JP2016003341A - 粒状金属鉄の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、得られた塊成物を加熱炉に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造するにあたり、粒状金属鉄の歩留まりを高められる技術を確立する。【解決手段】酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む塊成物を加熱することによって、粒状金属鉄を製造するにあたり、前記塊成物の平均粒径R(mm)、該塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)、該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)、および該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量[CVM](質量%)が、下記式(1)を満足する粒状金属鉄の製造方法。R0.5?酸素量/(固定炭素量+0.3?[CVM])≧6.2 ・・・(1)【選択図】図1

Description

本発明は、鉄鉱石や製鉄ダスト等の酸化鉄含有物質と、炭材等の炭素質還元剤とを含む塊成物を加熱、還元、溶融して粒状金属鉄を製造する方法に関する。
原料として鉄鉱石を用いた製鉄プロセスは高炉−転炉法が主流である。しかし高炉−転炉法は、高炉で鉄鉱石を還元して高炭素の溶銑を製造し、得られた溶銑を転炉で脱炭して鋼を製造するという所謂間接製鉄法であるため、鉄鉱石を還元して直接鋼を製造する直接製鉄法と比べるとCO2ガスの発生量が多くなる。そこで近年では、CO2ガスの排出量を抑制する観点から直接製鉄法が見直されてきている。
上記直接製鉄法としては、炭素質還元剤として入手が比較的容易な石炭を用いる還元鉄製造プロセスが注目されている。この還元鉄製造プロセスは、酸化鉄含有物質および炭素質還元剤を含む塊成物を加熱炉に装入し、炉内で加熱バーナーによるガス加熱や輻射熱で加熱することによって酸化鉄を還元して塊状の還元鉄を得るというものである。また、上記還元鉄製造プロセスとしては、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤とを混合して塊成化した塊成物を加熱炉に供給して加熱し、該塊成物に含まれる酸化鉄を還元したのちに、更に加熱して還元鉄を溶融させ、塊成物中の炭素質還元剤もしくは炉床上に敷かれた床敷材が浸炭して粒状の金属鉄が生成され、粒状金属鉄とスラグに分離する方法もある。前者の方法は、FASTMET法、後者の方法は、ITmk3法と呼ばれることがある。
こうした還元鉄製造プロセスは、炭素質還元剤として石炭を用いることの他にも粉状の鉄鉱石を直接利用できること、還元時には鉄鉱石と還元剤が近接配置されているため、鉄鉱石中の酸化鉄を高速還元できること、還元して得られる製品中の炭素含有量を容易に調整できることといった利点を有している。
上記ITmk3法について開示する文献として、特許文献1が知られている。この文献には、移動型炉床炉の移動炉床上に、鉄含有酸化物、炭素系固体還元材および造滓材を含む混合原料を積載した状態で、その移動型炉床炉内を移動させながら加熱することにより、上記鉄含有酸化物を還元すると共に、溶融して銑滓分離を導くことにより、還元鉄を製造するにあたり、上記混合原料として、鉄含有酸化物の平均粒径と、混合原料中の被還元酸素濃度および炭素濃度の比として表わされる炭材比との関係が下記式を満足するように配合したものを用いる移動型炉床炉による還元鉄の製造方法が記載されている。下記式において、rは鉄含有酸化物の半径、炭材比は(混合原料中の炭素濃度)/(混合原料中の被還元酸素濃度)/12×16を意味している。
0.5<(炭材比)<1.6
log(1/r)<(−2.0×(炭材比)+2.5)
この製造方法によれば、混合原料中の炭素濃度と被還元酸素濃度とで表わされる炭材比、および混合原料中の鉄含有酸化物の平均粒径が一定の関係をもつようにすることにより、還元鉄の炭素濃度が4mass%以上の高炭素含有還元鉄を確実にかつ容易に製造できるようになる。その結果、電気炉等での還元鉄の溶解が容易になり、製品コストの低下に寄与できる。
特開2011−74438号公報
