JP2015509742A - 眼科用フィルタの構成を決定する方法 - Google Patents

眼科用フィルタの構成を決定する方法 Download PDF

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Abstract

使用者のための光学基板を含む光デバイスの干渉フィルタリング手段の構成を決定する方法であって、使用者の少なくとも1つの主視線、光学基板と使用者の眼との間の距離、使用者の眼の網膜部位のサイズ及び/又は瞳孔サイズを表す第1セットのパラメータを用意するステップと、第1セットのパラメータに基づき第1の選択入射角範囲を決定するステップと、使用者のために、少なくとも部分的に阻止されるべき波長の範囲を特徴付ける第2セットのパラメータを用意するステップと、少なくとも部分的に阻止されるべき入射光の第1の選択波長範囲を第2セットのパラメータに基づき決定するステップと、第1の選択的干渉フィルタリング手段及び光学基板の表面の第1のゾーンを第1の選択入射角範囲及び第1の選択波長範囲に基づき構成するステップであって、第1の選択的干渉フィルタリング手段が、第1の選択入射角範囲内の第1のゾーンに入射する入射光の第1の選択波長範囲の透過を第1の除去率において阻止するように動作可能であるように構成するステップと、を含む、方法。

Description

本発明は、概して、光学基板を含む光デバイスに関し、且つそのような光デバイスの使用に関する。本発明の実施形態は、光デバイスの構成を決定する方法、光デバイスを製造する方法及び光デバイスの使用に関する。
電磁スペクトルは広い波長範囲が含み、中でもヒトの眼に見える波長はしばしば可視スペクトルと呼ばれ、380nm〜780nmの範囲に及ぶ。可視スペクトルの波長を含む、電磁スペクトルの一部の波長が有害な作用をもたらす一方で、他の波長が眼に有益な作用を有することは周知である。可視スペクトルの一部の波長は、非イメージ形成応答(non−image−forming)(NIF)として公知の様々な神経内分泌的、生理的及び行動的応答を誘発することも周知である。
脊椎動物の網膜は眼の内部表面に内張りされた光に敏感な組織である。この組織は脈絡膜から硝子体液までに4つの主要層、つまり、網膜色素上皮(以下、「RPE」と呼ぶ)と、光受容体層(捍体及び錐体を含む)と、双極細胞及びアマクリン細胞を有する内顆粒層と、最後に、いくらかの本質的に感光性の神経節細胞(網膜神経節細胞の1%(以下、「RGC」と呼ぶ))を含む神経節細胞層とを有する。この最後の細胞のタイプは概日リズムの光同調(生物リズム)及び瞳孔機能にとって重要である。
神経信号は捍体及び錐体において開始し、網膜の他のニューロンによる複雑な処理を経る。この処理による出力は網膜神経節細胞の活動電位の形態をとる。網膜神経節細胞の軸索は視神経を形成する。視覚認知のいくつかの重要な特徴は網膜の符号化(retinal encoding)及び光の処理に帰結しうる。
光生物学は光の生物学的効果の研究であり、電磁スペクトルの一部が、視覚認知及び概日リズム機能を含む良好な健康のために有益な作用を提供することが証明されている。しかしながら、眼を紫外(UV)線などの有害な放射から保護する重要性も証明されている。可視光線は、通常の日常の強度のものであっても、網膜の損傷を引き起こすおそれや、加齢黄斑変性(AMD)などの初期及び後期加齢黄斑症(ARM)の発症に寄与するおそれがある。一部の疫学的研究においては、日光への曝露のレベルがAMDの発症に関連している可能性があることが指摘されている。Tomany SC et al.Sunlight and the 10−Year Incidence of Age−Related Maculopathy.The Beaver Dam Eye Study.Arch Ophthalmol.2004;122:750−757。
他の病状は光への曝露に関連する。例えば、概日リズムにおけるメラトニンの生成は光への曝露によって調整されることが知られている。その結果、環境における特定の光変更(light modification)が体の生体時計の同期化に影響する可能性がある。片頭痛は視覚系の光刺激への異常な不耐性である羞明に関連し、てんかんは光の存在によって影響されうる。
低選択性によって有害なUV放射を遮断する眼科用デバイスが広く使用されている。例えば、サングラスは眼をUVA線及びUVB線の有害な作用から保護することによって日光からの保護を提供するように設計されている。UVフィルタを備えた眼球内レンズ(IOL)が1990年代に導入され、これらは主に、結晶レンズに取って代わる白内障手術後のインプラントとなっている。
本発明は上記を勘案し考案されたものである。
本発明の第1の態様により、使用者のための光学基板を含む光デバイスの干渉フィルタリング手段の構成を決定する方法を提供する。方法は、使用者の少なくとも1つの主視線、光学基板と使用者の眼との間の距離、使用者の眼の網膜部位のサイズ及び/又は瞳孔サイズを表す第1セットのパラメータを用意するステップと、第1セットのパラメータに基づき第1の選択入射角範囲を決定するステップと、使用者のために、少なくとも部分的に阻止されるべき波長の範囲を特徴付ける第2セットのパラメータを用意するステップと、少なくとも部分的に阻止されるべき入射光の第1の選択波長範囲を第2セットのパラメータに基づき決定するステップと、第1の選択的干渉フィルタリング手段及び光学基板の表面の第1のゾーンを第1の選択入射角範囲及び第1の選択波長範囲に基づき構成するステップであって、第1の選択的干渉フィルタリング手段が、第1の選択入射角範囲内の第1のゾーンに入射する入射光の第1の選択波長範囲の透過を第1の除去率において阻止するように動作可能であるように構成するステップと、を含む。
この手法において、光デバイスを1人又は複数の使用者及び想定される利用に合わせて作製してもよい。光デバイスには、したがって、選択したスペクトル帯域内の入射光の透過の選択的阻止を提供し、且つ非平行化された入射光が光学基板の画定された幾何学的ゾーンに到達すると得られるスペクトル応答のより良好な制御を確実とするように構成された選択的干渉フィルタリング手段が設けられる。干渉フィルタの角感度は、まず、フィルタの設計のために、固有の入射角のみならず、入射角のコーンと称される、決定入射角範囲を検討することにより考慮に入れられる。
設計された干渉フィルタリング手段によって提供される角感度の選択性及び制御は、色彩認知の歪み、暗所視の混乱を最小にし、且つ眼の非視覚機能への影響を制限する。加えて、青色光の広域ロングパス吸収フィルタによって提供される帯黄効果を回避することができる。
一実施形態においては、第1セットのパラメータ及び/又は第2セットのパラメータは、使用者が眼の劣化に罹患している、又は眼の劣化から保護されるべきであるかどうかなどの使用者の生理学的パラメータを更に含む。
光デバイスは使用者の予防ニーズのレベルに応じて設計してもよく、患者が罹患している特定の1つ若しくは複数の疾患及び/又は1つ若しくは複数の疾患のステージのために構成してもよい。
例えば、眼の劣化は、特に、緑内障、糖尿病性網膜症、レーバー遺伝性視神経症、加齢黄斑変性(AMD)、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病などの変性過程に起因するものであってもよい。
選択的干渉フィルタリング手段は、使用者が罹患している1つ若しくは複数の疾患又は1つ若しくは複数ののステージに応じて適応させてもよい。例えば、保護されるべき網膜の部位は疾患のステージに応じて変化してもよい。したがって、光学基板の表面上の入射角範囲はそれに応じて構成してもよい。進行性AMDの場合、窩を中心とする25°の角度コーンが疾患によって損傷されうることを臨床的データは示している。
本発明の1つの特定実施形態においては、方法は、使用者の少なくとも1つの更なる主視線、光学基板と使用者の眼との間の距離、使用者の眼の窩を中心とした網膜部位のサイズ及び/又は使用者の眼の瞳孔サイズを画定する少なくとも1つの更なる第1セットのパラメータを用意するステップと、この又は各更なる第1セットのパラメータに対し、各々の選択入射角範囲を各々の更なる第1セットのパラメータに基づき決定するステップと、使用者のために、少なくとも部分的に阻止されるべき少なくとも1つの更なる波長範囲を特徴付ける少なくとも1つの更なる第2セットのパラメータを用意するステップと、この又は各更なる第2セットのパラメータに対し、少なくとも部分的に阻止されるべき入射光の各々の選択波長範囲を各々の更なる第2セットのパラメータに基づき決定するステップと、この又は各更なる第1セットのパラメータ及び更なる第2セットのパラメータに対し、各々の更なる選択的干渉フィルタリング手段及び光学基板の表面の各々の更なるゾーンを各々の選択入射角範囲及び各々の選択波長範囲に基づき構成するステップであって、各々の更なる選択的干渉フィルタリング手段が、各々の選択入射角範囲内において各々の更なるゾーンに入射する入射光の各々の選択波長範囲の透過を各々の更なる除去率において阻止するように動作可能であるように構成するステップと、を含む。
この手法において、光学基板の複数のゾーンは、視線及び使用者の要求に応じて構成してもよい。
一実施形態においては、この又は各それぞれの選択入射角範囲は第1の選択入射角範囲と異なる。この又は各それぞれの選択的波長範囲は第1の選択波長範囲と実質的に同じであってもよい。この手法において、幾何学的ゾーンに応じた異なる入射角コーンは、入射角と準独立的に、光学基板の表面上に同じ、制御されたスペクトル応答を提供するように構成されうる。
一実施形態においては、第1の除去率は、10%〜100%、好ましくは、30%〜100%の範囲内である。デバイスは、したがって、使用者及び想定される用途に合わせて構成してもよい。
各更なる除去率は第1の除去率と異なるように構成してもよい。例えば、除去率は光学基板の略中心からのゾーンの距離が増加するにつれて減少してもよい。この手法において、色彩認知の歪みが最小化されてもよい。
一実施形態においては、光デバイスは光学レンズであり、方法は、第1のゾーンを着用者の光学レンズの遠見視力部に対応するように、更なるゾーンを着用者の光学レンズの近見視力部に対応するように構成するステップを含む。
一実施形態においては、方法は、入射光の透過を反射、屈折及び回折の少なくとも1つによって阻止するように、この又は各選択的干渉フィルタリング手段を構成するステップを含む。
一実施形態においては、第1の選択波長範囲は、実質的に435nm、445nm又は460nmの波長を中心とする、20nm60nm、好ましくは、20nm〜25nmの範囲内の帯域幅を有し、第1の除去率は、10〜50%、好ましくは、30〜50%の範囲内である。
これは、細胞モデルにおける本発明者の革新的研究により、AMD、スタルガルド病、網膜色素変性、ベスト病、緑内障、糖尿病性網膜症又はレーバー遺伝性視神経症などの網膜疾患に有害であることが示された波長の選択的フィルタリングを可能にする。
実際、本発明者は、AMD、スタルガルド病、網膜色素変性、ベスト病の一次細胞モデルを使用してRPE細胞における光毒性を調べる際に、約435nmを中心とする可視光線の波長の光がRPE細胞に有毒であること発見した。実験的検討においては、415nm〜455nmに及ぶ光の10nm帯域幅においてRPE細胞への毒性が実証された。驚くべきことに、緑内障及び糖尿病性網膜症で変性した網膜神経節細胞を光に曝露した場合、それらは460nmを中心とする光によって変性することが判明し、最大毒性は445nm〜475nmにおいて認められた。例証的な実験的検討は、10nmの帯域幅を有する光を使用して実施した。結果として、本発明の1つ又は複数の実施形態は、考えられる病状に応じて、435nm及び/又は460nmを中心とする光の目標波長帯域を遮断するための光デバイスを提供してもよい。
いくつかの実施形態では、提案した光デバイスは、狭帯域幅を有する可視光線の目標波長帯域を特に遮断するように構成してもよい。それらは、網膜疾患(AMD、スタルガルド病、網膜色素変性、ベスト病、緑内障、糖尿病性網膜症、レーバー遺伝性視神経症)とみなされる場合の予防的又は治療的用途を有してもよい。
光の狭帯域のフィルタリングは、色覚の障害の作用、暗所視への影響、及び概日リズムの混乱の可能性を最小化することを可能にする。
選択的干渉フィルタ手段は、例えば、約435nmの波長を中心とする波長の狭帯域の光を選択的に阻止するように構成してもよい。この波長範囲は、AMDの一次細胞モデルを使用してRPEの光毒性を調べる際に本発明者により実施された革新的研究によって、AMD、スタルガルド病、網膜色素変性、ベスト病などの疾患に最大の毒性を呈することが示されている。
別の例では、選択的干渉フィルタリング手段は、例えば、約460nmの波長を中心とする波長の狭帯域の光を選択的に阻止するように構成してもよい。この波長範囲は、緑内障の一次細胞モデルを使用してRGCの光毒性を調べる際に本発明者により実施された革新的研究によって、緑内障、糖尿病性網膜症、レーバー遺伝性視神経症などの疾患に対して最大の毒性を呈することが示されている。
別の例では、選択的干渉フィルタリング手段は、例えば、約445nmの波長を中心とする波長のより広帯域の光を選択的に阻止するように構成してもよく、それによって、RPE及びRGC細胞デルにおける研究において、緑内障、糖尿病性網膜症、レーバー遺伝性視神経症、加齢黄斑変性(AMD)、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病などの疾患の進行に有毒であることが示された光をフィルタリングする。
更に、選択的干渉フィルタリング手段は、AMD、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病の進行に有害であることが細胞モデル研究によって示されている約435nmの波長を中心とする波長の狭帯域の光、及び細胞モデル研究によって緑内障、レーバー遺伝性視神経症又は糖尿病性網膜症の経過に有害であることが示されている約460nmの波長を中心とする波長の狭帯域の光を選択的に阻止するためのデュアルバンドフィルタとして構成してもよい。この実施形態は、選択性の増加を提供し、それによって、色覚の歪み及び暗所視の混乱を制限する。
