JP2015500513A - 眼鏡レンズの輝度依存調整 - Google Patents

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Abstract

本発明は、眼鏡レンズを輝度に依存して個別に心取りすることによる眼鏡レンズまたは眼鏡の調整改善に関する。特に本発明が提案するのは眼鏡装用者の少なくとも片眼用に個別的眼鏡レンズを調整する方法であって、前記少なくとも片眼によって把握される光の少なくとも1つの輝度目標値を含む個別的装用状況を確定することを含み、前記少なくとも片眼の少なくとも1つの視線方向において前記少なくとも1つの輝度目標値のもとで現れまたは予想される個別的瞳孔位置を特定することを含み、前記少なくとも1つの視線方向に関して必要とされる個別的屈折データの補正を前記眼鏡レンズが生じさせることになる眼鏡レンズの基準点を特定することを含み、前記特定された個別的瞳孔位置値に依存して前記少なくとも1つの眼鏡レンズの基準点が前記眼鏡装用者の前記少なくとも片眼の前に配置されるように前記眼鏡レンズを準備しかつ配置することを含む方法である。

Description

本発明は、各眼鏡レンズを最適化しなければならない個別的装用状況の光条件を考慮して眼鏡装用者の眼鏡レンズを最適化しかつ製造することに関する。
眼鏡レンズ、特に個別的眼鏡レンズを製造もしくは最適化するために、各指定視線方向または各指定物点に関して眼鏡装用者の各眼球の屈折異常が極力良好に補正されるように各眼鏡レンズは作製される。一般に、頂点球面を通過時に、波面の球面屈折力、円柱屈折力および乱視軸の値が屈折異常眼球に対する処方の球面屈折力、円柱屈折力および乱視軸の値に一致するとき、眼鏡レンズは、所定の視線方向に関して完全補正されたと見做される。眼鏡装用者の片眼の屈折を特定するとき、遠用(一般に無限)距離に関して屈折値(特に球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸位置)が特定され、そして場合によっては(多焦点レンズもしくは累進屈折力レンズについて)近用距離に関して加入度数(例えばDIN58208による)が特定される。こうして、眼鏡レンズ製造業者に伝達される処方(特に球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸位置および場合によっては加入度数)が確定される。最近の眼鏡レンズでは、付加的に、屈折特定時に用いられるが、規格とは異なる物体距離も示すことができる。
しかしすべての視線方向で同時に完全補正することは、通常は可能ではない。それゆえに、なかんずく主要利用領域、特に中央直視領域において、眼鏡レンズが眼球屈折異常の良好な補正と僅かな収差のみを生じる一方、周辺領域では、一層大きな収差を許容するように眼鏡レンズは作製される。
眼鏡レンズをこのように作製できるようにするために、まず眼鏡レンズ面の計算もしくは眼鏡レンズ面の少なくとも1つの眼鏡レンズ面の計算は、不可避的収差の指定分布がこの計算によって生じるように行われる。この計算と最適化は通常、反復変分法で目的関数を最小にすることによって行われる。目的関数として考慮されかつ最小にされるのは特に、球面度数S、円柱度数値Zおよび円柱の軸位置αに対して下記関数関係(「SZA」組合せとも称される)を有する関数Fである。
Figure 2015500513
目的関数Fにおいて眼鏡レンズの重み付け箇所iで考慮されるのは、少なくとも球面度数の実際の屈折不足SΔ、iと円柱度数の実際の屈折不足ZΔ、i、そして球面度数屈折不足の目標設定値SΔ、i、Sollと円柱度数屈折不足の目標設定値ZΔ、i、Sollである。
既にDE10313275で認識されたように、目標設定値は、最適化すべき特性の絶対値としてではなく処方からのそれらの偏差として、つまり要求された誤差調整として示すと有利である。そのことの利点として、目標設定値は処方(Sph、Zyl、Achse、Pr、B)に左右されず、また目標設定値は個別処方毎に変更する必要がない。従ってまた、最適化すべき特性の「実際」値として目的関数に含まれるのは、これら光学特性の絶対値ではなく処方からの偏差である。そのことの利点として、目標設定値は処方に左右されることなく設定することができ、個別処方毎に変更する必要がない。
各重み付け箇所での各屈折不足は主に、重み係数gi、SΔもしくはgi、ZΔで考慮される。その際、球面度数屈折不足の目標設定値SΔ、i、Sollおよび/または円柱度数屈折不足の目標設定値ZΔ、i、Sollは、特に重み係数gi、SΔもしくはgi、ZΔと共に、いわゆる「設計」または眼鏡レンズ設計を形成する。さらに、その他の残余、特に例えばコマ収差および/または球面収差および/またはプリズムおよび/または倍率および/またはアナモルフィック歪み等々のその他の最適化すべき変量も考慮することができ、そのことは特に表現「+…」によって示唆されている。それとともに、眼鏡レンズの設計は特に眼鏡レンズ上での収差分布の有り様を確定する。主に眼鏡レンズ上の多数の重み付け点について、達成すべき収差と、場合によっては目的関数内でのその重みを、いかなる大きさとすべきであるのかが確定される。
