JP2015509509A - 慢性閉塞性疾患を治療するための医薬品組成物の製造のための、ルパタジンの使用 - Google Patents

慢性閉塞性疾患を治療するための医薬品組成物の製造のための、ルパタジンの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫または慢性閉塞性肺疾患の予防又は治療用の医薬組成物の製造におけるルパタジンの使用を開示する。新たなルパタジンの医薬用途は、慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫もしくは慢性閉塞性肺疾患の治療において、治療効果が顕著であり、毒性的副作用が少なく、使用が安全である。

Description

本発明はルパタジンの、慢性閉塞性疾患を治療するための医薬品組成物の製造のための使用に関するものである。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は気流制限を特徴とする病気である。これは、通常進行性の経過を辿り、完全に変換されることはできず、主に有害顆粒物または有害気体に対する肺の異常炎症応答と相関しており、呼吸気流低下及び肺の排出能力が緩慢になうという特徴を伴う。COPDの臨床的特徴としては喘息、咳及び喀痰を含み、且つ慢性気道閉塞と肺の過膨張を伴う。発病の間、慢性気管支炎と肺気腫を同時に発症する。COPDにおける気道リモデリングにより、気道の機能性の変更をもたらし、持続的不可逆的気道狭窄及び粘液分泌過多を含む。喫煙がCOPDをきたす主因であり、COPDの発病率と死亡率は比較的高い。現在の方法によりそれを治療する効果は限定的である。WHOの統計によると、COPDは1990年に世界中で第6位の致死疾患であり、2020年に第3位に上昇すると予測されている。
喫煙はCOPDを引き起す第1の要因であり、大多数のCOPD患者は等しく長期的な喫煙経験を持つ。また、年齢はCOPDの発病のもう1つの要因である。COPDはその発作期間が長く、且つ徴候が顕著ではない。気管支炎の急性発作は通常COPDと診断されることはなく、且つ臨床患者は異なる病状を呈する。その結果、一般的に罹病の初期において、正確な診断を下すことが難しく、大多数の患者は明らかな肺機能低下、或はその他の症状例えば呼吸困難、持続的咳・喀痰が出現して初めて治療を求める。そのため、COPD診断は一般的に中等度から重症度の段階に下される。通常COPDは肺気腫と慢性気管支炎を伴うため、更に治療を困難にしている。現在の臨床投薬は多く保存的治療に属し、根本的にそれを解決し、病理改善をすることはできない。
ルパタジンは、CAS番号158876-82-5、分子式C26H26CIN3、分子量415.958であり、タンパク質の結合率98-99%であり、半減期5.9時間である。化学構造式はIに示される通りである。
ルパタジンは、スペインのUriach製薬会社によって研究・生産された新型、効果の強い抗アレルギー薬剤である。それは2003年3月15日にスペインで発売され、季節性と通年性のアレルギー性鼻炎の治療に用いられる薬剤である。商品名はルパフィン(Rupafin)とデュパフィン(Dupafin)、投薬量は10mg、1日1回である。
ルパタジンは、抗ヒスタミンと抗血小板活性化因子(PAF)という2つの機能を持っている。研究は、アレルギーと炎症性疾患が、様々な異なる媒体の生成、放出により生じる多要素の複雑なプロセスであることを示す。ヒスタミンは、アレルギーの初期及びこの種の病気の症状出現時に最も多く見られる炎症性媒体であり、肥満細胞と好塩基球の顆粒中に存在している。アレルゲンに刺激された肥満細胞と好塩基球は、ヒスタミンを生産し放出し、それは、平滑筋収縮、血管拡張、毛細血管透過性亢進及び粘膜腺体の分泌促進などを亢進し、I型の過敏症反応を誘導する。そのうち、クシャミ、鼻かゆみ、涙及び鼻水などの症状は、ヒスタミンH1受容体によってもたらされたものである。一方、PAFは気道の炎症を引き起こすもう1つの重要な媒体である。ヒスタミンと同様に、PAFも気管支収縮及び血管透過性亢進を誘導し、鼻水や鼻充血をきたす。