別の実施形態においては、第1の選択波長範囲は、実質的に435nm、445nm又は460nmの波長を中心とする、15nm〜30nm、好ましくは、15nm〜25nmの範囲内の帯域幅を有し、第1の除去率は60〜100%、好ましくは、80〜100%の範囲内である。増加した除去率は、特に、AMD、スタルガルド病、網膜色素変性、ベスト病、緑内障、レーバー遺伝性視神経症又は糖尿病性網膜症などの疾患に罹患している者に対して強化された保護を提供し、疾患の進行を遅らせる。
いくつかの実施形態では、光デバイスは、全可視スペクトルにおける光の透過を阻止するという追加機能を提供するように構成されてもよい。一実施形態においては、光デバイスは、全可視スペクトル内における可視光線の透過を40%〜92%の範囲内の阻止率において阻止するように構成されている。1つのそのような実施形態では、第1の選択波長範囲は、実質的に435nm、445nm又は460nmの波長を中心とする、25nm〜60nm、好ましくは、25nm〜35nmの範囲内の帯域幅を有し、第1の除去率は第1の選択波長範囲の少なくとも5%の追加阻止を提供するように構成されている。5%の追加阻止とは、全可視スペクトルにおける阻止率に対する追加である。
このような構成は、例えば、第1の選択波長範囲内の有毒な光の、使用者の眼への透過を防止する日光からの保護において使用してもよい。
一実施形態においては、光デバイスは、第1の選択波長範囲が465nm〜495nmのものであるように構成される。したがって、デバイスは、光誘発性の睡眠障害に罹患している使用者の眼の少なくとも一部の保護において使用してもよい。
別の実施形態においては、光デバイスは、第1の選択波長範囲が550nm〜660nmのものであるように構成される。したがって、デバイスは、色覚障害に罹患している使用者の眼の少なくとも一部の保護において使用してもよい。
別の実施形態においては、光デバイスは、第1の選択波長範囲が、590nm〜650nm、好ましくは、615nm〜625nmのものであるように構成される。したがって、デバイスは、片頭痛に罹患している使用者の眼の少なくとも一部の保護において使用してもよい。
別の実施形態においては、光デバイスは、第1の選択波長範囲が560nm〜600nmのものであるように構成される。したがって、デバイスは、てんかんに罹患している使用者の眼の少なくとも一部の保護において使用してもよい。
本発明の更なる態様は、光学レンズを製造する方法を提供する。方法は、未完成の表面と反対側の表面とを有する半完成の光学レンズであって、未完成の表面が凸面及び凹面のうちの1つであり、反対側の表面が凸面及び凹面のうちのもう一方である半完成の光学レンズを用意するステップと、使用者の光学レンズのための選択的干渉フィルタリング手段の構成を決定するステップと、未完成の表面を表面仕上げするステップと、表面のうち1つを選択的干渉フィルタリング手段に設けるステップと、を含み、選択的干渉フィルタリング手段の構成を決定するステップが、使用者の少なくとも1つの主視線、光学基板と使用者の眼との間の距離、使用者の眼の網膜部位のサイズ及び/又は瞳孔サイズを表す第1セットのパラメータを用意するステップと、第1セットのパラメータに基づき第1の選択入射角範囲を決定するステップと、使用者のために、少なくとも部分的に阻止されるべき波長の範囲を特徴付ける第2セットのパラメータを用意するステップと、少なくとも部分的に阻止されるべき入射光の第1の選択波長範囲を第2セットのパラメータに基づき決定するステップと、第1の選択的干渉フィルタリング手段及び光学基板の表面の第1のゾーンを第1の選択入射角範囲及び第1の選択波長範囲に基づき構成するステップであって、第1の選択的干渉フィルタリング手段が、第1の選択入射角範囲内の第1のゾーンに入射する入射光の第1の選択波長範囲の透過を第1の除去率において阻止するように動作可能であるように構成するステップと、を含む、選択的干渉フィルタリング手段の構成を決定する方法を含む。
方法のステップは任意の適切な順序で実施してもよいことは理解されよう。例えば、未完成の表面は表面のうち1つが選択的干渉フィルタリング手段に設けられる前又は後に表面仕上げされてもよい。好ましくは、未完成の表面は選択的干渉フィルタリング手段の提供前に表面仕上げされる。
本発明の文脈においては、光デバイスという用語は、眼科用レンズ、コンタクトレンズ、眼球内レンズ(IOL)等のような、光学基板を含む光学レンズを含む。この用語は、また、例えば、窓、自動車用及び航空機用ウインドシールド、フィルム、眼用器械、コンピュータモニタ、テレビスクリーン、マルチメディアディスプレイスクリーン、照明看板、光投射器及び光源等のような光学基板を有する他の光デバイスを含む。本発明の文脈においては、「眼科用レンズ」とは、矯正及び非矯正レンズ、並びにまた、眼の前方に着用されることを意図したマスク及び他の視覚デバイスを意味する。眼科用レンズは、特定の機能、例えば、太陽光反射、反射防止、汚れ防止、研磨防止などを含みうる。
本発明による方法のいくつかの一部はコンピュータにより実施してもよい。そのような方法は、プログラム可能な装置上のソフトウェアにおいて実施してもよい。それらは、また、ハードウェア又はソフトウェア単独で、又はそれらの組み合わせにおいて実施してもよい。
本発明のいくつかの実施形態はソフトウェアにおいて実施されうるため、本発明は、プログラム可能な装置に提供するための、任意の適切な搬送媒体(carrier medium)上のコンピュータ可読コードとして具現化されうる。有形の搬送媒体には、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、ハードディスクドライブ、磁気テープデバイス、又は固体メモリデバイス等のような記憶媒体を含んでもよい。一過性の搬送媒体には、電気信号、電子信号、光信号、音響信号、磁気信号、又はマイクロ波又はRF信号等の電磁信号などの信号を含んでもよい。
ここで、単に例として及び以下の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本発明の第1の実施形態による光学基板を含む光デバイスの概略図である。 本発明の実施形態の状況における眼の幾何学的特徴を概略的に示す。 図1C〜図1Dは、中心視及び周辺視それぞれにおける視線に関連する幾何学的パラメータを概略的に示す。 図1E〜図1Fは、入射光と使用者の視線との間の関係を概略的に示す。 入射光と使用者の視線との間の関係を概略的に示す。 本発明の第2の実施形態による光学基板を含む光デバイスの概略図である。 本発明の第3の実施形態による光学基板を含む光デバイスの概略図である。 本発明の第4の実施形態による光学基板を含む光デバイスの概略図である。 本発明の第5の実施形態による光学基板を含む光デバイスの概略図である。 図6A〜図6Bは、本発明の第6の実施形態による光学基板を含む光デバイスの概略図である。 本発明の第6の実施形態による光学基板を含む光デバイスの概略図である。 図7A〜図7Cは、光学レンズを通過する視線の例を示す概略図である。 本発明の更なる実施形態による光学基板を含む累進眼科用レンズの概略図である。 図9A〜図9Cは、様々な入射角を構成するための、光学レンズを通過する視線の例を示す概略図である。 (i)〜(iv)は、本発明のいくつかの実施形態による選択的フィルタにおいて使用される選択した染料及び顔料の吸収スペクトルを図表により示す。 (v)〜(viii)は、本発明のいくつかの実施形態による選択的フィルタにおいて使用される選択した染料及び顔料の吸収スペクトルを図表により示す。 (i)〜(iv)は、本発明のいくつかの実施形態による選択的フィルタにおいて使用されるポルフィリンの吸収スペクトルを図表により示す。 (v)〜(viii)は、本発明のいくつかの実施形態による選択的フィルタにおいて使用されるポルフィリンの吸収スペクトルを図表により示す。 本発明の1つ又は複数の実施形態によって提供されるデュアルフィルタの透過スペクトルを図表により示す。 各々の中心波長によって示される異なる波長帯域のインビトロ細胞曝露時に適用した放射照度を図表により示す。 様々な波長における露光後のインビトロRGC死を図表により示す。 図15A及び図15Bは、それぞれA2Eの欠如及び存在下における、様々な波長における露光後のアポトーシスによるインビトロRPE細胞死を図表により示す。
本明細書では、フィルタは、それがその範囲内の波長の少なくともいくらかの透過を阻止する一方で、その範囲の外側の可視波長の透過に、具体的にそうするように構成されない限りは、ほとんど又は全く影響しない場合、特定範囲の波長を「選択的に阻止する」。除去率又は阻止率又は阻止の程度という用語は、透過を防止される波長の1つ又は複数の選択された範囲内の入射光の割合を意味する。波長のパラメータ範囲(目標帯域)又は帯域幅は半値全幅(FWHM)と定義され得る。
図1Aを参照して本発明の第1の実施形態による光デバイスについて説明する。図1Aは、第1の表面111及び第2の表面112を有するベース光学基板110を含む光学レンズ100の概略図である。光学レンズの特定実施形態においては、第1の表面111は使用時に使用者の眼50の近位に配置される凹状裏表面であり、第2の表面112使用時に使用者の眼50の遠位に配置される凸状表表面である。光学レンズ100は、この特定の実施形態においては、ベース光学基板110の表表面112上に層として設けられ、且つ表表面112の形状と合致するような形状の選択的干渉フィルタ120を更に含む。他の実施形態においては、選択的干渉フィルタを光学基板110内の層として又は層の一部として設けてもよい。
選択的干渉フィルタ120は、光学レンズ100の表表面102に入射する選択波長範囲(目標波長帯域)の光が、ベース光学基板110を通過して使用者の眼50の方に向かって透過することを選択的に阻止する帯域消去フィルタとして動作する。選択的干渉フィルタ120は、特定の除去率において、目標波長帯域の光の透過を阻止するように構成されている一方で、選択波長範囲の外側の波長の入射光の透過にほとんど又は全く影響しない。いくつかの実施形態では、選択的干渉フィルタ120は、目標波長帯域の外側の波長の入射光の透過を、通常、吸収により、しかし目標帯域内の波長の除去率よりも低い特定の阻止率において、ある程度阻止するように構成してもよい。
使用者の眼50は連続するジオプトリdiにより形成されており、瞳孔Pと、回転中心CROと、網膜とを含む。眼の特徴は図1Bに示されるLiou & Brennanモデルなどのモデルによって示されうる。
図1C及び図1Dを参照して使用者の潜在的な視線をより詳細に定義する。図1Cを参照すると、中心視における主視線1では、光11が眼(CRO)の回転中心を通過する。CROから光学基板800への主視線1は、垂直面に対して画定される角度αと、XZ(水平面)に対する角度αとによって画定される。図1Dを参照すると、周辺視における視線2では、光22は眼の瞳孔Pの中心を通過する。瞳孔Pから光学基板800への周辺視における視線2は、垂直面に対して画定される角度α’と、X’Z’(水平面)に対する角度α’とによって画定される。
図1Eは、視線1と、光学基板800上における中心入射光線11の入射角iとの間の関係を概略的に示す。光学基板800の裏表面(使用者に近位の表面)S2の法線と視線1との間の角度はrと称される。光学基板800の表表面(使用者に遠位の表面)S1の法線と入射光線11との間の角度はiと称され、中心入射角と呼ばれる。角度iと(α,β)との間の関係は、光学基板800の厚みt及び中心プリズムを含むレンズの幾何学的形状、並びに光学基板800の表表面S1及び裏表面S2を画定する表面方程式、及び光学基板の屈折率nなどの光学基板のいくつかのパラメータに依存する。それは、光学基板の使用法、例えば、見る物体の距離にも依存する。
図1Fは、周辺光線(peripheral ray)2と光学基板800上における周辺入射光線22の入射角i'との間の関係を概略的に示す。光学基板800の裏表面(使用者に近位の表面)S2の法線と、周辺光線2との間の角度はr’と称される。光学基板800の表表面(使用者に遠位の表面)S1の法線と入射光線22との間の角度はi’と称され、周辺入射角と呼ばれる。角度i’と(α’,β’)との間の関係は、光学基板800の厚みt及び中心プリズムを含むレンズの幾何学的形状などの光学基板のいくつかのパラメータ、並びに光学基板800の表表面S1及び裏表面S2を画定する表面方程式及び光学基板の屈折率nに依存する。それは、光学基板の使用法、例えば、見る物体の距離にも依存する。
干渉フィルタが角感度を示すことは周知である。垂直入射において特定波長λを除去するように設計された帯域消去フィルタでは、入射角の増加は、除去される波長の、より低い波長へのスペクトル移動、除去される帯域の拡大、及び除去率の減少を意味する。通常の照明条件においては、例えば、光学基板が日光によって照明される場合、多数の異なる入射角が光学基板に到達する(非平行化照明条件(non collimated lighting conditions))。全入射角を考慮することにより、フィルタの透過スペクトルが大幅に変更され、除去される帯域の帯域幅が大幅に広がり、フィルタリングはもはや波長λを中心としない。眼科用途においては、この角度依存性の現象はフィルタリングによって誘発される色の歪みを大幅に増加し、且つ使用者の不快感を大幅に導入する可能性がある。
選択的干渉フィルタ120は、角感度をより良好に制御及び/又は最小化するように構成される。
帯域消去フィルタのスペクトル応答をより良好に制御するため、日光などの、一般的な非平行化光源の光学基板に影響しうる多くの入射角の中でも、保護されるべき網膜の部位に到達するもののみが決定され、フィルタは、限られた平行化照明条件である1つの入射角のみを考慮することにより設計されるのではなく、これら全ての入射角を考慮することにより数値的に設計される。これら入射角は、主視線、保護されるべき網膜のサイズ、及び使用者と光学基板との間の距離などのいくつかのパラメータに依存する入射角のコーンを形成する。
図1Gは、主要中心視線1Mに関連する入射角のコーンの決定を概略的に示す。入射角のコーンは、保護されるべき網膜の部位の縁に到達する光の周辺光線の入射角である、i’1とi’2との間の全入射角によって画定される。それは、また、(dα’1,dβ’1)と(dα’2,dβ’2)との間の全角度によって画定することができ、ここで、(dα’n,dβ’n)(n=1.2)は、光の周辺光線の、主視線1Mへの角度変化に一致する。
