JP2016003351A - 降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板 - Google Patents

降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板 Download PDF

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Abstract


【課題】コスト上昇を招くことなく、製造面でも問題が生じることなく、降伏比と延性を兼ね備えた高強度鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.1〜0.6%、Si:0.2〜3.0%、Mn:0〜0.6%、Al:0.5〜2.0%であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、全組織に対する面積率で、フェライト:70〜97%、レペラ腐食にて観察される白色領域Vwtレペラ:2%以上、X線回折法により求められる残留オーステナイトVγRXRD:2%以上、前記レペラ腐食にて観察される白色領域とX線回折法により求められる残留オーステナイトとの差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRD:2%以下、残部:パーライトおよびベイナイトの1種または2種であるとともに、前記残留オーステナイト中の炭素濃度CγRが1.5〜2.5質量%である組織を有する高強度鋼板。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車部品等に用いられる、降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板に関する。なお、本発明に係る高強度鋼板には、冷延鋼板のみならず、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含むものである。
自動車用部品に供される高強度鋼板には、燃費改善と衝突安全性を両立させるために、材料の高強度化および複雑形状に成形するための高延性化が求められ続けている。
高延性化を実現しうる鋼としては、母相がフェライト主体で、残留オーステナイト(以下、「残留γ」ともいう。)を含有し、残留γの加工誘起変態による変態誘起塑性を活用したTRIP鋼が知られている。また、このTRIP鋼の衝突特性を高めるために各種取組がなされている。
例えば、特許文献1には、Coを添加しつつ残留γの安定度を高めることで、動的衝撃特性を向上させたとする高強度冷延鋼板が開示されている。しかしながら、この技術では、高価なCoの添加を要しコスト高を招くうえ、残留γの安定化が不十分なため十分な衝撃特性が得られない問題がある。
また、特許文献2には、母材としては降伏強度が低くても、プレス形成後の塗装焼付け時にひずみ時効を促進させることで、降伏強度を向上させ衝突特性を改善したとする高強度冷延鋼板が開示されている。しかしながら、このようなひずみ時効を用いた降伏強度の向上では、部品成形時にひずみの付与が不均一になされるため、降伏強度が低く衝突特性の改善が不十分な領域も存在する問題がある。
このため、さらなる部品特性の向上のためには、母材自体の降伏強度を高めつつ延性をも高めることが有効である。TRIP鋼で降伏強度を高める取り組みとしては、以下の先行技術が挙げられる。
例えば、特許文献3には、Mnを10質量%以上添加し残留γを面積率で95%以上確保することで、高降伏比と高延性の両立を実現したとする高強度鋼板が開示されている。しかしながら、この技術では、Mnの多量添加が必要となり、コスト面や製造面で問題となるうえ、特性面でも十分な降伏比を確保できていない。
また、特許文献4には、TiCを分散させて析出強化させることで、高降伏比を得つつ、残留γを分散させて伸びを向上させたとする冷延鋼板が開示されている。しかしながら、この技術では、降伏比は改善できても、析出強化による変形能低下により延性が劣化する問題がある。
特開2001−271137号公報 特開2003−13176号公報 特開2010−106313号公報 特開2010−180462号公報
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、コスト上昇を招くことなく、製造面でも問題が生じることなく、降伏比と延性を兼ね備えた高強度鋼板を提供することにある。
本発明の第1発明に係る降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板は、
質量%で、
C :0.1〜0.6%、
Si:0.2〜3.0%、
Mn:0〜0.6%、
Al:0.5〜2.0%
であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
全組織に対する面積率で、
フェライト:70〜97%、
レペラ腐食にて観察される白色領域Vwtレペラ:2%以上、
X線回折法により求められる残留オーステナイトVγRXRD:2%以上、
前記レペラ腐食にて観察される白色領域とX線回折法により求められる残留オーステナイトとの差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRD:2%以下、
残部:パーライトおよびベイナイトの1種または2種
であるとともに、
前記残留オーステナイト中の炭素濃度CγRが1.5〜2.5質量%
である組織を有する、
ことを特徴とする。
本発明の第2発明に係る降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板は、
上記第1発明において、
成分組成が、さらに、
Cr、Moの1種または2種をそれぞれ0%超0.5%以下
含むものである。
本発明の第3発明に係る降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板は、
上記第1または第2発明において、
成分組成が、さらに、
Cu、Niの1種または2種をそれぞれ0%超1.0%以下
含むものである。
本発明の第4発明に係る降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板は、
上記第1〜第3発明のいずれか1つの発明において、
成分組成が、さらに、
Nb、Ti、Vの1種または2種以上をそれぞれ0%超1.0%以下
含むものである。
本発明によれば、鋼板の組織をフェライト主体とし、これに高炭素濃度の残留γを所定量導入するとともに、マルテンサイトを一定量以下に制限することで、フェライト中に導入される可動転位を低減するとともに、低ひずみ領域で不安定なマルテンサイトの加工誘起変態による変態塑性が発生することを防止することで残留γの大幅な安定化が実現でき、延性を確保しつつ降伏比を高めた高強度鋼板を提供できるようになった。
本発明者らは、上記従来技術と同様の、母相がフェライト主体で、残留γを含有するTRIP鋼板に着目し、その鋼板特性として、TS:590MPa以上、YR:75%以上、EL:27%以上、TS×EL:16000MPa・%以上を同時に確保しうる方策について種々検討を重ねてきた。
その結果、以下の思考研究により、上記所望の鋼板特性を確保しうることに想到した。
TRIP鋼は一般的に降伏比が低いことが知られている。そこで、まず、この降伏比が低い要因について検討した結果、以下の仮説を構築するに到った。
すなわち、鋼板の組織中に残留γを作り込む際にオーステンパ処理を施して残留γに炭素を濃化させるが、炭素濃度の上限が鋼板の成分組成により決まっているため、残留γに対して十分な安定度を確保することができない。このため、オーステンパ処理後の冷却中にマルテンサイトが形成される。このマルテンサイトの形成に伴い、フェライト中に可動転位が導入されることで、鋼板の降伏強度が低下する、あるいは、フェライト中への可動転位の導入を防止できたとしても、比較的不安定な残留γが変形初期に加工誘起変態することで、変態塑性が起こり、いずれにしても降伏強度が低下する、と考えられる。
上記仮説に基づき、TRIP鋼における降伏強度の低下を防止する方策として、以下の方策が有効と考えた。
すなわち、まず、残留γの安定度、つまり残留γ中の炭素濃度を特に高めるために、Ac3点を大幅に高C側に移動させることができるAl添加を行う。それと同時に、Ac3点を低温側に移動させ、かつ各種変態を遅延させることで、残留γ中への炭素の濃化を阻害するMnを低減する。さらに、マルテンサイト量を一定値以下に制限する。これらの手段を組み合わせた方策を実行することにより、フェライト中の可動転位の低減と、残留γの大幅な安定化が実現でき、鋼板の降伏強度を高めることが可能になる。
本発明者らは、上記知見に基づいてさらに検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
以下、まず本発明に係る鋼板(以下、「本発明鋼板」ともいう。)を特徴づける組織について説明する。
〔本発明鋼板の組織〕
上述したとおり、本発明鋼板は、上記従来技術と同じくTRIP鋼の組織をベースとするものであるが、特に、フェライトを所定量含有するとともに、上記従来技術より高い炭素濃度の残留γを一定量以上含有し、さらに、マルテンサイトが一定量以下に制限されている点で、上記従来技術と異なっている。
<フェライト:70〜97%>