眼鏡レンズの設計は主に、単数または複数の特異点、特に基準点の位置、例えば遠用基準点および/または近用基準点および/またはプリズム基準点および/または心取り点の位置、および/または主注視線の位置または軌跡等を確定することも含む。眼鏡レンズ設計は、累進屈折力レンズの初期段階において眼鏡レンズ製造業者によってさまざまな判定基準に従って段階付けて設定されるのに対して、個々の眼鏡装用者に対する眼鏡レンズの調整は、数年かけてますます個別化される。特に眼鏡レンズ設計は、例えば個別的眼鏡フレームの寸法や位置(例えば前傾角、フレームあおり角)、生活習慣パラメータ(例えば頭部固定、頭部運動)、個別的装用状況(個別的物体距離モデル)または個々の解剖学的条件(例えば角膜頂点間距離)等の個別的諸条件に関して考慮される。
眼鏡レンズの設計と並んで正しい心取りも重要である。眼鏡を調整するために現在、別のパラメータと並んで、主として遠方注視時の瞳孔間距離(遠用PD)が測定される。累進屈折力眼鏡の場合普通、その他では高度に個別化されたレンズの場合でも、遠用PDが測定され、近用PDもしくは主注視線の軌跡を求めるために簡略化モデル(1点を中心とする眼球の回旋)と標準パラメータ(普通、グルストランド模型眼の眼球半径;DIN5340参照)が用いられる。遠用PDは、機器に対して十分な大きさと見做される一定距離での眼視課題を課すことによって、大抵の従来型ビデオ心取り装置で近似的に測定される。
眼鏡レンズもしくは眼鏡の個別的調整をさらに改善するために、眼球の解剖学的構造と眼球を動かす筋肉系とを記述するごく詳細なモデルも考慮に入れられてきた。こうして、さまざまな半径を有して水平回旋用と垂直回旋用とで異なる乱視軸を確定することができる。さらに、機械的眼球回旋点と光学的眼球回旋点とを区別することができる。個別的眼球運動を極力正確に把握するためのこれまでのあらゆる努力にもかかわらず、眼鏡レンズもしくは眼鏡の個別的調整品質には常に限界があった。
眼鏡を調整するために従来は、別のパラメータと並んで、一般に定義されていない光条件のもとで遠方注視時の特に瞳孔位置(瞳孔間距離とフィッティング高さ)が手動でまたはビデオ心取り装置によって測定されてきた。その際、後の眼鏡装用時に存在する光条件について、実際の瞳孔寸法または瞳孔位置を検討することは行われなかった。
本発明の課題は、個別的眼鏡レンズ調整の改善を達成することである。この課題は、請求項1または2に明示された特徴を有する方法と、請求項12に明示された特徴を有する測定装置とによって解決される。好ましい実施形態は従属請求項の対象である。
かくして本発明が1態様において提案するのは、眼鏡装用者の少なくとも片眼用に個別的眼鏡レンズを調整し特に最適化しかつ製造する方法であって、特に眼鏡装用者の少なくとも片眼に関する個別的データを把握することを含む方法である。その際、個別的データの把握は、眼鏡レンズが利用される計画装用状況において少なくとも片眼によって把握される光の少なくとも1つの輝度目標値を含む個別的装用状況を確定することを含む。輝度目標値として確定されるのは主に(平均的)明るさの目標値である。主に、個別的装用状況は、物体距離モデルも少なくとも部分的に確定する。すなわち、物体距離モデルは調整すべき眼鏡レンズの個別的装用状況において予想される物体からの距離を少なくとも単数または若干数の視線方向に関して確定する。その際、累進屈折力レンズに関して、例えば少なくとも、眼鏡レンズの1つの遠用基準点に対応した視線方向と眼鏡レンズの1つの近用基準点に対応した視線方向とに関して予想される物体距離が、確定される。
本方法(特に個別データの把握)はさらに、少なくとも片眼の少なくとも1つの視線方向において、つまり少なくとも1つの眼球位置において、少なくとも1つの輝度目標値のもとで現れまたは予想される少なくとも片眼の個別的瞳孔位置を特定することを含む。つまり、眼鏡装用者の少なくとも片眼によって把握される(平均的)明るさの目標値のもとで、この眼球に関して生じる個別的瞳孔位置が特定されるのであり、この目標値は、個別的装用状況において確定されたものである。その際特に2つの選択的処理方式が好まれる。
これらの好ましい処理方式の1つでは、確定された輝度目標値に少なくとも片眼が曝されている間に、個別的瞳孔位置が(直接または間接的に)把握される。つまり少なくとも1つの視線方向で瞳孔位置を把握する間に、後の実際の装用状況において予想される輝度状態が適合される。
別の好ましい処理方式では、輝度と少なくとも片眼の瞳孔位置との間の形式関係が確定される。さらに、瞳孔位置の把握中に眼球に作用する輝度が把握される。引き続き、輝度と位置との間の確定された関係によって輝度目標値に変換するために、瞳孔位置の適宜な補正が行われる。
少なくとも1つの輝度目標値の確定は主に、利用者が直接数値として入力するか、或は、所定の数値または所定の値範囲から選択することによって、または代表的輝度値を格納した所定の応用分野から選択(例えば自動車運転者用の昼用眼鏡と夜用眼鏡、屋外スポーツ、コンピュータでの作業等々の間の区別)することによって行われる。従来このような装用状況は、確かに折に触れて代表的物体距離の点で区別されたのではあるが、しかし個別事例において予想される輝度と瞳孔位置に対する輝度の個別的影響とが考慮されることはなかった。こうして特に心取りに関して眼球を計測するときにも、測定中に実際に存在する輝度に注意が向けられることはこれまでなかった。