光学レンズは、選択的干渉フィルタ120上に配置され、機械的及び環境的保護を提供する保護フィルム130を更に含む。保護フィルム130には、また、可視スペクトル全体又は可視スペクトルの選択した波長帯域内における入射光の反射を防止するための反射防止コーティングを設けてもよい。
概して、干渉フィルタは、光の特定波長が反射され、他の波長が透過されるブラッグ格子に基づく。これは、波長特有の誘電体ミラーを生じさせる周期的変化を層状構造の屈折率に追加することにより実現される。本発明の実施形態の選択的干渉フィルタ120は、反射、屈折又は回折によって入射光の透過を阻止するように構成してもよい。例えば、選択的干渉フィルタ120は、薄膜技術、ホログラフィック技術、干渉記録(interference recordings)などの干渉技術、又はコレステリック結晶を含む液晶技術などのフォトニックバンドギャップ材料を使用して製造してもよい。
1つの例においては、選択的干渉フィルタ120は、様々な光学屈折率を有する複数の層を有する薄膜デバイスを含んでもよい。概して、薄膜技術では、様々な屈折率を有する2つ以上の無機材料又は混成材料が交互する複数の層を使用する。各層は、スパッタリング、真空蒸着、又は物理的若しくは化学的気相成長などの技術によってベース光学基板110の表表面112上に堆積されるコーティングとして設けられてもよい。そのような技術はゴーグル、メガネ及び透明な光学的表面上の反射防止層に使用される。
無機及び有機混成の層積層体(inorganic and organic hybrid stack of layers)を、機械的頑強性及び湾曲適合性(curvature compatibility)を最適化するために使用してもよい。層は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(セルローストリアセテート)、COC(環式オレフィン共重合体)、PU(ポリウレタン)、又はPC(ポリカーボネート)の高分子フィルムに堆積され、その後、例えば、表表面112の外側上への転写作業によって表表面112の外側に配置されてもよい。
転写作業には、初めに第1の支持体に配置されたコーティング又はフィルムを第1の支持体から別の支持体上に結合的に転写する、又は自己支持型コーティング(self supporting coating)又はフィルムを直接支持体に転写する、を含む。本例においては、支持体は光学基板である。
コーティング又はフィルムと光学基板の外部表面との間の結合は、コーティング又はフィルムの表面及び/又は物理的又は化学的相互作用を形成することが可能な媒体の活性化又は接着剤(にかわ)のいずれかによって得てもよい。
本発明の1つの特定実施形態においては、選択的干渉フィルタ薄膜技術を多くの層、例えば20層が使用されるように適応させてもよい。
更なる実施形態においては、選択的干渉フィルタ120は、深度と共に正弦的に変化する可変光学屈折率を有するルゲートフィルタデバイスを含んでもよい。ルゲートフィルタは、選択された阻止帯域の外側における反射関数の跳ね返りを最小にすることを可能にする。
ルゲートフィルタは、上述の薄膜技術と類似の手法でコーティングとして表表面112に塗布してもよい。
別の実施形態においては、選択的干渉フィルタ120は、ホログラフィック記録を含むホログラフィックデバイスを含んでもよい。ホログラフィック記録の例は、Stephen A.Benton及びV.Michael Bove,Wiley−Interscienceによる文書「Holographic Imaging」(2008年)に記載されている。ホログラフィック帯域消去除去フィルタの記録は、通常、感光性材料を、適切な形状の、それぞれが選択した方向に伝播する2つのコヒーレントなレーザービームの干渉に形成することによって実施される。記録ステップを管理するために各光線の分散、形状及び相対強度などの光学設定(optics of the set−up)の制御が使用される。阻止されるべき波長の目標帯域を画定するため、及び特定の波長における帯域のセンタリングを確実にするために必要な性能を得るために感光性材料の露光及び処理が監視される。
そのようなホログラフィック記録は、通常、感光性樹脂であるがそれに限定されない感光材料内において実施されうる。感光材料は平面又は曲面上に塗布されるか、2つの曲面(そのうち1つは記録段階の後に除去されてもよい)の間において鋳造される。ホログラムは、湾曲した厚い感光材料の体積内に刻まれうる。例えば、予め眼科用レンズなどの光学レンズとして成形されたフォトリフラクティブガラスは、記録及び固定後、周期的な率変調(index modulation)が目標帯域消去フィルタデバイスを発生させるような、光学設定によって設計された干渉に応じた非常にわずかな率変調を呈する。
別の実施形態には、PET、TAC、COC、PU又はPCの平坦なフィルムに堆積された感光材料上に、予歪されたホログラムなどの、予歪された除去フィルタを記録し、後に、それを、例えば、転写作業によって、例えば、眼科用レンズの曲面などの湾曲した基板上に配置するステップを含む。
例えば、転写作業によって、又は他の適切な手段によって曲面に配置されたホログラムは、その後、別の曲面によって被覆しても、2つの機械的に安定化された、湾曲した基板の間に挟まれるように積層してもよい。
反射型ホログラムの作成によるホログラフィックデバイスの作製プロセスの例は米国特許第4,942,102号明細書に開示されている。ホログラフィック格子の調整の例は、米国特許第5,024,909号明細書に開示されている。大型サイズのホログラフィック要素の連続的な記録の変形形態は、例えば、欧州特許第0316207B1号明細書に開示されている。
別の実施形態においては、選択的干渉フィルタは、例えば、クロレステリック液晶などのフォトニックバンドギャップ材料を含んでもよい。クロレステリック結晶の使用により、電気的に制御可能なフィルタの考案が可能になる。>50%の反射を得るために2つの層を使用してもよい。クロレステリック液晶は、光学基板の第1の表面上に液体又はゲルの少なくとも1つの密閉層の形態で提供してもよい。
フォトニック結晶は、禁制波長(forbidden wavelengths)の範囲、半導体材料における電子バンドギャップに類似する、いわゆるフォトニックバンドギャップ(PBG)を有しうる金属又は誘電体物体層の周期的配列である。周期的パターンの幾何学的配置及び基板の材料特性がフォトニックバンド構造、すなわち分散を決定する。
フォトニック結晶は1次元、2次元又は3次元で形成されうる。1次元フォトニック結晶は、標準的なブラッグ反射器と同様、異なる誘電率の層を連続的に堆積することによって作製されうる。1次元周期構造の製造は、PET、TAC、COC、PU又はPCのフィルム上に、異なるバルク屈折率の交互する層をコーティングすることによって実現してもよい。このような層は、同質の材料で作製されるか、同一の幾何学的構造の配列、例えば、サイズにおいて単分散された同一の球体のアレイによって、又はPDLC(高分子分散液晶)高分子の周期的組織化によって構成されるかのいずれかであり、その後、例えば、転写作業によって光学レンズの曲面に配置される。PET、TAC、COC、PU又はPCのフィルム上にコーティングされたこのような1次元周期構造を、Nature Photonics Vol.1 N°.8−August:P−Ink Technology:Photonic Crystal Full−Colour Display,by Andre C.Arsenault,Daniel P.Puzzo,Ian Manners & Geoffrey A.Ozinに記載されているように、機械的、熱的、電気的、又は更には化学的のいずれかにおいて活性化し、フィルタリング帯域及び/又は中心フィルタリング波長の制御された変化を誘発することができる。
2次元フォトニック結晶では、反応性イオンエッチング(J.O’brien,et al.,Lasers incorporating 2D photonic bandgap mirrors,Electronics Letter,32,2243(1996);Mei Zhou,Xiaoshuang Chen,Yong Zeng,Jing Xu,Wei Lu,Fabrication of two−dimensional infrared photonic crystals by deep reactive ion etching on Si wafers and their optical properties,Solid State Communications 132,503(2004))又は酸化アルミニウム膜(H.Masuda,et al.,Photonic band gap in anodic porous alumina with extremely high aspect ratio formed in phosphoric acid solution,Japanese Journal of Applied Physics,39,L1039(2000))が、一般的な製造法である。2次元PBGは、また、干渉記録(いわゆる「ホログラフィック」記録によって作製することができ、時として反応性イオンエッチングが後に続く。3次元フォトニック結晶は一般的には層毎に製造されうる(S.Y Lin,et al.,A three dimensional photonic crystal operating at infrared wavelengths,Nature 394,251(1998))。この技法は構造光学バンドギャップの優れた制御を可能にするという利点を有する。それらは、また、X線リソグラフィ(LIGA)、ホログラフィックリソグラフィ(感光性高分子における4つの非同一平面上のレーザービームの干渉が3次元の周期構造を発生させる)、2光子重合(TPP)(パルスレーザによる2光子吸収を使用し光重合を促進する)、2光子吸収光重合による3次元微細加工を含む別の技法によって作製することができる。フォトニック結晶を作製するための別の技法では、コロイドポリマーのマイクロスフェアの、コロイド結晶への自己組織化を使用する。例えば、オパールガラス球体のコロイド懸濁液が(S.John,Photonic Bandgap Materials,C. Sokoulis,Ed.Dordrecht:Kulwer Academic Publishers(1996))に開示されている。コロイド結晶内の光のブラッグ回折がストップバンドフィルタを生じさせる。別の技法は、例えば、人工オパール中のラテックス球体を除去(溶解)し、周囲構造を残すことによるオパール反転を含む。反転オパールは作製された最初の3次元PBGのうちの1つである(引用:Voss,the Netherland)。
フォトニック結晶の周期構造は、PET、TAC、COC、PU又はPC及びこれらの組み合わせのフィルム上にコーティングされるか、ホログラフィック高分子分散液晶を構成する場合は、活性にされる、特に、電気的に活性にされるかのいずれかとされうる。不活性又は活性のデバイスが、その後、例えば、転写作業によって光学レンズの曲面に配置される。
1つの特定実施形態においては、選択的干渉フィルタ120は、選択入射角範囲が干渉格子の干渉縞に対して実質的に垂直な入射角を中心とするように配置された干渉格子デバイスとして構成してもよい。
上記の様々な種類の干渉フィルタ技術を使用すると、使用者の要求に従う目標波長帯域の透過の阻止を実現することができる。
例えば、選択的干渉フィルタ120の場合、第1の選択波長範囲の光毒性の光の透過を阻止するためには、選択的干渉フィルタ120を、上記技術の1つ又は複数を基に、430nm〜465nmの範囲内の波長を中心とする、10nm〜70nm、好ましくは10nm〜60nmの範囲内の帯域幅の波長の、光デバイス100の表表面に入射する光の透過を阻止する一方で、目標波長帯域の外側の入射光の透過を可能にするように構成してもよい。(以下に記載すると共に図14及び図15に示すように)この目標波長範囲は有毒な光の波長範囲に相当するため、このような光に対する網膜の保護を実現してもよい。
更に、選択的干渉フィルタは、特定の眼の障害又は疾患に有毒な特定波長の光を透過するように構成してもよい。
例えば、緑内障は、視神経が損傷を受け、罹患した眼の視力に永久的に影響し、未処置の場合、完全な失明に進行する眼の障害である。更に、神経損傷には特徴的パターンにおける網膜神経節細胞の喪失を伴う。世界的に、緑内障は失明の第2の主因である。緑内障は、常時ではないがしばしば、眼の前区の体液(房水)の圧の上昇と関連付けられる。
考えられる緑内障の原因についての様々な研究がこれまでに実施されている。しかしながら、眼球の血流が緑内障の病因に含まれるというエビデンスの増加があり、高血圧と緑内障の発生との間における相関の可能性が示されていても実験は依然実施されている。眼圧は緑内障の主要危険因子の唯一のものであるが、種々の薬物及び/又は外科的手法によりそれを低下させることが現在の緑内障治療の中心である。当座は、緑内障管理には、適切な診断的技術及び継続管理検査はもとより個々の患者に対する治療の適切な選択が必要である。特に、眼圧は投薬、通常、点眼薬によって低下させることができる。しかしながら、治療により、眼圧が正常値に低下した場合であっても、変性過程が必ずしも停止するとは限らない。緑内障の治療にはレーザ−手術及び従来の手術の両方が実施される。手術は先天性緑内障の罹患者の一次療法である。
網膜症は、眼の網膜の非炎症性障害のいくつかの形態を意味する総称である。しばしば、網膜症は全身性疾患の眼症状発現である。糖尿病性網膜症は糖尿病の合併症に起因し、最終的には失明に至るおそれがある。それは10年以上糖尿病に罹患している全患者の80%までが罹患する全身性疾患の眼症状発現である。糖尿病性網膜症は微小血管網膜変化と関連する。糖尿病性網膜症に罹患中に神経節網膜細胞が変性することが最近判明した(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/jphysiol.2008.156695/full;及びKern T.S. and Barber A.J.Retinal Ganglion Cells in Diabetes.The Journal of Physiology 2008.Wiley online library)。
網膜神経節細胞死は、レーバー遺伝性視神経症などの、ミトコンドリア機能が破壊されるいくつかの他の病状において認められている。