また、PAFは気道の過敏性を増長させ、これは喘息様の症状を誘導する主要因である気管支敏感度を上昇させる。ある研究に示されるように、66%の喘息は鼻炎によって起こり、鼻部の疾患が喘息、慢性閉塞性肺疾患と気管支拡張症など気管疾患の始まりである。最近のPAFの機能的作用についての研究は、PAFは間接的に気道に働き、閉塞及び過敏性の機能更新を引き起こし、ロイコトリエンの放出を引き起こさせると考えられている。通常、PAFはヒスタミンの機能と相互に補完的である。ヒスタミンは、肥満細胞内の顆粒に貯蔵された中から放出される初期的な応答ケミカルメディエーターであり、一方、PAFは、最初から新たに合成されるものである。しかし、現在、臨床的に使用される抗アレルギー薬は、等しく抗ヒスタミン活性を有するのみで、抗PAF作用を持たない。抗ヒスタミンと抗PAFの両方の活性を有する薬剤は、そのうちの片方しか有しない薬剤よりも、明らかにより良い臨床効果を有するであろう。ルパタジンは、現在唯一市販される抗ヒスタミン活性及び抗PAF活性を両方有する抗アレルギー薬でもあり、臨床応用において有望である。
ルパタジンはヒスタミンH1受容体に強力な親和性を有する。ルパタジンを通じ、ヒスタミンを拮抗することにより、モルモット(Guinia pig)の回腸の収縮がインビトロで誘導される。先行技術は、ルパタジンと第1、2世代の抗ヒスタミン薬との抗ヒスタミン活性についての比較実験に証明されるように、ルパタジンは、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、ヒドロキシジン及びジフェンヒドラミンなどより強い抗ヒスタミン活性を有する。そのうち、ルパタジン(IC50=0.0035μm)は、ロラタジン(IC50=0.29μm)より抗ヒスタミン活性が80倍強く、その他の抗ヒスタミン薬剤より100倍以上強い。ルパタジンの抗ヒスタミン活性は、インビトロにおいて、デスロラタジンと同程度である。加えて、インビトロでの実験では、ルパタジンのいくつかの代謝物も抗ヒスタミン活性を有することが示されている。いくつかの特定の代謝物の抗ヒスタミン活性はロラタジンの代謝物であるデスロラタジンに相当する。
先行技術中、ルパタジンの拮抗活性の評価に対する研究は、いくつか種類の動物、例えばマウス、ウサギ、モルモットと犬などのインビトロ及びインビボの動物モデルにおいて行われた。抗PAF拮抗活性により誘導される血小板凝集実験において、血小板を多く含む血漿、ウサギの血清及び犬の全血における、ルパタジンのIC50はそれぞれ2.9、0.2、及び0.29μmである。この実験では、ルパタジンは良好なPAFの拮抗活性を有することが表明された。しかし、ロラタジン、セチリジン、イミダゾール・アダムズ及び・フェキソフェナジンのような、既知の第2世代抗ヒスタミン薬は、ウサギの、血小板を多く含む血漿における抗PAF拮抗作用による血小板凝集実験において、IC50値は各々7142,7200,7200及び7200μmを示し、拮抗PAFの機能は殆ど無いか、或いはごく僅かであるといえる。ヒスタミン又はPAFを犬に皮下投与することにより誘導される水膨れモデルにおいて、ルパタジン(0.3-10mg/kg,経口)は、水膨れを有効に抑制でき、一方、ロラタジンとセチリジンは、PAFに誘導される水膨れのみを抑制することができる。ルパタジンの摂取後4時間で最大効果を示し、その効果は24時間持続し、当該薬剤の効果は持続的であることを示している。ルパタジンはモルモット(Guinia pig)のヒスタミンまたはPAFにより引き起された結膜炎を抑制することができるが、ロラタジンでは、PAFにより生じる結膜炎を抑制することができない。また、ルパタジンを点滴眼薬に用いられる場合、その治療効果はロラタジンの10倍である。
