総イオンクロマトグラム(1段目)、m/z 196を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラム(2段目)、m/z 200を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラム(3段目)、m/z 210を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラム(4段目)を示した図である。 参考例6において、採血後室温で放置された血清中の3−HB濃度及び3−HIB濃度の測定結果を示した図である。 参考例6において、採取後室温で放置された唾液中の3−HB濃度及び3−HIB濃度の測定結果を示した図である。 参考例7において、3−HBの血清中濃度と唾液(流涎)中濃度の相関性を調べた結果を示した図である。 参考例7において、3−HIBの血清中濃度と唾液(流涎)中濃度の相関性を調べた結果を示した図である。 参考例7において、2−HBの血清中濃度と唾液(流涎)中濃度の相関性を調べた結果を示した図である。 参考例8において、被験者の運動と食事状況、及び血液、唾液、尿の採取時点を示した図である。 参考例8において、被験者の血清中の3−HIB及び3−HBの濃度の経時的変化を示した図である。 参考例8において、被験者の3−HIB及び3−HBの各採取時点における単位時間当たり尿排泄量(μmol/h)の経時的変化を示した図である。 参考例8において、被験者の唾液中の3−HIB及び3−HBの濃度の経時的変化を示した図である。 参考例9において、肝硬変患者群と健常者群の血清中の3−HIB濃度及び3−HMB濃度の測定結果を示した図である。 参考例9において、肝硬変患者群と健常者群の唾液中の3−HIB濃度及び3−HMB濃度の測定結果を示した図である。 実施例1において使用したシルマー濾紙1の模式図である。 実施例1において、容器内の流涎にシルマー濾紙の先端部(唾液と接触させる領域側の端部)から10mmまでの領域を浸漬させ、毛細管現象により唾液を吸い上げた10本のシルマー濾紙を3つの断片(採取部位(1)〜(3))に分け、各断片から測定した4種類の有機酸(3−HB、3−HIB、2−HB及び3−HMB)の濃度のばらつき(変動係数、%CV)を算出した結果を示した図である。 実施例2において、被験者の舌下に、シルマー濾紙の先端部(唾液と接触させる領域側の端部)から10mmまでの領域のみを接触させて毛細管現象により唾液を吸い上げた10本のシルマー濾紙を3つの断片(採取部位(1)〜(3))に分け、各断片から測定した4種類の有機酸(3−HB、3−HIB、2−HB及び3−HMB)の濃度のばらつき(変動係数、%CV)を算出した結果を示した図である。 実施例3において、シルマー濾紙に染み込ませた唾液中のDL−3−HB−13ナトリウム塩の濃度を、シルマー濾紙の乾燥時間ごとに示した図である。 実施例3において、シルマー濾紙に染み込ませた唾液中の3−HBの濃度を、シルマー濾紙の乾燥時間ごとに示した図である。 実施例3において、シルマー濾紙に染み込ませた唾液中の3−HMBの濃度を、シルマー濾紙の乾燥時間ごとに示した図である。 実施例4において、唾液、及び唾液を吸収させて20分間自然乾燥させた各濾紙から測定したDL−3−HB−13ナトリウム塩の濃度を示した図である。 実施例4において、唾液、及び唾液を吸収させて20分間自然乾燥させた各濾紙から測定した3−HBの濃度を示した図である。 実施例4において、唾液、及び唾液を吸収させて20分間自然乾燥させた各濾紙から測定した3−HIBの濃度を示した図である。 実施例4において、唾液、及び唾液を吸収させて20分間自然乾燥させた各濾紙から測定した3−HMBの濃度を示した図である。 実施例4において、唾液、及び唾液を吸収させて20分間自然乾燥させた各濾紙から測定した2−HBの濃度を示した図である。 参考例10において、2−ピペリジンエタノールで誘導体化された乳酸とその重水素同位体を含む試料のm/z 182.1を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを示した図である。 図26Aの2−ピペリジンエタノールで誘導体化された乳酸ピークのMS/MSスペクトラムを示した図である。 参考例10において、2−ピリジンメタノールで誘導体化されたD−乳酸(標品)とその重水素同位体の典型的なSRMクロマトグラムを示した図である。 参考例10において、2−ピリジンメタノールで誘導体化された唾液由来の乳酸とその重水素同位体の典型的なSRMクロマトグラムを示した図である。 参考例11において、室温における唾液中の有機酸濃度の経時的変化を示した図である。 参考例12において、各種添加剤を添加して室温で24時間放置した唾液中の有機酸濃度の測定結果を示した図である。 参考例13において、乳酸の血清中濃度と唾液(流涎)中濃度の相関性を調べた結果を示した図である。
<第一の唾液試料の調製方法>
本発明に係る唾液試料の調製方法は、所定量の唾液に由来する固形分が唾液吸収部材に乾燥状態で保持された唾液試料を調製することを特徴とする。当該調製方法により調製された唾液試料は、乾燥状態であるため、臨床検査等に供されるまでの間、室温や外気温中で保存した場合であっても、唾液中の各種生体分子が安定して維持される。また、液状の唾液をそのまま容器等に回収して保存する場合よりも、保管や移送等が容易であり、取扱い性にも優れている。さらに、当該調製方法により調製された唾液試料は、予め定められた所定量の唾液に由来する固形分を含有しているため、当該調製方法により調製された複数の唾液試料について同一の検査方法に供することにより、試料ごとの測定のばらつきを抑えることができる上に、ノーマライズ処理を行うことなく、各唾液試料に含有されている生体分子の含有量同士を直接比較することができる。
なお、唾液に由来する固形分とは、唾液から水分を除いた残りの成分を意味する。すなわち、当該固形分には、有機酸、核酸、蛋白質、糖類、多糖類、糖蛋白質、脂質等が含まれる。
所定量の唾液に由来する固形分を含有する唾液試料を調製するために、本発明に係る唾液試料の調製方法は、具体的には、唾液を、唾液吸収部材に吸収させる吸収工程と、前記吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材を乾燥させる乾燥工程と、を有し、前記吸収工程において、前記唾液吸収部材に所定量の唾液を吸収させる、又は前記乾燥工程後、前記唾液吸収部材から、所定量の唾液由来の固形分が吸着している領域を切断して回収する。
前記吸収工程において、唾液吸収部材に吸収させる唾液は、唾液吸収部材を被検者の口腔内において唾液と接触させることによって被験者の口腔内から直接採取されたものであってもよく、容器に収容された液体状態の唾液(流涎)であってもよい。流涎は、被験者が容器に直接垂れ流して採取したものであってもよく、他の手段で採取されたものを容器に収容したものであってもよい。例えば、唾液吸収部材を口腔内に含む、又は唾液吸収部材の少なくとも一部を口にくわえて毛細管現象によって唾液を吸い上げる等により、当該唾液吸収部材に唾液を吸収させることができる。特に、唾液吸収部材が短冊状や棒状の場合には、被験者が寝たままの姿勢である場合や、運動を継続している場合であっても、被験者から容易に唾液を採取することができる。また、例えば、容器に採取された流涎に、唾液吸収部材を浸漬させることにより、又は唾液吸収部材の一部を接触させて毛細管現象によって唾液を吸い上げることにより、当該唾液吸収部材に唾液を吸収させることができる。
前記吸収工程において、唾液吸収部材に吸収させる唾液の量は特に限定されるものではないが、口腔内で唾液吸収部材を湿らせることにより採取可能な程度の量であることが好ましい。具体的には、100μL以下が好ましく、1〜50μLがより好ましく、10〜50μLがさらに好ましい。本発明に係る唾液試料の調製方法においては、唾液の採取を、極少量の唾液を唾液吸収部材に吸収させることにより行うため、子供や老人、患者等のように唾液量の少ない被検者や、運動中の被験者からも、必要量の唾液を、安全かつ迅速に採取することができる。
本発明に係る唾液試料の調製方法において用いられる唾液吸収部材としては、液性成分を吸収可能な多孔質部材であればよく、唾液や涙液等の液性成分を含む生体試料の採取に使用される多孔質部材の中から適宜選択して用いることができる。中でも、濾紙やスワブを用いることが好ましい。また、当該唾液吸収部材の形状は特に限定されるものではなく、塊状であってもよく、短冊状であってもよく、棒状であってもよい。さらに、例えば、唾液を吸収しない棒状の部材の先端部に、唾液吸収部材であるスワブを結合させた部材のように、唾液吸収部材と唾液を吸収しない部材との複合部材であってもよい。なお、当該唾液吸収部材は、吸収工程に用いられる前に、予めシリカゲルなどの乾燥剤と共に保存する等により乾燥させておくことも好ましい。
前記唾液吸収部材が短冊状又は棒状であり、一方の端部を被検者が口にくわえて毛細管現象によって当該唾液吸収部材に唾液を吸い上げる場合には、当該唾液吸収部材に吸収された唾液の量は、被検者が口にくわえていた端部から吸い上げられた唾液の先端までの距離に依存する。そこで、唾液吸収部材に必要な量の唾液を吸収させたことが可視化できるように、予め、唾液吸収部材の被検者が口にくわえる端部から所定の距離の位置に、唾液と接触すると可視化する色素を保持させておくことも好ましい。
本発明に係る唾液試料の調製方法において用いられる唾液吸収部材の素材としては、例えば、綿、ウール、絹、麻、リグノセルロース、デンプン、デキストラン等の天然素材であってもよく、アクリル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、レーヨン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、又はこれらを適宜組み合わせた混合物等の合成樹脂繊維であってもよく、ガラス繊維、シリカゲル、活性白土、ケイソウ土、炭素粉末、活性アルミナ等の無機素材であってもよい。本発明において用いられる唾液吸収部材の素材としては、唾液を吸収させた後に乾燥させやすいことから、合成樹脂繊維や無機素材が好ましく、さらに、唾液の吸収性が高いことから、合成樹脂繊維がより好ましい。
吸収工程の後、乾燥工程として、当該吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材を乾燥させる。乾燥方法は、唾液吸収部材に吸収させた唾液中の有機酸等の生体成分を損なうことなく水分を除去し得る方法であれば特に限定されるものではなく、自然乾燥させてもよく、温風乾燥させてもよく、減圧乾燥させてもよく、凍結乾燥させてもよい。本発明においては、特別な乾燥装置を要することなく簡便に乾燥させられることから、自然乾燥することが好ましい。
当該乾燥工程においては、唾液を吸収させた唾液吸収部材の表面に紙等を接触させた場合に、当該紙に水分がにじまない程度に十分に乾燥させることが好ましい。乾燥時の温度や乾燥時間等の条件は、唾液吸収部材の素材や乾燥方法に応じて適宜調整できる。例えば、唾液吸収部材の素材が綿セルロースであり、20〜25℃の環境下で自然乾燥する場合には、乾燥時間は24時間以上が好ましく、48時間以上がより好ましい。唾液吸収部材の素材が合成樹脂繊維であり、20〜25℃の環境下で自然乾燥する場合には、乾燥時間は20分間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
本発明に係る唾液試料の調製方法において得られた唾液試料は、唾液中に含まれている生体分子の分析に用いられる。分析方法によっては、当該唾液試料から分析対象の生体分子を有機溶媒により抽出するが、唾液吸収部材の水分含有率が高い場合には、極性有機溶剤が十分に浸透せず、唾液由来の有機酸が抽出され難くなるおそれがある。このため、当該乾燥工程においては、特に、乾燥後の唾液吸収部材の水分含有率が、当該唾液吸収部材を極性有機溶剤に浸漬させた場合に、当該唾液吸収部材の中心部にまで極性有機溶剤が浸透可能な程度に低くなるまで乾燥させることが好ましい。
乾燥工程後の唾液吸収部材は、分析に供されるまでの間、室温等の特段の温度調節を行わない環境下で保管することができる。乾燥された唾液吸収部材は、乾燥剤と保管しておくことも好ましい。また、乾燥工程を自然乾燥にて行う場合、唾液を吸収させた唾液吸収部材を、シリカゲルなどの乾燥剤と共に室温環境下で放置して自然乾燥させることが好ましい。
本発明に係る唾液試料の調製方法においては、前記吸収工程において、唾液吸収部材に所定量の唾液を吸収させることにより、予め定められた一定の量の唾液由来の固形分が保持された唾液試料を調製することができる。例えば、唾液吸収部材の最大吸収量を、当該所定量になるように調節し、吸収工程において唾液吸収部材に対し限界まで(すなわち、それ以上唾液を吸収できなくなるまで)吸収させる。一定の大きさの唾液吸収部材を用いることにより、常に一定の量の唾液を採取することができる。