網膜神経節細胞(RGC)機能障害における光の影響及びそれらの関連する病状、例えば、緑内障、糖尿病性網膜症及びレーベル視神経症、に関する革新的研究が本発明者によって実施された。
RGCの光毒性を緑内障の一次細胞モデルを使用して実施した。緑内障のインビトロモデルには精製した生体ラット網膜神経節細胞が適していることを研究が示している(Fuchs C et al,IOVS,Retinal−cell−conditioned medium prevents TNF−alpha−induced apoptosis of purified ganglion cells.2005)。したがって、光誘発細胞死(light−induced cell death)が緑内障、糖尿病性網膜症及びレーバー遺伝性視神経症におけるそのような細胞の変性に寄与しうるかどうかを判定するため、黒色透明底96ウェル培養皿の生体ラット網膜神経節細胞の初代培養に15時間露光した。光曝露は、385〜525nmから、10nmの増分で選択し、図13に示されるような中心波長で示される。培地のあらゆる光フィルタリング効果を防止するため、細胞を芳香族アミノ酸、フェノールレッド又は漿液及び可視スペクトル内の他の感光性分子を有しないNBA培地で培養した。光照射は、眼光学(eye optic)、角膜、レンズ及び硝子体液(E.A.Boettner,Spectral transmission of the eye,Clearing House,1967)によるフィルタリング後に網膜に達する自然太陽光に対して正規化した(太陽光スペクトル規格(Solar spectra of reference)ASTM G173−03)。これら神経性細胞においては、細胞生存性を高感度の生存性アッセイCellTiter−Glo(Promega,Madison,Wisconsin,USA)によって評価した。図14は、試験した全露光のRGC生存を示すものであり、このため、制御状態に対する、対応する細胞損失を示す。実験データは、網膜神経節細胞の喪失は420〜510nmの全10nm帯域幅において誘発され、450、460nm及び470nmを中心とする帯域幅において最大効果を示すことが示された。
したがって、1つの特定実施形態においては、目標帯域は、約460nmの波長を中心とする、10〜70nm、好ましくは、15〜25nmの帯域幅を有してもよい。このような目標帯域は、本発明者によって実施された上述のRGC細胞モデル研究によって、緑内障、糖尿病性網膜症又はレーバー遺伝性視神経症の患者に特に有毒であることが示された。結果として、この目標帯域の波長が使用者の眼に透過することを防止すると保護が提供され、これら特定の疾患の進行を遅らせる。
本発明者は、網膜色素上皮(RPE)における光の影響、並びに加齢黄斑変性(AMD)、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病などの関連する病状に関する革新的研究も実施した。
AMDに罹患した患者のRPEは増加した濃度のA2Eを含むことが判明している(CA.Parish et al.,Isolation and one−step preparation of A2E and iso−A2E,fluorophores from human retinal pigment epithelium,IOVS,1998)。したがって、AMDのモデルを得るため、ブタの眼から分離された網膜色素上皮細胞をA2E(40μM)の存在下で6時間インキュベートし、その細胞吸収を誘発させた。培地交換後、黒色透明底96ウェル培養皿のRPE細胞のこれら初代細胞培養に10nmの帯域幅で18時間露光した。光曝露は385〜525nmから、10nmの増分で選択し、図13に示されるような中心波長で示される(例えば、385〜395nmの帯域幅においては390nm)。培地のあらゆる光フィルタリング及び/又は光増感を防止するため、細胞を芳香族アミノ酸、フェノールレッド又は漿液及び他の感光性分子を有しないDMEM培地で培養した。光照射は、眼光学によるフィルタリング後に網膜に達する(角膜、レンズ;E.A.Boettner,Spectral transmission of the eye,ClearingHouse,1967)自然太陽光に対して正規化した(太陽光スペクトル規格(Solar spectrum of reference)ASTM G173−03)。RPE細胞アポトーシスを、照明後6時間で定量した。図15Aは、A2Eインキュベーションのない状態における光誘発アポトーシスの欠損を示す。これはApotox−Gloにおいてカスパーゼ3活性により測定し、細胞生存性が報告された(Promega,Madison,Wisconsin,USA)。対照的に、図15Bは、A2EをRPE細胞とともにプレインキュベートした場合、RPEアポトーシスは420、430、440及び450nm(415〜455nm)を中心とする10nm帯域幅において極めて誘起されたことを示す。
したがって、別の例においては、目標帯域は、約435nmの波長を中心とする、10〜70nm、好ましくは、15〜25nmの帯域幅を有してもよい。このような目標帯域は、上記の革新的研究によって、AMD、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病の患者に特に有毒であることが示された。このため、この目標帯域の波長が使用者の眼に透過することを防止すると保護が提供され、疾患の進行を遅らせる。
別の例では、目標帯域は、10〜70nm、好ましくは、30〜60nmの帯域幅を有してもよく、約445nmの波長を中心とする。このような目標帯域は、上記のRGC細胞モデルに関する革新的研究によって緑内障、糖尿病性網膜症又はレーベル視神経症の患者に特に有毒であることが示された波長、並びにRPE細胞モデル研究によってAMD、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病の患者に特に有毒であることが示された波長を含む。このため、この目標帯域の波長が使用者の眼に透過されることを防止すると保護が提供され、これら疾患のいずれか又はいくつかの進行を遅らせる。
例えば、メラトニン抑制を防止する場合、選択的干渉フィルタ120は、上記技術の1つ又は複数を基に、例えば、480nmの波長を中心とする、465nm〜495nmの目標帯域の光の波長の透過を阻止するように構成してもよい。この波長帯域の波長を有する光はメラトニンの生成を抑制する。メラトニン(N−アセチル−5−メトキシトリプタミン)は松果体腺の主要ホルモンであり、多くの生物学的機能、特に、明間及び暗間(duration of light and darkness)によって制御される生理学的機能のタイミングを制御する。したがって、この目標波長帯域の光の透過を阻止するように構成された選択的フィルタリング手段を有する光デバイスを使用して、特に夜間のメラトニン抑制を防止してもよい。
例えば、色覚の向上のために赤−緑軸のコントラストを補償及び復元する場合、選択的干渉フィルタ120は、例えば、550nm〜660nmの目標波長帯域の光の波長の透過を阻止するように構成してもよい。
例えば、片頭痛の治療又は予防の場合、選択的干渉フィルタ120は、例えば、590nm〜650nm、及び好ましくは、615〜625nmの目標波長帯域の光の波長の透過を阻止するように構成してもよい。
例えば、てんかんの治療又はてんかん性発作の予防の場合、選択的干渉フィルタ120は、560〜600nmの目標波長帯域の光の波長の透過を阻止するように構成してもよい。
特定実施形態においては、選択的干渉フィルタ120は2つの目標波長帯の波長の透過を阻止するように構成してもよい。狭帯域幅を提供するための選択的干渉フィルタの特定構成により、デュアルバンド選択的干渉フィルタを使用することを可能にする。デュアルバンド干渉フィルタリングを、異なる目標波長帯域の透過を阻止する2つの異なる干渉フィルタを使用することによって、又は波長の2つの異なる目標帯域の透過を阻止するように構成されている1つの干渉フィルタによって提供してもよい。
デュアルバンドフィルタを提供するための一実施形態は、2つの異なる目標波長フィルタリング帯域を形成するために、2つのホログラムを、同じ感光材料上に同時又は連続的に記録することを含んでもよい。各目標波長帯域はそれ自身の帯域幅、中心波長及び自身の除去因子(rejection factor)を特徴としてもよい。
別の実施形態においては、それぞれがPET、TAC、COC、PU又はPCのフィルム、又はガラスにコーティングされ、同じ種類の感光材料又は2つの異なる感光材料のいずれかに記録された2つの異なるホログラムを、それらの基板と共に又はそれらの基板のリフトオフ後のいずれかにおいて互いに重ね合わせて積層し、特に、湾曲した基板上に堆積するか熱成形する。
考えられる実施の1つにおいては、デュアルバンドフィルタを形成するために2つの技術を組み合わせたものを使用してもよく、例えば、顔料又は染料、例えば、本出願において後述される実施形態の顔料又は染料を含有する層で作製された吸収フィルタ上にホログラムを重置してもよい。
別の実施形態においては、2つの技術を組み合わせには、それぞれがその固有の顔料又は染料を2つの層の順序とは無関係に含有する2つの異なる吸収層により得られた2つの選択的フィルタの重置を含む。
別の実施形態においては、ホログラムは、それらが上に作成される又はリフトオフされる基板と無関係に、且つ重置の順序とは無関係に、1次元又は2次元フォトニック結晶によって又は薄膜の積層体によって積層される。
別の実施形態においては、薄膜積層体は、重要ではない重置の順序、及び2つの選択的フィルタが上に堆積された光学的に透明な基板とは無関係に、フォトニック結晶上に重置される。
この手法において、入射光の透過が阻止される2つ以上の目標波長が得られてもよい。例えば、第1の目標波長帯域は、約435nmの波長を中心とする、10〜30nm、好ましくは、15〜25nmの帯域幅を有してもよい。第2の目標波長帯域は、460nmの波長を中心とする、10〜30nm、好ましくは、15〜25nmの帯域幅を有してもよい。前の例と同様に、目標波長帯域は、本発明者によって実施されたRGC細胞モデル研究によって緑内障、糖尿病性網膜症、又はレーバー遺伝性視神経症の患者に特に有毒であることが示された波長、並びにRPE細胞モデル研究によってAMD、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病の患者に特に有毒であることが示された波長を含む。しかしながら、干渉フィルタ120は、この特定の例においては、より選択的であり、且つ2つの目標帯域間における光の透過の増加を可能にし、それによって、視感色(visual colour)の歪みの効果の軽減及び暗所視の向上を有する。
1つ又は複数の目標波長帯域の除去率を、使用者のニーズに応じて選択的干渉フィルタ120を上記の適切な異なる技術を使用して構成することにより調整してもよい。例えば、一般的な保護使用においては、色彩認知の歪み、暗所視の混乱、及び眼の非視覚機能の障害を制限するために、1つの目標波長帯域又は2つの目標波長帯域内の除去率を、30〜50%になるように構成してもよい。AMD、スタルガルド病、網膜色素変性、ベスト病、緑内障、糖尿病性網膜症又はレーバー遺伝性視神経症などの疾患の進行を減速するために、除去率を約80〜100%に増加し、罹患した眼に対する保護の強化を提供してもよい。日光からの保護を必要とする使用においては、例えば、全可視スペクトル全体における透過が40%〜92%の範囲内の阻止率において阻止される。第1の除去率は、第1の選択波長範囲の少なくとも5%の追加阻止を提供するように構成してもよい。
図2を参照して本発明の第2の実施形態による光デバイスを記載する。図2は、第1の実施形態のベース光学基板と類似する、第1の表面211及び第2の表面212を有するベース光学基板210を含む光学レンズ200の概略図である。光学レンズ200は、ベース光学基板210の表表面212に設けられた選択的干渉フィルタ220を更に含む。選択的干渉フィルタ220は第1の実施形態の選択的干渉フィルタ120と同じ手法で動作する。第2の実施形態は、光学基板の裏表面211に、選択的干渉フィルタ220の目標帯域幅の光の一部を吸収するように構成された吸収材料222の層が設けられているという点において第1の実施形態と異なる。まず、それは、光デバイスの裏表面201に入射する光から生じ、選択的干渉フィルタ220によって反射される、使用者の眼に到達する寄生光を大幅に低減する。実際、選択的干渉フィルタ220の存在により使用者の眼の方に向かって戻る寄生光の反射を導入し、このため、吸収材料222の層の存在が望ましくない反射効果を減少させる。次に、吸収材料222は選択的干渉フィルタ220によって導入されるスペクトルのフィルタリングを強化するが、これは、選択的干渉フィルタ220によって除去されなかった目標波長の光の一部が吸収材料222の層によりその後減衰されてもよいことが理由である。
他の実施形態においては、吸収材料222の層は、選択的干渉フィルタ220の目標波長帯域とは異なる目標波長帯域の光を吸収するように構成され、これにより色平衡化効果を提供する。例えば、可視スペクトルの橙−赤部分の領域のいくらかの吸収は、選択的干渉フィルタ220によって誘起される色彩認知の歪みを減衰させる。更なる実施形態においては、選択的干渉フィルタ220の目標波長帯域とは異なる目標波長帯域並びに同じ目標波長帯域の光を吸収するように動作する吸収材料222の層の使用は、色平衡化効果及び強化されたフィルタリング効果を提供するために使用されてもよい。
いくつかの実施形態では、可視スペクトルの全範囲の光を吸収するように動作する非選択的吸収材料の層を使用してもよい。
吸収材料は本発明の後述の実施形態に記載されるような吸収染料又は顔料であってもよい。
この実施形態においては、吸収層は光学基板の裏表面上に設けられるが、本発明の他の実施形態においては、吸収層は、光学基板内の層として選択的干渉フィルタと光学基板の裏表面との間に設けられてもよいことは理解されよう。