また、ルパタジンは、その他の抗ヒスタミン薬と較べると、非ヒスタミン依存性の薬理活性モデルにおいて、更なる広いスペクトラムの薬理活性を有することが示された。ルパタジンは、肥満細胞の脱顆粒を阻害するとともに、好酸球 (eosinophils)の走化性も阻害する。肥満細胞の脱顆粒はアレルギー反応プロセスの中で、特にその初期段階において重要な働きを発揮しており、一方、好酸球は、アレルギー反応でその後期において重要な応答細胞である。ルパタジンの経口投与は迅速に吸収され、半減期は12時間であり、通常、錠剤投与1時間後に血中濃度が上昇し最高値にまで至り、カプセル投与1.5時間後に血中濃度が最高値に到達する。ルパルタジンは肝臓及び胆嚢の初回通過代謝を受ける。一部の代謝物も抗ヒスタミン作用を有し、それはルパタジンが、秩序立った、長期的効果を有する抗アレルギー作用を有することを可能にする。
ルパタジン臨床試験第II相と第III相は、スペイン、フランス、南アフリカ及びイギリスの10の臨床試験センターにて行われ、試験に参加する患者は2900人を超え、その年齢範囲は12〜82までの季節性または通年性のアレルギー鼻炎を患う患者であった。実験でルパタジンの安全性と有用性が肯定された。ルパタジン用量2.5、5、10及び20mg/日の投与による2週間の、プラセボ群と比較した安全を評価するための実験が行われた。ルパタジンはプラセボ群より患者の症状を更に有効に軽減することができるという結果を得た。そのうち、20mg/日の用量では、症状改善の最高値が得られたが、10mg/日の用量群は総合的な治療効果が最良であった。別の実験として、ルパタジン用量10mg/日と20mg/日において、季節性鼻炎の患者に対して、プラセボ群と比較した安全を評価するための実験では、患者群は10mg組、20mg組及びプラセボ群の3群に分けられ、毎日投薬し、2週間連続された。ルパタジン20mg/日と10mg/日、季節性アレルギー鼻炎患者の鼻部と眼部の症状の改善は偽薬群よりもっと良い結果が示された。そのうち、10mg/日と20mg/日の用量群の間で、顕著な差はない。一方、20mg/日で投与1週間後では、症状を軽減する傾向が見られた。
さらに、ルパタジンはその他の抗ヒスタミン薬と比較すると10mg/日のルパタジンと同じ用量のセチリジンと同程度の効果が示されるが、前者は中枢神経系に副作用が少ない。同用量でルパタジンは、ロラタジンとエバスチンよりも季節性アレルギー鼻炎症状をより緩和することができる。
さらに、無作為・ダブルブラインド・プラセボコントロール・多角的並行投与の研究において、ルパタジン10mg/日又は20mg/日、ロラタジン10mg/日又は偽薬との比較が行われ、季節性アレルギー性鼻炎の患者に対しての連続2週間の治療試験において、ルパタジン10mg/日又は20mg/日は、ロラタジン10mg/日よりさらに良い効果を有し、特にくしゃみと鼻かゆみという症状における改善について、前者は後者より優れているという結果を示した。
もう1つの無作為・ダブルブラインド・プラセボコントロール・多角的並行投与の研究において、250名の季節性アレルギー性鼻炎の患者が毎日ルパタジン10mg、エバスチン10mg又は偽薬を2週間服用した。結果は、ルパタジンはエバスチンよりさらに良い効果を有し、特にくしゃみと涙の出るという症状における改善について、前者は後者よりもっと優れているという結果を示した。
ルパタジンは末梢神経H1受容体に対して高度な選択性を有し、強力な作用を持ち、作用時間が長いが、その中枢神経系H1受容体に対する親和性は殆ど無く、血液脳関門(BBB)の透過性も僅かであるため、鎮静の副作用はない。実験では、個別にマウスとアカゲザル(赤毛猿、Macacamulatta、macaque)にルパタジン1000mg/kgと10mg/kgを投与しても、QTCとQRS期間延長はなく、ラット、モルモット及び犬においても不整脈を生じることはない。また、ルパタジンは体内における主要な代謝物である3-ヒドロキシジン・デスロラタジンも心臓に影響を与えない。その原因を分析すると、ルパタジンは心臓において低濃度しか占めないため、通常それを検出するのが困難である。その結果、ルパタジンを用いられると心臓毒をきたさず、連続服用後の蓄積反応はなく、アルコールに対する作用はなく、安全用量が比較的広く、耐性に優れている。
