JP2015512635A - クラススイッチした完全ヒト抗体の発現のためのトランスジェニック非−ヒト脊椎動物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、抗体をin vivoでヒト化することに関する。本発明は、キメラ抗体をin vivoでヒト化するのに有用な、非-ヒト脊椎動物、細胞、集団および方法を提供する。本発明を使用すれば、完全にヒトのものであり(すなわち、ヒト可変および定常領域を含む)、組換え、junctional diversification、親和性成熟およびアイソタイプスイッチングにin vivoで非-ヒト脊椎動物システム内で供された、抗原-特異的抗体を直接的かつ迅速に得ることが可能となる。更にその上、そのような抗体は、完全にin vivoでヒト化され(すなわち、完全にヒトのものであり)-そして、選択され-、そして、そのようなものとして、本発明は、望むヒト可変領域および定常領域の対に関する発現性、親和性および生物物理学的特徴についてiv vivoでフィルターにかけることを利用する。このことによって、キメラ抗体の定常領域をin vitroでヒト化する際の抗体特性の劣化の問題を避けることができる。
Description
[親和性成熟抗体および重鎖のin vivoヒト化]
本発明は、望む定常領域との関連で、in vivoで非-ヒト脊椎動物システムにおいて、junctional mutationおよび親和性成熟の内在性制御を利用することによって有用なヒト重鎖レパートリーを産生する方法での、抗体および重鎖のヒト化に関する。この目的のために、本発明は、キメラ抗体および重鎖をin vivoでヒト化するために有用な非-ヒト脊椎動物、細胞、集団および方法を提供する。本発明を使用すれば、マウスまたは他の非-ヒト脊椎動物システムを利用することによって、junctional mutationおよび親和性成熟にin vivoで供せられた、抗原特異的な完全ヒト抗体および重鎖(すなわち、ヒト可変および定常領域を含む)を直接的かつ迅速に得ることが可能となる。更にその上、そのような抗体および重鎖は、完全にin vivoでヒト化され-そして選択され-、そして、そのようなものとして、本発明は、望むヒト可変および定常領域の対に関する発現性についてiv vivoでフィルターにかけることを利用する(そして、in vivo選択の因子となるべき親和性および生物物理学的特徴の態様を恐らくは与える)。このことによって、キメラ抗体および重鎖の定常領域をin vitroでヒト化する際の抗体特性の劣化の問題を避けることができる。それ故、本発明によって、当業者は、その後のヒトの治療および予防用途で使用される形式の抗体および重鎖を直接選択できることとなる。
本発明は、望む定常領域との関連で、in vivoで非-ヒト脊椎動物システムにおいて、junctional mutationおよび親和性成熟の内在性制御を利用することによって有用なヒト重鎖レパートリーを産生する方法での、抗体および重鎖のヒト化に関する。この目的のために、本発明は、キメラ抗体および重鎖をin vivoでヒト化するために有用な非-ヒト脊椎動物、細胞、集団および方法を提供する。本発明を使用すれば、マウスまたは他の非-ヒト脊椎動物システムを利用することによって、junctional mutationおよび親和性成熟にin vivoで供せられた、抗原特異的な完全ヒト抗体および重鎖(すなわち、ヒト可変および定常領域を含む)を直接的かつ迅速に得ることが可能となる。更にその上、そのような抗体および重鎖は、完全にin vivoでヒト化され-そして選択され-、そして、そのようなものとして、本発明は、望むヒト可変および定常領域の対に関する発現性についてiv vivoでフィルターにかけることを利用する(そして、in vivo選択の因子となるべき親和性および生物物理学的特徴の態様を恐らくは与える)。このことによって、キメラ抗体および重鎖の定常領域をin vitroでヒト化する際の抗体特性の劣化の問題を避けることができる。それ故、本発明によって、当業者は、その後のヒトの治療および予防用途で使用される形式の抗体および重鎖を直接選択できることとなる。
従来技術は、in vitroで(例えば、ファージ、リボソームもしくは酵母ディスプレイを使用して)またはin vivoで(例えば、トランスジェニック免疫グロブリン遺伝子座を含む非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスおよびラット)および細胞を使用して)、抗体を産生する方法を提供する。このようなin vivoシステム(例えば、Xenomouse(商標))は、ヒト定常領域の上流(例えば、ヒトガンマ定常遺伝子セグメントのヒトミューの上流)に、ヒト可変領域(ヒトVH、DおよびJH遺伝子セグメント)を含む完全ヒトトランスジェニック重鎖遺伝子座を使用している。その後、このようなin vivoシステムにおける完全ヒトトランスジェニック遺伝子座の使用が弊害をもたらし、B細胞の発生が阻まれ、相対的に少量のB細胞区画がもたらされ、抗体を産生する有用性が制限されることとなってしまうことが発見された。次世代のトランスジェニック動物(例えば、Velocimouse(商標))が作製され、この動物は、ヒト可変領域が内因性(例えば、マウスまたはラット)定常領域(すなわち、生殖系列構成において、ガンマ定常領域の上流のマウスミュー定常領域)の上流に存在するキメラ重鎖遺伝子座を有する。このことによって、B細胞および抗体の発生についての内因性の制御機構を利用することが可能となり、その結果、完全ヒトトランスジェニック遺伝子座の問題は見られなくなる。トランスジェニック脊椎動物を構築する方法、ならびに、抗原免疫化後に抗体およびその核酸を作製するための前記脊椎動物の使用は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第7501552号(Medarex);米国特許第5939598号および米国特許第6130364号(Abgenix); WO02/066630、WO2011163311およびWO2011163314 (Regeneron); WO2011004192およびWO2011158009 (Kymab Limited); WO2009076464、WO2009143472、EP1414858、WO2009013620A2、WO2010070263A1およびWO2010109165A2 (Harbour Antibodies); EP1399559 (Crescendo Biologics)ならびにWO2010039900 (Ablexis)(これらの開示は、限定されるものではないが、トランスジェニック免疫グロブリン遺伝子座を担持する非ヒト動物を作製し、内因性遺伝子座発現を不活化する方法の指針を当業者に提供する目的で本明細書に明示的に組込まれる)を参照されたい。米国特許出願公開第2008/0196112号明細書(Innate Pharma)は、リード抗体に由来する単一の、あらかじめ決められたヒト再構成VDJを、1つまたは複数のヒト定常領域遺伝子とともに、遺伝子座に含むトランスジェニック動物を記載している。再構成されていないV、DおよびJのレパートリーは存在せず、VHドメインおよびH鎖および抗体のレパートリーを生じさせるための組換えやjunctional diversityに対処していない。
in vitroまたはin vivoで選択、産生しようが、従来技術では、キメラ抗体のヒトへの治療有用性は、ヒト可変ドメインを有するものの、非-ヒト定常ドメインによって阻止されていた。このような阻止は、抗体がヒト患者に投与された場合の非-ヒト部分の免疫原性によってもたらされる。この問題を解決するための従来技術の解決策は、タンパク質工学によって、in vitroでキメラ抗体をヒト化し、それにより、非-ヒト定常ドメインを対応するヒト定常ドメインと置き換えることであった。しかしながら、免疫原性に関する問題は解消するものの、このようなin vitroでの手法は、得られた抗体の望ましい特性を低下させてしまう可能性があった。例えば、抗原結合親和性、抗原特異性、発現性(例えば、CHOもしくはHEK293細胞などの細胞株内での)、半減期および/または生物物理学的特徴(例えば、melting temperature、溶液状態、凝集に対する耐性等)が低下する可能性があり、これにより、ヒト用の治療または予防目的の薬剤としての抗体の開発を妨げることとなってしまう。従来技術のこれらの欠点を克服する、抗体を選択およびヒト化する方法であって、薬剤候補を選択することができる、前記のようなヒト化抗体または重鎖のレパートリーを提供する方法を開発することが望まれている。
本発明は、抗体の組換え、ヒト化および選択を、非-ヒト脊椎動物システムの制御機構を利用することによって、完全にin vivoで提供することによって、解決策を提供する。この目的のために、本発明は、可変領域遺伝子セグメントの組換え、junctional mutation、体細胞超変異およびアイソタイプスイッチングにin vivoで供され、in vivoシステムによって選択された完全ヒト抗体を産生するための、キメラ抗体をヒト化するのに有用な、非-ヒト脊椎動物、細胞、集団および方法を提供する。本発明を使用すれば、完全にヒトのものであり(すなわち、ヒト可変および定常領域を含む)、組換え、親和性成熟にin vivoで供された、抗原-特異的抗体を直接的かつ迅速に得ることが可能となる。更にその上、そのような抗体は、完全にin vivoでヒト化され-そして、選択され-、そして、そのようなものとして、本発明は、望むヒト可変領域および定常領域の対に関する発現性(および親和性および生物物理学的特徴の因子)についてiv vivoでフィルターにかけることを利用する。このことによって、キメラ抗体の定常領域をin vitroでヒト化する際の抗体特性の劣化の問題を避けることができる。
重要なことには、本発明は、前記事項を、B細胞発生ならびに抗体産生および選択の内因性制御を利用する方法で成し遂げている。本発明は、前記事項を、これらの機能をin situで非-ヒト脊椎動物システムで内因性IgG遺伝子座において確実に実施することによって、達成し、前記システムにおいては、重鎖発達および選択が、非-ヒト脊椎動物システムと適合するIgM段階を通過している。それ故、本発明は、内因性ミュー定常領域(すなわち、内因性Cミュー、または、非-ヒト脊椎動物の同じ種の挿入された外因性Cミュー)の上流への、機能的関係での非再構成ヒト可変領域遺伝子セグメントの標的化挿入(targeted insertion)によって、内因性IgH遺伝子座を適応させる。かくして、組換えおよびIgM重鎖発生および選択の内因性制御を利用して、適切に発達した、キメラヒトV/内因性Cミュー重鎖を発現するB細胞の有用なプールを提供することができる。このような、細胞表面に発現したIgM重鎖の好ましいレパートリーの提供は、有利なことである。何故ならば、その後の、ヒト非-ミュー定常領域へのアイソタイプスイッチングに関して、B細胞を選択およびクローンとして成熟させる、有用で多様性に富んだレパートリーを、非-ヒトシステムに提供するからである。それ故、抗原結合および発現性に関して、内因性非-ヒトシステムによるin vivoでの厳格な選択を経た、ヒト非-ミュー(例えば、ガンマ)重鎖の有用なレパートリーが提供される。よって、当業者は、標的抗原に特異的な1つまたは複数の望ましい重鎖(または重鎖を含む抗体)を選択および単離することができ、このような重鎖が、完全にヒトフォーマット内で、in vivoシステムと適合しながら、選択されることを理解する。それ故、1つまたは複数の生物物理学的特徴(例えば、当業者に理解される、melting temperature、低い凝集性、発現性等)が、有用に調節され、それにより、選択された重鎖または抗体はヒト薬剤産生にとって有用なものとなる。
従って、本発明は、以下を提供する:
非-ヒト脊椎動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラットもしくはウサギ)または非-ヒト脊椎動物細胞(例えば、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞もしくはウサギ細胞)であって、そのゲノムが、抗体重鎖の発現に関する遺伝子座を含み、
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含む非再構成ヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c)ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含み、
前記非再構成可変領域が、内因性IgH遺伝子座において、内因性ミュー定常領域の上流へのヒト可変領域遺伝子セグメントの標的化挿入として提供され、その結果、前記可変領域遺伝子セグメントが、内因性ミュー定常領域との関連で発現および選択に関して組換わることができる、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。
非-ヒト脊椎動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラットもしくはウサギ)または非-ヒト脊椎動物細胞(例えば、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞もしくはウサギ細胞)であって、そのゲノムが、抗体重鎖の発現に関する遺伝子座を含み、
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含む非再構成ヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c)ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含み、
前記非再構成可変領域が、内因性IgH遺伝子座において、内因性ミュー定常領域の上流へのヒト可変領域遺伝子セグメントの標的化挿入として提供され、その結果、前記可変領域遺伝子セグメントが、内因性ミュー定常領域との関連で発現および選択に関して組換わることができる、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。
本発明の任意の構成または態様の代替的な実施態様においては、ミュー定常領域は、内因性ではなく、異なる非-ヒト脊椎動物種に由来する(すなわち、脊椎動物または細胞の前記種とは異なる)。例えば、脊椎動物または細胞は、マウスであり、ミュー定常領域は、非-マウスのげっ歯類(例えばラット)のミュー定常領域である、例えば、脊椎動物または細胞は、ラットであり、ミュー定常領域は、非-ラットのげっ歯類(例えばマウス)ミュー定常領域である。関連した種を選択することによって、例えば、内因性の制御が、ミュー定常領域に関して機能することが可能となる。それ故、これらの実施態様においては、脊椎動物または細胞が、第一の非-ヒト脊椎動物種に由来し、ミュー定常領域は、第二の(すなわち異なる)非-ヒト脊椎動物種に由来する。
本発明の任意の構成または態様の実施態様においては、前記ミュー定常領域は、前記脊椎動物または細胞と同じ非-ヒト種に由来するが、異なる系統に由来する(例えば、前記脊椎動物がマウスもしくはラットである場合、または前記細胞がマウスもしくはラット細胞である場合、異なるマウスまたはラット系統)。
本発明は、また、IgH遺伝子座が、標的化挿入ではなく、トランスジーンの挿入およびゲノムへのランダムな組込みまたは内因性の野生型IgH遺伝子座ではない位置での組込みによって提供される実施態様を提供する。例えば、ヒト可変領域およびヒト非-ミュー定常領域を含むIgH遺伝子座は、酵母人工染色体(YAC)、PACまたは大きな挿入断片に適合するための当該業界において知られた他のベクターにおいて提供することができる。ベクターは、ES細胞(例えば、マウスまたはラットES細胞)へと導入することができ、IgH遺伝子座は、細胞のゲノムへと組込まれることができる。
本発明の任意の構成または態様の実施態様においては、前記ヒト化された非-ミュー定常領域は、完全にヒトのものとなっている(すなわち、ヒト定常ドメイン遺伝子のみを含む)。
それ故、本発明は、以下を提供する:
非-ヒト脊椎動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラットもしくはウサギ)または非-ヒト脊椎動物細胞(例えば、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞もしくはウサギ細胞)であって、そのゲノムが、抗体重鎖の発現に関する遺伝子座を含み、
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含む非再構成ヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c)ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含み、
前記非再構成可変領域が、前記遺伝子座において、前記内因性ミュー定常領域の上流に提供され、その結果、前記可変領域遺伝子セグメントが、内因性ミュー定常領域との関連で発現および選択に関して組換わることができる、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。
非-ヒト脊椎動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラットもしくはウサギ)または非-ヒト脊椎動物細胞(例えば、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞もしくはウサギ細胞)であって、そのゲノムが、抗体重鎖の発現に関する遺伝子座を含み、
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含む非再構成ヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c)ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含み、
前記非再構成可変領域が、前記遺伝子座において、前記内因性ミュー定常領域の上流に提供され、その結果、前記可変領域遺伝子セグメントが、内因性ミュー定常領域との関連で発現および選択に関して組換わることができる、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。
本発明は、また、以下を提供する:
非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスもしくはラット)または非-ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞もしくはラット細胞)であって、そのゲノムが、抗体重鎖の発現に関する遺伝子座を含み、
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含むヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c)ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含む、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。
非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスもしくはラット)または非-ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞もしくはラット細胞)であって、そのゲノムが、抗体重鎖の発現に関する遺伝子座を含み、
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含むヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c)ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含む、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。
また、本発明は、非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスもしくはラット)または非-ヒト脊椎動物細胞であって、そのゲノムが、可変領域、第一のスイッチ、内因性ミュー定常領域、第二のスイッチおよびヒト非-ミュー(例えば、ガンマ)定常領域を(5'から3'の方向に)含む抗体重鎖遺伝子座を含み、各細胞の前記重鎖遺伝子座が、IgMから非-ミュー(例えば、IgG)アイソタイプへのスイッチングを経ることができる、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞を提供する。
内因性のIgM段階を保つことによって、本発明は、非-ヒト脊椎動物または細胞の内因性抗体およびB細胞発生の制御機構を利用する能力を保持する。これには、内因性の末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)活性およびjunctional mutationと、本発明の遺伝子座から産生されたアイソタイプ-スイッチされた重鎖を選択および成熟させる、好ましいサイズのB細胞画分ならびに組換えられたVDJ多様性の好ましいサイズおよび質のレパートリーを産生するための適切なB細胞発生(IgMが発現する時の早期での発生を含む)とを利用する能力が含まれる。更にその上、このことによって、得られる抗体でのヒト定常領域へのスイッチングが行われ、このような抗体は、ヒトの治療用途の薬物を産生するのに有益である。それ故、例えば、本発明の脊椎動物を、予め定めた治療標的の抗原(例えば、ヒト、ウイルスまたは細菌抗原)で免疫化し、(i)junctional mutationおよび体細胞変異、そして、抗原チャレンジに応答するin vivoでの親和性成熟を経て、(ii)完全にヒトのものであり、すなわち、ヒト可変および定常ドメインを有し、(iii)発現および抗原への結合能に関して完全にin vivoシステムによって選択された抗体(例えば、ヒトIgG)または重鎖(例えば、ヒトガンマ-型重鎖)を単離することができる。それ故、本発明は、当業者に、in vivoでよく発現することができ、予め定めた抗原に特異的であるヒト抗体および重鎖を実行可能とさせるin vivoシステムを用いる。当該方法は、単純であり、従来の方法のようなin vivo産生とin vitro産生との複合段階の組合せや操作を避けることができる。
更にその上、脊椎動物または細胞において親和性成熟を経ることによって、選択された抗体は、ヒトによってではなく、自然によって適合された抗原結合親和性を有することとなる。それ故、本発明の脊椎動物または細胞は、多くの時間と労力を有するin vitroでの成熟親和性を実施する必要なしに(または、in vitroでの操作を原因とする望ましい特性を低下させてしまうリスクなしに)、治療可能な親和性を有する抗原特異的な完全なヒト抗体および重鎖のための良好な供給源を提供する。
加えて、本発明によって、当業者は、予想可能な方法で、特定の望むアイソタイプの完全なヒト抗体を産生するための脊椎動物および細胞をデザインすることが可能である。例えば、当業者は、本発明の脊椎動物内で重鎖遺伝子座をデザインし、全てのガンマ定常領域遺伝子セグメントをヒトのものとすることができる。この方法においては、当業者は、前記脊椎動物から選択される全てのIgG-型抗体または重鎖は、H鎖において完全にヒトのものであり、内因性の抗体発生(例えば、親和性成熟)ならびにin vivo発現および選択を経たことを理解する。更に段階が進めば、当業者は、IgG1アイソタイプ遺伝子セグメントだけがヒトのものとなっている脊椎動物をデザインできるであろう。それ故、当業者は、最初から、全てのIgG1アイソタイプ抗体が完全にヒトのものであり、in vivoで成熟し、発現し、選択されることを理解する。このことは、以下に説明するように、抗体のサブタイプ(例えばIgG1またはIgG4)を特定のヒトの治療用に合わせるのに有用である。