本発明に係る唾液試料の調製方法においては、前記乾燥工程後の唾液吸収部材から、所定量の唾液由来の固形分が吸着している領域を切断して回収することによっても、予め定められた一定の量の唾液由来の固形分が保持された唾液試料を調製することができる。例えば、唾液吸収部材が短冊状又は棒状の場合には、唾液吸収部材の一方の端部を唾液に接触させ、毛細管現象により唾液を吸い上げることにより当該唾液吸収部材に唾液を吸収させることができる(吸収工程)。毛細管現象を利用するため、吸収工程において予め定めてある一定の量の唾液のみを唾液吸収部材に吸収させることは困難であるが、唾液吸収部材に吸収されている唾液量は原則として唾液吸収部材中の唾液が吸い上げられた体積に比例する。また、短冊状又は棒状のように厚みが一定の唾液吸収部材においては、吸収されている唾液量は原則として唾液吸収部材中の唾液が吸い上げられた面積に比例する。このため、乾燥工程後の唾液吸収部材の唾液が吸い上げられた領域から所定の面積分又は体積分の領域を切り出すことにより、常に所定量の唾液由来の固形分が保持された唾液吸収部材が得られる。この切断して回収された唾液吸収部材が、目的の唾液試料である。
乾燥工程後の短冊状又は棒状の唾液吸収部材から切断して回収される領域は、当該唾液吸収部材の唾液由来の固形分が吸着している領域のうち、吸い上げられた唾液の先端から離れた領域であることが好ましい。毛細管現象により唾液吸収部材中を吸い上げられた唾液の先端近傍では、単位面積当たり又は単位体積当たりの唾液吸収部材に吸収された唾液量にばらつきが生じやすく、当該先端近傍を含む唾液試料では、乾燥前に吸収されていた唾液量にばらつきが生じやすいためである。本発明においては、乾燥工程後の短冊状又は棒状の唾液吸収部材から切断して回収される領域は、吸い上げられた唾液の先端から8mm以上離れている領域であることが好ましく、吸い上げられた唾液の先端から10mm以上離れている領域であることがより好ましい。
別の容器に収容されている流涎に短冊状又は棒状の唾液吸収部材の一方の端部を浸漬させて毛細管現象により唾液を吸収させた場合には、吸い上げられた唾液の先端近傍以外は、単位面積当たり又は単位体積当たりの唾液吸収部材に吸収された唾液量はほぼ均一であるから、吸い上げられた唾液の先端近傍以外の領域であれば、唾液試料として切断して回収する領域は、唾液に浸漬させていた領域を含んでいてもよく、唾液に浸漬させていなかった領域のみであってもよい。一方で、唾液吸収部材の一方の端部を被検者の口に入れて毛細管現象により唾液を吸い上げることにより当該唾液吸収部材に唾液を吸収させた場合には、前記乾燥工程後の唾液吸収部材の唾液由来の固形分が吸着している領域のうち、被検者の口腔内において唾液と直接接触していなかった領域であり、かつ吸い上げられた唾液の先端から8mm以上、好ましくは10mm以上離れている領域から、所定の面積分又は体積分の領域を切断し、唾液試料として回収する。唾液吸収部材のうち、被検者の口内で唾液に直接接触していた領域では、単位面積当たり又は単位体積当たりの唾液吸収部材に吸収された唾液量にばらつきが生じやすく、唾液と直接接触していなかった領域のほうが、単位面積当たり又は単位体積当たりの唾液の吸収量が均一である可能性が高いためである。唾液と直接接触していた領域における単位面積当たり又は単位体積当たりの唾液の吸収量にばらつきが大きくなる理由としては、口腔内において唾液吸収部材に直接触れる唾液量や、唾液吸収部材において唾液と直接接触した領域が占める割合にばらつきがあることや、被験者の口腔内表面との物理的な接触により唾液吸収部材が変形することによる影響があることが考えられる。
唾液吸収部材の一方の端部を被検者の口に入れて毛細管現象により唾液を吸い上げることにより当該唾液吸収部材に唾液を吸収させる場合には、口腔内において唾液と直接接触する表面積が常に一定となるように、予め、唾液吸収部材の表面の一部を撥水性の部材により被覆しておく等により、唾液吸収部材に、口腔内に入れた場合でも唾液が直接接触しない領域(非接触領域)を設けておくことも好ましい。撥水性の部材としては、例えば、アルミホイル等の金属箔、パラフィン紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。
本発明に係る唾液試料の調製方法により得られた唾液試料は、唾液中の生体成分の検査等に用いることができる。このため、本発明において用いられる唾液吸収部材には、予め、唾液試料が供される検査において内部標準物質となり得る物質を含有させておいてもよい。当該内部標準物質としては、検査対象の物質の放射性同位体等が挙げられる。例えば、唾液吸収部材に内部標準物質が溶解した溶液を染み込ませた後、充分に乾燥させることによって、内部標準物質を唾液吸収部材中に保持させることができる。内部標準物質は、唾液吸収部材のうち、被検者の口腔内において唾液と直接接触しない非接触領域に保持させておくことが好ましい。
本発明に係る唾液試料の調製方法を用いることにより、少量ではあるが常に一定量の唾液が保持された唾液試料を、被検者から比較的簡便に調製することができる。さらに、調製された唾液試料は、乾燥された状態であり、長期保存や郵送等が容易であるため、唾液の採取時や採取場所と、唾液試料の分析時や分析場所が離れている場合の試料としても好ましい。本発明に係る唾液試料の調製方法は、多数の被験者の唾液中の生体成分を分析するための唾液試料を調製する場合や、唾液中の生体成分の経時的変化を調べる(モニタリングする)ために同一の被験者から経時的に唾液試料を調製する場合に特に適している。
本発明に係る唾液試料の調製方法により得られた唾液試料は、100μL以下、好ましくは1〜50μLという極少量の唾液中の生体分子を分析し得るような、高感度の分析方法に供される試料として好適である。特に、1〜50μLの唾液に含有されている唾液中の有機酸を分析するための試料として好適であり、中でも、3−ヒドロキシ酪酸(3−HB)、3−ヒドロキシイソ酪酸(3−HIB)、3−ヒドロキシイソ吉草酸(3−HMB)、2−ヒドロキシ酪酸(2−HB)、及び乳酸からなる群より選択される1種以上を分析するための試料として好適である。
本発明に係る唾液試料の調製方法においては、唾液試料中の唾液由来の固形分は、抗菌剤と共存させておくことが好ましい。唾液中における2−HB及び乳酸は、3−HB等に比べて保存安定性が低いが、抗菌剤と共存させることにより、唾液試料中の2−HB及び乳酸をより安定して保存させることができる。抗菌剤としては、グラム陽性菌、グラム陰性菌等の細菌類や酵母様真菌に対して、生育や増殖を抑制する作用や死滅させる作用を有する物質であれば特に限定されるものではなく、抗菌剤や消毒薬として用いられている各種抗菌剤の中から適宜選択して用いることができる。当該抗菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム塩系抗菌剤、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素類、過酸化水素水、ポビドンヨード等のヨウ素剤、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類等が挙げられる。本発明においては、一般的に唾液中に含まれている細菌類等の細胞膜を変質・損傷させる活性が高く、抗菌活性が高い点から、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム塩系抗菌剤が好ましい。また、多くの細菌類は、酸性環境下では死滅したり、生育や増殖が抑制されるため、唾液のpHを4.0以下にまで低下させることができる濃度の酸類を含有する溶液も、本発明において抗菌剤として使用できる。当該酸類としては、塩酸等の無機酸であってもよく、ギ酸等の有機酸であってもよい。
例えば、前記乾燥工程前に、前記吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材に抗菌剤を含有させることにより、唾液由来の固形分を抗菌剤と共存させた状態で唾液吸収部材に保持させることができる。乾燥工程前に、唾液を吸収させた唾液吸収部材に抗菌剤を含有させる方法としては、例えば、唾液吸収部材を抗菌剤溶液(抗菌剤を適当な溶媒に溶解させた溶液)に浸漬させる方法や、唾液吸収部材表面に抗菌剤溶液を噴霧させる方法や、唾液吸収部材の表面に抗菌剤溶液をスポイト等を用いて滴下する方法等が挙げられる。抗菌剤溶液を調製するための溶媒としては、水であってもよく、エタノールやイソプロパノール等のアルコール類であってもよく、水とアルコール類との混合溶媒であってもよく、各種界面活性剤等の抗菌剤の溶解助剤を含有していてもよい。
また、唾液吸収部材に吸収させる前の唾液に抗菌剤を混合させておき、前記吸収工程において、唾液と抗菌剤の混合物を前記唾液吸収部材に吸収させることによっても、唾液由来の固形分を抗菌剤と共存させた状態で唾液吸収部材に保持させることができる。例えば、容器に収容された流涎に、唾液中の抗菌剤濃度が充分な抗菌活性を示すために必要充分な濃度となるように抗菌剤を添加して混合する。また、予め抗菌剤を入れておいた容器に、流涎を採取し、当該容器内において流涎と抗菌剤を混合してもよい。容器に採取された流涎に添加する抗菌剤及び採取用の容器内に予め入れておく抗菌剤は、水等の溶媒に溶解させた抗菌剤溶液であってもよく、粉末状等の固形の抗菌剤であってもよい。目的の抗菌剤濃度への調節が比較的容易であることから、採取用の容器内に予め入れておく抗菌剤としては、固形の抗菌剤であることが好ましく、流涎とより均一に混合しやすい点から粉末状の抗菌剤がより好ましい。採取用の容器に直接流涎を採取する場合には、採取される流涎の量を厳密に調節することは困難な場合が多いが、採取用の容器内に固形の抗菌剤を比較的多量に収容しておくことにより、採取される流涎の量を厳密に調整せずとも、保存安定性を高めるために必要充分な量の抗菌剤と混合させることができる。
唾液を吸収させる前の唾液吸収部材に、予め抗菌剤を保持させておいてもよい。予め抗菌剤を保持させた唾液吸収部材に唾液を吸収させることによって、唾液由来の固形分を抗菌剤と共存させた状態で唾液吸収部材に保持させることができる。例えば、唾液吸収部材を抗菌剤溶液に浸漬させた後に乾燥させる方法や、唾液吸収部材表面に抗菌剤溶液を均一に噴霧した後に乾燥させる方法、唾液吸収部材表面に抗菌剤溶液を均一に塗布した後に乾燥させる方法によって、唾液吸収部材中に抗菌剤を保持させることができる。また、唾液吸収部材中の唾液と直接接触しない非接触領域であって、毛細管現象によって唾液が吸い上げられる領域にのみ、抗菌剤を保持させておいてもよい。特に、予め抗菌剤を保持させた唾液吸収部材の一方の端部を被検者の口に入れて毛細管現象により唾液を吸い上げる場合には、抗菌剤は、唾液吸収部材中の唾液や口腔内に直接接触しない非接触領域に保持させておくことが好ましい。
<第二の唾液試料の調製方法>
唾液中の有機酸のうち、3−HB、3−HIB、3−HMB、2−HB、及び乳酸は、いずれも、前記抗菌剤の存在下で比較的長時間、安定して保存することができる。そこで、唾液を吸収させた唾液吸収部材を乾燥させることなく、抗菌剤を含有する溶液中に浸漬させることによっても、唾液由来の有機酸を安定的に含有する唾液試料を調製することができる。具体的には、唾液を、唾液吸収部材に吸収させる吸収工程と、前記吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材を、抗菌剤を含有する溶液中に浸漬させる抗菌剤処理工程と、により行う。使用する唾液吸収部材及び抗菌剤は、前記の第一の唾液試料の調製方法で用いられるものと同様のものを用いることができ、吸収工程は、前記の第一の唾液試料の調製方法における吸収工程と同様にして行うことができる。また、抗菌剤処理工程において唾液吸収部材を浸漬させる抗菌剤を含有する溶液としては、前記抗菌剤溶液を用いることができる。
所定量の唾液に由来する固形分を含有する唾液試料を調製するためには、唾液吸収部材のうち、所定量の唾液由来の固形分を保持している部分のみを、抗菌剤溶液に浸漬させる必要がある。このため、吸収工程において、唾液吸収部材に所定量の唾液を吸収させるか、又は吸収工程後の唾液吸収部材から所定量の唾液由来の固形分が吸着している領域を切断して回収したものを、抗菌剤溶液中に浸漬させる。吸収工程において、唾液吸収部材に所定量の唾液を吸収させる方法や、唾液吸収部材から所定量の唾液由来の固形分が吸着している領域を切断して回収する方法は、前記の第一の唾液試料の調製方法と同様にして行うことができる。
<唾液中の有機酸の検出方法>
本発明に係る唾液中の有機酸の検出方法(以下、「本発明に係る検出方法」ということがある。)は、本発明に係る唾液試料の調製方法により得られた唾液試料中の有機酸を、特定の誘導体化試薬により誘導体化した後にLC−P−ESI−MS/MSによって検出することを特徴とする。本発明に係る検出方法では、有機酸を、特定の誘導体化試薬により誘導体化して検出するため、供される唾液試料が1〜50μLという極少量の唾液から調製されたものであっても、3−HB、3−HIB、3−HMB、2−HB、乳酸等(以下、まとめて「3−HB等」ということがある。)の有機酸を検出することができる。
具体的には、まず、本発明に係る唾液試料の調製方法により得られた唾液試料を、極性有機溶剤に浸漬させることにより、当該唾液試料から唾液由来の有機酸を抽出した後(抽出工程)、有機酸が抽出された極性有機溶剤を、当該唾液試料から分離して回収する(回収工程)。回収された極性有機溶媒は、唾液由来有機酸検出用試料として用いることができる。
当該極性有機溶剤としては、有機酸が溶解可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アセトニトリル、アセトン、エチルメチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、エタノール、又はメタノール等が挙げられる。当該極性有機溶剤としては、3−HB等の溶解性が良好であることから、アセトニトリルが好ましい。
