本発明に関する当業者であれば、本発明の先述の及び他の特徴及び利点は、添付の図面に照らして以下の説明を読むと明白になるだろう。
本発明は、連続プロセス環境中で炭化水素材料を連続変換するための2段階分割帯域連続熱分解装置である。本発明は、その1つの実施形態が図1に示されているが、その第1段階(stage)20では、せん断力及び熱が組み込まれ、一体的かつ漸進的に添加物が導入され、蒸気が除去され、ハロゲン酸が除去され、その第2段階30では、バッフル付き大容量連続プロセス熱窯炉反応器が組み込まれている、改良型分割帯域装置10を含む。炭化水素材料を、凝縮性炭化水素産物、非凝縮性炭化水素産物、及び固体炭化水素産物に連続変換するための本発明の装置及び操作方法は、一体型の一連のステップダウンコンデンサの前及び後の両方で、最終産物を同時に放出する能力を有する。これは、連続的な様式で作動する。本発明は、十分にロバストであり、分解しても一般的に油を産出しない熱硬化プラスチックの留分を含む細断ポリマー廃棄物が許容される。更に、本発明は、ポリマー廃棄物及び価値の低い又は汚染されたポリマーを、これらに限定されないが、軽質低硫黄原油、燃料添加剤、基油、粗ろう、パラフィンろう、微結晶性ろう、及び主に芳香族原油炭化水素を含む凝縮物を含む合成石油及びその様々な留分に連続変換することが可能なモジュール式の拡張可能な熱分解装置である。非凝縮性炭化水素産物は、ガスである。固体炭化水素産物は、非ポリマー固形物が分解前の原料に存在する場合、そのような非ポリマー固形物を含有していてもよく又は含有していなくともよい微粉化炭素チャーである。
本発明は、集合的に30〜70個の炭素原子を有する一次微結晶性又はパラフィンろう産物を、装置の、好ましい実施形態では、本明細書では帯域と呼ばれる7つの連続作動直列配置プロセス帯域の4番目の末端から直接放出することを可能し、選択的な生産能力及び個別放出能力を有する柔軟性を有する。これらの帯域は、原料供給帯域又は帯域1 401、圧縮帯域又は帯域2 402、融解帯域又は帯域3 403、混合、分子不安定化及びヘテロ原子除去帯域又は帯域4 404、熱分解帯域又は帯域5 405、脱揮発帯域又は帯域6 406、及びチャー放出帯域又は帯域7 407である。詳しくは、微結晶性又はパラフィンろう産物のこの放出は、混合、分子不安定化及びヘテロ原子除去帯域4 404の後、300℃〜338℃(572°F〜690°F)の温度範囲内で生じ、微結晶性又はパラフィンろう産物の一貫した産出を達成することができる温度閾値は、これまで特定されていない。更に、好ましい実施形態では、本発明は、第5及び第6の連続作動直列配置プロセス帯域、すなわち、それぞれ熱分解帯域5 405並びにチャー及び残留固形物脱揮発帯域6 406に配置されている別々の放出ポートから回収される、集合的に4〜30の炭素数を有する1つ又は複数の更なる軽質留分を生成し、その後、超高効率分離が必要な場合は、それぞれのコンデンサが選択的に複数のデミスタを有し、漸進的に低くなる作動温度範囲で作動する一連のステップダウンコンデンサで熱分解蒸気を回収する、追加の、及び同時性の、能力を可能にする。この装置は、触媒反応器及び/又は還流反応器及び/又は分画塔の使用を必要としない。とはいえ、本発明の装置のモジュール化及び拡張性は、例えば、軽油、ディーゼル添加剤、又はガソリン添加剤のみの生産が望ましい場合、それらの追加デバイスを選択的に使用する可能性を提供する。
装置10の第1段階20への供給原料は、混合固体及び/又は様々な固体の組み合わせであってもよい。様々な割合の石油系液体は、もしあれば必要に応じて、液体の注入速度が、第2段階30の加熱能力に過大な負担をかけない限り、第1段階20及び/又は第2段階30に注入することができる。本明細書で使用される場合、「石油系液体」及び「炭化水素液体」は、同義的に使用され、使用済み油、廃油、ガス油、精油残渣、及びシリンダ油等を含むことが意図されている。プロセス制御は、幅広く多様な原料流動、非常に汚染された原料流動、及び経時的に一貫しない組成を有する原料流動の効率的な変換を提供する。
本発明の装置は、全ての態様においてモジュール式であり、拡張可能である。例えば、図1及び図3に企図されているような本発明の実施形態では、本発明の第1段階20の並列押出機201の数は、装置10のモジュール式で拡張可能な要素であり、単一のシステムにて複数の炭化水素供給原料を導入及び同時処理する機会を提供し、各対応する供給原料は、潜在的に不均一な速度で第2段階30に導入及び混合され、そのような速度は、必要に応じて、意図的に制御して互いに対して経時的に変化させることができる。
分割帯域プロセス制御は、幅広く多様な原料流動、非常に汚染された原料流動、及び経時的に一貫しない組成を有する原料流動の効率的な変換を提供する。クリーンで汚染されていない原料流動を必要とはしない。殺虫剤、除草剤、石油製品、及び医薬品等によるポリマー廃棄物の汚染でさえ、十分に許容される。装置を作動させる場合、EPA Permit to Operate a Hazardous Waste Storage, Treatment, and Disposal Facilityによるある特徴的な規制有害廃棄物が、炭化水素原料の成分を構成するか又は成分として含まれている場合がある。
本発明は、漸進的なせん断作用を有する段階式装置10から、非せん断環境並びに漸進的な一連の温度勾配及びソークへと原料を連続的に供給することによる改良型分割帯域変換を提供し、その1つの実施形態は、図1に示されている。第1段階20及び第2段階30は、炭化水素材料100が、第1段階20に供給され、その後、部分的に処理された炭化水素材料が、第1段階20から第2段階30へと連続的に放出され、そこから、これらに限定されないが、軽質低硫黄原油、燃料添加剤、基油、粗ろう、パラフィンろう、微結晶性ろう、及び主に芳香族原油炭化水素を含む凝縮物を含む合成石油及びその様々なその留分がコンデンサ80に放出される連続的な様式で稼働される。非凝縮性炭化水素産物は、ガスである。固体炭化水素産物は、微粉化炭素チャー並びに再利用可能な金属及び/又は凝集体である。また、この固体炭化水素産物は、本明細書では「固形残渣」又は「固体産物」と記載されるだろう。
本明細書で考察されているろうの多くは、液相で熱窯炉反応器を出るが、収集されると冷却されると固体又はゆっくりと流動する液体になる傾向がある。この理由のため、及び一貫性のため、及び本発明の目的のため、1つ又は複数のろうは、それらがプロセスのどこで回収されるかに関わらず、特に別様に指示のない限り、固体、固体産物、及び/又は固形残渣(複数可)として扱われるだろう。
装置10の一部又は全ては、傾斜配置40で使用してもよい。装置10全体が、このように傾斜していてもよいが、この傾斜配置を必要とする構成要素は、熱窯炉反応器301のみである。言いかえれば、他の実施形態では、押出機201及び他の構成要素は、水平であってもよく、或いは勾配又は傾斜した熱窯炉反応器301に接続されていてもよい。図1、図2、及び図3に示されている本発明の実施形態では、装置10は、負の傾斜又は傾きで傾斜しており、つまり、水平50に対して下り傾斜しており、そのため、熱窯炉反応器301の入口端部は、その出口端部よりも高い場所にあり、熱窯炉反応器301の内部部品が、重力による運搬を容易にするように構成されている場合、下り傾斜窯炉反応器301から、部分的に分解された炭化水素材料を、重力の助けを借りて運搬することが可能になる。負の傾斜40は、水平50から約1°〜約20°傾いていてもよく、好ましい負の傾斜は、水平50から約1.5°〜約6°傾いている。或いは、また、装置10又は熱窯炉反応器30は、熱窯炉反応器301の内部部品が、炭化水素材料を物理的に前進させ、それにより熱窯炉反応器301の回転により重力を克服する場合、反対の又は正の傾斜方向に配向又は傾斜していてもよい。正の傾斜40は、水平50から約1°〜約20°傾いていてもよく、好ましい正の傾斜は、水平50から約1.5°〜約6°傾いている。したがって、可能な範囲は、水平50に対して、約−20°(下り傾斜(decline))〜+20°(上り傾斜(incline))である。
装置10は、炭化水素材料及び分解産物が装置を前進してその後装置から放出され、炭化水素材料が、以下では帯域とも呼ばれる一連の連続プロセス環境を通過するように稼働される。最適な産物構成は、様々な漸進的温度帯域を決定及び確立して最適な温度勾配を達成することにより、並びに押出機201及び熱窯炉反応器301の内部設計を変化させて、それにより各々の対応する温度帯域内の滞留時間を制御することにより達成される。これにより、連続プロセスとして作動し、分割帯域変換の熱効率利点を有する本発明の装置がもたらされる複数の温度勾配及び滞留時間(ソーク(soak))が生成される。
細断ポリマー廃棄物100は、非ポリマー留分により汚染されている場合も、汚染されない場合もあるが、装置10の第1段階20に連続的に導入される。この目的の場合、「ポリマー廃棄物」には、熱可塑性及び熱硬化プラスチック(「プラスチック」)に加えて、廃タイヤ、ゴム残渣、ゴムベルト、EPDMゴムシート、及び膜又は押出物等のエラストマー(又は「エラストマー廃棄物」)が含まれていてもよい。また、必要に応じて、鉱物系添加剤及び/又は融液相(melt−phase)触媒を、所望の化学反応を促進するために適切な割合で、帯域配列401(帯域1)の開始部分の押出機201に添加してもよい。加えて、もしあれば必要に応じて、様々な割合の石油系液体を、液体の注入速度が、第2段階30の加熱能力に過度の負担を強いることのない限り、押出機201中のポート206に及び/又は熱窯炉反応器301のポート320に注入することができる。