それに対して本発明では、個別的装用状況における実際の輝度と瞳孔位置に対する輝度の個別的影響とを考慮することによって、特にさまざまな輝度に関して瞳孔を非対称に順応させるとき、既に眼鏡レンズの心取り時に、しかし主に眼鏡レンズの最適時および製造時にも、眼鏡レンズの個別的調整における改善が簡単に達成されることが認識された。
その際、本発明はさらに、少なくとも1つの視線方向に関して必要とされる個別的屈折データの補正を眼鏡レンズが生じさせることになる眼鏡レンズの基準点を特定することを含む。補正の必要性は主に目的関数によって確定され、完全補正(いわゆる設計)からの偏差に関する公差もしくは設定値と一緒に、特にさまざまな視線方向に関して個々に求めた屈折データが(例えば屈折力推移として)この目的関数に含まれる。それとともに、計画応用に応じて屈折データは主に多数の視線方向において把握されさえする。多焦点レンズまたは累進屈折力レンズに関して、少なくとも片眼の少なくとも遠用屈折と近用屈折が主に把握され、そこから累進屈折力眼鏡に関して特に所要の加入度数も得られる。
その際、最適化しかつ製造すべき眼鏡レンズの所要の光学度数は、視線方向毎に、計画装用状況における物体距離に特に左右される。この光学度数は主に、視線方向毎に所定の物体距離モデルによって記述される。少なくとも1つの基準点として選択することができるのは、眼鏡レンズの例えば遠用基準点および/または近用基準点および/または心取り点である。少なくとも1つの基準点において少なくとも部分的に補正されるべき個別的屈折は眼鏡装用者について(例えば遠用基準点または近用基準点に関して)直接測定することができ、或は、別の視線方向に関する測定値から、例えば遠用領域と近用領域との間の度数上昇の指定推移から、(例えば遠用基準点または近用基準点とは異なる基準点に関して)導き出すことができる。
本方法はさらに、特定された個別的瞳孔位置値に依存して眼鏡レンズの少なくとも1つの基準点(例えば心取り点)が眼鏡装用者の少なくとも片眼の前に配置されるように、眼鏡レンズを準備しかつ配置すること(特に眼鏡レンズをフレームに嵌挿すること)を含む。つまり換言するなら特に、個別的瞳孔位置値(つまり個別的瞳孔位置)を特定した少なくとも1つの視線方向を注視するとき眼鏡装用者が個別的装用状況において眼鏡レンズの特定された基準点を通して注視するように、眼鏡レンズは準備されかつ配置(もしくは配置のため形成)される。基準点として援用される眼鏡レンズ心取り点は主に、特に少なくとも1つの視線方向を注視するとき、確定された輝度目標値のもとで予想されもしくは与えられた瞳孔位置の前で水平に配置される。つまり特に指定眼鏡フレームにレンズを嵌挿するために、個別的装用状況において現れる輝度に依存して眼鏡レンズの心取りは行われる。
従来は例えば眼鏡レンズの心取りに関して、心取りデータ(例えば瞳孔間距離またはフィッティング高さ)の計測時にこの瞬間に存在する輝度にも指定応用状況に関する輝度にも注意が向けられなかったのに対して、本発明によれば、瞳孔位置に対する輝度の個別的影響を求めかつ考慮することによって、輝度に依存した個別的心取りが行われる。
以下において心取りとは、フレーム内での眼鏡レンズの位置決めを意味するだけでなく、主に設計点の相互位置も意味し、しかも主に主注視線の軌跡さえも意味する。
本発明の他の1態様において、眼鏡レンズを最適化するとき、輝度に依存した個別的瞳孔位置を考慮することさえ行われる。それとともにこの態様において本発明が提案するのは、眼鏡装用者の少なくとも片眼用に個別的眼鏡レンズを最適化しかつ製造する方法であって、少なくとも片眼によって把握されるべき光の1つの輝度目標値を少なくとも2つの異なる眼鏡レンズの基準点についてそれぞれ確定する個別的装用状況を確定することを含む方法である。個別的装用状況を記述する装用データは、予想される輝度の各1つの値を含む。つまりこうして、眼鏡レンズを最適化しかつ製造するとき、さまざまな視線方向に関して瞳孔位置を輝度に依存して考慮することが行われる。その際、個別的装用状況において予想される(確定された)輝度は、すべての視線方向に関して(特に両方の基準点に関して)同一とすることが十分にできる。こうして主に、単一の輝度目標値を確定すれば十分であり、その場合この輝度目標値はすべての基準点に応用可能である。
本方法はさらに、少なくとも2つの異なる基準点に関して、従って特に、特に遠方注視と近方注視とに対応した少なくとも2つの眼視領域もしくは視線方向に関して、少なくとも片眼の屈折データを特定することを含む。
その際、特に累進屈折力レンズの基準点として主に遠用基準点と近用基準点を設けることができよう。その際、遠用基準点と近用基準点とに関して特に個別的装用状況におけるさまざまな輝度目標値が確定される。個別的装用状況において遠用基準点および近用基準点に現れる異なる輝度は、異なる瞳孔位置および/または瞳孔寸法を個々にもたらすことがある。そのことを眼鏡レンズの最適化時および製造時に考慮するために、特にこれらの基準点は輝度に依存した個別的瞳孔位置に従って調整され、つまり特に、瞳孔位置の輝度依存性を考慮することなく作成された目標設計(開始設計)から出発してずらされる。