最新の研究では、ルパタジンは、良好な抗肺線維症作用を有し、ブレオマイシンに誘導される肺線維症を改善することができる。ブレオマイシンに誘発される肺線維症の哺乳動物の死亡率を低下させることができ、線維症群の炎症と肺組織の局所のEMT(上皮間充織変移)の発現を減少させ、コラーゲン沈殿物を軽減し、有効的に肺機能を改善することが発現された。
肺線維症と異なり、COPDは独自の発病原因と発病過程を有する。従って、肺線維症に用いられる薬剤はCOPDの治療において用いることはできない場合もある。喫煙と老化はCOPD発病の主因だと知られているが、非喫煙者及び中高年人でない者も罹患することが有りうる。COPD病因のメカニズムはとても複雑であり、基本的な肺部炎症理論、又はその他の学術理論で代替することはできない。
現在もなお、慢性閉塞性肺疾患に対し、有効な治療方法が欠けている。そのため、当分野には新しい、効果の良い薬剤を開発することが迫られている。慢性閉塞性肺疾患の軽減又は治療に用いられるためである。
本発明が解決しようとする課題は、慢性閉塞性肺疾患に有効な予防又は治療薬剤が不足していることに対し、ルパタジンの新たな用途を提供することである。ルパタジンは、慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫又は慢性閉塞性肺疾患を有効に予防又は治療するための医薬品組成物の製造のために使用されることができる。
本発明は上記のような課題を解決するため、慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫または慢性閉塞性肺疾患の予防或は治療用の医薬品組成物の製造におけるルパタジンの使用が適用される。
本発明において、「慢性閉塞性気管支炎」とは気管支、気管支粘膜及びその周囲組織の慢性的非特異炎症のことである。臨床上は咳、喀痰または喘息を伴い及び反復発作の慢性過程を特徴とするものである。
本発明において、「閉塞性肺気腫」は慢性気管支炎またはその他の原因により次第に引起こされる細気管支の狭窄、終末細気管支の遠端気腔の過度な空気が充満され、それに、気腔壁膨張又は破裂を伴う。臨床上しばしば見られる慢性気管支炎の合併症である。
本発明において、前記「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」は、気流制限を特徴とする病気を指す。臨床症状では呼吸気流減少、肺の排出能力が緩慢し、喘息、咳及と喀痰を含み、且つ慢性気道閉塞と肺の過膨張を伴うことを含む。発病時、慢性気管支炎と閉塞性肺気腫を同時に呈する。
本発明において、前記慢性閉塞性肺疾患はヒトまたは動物のCOPDを指す。
本発明において、前記予防というのは、慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫或はCOPDの可能性となる要因の存在下、慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫或はCOPDの発生を予防するか又は軽減することをいう。
本発明において、前記「治療」とは慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫或はCOPDの程度を低下させ、又は慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫或はCOPDを治癒させ、正常化させ、もしくは慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫或はCOPDの進展を緩和させることをいう。具体的には、ルパタジンは有効に肺機能を改善し、肺部の基本的な生理構造を回復させ、多種な炎症性細胞浸潤及び表現を減少させ、炎症程度及び炎症性細胞浸潤を減少させ、慢性閉塞性肺疾患における生体内の免疫系の均衡を調節する作用が働き、Th1とTh2型の免疫応答のバランスを取り、喘息に対して抑制でき、COPDが逆転でき、肺機能の改善ができ、肺気腫を変換することができる。
本発明において、ルパタジンは、ルパタジンもしくはルパタジンの誘導体であり、薬学的に許容され得る塩、エステル等を含む。
本発明において、前記医薬品組成物は、好ましくは、ルパタジン及び医薬用担体を含有する。