それ故、一実施態様においては、本発明の遺伝子座は、内因性ミュー定常領域を例外として、ヒト定常領域のみを含む。このことは、定常領域が予想可能に常にヒトのものとなっている、アイソタイプスイッチされた重鎖を産生するのに有用である。
一実施態様においては、本発明の遺伝子座は、内因性ミュー定常領域の定常領域遺伝子セグメントを例外として、ヒト定常領域遺伝子セグメントのみを含む。それ故、有用なことに、当業者は、最初に、全てのスイッチングを受けた重鎖および抗体はヒト重鎖定常ドメインを有することを容易に理解する。
一実施態様においては、本発明の遺伝子座は、ガンマ定常領域遺伝子セグメントを含み、全てのガンマ定常領域遺伝子セグメントは、ヒトのものである。このことは、定常領域が予想可能に常にヒトのものとなっている、アイソタイプスイッチされたガンマ重鎖を産生するのに有用である。
一実施態様においては、本発明の遺伝子座は、ガンマ定常領域遺伝子セグメントを含み、全てのデルタ定常領域遺伝子セグメントは、ヒトのものである。このことは、定常領域が予想可能に常にヒトのものとなっている、アイソタイプスイッチされたデルタ重鎖を産生するのに有用である。
一実施態様においては、本発明の遺伝子座は、イプシロン定常領域遺伝子セグメントを含み、全てのデルタ定常領域遺伝子セグメントは、ヒトのものである。このことは、定常領域が予想可能に常にヒトのものとなっている、アイソタイプスイッチされたイプシロン重鎖を産生するのに有用である。
一実施態様においては、本発明の遺伝子座は、アルファ定常領域遺伝子セグメントを含み、全てのデルタ定常領域遺伝子セグメントは、ヒトのものである。このことは、定常領域が予想可能に常にヒトのものとなっている、アイソタイプスイッチされたアルファ重鎖を産生するのに有用である。
本発明によって、当業者は、抗体定常領域の他の特徴を特定の治療または予防用途用に適合することができる。例えば、重鎖遺伝子座において、バリアントヒト非-ミュー定常領域遺伝子セグメントを含ませることができる。それ故、一実施態様においては、バリアントは、活性化されているか(例えば、腫瘍学もしくは炎症状態の治療などの細胞殺傷適用のために)または非活性化されている(例えば、細胞表面抗原の抗体によるクロス-リンキングを原因とする活性化が望ましくない場合、例えば、標的抗原がCD40もしくはCD40リガンドである時に見られるような場合)変異ヒトFc領域をコードし得る。
他の構成においては、本願は、ヒト可変ドメインを用いてin vivoで対とし、選択した場合の、抗体のバリアントヒト定常ドメインのレパートリーの探索が望ましいことを認識している。このようなバリアントは、ヒトの異なる集団に見られる(例えば、異なるヒトの民族集団において見られるガンマ定常領域遺伝子セグメントの異なるバリアントによってコードされている)。同じように、この概念は、ヒト定常ドメインおよび対応するヒト定常領域遺伝子セグメントの合成バリアント(例えば、Fcを不活性化またはFcを活性化させるための別の方法で変異させたバリアント)に適用することができる。この目的のために、本発明は以下を提供する:
本発明の脊椎動物の集団であって、前記集団は、
(i)抗体重鎖遺伝子座が1つまたは複数の第一のヒト非-ミュー遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3またはFc)を含む第一の脊椎動物;
(ii)抗体重鎖遺伝子座が1つまたは複数の第二のヒト非-ミュー遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3またはFcをコードする)を含む第二の脊椎動物
を含み、前記第一および第二の遺伝子セグメントが、同じタイプの定常領域遺伝子セグメント(例えば、両方がCH1遺伝子セグメントまたは両方がFcをコードする)であり、前記第二の遺伝子セグメントが前記第一の遺伝子セグメントのバリアントである、集団。
本発明の脊椎動物の集団であって、前記集団は、
(i)抗体重鎖遺伝子座が1つまたは複数の第一のヒト非-ミュー遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3またはFc)を含む第一の脊椎動物;
(ii)抗体重鎖遺伝子座が1つまたは複数の第二のヒト非-ミュー遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3またはFcをコードする)を含む第二の脊椎動物
を含み、前記第一および第二の遺伝子セグメントが、同じタイプの定常領域遺伝子セグメント(例えば、両方がCH1遺伝子セグメントまたは両方がFcをコードする)であり、前記第二の遺伝子セグメントが前記第一の遺伝子セグメントのバリアントである、集団。
一実施態様においては、前記集団の脊椎動物の免疫グロブリン遺伝子座は、前記ヒト定常領域または定常領域遺伝子セグメントのレパートリーの点においてのみ異なる。
本発明は、また、ヒト抗体を単離する方法であって、請求項に記載の脊椎動物または脊椎動物の集団を抗原で免疫化する工程、前記脊椎動物または脊椎動物の集団から抗体を単離する工程を含み、前記単離した抗体が、前記抗原に特異的に結合し、前記非-ミューアイソタイプの完全なヒト重鎖を含む、方法を提供する。
本発明は、また、以下を提供する:
ヒト化され、親和性成熟された抗原特異的抗体重鎖を得る方法であって、機能的なRAGおよび活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)を含む非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスまたはラット)を抗原で免疫化して、VH、DおよびJH遺伝子セグメントのin vivo組換え、体細胞超変異および前記脊椎動物のB細胞内での内因性ミューアイソタイプからヒト非-ミューアイソタイプへのアイソタイプスイッチングを得ることによって、重鎖をin vivoで前記脊椎動物においてヒト化する工程を含み、親和性成熟抗原-特異的非-ミュー抗体重鎖は前記脊椎動物によって産生および発現され、そして、前記重鎖の非-ミュー定常ドメインがヒト定常ドメインであり、更に、前記ヒト化重鎖の1つまたは複数を単離する工程を含む、方法。
ヒト化され、親和性成熟された抗原特異的抗体重鎖を得る方法であって、機能的なRAGおよび活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)を含む非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスまたはラット)を抗原で免疫化して、VH、DおよびJH遺伝子セグメントのin vivo組換え、体細胞超変異および前記脊椎動物のB細胞内での内因性ミューアイソタイプからヒト非-ミューアイソタイプへのアイソタイプスイッチングを得ることによって、重鎖をin vivoで前記脊椎動物においてヒト化する工程を含み、親和性成熟抗原-特異的非-ミュー抗体重鎖は前記脊椎動物によって産生および発現され、そして、前記重鎖の非-ミュー定常ドメインがヒト定常ドメインであり、更に、前記ヒト化重鎖の1つまたは複数を単離する工程を含む、方法。
非-ヒト脊椎動物ES細胞(例えば、本明細書に記載されているES細胞)を使用して、当業者は、機能的なRAGおよびAIDの提供をもたらすことができる。これらは、内因性制御機構の良好な利用に関して内因性ミューと適合している。
ヒト化され、親和性成熟された抗原特異的抗体重鎖を得る方法であって、機能的な活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)を含む非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスまたはラット)を抗原で免疫化して、体細胞超変異および脊椎動物のB細胞内での内因性ミューアイソタイプからヒト非-ミューアイソタイプへのアイソタイプスイッチングを得ることによって、重鎖をin vivoで前記脊椎動物においてヒト化する工程を含み、親和性成熟抗原-特異的抗体重鎖は前記脊椎動物によって産生および発現され、そして、前記重鎖の非-ミュー定常ドメインがヒト定常ドメインであり、更に、前記ヒト化重鎖を単離する工程を含む、方法。
本発明は、また、本発明の方法において得られた単離した抗体重鎖またはそのコピーもしくは誘導体を含む医薬組成物であって、場合によっては、前記重鎖、コピーまたは誘導体が、抗原に特異的に結合する抗体によって提供される、医薬組成物を提供する。
本発明は、また、抗原に関連した、または誘導される、ヒトにおける医学状態または疾患を治療または予防する方法であって、前記ヒトに、前記方法によって得られた抗原特異的抗体または重鎖を投与する工程を含む方法を提供する。
本発明は、また、抗原に関連した、または誘導される、ヒトにおける医学状態または疾患の治療または予防における使用のための、本発明の方法において得られた抗原特異的抗体または重鎖を提供する。
本発明は、また、抗原に関連した、または誘導される、ヒトにおける医学状態または疾患の治療または予防用の医薬の製造における、本発明の方法によって得られた抗原特異的抗体または重鎖の使用を提供する。
本発明は、in vivoでの抗体のヒト化に関する。この目的のために、本発明は、キメラ抗体をin vivoでヒト化するために有用な非-ヒト脊椎動物、細胞、集団および方法を提供する。本発明を用いれば、親和性成熟をin vivoで経た、抗原特異的な完全ヒト抗体(すなわち、ヒト可変および定常領域を含む)を直接的かつ迅速に得ることが可能となる。更にその上、そのような抗体は、完全にin vivoでヒト化され-そして選択され-、そして、そのようなものとして、本発明は、望むヒト可変および定常領域の対に関する発現性(および親和性および生物物理学的特徴の因子)についてiv vivoでフィルターにかけることを利用する。このことによって、キメラ抗体の定常領域をin vitroでヒト化する際の抗体特性の劣化の問題を避けることができる
この目的のために、本発明は、以下を提供する:
非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスもしくはラット)または非-ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞もしくはラット細胞)であって、そのゲノムが、抗体重鎖の発現に関する遺伝子座を含み、
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含むヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c) ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む、(例えば、標的抗原を用いた脊椎動物の免疫後の)非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含む、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。
非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスもしくはラット)または非-ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞もしくはラット細胞)であって、そのゲノムが、抗体重鎖の発現に関する遺伝子座を含み、
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含むヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c) ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む、(例えば、標的抗原を用いた脊椎動物の免疫後の)非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含む、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。
好ましい一実施態様においては、前記遺伝子座は、ゲノムの重鎖遺伝子座であり、すなわち、前記タイプの脊椎動物または細胞の重鎖遺伝子座の生殖系列の位置(germline location)に存在する。この例においては、それ故、本発明のヒト化された遺伝子座は、ヒト定常領域DNAを内因性(すなわち、非-ヒト脊椎動物)重鎖遺伝子座に、内因性ミュー定常領域の下流で挿入することによって構築されることができる。他の実施態様においては、本発明の遺伝子座は、ゲノムの他の部分(すなわち、内因性重鎖遺伝子座内ではない他の部分)で合成的に構築され、野生型脊椎動物または細胞の重鎖遺伝子座を有する染色体とは異なる染色体上に位置し得る。例えば、本発明の遺伝子座は、Rosa26遺伝子座で構築される。
本発明の遺伝子座は、脊椎動物または細胞における重鎖の発現およびアイソタイプスイッチングに必要な構成要素の全てを含み、そのようなヒト可変領域は、
S-ミュースイッチ(例えば内因性のS-ミュー)の上流に(すなわち5'側に)、複数のVH遺伝子セグメント、複数のD遺伝子セグメントおよび複数のJH遺伝子セグメント、
内因性ミュー定常領域セグメント(例えばCH1、CH2およびCH3)を含む内因性ミュー定常領域、
第二のスイッチ(例えば内因性スイッチ、例えばガンマスイッチ)、ならびに
(1つまたは複数の)ヒト非-ミュー定常領域
を含む。
例えば、前記ヒト非-ミュー定常領域は、図3に示すように、CH2からM2の3'側のポリ-Aまでを(ポリ-Aは含まれる)含むガンマ-1定常領域である。代替的には、前記ヒト非-ミュー定常領域は、図3に示すように、CH1からM2の3'側のポリ-Aまでを(ポリ-Aは含まれる)含むガンマ-1定常領域である。代替的には、前記非-ミュー定常領域は、図3に示すように、CH1からM2の3'側のポリ-Aまでを(ポリ-Aは含まれる)含むガンマ-1定常領域である。代替的には、前記非-ミュー定常領域は、図3に示すように、ヒンジ領域(H)からM2の3'側のポリ-Aまでを(ポリ-Aは含まれる)含むガンマ-1定常領域である。場合によっては、前記ヒト定常領域は、CH1遺伝子セグメントを欠如しているが、1つまたは複数の他のヒト定常遺伝子セグメント(例えばCH2およびCH3)を含み、場合によっては、前記定常領域は、ガンマ定常領域である。この例は、脊椎動物または細胞が、非-ミューアイソタイプへのアイソタイプスイッチング後に機能的な軽鎖を発現しない(または軽鎖を発現しない)場合に、重鎖のみの抗体(H2抗体)を産生するのに役立つ。
S-ミュースイッチ(例えば内因性のS-ミュー)の上流に(すなわち5'側に)、複数のVH遺伝子セグメント、複数のD遺伝子セグメントおよび複数のJH遺伝子セグメント、
内因性ミュー定常領域セグメント(例えばCH1、CH2およびCH3)を含む内因性ミュー定常領域、
第二のスイッチ(例えば内因性スイッチ、例えばガンマスイッチ)、ならびに
(1つまたは複数の)ヒト非-ミュー定常領域
を含む。
例えば、前記ヒト非-ミュー定常領域は、図3に示すように、CH2からM2の3'側のポリ-Aまでを(ポリ-Aは含まれる)含むガンマ-1定常領域である。代替的には、前記ヒト非-ミュー定常領域は、図3に示すように、CH1からM2の3'側のポリ-Aまでを(ポリ-Aは含まれる)含むガンマ-1定常領域である。代替的には、前記非-ミュー定常領域は、図3に示すように、CH1からM2の3'側のポリ-Aまでを(ポリ-Aは含まれる)含むガンマ-1定常領域である。代替的には、前記非-ミュー定常領域は、図3に示すように、ヒンジ領域(H)からM2の3'側のポリ-Aまでを(ポリ-Aは含まれる)含むガンマ-1定常領域である。場合によっては、前記ヒト定常領域は、CH1遺伝子セグメントを欠如しているが、1つまたは複数の他のヒト定常遺伝子セグメント(例えばCH2およびCH3)を含み、場合によっては、前記定常領域は、ガンマ定常領域である。この例は、脊椎動物または細胞が、非-ミューアイソタイプへのアイソタイプスイッチング後に機能的な軽鎖を発現しない(または軽鎖を発現しない)場合に、重鎖のみの抗体(H2抗体)を産生するのに役立つ。
それ故、1つまたは複数のヒト非-ミュー定常領域を含む挿入されたDNAの例として、以下が考えられる:
[ヒトガンマ定常領域]
1.CH1から、CH3、M1、M2またはCH3もしくはM2の3'側直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトガンマ(例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3またはガンマ-4)定常領域;
1.CH1から、CH3、M1、M2またはCH3もしくはM2の3'側直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトガンマ(例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3またはガンマ-4)定常領域;
2.ヒンジから、CH3、M1、M2またはCH3もしくはM2の3'側直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトガンマ(例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3またはガンマ-4)定常領域;
3.CH2から、CH3、M1、M2またはCH3もしくはM2の3'側直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトガンマ(例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3またはガンマ-4)定常領域;
4.CH3から、M1、M2またはCH3もしくはM2の3'側直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトガンマ(例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3またはガンマ-4)定常領域;
5.CH1遺伝子セグメントを含まないヒトヒトガンマ(例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3またはガンマ-4)定常領域;
6.CH1遺伝子セグメントを(場合によっては、CH2およびCH3遺伝子セグメントも)含むヒトガンマ(例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3またはガンマ-4)定常領域;
7.CH2遺伝子セグメントを(場合によっては、CH3遺伝子セグメントも)含むヒトガンマ(例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3またはガンマ-4)定常領域;
8.CH3遺伝子セグメントを含むヒトガンマ(例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3またはガンマ-4)定常領域;
9.CH2-CH3遺伝子セグメントを含み、CH1遺伝子セグメントを含まないヒトガンマ(例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3またはガンマ-4)定常領域;
[ヒトデルタ定常領域]
10.CH1から、CH3、CH-S、M1もしくはM2まで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトデルタ定常領域;
10.CH1から、CH3、CH-S、M1もしくはM2まで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトデルタ定常領域;
11.ヒンジH1もしくはH2から、CH3、CH-S、M1もしくはM2まで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトデルタ定常領域;
12.CH2から、CH3、CH-S、M1もしくはM2まで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトデルタ定常領域;
13.CH3から、CH-S、M1もしくはM2まで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトデルタ定常領域;
14.CH1遺伝子セグメント含まないヒトデルタ定常領域;
15.CH1遺伝子セグメントを(場合によっては、CH2およびCH3遺伝子セグメントも)含むヒトデルタ定常領域;
16.CH2遺伝子セグメントを(場合によっては、CH3遺伝子セグメントも)含むヒトデルタ定常領域;
17.CH3遺伝子セグメントを含むヒトデルタ定常領域;
18.CH2-CH3遺伝子セグメントを含み、CH1遺伝子セグメントを含まないヒトデルタ定常領域;
[ヒトアルファ定常領域]
19.CH1から、CH3、MまたはMもしくはCH3の3’側直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトアルファ定常領域;
19.CH1から、CH3、MまたはMもしくはCH3の3’側直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトアルファ定常領域;
20.ヒンジ(H)から、CH3、MまたはMもしくはCH3の3’側直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトアルファ定常領域;
21.CH2から、CH3、MまたはMもしくはCH3の3’側直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトアルファ定常領域;
22.CH3から、MまたはMもしくはCH3の3’側直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトアルファ定常領域;
23.CH1遺伝子セグメント含まないヒトアルファ定常領域;
24.CH1遺伝子セグメント(場合によっては、CH2およびCH3遺伝子セグメントも)含むヒトアルファ定常領域;
25.CH2遺伝子セグメント(場合によっては、CH3遺伝子セグメントも)含むヒトアルファ定常領域;
26.CH3遺伝子セグメントを含むヒトアルファ定常領域;
27.CH2-CH3遺伝子セグメントを含み、CH1遺伝子セグメントを含まないヒトアルファ定常領域;
アルファ定常領域は、1つの例においては、ヒトアルファ-1定常領域である。他の例においては、定常領域はヒトアルファ-2定常領域である。
[ヒトイプシロン定常領域]
28.CH1から、CH3、CH4、MまたはMもしくはCH4の3'直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトイプシロン定常領域;
28.CH1から、CH3、CH4、MまたはMもしくはCH4の3'直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトイプシロン定常領域;
29.ヒンジ(H)から、CH3、CH4、MまたはMもしくはCH4の3'直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトイプシロン定常領域;
30.CH2から、CH3、CH4、MまたはMもしくはCH4の3'直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトイプシロン定常領域;
31.CH3から、CH4、MまたはMもしくはCH4の3'直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトイプシロン定常領域;