遠方注視と近方注視との間の区別は、特に累進屈折力眼鏡レンズにおいて望ましいことである。その場合、少なくとも2つの基準点について主に異なる屈折データが得られる。しかし最適化時に瞳孔位置に対する輝度の個別的影響を考慮することは、眼球の同じ屈折データを補正しなければならない基準点にとっても有利である。こうして本発明に係る処理方式は、特に個々に計算された(最適化された)単焦点レンズに関しても個別的調整の改善を提供する。
これに加えて本方法は、少なくとも片眼によって把握される光の輝度が少なくとも片眼の瞳孔位置に及ぼす個別的影響を特定することを含み、そして少なくとも片眼の複数の瞳孔位置において基準点について特定された屈折データの補正を生じさせる眼鏡レンズを、最適化しかつ製造することを含み、前記複数の瞳孔位置は、基準点について確定された輝度目標値に関して瞳孔位置に対する輝度の特定された影響から生じる。
つまり本発明の枠内で認識されたように、眼鏡または眼鏡レンズの個別的調整の改善は、輝度への調整(順応)時に特に非対称な個別的瞳孔変化を少なくとも部分的に考慮するように、輝度に依存した心取りおよび/または最適化を行うことによって達成される。
眼鏡レンズの最適化は主に、特に上記目的関数Fに従って目的関数を最小にすることを含む。特別好ましくは、本方法は、確定された輝度目標値のもとでその都度現れまたは予想される個別的瞳孔位置および/または瞳孔寸法を特定することを含み、眼鏡レンズの最適化は目的関数を最小にすることを含み、この目的関数は、少なくとも2つの基準点に関して、各基準点についてそれぞれ特定された屈折データの補正に重み付けし、この補正は、各基準点の周辺で眼鏡レンズによって引き起こされたものであり、特に各基準点の周辺の寸法は、各基準点について特定された個別的瞳孔寸法に依存して選択される。こうして目的関数の重み付けは主に周知の如くに、物体と眼鏡レンズと眼球とから成る系を記述するモデルの頂点球面上で行われる。その際眼鏡レンズの度数は、物点から出発して眼鏡レンズを通して頂点球面に至るまで主にRay-Tracingおよび/またはWavefront-Tracingによって、つまり特に光線追跡法および/または波面追跡法によって計算され、目的関数において、頂点球面に投影された眼球屈折異常と組合せられる。その際特別好ましくは、当該瞳孔寸法に依存した主光線周辺における各基準点を通る主光線について波面の評価が行われる。それとともに特に高次収差は、実際の装用状況に合わせて特別良好に補正される。特に本発明の他の好ましい実施形態に従って高次収差を考慮するための考えられる処理方式は、後になお詳しく述べられる。高次収差は例えばアベロメータによって個々に測定することができる。後に詳しく述べる別の好ましい1実施形態において、このような収差は、特に個々に求めた別のパラメータに依存して統計データから得ることができる。
好ましい1実施形態において、眼鏡レンズの少なくとも2つの基準点に一致した視線方向について、つまり最適化しかつ製造すべき眼鏡レンズの各基準点を通る視線方向についてそれぞれ1つの眼球基準点位置を求め特に測定することを本方法が含むことによって、装用状況に関する個別的瞳孔位置は考慮される。好ましい1実施形態において、眼球の基準点とは、輝度変化時にも網膜に対して相対的にずれることのない1点のことである。その際特別好ましくは、眼球の頂点位置は直接求められ、または基準点として間接的に求められる。すなわち、頂点位置は直接測定することができ、または頂点に対するその相対的位置が既知である別の1点の諸位置が測定される。
眼鏡レンズの各基準点に関する最適化は主に、やはり主に装用データによって確定された(個別的)眼鏡レンズ装用位置において主光線が各眼球の基準点位置を通過するように主光線の軌跡を計算することを含む。つまりこの実施形態において主光線の軌跡、つまり主に従来の最適化法でも利用される主光線反復(Ray-Tracing)は主に、輝度に依存して個々に影響を受ける瞳孔位置に左右されることなく実行される。その際、個別的瞳孔位置の考慮は主に、瞳孔位置に対する輝度の特定された個別的影響に従って主光線に対する相対的周辺位置が特定されかつ考慮されるように、各主光線の周辺における波面を計算すること(Wavefront- Tracing)によって行われる。計算の基礎とされる光線軌跡モデルでは特に、主光線に対するその相対的位置が輝度に依存して個別的ずれを有する開口絞り(眼球入射瞳)が使用される。つまりこの実施形態において波面は必ずしも、主光線を中心とする周辺において評価されるのでなく、個々にずれた周辺において評価される。
この好ましい実施形態では、視線方向がずれるときの基準点位置は、特に他の眼球回旋パラメータと一緒に特定することができ、この測定中に存在する輝度が既知である必要はない。それにもかかわらず、眼球の基準点に対する瞳孔位置の所要の関係を知るために、少なくとも片眼の瞳孔位置に対する少なくとも片眼によって把握される光の輝度の個別的影響の特定は主に、少なくとも1つの輝度目標値のもとで、主に所定のすべての輝度目標値のもとで眼球の基準点に対する相対的瞳孔位置を特定することを含む。既に上で述べたように、この特定は、各輝度目標値のもとでの直接的測定によって行うか、或は、例えばモデルおよび/または別の輝度での測定を基にした補間または外挿によって行うことができる。
