本発明によるインクフィルム構築物は、図面および添付の説明を参照すれば、良好に理解され得る。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、以下の説明に記述される、あるいは図面に図示される構築物の詳細ならびに構成成分の配合へのその適用に本発明は限定されない、と理解されるべきである。本発明は、種々の方法で他の実施形態を実施し、または実行され得るようにし得る。さらにまた、本明細書中で用いられる語句および用語は、説明のためであって、本発明を限定するものではない、と理解されるべきである。
印刷工程およびシステムの説明
本発明は、特に以下の印刷工程により、あるいはこのような工程を履行する任意の印刷システムを用いて得られるインクフィルム構築物に関する。本発明によるインクフィルムの調製に適した印刷工程は、インク画像を形成するために中間転写成員上にインクの小滴を向けることを包含し、インクは、有機高分子樹脂および着色料(例えば、顔料または染料)を水性担体中に含み、そして転写成員は疎水性外表面を有し、インク画像中の各インク小滴は中間転写成員上に衝突して拡がって、インクフィルム(例えば、衝突時に存在する小滴の平坦化および水平拡張の主要部分を保存する、あるいは小滴中のインクの質量によって面積を覆う薄いフィルム)を形成する。インク画像から水性担体を蒸発させることにより、インク画像が中間転写成員により運搬されている間、インクは乾燥されて、樹脂および着色料の残留フィルムをあとに残す。次に、残留フィルムは、基板に転写される(例えば、基板に対して中間転写成員を加圧して、残留フィルムをその上に押しつけることによる)。各小滴の外皮中の分子と中間転写成員の表面上の分子との間の分子間吸引力が、中間転写成員の表面を湿潤することにより、各小滴を広げることなく、水性担体の表面張力の作用下で数珠形になる各小滴により生成されるインクフィルムの傾向を相殺するよう、インクの、ならびに中間転写成員の化学組成は選択される。
中間転写成員(放出層とも呼ばれる)の表面に衝突時に、このような層の疎水性にもかかわらず、インク小滴の平坦化により引き起こされる各水性インク小滴の薄いパンケーキ形を保存するかまたは凍結するよう、印刷工程は試みる。この目的を達成するために、この新規の工程は、インク中の分子と、転写成員の外表面中の分子との間の静電的相互作用に依っており、分子は、それらのそれぞれの媒質中で荷電されるか、あるいは相互に荷電可能であり、インクおよび放出層間の相互作用時に逆に荷電されるようになる。本発明によるインク構築物の調製に適した印刷工程ならびに関連システムに関するさらなる詳細は、同時係属中のPCT出願PCT/IB2013/051716(Agent参照番号 LIP 5/001 PCT);PCT/IB2013/051717(Agent参照番号 LIP 5/003 PCT);およびPCT/IB2013/051718(Agent参照番号 LIP 5/006 PCT)に開示されている。
例証のために、慣用的疎水性表面、例えばシリコーン被覆表面は、容易に電子を産生し、負に荷電されるとみなされる。したがって、付加的ステップの非存在下では、正味分子間力を必要とされることは、中間転写成員にインクをはじかせ、小滴は小球形に数珠形を形成する傾向がある。
本発明によるインクフィルム構築物の調製に適した新規の印刷工程では、中間転写成員の表面の化学組成は、正電荷を提供するよう改質される。これは、例えば、1つ以上のブレンステッド塩基性官能基を有する分子、特に窒素含有分子を中間転写成員の表面に含む(例えば放出層中に包埋される)ことにより達成され得る。適切な正荷電または荷電可能基としては、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンが挙げられる。このような基は、高分子主鎖と共有結合され得るし、例えば中間転写成員の外表面は、アミノシリコーンを含み得る。本発明によるインクフィルム構築物の調製に適した、それらの放出層中にブレンステッド塩基性官能基を含む中間転写成員に関するさらなる詳細は、同時係属中PCT出願PCT/IB2013/051751(Agent参照番号 LIP 10/005 PCT)に開示されている。
放出層の分子のこのような正荷電可能官能基は、インクの分子のブレンステッド酸性官能基と相互作用し得る。適切な負荷電または荷電可能基としては、例えば、カルボン酸基(‐COOH)、アクリル酸基(‐CH2=CH‐COOH)、メタクリル酸基(‐CH2=C(CH3)‐COOH)を有するカルボキシル化酸、ならびにスルホン酸基(‐SO3H)を有するようなスルホネートが挙げられる。このような基は、高分子主鎖と共有結合され得るし、好ましくは水溶性または水分散性であり得る。適切なインク分子は、例えばアクリル系樹脂、例えばカルボン酸官能基を有するアクリル系ポリマーおよびアクリル‐スチレン系コポリマーを含む。本発明によるインクフィルム構築物を達成するために用いられ得るインク組成物に関するさらなる詳細は、同時係属中PCT出願PCT/IB2013/051755(Agent参照番号 LIP 11/001 PCT)に開示されている。
中間転写成員の負荷電疎水性表面によるインク小滴をはじくことを無効にするための代替方法は、その極性を陽性に逆転するために中間転写成員の表面に状態調節または前処理溶液を適用することである。転写成員のこのような処理は、それ自体は放出層の表面に吸着されるが、しかしその反対側に、インク中の負荷電分子が相互作用し得る正味正電荷を提示する正電荷の非常に薄い層を適用することとみなされ得る。例えばこのような処理が容易である中間転写成員は、それらの放出層中に、シアノール‐、シリル‐またはシラン‐修飾または末端化ポリジアルキル‐シロキサンシリコーンを含み得るし、適切なITMに関するさらなる詳細は、同時係属中PCT出願PCT/IB2013/051743(Agent参照番号 LIP 10/002 PCT)に開示されている。
このような状態調節溶液の調製に適した化学物質は、必要な場合、相対的に高い電荷密度を有し、複数の官能基中にアミン窒素を含有するポリマーであり得るが、これは同一物である必要はなく、組合せられ得る(例えば、第一、第二、第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩)。数百〜数千の分子量を有する高分子は適切な状態調節剤であり得るが、しかし、10,000g/モルまたはそれ以上の高分子量を有するポリマーが好ましい、と考えられる。適切な状態調節剤としては、グアーヒドロキシルプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピル‐トリモニウムクロリド、線状または分枝鎖ポリエチレンイミン、修飾化ポリエチレンイミン、ビニルピロリドンジメチルアミノプロピルメタクリルアミドコポリマー、ビニルカプロラクタムジメチルアミノプロピルメタクリルアミドヒドロキシエチルメタクリレート、第四級化ビニルピロリドンジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリ(ジアリルジメチル‐アンモニウムクロリド)、ポリ(4‐ビニルピリジン)およびポリアリルアミンが挙げられる。本発明によるインクフィルム構築物の調製に適した選択的状態調節溶液に関するさらなる詳細は、同時係属中PCT出願PCT/IB2013/000757(Agent参照番号 LIP 12/001 PCT)に開示されている。
同一出願人の前記出願の開示(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)は、最新開示と重複し得るが、しかしそこに例示される中間転写成員、選択的状態調節溶液およびインク組成物を用いて、本発明はこのような工程に限定されない、ということが明らかにされるべきである。これらの出願の開示の関連部分は、読者の便利のために本明細書中に含まれる。
インクの説明
本発明のインクフィルム構築物は、例えば上記の印刷システムおよび工程により得られる場合、特定の化学的および物理的特性を有するインクまたはインクジェットインクを必要とし得る、ということを本発明人等は見出した。これらの物理的特性は、1つ以上の熱‐流動学特性を含み得る。
本発明の一実施形態によれば、以下のものを含有する例示的インクジェットインク処方物(実施例1)が提供される:
顔料:ジェット・マゼンタDMQ(BASF) 2%
Jondcryl HPD 296(35.5%水溶液)(BASF) 30%
グリセロール(Aldrich) 20%
BYK345(BYK)ポリエーテル修飾化ポリジメチルシロキサン 0.5%
水(蒸留) 全体を100%にする量
名目上は、樹脂溶液は、アクリルスチレンコポリマー(またはコ(エチルアクリレートメタクリル酸)溶液)であり得るし、あるいは含み得る。平均分子量は、20,000g/モル未満であり得る。
調製手順:
顔料(10%)、蒸留水(70%)および樹脂、本発明の場合はJondcryl HPD 296(20%)を含有する顔料濃縮物を、上記構成成分から作製した。顔料、水および樹脂を混合し、手製粉砕機を用いて粉砕した。代替的には、粉砕は、当業者により適していると思われる多数の市販の粉砕機のいずれか1つを用いて実施され得る。粒子サイズ測定(Malvern,Nanosizer)により、粉砕の進行を制御した。平均粒子サイズ(d50)が約70ナノメートル(nm)に到達したら、粉砕を停止した。次に構成成分の残りを顔料濃縮物に付加して、上記例示的インクジェットインク処方物を生成した。混合後、インクを0.5マイクロメートル(μm)フィルターに通して濾過した。
溶液の粘度は、25℃で約9 cPであった。25℃での表面張力は、約25mN/mであった。
種々のその他の粉砕手順および粉砕装置は、当業者には明らかである。種々の市販のナノ顔料が、本発明のインク処方物中に用いられ得る。これらは、顔料調製物、例えばHostajet マゼンタ E5B‐PTおよびHostajet ブラック O‐PT(ともにClariant)、ならびに顔料要求分散後工程、例えばCromophtal Jet マゼンタ DMQおよびIrgalite ブルー GLO(ともにBASF)を包含する。
種々の既知の着色料および着色料処方物が本発明のインクまたはインクジェットインク処方物中に用いられ得る、と当業者は容易に理解し得る。一実施形態では、このような顔料および顔料処方物は、インクジェット着色料およびインクジェット着色料処方物を含むかまたは本質的にそれらからなり得る。
代替的には、または付加的には、着色料は染料であり得る。本発明のインク処方物中に用いるのに適した染料の例としては、以下のものが挙げられる:Duasyn イエロー3GF‐SF液、Duasyn 酸 イエロー XX‐SF、Duasyn レッド 3B‐SF液、Duasyn シアン FRL‐SF液(すべてClariant製造);Basovit イエロー 133、Fastusol イエロー 30L、Basacid レッド 495、Basacid レッド 510液、Basacid ブルー 762液、Basacid ブラック X34液、Basacid ブラック X38液、Basacid ブラック X40液(すべてBASF製造)。
以下の実施例は、本発明の実施形態に従っていくつかのインク組成物を例証する。同時係属中PCT出願PCT/IB2013/051716(Agent参照番号 LIP 5/001 PCT)に記載された方法においてこのようなインク組成物を用いる印刷試験は、種々の紙およびプラスチック基板への良好な転写を示す。
実施例2
以下のものを含有するインクジェットインク処方物を調製した:
調製手順:
顔料(14%)、水(79%)およびJondcryl HPD 296(7%)を含有する顔料濃縮物を混合し、粉砕した。粒子サイズ測定(Malvern,Nanosizer)に基づいて、粉砕の進行を制御した。平均粒子サイズ(d50)が約70nmに到達したら、粉砕を停止した。次に、残りの材料を顔料濃縮物に付加して、混合した。混合後、インクを0.5μmフィルターに通して濾過した。
25℃で、このようにして得られたインクの粘度は約13 cP、表面張力は約27mN/mおよびpH9〜10であった。
実施例3
以下のものを含有するインクジェットインク処方物を調製した:
調製手順:
顔料(10%)、水(69%)、ネオクリルBT‐26(20%)およびものエタノールアミン(1%)を混合し、実施例2に記載したように、平均粒子サイズ(d50)が約70nmに到達するまで粉砕した。次に、残りの材料を顔料濃縮物に付加して、混合した。混合後、インクを0.5μmフィルターに通して濾過した。
25℃で、このようにして得られたインクの粘度は約8 cP、表面張力は約24mN/mおよびpH9〜10であった。
実施例4
以下のものを含有するインクジェットインク処方物を調製した:
調製手順:
顔料(12.3%)、Jondcryl 683(3.3%)(KOH(7.9%)の30%溶液で完全に中和)および水(全量を100とする量)を混合し、実施例2に記載したように、平均粒子サイズ(d50)が70nmに到達するまで粉砕した。次に、残りの材料を顔料濃縮物に付加して、混合した。混合後、インクを0.5μmフィルターに通して濾過した。
25℃で、このようにして得られたインクの粘度は約7cP、表面張力は約24mN/mおよびpH7〜8であった。
実施例5
以下のものを含有するインクジェットインク処方物を調製した:
調製手順:
顔料(14.6%)、Jondcryl 671(3.9%)(KOH(9.4%)の30%溶液で完全に中和)および水(全量を100とする量)を混合し、実施例2に記載したように、平均粒子サイズ(d50)が70nmに到達するまで粉砕した。次に、残りの材料を顔料濃縮物に付加して、混合した。混合後、インクを0.5μmフィルターに通して濾過した。
25℃で、このようにして得られたインクの粘度は約10cP、表面張力は約26mN/mおよびpH9〜10であった。
前記実施例に関して、種々の他の粉砕手順が当業者には明らかである。
実施例6
以下のものを含有するインクジェットインク処方物を調製した:
上記処方物は、約9.6%のインク個体を含有し、そのうちの25%(総処方物の2.4%)が顔料で、約75%(40%*18%=総処方物の7.2%)(重量で)が樹脂である。
実施例7
以下のものを含有するインクジェットインク処方物を調製した:
Duasynレッド3B‐SF液(Clariant) 4%
Jondcryl296HPD(35.5%水溶液) 20%
ジエチレングリコール 20%
N‐メチルピロリドン 10%
BYK333 0.5%
水(蒸留) 全体を100%にする量
実施例8
以下のものを含有するインクジェットインク処方物を調製した:
調製手順:
顔料(14%)、水(72%)およびDisperbyk 198(14%)を混合し、粉砕した。粉砕の進行を、粒子サイズ測定値(Malvern,Nanosizer)に基づいて制御した。平均粒子サイズ(d50)が70nmに到達したら、粉砕を停止した。次に、残りの材料を顔料濃縮物に付加して、混合した。混合後、インクを0.5μmフィルターに通して濾過した。
25℃で、このようにして得られたインクの粘度は約5.5cP、表面張力は約25mN/mおよびpH6.5であった。
実施例9
以下のものを含有するインクジェットインク処方物を調製した:
調製手順:
顔料(14.6%)、Jondcryl 671(3.9%)(KOH(9.4%)の30%溶液で完全に中和)および水(全量を100とする量)を混合し、実施例2に記載したように、平均粒子サイズ(d50)が70nmに到達するまで粉砕した。次に、残りの材料を顔料濃縮物に付加して、混合した。混合後、インクを0.5μmフィルターに通して濾過した。
25℃で、このようにして得られたインクの粘度は約9cP、表面張力は約26mN/mおよびpH9〜10であった。
インクフィルム構築物
ここで、図面を参照すると、図1Aは、従来技術による、繊維性(紙)基板の上面近くに配置される複数のインクジェットインク滴の拡大画像である。この従来技術のインクおよび基板構築物では、インクジェットインク滴は神の表面を通り抜けた。このような構築物は、非塗工紙を含めて、種々の型の紙の典型であり、この場合、紙は、紙繊維のマトリクス内にインク担体溶媒および顔料を吸い込み得る。
図1Bは、本発明の一実施形態による、複数の例示的インクフィルム構築物、例えばインクジェットインクフィルム構築物の拡大画像である。図1Aで提供された従来技術インクおよび基板構築物と対比して、本発明のインクジェットインクフィルム構築物は、一般的に繊維性基板の上に、そして接着して配置される輪郭のはっきりした個々のインクフィルムにより特性化され得る。図1Bで示された単一滴インクジェットフィルムは、優れた光学密度を示す。これらの特質は、従来技術のインクおよび基板構築物の特質(不十分に形成されるインクジェットインク滴または低光学密度を有する染み)と比較した場合に特に顕著である。
レーザー顕微鏡を用いて、紙のシートの上面下に配置された従来技術のインク染みの比較高倍率画像を得た。図2A、2Bおよび2Cは、それぞれ、本発明の実施形態により生成された、石版オフセットインク染み(図2A)、HP‐インディゴインク染みの液体現像電子写真(図2B)、およびインクジェット単一滴フィルム(図2C)の三次元拡大画像である。
本明細書中で提供される本発明のインク処方物を用いて、本明細書中に記載される本発明のシステムおよび装置を用いて、インクジェット単一滴インクフィルム(または個々のインクドット)を生成した。
従来技術の上記参照インク染みは、市販されている。Roller Tiger(Toka Shikiso Chemical Industry)によるBestACK工程を用いて、Ryobi 755プレスにより、オフセット試料を生成した。HPインディゴインクを用いて、HPインディゴ7500デジタルプレスにより、LEP試料を生成した。基板に関して、非被覆基板はMondy 170gsm紙であり、被覆基板はAPP 170gsm紙であった。
オリンパスLEXT 3D測定レーザー顕微鏡モデルOLS400を用いて、レーザー顕微鏡画像処理を実施した。各基板上のフィルム(ドット、滴または染み)高、ならびに分析される各フィルムまたは染みの表面粗さを、半自動式の顕微鏡系により算定した。
オフセットインク染みの周囲およびLEPインク染みの周囲は、複数の突起または細流、および複数の入江または陥凹を有する。これらのインク形態は、不規則および/または不連続であり得る。それに対比して、本発明により生成されるインクジェットインクドット(図2C)は、明白に丸みのある、凸状の形状を有する。インクフィルムの周囲は、相対的に平滑で、規則的で連続し、輪郭が明確である。
さらに特定的には、基板表面に対する本発明のインクフィルムの突起(すなわち、上面図からの突起)は、丸みのある、凸状の突起である傾向を有し、すなわち、突起内の点のすべての対に関して、それらを繋ぐ直線背群面と上のすべての点も突起内にある。このような凸状組は、図2Dに示されている。これに明確に対比して、種々の従来技術の突起における細流および入江は、それらの突起を非凸状組として限定し、すなわち、特定の突起内の少なくとも1つの直線セグメントに関して、その直線セグメントの一部分は、図2Eに図示されるように、突起の外側に配置される。