図3を参照して本発明の第3の実施形態による光デバイスを記載する。図3は、第1の実施形態のベース光学基板と類似する、第1の表面311及び第2の表面312を有するベース光学基板310を含む光学レンズ300の概略図である。光学レンズ300は、ベース光学基板310の表表面312に設けられた第1の選択的干渉フィルタ320と、ベース光学基板310の体積内に層として設けられた第2の選択的干渉フィルタ322と、を更に含む。選択的干渉フィルタ320及び選択的干渉フィルタ322は、第1の実施形態の選択的干渉フィルタ120と同じ手法で動作する。第1の選択的干渉フィルタ320及び第2の干渉フィルタ322の両方が同じ目標波長帯域の透過を阻止するように構成してもよい。この実施形態によって提供される利点は、第2の干渉フィルタ322が目標波長帯域の除去因子の全体的な増加を得ることを可能にすることによって目標波長帯域の保護の強化を提供してもよいことである。この保護の強化は、使用者のニーズに適合させてもよく、それによって、例えば、使用者が、例えば、AMD、スタルガルド病、網膜色素変性、ベスト病、緑内障、糖尿病性網膜症又はレーバー遺伝性視神経症などの疾患に罹患しているか否か、又は使用者がどの程度その病気に罹患しているかによって設計の柔軟性を提供する。例えば、光学基板内の第1の選択的干渉フィルタ322は通常使用のための保護のレベルを提供してもよく、その一方で、第2の選択的干渉フィルタ320を光学基板の表表面に追加すると、その保護のレベルを、前述の疾患のいずれかにかかりやすい又は罹患している患者の疾患の進行を防止するのに適した治療レベルに増加してもよい。
光学基板の裏表面311に、第2の実施形態の吸収材料の層に類似し、選択的干渉フィルタ322及び/又は選択的干渉フィルタ320の目標帯域幅の光を吸収するように構成された吸収材料324の層を設けてもよい。この手法における吸収材料324の提供は、光デバイスの裏表面311に入射する光から生じ、選択的干渉フィルタ322及び/又は選択的干渉フィルタ320によって反射される、使用者の眼に到達する寄生光を大幅に低減する。更に、吸収材料324は、選択的干渉フィルタ322及び/又は選択的干渉フィルタ320によって導入されるスペクトルのフィルタリングを強化する。
前実施形態の吸収材料の層と同様、吸収層324は、また、色平衡化のために選択的干渉フィルタ322及び/又は選択的干渉フィルタ320の目標帯域幅と異なる波長帯域の光、又は可視スペクトルの全範囲の光、又は保護の強化のために選択的干渉フィルタ322及び/又は選択的干渉フィルタ320の目標帯域幅の光、及び色平衡化のために異なる波長帯域の光、を吸収するように構成してもよい。
更なる実施形態においては、選択的干渉フィルタの1つを光学基板の表表面に追加し、光学基板内又は光学基板の表表面に設けられた選択的干渉フィルタの目標波長帯域と異なる目標波長帯域の保護を提供してもよい。異なる波長帯域内の保護を追加することによって、追加の使用又は保護を想定してもよい。例えば、一実施形態においては、色平衡化を提供してもよい。別の実施形態においては、緑内障、糖尿病性網膜症又はレーベル視神経症に有害な光に対する目標波長帯域の保護を1つの選択的干渉フィルタによって提供してもよく、且つAMD、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病に有害な光に対する更なる目標帯域の追加の保護を別の選択的干渉フィルタによって提供してもよい。別法として、1つの選択的干渉フィルタは、電磁スペクトルの1つの部分の波長の範囲に対して保護するように構成してもよく、その一方で、他方の選択的フィルタは、電磁スペクトルの別の部分の波長の範囲に対して保護するように構成してもよい。
図4を参照して本発明の第4の実施形態による光デバイスを記載する。図4は、第1の表面411及び第2の表面412を有するベース光学基板410を含む光学レンズ400の概略図である。光学レンズの特定実施形態においては、第1の表面411は凹状裏/後表面であり、使用時、使用者の眼50の近位に配置されている。第2の表面412は凸状表/前表面であり、使用時、使用者の眼50の遠位に配置されている。光学レンズは、この実施形態においては、ベース光学基板410の体積内に設けられた吸収フィルタ420を更に含む。吸収フィルタ420は、この実施形態においては、染料又は顔料を含有し、且つベース光学基板410の2つの層間に配置されるフィルムとして提供される。本発明の他の実施形態においては、吸収層は光学基板のいずれの表面上に設けてもよい。
吸収フィルタ420は、表表面412から使用者の眼50の方に向かってベース光学基板410を通過する、412光学レンズ100の表表面に入射する、目標波長帯域と称される選択波長範囲の光の透過を選択的に阻止する一方で、選択波長範囲の外側の波長の入射光の透過に、具体的にそうするように構成されない限りは、ほとんど又は全く影響しない帯域消去フィルタとして動作する。吸収フィルタ420は、選択波長範囲の透過を特定の阻止率において阻止するように構成されている。いくつかの実施形態では、光デバイスは、機械的及び環境的保護を提供するために、ベース光学基板410上に配置される保護フィルム(図示せず)を更に含む。保護フィルムには、また、可視スペクトル全体の、又は吸収フィルタ420の目標波長帯域に対応する又は対応しない、可視スペクトルの選択した帯域内の入射光の反射を防止するための反射防止コーティングを設けてもよい。
吸収フィルタ420は、本発明の1つの例では、オーラミンO、クマリン343、クマリン314、プロフラビン、ニトロベンゾオキサジアゾール、ルシファーイエローCH、9,10ビス(フェニルエチニル)アントラセン、クロロフィルa、クロロフィルb、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(4−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、及び2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−1−メチピリジニウムヨージド、ルテイン、ゼアキサンチン、ベータカロチン又はリコピン、又はそれらの任意の組み合わせなどの染料又は顔料を含んでもよい。ルテイン(キサントフィルとしても公知である)及びゼアキサンチンは、例えば、網膜内に蓄積する天然のプロテクターであり、その濃度は年齢と共に減少する。このような物質を含有する吸収フィルタの提供により眼の物質の自然損失が補償される。
顔料又は染料の選択は吸収フィルタ420の1つ又は複数の目標波長帯域に依存する。
例えば、光毒性の光に対する保護においては、図10に示されるように、数多くの染料又は顔料が420nm〜470nmの波長帯域における高いレベルの吸収を提供する。図10(i)〜10(viii)は、以下の物質の吸収スペクトルをそれぞれ示す。(i)水に溶解したオーラミンOは約431nmにおいて59nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを示す、(ii)エタノールに溶解したクマリン343は約445nmにおいて81nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを示す、(iii)エタノールに溶解したニトロベンゾオキサジアゾールは約461nmにおいて70nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを示す、(iv)水に溶解したルシファーイエローCHは約426nmにおいて74nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを示す、(v)シクロヘキサムに溶解した9,10ビス(フェニルエチニル)アントラセンは約451nmにおいて67nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを示す、(vi)ジエチルエーテルに溶解したクロロフィルaは約428nmにおいて44nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを示す、(vii)メタノールに溶解したクロロフィルaは約418nmにおいて42nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを示す、(viii)ジエチルエーテルに溶解したクロロフィルbは約436nmにおいて25nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを示す。
各々の吸収スペクトルからわかるように、これら物質は、10〜82nmのFWHMの狭帯域幅の吸収を有するスペクトルを提供し、それによって、望ましくない視覚の歪みの低減につながる選択的フィルタリング手段を提供する。
他の実施形態においては、吸収フィルタ420はポルフィリン又はその誘導体を含んでもよい。
ポルフィリンのいくつかの例は、5,10,15,20−テトラキス(4−スルホナトフェニル)ポルフィリンナトリウム塩錯体、5,10,15,20−テトラキス(N−アルキル−4−ピリジル)ポルフィリン錯体、5,10,15,20−テトラキス(N−アルキル−3−ピリジル)ポルフィリン金属錯体、及び5,10,15,20−テトラキス(N−アルキル−2−ピリジル)ポルフィリン錯体、又はそれらの任意の組み合わせを含む。アルキルは、メチル、エチル、ブチル及び/又はプロピルであってもよい。これら全てのポルフィリンは非常に良好な水溶性を示し、300℃以下で安定である。
錯体は金属錯体とすることができ、金属はCr(III)、Ag(II)、In(III)、Mg(II)、Mn(III)、Sn(IV)、Fe(III)又はZn(II)であってもよい。このような金属錯体は425〜448nmの水吸収を呈し、これは光毒性を示す波長の範囲に一致する。Cr(III)、Ag(II)、In(III)、Mn(III)、Sn(IV)、Fe(III)、又はZn(II)をベースとした金属錯体は、特に、それらが酸に敏感でなく、それらがpH<6において金属を遊離しないことから、より安定した錯体を提供するという利点を有する。更に、これらポルフィリンは室温において蛍光を示さない。そのような特性は、例えば、眼科用レンズ、コンタクトレンズ及びIOLなどの光学レンズにおける使用の対象となる。ポルフィリンは光の透過が阻止されるべき1つ又は複数の目標波長帯域に応じて選択されうる。波長の吸収帯は溶媒及びpHに依拠する。帯域幅は溶媒、pH及び濃度に依拠するが、これは、染料が、濃度が高くなるほど凝集する傾向があり、ピークが広くなるからである。目標帯域は、したがって、ポルフィリン、pH及び溶媒、並びに濃度の選択により得ることができる。
図11(i)〜11(viii)は、以下のポルフィリン類の吸収スペクトルをそれぞれ示す。(i)約445nmにおいて18nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを有する、クロロホルムとHClに溶解した二プロトン化−テトラフェニルポルフィリン、(ii)14nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の410nmの吸収ピークを有する、トルエンに溶解したマグネシウムオクタエチルポルフィリン、(iii)427nmにおいて10nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを有する、トルエンに溶解したマグネシウムテトラメシチルポルフィリン、(iv)419nmにおいて12nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを有する、トルエンに溶解したテトラキス(2,6−ジクロロフェニル)ポルフィリン、(v)420nmにおいて30nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを有する、トルエンに溶解したテトラキス(o−アミノフェニル)ポルフィリン、(vi)427nmにおいて1nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを有する、トルエンに溶解したテトラメシチルポルフィリン、(vii)420nmにおいて12nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを有する、トルエンに溶解した亜鉛テトラメシチルポルフィリン、(viii)423nmにおいて14nmの帯域幅(FWHMとして測定した)の吸収ピークを有する、トルエンに溶解した亜鉛テトラフェニルポルフィリン。各々の吸収スペクトルからわかるように、これら物質は、10〜30nmのFWHMの狭帯域幅における吸収を有するスペクトルを提供し、それによって、選択的吸収フィルタを提供する。そのような物質の使用によって提供される向上した選択的には、より選択的な目標範囲を阻止することができるため、望ましくない視覚の歪みのより良好な低減につながる。阻止されるべき波長の目標帯域に応じて適切なポルフィリンを選択してもよい。
一部のポルフィリンは水溶性である特定例を有し、例えば、Mg(II)メソ−テトラ(4−スルホナトフェニル)ポルフィンテトラナトリウム塩は約428nmの水吸収波長(absorption wavelength in water)を有する。
ポルフィリン類は光デバイスの使用目的に応じて選択してもよい。例えば、以下のポルフィリン類は約460nmにおいて吸収ピークを提供する。マンガン(III)5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン塩化物テトラキス(メトクロリド)は462nmにおいて吸収ピークを示す。5,10,15,20−テトラキス(4−スルホナトフェニル)−21H,23H−ポルフィンマンガン(III)塩化物は466nmにおいて吸収ピークを示す。2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィンマンガン(III)塩化物は459nmにおいて吸収ピークを示す。したがって、このような物質の使用は460nmの波長の光の透過を阻止するのに有用であってもよい。このような波長はRGCに有害であることが緑内障のインビトロモデルにおいて示されている。
亜鉛5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィンテトラキス(メトクロリド)は、435nmにおいてピール吸収を示す。したがって、このような物質の使用は435nmの波長の光の透過を阻止するのに有用であってもよい。このような波長はRPEに有害であることがAMDのインビトロモデルにおいて示されている。