他の好ましい1実施形態において、眼鏡レンズの少なくとも2つの基準点に一致した視線方向について、つまり最適化しかつ製造すべき眼鏡レンズの各基準点を通る視線方向について各眼球瞳孔位置を求め特に測定することを本方法が含むことによって、装用状況に関する個別的瞳孔位置は考慮される。瞳孔位置が主に輝度に依存しており、この個別的依存性がまさに考慮されねばならないので、各瞳孔位置はそれぞれ特定された輝度または特定可能な輝度において求められる。好ましい1実施形態において、この過程中に輝度はそれぞれ所定の各輝度目標値に従って適合される。別の好ましい1実施形態において、輝度は測定中にやはり測定されるだけである。その場合、特に個別測定によって特定された瞳孔位置に対する輝度の個別的影響から、測定された瞳孔位置から出発してさまざまな視線方向について各瞳孔位置の位置補正は実行される。
この好ましい実施形態において、眼鏡レンズの各基準点について最適化は主に、やはり装用データによって主に確定された(個別的)眼鏡レンズ装用位置において、場合によって補正された各眼球瞳孔位置を主光線が通過するように、主光線の軌跡を計算することを含む。つまり目標輝度(輝度目標値)のもとでさまざまな視線方向に関して瞳孔位置の測定が実行された場合、主に、直接測定された位置値が援用される。他方で別の輝度において測定が実行される場合、瞳孔位置は主光線反復を目的に主に輝度の個別的影響に相応して補正される。
つまりこの実施形態において、主光線の軌跡、つまり主に従来の最適化法でも利用されるような主光線反復(Ray-Tracing)は、輝度に依存して個々に影響を受ける瞳孔位置に依存して実行される。この主光線計算を基に主に各主光線の周辺において波面の計算(Wavefront-Tracing)が行われ、この波面の位置は主に輝度に左右されない。他方でこの周辺の大きさは主に、上記の如くに個々に輝度に決定的に左右される。特にこの実施形態において計算の基礎とされる光線軌跡モデルでは、主に主光線に対してその位置が心取りされた開口絞り(眼球入射瞳)が使用される。
予想される個別的瞳孔位置の特定および/または瞳孔位置および/または瞳孔寸法に対する輝度の個別的影響の特定は主に、
少なくとも片眼によって把握される輝度が個別的装用状況において確定された少なくとも1つの輝度目標値に一致することになる測定条件を適合することを含み、
適合された測定条件のもとで少なくとも片眼の瞳孔位置もしくは瞳孔寸法を(予想される個別値として)把握することを含む。
好ましい選択的1実施形態において、予想される個別的瞳孔位置の特定および/または瞳孔位置および/または瞳孔寸法に対する輝度の個別的影響の特定は、
少なくとも片眼によって把握される輝度と瞳孔位置もしくは瞳孔寸法との間の関係を(例えば数式の形の解析的記述として)確定(設定)することを含み、この確定された関係が少なくとも1つの個別的(つまり個々に求めるべき)調整パラメータ(自由パラメータまたはフィットパラメータとも称する)を有し、
少なくとも片眼によって把握される輝度と一緒に瞳孔位置および/または瞳孔寸法を求める(特に測定する)ことを含み、つまり特に測定中に存在する(平均的)輝度(または、少なくとも片眼の瞳孔が調整された輝度)が測定条件の主要構成要素として把握され、
求めた瞳孔位置および/または瞳孔寸法とこれと一緒に求められる輝度とから、少なくとも1つの個別的調整パラメータを特定することを含み、そして
少なくとも片眼によって把握される輝度と瞳孔位置もしくは瞳孔寸法との間の確定された関係から、特定された個別的調整パラメータを考慮して、所定の輝度目標値(もしくは複数の所定の輝度目標値)のもとで予想される個別的瞳孔位置および/または瞳孔寸法を求めることを含む。
好ましい1実施形態において、瞳孔位置および/または瞳孔寸法と一緒に求められ少なくとも片眼によって把握される輝度は、輝度センサによって(特に直接に)測定される。
特にこれに代わる好ましい1実施形態において、少なくとも片眼によって把握される輝度と一緒に瞳孔位置および/または瞳孔寸法を求めることは、
輝度参照物体が前記少なくとも片眼と同じ輝度に曝されているように輝度参照物体を前記少なくとも片眼の近傍に配置することを含み、
輝度参照物体と一緒に前記少なくとも片眼の画像データを(例えば単一の撮影において、または‐フラッシュを使用する場合‐主に直接前後して)把握することを含み(輝度参照物体の撮影はフラッシュなしに行われる)、そして
画像データ内で輝度参照物体の図から輝度を特定することを含む。
予想される個別的瞳孔位置の特定および/または瞳孔位置および/または瞳孔寸法に対する輝度の個別的影響の特定は主に、頭部固定座標系に対する瞳孔の相対的位置を測定することを含む。測定は主にビデオ心取り装置によって、そして外在的特徴(例えば眼鏡フレーム、眼鏡フレームもしくは装着要素のマーキング)を用いて行われる。好ましい上記選択案の枠内でこの測定が実行されるか否かに応じて、主に、確定された輝度目標値のもとで予想される位置が既に測定され、または任意の輝度における位置はその際に存在する輝度と一緒に測定され、そこから引き続き、所定の関係について少なくとも1つの個別的調整パラメータが特定される。瞳孔位置および/または瞳孔寸法の測定がビデオ心取り装置によって行われ、ビデオ心取り装置がさらに眼鏡レンズ調整用に他の(例えば、選択された眼鏡フレームに関する)個別パラメータも求めるとき、この処理方式は特に好ましい。