インク画像は、非常に大きな複数の個々のまたは単独のインクフィルムを含有し得る、ということは強調されなければならない。例えば,5mm×5mmのインク画像は、600dpiでは、10,000より多いこのような単一インクフィルムを含有し得る。したがって、本発明のインクフィルム構築物を統計学的に限定することは適切であり得る;少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%、さらに典型的には、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%の単一インクドットまたはその突起は凸状組であり得る。これらのインクドットは、好ましくは無作為に選択される。
インク画像は、特にその境界を高倍率で見る場合、くっきりした境界を有し得ない、ということもさらに強調されなければならない。したがって、凸状の定義を緩め、それにより、3,000nmまで、1,500nmまで、1,000nmまで、700nmまで、500nmまで、300nmまでまたは200nmまで、の半径長Lr(図2Fに示されているような)を有する非凸状(細流または入江)が無視され、排除され、あるいは「平滑化」されて、それによりインクフィルムまたはインクフィルム突起が凸状組であるとみなされることが適切であり得る。半径長Lrは、特定の細流または入江を介して、インクフィルム画像の中心点Cから半径線Lを描くことにより測定される。半径長Lrは、細流または入江の実エッジと、その細流または入江を欠く、そしてインクフィルム画像の外郭と整合するインク画像の平滑化突起Psとの間の距離である。
相対的に、凸状組の定義を緩め、それにより、フィルム/滴/染み直径または平均直径の15%まで、10%まで、さらに典型的には5%まで、3%まで、2%までまたは1%までの半径長を有する非凸状(細流または入江)は、上記と同様に無視され、排除され、または「平滑化」されて、それによりインクフィルムまたはインクフィルム突起が凸状組であるとみなされることは適切であり得る。
図3A、3Bおよび3Cは、図2A〜2Cで提供されるオフセットインク染み構築物、LEPインク染み構築物および本発明のインクジェットインクフィルム構築物に関する表面粗さおよび表面高測定を示す。3つの試料の計器測定高(H)は、オフセットインク滴に関しては762nm、LEPインク滴に関しては1104nmであった。これとは明白に対比して、本発明のインクジェットインクフィルムの計器測定高(Hfilm)は355nmである。
付加的インクフィルム検体を用いて、上記の比較試験を数回反復することは、従来技術のインクフィルムに関するこれらの結果を確証することであるように見える。LEP検体は、典型的には、900〜1150nmの範囲内の高さまたは厚みを有したが、一方、石版オフセット検体は、典型的には、750〜1200nmの範囲内の高さまたは厚みを有した。
ジェットインク滴から生成されるインクドットまたはフィルムに関して、インクドットの最大平均基板上厚は、以下の方程式から算定され得る、ということが判明した:
(式中、T
AVG(MAX)は、最大平均基板上厚であり;
V
DROPは、射出滴の体積、あるいは射出滴の公称または特徴的体積(例えば、インクジェットヘッド・メーカーまたは供給元により提供される公称体積)であり;
A
FILMは、インクドットの測定または算定面積であり;そして
R
VOLは、元のインクの体積対そのインクから生成された乾燥インク残渣の体積の無次元比である)。
例として、プラスチック印刷基板上に配置されるインクドットは、1075平方マイクロメートルの面積を有する。射出滴の公称サイズは、10.0±0.3ピコリットルである。RVORを実験的に決定した:20.0mlのインクを含有する容器を、乾燥残渣が得られるまで、130℃で加熱した。残渣は、1.8mlの体積を有した。方程式(I)に当てはめると、TAVG(MAX)=10ピコリットル/[1075μm2*(20.0/1.8)]=837ナノメートル。
一般的に丸いインクドットに関しては、インクドットの面積は、インクドット直径から算定され得る。さらに、無次元体積比RVOLは、一般的に、広範な種々のインクジェットインクに関して約10である、ということが判明した。
基板中に浸透するインクに関しては、実平均厚はTAVG(MAX)より多少低いが、一方、この算定は、平均厚に関する上限として確実に役立ち得る。さらに、種々のプラスチック基板の場合、そして種々の上質被覆基板の場合、最大平均基板上厚は、平均基板上厚と実質的に等価であり得る。種々の汎用被覆基板の場合、最大平均基板上厚は、平均基板上厚に近く、しばしば100ナノメートル、200ナノメートルまたは300ナノメートル以内であり得る。
ジェットインク滴から生成されるインクドットまたはフィルムに関して、インクドットの最大平均基板上厚は、以下の方程式から算定され得る、ということが判明した:
(式中、ρ
INKは、インクの比重であり;
F
nRESIDUEは、乾燥インク残渣の重量をもとのインクの重量で割った値であり;そして
ρ
FILMは、インクの比重である)。
典型的には、ρ
INK対ρ
FILMの比は約1であり、したがって、方程式(II)は、以下のように簡約され得る:
広範な種々の水性インクジェットインクに関しては、FnRESIDUEは、インクジェットインク中の固体の重量分画とほぼ等しい。
上記のオリンパスLEXT 3D測定レーザー顕微鏡を用いて、基板表面上の高さを、種々のインクドット構築物に関して測定した。
原子力顕微鏡(AFM)は、基板上の高さを測定し、インクドット厚を決定するための、別の非常に精確な測定技法である。AFM測定は、市販の装置、例えばPark Scientific Instruments・モデルAutoprobe CP、走査プローブ顕微鏡(プロスキャン・バージョン1.3(またはそれ以後のバージョン)ソフトウェアを装備)を用いて実施され得る。AFMの使用は、例えば、Renmei Xu, et al., ”The Effect of Ink Jet Papers Roughness on Print Gloss and Ink Film Thickness”[Department of Paper Engineering, Chemical Engineering, and Imaging Center for Ink and Printability, Western Michigan University(Kalamazoo, MI)]により、文献中で徹底的に記載されている。
本発明のインクフィルム構築物に関して、基板上の乾燥インクフィルムの厚みは、インクジェットインク処方物を改質することにより調整され得る、ということを本発明人等は見出した。より低いドット厚を得るためには、このような改質は、以下のうちの少なくとも1つを伴い得る:
・樹脂対顔料比を低減すること;
・樹脂対顔料比低減を伴っても、適切なフィルム転写を可能にする単数または複数の樹脂を選択すること;
・より微細な顔料粒子を利用すること;
・顔料の絶対量を低減すること。
より厚いドットを得るためには、逆の改質のうちの1つ(例えば、樹脂対顔料比を増大すること)がなされ得る。
処方物におけるこのような変化は、工程操作条件における種々の改質を必要とするか、あるいはそれらを有益にし得る。樹脂対顔料比が低いほど、相対的に高い転写温度を必要とし得る、ということを、本発明人等は見出した。
所定のインクジェットインク処方物に関しては、転写温度が上がると、インクフィルム厚は低減し得る。圧部での基板への残留フィルムの転写中、圧胴方向への加圧ローラーまたは胴の圧力増大も、インクフィルム構築物を低減し得る。さらにまた、インクフィルム厚は、基板と中間転写成員(互換的に、本明細書中では「画像転写成員」とも呼ばれ、ともに略語はITMである)との間の接触の時間を増大することにより低減され得る。
すべてのこの種のことにもかかわらず、本発明により生成されるインクフィルムに関する実際の最小の特徴的(すなわち中央値)圧または平均厚は、約100nmであり得る。さらに典型的には、このようなインクフィルムは、少なくとも125nm、少なくとも150nm、少なくとも175nm、少なくとも200nm、少なくとも250nm、少なくとも300nm、少なくとも350nm、少なくとも400nm、少なくとも450nmまたは少なくとも500nmの厚みを有し得る。
上記のフィルム厚指針を用いて、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも1,000nm、少なくとも1,200nmまたは少なくとも1,500nmの特徴的厚みまたは平均厚を有する本発明のフィルム構築物を、本発明人等は獲得し得る。単一滴フィルム(または個々のインクドット)の特徴的厚みまたは平均厚は、せいぜい約2,000nm、せいぜい1,800nm、せいぜい1,500nm、せいぜい1,200nm、せいぜい1,000nmまたはせいぜい900nmであり得る。さらに典型的には、単一滴フィルムの特徴的厚みまたは平均厚は、せいぜい800nm、せいぜい700nm、せいぜい650nm、せいぜい600nm、せいぜい500nm、せいぜい450nmせいぜい400nmまたはせいぜい350nmであり得る。
本明細書中で上記下フィルム厚指針を用いて、インクフィルムの特徴的厚みまたは平均厚が100nm、125nmまたは150nmから1,800nm、1,500nm、1,200nm、1,000nm、800nm、700nm、600nm、550nm、500nm、450nm、400nmまたは350nmまでの範囲内であり得る、本発明のフィルム構築物を、本発明人等は獲得できる。さらに典型的には、インクフィルムの特徴的厚みまたは平均厚は、175nm、200nm、225nmまたは250nmから800nm、700nm、650nm、600nm、550nm、500nm、450nmまたは400nmまでの範囲内であり得る。本発明のシステム、工程およびインク処方物を用いて、適切な光学密度および光学的均一性が得られる。
アスペクト比
本発明のインクフィルム構築物中の個々のインクドットの直径は、特に、ITM上へのインクの適用(例えば射出)のための適切なインク送達システムにより、そして特定のインクヘッドの要件にインク処方物特性(例えば、表面張力)を調整することにより、調整され得る、ということを本発明人等は見出した。
このインクフィルム直径 Ddot、または基板表面の平均ドット直径 Daverageは、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも15μmまたは少なくとも20μm、さらに典型的には、少なくとも30μm、少なくとも40μm、少なくとも50μm、少なくとも60μmまたは少なくとも75μmであり得る。DdotまたはDaverageは、せいぜい300マイクロメートル、せいぜい250μmまたはせいぜい200μm、さらに典型的には、せいぜい175μm、せいぜい150μm、せいぜい120μmまたはせいぜい100μmであり得る。
一般的に、DdotまたはDaverageは、10〜300マイクロメートル、10〜250μm、15〜250μm、15〜200μm、15〜150μm、15〜120μmまたは15〜100μmの範囲であり得る。さらに典型的には、一般に用いられるインク処方物、および特定のインクヘッドに関しては、DdotまたはDaverageは、20〜120μm、25〜120μm、30〜120μm、40〜120μm、40〜100μmまたは40〜80μmの範囲であり得る。
各単一滴インクフィルムまたは個々のインクドットは、次式により定義される無次元アスペクト比により特性化される:
(式中、R
aspectはアスペクト比であり;D
dotは、ドットの直径、特徴的直径、平均直径または最長直径であり;そしてH
dotは、ドットの厚み、特徴的厚みまたは平均厚、あるいは基板に関するドットの上面の高さである)。
アスペクト比は、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25または少なくとも30、さらに典型的には、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも75であり得る。多くの場合、アスペクト比は、少なくとも95、少なくとも110または少なくとも120であり得る。アスペクト比は、典型的には200より下であるかまたは175より下である。
浸透
本発明のインクフィルム構築物では、インクドットは、本質的には、印刷基板の上面に積層され得る。本明細書中に記載されるように、ドットの形態は、転写操作の前に決定され得るし、大いに決定され、そしてドットは、基板に一体型ユニットとして転写される。この一体型ユニットは、実質的には溶媒を欠き、したがって、ブランケット転写成員から基板繊維への、または基板繊維間のいかなる種類の材料の浸透も認められ得ない。連続ドット(有機高分子樹脂および着色料を非常に含有し得る)は、繊維性印刷基板の上面に接着するかまたはその上に薄層状の層を形成する。
このような連続ドットは、典型的には、種々の射出技法、例えばドロップオンデマンドおよび連続射出技法により、産生される。
本発明とともに用いられる有機高分子樹脂は、典型的には、水溶性または水分散性である。
図3Dおよび3Eは、それぞれ、本発明のインクフィルム構築物300および従来技術のインクジェットインク染みまたはフィルム構築物370の模式的横断面図を提供する。ここで、図3Eを参照すると、インクジェットインクフィルム構築物370は、繊維性印刷基板350の特定の連続区域中の複数の基板繊維320に接着するかまたは積層される単一滴インク染み305を包含する。繊維性印刷基板350は、例として、非塗工紙、例えばボンド紙、コピー紙またはオフセット紙であり得る。繊維性印刷基板350は、種々の汎用被覆繊維性印刷基板のうちの1つ、例えば塗工オフセット紙でもあり得る。
インク染み305の一部分は、繊維320間の基板350の上面の下に配置される。インクの種々の構成成分、例えば着色料の一部分は、インク担体溶媒とともに上面に浸透して、繊維320間に配置される容積380を少なくとも部分的に満たす。図に示したように、着色料の一部分は、繊維320の下層の繊維320の下に配置される体積390に拡散または移動し得る。いくつかの場合(示されていない)、着色料のいくつかは、繊維中に浸透し得る。
これと鮮明に対比して、本発明のインクフィルム構築物300(図3D)は、繊維性印刷基板350の特定の連続区域における複数の基板繊維320の上面に配置され、固定して接着する(または積層される)一体型連続インクドット、例えば個々のインクドット310を包含する。接着または積層は、主にまたは実施して気に、物理的結合であり得る。接着または積層は、化学結合特質をほとんど、あるいは実質的には全く有し得ないし、さらに具体的にはイオン結合特質を全く有さない。
インクドット310は、有機高分子樹脂中に分散される少なくとも1つの着色料を含有する。繊維性基板350の特定の連続区域内では、印刷基板350の上面と垂直の、少なくとも1つの方向(矢印360により示されるような ‐ 数個の方向)が存在する。ドット区域のすべてを覆うこの上面に垂直な方向すべてに関して、インクドット310は、当該区域上全体に配置される。繊維320間の体積380、および繊維320の下層の体積390は、着色料、樹脂ならびにインクの任意のおよびすべての構成成分を欠いているか、または実質的に欠いている。
単一滴インクフィルムまたは個々のインクドット310の厚み(Hdot)は、せいぜい1,800nm、せいぜい1,500nm、せいぜい1,200nm、せいぜい1,000nmまたはせいぜい800nmであり、さらに典型的には、せいぜい650nm、せいぜい600nm、せいぜい550nm、せいぜい500nm、せいぜい450nmまたはせいぜい400nmであり得る。単一滴インクドット310の厚み(Hdot)は、少なくとも50nm、少なくとも100nmまたは少なくとも125nm、さらに典型的には、少なくとも150nm、少なくとも175nm、少なくとも200nmまたは少なくとも250nmであり得る。印刷基板中へのインクの浸透の程度は、種々の分析技法(その多くは、当業者に既知である)を用いて定量的に確定され得る。種々の商業的分析実験室は、浸透の程度のこのような定量的確定を実施し得る。
これらの分析技法は、種々の染色技法、例えば四酸化オスミウム染色の使用を包含する(Patrick Echlin, ”Handbook of Sample Preparation for Scanning Electron Microscopy and X−Ray Microanalysis” Springer Science + Business Media, LLC 2009, pp.140−143参照)。
染色技法の代替技法は、銅のような金属を含有するインクに特に適している。TOF‐SIMS V分光計[Ion‐ToF(Munster,Germany)]を用いて、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)を実施した。この装置は、有機および無機表面の最上層に関する元素および分子情報を提供し、さらにまた、ナノメートル規模での深さ分解能を有する深さプロファイリングおよび画像処理、サブミクロン横方向分解能、および1ppmのオーダーでの化学的感受性も提供する。
TOF‐SIMSの生データの濃度への翻訳は、試料中で、X線光電子分光法(XPS)により測定される炭素(C+)濃度に対して、得られたシグナルを正規化することにより、実施され得る。XPSデータを、Thermo VG Scientific Sigma Probe(England)を用いて得た。微小焦点(15〜400μm)モノクロX線源を用いることにより、化学結合情報を有する個体表面の小域化学分析を得た。試料を傾けた場合と、傾けない場合とで、角度分解情報を得る。これにより、良好な深さ分解能を有する深度プロファイリングが可能になる。
基線として、繊維性紙基板内の銅の原子濃度を、深度の一関数として測定した。銅の原子濃度は、表面では実質的にゼロであり、数マイクロメートルの深さに下降することが判明した。従来技術の2つのシアン色インクジェットインクフィルム構築物に関して、そして本発明のシアン色インクフィルム構築物に関して、この手順を反復した。
図3Fは、従来技術のインクドット内および繊維性紙基板内の(深度の関数としての)、第一シアン着色インクジェットインクフィルム構築物内の銅[Cu]の原子濃度をプロットするグラフを提供する。シアン含有インクフィルム構築物の上面近くで測定された初期[Cu]は、約0.8原子%であった。約100nmの深度内では、[Cu]は着実に約0.1原子%に低下した。約100nm〜1,000nmの深度範囲全体では、[Cu]は約0.1原子%から約ゼロに低下した。したがって、インクジェットインク含量が繊維性紙基板中に浸透し、おそらくは少なくとも700nm、少なくとも800nmまたは少なくとも900nmの浸透深度を得た、ということは明白である。