唾液中の有機酸を定量的に検出するために、当該唾液由来有機酸検出用試料には、内部標準物質を一定量添加しておくことが好ましい。内部標準物質としては、検出対象の有機酸の安定同位体が挙げられる。当該内部標準物質は、回収工程において回収された極性有機溶媒(唾液由来有機酸検出用試料)に添加してもよく、唾液試料に添加する前の極性有機溶媒に添加しておいてもよい。
当該唾液由来有機酸検出用試料中の有機酸は、下記一般式(1)−1〜(1)−3(式(1)−1〜3中、R及びRは、一方が炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)のいずれかで表される誘導体化試薬とエステル結合させることにより誘導体を合成し、当該誘導体を、正イオンモードのエレクトロスプレーイオン化LC−MS/MS(液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析)法により検出することができる(検出工程)。
Figure 2016006420
一般式(1)−1〜3中、R及びRは、一方が炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。つまり、Rが炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基の場合、Rが水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rが炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基の場合、Rが水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。窒素原子を含む6員又は5員のヘテロ環を有し、当該窒素原子付近にアルキル基で連結された水酸基が存在する化合物を誘導体化試薬として用いることにより、有機酸を効率よくイオン化することができ、さらに得られた誘導体(エステル化体)のLCの保持時間は比較的長いため、誘導体化に使用した試薬と明確に分離することができる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状のアルキル基であってもよく、分岐鎖状のアルキル基であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。一般式(1)−1〜3中のR又はRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はi−プロピル基が好ましい。
炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基中の1個の水素原子が水酸基に置換されている基であってもよく、炭素数1〜6の分岐鎖状のアルキル基中の1個の水素原子が水酸基に置換されている基であってもよい。具体的には、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基等が挙げられる。
一般式(1)で表される誘導体化試薬としては、2−ピリジンメタノール、1−ピペリジンエタノール、及び2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これらの化合物によってカルボキシル基をエステル化することにより、3−HIBと3−HBと3−HMBと2−HBのように構造類似の有機酸同士を、LCにより良好に分離することが可能となり、ひいては、両者の同時検出(一の試料に対する1回のLC−P−ESI−MS/MSによる検出)が可能となる。一般式(1)で表される誘導体化試薬としては、中でも、リテンションタイムが遅く、誘導体化された検出対象の有機酸エステルのピークに対する誘導体化試薬によるピークの影響が小さいことから、2−ピリジンメタノールが特に好ましい。
本発明に係る検出方法において、LC−P−ESI−MS/MS法は、誘導体化試薬として前記一般式(1)で表される化合物を用いる以外は、常法により行うことができる。具体的には、LC−MS/MSにおけるHPLCやMSは、カルボン酸エステルを検出するための公知の条件と同様に、又は適宜改変した条件で行うことができる。
本発明に係る検出方法では、1回のLC−P−ESI−MS/MSにおいて、1種類の有機酸のみを検出してもよく、2種類以上の有機酸を同時に検出してもよい。本発明に係る検出方法において検出対象とされる有機酸としては、カルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、当該検出方法は、カルボキシル基を有する多くの有機酸の検出に適用できる。本発明に係る検出方法は、解糖系、TCAサイクル、脂肪酸合成系等の中間代謝物たる有機酸の検出や定量に用いられることが好ましい。中でも、本発明に係る検出方法は、下記一般式(2)で表される有機酸の検出に用いられることが好ましい。
Figure 2016006420
一般式(2)中、Rは、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基を表す。炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基としては、分岐鎖状のヒドロキシアルキル基であってもよく、直鎖状のヒドロキシアルキル基であってもよい。当該ヒドロキシアルキル基としては、例えば、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、2−( ヒドロキシメチル)プロピル基、2−ヒドロキシペンチル基、3−ヒドロキシ−2、2−ジメチルプロピル基、3−ヒドロキシペンチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、2−ヒドロキシヘキシル基等が挙げられる。
一般式(2)で表される有機酸としては、Rが、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基であることが好ましい。特に、一般式(2)で表される有機酸としては、3−HIB、3−HB、3−HMB、及び2−HBからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、3−HBと3−HIB、又は3−HIBと3−HBと3−HMBを同時に検出することがより好ましい。3−HBは肝臓での脂肪酸異化のマーカーであり、3−HIB及び3−HMBは骨格筋におけるBCAA異化マーカーとなり得る。つまり、本発明に係る検出方法により、肝臓での脂肪酸異化のマーカーと骨格筋におけるBCAA異化マーカーを同時に検出することができる。
本発明に係る検出方法では、他のLC−MS/MSを利用した検出方法と同様に、検出対象たる有機酸を、濃度既知の有機酸を用いて作成した検量線に基づいて定量的に検出することができる。検量線作成時には、より定量性を高めるために、濃度既知の有機酸の希釈系列の全てに、一定量の安定同位体を添加しておくことも好ましい。
また、生体試料中の有機酸の検出においては、従来の分析方法では、感度が不十分なためにより多くの生体試料を必要としたり、含有量が少なすぎてそもそも検出不可能な場合が多い。これに対して、本発明に係る検出方法は、非常に検出感度が高いため、従来よりも少量の生体試料から目的の有機酸を検出することができる。また、従来は含有量が極微量であるために検出ができなかった生体試料中の有機酸をも検出し得る。
例えば、3−HIBを本発明に係る検出方法により検出した場合の検出感度は、従来の誘導体化せずにLC−N−ESI−MS/MSで検出した場合と比べて、100倍以上である。また、3−HIBをHCl−ブタノールを用いて誘導体化した誘導体をポジティブESI−LC−MS/MSにより検出した場合と比べても、10倍以上高感度である。このため、本発明に係る検出方法は、5μL以下の唾液でも、3−HIBと3−HBの同時定量や、3−HIBと3−HBと3−HMBと2−HBの同時定量、3−HIBと3−HBと3−HMBと2−HBと乳酸の同時定量が可能である。
筋肉中において、ロイシンが代謝されると3−HMBが産生され、バリンが代謝されると3−HIBが産生される。つまり、生体中の3−HMB濃度及び3−HIB濃度は、筋肉中のBCAA異化を反映しており、3−HMB及び3−HIBは、筋肉中のBCAA異化を反映するアミノ酸代謝マーカーとして機能する。また、肝臓においてスレオニンとメチオニン、及び脂肪酸が代謝されると、2−HB及び3−HBが産生される。つまり、2−HB及び3−HBは、スレオニンとメチオニンの代謝経路マーカー又は脂肪代謝マーカーとして機能する。さらに、グルコースが代謝されると、乳酸が産生される。つまり、乳酸は、糖代謝マーカーとして機能する。
なお、骨格筋におけるBCAAの異化の程度、すなわち、生体中の3−HMB濃度及び3−HIB濃度は、例えば、肝硬変、肝性脳症、筋炎、ステロイド筋症、心不全、抗がん剤の使用による悪疫質、横紋筋融解症、廃用性筋萎縮、甲状腺機能亢進症、慢性疲労症候群、サルコペニア(加齢性筋肉減弱現象)、ミトコンドリア脂肪酸酸化異常症等の疾患に罹患している患者、透析患者、手術侵襲患者、高齢者等の、血中アルブミン濃度や血中BCAA濃度が低下している若しくは低下しているおそれのある者についての、低栄養や筋蛋白分解の指標(バイオマーカー)とすることができる。また、マラソンやトライアスロン等の筋蛋白質異化が亢進しやすいアスリートについての低栄養や筋蛋白分解の指標とすることもできる。
唾液中の3−HIB濃度は、栄養状態の指標とすることができるため、唾液中の3−HIB濃度は、例えば、創薬スクリーニング、特に前述の各種疾患に対する治療剤候補の薬理効果を示すマーカーとして、また有効成分の安全性試験における毒性評価のマーカーとしても使用することが期待される。
運動によるエネルギー消費増加に伴い、肝臓での脂肪酸異化が亢進し、体液(血、唾液)中の3−HB量が増加する。また、骨格筋のBCAA異化が亢進している状態では、3−HIB量及び3−HMB量が増加する。このため、唾液中の3−HIB濃度及び3−HB濃度、3−HMB濃度は、運動中又は運動後における肝臓と骨格筋のエネルギー供給源バランス(エネルギー代謝組織と供給栄養素の依存度)を評価する指標(バイオマーカー)となり得る。運動中又は運動後に、唾液中の3−HB濃度や3−HIB濃度が、安静時からさほど変化がない場合には、糖がエネルギー供給源として使用されていると評価できる。運動中又は運動後に、唾液中の3−HB濃度や3−HIB濃度が安静時よりも有意に上昇した場合には、肝臓での脂肪酸異化又は骨格筋におけるBCAA異化によりエネルギーが産生されていると評価できる。運動中又は運動後の骨格筋BCAAのエネルギー供給源としての利用を評価するバイオマーカーとしては、3−HMBよりも、唾液中3−HIB濃度が好ましい。運動中又は運動後の肝臓と骨格筋での異なる組織と異なる栄養源によるエネルギー産生状態を評価するバイオマーカーとしては、唾液中の3−HIB濃度と3−HB濃度の両方を測定する必要がある。
具体的には、本発明に係る唾液試料の調製方法により、運動中の被検者から採取した唾液から調製した唾液試料から、3−HIB及び/又は3−HBを本発明に係る検出方法により検出して3−HIB濃度及び/又は3−HB濃度を測定し、当該濃度を予め設定された所定の閾値と比較することにより、当該被験者における運動時のエネルギー供給源を評価することができる。当該閾値は、被験者ごとに設定することが好ましいが、多数の被験者について運動負荷量が同程度となることが期待される運動を行った後の3−HIB濃度等を測定した結果から設定してもよい。
また、運動開始直前から運動終了後一定期間経過後までの間に経時的に被検者から唾液試料を調製し、各唾液試料中の3−HIB濃度及び/又は3−HB濃度を本発明に係る検出方法によって測定することにより、唾液中の3−HIB濃度及び/又は3−HB濃度をモニタリングする(経時的変化を調べる)ことができる。モニタリングの結果得られた3−HIB濃度及び/又は3−HB濃度の経時的変化に基づいて、当該被験者における運動時のエネルギー供給源を評価することができる。なお、運動開始直前が安静時(平常状態)ではない場合には、予め、安静時の被験者から唾液試料を調製し、各唾液試料中の3−HIB濃度及び/又は3−HB濃度を本発明に係る検出方法によって測定しておき、得られた測定値を運動時のエネルギー供給源の評価の参考にすることが好ましい。