負荷原料は、帯域2 402で次第に圧縮されるか又はそうでなければ容積が低減されるため、装置10を前進するとともに相変化が生じ、同伴大気空気が放出され、ポリマー廃棄物中の同伴水分が沸騰するまで、熱勾配又は傾斜により加熱され、蒸気形成及びその後の帯域3 403での融解がもたらされる。その後、融解物は、別の熱勾配で加熱され、反応器中で最も高い温度に制御されている混合、分子不安定化及びヘテロ原子除去帯域(帯域4)404を前進する。融解物を、この帯域(帯域4)404にて、制御された滞留時間及び温度で混合することにより、分子の不安定化、セルロースのチャーへの分解及び更なる蒸気、幾つかの可塑剤及び有機添加剤の凝縮性石油製品として回収可能な蒸気への分解、硫黄のほぼ完全な除去、有機ハロゲン塩素及び臭素のほぼ完全な還元、有機ハロゲンフッ素の部分的還元、並びにテレフタル酸の安息香酸へのほぼ完全な還元及び安息香酸のベンゼンへのほぼ完全な還元がもたらされる。硬質ろう産物は、帯域4 404の端部から、及び帯域5 405への移行部分から放出させることができる。硬質ろうを回収するために帯域4 404の端部で熱窯炉反応器から直接放出されなかった残りの融解物は、その後、更に別の熱勾配により熱分解の大半が生じる帯域(帯域5)405へと前進する。この熱分解は、分解される原料の種類毎に最適化された滞留時間にわたって生じる。残りの物質が、制御された最高温度及び適切な滞留時間で帯域5 405環境を前進することにより、収量及び組成が最適化された熱分解産物がもたらされる。残りの物質が熱分解帯域405を出るとともに、帯域6 406への導入部で更に別の熱勾配に曝され、それにより、適切な滞留時間にわたって、チャーの脱揮発、並びに残留芳香族炭化水素及び多核芳香族炭化水素のコークス化が促進される。したがって、残留固形物は、帯域6 406から帯域7 407に移動した後、吸着芳香族及び多核芳香族炭化水素で飽和されていない、乾燥され脆化した微粉化残留固形物材料として、帯域7 407から連続的に放出される。これら残りの固形物は、これら夾雑物が供給原料中に存在する場合、同伴金属(貴金属及び/又は非貴金属)、ガラス、及び石等を含有している場合があるチャーとして、装置から連続的に取り出される。別の言い方をすれば、「チャー」は、炭化水素材料の分解に由来する炭素残留物以外の炭素残渣及び残留固形物である。
様々な実施形態では、押出機201及び熱窯炉反応器301は、多種多様な原料炭化水素材料の運搬、混合、及び反応を容易にするように設計されている。熱窯炉反応器301は、選択的に、帯域4 404の端部で熱窯炉反応器301から、パラフィン又は微結晶性ろうを放出するための手段を含むことができる。凝縮性炭化水素は、帯域5 405に位置する排出ポート323から放出される。残留固体チャーは、帯域7 407の出口319から放出される。押出機201及び熱窯炉反応器301の内部設計配置は、複数の温度帯域及びそれぞれの滞留時間と関連している。これは、連続プロセスで作動する一体型装置であるため、帯域間は必ずしも明確に区分されていなくともよく、1つの帯域は、次の帯域へと徐々に移行してもよく、又は次の帯域とオーバラップしていてもよい。
帯域は、一般的に、各所望のプロセススループット速度毎にその帯域で維持されているそれぞれの作動温度と関連した所望のそれぞれの帯域滞留時間を確立するように、押出機201のスクリューの幾何学的形状により、並びに熱窯炉反応器301の内部部品の幾何学的形状及び配置により、規定及び/又は限定される。連続プロセス分割帯域変換装置の設計は、各帯域において適切な滞留時間にわたって炭化水素材料への適切な熱伝達を促進し、それにより所望の全体的プロセススループット速度の所望の完了規模に必要とされる滞留時間にわたって所望の化学反応を達成するのに、そのそれぞれの直径が適切であり不必要な長さを有していない装置の構築が可能になるように実施される。好ましくは、連続プロセス部品は、中でも反応器の配向、反応器の長さ、反応器の直径、反応器の構築材料、押出機スクリューの設計、窯炉内部部品の設計、炭化水素材料のスループット速度、密度及び熱伝導度、動粘度、帯域滞留時間、帯域圧力、帯域間の温度勾配等を含む変数が組み込まれている双方向熱力学及び動力学モデルに従って設計される。そのモデルは、本発明を作動させて、所望の又は容認できる結果をもたらすことができる任意の原料組成物を分解した結果を予測する能力を有していなければならない。そのようなモデルがない場合、最適な幾何学的形状は、試行錯誤で導き出すことができる場合も、又はできない場合もあるが、特にこのような状況では、望ましくない結果又は壊滅的な結果をもたらす場合さえもある。
原料をシステムに導入すること(帯域1 401)から始まり、その後体積低減及び/又は圧縮に進み(帯域2 402)、融解物への原料相転移に進み(帯域3 403)、その後、ある可塑剤及び添加剤の分解並びに中でも塩酸の発生、同時に及び/又はその後に分子の不安定化に進み(帯域4 404)、その後熱分解に進み(帯域5 405)、その後チャー脱揮発及び/又はコークス化に進み(帯域6 406)、固体産物を放出する(帯域7 407)ことで終了するプロセス帯域を有する本発明の任意の実施形態を使用して、経済的に実施可能なスループットの解決策を全て許容する幅広い規模にわたってあらゆる構成でポリマー廃棄物の変換を達成することができる。本発明により具現化されるシステムは、モジュール式であり、拡張可能であり、用途が広く、様々な原料組成及び所望のスループット速度を有する応用に適応可能である。本発明の多用途性の例には、分割帯域プロセスを任意のシステム構成に応用することが含まれる。なお、本発明の好ましい実施形態の全てではないがその幾つかは、本発明の以下の詳細な説明に記載されており、当業者であれば、本発明の趣旨内の様々な改変及び変更は、上記及び下記の詳細な説明でなされた開示から明らかになるだろう。したがって、上記及び下記の説明は、本発明を限定するものではない。
本出願では、用語「熱窯炉反応器」、「反応器」、「レトルト」、及び「装置」は、同様の文脈で又は同義的に使用されることが多いことが留意されるべきである。全ての場合において、別様に記載がない限り、これらの用語は、本発明を指す。
本発明は、その1つの実施形態が図1に示されているが、その第1段階20では、せん断力及び熱が組み込まれ、一体的に及び漸進的に添加物が導入され、蒸気が除去され、ハロゲン酸が除去され、その第2段階30では、バッフル付き大容量連続プロセス熱窯炉反応器が組み込まれている、改良型分割帯域装置10を含む。
上り傾斜又は下り傾斜のいずれの実施形態でも、本発明は、その第1段階20に、1つ又は複数の押出機201を含み、その各々は、モータ208、及び加熱スクリューを有するギヤ減速構築体209、及びフレーム211に支持されたバレル構築体210で構成される。1つの炭化水素材料流動のみが処理される場合、又は十分に類似した物理的及び化学的特性を有する複数の炭化水素材料流動が同時処理される場合、好ましい実施形態では、単一の押出機201を使用することができる。しかしながら、2つ以上の非常に異なる炭化水素原料流動が、単一の熱窯炉反応器中で同時処理される場合、好ましい実施形態では、2つ以上の押出機201を使用してもよい。複数の押出機を含む実施形態では、押出機201は、順次又は直列ではなく、並列に接続されている。2つ以上の押出機201のこの並列配置は、3つの主な利点を有する。第1に、処理することができ、システムに供給できる量又は原料が増加する。第2に、1つの押出機201を整備のために停止させても、その意図されている全システム操業能力の半分とはいえ、残りの押出機201を使用してシステムを依然として作動させることができるような冗長性が可能になる。第3に、2つの全く異なる原料流動を反応器に同時に導入することが可能になることによる柔軟性が提供される。
押出機201は、炭化水素原料の共通の又は異なる混合物を受け入れることができる。この原料は、混合及び/又は汚染ポリマーを含む細断ポリマーを主に含む。プロセスに添加剤又は融液相触媒が望ましい場合、それらの幾つか又は全てを、押出機201に炭化水素材料を導入する前に、炭化水素材料に添加してもよい。原料は、その後、脱ハロゲン化された、部分的に不安定化された、及び部分的に分解された炭化水素融解物を第2段階30に直接注入する前に、圧縮され、せん断され、融解され、部分的に不安定化され、脱硫され、及び脱ハロゲン化される。押出機201は、炭化水素材料のそれぞれ異なる混合物を異なるスループット速度で受入及び放出することができ、それにより、従来技術ではこれまで実現されていないプロセスの柔軟性が提供される。一般的な押出機の寸法は、L/D比又はバレル長さ対バレル直径の比として表わされることが多く、ほとんどの応用で産業用に通常使用される場合、15〜35の範囲である。押出機201のL/D比は、より高い。所望の供給速度及び炭化水素材料に対する熱伝達の有効速度に大きく依存して、押出機201のL/D比は、35〜75である。
細断された炭化水素材料は、供給口202から押出機201に導入される。供給帯域1 401の押出機スクリュー及びバレルは、細断炭化水素材料を受け入れ、炭化水素材料を次の帯域2 402に搬送して圧縮するように設計されている。本発明を説明する目的では、帯域1羽根対帯域4羽根の深さの比は、スクリュー圧縮比と呼ばれる。押出機201は、供給端で約1.5:1〜2.0:1の、放出端で約4:1〜5:1の範囲の圧縮比を有する。したがって、押出機201の帯域1 401のスクリュー及びバレル構築体の設計には、1.5〜2.2の圧縮比が組み込まれている。
選択的に、添加剤及び/又は融液相触媒の段階的添加が望まれる場合、これらの微粉化添加剤及び/又は融液相触媒は、添加剤開口部203に導入することができる。これらの鉱物系添加剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、及び/又は様々な形態のメタロイドからなる群であると特定される1つ又は複数の融液相ヘテロ原子スカベンジャーから選択される。融液相触媒には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、メタロイド、非金属、及び/若しくは天然&合成ケイ酸塩鉱物からなる群の酸化物、水酸化物、並びに/又はカーバイド。
帯域2 402押出機スクリュー及びバレルは、細断された炭化水素材料を圧縮し、帯域2 402の内容物を脱水するのに十分な温度に炭化水素材料を加熱し、蒸気ポート204から蒸気を排出し、炭化水素材料を次の帯域3 403に搬送して融解するように設計されている。したがって、押出機201の帯域2 402のスクリュー及びバレル構築体の設計には、2.0〜3.8の圧縮比が組み込まれている。炭化水素材料が、第1の温度勾配又は熱勾配で加熱及び圧縮されるとともに、炭化水素材料の脱水から発生する蒸気は、帯域2 402の端部で蒸気ポート204から放出される。押出機201内の帯域2 402の端部では、圧縮が開放されて、バレルの内壁とスクリューの根元(シャフト)との距離を増加させることにより物質的に圧力が減少し、そのため、揮発性蒸気は、蒸気ポート204から押出機201を抜け出すことができるが、炭化水素材料は押出機201に残ることになるだろう。処理しようとする炭化水素材料の性質に応じて、蒸気ポート204直下の圧縮比は、1.0:1〜2.0:1以下に低減することができる。