図3Gは、従来技術のインクドット構築物内(およその深度の関数としての)、第二シアン着色インクジェットインクフィルム構築物内の銅の原子濃度をプロットするグラフを提供する。上面近くで測定されたインクドット構築物内の銅[Cu]の初期原子濃度は、約0.02原子%であった。この濃度は、一般的に、約3,000nmの深さに亘って保持された。約3,000nm〜約6,000nmの深度範囲に亘って、[Cu]は、約0.01原子%に非常に段階的に低下した。この従来技術の構築物は、基板の表面にほとんどまたは全くインクフィルムを有さない、そして基板中への顔料の浸透は顕著である(少なくとも5〜6マイクロメートル)、と思われた。
図3Hは、本発明のインクドット内および繊維性紙基板内の(深度の関数としての)、シアン着色インクフィルム構築物内の銅の原子濃度をプロットするグラフを提供する。2つのグラフは、本発明のインクドット構築物に関して2つの異なる位置(「試料1」および「試料2」)でなされた測定を表す。上面近くで測定された銅[Cu]の初期原子濃度は、試料1および試料2に関して、それぞれ約0.2または0.4原子%であった。約75〜約100nmの深度に亘って、[Cu]はそれぞれの試料に関して約0.5または0.7原子%に着実に増大した。約100nm〜約175nmの深度では、[Cu]は明確に下がり始め、両試料に関して、200〜250nmの深度で実質的にゼロの銅濃度を得た。本発明の構築物は基板の表面に単独で配置され、そして基板中への顔料浸透は、浸透深度に関して、ならびに浸透の量または分画に関して、無視可能であるかまたは実質的に無視可能であった、と思われる。
理論に縛られることなく考えると、75〜100nmの深度に亘る[Cu]の初期上昇は、基板の微小外郭のためのインクドットの配向に、そしてインクドットそれ自体の表面粗さに起因し得る。同様に、200〜250nmの深度での実質的にゼロへの[Cu]の低下は、基板の微小外郭に起因し得る:基板内の、および一般的には基板の面または上面と平行な所定の横断面に関しては、インクドットのうちのいくつかが存在し得る(図3Dにおける破線参照)。これにもかかわらず、基板表面に垂直な方向に関して、存在するインクドットは、完全に基板の上に配置される。
表面粗さ
レーザー顕微鏡画像処理およびその他の技法を用いて、本発明のインクフィルム構築物中のインクドットの上面は、特に、それらの構築物の基板が高い紙(または基板)光沢を有する場合、低表面粗さにより特性化され得る、ということを本発明人等は観察した。
理論に縛られることなく考えると、本発明のインクフィルム構築物の相対的平坦性または平滑性は、ITMの表面における放出層の平滑性に、そして本発明のシステムおよび工程に大きく左右され得るが、この場合、出現するフィルム面はその表面層の面を実質的に補足し、そして発現するインクフィルム画像は、印刷基板上への転写によりその相補的断層写真法を実質的に保持するかまたは完全に保持し得る。
図4Aをここで参照すると、本発明に従って用いられるITMまたはブランケットの放出層の表面の画像である。表面は名目上は平坦であり得るが、しかし典型的には1〜5μmのオーダーの小さなへこみ(凹所)および突出部が観察され得る。これらの痕跡の多くは、鋭角の不規則な特徴を有する。図4Bで提供されるこのブランケットを用いて生成されるインクドット表面の画像は、図4Aに示されたものと事実上非常によく似ている断層写真的特徴を示す。ドット表面は、鋭角の不規則な特徴を有する大きな複数の痕跡を伴って小さい傷をつけられ、これは、ブランケット表面における不規則痕跡と非常によく似ている(そして同一サイズ内である)。
より平滑なブランケットを取り付けた;図4Cは、このブランケットの放出層の画像を提供する。図4Aの不規則なへこみは、目立って存在しない。高平滑面上に分散されるのは、高度に円形の表面傷で、おそらくは気泡により作られ、典型的には約1〜2μmの直径を有する。図4Dで提供されるこのブランケットを用いて生成されたインクドット表面の画像は、図4Cに示されたものと事実上非常によく似た断層撮影的特徴を示す。この画像は、実際上、弁別的へこみを有さないが、しかしブランケット面について示されたものとサイズおよび継代が非常によく似た多数の高円形性表面傷を有する。
ドット外周特性化
従来技術の種々のインクドットまたはフィルムの周囲は、複数の突起または細流、ならびに複数の入江または凹所を特徴的に有し得る。これらのインク形態は、不規則で、および/または不連続であり得る。これとは明確に対比して、本発明により生成されるインクジェットインクドットは、明らかに丸い、凸状の円形を有する。本発明のインクドットの周囲は、相対的に平滑で、規則的で、連続しており、輪郭がはっきりしている。インクドット真円性、凸状性およびエッジがぎざぎざしていることは、形状を評価または特性化するために用いられる構造パラメーター、あるいはその光学的表示である。
図1Aの従来技術インク形態と図1Bの本発明のインクドットの拡大画像を比較することにより、あるいは図2Aおよび2Bの従来技術インク形態と図2Cの方法のインクドットの拡大画像を比較することにより、本発明のインクドットの外観がこれらの従来技術のインク形態と明らかに異なる、ということが容易に観察され得る。ヒトの目で容易に観察されるものは、画像処理技法を用いて定量され得る。インク形態の種々の特性化は、画像獲得方法の説明の後に、本明細書中で以下に記載される。
獲得方法
(1)試験で比較されるべき既知の印刷技法の各々に関して、塗工紙上に、ならびに非塗工紙上に印刷される単一ドット、染みまたはフィルム画像を用いた。初期試験では、用いられる塗工紙はCondat Gloss(登録商標)135gmまたは類似物であった;用いられる非塗工紙は、Multi Fine Uncoated、130gsmまたは類似物であった。その後、広範な種々の基板、例えば多数の被覆および非被覆繊維性基板、ならびに種々のプラスチック印刷基板を用いた。
(2)本出願人の本発明の印刷技法に関しては、単一滴ドット画像を塗工紙上におよび非塗工紙上に印刷した。(1)で用いられた既知のインクドット構築物の基板と類似の特質を有する基板を選択するよう注意した。
(3)ドット画像の獲得を、OLS4000(オリンパス)顕微鏡を用いて実施した。必要な焦点、明るさ、コントラストを達成するための顕微鏡の調整方法を当業者は既知であり、したがって、画像の詳細は高度に可視的である。これらの画像詳細は、ドット外郭、ドット区域内の色変異、ならびに基板表面の繊維性構造を包含する。
(4)129マイクロメートル×129マイクロメートルの解像度を有するX100光学ズームレンズを用いて、画像を獲得した。この高解像度は、ドットの、ならびに基板表面の繊維性構造の微細詳細を得るには不可欠であり得る。
(5)1024×1024ピクセルの解像度を有する非圧縮フォーマット(Tiff)で画像を保存した。圧縮フォーマットは、画像データを失い得る。
(6)一般的に、単一ドットまたは染みを、各印刷技法に関して評価した。しかしながら、統計学的観点から、分析されている各型のハードコピー印刷に関して15ドット画像(少なくとも)を得ることが、そして画像処理のための10(少なくとも)の最も代表的なドット画像を手動選択することが、有益である。選択ドット画像は、ドット形状、外郭およびドット区域内の色変異に関して代表的なものであるべきである。印刷ドットサンプリングの別のアプローチ(「視野」と呼ばれる)は、本明細書中で以下に記載される。
ドット外郭コンピューター処理
ドット画像を、画像処理ソフトウェア(ImageXpert)にロードした。各画像を、レッド、グリーンおよびブルーチャネルの各々にロードした。最高視度判定基準に基づいて、プロセシングチャネルを選択した。例えば、シアンドットに関して、レッドチャネルが典型的には最良ドット特徴視度を生じ、したがって、画像処理ステップのために選択した;グリーンチャネルは典型的には、マゼンタドットに最も適していた。単一閾値に基づいて、ドットエッジ外郭を検出した(自動コンピューター処理)。21.5インチ・ディスプレイでの「フルスクリーンビュー」モードを用いて、この閾値を、各画像に関して手動で選択し、したがって、コンピューター処理エッジ外郭は、実および可視ドットエッジを最良に整合させる。単一画像‐チャネルを処理したため、閾値はグレー値であった(0〜255;グレー値は、非色彩値である)。
コンピューター処理周囲値を、画像処理ソフトウェア(例えば、ImageXpert)から得た。周囲値は、ドットまたは染みのエッジでの隣接連結ピクセル間の全距離の合計である。例えば、隣接ピクセルに関するXY座標は(x1,y1)および(x2,y2)であり、距離は√[(x2−x1)2+(y2−y1)2]であるが、一方、周囲はΣ{√[(xi+1−xi)2+(yi+1−yi)2]}と等しい。
本発明の種々の実施形態では、インクドットの周囲の長さを測定することが望ましい。周囲長を測定するための代替的方法を、ここで記載する。第一ステップとして、インクドットを含む画像を、周囲長を出力するアルゴリズムのための入力として用いる。画像のピクセル寸法MxNは、2要素アレイまたは順序対画像ピクセルサイズ(image_pixel_size)で保存され得る。画像ピクセルサイズ(image_pixel_size)の一例は、1280,760である ‐ この例では、M=1280およびN=760である。これは、水平軸における画像1280ピクセルおよび垂直軸における760ピクセルに対応する。その後、画像倍率非またはスケールを得て、可変画像拡大(image_magnification)で保存する。可変画像拡大(image_magnification)の一例は、500である。第一および第二画像間の周囲を比較する場合、2つの画像の変数画像ピクセルサイズ(image_pixel_size)および画像拡大(image_magnification)は等しい、ということが必須である。ここで、1つの正方形ピクセルの対応する長さ、すなわち、実世界長単位(例えば、ミクロン)またはピクセルでの辺長を算定することが可能である。この値は、可変ピクセルピッチ(pixel_pitch)で保存される。可変ピクセルピッチ(pixel_pitch)の一例は、0.05μmである。ここで、画像は、当業者に既知の方法により、グレースケールに変換される。提唱される一方法は、入力画像(典型的にはsRGB色空間における画像)をL*a*b色空間に変換することである。一旦画像がLab色空間にあると、変数aおよびbに関する値はゼロに変えられる。ここで、画像にエッジ検出オペレーターを適用し得る。好ましいオペレーターは、Cannyエッジ検出オペレーターである。しかしながら、当該技術分野で既知の任意のオペレーターが適用され得る。オペレーターは、一次導関数、例えばcannyオペレーターに限定されないが、しかしむしろ二次導関数に同様に開いている。さらに、オペレーター間で比較され得る結果を得るために、オペレーターの組合せが用いられ、その後、「望ましくない」エッジが除去され得る。エッジ検出オペレーターを適用する前に、平滑化オペレーター、例えばGaussian blurを適用することが好ましい。エッジ検出オペレーターを適用する場合に適用される閾値レベルは、エンドレスループを形成するエッジが、前記最小外周インクドット巻き込み円と最大外周インクドット取り囲み円との間の区域で得られているようなレベルである。ここで、エンドレスループエッジを実質的に1ピクセル幅にさせるために、細いオペレーターが実行される。エンドレスループエッジの一部でない任意のピクセルは、ゼロへのそのL*値変化を有するが、一方、エンドレスループエッジの一部である任意のピクセルは、100へのそのL*値変化を有する。エンドレスループエッジは、インクドットの周囲として定義される。ピクセルリンクは、ピクセルとの直線連結と定義される。周囲に沿った各ピクセルは、2つのピクセルリンク、すなわち第一ピクセルリンクおよび第二ピクセルリンクを組み入れる。これら2つのピクセルリンクは、単一ピクセル内のピクセルリンク経路を限定する。周囲長をコンピューター処理するこの方法では、各ピクセルは正方形ピクセルである。したがって、各ピクセルリンクは、ピクセルの中心から8つの考え得るノードのうちの1つに線を形成し得る。考え得るノードは、ピクセルの隅またはピクセルの2つの隣接隅間の中点である。ピクセルの隅でのノードは、node_1型を有し、2つの隅の間の中点での1つのノードはnode_2型を有する。このようなものとして、ピクセル内のピクセルリンク経路には6つの可能性が存在する。これらは、3つの群、すなわち群A、BおよびCに分類される。各軍は、それ自体の対応する係数、すなわち、係数A、係数Bおよび係数Cを有する。係数Aの値は1であり、係数Bの値はsqrt(2)であり、係数Cの値は(1+sqrt(2))/2である。群Aは、そのピクセルリンク経路がnode_2型のノードと一致するピクセルを含有する。群Bは、そのピクセルリンク経路がnode_1型のノードと一致するピクセルを含有する。群Cは、そのピクセルリンク経路がnode_1型およびnode_2型のノードと一致するピクセルを含有する。ここで、周囲のピクセル長を算定することが可能である。周囲のピクセル長は、それらの対応する係数をかけた周囲におけるピクセルのすべてを合計することにより、算定される。この値は、可変周囲ピクセル長(perimeter_pixel_length)で保存される。ここで、インクドット周囲の実長を算定することが可能である。これは、周囲ピクセル長(perimeter_pixel_length)×ピクセルピッチ(pixel_ptch)により実行される。
真円性
無次元真円因子(ER)は、次式により定義され得る:
(式中、Pは、測定または算定周囲長であり、Aは、インクフィルム、ドットまたは染み内の測定またはコンピューター処理面積である)。完全平滑および円形ドットに関しては、ERは1である。
丸みのある平滑な形状からの偏差は、式(ER−1)により表される。完全円形理想的インクドットに関しては、この式はゼロである。
真円性因子のR‐正方形は、各型の印刷技法に関して選択される10の最も代表的なドット画像の各々に関してコンピューター処理され、単一値に平均され得る。
繊維性基板(例えば、紙)が被覆されないインクフィルム構築物に関して、または繊維性基板がコーチング、例えば塗工オフセット紙における汎用コーチング(または例えば伝統的水ベースのインクジェットインクからの担体を紙繊維に到達させるコーチング)で被覆されるインクフィルム構築物に関しては、本発明のインクドットに関する丸い平滑円形形状からの偏差[(ER−1)、以後「偏差」]は、理想的でなく、0を超える。
被覆(図5A)および非被覆(図5B)基板上に配置される例示的インクフィルム画像を、以下の印刷機:HP デスクジェット9000(1);デジタルプレス:HPインディゴ7500(2);石版オフセット:リョービ755(3);およびゼロックスDC8000(4)に関して、そして本発明のデジタル印刷技法(5)に関して提供する。一般的に、本明細書中に上記で詳述した画像獲得方法に従って、これらのインクフィルム画像を得た。各々の元の画像の次に、対応する処理済み白黒画像が提供されるが、この場合、インクドット、フィルムまたは染みの画像プロセッサー・コンピューター処理外郭は強調され、そしてコンピューター処理外郭は明らかに元の画像の外郭と類似している。
すべての試験済み被覆繊維性(紙)基板に関して、典型的な個々の本発明のインクドットは、0.16〜0.27という円形平滑形状からの偏差(ER−1)を示した。これと明確に対比して、種々の従来技術の被覆印刷の真円からの偏差は、1.65〜7.13の範囲であった。
すべての試験済み非被覆繊維性(紙)基板に関して、典型的な個々の本発明のインクドットは、0.28〜0.89という偏差(ER−1)を示した。これらの基板の各々において、本発明のインクドットのいくつかは、せいぜい0.7、せいぜい0.6、せいぜい0.5、せいぜい0.4、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25またはせいぜい0.20の偏差(ER−1)を示した。
これと明確に対比して、種々の従来技術の非被覆印刷におけるインクフィルムの真円からの偏差は、2.93〜14.87の範囲であった。
種々の物理的および化学的特性を有する19の繊維性基板で、付加的試験を実施した。基板としては、被覆および非被覆基板、ならびに化学パルプおよび機械的基板が挙げられる。基板は、厚み、密度、粗さ(例えば、ベントセン数)または平滑性(光沢)等における差によって特性化される。
いくつかの基板の場合、本発明のインクドット構築物の真円からの偏差を、図5Cで提供される棒グラフにおいて、市販のインクジェット印刷機(メーカーにより提供される匹敵するインクカートリッジ使用)により生成される画像と比較する。
この付加的試験において、本発明の試験的半自動デジタル印刷機で本発明のインクフィルム構築物を生成したが、この場合、ITMから印刷基板へのインクドットの転写は手動で実施され、その結果として、前記の市販の原型の本発明の完全自動デジタル印刷機より多少低く、より可変的であり得る印刷圧を伴う、ということは強調されなければならない。
例えば、基板番号6、Condat Gloss135は、図5Aに示された本発明のインクドットに関して上記で用いられた同一基板である。しかしながら、典型的インクドットにより達成される真円からの偏差は0.362で、これは、本発明のデジタル印刷機の市販の原型により印刷される本発明のインクドットのすべての偏差(0.16〜0.27)より大きい偏差を表す。しかしながら、試験的半自動デジタル印刷機で生成される本発明のインクドットの一部分(低くはあるが)は、低い、あるいは市販の原型デジタル印刷機で達成される最低の典型的偏差(0.16)より低い偏差を得た。
被覆および非被覆繊維性(紙)基板を一緒に考察すると、本発明のインクドットの真円からの偏差はゼロより大きく、少なくとも0.01、少なくとも0.02または少なくとも0.03であり得る。表1で提供された19の試験済み繊維性基板の各々に関して、本発明のインクドットのうちの少なくともいくつかは、せいぜい0.30、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.15またはせいぜい0.12という(非被覆および被覆繊維性基板の両方における)真円からの偏差を示した。
本発明のインクドットは、被覆(または汎用被覆)繊維性基板と接着する場合、典型的には、せいぜい0.20、せいぜい0.18、せいぜい0.16、せいぜい0.14、せいぜい0.12またはせいぜい0.10の偏差を示した。表1に提供された被覆基板の各々に関して、本発明のインクドットのうちの少なくともいくつかは、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.15、せいぜい0.12、せいぜい0.10、せいぜい0.09、せいぜい0.08、せいぜい0.07またはせいぜい0.06の真円からの偏差を示した。