鋼板の組織を、軟質で延性の高いフェライト主体の組織とすることで、高延性化の達成を可能とする。このため、フェライトの量は、全組織に対する面積率で70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上とする。ただし、フェライトの量が過剰になると、所望の強度が維持できなくなるので、全組織に対する面積率で97%以下、好ましくは95%以下、さらに好ましくは93%以下とする。
<レペラ腐食にて観察される白色領域Vwtレペラ:2%以上、
X線回折法により求められる残留オーステナイトVγRXRD:2%以上>
これらの要件は、延性を確保するために必須の組織要件である。鋼板の延性を確保するため、レペラ腐食、X線回折法のいずれの手法で測定しても、全組織に対する面積率で2%以上の残留γの導入が必要である。なお、レペラ腐食で観察される白色領域は、炭素が濃化した、マルテンサイトおよび/またはオーステナイト(MA)である。
<前記レペラ腐食にて観察される白色領域とX線回折法により求められる残留オーステナイトとの差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRD:2%以下>
レペラ腐食で観察された白色領域が、マルテンサイトを含まず全てが残留γであることが好ましい。マルテンサイトが形成されると、フェライト中に転位が存在するのに対して、マルテンサイトがほとんど存在していなければ、フェライト中には転位がほとんど存在しなくなるため、透過型電子顕微鏡(TEM)での直接観察も有効な手段である。ただし、TEMでの直接観察は、白色領域の組織全体を代表させることが困難である。
このため、最終の冷却時にマルテンサイトが形成される挙動をレペラ腐食された鋼板を光学顕微鏡で観察したときに見える「マルテンサイト+オーステナイト」(MA)の量Vwtレペラから、X線回折法で得られる「オーステナイト」の量VrRXRDを差し引くことで、マルテンサイトの量を推算する手段を採用することとした。
なお、レペラ腐食された鋼板におけるMAの画像解析値VwtレペラとX線回折法で得られる残留γ量VrRXRDを比較すると、測定ばらつきの範囲内で、X線回折で得られる残留γ量VrRXRDが、MA画像解析値Vwtレペラを上回り、上記差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRDが負(マイナス)の値になる場合がある。
上述のように、最終組織中のマルテンサイト量はできるだけ少なくすることが望ましいが、上記測定ばらつきを考慮して、上記差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRDは、全組織に対する面積率で2%以下、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下とする。
<前記残留オーステナイト中の炭素濃度CγR:1.5〜2.5質量%>
組織中の炭素濃度の分布状態の制御を考えた場合、残留γの安定度を高めることができていれば、加工初期の不安定な残留γの変態を防止でき、高降伏強度化(高降伏比化)を実現できる。そのため、残留γ中の炭素濃度CγRは、従来技術より高い1.5質量%以上、好ましくは1.6質量%以上、さらに好ましくは1.8質量%以上とする。ただし、残留γ中の炭素濃度CγRが高くなりすぎると、残留γが安定化しすぎて、加工誘起変態しなくなるため、延性が劣化するので、2.5質量%以下、好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.1質量%以下とする。
<残部:パーライトおよびベイナイトの1種または2種>
フェライト、残留オーステナイト、マルテンサイト以外の残部は、パーライトおよびベイナイトの1種または2種である。残部におけるパーライトとベイナイトの割合は、特に限定されるものではない。
なお、残留γの一部をパーライト変態させることで、延性をやや犠牲にするものの、加工誘起変態が起こりやすく降伏強度低下の要因となりやすいフェライト/残留γ界面に降伏強度の高いパーライト組織を入れ込むことで、TRIP鋼でありながら更なる高降伏強度化が可能となる。このような更なる高降伏強度化作用を有効に発揮させるためには、パーライトを全組織に対する面積率で1%以上、さらには2%以上導入することが好ましい。
〔各相の面積率および残留γ中の炭素濃度の各測定方法〕
ここで、各相の面積率および残留γ中の炭素濃度の各測定方法について説明する。
まず、フェライト、ベイナイト、パーライトの各面積率は、鋼板をナイタール腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM)観察(倍率1000倍)により、各相を同定し、画像解析により各相の面積率を測定した。