ここで、前記医薬品組成物は、0.1質量%〜99質量%のルパタジン及び0.1%-99%の薬用担体を含み、パーセンテージは、各成分の医薬品組成物総量の質量パーセンテージである。
ここで、ルパタジンは単独又はその他の化合物と一緒に活性成分とすることができる。前記活性成分は、慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫もしくは慢性閉塞性肺疾患の治療機能を有する活性成分を指す。
ここで、前記医薬品組成物は、さらに、ヒスタミン1〜4型受容体拮抗薬及び/又はPAF受容体拮抗薬も含有する。
ここで、前記医薬用担体は、薬学的に許容され得る賦形剤、充填剤、希釈剤を含む。
ここで、前記医薬品組成物の剤形は特別に制限されず、固体、半固体又は液体の形体であってもよく、また、水溶性液剤、非水溶性液剤又は懸濁液であってもよく、錠剤・カプセル剤・顆粒剤・注射剤もしくは輸液製剤等でもあってもよい。前記医薬品組成物は、経口ルートにも用いれられ、静脈、筋肉、皮内又は皮下投与をしてもよい。
本発明のルパタジンを含む医薬品組成物は、治療時の使用量については、患者の年齢と病態によって定められる。一般に、毎日の投与量は約0.0001〜1000mgとし、好ましくは0.01〜500mgで、さらに好ましくは0.1〜200mgである。投与回数は1日1回もしくは数回である。
COPDの予防又は治療において、前記ルパタジンを含む医薬品組成物は単独に使用することもでき、他の薬物と併用することもできる。
特別な指示のない限り、本発明に用いられる試剤と原料は全て市販で入手することができる。
当該分野の公知技術に基づいて、本発明の好ましい実施例を得るために、本発明における最適化された条件を任意に組み合わせることができる。
本発明における優れた効果は以下の通りである:本発明は新たな予防もしくは治療のために、新たにルパタジンの医薬用途を提供することである。慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫もしくは慢性閉塞性肺疾患の治療において、治療効果が顕著であり、毒性が低く、副作用が少なく、使用において安全である。
は実施例1における喫煙によるCOPDマウスの偽手術(sham-operation)群、モデル群、ルパタジン治療群に対する肺胞洗浄液内における各種炎症性細胞数量を示す比較図である。 は実施例1における喫煙によるCOPDマウスの偽手術(sham-operation)群、モデル群、ルパタジン治療群に対する肺胞洗浄液内における各種炎症性細胞因子の含有量の比較図である。 は実施例1における喫煙によるCOPDマウスの偽手術(sham-operation)群、モデル群、ルパタジン治療群に対する肺組織の病理検査の写真である。 は実施例2におけるTLR4不足のマウス肺気腫の偽手術(sham-operation)群、モデル群、ポジティブコントロール組、ルパタジン治療群に対する肺組織の病理検査の写真である。
以下、実施例を通じて本発明の実施形態についてさらに説明するが、本発明は以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
下記の実施例において、すべでの溶液に関与するパーセンテージはいずれも質量体積パーセンテージである。実験結果は平均値±標準誤差(X±SE)で表示される。パラメータもしくは非パラメータ分散分析によって検定される。比較するとp<0.05の場合、顕著な差異を有し、p<0.01と顕著な差異を有するとみなされる。病理学分類資料の統計はχ二乗検定が用いられ、比較するとp<0.05の場合、顕著な差異を有し、p<0.01と顕著な差異を有するとみなされる。実施例に利用されるPBS(リン酸緩衝液)の濃度は0.1Mであり、pH値は7.2である。
実施例1
1.COPD動物モデルの製造
主要試薬及び実験動物:実験に用いられるタバコはThe Kentucky Tobacco Research and Development Center (KTRDC) から購入し、型番号3R4Fである。実験に使用されるマウスはSPF・C57BL/6(雄・6~8週齢・16~18g)で、中国医学科学院動物所から購入した。