上記のように、インク画像は非常に大きな複数の個々のインクドットまたは単一滴インクフィルムを含有し得るため、任意の非被覆または被覆(または汎用被覆)繊維性基板上に配置される、そして無作為に選択される少なくとも20%、または少なくとも30%、いくつかの場合には、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%の本発明のインクドット(または本発明の単一滴インクドット)が、少なくとも0.01または少なくとも0.02である、そしてせいぜい0.8、せいぜい0.65、せいぜい0.5、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.2、せいぜい0.15、せいぜい0.12またはせいぜい0.10である真円からの偏差を示し得る本発明のインクフィルム構築物を統計学的に限定することは有意義であり得る。
単一インクドットまたは個々の単一滴インクドットに関しても同様に、任意の被覆(または汎用被覆)繊維性基板上に配置され、無作為に選択される本発明のインクドット(または本発明の単一滴インクドット)の少なくとも20%または少なくとも30%、さらに典型的には少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%が、少なくとも0.01または少なくとも0.02である、そしてせいぜい0.8、せいぜい0.65、せいぜい0.5、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.2、せいぜい0.15、せいぜい0.12またはせいぜい0.10、せいぜい0.08、せいぜい0.07またはせいぜい0.06であり得る真円からの偏差を示し得る。
真円からの偏差に関する付加的特性化を、本明細書中で下記に提示する。
凸状性
本明細書中に上記したように、従来技術のインクドットまたはフィルムは、特徴的に、複数の突起または細流を、そして複数の入江または凹所を有し得る。これらのインクフィルムは、不規則および/または不連続であり得る。これと明確に対比して、本発明により生成されるインクジェットインクフィルムは、明白に丸い、凸状の円形形状を特徴的に有する。ドット凸状性またはそれからの偏差は、形状またはその光学的表示を評価するかまたは特性化するために用いられ得る構造パラメーターである。
凸状性測定
ドット画像を、画像処理ソフトウェア(ImageXpert)にロードした。各画像を、レッド、グリーンおよびブルーチャネルの各々にロードした。最高視度判定基準に基づいて、プロセシングチャネルを選択した。例えば、シアンドットに関して、レッドチャネルが典型的には最良ドット特徴視度を生じ、したがって、画像処理ステップのために選択した;グリーンチャネルは典型的には、マゼンタドットに最も適していた。単一閾値に基づいて、ドットエッジ外郭を検出した(自動コンピューター処理)。21.5インチ・ディスプレイでの「フルスクリーンビュー」モードを用いて、この閾値を、各画像に関して手動で選択し、したがって、コンピューター処理エッジ外郭は、実および可視ドットエッジを最良に整合させる。単一画像‐チャネルを処理したため、閾値はグレー値であった(0〜255;グレー値は、非色彩値である)。
MATLABスクリプトを作成して、ドット外郭を境界する最小凸形状の面積とドットの実面積との間の比をコンピューター処理した。各インクドット画像に関して、ImageXpertにより作成されたドットエッジ外郭の点の(X,Y)組を、MATLABにロードした。
ノイズに対する測定の感度を低減するために、ドットエッジをサビツキー・ゴーレイフィルター(画像処理低域通過フィルター)に通して、エッジ外郭をわずかに平滑にしたが、しかしそのぎざぎざ特質を容易に感知できるほど改質しなかった。5ピクセルのウィンドウ枠サイズは、一般的に適切であることが判明した。
その後、最小区域凸形状を生成して、平滑エッジ外郭を境界した。次いで、凸形状面積(CSA)と実(算定)ドットまたはフィルム面積(AA)との間の凸状比を、以下のようにコンピューター処理した:
この凸状比からの偏差、または「非凸状性」は、1−CXまたはDC
dotにより表される。
被覆(図5A)および非被覆(図5B)基板上に配置される上記の例示的インクドット画像に関して、凸形状面積(CSA)は、実ドット面積(AA)周囲に示され、そして凸状性比はパーセンテージ形態で提供される。
被覆基板上に配置される図5Aのインクフィルム画像において、種々の従来技術の印刷画像の凸度は、87.91%〜94.97%(分数形態で〜0.879〜0.950)の範囲であり、0.050〜0.121の凸状からの偏差に対応する。これに明確に対比いて、本発明のインクドットは、99.48%(〜0.995)の凸度を示し、約0.005の凸度からの偏差に対応する。この偏差は、樹種の従来技術により示される偏差の約1/10〜1/25である。絶対項では、偏差は、種々の従来技術により示される偏差より少なくとも0.04少ない。
本発明のドット画像と種々の従来技術のものとの間の差は、非被覆基板に関してより顕著であり得る。非被覆基板上に配置される図5Bのインクフィルム画像では、種々の従来技術の印刷画像の凸度は、65.58%〜90.19%(分数形態で〜0.656〜0.902)の範囲で、0.344〜0.985という凸状からの偏差に対応した。これと明確に対比して、本発明のインクドットは、98.45%(〜0.985)の凸度を示し、約0.015という凸状からの偏差に対応した。この偏差は、種々の従来技術により示される偏差の少なくとも1/6〜1/20である。絶対項では、偏差は、種々の従来技術によりしめされる偏差より少なくとも0.08低い。
本明細書中に上記された別の試験を実施し、本発明のインクフィルム構築物を19の異なる繊維性基板上で生成した。表1において、典型的本発明のドットの非凸状性が提供される。インクフィルム構築物中のインクドットの非凸状性は、図5Dで提供される棒グラフにグラフで示されている。
真円性試験からの偏差におけると同様に、本発明の印刷ドットは、被覆または非被覆の任意の所定の基板に関して、従来技術画像について優れた凸状性を示す。
19の試験済み繊維性基板すべてに関して、典型的な本発明のインクドットは、0.004〜0.021という非凸度を示した。19の試験済み繊維性基板の各々に関しては、本発明のインクドットのうちの少なくともいくつかは、せいぜい0.018、せいぜい0.016、せいぜい0.015、せいぜい0.014またはせいぜい0.013の非凸度を示した。
試験済み汎用被覆繊維性基板すべてに関して、典型的な本発明のインクドットは、0.004〜0.015という非凸度を示した。これらの被覆繊維性基板の各々に関しては、本発明のインクドットのうちの少なくともいくつかは、せいぜい0.014、せいぜい0.012、せいぜい0.010、せいぜい0.009、せいぜい0.008またはせいぜい0.007の非凸度を示した。
非被覆基板の各々に関しては、本発明のインクドットのうちの少なくともいくつかは、せいぜい0.03、せいぜい0.025、せいぜい0.022、せいぜい0.020、せいぜい0.018、せいぜい0.016、せいぜい0.015、せいぜい0.014またはせいぜい0.013の非凸度を示した。
上記のように、インク画像は非常に大きな複数の個々のドットまたは単一滴インクフィルム(少なくとも20、少なくとも100または少なくとも1,000)を含有し得るため、任意の非被覆または被覆(または汎用被覆)繊維性基板上に配置される、そして無作為に選択される少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%、いくつかの場合には、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%の本発明のインクドット(または本発明の単一滴インクドット)が、せいぜい0.04、せいぜい0.035、せいぜい0.03、せいぜい0.025、せいぜい0.020、せいぜい0.017、せいぜい0.014、せいぜい0.012、せいぜい0.010、せいぜい0.009、せいぜい0.008またはせいぜい0.007の非凸度を示し得る本発明のインクフィルム構築物を統計学的に限定することは有意義であり得る。
本発明のインクドット(または本発明の単一滴インクドット)の少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%、いくつかの場合には、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%が、少なくとも0.001、少なくとも0.002または少なくとも0.0025の非凸度を示し得る。
単一インクドットまたは個々の単一滴インクドットに関しても同様に、任意の非被覆または被覆(または汎用被覆)繊維性基板上に配置される、そして無作為に選択される少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%、さらに典型的には、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%の本発明のインクドット(または本発明の単一滴インクドット)が、0.001〜0.002から0.05まで、0.001〜0.002から0.04まで、0.001〜0.002から0.035まで、0.001〜0.002から0.035まで、0.001〜0.002から0.030まで、0.001〜0.002から0.025まで、0.001〜0.002から0.020まで、0.001〜0.002から0.015まで、0.001〜0.002から0.012までまたは0.001〜0.010の範囲内の非凸度を示し得る。
任意の被覆または「汎用被覆」繊維性印刷基板に関しては、これらの同一ドットは、0.001〜0.002から0.020まで、0.001〜0.002から0.015まで、0.001〜0.002から0.012まで、0.001〜0.002から0.010まで、0.001〜0.008、0.001〜0.007、0.001〜0.006、0.001〜0.005または0.001〜0.004の範囲内の低非凸度を示し得る。
任意の非被覆繊維性印刷基板に関しては、これらの同一ドットは、0.001〜0.002から0.05まで、0.001〜0.002から0.04まで、0.001〜0.002から0.035まで、0.001〜0.002から0.030まで、0.001〜0.002から0.025まで、0.001〜0.002から0.020まで、0.001〜0.002から0.015まで、0.001〜0.002から0.012まで、または0.001〜0.010の範囲内の非凸度を示し得る。
インクドット凸度に関する付加的特性化は、本明細書中に以下で提供される。
参照インク
本発明のインクドット構築物中のインクドットは、基板の特定の局所地勢学的特徴とは大いに関係なく、そして印刷基板の型(例えば、汎用被覆または非被覆印刷基板)とはある程度関係なく、一貫して良好な形状特性を示し得る。しかしながら、本発明のインクドット構築物中のインクドットの形状特性は、図5A(被覆繊維性基板)の最下部枠対図5B(非被覆繊維性基板)の最下部枠により立証されるように、印刷基板の型と完全に無関係であるというわけではない。種々の既知の印刷技法における、そしてとくに直接水性インクジェット技法におけるインクドットの質は、印刷基板の型に伴ってより実質的に変わり得る。
参照インクジェットインクは、その参照印刷方法とともに、印刷基板に対するそれらの特性を正規化することにより、基板基部に対する基板上のインクドット構築物の種々の光学的特性を構造的に明示するために用いられ得る。
参照インクは、15%BasacidブラックX34液(BASF)、60%プロピレングリコールおよび25%蒸留水を含有した。染料を水およびプロピレングリコールの混合物に付加した。5分間撹拌後、インクを0.2マイクロメートルフィルターに通した。参照インク組成物は単純であり、その構成成分は一般名商品であるか、または少なくとも市販されている。BasacidブラックX34液(BASF)が入手可能でない場合、類似のブラックインクジェット着色料がそれに置換され得る。いずれにしても、参照インクの供給は、Landa Corporation,POB2418,Rehovot 7612301,Israelから得られる。
富士フィルムDimatix Materials Printer、DMP‐2800(10pLプリントヘッド、DMC‐11610を装備)を用いて、参照インクを印刷した。印刷パラメーターを、以下のように設定した:
インク温度: 25℃
基板温度: 25℃
放電開始電圧: 25V
メニスカス・セットポイント: 2.0(水のインチ数)
プリントヘッドから基板までの距離:1mm
印刷装置は、市販されている。入手可能でない場合、機能的に等価の(または実質的に機能的等価の)印刷機が用いられ得る。代替的には、このような印刷装置は、Landa Corporation,POB2418,Rehovot 7612301,Israelの好意により入手可能であり得る。
参照インクジェットインクを調製し、本明細書中に上記したような種々の印刷基板上に印刷した。印刷ドットを、真円性および凸状性の特性化のために画像処理に付した。
図5E‐1は、本発明のいくつかの実施形態により生成されるインクドット、対上記の参照インク処方物および印刷方法を用いて生成されるインクドットに関する真円性からの偏差の比較棒グラフを提供する。種々の物理的および化学的特性を有する10繊維性基板を用いて、比較試験を実行した;これらは、被覆および非被覆基板の両方を包含した。基板は、同定され、表2において部分的に特性化されるが、これはさらに、10繊維性基板の各々に関する比較試験の真円からの偏差結果を提供する。
(汎用)被覆および非被覆されたすべての繊維性基板に関して、本発明のドット構築物が真円からのより低い偏差(ER‐1またはDR
dot)を示すことは明白である。非被覆基板(Hadar Top)に関して得られたDR
dotの最高値0.19は、依然として、被覆「シルク」基板(Sappi Magno Satin)に関して得られた参照インクドットの最低真円偏差値(RDR)1.16の1/5未満である。
基板当たりを基礎にして、DRdotおよびRDR間の差はより顕著でさえある。DRdot/RDRの比(係数「K1」としても言及される)は、約0.02〜約0.07の範囲であり、基板当たりを基礎にして、14:1〜50:1の因数に対応する。
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、係数K1は、被覆(汎用被覆)および非被覆基板の両方に関して、せいぜい0.25、せいぜい0.22、せいぜい0.20、せいぜい0.17、せいぜい0.15、せいぜい0.12、せいぜい0.10、せいぜい0.09またはせいぜい0.08、いくつかの場合には、せいぜい0.070、せいぜい0.065、せいぜい0.060、せいぜい0.055、せいぜい0.050、せいぜい0.045またはせいぜい0.04であり得る。
係数K1は、少なくとも0.010、少なくとも0.015、少なくとも0.018または少なくとも0.020であり得る。いくつかの場合、係数K1は、少なくとも0.03、少なくとも0.04、少なくとも0.05、少なくとも0.06、少なくとも0.07、少なくとも0.075、少なくとも0.08、少なくとも0.09、少なくとも0.10であり得る。
被覆基板に関しては、係数K1は、せいぜい0.070、せいぜい0.065、せいぜい0.060またはせいぜい0.055、いくつかの場合には、せいぜい0.050、せいぜい0.045、せいぜい0.040、せいぜい0.035、せいぜい0.030、せいぜい0.025またはせいぜい0.022であり得る。
図5E‐2は、10繊維性基板の各々に関する、図5E‐1のインクドット構築物のインクドット凸状性の比較棒グラフを提供する。表3は、10の繊維性基板の各々に関する比較試験の非凸状性結果を提供する。
(汎用)被覆および非被覆されたすべての繊維性基板に関して、本発明のドット構築物がより低い非凸度(1‐CXまたはDCdot)を示すことは明白である。非被覆基板(Hadar Top)に関して得られたDCdotの最高値0.010は、依然として、被覆光沢基板(Arjowiggins Gloss)に関して得られた参照インクドットの最低真円偏差値(RDR)0.026の2/5未満である。
基板当たりを基礎にして、DCdotおよびRDC間の差はより顕著でさえある。DCdot/RDCの比(係数「K」としても言及される)は、約0.04〜約0.17の範囲であり、基板当たりを基礎にして、6:1〜25:1の因数に対応する。
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、係数Kは、被覆(汎用被覆)および非被覆基板の両方に関して、せいぜい0.35、せいぜい0.32、せいぜい0.30、せいぜい0.27、せいぜい0.25、せいぜい0.22、せいぜい0.20、せいぜい0.19またはせいぜい0.18であり得る。係数Kは、少なくとも0.010、少なくとも0.02、少なくとも0.03または少なくとも約0.04であり得る。いくつかの場合、係数Kは、少なくとも0.05、少なくとも0.07、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15、少なくとも0.16、少なくとも0.17、少なくとも0.18、少なくとも0.19または少なくとも0.20であり得る。
非被覆基板に関しては、係数Kは、せいぜい0.15、せいぜい0.12、せいぜい0.10、せいぜい0.09、せいぜい0.08またはせいぜい0.075、いくつかの場合には、せいぜい0.070、せいぜい0.065、せいぜい0.060またはせいぜい0.055、いくつかの場合には、せいぜい0.050、せいぜい0.045またはせいぜい0.040であり得る。
係数Kは、少なくとも0.020、少なくとも0.03、少なくとも0.04、少なくとも0.06、少なくとも0.07または少なくとも0.08であり得る。いくつかの場合、特に種々の汎用被覆基板に関しては、係数Kは、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.14、少なくとも0.16、少なくとも0.18または少なくとも0.20であり得る。
視野
本発明のインクドット構築物中のインクドットは、基板の特定の局所地勢学的特徴とは大いに関係なく、そして印刷基板の型(被覆または非被覆印刷基板、プラスチック印刷基板等)とはある程度関係なく、一貫して良好な形状特性(例えば、凸状性、真円性、エッジぎざぎざ性等)を示し得る。種々の既知の印刷技法における、そしてとくに直接水性インクジェット技法におけるインクドットの質は、印刷基板の型に伴って、ならびに基板の特定の局所的地政学的特徴に伴って、より実質的に変わり得る。例として、インク滴が、相対的に均質な基板表面(例えば広幅繊維)を有する特に平坦な局所的外郭に射出される場合、得られるインクドットは、他のものに関して、あるいは基板上の他の場所に配置される平均インクドットに関連して、有意に良好な形状特性を示し得る。
しかしながら、さらなる統計学的アプローチを用いて、当該技術分野のインクドット構築物と関連して、本発明のインクドット構築物間を良好に区別し得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、インクドット構築物は、代表的視野内で、基板上に配置される複数のインクドットとして特性化され得る。ドットの特性化が画像処理により得られると考えると、視野は、複数のドット画像を含有し、このうち、少なくとも10個のドット画像が画像処理に適している。分析のために選択される視野およびドット画像はともに、好ましくは、(ドット形状に関して)基板上のインクドットの総集団の代表的なものである。