次に、マルテンサイト+残留γ(MA)に相当する「レペラ腐食にて観察される白色領域Vwtレペラ」の面積率は、鋼板をレペラ腐食し、光学顕微鏡観察(倍率1000倍)により、白く見える領域を「白色領域Vwtレペラ」と定義して、画像解析によりその面積率を測定した。
次いで、「X線回折法にて求められる残留γ」の面積率VγRXRDおよびその炭素濃度CγRは、鋼板の1/4の厚さまで研削した後、化学研磨してからX線回折法により測定した(ISIJ Int.Vol.33,(1933),No.7,p.776)。そして、マルテンサイトの面積率に相当するΔV=Vwtレペラ−VrRXRDの値は、上記のようにして測定した、白色領域の面積率VwtレペラからX線回折法にて測定した残留γの面積率VrRXRDを差し引くことにより求めた。
次に、本発明鋼板を構成する成分組成について説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%である。
〔本発明鋼板の成分組成〕
C:0.1〜0.6%
Cは、高強度を確保しつつ、残留γを作り込むために必須の元素であり、その含有量の増加とともに強度・延性バランスの向上に寄与する。このような作用を有効に発揮させるためには、Cを0.1%以上、好ましくは0.14%以上、さらに好ましくは0.18%以上含有させる必要がある。ただし、C量が過剰になるとオーステンパ処理時の変態を阻害し、残留γ中の炭素濃度の向上が実現できなくなるので、C量は0.6%以下、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下とする。
Si:0.2〜3.0%
Siは、400℃近辺でのオーステンパ処理中における炭化物形成を伴うベイナイト変態の進行を抑制し、炭素濃度の高い安定な炭化物の形成を促進する。一方、より高温で保持した際はSi自体がフェライトとセメンタイトの官で分配するために、特性向上に有効なパーライト変態についてはSiを含有させても適度に進行させることが可能である。このような作用を有効に発揮させるためには、Siを0.2%以上、好ましくは0.6%以上、さらに好ましくは1.0%以上含有させる必要がある。ただし、S量が過剰になるとAc3点が高温になりすぎ、焼鈍時にオーステナイトが形成できず残留γを作り込むことができなくなるので、Si量は3.0%以下、好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下とする。
Mn:0〜0.6%
Mnは、オーステナイトフォーマとして働くことで、残留γ中への炭素濃化の限界値を低下させ、十分に安定な残留γを確保することが困難となる。また、オーステンパ処理中の変態を大幅に阻害するため、残留γの安定性を確保することが難しくなる。したがって、Mn量は0.6%以下、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下に制限する必要がある。
Al:0.5〜2.0%
Alは、強力なフェライトフォーマであり、残留γ中の炭素濃度向上のために含有が必須の元素である。また、Alはセメンタイトの形成を抑制する効果もあり、残留γを得やすくなる。このような作用を有効に発揮させるためには、Alは0.5%以上、好ましくは0.7%以上、さらに好ましくは0.9%以上含有させる必要がある。ただし、過剰に含有させても効果が飽和し経済的に無駄であるので、2.0%以下、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.3%以下とする。
本発明の鋼は上記成分を基本的に含有し、残部が鉄および不可避的不純物(P、S、N、O等)であるが、その他、本発明の作用を損なわない範囲で、以下の許容成分を含有させることができる。
Cr、Moの1種または2種をそれぞれ0%超0.5%以下
これらの元素は、鋼の強化元素として有用であるとともに、残留γの安定化や所定量の確保に有効な元素である。ただし、これらの元素を過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、それぞれ0.5%以下、より好ましくはそれぞれ0.4%以下の含有に留めることが推奨される。
Cu、Niの1種または2種をそれぞれ0%超1.0%以下
これらの元素も、鋼の強化元素として有用な元素である。ただし、これらの元素を過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、合計で0.5%以下、より好ましくはそれぞれ0.8%以下の含有に留めることが推奨される。
Nb、Ti、Vの1種または2種以上をそれぞれ0%超1.0%以下
これらの元素は、いずれも炭化物形成元素であり、炭化物の微細分散により高強度化に有効に作用する。ただし、これらの元素を過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、合計で1.0%以下、より好ましくはそれぞれ0.05%以下の含有に留めることが推奨される。
