JP2016003351A - 降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】コスト上昇を招くことなく、製造面でも問題が生じることなく、降伏比と延性を兼ね備えた高強度鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.1〜0.6%、Si:0.2〜3.0%、Mn:0〜0.6%、Al:0.5〜2.0%であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、全組織に対する面積率で、フェライト:70〜97%、レペラ腐食にて観察される白色領域Vwtレペラ:2%以上、X線回折法により求められる残留オーステナイトVγRXRD:2%以上、前記レペラ腐食にて観察される白色領域とX線回折法により求められる残留オーステナイトとの差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRD:2%以下、残部:パーライトおよびベイナイトの1種または2種であるとともに、前記残留オーステナイト中の炭素濃度CγRが1.5〜2.5質量%である組織を有する高強度鋼板。
【選択図】なし
Description
質量%で、
C :0.1〜0.6%、
Si:0.2〜3.0%、
Mn:0〜0.6%、
Al:0.5〜2.0%
であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
全組織に対する面積率で、
フェライト:70〜97%、
レペラ腐食にて観察される白色領域Vwtレペラ:2%以上、
X線回折法により求められる残留オーステナイトVγRXRD:2%以上、
前記レペラ腐食にて観察される白色領域とX線回折法により求められる残留オーステナイトとの差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRD:2%以下、
残部:パーライトおよびベイナイトの1種または2種
であるとともに、
前記残留オーステナイト中の炭素濃度CγRが1.5〜2.5質量%
である組織を有する、
ことを特徴とする。
上記第1発明において、
成分組成が、さらに、
Cr、Moの1種または2種をそれぞれ0%超0.5%以下
含むものである。
上記第1または第2発明において、
成分組成が、さらに、
Cu、Niの1種または2種をそれぞれ0%超1.0%以下
含むものである。
上記第1〜第3発明のいずれか1つの発明において、
成分組成が、さらに、
Nb、Ti、Vの1種または2種以上をそれぞれ0%超1.0%以下
含むものである。
上述したとおり、本発明鋼板は、上記従来技術と同じくTRIP鋼の組織をベースとするものであるが、特に、フェライトを所定量含有するとともに、上記従来技術より高い炭素濃度の残留γを一定量以上含有し、さらに、マルテンサイトが一定量以下に制限されている点で、上記従来技術と異なっている。
鋼板の組織を、軟質で延性の高いフェライト主体の組織とすることで、高延性化の達成を可能とする。このため、フェライトの量は、全組織に対する面積率で70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上とする。ただし、フェライトの量が過剰になると、所望の強度が維持できなくなるので、全組織に対する面積率で97%以下、好ましくは95%以下、さらに好ましくは93%以下とする。
X線回折法により求められる残留オーステナイトVγRXRD:2%以上>
これらの要件は、延性を確保するために必須の組織要件である。鋼板の延性を確保するため、レペラ腐食、X線回折法のいずれの手法で測定しても、全組織に対する面積率で2%以上の残留γの導入が必要である。なお、レペラ腐食で観察される白色領域は、炭素が濃化した、マルテンサイトおよび/またはオーステナイト(MA)である。
レペラ腐食で観察された白色領域が、マルテンサイトを含まず全てが残留γであることが好ましい。マルテンサイトが形成されると、フェライト中に転位が存在するのに対して、マルテンサイトがほとんど存在していなければ、フェライト中には転位がほとんど存在しなくなるため、透過型電子顕微鏡(TEM)での直接観察も有効な手段である。ただし、TEMでの直接観察は、白色領域の組織全体を代表させることが困難である。
このため、最終の冷却時にマルテンサイトが形成される挙動をレペラ腐食された鋼板を光学顕微鏡で観察したときに見える「マルテンサイト+オーステナイト」(MA)の量Vwtレペラから、X線回折法で得られる「オーステナイト」の量VrRXRDを差し引くことで、マルテンサイトの量を推算する手段を採用することとした。
なお、レペラ腐食された鋼板におけるMAの画像解析値VwtレペラとX線回折法で得られる残留γ量VrRXRDを比較すると、測定ばらつきの範囲内で、X線回折で得られる残留γ量VrRXRDが、MA画像解析値Vwtレペラを上回り、上記差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRDが負(マイナス)の値になる場合がある。
上述のように、最終組織中のマルテンサイト量はできるだけ少なくすることが望ましいが、上記測定ばらつきを考慮して、上記差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRDは、全組織に対する面積率で2%以下、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下とする。
組織中の炭素濃度の分布状態の制御を考えた場合、残留γの安定度を高めることができていれば、加工初期の不安定な残留γの変態を防止でき、高降伏強度化(高降伏比化)を実現できる。そのため、残留γ中の炭素濃度CγRは、従来技術より高い1.5質量%以上、好ましくは1.6質量%以上、さらに好ましくは1.8質量%以上とする。ただし、残留γ中の炭素濃度CγRが高くなりすぎると、残留γが安定化しすぎて、加工誘起変態しなくなるため、延性が劣化するので、2.5質量%以下、好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.1質量%以下とする。