蒸気ポート204の下流では、炭化水素材料は、せん断応力下の別の熱勾配で更に圧縮及び加熱され、融解が促進される。帯域3 403の押出機スクリュー及びバレルは、せん断応力及び直接加熱下で炭化水素材料を融解し、炭化水素材料を次の帯域4 404に前進させるように設計されている。したがって、押出機201の帯域3 403のスクリュー及びバレル構築体の設計には、3.5〜5.0の圧縮比が組み込まれている。このせん断応力は、押出機201のスクリュー羽根、押出機201の壁面、及び融解炭化水素材料の粘性の相互作用により生じ、炭化水素材料のスミアリング及び混合をもたらす。帯域3 403の下流で、炭化水素材料は、せん断応力下の別の熱勾配で更に加熱され、炭化水素材料の非常に効率的な脱ハロゲン化が促進される。この脱ハロゲン化は、ハロゲン酸及び塩のin situ形成をもたらす。これらの塩は、依然として炭化水素材料の成分であり、押出機201を作動させることにより生成されるハロゲン酸と同様に融液相クラッキング触媒であることが特定されている。帯域4 404の押出機スクリュー及びバレルは、炭化水素材料を混合、不安定化及び脱ハロゲン化し、ハロゲン出口ポート205からハロゲン酸を排出し、炭化水素材料を、熱窯炉反応器の帯域4 404の連続部分に搬送して、分子を更に不安定化するように設計されている。したがって、押出機201の帯域4 404のスクリュー及びバレル構築体の設計には、4.0〜5.0の圧縮比が組み込まれている。
ハロゲン酸は、ある可塑剤及び添加剤の分解から装置により生成される最初の商業的に重要な石油炭化水素蒸気と同様に、それぞれの蒸気相でハロゲン出口ポート205から除去される。押出機201内の帯域4 404の端部では、圧縮が開放されて、バレルの内壁とスクリューの根元との距離を増加させることにより物質的に圧力が減少し、そのため、ハロゲン酸及び炭化水素蒸気は、ハロゲン出口ポート205から押出機201を抜け出すことができるが、融解炭化水素材料は押出機201に残ることになるだろう。処理しようとする炭化水素材料の性質に応じて、ハロゲン出口ポート205直下の圧縮比は、1.0:1〜2.0:1以下に低減することができる。
その後、部分的に不安定化/分解され、かつ脱ハロゲン化された炭化水素材料は、二次せん断応力下の更に別の熱勾配中を前進し、その後、これらに限定されないが、更なる微粉化固形物及び/又は炭化水素系液体を含む更なる添加剤を注入ポート206から選択的に添加することができる。好ましい実施形態では、任意の更なる微粉化固形物は、アスファルト等の、約690°F(366℃)よりも高い沸点を有する石油系液体に懸濁されている微粉化固形物で構成される加熱スラリーの形態で押出機201に導入される。
第1段階20は第2段階30に直接接続されており、そのため、脱ハロゲン化され、かつ部分的に不安定化/分解された炭化水素材料は、1つ又は複数の連結ポート207から第2段階30へと直接放出される。連結ポート207(複数可)は、電気ヒータ又は当該技術分野で標準的な任意の他の手段により、帯域4内で作動する押出機201及び熱窯炉反応器301のそれぞれの部分で維持される帯域4作動温度と一致する温度に加熱される。
上り傾斜又は下り傾斜のいずれの実施形態でも、本発明は、その第2段階30に、1つ又は複数の回転熱窯炉反応器301を含み、その各々は、異なる温度で作動し、環状バッフルダム304により隔てられている少なくとも2つの隣接チャンバー302、303を有する。熱窯炉反応器301は、モータ及びギヤ駆動装置314により動力が供給されるロバストなギヤ駆動装置により回転する。混合及び材料前進は、内部スクリュー羽根及び/又はバッフル及び/又は混合ブレード及び/又はリフター又はこれらのデバイスの任意の組み合わせ、集合的に、熱窯炉反応器301の内側表面に取り付けられている混合手段309により達成することができる。一体型混合手段を有する逆回転シャフトを有していない熱窯炉反応器301では実現することができない混合量を必要とする応用では、熱窯炉反応器301は、モータ324により駆動され、その軸に沿って熱窯炉反応器301の長さに伸長する選択的な逆回転シャフト310を含んでいてもよい。シャフト310は、シャフト310に取り付けられている選択的な内部混合ブレード311を回転させる。ベアリング/端部プレート構築体315は固定されており、熱窯炉反応器301を適所に保持して、熱窯炉反応器301の回転を可能にし、並びに端部プレート315と一体化されている補助注入ポート320から熱窯炉反応器301への液体の導入を可能にする。ベアリング/端部プレート構築体316は固定されており、熱窯炉反応器301を適所に保持して、熱窯炉反応器301の回転を可能にし、並びに熱分解から生じる蒸気及びチャーの連続的な取り出しを可能にする。
バッフルダム304は、中央開口部305を有する円柱状の円板又はプレートである。バッフルダム304は、熱窯炉反応器301の第1のチャンバー302と第2のチャンバー303とを隔てており、選択的なシャフト310は、使用される場合は、バッフルダム開口部305を通過することが可能である。開口部305は、炭化水素材料が、第1のチャンバー302から第2のチャンバー303へと通過することを可能にする。連結ポート207からの供給速度を操作することに関するバッフルダム304の開口部305のサイズは、迅速な増加圧力条件を生じさせずに、第1のチャンバー302で達成することができる最大の融解物レベルを決定する。第1のチャンバー302での圧力上昇の可能性を最小限にして、より高い原料スループット速度を可能にするための装置10の設計には、バッフルダム304の開口部305が流動の制限をもたらさないように、バッフルダム304にはより大きな開口部305が組み込まれるだろう。第1のチャンバー302での圧力上昇の可能性を依然として最小限にして、より低い原料処理速度を可能にするための装置10の設計には、選択的に、バッフルダム304にはより小さな開口部305が組み込まれてもよいが、より小さな開口部305の選択的な設計特徴は、原料流速を、バッフルダム304の開口部305の設計容量よりも低くして自由な流動を可能にする場合は、必ずしも必要ではない。したがって、より小さな開口部305の選択肢が装置設計にて選択されない場合、第1のチャンバー302の融解物レベルは、より小さな開口部305が選択された場合に生じた可能性のある、対応するより高いレベルに維持することはできない。第1のチャンバー302での圧力上昇が望ましく、熱窯炉反応器301が、その内部の圧上昇に耐えるように構築されている応用の場合、開口部305は、開口部305を通過する融解物流動の所望の度合いの制限をもたらすように、大きさが決定されることになるだろう。
第1のチャンバー302の融解物レベルの管理は、(i)第1のチャンバー302の圧力維持と、(ii)連結ポート207から第1のチャンバー302への炭化水素材料の供給速度と、(iii)第1のチャンバー302の融解物の粘性と、のバランスをとることが必要であり、それらは全て、バッフルダム304の開口部305のサイズを設計する際に考慮されるべきである。所望の圧力制御は、当該技術分野で一般的な圧力制御デバイスを使用することにより達成することができる。好ましい実施形態では、圧力制御デバイス(非表示)の位置は、連結ポート207と一体化されている末端プレート315の最上部にある補助注入ポート320付近である。連結ポート207から第1のチャンバー302への炭化水素材料の供給速度の制御は、押出機201(複数可)への供給速度を管理することにより達成される。融解物粘度の緩和は、注入ポート206及び/又は補助注入ポート320にて石油系液体を注入することにより達成することができる。融解物粘度のより大きな低減は、相応に大量の石油系液体を添加することにより達成されるが、適量の石油系油の添加は、特に注入ポート206にて注入されると、融解物粘度の物質的な減少をもたらすことが多い。注入ポート206での油注入は、一次的には融解物粘度の低減をもたらし、二次的には、連結ポート207を通過する融解物の膨張をもたらし、それに応じて連結ポート207の圧力が増加する。融解物レベルが、バッフルダム304中の開口部305の最上部より高い場合、補助注入ポート320から油を注入すると、一次的には第1のチャンバー302の急激な急速圧力上昇がもたらされ、二次的には第1のチャンバー302の融解物粘度のわずかな減少がもたらされることを予想することができる。そのような結果は、精油頂塔留分又は同様の軽質石油留分が注入されると悪化し、690°F(366℃)よりも高い沸点を有する石油系液体が多かれ少なかれ注入されると緩和される。融解物レベルが、バッフルダム304の開口部305の最上部より低い場合、補助ポート320から油を注入すると、注入された液体の沸点に応じて、一次的には、熱窯炉反応器301の、緩和されてはいるものの急激な急速圧力上昇がもたらされ、下流の触媒反応器及び/又は還流反応器及び/又は分溜塔(集合的に、非表示)並びにコンデンサ80での蒸気スループット速度は、それに応じて増加する。この液体注入の二次的な結果は、第1のチャンバー302の融解物粘度のわずかな減少であり得る。バッフルダム304の開口部305のサイズ設計は選択的なシャフト310が、使用される場合、バッフルダム304の開口部305を通過するため、開口部305の断面積の低減を許容しなければならない。