他のポルフィリン類による他の適用又は波長保護を想定してもよい。5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)は、417nmにおいて第1のピーク吸収及び530nmにおいて第2のピーク吸収を示す。このようなポルフィリンは、これら吸収ピークの両領域の波長を遮断するためのデュアルバンド吸収フィルタとして使用しても、いずれかの吸収ピークの波長を遮断するために使用してもよい。同様に、5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)−21H,23H−ポルフィンは、424nmにおいて第1のピーク吸収及び653nmにおいて第2のピーク吸収を示す。
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)−21H,23H−ポルフィン鉄(III)塩化物は、421nmにおいて吸収ピークを示す。亜鉛5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィンテトラキス(メトクロリド)は423nmにおいて吸収ピークを示す。
5,10,15,20−テトラキス(1−メチル−4−ピリジニオ)ポルフィリンテトラ(p−トルエンスルホナート)は421nmにおいて吸収ピークを示す。5,10,15,20−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−21H,23H−ポルフィンは421nmにおいて吸収ピークを示す。4,4’,4”,4’’’−(ポルフィン−5,10,15,20−テトライル)テトラキス(安息香酸)は411nmにおいて吸収ピークを示す。
更なる実施形態においては、光デバイスの使用目的に応じ、ポルフィリンを含む他の染料又は顔料を選択してもよい。例えば、メラトニン抑制を防止する場合、465nm〜495nmの目標帯域の吸収ピークを有する1種又は複数種の染料又は顔料を選択してもよい。この帯域の波長を有する光はメラトニンの生成を抑制する。メラトニン(N−アセチル−5−メトキシトリプタミン)は松果体腺の主要ホルモンであり、多くの生物学的機能、特に、明間及び暗間によって制御される生理学的機能のタイミングを制御する。したがって、この目標帯域の光の透過を阻止するように構成された選択的フィルタリング手段を有する光デバイスを使用して、特に夜間のメラトニン抑制を防止してもよい。
4−(ジシアノメチレン)2−メチル−6−(4−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピランは468nmにおいて吸収ピークを示す。2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−1−メチルピリジニウムヨージドは、466nmにおいて吸収ピークを示す。
3,3’−ジエチルオキサカルボシアニンヨージドは483nmにおいて吸収ピークを示す。
例えば、赤−緑軸のコントラストを補償及び復元する場合、550nm〜660nmの目標帯域の吸収ピークを有するポルフィリンを含む1種又は複数種の顔料又は染料を、例えば、この目標帯域の光の透過を阻止するために選択してもよい。
例えば、片頭痛の治療又は予防の場合、例えば、590nm〜650nm、及び好ましくは、615〜625nmの目標帯域の吸収ピークを有するポルフィリンを含む1種又は複数種の顔料又は染料を、この目標帯域の光の透過を阻止するために選択してもよい。
例えば、てんかんの治療又はてんかん性発作の予防の場合、選択的干渉フィルタ120は560〜600nmの目標帯域の光の波長の透過を阻止するように構成してもよい。
第4の実施形態の吸収フィルタは、使用者の眼50の方に向かってベース光学基板を通過する、112光学レンズ100の表表面に入射する波長の2つの目標帯域の光の入射光が透過することを阻止する一方で、2つの選択した波長帯域の外側の波長の入射光の透過に対する最小の影響を有するデュアルバンドフィルタとして構成してもよい。図12に示されるように、例えば、例に示されるように435nmの近辺を中心とする第1の波長の帯域内の低いレベルの透過を示し、且つ例えば、約460nm近辺を中心とするより高い帯域において第2の低いレベルの透過を示す一方で、2つの目標帯域間の波長の光の透過を高いレベルの透過率において可能にするデュアルバンドフィルタを設けてもよい。
したがって、上記の物質の吸収帯域幅はそのようなデュアルバンドフィルタを設けることを可能にするほど十分に狭い。それらは、異なる吸収ピークを呈する2つの異なる物質を使用することによって、又は2つ以上の異なる吸収ピークを有する1つの物質によって提供してもよい。更に、前実施形態のいずれの選択的干渉フィルタを実施形態のいずれかの吸収フィルタと組み合わせてデュアルバンドフィルタを提供してもよい。共にマージされた2つの帯域ではなく2つの個々の狭帯域を有する利点は、色覚の歪み及び暗所視の混乱を最小にすることができるとことである。
図5を参照して本発明の第5の実施形態による光デバイスを記載する。図5は、第1の実施形態のベース光学基板と類似する第1の表面511及び第2の表面512を有するベース光学基板510を含む光学レンズ500の概略図である。光学レンズ500は、ベース光学基板510の表表面512に設けられた選択的干渉フィルタ522と、ベース光学基板の裏表面511の吸収フィルタ520と、を更に含む。別の実施形態においては、吸収フィルタ520をベース光学基板510の体積内に含めてもよく、例えば、ベース光学基板510自体の内部に組み込んでもよい。選択的干渉フィルタ521は第1の実施形態の選択的干渉フィルタ120と同じ手法で動作し、吸収フィルタ520は第2の実施形態の吸収フィルタと類似の手法で動作する。選択的干渉フィルタ522及び吸収フィルタ520の両方が同じ目標波長帯域内の光の透過を阻止するように構成してもよい。この実施形態によって提供される利点は、選択的干渉フィルタ522を光学基板に追加し、目標波長の除去因子の全体的な増加を得ることを可能にすることによって、目標波長帯域の保護の強化を提供してもよいことである。この保護の強化は、使用者のニーズ、すなわち、使用者が、例えば、AMD、スタルガルド病、網膜色素変性、ベスト病、緑内障、糖尿病性網膜症又はレーベル視神経症などの疾患に罹患しているか否か、又は使用者がどの程度その病気に罹患しているかによって適合させてもよい。例えば、第1のフィルタは通常の予防的使用のための保護のレベルを提供してもよい一方で、第2のフィルタの追加は、その保護のレベルを、病気に罹患している患者のための治療レベルに増加してもよい。
別の実施形態においては、光学基板に2つの吸収フィルタを設けてもよい。吸収フィルタの少なくとも1つを光学基板の表面に追加し、光学基板の他の表面上に又は光学基板内の層として設けられる吸収フィルタとして同じ目標波長帯域の保護の強化を提供してもよい。更なる実施形態においては、吸収フィルタの1つを、光学基板の他の表面上に又は光学基板内の層として設けられる吸収フィルタとして光学基板の表面に追加し、異なる目標波長帯域の保護を提供してもよい。例えば、緑内障、糖尿病性網膜症又はレーベル視神経症に有害な光に対する目標帯域の保護を1つの吸収フィルタによって提供してもよく、AMD、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病に有害な光に対する更なる目標帯域の追加の保護を別の吸収フィルタによって提供してもよい。別法として、異なる目標帯域を有するフィルタを使用して色平衡化効果の実現を可能にしてもよい。
干渉フィルタの角感度を最小化するために、及び/又は光学基板の特定領域における色の歪み及び光強度の減衰を大幅に低減するために、本発明の実施形態による光デバイスの光学基板の特定の干渉フィルタリングゾーン(すなわち、選択的干渉フィルタが設けられた光学基板のゾーン)を画定することができる。これは、選択的干渉フィルタが眼科用レンズ、コンタクトレンズ又はIOLなどの光学レンズに適用される場合特に重要である。本発明の文脈においては、「眼科用レンズ」とは、矯正及び非矯正レンズ、並びにまた、眼の前方に着用されることを意図したマスク及び他の視覚デバイスを意味する。眼科用レンズは、特定の機能、例えば、太陽光反射、反射防止、汚れ防止、研磨防止等を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、例えば、光学基板の中心から光学基板の周縁部までの同心円ゾーンの形態の単焦点眼科用レンズの場合、光学基板に複数のフィルタリングゾーンを設けてもよい。更に、除去率はゾーン毎に異なってもよい。
図6A及び図6Bを参照し、本発明の第6の実施形態による光デバイスについて記載する。図6Aは、第1の表面611及び第2の表面612を有するベース光学基板610を含む光学レンズ600の概略図である。光学レンズの特定実施形態においては、第1の表面611は、使用時、使用者の眼50の近位に配置される凹状裏表面であり、第2の表面612は、使用時、使用者の眼50の遠位に配置される凸状表表面である。表表面612は、数nのフィルタリングゾーン612−1…612−n(この実施形態においてはn=4)を有する。各フィルタリングゾーンには各々選択的干渉フィルタ620−1…620−nが設けられている。各選択的干渉フィルタ620−1…620−nは、光学レンズの表表面612の、各々のゾーン612−1…612−n内に入射する目標波長帯域の光がベース光学基板610を通過して使用者の眼50の方に向かって透過することを選択的に阻止する一方で、目標波長帯域の外側の波長の入射光の透過にほとんど又は全く影響しない帯域消去フィルタとして動作する。入射光が角度のコーンによって画定される、各々の選択した角度範囲内の各々のフィルタリングゾーン612_1−612_nに入射する場合、各選択的干渉フィルタ620−1…620−nは、選択した目標波長の透過を阻止するように構成されている。更に、各選択的干渉フィルタ620−1…620−nは、各々の除去率において目標波長帯域の透過を阻止するように構成されている。光デバイスは、選択的干渉フィルタ620−1…620−n上に配置され、機械的及び環境的保護を提供する保護フィルム(不図示)を更に含んでもよい。保護フィルム630には、また、可視スペクトル全体又は可視スペクトルの選択した帯域内の入射光の反射を防止するための反射防止コーティングが設けられてもよい。単焦点眼科用レンズに特に適応させたこの実施形態においては、円の形態の中心フィルタリングゾーン612_1が設けられる一方で、図6Bに示されるように、中心ゾーン612_1を取り囲む周囲フィルタリングゾーン612_2〜612_4が同心環状輪として設けられる。
図6Bの例では、選択的干渉フィルタ620−1…620−nのそれぞれは、各々の選択入射角範囲が、選択的干渉フィルタ620−1…620−nの干渉格子の干渉縞に対して実質的に垂直な入射角を中心とするように構成されている。各々の周囲選択的干渉フィルタ620−2…620−nの干渉縞は、中心ゾーン612_1に対する各々の周辺ゾーン612_2、612_3、612,4の位置に基づき中心選択的干渉フィルタ620_1の干渉格子の干渉縞に対して傾斜する。すなわち、選択的干渉フィルタ620_1〜620_4の干渉縞の傾斜角は、図6Bに示されるように、光学基板の中心ゾーンから周辺部ゾーンに向かって増加する。これは、各選択的干渉フィルタ612_1〜612_4を、異なる入射角の範囲の目標波長帯域において動作するように構成してもよいことを意味する。
中心フィルタリングゾーン612_1のために提供される選択的干渉フィルタ620_1は、他の選択的干渉フィルタ620_2〜620_4の除去率に対してより高い除去率を有するように構成してもよい。他の選択的干渉フィルタ620_2〜620_4の除去率は、図6Cに示されるように、除去率が中心ゾーンから周辺部ゾーンまで減少するように構成されうる。光学基板の中心から周縁部までのフィルタリング勾配(filtering gradient)が、したがって、提供されうる。
上述のように複数のフィルタリングゾーンを有する光学基板を設計すると図6Cに示されるように帯域消去フィルタの角感度が最小になる。
光学基板の各フィルタリングゾーンは、少なくとも1つの視線と、関連する入射角のコーンとに優先的に関連付けられる。特に、レンズの空間的中心ゾーンは中心視(使用者が無限にまっすぐ(infinity straight ahead)を見ているときの視線)において使用者の主要注視方向に全般的に対応する。そのような構成においては、図7Aに示されるように、網膜の中心部分に達する入射光の入射角は0°に近い。眼がCROを中心に回転すると、視線は主要注視方向から離れ、図7B又は図7Cに例証的な目的で示されるように入射角は増加する。
したがって、光学レンズの複数のフィルタリングゾーンをそれに応じて構成してもよい。各フィルタリングゾーンは光学基板の表表面(使用者の遠位表面)上の入射光の各々の入射角のコーンに関連付けられ、更には、使用者の1つ又は複数の視線に関連付けられる。図6Bに示される例の各フィルタリングゾーンにおいては、干渉フリンジの傾斜角は主要入射角が干渉格子に対する法線角度を含むように計算される。この例の各フィルタリングゾーンにおいては、除去される目標波長帯域は同じままである。光学基板上の各々のフィルタリングゾーンの偏心率と共に各フィルタリングゾーンの除去率を低下させることも色の歪みの減衰に寄与する。
図6A及び図6Bに示される特定の例では、光学レンズの表面に4つのゾーンが設けられているが、本発明の範囲から逸脱することなく、表面に任意の個数のゾーンが設けられてもよいことは理解されよう。
例えば、実施形態は様々な種類のレンズ、例えば、多焦点レンズに適用されうる。多焦点レンズは配置及び制御されうる異なる屈折力を有する少なくとも2つの光学ゾーン、すなわち、遠距離の物体を見るための遠見視力部及び近距離の物体を見るための近見視力部を有する。累進多焦点レンズでは、近用部と遠用部は、眼が1つのゾーンから他方のゾーンに移動するときに眼が追従する経路に相当する累進帯によって連結され、眼が遠見視力から近見視力に緩やかに移行することを可能にし、それによって、着用者の視覚快適性を提供する。近見視力部及び遠見視力部はそれぞれ基準点と関連付けることができる。遠見視力基準点は、主視線の、レンズとの交点を全般的に画定する一方で、近見視力基準点は、レンズの屈折力が近方視に必要な屈折力に一致する累進の主子午線の点を全般的に画定する。したがって、図8に示される本発明の特定実施形態においては、第1のフィルタリングゾーン722_1、すなわち、選択的フィルタが設けられている光学基板の第1のゾーンを眼科用レンズの遠見視力部と関連付けてもよく、第2のフィルタリングゾーン722_2を近見視力部と関連付けてもよい。第1のフィルタリングゾーンは、好ましくは、円形又は楕円形であり、遠見視力基準点FVの周囲のゾーンを実質的にカバーする。第2のフィルタリングゾーン722_2は、好ましくは、円形又は楕円形であり、近見視力基準点NVの周囲のゾーンをカバーする。加えて、累進帯に合致する更なるゾーン722_3に、本発明の実施形態のいずれかによる選択的フィルタを設けてもよい。