本明細書中で、ならびに下記の特許請求の範囲において用いる場合、「幾何学的突出部」という用語は、印刷基板の印刷面上に突出される画像幾何学的構造物を指す。
本明細書中で、ならびに下記の特許請求の範囲において用いる場合、「異なるインクドット」という用語は、「幾何学的突出部」内に少なくとも部分的に配置される任意のインクドットまたはインクドット画像を指し、すなわち、「サテライト」でなく、重複ドットでもドット画像でもない。
本明細書中で、ならびに下記の特許請求の範囲において用いる場合、複数の「異なるインクドット」の「平均偏差」という用語は、真円性、凸状性等に関連して、個々の別個のインクドット偏差を個々の別個のインクドットの数で割った合計を指す。
手順
好ましくは高出現率の単一インクドットを含有する印刷試料を、20倍の倍率を用いて、LEXT顕微鏡で手動で走査して、単一枠中に少なくとも10個の単一ドットを含む視野を得る。そのインクドットの質が印刷試料の全体のインクドット質を適正に代表するものであるべきである。
選択枠内の各ドットは、別々に分析される。枠の縁(正方形の基が学的突出部とみなされ得る)により「切断」されるドットは、枠の一部であるとみなされ、分析される。任意のサテライトおよび重複ドットは、分析から除外される。「サテライト」は、一般的に均質なドットサイズを有する枠に関しては、その面積が枠内のドットの平均面積の25%未満であるインクドットとして、あるいは非均質枠に関しては、その面積が最も近い隣接ドットの25%未満であるインクドットとして定義される。
各別個のインクドットは、その後、100倍ズームで拡大されて、凸状性および真円性手順に関連して、本明細書中の上記で提供された手順に従って、画像処理を実行し得る。
結果
図5F‐1は、汎用被覆繊維性基板(Arjowiggins被覆再生グロス、170gsm)上のインクドットの小視野の拡大図を提供するが、当該視野は、市販の水性ダイレクトインクジェットプリンタを用いて生成される。インク画像Aはサテライトであり、分析から除外される。ドットBは、枠の縁により切断されており、分析に含まれる(すなわち、完全インクドットが分析される)。尾部または突出部Cは、その左に配置されるインクドットの一部であるとみなされる。したがって、視野は、画像処理のための6つのインクドットを含有する。
図5F‐2は、本発明によるインクドット構築物を有する一視野の拡大図を提供するが、この場合、汎用被覆基板は図5F‐1のものと同一である。例として、インク画像Dは、サテライトであり、分析から除外される。したがって、視野は、画像処理のための12のインクドットを含有する。
図5F‐1で表示されるインクドットの視野が、図5F‐2で表示されるインクドットの視野に関連して、優れたドット形状および平均ドット形状を示す、ということは視野の比較から明白である。
図5G‐1は、非被覆繊維性基板(Hadar Top 非被覆‐オフセット 170gsm)上のインクドットまたは染みの視野の拡大図を提供するが、この場合、当該視野は、市販の水性ダイレクトインクジェットプリンタを用いて生成される。より高倍率では、ドットEおよびFは異なる個々のドットである、ということが明らかになる。いくつかの染みは合理的に円形で、形がよいが、染みの大半は不十分な真円性および凸状性を示し、輪郭のはっきりしないエッジを有し、そして関連するかまたは関連性が薄い多数のインク中心を含有するように見える。
これとは明確に対比して、図5G‐2は、本発明によるインクドット構築物の一視野の拡大図を提供するが、この場合、非被覆基板は図5G‐1のものと同一である。各インクドットは、良好な真円性および凸状性を示し、輪郭のはっきりしたエッジを有する。さらに、各インクドットは、粗い非被覆繊維性基板の上部に配置される。
視野の各々に関する真円性および凸状性データからの偏差を、表4A〜4Dに提示する。
本発明によるインクドット構築物の視野は、Arjowiggins被覆基板に関しては0.003、Hadar Top非被覆基板に関しては0.013の(平均)非凸度を示した。これらの平均値は、これらの基板上の本発明の個々のインクドットにより示される非凸度(それぞれ0.004および0.010)と非常によく似ている。同様に、本発明によるインクドット構築物の視野は、Arjowiggins被覆基板に関しては0.059、Hadar Top非被覆基板に関しては0.273の真円からの(平均)偏差を示した。これらの平均値は、これらの基板上で本発明の個々のインクドットにより示される真円からの偏差(それぞれ、0.026および0.239)より高いが、しかしかなり類似している。本明細書中の上記で明確に示されたように、そして図5F‐2および5G‐2から目で見て明らかであるように、本発明のインクドット構築物中のインクドットは、基板の特定の局所的地勢学的特徴とは大いに関係なく、一貫して良好な形状特性(例えば、凸状性および真円性)を示す傾向がある。
これらの例示的結果は、汎用被覆および非被覆の両方のいくつかの付加的繊維性基板に関して確証されている。
試験した汎用被覆繊維性基板すべてに関して、本発明によるインクドット構築物の視野は、せいぜい0.05、せいぜい0.04、せいぜい0.03、せいぜい0.025、せいぜい0.020、せいぜい0.015、せいぜい0.012、せいぜい0.010、せいぜい0.009またはせいぜい0.008の平均非凸度を示した。
試験した非被覆繊維性基板すべてに関して、本発明によるインクドット構築物の視野は、せいぜい0.085、せいぜい0.07、せいぜい0.06、せいぜい0.05、せいぜい0.04、せいぜい0.03、せいぜい0.025、せいぜい0.020、せいぜい0.018またはせいぜい0.015の平均非凸度を示した。
表4A〜4D
いくつかの実施形態では、視野非凸度は、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.002、少なくとも0.003または少なくとも0.004である。いくつかの場合、そして特に非被覆繊維性基板に関しては、視野または平均非凸度は、少なくとも0.05、少なくとも0.07、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15、少なくとも0.16、少なくとも0.17または少なくとも0.18であり得る。
試験した汎用被覆繊維性基板すべてに関して、本発明によるインクドット構築物の視野は、せいぜい0.60、せいぜい0.50、せいぜい0.45、せいぜい0.40、せいぜい0.35、せいぜい0.30、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.17、せいぜい0.15、せいぜい0.12またはせいぜい0.10の真円からの平均偏差を示した。
試験した非被覆繊維性基板すべてに関して、本発明によるインクドット構築物の視野は、せいぜい0.85、せいぜい0.7、せいぜい0.6、せいぜい0.5、せいぜい0.4、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.22またはせいぜい0.20の真円からの平均偏差を示した。
いくつかの実施形態では、真円からの平均偏差は、少なくとも0.010、少なくとも0.02、少なくとも0.03または少なくとも0.04である。いくつかの場合、真円からの偏差は、少なくとも0.05、少なくとも0.07、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15、少なくとも0.16、少なくとも0.17または少なくとも0.18であり得る。
上記の非凸度および真円からの偏差値は、少なくとも10ドットを有する視野に関しては、評価のために適切であるが、それらはさらに、少なくとも20、少なくとも50または少なくとも200のこのような適切なドットを有する視野に適用する。さらに、本発明のインクドット構築物対従来技術のインクドット構築物の非凸度値および真円からの偏差値の両方の間の区別が、視野サイズの増大に伴ってさらに統計学的に有意になる、ということを本発明人等は見出した。
本明細書中に以下でさらに詳細に記載される試験したプラスチック基板すべてに関して、本発明によるインクドット構築物の視野は、せいぜい0.075、せいぜい0.06、せいぜい0.05、せいぜい0.04、せいぜい0.03、せいぜい0.025、せいぜい0.020、せいぜい0.015、せいぜい0.012、せいぜい0.010、せいぜい0.009またはせいぜい0.008の平均非凸度を示した;本発明によるインクドット構築物の視野は、せいぜい0.8、せいぜい0.7、せいぜい0.6、せいぜい0.5、せいぜい0.4、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.18またはせいぜい0.15の真円からの平均偏差を示した。平滑プラスチック、例えばアタクチックポリプロピレンおよび種々のポリエステルは、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.18、せいぜい0.15、せいぜい0.12、せいぜい0.10、せいぜい0.08、せいぜい0.06、せいぜい0.05、せいぜい0.04またはせいぜい0.035のしんえんからの平均偏差を示した。
プラスチック基板
図5H‐1〜5H‐3は、本発明によるインクドット構築物の拡大上面図を提供するが、この場合、インクドットは、種々の例示的プラスチック印刷基板、例えば二軸配向ポリプロピレン ‐ BOPP(図5H‐1);静電防止ポリエステル(図5H‐2);およびアタクチックポリプロピレン(図5H‐3)の各々の上に印刷される。
用いられる種々のプラスチック印刷基板のすべてに関して、そして図5H‐1〜5H‐3で例示的に示されているように、本発明のインクドットは、スクレ多光学および形状特性、例えば真円性、凸状性、エッジぎざぎざ性および表面粗さを示した。
図5H‐4は、本発明に従った、ポリエステル基板上に印刷されるインクドットの拡大上面図を提供する。図5H‐4はさらに、インクドットおよび基板の表面粗さを示す横断面表示を提供する。インクドットは、約600nmの高さを有する。高さの偏差は、ドット直径の中間80%に関しては±50nm未満を超え、ドット直径の中間60%に関して±25nm未満である。
広範な種々のプラスチック印刷基板上に印刷されるインクドットに関する非凸度または凸状性からの偏差は、せいぜい0.020、せいぜい0.018、せいぜい0.016、せいぜい0.014、せいぜい0.012またはせいぜい0.010であった。BOPPを含めてこれらの基板すべての上のインクドットの少なくともいくつかは、せいぜい0.008、せいぜい0.006、せいぜい0.005、せいぜい0.004、せいぜい0.0035、せいぜい0.0030、せいぜい0.0025またはせいぜい0.0020の非凸度を示した。ポリエステルおよびアタクチックポリプロピレン基板に関して、典型的インクドットは、せいぜい0.006、せいぜい0.004、せいぜい0.0035、さらに典型的には、せいぜい0.0030、せいぜい0.0025またはせいぜい0.0020を示した。
試験したプラスチック基板すべてに関して、本発明によるインクドット構築物中の個々のインクドットは、せいぜい0.8、せいぜい0.7、せいぜい0.6、せいぜい0.5、せいぜい0.4、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.18またはせいぜい0.15の真円からの典型的偏差を示した。種々の平滑プラスチック、例えばアタクチックポリプロピレンおよび種々のポリエステルに関して、個々のインクドットは、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.18、せいぜい0.15、せいぜい0.12、せいぜい0.10、せいぜい0.08、せいぜい0.06、せいぜい0.05、せいぜい0.04またはせいぜい0.035の真円からの典型的偏差を示した。
図5H‐5〜5H‐7は、各々、本発明によるインクドット構築物を有する視野の拡大図を提供し、各視野は、それぞれのプラスチック基板上に印刷されるインクドットを含有する。図5H‐5では、基板は静電防止ポリエステルであり、図5H‐6では、基板はポリプロピレン(BOPP WBI 35ミクロン(Dor,Israel))である;図5H‐7では、印刷基板は、アタクチックポリプロピレンである。これらの視野すべてにおいて、各インクドットは、良好な真円性および凸状性を示し、輪郭のはっきりしたエッジを有し、特定のプラスチック基板の上部に配置される。本発明のプラスチック上インクドット構築物のインクドットは、特に真円性、凸状性、エッジぎざぎざ性およびその他の光学的形状特性に関して、汎用被覆基板上のインクドットと密接に類似し得る。広範な種々のプラスチック基板に関しては、本発明のプラスチック上インクドット構築物は、汎用被覆基板のものと等しいかまたはそれより優れた光学的形状特性(例えば、真円からの偏差、非凸度)を示す。
光学的均一性
図5Aおよび5Bで提供される元のインクフィルムは、光学的に均一でない。一般的に、非塗工紙上に配置されるインクフィルム画像は、塗工紙上に配置される対応するインクフィルム画像より光学的均一性が低い。
さらに、本発明のインクドットは、種々の従来技術のインク形態と比較して、優れた光学的均一性を示す、ということが観察され得る。これは、非被覆および被覆印刷基板の両方に関して保持されると思われる。ヒトの眼で容易に観察されるものは、画像処理技法を用いて定量され得る。インクドット均一性の測定方法を、以下で提供する。
光学的均一性測定
好ましくは、本明細書中の上記で提供された統計学的規則を用いて、ドット画像をImageXpertソフトウェアにロードする。各画像を、レッド、グリーンおよびブルーチャネルの各々にロードする。画像処理のために選択されるチャネルは、最高視度詳細を示すチャネルであって、これは、ドット区域内にドット外郭および色変動、ならびに基質表面繊維構造を含む。例えば、レッドチャネルは典型的にはシアンドットに関して最も適しているが、一方、グリーンチャネルは典型的には、マゼンタドットに最も適している。
選択ドットの各々に関して、線プロフィール(好ましくは少なくとも10の最も代表的なドットの各々に関して3つの線プロフィール)を、ドットの中心を通って横断してドット区域全体で測定する。線プロフィールは単一チャネルに関して測定されるため、グレー値(0〜255;非色彩値)が測定される。ドットの中心を横断し、ドット直径の内側3分の2のみにかぶさる線プロフィールを得て、エッジ効果を回避する。試料採取頻度に関する標準は、線プロフィールに沿った約8光学測定(各マイクロメートルに沿って等間隔での8測定グレー値、または線プロフィールに沿った125ナノメートル+/−25ナノメートル/測定)であり、これは、ImageXpertソフトウェアの自動頻度であったし、手動に適していて、確固不動であることが判明した。
線プロフィールの各々の標準偏差(STD)をコンピューター計算し、印刷画像の各型に関する多重線プロフィールSTDを単一値に平均化する。
図6A‐1〜6J‐2は、種々の印刷技法を用いて得られるインク染みまたはドットの画像、ならびにその光学的不均一プロフィールを提供する。さらに具体的には、図6A‐1〜6E‐1は、以下の印刷技法のための:HP デスクジェット9000(図6A‐1);デジタルプレス:HPインディゴ7500(図6A‐2);オフセット:リョービ755(図6A‐3);ゼロックスDC8000(図6A‐4);ならびに本発明の印刷技法の具体化のための(図6A‐5)、非塗工紙上に配置されるインクドット画像を提供する。同様に、図6F‐1〜6J‐1は、それらの印刷技法のための、汎用塗工紙上に配置されるインクドット画像を提供する。
図6A‐2〜6J‐2は、それぞれ、図6A‐1〜6E‐1(非塗工紙上)により、および6F‐1〜6J‐1(塗工紙上)により提供されるインクドット画像の各々に関する、インクドット画像の中心を通る線上の位置の一関数としてグレー相対値をプロットするグラフを提供する。特定のインクドット画像に関する相対的に平坦な線状プロフィールは、線に沿った高い光学的均一性を示す。
印刷画像の各型の線プロフィールの各々のSTDを、非被覆および被覆基板の両方に関して表6に提示する。結果は、非被覆繊維性印刷基板上に配置されるインクドットが、被覆繊維性印刷基板上に配置される対応するインクドットと関連して、貧均一性を示す、ということを確証するように見える。
さらに、非被覆基板に関しては、本発明のシステムおよび工程により生成される本発明のインクフィルムの線プロフィールは、4.7のSTDを有したが、これは、種々の従来技術を用いて達成されるSTD(13.7〜19.1)に比べてひけをとらない。被覆基板に関しては、本発明のシステムおよび工程により生成される本発明のインクドットの線プロフィールは、2.5のSTDを有したが、これは、顕著に低いが、種々の従来技術の技法を用いて達成されるSTD(4〜11.6)に比べてひけをとらない。
塗工紙上のフィルムまたはドット間を比較すると、本発明のドットプロフィールの標準偏差(STD)の各々の平均は常に3より低かった。さらに一般的には、本発明のドットプロフィールのSTDは、4.5未満、4未満、3.5未満、3未満または2.7未満である。
これとは明確に対比して、オフセットドット均一性プロフィールのSTDは5.75で、LEP(インディゴ)ドット均一性プロフィールは11.6であった。
したがって、本発明のドットに関するSTDは、塗工および非塗工紙上の両方において、従来技術の例示的印刷ドットのSTD値とは明らかに区別される。
非塗工紙上のフィルムまたはドット間の比較に際しては、本発明のドットプロフィールの標準偏差(STD)は、常に5より低かった。さらに一般的には、本発明のドットプロフィールのSTDは、10未満、8未満、7未満または6未満である。
上記のように、インク画像は非常に大きい複数の個々のまたは単一のインクドット(少なくとも20、少なくとも100、少なくとも1,000、少なくとも10,000または少なくとも100,000)を含有し得るため、本発明のインクドット構築物を統計学的に限定することは有意義であり得るが、この場合、任意の非被覆または被覆(または汎用被覆)繊維性基板上に配置される本発明のインクドット(または本発明の単一滴インクドット)の少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%、いくつかの場合には、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%が、非塗工紙に関して、そして汎用塗工紙に関して、上記の標準偏差を示す。
光学密度
1:3比の顔料(Clariant HostajetブラックO‐PTナノ分散液)対樹脂を含有するインク処方物を、実施例6に従って調製した。種々のコーチングロッドを用いて処方物をコンダトグロス(登録商標)塗工紙(135gsm)に適用して、4〜50マイクロメートルの特徴的厚みを有する湿潤層を生じた。