回転する熱窯炉反応器301には、連結ポート207から炭化水素融解物が連続的に供給される。熱窯炉反応器301は、電気的に、又は2つの帯域での非凝縮性プロセスガス及び/又は天然ガスの直接燃焼のいずれか、又はそれらの組み合わせにより加熱される。加熱手段は、重要ではなく、以下のものが含まれていてもよい:直接燃焼式ガス加熱、電気発熱体、放射加熱、及びこれらに限定されないが、それぞれの帯域温度に適切であり得るDowtherm(登録商標)、溶融鉛、溶融塩、及び溶融ナトリウム等を含む、当該技術分野にて周知の熱伝達媒体を使用した熱ジャケット。図3には、第1のチャンバー302に対応する第1の加熱帯域312、及び第2のチャンバー303に対応する第2の加熱帯域313の直接ガス燃焼加熱の選択肢が組み込まれている本発明の実施形態が示されている。これらの加熱帯域の各々は、熱窯炉反応器301を取り囲み、かつガスバーナアレイ306を作動させることにより、その区画をそれぞれ加熱するジャケットである。ガスバーナアレイ306は、図3に例示されている実施形態に示されているように、ガス放出ポート830(図4)から回収される非凝縮性産物ガス、天然ガス、又は1つ若しくは複数のバーナポート307及び/又は308(複数可)に導入される非凝縮性産物ガス及び天然ガスの混合物により燃焼させることができる。単一のバーナポートを使用して両ガス流を導入することができるため、2つの別々のバーナポートは重要ではない。
熱窯炉反応器の内容物は、1つ又は複数の混合手段を使用して混合することができる。これらの混合手段の1つは、スクリュー羽根及び/又はバッフル及び/又は混合ブレード及び/又はリフター、又はこれらのデバイスの任意の組み合わせ309にて集合的に構成されており、熱窯炉反応器301の内部表面に接続されている。この第1の手段は、熱窯炉反応器301内にある選択的な逆回転ミキサにより増強することができる。逆回転ミキサは、相補的混合(counter−mixing)を達成するように反対方向に作動する。一体型混合手段309を有する逆回転シャフトを有していない熱窯炉反応器301では実現することができない混合量を必要とする応用の好ましい実施形態では、スクリュー羽根、バッフル、ブレード、及び/又はリフターを含む混合手段309には、反対方向に回転するブレード311の通過を可能にするようにスロットが設けられていなければならない。逆回転シャフト310及びブレード311が使用される場合、混合手段309は、混合手段309及び311の間の接触を回避するように適切に離間されているスロットを有していなければならない。
融解炭化水素材料を第1のチャンバー302で、制御された滞留時間及び温度にわたって混合することにより、更なる分子不安定化、有機ハロゲンのほぼ完全な還元、並びにテレフタル酸の安息香酸へのほぼ完全な還元及び安息香酸のベンゼンへのほぼ完全な還元がもたらされる。脱ハロゲン化され、かつ部分的に不安定化/分解された炭化水素材料を、連結ポート207から第1のチャンバー302へと連続導入することにより、設計管理された指定の滞留時間にわたって、第1のチャンバー302での炭化水素材料の蓄積及び混合の動的平衡がもたらされ、炭化水素材料は、バッフルダム304の中央開口305から第2段階30の第2のチャンバー303へと連続的に受動放出される。バッフルダム304の開口部305の直径は、炭化水素材料が第2段階30の第2のチャンバー303へと前進する溢流地点(spill point)の高さを決定する。熱窯炉反応器の内容量の相補的混合は、複雑で費用がかかる実施形態であるが、熱窯炉反応器内に追加の表面積を提供し、熱伝達並びに最も完全な混合を容易にする。309及び311による選択的な逆回転混合は、同じ又は異なる相対速度で作動させることができる。
第1のチャンバー302での滞留から第2のチャンバー303への溶融相転移は、最終熱分解が第2段階30の第2のチャンバー303で生じるため、熱勾配の地点と一致する。この熱分解は、分解される原料の種類毎に最適化された滞留時間にわたって生じる。固体チャー残渣が、ベアリング/末端プレート構築体316の底部に蓄積し、第2のチャンバー303から熱窯炉反応器ポート317を介して加熱脱揮発チャンバー318へと放出される。その後、脱揮発チャンバー318は、脱揮発チャーをチャーポート319から下流のチャー冷却システム(非表示)へと放出する。他の実施形態(非表示)は、チャーを中心軸の出口に移動させるスクリューを使用して、熱窯炉反応器301からチャーを取り出すことを含む。更に他の実施形態(非表示)は、チャーを出口ポートに向かわせる、熱窯炉反応器301周囲付近の最も低い末端にあるチャネルを含む。
炭化水素系液体を選択的に添加することにより、液体炭化水素材料を消費する目的及び溶融粘度を低減させる目的等を含むが、それらに限定されない目的を達成することができる。液体は、注入ポート206及び/又は1つ又は複数の補助注入ポート320から導入することができる。同様に、蒸気除去ポート204及び/又は他所に由来する水及び/又は蒸気を、水−ガスシフト反応を促進するために、選択的に、1つ又は複数の注入ポート206及び/又は320を介して注入することができる。また、選択的に、下流のコンデンサ系統から出てくる非凝縮性ガスの留分として得られるメタン及び/又は非凝縮性炭化水素を、1つ又は複数の更なる補助注入ポート320から導入して、熱窯炉反応器301から蒸気出口323へと炭化水素蒸気を搬送するキャリヤガスとしての役目をさせるか、及び/又は選択的に熱窯炉反応器301内部の加圧を提供することができる。
本発明の改良型分割帯域装置は、複数の産物を同時に生産する能力を有し、産物の1つは硬質ろうであり、それは、典型的な熱分解変換温度よりも低い温度で装置から生産される。集合的に30〜70個の炭素原子を有するこの微結晶性又はパラフィンろう産物は、好ましい実施形態では、微結晶性又はパラフィンろう産物の一貫した収量を達成することができることがこれまで特定されていない温度閾値である300℃〜338℃(572°F〜690°F)の温度範囲内にある、混合、分子不安定化及びヘテロ原子除去帯域404の端部で、熱窯炉反応器301から溶融ろうを直接放出することにより回収することができる。熱窯炉反応器301から直接ろうを回収するための好ましい実施形態は、熱窯炉反応器301の作動には必要ではなく、選択的なものである。この好ましい実施形態は、熱窯炉反応器301からのろうの直接放出が、コンデンサ80からの液体産物回収、産物ガス放出ポート830からの産物ガス回収、及びチャー放出319からのチャー回収を犠牲にしても、望ましい場合に使用される。したがって、硬質ろうが、混合、分子不安定化及びヘテロ原子除去帯域404の端部から回収される場合、炭化水素材料全ての熱分解が完了に至らず、それにより非凝縮性ガス及びチャーの形成が低減され、物質収支の保存により凝縮性産物の収量が増加するため、合計凝縮性産物収量はより高くなる。
図3に示されているような、この好ましい実施形態の使用の1つの手段では、熱窯炉反応器301は、負の傾斜又は傾きで、つまり水平50に対して下り傾斜で傾斜しており、熱窯炉反応器301の入口末端は、出口端部よりも高い位置にあり、キャッチトラフ330に回収された溶融ろう産物が、末端プレート構築体316へと出ているろう放出ポート332のろう出口管331から退出する重力による搬送支援を可能にする。キャッチトラフ330は、熱窯炉反応器301の長軸方向中心に位置しているろう出口管331の最上部に切り欠かれた開口部の直下に位置する。ろう出口管331は、熱窯炉反応器301の長さ全体に沿っては存在していないが、帯域5 405と一致する、第2のチャンバーの長さに沿ってのみ存在している。熱窯炉反応器301が回転し、反応器の内容物が、沸騰し、混転し、流動し、回転熱窯炉反応器301の開口上部空間から下方に垂直落下すると、溶融ろうは、キャッチトラフ330に溢流し、つまり出口管331のその部分は、開口部を形成するために切り取られていない。キャッチトラフ330は、キャッチトラフ330が、バッフルダム304への中央開口部305内に位置し、それにより帯域4 404から帯域5 405への移行部分で、微結晶性又はパラフィンろうを構成する融解物を捕捉するように配置されているろう出口管331の末端に位置している。キャッチトラフ330は、逆回転シャフト310を選択的に使用する場合には、熱窯炉反応器の下部末端に逆回転シャフト310の末端ベアリングが組み込まれている逆回転シャフト310を収容するろう出口管331と一体化されており、そのような端部ベアリングは、ろうの通過が末端ベアリングを通過することを可能にするケージ又は類似デバイスに収容されており、ブレード311は、ろう出口管331が存在するため熱窯炉301の第2のチャンバー303から排除される。キャッチトラフ330に捕捉されたろうは、下り傾斜の重力により、シャフト310及びろう出口管331内壁間の環状のろう出口管331内に流れ、懸垂末端ベアリングを通過し、その後ろう放出ポート332からろう出口管331を退出する。300℃以上338℃以下(572°F〜690°F)の範囲の帯域4 404温度を超える温度の帯域5 405を、ろう出口管331が通過することを考慮すれば、ろう出口管331内でろうの限定的な熱分解が生じる。この熱分解の度合い及びその結果生じるろうの減少は、帯域5 405内のろう出口管331のその部分でのろうの滞留時間を短縮することにより緩和される。逆回転シャフト310を使用しない場合、ろう出口管331は、完全に開口しており、そのため、キャッチトラフ330に捕捉されたろうは、下り傾斜の重力により、ろう出口管331内に流れ、逆回転シャフト310の存在により妨害されず、その後ろう放出ポート332にてろう出口管331を退出する。鉱物系添加剤及び非ポリマー狭雑物等の存在又は非存在に応じて、ろう放出ポート332から放出されるろうは、商業的な仕様に必要な場合は、フィルタろ過及び/又は他の処理を必要とする場合もあり又は必要としない場合もある。