32.CH4から、MまたはMもしくはCH4の3'直後のポリ-Aまで(これらは含まれる)の配列を含む、またはこのような配列からなるヒトイプシロン定常領域;
33.CH1遺伝子セグメントを含まない、ヒトイプシロン定常領域;
34.CH1遺伝子セグメントを(場合によっては、CH2、CH3およびCH4遺伝子セグメントも)含むヒトイプシロン定常領域;
35.CH2遺伝子セグメントを(場合によっては、CH3およびCH4遺伝子セグメントも)含むヒトイプシロン定常領域;
36.CH3遺伝子セグメントを(場合によっては、CH4遺伝子セグメントも)含むヒトイプシロン定常領域;
37.CH4遺伝子セグメントを含むヒトイプシロン定常領域;
38.CH2-CH3-CH4遺伝子セグメントを含み、CH1遺伝子セグメントを含まないヒトイプシロン定常領域;
[複数のアイソタイプの定常領域]
39.ヒトガンマ-3からヒトガンマ-4定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
39.ヒトガンマ-3からヒトガンマ-4定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
40.ヒトガンマ-3からヒトガンマ-2定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
41.ヒトガンマ-3からヒトガンマ-1定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
42.ヒトガンマ-1からヒトガンマ-4定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
43.ヒトガンマ-1からヒトガンマ-2定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
44.ヒトガンマ-2からヒトガンマ-4定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
45.ヒトデルタからヒトアルファ-2定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
46.ヒトデルタからヒトイプシロン領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
47.ヒトデルタからヒトガンマ-4定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
48.ヒトデルタからヒトガンマ-2定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
49.ヒトデルタからヒトアルファ-1定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
50.ヒトデルタからヒトガンマ-1定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列;
51.ヒトデルタからヒトガンマ-3定常領域(この領域を含む)までの配列を含む、またはこのような配列からなるヌクレオチド配列。
一続きのヒトDNAを、一片でまたは連続した挿入で、非-ヒト脊椎動物または細胞(例えば、ES細胞)ゲノムへと挿入することができる。例えば、間に挿入すべきヒト定常領域DNAの完全な配列を含む複数の細菌人工染色体(BAS)を、標準的な組換え手法を用いて構築することができ、各BACは、その一続きのDNAの一部が含まれている。連続したBACに由来する連続した挿入(例えば、標準的な相同組換え(例えば、本明細書に記載したRegeneronおよびAblexisのPCT出願を参照)またはserial recombinase mediated cassette exchange -sRMCE-(例えば、本明細書に記載したKymab LimitedのPCT出願を参照))を使用することによって、当業者は、ゲノム中で、内因性ミュー定常領域の下流に1つまたは複数のヒト定常領域を構築することができる。ES細胞をこの方法で操作した場合、ES細胞を、標準的なように使用して、ドナー胚盤胞に移植し、その後、育ての母へと移植することができる。生殖系列の伝達ならびに任意に必要なその後の繁殖および交雑を用いて(再度、一般的なように)、当業者は、1つまたは複数のヒト非-ミュー定常領域が内因性ミュー定常領域の下流に位置している本発明の遺伝子座を有する子孫脊椎動物および細胞に到達することができる。前記遺伝子座は、同型接合状態で存在する(例えば、各重鎖の対立遺伝に本発明の遺伝子座が存在する)かもしれず、または異型接合状態で存在する(例えば、第二の対立遺伝子が不活性化された内因性の重鎖であり、-本発明の遺伝子座を有する-第一の対立遺伝子からの重鎖発現のみが、重鎖の発現をもたらす)かもしれない。代替的には、本発明の異なる遺伝子座は、ゲノム中で重鎖遺伝子座の第一および第二の対立遺伝子で提供され、その結果、ヒトのアイソタイプスイッチされた重鎖の異なるコンビネーションは、遺伝子座のコンビネーションによって発現することができる。
一実施態様において、前記ゲノムは、また、ヒト軽鎖を発現するトランスジェニック軽鎖遺伝子座(または、代替的には、少なくともヒト軽鎖可変領域)も含み、内因性軽鎖の発現は、実質的に不活性であり、内因性重鎖の発現も実質的に不活性である。この実施態様は、有利には、完全なヒト抗体のみ(または、代替的には、少なくとも完全なヒト重鎖および完全なヒト軽鎖可変領域)を予測可能に発現するゲノムであって、内因性抗体鎖を発現しないためのゲノムを提供し、この抗体のゲノムプールから、当業者は、脊椎動物または細胞のin vivo機構による変異および成熟化および選択を経た非-ミュー型抗体(例えばガンマ型)を(例えば、標的抗原を用いた免疫化の後に)選択することができる。
1つまたは複数のヒトガンマ定常領域を挿入する実施態様を使用することは特に有効である。何故ならば、ガンマ型抗体は、ヒトにおいて、疾患状況における免疫応答にしばしば使用され、それ故、ヒト用医薬のための薬剤としてしばしば使用されているからである。ヒトガンマ-1アイソタイプは、この理由のために特に有用であり、従って、多くのヒト治療用抗体薬は、ガンマ-1アイソタイプ定常ドメインを有する。
WO2011065501において更に論じているように、ヒトIgGサブタイプIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4は、免疫機能を補強するための異なる能力を有しており、例えば、抗体依存性細胞障害(ADCC、例えば、IgG1およびIgG3)、抗体依存性細胞貪食(ADCP、例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)ならびに補体依存性細胞障害(CDC、例えば、IgG1、IgG3)を有する。このような免疫機能のサブタイプ-特異的関与は、異なる免疫細胞上のFc受容体についての選択性、および、C1qに結合し、膜攻撃複合体(MAC)のアセンブリを活性化する能力に基づく。様々なタイプの間で、Fcγ受容体(例えば、FcγR1、FcγRIIa/b/c、FcγRIIIa/b)についての相対的な親和性は、IgG1およびIgG3については高いが、(FcγRIIa 131H多型に制限される)IgG2については最小の親和性であり、IgG4は、FcγRIについて測定可能な親和性しか有さない。比較配列分析および共結晶構造を用いると、受容体結合について重要な接触残基は、lower hingeとCH2領域に広がるアミノ酸残基に位置していた。標準的なタンパク質工学手法を用いて、Fc受容体および補体のC1q成分について抗体調製物の親和性を増加または低減させることに関して幾つかの成功が達成された。
アイソタイプの中では、IgG2が、Fc受容体のファミリーに最も弱く結合することができる。出発物質としてIgG2を使用して、エフェクター機能を消滅させる変異であるが、FcRn結合、長時間の安定性および低い免疫原性を維持する変異体を見出す努力がなされている。この特性の改善した変異体によって、安全性を保持した、改善された抗体治療がもたらされ得る。細胞表面標的に結合するヒトIgG1治療抗体は、標的細胞の細胞溶解を抗体依存性細胞障害(ADCC)または補体依存性細胞障害(CDC)によって媒介し得るエフェクター細胞を使用することができる。これらのメカニズムは、抗体FcドメインのCH2領域の、免疫エフェクター細胞上のFcγR受容体との相互作用、またはC1q(補体カスケードの第一の成分)との相互作用を介して、生じる。表1は、異なるヒトガンマサブタイプの活性を示す。従って、当業者は、対象とするヒトにおける疾患発症に依存して、活性を促進または弱めるように選択することができる。例えば、ヒト患者における古典経路およびFcγR1認識によって相対的に高い補体活性化活性を有する完全なヒト重鎖および抗体を単離することを望むならば、ヒトガンマ-1定常領域を含む挿入断片の使用が望ましい。
Mol Immunol. 2003 Dec;40(9):585-93; 「Differential binding to human FcgammaRIIa and FcgammaRIIb receptors by human IgG wildtype and mutant antibodies」; Armour KL et alを参照せよ。この文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
IgG2は、本質的にFcγRI、IIIとは結合せず、FcγRIIaに対して活性であり、補体活性をほとんど有さないことから、IgG2定常領域は、ヒトにおけるサイトカインまたは可溶性標的への結合のための本発明による抗体および重鎖を産生するのに良く適している。
IgG1定常領域は、ヒト治療に関して広い有用性を有する。何故ならば、IgG1抗体および重鎖は、FcγRI、II、IIIに対して活性であり、補体活性を有するからである。このことは、当該業界で知られているような操作によって活性化されたヒトガンマ-1定常領域を使用することによって、増大することができる。
それ故、本発明の脊椎動物または細胞の一実施態様においては、ヒト非-ミュー定常領域は、活性化Fc領域についてのCH2またはCH2およびCH3遺伝子セグメントエンコードを含む。このことは、例えば、炎症または炎症性疾患もしくは状態を治療または予防するのに有用である。この実施態様は、また、ヒト患者内の細胞殺傷が、例えば腫瘍学的な適用について望ましい場合に、有用である。
本発明の脊椎動物または細胞の一実施態様においては、ヒト非-ミュー定常領域は、活性化Fc領域についてのCH2またはCH2およびCH3遺伝子セグメントエンコードを含む。このことは、例えば、誘導されるその後の架橋が望ましくない適用について有用である。このことは、例えば、細胞表面抗原の架橋が、本発明によって産生された抗体の投与後に避けなければならい場合に(例えば、抗体または重鎖を生じさせる標的抗原が、CD40またはCD40リガンドなどのT細胞共刺激抗原である場合に)、有用であろう。
ヒト定常領域に含ませるための定常領域および遺伝子セグメントの選択は、また、ヒト患者におけるヒトFcRnへの良好な結合に関する望ましさを考慮することができ、その結果、重鎖または前記重鎖を含む抗体が効率的に再循環され、望む薬剤半減期が達成される。この目的のためには、ガンマ型のヒト定常領域が望ましい。何故ならば、IgG抗体および重鎖は、ヒトFcRnにin vivoで効果的に結合するからである。
「抗体依存性細胞媒介細胞障害」または「ADCC」は、特定の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)上に結合した、分泌されたIgによって、これらの細胞障害エフェクター細胞が、特異的に抗原保持標的細胞に結合することが可能となり、その後、細胞毒素を用いて標的細胞を殺傷することが可能となるような細胞障害の形態を意味する。標的細胞の表面に対する、リガンド特異的な、高い親和性を有するIgG抗体は、細胞障害細胞を刺激し、このような殺傷にとって必須である。標的細胞の溶解は、細胞外で生じ、直接的な細胞と細胞の接触を必要とし、補体は関与しない。
任意の特定の抗体がADCCによって標的細胞の溶解を媒介する能力は、アッセイすることができる。ADCC活性を評価するために、対象とする抗体を、標的リガンドを提示する標的細胞へと、免疫エフェクター細胞と組み合わせて添加し、そして、免疫エフェクター細胞を、抗原抗体複合体によって活性化し、標的細胞の融解をもたらすことができる。細胞溶解は、一般的には、溶解した細胞から、標識(例えば、放射性物質、蛍光色素または天然の細胞内タンパク質)の放出によって検出される。このようなアッセイに関して有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。in vitro ADCCアッセイの特定の例は、Wisecarver et al, 1985, 19:21 1; Bruggemann et al, 1987, J Exp Med 166: 1351; Wilkinson et al, 2001, J Immunol Methods 258: 183; Patel et al, 1995 J Immunol Methods 184:29に記載されている(これらの文献のそれぞれを、参照によって組み込む)。代替的には、または追加として、対象とする抗体のADCC活性は、in vivoで、例えば動物モデル(Clynes et al, 1998, PNAS USA 95:652に記載されているような動物モデル(この文献の中身はその全体を参照によって組み込む))内で評価することができる。
「補体依存性細胞障害」または「CDC」は、補体カスケードが抗体Fcに結合する補体成分C1qによって活性化されるような細胞障害の形態を意味する。
本明細書で使用される用語「Fc」は、免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインを(N-からC-末端方向で)含むタンパク質を意味する。CH2およびCH3ドメインは、抗体または重鎖の定常領域の少なくとも一部を形成することができる。
本発明の遺伝子座を参照した場合に本明細書で使用される「定常領域」は、遺伝子座で再組換えされたVDJ配列とin vivoで組み合わった遺伝子セグメント(定常領域遺伝子セグメント)を含む一続きのDNA配列を意味する。(場合によっては、超変異後に)このVDJは、(例えば、RNAのスプライシングの後に)抗体重鎖を産生することができる脊椎動物または細胞において、定常領域遺伝子セグメントRNA転写産物ともに、可変ドメインおよび1つまたは複数の定常ドメインを含む各重鎖を産生する。「定常領域」を、抗体または抗体重鎖を参照して使用する場合、当該語句は、可変ドメインのC-末端の領域であって、1つまたは複数の定常ドメインを含む領域を意味する。
本明細書で使用される「内因性」は、定常領域等が、脊椎動物または細胞において通常見出されるタイプの定常領域等である(当該語句は、配列が、脊椎動物または細胞において通常は見出されない外因性定常領域(例えばヒト配列)の反対である)。例えば、内因性定常領域は、非-ヒト脊椎動物または細胞の野生型のゲノムによってコードされる領域としうる。よって、脊椎動物がマウスである一例においては、内因性定常領域は、マウス定常領域となるであろう。更に、内因性領域は、一例において、脊椎動物または細胞と種が合致している。そのため、一実施態様において、脊椎動物または細胞はマウス129ES細胞であり、内因性定常領域は、マウス129定常領域となるであろう。他の実施態様において、脊椎動物または細胞は、JM8種のマウスまたはマウス細胞であり、内因性定常領域は、マウスJM8定常領域となるであろう。他の実施態様において、脊椎動物または細胞は、Black 6マウスまたはマウス細胞であり、内因性定常領域は、マウスBlack 6定常領域となるであろう。
一実施態様において、本発明の脊椎動物または細胞における遺伝子座は、非-ヒト定常領域遺伝子セグメントの下流に1つまたは複数のmembrane-encoding exon(M)およびポリAを(5'から3'への方向で)含み、前記脊椎動物は、前記非-ミューアイソタイプの膜結合重鎖または抗体を発現することができる。加えて、または代替的に、前記遺伝子座は、最後のヒト定常領域遺伝子セグメントの下流直後にポリAを含む。前記遺伝子座は、ポリAと1つまたは複数のmembrane-encoding exonの間にスプライシング部位を更に含み、前記脊椎動物または細胞は、膜結合型および分泌型の両方の非-ミュー重鎖または抗体を発現することができる。
内因性ミューからヒト非-ミューアイソタイプへのスイッチングを得るために、遺伝子座は、ミュー定常領域の5'側にスイッチを含み(例えば、内因性S-ミューが保持され)、ヒト非-ミュー定常領域の(または各領域の)5'側に第二のスイッチを含む。第二のスイッチは、ヒト定常領域とともに通常存在するヒトスイッチとしうる(例えば、ヒト定常領域がガンマ-1定常領域である場合、ヒトガンマ-1スイッチは保持される)。代替的に、前記スイッチは、対応する内因性非-ヒト脊椎動物スイッチとすることができ、一例においては、例えば、ヒトガンマ定常領域のCH1からM2またはM2の3'側のポリAのヒトDNAに対応するヌクレオチド配列が、脊椎動物または細胞ゲノム中で内因性S-ガンマの下流に挿入されている場合は、内因性S-ガンマ(例えば、S-ガンマ-1)とすることができる。スイッチ配列は、当該業界で知られており、例えば、Nikaido et al, Nature 292: 845-848 (1981)や、 WO2011004192、US7501552、US6673986、US6130364、WO2009/076464およびUS6586251、例えば、US7501552に記載されている配列番号9〜24を参照せよ。市販されているヒトおよびマウスBACライブラリー(例えば、RPC-11ならびにCaltech A、B、CおよびDライブラリー)は、適した免疫グロブリン遺伝子座配列、例えば、スイッチまたは定常領域の配列の供給源である。代替的に、ヒトDNAサンプルは、(例えば、口腔粘膜検体採取を用いて)同意を得られたドナーからde novoで得ることができ、DNA配列がサンプルから得ることができる。
一実施態様においては、本発明の脊椎動物または細胞は、再構成または非再構成可変領域、第一のスイッチ(例えば、S-ミュースイッチ、例えば、内因性S-ミュー)、内因性ミュー定常領域、第二のスイッチ(S-ガンマスイッチ、例えば、内因性S-ガンマ)および前記非-ミューアイソタイプのヒト定常領域を(5'から3'の方向で)含む抗体重鎖遺伝子座を含み、前記重鎖遺伝子座は、IgMから非-ミューアイソタイプへのスイッチを経ることができる。それ故、例えば、このことは、非-ヒト脊椎動物または細胞(例えばES細胞)のゲノムにおいて、内因性ミュー領域の下流(3'側)に1つまたは複数のヒト非-ミュー定常領域配列を挿入することによって提供されることができる。この方法においては、ヒト配列は、内因性重鎖遺伝子座の位置に提供され、前記ヒト配列からの発現は、内因性抗体およびB細胞メカニズムを使用して有効に制御することができる。
内因性IgMに関連したVH、DおよびJH再構成ならびに最初の発現を提供することによって、非-ヒト(例えばマウス)ミュー定常領域と関連する重鎖可変領域が、産生され選択される。このことによって、有利には、内因性RAG-1およびRAG-2が、完全に内因性のコンテクスト中で有効に使用できることが可能となり、そして、抗体およびB細胞発達に関連した、内因性の制御、変異およびシグナリングを利用することが可能となる。本発明によって、その後で、ヒト非-ミューC領域へのスイッチングが可能となり、このことによって、内因性の活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)によって行われる体細胞超変異によって親和性が成熟した、得られる重鎖において、ヒト定常ドメインを産生することができる。ヒトCドメインの観点から未だ十分に機能する(例えば、良好な発現、親和性、生物物理学的特徴)、このような再構成された可変領域を、in vivoで、マウスによって選択し、所定の抗原を用いた免疫後に増幅させる。このことによって、良好な、完全なヒト抗体および重鎖について選択するためのマウス(または他の非-脊椎動物)システムを利用する方法における、親和性成熟、および、望む抗体/重鎖を発現する、選択されたB細胞のin vivo増幅とともに、内因性抗体およびB細胞の産生および制御を利用するという利点が保持される。良好な生物物理学的特徴、発現、親和性等が織り込まれておらず(それ故、しばしば、従来技術においては抗体のグレードの低下をもたらす)、キメラ抗体のin vivoでの最初の産生後に複数の手順が加えられている、in vitroでヒト化する従来技術の方法よりも、本発明は優れている。
一実施態様においては、本発明の脊椎動物または細胞は、前記非-ミューアイソタイプの内因性抗体重鎖を発現しない。例えば、このことは、内因性重鎖可変および定常領域を欠失または不活性化させる標準的な方法を使用してもたらされる。それ故、当業者は、前記脊椎動物または細胞によって産生される、所定のヒト非-ミューアイソタイプ(例えば、IgG抗体)の重鎖が、常にヒト定常領域を含むことを認識する。
一実施態様においては、本発明の脊椎動物または細胞において、ヒト非-ミュー定常領域は、ガンマ定常領域(例えば、ガンマ-1、-2、-3または-4)である。ガンマ定常領域の代わりに、定常領域は、デルタ、アルファ(例えば、アルファ-1もしくは-2)またはイプシロン定常領域としうる。それ故、前記で論じたように、本発明によって、当業者は、得られる抗体および重鎖の望む定常領域の機能に従って、脊椎動物または細胞のゲノムを仕立てることができる。
一実施態様においては、本発明の脊椎動物または細胞において、ガンマ定常領域は、抗体Fc領域をコードするためのCH2およびCH3遺伝子セグメントを含む。一例においては、定常領域は、また、ヒト定常領域のCH1遺伝子セグメントを含む。このことは、4本鎖の抗体(典型的なH2L2抗体)の一部を形成する重鎖を産生するのに役立つ。他の例において、定常領域は、CH1遺伝子セグメントを欠いている。このことは、軽鎖を有さない重鎖のみの抗体(H2抗体)の一部を形成する重鎖を産生するのに役立つ。
一実施態様においては、本発明の脊椎動物または細胞において、ゲノムは、ヒト可変領域を含む軽鎖の発現のために、定常領域の上流に、ヒトVLおよびJL遺伝子セグメントを含み、場合によっては、前記定常領域は、ヒト軽鎖定常領域である。例えば、前記ゲノムは、ヒト可変領域を含むカッパ軽鎖の発現のために、内因性カッパ遺伝子座において、内因性またはヒトカッパ定常領域の上流に、ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントを含む軽鎖遺伝子座を含む。この例においては、脊椎動物がマウスである場合、マウスにおけるラムダ鎖発現は相対的に低いことから、ラムダ遺伝子座はヒト化する必要はないかもしれない。場合によっては、ラムダ遺伝子座は、不活性化されており、および/または、内因性もしくはヒトラムダ定常領域の上流に、ヒトVλおよびJλを含む。場合によっては、内因性カッパ鎖発現は、不活性化されている。
例えば、前記脊椎動物または細胞は、実質的に、内因性軽鎖を発現しない。