過度の運動に加え、休養と栄養が不十分であると、相対的運動負荷量が過大となる、いわゆるオーバーワーク状態となる。飢餓時などの低栄養状態では、肝臓での脂肪酸異化によって得られるケトン体産生亢進と、骨格筋での蛋白質分解によって得られるBCAA異化亢進によるエネルギー産生が活性化するため、唾液中の3−HB濃度と3−HIB濃度が上昇する。特に、持久性競技者や減量や食事制限を行っているスポーツ選手や愛好家は、糖消費後のエネルギー源となる脂質貯蔵量が少ないため、骨格筋のアミノ酸をエネルギー源としての利用依存度が高くなる。その様な骨格筋アミノ酸の利用度の増加や持続により、筋蛋白質分解が亢進し、骨格筋萎縮等の症状を伴う全身のエネルギー代謝不全状態が生じる。この様な場合の多くは、いわゆるオーバーワーク状態に陥っている。この様なオーバーワーク状態では、唾液中の3−HB濃度と3−HIB濃度測定を行うことにより、肝臓の脂肪酸異化由来のケトン体と骨格筋蛋白由来のBCAA異化によるエネルギー供給源バランス、依存度を評価できることから、オーバーワーク状態の指標ともなり得る。例えば、運動をしていない安静時(平常状態)における3−HIB濃度及び3−HB濃度と、オーバーワークとならない程度の運動を行った後の唾液中の3−HIB濃度及び3−HB濃度とを本発明に係る検出方法によって測定しておき、これらの測定値から、オーバーワーク状態における3−HIB濃度及び3−HB濃度と、オーバーワークではない状態における3−HIB濃度及び3−HB濃度とを分ける閾値(オーバーワーク閾値)を予め設定しておく。オーバーワークが引き起こされる様な過度な繰り返しの運動後の被検者から調製した唾液試料中から3−HIB及び3−HB濃度を本発明に係る検出方法により検出して唾液中の3−HIB濃度及び3−HB濃度を測定し、当該濃度を予め設定されたオーバーワーク閾値と比較することにより、当該被験者におけるエネルギー供給源バランスを評価する。具体的には、当該被験者の3−HIB濃度と3−HB濃度がオーバーワーク閾値よりも低い場合には、当該被験者の運動負荷量は適正であり、被験者はオーバーワークではない可能性が高く、当該被験者の3−HIB濃度がオーバーワーク閾値以上である場合には、当該被験者の運動負荷量は過大であって、当該被験者はオーバーワークである可能性が高い、と評価できる。また、当該被験者の3−HB濃度のみが閾値以上である場合には、当該被験者がエネルギー不足状態であっても、当該被験者はまだオーバーワークに至っていない可能性が高い、と評価できる。当該オーバーワーク閾値は、被験者ごとに設定することが好ましいが、多数の健常者についてオーバーワークとならない程度の運動を行った後の3−HIB濃度又は3−HB濃度を測定した結果から設定してもよい。運動中の被験者から経時的に唾液試料を調製し、3−HIB濃度と3−HB濃度を経時的に測定してモニタリングすることにより、危険なオーバーワーク状態となる前に運動を終了させることもできる。この場合、被験者からの試料採取は必ずしも運動中である必要はなく、長期の運動プログラムやトレーニングを行っている被験者の安静時から採取した試料から得られる結果を、運動プログラム前やトレーニング前の同一被験者から採取した試料から得られた結果と比較することにより、オーバーワーク状態の評価に用いることもできる。すなわち、本発明に係る方法によって運動中あるいは長期的な3−HIB濃度と3−HB濃度をモニタリングすることにより、適正な運動量を評価し、オーバーワーク状態を予防することができる。
また、例えば、本発明に係る検出方法によって、一の動物個体から経時的に調製された唾液試料中の3−HIBや3−HBの濃度測定することにより、骨格筋のBCAA異化や肝臓における脂肪酸異化の状態をモニタリングすることもできる。3−HIB濃度モニタリングや3−HB濃度モニタリングは、例えば、肝硬変患者、低栄養状態や寝たきり状態の患者に対する、骨格筋萎縮予防、低栄養状態改善を目的としたBCAA製剤投与や栄養療法の開始の必要性の有無の判断やそれらの治療の判定に利用可能である。例えば、3−HB濃度に変化がみられないのにも関わらず、3−HIB濃度のみ上昇傾向がみられる場合には、肝機能の低下による肝臓での低エネルギー産生能を、骨格筋蛋白異化によるアミノ酸由来のエネルギー産生で代償する低栄養状態である可能性が高いと評価できる。
その他にも、本発明に係る検出方法によって3−HIBや3−HBの濃度を測定することにより、スポーツ医学領域において、肝臓と骨格筋における脂質とアミノ酸のエネルギー源依存バランス(エネルギー代謝状態)を、唾液を用いてもモニターすることも可能となる。さらに、アンチエイジングやダイエットによる体重管理や美容の領域において、本発明に係る検出方法によって唾液を分析して3−HIBや3−HBの濃度を測定することにより、糖、アミノ酸、脂肪酸の代謝状態を評価しながら、効果的に栄養・運動・体調管理を行うことも可能となる。さらに、本発明に係る検出方法は、BCAA等の栄養素が含まれるサプリメントや栄養ドリンクを摂取した際の栄養・摂取効果などの評価にも利用できる。
また、肝硬変患者では、肝機能の低下による肝臓から骨格筋への糖の供給が低下することにより、飢餓状態に陥り、アミノ酸異化が亢進する。このため、健常者群よりも肝硬変患者群の方が、体液中の3−HIB、3−HMB、及び2−HBの濃度が高い傾向にある。そこで、3−HIB、3−HMB、及び2−HBは、肝硬変のバイオマーカーとして利用できる。具体的には、予め肝硬変患者と健常者とを分ける閾値を設定し、被検者の唾液中の3−HIB、3−HMB、及び2−HBの濃度を本発明に係る検出方法によって測定し、当該濃度を所定の閾値と比較することにより、肝硬変発症可能性を評価することができる。具体的には、被検者の唾液中の3−HIB等の濃度が所定の閾値以上であった場合に、前記被検者が肝硬変を発症している可能性が高いと評価することができる。肝硬変患者と健常者とを分ける閾値は、実験的に設定することができる。例えば、肝硬変を発症していないことが分かっている集団から採取された唾液と、肝硬変を発症していることが分かっている集団から採取された唾液とに対して、本発明に係る検出方法を行ってこれらの唾液中の3−HIB等の濃度を測定し、両集団の測定値を比較することにより、適宜設定することができる。肝硬変のバイオマーカーとしては、3−HIB又は3−HMBが好ましく、肝硬変患者群と健常者群の差がよりはっきりしていることから、唾液中の3−HIB又は唾液中の3−HMBがより好ましい。
肝硬変が進行し、肝機能の一つである尿素回路が低下すると、アンモニアは骨格筋で代償的にグルタミンやアラニンに代謝されて無毒化される。その際に、BCAAが骨格筋でBCATにより分岐鎖α−ケト酸に異化される過程で副産物として生じるグルタミン酸が、アンモニア解毒に用いられている。そのため、肝硬変時に骨格筋で代償するアンモニア解毒の際にも骨格筋BCAA異化の亢進が必要であり、結果として、体液中の3−HIB濃度は上昇する。アンモニア解毒が不十分で、体液中のアンモニア濃度が高くなると、脳症が誘発されやすくなると考えられている。したがって、肝硬変患者の肝臓でのアンモニア解毒能の低下に加え、骨格筋BCAA異化を介したアンモニア解毒代償能の低下が生じると、肝性脳症をきたすものと考えられる。この様な理由で、3−HIBは、肝性脳症又はその発症可能性のバイオマーカーとして利用でき、その予防や早期治療のために有用な情報を提供することができる。例えば、3−HIB濃度から肝性脳症を発症するリスクが高いと評価された肝硬変患者に対しては、脳症が顕在化していない場合であっても蛋白制限食を推奨したり、BCAAの摂取を推奨したりすることにより、肝性脳症の発症を予防し得る可能性がある。
例えば、肝硬変患者から経時的に採取した唾液中の3−HIB濃度をモニタリングした場合に、3−HIB濃度が低下傾向にある場合には、当該肝硬変患者が肝性脳症を発症する可能性が高い。そこで、肝硬変を発症している被検者から採取された唾液中の3−HIB濃度を本発明に係る検出方法によって測定し、得られた3−HIB濃度を、当該唾液が採取された時点以前に前記被験者から採取された唾液中の3−HIB濃度と比較することにより、肝性脳症発症可能性を評価できる。具体的には、得られた3−HIB濃度が、以前に採取された唾液の3−HIB濃度よりも有意に低い場合や、モニタリングの結果、以前に採取された唾液の3−HIB濃度よりも低くなる傾向がある程度継続している場合には、当該被検者が肝性脳症を発症する可能性が高いと評価する。
肝硬変患者における3−HIB濃度が低下しているか否かは、肝硬変患者と健常者とを分ける閾値を用いても評価することができる。具体的には、肝硬変を発症している被検者から採取した唾液中の3−HIB濃度を本発明に係る検出方法によって測定し、得られた3−HIB濃度を、所定の閾値(例えば、前記の肝硬変患者と健常者とを分ける閾値)と比較することにより、肝性脳症発症可能性を評価することができる。具体的には、被検者の3−HIB濃度が所定の閾値未満であった場合や、所定の閾値未満である状態がある程度継続している場合に、前記被検者が肝性脳症を発症する可能性が高いと評価することができる。
また、前述のように、唾液や血清等の生体試料中の3−HIB濃度は、サルコペニアの予測因子となり得るが、サルコペニアは長期的な変化によるものであるため、3−HIB濃度の上昇は観察し難い場合がある。また、3−HIB濃度は、測定の際の栄養状態や代謝状態にも影響されるため、長期的な変化は短期的な影響に隠れて見落とされるおそれもある。測定前に予めBCAAを負荷(経口投与)しておくことにより、健常者とサルコペニア患者又はその予備群とにおける3−HIB濃度の差をより明確にすることができる。例えば健常者では、BCAA製剤を1日3回、2週間経口摂取した場合でも、血中の3−HIB濃度は摂取前と比べてほとんど変化しないが、骨格筋におけるBCAAへのエネルギー依存度が高い被検者では、BCAA摂取前に比べてBCAA摂取後に、血中又は唾液中の3−HIB濃度が上昇する。このため、BCAA負荷前後の唾液又は血液中の3−HIB濃度を測定し、BCAA負荷によって3−HIB濃度が上昇している場合には、骨格筋におけるBCAA異化が亢進しており、サルコペニアである可能性が高い、又はサルコペニアを発症する危険性が高いと予測することができる。
なお、BCAA負荷を行う場合には、摂取したBCAAの腸吸収や血中濃度変化などの影響を考慮して、バリン濃度を基準とし、3−HIB濃度とバリン濃度の比をバイオマーカーとすることが好ましい。BCAA摂取による3−HIB濃度の上昇度を、バリン濃度の上昇度を基準として評価することにより、より信頼性の高い結果を期待できる。
3−HMBは、BCAA由来の肝臓や骨格筋における蛋白合成のマーカーや骨格筋肥大のマーカーとして利用可能であり、また、2−HBは、早期インスリン抵抗性のマーカーや、グルコース不耐性のマーカーであり、大腸癌マーカーとしても有用である。乳酸は、代謝性アシドーシス(乳酸アシドーシス)の判断に用いられ、低酸素症、循環不全、管理不良の糖尿病、肝不全、及び骨格筋の痙攣時に高値になり、糖原病や乳酸脱水素酵素欠損症の際に低値になる。また、乳酸は、運動負荷(運動強度)のマーカーとしても利用されている。本発明に係る検出方法を用いることにより、これらのバイオマーカーを感度よく検出することができる。
肝臓におけるアルコール分解にはNADを補酵素として使用するため、肝臓内のNAD/NADH比が低くなる。このNAD/NADH比の低下によって、肝臓における脂肪酸異化(β酸化)が低下するため、アルコール摂取が脂肪肝や肥満の原因となる。NADはミトコンドリア内におけるα−ケト酪酸からプロピオニルCoAへの代謝にも用いられるため、NAD/NADH比が低下すると、ミトコンドリア内でα−ケト酪酸が代謝されず、細胞質内でα−ケト酪酸が2−HBに代謝される割合が高くなると考えられる。このため、非アルコール性脂肪肝(NASH)患者に比べて、アルコール性脂肪肝(ASH)患者において、2−HB量は高くなり、2−HBは、NASHとASHを識別するためのバイオマーカーとして利用し得る。
本発明に係る検出方法は、微量の唾液から、アミノ酸、脂肪、又は糖のエネルギー代謝マーカーである3−HIBと3−HMBと2−HBと3−HBと乳酸の同時定量が可能である。このため、本発明に係る検出方法を用いることにより、被験者のエネルギー代謝の状態をより詳細に解析することができる。これらの有機酸の量を解析することにより、高齢者等における糖、脂肪、及びアミノ酸の代謝バランスを調べることができる。
また、本発明に係る検出方法は、疲労の蓄積度合の評価にも有用である。例えば、ヒトをはじめとする哺乳動物は、安静時は糖を主たるエネルギー供給源としているが、運動時は、脂質及びアミノ酸への依存度が増す。運動後安静にすることによって、糖を主たるエネルギー供給源とする運動前のエネルギー供給源バランスに復帰し、疲労が回復する。エネルギー供給源バランスが安静時の状態にまで復帰する前に運動負荷をかけることにより、エネルギー供給源バランスがアミノ酸及び脂肪への依存度が高い状態から運動前の安静時状態にまで復帰できない。本発明に係る検出方法により3−HIBと3−HMBと2−HBと3−HBと乳酸を同時に検出することによって、アミノ酸、脂肪、及び糖のエネルギー代謝の程度を評価してエネルギー供給源バランスを調べることができ、疲労の蓄積度合を調べることができる。
次に実施例等を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試薬類>
以下の実施例や参考例等で用いた試薬は次の通りである。D−3−HB、L−3−HB、及び3−HIBナトリウム塩は、シグマアルドリッチケミカル社製のものを用いた。DL−3−HB−13ナトリウム塩は、太陽日酸社製のものを用いた。2−ピリジンメタノール、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、1−ピペリジンエタノール、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジン、3−ピリジンメタノール、2−ジエチルアミノエタノール、3−ヒドロキシ−1−メチルピペリジン、及び4−ピリジンメタノールは、東京化成工業社製のものを、4−ジメチルアミノピリジンは和光純薬社製のものを用いた。3−HBデヒドロゲナーゼは、Roche Diagnostics社製のものを用いた。
<血清試料の調製>
以下の参考例において使用した血清試料は、以下のようにして調製した。