この好ましい実施形態(非表示)の代替的な使用では、熱窯炉反応器301は、正の傾斜で、つまり水平50に対して上り傾斜で傾斜しており、そのため、熱窯炉反応器301の入口末端が、出口末端よりも低い位置にあり、熱窯炉反応器301の第1のチャンバーの内容物が、熱窯炉反応器301の低部末端で不安定化融解物貯留部を形成することを可能にする。この代替的な使用ではまた、キャッチトラフ330は、熱窯炉反応器301の長軸方向中心に位置しているろう出口管331の最上部に切り欠かれた開口部の直下に位置する。ろう出口管331は、熱窯炉反応器301の長さ全体に沿っては存在していないが、帯域4 404と一致する、第1のチャンバーの長さに沿ってのみ存在している。この代替的な使用手段では、不安定化融解物貯留部の作動レベルは、水平50、キャッチトラフ330のレベル、及びバッフルダム304への中央開口部305のレベルと一致し、3つ全てのレベルは同じである。したがって、ろうは、キャッチトラフ330及び熱窯炉反応器301の下部末端のろう出口管331並びにバッフルダム304の中央開口部305を介して融解物貯留部を退出し、それにより帯域5 405に進入する。この使用では、ろう出口管331は、300℃以上338℃以下(572°F〜690°F)の範囲の帯域4 404温度を超える温度の帯域5 405を通過せず、ろうの帯域5 405の熱分解は、ろう出口管331内で生じない。出口管331内のろう熱分解は、上り傾斜使用では回避されるが、ろうの一部は、帯域5 405と一致する熱窯炉反応器の第2のチャンバーへと前進し、熱分解され、コンデンサアレイ80から回収される凝縮性及び非凝縮性産物に変換されるため、ろう減少の減少が、下り傾斜使用とほぼ等しい量で生じる。鉱物系添加剤及び非ポリマー狭雑物等の存在又は非存在に応じて、ろう放出ポート332から放出されるろうは、商業的な仕様が必要な場合は、フィルタろ過及び/又は他の処理を必要とする場合もあるし、又は必要としない場合もある。
配置及び作動の更に別の手段では、熱窯炉反応器301は、約349℃〜338℃(660°F〜690°F)程度の最低温度、及び約360℃〜382℃(680°F〜720°F)程度の最高温度で、上り傾斜又は下り傾斜配向のいずれでも作動させることができる。この例では、熱窯炉反応器の両チャンバーは、帯域4 404の温度範囲とほぼ等しい、同じ温度範囲内で作動する。したがって、温度帯域5、6、及び7が存在しない場合でも、帯域4 404の端部で形成するろうの熱分解は、たとえあったとしてもごくわずかしか生じず、鉱物不純物等以外の炭化水素材料の大部分は、硬質微結晶質又はパラフィンろうとして回収されることになる。鉱物系添加剤及び非ポリマー狭雑物等の存在又は非存在に応じて、ろう放出ポート332から放出されるろうは、商業的な仕様に必要な場合は、フィルタろ過及び/又は他の処理を必要とする場合もあるし、又は必要としない場合もある。
ガスバーナアレイ306及び/又は第1の加熱帯域312及び第2の加熱帯域313からの排気は、加熱帯域312から出ている第1の排気ポート321及び加熱帯域313から出ている第2の排気ポート322から排出される。熱窯炉反応器301からの一次放出、すなわち熱窯炉反応器301での炭化水素材料の熱分解から生じる炭化水素蒸気は、最終的に凝縮システム80で使用してもよく又は使用しなくともよいため、熱窯炉反応器排気ポート323を介して下流側の触媒反応器及び/又は還流反応器及び/又は分溜塔(非表示)に放出される。
装置10は、各々が複数の温度及び滞留時間を有する、全体にわたって使用されるプロセス帯域に関して説明されている。装置10は、原料混合物が連続的に加熱及び前進する一連の個別のスループットプロセス帯域で構成されている。装置10は、作動期間中のわずかな温度変動を十分に許容するが、効率のため及び帯域温度と滞留時間との複数性(plurality)を維持するために、反応器10における動的平衡を維持することが望ましい。動的平衡は、これらの温度が達成されて作動が開始されたら、各帯域で一定の原料スループット速度及び一定の反応器温度を維持することにより達成される。原料スループットが遅いほど、滞留時間は長くなる。動的平衡が中断されても、作動が律速限界内で継続する限り、より長い滞留時間にわたる所望の化学反応の駆動を成功させるために必要とされる熱はより少ない場合がある。対照的に、原料スループットが速ければ、滞留時間はより短くなる。動的平衡が中断されても、作動が律速限界内で継続する限り、より短い滞留時間にわたる所望の化学反応の駆動を成功させるために必要とされる熱はより多い場合がある。いずれの場合でも、律速限界が、温度及び/又は滞留時間の変動を超えると、所望の反応は継続せず、望ましくない反応が生じる場合がある。したがって、動的平衡が維持されない場合、非平衡状態での作動は、効率的なシステム作動及び製品品質の一貫性に対するリスクを提起する。
帯域温度と滞留時間との複数性を維持することが重要であるが、動的平衡が中断されると、この複数性を維持する機能的な能力には限界がある。これらの限界は、特に反応器の設計容量、炭化水素材料の熱伝導度が一定であること、及び反応速度論に起因する。例えば、反応器設計で企図された速度を超える過度の供給速度は、炭化水素材料への熱伝達を促進するのに不十分な滞留時間をもたらす可能性が高い。こうした低減された滞留時間は、炭化水素原料に適切な熱を伝達することができたとしても、所望の反応が所望のレベルの完了度を達成するのに十分ではない場合がある。別の例では、より迅速な原料スループットを補おうとして、加熱システムの温度を上昇させる場合がある。この行為により限定的な利益が達成されるが、加熱表面と炭化水素材料との温度差が極端になり、理想的には次の帯域で生じるはずの反応があまりにも早く促進され、それにより装置10の帯域分割性が失われる。過剰なスループットを補うために過剰加熱することにより引き起こされるリスクには、過剰な反応器圧力/危険な作動条件の生成、並びに固体ろう及び/又は凝縮性炭化水素の収量を犠牲にしたガス及びチャーの過剰生産が含まれる。別の例では、装置10の能力を大きく下回る供給速度又は供給の長期中断は、過剰な滞留時間をもたらす場合がある。
装置10は、原料混合物が連続的に加熱及び前進する一連の個別のスループットプロセス帯域で構成されている。これらのスループットプロセス帯域は7つ存在する:原料供給帯域401、圧縮帯域402、融解帯域403、混合、分子不安定化及びヘテロ原子除去帯域404、熱分解帯域405、脱揮発帯域406、並びにチャー放出帯域407。
帯域1:原料供給帯域。帯域1 401は、周囲温度及び圧力で、1分未満の滞留時間にわたって稼働される。図1に示されている本発明の実施形態では、原料は、入口100にて装置に導入される。供給材料を導入する手段が何かは重要ではなく、選択した供給方法が、十分にロバスト及び効果的であり、それにより細断され高度に圧縮可能であることが多い原料の供給不良が回避され、反応器供給入口100又は反応器10それ自体を汚損することになる望ましくない大きなかさ高い非ポリマー固体狭雑物が単離される限り、当該技術分野にて周知のいずれの方法であってもよい。この帯域の目的は、材料を装置10に受け取り、その材料を次の帯域へと移動させることである。
本発明の装置10は、混合された固形物及び/又は様々な固形物と、0を含む任意の量の混合された石油系液体及び/又は様々な石油系液体との意図的な組み合わせを可能にする。本発明の装置は、幅広く多様な原料流動、非常に汚染された原料流動、及び経時的に一貫しない組成を有する原料流動の効率的な変換を提供する。加えて、炭化水素材料は、これらに限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、及び/若しくはメタロイドからなる群の酸化物、水酸化物、並びに/又はカーバイドを含む形態の1つ又は複数の融液相ヘテロ原子スカベンジャーから選択される微粉化された鉱物系添加剤とともに、入口100にて装置10に供給することができる。選択的に、例えば、軽油、ディーゼル添加剤、又はガソリン添加剤のみが所望の場合、供給材料には、これらに限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、メタロイド、及び/若しくは天然&合成ケイ酸塩鉱物からなる群の酸化物、水酸化物、並びに/又はカーバイドを含む形態の1つ又は複数の融液相触媒の添加が更に含まれていてもよい。
入口100での鉱物系添加剤及び/又は融液相触媒の添加は選択的なものであり、これらに限定されないが、原料炭化水素材料の組成、所望の産物構成、例えば、生産油対生産ガスの比、生産ろう対油の比、及び凝縮性炭化水素産物の所望の分子組成を含む要因に依存する。例えば、ヘテロ原子スカベンジャーの添加が所望の場合、反応器に添加される総炭化水素材料のヘテロ原子スカベンジャーの重量パーセントは、0%〜20%以上の範囲のパーセント等であるが、反応器中のスカベンジャーの行く末により決定される。鉱物系添加剤及び/又は融液相触媒の十分な分散は、これら鉱物系添加剤及び/又は融液相触媒の効率的な使用に、並びに過剰な微粉化鉱物系添加剤及び/又は融液相触媒の存在に起因する、特に帯域1〜4における反応器汚損を防止するために重要である。炭化水素材料中のスカベンジャーの分散が完全でないと、ヘテロ原子スカベンジャーの全てではなく一部しか、所望の反応への寄与に利用可能にならないだろう。更に、ヘテロ原子スカベンジャーの一部は、炭化水素材料を反応器に導入する前又は導入後に炭化水素材料中で凝集し、それにより所望の反応への寄与に対するその利用可能性が低減される場合がある。ヘテロ原子スカベンジャーが関与する主要反応が1つのみであることが予想される場合、総炭化水素原料供給に添加されるヘテロ原子スカベンジャーの至適重量パーセントは、所望の脱ハロゲン化及び脱硫反応を全て完了するために化学量的に必要とされるヘテロ原子スカベンジャーの量と、例えばシステムにおけるヘテロ原子スカベンジャーの分散が不完全であるため所望の反応に利用することができないヘテロ原子スカベンジャーの量との合計であってもよい。ヘテロ原子スカベンジャーが関与する主要反応が複数であることが予想される場合、そのようなスカベンジャーは、競合反応により消費される場合がある。多くの考え得る例の1つとして、炭化水素材料が、テレフタル酸のポリエステル(PET)の存在下で、ポリ塩化ビニル(PVC)及び/又はポリ塩化ビニリデン(PVDC)を含む場合、競合反応には、PVC及びPVDCから発生する塩酸の塩化カルシウム塩及び水への変換、並びにPETの分解から発生する昇華物テレフタル酸及び安息香酸のベンゼンへの変換促進が含まれ得る。したがって、炭化水素材料に添加されるヘテロ原子スカベンジャーの量は、所望の競合反応の完了が全て達成され得るのに十分でなければならない。同様に、原料炭化水素材料中のポリマー種の数及びそれらの相対濃度は、ポリマー分解速度に影響を及ぼすだろう。例えば、単一種を律速する単純な一次速度論を引用すると、その種のより多くの添加は、分解速度の加速を促進することができる。該当する場合、原料炭化水素材料に対するヘテロ原子スカベンジャーの至適重量パーセントの決定は、炭化水素材料の組成並びに同じ材料のあらゆる予想される経時的変化に関する十分な情報に基づいてなされなければならない。同様に、ポリマー分解速度は、炭化水素材料への触媒添加により変化し、それによりエネルギー障壁が低下し、全てではないが一部の分解反応を加速する相互作用がもたらされる場合がある。炭化水素材料に添加される触媒の選択及び量は、それがある場合は、炭化水素材料の組成の関数である。