内因性抗体、抗体鎖または遺伝子セグメントの利用の不活性化とは、例えば、実質的に完全な不活性化または防止(実質的に100%の不活性化または防止、すなわち、基本的には内因性抗体鎖等の全て(例えば、内因性重鎖等の全てが)が発現しない(例えば、10、5、4、3、2、1または0.5%未満の内因性抗体鎖等のみが発現する))である。このことは、例えば、非-ヒト脊椎動物もしくは細胞によって産生される抗体レパートリーを評価することによる抗体鎖(タンパク質)レベルで、または、例えばRACEを使用して、抗体遺伝子座のmRNA転写物を評価することによるヌクレオチドレベルで、求めることができる。一実施態様においては、不活性化は、50%を超える(すなわち、50%以下の抗体または転写産物が、内因性抗体鎖由来である)、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を超える。例えば、一実施態様においては、脊椎動物の重鎖レパートリーの85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以下が、内因性重鎖によって提供されるように、内因性重鎖の発現が実質的に不活性される。例えば、脊椎動物の実質的に全ての重鎖レパートリーが、内因性重鎖によっては提供されないように、内因性重鎖発現が実質的に不活性化される。例えば、一実施態様においては、脊椎動物のカッパ鎖レパートリーの85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以下が、内因性カッパ鎖によって提供されるように、内因性カッパ鎖の発現が実質的に不活性化される。例えば、脊椎動物の実質的に全てのカッパ鎖レパートリーが、内因性カッパ鎖によっては提供されないように、内因性カッパ鎖の発現が実質的に不活性化される。例えば、一実施態様においては、脊椎動物のラムダ鎖レパートリーの85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以下が、内因性ラムダ鎖によって提供されるように、内因性ラムダ鎖の発現が実質的に不活性化される。例えば、脊椎動物の実質に全てのラムダ鎖レパートリーが、内因性ラムダ鎖によっては提供されないように、内因性ラムダの発現が実質的に不活性化される。
一実施態様においては、本発明の脊椎動物または細胞において、ヒトガンマ定常領域は、CH1遺伝子セグメントを含まない。一実施態様においては、一例において、軽鎖の発現は不活性化されており、非-ミュー重鎖は発現しない。このことは、非-ミューアイソタイプの重鎖のみの抗体を産生するのに有用である。
一実施態様においては、本発明の脊椎動物または細胞において、遺伝子座は、内因性非-ミュー定常領域遺伝子セグメント(例えば、CH2およびCH3遺伝子セグメント)の、同じ非-ミューアイソタイプの対応するヒト定常領域遺伝子セグメント(例えば、CH2およびCH3遺伝子セグメント)との置換を含み、場合によっては、前記非-ミューアイソタイプの内因性スイッチを保持する。このことは、付随するヒトアイソタイプへのスイッチングの非-ミュースイッチ制御を維持するのに役立ちうる。本明細書で謂うところの置換は、機能的または物理的置換を意味し、前記非-ミューアイソタイプの内因性定常領域は、非-機能的であるか、または、最終的なゲノムに存在しておらず、ヒト定常領域は、機能的で存在している。
請求項の何れかに記載の脊椎動物または細胞においては、遺伝子座が、ヒトガンマS-ガンマCH1、ヒンジまたはCH2遺伝子セグメントからヒトガンマCH3遺伝子セグメント(このセグメントを含む)までの配列を含む、ヒトガンマ定常領域ヌクレオチド配列の挿入を含み、前記挿入によって、脊椎動物または細胞のゲノムにおいて、内因性ガンマ定常領域の対応する配列が置換されている。このことは、生成物重鎖または抗体におけるヒト非-ミューFcの適切な発現のための相対的なゲノムまたは生殖系列構成において、ヒトCH2およびCH3ならびに遺伝子間(inter-gene)セグメント配列を維持するのに有用である。適切なFc機能は、前記で論じたように、鎖もしくは抗体またはその薬物誘導体を摂取するヒト患者におけるFc受容体の相互作用および再循環に関して望ましい。本明細書で謂うところの置換は、機能的または物理的置換を意味し、前記非-ミューアイソタイプの内因性定常領域は、非-機能的であるか、または、最終的なゲノムに存在しておらず、ヒト定常領域は、機能的で存在している。
一例において、ヒト定常領域は、ヒトの生殖系列構成にある。用語「生殖系列構成」とは、生殖系列ゲノム構成を指す。例えば、本発明の遺伝子座に存在するヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメントの相対的順序がヒト生殖系列ゲノム中の対応する遺伝子セグメントの順序と同じである場合、生殖系列構成にある。例えば、本発明の遺伝子座が、仮定のヒト免疫グロブリン定常領域遺伝子セグメントA、BおよびCを含む場合、これらのものは、ヒト生殖系列ゲノムの対応する遺伝子セグメントが配列5'-A-B-C-3'を含む場合、この順序(遺伝子座中で5'から3'に向かって)で提供され、場合によっては、遺伝子間(inter-gene)セグメントも生殖系列構成にある(すなわち、AからCのヌクレオチド配列は、ヒトの生殖系列ゲノムにおいてはAからCの一続きの近接ヌクレオチド配列に対応する)。ヒトの生殖系列配列の利用可能なデータベースおよび供給源を以下に論じる。それ故、一例において、ヒト免疫グロブリン遺伝子座のエレメント(例えば、遺伝子セグメント、エンハンサーまたは他の調節エレメント)が本発明による遺伝子座中で提供される場合、ヒトIg遺伝子座エレメントは、エレメントの相対的順序がヒト生殖系列ゲノム中の対応するエレメントの順序と同じである場合であって、そのエレメント間にヒト配列が含まれ、これらのものがヒト生殖系列ゲノム中に対応するエレメント間のそのような配列に対応する場合、生殖系列構成にある。かくして、仮定の例において、トランスジェニック遺伝子座は、配列5'-A-S1-B-S2-C-S3-3'(ここで、A、BおよびCは、ヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントであり、S1〜S3は、ヒト遺伝子間(inter-gene)セグメント配列であり、対応する配列5'-A-S1-B-S2-C-S3-3'はヒト生殖系列ゲノム中に存在する)中にヒトエレメントを含む。例えば、このことは、本発明のトランスジェニック免疫グロブリン遺伝子座中に、ヒト生殖系列ゲノム中のAからCまでのDNA配列に対応するDNA挿入物(またはAからCまでのDNA配列を含む挿入物)を提供することにより、達成することができる。ヒト生殖系列ゲノムおよび免疫グロブリン遺伝子座中の配列は、当技術分野で公知である(例えば、IMGT、Kabatおよび他の抗体リソースを参照されたい)。
本発明の一態様において、内因性の遺伝子間(inter-gene)セグメント配列は、重鎖遺伝子座が内因性定常領域遺伝子間(inter-gene)セグメント配列の側面に位置する前記ヒトの非-ミュー定常領域遺伝子セグメントを含むように、維持されている。このことは、脊椎動物または細胞におけるクラススイッチおよび抗体/鎖産生に関する内因性のメカニズムを使用してコントロールするために、遺伝子セグメント間の任意の内因性、非-ヒト調節エレメントを保つのに役立つ。
本発明の一態様において、遺伝子座は、内因性ガンマ定常領域遺伝子セグメント(例えば、ガンマCH2およびCH3遺伝子セグメント)の、ヒトガンマ定常領域遺伝子セグメント(例えば、ガンマCH2およびCH3遺伝子セグメント)との置換を含むが、ガンマ定常領域間の内因性配列は保持されている。このことは、脊椎動物または細胞におけるクラススイッチおよび抗体/鎖産生に関する内因性のメカニズムを使用してコントロールするために、遺伝子セグメント間の任意の内因性、非-ヒト調節エレメントを保つのに役立つ。
[ヒト定常領域の代替的コンビネーションおよびin vivo選択を提供するための集団]
本発明は、また、当業者が、ヒトの変異した可変領域を複数の異なるヒト定常ドメイン(および/またはその合成変異体)と組み合わせた、抗体/重鎖産生および選択スキームを企図することが可能となる一般的なコンビナトリアルまたはレパートリーアプローチを提供する。このスキームは、容易に、in vivoの非-ヒト脊椎動物システムを利用し、産出力があり、完全なヒト配置にある標的とする抗原-特異的重鎖の発現および増幅によりコンビネーション、親和性成熟および選択を実施する。それ故、当業者は、ヒト定常領域のレパートリーと対になった、成熟した標的抗原-特異的ヒト重鎖可変ドメインのレパートリーを得る方法を提供される。当業者ならば、レパートリーの全てのメンバーが、in vivoシステムにおいて検出可能で選択可能なレベルに発現できるという点で、ヒト可変および定常重鎖領域の生産性の高いコンビネーションを表すことを理解するであろう。レパートリー(例えば、本発明の非-ヒト脊椎動物の集団において提供されたレパートリー;または、このような脊椎動物から単離されたB細胞のレパートリー:または、このような脊椎動物もしくは細胞から単離された抗体もしくは重鎖のレパートリー;または、このような抗体もしくは重鎖をコードするヌクレオチド配列のレパートリー)から、当業者は、標的抗原に結合する一つまたは複数の抗体または重鎖(または対応するヌクレオチド配列)を選択できる。選択は、望ましい抗体/鎖特性、例えば抗原結合親和性および/または生物物理学的特徴に基づいて実施される。
本発明は、また、当業者が、ヒトの変異した可変領域を複数の異なるヒト定常ドメイン(および/またはその合成変異体)と組み合わせた、抗体/重鎖産生および選択スキームを企図することが可能となる一般的なコンビナトリアルまたはレパートリーアプローチを提供する。このスキームは、容易に、in vivoの非-ヒト脊椎動物システムを利用し、産出力があり、完全なヒト配置にある標的とする抗原-特異的重鎖の発現および増幅によりコンビネーション、親和性成熟および選択を実施する。それ故、当業者は、ヒト定常領域のレパートリーと対になった、成熟した標的抗原-特異的ヒト重鎖可変ドメインのレパートリーを得る方法を提供される。当業者ならば、レパートリーの全てのメンバーが、in vivoシステムにおいて検出可能で選択可能なレベルに発現できるという点で、ヒト可変および定常重鎖領域の生産性の高いコンビネーションを表すことを理解するであろう。レパートリー(例えば、本発明の非-ヒト脊椎動物の集団において提供されたレパートリー;または、このような脊椎動物から単離されたB細胞のレパートリー:または、このような脊椎動物もしくは細胞から単離された抗体もしくは重鎖のレパートリー;または、このような抗体もしくは重鎖をコードするヌクレオチド配列のレパートリー)から、当業者は、標的抗原に結合する一つまたは複数の抗体または重鎖(または対応するヌクレオチド配列)を選択できる。選択は、望ましい抗体/鎖特性、例えば抗原結合親和性および/または生物物理学的特徴に基づいて実施される。
この目的を達成するために、本発明による脊椎動物の集団が提供され、前記集団は、
(i)前記遺伝子座が1つまたは複数の第一のヒト非-ミュー遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3;またはFc)または第一のヒト非-ミュー定常領域を含む抗体重鎖遺伝子座である第一の前記脊椎動物;
(ii)前記遺伝子座が1つまたは複数の第二のヒト非-ミュー遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3;またはFcをコードする)または第二のヒト非-ミュー定常領域を含む抗体重鎖遺伝子座である第二の前記脊椎動物;
を含み、
前記第一および第二の遺伝子セグメントが、同じタイプの定常領域遺伝子セグメント(例えば、両方がCH1遺伝子セグメントまたは両方がFcをコードする)であり、前記第二の遺伝子セグメントが、第一の遺伝子セグメントのバリアント(すなわち、変異体)である。
(i)前記遺伝子座が1つまたは複数の第一のヒト非-ミュー遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3;またはFc)または第一のヒト非-ミュー定常領域を含む抗体重鎖遺伝子座である第一の前記脊椎動物;
(ii)前記遺伝子座が1つまたは複数の第二のヒト非-ミュー遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3;またはFcをコードする)または第二のヒト非-ミュー定常領域を含む抗体重鎖遺伝子座である第二の前記脊椎動物;
を含み、
前記第一および第二の遺伝子セグメントが、同じタイプの定常領域遺伝子セグメント(例えば、両方がCH1遺伝子セグメントまたは両方がFcをコードする)であり、前記第二の遺伝子セグメントが、第一の遺伝子セグメントのバリアント(すなわち、変異体)である。
それ故、本発明のこの態様は有用である。その理由は、例えば、当業者が、望むヒトV領域(そして、良く発現し機能し、良好な生物物理学的特徴を有するもの)をin vivoで、天然に生じるヒト定常領域多型バリアントのレパートリーとの関連で選択するために、本発明の脊椎動物を使用することができ、それ故、(例えば、現在では1000 Genomes database;www.1000genomes.org中に存在する)最も一般的なヒトバリアントを含ませて、ヒト用医薬において幅広く適用できるヒト抗体および重鎖を得ることができ、または、特定のヒト集団への使用に特化するように(ヒトの民族の一員および他の集団におけるC領域バリアントの分布に従って)選択することができるからである。また、バリアントは、異なる発現および/または生物物理学的特徴を有する可能性があり、それ故、ヒト用の好ましい薬物候補を選択できるヒト抗体および重鎖のプールを入手することができる。
それ故、一つの例においては、第二の遺伝子セグメントは、異なるヒト個体のゲノム配列、例えば、1000 Genomes database(www.1000genomes.org)に見出される配列に由来する。
バリアントは、一つの例においては、対応する第一の遺伝子セグメントまたは領域と比較して、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下の変異を有する。
一態様において、第二の遺伝子セグメントまたは領域は、第一遺伝子セグメントまたは領域の合成変異体である。一つの例においては、第二の遺伝子セグメントまたは領域は、対応する第一の遺伝子セグメントまたは領域と比較して、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下の変異を有する。このようにして、当業者は、ヒト重鎖可変領域のレパートリーと組み合わせてin vivoで変異体を試験することができる。生産性が高くないコンビネーションは、(脊椎動物の自身のin vivo機構によって制御されているので)発現および/または増加することはなく、生産性の高いコンビネーションが、ヒト定常領域を有する一つまたは複数の望ましい抗体重鎖の選択のための前記集団の一つにおいて提供される。それ故、例えば、(例えば、バリアントガンマ、例えばガンマ-1、定常領域をコードする定常領域の集団を産生するために)望むタイプの定常領域の変異バリアントを作製することができる(例えば、変異のための部位および/またはコードされる残基の特定の選択によってデザインすることができる)。変異体は、一つの例においては、選択されたヒト可変領域とうまく機能するFc不活性化バリアントを見出す目的で作製される。他の例においては、変異体は、選択されたヒト可変領域とうまく機能するFc活性化バリアントを見出す目的で作製される。Fcの不活性化または活性化は、一つまたは複数の抗体または重鎖を集団またはレパートリーから選択された後で、(当該業界で知られているように)試験することができる。有利には、更なる操作はin vitroで不要であり、変異体およびコンビネーションの発現可能性をin vivoシステム(少なくとも非-ヒト脊椎動物型の細胞)で保障する。例えば、選択した抗体/重鎖を発現する単離したB細胞を不死化することによって(例えば、直接的に、または、ミエローマ細胞との融合によるハイブリドーマの産生を介してB細胞を不死化することによって)、選択された抗体の好ましい供給源を提供する細胞ラインが得られる。加えて、in vitro操作は、必ずしもpost-selectionではないので、生物物理学的特徴が低下してしまう危険性は低く、(望むアフィニティー範囲での抗原結合に関して選択された)リード抗体/重鎖の一団の生物物理学的特徴を単純に試験し、この一団から、ヒトの医薬用途および薬物産生および投与方法に必要とされる特徴のプロファイルに適合する一つまたは複数の抗体/重鎖を選択することができる。
それ故、一態様においては、第一および第二の遺伝子セグメントまたは領域の一つまたは両方は、不活性ヒトγFcをコードする。
一態様においては、第一および第二の遺伝子セグメントまたは領域の一つまたは両方は、活性ヒトγFcをコードする。
かくして、本発明の集団は、第一および第二の脊椎動物の重鎖配列レパートリーを含む全重鎖レパートリーを提供する。集団中の脊椎動物を、抗原に特異的に結合する1つまたは複数の重鎖(例えば、抗体の一部として提供される)を選択および単離する方法において、同じ抗原を用いて免疫化することができる。
レパートリーのVH遺伝子セグメントは、一実施態様においては、組換えVHであってよく、すなわち、ヒトVHと、DおよびJHとの組換えから誘導された可変領域配列の一部として提供してもよい(例えば、VH、DおよびJHがヒトである場合)。
一実施態様においては、集団は第三の前記非ヒト脊椎動物を含み、この第三の脊椎動物においては、ヒト定常領域遺伝子セグメントのレパートリーは、第一および第二の脊椎動物のものとは異なり、それにより、第三の脊椎動物は、第一および第二の脊椎動物によって産生された重鎖配列のレパートリーとは異なる重鎖配列のレパートリーを産生することができる。かくして、集団は、第一、第二および第三の脊椎動物の重鎖配列レパートリーを含む全重鎖レパートリーを提供する。集団中の脊椎動物を、抗原に特異的に結合する一つまたは複数の重鎖(例えば、抗体の一部として提供される)を選択および単離する方法において、同じ抗原を用いて免疫化することができる。
一実施態様においては、前記集団により提供されるVH遺伝子セグメントレパートリーは、機能的ヒトVH遺伝子セグメントの実質的に完全なレパートリーを含み、場合により、少なくとも6個の異なるヒトJH遺伝子セグメント、27個の異なるヒトDセグメントおよび少なくとも40個の異なるヒトVH遺伝子セグメントを提供する。
一実施態様においては、前記集団により提供されるVH遺伝子セグメントレパートリーは、少なくとも20、25、30、35または40個の異なるヒトVH遺伝子セグメントを含む。
一実施態様においては、本発明の方法は、同じ抗原(例えば、ヒト抗原)を用いて集団の脊椎動物を免疫化する工程を含む。かくして、脊椎動物は集団であり、そのようなものとして用いられる。
一実施態様においては、二つ以上または全部の前記脊椎動物の免疫化は、12、9、6、5、4、3、2もしくは1ヶ月、または3、2もしくは2週間または6、5、4、3、2もしくは1日以下の間隔を空けて実施する。かくして、脊椎動物は集団であり、そのようなものとして用いられる。
一実施態様においては、本発明の方法は、一般的な望ましい抗体または重鎖特性(例えば、前記抗原に対する結合親和性)に基づいて、前記免疫化された脊椎動物のそれぞれから一つもしくは複数の重鎖または抗体を選択する工程を含み、選択された抗体は、ヒト非-ミュー重鎖を含むか、選択された重鎖はヒトである。
一例においては、脊椎動物は、同じ遺伝的背景を共有するが、例外として、その重鎖遺伝子座(場合により、一つまたは複数のその軽鎖遺伝子座)は除かれる。
本発明の任意の構成において、一実施態様においては、脊椎動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座DNAを含むように遺伝的に改変されたトランスジェニック非ヒト脊椎動物先祖胚性幹細胞から誘導され、先祖幹細胞は同一であるか、または関連し(例えば、クローン的に関連する);場合により、先祖幹細胞のゲノムは、非ヒト脊椎動物配列とヒト配列との間の連結(junction)である共通の配列連結を含む(例えば、先祖ゲノムは、共通のトランスジェニック免疫グロブリン遺伝子座または共通のヒト/非ヒト脊椎動物(例えば、ヒト/マウスまたはヒト/ラット)DNA連結を含む)。例えば、ゲノムは、一つまたは複数のその免疫グロブリン鎖遺伝子座(例えば、重鎖遺伝子座および/または軽鎖遺伝子座)内、またはその境界に共通の連結を含む。例えば、集団の脊椎動物は、そのゲノムがその重鎖遺伝子座および/または一つもしくは複数の軽鎖遺伝子座内に共通のヒト-マウスDNA連結を含むマウスである。これは、マウスが集団を形成することを示す。例えば、共通の先祖から全てステムバックする(stemming back)バリアント脊椎動物を生成することにより、脊椎動物は全て、そのゲノム中で一つまたは複数のヒト遺伝子セグメントレパートリーを除いて同じ遺伝的背景を共有することができる。これは、異なる遺伝子セグメントサブレパートリーから得られる発現プロフィールを除いて、集団のメンバー間に他の導入された遺伝的変動はなく、集団のメンバーの性能の一貫性を増強することを意味する。これはまた、集団を作り上げるバリアントを生成するための育種を単純化する。
本発明は、本発明による集団を含有する動物舎または実験室を提供する。例えば、集団の脊椎動物を、同じケージ中で、または同じ動物舎、建築物もしくは実験室中のケージの同じコレクション中で飼育することができる。ケージまたは脊椎動物自体が同じ集団または実験の一部であるように、それらを標識することができる。それらは同じ所有者、例えば、同じ会社によって所有されていてもよく、または単一の個人もしくは会社の監督下にあってもよい。それらを、共通の抗原または関連する抗原に対する一つまたは複数の抗体または抗体鎖を探索することを目的とする同じ研究プログラムまたは一連の関連する研究実験における使用のために割り当てることができる。かくして、脊椎動物は集団を提供し、そのようなものとして用いられる。それは、脊椎動物が同じ研究プログラムもしくは免疫化スケジュールまたは実験もしくは実験のセットに関する実験室ノートもしくは実験室ノートのセットにおける同じ研究プログラムもしくは免疫化スケジュールまたは実験もしくは実験のセットの文脈で議論される集団を示す。例えば、そのようなプログラム、スケジュールまたは実験は、同じ抗原を用いる集団の脊椎動物の免疫化に関するものであってもよい。
[in vivoヒト化および抗体/鎖の選択方法]
一態様は、抗体、重鎖または前記抗体をコードするヌクレオチド配列を単離する方法であって、
(a)抗原で、本発明による脊椎動物または集団を免疫化し、脊椎動物に抗体を産生させる(例えば、Harlow, E. & Lane, D. 1998、第5版、「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Lab. Press、Plainview, NY;ならびにPasqualiniおよびArap、Proceedings of the National Academy of Sciences (2004) 101:257〜259頁を参照されたい)工程;ならびに
(b)免疫化された脊椎動物から、前記抗原に特異的に結合する抗体もしくは重鎖および/または前記抗体の少なくとも重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を単離する工程;
を含む方法を提供する。
一態様は、抗体、重鎖または前記抗体をコードするヌクレオチド配列を単離する方法であって、
(a)抗原で、本発明による脊椎動物または集団を免疫化し、脊椎動物に抗体を産生させる(例えば、Harlow, E. & Lane, D. 1998、第5版、「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Lab. Press、Plainview, NY;ならびにPasqualiniおよびArap、Proceedings of the National Academy of Sciences (2004) 101:257〜259頁を参照されたい)工程;ならびに
(b)免疫化された脊椎動物から、前記抗原に特異的に結合する抗体もしくは重鎖および/または前記抗体の少なくとも重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を単離する工程;
を含む方法を提供する。