予想される個別的瞳孔位置の特定および/または瞳孔位置および/または瞳孔寸法に対する輝度の個別的影響の特定は主に、少なくとも片眼の特異特徴に対する相対的瞳孔位置を測定することを含む。
予想される個別的瞳孔位置の特定および/または瞳孔位置および/または瞳孔寸法に対する輝度の個別的影響の特定は主に、固視物体および/または固視標によって1つの視線方向を設定することを含む。
好ましい1実施形態において、約3cd/m〜約30cd/mの範囲内の第1明るさにおいて瞳孔位置および/または瞳孔寸法の測定が1回行われ、そして約0.003cd/m〜約30cd/mの範囲内、主に約0.003cd/m〜約3cd/mの範囲内、特別好ましくは約0.003cd/m〜約0.3cd/mの範囲内、大抵の場合好ましくは約0.003cd/m〜約0.03cd/mの範囲内の(第1明るさとは異なる)第2明るさにおいて瞳孔位置および/または瞳孔寸法の測定が1回行われる。
他の1態様において本発明が提案するのは少なくとも片眼の少なくとも1つの瞳孔位置を確定する個別的利用者データを把握する測定装置であって、この測定装置は、前記少なくとも片眼によって把握される輝度を特定するように設計された照明機構を含む。この輝度特定は好ましい2つの選択的仕方で行うことができる。照明機構は、所定の輝度が達成されるように輝度を制御または調節するように設計されているか、或は、照明機構は(場合によって制御不能な)照明機構と有り得る周辺光とによって引き起こされる輝度を測定するセンサを含む。
測定装置はさらに、眼球、特に網膜に対するその相対的位置が輝度に左右されることのない位置基準点と一緒に瞳孔の画像データを把握するように設計された撮像機構を含む。それとともに本発明は、少なくとも片眼の瞳孔位置および/または瞳孔寸法に対する輝度の個別的影響を含む利用者データを把握する可能性を提供する。これらのデータは次に、眼鏡または眼鏡レンズの調整改善を達成するのに利用することができる。
測定装置は主に、少なくとも片眼によって把握される輝度を測定するように設計された輝度センサを含む。好ましくはさらに、測定装置は、少なくとも1つの輝度目標値の設定値を把握するための装用データ把握インタフェースと、少なくとも片眼によって把握される光が把握された輝度目標値に一致するように照明機構の輝度を制御または調節するように設計された照明制御機構と、を含む。
他の1態様において、測定装置が独自の照明ユニットを含むことは必須でない。むしろ周辺の輝度は利用し、輝度センサによって測定することができる。それとともにその場合測定装置は、
少なくとも片眼によって把握される輝度を測定するように設計された輝度センサと、
位置基準点と一緒に瞳孔の画像データを把握するように設計された撮像機構とを含む。
測定装置は主に、眼球の視線方向を制御するための固視標および/または固視物体および/または固視投影機構を含み、つまり特に前記少なくとも片眼の視線方向を制御または誘導するための発光機構を含む。特別好ましくは、固視標および/または固視物体および/または固視投影機構が照明機構によって形成され、眼球によって把握され瞳孔位置もしくは瞳孔寸法に影響する輝度は少なくとも大部分が固視標および/または固視物体および/または固視投影機構によってもたらされる。それとともに特別好ましくは、照明制御機構が固視標および/または固視物体および/または固視投影機構の輝度を制御もしくは調節する。瞳孔位置および/または瞳孔寸法もしくは瞳孔画像データを測定装置によって把握するとき、眼球付近の有意な輝度、もしくは固視標および/または固視物体および/または固視投影機構の輝度、もしくは照明機構の輝度が一緒に把握され、特に一緒に記憶される。
測定装置は主にビデオ心取り装置として、および/または自動屈折計および/またはアベロメータおよび/またはケラトグラフおよび/またはトノグラフおよび/またはパキメータとして形成されている。
他の1態様において本発明が提案するのは、特に記憶媒体または信号系列の形のコンピュータプログラム製品であって、特にここに述べる好ましい1実施形態においてコンピュータの記憶装置内、主に本発明に係る装置のデータ処理ユニットの記憶装置内にロードされかつコンピュータ(特に本装置)によって実行されるとき、特に好ましい1実施形態においてコンピュータ(特に本装置)が本発明に係る方法を実施することを引き起こすコンピュータ読取可能な命令を含む、コンピュータプログラム製品である。
好ましい実施形態に基づいて本発明の1態様による測定原理を述べた後、特にこの測定の応用に関して好ましい処理方式のさまざまな態様を以下で検討する。最後に、眼鏡レンズの心取りと特に設計とを調整するために、つまり特に眼鏡レンズを個々に最適化するために、把握したデータを主にどのように使用できるのかも例示的に示される。