帯域2:原料容積低減/圧縮帯域。帯域2 402は、炭化水素材料の容積を低減するために、炭化水素材料の引火点未満の温度で炭化水素材料から大気空気を排出するために、及び炭化水素材料の沸騰時に水分として蒸気を生成及び排出するために稼働される。帯域2 402は、周囲温度以上、かつ220°F(104℃)以下程度の、表面温度ではない内部温度で稼働される。帯域2では、炭化水素材料は、温度上昇、せん断力、及び蒸気発生に起因する圧力上昇に曝される。帯域2の初期では、圧力は、周囲圧力又はその付近である。加熱されるとともに、炭化水素材料は、せん断作用を受ける。蒸気が発生するとともに、帯域2の圧力は、帯域2に導入される炭化水素材料中の水分量、並びに押出機スクリューとバレルとの間の間隙、せん断度の制御に応じて、最大で約50psig(345kPa)しか増加しないか、又は約500psig(3448kPa)も増加する。帯域2の終わりでは、蒸気が、蒸気ポート204から放出されると、帯域2の圧力は、蒸気ポート204では最低で少なくとも2psig(13.8kPa)に低下することになる。帯域2での滞留時間は、押出機スクリュー及びバレル設計に応じて、約15秒以上、約5分以下である。炭化水素材料の容積が低減され、供給材料は、回転スクリュー並びにスクリュー及びバレル構築体210により圧縮され、空気及び水分は、選択的な真空下でシステムから蒸気として放出される。それにより、原料水分低減は、1%重量未満の水分から15%重量程度までの水分範囲の水分含有量に達成される。好ましい実施形態では、水分は、約10重量%に低減される。排出された空気及び水分は、活性炭床へと送ることができる。凝縮水は、廃水として廃棄することができる。活性炭床の稼働は、管轄政府機関によっては、廃水前処理システムの環境許可を必要とする場合がある。残りの空気は、例えば、悪臭防止を容易にするために、選択的に、直接燃焼式反応器加熱システムの空気取込部、又はガス放出ポート830(図4に示されている)から放出される非凝縮性ガス産物を燃料とするディーゼル発電機及びダイナモを含む発電設備(「発電セット(genset)」、非表示)の空気取込部に送ることができる。発電セットを使用して、本発明の装置により使用することができ、及び/又は本設備の他の部品に分配することができる電気を発電することができる。
帯域3:原料融解帯域。帯域3 403は、220°F(104℃)〜572°F(300℃)程度の内部反応器温度範囲で、10分以上45分以下程度の滞留時間にわたって稼働される。帯域3では、炭化水素材料は、温度上昇、せん断力、及び融解時の炭化水素材料の膨張に起因する圧力上昇を受ける。帯域3の初期では、圧力は、蒸気ポート204と一致する地点では、2psig(13.8kPa)以上である。加熱されるとともに、炭化水素材料は、せん断作用を受ける。融解が生じ、炭化水素材料が膨張するとともに、帯域3圧力は、炭化水素材料の組成、並びに押出機スクリューとバレルとの間の間隙、及びせん断度の制御に応じて、最大で約50psig(345kPa)しか増加しないか、又は約800psig(5516kPa)も増加する。例えば、炭化水素材料が、ポリイソブチレンで構成されている場合、ポリイソブチレンの一部又は全ては、上記材料を構成するポリイソブチレンの異性体に応じて、融解物として帯域3に進入することになる。別の例では、炭化水素材料が低密度ポリエチレンで構成されている場合、帯域3の最低作動温度は、220°F(104℃)以上であり、約220°F(104℃)以下の融点を有する成分全ての融解を達成するのに適切な作動温度にある。更に別の例では、炭化水素材料がポリスチレンで構成されている場合、帯域3の最低作動温度は、464°F(240℃)以上であり、約464°F(240℃)以下の融点を有する成分全ての融解を達成するのに適切な作動温度にある。有機ハロゲンが融解物中に存在する場合、本発明を稼働させると、305°F(152℃)以上の温度範囲で比較的わずかな収量のハロゲン酸の生成がもたらされることになる。帯域3の作動温度が572°F(300℃)に近づくと、帯域3 403で更なる塩酸が発生する場合がある。その場合、ヘテロ原子スカベンジャー及びハロゲン酸の反応から生じる塩が形成し始め、残りのハロゲン酸とともに、本発明の稼働によりin situで生成される融液相クラッキング触媒として作用するだろう。ハロゲン酸が帯域3の終わりで形成し始める場合、帯域3は、帯域3の作動圧力範囲の上域で作動する。
帯域4:混合、不安定化及びヘテロ原子除去帯域。帯域4 404は、572°F(300℃)以上690°F(366℃)以下程度の内部反応器温度範囲で、30分以上120分以下程度の滞留時間にわたって稼働される。帯域4では、炭化水素材料は、温度上昇、せん断力、PVC、PVDC、及びある難燃剤等の分解に起因するハロゲン酸の発生、及びある添加剤及び可塑剤の分解に起因する炭化水素蒸気の発生に起因する圧力上昇を受ける。帯域4の初期では、圧力は、帯域3の近接端部の圧力と等しく、約50psig(345kPa)〜約800psig(5516kPa)の範囲である。加熱されるとともに、炭化水素材料は、更なるせん断作用を受けるため、膨張する。炭化水素蒸気及びハロゲン酸が発生するとともに、帯域4の圧力は、発生する炭化水素蒸気及びハロゲン酸の量、並びに押出機スクリューとバレルとの間の間隙、せん断度合いの制御に応じて、最大で約1,200psig(8274kPa)にも上昇する。押出機スクリュー及びバレル構築体210の端部付近、帯域4の中心又は中心付近の位置で、炭化水素蒸気及びハロゲン酸は、選択的に低真空下でハロゲン出口ポート205から放出される。この地点では、帯域4の圧力は、ハロゲン出口ポート205で、2psig(13.8kPa)以上の最低値に、又は真空が選択的に使用される場合、恐らくはそれより低い値に低下するであろう。不安定化炭化水素材料は、押出機201から連結ポート207を介して熱窯炉反応器301に放出される。炭化水素材料の不安定化が継続するとともに、連結ポート207の配管内、帯域4の連続部分で、軽微な圧力上昇から中程度の圧力上昇が起こる。熱窯炉反応器301の第1のチャンバー302内の帯域4の連続部分に排出されると、熱窯炉反応器の作動圧力に対して、一般的には約5.0psig(34.5kPa)以下への圧力低下が起こる。
帯域4で作動する本発明の装置のこの区画の目的は、融解物を長期間にわたって十分に混合し、融解物を含む分子を不安定化し、硫黄を除去し(脱硫)、有機ハロゲンを固形塩に変換する(つまり、脱ハロゲン化)ことである。
炭化水素材料内のポリマークラッキングは、塩酸、臭化水素酸、及び/又はフッ化水素酸の多段階生成により促進される。そのような酸は、一般的にクラッキング触媒として特定されている。同時に及びその後、これらのハロゲン酸とヘテロ原子スカベンジャーとの反応により、炭化水素材料中の有機ハロゲンが、これもクラッキング触媒として特定されている塩へと変換される。したがって、帯域4におけるあるポリマー可塑剤及び添加剤の分解の結果として炭化水素蒸気が帯域4 404で生成されることに加えて、また、帯域4を作動させることにより、標準的熱力学及び反応速度論モデルにより予測される温度を大きく下回る温度での炭化水素蒸気の生産がもたらされる。帯域4 404で生産されるそのような炭化水素蒸気は、凝縮すると、合計で2%以上22%以下の本発明の凝縮性産物の収量をもたらす。ヘテロ原子除去の効力及び帯域4 404の稼働から生じる産物油の生産速度は、帯域4の作動温度、帯域4での滞留時間、並びに帯域4の幾何学的配置対原料スループット速度及び組成の相互作用を達成するように、勾配速度を含むが、それに限定されない要因により制御される。帯域4の幾何学的配置は、帯域4内の押出機スクリュー及びバレル構築体210のその部分の長さ及び直径、押出機スクリューの設計、加熱連結ポート207の長さ、帯域4内の熱窯炉反応器303の第1のチャンバー302の長さ及び直径、帯域4の全部分の所望の総滞留時間、及び帯域4融解物からの総質量減少を含む要因の関数である。帯域4での反応により炭化水素融解物から除去されたヘテロ原子は、大部分は塩としてチャー材料に蓄積し、それは、その後、以下に述べるように帯域7から除去される。
本発明のその後の区画から回収される熱分解産物に加えて、微結晶性及び/又はパラフィンろう産物は、帯域4 404から帯域5 405への移行部分の地点で、具体的には、キャッチトラフ330でろうを回収し、その後ろう出口管331からろうを流動させ、最終的にテイクオフポート(takeoff port)332で回収することにより、熱窯炉反応器301の第1のチャンバー302の端部から直接放出することができる。帯域4の最初の部分の内部にある、せん断され、その後混合された融解物は、放出し、凍結させて試験すると、融解プラスチックの特徴を維持しているが、上記材料は、帯域4の後半内で帯域4 404から帯域5 405への移行部分に向かって前進するとともに、次第に不安定化されるため、上記材料は、主に同族クラッキング(homologous cracking)によるクラッキングを起こし始め、粘性を徐々に失い、凍結されると、より脆弱になり、融解物が、352℃(670°F)〜365℃(690°F)の範囲の温度にて、適切な滞留時間で保持されると、最終的には硬質ろうの特徴を示すようになる。帯域5での熱分解前には、比較的少量のチャーしか生成されないことを考慮すると、テイクオフポート332から放出されるろうは、ろうから蒸気として発生しなかった溶解低分子量炭化水素分子、反応器へ導入された原料の非炭化水素成分、及び導入されていた場合は、ヘテロ原子スカベンジャーの、もしあれば反応副産物に汚染されているに過ぎない。反応器は、ろうテイクオフ(wax take−off)を用いて又は用いずに稼働させることができる。ろうが取り出されない場合、液体状態で反応器に残り、その後の帯域で更に処理される。この硬質ろうが、取り出され、回収される場合、室温に冷却して固体状態にすることになる。そのため、ろうは、固形産物とみなすべきである。