ところで工業的に上記ITmk3法により粒状金属鉄を製造するにあたっては、粒状金属鉄の歩留まりが良好であることも求められる。しかし上記特許文献1では、粒状金属鉄の歩留まりについては特段考慮されていなかった。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、得られた塊成物を加熱炉に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造するにあたり、粒状金属鉄の歩留まりを高められる技術を確立することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る粒状金属鉄の製造方法とは、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、得られた塊成物を加熱炉に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造する方法であり、前記塊成物の平均粒径R(mm)、該塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)、該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)、および該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量[CVM](質量%)が、下記式(1)を満足する点に要旨を有している。
0.5×酸素量/(固定炭素量+0.3×[CVM])≧6.2 ・・・(1)
前記塊成物の平均粒径Rは、10〜30mmであることが好ましい。
本発明によれば、加熱炉に装入する塊成物について、該塊成物の平均粒径R(mm)、該塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)、該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)、および該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量[CVM](質量%)の関係を適切に制御しているため、塊成物に含まれる酸化鉄を還元剤により過不足なく還元できる。その結果、粒状金属鉄の歩留まりを向上できる。
図1は、R0.5×酸素量/(固定炭素量+0.3×[CVM])の値(Z値)と、粒状金属鉄の歩留まりとの関係を示すグラフである。
本発明者らは、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む塊成物を加熱炉で加熱、還元、溶融して粒状金属鉄を製造するにあたり、粒状金属鉄の歩留まりを向上させるために、鋭意検討を重ねてきた。その結果、酸化鉄の還元に影響を及ぼす塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量と該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量に加えて、従来では注目されていなかった該塊成物の平均粒径Rおよび該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量[CVM]を適切に制御すれば、粒状金属鉄の歩留まりを向上できることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明を完成するに至った経緯を交えて本発明の特徴部分について説明する。
塊成物に含まれる酸化鉄含有物由来の酸素量に対して、炭素質還元剤の量が過剰になると、酸化鉄の還元で消費されずに残留した炭素によって、還元鉄の凝集阻害が起こり、粒状金属鉄の歩留まりが低下する。一方、塊成物に含まれる酸化鉄含有物由来の酸素量に対して、炭素質還元剤の量が不足すると、酸化鉄を還元できないため、還元鉄を生成させることができず、粒状金属鉄の歩留まりが低下する。
上記炭素質還元剤として工業的に用いられるものとしては石炭が主流である。この石炭は、加熱しても残留する固定炭素(Fixed Carbon。以下、Fix.Cと略記することがある。)と、加熱によって揮発する揮発分(Volatile Matter。以下、VMと略記することがある。)を含んでいる。これらのうち固定炭素は、そのほぼ100%が酸化鉄の還元に寄与する。一方、揮発分の全てが酸化鉄の還元に寄与するわけではないが、揮発分は炭素を含んでいるため、この炭素の一部が酸化鉄の還元に寄与することが分かった。そして本発明者らが検討を重ねたところ、塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素のうち、30%が酸化鉄の還元に寄与することが判明した。即ち、試験時に発生したCOガスとCO2ガス比、および酸化物中に含有される酸素量から計算される還元により消費された炭素量は、塊成物中の固体炭素含有量よりも多いことが判明した。この超過分は、炭素質還元剤由来の揮発分に含まれる炭素のうち30%に相当することが分かった。なお、本明細書では、塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量を[CVM](質量%)と表記する。
そこで塊成物に含まれる酸化鉄含有物質中の酸化鉄を還元するには、塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)と、該炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量[CVM](質量%)の30%との合計量に対する、塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)との比[酸素量/(固定炭素量+0.3×[CVM])]を制御する必要がある。この比は、還元する酸素量に対してどれだけの炭素量が存在するかを示す指標となる。この比が小さいと、還元に充分な炭素が存在することを示しており、この比が大きいと、炭素が不足気味になることを示している。