累進矯正用(progressive corrective)眼科用レンズの場合、遠見視力基準点をカバーする中心ゾーンの直径又は最大寸法は、好ましくは、5〜35mm、特に、10〜25mm、更により好ましくは、約20mmを含む。
近見視力基準点をカバーする第2のフィルタリングゾーンは遠見視力基準点に対応するものよりも全般的に小さい。近見視力基準点をカバーする第2のフィルタリングゾーンの直径又は最大寸法は、有利には、5〜15mm、好ましくは、7〜13mmを含み、特に、約10mmである。これら2つのゾーンを連結する帯の幅は、有利には、3〜7mm、好ましくは、4〜6mmを含み、特に、約5mmである。本発明の特定実施形態においては、第1のゾーンと第2のゾーンとを連結する帯は、任意選択で、第1のフィルタリングゾーン又は第2のフィルタリングゾーンのいずれか又は両方の選択的フィルタと同じ目標帯域の透過の阻止を示す選択的フィルタを有しうる。
本発明の更なる実施形態においては、コンタクトレンズに1つ又は複数のフィルタリングゾーンを設けてもよい。コンタクトレンズを含む光学基板には、本発明の実施形態による1つ又は複数の干渉選択的フィルタが設けられている。レンズの幾何学的中心に位置する光学基板の中心円形ゾーン(central circular zone)は、1つ又は2つの同心環において囲まれた、0.3〜1mmの直径を有する中心円形領域を含む。約0.1mm〜1.25mmの幅を有する各ゾーンには上述のように各々のフィルタリング手段を設けてもよい。
光学レンズの1つ又は複数の選択的フィルタの構成を特定の使用者又は本発明の特定実施形態による利用に基づき決定するための方法をここで記載する。
最初のステップにおいて、第1セットのパラメータは、使用者の少なくとも1つの視線、使用者の眼(角膜頂点又は回転中心(CRO)などの眼の基準点から)と、使用者の近位に位置する裏表面上などの、光学レンズの光学基板上の画定点(defined point)との間の距離を画定する。網膜又は網膜の一部が保護されるべき利用の場合、使用者の眼の窩を中心とした網膜部位のサイズ及び/又は使用者の瞳孔サイズも考慮される。例えば、図9Aは、眼のCROから光学レンズ800の裏表面上の画定点までの距離q’、瞳孔PとCROとの間の距離p’、及び瞳孔のサイズを示すPSを含む、考慮に入れられうるパラメータのいくつかを示す。
図1Eに関して前に記載したように、光学レンズのパラメータは、(レンズ厚さ、中心プリズムを含む)レンズの幾何学的形状、レンズの表表面及び裏表面を画定する表面方程式、及び光学レンズの表表面に入射する光の入射角と光学レンズの裏表面の眼からの視線との間の関係を考慮に入れることを可能にするための光学基板の屈折率nなども考慮に入れてもよい。
眼科用レンズの場合、第1セットのパラメータは、メガネ着用パラメータ(spectacle wearing parameters)を含んでもよい。そのような着用パラメータは、眼とレンズの距離、二焦点傾斜(pantoscopic tilt)及びラップ(wrap)を含む。
概して、眼科用レンズ距離は、光学基板の裏表面の画定点と、眼の回転中心(CRO)又は眼の角膜頂点との間の距離と定義してもよい。レンズの二焦点傾斜は、着用者が主要注視眼位にあるときの、垂直線と、フレーム内に取り付けられたレンズの垂直縁部を通る線との間の角度と定義される。ラップは、水平線と、フレーム内に取り付けられたレンズの水平縁部を通る線との間の角度と定義する。概して、二焦点角度(pantoscopic angle)は8°であってもよく、ラップ角度は7°であってもよく、角膜−レンズ距離は12mmである。
第1セットのパラメータに基づき、各フィルタリングゾーンに対して入射角コーンが決定される。各フィルタリングゾーンは、1つの入射角のみを考慮し、限られた平行化光源をモデル化することにより設計する代わりに、これら全ての入射角を考慮し、(平行化光源(collimated lighting source)をモデル化することにより)数値的に設計される。
入射角の説明的例示的結果を、Zemaxモデルを使用し、眼の特徴をモデル化して得た。例えば、図9Cにおいては、眼科用レンズは0Dに等しい屈折力を有する単焦点レンズであり、n=1.591の屈折率を有する。二焦点角度は0°、ラップ角度は0°、角膜−レンズ距離は12mm(p’=13mm、q’=25mm)、瞳孔直径は6mmであり、主視線は主要注視方向に一致する。すなわち、(α,β)=(0°,0°)である。この場合、垂直面XYにおける10mm直径の窩を中心とする網膜ゾーンの保護を選択することによって、この平面における入射角がdα’1=−18°及びdα’2=+18°により限定されることが決定される。これは、周辺入射角i'1=−15.9°及びi'2=+15.9°に相当し、図9Cに示されるように、瞳孔の端を通る周辺光線を考慮することにより、光学レンズの基準点(Y=0mm)を中心とする16mm直径の円に相当する。
保護されるべき網膜のゾーンが4mmである場合、垂直面における入射角はdα’1=−7°及びdα’2=+7°により限定される。これは、周辺入射角i'1=−6.1°及びi'2=+6.1°に相当し、光学レンズの基準点(Y=0mm)を中心とする10.5mm直径の円に相当する。保護されるべき網膜のゾーンが4mmであり、且つ主視線が(α,β)=(20°,0°)である場合、着用者が自身の眼を20°下に回転させても入射角はなおdα’1=−7°及びdα’2=+7°により限定されるが、周辺入射角i'1=+9.7°及びi'2=+21.5°に相当し、光学レンズ上のY=−15.5mmを起点とするY=−4mmまでのレンズ上のゾーンに相当することを意味する。前述のように、入射角は、レンズの幾何学的形状、特にその光学屈折率(球面度数、乱視度数、乱視軸、加入度数)などの光学基板のいくつかのパラメータに依存する。使用者が眼の劣化に罹患しているかどうか、又は眼の特定の劣化から保護されるべきであるかどうかなどの使用者の生理学的パラメータも考慮に入れてよい。例えば、AMD、スタルガルド病、網膜色素変性、ベスト病、糖尿病性網膜症、レーベル視神経症又は緑内障に罹患している使用者のための選択的フィルタは、保護されるべき網膜のゾーンのサイズを考慮に入れた選択入射角範囲を有するように構成される。
方法の別のステップにおいては、透過が阻止されるべきである光の1つ又は複数の目標波長帯域を決定するために、阻止されるべき波長範囲を特徴付ける第2セットのパラメータが提供される。
例えば、目的の用途が眼の網膜を光毒性の光から保護するためである場合、1つ又は複数の選択的フィルタは、430nm〜465nmの範囲内の波長を中心とする、10nm〜70nm、好ましくは、10nm〜60nmの帯域幅範囲の波長の光デバイスの表表面に入射する光の透過を阻止するように構成してもよい。
使用者が緑内障、糖尿病性網膜症又はレーベル視神経症などの疾患に罹患している場合、1つ又は複数の選択的フィルタは、保護の強化を提供するために、及びこれら特定の疾患の進行を遅らせるために、約460nmの波長を中心とする、10〜70nm、好ましくは15〜25nmの帯域幅を有する目標帯域の入射光の透過を阻止するように構成してもよい。
使用者がAMD、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病などの疾患に罹患している場合、1つ又は複数の選択的フィルタは、保護の強化を提供するために及びこの特定の疾患の進行を遅らせるために、約435nmの波長を中心とする、10〜70nm、好ましくは、15〜25nmの帯域幅を有する目標帯域の入射光の透過を阻止するように構成してもよい。
例えば、使用者が不眠症、時差ぼけ、DSPS、ASPS、又は交代勤務等による生物リズムの変化などの睡眠関連障害に罹患している場合、1つ又は複数の選択的フィルタは、例えば、メラトニン抑制を防止するために、480nmの波長を中心とする、465nm〜495nmの目標帯域の光の波長の透過を阻止するように構成してもよい。
色覚障害に罹患している使用者の赤−緑軸のコントラストを補償及び復元する場合、1つ又は複数の選択的フィルタは、例えば、550nm〜660nmの目標帯域の光の波長の透過を阻止するように構成してもよい。
片頭痛の治療又は予防の場合、1つ又は複数の選択的フィルタは、590nm〜650nmの目標帯域、例えば、及び好ましくは、615〜625nmの光の波長の透過を阻止するように構成してもよい。
例えば、てんかんの治療又はてんかん性発作の予防の場合、1つ又は複数の選択的フィルタは、560〜600nmの目標帯域の光の波長の透過を阻止するように構成してもよい。
選択的フィルタは、目標波長帯域の阻止をオン若しくはオフに切り替えることができるように、又は除去因子を時刻若しくは光への曝露によって変更することができるように切り替え可能となるよう構成してもよい。
目標波長帯域によっては、上述のような選択的干渉フィルタをそれに応じて構成しても、上に記載した吸収材料の適切な選択を行ってもよい。
目標波長帯域における選択的フィルタの除去率は想定される用途及び/又は必要な保護のレベルに従って構成してもよい。
例えば、眼の疾患に罹患していない使用者の通常の予防的利用には、例えば、30%〜50%の範囲内の、目標波長帯域の比較的低い除去率を構成してもよい。緑内障、糖尿病性網膜症又はレーベル視神経症などの眼の疾患に罹患している使用者の場合、除去のレベルを、例えば、80%〜100%の範囲内のレベルに増加してもよい。
除去率は、選択的フィルタの吸収層又は干渉層の数を増加することによって、又は更なる選択的フィルタを、例えば、光学基板の片面又は両面に追加することによって調整してもよい。例えば、通常の予防的使用による標準除去率は、未完成のレンズの形態の光学基板一式において提供することができ、その後、強化された除去のレベルが必要な場合は、構成段階時に、未完成のレンズから、追加の選択的フィルタ(吸収又は干渉)を光学レンズの製造中に光学基板の表面に追加することができる。
更に、目標波長帯域の外側の入射光の透過率は、必要とされる用途に従って、例えば、日光からの保護が必要か否かにより構成することができる。日光からの保護の場合、例えば、NF EN 1836+A1_2007E又はISO_DIS 12312−1Eなどの国際規格によって定められたクラス0〜3などの、必要とされる日光からの保護のレベルによって、380nm〜780nmの全可視スペクトル全体における透過率は8%〜100%の範囲内とされうる。少なくとも5%の光毒性の目標波長帯域内の波長において、追加のフィルタリング(干渉及び/又は吸収)が構成される。表1は、ISO_DIS 12312−1Eに記載された種々のフィルタ分類による、日光からの保護において使用されるサングレアフィルタのフィルタ特性についての概要を示す。
例えば、第1の選択波長範囲の光毒性の光に対する通常の予防的使用のための特定構成の例は以下の通りである。選択的フィルタ(干渉及び/又は吸収)は、20nm〜60nmの帯域幅を有する435nm、460nm又は445nmを中心とする目標帯域の光を30%〜50%の範囲内の除去率によって阻止するように構成してもよい。
治療的使用においては、選択的フィルタ(干渉及び/又は吸収)は、435nm、460nm又は445nmを中心とする、20nm〜60nmの帯域幅を有する目標帯域の光を80%〜100%の範囲内の除去率によって阻止するように構成してもよい。
日光及び予防的使用においては、光デバイスは、全可視スペクトル全体における可視光線の透過率を8%〜60%、すなわち、92%〜40%の阻止率において可能にするように構成してもよい。全可視スペクトル全体における可視光線の阻止率に加え、選択的フィルタ(干渉及び/又は吸収)は、435nm、460nm又は445nmを中心とする、25nm〜60nm、好ましくは、25nm〜35nmの帯域幅を有する目標帯域の光を少なくとも5%の追加阻止率において阻止するように構成してもよい。
本発明の実施形態のいずれかによる光学レンズを製造するためのレンズ製造システムは、光学器製作者などのレンズオーダー側のコンピュータ端末を含む、又はレンズオーダー用インターネットサイトに連結されるレンズオーダーシステムと、データ通信リンクによって連結された2つの端末を有するレンズ製造側の第2の端末とを含んでもよい。処方値及びレンズの設計及び製造に必要な他の情報などの光学レンズのオーダーに関連する情報、特に、上述のような選択的フィルタリング手段の構成に関する情報がレンズオーダー側からレンズ製造側に送信されうる。例えば、阻止されるべき光のタイプ及び必要な保護の程度等。
光学レンズの製造には、完成した曲面及び未完成の表面を有する未完成のレンズを用意するステップを含んでもよい。完成した曲面は凹状(眼科用レンズの場合は裏表面)であっても凸状(眼科用レンズの場合は表表面)であってもよい。通常、未完成の表面は凹状裏表面である。未完成のレンズには、未完成のレンズの光学基板内又は未完成のレンズの完成表面上のいずれかに1つの選択的フィルタが元から設けられていてもよい。必要であれば、上述のように、保護を強化するために、又は別の機能を提供するために、更なる選択的フィルタを構成し、未完成又は完成表面に追加してもよい。好適な実施形態においては、未完成の表面は、選択的干渉フィルタを光学レンズに追加する前に表面仕上げされる。他の場合においては、未完成のレンズには予め選択的フィルタを設けなくてもよく、製造プロセスに、選択的フィルタを構成し、完成したレンズを提供するための表面仕上げの前に、構成された選択的フィルタを未完成の基板内又は上に組み込むステップを更に含んでもよい。製造プロセスは、また、使用者の矯正要求に従い未完成の表面に処方薬を追加するステップを含んでもよい。レンズの製造プロセスについては、例えば、米国特許第6019470号明細書又は米国特許第8002405号明細書に記載されている。