COPD動物モデルの製造:C57BL/6のマウスをタバコ箱に入れた。毎回フィルタのないタバコを5本そのマウスに吸わせた。タバコの煙と空気の割合は1:6であり、気体の総流量は150ml/minであった。喫煙の実験は1日4回、毎回30分間、24週間続けて行われた。
2.ルパタジンによるCOPDマウスの治療
主要な試薬:ルパタジンは浙江賜富医薬有限公司で製造された。ルパタジンはフマル酸・ルパタジン(Rupatadine fumarate)の原料である。ルパタジンの含有量は99%以上である。
治療方法:動物モデルは群別に分け、薬を投与する。実験の組分けは表1を示すとおりであった。
3.COPDマウスの肺胞洗浄液における各種炎症性細胞量の検査
マウスの頸部を解剖し、露出した気管に挿管した。PBSの洗浄液の量は0.8mlであり、洗浄回数は3-5回であった。回収した洗浄液は4°C 1500rで10分間にそれを遠心力によって沈殿させた。細胞因子の検査のために、回収した上澄は-20°Cで保存し待機した。
1mlの1%BSAを含むPBSで細胞を再選択して沈殿させ、10μlを採取しその懸濁液をもって細胞計数を行った。血液学アナライザーを用いて分析した。その結果は図1に示され、具体的なデータは表2に示されたとおりである。図1に見られるように、偽手術群と比較すると、タバコの煙を吸い込んだCOPDマウスの肺胞洗浄液における全白血球数(図1A)、単球(図1B)、好中球(図1C)、リンパ球(図1D)、好塩基球(図1E)と好酸球(図1F)は、顕著に上昇している。そして、6mg/Kgのルパタジン処置群においては、モデル群と比べ、COPDマウスの肺胞洗浄液における炎症性細胞を顕著に減少することができた。
4、COPDマウスの肺胞洗浄液における炎症性細胞因子含量の試験
マウスの頸部を解剖し、露出した気管に挿管した。PBSの洗浄液の量は0.8mlであり、洗浄回数は3-5回であった。回収した洗浄液は4°C 1500rで10分間にそれを遠心力によって沈殿させた。試験のために回収した上澄を-20°Cで保存し、待機した。
100μlの上澄を採取しELISA試験を行った。市販のELISAキットを用いて炎症性細胞因子の含量を検査・測定した。その結果は図2に示され、具体的データは表3に示されるとおりである。図2により、偽手術(sham-operation)群と比較するとCOPDマウスの肺部IL-2(図2A)・IL-4(図2C)・IL-I7(図2D)の含有量はいずれも著しく増加している。このことは、6mg/Kgのルパタジン群はCOPDマウスの肺部の炎症性細胞因子の含有量を軽減し、同時に、ルパタジンは組織修復における重要な役割を果たすIFN-γ(図2B)の含有量には影響しないことを示した。これはルパタジンが生体の免疫応答の方向性を調整することができることを示した。
5.喫煙COPDマウスの病理診断
HE染色法はヘマトキシリン‐エオジン染色とも呼ばれる。ヘマトキシリンの染色液は塩基性であり、主に細胞核内のクロマチンと胞体内のリボソームを青紫色に着色させる。エオジンは酸性染料であり、主に細胞質と細胞外基質における成分を着色させる。
動物の右側下の肺組織を採取して4wt%パラホルムアルデヒドで固定した後、パラフィンで包埋した。パラフィン包埋した組織の最大な横断面に薄切って標本を作成した。HE染色結果は図3である。図に示されるようにCOPDマウスの肺部の肺泡面積は著しく増加し(図3B)、終末細気管支の遠端の気腔が拡張し、正常な肺組織が破壊され、同時に肺気腫が出現する。一方、ルパタジンは肺泡の正常な構造を有効に回復でき(図3C)、終末細気管支の末端の気腔を縮小させることができた。
実施例2
1.TLR4変異により誘導される肺気腫モデルの調製
実験動物:野生SPF・C3H/HeNマウスは北京維通利華実験動物技術有限公司から購入し、TLR4変異SPF・C3H/HeNマウスは南京大学模式動物研究所から購入した。