上記塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量は、次の手順で算出できる。
まず、塊成物中の全鉄(T.Fe)量およびFeO量を化学分析によって求める。
次に、T.Feのうち、FeOとして存在していないFeは、Fe23やFe34などの酸化鉄として存在するが、全てFe23として存在していると仮定し、下記式(i)により、塊成物に含まれるFe23の質量(WFe2O3)を算出する。
下記式(i)において、Wxは成分Xの質量(質量%)、Mxは成分Xの分子量を夫々示している。具体的には、WT.FeはT.Feの質量(質量%)、WFeOはFeOの質量(質量%)、WFe2O3はFe23の質量(質量%)を意味している。また、MFeはFeの分子量で55.85、MFeOはFeOの分子量で71.85、MFe2O3はFe23の分子量で159.7である。
Figure 2016003341
次に、下記式(ii)に基づいて、Fe23に含まれる酸素量と、FeOに含まれる酸素量の合計として、塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)を算出する。下記式(ii)中、MOは酸素の分子量で16である。
Figure 2016003341
ところで、塊成物に含まれる炭素は、上述したように、酸化鉄を還元する際に消費されるが、炭素の消費量は、塊成物の大きさに影響を受けることが分かった。即ち、酸化鉄を還元すると、塊成物の内部でCO2ガスが生成する。生成したCO2ガスは、塊成物の内部を通って外部へ放出される。このとき塊成物が大きく、ガス流路が長くなると、CO2ガスは、塊成物の外部へ放出される流路の途中に存在する炭素と反応し、還元され、COガスを生成する。そのため、塊成物が大きくなるほど、塊成物内部で生成したCO2ガスによる炭素の消費が多くなる。
そこで本発明では、塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量と、該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量および揮発分中の炭素量[CVM]に基づいて算出される比[酸素量/(固定炭素量+0.3×[CVM])]に、塊成物の大きさによる影響分を乗ずる必要があること、この塊成物の大きさによる影響度合いは、塊成物の平均粒径をRとしたとき、R0.5であることが判明し、下記式(1)を導いた。R0.5は、本発明者らが種々検討を繰り返して導いた値である。
0.5×酸素量/(固定炭素量+0.3×[CVM])≧6.2 ・・・(1)
上記式(1)の左辺の値[R0.5×酸素量/(固定炭素量+0.3×[CVM])]をZ値としたとき、このZ値は6.2以上とする。Z値が6.2を下回ると、炭素量が不足気味となるため、還元鉄を充分生成させることができず、粒状金属鉄の歩留まりが低下する。従って本発明では、Z値は6.2以上とし、好ましくは6.5以上、より好ましくは6.8以上とする。Z値の上限は特に限定されないが、Z値が大き過ぎると、粒状金属鉄の生成に時間がかかり過ぎるため、生産性が低下する。従ってZ値は8.0以下とすることが好ましい。Z値は、より好ましくは7.8以下、更に好ましくは7.6以下である。
上記塊成物の粒径を測定する方法は特に限定されないが、例えば、塊成物がペレットのように球形の場合は、ノギスを用い、互いに直交するx軸,y軸,z軸の三方向の直径を測定し、これらを平均することによって塊成物の平均粒径Rを測定すればよい。塊成物が、球形ではなく、ブリケットのような形状の場合は、該塊成物の体積を求め、球相当直径を算出し、これを塊成物の平均粒径Rとすればよい。
上記塊成物の平均粒径R(mm)は特に限定されないが、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下である。
次に、粒状金属鉄の製造方法について説明する。
本発明に係る粒状金属鉄の製造方法は、酸化鉄含有物質および炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、得られた塊成物を加熱炉に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造するものである。そして、上述したように、上記塊成物の平均粒径R(mm)、該塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)、該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)、および該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量[CVM](質量%)が、上記式(1)を満足するところに特徴がある。以下、酸化鉄含有物質および炭素質還元剤を含む混合物を塊成化する工程(以下、塊成化工程ということがある)と、得られた塊成物を加熱炉に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造する工程(以下、加熱工程ということがある)について説明する。