光学器(optical)の表面上に選択的フィルタが設けられた1つ又は複数のフィルタリングゾーンの位置の決定は、プリズム屈折力の調節を容易にするためのプリズム基準点(BP)、レンズを眼の前方に位置決めするための、及びレンズをメガネフレームに矯正挿入(correction insertion)するためのセンタリング用十字(centering crosses)(+)、遠用部測定基準点(BF)、及び近用部測定基準点(BN)を含む、レンズの表面上に微細輪郭加工として提供された標準的な製造用マーキング(manufacturing markings)を基準に決定してもよい。
完成表面が眼科用レンズの凸状表表面である場合、完成表面は、球形の、回転的に対称な球形の表面であっても、累進表面であっても、トーリック表面であっても、非トーリック表面であっても、複合表面であってもよい。
いくつかの特定実施形態は眼科用レンズの文脈で上に記載されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明を、窓、自動車用及び航空機用ウインドシールド、フィルム、眼用器械、コンピュータモニタ、テレビスクリーン、マルチメディアディスプレイスクリーン、照明看板、光投射器、及び光源、他の眼科用デバイス等として使用される他の光学基板に適用してもよいことは理解されよう。眼科用デバイスは、メガネ、サングラス、ゴーグル、コンタクトレンズ、IOLの及び眼科用レンズを含んでもよい。
使用者が患っている視覚関連の不快を防止するために記載した本発明の実施形態のいずれかを使用してもよい。第1の選択波長範囲の光毒性の光の、使用者の眼への透過を阻止するために、本発明の実施形態のいずれかによる光学基板を、窓、自動車用及び航空機用ウインドシールド、フィルム、眼用器械、コンピュータモニタ、テレビスクリーン、マルチメディアディスプレイスクリーン、照明看板、光投射器及び光源、他の眼科用デバイス等に使用してもよい。
本発明の実施形態による光学基板を含む光デバイスを、特に、使用者の視覚関連の不快の防止において、又は疾患の進行を遅らせるための保護を提供するための治療において使用してもよい。
本発明の特定実施形態は、使用者の眼の少なくとも一部の、第1の選択波長範囲内の光毒性の光からの保護において使用してもよい。例えば、光デバイスは、特に、緑内障、糖尿病性網膜症、レーバー遺伝性視神経症、加齢黄斑変性(AMD)、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病などの酸化ストレス型の変性メカニズムに起因する眼の劣化に罹患している使用者の眼の少なくとも一部の、光毒性の光からの保護において使用してもよい。例えば、本発明の任意の実施形態による光デバイスは、緑内障、糖尿病性網膜症又はレーバー遺伝性視神経症に罹患している使用者の眼の少なくとも一部の、光毒性の光からの保護において使用してもよい。第1の選択波長範囲は実質的に460nmの波長を中心とする。
本発明の実施形態による光デバイスを、単独で又は前の例と組み合わせて、加齢黄斑変性(AMD)、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病に罹患している使用者の眼の少なくとも一部の、光毒性の光からの保護において使用してもよい。第1の選択波長範囲は実質的に435nmの波長を中心とする。
したがって、保護の強化を提供することによって疾患の進行を遅らせることができる。
いくつかの実施形態では、本発明の実施形態による光デバイスは、時間生物学的光に富む照明又はスクリーンに起因する睡眠障害及び概日リズムの混乱の回避において使用してもよい。
他の実施形態においては、第1の選択波長範囲が465〜495nmである場合、本発明の実施形態による光デバイスは、光誘発性メラトニン抑制の防止において使用してもよい。この手法において、暗闇療法(dark therapy)としばしば称される、睡眠前における特定波長の光への曝露の低減を含む治療を、不眠症、睡眠遮断、時差ぼけ、夜間勤務に起因する睡眠への好ましくない影響、又は他の睡眠関連の影響を患う患者に対して提供してもよい。DSPS又はASPS(睡眠相後退症候群又は睡眠相前進症候群)、又は他の睡眠関連障害の場合において概日リズムをリセットするために、この手法で構成された光デバイスを使用する夜間療法(night therapy)を光療法と組み合わせて使用してもよい。
更なる実施形態においては、第1の選択波長範囲が実質的に580nmの波長、例えば、560〜600nmの目標波長帯域を中心とする場合、本発明の実施形態による光デバイスをてんかんの治療又はてんかん性発作の予防において使用してもよい。
また更なる実施形態においては、第1の選択波長範囲が実質的に575nmの波長、例えば、550〜600nmの目標波長帯域を中心とする場合、本発明の実施形態による光デバイスを赤−緑軸のコントラストを補償及び復元するために使用してもよい。
また更なる実施形態においては、第1の選択波長範囲が590〜650nm、好ましくは615〜625nmの目標波長帯域である場合、本発明の実施形態による光デバイスを片頭痛の治療又は予防において使用してもよい。
疾患の進行を遅らせるために、使用者に、眼科用レンズ、コンタクトレンズ、IOL、ゴーグル(例えば、暗視ゴーグル)、コンピュータスクリーン又は窓用の保護用フィルタ等を提供してもよい。
本明細書においては特定実施形態を参照して本発明を上述したが、本発明は特定実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にある変更については当業者には明らかであろう。
例えば、本発明は記載した目標波長帯域に限定されず、種々の用途に対する更なる例を想定してもよい。
当業者には、単に例として提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ決定される前述の例証的な実施形態を参照すると更なる改良及び変形が理解されよう。特に、様々な実施形態の様々な特徴を適宜交換してもよい。
特許請求の範囲において、「を含む(comprising)」という語は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。相互に異なる従属請求項において異なる特徴が列挙されるという単なる事実はこれら特徴の組み合わせを有利に使用しえないことを示すものではない。特許請求の範囲内のいずれの参照符号も本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。

Claims (19)

  1. 使用者のための光学基板を含む光デバイスの干渉フィルタリング手段の構成を決定する方法であって、
    前記使用者の少なくとも1つの主視線、前記光学基板と前記使用者の眼との間の前記距離、前記使用者の前記眼の網膜部位のサイズ及び/又は瞳孔サイズを表す第1セットのパラメータを用意するステップと、
    前記第1セットのパラメータに基づき第1の選択入射角範囲を決定するステップと、
    前記使用者のために、少なくとも部分的に阻止されるべき波長の範囲を特徴付ける第2セットのパラメータを用意するステップと、
    少なくとも部分的に阻止されるべき入射光の第1の選択波長範囲を前記第2セットのパラメータに基づき決定するステップと、
    第1の選択的干渉フィルタリング手段及び前記光学基板の表面の第1のゾーンを前記第1の選択入射角範囲及び前記第1の選択波長範囲に基づき構成するステップであって、前記第1の選択的干渉フィルタリング手段が、前記第1の選択入射角範囲内の前記第1のゾーンに入射する前記入射光の第1の選択波長範囲の透過を第1の除去率において阻止するように動作可能であるように構成するステップと、
    を含む、方法。
  2. 前記第1セットのパラメータ及び/又は前記第2セットのパラメータが、前記使用者が前記眼の劣化に罹患している、又は前記眼の劣化から保護されるべきであるかどうかなどの前記使用者の生理学的パラメータを更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記眼の前記劣化が、特に、緑内障、糖尿病性網膜症、レーバー遺伝性視神経症、加齢黄斑変性(AMD)、スタルガルド病、網膜色素変性又はベスト病などの酸化ストレス型の変性メカニズムに起因する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記使用者の少なくとも1つの更なる主視線、前記光学基板と前記使用者の前記眼との間の前記距離、前記使用者の前記眼の窩を中心とした網膜部位のサイズ及び/又は前記使用者の前記眼の前記瞳孔サイズを画定する少なくとも1つの更なる第1セットのパラメータを用意するステップと、
    前記又は各更なる第1セットのパラメータに対し、各々の選択入射角範囲を前記各々の更なる第1セットのパラメータに基づき決定するステップと、
    前記使用者のために、少なくとも部分的に阻止されるべき少なくとも1つの更なる波長範囲を特徴付ける少なくとも1つの更なる第2セットのパラメータを用意するステップと、
    前記又は各更なる第2セットのパラメータに対し、少なくとも部分的に阻止されるべき入射光の各々の選択波長範囲を前記各々の更なる第2セットのパラメータに基づき決定するステップと、
    前記又は各更なる第1セットのパラメータ及び更なる第2セットのパラメータに対し、
    各々の更なる選択的干渉フィルタリング手段及び前記光学基板の前記表面の各々の更なるゾーンを前記各々の選択入射角範囲及び前記各々の選択波長範囲に基づき構成するステップであって、前記各々の更なる選択的干渉フィルタリング手段が、前記各々の選択入射角範囲内において前記各々の更なるゾーンに入射する入射光の前記各々の選択波長範囲の透過を各々の更なる除去率において阻止するように動作可能であるように構成するステップと、
    を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記又は各それぞれの選択入射角範囲が前記第1の選択入射角範囲と異なる、請求項4に記載の方法。
  6. 前記又は各それぞれの選択的波長範囲が前記第1の選択波長範囲と実質的に同じである、請求項4又は5に記載の方法。
  7. 前記第1の除去率が、10%〜100%、好ましくは、30%〜100%の範囲内である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 各更なる除去率が前記第1の除去率と異なる、請求項7に記載の方法。
  9. 前記光デバイスが光学レンズであり、前記方法が、前記第1のゾーンを着用者の前記光学レンズの遠見視力部に対応するように、更なるゾーンを着用者の前記光学レンズの近見視力部に対応するように構成するステップを更に含む、請求項4〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 入射光の透過を反射、屈折及び回折の少なくとも1つによって阻止するように、前記又は各選択的干渉フィルタリング手段を構成するステップを更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記第1の選択範囲が、430nm〜465nmの範囲内の波長を中心とする、10nm〜70nm、好ましくは、10nm〜60nmの範囲内の帯域幅を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記第1の選択波長範囲が、実質的に435nm、445nm又は460nmの波長を中心とする、20nm〜60nm、好ましくは、20nm〜25nmの範囲内の帯域幅を有し、且つ前記第1の除去率が、10〜50%、好ましくは、30〜50%の範囲内である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記第1の選択波長範囲が、実質的に435nm、445nm又は460nmの波長を中心とする、15nm〜30nm、好ましくは、15nm〜25nmの範囲内の帯域幅を有し、且つ前記第1の除去率が60〜100%、好ましくは、80〜100%の範囲内である、請求項11に記載の方法。
  14. 前記光デバイスが、前記全可視スペクトル内における可視光線の透過を40%〜92%の範囲内の阻止率において阻止するように構成されており、前記第1の選択波長範囲が、実質的に435nm、445nm又は460nmの波長を中心とする、25nm〜60nm、好ましくは、25nm〜35nmの範囲内の帯域幅を有し、且つ前記第1の除去率が前記第1の選択波長範囲の少なくとも5%の追加阻止を提供するように構成される、請求項11に記載の方法。
  15. 前記第1の選択波長範囲が465nm〜495nmのものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記第1の選択波長範囲が550nm〜660nmのものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記第1の選択波長範囲が、590nm〜650nm、好ましくは、615nm〜625nmのものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記第1の選択波長範囲が560nm〜600nmのものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  19. 光学レンズを製造する方法であって、
    未完成の表面と反対側の表面とを有する半完成の光学レンズであって、前記未完成の表面が凸面及び凹面のうちの1つであり、前記反対側の表面が凸面及び凹面のうちのもう一方である半完成の光学レンズを用意するステップと、
    使用者の前記光学レンズのための選択的干渉フィルタリング手段の構成を決定するステップと、
    前記未完成の表面を表面仕上げするステップと、
    前記表面のうち1つを前記選択的干渉フィルタリング手段に設けるステップと、
    を含み、
    前記選択的干渉フィルタリング手段の構成を決定する前記ステップが請求項1〜17のいずれか一項に記載の選択的干渉フィルタリング手段の構成を決定する方法を含む、
    方法。
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