好適には、免疫原性量の抗原が本発明の方法において送達される。本発明はまた、上記のように生成された抗体もしくは重鎖またはその誘導体を、その抗体/鎖の一部を認識する二次検出剤を用いて検出する工程を含む、標的抗原を検出するための方法にも関する。
工程(b)における抗体の単離を、従来の抗体選択技術、例えば、当業者には容易に明らかである、場合により高いストリンジェンシーでの反復ラウンドを用いる、固相支持体上に固定された抗原に対する抗体のパンニング(panning)を用いて実行することができる。
さらなる任意選択の工程として、工程(b)の後、重鎖可変領域のアミノ酸配列を変異させて、前記抗原への結合の親和性を改善する。変異を、当業者には容易に明らかであるような従来の技術により、例えば、変異性PCR(error-prone PCR)により作製することができる。親和性を、当業者には容易に明らかであるような従来の技術により、例えば、表面プラズモン共鳴、例えば、Biacore(商標)を用いることにより決定することができる。
さらに、またはあるいは、さらなる任意選択の工程として、工程(b)の後、重鎖可変領域のアミノ酸配列を変異させて、抗体の一つまたは複数の生物物理的特徴、例えば、melting temperature、溶液状態(単量体もしくは二量体)、安定性および発現(例えば、CHOもしくは大腸菌(E coli)中での)のうちの一つまたは複数を改善する。
一態様は、場合により、ヒト医薬における使用のため、例えば、ヒト患者における医学的状態または疾患を処置および/または防止するための、本発明の方法により生成された抗体または重鎖を提供する。
本発明は、ヒト抗体を単離する方法であって、請求項の何れかに記載の脊椎動物または脊椎動物の集団を抗原(例えば、ヒト抗原またはウイルスもしくは細菌抗原)で免疫化する工程、および、前記脊椎動物または集団の脊椎動物から抗体を単離する工程を含む方法であって、前記単離された抗体は前記抗原に特異的に結合し、非-ミューアイソタイプの完全ヒト重鎖を含む、方法を提供する。本発明は、前記単離された抗体またはそのコピーもしくは誘導体を含む医薬組成物を提供する。
前記方法は、ヒト化および親和性成熟抗原特異的抗体重鎖を得る方法であって、機能的な活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)を含む非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスまたはラット)を抗原で免疫化して、脊椎動物のB細胞内で、体細胞超変異および内因性ミューアイソタイプからヒト非-ミューアイソタイプへのアイソタイプスイッチングを得ることによって、重鎖をin vivoで前記脊椎動物においてヒト化する工程を含み、親和性成熟抗原-特異的抗体重鎖は前記脊椎動物によって産生および発現され、そして、前記重鎖の非-ミュー定常ドメインがヒト定常ドメインであり、更に、前記ヒト化重鎖を単離する工程を含む、方法を提供する。
一例において、重鎖の可変ドメインは、ヒト可変ドメインである。
一例において、脊椎動物は、前記の本発明の何れかの態様に従う。
前記方法は、前記方法において得られた単離した抗体重鎖またはそのコピーもしくは誘導体を含む医薬組成物であって、場合によっては、前記重鎖、コピーまたは誘導体が、抗原に特異的に結合する抗体によって産生される、医薬組成物を提供する。
場合によっては、前記方法は、前記免疫化した脊椎動物(または前記集団の免疫化した脊椎動物)からB細胞を単離する工程であって、前記B細胞が前記単離した抗体または重鎖を発現する工程、そして、場合によっては、前記B細胞を不死化する工程を含む。
場合によっては、前記方法は、前記免疫化した脊椎動物またはB細胞からヌクレオチド配列を単離する工程であって、前記ヌクレオチド配列が前記単離した抗体またはその重鎖をコードする工程を含む。
前記方法は、本発明のヌクレオチド配列またはそのコピーを含むベクター(場合によっては、宿主細胞内での)であって、15、10、9、8、7、6、5、4、3個以下の、または1個の変異を含むベクターを提供する。誘導体は、特異的に標的抗原に結合する。
前記方法は、前記抗原に関連した、または誘導される、ヒトにおける医学状態または疾患を治療または予防する方法であって、前記ヒトに、前記方法において得られた抗原特異的抗体または重鎖を投与する工程を含む方法を提供する。
前記方法は、前記抗原に関連した、または誘導される、ヒトにおける医学状態または疾患の治療または予防における使用のための、前記方法において得られた抗原特異的抗体または重鎖を提供する。
前記方法は、前記抗原に関連した、または誘導される、ヒトにおける医学状態または疾患の治療または予防用の医薬の製造における、前記方法によって得られた抗原特異的抗体または重鎖の使用を提供する。
当業者には容易に明らかであるように、本発明の任意の構成におけるIg遺伝子座中の定常領域の上流のヒト遺伝子セグメント(例えば、VまたはJ遺伝子セグメント)の動作可能な接続により、その遺伝子セグメントを、遺伝子座の定常領域によりコードされる配列を含む免疫グロブリン鎖中で組換え、および発現させることができる。
用語「抗体」は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多特異的抗体(例えば、二特異的抗体)および抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab')2)を含む。用語「抗体」はまた、重鎖の二量体(5'-VH-(任意選択のヒンジ)-CH2-CH3-3')を含み、軽鎖を含まないH2抗体も含む(天然のH2抗体と同種;例えば、Nature. 1993 Jun 3;363(6428):446〜8頁; Naturally occurring antibodies devoid of light chains; Hamers-Casterman C、Atarhouch T、Muyldermans S、Robinson G、Hamers C、Songa EB、Bendahman N、Hamers Rを参照されたい)。かくして、本発明の実施態様においては、本発明のトランスジェニック重鎖遺伝子座から生成されるRNAは、CH1遺伝子セグメントを再び含まない重鎖をコードし、機能的抗体軽鎖を含まない。一例においては、トランスジェニック重鎖遺伝子座から生成されたRNAは、VH単一可変ドメイン(dAb;ドメイン抗体)を、1つまたは複数のヒト定常ドメインとともにコードする。本発明によれば、抗体は、1つまたは複数の、非-ミューアイソタイプのヒト定常ドメインを含む。
抗体の例は、2つの軽鎖と対形成した2つの重鎖を含む古典的な4鎖抗体(例えば、5'-VL-CL-3'と対形成した5'-VH-CH1-ヒンジ-CH2-CH3-3'の二量体)または重鎖の二量体(5'-VH-(任意選択のヒンジ)-CH2-CH3-3')を含み、軽鎖を含まないH2抗体である。かくして、本発明の実施態様においては、重鎖配列レパートリーは、CH1遺伝子セグメントを再び含まない重鎖をコードし、機能的抗体軽鎖を含まない。一例においては、重鎖配列レパートリーは、VH単一可変ドメイン(dAb;ドメイン抗体)のレパートリーを、1つまたは複数のヒト定常ドメインと共にコードする。
本発明の任意の構成の一例において、レパートリーは、複数の異なるメンバーを含む(かくして、例えば、重鎖配列レパートリーは複数の異なる重鎖配列、例えば、その可変領域および/またはヒト非-ミュー定常領域において異なる配列を含む)。本発明の任意の構成の一例において、レパートリーは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも103個、少なくとも104個、少なくとも105個、少なくとも106個、少なくとも107個、少なくとも108個、少なくとも109個、少なくとも1010個、少なくとも1011個、少なくとも1012個、少なくとも1013個、または少なくとも1014個の異なるメンバーを含むか、またはそれからなる。例えば、抗体鎖配列または抗体のレパートリーは、それぞれ少なくとも100個、少なくとも103個、少なくとも104個、少なくとも105個、少なくとも106個、少なくとも107個、少なくとも108個、少なくとも109個、少なくとも1010個、少なくとも1011個、少なくとも1012個、少なくとも1013個、または少なくとも1014個の抗体鎖配列または抗体を含むか、またはそれからなる。例えば、レパートリーは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも103個、少なくとも104個、少なくとも105個、少なくとも106個、少なくとも107個、少なくとも108個、少なくとも109個、少なくとも1010個、少なくとも1011個、少なくとも1012個、少なくとも1013個、または少なくとも1014個の異なるメンバーを含むか、またはそれからなる。例えば、遺伝子セグメントのレパートリーは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個の遺伝子セグメントを含むか、またはそれからなる。場合により
、全ての遺伝子セグメントが互いに異なるか、または、同じタイプの遺伝子セグメント(例えば、CH2)が互いに異なる。
、全ての遺伝子セグメントが互いに異なるか、または、同じタイプの遺伝子セグメント(例えば、CH2)が互いに異なる。
本発明のいずれかの構成の一例において、集団は、複数の異なるメンバーを含む。かくして、例えば、非ヒト脊椎動物(例えば、マウスまたはラット)の集団は、少なくとも2つ以上の脊椎動物が非同一ゲノムを含む複数の脊椎動物を含む。このゲノムは、ヒト定常領域遺伝子セグメントのそれぞれのレパートリーにおいて異なっていてもよい。本発明の任意の構成の一例において、非ヒト脊椎動物の集団は、2体、3体、4体、5体、6体、7体、8体、9体、10体、少なくとも15体、少なくとも20体、少なくとも30体、少なくとも40体、少なくとも50体、少なくとも60v、少なくとも70体、少なくとも80体、少なくとも90体、少なくとも100体、少なくとも103体の非ヒト脊椎動物を含むか、またはそれからなる。集団が2つの脊椎動物からなる場合、脊椎動物のゲノムは異なる。
本発明の任意の構成における一実施態様においては、それぞれの脊椎動物は非ヒト哺乳動物である。本発明の任意の構成における一実施態様においては、脊椎動物はマウス、ラット、ウサギ、ラクダ科動物(例えば、ラマ、アルパカもしくはラクダ)、ニワトリ、ヤツメウナギまたはサメである。例えば、全ての脊椎動物は、同じ脊椎動物種のもの、例えば、全てマウスまたは全てラットである。
本発明の任意の構成において、ヒト遺伝子領域は、同じ個体もしくは異なる個体に由来のものであるか、または合成であるか(合成的に変異させたヒト遺伝子セグメントであるか)、またはヒトコンセンサス配列であってもよい。
ゲノムがヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物および脊椎動物細胞を構築するための技術は、当技術分野で周知である。例えば、WO2011004192、米国特許第7501552号、米国特許第6673986号、米国特許第6130364号、WO2009076464および米国特許第6586251号(これらの開示はその全体が参照により本明細書に組込まれる)を参照されたい。
一例において、本発明の任意の構成の非ヒト脊椎動物は、少なくとも1x106個の異なる機能的非-ミュー免疫グロブリン配列の多様な組合せを生成することができる。
ヒト可変領域は、非ヒト脊椎動物ミュー定常領域の上流に好適に挿入され、後者は、下流のヒト定常領域とともに、完全な定常領域、または、標的抗原を特異的に認識することができる有効な非-ミュー抗体/重鎖の形成を可能にする定常領域の十分な部分をコードするのに必要とされる全てのDNAを含む。
内因性非ヒト脊椎動物定常領域は、場合により、重鎖にとって適切な場合、野生型遺伝子座に位置する内因性宿主野生型定常領域である。例えば、ヒト定常領域DNAは、脊椎動物がマウスである場合、マウス重鎖ミュー定常領域の直接的な下流で、マウスの第12染色体上に適切に挿入される。
脊椎動物がマウスである一つの任意選択の態様において、ヒト可変領域DNA(V、DおよびJ遺伝子セグメント)の挿入は、マウスゲノムIgH遺伝子座中のJ4エクソンと内因性Sミュー遺伝子座の間の領域を標的とし、一態様においては、座標114,667,090と114,665,190の間、好適には、座標114,667,090の後の座標114,667,091に挿入される。
マウスに関する全てのヌクレオチド座標は、別途特定しない限り、マウスC57BL/6J株に関するNCBI m37に対応するもの、例えば、2007年4月のENSEMBL Release 55.37h、例えば、2007年7月のNCBI37(NCBI build 37)(例えば、UCSCバージョンmm9、www.genome.ucsc.eduおよびhttp://genome.ucsc.edu/FAQ/FAQreleases.htmlを参照されたい)である。ヒトヌクレオチド座標は、別途特定しない限り、GRCh37(例えば、UCSCバージョンhg19、http://genome.ucsc.edu/FAQ/FAQreleases.html)、2009年2月のENSEMBL Release 55.に対応するもの、またはNCBI36、Ensemble release 54に対応するものである。ラットヌクレオチドは、別途特定しない限り、RGSC 3.4、2004年12月のENSEMBL release 55.34w、またはBaylor College of Medicine HGSC v3.4、2004年11月(例えば、UCSC rn4、www.genome.ucsc.eduおよびhttp://genome.ucsc.edu/FAQ/FAQreleases.htmlを参照されたい)に対応するものである。
一態様においては、キメラIgM抗体/重鎖を形成するための宿主非ヒト脊椎動物ミュー定常領域は、異なる(内因性ではない)染色体遺伝子座にあってもよい。この場合、挿入されるヒトDNA、すなわち、ヒト可変V、D、JおよびC遺伝子セグメントを、天然の重鎖遺伝子座のものとは異なる部位で非ヒトゲノム中に挿入することができる。内因性の重鎖発現は、不活性化される。
内因性ミュー定常領域の上流または下流での、ヒト可変領域、定常領域または遺伝子セグメントの位置に関する言及は、脊椎動物において、in vivoでのミュー重鎖形成に続いて非-ミュー重鎖形成を可能とする抗体ヌクレオチドエレメントの好適な相対位置が存在することを意味する。かくして、挿入されるヒトDNAおよび内因性の定常領域および任意の他の内因性の配列は、抗体または抗体鎖生成のために互いに動作可能な接続にある。
ヒトおよび非-ヒト抗体遺伝子セグメント配列の供給源として、当業者であれば、以下の利用可能なデータベースおよびリソース(そのアップデートを含む)(その内容は参照により本明細書に組込まれる)も知っている。
Kabatデータベース(G. JohnsonおよびT. T.Wu, 2002; World Wide Web (www) kabatdatabase.com)。1966年にE.A.KabatおよびT.T.Wuによって作出されたKabatデータベースは、抗体、T細胞受容体、主要組織適合複合体(MHC)クラスIおよびII分子、ならびに免疫学的対象の他のタンパク質の整列された配列を公開する。検索可能なインタフェースは、SeqhuntIIツールにより提供され、配列アラインメント、配列亜群分類、および変動性プロットの作製のための幅広いユーティリティが利用可能である。また、特に、本発明における使用のためのヒト遺伝子セグメントを参照して、参照により本明細書に組込まれる、Kabat, E. A.、Wu, T. T.、Perry, H.、Gottesman, K.、およびFoeller, C. (1991) 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、NIH Publication No. 91-3242、Bethesda、MDも参照されたい。
KabatMan(A. C. R. Martin、2002; World Wide Web (www) bioinf.org.uk/abs/simkab.html)。これは、Kabat配列データベースへのクエリーを簡単にするウェブインタフェースである。
IMGT(International ImMunoGeneTics Information System(登録商標); M.-P. Lefranc、2002; World Wide Web (www) imgt.cines.fr)。IMGTは、あらゆる脊椎動物種の抗体、T細胞受容体、およびMHC分子を専門とする統合情報システムである。それは、ヌクレオチドおよびタンパク質配列、オリゴヌクレオチドプライマー、遺伝子マップ、遺伝子多型、特異性、および二次元(2D)および三次元(3D)構造を含む標準化されたデータへの共通のポータルを提供する。IMGTは、3つの配列データベース(IMGT/LIGM-DB、IMGT/MHC-DB、IMGT/PRIMERDB)、一つのゲノムデータベース(IMGT/GENE-DB)、一つの3D構造データベース(IMGT/3D構造-DB)、および幅広いウェブリソース(「IMGT Marie-Pauleのページ」)ならびに相互作用ツールを含む。
V-BASE(I. M. Tomlinson、2002; World Wide Web (www) mrc-cpe.cam.ac.uk/vbase)。V-BASEは、1000を超える公開された配列から蓄積された全てのヒト抗体生殖系列可変領域配列の包括的ディレクトリである。それは、再配置された抗体V遺伝子の、その最も近い生殖系列遺伝子セグメントへの割り当てを可能にするアラインメントソフトウェアDNAPLOTのバージョン(Hans-Helmar AlthausおよびWerner Mullerにより開発された)を含む。
抗体-構造および配列(Antibodies-Structure and Sequence)(A. C. R. Martin、2002; World Wide Web (www) bioinf.org.uk/abs)。このページは、抗体の構造および配列に関する有用な情報をまとめたものである。それは、Kabat抗体配列データへの問い合わせインタフェース、抗体、結晶構造に関する一般情報、および他の抗体関連情報へのリンクを提供する。それはまた、Protein Databank(PDB)に寄託されたあらゆる抗体構造の自動化された概要を配布している。特に興味深いのは、抗体可変領域の様々な番号付けスキームの徹底的な記載および比較である。
AAAAA(A Ho's Amazing Atlas of Antibody Anatomy; A. Honegger, 2001; World Wide Web (www) unizh.ch/〜antibody)。このリソースは、構造分析、モデリング、および遺伝子操作のためのツールを含む。それは、抗体およびT細胞受容体配列の包括的構造アラインメントのための統一的スキームを採用しており、抗体分析および図示のためのExcelマクロを含む。
WAM(Web Antibody Modeling; N. WhiteleggおよびA. R. Rees, 2001; World Wide Web (www) antibody.bath.ac.uk)。University of Bath、United KingdomのCentre for Protein Analysis and Designにより主催されている。確立された理論的方法の組合せを用いて抗体Fv配列の3Dモデルを構築するためのAbMパッケージ(以前はOxford Molecularにより市販されていた)に基づけば、このサイトは最新の抗体構造情報も含む。
Mike's Immunoglobulin Structure/Function Page (M. R. Clark、2001; World Wide Web (www) path.cam.ac.uk/〜mrc7/mikeimages.html)。これらのページは、免疫グロブリンの構造および機能に関する教育材料を提供し、多くのカラー画像、モデル、およびアニメーションにより例示されている。抗体ヒト化およびMike Clark's Therapeutic Antibody Human Homology Projectに関するさらなる情報が利用可能であり、これは臨床効果および抗免疫グロブリン応答と、治療抗体の可変領域配列とを相関させることを目的とする。
The Antibody Resource Page (The Antibody Resource Page、2000; World Wide Web (www) antibodyresource.com)。このサイトは自身で、「抗体研究および供給業者に対する完全な指針」と記載している。アミノ酸配列決定ツール、ヌクレオチド抗体配列決定ツール、およびハイブリドーマ/細胞培養データベースへのリンクが提供される。
Humanization bY Design (J. Saldanha、2000; World Wide Web (www) people.cryst.bbk.ac.uk/〜ubcg07s)。このリソースは、抗体ヒト化技術に関する概説を提供する。最も有用な特徴は、設計問題、フレームワーク選択、フレームワーク復帰突然変異、およびヒト化構築物の結合親和性に関する情報を含む40を超える公開されたヒト化抗体の検索可能なデータベース(配列およびテキストによる)である。
また、「Antibody Engineering Methods and Protocols」、Benny K C Lo(編)、Methods in Molecular Biology(商標)、Human Pressも参照されたい。また、World Wide Web (www) blogsua.com/pdf/antibody-engineering-methods-and-protocolsantibody-engineering-methods-and-protocols.pdfも参照されたい。
B細胞を取得することができる試料としては、限定されるものではないが、血液、血清、脾臓、脾臓組織、骨髄、リンパ、リンパ節、胸腺、および虫垂が挙げられる。抗体および免疫グロブリン鎖を、前記の試料のそれぞれから、ならびにまた、以下の非限定的一覧:B細胞、腹水、ハイブリドーマ、および細胞培養物から取得することができる。
「複数」はその用語の通常の意味で用いられ、「少なくとも一つ」または「一つより多い」を意味する。
「から誘導される(に由来する)」は、その用語の通常の意味で用いられる。類義語の例としては、「として生成される」、「から得られる」、「から受容される」、「から取得される」、「の生成物」、「の結果」、および「から改変される」が挙げられる。例えば、重鎖のヒト可変領域を、ヒトVH、DおよびJH遺伝子セグメントの組換えから誘導することができ、これは、例えば、任意の付随する変異(例えば、junctional mutation)を有する本発明によるトランスジェニック重鎖遺伝子座中でのこれらの遺伝子セグメントのin vivoでの組換えを反映する。定常領域または遺伝子セグメント配列は、例えば、ヒト個体のゲノムに存在する(またはその個体がメンバーであるヒトの民族または地理的集団において存在する)領域またはセグメントの同一のヌクレオチドコピーであるならば、その個体から誘導される。集団およびゲノムのバリアント免疫グロブリン遺伝子配列は、例えば、1000 Genomes databaseにおいて、または、ヒトからDNAをサンプリングし、配列決定することによって、見出すことができる。