1態様において本発明は、後の応用時に実際に存在する諸条件のもとで瞳孔位置および/または瞳孔寸法を考慮することを提案する。その際諸条件とは、少なくとも指定応用状況における輝度も意味する。しかしさらに、瞳孔位置もしくは瞳孔寸法に影響を及ぼし得る別の刺激も利用することができる。このことは例えば、定義された距離(例えば無限遠、近用領域または靄)および特殊な固視位置または離接運動位置(例えば固視標または近方注視試料を介した注視制御による単眼輻輳または両眼輻輳)に対する眼球調整に関係している。
このために必要な測定は主に本発明に係る装置で実行され、この装置は特別好ましくは、ビデオ心取り装置として設計されており、つまりビデオ心取り装置の機能性を有する。主に、測定の少なくとも1つは心取りデータまたは他の個別的パラメータを特定するのにも使用することができる。これらは別の眼鏡光学機器または眼科光学機器と所定機器とでの測定によって補いもしくは代用することができる。
瞳孔測定に関して、特に瞳孔位置の特定に関してさまざまな測定を相互に参照することが必須であるので、眼球の特異特徴、視線方向の固定、または参照測定を利用することができる。規定条件に関する瞳孔位置もしくは瞳孔寸法の本発明に係る把握は、前記条件(例えば規定輝度)においてこれらの変量を直接測定することによって、またはそれとは異なる諸条件(例えば別の輝度)における測定から計算することによって行うことができる。
その際、瞳孔寸法は主に下記方式の1つに従って定義されかつ相応に求められる。
‐実瞳孔の面積
‐実瞳孔の内接円または外接円の面積
‐実瞳孔縁を最良に記述する円の面積
‐実瞳孔の重み付き面積。重み付けは主に、特殊領域を強調するために特異点からの距離の関数として行われる。このような特異点は主に、特に下記定義の1つに従った瞳孔中心または角膜頂点である。
円の代わりに別の幾何学形状(例えば楕円)も援用することができる。
その際瞳孔位置とは主に、特に下記定義の1つに従った瞳孔の特異位置を意味する。
‐実瞳孔面積の重心
‐実瞳孔の内接円または外接円の中心点
‐実瞳孔縁を最良に記述する円の中心点
‐実瞳孔の重み付き面積の重心。重み付けは主に、特殊領域を強調するために特異点からの距離の関数として行われる。このような特異点は主に、(例えば中心領域を強調するために)上記定義の1つに従った瞳孔中心または角膜頂点である。
既に触れたように、好ましい1実施形態において、ビデオ心取り装置によって個別的瞳孔位置および/または瞳孔寸法を測定するとき既に、後の装用状況に一致した諸条件(例えば光条件)が提供される。これらの測定、特にその際に把握された画像データは、心取りデータと個別データとを求めるのにも援用することができる。
付加的撮影(画像データ)は、後の応用の諸条件に一致した他の定義された諸条件(例えば光条件)においてビデオ心取り装置で行うことができ、またビデオ心取りの意味で完全評価を行うことなく特に瞳孔位置および/または瞳孔寸法の点で評価することができる。
個別的利用者データを把握する別の好ましい1実施形態において、その都度の応用にとって必要な場合に測定することのできる本来的に未定義の諸条件(例えば光条件)も利用することができる。元々機器に設けられている照明機構、例えば視線方向を設定するための固視標(つまり視線方向を制御する光領域)または固視物体か、或はビデオ心取り装置の特殊な照明機構を、このために援用もしくは設けることができる。眼鏡商の店舗設備の一部とすることもできる外部照明機構も当然、使用することができる。同様のことは固視標、固視物体、固視投影器にもあてはまる。その際固視投影器とは、眼科光学機器において代表的に利用される結像系を意味し、その結像を観察者が固定し、もしくはその結像に観察者が調節する。
眼鏡商のもとでビデオ心取り装置を実際に応用するとき、眼鏡装用者に関して実際に予想される装用状況に正確に一致した必須の輝度条件をビデオ心取り箇所で確保することは、しばしば困難である。ビデオ心取り装置はしばしば、暗くすることのできない売り場内にある。それゆえに、少なくとも片眼の少なくとも1つの視線方向で少なくとも1つの輝度目標値のもとで現れまたは予想される個別的瞳孔位置を特定する方法の他の実施形態は、特に眼球の特異特徴に関して瞳孔位置を把握することのできる少なくとも1つの他の測定装置を利用する。その際、本発明の好ましい1実施形態の意味におけるこのような機器は、瞳孔縁の少なくとも諸部分を把握するように設計された少なくとも1つの撮像機構(カメラ)を含む。測定装置はさらに、定義された輝度条件をもたらすことのできる1つの(内部または外部)照明機構を主に含む。すなわち測定装置は主に、照明機構の輝度を制御するように設計されている。
測定装置は主に、眼球の周辺が明るい場合でもわずかな輝度で周辺環境をもたらすようにするために眼球部分を遮光するための遮光要素も有する。選択的に測定装置は、暗くした空間(例えば眼鏡商の屈折室)内または仕切られた空間部分内に設置することもできる。
視線方向を制御するために測定装置は主に、仮想標を生じるように特に設計された固視標および/または固視物体および/または固視投影機構を有する。特別好ましい1実施形態において、測定装置は同時に(つまり一体式に)、自動屈折計および/またはアベロメータおよび/またはケラトグラフおよび/またはトノグラフおよび/またはパキメータとして形成されている。