[塊成化工程]
塊成化工程では、酸化鉄含有物質および炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、塊成物を製造する。
上記酸化鉄含有物質としては、具体的には、鉄鉱石、砂鉄、製鉄ダスト、非鉄精錬残渣、製鉄廃棄物などの酸化鉄含有物質を用いることができる。
上記炭素質還元剤としては、例えば、石炭やコークスなどを用いることができる。
上記炭素質還元剤は、上記酸化鉄含有物質に含まれる酸化鉄を還元できる量の炭素を含有していればよい。具体的には、上記酸化鉄含有物質に含まれる酸化鉄を還元できる炭素量に対して、0〜5質量%の余剰または0〜5質量%の不足の範囲で含有していればよい。即ち、上記酸化鉄含有物質に含まれる酸化鉄を還元できる炭素量に対して、±5質量%の範囲で含有していればよい。
上記酸化鉄含有物質および炭素質還元剤を含む上記混合物には、更に融点調整剤またはバインダーを配合してもよい。
上記融点調整剤とは、酸化鉄含有物質中の脈石や、炭素質還元剤中の灰分の融点を下げる作用を有する物質を意味する。即ち、上記混合物に融点調整剤を配合することによって、塊成物に含まれる酸化鉄以外の成分(特に、脈石)の融点に影響を与え、例えばその融点を降下させることができる。それにより脈石は、溶融が促進され、溶融スラグを形成する。このとき酸化鉄の一部は溶融スラグに溶解し、溶融スラグ中で還元されて金属鉄となる。溶融スラグ中で生成した金属鉄は、固体のまま還元された金属鉄と接触することにより、固体の還元鉄として凝集する。
上記融点調整剤としては、例えば、CaO供給物質、MgO供給物質、Al23供給物質、SiO2供給物質などを用いることができる。上記CaO供給物質としては、例えば、CaO(生石灰)、Ca(OH)2(消石灰)、CaCO3(石灰石)、およびCaMg(CO32(ドロマイト)よりなる群から選ばれる少なくとも一つを用いることができる。上記MgO供給物質としては、例えば、MgO粉末、天然鉱石や海水などから抽出されるMg含有物質、MgCO3よりなる群から選ばれる少なくとも一つを配合してもよい。上記Al23供給物質としては、例えば、Al23粉末、ボーキサイト、ベーマイト、ギブサイト、ダイアスポアなどを配合できる。上記SiO2供給物質としては、例えば、SiO2粉末や珪砂などを用いることができる。
上記バインダーとしては、例えば、コーンスターチや小麦粉等の澱粉などの多糖類を用いることができる。
上記酸化鉄含有物質、炭素質還元剤、および融点調整剤は、混合する前に予め粉砕しておくことが好ましい。例えば、上記酸化鉄含有物質は平均粒径が10〜60μm、上記炭素質還元剤は平均粒径が10〜1000μm、上記融点調整剤は平均粒径が5〜90μmとなるように粉砕することが推奨される。
上記酸化鉄含有物質等を粉砕する手段は特に限定されず、公知の手段を採用できる。例えば、振動ミル、ロールクラッシャ、ボールミルなどを用いればよい。
上記原料の混合には、回転容器形や固定容器形の混合機を用いることができる。上記混合機の型式は、回転容器形としては、例えば、回転円筒形、二重円錐形、V形などが挙げられるが、特に限定されない。固定容器形としては、例えば、混合槽内に鋤などの回転羽を設けたものがあるが、特に限定されない。
上記混合物を塊成化する塊成機としては、例えば、皿形造粒機(ディスク形造粒機)、円筒形造粒機(ドラム形造粒機)、双ロール型ブリケット成型機、タイヤ型造粒機などを用いることができる。
上記塊成物の形状は特に限定されず、成型はペレット、ブリケット、押し出しのどれで実施しても構わない。
[加熱工程]
加熱工程では、上記塊成化工程で得られた塊成物を加熱炉に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造する。
上記塊成物の加熱は、例えば、電気炉や移動炉床式加熱炉で行えばよい。
上記移動炉床式加熱炉とは、炉床がベルトコンベアのように炉内を移動する加熱炉であり、例えば、回転炉床炉やトンネル炉が挙げられる。上記回転炉床炉は、炉床の始点と終点が同じ位置になるように、炉床の外観形状が、円形またはドーナツ状に設計されており、炉床上に装入された塊成物に含まれる酸化鉄は、炉内を一周する間に加熱還元されて還元鉄を生成する。従って、回転炉床炉には、回転方向の最上流側に塊成物を炉内に装入する装入手段が設けられ、回転方向の最下流側に排出手段が設けられる。なお、回転構造であるため、実際には装入手段の直上流側になる。上記トンネル炉とは、炉床が直線方向に炉内を移動する加熱炉である。