本発明の任意の構成における一実施態様においては、ある脊椎動物もしくは細胞またはそれぞれの脊椎動物もしくは細胞のゲノムは、完全に内因性の抗体または重鎖の発現を防止するか、または低減させるように改変されている。これを行うための好適な技術の例は、WO2011004192、米国特許第7501552号、米国特許第6673986号、米国特許第6130364号、WO2009/076464、EP1399559、および米国特許第6586251号に見出すことができ、その開示は参照により本明細書に組込まれる。一実施態様においては、内因性重鎖免疫グロブリン遺伝子座の非ヒト脊椎動物VDJ領域、および場合により、内因性軽鎖免疫グロブリン遺伝子座(ラムダおよび/またはカッパ遺伝子座)のVJ領域が不活化されている。例えば、非ヒト脊椎動物VDJ領域の全部または一部は、哺乳動物の内因性重鎖免疫グロブリン遺伝子座における反転により不活化され、場合により、反転した領域は内因性Ig遺伝子座の上流または下流に移動する。例えば、非ヒト脊椎動物VJ領域の全部または一部は、哺乳動物の内因性カッパ鎖免疫グロブリン遺伝子座における反転により不活化され、場合により、反転した領域は内因性Ig遺伝子座の上流または下流に移動する。例えば、非ヒト脊椎動物VJ領域の全部または一部は、哺乳動物の内因性ラムダ鎖免疫グロブリン遺伝子座における反転により不活化され、場合により、反転した領域は内因性Ig遺伝子座の上流または下流に移動する。一実施態様においては、内因性重鎖遺伝子座は、内因性カッパおよびラムダ遺伝子座の一方または両方と同様、この方法で不活化される。
さらに、またはあるいは、ある脊椎動物またはそれぞれの脊椎動物は、成熟宿主BおよびTリンパ球の生成を防止する遺伝的背景、場合により、RAG-1欠損および/またはRAG-2欠損背景で作製されたものである。RAG-1欠損動物を作製するための技術については、米国特許第5859301号を参照されたい。
用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書では「抗体」と互換的に用いられる。
「単離された」抗体または重鎖は、その生成環境(例えば、天然または組換え)の成分から同定、分離および/または回収されたものである。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その生成環境に由来するあらゆる他の成分との会合を含まず、例えば、その結果、抗体はFDAにより認可され得るか、または認可された標準へと単離されている。組換えトランスフェクト細胞から生じるものなどの、その生成環境の混入成分は、抗体に関する研究、診断的または治療的使用を典型的に妨げる材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられる。好ましい実施態様においては、ポリペプチドは、(1)例えば、Lowry法により決定された場合に抗体が95重量%を超えるまで、いくつかの実施態様においては、99重量%を超えるまで;(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用によってN末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで;または(3)クマシーブルー、もしくは、好ましくは、銀染色を用いる非還元もしくは還元条件下でのSDS-PAGEで均一になるまで精製される。抗体の天然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離された抗体は組換え細胞内のin situの抗体を含む。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチド、鎖または抗体は少なくとも一つの精製工程によって調製される。
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域および/または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、dAb、Fab、Fab'、F(ab')2およびFvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子ならびに抗体フラグメントから形成された多特異的抗体が挙げられる。
特定のポリペプチド、抗原、またはエピトープに「特異的に結合する」または「特異的な」抗体は、他のポリペプチド、抗原またはエピトープに実質的に結合することなく、特定のポリペプチド、抗原、またはエピトープに結合するものである。例えば、抗原またはエピトープへの結合は、抗体が100μM以下、10μM以下、1μM以下、100nM以下、例えば、10nM以下、1nM以下、500pM以下、100pM以下、または10pM以下のKDで結合する場合に特異的である。当業者によって公知である標準的な手順、例えば、ELISAにおける結合および/または表面プラズモン共鳴を用いる親和性決定(例えば、Biacore(商標)もしくはfMまでの親和性を検出することができるKinExA(商標)液相親和性測定(Sapidyne Instruments、Idaho))を用いて、結合親和性(KD)を決定することができる。
「医薬的に許容される」とは、米国連邦もしくは州政府の規制当局により認可されたか、もしくは認可され得るか、または米国薬局方もしくはヒトを含む動物における使用のための他の一般的に認識される薬局方にリストされていることを指す。「医薬的に許容される担体、賦形剤、またはアジュバント」とは、薬剤、例えば、本明細書に記載の任意の抗体または抗体鎖と一緒に、対象に投与することができ、その薬理活性を破壊せず、治療量の薬剤を送達するのに十分な用量で投与した場合に非毒性的である担体、賦形剤、またはアジュバントを指す。
本発明の脊椎動物または細胞の任意の構成の一実施態様においては、ゲノムは、少なくとも一つのヒトJλ領域および少なくとも一つのヒトCλ領域、場合により、Cλ6および/またはCλ7を含むヒトIgλ遺伝子座の全部または一部を含む抗体軽鎖遺伝子座を含む。場合により、軽鎖遺伝子座は、複数のヒトJλ領域、場合により、Jλ1、Jλ2、Jλ6およびJλ7のうちの2つ以上、場合により、Jλ1、Jλ2、Jλ6およびJλ7の全部を含む。ヒトラムダ免疫グロブリン遺伝子座は、連続するJ-Cクラスターから構成されるユニークな遺伝子構造を含む。この特徴を利用するために、本発明は、任意選択の態様において、1つまたは複数のそのようなヒトJ-Cクラスターを用いる。かくして、場合により、軽鎖遺伝子座は、少なくとも一つのヒトJλ-Cλクラスター、場合によっては少なくともJλ7-Cλ7を含む。そのようなトランスジーンの構築は、ヒトラムダ遺伝子座の全部または一部を用いることができることにより、容易になり、その結果、トランスジーンが生殖系列構成中に1つまたは複数のJ-Cクラスターを含み、有利には、ヒト遺伝子座中のクラスター間および/または隣接するJ領域とC領域の間に介在配列をも含むようになる。このことによって、VJおよび/またはJC組換えに関与し、内因性AID(活性化誘導デアミナーゼ)により認識され得る介在配列内に、任意の調節エレメントが保存される。
一態様は、本発明の抗体または重鎖をコードするヌクレオチド配列を提供し、場合により、前記ヌクレオチド配列はベクターの一部である。適したベクターは、当業者には容易に明らかであり、例えば、1つまたは複数の発現制御エレメントと共に動作可能な連結にあるヌクレオチド配列を含む従来の抗体発現ベクターである。
一態様は、本発明の抗体または重鎖と、希釈剤、賦形剤または担体とを含む医薬組成物を提供し、場合により、前記組成物はIV容器(例えば、IVバッグ)またはIVシリンジに接続された容器中に含有される。
一態様は、ヒト患者における疾患または状態の処置および/または予防のための医薬の製造における本発明の抗体または重鎖の使用を提供する。
当業者は、一般的に、標準的なクローニング技法および組換えDNA技法に精通している- Sambrook, JおよびRussell, D. (2001、第三版) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Lab. Press, Plainview, NY)を参照されたい。
さらなる態様において、本発明は、本発明に従って生成されたヒト化抗体および抗体重鎖、ならびにヒト医薬における前記抗体の使用に関する。本発明はまた、そのような抗体または重鎖と、薬学的に許容される担体または他の賦形剤とを含む医薬組成物にも関する。
モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の両方の作製のための方法が、当技術分野で周知であり、本発明は、本発明による脊椎動物、細胞または非ヒト脊椎動物の集団中での抗原チャレンジに応答して生成される完全ヒト化抗体のポリクローナル抗体とモノクローナル抗体および重鎖の両方に関する。
さらなる態様において、本発明は、ヒト抗体重鎖レパートリーと関連した、薬剤およびワクチンの相応しい効果の分析における、本発明の非ヒト脊椎動物の集団の使用に関する。
本発明はまた、薬剤またはワクチンの同定または検証のための方法であって、前記ワクチンまたは薬剤を、本発明の脊椎動物の集団に送達する工程、および、免疫応答、安全性プロフィール、疾患に対する効果のうちの1つまたは複数をモニタリングする工程を含む、方法にも関する。
本発明は、また、本明細書に開示される抗体、重鎖または抗体誘導体と、そのような抗体、誘導体もしくは鎖、または好適な実験試薬、例えば、バッファー、抗体検出試薬の使用のための説明書とを含むキットにも関する。
本発明は、また、抗体、またはその一部を作製するための方法であって、
(i)本発明の脊椎動物、細胞もしくは集団を用いて得られた、抗体もしくは重鎖をコードする核酸;または
(ii)本発明の脊椎動物、細胞もしくは集団を用いて得られた抗体もしくは重鎖をコードする核酸を発現させて、抗体もしくは重鎖を生成させることができる配列情報
を提供する工程を含む、方法にも関する。
(i)本発明の脊椎動物、細胞もしくは集団を用いて得られた、抗体もしくは重鎖をコードする核酸;または
(ii)本発明の脊椎動物、細胞もしくは集団を用いて得られた抗体もしくは重鎖をコードする核酸を発現させて、抗体もしくは重鎖を生成させることができる配列情報
を提供する工程を含む、方法にも関する。
一実施態様において、それぞれの脊椎動物は、非ヒト脊椎動物、マウスまたはラットであり、そのゲノムは、
(a)前記遺伝子座であって、トランスジェニック重鎖遺伝子座である(すなわち、内因性の重鎖遺伝子座の位置にある)遺伝子座;ならびに
(b)抗体カッパ軽鎖遺伝子座トランスジーンおよび/または抗体ラムダ鎖遺伝子座トランスジーン
を含み、
前記トランスジーン中のV、DおよびJの全てがヒトV、DおよびJであり、内因性抗体重鎖および軽鎖発現が不可性化されており、場合によっては、前記ゲノムが前記重鎖および軽鎖遺伝子座に対して同型である。このことは、全ての軽鎖定常領域がヒトである場合に、脊椎動物(およびこのような脊椎動物を含む集団)において、ヒト抗体および鎖のみを予想通りに産生するのに役立つ。
(a)前記遺伝子座であって、トランスジェニック重鎖遺伝子座である(すなわち、内因性の重鎖遺伝子座の位置にある)遺伝子座;ならびに
(b)抗体カッパ軽鎖遺伝子座トランスジーンおよび/または抗体ラムダ鎖遺伝子座トランスジーン
を含み、
前記トランスジーン中のV、DおよびJの全てがヒトV、DおよびJであり、内因性抗体重鎖および軽鎖発現が不可性化されており、場合によっては、前記ゲノムが前記重鎖および軽鎖遺伝子座に対して同型である。このことは、全ての軽鎖定常領域がヒトである場合に、脊椎動物(およびこのような脊椎動物を含む集団)において、ヒト抗体および鎖のみを予想通りに産生するのに役立つ。
一実施態様においては、カッパ鎖トランスジェニック遺伝子座は、実質的に完全なヒト機能的VκおよびJκレパートリーを含み、ラムダ鎖トランスジーンは、実質的に完全なヒト機能的VλおよびJλレパートリーを含む。本明細書で謂うところの「機能的」は、Ig遺伝子セグメント偽遺伝子および非-機能的ヒトIg遺伝子セグメントを除外できることを意味する。
一例において、本発明の遺伝子座は、内因性ミュー定常領域の5'のS-ミュースイッチ(例えば、内因性S-ミュー)、および、内因性ミュー定常領域の3'おヒトガンマ定常領域を、CミューおよびCガンマ領域間のS-ガンマスイッチ(例えば、ヒトまたは内因性S-ガンマ)とともに含む重鎖遺伝子座である。例えば、Cミュー領域およびスイッチは、マウス129Cミュー領域およびスイッチであり、Cミュー領域およびスイッチは、マウスのブラック6Cミュー領域(Black 6 C-mu region)およびスイッチである。(非-ヒト脊椎動物種がマウスまたはラットである)他の実施態様において、Sミューは、ラットSミューであり、Cミュー領域はマウスであり、場合によっては、Cミュー領域の3'に、マウスSガンマが存在する。
一態様において、それぞれの脊椎動物は、遺伝的背景がマウス株C57BL/6、M129、例えば、129/SV、BALB/c、およびC57BL/6、M129の任意のハイブリッド、例えば、129/SV、またはBALB/cから選択されるマウスである。一実施態様においては、これらの脊椎動物のそれぞれは、同じ遺伝的背景を有するが、集団の2つ以上の脊椎動物は、そのヒト遺伝子セグメントレパートリー(例えば、そのヒトC領域遺伝子セグメントレパートリー)において異なる。
一実施態様においては、本発明のそれぞれの遺伝子座のJセグメントは、ヒトJH遺伝子セグメントであり、場合により、それぞれの重鎖遺伝子座は、ヒトJH遺伝子セグメントの実質的に完全な機能的レパートリーを含む。
一実施態様においては、本発明のそれぞれの遺伝子座は、少なくとも2、3、4、5または6個の異なるヒトJH遺伝子セグメントを含む。
一実施態様においては、本発明のそれぞれの遺伝子座のDセグメントは、ヒトD遺伝子セグメントであり、場合により、それぞれの重鎖遺伝子座は、ヒトD遺伝子セグメントの実質的に完全な機能的レパートリーを含む。
一実施態様においては、本発明のそれぞれの遺伝子座は、少なくとも5、10、15、20、25、26または27個の異なるヒトD遺伝子セグメントを含む。
一実施態様においては、前記脊椎動物の重鎖遺伝子座は、同一のヒトDおよびJH遺伝子セグメントレパートリーを含むが、そのVH遺伝子レパートリーにおいて異なる。
一実施態様においては、それぞれの重鎖遺伝子座は、J1、J2、J3、J4、J5およびJ6からなる群から選択される少なくとも2個のヒトJH遺伝子セグメント、場合により、前記群の遺伝子セグメントの全部を含む。
一実施態様においては、それぞれの脊椎動物は、V6-1、V1-2、V1-3、V4-4、V7-41、V2-5、V3-7、V1-8、V3-9、V3-11、V3-15、V1-18、V3-20、V3-21、V3-23、V1-24、V2-26、V4-28、V3-30、V4-31、V3-33、V4-34、V4-39、V3-43、V1-45、V1-46、V3-48、V3-49、V5-51、V3-53、V1-58、V4-59、V4-61、V3-64、V3-66、V1-69、V2-70、V3-72、V3-73およびV3-74からなる群から選択されるヒトVH遺伝子セグメントを含み、前記VH遺伝子レパートリーは実質的に完全なヒトの機能的なVH遺伝子レパートリーを含む。
一実施態様においては、内因性の抗体重鎖の発現は、本発明の脊椎動物または細胞中で不活化されている。例えば、10、5、4、3、2、1または0.5%未満の重鎖が、内因性重鎖(すなわち、その可変領域が、非ヒト脊椎動物のV、DおよびJ遺伝子セグメントの組換えに由来する重鎖)により提供される。
レパートリーのVL遺伝子セグメントは、一実施態様においては、組換えVLであってよく、すなわち、ヒトVLと、JLとの組換えに由来する可変領域配列の一部として提供してもよい(例えば、VLおよびJLがヒトである場合)。
一実施態様においては、それぞれのトランスジェニック軽鎖遺伝子座のJセグメントは、ヒトJL遺伝子セグメントであり;場合により、それぞれの軽鎖遺伝子座は、ヒトJκまたはJλ遺伝子セグメントの実質的に完全な機能的レパートリーを含む(例えば、それぞれのトランスジェニック遺伝子座は、ヒトVλ遺伝子セグメントおよびJλ遺伝子セグメント、場合により、ヒトJλ遺伝子セグメントの実質的に完全な機能的レパートリーを含む;または、それぞれのトランスジェニック遺伝子座は、ヒトVκ遺伝子セグメントおよびJκ遺伝子セグメント、場合により、ヒトJκ遺伝子セグメントの実質的に完全な機能的レパートリーを含む)。
一実施態様においては、前記集団により提供されるカッパ鎖レパートリーは、機能的ヒトVκ遺伝子セグメントの実質的に完全なレパートリーを含み;場合により、少なくとも5個の異なるヒトJκ遺伝子セグメントおよび少なくとも40個の異なるヒトVκ遺伝子セグメントを提供する。
一実施態様においては、前記集団により提供されるカッパ鎖レパートリーは、少なくとも20、25、30、35または40個の異なるヒトVκ遺伝子セグメントを含む。
一実施態様においては、前記集団により提供されるラムダ鎖レパートリーは、機能的ヒトVλ遺伝子セグメントの実質的に完全なレパートリーを含み、場合により、少なくとも5個の異なるヒトJλ遺伝子セグメントおよび少なくとも40個の異なるヒトVλ遺伝子セグメントを提供する。
一実施態様においては、前記集団により提供されるラムダ鎖レパートリーは、少なくとも20、25、30、35または40個の異なるヒトVλ遺伝子セグメントを含む。
一実施態様においては、前記脊椎動物または細胞のそれぞれの軽鎖遺伝子座は、少なくとも2、3、4、5または6個の異なるヒトJκまたはJλ遺伝子セグメントを含む。
一実施態様においては、前記脊椎動物または細胞の軽鎖遺伝子座は、同一のヒトJL遺伝子セグメントレパートリーを含むが、そのVL遺伝子レパートリーにおいて異なる。
一実施態様においては、内因性抗体カッパおよび/またはラムダ軽鎖の発現は、脊椎動物中または細胞中で不活化されている。
一実施態様においては、前記脊椎動物または細胞のトランスジェニック軽鎖遺伝子座は、カッパ軽鎖遺伝子座である(内因性カッパ遺伝子座にある、すなわち、野生型非ヒト脊椎動物ゲノム中のカッパ遺伝子座の位置に対応する)。例えば、トランスジェニックカッパ遺伝子座は、定常領域(例えば、CH、CλまたはCκ遺伝子セグメント;場合により、内因性またはヒト遺伝子セグメントである)の上流に、ヒトVκ遺伝子セグメントおよびJκ遺伝子セグメントを含んでもよい。例えば、トランスジェニックカッパ遺伝子座は、定常領域(例えば、CH、CλまたはCκ遺伝子セグメント;場合により、内因性またはヒト遺伝子セグメントである)の上流に、ヒトVλ遺伝子セグメントおよびJλ遺伝子セグメントを含んでもよい。
一実施態様においては、前記脊椎動物または細胞のトランスジェニック軽鎖遺伝子座は、ラムダ軽鎖遺伝子座である(内因性ラムダ遺伝子座にある、すなわち、野生型非ヒト脊椎動物ゲノム中のラムダ遺伝子座の位置に対応する)。例えば、トランスジェニックラムダ遺伝子座は、定常領域(例えば、CH、CλまたはCκ遺伝子セグメント;場合により、内因性またはヒト遺伝子セグメントである)の上流に、ヒトVκ遺伝子セグメントおよびJκ遺伝子セグメントを含んでもよい。例えば、トランスジェニックラムダ遺伝子座は、定常領域(例えば、CH、CλまたはCκ遺伝子セグメント;場合により、内因性またはヒト遺伝子セグメントである)の上流に、ヒトVλ遺伝子セグメントおよびJλ遺伝子セグメントを含んでもよい。
本発明の方法における抗体および重鎖の選択に関して、望ましい抗体/鎖特性の例は、所定の抗原またはエピトープへの結合の親和性(例えば、表面プラズモン共鳴により決定される)、所定の抗原またはエピトープへの結合に関する既知の抗体との競合、抗体のエピトープ特異性(例えば、X線結晶学により決定される)、既知の抗体が抗原に特異的に結合する場合の抗原結合に関する既知の抗体との競合(例えば、表面プラズモン共鳴、例えば、Biacore(商標)により決定される)、ELISAまたは別の免疫アッセイにおける性能、望ましい生物物理学的特性(例えば、melting temperature、pI、溶液状態、凝集度、保存プロフィールなど)である。一実施態様において、親和性は、表面プラズモン共鳴によって決定される。
本発明における使用のための免疫化の方法は、当業者には周知であり、古典的なプライム-ブーストレジメ(prime-boost regime)、RIMMSまたは任意の他のプロトコルを含んでもよい。当技術分野で公知のように、アジュバントを抗原と共に投与してもよい。
本発明は、前記抗原に結合する上記の通り選択された抗体もしくは重鎖、またはその誘導体を、医薬的に許容される希釈剤、担体または賦形剤と共に含む医薬組成物を提供する。
誘導体抗体/鎖の例(本明細書の任意の態様による)は、(例えば、抗原結合親和性を改善するため、および/または、Fc機能を増強もしくは不活化するため)単離された抗体または鎖と比較して、1つまたは複数の変異を有する抗体/鎖である。そのような変異体は、抗原に特異的に結合する。誘導体を生成するための変異または適合は、例えば、Fc増強または不活化をもたらすための変異を含む。誘導体は、毒性ペイロードまたは受容体または標識または他の活性部分へのコンジュゲーション後の抗体であってもよい。
任意の構成の一実施態様においては、前記脊椎動物(または前記集団の脊椎動物)は、ナイーブである(すなわち、この用語が当技術分野で理解されている通り、所定の抗原で免疫化されていない;例えば、そのような脊椎動物は、R&Dのために用いられる動物舎により提供されるように比較的無菌環境中で保持されている)。別の例においては、脊椎動物は、所定の抗原、例えば、ヒトエピトープを担持する抗原で免疫化されている。別の例においては、集団は、免疫化されたナイーブ脊椎動物を含む。
前記集団または方法の一実施態様においては、脊椎動物は同じ抗原(例えば、ヒト抗原)で免疫化されている。
前記集団または方法の一実施態様においては、脊椎動物はナイーブである。
前記集団または方法の一実施態様においては、脊椎動物は、軽鎖遺伝子座の共通コレクションを有する。例えば、カッパ鎖遺伝子座対立遺伝子は、脊椎動物において同一であり、および/または、ラムダ鎖遺伝子座対立遺伝子は、脊椎動物において同一である。これにより、前記集団を生成するための脊椎動物バリアントの構築が簡単になり、また育種が簡単になる。
一実施態様においては、前記方法は、所望の特徴(例えば、抗原の結合に対する親和性)に従って、前記集団またはレパートリーから、1つまたは複数の抗体重鎖(例えば、抗体の一部として)を選択する工程を含む。
一例においては、前記細胞は、B細胞、ハイブリドーマ、ES細胞またはiPS細胞である。ES細胞およびiPS細胞を用いて、対応する非ヒト脊椎動物(本発明の脊椎動物)を開発することができる。
一実施態様においては、脊椎動物種は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ニワトリ、魚類、鳥類、爬虫類、ラクダ科動物、ウシ、チンパンジー、非ヒト霊長類および霊長類から選択される。
一実施態様においては、脊椎動物はまたマウスまたはラットである。
本発明の態様を以下に示す:
1.非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスもしくはラット)または非-ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞もしくはラット細胞)であって、そのゲノムが、抗体重鎖の発現に関する遺伝子座を含み、
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含む非再構成ヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c)ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含み、
前記非再構成可変領域が、内因性IgH遺伝子座において、内因性ミュー定常領域の上流へのヒト可変領域遺伝子セグメントの標的化挿入として提供され、その結果、前記可変領域遺伝子セグメントが、内因性ミュー定常領域との関連で発現および選択に関して組換わることができる、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含む非再構成ヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c)ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含み、