次に、上記本発明鋼板を得るための好ましい製造方法を以下に説明する。
〔本発明鋼板の好ましい製造方法〕
上記した要件を満足する本発明鋼板を製造するためには、以下の製造要件を満足するようにして、鋼板を製造することが好ましい。
本発明鋼板を製造する際の特徴は、スラブを熱間圧延して巻き取った後の冷却を従来公知の巻取り条件より大幅に短時間化するところにある。具体的には、巻取り後の保持時間とそれに引き続く平均冷却速度は、従来公知の巻取り条件では保持時間は30min、平均冷却速度は20℃/h(≒0.006℃/s)程度であったのに対し、本発明鋼板の推奨巻取り条件では、保持時間は15min以内、より好ましくは10min以内、さらに好ましくは7min以内、平均冷却速度は0.1℃/s以上、より好ましくは1℃/s以上、さらに好ましくは3℃/s以上とする。
従来公知の巻取り条件では、巻取り後の冷却時間が長かったため、材料組織中に合金元素の偏析が生じてオーステンパ処理前の材料組織にムラができ、オーステンパ処理中に安定して変態が進行しやすくなり、残留γ中の炭素濃度を十分に確保できなかった。
これに対し、本発明鋼板の推奨巻取り条件では、巻取り後の冷却時間を従来公知の条件より大幅に短くするため、材料組織中における合金元素の偏析が抑制されてオーステンパ処理前の材料組織が均質化し、オーステンパ処理中に安定して変態が進行しにくくなり、残留γ中の炭素濃度を十分に確保できる。
なお、巻取りまでの熱間圧延、冷間圧延および熱処理の各条件に関しては、特に限定されるものではなく、従来公知の製造条件を採用することができる。
鋼板の最終組織をフェライト主体で高炭素濃度の残留γを所定量含むものとするため、熱処理条件として、例えば、2相温度域のうちAc1点に近い側の温度域を除いた[0.8×Ac1+0.2×Ac3]〜Ac3の均熱温度に10s以上の均熱時間保持して焼鈍した後、「前記均熱温度未満600℃以上の肩落し温度まで20℃/s以下の冷却速度で緩冷したのち」、または、「肩落しなしで直接」、300〜500℃の急冷停止温度(過冷温度)まで30℃/s以上の冷却速度で急冷し、この急冷停止温度(過冷温度)で10〜3600sの過冷時間保持してオーステンパ処理する条件を選択することが推奨される。なお、Ac1点およびAc3点は、鋼板の化学成分から、レスリー著、「鉄鋼材料科学」、幸田成靖 訳、丸善株式会社、1985年、p.273に記載の式を用いて求めることができる。
表1に示す各成分組成からなる供試鋼を真空溶製し、板厚30mmのスラブとした後、このスラブを1150℃に加熱し、仕上げ圧延終了温度900℃で板厚3.0mmに熱間圧延した後、巻取り温度500℃まで急冷し、表2に示すように、その温度で保持炉に5分間入れ、その後炉から取り出し10℃/sの平均冷却速度で室温まで冷却することで、上記本発明鋼板の推奨巻取り条件を模擬した条件で熱履歴を与え、熱延材とした。
また、比較のため、製造No.22では、上記と同じく巻取り温度500℃まで急冷した後、表2に示すように、その温度で保持炉に30分間入れ、その後室温まで平均冷却速度20℃/h(=72000℃/s)で炉冷することで、従来公知の巻取り条件を模擬した条件で熱履歴を与え、熱延材とした。
その後、上記熱延材を冷間圧延して板厚1.4mmの冷延材とした。そして、これらの冷延材を、熱処理シミュレータを用いて熱処理を施した。
すなわち、上記冷延材を、10℃/sの平均加熱速度で、表2に示す均熱温度T(℃)まで昇温し、該均熱温度T(℃)にて、均熱時間30s保持した後、該均熱温度Tから10℃/sの平均冷却速度で600℃まで緩冷し、その後、この温度から30℃/sの平均冷却速度で急冷停止温度(過冷温度)400℃まで急冷して過冷し、この急冷停止温度(過冷温度)で過冷時間40s保持してオーステンパ処理した後、室温まで冷却した。
なお、試験No.24では、表2に示すように、上記オーステンパ処理後に、めっき浴への浸漬を模擬して、490℃×5sの条件で加熱保持してから、室温まで冷却した。また、試験No.25では、表2に示すように、上記オーステンパ処理後に、めっき浴への浸漬+めっき層の合金化を模擬して、490℃×5s、その後520℃×15sの条件で加熱保持してから、室温まで冷却した。
このようにして得られた鋼板について、上記[発明を実施するための形態]の項で説明した測定方法により、各相の面積率および残留γの炭素濃度CγRを測定した。
また、上記鋼板について、機械的特性を評価するため、引張試験により降伏強度(YS)、引張強度(TS)および伸び(EL)をそれぞれ測定した。なお、引張試験は、JIS5号試験片を用い、引張速度:10mm/minで実施した。