上記で提供された処方物は、約9.6%のインク固形分を含有するが、このうち25重量%は顔料で、約75重量%は樹脂である。試験のすべてにおいて、樹脂対顔料の比を、3:1に保持した。インク処方物中のインク固形分画は、重量で0.05〜0.12間で変化した(5%〜12%)。紙上に直接、標準方式で、ドローダウンを実施した。得られた各インクフィルムの厚みを算定した。
状態「T」モード(絶対)を用いて、X‐Rite(登録商標)528分光濃度計で、光学密度を測定した。結果を、表7に提示する。図12は、得られた光学密度点を、フィルム厚の一関数として達成される光学密度の適合曲線(最下部曲線)とともに提供する。従来技術の処方物であるべき処方物は分からないが、しかし適合曲線は、従来技術の光学密度可能性を表し得る。
本発明のインクフィルム構築物の光学密度は、図12で得られ、プロットされた光学密度点のいずれかよりも、および/または以下の関数により表される適合曲線上の任意の点よりも、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、少なくとも20%、少なくとも22%、少なくとも25%、少なくとも28%、少なくとも30%、少なくとも35%または少なくとも40%高いことがある:
(式中、OD
baselineは、適合曲線により提供される光学密度であり、そして
H
filmは、繊維性印刷基板のような印刷基板上に配置されるインクフィルムの平均厚または平均高である)。
図12における適合曲線上に配置される例示的曲線は、本発明のインクフィルム構築物の光学密度曲線であって、この場合、光学密度は、ODbaselineより、それぞれ7%高いかまたは15%高い。
絶対項では、本発明のインクフィルム構築物の光学密度(ODinvention)は、図12で得られ、プロットされた光学密度点のいずれかよりも、および/または上記の関数(ODbaseline)により表される適合曲線上の任意の点よりも、少なくとも0.08、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15、少なくとも0.18、少なくとも0.20、少なくとも0.25、少なくとも0.30、少なくとも0.35または少なくとも0.40高いことがある。さらに、少なくとも1.5ミクロンのフィルム厚に関しては、ODinventionは、図12で得られ、プロットされた光学密度点のいずれかよりも、および/または上記の関数により表される適合曲線上の任意の点よりも、少なくとも0.45、少なくとも0.50、少なくとも0.55、少なくとも0.60、少なくとも0.70、少なくとも0.80、少なくとも0.90、少なくとも1.00、少なくとも1.10または少なくとも1.25高いことがある。
図13は、顔料含有量または算定平均顔料厚(T
pig)の関数としてプロットされる図12の光学密度測定値を提供する。図13の光学密度(Y軸)は、図12に示されたものと同一であるが、しかしX軸の変数は、平均測定または算定インクフィルム厚の代わりに、顔料含有量または算定平均顔料厚である。したがって、
ブラック顔料、例えばカーボンブラックを含むかまたは実質的にカーボンブラックからなるブラック顔料の場合、算定平均顔料厚は、インク固形物厚×インク固形分画内の顔料の重量分画にほぼ等しい(例として、上記参照処方物では、顔料の重量分画は0.25である)。
本発明のインクフィルム構築物の光学密度は、図13で得られ、プロットされた光学密度点のいずれかよりも、および/または算定平均顔料厚の一関数としてODbaselineの適合曲線上の任意の点よりも、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、少なくとも20%、少なくとも22%、少なくとも25%、少なくとも28%、少なくとも30%、少なくとも35%または少なくとも40%高いことがある。
絶対項では、本発明のインクフィルム構築物の光学密度(ODinvention)は、図13で得られ、プロットされた光学密度点のいずれかよりも、および/または上記の関数(ODbaseline)により表される適合曲線上の任意の点よりも、少なくとも0.08、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15、少なくとも0.18、少なくとも0.20、少なくとも0.25、少なくとも0.30、少なくとも0.35または少なくとも0.40高いことがある。さらに、少なくとも1.5ミクロンのフィルム厚に関しては、ODinventionは、図13で得られ、プロットされた光学密度点のいずれかよりも、および/または算定平均顔料厚の一関数としてODbaselineの適合曲線上の任意の点よりも、少なくとも0.45、少なくとも0.50、少なくとも0.55、少なくとも0.60、少なくとも0.70、少なくとも0.80、少なくとも0.90、少なくとも1.00、少なくとも1.10または少なくとも1.25高いことがある。
色域体積
特定の印刷技法の色域は、印刷技法が再現し得るすべての色の総計として定義され得る。色域は種々の方法で表され得るが、全色域は一般的に三次元色空間で表される。
ICC(国際色彩コンソーシアム)プロフィールは、しばしば、色域体積を評価するために市販のソフトウェアにより利用される。
ISO標準12647‐2(改訂標準バージョン)(本明細書中に完全に記述されているかのように、すべての目的のために参照により援用される)は、5つの典型的オフセット基板に関するCIELAB座標、グロスおよびISO白色度を含めたオフセット石版工程のための種々の印刷パラメーターに関する。
ISO改訂標準12647‐2は、5つの典型的オフセット基板の各々に関して、印刷手順 ブラック‐シアン‐マゼンタ‐イエローに関する色のCIELAB座標をていぎし、そしてそれに基づいて、これらの基板の各々に関して、オフセット石版印刷のその結果生じる色域を定義する。
実際、従来技術の色域体積能力は、オフセット石版印刷における基板として利用される塗工上質紙(例えばISO改訂標準12647‐2のタイプ1および、おそらくはタイプ2)に関して、せいぜい約400キロ(ΔE)3であり得る。
従来技術の色域体積能力は、タイプ3基板(せいぜい約380キロ(ΔE)3)に関しては、ならびに他の型のオフセット石版印刷基板、例えば非塗工紙、例えば種々の非塗工オフセット紙、例えばISO改訂標準12647のタイプ4およびタイプ5に関しては、多少低いことがある。従来技術の色域体積能力は、このような非塗工オフセット紙に関してはせいぜい約350キロ(ΔE)3であり得る。
これらの色域体積に関連した印刷画像厚(単一ドットまたはフィルム)は、少なくとも0.9〜1.1マイクロメートルである。
これとは明確に対比して、例えばICCプロフィールにより確定した場合の、本発明のインクフィルム構築物の色域体積は、上記の色域体積を超えるかまたはかなりの程度超え得る。各特定基板型に関しては、本発明のインクフィルム構築物の色域体積は、それぞれの現存する色域体積能力を、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%または少なくとも35%超え得る。
本発明のインクフィルム構築物の色域体積は、提供されるそれぞれの色域体積能力を、少なくとも25キロ(ΔE)3、少なくとも40キロ(ΔE)3、少なくとも60キロ(ΔE)3、少なくとも80キロ(ΔE)3、少なくとも100キロ(ΔE)3、少なくとも120キロ(ΔE)3、少なくとも140キロ(ΔE)3または少なくとも160キロ(ΔE)3超え得る。
絶対項では、本発明のインクフィルム構築物の色域体積は、少なくとも425キロ(ΔE)3、少なくとも440キロ(ΔE)3、少なくとも460キロ(ΔE)3、少なくとも480キロ(ΔE)3または少なくとも500キロ(ΔE)3の色域体積により特性化され得る。タイプ1およびタイプ2基板等に関しては、本発明のインクフィルム構築物は、少なくとも520キロ(ΔE)3、少なくとも540キロ(ΔE)3、少なくとも560キロ(ΔE)3または少なくとも580キロ(ΔE)3の色域体積によりさらに特性化され得る。
理論に縛られることなく考えると、本明細書中で上記下色域体積増強ならびに光学密度増強は、少なくとも部分的には、または大いに、印刷基板の上面上の本発明のインクフィルムの積層に起因し得る。フィルムの形態は、基板への転写の前に大部分は確定され得るため、フィルムは、ITMから基板に完全に転写され得る。この一体型連続ユニットは、実質的に溶媒を欠き、したがって、ブランケットから基板繊維へのまたは基板繊維間の任意の種類の物質の浸透は認められ得ない。一体化フィルムは、繊維性印刷基板の上面の完全に上に配置される薄層状の層を形成し得る。
本発明のインクフィルム構築物は、0.9〜1.1マイクロメートルフィルム厚範囲内だけでなく、意外にも、0.9〜1.1より低いかまたはかなりの程度低い平均フィルム厚または高さでも、種々の既述の色域体積を達成し得る。本発明のインクフィルム構築物は、0.8μm未満、0.7μm未満、0.65μm未満、0.6μm未満、0.55μm未満、0.5μm未満、0.45μm未満または0.4μm未満のインクフィルム厚に関して、これらの色域体積により特性化され得る。
本発明のインクフィルム構築物は、さらにまた、せいぜい4マイクロメートル、せいぜい3.5μm、せいぜい3μm、せいぜい2.6μm、せいぜい2.3μm、せいぜい2μm、せいぜい1.7μm、せいぜい1.5μm、せいぜい1.3μmまたはせいぜい1.2μmである平均フィルム厚で種々の既述の色域体積を達成し得る。
さらに、本発明のインクフィルム構築物は、本明細書中で上記されたフィルム厚のいずれかの範囲内で、上記のISO標準により定義される色域の全適用範囲も達成し得る。
開発中の新規の標準であるISO標準15339を、表8に提示する。
1200dpiの公称解像度を有し、9pLの平均滴体積を提供するDimatix SAMBAシングルパス方式インクジェットプリントヘッドを用いて、色域印刷を作製した。
プリントヘッド中のインクを22℃に保持し、ブランケットを70℃に保持した。手動感想を、16CFMの体積流量で約450℃で実行した。転写温度は、約30℃であった。実施例2、5、8および9に関連して、上記と実質的に同様に、インク処方物を調製した。
各実行に関して、170パッチの異なる色組合せを印刷し、分光光度計を用いて測定して、色域を作成した。各々の色分解を加熱ブランケット上で逐次的に印刷して、約2秒間、手動で乾燥した。分解の順序は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックであった。分解をすべて印刷後、筒状重錘を用いて加圧することにより、画像を紙に転写した。
各々の個々の色分解は、600nmまで、650nmまでまたは700nmまでの厚みを有した。総厚みは、せいぜい2,000nm、平均で約1,700nm、1,800nmまたは1,900nmであった。いくつかの実行に際しては、各々の個々の色分解は、450nmまで、500nmまで、または550nmまでの厚みを有し、対応する平均総厚は約1,300nm、1,400nmまたは1,500nmであった。
比較はすべて、まるで同一媒体上に印刷されるように、正規化白色で実行した。
印刷からの色プロフィールを作成するために用いられるソフトウェアは、ilProfiler、バージョン1.4.2(X‐Rite(登録商標)Inc.,Grand Rapids,MI)であった。ilPro2分光光度計(X‐Rite(登録商標)Inc.)を用いて測定を実行し、標準技法(ilProfilerのものと同様)を用いて、チャートをプロットし、色域体積を算定した。
耐摩耗性
印刷インクフィルムの重要な一特質は、耐摩耗性である。耐摩耗性は、印刷画像が長期摩耗、引っ掻きおよび磨滅下でその表面および構造一体性を保持し得る程度を説明する印刷インクの一特性である。輸送および取扱い中に、印刷インクフィルムの曝露表面は容易に感知できるほどすり減らされ、それにより、印刷の質が減損され得る。その結果、広範な種々の印刷製品(例えば、雑誌およびパンフレット)は、優れた耐摩耗性を有するインクフィルム構築物を必要とし得る。
耐摩耗性は、典型的には、良好な耐摩耗特性を有する樹脂を含む適切な処方物を用いることにより、増強され得る。代替的には、または付加的には、蝋および/または難乾燥性油のような特別な構成成分が処方物中に導入され得る。
インク処方物中への蝋または油の導入は、インクの全体的属性に影響を及ぼし得るし、その他の工程関連または印刷関連問題ももたらし得る。したがって、耐摩耗性樹脂により必要な耐摩耗性だけを提供することが、少なくともこの点では有益であり得る。
本発明のインク処方物およびインクフィルム構築物において、相対的に貧機械的または「バルク」耐摩耗特性を有する種々の樹脂は、それらのインク処方物の熱‐流動学的行動に有益に寄与し、それにより、以下の:インクフィルムの開発、中間転写成員またはブランケットからの転写、および印刷基板への接着の少なくとも1つが、容易に感知できるほど増強され得る、ということを本発明人等は発見した。樹脂の貧機械的特性は、低硬度値を含み得る。
このような樹脂を含有する本発明のインク処方物で印刷されるプリント画像の耐摩耗性は、それらの樹脂の「バルク」耐摩耗特性に関連して以外にも高い、ということを本発明人等は発見した。
各試料の上で多数回、研磨材ブロックを引きずり、摩耗試験前にそれらの試料に関して確立された基線と比較した場合の試料の光学密度を測定することにより、耐摩耗性を測定した。試料をTMI(Testing Machines Incorporated)インク摩擦試験機(モデル#10‐8‐01)に入れて、その上に配置されるコンダトグロス(登録商標)紙(135gsm)の小片を有する1.8kg試験ブロックを用いて、乾性インク摩擦試験を実施した。試験の前、および100回摩耗御に、試料の光学密度を測定した。この耐摩耗性測定手順は、TMI使用説明書マニュアルにより推奨されており、ASTM手法D5264に基づいている。
例として、ジョンクリル(登録商標)2178フィルム形成乳濁液中の高分子量ポリマーを耐摩耗性に関して試験して、優れた耐摩耗特性を有することを見出した。ジョンクリル(登録商標)2178を含有するインク処方物を調製し、12マイクロメートルコーチングロッドを用いて、コンダトグロス(登録商標)紙(135gsm)上に適用した。このインク処方物に関して、12μm湿潤厚は、1.2μmのフィルム厚を有する乾性フィルムにほぼ対応する。標準方式で、ドローダウンを実施した。次に、乾性インクフィルム試料を、耐摩耗性に関して試験した。光学密度損失は100回摩耗後は18%に過ぎなかったが、これは、種々の印刷用途のための優れた結果とみなされる。
ジョンクリル(登録商標)2178フィルム形成乳濁液を、本発明の工程との熱‐流動学的互換性に関してさらに試験して、貧転写特性を有することが判明した。
第二の低分子量樹脂(ネオクリル(登録商標)BT‐26)を、耐摩耗性に関して試験して、相対的に不十分な耐摩耗特性を有することが判明した。第一の樹脂と同様に、上記樹脂を含有する第二インク処方物を調製し、12μmコーチングロッドを用いて、コンダトグロス(登録商標)紙(135gsm)上に適用した。約1.2μmのフィルム厚を有する得られた乾性フィルムを、上記の耐摩耗性試験に付した。光学密度損失は100回摩耗後には53%で、試料1により生じた損失のほぼ3倍であった。
本発明の工程との熱‐流動学的互換性に関して本発明のインク処方物をさらに試験し、適切な転写特性を有することが判明した。
次に、本発明の印刷システムおよび加工処理方法で、相対的に貧耐摩耗特性を有する樹脂を含有するこの第二のインク処方物を、本発明人等は試験した。再び、コンダトグロス(登録商標)紙(135gsm)を印刷基板として用いた。生成されるインクフィルム構築物のいくつかを評価して、種々の印刷およびインクフィルム構築物特性、例えば耐摩耗性を査定した。第二インク処方物を用いて得られた印刷済み基板を、ドローダウン試料に関して実施されたものと同一の耐摩耗試験に付した。意外にも、光学密度損失は16.6%で、これは、第一の高耐摩耗性乾性インクフィルム試料の耐摩耗性に匹敵したが、これは、広範な種々の印刷用途のための十分に良好な結果である。
別の例示的耐摩耗試験において、実施例8で提供された組成物に従って、インク処方物を調製した。12μmコーチングロッドを用いて、コンダトグロス(登録商標)紙(135gsm)上にインクを適用した。次に、熱風によりインクを乾燥させて、上記のように耐摩耗性を試験した。光学密度損失は、100回摩耗後には30%であった。
別の例示的耐摩耗試験において、上記インク処方物を用いて、本発明の工程により乾性フィルムを生成した。熱い(130℃)[シラノール末端化ポリジメチル‐シロキサン]シリコーンブランケット上に湿性インク(上記と同様に12μm)を適用し、フィルムを乾燥して、乾燥フィルムをコンダトグロス(登録商標)紙(135gsm)に転写することにより、約1マイクロメートルの厚みを有する乾性フィルムを得た。光学密度損失は、100回摩耗後には19%であった。
接着破壊
本発明のインクフィルム構築物(特に、実施例4)の接着特性を評価して、従来技術のインクドットまたはインクフィルム構築物の接着特性に対して比較した。用いた標準試験手法:FINATの定量的インク接着試験FTM21(Federation Internationale des Fabricants et Transformateurs d’Adhesifs et Thermocollants sur Papiers et Autres Supports)(下記)。
FINAT FTM21
インク接着‐基本
範囲 この方法は、印刷用粘着シートへの印刷インクまたはラッカーの接着の程度の迅速査定を可能にする。
定義 印刷インクまたはラッカーは、基板に適用され、印刷機上で硬化されるか、あるいはインクの型に適した標準方法を用いて適用される。次に、接着テープが適用され、剥がされた場合に除去され得るインクの量により、インク接着が概算される。インクを引っ掻くことにより、そして圧力下での変形により、機械的除去に対するインクの耐性も測定される。
試験装備 インクを適用し、硬化する手段。高引きはがし粘着力(「攻撃的」)の接着テープ、例えばTesa 7475(アクリル系)、Tesa 7476(ゴム系)または3M Scotch 810.試験片全体に亘ってテープを平滑にするためのFINATローラー。金属ヘラ。手袋。
試験片 必要なインクが印刷工程の一部として基板にすでに適用されていない場合、均一厚にインクをコーチングし(例えば、低粘性インクのためのメイヤー・バーを用いる)、供給元に推奨されたようにコーチングを硬化することにより、試験のための試料を調製する。A‐4シートは、この試験のための便利なサイズの試料である。試験条件:23℃±2℃、相対湿度(RH)50%±5%RH。実際には、試験前に少なくとも4時間、試験片は状態調節される必要がある。