前記非再構成可変領域が、内因性IgH遺伝子座において、内因性ミュー定常領域の上流へのヒト可変領域遺伝子セグメントの標的化挿入として提供され、その結果、前記可変領域遺伝子セグメントが、内因性ミュー定常領域との関連で発現および選択に関して組換わることができる、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。
2.非再構成ヒト可変領域、第一のスイッチ、内因性ミュー定常領域、第二のスイッチおよび前記非-ミューアイソタイプのヒト定常領域を(5'から3'の方向に)含む抗体重鎖遺伝子座を含み、前記重鎖遺伝子座が、IgMから非-ミューアイソタイプへのスイッチングを経ることができ、場合によっては、前記第一のスイッチがげっ歯類(例えば、マウスもしくはラット)のSmuまたはIgH遺伝子座の内因性Smuである、態様1に記載の脊椎動物または細胞。
3.ゲノムが、内因性RAG-1およびRAG-2遺伝子を含む、態様1または2に記載の脊椎動物または細胞。
4.ヒト可変領域が、複数の非再構成ヒトVH遺伝子セグメント、場合によっては、少なくとも5個の異なるヒトVH遺伝子セグメントまたは実質的に完全なヒトの機能的なVH遺伝子レパートリーを含む、態様1から3のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
例えば、前記可変領域は、V6-1、V1-2、V1-3、V4-4、V7-41、V2-5、V3-7、V1-8、V3-9、V3-11、V3-15、V1-18、V3-20、V3-21、V3-23、V1-24、V2-26、V4-28、V3-30、V4-31、V3-33、V4-34、V4-39、V3-43、V1-45、V1-46、V3-48、V3-49、V5-51、V3-53、V1-58、V4-59、V4-61、V3-64、V3-66、V1-69、V2-70、V3-72、V3-73およびV3-74からなる群から選択されるヒトVH遺伝子セグメントを含み、前記VH遺伝子レパートリーは、実質的に完全なヒトの機能的なVH遺伝子レパートリーを含む。
例えば、前記可変領域は、V6-1、V1-2、V1-3、V4-4、V7-41、V2-5、V3-7、V1-8、V3-9、V3-11、V3-15、V1-18、V3-20、V3-21、V3-23、V1-24、V2-26、V4-28、V3-30、V4-31、V3-33、V4-34、V4-39、V3-43、V1-45、V1-46、V3-48、V3-49、V5-51、V3-53、V1-58、V4-59、V4-61、V3-64、V3-66、V1-69、V2-70、V3-72、V3-73およびV3-74からなる群から選択されるヒトVH遺伝子セグメントを含み、前記VH遺伝子レパートリーは、実質的に完全なヒトの機能的なVH遺伝子レパートリーを含む。
5.ヒト可変領域が、複数の非再構成ヒトD遺伝子セグメント、場合によっては、少なくとも5もしくは20個の異なるヒトD遺伝子セグメントまたはヒトD遺伝子セグメントの実質的に完全な機能的レパートリーを含む、態様1から4のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
例えば、前記ヒト可変領域は、D1-1、D2-2、D3-3、D4-4、D5-5、D6-6、D1-7、D2-8、D3-9、D3-10、D4-11、D5-12、D6-13、D1-14、D2-15、D3-16、D4-17、D5-18、D6-19、D1-20、D2-21、D3-22、D4-23、D5-24、D1-26、D6-25およびD7-27からなる群から選択される少なくとも10個のヒトD遺伝子セグメントを含み、場合によっては、前記群の全ての遺伝子セグメントを含む。
例えば、前記ヒト可変領域は、D1-1、D2-2、D3-3、D4-4、D5-5、D6-6、D1-7、D2-8、D3-9、D3-10、D4-11、D5-12、D6-13、D1-14、D2-15、D3-16、D4-17、D5-18、D6-19、D1-20、D2-21、D3-22、D4-23、D5-24、D1-26、D6-25およびD7-27からなる群から選択される少なくとも10個のヒトD遺伝子セグメントを含み、場合によっては、前記群の全ての遺伝子セグメントを含む。
6.ヒト可変領域が、複数の非再構成ヒトJH遺伝子セグメント、少なくとも2個の異なるヒトJH遺伝子セグメントまたはヒトD遺伝子セグメントの実質的に完全な機能的レパートリーを含む、態様1から5のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
7.前記非-ミューアイソタイプの内因性抗体重鎖を発現しない、態様1または2に記載の脊椎動物または細胞。
8.非-ミュー定常領域が、ヒトガンマ定常領域である、態様1から7のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
9.ガンマ定常領域が、抗体Fc領域をコードするためのCH2およびCH3遺伝子セグメントを含む、態様8に記載の脊椎動物または細胞。
10.CH2およびCH3遺伝子セグメントが、不活性化Fc領域をコードする、態様9に記載の脊椎動物または細胞。
11.CH2およびCH3遺伝子セグメントが、活性化Fc領域をコードする、態様9に記載の脊椎動物または細胞。
12.ゲノムが、ヒトCmu遺伝子を含まない、態様1から11のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
13.ゲノム中の非-ミュー重鎖定常領域、または前記領域の全てが、CH1を含む、態様1から12のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
14.ゲノムが、ヒト可変領域を含む軽鎖の発現のために、定常領域の上流に、ヒトVLおよびJL遺伝子セグメントを含む軽鎖遺伝子座を含み、場合により、前記定常領域が、ヒト軽鎖定常領域である、態様1から13のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
15.実質的に、内因性軽鎖を発現しない、態様14に記載の脊椎動物または細胞。
16.ガンマ定常領域が、CH1遺伝子セグメントを含まない、態様8から11のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
17.非-ミュー重鎖が発現する場合は、軽鎖発現が不活性化されている、態様16に記載の脊椎動物または細胞。
18.遺伝子座が、内因性非-ミュー定常領域遺伝子セグメント(例えば、CH2およびCH3遺伝子セグメント)の、同じ非-ミューアイソタイプの対応するヒト定常領域遺伝子セグメント(例えば、CH2およびCH3遺伝子セグメント)との置換を含み、場合によっては、前記非-ミューアイソタイプの内因性スイッチを保持する、態様1から17のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
19.遺伝子座が、ヒトガンマCH2遺伝子セグメントからヒトガンマCH3遺伝子セグメントまでの配列を含む、ヒトガンマ定常領域ヌクレオチド配列の挿入を含み、前記挿入が、脊椎動物または細胞のゲノムにおいて内因性ガンマ定常領域の対応する配列を置換する、態様1から18のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
20.内因性遺伝子間セグメント配列(endogenous inter-gene segment sequences)が保持され、重鎖遺伝子座が、内因性定常領域遺伝子間セグメント配列の側面に位置する前記ヒト非-ミュー定常領域遺伝子セグメントを含むこととなる、態様1から19のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
21.遺伝子座が、内因性ガンマ定常領域遺伝子セグメント(例えば、ガンマCH2およびCH3遺伝子セグメント)の、ヒトガンマ定常領域遺伝子セグメント(例えば、ガンマCH2およびCH3遺伝子セグメント)との置換を含むが、ガンマ定常領域間の内因性配列は維持されている、態様1から20のいずれか1に記載の脊椎動物または細胞。
22.(i)遺伝子座が1つまたは複数の第一のヒト非-ミューC遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3またはFc)または第一のヒト定常領域を含む抗体重鎖遺伝子座である、第一の脊椎動物;
(ii)遺伝子座が1つまたは複数の第二のヒト非-ミューC遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3またはFcをコードする)または第二の定常領域を含む抗体重鎖遺伝子座である、第二の脊椎動物
を含み、
前記第一および第二の遺伝子セグメントまたは領域が、同じタイプのC遺伝子セグメント(例えば、両方がCH1遺伝子セグメントもしくは両方がFcをコードする)または領域であり、前記第二の遺伝子セグメントが前記第一の遺伝子セグメントのバリアントである、態様1から21のいずれか1に記載の脊椎動物の集団。
(ii)遺伝子座が1つまたは複数の第二のヒト非-ミューC遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3またはFcをコードする)または第二の定常領域を含む抗体重鎖遺伝子座である、第二の脊椎動物
を含み、
前記第一および第二の遺伝子セグメントまたは領域が、同じタイプのC遺伝子セグメント(例えば、両方がCH1遺伝子セグメントもしくは両方がFcをコードする)または領域であり、前記第二の遺伝子セグメントが前記第一の遺伝子セグメントのバリアントである、態様1から21のいずれか1に記載の脊椎動物の集団。
23.第一および第二の定常領域が、同じサブタイプのガンマ定常領域(例えば、両方がガンマ-2またはガンマ-3)である、態様22に記載の集団。
24.第二の遺伝子セグメントが、第一遺伝子セグメントの合成変異体である、態様22または23に記載の集団。
25.第一および第二の遺伝子セグメントの一方または両方が、不活性ヒトガンマFcをコードする、態様22に記載の集団。
26.第一および第二の遺伝子セグメントの一方または両方が、活性ヒトガンマFcをコードする、態様22に記載の集団。
27.抗体またはヒト重鎖を単離する方法であって、態様1から26のいずれか1に記載の脊椎動物または脊椎動物の集団を抗原で免疫化する工程、および前記脊椎動物または脊椎動物の集団から非-ミュー抗体または重鎖を単離する工程を含み、前記単離した抗体または重鎖が、前記抗原に特異的に結合し、前記非-ミューアイソタイプの完全なヒト重鎖を含む(または、完全なヒト重鎖である)、方法。
28.態様27において定義した単離した抗体もしくは重鎖またはそのコピーもしくは誘導体を含む、医薬組成物。
29.ヒト化され、親和性成熟された抗原特異的抗体重鎖を得る方法であって、機能的なRAGおよび活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)を含む非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスまたはラット)を抗原で免疫化して、VH、DおよびJH遺伝子セグメントのin vivo組換え、体細胞超変異、および、前記脊椎動物のB細胞内での内因性ミューアイソタイプからヒト非-ミューアイソタイプへのアイソタイプスイッチングを得ることによって、重鎖をin vivoで前記脊椎動物においてヒト化する工程を含み、
親和性成熟された抗原-特異的非-ミュー抗体重鎖のレパートリーが前記脊椎動物によって産生および発現され、前記重鎖の非-ミュー定常ドメインがヒト定常ドメインであり、更に、前記ヒト化重鎖の1つまたは複数を単離する工程を含む、方法。
親和性成熟された抗原-特異的非-ミュー抗体重鎖のレパートリーが前記脊椎動物によって産生および発現され、前記重鎖の非-ミュー定常ドメインがヒト定常ドメインであり、更に、前記ヒト化重鎖の1つまたは複数を単離する工程を含む、方法。
30.各単離された重鎖の可変ドメインが、ヒト可変ドメインである、態様29に記載の方法。
31.脊椎動物が、態様1から21のいずれか1に記載された脊椎動物である、態様29または30に記載の方法。
32.態様29から31のいずれか1に記載の方法において得られた単離した抗体重鎖またはそのコピーもしくは誘導体を含む医薬組成物であって、場合によっては、前記重鎖、コピーまたは誘導体が、抗原に特異的に結合する抗体によって提供される、医薬組成物。
33.前記免疫化した脊椎動物(または前記集団の免疫化した脊椎動物)から、前記単離した抗体または重鎖を発現するB細胞を単離する工程を含み、場合によっては、前記B細胞を不死化する工程を含む、態様27、29から31のいずれか1に記載の方法。
34.前記免疫化した脊椎動物またはB細胞から、前記単離した抗体またはその重鎖をコードするヌクレオチド配列を単離する工程を含む、態様27、29から32のいずれか1に記載の方法。
35.態様34に記載のヌクレオチド配列またはそのコピーを含むベクター(場合によっては、宿主細胞におけるベクター)。
36.ヒトに、態様21、23から25、27、28のいずれか1に記載の方法において得られた抗原特異的抗体または重鎖を投与する工程を含む、前記抗原に関連した、または前記抗原によって誘導されるヒトにおける医学状態または疾患を治療または予防する方法。
37.前記抗原に関連した、または前記抗原によって誘導されるヒトにおける医学状態または疾患の治療または予防における使用のための、態様27、29から31のいずれか1に記載の方法において得られた抗原特異的抗体または重鎖。
38.前記抗原に関連した、または前記抗原によって誘導されるヒトにおける医学状態または疾患の治療または予防用の医薬の製造における、態様27、29から31のいずれか1に記載の方法において得られた抗原特異的抗体または重鎖の使用。
本明細書に記載の具体的な実施態様は、本発明の限定としてではなく例示の方法によって示され、(文脈において特段述べられていない限り)実施態様は、本明細書に記載の本発明の任意の構成に適用することができることは理解される。本発明の原理的特性は、本発明の範囲から逸脱することなく種々の実施態様において使用され得る。当業者は、本明細書に記載の具体的な手順への多数の等価物を単なる日常的研究を用いて認識または確認できる。そのような等価物は、本発明の範囲内であると見なされ、特許請求の範囲によって網羅される。本明細書において述べられる全ての刊行物および特許出願は、本発明が属する技術分野の当業者の技能レベルの指標である。全ての刊行物および特許出願は、それぞれ個々の刊行物または特許出願が具体的および個別に参照により組み込まれることが示されたのと同程度に本明細書に参照により組み込まれる。用語「1つ(a)」または「1つ(an)」の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む(comprising)」と併せて用いられる場合、「1つ(one)」を意味する場合があるが、「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」および「1つ以上」の意味とも合致する。特許請求の範囲における用語「または」の使用は、開示は単なる選択肢および「および/または」を意味する定義を支持するが、選択肢だけまたは選択肢が相互排他的であることが意味されると明確に示されない限り「および/または」を意味する。本出願全体を通じて用語「約」は、機器、値を求めるために使用される方法、または研究対象間に存在する変動に関する固有の誤差の変動を含む値を示して用いられる。
本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、用語「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含むの任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有するの任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの含むの任意の形態)または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含有するの任意の形態)は、包括的または非制限的であり、追加的な、未列挙のエレメントまたは方法ステップを排除しない。
本明細書において用いられる用語「またはその組み合わせ」は、用語に先行して列挙される項目の全ての順列および組み合わせを意味する。例えば「A、B、Cまたはその組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BCまたはABCの少なくとも1つを、具体的な内容において順序が重要である場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABも含むことが意図される。引き続きこの例について明確に含まれるのは、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど1つまたは複数の項目または用語の反復を含有する組み合わせである。当業者は、内容から他に明らかでない限り、典型的には任意の組み合わせの項目または用語の数について制限がないことを理解する。
本開示の任意の部分は、内容から他に明らかでない限り、本開示の任意の他の部分と組み合わせて理解され得る。
本明細書で開示および特許請求する全ての組成物、集団、脊椎動物、抗体、レパートリーおよび/または方法は、本開示を考慮して過度の実験を行うことなく作製および達成され得る。本発明の組成物および方法は好ましい実施形態の観点から記載されているが、変更が、本明細書に記載の組成物および/または方法ならびに工程または方法の工程の順序に、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく適用され得ることは当業者に明らかである。当業者に明らかな全てのそのような類似する置換および変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると見なされる。
本発明は、次の非限定的例示においてより詳細に記載される。
[実施例1:ヒトC遺伝子セグメントをマウス遺伝子へと付加するための組換えBACベクター]
内因性抗体遺伝子セグメントを、BACに包含される、対応するヒト遺伝子セグメントと置換する方法は、例えば、WO02066630、WO2011163311およびWO2011163314(Regeneron)に記載されているように、当該業界において一般的に知られている。これらの方法は、標準的な相同組換えを利用している。代替的には、リコンビナーゼ媒介性カセット交換(RMCE;WO2011004192およびWO2011158009(Kymab Limited)を参照)を、内因性非-ミューをヒト定常領域遺伝子セグメントと置換するために、cre-lox-媒介性の、トランスポゾン-媒介性の(例えば、piggyBacを使用)または相同組換え媒介性の内因性非-ミュー定常領域配列の欠失を用いて使用することができる。
内因性抗体遺伝子セグメントを、BACに包含される、対応するヒト遺伝子セグメントと置換する方法は、例えば、WO02066630、WO2011163311およびWO2011163314(Regeneron)に記載されているように、当該業界において一般的に知られている。これらの方法は、標準的な相同組換えを利用している。代替的には、リコンビナーゼ媒介性カセット交換(RMCE;WO2011004192およびWO2011158009(Kymab Limited)を参照)を、内因性非-ミューをヒト定常領域遺伝子セグメントと置換するために、cre-lox-媒介性の、トランスポゾン-媒介性の(例えば、piggyBacを使用)または相同組換え媒介性の内因性非-ミュー定常領域配列の欠失を用いて使用することができる。
例えば、実施例1に記載された方法を用いて産生された、ヒトC遺伝子セグメントを有する改変BACを、非-ヒト哺乳類(例えば、マウスまたはラット)のゲノムを変更するのに使用することができる。これらの変更によって、インタクトなIg重鎖遺伝子座を生じさせることができる(前記遺伝子座においては、正常な免疫グロブリン遺伝子セグメントの組換えによって、ヒトVH、DおよびJH遺伝子セグメントを含むVDJ組み合わせがもたらされる)。ヒトV、DおよびJ遺伝子セグメントを非-ヒト脊椎動物ゲノムへとどのように挿入するかという例は、前記で引用したRegeneronおよびKymabのPCT出願に記載されている。これらの方法は、また、ヒトC領域配列を挿入するのにも有用である。
ヒトC遺伝子セグメントおよび領域をBAC(例えば、標準的な相同組換えまたはRMCEを使用した、非-ヒト脊椎動物ゲノムDNAを非-ヒト脊椎動物胚性幹細胞(ES細胞)へと挿入する際に使用するためのBAC)へと導入するために、標準的な組換え方法を使用することができる。一実施態様においては、最初の段階として、ヒトゲノム配列の(1つまたは複数のヒト定常ドメインをコードする)ヒト定常領域ヌクレオチド配列を含むゲノムフラグメントを、細菌人工染色体(BAC)ベクターへと、標準的な手法によって挿入する。好ましくは、大きさが20-kbから200-kb以上の範囲としうる、このようなBACは、市販のBACのライブラリー(例えば、Caltec A、B、CもしくはDヒトBACライブラリーまたはRPCl-11ヒトBACライブラリー、Invitrogen)から、配列サーチを含む標準的な手法によって、または、対象とするBACを有する細菌コロニーを同定するためにBACを含む細菌コロニーにハイブリダイゼーションさせることによって単離することができる。
この度の実施例においては、CH1遺伝子セグメントから、ヒトゲノム配列のM2の5'側直後のポリAまでを含むヒトガンマ-1定常領域ヌクレオチドを含むBACを選択する。一般的な手法を用いて、内因性ガンマ-1定常領域遺伝子セグメントを、対応するヒトガンマ-1定常領域遺伝子セグメントと置換することができる。この実施例においては、2つの工程が必要である。第一の工程は、内因性C遺伝子セグメントのCドメインをコードするエクソンを、positive-negative選択オペロン(この実施例においては、アンピシリン抵抗遺伝子(Amp)およびストレプトマイシン感受性リボソームタンパク質(rpsL)をコードするオペロン)と置換する。特定の種の細菌を、ストレプトマイシンへの耐性によって、rpsL遺伝子の不存在を指標に選択することができる。短い長さの、内因性C遺伝子エクソンの側面に位置する配列に対するDNA相同体が、rpsL-Ampオペロンの5'および3'に位置する。標準的な組換え手法(例えば、相同組換え)ごとの適切な組換え因子の存在により、オペロンフラグメントとBACとの間の組換えによって、内因性C遺伝子エクソンが、アンピシリンに対する抵抗性によって選択されるオペロンと置換される。第二の工程は、挿入されたオペロンを対応するヒトC遺伝子セグメントと置換するために、同じ相同配列を使用する。組込みが成功したヒト遺伝子セグメントは、オペロン、具体的にはrpsL部位の欠失を原因とするストレプトマイシンに対して抵抗性となった細菌において選択される。
この実施例においては、望む内因性非-ミュー定常領域が、内因性定常領域遺伝子セグメントのヒトの対応する部分との置換によってヒト化されるまで、記載した2つの工程の方法を、各内因性C遺伝子セグメントについて繰り返すことができる。この方法を使用して、同じように、完全な内因性非-ミュー定常領域(遺伝子セグメントおよび遺伝子間セグメント配列(inter-gene segment sequences)を含む)を対応するヒト非-ミュー定常領域配列と置換することができる;または、非-ミュー定常領域の内因性C遺伝子セグメントだけを置換することができる(内因性遺伝子間セグメント配列(inter-gene segment sequences)をヒトC遺伝子セグメント間の所定の場所に残す)。