健常人から採取した血液から血清を回収し、測定に使用する時点まで−20℃で保存したものを用いた。血清(10μL)を、1.5mLの遠心分離用プラスチックチューブにいれ、さらに内部標準として769pmol(100ng)のDL−3−HB−13ナトリウム塩を含むアセトニトリル/水(1/19、容量比)溶液(100μL)を添加して1分間撹拌した後、2000×gで1分間遠心分離処理した。上清を、水/アセトニトリル(1/19、容量比)溶液に入れ、脱蛋白処理をした後、液相を回収して80℃、窒素ガス吹き付け下でエバポレートして乾燥させた。
<3−HB−フリー血清の調製>
以下の参考例において使用した3−HB−フリー血清は、以下のようにして調製した。
3−HB−フリー血清は、正常な血清(10μL)を1.8mMのNADと0.075Uの3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを添加した150mMのTris−HCl(pH8.6)に添加して、37℃で30分間インキュベートすることにより調製した。
<2−ピリジンメタノールを誘導体化試薬とする有機酸のエステル化反応>
以下の参考例において、2−ピリジンメタノールを誘導体化試薬とする有機酸のエステル化反応は、以下のようにして調製した。
2−ピリジンメタノールを誘導体化試薬とする有機酸のエステル化反応は、シイナらによるカルボキシエステルの合成方法(非特許文献13参照。)を改良して行った。具体的には、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(67mg)、4−ジメチルアミノピリジン(20mg)、ピリジン(900μL)、及び2−ピリジンメタノール(100μL)からなる2PM誘導体化用混合試薬を用いた。まず、直前に調製した前記2PM誘導体化用混合試薬(50μL)を、有機酸を含む乾燥させたサンプルに加えた反応溶液を、室温で30分間静置した。次いで、当該反応液にn−ヘキサン(1mL)を加えて30秒間撹拌した後、700×gで1分間遠心分離処理し、回収した上清を、80℃、窒素ガス吹き付け下でエバポレートした。残留物を1容量%のギ酸水溶液(150μL)に再溶解させ、再度7000×gで1分間遠心分離処理し、回収した上清を、測定試料としてESI−LC−MS/MSに供した。
<LC−P−ESI−MS/MS>
LC−MS/MSシステムは、HESI−IIプローブとProminence Ultra Fast Liquid Chromatography(UFLC)システム(島津製作所製)を備えたトリプル四重極型質量分析計TSQ Vantage(Thermo Fisher Scientific社製)を用いた。クロマトグラフィーにおける分離は、Hypersil GOLD aQカラム(2.1×150mm、3μm、Thermo Fisher Scientific社製)を用いて40℃で行った。はじめに、移動相を0.2容量%のギ酸を含むアセトニトリル/水(1/19、容量比)として流速300μL/分で5分間流した。5分後に、移動相を0.2容量%のギ酸を含むアセトニトリルに変更し、流速300μL/分で7分間流した。一般的なMS/MS条件は、以下の通りである;
スプレー電圧:3000V、
噴霧器温度:450℃、
シースガス(窒素)圧:50psi、
補助ガス(窒素)流量:15任意単位、
イオントランスファーキャピラリー温度:220℃、
衝突ガス(アルゴン)圧:1.0mTorr、
衝突エネルギー:15V、
イオン極性:正モード。
図1Bに、2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HB(2PM−3−HB)の典型的なP−ESI MSスペクトラムを示す。2PM−3−HBは、[M+H]イオンがベースピークとしてm/z 196にみられる。このm/z 196を前駆イオンとした時のプロダクトイオンMSスペクトラム(図1A)では、[CNCHOH+H]のフラグメントイオンが最も突出したピークとしてm/z 110にみられる。SRMは、2PM−3−HBの検出にはm/z 196→m/z 110を用いて行い、[13]同位体(内部標準)の検出にはm/z 200→m/z 110を用いて行った。
<キャリブレーションカーブの作成>
キャリブレーションカーブの作成には、アセトニトリル/水(1/19、容量比)にD−3−HBナトリウム塩を溶解させた標品保存溶液(200ng/μL)を、さらにアセトニトリル/水(1/19、容量比)を用いて適宜希釈することにより調製した濃度既知のD−3−HBナトリウム標準溶液(1〜200ng/100μL)を用いた。各標準溶液には、内部標準として、DL−3−HB−13ナトリウム塩(100ng)を添加し、混合物をエバポレートして乾燥させた後に、誘導体化(誘導体によるエステル化)をしたものを、ESI−LC−MS/MSにより測定した。キャリブレーションカーブのマトリックス効果を調べるために、各標準溶液にブランクマトリックスとして、3−HB−フリー血清を添加した。
<LC−N−ESI−MS/MS>
3−HBのLC−N−ESI−MS/MSは、誘導体化を行わずに、LC−P−ESI−MS/MSで用いたLC−MS/MSシステムと同じものを用いて実施した。クロマトグラフィーにおける分離は、Hypersil GOLD aQカラム(2.1×150mm、3μm、Thermo Fisher Scientific社製)を用いて40℃で行った。移動相は、0.1容量%のギ酸を含むメタノール/水(1/9、容量比)を流速200μL/分で流した。一般的なMS/MS条件は、以下の通りである;
スプレー電圧:2500V、
噴霧器温度:450℃、
シースガス(窒素)圧:50psi、
補助ガス(窒素)流量:15任意単位、
イオントランスファーキャピラリー温度:220℃、
衝突ガス(アルゴン)圧:1.0mTorr、
衝突エネルギー:15V、
イオン極性:負モード、
3−HBのSRM(選択反応モニタリング):m/z 103 → m/z 59、
13]のSRM:m/z 107 → m/z 61。
<統計処理>
以下の実施例及び参考例等における数値は、平均±SD(標準偏差)である。キャリブレーションカーブの直線性は単回帰分析により分析した。再現性は、一元配置分散分析法(one−way ANOVA)(JMPソフトウェア、SAS Institute社製)により分析した。推定値±95%信頼限界を、精度指標として得た(非特許文献14参照。)。値を算出するために、JMPソフトウェアを用いた再現性試験においては、直交回帰分析を行った。異なるグループ間の差の統計的有意性は、Student’s two−tailed t−testにより評価した。全ての分析では、P<0.05で有意差ありとした。
[参考例1]
2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HB及び3−HIBを、LC−P−ESI−MS/MSにより検出した。具体的には、アセトニトリル/水(1/19、容量比)(100μL)にD−3−HBナトリウム塩(標品、1μg)のみを溶解させた試料溶液、D−3−HIBナトリウム塩(標品、1μg)のみを溶解させた試料溶液、及びD−3−HBナトリウム塩(標品、1μg)とD−3−HIBナトリウム塩(標品、1μg)を溶解させた試料溶液を調製し、それぞれをエバポレートして乾燥させた後に、前記2PM誘導体化用混合試薬により誘導体化(誘導体によるエステル化)をした。最終的に1容量%のギ酸水溶液(1mL)に再溶解させ、1μL(D−3−HBナトリウム塩、D−3−HIBナトリウム塩それぞれ1ng相当)を、前述の通りにLC−P−ESI−MS/MSにより測定した。
2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HB及び3−HIBを、LC−P−ESI−MS/MSにより検出した結果を図2に示す。図2Aに誘導体化された3−HBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を、図2Bに前記図2AのMSスペクトラムを、図2Cに誘導体化された3−HIBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を、図2Dに前記図2CのMSスペクトラムを、図2Eに誘導体化された3−HBと3−HIBを含む試料のm/z 196を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを、図2Fに前記図2Eの3−HIBピークのMS/MSスペクトラムを、それぞれ示す。
この結果、測定に供した試料には1ngしか含まれていなかったにもかかわらず、低感度高情報量のスキャンモードで、3−HBと3−HIBの誘導体はいずれもスペクトル解析することができた。また、LCクロマトグラムにおいて、3−HBの誘導体と3−HIBの誘導体の分離が良好であった。また、LCの保持時間が遅いため、カラムから最初に出てくる誘導体化試薬等(例えば、4−ジメチルアミノピリジンなど)の3−HBの誘導体や3−HIBの誘導体のピークに対する影響は非常に小さかった。つまり、これらの結果から、2−ピリジンメタノールで誘導体化することにより、3−HBや3−HIB等の有機酸を、精度よく高感度に検出できることがわかった。
[参考例2]
1−ピペリジンエタノールで誘導体化された3−HB及び3−HIBを、LC−P−ESI−MS/MSにより検出した。具体的には、誘導体化試薬として、2PM誘導体化用混合試薬に代えて、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(67mg)、4−ジメチルアミノピリジン(20mg)、ピリジン(900μL)、及び1−ピペリジンエタノール(100μL)からなる1PE誘導体化用混合試薬を用いた以外は、参考例1と同様にして誘導体化し、LC−P−ESI−MS/MSにより測定した。
図3に、1−ピペリジンエタノールで誘導体化された3−HB及び3−HIBを、LC−P−ESI−MS/MSにより検出した結果を示す。図3Aに誘導体化された3−HBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を、図3Bに前記図3AのMSスペクトラムを、図3Cに誘導体化された3−HIBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を、図3Dに前記図3CのMSスペクトラムを、図3Eに誘導体化された3−HBと3−HIBを含む試料のm/z 216を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを、図3Fに前記図3Eの3−HIBピークのMS/MSスペクトラムを、それぞれ示す。
この結果、測定に供した試料には1ngしか含まれていなかったにもかかわらず、低感度高情報量のスキャンモードで、3−HBと3−HIBの誘導体はいずれもスペクトル解析することができた。また、LCクロマトグラムにおいて、3−HBの誘導体と3−HIBの誘導体の分離が良好であった。また、3−HBの誘導体と3−HIBの誘導体のいずれのピークも、プロダクトイオンクロマトグラムにおけるS/Nが良好であり、感度が特に良好であった。つまり、これらの結果から、1−ピリジンエタノールで誘導体化することにより、3−HBや3−HIB等の有機酸を、精度よく高感度に検出できることがわかった。
[参考例3]
2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジンで誘導体化された3−HB及び3−HIBを、LC−P−ESI−MS/MSにより検出した。具体的には、誘導体化試薬として、2PM誘導体化用混合試薬に代えて、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(67mg)、4−ジメチルアミノピリジン(20mg)、ピリジン(900μL)、及び2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジン(100μL)からなる1PE誘導体化用混合試薬を用いた以外は、参考例1と同様にして誘導体化し、LC−P−ESI−MS/MSにより測定した。
2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジンで誘導体化された3−HB及び3−HIBを、LC−P−ESI−MS/MSにより検出した結果を図4に示す。図4Aに誘導体化された3−HBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を、図4Bに前記図4AのMSスペクトラムを、図4Cに誘導体化された3−HIBのみを含む試料の総イオンクロマトグラム(上段)とMSクロマトグラム(下段)を、図4Dに前記図4CのMSスペクトラムを、図4Eに誘導体化された3−HBと3−HIBを含む試料のm/z 216を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを、図4Fに前記図4Eの3−HIBピークのMS/MSスペクトラムを、それぞれ示す。