テープ試験 平滑平坦な硬質表面上に検体を置き、接着テープを適用し、試験片に固定されていないテープの小部分を残して、テープ下に気泡が閉じ込められないことを確実にする。FINATローラーを用いて、検体上で各方向に2回、ローラーを通してテープを押しつけて、次に、180°の角度でテープの非付着部分をそれ自体に折り曲げる。テープを巻き下ろした後、20分以内に、枠に検体を載せるか、または検体を片手でしっかり握って用い、次いで、他方の手で自身に向けてテープの遊離片を引く:最初は一定速度で徐々に、次いで、極度に迅速に、加速して操作する(速度が速いほど、より攻撃的試験になる)。FINAT テクニカルハンドブック第6版、2001年 53。
あらかじめ測定されていた対照試料との比較により、または以下の等級分けを参照することにより、検体の性能を記録する:
等級1 インクの除去なし
等級2 インクのわずかな除去(<10%)
等級3 インクの中等度の除去(10〜30%)
等級4 インクの重度の除去(30〜60%)
等級5 インクのほぼ完全な除去(>60%)
例示的結果を表9に提示する。
ダイレクト(ドロップ・オン・デマンド型)インクジェット技法は、種々のプラスチック基板への貧インク接着を示した。XEROX Phaser8560により例示される固形インク技法、ならびにHP Designjet Z6200により例示されるラテックス印刷技法も、種々のプラスチック基板に対して貧インク接着を示した。石版オフセット印刷、グラビアならびにいくつかのLEPおよびDEP技法は、試験したプラスチック基板上で強力な接着特性を示した。
種々のプラスチック基板に関しては、ポリプロピレンシート(例えば、二軸配向ポリプロピレン‐BOPP)、ポリエチレンシートおよびポリエチレンテレフタレートシートを含めて、本発明のインクフィルム構築物は強力な接着特性を示した。
本発明のいくつかの実施形態では、プラスチックインク構築物上のインクドットは、標準テープ試験(FINAT FTM21、基礎インク接着試験)に付された場合、せいぜい10%、さらに典型的にはせいぜい5%の接着破壊を示した。ほとんどの場合、プラスチックインク構築物上インクドットは、このテープ試験に付された場合、接着破壊を有さないかまたは実質的に有さなかった。
樹脂のガラス転移温度
本発明のインクフィルム構築物を支持する処方物内で用いるための樹脂を選択するに際して、軟化温度(または少なくとも部分的に非晶質の樹脂に関してはガラス転移温度)は、樹脂適合性の有用な指標であり得る、ということを本発明人等は見出した。具体的には、インク処方物中に用いられる(そして本発明のインクフィルム中に配置される)樹脂は、47℃より低いまたは45℃より低い、さらに典型的には43℃より低い、40℃より低い、35℃より低い、30℃より低い、25℃より低いまたは20℃より低いTgを有し得る。
さらに一般的には、工程の見地から、ITM上に配置されるインク処方物は、水を欠くように、または実質的に欠くようになった後、任意の共溶媒および、工程条件下で気化される任意のその他の気化物質、例えばpH調節剤(「インク固形物」および「インク残渣」等を生じる)および/またはその樹脂は、47℃より低いまたは45℃より低い、さらに典型的には43℃より低い、40℃より低い、35℃より低い、30℃より低い、25℃より低いまたは20℃より低いTgを有し得る。
熱‐流動学的特性
本発明の工程は、画像転写成員の表面での転写中、インクフィルムまたは画像を加熱して、インク画像から水性担体を蒸発させることを包含し得る。加熱は、さらにまた、インク粘度の低減を助長して、ITMから基板への転写状態を可能に知る。インク画像は、水性担体の蒸発後に残存する有機高分子樹脂および着色料の残留フィルムが粘着性にされる温度に加熱され得る(例えば、樹脂の軟化により)。
画像転写成員の表面の残渣フィルムは、乾性であるかまたは実質的に乾性であり得る。フィルムは、インク処方物からの樹脂および着色料を含む。残渣フィルムは、少量の1つ以上の界面活性剤または分散剤をさらに含み、これは、典型的にはインクのpHで可溶性である(すなわち、射出前)。残渣フィルムはさらに、1つ以上の可塑剤を含み得る。
インク残渣フィルムは、それが圧胴に到達する前に粘着性にされ得る。この場合、フィルムは、基板とのその接触、および環境への曝露により、インプレッション・ステーションで冷却し得る。既に粘着性のフィルムは、それが圧力下で押しつけられる基板に直ちに接着し得るし、フィルムの冷却は、基板への接着を危うくすることなく、画像転写成員からフィルムが手際よく剥げ落ちる点に画像転写面へのフィルム接着を低減するのに十分であり得る。
粘性(または粘着性)は、軽圧力下で直ちに接触して表面と結合させる材料の特性と定義される。粘着性能は、材料(高分子樹脂またはインク固形物)の種々の粘弾性と非常に関連し得る。粘性および弾性特性はともに、重要であると思われる:粘性特性は、少なくとも部分的に、表面全体に広がり、密な接触を形成する材料の能力を特性化するが、一方、弾性特性は、少なくとも部分的に、材料の結合強度を特性化する。これらのおよびその他の熱‐流動学的特性は、速度および温度依存性である。
残渣フィルムの熱‐流動学的特質の適切な選択により、冷却の作用は、残渣フィルムの凝集を増大することであり得るし、それにより、その凝集は転写成員へのその接着を上回り、したがって、残渣フィルムのすべてまたは実質的にすべてが画像転写成員から分離されて、基板上にフィルムとして押しつけられる。このようにして、フィルムにより被覆される面積に対してもその厚みに対しても有意の修正を伴わずに、残渣フィルムが、基板上に押しつけられる、ということを保証することが可能である。
TM‐PE‐Pペルチェ・プレート温度モジュールおよびP20 Ti L測定幾何学的構造(紡錘)を有するThermo Scientific HAAKE RheoStress(登録商標)6000流量計を用いて、粘度温度スイープ ‐ ランプ・アンド・ステップ ‐ を実施した。
直径2cmのモジュール中の深さ1mmの乾燥インク残渣の試料を、試験した。試料を、100℃の操作温度で、オーブン中で一晩乾燥した。試料体積(ペレット)を直径2cmのモジュール中に挿入して、徐々に加熱することにより軟化させた。次に、紡錘を下げることにより試料体積を所望のサイズに低減して、試料体積を1mmの所望の深度に低減した。
温度傾斜方式で、試料温度を低温(典型的には25℃〜40℃)に安定させた後、約0.33℃/秒の割合で高温(典型的には、160℃〜190℃)に上げた。約10秒間隔で、粘度測定を行なった。次に、試料温度を高温で120秒間安定させた後、約0.33℃/秒の割合で低温に下げた。再び、粘度測定を約10秒間隔で実行した。0.001のガンマおよび0.1Hzの周波数で、振動温度スイープを実施した。
明細書中および以下の特許請求の節では、単に、本明細書中で上記下温度上昇および下降方法によって、動的粘度に関する値は、定量的に確定され得る。
図7は、本発明のインクフィルム処方物に適したいくつかの乾燥インク処方物に関する、温度の一関数としての、動的粘度の下降温度スイーププロットを提供する。約160℃の最大温度に到達し、120秒間待った後、温度を記載通りに下げた。
最低粘度曲線は、約2%の顔料固形物を含有し、本明細書中に上記した手順に従って生成された本発明のイエローインク処方物の乾燥残渣のものである。約160℃で、流量計は、約6.7・106cPの粘度を測定した。温度を下げると、粘度は着実に且つ単調に、95℃で約6・107cPに、58℃で約48・107cPに増大した。
中間粘度曲線は、約2%の顔料固形物を含有し、本明細書中に上記した手順に従って生成された本発明のシアンインク処方物の乾燥残渣のものである。約157℃で、流量計は、約86・106cPの粘度を測定した。温度を下げると、粘度は、94℃で約187・106cPに、57℃で約8・108cPに増大した。
最高粘度曲線は、約2%の顔料固形物を含有し、本明細書中に上記した手順に従って生成された本発明のブラックインク処方物の乾燥残渣のものである。約160℃で、流量計は、約196・106cPの粘度を測定した。温度を下げると、粘度は着実に且つ単調に、95℃で約763・106cPに、59℃で約302・107cPに増大した。
図8は、本発明のいくつかの乾燥インク処方物、対従来技術インク処方物のいくつかのインク残渣に関する、温度の一関数としての、動的粘度の下降温度スイーププロットである。従来技術処方物の粘度曲線は標識1〜5であり、破線により表されている;本発明の処方物の粘度曲線は標識A〜Eであり、実践により表されている。本発明のインク処方物は、図7と一緒に前記の3つのインク処方物(A=ブラック;C=シアン;およびE=イエロー)、ならびにマゼンタ水性顔料調製物[]の約2重量%の固形物を、約6重量%の種々のスチレン‐アクリル乳濁液とともに含有する2つのインク処方物(「B」、「D」)を包含する。従来技術インクの残渣を、異なる色の種々の市販のインクジェットインクから調製した。
図8のプロットの拡大図を、36・10;8未満の粘度に関して、図9に提示する。本発明の処方物A〜E、ならびに従来技術処方物5の粘度曲線のみが、図9で観察され得る。
種々の従来技術インク処方物の乾燥インク残渣は、少なくとも160℃までの、温度の全測定範囲に及ぶ流動行動を全く示さないかまたは実質的に全く示さない、ということが、プロットから、そして粘度の拡大から、明らかである。従来技術処方物のいくつかのプロットにおいて非常に高い粘度で観察されたピークは、物理的意味を有さないと思われる。従来技術残渣フィルムの各々に関する最低測定粘度は、少なくとも135・107cP〜少なくとも33・108cPの範囲内であった。この範囲内の最低値135・107cPは、160℃で、本発明のインク処方物の残渣のいずれかの最高粘度値の6倍を十分に超えている。
さらに、実験の下降相中に、従来技術の試料1〜5は、約160℃で測定された粘度を超える粘度値を示したし、および/またはフィルムの転写を妨げるには十分に高いと思われる。実際、本発明の発明人等は、本発明のインクフィルムの5つ全部を印刷基板に首尾よく転写したが、しかし160℃以上に加熱後でさえ、印刷基板への5つの従来技術フィルムのいずれかを転写することはできなかった。
「コールド」動的粘度(50℃〜85℃の範囲内の少なくとも1つの温度)対「ホット」動的粘度(125℃〜160℃の範囲内の少なくとも1つの温度)の割合を、本発明人等は算定した。この比は、本発明の工程の多数の要件を満たすインク処方物と、本発明の抗体の多数の要件を満たすことができないインク処方物との間を区別するのに重要であり得る、と本発明人等は考える。
印刷済み基板上のインクフィルムの分析
基本手順:
本発明のインク処方物(マゼンタ、イエロー、シアンおよびブラック)を用いて、同時係属中のPCT出願PCT/IB2013/051716(エージェント参照番号LIP 5/011 PCT)に従って、デジタル印刷機でコンダトグロス(登録商標)紙(135g/cm2、B2、750×530mm)の3つのシートを印刷した。1週間後、シートを3×3cm片に切断し、種々の水溶性インクを用いて印刷されたインク画像を十分に溶解し得る水中に溶解した1% 2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノールを含有する溶液300g中に導入した。この脱インク手法において、溶液を室温(例えば約23℃)で10分間撹拌し、その後、混合物を10ミクロンフィルターに通して濾過した。濾液(主に溶解インクおよび顔料粒子を含有する)を、回転蒸発器を用いて乾燥した。次に、濾液残渣を、5グラムのジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、次に、110℃で12時間、オーブン中で乾燥して、「回収残渣」を得た。
脱インク工程から得られた回収残渣の熱‐流動学的硬度を、昇温および降温スイープ(上記)での粘度測定により特性化した。得られた結果を、図10にプロットする。
図10から、印刷画像から抽出されるインク固形物の熱‐流動学的行動は、本発明のインク処方物を直接乾燥することにより生成される乾燥インク残渣に特徴的な熱‐流動学的行動と類似する、ということは明らかである。さらに、回収残渣の熱‐流動学的行動は、種々の水溶性インクジェット処方物、例えば試料1〜5(図8に示したような)の乾燥残渣の熱‐流動学的行動とは顕著に異なる、ということは明らかであると思われる。
別の試験では、カートリッジからのHPブラックインクジェットインク(HP デスクジェット9803で用いるために供給される)を乾燥して、残渣を生成した。残渣を、5グラムのジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、次に、110℃で12時間、オーブン中で乾燥した。100mgの乾燥試料を0.5mlの蒸留水(または適切な溶媒、例えばDMSO)中に溶解/分散した。撹拌後、液体材料をシリコンゴム鋳型中に導入した。その後、鋳型をプレート(250℃に加熱)上に10分間載せた。得られた乾燥タブレットを室温に冷まして、次に、高温(〜190℃)で動的粘度測定に付した。粘度(cPで)を、図11にプロットする。
同一ブラックインクジェットインクを、さらにまた、前記のHPインクジェットプリンターを用いて、コンダトグロス(登録商標)紙のいくつかのシート上に印刷した。1週間後、シートを小片に切断し、実質的に上記と同様に、蒸留水中の2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノールの1%溶液中に導入した。フラスコを室温で10分間撹拌し、その後、混合物を10ミクロンフィルターを通して濾過した。濾液を、回転蒸発器を用いて乾燥した。残渣を5グラムのジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、次に、110℃で12時間、オーブン中で乾燥した。100mgの乾燥試料を0.5mlの蒸留水(または適切な溶媒、例えばDMSO)中に溶解した。撹拌後、液体材料をシリコンゴム鋳型中に導入した。その後、鋳型をプレート(250℃に加熱)上に10分間載せた。HPインクジェット印刷試料の脱インクから得られた乾燥タブレットを室温に冷まして、次に、高温(〜190℃)で動的粘度測定に付した。粘度(cPで)を、図11にプロットする。
HP試料の脱インクにより得られたインクジェットインク残渣は、同一HPインクジェットインクの乾燥残渣により示される動的粘度と類似する動的粘度を示した。
本発明のブラックインク処方物に関し得、同様の試験を実施した。乾燥インク残渣および上記手順に従って回収されたインク残渣の両方に関して、高温(〜190℃)で、動的粘度測定を実行した。各試料の粘度(cPで)を、図11にプロットする。
さらにまた、本発明のインクフィルム構築物の脱インクにより得られた回収インクジェットインク残渣は、同一の本発明のインクジェットインクの乾燥残渣により示される動的粘度と類似する動的粘度を示した。
さらに進歩した手法では、本明細書中に記載されるようなインクを用いる同時係属中のPCT出願PCT/IB2013/051716に記載された、そして同時係属中PCT出願PCT/IB2013/051755(エージェント参照番号LIP 11/011 PCT)にさらに詳述されたような印刷システムで、コンダト紙(135g/cm2、B2、750×530mm)の3つのシートを印刷し、以下の手順に付した:1週間後、シートを3×3cm片に切断し、種々の水溶性インクを用いて印刷されたインク画像を十分に溶解し得る水中に溶解した1% 2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノールを含有する溶液300g中に導入した。しかしながら、溶液が無色のままである場合には、水を取り出して、同重量の低極性溶媒、メチルエチルケトンを導入する。低極性溶媒:酢酸エチル、トルエンおよびイソパール(商標)(イソパラフィンの合成混合物)を用いて、手順を継続する。最も適した溶媒とともに室温で5時間撹拌後、混合物を5ミクロンフィルターに通して濾過した。単数または複数の濾液(溶解インクを含有)を、回転蒸発器を用いて乾燥した。次に、残渣を、5グラムのDMSO(または上記溶媒のうちの1つ)中に溶解し、110℃で12時間、オーブン中で乾燥して、「回収残渣」を得た。回収残渣の熱‐流動学的行動を特性化し、利用可能な場合は、元のインクの乾燥試料と比較した。
滞留時間増大および付加的溶媒の使用の両方のため、この手順の改良された熱‐流動学的結果(すなわち、インクジェットインクの直接乾燥により得られる結果とかなり近い)は、印刷インクの溶解増大に起因すると本発明人等は考える。したがって、この進歩した手法は、雑誌およびパンフレットのような印刷物から回収されるインク残渣からの乾燥インクの熱‐流動学的特性を確定するために有益に用いられ得る。
従来技術のインクジェットインク残渣の絶対動的粘度値は、本発明のインクジェットインク残渣の動的粘度値を30〜40より大きい因数だけ超えている。
従来技術および本発明のインクジェットインク残渣の絶対動的粘度値は、印刷画像から回収される対応するインクジェットインク残渣の絶対動的粘度値を測定することにより実質的に再現され得る、ということは明白である。さらに、この方法は、印刷済み基板からのインクを再構成することにより、インクジェットインク残渣を特性化するために利用され得る、ということは明白である。
その他の、潜在的に優れた手法を用いて、印刷済み基板を脱インクして、流動学的、熱‐流動学的および/または化学的分析のための回収インク残渣を生成し得る、と当業者は容易に理解する。
インク処方物およびインクフィルム組成物
中でも、本発明のインクジェットインクは、水性インクであり、その場合、それらは通常は少なくとも30重量%、さらに一般的には約50重量%以上の水;任意に1つ以上の水混和性共溶媒;水および任意の共溶媒中に分散されるかまたは少なくとも部分的に溶解される少なくとも1つの着色料;ならびに水および任意の共溶媒中に分散されるかまたは少なくとも部分的に溶解される有機高分子樹脂結合剤を含有する。
アクリル系ポリマーは、アルカリ性pHで負に荷電され得る、と理解される。その結果として、いくつかの実施形態では、樹脂結合剤は、pH9またはそれ以上で負電荷を有する。さらに、水中の樹脂結合剤の溶解性または分散性は、pHにより影響を及ぼされ得る。したがって、いくつかの実施形態では、処方物は、pH上昇化合物、例えばジエチルアミン、モノエタノールアミンおよび2‐アミノ‐2‐メチルプロパノール(これらに限定されない)を含む。このような化合物は、インク中に含まれる場合、一般的に、少量で、例えば処方物の約1重量%、通常は処方物の約2重量%以下の量で含まれる。
カルボン酸基を有するアクリル系ポリマーは、それらの電荷密度、または同等に、酸価、すなわち1グラムの乾燥ポリマーを中和するために必要とされるKOHのミリグラム数に関して特性化され得る、ということも理解される。したがって、いくつかの実施形態では、アクリル系ポリマーは、70〜144の範囲の酸価を有する。
本発明のインクフィルム構築物のインクフィルムは、少なくとも1つの着色料を含有する。インクフィルム内の少なくとも1つの着色料の濃度は、完全インク処方物の重量の少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%または少なくとも22%であり得る。典型的には、インクフィルム内の少なくとも1つの着色料の濃度は、せいぜい40%、せいぜい35%、せいぜい30%またはせいぜい25%である。