炭化水素材料中のある非ポリマー材料は、最終産物分子組成に変化をもたらす反応に寄与する、及び/又は反応を促進するであろう。例えば、装置10に導入される原料炭化水素材料の狭雑物として紙が存在すると、図3に示されているテイクオフポート332から回収することができるろう中の、並びに図4に示されているテイクオフポート831及び/又は833及び/又は835から凝縮及び回収される凝縮性炭化水素蒸気中のパラフィン及び/又はイソパラフィンを犠牲にして、芳香族及び多核芳香族炭化水素の濃度が、それに比例して増加する場合がある。所望の一次産物が芳香族留分を含んでいる場合、原料中に紙が存在することは有利であり得る。別の例では、ラミネートの成分としてアルミニウムホイルを含むラミネート食品包装廃棄物が、都市廃棄物プラスチック中に存在する場合がある。ポリマー層が融解すると、アルミニウムホイルが放出される。アルミニウムの金属表面は、その表面での急速な解重合を促進し、ろう留分の収量増加をもたらす。
テイクオフポート332からのろう放出は、テイクオフポート332からろうを放出させずに本発明を作動させる場合よりも、高い総プロセス収量の凝縮性石油炭化水素をもたらす。凝縮性炭化水素が、テイクオフポート332からろうとして取り出される場合、これらの取り除かれた分子は、帯域5 405及び6 406での熱分解を受けず、ガス及びチャーの収量は、それに比例して低くなる。一般的に、テイクオフポート332から放出されたろうに懸濁されている比較的制限的な量のチャーは、大部分は、狭雑物として原料に含まれているセルロース、狭雑物として原料に含まれている非ポリマー物質、ヘテロ原子スカベンジャーが添加された場合は、反応及び未反応ヘテロ原子スカベンジャー、in situで生成された融液相触媒、供給原料に添加されたあらゆる融液相触媒の分解から生じる炭素で構成されている。
混合ポリマーの分解から生じ、テイクオフポート332から回収されるろうは、非分岐アルカン対分岐アルカンの比、より暗色の色、より高い融点、硬度、及び粘着特徴を含む、パラフィンろうとは対照的な微結晶性ろうの多くの特徴を示す。
帯域5:熱分解帯域。帯域5 405は、一般的に、温度範囲の下限が、365℃(690°F)〜393℃(740°F)程度であり、温度範囲の上限が、454℃〜488℃(850°F〜910°F)程度である、一次熱反応器に導入される原料の混合物に適切な内部反応器温度範囲内で、一般的に約5.0psig(34.5kPa)以下のin situ由来(derived)反応器圧力で、30分以上90分以下程度の滞留時間にわたって稼働される。必要とされる滞留時間にわたる高温とともに、酸素が欠如していることにより、高次反応速度論に従って生じる種々の熱分解反応が起こり、ポリマー材料は、揮発性蒸気及びチャー材料に分解される。蒸気流動は、主に蒸気で構成されるが、エアゾル液体及び凝縮性分子を含有している場合がある。この蒸気流動は、更なる下流処理(下記に記載)にかけられ、そこで凝縮性蒸気及び非凝縮性蒸気に分離される。凝縮性蒸気は、油、軽質低硫黄原油、燃料添加剤、及び基油を含む液体を形成する。重留分は、一般的に粗ろうの形態の固形産物を形成する場合がある。非凝縮性蒸気又はガスは、回収され、選択的に発電セット(上記に記載)に送って発電するか、又は使用前に、液体産物(下記でより詳細に考察)の蒸気ブランケットとして他所を循環させてもよい。
凝縮性炭化水素の最終収量、並びに油、ガス、チャー及び無機残渣の相対的物質収支は、幾つかの要因により制御される。これらの要因には、これらに限定されないが、作動温度、帯域5 405の幾何学的配置対原料スループット速度の相互作用、熱分解反応を完了させるために必要な滞留時間、所望の反応完了度、原料組成、及び該当する場合はテイクオフポート332からのろう産物の回収が含まれる。帯域5の幾何学的配置は、これらに限定されないが、熱窯炉反応器の第2のチャンバーの長さ、熱窯炉反応器の直径、熱窯炉反応器の内部設計、及び帯域5の融解物からの蒸気発生及び放出による質量減少の予測率を含む要因の関数である。この質量減少率は、帯域5幾何学的配置を設計するための双方向性熱力学及び反応速度論モデルからの重要な情報である。本発明を含むプロセスは、酸素及び有機ハロゲンが熱分解帯域5 405は事実上存在せず、それと相まって、塩を含むin situ由来触媒が存在することを特徴とする。
帯域5 405を作動させると、連続的に前進する炭化水素材料の熱分解が進行し、蒸気が反応器から排出されるとともに、炭化水素材料の質量の著しい減少がもたらされる。熱窯炉反応器301は、熱分解炭化水素材料が、不完全熱分解炭化水素材料上に蒸気の沸騰及び動的転移界面を示すボイラーとして作動する。この転移表面は、炭化水素材料が効果的に熱分解されて、残りが、脱揮発及びコークス化のための帯域6 406へと前進させる固体チャー材料及び任意の不完全熱分解炭化水素材料のみになるまで、動的平衡条件下で沸騰するため、連続的に発生する。熱分解が完了へと進行するとともに、反応器では、炭化水素材料の粘度の付随的及び相関的な変化が起こる。
選択的に、例えば、帯域5からの産物蒸気の排出を加速させるのが望ましい場合、所望の産物構成に応じて、非凝縮性キャリヤガスを、補助注入ポート320から熱窯炉反応器301に導入することができる。キャリヤガスを選択的に付加することにより、第2のチャンバー303を出て、対応する帯域5へと流動する蒸気流が、それに比例して増加する結果となる。したがって、この選択肢が行使される場合、コンデンサ80は、蒸気流の増加率を許容するように設計されていなければならない。そのような非凝縮性キャリヤガスは、窒素、及び/又は本発明を作動させることから生じる再利用非凝縮性ガス留分、及び/又は天然ガス若しくはこれらの非凝縮性ガスの任意の混合物に由来するメタンで構成されている。キャリヤガス用窒素の代わりとしての再利用ガス及び/又はメタンの使用は、窒素による希釈をしないため、生産されたプロセスガスのBTU含量が増加し、並びに窒素を購入又は生成する必要性がないため稼働コストが減少するという利点を有する。また、本発明のこの態様は、原料組成及び稼働条件の範囲に応じて、油収量の増加という予期しない利点、熱分解環境での反応器雰囲気の水素濃度のわずかな増加というわずかとはいえ予期しない利点、及びその結果生じるプロセスガスの水素濃度の予期しない増加をもたらすことができる。
帯域6:チャー及び残留固形物脱揮発帯域。帯域6 406は、チャーから揮発性炭化水素を除去し、並びに任意の残留オリゴマー及び半揮発性芳香族炭化水素をコークスに変換する役割を果たす。帯域6は、一般的に454℃(850°F)から488℃(910°F)程度の、約982℃(1800°F)以下の、一般的に及び好ましくは、593℃(1100°F)〜649℃(1200°F)程度の、熱反応器へ導入された原料の混合物に適切な最大熱分解温度以上の内部反応器温度で、及び一般的には約5.0psig(34.5kPa)以下のin situ由来反応器圧力で稼働される。帯域6 406は、一般的には約0.8psig(5.5kPa)以下のin situ由来反応器圧力で、及び15分以上60分以下程度の滞留時間で稼働される。帯域5 405及び6 406で起こる反応から生じる蒸気は、帯域5 405に配置されている出口323へと放出される。出口は、単一の出口323であってもよく、又はバックアップ出口又は補助出口を含む複数の出口であってもよい。
スクラバ(非表示)を使用して、帯域4 404で捕捉されなかった任意の残留ハロゲンを、ステップダウンコンデンサ80に放出する前に回収することができる。このヘテロ原子スクラバは、例えば、338℃(640°F)〜365℃(690°F)程度の、各固有原料混合物中のハロゲンを回収するのに適切な温度範囲だが、クラッキングを促進するほど過剰ではない温度で稼働される。
帯域6 406を作動させることから生じる蒸気は、選択的に、触媒反応器及び/又は還流反応器及び/又は分溜塔(集合的に、非表示)に送って、ステップダウンコンデンサ80に放出する前に更に処理することができる。熱窯炉反応器301の帯域5 405、帯域6 406、及び/又は帯域7 407、及び/又はスクラバから発散する蒸気は、1つ又は複数の二次触媒反応器、及び/又は還流反応器、及び/又は分溜塔(集合的に、非表示)に送ることができる。これらの反応器及び/又は塔は、必要に応じて、凝縮性産物中の分子サイズ及び分子種分布を最適化するように設計されている。
加えて、帯域6 406の目的は、分子クラッキングを所望の終了点まで完了させることを含み、また、シラン及びシロキサンの全てではないが一部を分解することを目的とする。注目すべきは、ポリフッ化エチレン(PTFE)、クロロメチル芳香族シラン(可撓性多層回路基板の成分)、又は反応速度論モデルが454℃(850°F)を超える温度での脱ハロゲン化を記述する他のハロゲン化種を含む炭化水素材料中の前記ハロゲンの捕捉は、熱窯炉反応器301の下流及びコンデンサアレイ80の上流に位置するスクラバ(非表示)で達成されなければならない。
凝縮性産物のオレフィン含有量が問題となる場合、選択的に、抗酸化剤/安定剤/阻害剤(以下、「阻害剤」と呼ぶ)を、熱窯炉反応器301からの放出の下流、並びに熱緩和が十分な任意の触媒反応器、及び/又は還流反応器、及び/又は分溜塔からの蒸気放出地点の下流に注入することができる。阻害剤は、4−tert−ブチルカテコール、他のアルキルカテコール、2,6−ジニトロ−p−クレゾール(DNPC)、全アスファルト質原油又は抜頭アスファルト質原油の留分、フェニレンジアミン、及び/又はオキシ化合物阻害剤の種類である市販物質で構成されていてもよい。阻害剤は、準安定分子種並びにそうでなければ生じることになる付加重合を含む、広範な下流酸化反応を阻害するために導入される。約280°F(138℃)の温度の還流産物流動には、約0.00001〜0.05モルパーセント比の阻害剤を、コンデンサ801が約280°F(138℃)未満の最高温度で作動している場合は、コンデンサ801に注入することができ、又はコンデンサ801が、約280°F(138℃)を超える最高温度で稼働されている場合は、コンデンサ803に注入することができる。