この結果、測定に供した試料には1ngしか含まれていなかったにもかかわらず、低感度高情報量のスキャンモードで、3−HBと3−HIBの誘導体はいずれもスペクトル解析することができた。また、LCクロマトグラムにおいて、3−HBの誘導体と3−HIBの誘導体の分離が良好であった。また、3−HBの誘導体と3−HIBの誘導体のいずれのピークも、プロダクトイオンクロマトグラムにおけるS/Nが良好であり、感度が特に良好であった。つまり、これらの結果から、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジンで誘導体化することにより、3−HBや3−HIB等の有機酸を、精度よく高感度に検出できることがわかった。
[参考例4]
健常者から採取された10μLの血清に内部標準としてDL−3−HB−13ナトリウム塩を添加した試料を、参考例1と同様にして2−ピリジンメタノールで誘導体化し、LC−P−ESI−MS/MSにより測定した。図5に、2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HB(2PM−3−HB)と[13]同位体の典型的なSRMクロマトグラムを示した。当該クロマトグラムより、2PM−3−HBの[13]同位体に対するピークエリア面積比を算出し、当該比率をキャリブレーションカーブに当てはめて血清中の3−HB濃度を決定した。当該クロマトグラム中の2PM−3−HBのピークは5.1pmol(76μM)に相当した。クロマトグラムAの4.53分に見られたピークは、2PM−3HIB標品との比較から、3−HIBの2PMエステル誘導体であると同定された。
[参考例5]
2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HB、3−HIB、3−HMB、及び2−HBを、LC−P−ESI−MS/MSにより検出した。具体的には、アセトニトリル/水(1/19、容量比)(100μL)に、D−3−HBナトリウム塩(標品、30ng)とD−3−HIBナトリウム塩(標品、30ng)とD−3−HMBナトリウム塩(標品、30ng)とD−2−HBナトリウム塩(標品、30ng)とDL−3−HB−13ナトリウム塩(標品、80ng)を溶解させた試料溶液を調製し、エバポレートして乾燥させた後に、前記2PM誘導体化用混合試薬により誘導体化(誘導体によるエステル化)をした。最終的に1容量%のギ酸水溶液(1mL)に再溶解させ、1μL(D−3−HBナトリウム塩、D−3−HIBナトリウム塩、D−3−HMBナトリウム塩、D−2−HBナトリウム塩がそれぞれ3ng相当、DL−3−HB−13ナトリウム塩が8ng相当)を、前述の通りにLC−P−ESI−MS/MSにより測定した。
2−ピリジンメタノールで誘導体化された3−HB、3−HIB、3−HMB、及び2−HBを、LC−P−ESI−MS/MSにより検出した結果を図6に示す。図6の上段に試料の総イオンクロマトグラムを、上から2段目にm/z 196を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを、上から3段目にm/z 200を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを、最下段にm/z 210を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを、それぞれ示す。
この結果、測定に供した試料には3ngしか含まれていなかったにもかかわらず、低感度高情報量のスキャンモードで、3−HB、3−HIB、3−HMB、及び2−HBの2PMエステル誘導体は、いずれもスペクトル解析することができた。また、LCクロマトグラムにおいて、3−HBの誘導体と3−HIBの誘導体と3−HMBの誘導体と2−HBの誘導体の分離が良好であった。つまり、これらの結果から、2−ピリジンメタノールで誘導体化することにより、構造類似の3−HB、3−HIB、3−HMB、及び2−HBを、精度よく高感度に同時検出できることがわかった。
[参考例6]
被検者から採取された血清と唾液を一定時間室温放置した場合における、血清中と唾液中の3−HIB及び3−HBの安定性を検討した。
<血清>
健常者から6本の採血管に血液を採取した。6本の採血管のうちの1本については、採血後速やかに遠心分離処理を行い、回収した血清を−20℃で凍結保存した。残りの5本については、それぞれ、室温で1、2、4、6、又は24時間放置した後、遠心分離処理を行い、回収した血清を−20℃で保存した。
−20℃で保存後の各血清中の3−HIB及び3−HBの濃度を、内部標準としてDL−3−HB−13ナトリウム塩を用い、誘導体化試薬として2−ピリジンメタノールを用いて、参考例4と同様にしてLC−P−ESI−MS/MSにより測定した。クロマトグラムより、2PM−3−HBの[13]同位体に対するピークエリア面積比を算出し、当該比率をキャリブレーションカーブに当てはめて、血清中の3−HB濃度及び3−HIB濃度を決定した。測定結果を図7に示す。この結果、血清中の3−HB濃度及び3−HIB濃度は、採血後室温で放置される時間が6時間に至るまで減少するが、その後24時間まで変化はなかった。
<唾液>
健常者から1本のチューブに採取(流涎)した唾液を6本のチューブに分注した。6本のチューブのうちの1本については、採取後速やかに−20℃で凍結保存した。残りの5本については、それぞれ、室温で1、2、4、6、又は24時間放置した後、−20℃で保存した。凍結保存した唾液試料は、分析時に室温で自然解凍した。ボルテックスミキサーを用いて混和した後、遠心分離処理(3000rpm、15分間)し、粘性蛋白質(ムチン)を分解し、唾液中に含まれている食べかす等と共に沈殿させ、上清を分析に用いた。
−20℃で保存後の各唾液中の3−HIB及び3−HBの濃度を、内部標準としてDL−3−HB−13ナトリウム塩を用い、誘導体化試薬として2−ピリジンメタノールを用いて、参考例4と同様にしてLC−P−ESI−MS/MSにより測定した。クロマトグラムより、2PM−3−HBの[13]同位体に対するピークエリア面積比を算出し、当該比率をキャリブレーションカーブに当てはめて、唾液中の3−HB濃度及び3−HIB濃度を決定した。測定結果を図8に示す。この結果、唾液中の3−HB濃度及び3−HIB濃度は、採取後室温で放置される時間にかかわらず、ほぼ安定していた。
[参考例7]
被検者から採取された血清と唾液(流涎)中における、3−HIB、3−HB、及び2−HBの濃度の相関性を調べた。具体的には、健常人3名(被検者α、β、γ)から、各5サンプルずつ、血清及び唾液を採取し、これらの3−HIB、3−HB、及び2−HBの濃度を測定し、血清中濃度と唾液中濃度の相関性を調べた。血清中及び唾液中の3−HIB、3−HB、及び2−HBの濃度は、参考例6と同様にして測定した。3−HB濃度の測定結果を図9Aに、3−HIB濃度の測定結果を図9Bに、2−HB濃度の測定結果を図9Cに、それぞれ示す。この結果、3−HIB、3−HB、及び2−HBのいずれにおいても、唾液中濃度は、血清中濃度と相関することが確認された。
[参考例8]
走運動前後の血清中、唾液中、及び尿中の3−HIB濃度及び3−HB濃度を測定し、経時的変化を観察した。
具体的には、被験者(男性健常者)に、前日の午前11時から走運動当日の午前11時までの24時間蓄尿した後、60分間ジョギング(走行距離:約9km、速度:約6.7分/km)し、その後24時間経過時点(走運動日の翌日の昼12時)までを実験期間とした。被験者は、前日の午前11時から実験期間終了時点までの間、前日の昼食及び夕食、走運動当日の昼食及び夕食、翌日の朝食を摂取した。被験者の運動と食事状況、及び血液、唾液、尿の採取時点を図10に示す。なお、実施した60分間ジョギングは、当該被験者にとって日常的に行っている運動よりもやや負荷の高い運動であった。
血清中、唾液中、及び尿中の3−HIB濃度及び3−HB濃度は、参考例4と同様にして測定した。採取された各サンプル中の3−HIB及び3−HBの測定結果を図11〜13に示す。図11は、血清中の3−HIB及び3−HBの濃度の経時的変化を示す。図12は、3−HIB及び3−HBの各採取時点における単位時間当たり尿排泄量([尿排泄量]/[前回採取時からの経過時間])(μmol/h)の経時的変化を、それぞれ示す。図13は、唾液中の3−HIB及び3−HBの濃度の経時的変化を示す。図13の下段の図は、上段の走運動中の測定結果を、縦軸スケールを拡大して示した図である。
この結果、2−ピリジンメタノールで誘導体化してLC−P−ESI−MS/MSを行うことにより、被験者から採取された血清、唾液、尿のいずれにおいても、3−HIBと3−HBの両方を検出できることが確認された。
3−HBは、走運動により、血清中と唾液中のいずれにおいても濃度は上昇したが、血清中3−HB濃度は、走運動後もそのまま上昇しており、唾液中3−HB濃度は、走運動直後は低下したものの、その後再び上昇した(図11及び図13上段)。これらの結果から、運動によって上昇する血清中の3−HB濃度と同様に、唾液中の3−HB濃度も運動により上昇する事が確認された。また、運動後は、血清中と唾液中ともに、3−HB濃度は、食事を摂取するまで上昇し続けることから、運動後の肝脂肪酸異化(脂肪の燃焼)を、血液と唾液の両試料にてモニターできることも確認できた。
一方で、3−HIBは、血清中と唾液中のいずれにおいても、走運動により濃度が上昇し、運動終了後ある程度時間が経過すると速やかに濃度は低下し、運動前の平常状態にまで戻ることが確認された(図11及び図13上段)。運動中に比べて運動後は、骨格筋BCAA異化反応は持続せず、健常人では、一過性の運動を行ったのみでは、骨格筋蛋白質分解由来BCAA又は遊離BCAAの異化は生じないことが確認された。特に唾液中3−HIB濃度は、運動終了後30分経過時点から実験期間終了時点までの間、ほとんど変動せず、食事等の影響を受けにくいことがわかった。これに対して、血清中3−HIB濃度は、運動終了後1時間経過時点では平常状態にまで低下したものの、運動終了後4時間経過時点ではやや上昇していた。運動終了後2.25時間経過時点で食事を摂取しているため、この運動終了後4時間経過時点での血清中3−HIB濃度の上昇は、わずかながら食事の影響を受けた可能性が考えられた。
これらの結果から、血清中と唾液中の3−HB濃度及び3−HIB濃度は、運動により上昇することから、運動による肝脂肪酸異化(脂肪燃焼)マーカー及び骨格筋BCAA異化マーカーとしてこれらを同時に評価が可能であり、運動時又は運動後の組織別(肝と骨格筋)のエネルギー代謝状態(ひいては、エネルギー供給源のバランス)を評価するマーカーとして有用であること、食事等の影響を受けにくいことから、3−HIBについては、血清中濃度よりも唾液中濃度のほうがマーカーとして好ましいこと、がわかった。
図12下段に示すように、走運動中の唾液中3−HIB濃度は、運動開始から15分経過時点までは、運動開始時点(平常状態)からあまり変化がないが、その後ゆるやかに上昇する傾向が観察された。走運動中の唾液中3−HB濃度は、運動開始から35分経過時点までは運動開始時点(平常状態)からあまり変化がないが、その後は3−HIB濃度と比較してより急激に上昇する傾向が観察された。運動時のエネルギー源として、まずは糖が優先的に利用されるが、運動時間や強度が増すにつれ、脂肪やアミノ酸がエネルギー源として利用される。これらの結果から、3−HB濃度及び3−HIB濃度の上昇は、糖の代わりに脂肪やアミノ酸がエネルギー源として利用された事を示しており、両者が上昇した時点は、エネルギー産生の依存度が糖代謝から脂質、アミノ酸代謝へ移行したポイントを示していると考えられる。また、近年、運動早期から、糖や脂質に加え、アミノ酸もエネルギー源として利用されていると示唆されているが、3−HBよりも3−HIBの方が早期に上昇し始める結果は、アミノ酸代謝も運動早期から活性化されることを示していると考えられる。本参考例では、唾液中の3−HIB濃度は、走運動終了後速やかに定常状態にまで低下したが、運動負荷が過大となりすぎた場合、いわゆるオーバーワーク状態には、運動終了後にも定常状態にまで戻りにくくなると推察される。
図12に、運動前後の単位時間当たりの尿中3−HB排泄量及び3−HIB排泄量を示す。血清や唾液とは異なり、運動によって、尿中3−HB排泄量及び3−HIB排泄量の増加はみられず、尿中3−HIB排泄量は、寧ろ低下傾向にあった(運動1時間後)。尿中3−HB排泄量は、その後、運動3時間まで増加傾向にあり、その後一旦減少したが、運動12.5時間まで再度増加傾向にあった。尿中3−HIB排泄量は、多少の増減を繰り返しながら、運動9.5時間まで増加した。尿中3−HBと3−HIB排泄量ともに、血清や唾液のそれぞれの濃度変化との関連はみられず、腎臓組織における再吸収が影響した結果と推測された。尿を試料とする場合、随時尿か畜尿か、又はクレアチニン等での補正の必要を考慮すると、3−HBと3−HIBともに、運動時、運動後の組織別エネルギー代謝状態を評価するマーカーとしては、尿中排泄量より、血清や唾液での評価が好ましいことがわかった。
[参考例9]
健常者15名と肝硬変患者20名から血液及び唾液を採取し、血清中と唾液中の3−HIB濃度及び3−HMB濃度を測定し、比較した。血清中と唾液中の3−HIB濃度及び3−HMB濃度は、参考例6と同様にして測定した。
血清中の3−HIB濃度及び3−HMB濃度の測定結果を図14Aに、唾液中の3−HIB濃度及び3−HMB濃度の測定結果を図14Bに、それぞれ示す。この結果、唾液中と血清中のいずれにおいても、肝硬変患者群の3−HIB濃度及び3−HMB濃度は、健常者群よりも高い傾向が観察され、これらが肝硬変マーカーとして有用であることが示された。特に唾液中の3−HIB濃度及び3−HMB濃度は、肝硬変患者群のほうが健常者群よりも有意に高かった。