さらに典型的には、インクフィルムは、2〜30%、3〜25%または4〜25%の少なくとも1つの着色料を含有し得る。
着色料は、顔料または染料であり得る。顔料の粒子サイズは、顔料の種類に、そして顔料の調整に用いられるサイズ低減方法によって決まり得る。一般的には、顔料粒子のd50は、10nm〜300nmの範囲内であり得る。異なる色を生じるために利用される種々の粒子サイズの顔料は、同一印刷のために用いられ得る。
インクフィルムは、少なくとも1つの樹脂または樹脂結合剤、典型的には有機高分子樹脂を含有する。インクフィルム内の少なくとも1つの樹脂の濃度は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%(重量で)であり得る。
インクフィルム内の着色料および樹脂の総濃度は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも35%または少なくとも40%(重量で)であり得る。しかしながら、さらに典型的には、インクフィルム内の着色料と樹脂の総濃度は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも85%であり得る。多くの場合、インクフィルム内の着色料と樹脂の総濃度は、インクフィルム重量の少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも97%であり得る。
インクフィルム内で、樹脂対着色料の重量比は、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1または少なくとも7:1であり得る。
本発明のインクフィルム構築物内の樹脂対着色料の重量比は、せいぜい15:1、せいぜい12:1またはせいぜい10:1であり得る。
いくつかの用途では、特に印刷基板上に積層される超薄インクフィルムを有することが望ましい場合、樹脂対着色料の重量比は、せいぜい7:1、せいぜい5:1、せいぜい3:1、せいぜい2.5:1、せいぜい2:1、せいぜい1.7:1、せいぜい1.5:1、せいぜい1.2:1、せいぜい1:1、せいぜい0.75:1またはせいぜい0.5:1であり得る。
本発明のインク処方物、システムおよび本発明の工程中に用いるために適切であり得る具体的樹脂としては、分子量の特定範囲内の、ならびに低ガラス転移温度(Tg)の水溶性アクリル酸・スチレンコポリマーを含む。このようなコポリマーの市販例としては、ジョンクリル(登録商標)HPD296、ジョンクリル(登録商標)142E、ジョンクリル(登録商標)637、ジョンクリル(登録商標)638およびジョンクリル(登録商標)8004;ネオクリル(登録商標)BT‐100、ネオクリル(登録商標)BT‐26、ネオクリル(登録商標)BT‐9およびネオクリル(登録商標)BT‐102が挙げられ得る。
名目上、樹脂の溶液または分散液は、アクリル酸・スチレンコポリマー(またはコ(エチルアクリレートメタクリル酸))溶液または分散液であるか、または含み得る。インク処方物からのアクリル酸・スチレンコポリマーは、最終的には、印刷基板に接着するインクフィルム中に残存する。
アクリル酸・スチレンコポリマー(またはコ(エチルアクリレートメタクリル酸))の平均分子量は、100,000未満、80,000未満、70,000未満、60,000未満、40,000未満または20,000g/モル未満であり得る。
アクリル酸・スチレンコポリマーの平均分子量は、少なくとも10,000、少なくとも12,000、少なくとも13,000または少なくとも14,000であり得るし、いくつかの場合、少なくとも16,000または少なくとも18,000g/モルであり得る。
一実施形態では、本発明によるインクフィルム構築物中のインクフィルムは、蝋を欠くかまたは実質的に欠いている。典型的には、本発明によるインクフィルムは、30%未満の蝋、20%未満の蝋、15%未満の蝋、10%未満の蝋、7%未満の蝋、5%未満の蝋、3%未満の蝋、2%未満の蝋または1%未満の蝋を含有する。
一実施形態では、本発明によるインクフィルムは、油、例えば鉱油および植物油(例えば亜麻仁油およびダイズ油)、またはオフセットインク処方物中に用いられる種々の油を欠くかまたは実質的に欠いている。典型的には、本発明によるインクフィルムは、せいぜい20%、せいぜい12%、せいぜい8%、せいぜい5%、せいぜい3%、せいぜい1%、せいぜい0.5%またはせいぜい0.1%(重量で)の1つ以上の油、架橋脂肪酸または脂肪酸誘導体(風乾時に生成される)を含有する。
一実施形態では、本発明によるインクフィルムは、1つ以上の塩、例えば転写成員上で、または基板上でインクを凝固または沈殿させるために用いられる塩(例えば、塩化カルシウム)を欠くかまたは実質的に欠いている。典型的には、本発明によるインクフィルムは、せいぜい8%、せいぜい5%、せいぜい4%、せいぜい3%、せいぜい1%、せいぜい0.5%、せいぜい0.3%またはせいぜい0.1%の1つ以上の塩を含有する。
一実施形態では、本発明によるインクフィルムは、1つ以上の光開始剤を欠くかまたは実質的に欠いている。典型的には、本発明によるインクフィルムは、せいぜい2%、せいぜい1%、せいぜい0.5%、せいぜい0.3%、せいぜい0.2%またはせいぜい0.1%の1つ以上の光開始剤を含有する。
一実施形態では、本発明のインクフィルム構築物の印刷基板は、基板上で、1つ以上の可溶性塩、例えばインクを凝固または沈殿させるために用いられるかまたはそれに適した塩(例えば、塩化カルシウム)、あるいはその構成成分を欠くかまたは実質的に欠いている。一実施形態では、本発明のインクフィルム構築物の印刷基板は、紙1m2当たりで、せいぜい100mgの可溶性塩、せいぜい50mgの可溶性塩またはせいぜい30mgの可溶性塩、さらに典型的には、せいぜい20mgの可溶性塩、せいぜい10mgの可溶性塩、せいぜい5mgの可溶性塩またはせいぜい2mgの可溶性塩を含有する。
一実施形態では、本発明によるインクフィルム構築物中のインクフィルムは、せいぜい5%、せいぜい3%、せいぜい2%、せいぜい1%またはせいぜい0.5%(重量で)の無機充填剤粒子、例えばシリカを含有する。
一実施形態では、本発明のインクフィルム中に存在する乾燥樹脂は、8〜10の範囲内の、または8〜11の範囲内のpHで、20℃〜60℃の温度範囲内の少なくとも1つの特定温度で、水中の少なくとも3%、少なくとも5%または少なくとも10%の溶解度を有し得る。
一実施形態では、本発明の回収インクフィルムは、8〜10の範囲内の、または8〜11の範囲内のpHで、20℃〜60℃の温度範囲内の少なくとも1つの特定温度で、水中の少なくとも3%、少なくとも5%または少なくとも10%の溶解度を有し得る。
印刷画像の耐水性
ASTM標準F2292‐03(2008)“Standard Practice for Determining the Waterfastness of Images Produced by Ink Jet Printers Utilizing Four Different Test Methods‐Drip, Spray, Submersion and Rub”を用いて、種々の基板上に印刷されるインクドットおよびフィルムの耐水性を査定し得る。これらの試験方法のうちの3つ:滴下、噴霧および浸水を用いて、耐水性を評価した。
3つの試験すべてにおいて、本発明のインクフィルム構築物は、完全な耐水性を示した;インクブリージング、インク汚れ、または転写は観察されなかった。
基板上の印刷画像中の窒素系状態調節剤の同定
印刷前に、少なくとも1つの窒素系状態調節剤、例えばポリエチレンイミン(PEI)であるかまたはそれを含有する化学物質でITMの外表面が前処理されるかまたは状態調節される場合、基板への印刷画像の転写は、典型的には、同様に転写されている窒素系状態調節剤のうちの少なくともいくつかを生じ得る。この状態調節剤は、X線光電子分光計(XPS)を用いて、あるいはポリマー分析またはポリマーまたは有機窒素含有種の化学分析の当業者に既知であるその他の手段により、検出され得る。
一例示的実証において、実質的に同一条件下で(例えば、転写成員上にナノ顔料粒子を有する水性インクジェットインクを射出すること;転写成員上のインクを乾燥すること;そして生成されたインクフィルムを特定基板に転写すること)、2つの印刷紙基板を調製したが、但し、第一基板は転写成員を前状態調節せずに印刷したが、一方、第二基板に関しては、ITMをポリエチレンイミンで状態調節した。VG Scientific Sigma Probeおよび単色A1 Kα x線(1486.6eV;ビームサイズ:400μm)を用いて、印刷画像のXPS分析を実行した。調査スペクトルを、150eVの通過エネルギーで記録した。窒素の化学状態同定に関しては、50eVの通過エネルギーで、N1sの高エネルギー分解能測定を実施した。C1sに関する結合エネルギーを285.0eVに設定することにより、異なるピークのコアレベル結合エネルギーを正規化した。観察ピークのデコンボルーションは、PEI前処理試料が約402eVで独特のピークを含有するが、これはC‐NH2 +‐C基に対応する、ということを明示した。
したがって、本発明のいくつかの実施形態では、402.0±0.4eV、402.0±0.3eVまたは402.0±0.2eVでXPSピークを有する印刷インク画像が提供される。
基板の上面に遠位のフィルムの上面または上部面で、窒素の表面濃度は、フィルムの嵩内の窒素の濃度をかなりの程度超え得る、ということを本発明人等は見出した。フィルムの嵩内の窒素の濃度は、上部フィルム面の下、少なくとも30ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、少なくとも100ナノメートル、少なくとも200ナノメートルまたは少なくとも300ナノメートルの深度で測定され得る。
いくつかの実施形態では、表面窒素濃度対フィルムの嵩内の窒素濃度の比は、少なくとも1.1:1、少なくとも1.2:1、少なくとも1.3:1、少なくとも1.5:1、少なくとも1.75:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1または少なくとも5:1である。
いくつかの実施形態では、上部フィルム表面での窒素対炭素比(N/C)対フィルムの嵩内の窒素対炭素比(N/C)は、少なくとも1.1:1、少なくとも1.2:1、少なくとも1.3:1、少なくとも1.5:1、少なくとも1.75:1または少なくとも2:1である。
いくつかの実施形態では、上部フィルム面での第二級アミン基の濃度は、フィルムの嵩内の第二級アミン基の濃度を上回る。
いくつかの実施形態では、上部フィルム面での第三級アミン基の濃度は、フィルムの嵩内の第三級アミン基の濃度を上回る。
いくつかの実施形態では、上部フィルム面での第二級および第三級アミン基の濃度は、フィルムの嵩内の第二級および第三級アミン基の濃度を上回る。
いくつかの実施形態では、上部フィルム面は、少なくとも1つのPEIを含有する。
いくつかの実施形態では、上部フィルム面は、少なくとも1つのポリクオタニウム陽イオン性グアー、例えばグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドを含有する。
いくつかの実施形態では、上部フィルム面は、第四級アミン基、例えば種々の第一級アミンのHCl塩を有するポリマーを含有する。
本明細書中および以下の特許請求の範囲の節で用いる場合、「着色料」という用語は、印刷業界において着色料であるとみなされるかまたは着色料であるべきとみなされる物質を指す。
本明細書中および以下の特許請求の範囲の節で用いる場合、「顔料」という用語は、せいぜい300nmの平均粒子サイズ(D50)を有する微粉砕固形着色料を指す。典型的には、平均粒子サイズは、10nm〜300nmの範囲内である。顔料は、有機および/または無機組成物を有し得る。典型的には、顔料は、それらが組み入れられるビヒクルまたは媒質中で不溶性であり、本質的に、それらによる物理的および化学的影響を受けない。顔料は、着色性、蛍光性、金属性、磁気性、透明または不透明であり得る。
顔料は、光の選択的吸収、干渉および/または散乱により、外観を変え得る。それらは、通常は、種々の系における分散により組み入れられ、色素沈着工程を通してそれらの血漿または粒子性を保持し得る。
本明細書中および以下の特許請求の範囲の節で用いる場合、「染料」という用語は、適用工程で可溶性であるかまたは溶液になる、そして光の選択的吸収により色を付与する少なくとも1つの着色物質を指す。
本明細書中および以下の特許請求の範囲の節で用いる場合、「平均粒子サイズ」または「d50」という用語は、顔料の粒子サイズに関連して、標準実施方法を用いて、レーザー回析粒子サイズ分析器(例えば、Mastersizer(商標)2000;Malvern Instruments,England)により確定した場合の、体積での平均粒子サイズを指す。
繊維性印刷基板に関しては、印刷のために用いられる塗工紙は、機能的および/または化学的に、2つの群、すなわち、非インクジェット印刷法(例えば、オフセット印刷)とともに用いるために設計される塗工紙と、水性インクを用いるインクジェット印刷方法とともに用いるために具体的に設計される塗工紙に、一般的に分類される、と印刷業界の当業者は理解する。当該技術分野で既知であるように、前者の型の塗工紙は、コストを低減するために紙繊維のいくつかを取り替えるだけでなく、紙に特別な特性、例えば改良された印刷性、明度、不透明度および平滑性を付与するために、無機充填剤を利用する。紙コーチングに際しては、無機物を白色顔料として用いて繊維を制御し、それにより明度、白色度、不透明度および平滑性を改良する。この目的のために一般に用いられる無機物は、カオリン、焼成粘土、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、タルク、石膏、アルミナ、繻子白、沈降硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛およびプラスチック顔料(ポリスチレン)である。
非インクジェット印刷法に用いるために設計される塗工紙は、今まで、水性インクジェットインクとともに用いるのに適していなかったか、あるいは本発明の印刷インクフィルム構築物とは明らかに異なり得るプリントドットまたは染みを生じる。
これに対比して、インクジェットインクとともに用いるために設計された特殊塗工紙(いくつかの場合、他の型の塗工紙を持ちる場合と同様の充填剤顔料の層を有し得る)は、高多孔性無機物、通常はシリカの層を、インクが印刷される時点で結合剤として作用する水溶性ポリマー、例えばポリビニルアルコール(PVA)またはポリビニルピロリドン(PVP)と組み合わせて含み得る。このような塗工インクジェット紙は、印刷インクから水を迅速に除去して、良好な均一性およびエッジ粗さを有するインク小滴の印刷を助長するために設計される。本発明は、非塗工紙上に印刷されるインク小滴、ならびにインクジェット使用のために設計されない塗工紙を包含するが、しかし本発明のいくつかの実施形態は、特殊塗工インクジェット紙上に印刷されるインク小滴を包含するよう意図されない。
したがって、いくつかの実施形態では、基板は非塗工紙である。他の実施形態では、基板は、インクが印刷される時に層中に水溶性ポリマー結合剤を含有しない塗工紙である。
本明細書中および以下の特許請求の範囲の節で用いる場合、「汎用被覆繊維性印刷基板」という用語は、特殊および高性能塗工紙、例えば写真紙および塗工インクジェット紙を排除するよう意図される。
汎用被覆繊維性印刷基板の典型的紙コーチングでは、コーチング処方物は、顔料、例えばカオリン粘土および炭酸カルシウムを水中に分散し、次いで、結合剤中に、例えばポリスチレンブタジエンコポリマーおよび/または加工デンプンの水溶液中に付加することにより、調製され得る。他の紙コーチング成分、例えば流動学的改質剤、殺生物剤、滑剤、消泡性化合物、架橋剤およびpH調節剤も、コーチング中に少量で存在し得る。
コーチング処方物中に用いられ得る顔料の例は、カオリン、炭酸カルシウム(チョーク)、陶土、非晶質シリカ、ケイ酸塩、硫酸バリウム、繻子白、アルミニウム三水和物、タルク、二酸化チタンおよびその混合物である。結合剤の例は、デンプン、カゼイン、ダイズタンパク質、ポリビニルアセテート、スチレンブタジエンラテックス、アクリレートラテックス、ビニルアクリルラテックスおよびその混合物である。紙コーチング中に存在し得るその他の成分は、例えば分散剤、例えばポリアクリレート、滑剤、例えばステアリン酸塩、防腐剤、消泡剤(油系、例えば炭化水素油中の分散シリカ、あるいは水系、例えばヘキサレングリコール)、pH調節剤、例えば水酸化ナトリウム、流動学的改質剤、例えばアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デンプン、タンパク質、高粘性ヒドロキシエチルセルロースおよびアルカリ可溶性格子である。
本明細書中および以下の特許請求の範囲の節で用いる場合、本発明の「繊維性印刷基板」という用語は、具体的には、以下のものを含むよう意図される:
・新聞紙、例えば標準新聞、電話帳、書籍用紙、およびスーパー仕上げ紙;
・塗工機械パルプ紙、あと軽量塗工紙、中重量塗工紙、重量塗工紙、機械仕上げ塗工紙、フィルム塗工オフセット;
・上質非塗工紙、例えばオフセット紙、軽量紙;
・上質塗工紙、例えば標準塗工上質紙、低コート重量紙、アート紙;
・特殊上質紙、例えばコピー紙、デジタル印刷紙、連続帳票;
・ボール紙、カートン用板紙;ならびに
・段ボール原紙。
本明細書中および以下の特許請求の範囲の節で用いる場合、本発明の「繊維性印刷基板」という用語は、具体的には、ISO 12647‐2に記載された5つの型の繊維性オフセット基板すべてを含むよう意図される。
特許または出願ファイルは、彩色した少なくとも1つの図面を含有する。彩色図面(g単数または複数)を伴うこの特許または特許出願公告のコピーは、請求し、必要料金を支払うと、特許庁により提供される。
分かり易くするために、別個の実施形態の状況で記載される本発明のある特徴は、単一実施形態において組合せても提供され得る、と理解される。逆に、簡略にするために、単一実施形態の状況で記載される本発明の種々の特徴は、別々に、または任意の適切な副組合せでも提供され得る。
本発明を、その具体的実施形態とともに記載してきたが、多数の代替物、修正および変更は、当業者に明らかになる、ということは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広範な範囲内であるこのような代替物、修正および変更すべてを包含するよう意図される。付録を含めてこの明細書中に記述された出版物、特許および特許出願はすべて、各々個々の出版物、特許または特許出願が、具体的に、そして独立して、参照により本明細書中で援用されるのと同程度に、それらの記載内容は参照により本明細書中で援用される。さらに、この出願中の任意の参考文献の引用または同定は、このような参考文献が本発明に対して従来技術として利用可能であるということの承認として意図されるものではない。