標準的なように、遺伝子操作した幹細胞を、胚盤胞へと導入し、ヒトC遺伝子セグメントを本発明による重鎖遺伝子座に有する生きて生まれる子孫動物を生じさせるために、育ててくれる母体へと移植することができる。標準的な繁殖によって、本発明の重鎖遺伝子座についてホモ接合性であり、内因性重鎖(すなわち、内因性可変領域を含む鎖)の発現が一般的な手法を使用して不活性化されている子孫を得ることができる。
[実施例2:改変BACのSRMCEを利用した、ヒトC遺伝子セグメントの、非-ヒト脊椎動物ゲノムへの付加]
前記したように、ヒトC遺伝子セグメントを有する改変BACをゲノムへと組込むための1つの手法は、連続的なリコンビナーゼ媒介性カセット交換(sequential recombinase mediated cassette exchange (sRMCE))である。この手法は、WO2011004192(Kymab Limited)に記載されており、当該特許文献は、本明細書に参照によって全体が挿入される。
前記したように、ヒトC遺伝子セグメントを有する改変BACをゲノムへと組込むための1つの手法は、連続的なリコンビナーゼ媒介性カセット交換(sequential recombinase mediated cassette exchange (sRMCE))である。この手法は、WO2011004192(Kymab Limited)に記載されており、当該特許文献は、本明細書に参照によって全体が挿入される。
sRMCEは、特定の位置で挿入された「landing pad」で改変された遺伝子座を提供する。この挿入は、相同組換えを介したde novoであるか、または、以前のBAC挿入の結果としてであるかのいずれかである。本実施例においては、landing padは、(マウスES細胞内の)マウスIgG遺伝子座において、マウスC-ミュー領域の3'に挿入する。本実施例においては、挿入は、マウスC-ミュー領域とマウスC-γ領域との間(例えば、マウスC-ミューとC-デルタの間、または、マウスC-デルタとC-ガンマ-1との間)である。連続的なBACを用いた標準的なsRMCEを利用して、ヒトガンマ-1定常領域を、ES細胞のゲノム中に構築する(そして、場合によっては、マウスガンマ-1定常領域、または全てのマウス非-ミュー定常領域を、欠失させ、または、同じように対応するヒト定常領域配列と置換させる)。他の例においては、連続的なBACをsRMCEと共に用いて、ヒトデルタまたはガンマ-3定常領域からヒトガンマA2定常領域までの(A2領域を含む)完全なヒト配列を挿入する。デルタまたはガンマ-1からアルファまでの(アルファを含む)マウス定常領域を欠失させる(または、マウスガンマ定常領域のみを欠失させる)。sRMCE手法を介したBAC挿入は、また、ヒトVH、DHおよびJ遺伝子セグメントを、大部分のマウスJH遺伝子セグメントの3'の下流直後に付加するために使用することができる。内因性マウスVDJは不活性化させる、または欠失させる。
代替的な実施態様は、相同組換えを介して内因性マウスCガンマ-1を「landing pad」で置換することである。標準的なsRMCEを利用して、マウスcガンマ-1膜貫通および細胞質エクソンに融合した、ヒトCガンマ-1エクソン1から4を含むコンストラクトを、内因性Cガンマ-1セグメントと置換する。PCRを用いた構築を助ける、ヒトおよびマウスCガンマ-1の両方におけるエクソン4の3'末端の保存されたSPGKアミノ酸モチーフを利用し、PCRによって、ヒトおよびマウスBACからコンストラクトを組み立てる。キメラCガンマ-1コンストラクトを使用する合理的な理由は、分泌型のIgG1は完全にヒト抗体であるものの、膜結合型のIgG1は正常なマウスのシグナル伝達を維持するからである。
更なる実施態様は、前記した同じlanding padおよび類似のヒト-マウスCガンマ-1コンストラクトを使用するものであるが、この実施例においては、コンストラクトは、ヒトCガンマ-1エクソン1が欠失しており、それ故、重鎖と軽鎖のペアが切除され、重鎖のみのIgG1が発現する。
正確な挿入を有するES細胞クローンを、WO2011004192に記載されているように、ピューロマイシンに対する抵抗性によって、挿入を有さない、または非-産生性挿入物を有するクローンのプールから選択する。ピューロマイシンに対する耐性性は、puroTKコーディング領域と活性なプロモーターエレメントであるPGKの並置に由来する。正確な挿入は、結合部のPCR、内部エレメントのPCR、サザンブロッティング、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、配列決定などを含む標準的な手法によって証明される。本実施例においては、WO2011004192に記載されているように、正確なlox2272-lox2272およびloxP-loxP組換えも、挿入前には存在しないpiggyBacエレメントの2つのインタクトなセットをもたらす。インタクトなpiggyBacエレメントは、「PB5」および「PB3」による図に記載されている逆向き反復配列のセットから構成される。割り当てられた、方向付けされたpiggyBacエレメントのセットは、エレメント間の組換えを触媒し、逆向き配列および両方のエレメントの欠失をもたらすことができるpiggyBacトランスポーゼースの基質である。piggyBac転位後に残存するDNAは、インタクトなままであり、piggyBacエレメントの如何なる存存物も欠いている。この度の実施例においては、piggyBac転位が成功したES細胞クローンは、細胞を薬剤FIAUに対して抵抗性とする活性なpuroTKエレメントの欠失によって選択される。
代替的な方法においては、RMCEに代わって、BACを使用した標準的な相同組換えを使用することができる(例えば、前記したRegeneronおよびAblexisのPCT出願に記載された手法を参照せよ)。この場合は、それぞれがhomology armの側面に位置する一続きのゲノムヒト定常領域DNAを含むベクターを構築する。homology armは、挿入部位の側面に位置する(例えば、ヒトDNAの挿入によって置換されるマウス定常領域配列の側面に位置する)レシピエントES細胞ゲノムにおけるDNA配列を有する。連続した相同組換え工程を用いて(場合によっては、WO2009076464に記載されているような重複したhomology armを有するBACを用いて)、ヒト定常領域は、マウス定常領域DNAを置換する方法において、構築することができる。代替的には、(例えば、部位特異的組換え、例えば、piggyBacの使用などのcre-loxまたはトランスポゾン媒介欠失を用いて)ヒトDNAの挿入は、マウス定常領域DNAの欠失とは別の工程としうる。
最終的な産物は、ES細胞であって、そのゲノムが、マウスS-ミュースイッチの上流に複数のヒトVH、DおよびJH遺伝子セグメント、マウスミュー定常領域、ガンマスイッチ(場合によっては、マウスS-ガンマは維持され、またはヒトS-ガンマは、他のヒトガンマ定常領域配列とともい挿入することができる)およびヒトガンマ定常領域(例えば、少なくともヒトガンマ-1定常領域)を有するトランスジェニックIgH遺伝子座を含むES細胞である。(例えば、WO2011004192に記載されているように、マウスV、D、Jの挿入によって、またはマウスIgH可変領域遺伝子セグメントの全てもしくは一部(例えばJ遺伝子セグメント)の欠失によって)マウス可変領域の発現は不活性化されている。標準的な手法を用いて、子孫マウスを、トランスジェニックES細胞から発達させる(前記マウスは、好ましくは、トランスジェニック重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である)。当業者に知られているように、ES細胞クローンは、前記細胞のマウス胚盤胞胚への注入、注入された胚の適したレシピエントへの移植および得られるキメラ子孫の繁殖を介して、遺伝子組み換えしたマウス系列を産生するのに使用することができる。改変された遺伝子座は、繁殖を介して伝播することができ、遺伝的交雑に依存してヘテロ接合性またはホモ接合性のいずれかとすることができる。
ヒト可変領域遺伝子セグメントは、VDJ遺伝子セグメントおよびマウスC-ミュー定常ドメインを産生するB細胞成熟と関連した組換えイベントに参加することができるように位置している。ヒト定常領域(例えば、Cガンマ-1)へのアイソタイプスイッチングは、(マウスAIDによって引き起こされる体細胞超変異とともに)ヒト可変領域およびヒト定常ドメインを含む完全なヒト成熟重鎖をコードする転写産物をもたらす。生産可能な転写産物は、子孫マウスによって発現され(すなわち、マウスのin vivo抗体-産生機構が、発現可能な産生転写産物について選択するために使用され)、当業者は、最初に、全てのガンマ-1型鎖がヒトのものである(重鎖遺伝子が、ヒトガンマ-1定常領域を含み、マウスガンマ-1定常領域を除外するようにヒト化されている)と理解する。市販の抗体を、特定のヒトIgGアイソタイプを選択および単離するために使用することができる(例えば、ウサギ抗-ヒトIgG1、カタログ番号:AP20578PU-N、Acris Antibodies GmbH;マウス抗-ヒトIgG2、カタログ番号:AM08152AP-N、Acris Antibodies GmbH;マウス抗-ヒトIgG3、カタログ番号:MCA516Pまたはヒツジ抗-ヒトIgG3、カタログ番号:AP05355HR-N、AbD Serotec;マウス抗-ヒトIgG4、カタログ番号:MCA2098P、AbD Serotec)。例えば、子孫マウスを、ヒト標的抗原またはウイルスもしくは細菌抗原で免疫化し、IgG1抗体を抗原結合に関して選択、単離する。これらは、完全なヒト重鎖を有し、標的抗原に特異的である。子孫マウスが、ヒト化軽鎖遺伝子座(例えば、マウス定常および可変領域が欠失または不活性化され、挿入されたヒト軽鎖可変領域VLおよびJL遺伝子セグメントが存在し、場合によってはヒト定常領域も存在している、カッパおよび/またはラムダ軽鎖遺伝子座)を含むように、(標準的な手法、例えば、前記したKymab LimitedまたはRegeneronのPCT出願に記載されているような手法を用いて)遺伝子操作されている場合、単離されたIgG1抗体は、完全なヒト可変領域を有し、軽鎖遺伝子座がヒト定常領域遺伝子のみを有する場合は、IgG1抗体は、完全なヒトのものとなっており、in
vivoシステムによって発現し、選択することができる。加えて、これらの抗体は、マウスを免疫化し、IgG1を標的抗原に対して選択した場合は、前記標的に特異的に結合する。当該方法は、抗体をヒト化するために改変した抗体を用いたin vitroでの操作および選択に頼る従来の複数工程の方法を用いた現在可能である手法と比較して、完全なヒト抗体(または完全なヒト重鎖を有する抗体)を得るための、信頼性があり、非常により単純な手法である。
vivoシステムによって発現し、選択することができる。加えて、これらの抗体は、マウスを免疫化し、IgG1を標的抗原に対して選択した場合は、前記標的に特異的に結合する。当該方法は、抗体をヒト化するために改変した抗体を用いたin vitroでの操作および選択に頼る従来の複数工程の方法を用いた現在可能である手法と比較して、完全なヒト抗体(または完全なヒト重鎖を有する抗体)を得るための、信頼性があり、非常により単純な手法である。
変更を加えた態様においては、例えば、軽鎖遺伝子座における、マウスカッパ可変領域(および、場合によってはラムダ可変領域も)もしくはその部分(例えばJL遺伝子セグメント)の欠失、または、カッパ定常領域(および、場合によってはラムダ定常領域も)の欠失によって、軽鎖の発現を子孫マウスにおいて不活性化する。この場合は、(例えば、全てのIgGサブタイプに関して、または少なくともIgG1に関して)ヒトガンマ定常領域であって、ヒトCH1遺伝子セグメント(および、場合によってはヒンジ領域)が除去されているヒトガンマ定常領域を挿入する。マウスミュー定常領域においては、CH1を保持することができる(例えば、WO2011072204を参照。当該文献の開示は、本明細書に参照によって組み込まれる)。これらのマウスは、CH1ドメインを欠き、軽鎖を有さない重鎖のみの抗体(H2抗体)を産生する。これらの重鎖のみの抗体は、完全にヒトのものである(ヒト可変および定常ドメインを有し、例えば、マウスにおける重鎖遺伝子座が、ヒトガンマ-1定常領域の挿入およびマウスガンマ-1定常領域の不活性化または欠失によってヒト化されている場合は、ヒトガンマ-1定常領域を有する)。ヒト標的抗原またはウイルスもしくは細菌抗原を用いた免疫化後に、対象とする抗原に特異的で、完全にヒトのものであり、in vovoシステムによって十分に発現、選択されることができる重鎖のみの抗体を選択することができる。
Claims (38)
- 非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスもしくはラット)または非-ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞もしくはラット細胞)であって、そのゲノムが、抗体重鎖の発現に関する遺伝子座を含み、
前記遺伝子座が、
(a)ヒト可変ドメインのレパートリーの発現のための、ヒト可変領域遺伝子セグメントを含む非再構成ヒト可変領域;
(b)内因性ミュー重鎖定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含むIgM抗体重鎖の発現のための、内因性ミュー定常領域;
(c)ヒト非-ミュー定常ドメインおよびヒト可変ドメインを含む非-ミュー抗体重鎖の発現のための、ミュー定常領域の下流のヒト化非-ミュー定常領域
を含み、
前記非再構成可変領域が、内因性IgH遺伝子座において、内因性ミュー定常領域の上流へのヒト可変領域遺伝子セグメントの標的化挿入として提供され、その結果、前記可変領域遺伝子セグメントが、内因性ミュー定常領域との関連で発現および選択に関して組換わることができる、非-ヒト脊椎動物または非-ヒト脊椎動物細胞。 - 非再構成ヒト可変領域、第一のスイッチ、内因性ミュー定常領域、第二のスイッチおよび前記非-ミューアイソタイプのヒト定常領域を(5'から3'の方向に)含む抗体重鎖遺伝子座を含み、前記重鎖遺伝子座が、IgMから非-ミューアイソタイプへのスイッチングを経ることができ、場合によっては、前記第一のスイッチがげっ歯類(例えば、マウスもしくはラット)のSmuまたはIgH遺伝子座の内因性Smuである、請求項1に記載の脊椎動物または細胞。
- ゲノムが、内因性RAG-1およびRAG-2遺伝子を含む、請求項1または2に記載の脊椎動物または細胞。
- ヒト可変領域が、複数の非再構成ヒトVH遺伝子セグメント、場合によっては、少なくとも5個の異なるヒトVH遺伝子セグメントまたは実質的に完全なヒトの機能的なVH遺伝子レパートリーを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- ヒト可変領域が、複数の非再構成ヒトD遺伝子セグメント、場合によっては、少なくとも5もしくは20個の異なるヒトD遺伝子セグメントまたはヒトD遺伝子セグメントの実質的に完全な機能的レパートリーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- ヒト可変領域が、複数の非再構成ヒトJH遺伝子セグメント、少なくとも2個の異なるヒトJH遺伝子セグメントまたはヒトD遺伝子セグメントの実質的に完全な機能的レパートリーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- 前記非-ミューアイソタイプの内因性抗体重鎖を発現しない、請求項1または2に記載の脊椎動物または細胞。
- 非-ミュー定常領域が、ヒトガンマ定常領域である、請求項1から7のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- ガンマ定常領域が、抗体Fc領域をコードするためのCH2およびCH3遺伝子セグメントを含む、請求項8に記載の脊椎動物または細胞。
- CH2およびCH3遺伝子セグメントが、不活性化Fc領域をコードする、請求項9に記載の脊椎動物または細胞。
- CH2およびCH3遺伝子セグメントが、活性化Fc領域をコードする、請求項9に記載の脊椎動物または細胞。
- ゲノムが、ヒトCmu遺伝子を含まない、請求項1から11のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- ゲノム中の非-ミュー重鎖定常領域、または前記領域の全てが、CH1を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- ゲノムが、ヒト可変領域を含む軽鎖の発現のために、定常領域の上流に、ヒトVLおよびJL遺伝子セグメントを含む軽鎖遺伝子座を含み、場合により、前記定常領域が、ヒト軽鎖定常領域である、請求項1から13のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- 実質的に、内因性軽鎖を発現しない、請求項14に記載の脊椎動物または細胞。
- ガンマ定常領域が、CH1遺伝子セグメントを含まない、請求項8から11のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- 非-ミュー重鎖が発現する場合は、軽鎖発現が不活性化されている、請求項16に記載の脊椎動物または細胞。
- 遺伝子座が、内因性非-ミュー定常領域遺伝子セグメント(例えば、CH2およびCH3遺伝子セグメント)の、同じ非-ミューアイソタイプの対応するヒト定常領域遺伝子セグメント(例えば、CH2およびCH3遺伝子セグメント)との置換を含み、場合によっては、前記非-ミューアイソタイプの内因性スイッチを保持する、請求項1から17のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- 遺伝子座が、ヒトガンマCH2遺伝子セグメントからヒトガンマCH3遺伝子セグメントまでの配列を含む、ヒトガンマ定常領域ヌクレオチド配列の挿入を含み、前記挿入が、脊椎動物または細胞のゲノムにおいて内因性ガンマ定常領域の対応する配列を置換する、請求項1から18のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- 内因性遺伝子間セグメント配列が保持され、重鎖遺伝子座が、内因性定常領域遺伝子間セグメント配列の側面に位置する前記ヒト非-ミュー定常領域遺伝子セグメントを含むこととなる、請求項1から19のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- 遺伝子座が、内因性ガンマ定常領域遺伝子セグメント(例えば、ガンマCH2およびCH3遺伝子セグメント)の、ヒトガンマ定常領域遺伝子セグメント(例えば、ガンマCH2およびCH3遺伝子セグメント)との置換を含むが、ガンマ定常領域間の内因性配列は維持されている、請求項1から20のいずれか一項に記載の脊椎動物または細胞。
- (i)遺伝子座が1つまたは複数の第一のヒト非-ミューC遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3またはFc)または第一のヒト定常領域を含む抗体重鎖遺伝子座である、第一の脊椎動物;
(ii)遺伝子座が1つまたは複数の第二のヒト非-ミューC遺伝子セグメント(例えば、ヒトCH1、CH2もしくはCH3またはFcをコードする)または第二の定常領域を含む抗体重鎖遺伝子座である、第二の脊椎動物
を含み、
前記第一および第二の遺伝子セグメントまたは領域が、同じタイプのC遺伝子セグメント(例えば、両方がCH1遺伝子セグメントもしくは両方がFcをコードする)または領域であり、前記第二の遺伝子セグメントが前記第一の遺伝子セグメントのバリアントである、請求項1から21のいずれか一項に記載の脊椎動物の集団。 - 第一および第二の定常領域が、同じサブタイプのガンマ定常領域(例えば、両方がガンマ-2またはガンマ-3)である、請求項22に記載の集団。
- 第二の遺伝子セグメントが、第一遺伝子セグメントの合成変異体である、請求項22または23に記載の集団。
- 第一および第二の遺伝子セグメントの一方または両方が、不活性ヒトガンマFcをコードする、請求項22に記載の集団。
- 第一および第二の遺伝子セグメントの一方または両方が、活性ヒトガンマFcをコードする、請求項22に記載の集団。
- 抗体またはヒト重鎖を単離する方法であって、請求項1から26のいずれか一項に記載の脊椎動物または脊椎動物の集団を抗原で免疫化する工程、および前記脊椎動物または脊椎動物の集団から非-ミュー抗体または重鎖を単離する工程を含み、前記単離した抗体または重鎖が、前記抗原に特異的に結合し、前記非-ミューアイソタイプの完全なヒト重鎖を含む(または、完全なヒト重鎖である)、方法。
- 請求項27において定義した単離した抗体もしくは重鎖またはそのコピーもしくは誘導体を含む、医薬組成物。
- ヒト化され、親和性成熟された抗原特異的抗体重鎖を得る方法であって、機能的なRAGおよび活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)を含む非-ヒト脊椎動物(例えば、マウスまたはラット)を抗原で免疫化して、VH、DおよびJH遺伝子セグメントのin vivo組換え、体細胞超変異、および、前記脊椎動物のB細胞内での内因性ミューアイソタイプからヒト非-ミューアイソタイプへのアイソタイプスイッチングを得ることによって、重鎖をin vivoで前記脊椎動物においてヒト化する工程を含み、
親和性成熟された抗原-特異的非-ミュー抗体重鎖のレパートリーが前記脊椎動物によって産生および発現され、前記重鎖の非-ミュー定常ドメインがヒト定常ドメインであり、更に、前記ヒト化重鎖の1つまたは複数を単離する工程を含む、方法 - 各単離された重鎖の可変ドメインが、ヒト可変ドメインである、請求項29に記載の方法。
- 脊椎動物が、請求項1から21のいずれか一項に記載された脊椎動物である、請求項29または30に記載の方法。
- 請求項29から31のいずれか一項に記載の方法において得られた単離した抗体重鎖またはそのコピーもしくは誘導体を含む医薬組成物であって、場合によっては、前記重鎖、コピーまたは誘導体が、抗原に特異的に結合する抗体によって提供される、医薬組成物。
- 前記免疫化した脊椎動物(または前記集団の免疫化した脊椎動物)から、前記単離した抗体または重鎖を発現するB細胞を単離する工程を含み、場合によっては、前記B細胞を不死化する工程を含む、請求項27、29から31のいずれか一項に記載の方法。
- 前記免疫化した脊椎動物またはB細胞から、前記単離した抗体またはその重鎖をコードするヌクレオチド配列を単離する工程工程を含む、請求項27、29から32のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項34に記載のヌクレオチド配列またはそのコピーを含むベクター(場合によっては、宿主細胞におけるベクター)。
- ヒトに、請求項21、23から25、27、28のいずれか一項に記載の方法において得られた抗原特異的抗体または重鎖を投与する工程を含む、前記抗原に関連した、または前記抗原によって誘導されるヒトにおける医学状態または疾患を治療または予防する方法。
- 前記抗原に関連した、または前記抗原によって誘導されるヒトにおける医学状態または疾患の治療または予防における使用のための、請求項27、29から31のいずれか一項に記載の方法において得られた抗原特異的抗体または重鎖。
- 前記抗原に関連した、または前記抗原によって誘導されるヒトにおける医学状態または疾患の治療または予防用の医薬の製造における、請求項27、29から31のいずれか一項に記載の方法において得られた抗原特異的抗体または重鎖の使用。
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