上記塊成物は、1300〜1500℃で加熱して還元および溶融することが好ましい。上記加熱温度が1300℃を下回ると、金属鉄やスラグが溶融しにくく、高い生産性が得られない。一方、上記加熱温度が1500℃を超えると、排ガス温度が高くなるため、排ガス処理設備が大掛かりなものとなって設備コストが増大する。
上記電気炉や移動炉床式加熱炉に上記塊成物を装入するに先立ち、炉床保護のために炭素質、耐火セラミックス等の床敷材を敷くことが望ましい。
上記床敷材としては、上記炭素質還元剤として例示したものの他、耐火性粒子を用いることができる。
上記床敷材の粒径は、塊成物やその溶融物が潜り込まないように、例えば、3mm以下であることが好ましい。上記粒径の下限は、バーナーの燃焼ガスによって吹き飛ばされないように、例えば、0.5mm以上であることが好ましい。
[その他]
上記加熱工程で得られた還元鉄は、副生したスラグや、必要に応じて敷かれた床敷材等と共に炉内から排出し、篩や磁選機等を用いて選別して還元鉄を回収すればよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、得られた塊成物を加熱炉に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造した。このとき、塊成物の平均粒径、塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量、塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量、および塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量[CVM]の関係が、粒状金属鉄の歩留まりに及ぼす影響を調べた。
上記酸化鉄含有物質としては、下記表1に示す成分組成の鉄鉱石A、Bを用いた。下記表1において、T.Feは全鉄を意味している。また、鉄鉱石に含まれるFeO中の酸素量、鉄鉱石に含まれるFe23中の酸素量を算出した結果を下記表1に併せて示す。また、鉄鉱石に含まれるFeOおよびFe23をFeOxと総称したとき、鉄鉱石に含まれるFeOx中の酸素量を下記表1に併せて示す。
上記炭素質還元剤としては、下記表2に示す成分組成の炭材a〜fを用いた。下記表2において、T.Cは全炭素を意味している。
上記鉄鉱石と上記炭材に、融点調整剤およびバインダーを混合し、更に適量の水を配合した混合物を、タイヤ型造粒機を用いて生ペレットに造粒した。得られた生ペレットを乾燥機に装入し、付着水を除去し、球状の乾燥ペレットを製造した。得られた乾燥ペレットの成分組成を下記表3に示す。下記表3に示した「その他」とは、融点調整剤およびバインダーである。融点調整剤としては、石灰石、ドロマイト、および蛍石を用いた。バインダーとしては、小麦粉を用いた。
また、得られた乾燥ペレット10個の粒径をノギスで測定し、平均粒径R(mm)を算出した。算出結果を下記表3に示す。また、下記表3には、Rの0.5乗の値(即ち、√Rの値)を算出し、その結果も示す。
次に、得られた乾燥ペレットに含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量、乾燥ペレットに含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量、乾燥ペレットに含まれる炭素質還元剤由来のT.C、および乾燥ペレットに含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量[CVM]を算出し、その結果を下記表3に示す。
ここで、下記表3に示したNo.1の乾燥ペレットを取り上げ、算出手順を具体的に説明する。
(酸素量)
下記表3に示されるように、乾燥ペレットNo.1に含まれる鉄鉱石量は71.34%であり、該鉄鉱石に含まれるFeOx中の酸素量は下記表1から27.67%であるから、乾燥ペレットNo.1の質量を100%としたときの該乾燥ペレットNo.1に含まれる鉄鉱石由来の酸素量は19.74%となる。
71.34×(27.67/100)=19.74
(固定炭素量)
下記表3に示されるように、乾燥ペレットNo.1に含まれる炭材量は16.27%であり、該炭材に含まれる固定炭素量は下記表2から78.00%であるから、乾燥ペレットNo.1の質量を100%としたときの該乾燥ペレットNo.1に含まれる炭材由来の固定炭素量は12.69%となる。
16.27×(78.00/100)=12.69
(T.C)
下記表3に示されるように、乾燥ペレットNo.1に含まれる炭材量は16.27%であり、該炭材に含まれるT.Cは下記表2から86.87%であるから、乾燥ペレットNo.1の質量を100%としたときの該乾燥ペレットNo.1に含まれる炭材由来のT.Cは14.13%となる。
16.27×(86.87/100)=14.13
(炭素量[CVM])