フェライト、残留オーステナイト、マルテンサイト以外の残部は、パーライトおよびベイナイトの1種または2種である。残部におけるパーライトとベイナイトの割合は、特に限定されるものではない。
なお、残留γの一部をパーライト変態させることで、延性をやや犠牲にするものの、加工誘起変態が起こりやすく降伏強度低下の要因となりやすいフェライト/残留γ界面に降伏強度の高いパーライト組織を入れ込むことで、TRIP鋼でありながら更なる高降伏強度化が可能となる。このような更なる高降伏強度化作用を有効に発揮させるためには、パーライトを全組織に対する面積率で1%以上、さらには2%以上導入することが好ましい。
ここで、各相の面積率および残留γ中の炭素濃度の各測定方法について説明する。
C:0.1〜0.6%
Cは、高強度を確保しつつ、残留γを作り込むために必須の元素であり、その含有量の増加とともに強度・延性バランスの向上に寄与する。このような作用を有効に発揮させるためには、Cを0.1%以上、好ましくは0.14%以上、さらに好ましくは0.18%以上含有させる必要がある。ただし、C量が過剰になるとオーステンパ処理時の変態を阻害し、残留γ中の炭素濃度の向上が実現できなくなるので、C量は0.6%以下、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下とする。
Siは、400℃近辺でのオーステンパ処理中における炭化物形成を伴うベイナイト変態の進行を抑制し、炭素濃度の高い安定な炭化物の形成を促進する。一方、より高温で保持した際はSi自体がフェライトとセメンタイトの官で分配するために、特性向上に有効なパーライト変態についてはSiを含有させても適度に進行させることが可能である。このような作用を有効に発揮させるためには、Siを0.2%以上、好ましくは0.6%以上、さらに好ましくは1.0%以上含有させる必要がある。ただし、S量が過剰になるとAc3点が高温になりすぎ、焼鈍時にオーステナイトが形成できず残留γを作り込むことができなくなるので、Si量は3.0%以下、好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下とする。
Mnは、オーステナイトフォーマとして働くことで、残留γ中への炭素濃化の限界値を低下させ、十分に安定な残留γを確保することが困難となる。また、オーステンパ処理中の変態を大幅に阻害するため、残留γの安定性を確保することが難しくなる。したがって、Mn量は0.6%以下、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下に制限する必要がある。
Alは、強力なフェライトフォーマであり、残留γ中の炭素濃度向上のために含有が必須の元素である。また、Alはセメンタイトの形成を抑制する効果もあり、残留γを得やすくなる。このような作用を有効に発揮させるためには、Alは0.5%以上、好ましくは0.7%以上、さらに好ましくは0.9%以上含有させる必要がある。ただし、過剰に含有させても効果が飽和し経済的に無駄であるので、2.0%以下、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.3%以下とする。
これらの元素は、鋼の強化元素として有用であるとともに、残留γの安定化や所定量の確保に有効な元素である。ただし、これらの元素を過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、それぞれ0.5%以下、より好ましくはそれぞれ0.4%以下の含有に留めることが推奨される。
これらの元素も、鋼の強化元素として有用な元素である。ただし、これらの元素を過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、合計で0.5%以下、より好ましくはそれぞれ0.8%以下の含有に留めることが推奨される。
これらの元素は、いずれも炭化物形成元素であり、炭化物の微細分散により高強度化に有効に作用する。ただし、これらの元素を過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、合計で1.0%以下、より好ましくはそれぞれ0.05%以下の含有に留めることが推奨される。
上記した要件を満足する本発明鋼板を製造するためには、以下の製造要件を満足するようにして、鋼板を製造することが好ましい。
Claims (4)
- 質量%で、
C :0.1〜0.6%、
Si:0.2〜3.0%、
Mn:0〜0.6%、
Al:0.5〜2.0%
であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
全組織に対する面積率で、
フェライト:70〜97%、
レペラ腐食にて観察される白色領域Vwtレペラ:2%以上、
X線回折法により求められる残留オーステナイトVγRXRD:2%以上、
前記レペラ腐食にて観察される白色領域とX線回折法により求められる残留オーステナイトとの差ΔV=Vwtレペラ−VrRXRD:2%以下、
残部:パーライトおよびベイナイトの1種または2種
であるとともに、
前記残留オーステナイト中の炭素濃度CγRが1.5〜2.5質量%
である組織を有する、
ことを特徴とする降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板。 - 成分組成が、さらに、
Cr、Moの1種または2種をそれぞれ0%超0.5%以下
含むものである請求項1に記載の降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板。 - 成分組成が、さらに、
Cu、Niの1種または2種をそれぞれ0%超1.0%以下
含むものである請求項1または2に記載の降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板。 - 成分組成が、さらに、
Nb、Ti、Vの1種または2種以上をそれぞれ0%超1.0%以下
含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の降伏比と延性のバランスに優れた高強度鋼板。
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