これらの結果を表3に示す。そして、鋼板特性として、TS:590MPa以上、YR:75%以上、EL:27%以上、TS×EL:16000MPa・%以上を全て満足する場合を合格(○)とし、これらの特性の一つでも満たさない場合を不合格(×)とした。
表3に示すように、鋼No.2、4、5、7、8、12、13、15〜21、24、25はいずれも、本発明の成分組成の範囲を満足する鋼種を用い、推奨の製造条件で製造した結果、本発明の組織規定の要件を充足する本発明鋼板であり、機械的特性(TS、YR、EL、TS×EL)は全て判定基準を満たしており、降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板が得られた。
これに対し、鋼No.1、3、6、9〜11、14、22、23は本発明で規定する成分組成および組織の要件のうち少なくともいずれかを満足しない比較鋼板であり、機械的特性(TS、YR、EL、TS×EL)のうち少なくともいずれかが判定基準を満たしていない。
例えば、鋼No.22、23は、成分組成の要件は満たしているものの、製造条件のいずれかが推奨範囲を外れていることにより、本発明の組織を規定する必須要件のうち少なくとも一つを満たさず、TS、YR、EL、TS×ELの少なくともいずれかが劣っている。
この中で、鋼No.22は、巻取り後の保持時間が長すぎ、かつ冷却速度が低すぎ、マルテンサイトが過剰に生成するとともに残留γ中の炭素濃度が不足し、EL、TS×ELは優れているものの、TS、YRが劣っている。
一方、鋼No.23は、均熱温度が推奨範囲を外れて低すぎ、残留γが不足し、YRは優れているものの、TS、EL、TS×ELが劣っている。
また、鋼No.3、6、10は、製造条件は推奨範囲内にあるものの、本発明の成分を規定する要件を満たさないうえ、本発明の組織を規定する必須要件も満たさず、TS、YR、EL、TS×ELの少なくともいずれかが劣っている。
例えば、鋼No.3(鋼種記号C)は、C含有量が低すぎることにより、残留γが不足し、YR、ELは優れているものの、TS、TS×ELが劣っている。
また、鋼No.6(鋼種記号F)は、Si含有量が低すぎることにより、残留γ自体が不足するともに、当該残留γ中の炭素濃度も不足し、TS、YRは優れているものの、EL、TS×ELが劣っている。
一方、鋼No.10(鋼種記号J)は、Mn含有量が高すぎることにより、マルテンサイトが過剰になり、TS、EL、TS×ELは優れているものの、YRが劣っている。
以上より、本発明の適用性が確認された。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.1〜0.6%、
    Si:0.2〜3.0%、
    Mn:0〜0.6%、
    Al:0.5〜2.0%
    であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    全組織に対する面積率で、
    フェライト:70〜97%、
    レペラ腐食にて観察される白色領域Vwtレペラ:2%以上、
    X線回折法により求められる残留オーステナイトVγRXRD:2%以上、
    前記レペラ腐食にて観察される白色領域とX線回折法により求められる残留オーステナイトとの差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRD:2%以下、
    残部:パーライトおよびベイナイトの1種または2種
    であるとともに、
    前記残留オーステナイト中の炭素濃度CγRが1.5〜2.5質量%
    である組織を有する、
    ことを特徴とする降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板。
  2. 成分組成が、さらに、
    Cr、Moの1種または2種をそれぞれ0%超0.5%以下
    含むものである請求項1に記載の降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板。
  3. 成分組成が、さらに、
    Cu、Niの1種または2種をそれぞれ0%超1.0%以下
    含むものである請求項1または2に記載の降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板。
  4. 成分組成が、さらに、
    Nb、Ti、Vの1種または2種以上をそれぞれ0%超1.0%以下
    含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板。
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