[実施例1]
容器に採取された流涎に、短冊状の濾紙の一方の端部を浸漬させて毛細管現象により唾液を吸収させた後、乾燥させた唾液試料を用いて、3−HIB、3−HB、2−HB、及び3−HMBの含有量(濃度)を測定し、唾液試料間のばらつきを調べた。
具体的には、まず、一名の被験者から採取された流涎を10本のチューブに分けた。各チューブに、それぞれシルマー濾紙(Alcon Laboratories社製)の先端部(唾液と接触させる領域側の端部)から10mmまでの領域を浸漬させ、毛細管現象により唾液が当該先端部から25mm付近にまで吸い上げた後、当該シルマー濾紙を室温(20〜25℃)で20分間放置することにより乾燥させた。乾燥後のシルマー濾紙を、先端部から10mmの箇所と15mmの箇所と20mmの箇所の3箇所で切断し、当該先端部から10mmまでの断片(採取部位(1))、当該先端部からの距離が10mmから15mmまでの断片(採取部位(2))、当該先端部からの距離が15mmから20mmまでの断片(採取部位(3))を得た。つまり、採取部位(1)は、唾液に直接接触させて吸収させた部位であり、採取部位(2)及び(3)は、唾液には直接接触させず、採取部位(1)からの毛細管現象により唾液を吸い上げた部位である。
図15に、使用したシルマー濾紙1の模式図を示す。図15において、シルマー濾紙1の先端部(唾液と接触させる領域側の端部)は、左端部である。また、図中、「(1)」の領域が採取部位(1)(シルマー濾紙1の先端部から10mmまでの領域)であり、「(2)」の領域が採取部位(2)(シルマー濾紙1の先端部からの距離が10mmから15mmまでの領域)であり、「(3)」の領域が採取部位(3)(シルマー濾紙1の先端部からの距離が15mmから20mmまでの領域)である。また、シルマー濾紙1に吸い上げられた唾液の先端を、矢頭で示した。
10本のシルマー濾紙から切断された採取部位(1)、採取部位(2)、及び採取部位(3)について、各断片をそれぞれ100μLの内部標準含有アセトニトリル溶液(100μLのアセトニトリルに、150ngのDL−3−HB−13ナトリウム塩(標品)を溶解させた溶液)に約1分間、ボルテックスミキサーを用いて混和させながら浸漬させることにより、各断片に含有されていた唾液由来の有機酸を抽出した。有機酸を抽出させたアセトニトリル溶液を有機酸検出用試料として回収した。
各有機酸検出用試料を、それぞれエバポレートして乾燥させた後に、参考例4と同様にして、前記2PM誘導体化用混合試薬により誘導体化(誘導体によるエステル化)をした後、最終的に1容量%のギ酸水溶液(1mL)に再溶解させ、1μLをLC−P−ESI−MS/MSにより測定し、3−HIB、3−HB、2−HB、及び3−HMBの含有量(濃度)を求めた。
10本の採取部位(1)の各有機酸の濃度を比較し、ばらつき(変動係数、%CV)を算出した。同様に、10本の採取部位(2)の各有機酸の濃度のばらつきと、10本の採取部位(3)の各有機酸の濃度のばらつきを、それぞれ算出した。算出結果を図16に示す。この結果、4種類の有機酸全てにおいて、採取部位(3)が最もばらつきが大きく、採取部位(1)と採取部位(2)のばらつきは同程度であった。これらの結果から、シルマー濾紙のような短冊状又は棒状の濾紙を唾液吸収部材とし、唾液を毛細管現象により一方の端部から吸いあげる場合には、吸い上げられた唾液の先端近傍の領域を含む断片よりも、吸い上げられた唾液の先端からより離れた領域を含む断片を用いるほうが、試料間のばらつきが抑えられ、より信頼性の高い検出結果が得られることがわかった。
[実施例2]
シルマー濾紙の一方の端部を被検者が口にくわえることにより毛細管現象により唾液を吸収させた後、乾燥させた唾液試料を用いて、3−HIB、3−HB、2−HB、及び3−HMBの含有量(濃度)を測定し、唾液試料間のばらつきを調べた。
具体的には、まず、口腔内で唾液に直接触れる領域が先端部から10mmまでの領域(採取部位(1))のみとなるように、その他の領域(採取部位(2)及び採取部位(3))を銀紙で覆ったシルマー濾紙(Alcon Laboratories社製)を10本用意した。この10本のシルマー濾紙について、1本ずつ順次、銀紙で覆われていない先端部から10mmまでの領域を同一の被検者の舌下に約5秒間接触させ、毛細管現象により唾液を吸い上げて吸収させた後、室温(20〜25℃)で20分間放置することにより乾燥させた。
乾燥後の10本のシルマー濾紙から銀紙を外し、実施例1と同様にして、先端部から10mmの箇所と15mmの箇所と20mmの箇所の3箇所で切断し、当該先端部から10mmまでの断片(採取部位(1))、当該先端部からの距離が10mmから15mmまでの断片(採取部位(2))、当該先端部からの距離が15mmから20mmまでの断片(採取部位(3))を得、採取部位(1)、採取部位(2)、及び採取部位(3)から3−HIB、3−HB、2−HB、及び3−HMBの含有量(濃度)を求めた。
10本の採取部位(1)の各有機酸の濃度のばらつき(変動係数、%CV)と、10本の採取部位(2)の各有機酸の濃度のばらつきと、10本の採取部位(3)の各有機酸の濃度のばらつきを、それぞれ算出した。算出結果を図17に示す。この結果、4種類の有機酸全てにおいて、吸い上げられた唾液の先端との距離が最も短い採取部位(3)が最もばらつきが大きく、採取部位(2)のばらつきが最も小さかった。また、実施例1に比べ、ばらつきが大きい傾向にあった。唾液と直接接触させなかった採取部位(2)が、唾液と直接接触させた採取部位(1)よりもばらつきが小さかったのは、採取部位(1)は口内で唾液に触れる量がまばらであったため、唾液が採取後部位(3)に向かって濾紙内を浸透するものの、直接唾液に触れる量の影響が残っている可能性があるためと考えられた。採取部位(2)は、採取部位(1)に比べ均一の唾液を含んでいる可能性が高かった。
[実施例3]
シルマー濾紙の先端に、容器に採取した流涎5μLを染み込ませて乾燥させた唾液試料について有機酸濃度を測定し、乾燥時間が有機酸濃度の測定値に及ぼす影響を調べた。
具体的には、9本のシルマー濾紙(Alcon Laboratories社製)の先端から10mmの範囲内に、それぞれ、流涎5μLを滴下した後、室温(20〜25℃)で放置することにより自然乾燥させた。乾燥時間は、9本のシルマー濾紙のうち、5本を20分間とし、2本を1日とし、2本を2日間とした。
乾燥後のシルマー濾紙から、先端から10mmの断片(唾液を染み込ませた領域)を切り出し、実施例1と同様にして、各断片を100μLの内部標準含有アセトニトリル溶液(100μLのアセトニトリルに、150ngのDL−3−HB−13ナトリウム塩(標品)を溶解させた溶液)に浸漬させ、有機酸を抽出したアセトニトリル溶液を有機酸検出用試料として回収し、各有機酸検出用試料中のDL−3−HB−13ナトリウム塩、3−HB、及び3−HMBを検出し、それらの含有量(ng/5μL)を求めた。DL−3−HB−13ナトリウム塩の含有量を図18に、3−HBの含有量を図19に、3−HMBの含有量を図20に、それぞれ示す。図18〜20中、点線で示す濃度は、同じ流涎5μLを100μLの前記内部標準含有アセトニトリル溶液に混合した混合液を有機酸検出用試料として同様にして測定したDL−3−HB−13ナトリウム塩、3−HB、及び3−HMBの含有量(ng/5μL)(実際の濃度)(n=4)を示す。
この結果、DL−3−HB−13ナトリウム塩の濃度は、乾燥時間が20分間の場合には実際の濃度よりもはるかに少なく、乾燥時間が長くなるほど実際の濃度に近づいた(図17)。これは、放置(乾燥)時間が短いと濾紙に多くの水分が残存しているため、内部標準含有アセトニトリル溶液が当該濾紙に充分に染み込まないことが原因と推察された。また、3−HBと3−HMBの濃度は、乾燥時間が20分間の場合には実際の濃度よりもはるかに高かったが、乾燥時間が1〜2日間の試料では、実際の濃度に近似した濃度となった。乾燥時間が20分間の場合に3−HBと3−HMBの濃度が直接測定値より高く算出されたのは、内部標準値が低く測定されたためと推察される。これらの結果から、濾紙に吸収させることによって採取された唾液試料は、充分に乾燥させた後に測定に供することにより、唾液中の3−HB等の有機酸を直接測定した値とほぼ同等の測定結果が得られることが確認された。
[実施例4]
3種類の素材の異なる濾紙を唾液吸収部材とし、唾液吸収部材の素材が有機酸の測定値に与える影響を調べた。
具体的には、唾液吸収部材として、シルマー濾紙(Alcon Laboratories社製)、ガラス繊維からなるGF/B濾紙(Whatman社製)、及び合成樹脂繊維からなるSOS(SALIMETRICS ORAL SWAB)濾紙(SALIMETRICS社製)を用いた。各濾紙に、一の被験者から容器に採取した流涎を5μLずつ滴下した後、室温(20〜25℃)で20分間放置することにより自然乾燥させた。シルマー濾紙の場合には先端から10mmの領域を切り出した断片に(n=5)、GF/B濾紙の場合には8等分した断片に(n=5)、SOS濾紙の場合には高さが5mmとなるように切断した円柱を半分に切断した断片に(n=5)、それぞれ流涎を滴下した。
実施例1と同様にして、乾燥後の各濾紙断片を100μLの内部標準含有アセトニトリル溶液(100μLのアセトニトリルに、150ngのDL−3−HB−13ナトリウム塩(標品)を溶解させた溶液)に浸漬させ、有機酸を抽出したアセトニトリル溶液を有機酸検出用試料として回収し、各有機酸検出用試料中のDL−3−HB−13ナトリウム塩、3−HB、3−HIB、3−HMB、及び2−HBを検出し、それらの含有量(ng/5μL)を求めた。また、同じ流涎5μLを100μLの前記内部標準含有アセトニトリル溶液に混合した混合液を有機酸検出用試料として同様にして各有機酸の濃度(実際の濃度)を測定した(n=4)(唾液直接測定)。DL−3−HB−13ナトリウム塩の含有量を図21に、3−HBの含有量を図22に、3−HIBの含有量を図23に、3−HMBの含有量を図24に、2−HBの含有量を図25に、それぞれ示す。この結果、3種類の濾紙のうち、SOS濾紙では、自然乾燥時間が20分間であっても、内部標準の測定値が直接唾液測定値と同等であり、唾液中の4種の有機酸はいずれもほぼ正確に測定できた。
[参考例10]
健常者の唾液中の乳酸及びD−乳酸の重水素同位体について、2−ピリジンメタノールで誘導体化した後、LC−P−ESI−MS/MSにより検出した。
まず、健常者から採取された流涎を、−20℃にて一旦凍結し、その後解凍したものを、遠心分離処理(3000rpm、15分間)し、粘性蛋白質(ムチン)を分解し、唾液中に含まれている食べかす等と共に沈殿させ、上清を得た。得られた唾液上清を分析に用いた。
次いで、アセトニトリル/水(1/19、容量比)(100μL)に、D−乳酸(標品、100ng)又は前記唾液上清(5μL)と、D−乳酸の重水素同位体(標品、D−乳酸−d、500ng)とを溶解させた試料溶液を調製し、エバポレートして乾燥させた後に、前記2PM誘導体化用混合試薬により誘導体化(誘導体によるエステル化)をした。最終的に1容量%のギ酸水溶液(100μL)に再溶解させ、5μL(唾液250nL中の固形分相当、D−乳酸が5ng相当、D−乳酸−dが25ng相当)を、前述の通りにLC−P−ESI−MS/MSにより測定した。
LC−P−ESI−MS/MSにより検出した結果を図26に示す。図26Aに、2−ピリジンメタノールで誘導体化された乳酸(2PM−Lactate)と重水素同位体(2PM−Lactate−d)を含む試料のm/z 182.1を前駆イオンとした時のプロダクトイオンクロマトグラムを、図26Bに図26Aの2PM−LactateピークのMS/MSスペクトラムを、それぞれ示す。また、図26Cに、標品のD−乳酸を用いた場合の2PM−Lactateと2PM−Lactate−dのSRMクロマトグラムを、図26Dに、唾液上清を用いた場合の2PM−Lactateと2PM−Lactate−dのSRMクロマトグラムを示した。当該クロマトグラムより、2PM−Lactate−dに対するピークエリア面積比を算出し、当該比率をキャリブレーションカーブに当てはめることにより、唾液中の乳酸濃度を決定できる。この結果、測定に供した試料には、唾液5μLに由来する乳酸しか含まれていなかったにもかかわらず、2−ピリジンメタノールで誘導体化することにより、低感度高情報量のスキャンモードで、乳酸をスペクトル解析することができた。また、LCクロマトグラムにおいて、乳酸の2PMエステル誘導体は、3−HB、3−HIB、3−HMB、及び2−HBの2PMエステル誘導体とはいずれも明らかに分離して解析できた。これらの結果から、2−ピリジンメタノールで誘導体化してLC−P−ESI−MS/MSを行うことにより、唾液中の微量の乳酸を、構造類似の3−HB、3−HIB、3−HMB、及び2−HBと区別して、精度よく高感度に同時検出できることがわかった。
[参考例11]
被検者から採取された唾液(流涎)中の3−HB、3−HIB、3−HMB、2−HB、及び乳酸の室温における保存安定性を調べた。
具体的には、健常者から1本のチューブに採取(流涎)した唾液を7本のチューブに分注した。7本のチューブのうちの1本については、採取後速やかに−20℃で凍結保存した。残りの6本については、それぞれ、室温で1、2、4、6、10、又は24時間放置した後、−20℃で保存した。凍結保存した唾液試料は、分析時に室温で自然解凍した。ボルテックスミキサーを用いて混和した後、遠心分離処理(3000rpm、15分間)し、粘性蛋白質(ムチン)を分解し、唾液中に含まれている食べかす等と共に沈殿させ、上清を分析に用いた。