方法:SPFマウスとTLR4変異マウスは中国国医学科学院薬物研究所実験動物センターで飼育され、恒温恒湿の環境で飼料を自由に摂取させた。マウスは3ヶ月の年齢でと殺された。
2.ルパタジンによるTLR4変異により誘導されたマウスの治療
主要な試薬及び実験動物:ルパタジンは浙江賜富医薬有限公司により製造された。ルパタジンはフマル酸・ルパタジン(Rupatadine fumarate)の活性成分である。ルパタジンの含有量は99%以上であった。ポジティブコントロール群に用いられるIL-17Aは、R&D公司から購入した。
治療方法:動物モデルは群別に分け、治療薬を摂取させた。実験の組分けは表4に示すとおりである。
3.TLR4欠失のマウス肺気腫の病理診断
HE染色法はヘマトキシリン‐エオジン染色とも呼ばれる。ヘマトキシリンの染色液は塩基性であり、主に細胞核内のクロマチンと胞体内のリボソームを青紫色に着色させる。エオジンは酸性染料であり、主に細胞質と細胞外基質における成分を着色させる。
動物の右側下の肺組織を採取して4wt%パラホルムアルデヒドで固定した後、パラフィンで包埋した。パラフィン包埋した組織の最大な横断面に薄切って標本を作成した。HE染色結果は図4である。図4に示されるように肺気腫マウスの肺部の肺泡面積は著しく増加し(図4B)、終末細気管支の遠端の気腔が拡張し、正常な肺組織が破壊され、一方、ポジティブコントロールIL-17A(図4C)はマウスの肺気腫のさらなる成長を有効に阻害することができた。ルパタジンは肺泡局所の正常な構造を有効に回復でき(図4D)、終末細気管支の末端の気腔を縮小させることができた。
実施例1及び2の分析に基づく結論としては、ルパタジンは有効にマウスの肺機能を改善し、COPDマウスの肺部の基本的な生理構造を回復させ、多種類の炎症性細胞浸潤及び発現を減少させ、慢性閉塞性肺疾患における生体内の免疫系の均衡を調節する役割を果たし、すなわち、Th1とTh2型の免疫応答のバランスを取ることができる。
一般的に、安定期にCOPD患者はTh1リンパ球の機能亢進が見られるが、急性増悪で重症期に入るとTh1/Th2間のバランスがTh2へシフトする特徴が見られる。ルパタジンは抗炎症、免疫均衡の調整、喘息への対抗、COPDの可逆作用を有することを上述の実験結果により合理的に判明できるだろう。結果として、COPDを利用して肺機能の改善、肺気腫の可逆、炎症性の程度及び炎症細胞の浸潤を軽減することができる。

Claims (8)

  1. 慢性閉塞性気管支炎、閉塞性肺気腫又は慢性閉塞性肺疾患を、予防又は治療するための医薬品組成物の製造のための、ルパタジンの使用。
  2. 前記ルパタジンが、ルパタジン又はルパタジンの薬学的に許容される誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
  3. 前記ルパタジンの薬学的に許容される誘導体が、ルパタジンの薬学的に許容される塩又はエステルであることを特徴とする請求項2に記載の使用。
  4. 前記医薬組成物が、ルパタジン及び薬学的に許容される担体を含有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
  5. 前記医薬品組成物は0.1%-99%のルパタジン及び0.1%-99%の薬学的に許容される担体を含み、パーセンテージは、各成分の医薬組成物総量の質量パーセンテージであることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
  6. 前記医薬組成物が、さらに、ヒスタミン1〜4型受容体拮抗薬及び/又はPAF受容体拮抗薬を含有することを特徴とする、請求項4に記載の使用。
  7. 前記医薬組成物が、経口、静脈、筋肉、皮内又は皮下に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
  8. 前記医薬組成物が、水溶性液剤、非水溶性液剤又は懸濁液であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
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