産物蒸気は、放出ポート323から、又は使用されている場合は、下流の触媒反応器、及び/又は還流反応器、及び/又は分溜塔、及び/又はスクラバから、直列のステップダウンコンデンサ80、例えば、コンデンサ単独よりも効率的な分離を達成可能であることが必要とされる応用の場合、コンデンサ間にデミスタ811、813、及び815が選択的に補完されている、図4に示されているコンデンサ801、803、及び805に放出される。残留芳香族炭化水素を非凝縮性ガス産物から非常に効率的に除去することが必要とされる場合、最終デミスタシステム(非表示)を、濃縮系統の端部に使用することができる。各直列コンデンサは、所望の露点範囲内の分子を単離するために指定される所定の温度範囲内で稼働され、それぞれのAPI比重及び流動点及び/又は融点を有する凝縮性産物がもたらされる。図4に示されている実施形態では、系統80の最初のコンデンサ801は、最も高い温度範囲で稼働され、この系統の最後のコンデンサ805は、最も低い温度範囲で稼働される。選択的に複数のデミスタ811、813、及び815が、それぞれのコンデンサの最低作動温度に対応する温度で稼働される。コンデンサ及び使用される場合はデミスタには、ノックアウトとしても知られている収集容器821、823、及び825が取り付けられており、それらは、回収しようとする各石油留分に必要とされる場合がある油蓄積/テイクオフ及び油−水分離を提供する。
凝縮性産物留分は、各コンデンサ及びその専用デミスタから、それぞれのノックアウト821、823、及び825に回収され、in situ由来の水及び油の比重分離が提供される。系統80に使用される複数のコンデンサは、コンデンサ系統としても知られている、一連のステップダウンコンデンサを構成する。例として、ステップダウンコンデンサ系統が、少なくとも4つの留分を回収するのに適切な様式で構築される場合、4つのステップダウンコンデンサが、直列に設置される。300°F(149℃)〜360°F(182℃)程度で作動させれば、最初のステップダウンコンデンサ及びその対応するデミスタから、粗ろうを回収することができる。又は、その代わりに、130°F(54℃)〜300°F(149℃)程度で作動させれば、最初のステップダウンコンデンサ及びその対応するデミスタから、粗ろう及び基油を回収することができる。90°F(32℃)〜130°F(54℃)程度で作動させれば、2番目のステップダウンコンデンサ及びその対応するデミスタから、ディーゼル添加剤と記載されることもある軽質低硫黄原油を回収することができる。60°F(16℃)〜90°F(32℃)程度で作動させれば、3番目のステップダウンコンデンサ及びその対応するデミスタから、凝縮物又はガソリン添加剤と記載されることもあるC4〜C8炭化水素の回収と同時に、大部分の水を回収することができる。35°F(1.7℃)〜60°F(16℃)程度で稼働させれば、4番目及び最後のステップダウンコンデンサ及びその対応するデミスタから、軽芳香族留分が回収され、並びに主要水分平衡が取り戻される。
液体産物は、その後の製品販売のために、図4に示されている遠隔デイタンク831、833、及び835に送ることができる。より高い流動点を有する液体又は融解状態で搬送しなければならないろう産物を含有する産物タンクは、それぞれの産物の流動点及び/又は融点をわずかに上回る温度に加熱して、それらのそれぞれのデイタンク中の産物を蒸留させない産物搬送が提供される。好ましい実施形態は、酸化による産物分解を最小限に抑え、特に阻害剤(上記に記載されている)が産物に添加されない場合、オレフィンの存在に起因して生じる場合がある付加重合から生じるタール及びワニスの形成を遅延させるために、液体産物上の嫌気性非凝縮性蒸気ブランケットを維持することである。蒸気ブランケットは、本装置により生産され、ガス放出ポート830から放出される非凝縮性産物ガスで構成されていてもよい。タンク蒸気入口及び排気口は、圧力制御されていてもよく、本発明の非凝縮性ガス放出ポート830と一体化されていてもよい。最初のコンデンサ801から回収される重留分は、重留分の回収及び販売が所望でない場合、上述のプロセスに戻して再利用することができる。
残留非凝縮性ガスを、非凝縮性ガス放出ポート830から回収し、選択的に発電セット(上記に記載)に送って、発電してもよい。或いは、回収された非凝縮性ガスは、液体産物タンク中の液体産物上の蒸気ブランケットとして他所で使用するか、反応器装置の直接燃焼式加熱の燃料として消費するか、他の目的の燃料として消費するか、又は燃焼させる前に循環させることができる。
選択的な発電セットは、遠隔地である等の発電が有利な場合又は電気価格が非常に高い場合に使用されるが、圧縮帯域402及び/又は悪臭防止が望ましい区域、例えば、使用済みプラスチック原料在庫保管所及び産物乾燥器等から補給空気を取り入れることができる。発電セットからの排気は、大気汚染防止システムに送られる。
原料炭化水素材料とともに一次熱反応器に入る水分から回収されるin situ由来の水、及び一次熱反応器及び他所で化学反応により生成されるin situ由来の水は、図4に示されているノックアウト821、823、及び825の底部から別々に回収し、炭素床に送って溶解芳香族炭化水素化合物を吸着させ、その後、使用されている場合は、発電セットからの、反応器の直接燃焼加熱からの、及び/又は他所からの廃熱を使用して蒸気に気化させることができる。選択的に、この蒸気の一部は、活性炭に送ってもよく、廃水として処分されるか又は補助注入ポート320からプロセスに戻される凝縮液は、水−ガスシフト反応を促進する。或いは、蒸気として大気汚染防止システムに送ってもよい。
帯域7:チャー及び固体放出帯域。この帯域407は、放出帯域の開始部では先行する帯域6 406の最高温度以上1,800°F(982℃)以下程度から、放出の終了部では周囲温度までの内部反応器温度範囲で稼働される。この帯域407は、一般的に帯域6 406が受けるシステム圧力以上1.0psig(6.9kPa)以下程度の、帯域7並びにコンデンサ80へのそのそれぞれの放出のため比較的真空で稼働される蒸気テイクオフポート323直下及び/又は下流が受けるin situ由来反応器圧力で稼働される。チャー放出帯域での滞留時間は、15分以上30分以下である。固体チャーをシステムから取り出し、これらに限定されないが、ガラス、石、及び金属等を含む不活性夾雑物を、反応器から隔離して、それによりチャーとする。帯域7 407からの固形物は、チャー出口319から放出される。固形物は、帯域7 407の一部であってもよい密封冷却連続プロセス固形物テイクオフシステム(非表示)に放出することができる。その高温末端で、天然ガスに由来するメタンでチャーをパージして、残留吸着芳香族及び多核芳香族炭化水素を軽減する。このシステムは、固形物を収集及び/又は分離及び冷却し、エタンパージにより、芳香族炭化水素及び多核芳香族炭化水素のチャーへの再吸着を防止し、チャー出口319下流の帯域7 407の主にメタンパージガスを含む高温嫌気性雰囲気からの固形物流動に同伴する蒸気を、帯域7 407の端部にて固形物の引火点未満温度で大気空気に変換するように設計されている。これは、自然燃焼を防止し、粉体爆発リスクを軽減するような様式で行われる。チャーの非常に高い断熱能力を考慮すれば、冷却を可能にする適切な滞留時間は、自然燃焼を回避するのに重要である。
帯域7 407において芳香族炭化水素及び多核芳香族炭化水素のチャーへの再吸着を防止する本発明の能力は、従来のチャーを回収する試みに対する重要な改良である。熱分解チャーは、芳香族及び多核芳香族炭化水素で構成される吸着タールが存在する場合、「粘着性」であることで有名である。この問題は、放出される際の最終冷却前に高温メタンパージすることにより、芳香族炭化水素及び多核芳香族炭化水素のチャーへの再吸着を防止する本発明の能力により解決される。その結果、ほぼ全ての芳香族及び多核芳香族炭化水素が存在しない場合、チャーが、廃棄物として処分されなければならない場合でも、本発明の帯域7 407から放出されるチャーは、40 CFR Part 261.20に記載されている有害廃棄物のD018、D023、D024、D025、D026、又はD036毒性特徴を示さない。非有害固体廃棄物と有害廃棄物とで処理コストに大きな差があることを考慮すれば、本発明のこの改良は、必要に応じて、以前に特定されている有害廃棄物コードにより特定される有害廃棄物とは対照的に、チャーを非有害廃棄物として廃棄するための手段を提供する。
汚損(fouling)は一般的な問題であり、装置中の種々の地点で生じ得る。そのような地点には、一次熱反応器から出ている放出ノズルが含まれる。この汚損は、チャー、ワニス、タール、テレフタル酸、安息香酸、及び鉱物塩等の沈着の結果である。これらの沈着物は、種々の方法で除去することができ、及び/又は堆積を防止することができる。1つの方法は、ノズル又は他のポートの内部に設置される1つ又は複数の機械的ラッパー(mechanical rapper)システムの作動による。ラッパーシステムの好ましい1つの実施形態は、2013年1月7日に出願された、発明の名称が「Anti −Fouling Apparatus for Cleaning Deposits in Pipes and Pipe Joints」である米国特許出願第13/735677号に記載されている。ラッパー装置は、望ましくない圧力損失及び圧力変動を起こさないように蒸気の迂回を可能につつ、汚損しやすい表面の内部を擦過するように設計されており、計画的な手動使用又は電子制御により稼働される。その結果生じる蒸気は、システムの次の区画への浮遊粒子の通過を軽減するためのセラミック、ガラス繊維、及び/又は静電気デバイスで構成されたフィルタエレメントを通過させる。これにより、そうでなければ凝縮性産物中の総金属濃度に寄与するチャー及び/又は塩及び酸化物の粒子並びに同伴/浮遊粒子物質の存在により促進される、触媒作用を含む、下流システムを汚損する望ましくない下流の化学反応が低減される。
本発明は、特定の例及び実施形態に照らして詳細に説明されているが、本明細書中に含まれている例及び実施形態は、単なる例示に過ぎず、網羅的な列挙ではない。本発明の変型及び改変は、当業者であれば、容易に企図されるだろう。本発明は、そのような改変及び等価物を全て含むものである。本発明の範囲を示すのは、特許請求の範囲のみであることが意図されている。