下記表3に示されるように、乾燥ペレットNo.1の質量を100%としたときの該乾燥ペレットNo.1に含まれる炭材由来のT.Cは14.13%で、乾燥ペレットNo.1の質量を100%としたときの該乾燥ペレットNo.1に含まれる炭材由来の固定炭素量は12.69%であるから、乾燥ペレットNo.1に含まれる炭材由来の揮発分中の炭素量[CVM]は1.44%となる。
14.13−12.69=1.44
このようにして算出した乾燥ペレットに含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)、および該乾燥ペレットに含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量[CVM](質量%)に基づいて、「固定炭素量+0.3×[CVM]」の値を算出する。その結果、13.12%となる。
12.69+0.3×1.44=13.12
また、乾燥ペレットに含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)を、上記「固定炭素量+0.3×[CVM]」の値で除すと、1.50%となる。
19.74/13.12=1.50
よって、下記表3に示した「酸素量/固定炭素量+0.3×[CVM]」の値に、「R0.5」の値を掛けると、上記式(1)の左辺の値(Z値)を算出でき、その値は、6.56となる。
Z値=R0.5×酸素量/(固定炭素量+0.3×[CVM])=6.56
次に、得られた乾燥ペレットを加熱炉の炉床上に装入して1450℃で加熱し、乾燥ペレット中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造した。上記加熱炉としては、電気炉を用いた。なお、乾燥ペレットの装入に先立ち、上記電気炉の炉床上には、炉床保護のため、最大粒径が3.35mm以下の無煙炭を敷いた。上記乾燥ペレットを上記電気炉の炉床上で加熱する際は、該電気炉内における雰囲気ガスの組成は、体積比で、窒素ガス/二酸化炭素ガスが60/40となるよう調整した。
還元終了後、粒状金属鉄を含む試料を電気炉から排出した。得られた試料を、磁選し、磁着物を、目開きが3.35mmの篩を用いて分級し、篩上に残った残留物を製品として回収した。製品として回収した残留物は、主に粒状金属鉄であり、その質量を測定した。粒状金属鉄の質量(g)と、乾燥ペレットに含まれるT.Feの質量(g)に基づいて、粒状金属鉄の歩留まり(%)を算出し、結果を下記表3に示す。なお、粒状金属鉄にはFeの他にC等が含まれるため、粒状金属鉄の歩留まりは100%を超えることもある。
歩留まり(%)=(粒状金属鉄の質量/乾燥ペレットに含まれるT.Feの質量)×100
なお、上記塊成物を加熱、還元、溶融すると、粒状金属鉄およびスラグの混合物が得られる。この混合物は、冷却後、篩分けおよび磁選により粒状金属鉄とスラグとに分離される。しかし粒度が小さい粒状金属鉄は、磁選してもスラグと良好に分離できないため、純度の高い粒状金属鉄を得ることは困難である。そこで本発明では、粒状金属鉄の歩留まりを算出するにあたり、質量に基準を設け、一定以上の大きさの粒状金属鉄のみをカウントすることとした。具体的には、目開きが3.35mmの篩を用いて上記混合物を分級したときに、篩上に残った残留物を製品とし、この製品の質量を粒状金属鉄の歩留まり計算に用いた。
図1に、Z値と、粒状金属鉄の歩留まりとの関係を示す。
下記表3および図1から次のように考察できる。No.1、2、5〜10、12〜14、16、17は、本発明で規定する要件を満足する発明例であり、Z値を6.2以上に制御できているため、粒状金属鉄の歩留まりは95%以上を達成できている。一方、No.3、4、11、15は、本発明で規定するいずれかの要件を満足しない比較例であり、Z値が6.2未満であるため、粒状金属鉄の歩留まりは95%未満となった。
Figure 2016003341
Figure 2016003341
Figure 2016003341

Claims (2)

  1. 酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、得られた塊成物を加熱炉に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造する方法であって、
    前記塊成物の平均粒径R(mm)、
    該塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)、
    該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)、および
    該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の揮発分中の炭素量[CVM](質量%)が、下記式(1)を満足することを特徴とする粒状金属鉄の製造方法。
    0.5×酸素量/(固定炭素量+0.3×[CVM])≧6.2 ・・・(1)
  2. 前記塊成物の平均粒径Rは、10〜30mmである請求項1に記載の製造方法。
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