−20℃で保存後の各唾液中の3−HB、3−HIB、3−HMB、2−HB、及び乳酸の濃度を、内部標準としてDL−3−HB−13ナトリウム塩及びD−乳酸−dを用い、誘導体化試薬として2−ピリジンメタノールを用いて、参考例4と同様にしてLC−P−ESI−MS/MSにより測定した。クロマトグラムより、2PM−3−HBの[13]同位体及びD−乳酸−dに対するピークエリア面積比を算出し、当該比率をキャリブレーションカーブに当てはめて、唾液中の3−HB濃度、3−HIB濃度、3−HMB濃度、2−HB濃度、及び乳酸濃度を決定した。測定結果を図27に示す。この結果、唾液試料から、3−HB、3−HIB、3−HMB、2−HB、及び乳酸を分離して定量的に検出することができた。また、唾液中の3−HB濃度及び3−HIB濃度は、採取後室温で放置される時間にかかわらず、ほぼ安定しており、3−HMB濃度は室温保存6時間までは安定しており、室温保存10時間以降で緩やかな減少傾向が観察された。これに対して、唾液中の2−HB濃度及び乳酸濃度は、室温保存1時間後から急激に濃度が減少しており、室温における保存安定性が低いことが確認された。
[参考例12]
流涎法にて採取した唾液に対し、LDH(乳酸脱水素酵素)阻害剤であるオキサミン酸ナトリウムを最終濃度200μMとなるように添加した状態で、参考例11と同様にして室温で1〜24時間放置し、室温保存時における唾液中の2−HB濃度及び乳酸濃度の低下に対するLDH阻害剤の効果を調べた。この結果、唾液中の乳酸濃度の減少傾向は、オキサミン酸ナトリウム無添加の場合に比べてやや緩やかではあるものの、依然として乳酸濃度は経時的に低下していた。また、唾液中の2−HB濃度は、オキサミン酸ナトリウムを添加した場合と無添加の場合で差はなかった(データ図示せず。)。
また、添加するオキサミン酸ナトリウムの最終濃度を、500μM、1mM、5mM、又は10mMまで増加させ、24時間放置してした後の試料を検討した場合であっても、唾液中の2−HB濃度及び乳酸濃度の低下は、抑制できなかった(データ図示せず。)。
被検者から採取された唾液(流涎)に、ギ酸、水酸化ナトリウム、塩酸、又は塩化ベンザルコニウムを有効成分とする抗菌剤「Clear Bath(登録商標)」(Spectrum Laboratories社製、組成:50質量% 塩化ベンザルコニウム、10質量% エタノール、40質量% 水)を添加し、3−HB、3−HIB、3−HMB、2−HB、及び乳酸の室温における保存安定性を調べた。
具体的には、健常者から1本のチューブに採取(流涎)した唾液を、8本のチューブにチューブ1本当たり500μLずつ分注した。8本のチューブのうちの1本については、採取後速やかに−20℃で凍結保存した。残りの7本のうちの1本は何も添加せず、残る6本には、それぞれ、0.001容量% ギ酸水溶液、0.01容量% ギ酸水溶液、1容量% ギ酸水溶液、0.001N 水酸化ナトリウム水溶液、0.001N 塩酸、又は0.1容量% Clear Bath水溶液をそれぞれ1/100倍量(5μL)を直ちに混和し、室温で24時間放置した後、−20℃で保存した。なお、pH試験紙を用いて各唾液のpHを測定したところ、1容量% ギ酸水溶液を添加した唾液のpHは3〜4程度の酸性であり、その他の唾液のpHは6〜8程度の中性であった。凍結保存した唾液試料は、分析時に室温で自然解凍した。ボルテックスミキサーを用いて混和した後、遠心分離処理(3000rpm、15分間)し、粘性蛋白質(ムチン)を分解し、唾液中に含まれている食べかす等と共に沈殿させ、得られた唾液上清を分析に用いた。
−20℃で保存後の各唾液中の3−HB、3−HIB、3−HMB、2−HB、及び乳酸の濃度を、参考例11と同様にして測定した。測定結果を図28に示す。この結果、24時間室温放置後の唾液では、3−HMB、2−HB、及び乳酸の濃度が顕著に低下しており、3−HBの濃度が上昇していたが、0.1容量% Clear Bathを添加した唾液では、室温24時間放置後でも、2−HB、乳酸、及び3−HMBの濃度がほとんど低下しておらず、3−HBの濃度も上昇しておらず、室温放置していない唾液とほぼ同程度の濃度であった。また、pHが酸性であった1容量% ギ酸水溶液を添加した唾液も、3−HMB、2−HB、及び乳酸の濃度低下並びに3−HMBの濃度上昇が抑制されることがわかった。その他の添加剤を添加した唾液では、添加剤無添加の場合と同様に、室温放置によって3−HMB、2−HB、及び乳酸の濃度低下並びに3−HMBの濃度上昇が観察された。これらの結果から、唾液に抗菌剤を添加したり、唾液のpHを酸性に調整することによって、唾液中の3−HB、3−HMB、2−HB、及び乳酸の保存安定性が改善できることがわかった。また、2−HB及び乳酸の濃度低下が抗菌剤添加により抑制されたことから、唾液の室温放置による2−HB量及び乳酸量の低下は、口内バクテリアによる分解のためと推察された。
また、前記2PM誘導体化用混合試薬による誘導体化を行う試料として、唾液上清にアセトニトリル/水(1/19、容量比)を混合したところ、添加剤を添加していない唾液上清では濁りがあったが、0.1容量% Clear Bath水溶液を添加した唾液上清では凝集沈殿が生じており、液性部分は透明であった。唾液の濁りは、主にバクテリアであり、抗菌剤の添加により死滅して凝集して沈殿した結果、唾液が透明になったと推測された。
[参考例13]
被検者から採取された血清と唾液(流涎)中における、乳酸の濃度の相関性を調べた。具体的には、健常人1名から異なる日に同時に採取した血液及び唾液について、これらの乳酸の濃度を測定し、血清中濃度と唾液中濃度の相関性を調べた。
血液は、血清分離剤入りの採血管に採取し、凝固後、遠心分離処理により血清を採取し、分析まで−20℃にて保存した。唾液は、流涎法にて採取後、500μLに対し5μLの0.1% Clear Bath水溶液を直ちに混和し、分析まで−20℃にて保存した。血清中及び唾液中の乳酸の濃度は、参考例11と同様にして測定した。測定結果を図29に示す。この結果、乳酸の唾液中濃度は、血清中濃度と相関することが確認された。
1…シルマー濾紙

Claims (20)

  1. 唾液を、唾液吸収部材に吸収させる吸収工程と、
    前記吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材を乾燥させる乾燥工程と、
    を有し、
    前記吸収工程において、
    (i)前記唾液吸収部材に所定量の唾液を吸収させること、又は
    (ii)前記乾燥工程後、前記唾液吸収部材から、所定量の唾液由来の固形分が吸着している領域を切断して回収すること
    により、所定量の唾液に由来する固形分が唾液吸収部材に乾燥状態で保持された唾液試料を調製することを特徴とする、唾液試料の調製方法。
  2. 前記唾液吸収部材が短冊状又は棒状であり、
    前記吸収工程において、前記唾液吸収部材の一方の端部を唾液に接触させ、毛細管現象により唾液を吸い上げることにより当該唾液吸収部材に唾液を吸収させ、
    前記乾燥工程後、前記唾液吸収部材の唾液由来の固形分が吸着している領域のうち、吸い上げられた唾液の先端から8mm以上離れている領域から、所定の面積分又は体積分の領域を切断したものを、唾液試料として回収する、請求項1に記載の唾液試料の調製方法。
  3. 前記唾液が、液体状態で唾液容器に収容されているものである、請求項1又は2に記載の唾液試料の調製方法。
  4. 前記吸収工程を、前記唾液吸収部材を被検者の口腔内において唾液と接触させることにより行う、請求項1又は2に記載の唾液試料の調製方法。
  5. 前記唾液吸収部材が短冊状又は棒状であり、
    前記吸収工程において、前記唾液吸収部材の一方の端部を被検者の口に入れて、毛細管現象により唾液を吸い上げることにより当該唾液吸収部材に唾液を吸収させ、
    前記乾燥工程後、前記唾液吸収部材の唾液由来の固形分が吸着している領域のうち、被検者の口腔内において唾液と直接接触していなかった領域であり、かつ吸い上げられた唾液の先端から8mm以上離れている領域から、所定の面積分又は体積分の領域を切断したものを、唾液試料として回収する、請求項4に記載の唾液試料の調製方法。
  6. 前記乾燥工程前に、前記吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材に、抗菌剤を含有させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の唾液試料の調製方法。
  7. 前記吸収工程において、唾液と抗菌剤の混合物を前記唾液吸収部材に吸収させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の唾液試料の調製方法。
  8. 前記唾液吸収部材が、予め抗菌剤を保持している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の唾液試料の調製方法。
  9. 唾液を、唾液吸収部材に吸収させる吸収工程と、
    前記吸収工程において唾液を吸収させた唾液吸収部材を、抗菌剤を含有する溶液中に浸漬させる抗菌剤処理工程と、
    を有し、
    前記吸収工程において、
    (i)前記唾液吸収部材に所定量の唾液を吸収させること、又は
    (ii)前記吸収工程後、前記唾液吸収部材から所定量の唾液由来の固形分が吸着している領域を切断して回収したものを、前記抗菌剤を含有する溶液中に浸漬させること
    により、所定量の唾液に由来する固形分と唾液吸収部材を含有する溶液である唾液試料を調製することを特徴とする、唾液試料の調製方法。
  10. 前記抗菌剤が、第四級アンモニウム塩系抗菌剤である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の唾液試料の調製方法。
  11. 前記吸収工程において前記唾液吸収部材に吸収させる唾液量が、前記唾液吸収部材の最大吸収量である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の唾液試料の調製方法。
  12. 前記所定量が、1〜50μLである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の唾液試料の調製方法。
  13. 前記唾液吸収部材が、合成樹脂繊維からなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の唾液試料の調製方法。
  14. 前記乾燥工程における乾燥が、自然乾燥である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の唾液試料の調製方法。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の唾液試料の調製方法により得られた唾液試料を、極性有機溶剤に浸漬させることにより、前記唾液試料から唾液由来の有機酸を抽出する抽出工程と、
    前記抽出工程の後、有機酸が抽出された極性有機溶剤を、唾液由来有機酸検出用試料として、前記唾液試料から分離して回収する回収工程と、
    前記回収工程により回収された唾液由来有機酸検出用試料中の有機酸を下記一般式(1)−1〜(1)−3
    Figure 2016006420
    (式(1)−1〜3中、R及びRは、一方が炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
    のいずれかで表される誘導体化試薬とエステル結合させることにより誘導体を合成し、当該誘導体を、正イオンモードのエレクトロスプレーイオン化LC−MS/MS(液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析)法により検出する検出工程と、
    を有することを特徴とする、唾液中の有機酸の検出方法。
  16. 前記極性有機溶剤が、アセトニトリルである、請求項15に記載の唾液中の有機酸の検出方法。
  17. 前記抽出工程において、前記唾液試料を、予め内部標準物質を含有させた極性有機溶剤に浸漬させる、請求項15又は16に記載の唾液中の有機酸の検出方法。
  18. 前記誘導体化試薬が2−ピリジンメタノール、1−ピペリジンエタノール、及び2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジンからなる群より選択される1種以上である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の唾液中の有機酸の検出方法。
  19. 前記有機酸が3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシイソ吉草酸、2−ヒドロキシ酪酸、及び乳酸からなる群より選択される1種以上である、請求項15〜18のいずれか一項に記載の唾液中の有機酸の検出方法。
  20. 同一の被験者から経時的に調製された複数の唾液試料に対して、請求項15〜19のいずれか一項に記載の唾液中の有機酸の検出方法を行い、前記被験者の唾液中の有機酸濃度の経時的変化を調べることを特徴とする、有機酸濃度の経時的変化の測定方法。
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