眼鏡レンズの心取りもしくは最適化に関して、ビデオ心取り測定との組合せは必ずしも必須ではない。それに代えて、瞳孔位置および/または瞳孔寸法の変化は、本発明が提案する測定装置のみで求めることもでき、そのことにかかわりなくレンズの嵌挿位置は別の方策(例えばビクトリックスによる手動心取り)で特定することができる。
少なくとも1つの輝度値において現れる個別的瞳孔位置および/または瞳孔寸法の特定、もしくは瞳孔位置および/または瞳孔寸法に対する輝度の個別的影響の特定が、特に本発明により装備したビデオ心取り装置によって行われるのか或は本発明に係る別の測定装置によって行われるのかにかかわりなく、被検者(眼鏡装用者)の付近、特に眼球付近の輝度(つまり眼球によって把握される輝度‐「有意な輝度」とも称する)の測定時に主に以下の可能性の1つに従って処理は行われる。
好ましい1実施形態によれば、測定装置(例えばビデオ心取り装置)は、特にケーブルを介してまたはケーブルなしに結合される輝度センサを有し、このセンサは有意な輝度を測定し、または有意な輝度を逆算することのできる箇所付近の輝度を測定する。
別の好ましい1実施形態において、有意な輝度は、眼鏡装用者の前記少なくとも片眼と一緒に撮像機構によって画像データとして把握される輝度参照物体によって求められる。それとともに画像データ内の輝度参照物体の輝度から、有意な輝度を推定することができる。
輝度参照物体の使用時に反射または類似作用による誤測定を避けるために主に、極力均質な拡散散乱性物体が利用される。その際、空間的広がりは主に、所要精度での輝度特定を可能とする少なくとも若干数の画素を物体の結像が含むように選択される。その際、分光特性は主に、カメラもしくは個別的カラーチャネルの分光特性を考慮して有意な輝度を推定できるように選択される。
最も単純な事例において、このような輝度参照物体は白色(または有色)厚紙片またはプラスチック片で構成することができる。輝度参照物体は貼付け可能に形成しておくこともでき、こうして簡単かつ手軽に眼鏡フレームまたは被検者に取り付けることができる。
眼鏡フレームまたは嵌着部材に配置される外在的位置参照マークは有利には、本発明の意味で輝度参照物体として使用できるように形成することもできる。これにより撮影は、特別有利な仕方で、眼球回旋点の位置を求めるのにも、装用諸条件のもとで瞳孔位置および/または瞳孔寸法を特定するのにも使用することができ、こうして若干数の撮影で両方の変量は特定することができる。市販されている大抵のビデオ心取り装置において、嵌着部材は、カメラ撮影を幾何学的に校正するのに利用される。嵌着部材もこのような輝度参照物体を備えることができる。
さらに、選択されたフレームは、その分光特性が十分正確に既知でありまたは前領域内で求められる限り、輝度参照物体として使用することができる。輝度参照物体は眼鏡商の店舗内で、撮影時に見られかつ有意な輝度の推定を許容する位置に、固定式に設置しておくこともできる。その他の考えられる輝度参照物体は、既知であるか或はさまざまな被検者間で僅かな変動を受けるだけの個人特徴である。ここでは例として強膜を挙げておく。
撮影時の画素の、輝度参照物体を表す輝度値から、輝度参照物体の分光特性とカメラ感度とを考慮して、有意な輝度は計算される。多くの場合、測定撮影は、フラッシュ照明によって明るくされる。時間スケールのゆえにこのような補助照明は大抵の場合、瞳孔寸法もしくは瞳孔位置に何ら影響しない。しかし輝度参照物体の撮影輝度は、前記フラッシュ照明によって大きな影響を受ける。その場合、輝度参照物体の撮影は、先行する撮影または後続の撮影における輝度を求めるために、フラッシュを利用することなく、つまり寸法および位置の点で瞳孔を適合させた輝度のもとで、行うことができる。
さまざまな条件(例えば輝度、調節状態)について個別的瞳孔位置を特定するときに大切なのは、さまざまな瞳孔位置を互いに相対的に確定できることである。これを可能とするために以下では測定法のさまざまな好ましい実施形態を提案するが、これらは互いに組合せることもできる。このことは、さまざまな機器が利用されるとき特に有意義である。
好ましい1実施形態において瞳孔位置の参照化は、特に1つの視線方向に関して輝度に左右されない眼球の特異特徴によって行われる。その際に特異特徴として援用されるのは主に、結膜または角膜および角膜輪部上の構造等の内在的特徴、または限定的に取り付けられた照明機構の角膜または水晶体上での反射(例えば「プルキンエ反射」)等の外在的特徴である。
複数の機器の利用時(例えば、上記好ましい実施形態の1つにおいて1つのビデオ心取り装置での少なくとも1回の測定と本発明に係る別の1つの測定装置での少なくとも1回の測定時)に眼球の同じ特異特徴が把握される場合、異なる諸条件のもとで前記特徴に対して相対的に特定される瞳孔位置は、付加的調整なしに直接使用されかつ互いに計算され得る。このような特徴は主に前記内在的特徴や、当該照明機構の幾何学的に等価な配置に基づく反射である。
他の好ましい1実施形態において、瞳孔位置の参照化は視線方向を固定することによって行われる。個別測定の間に頭部位置が撮像機構に対して相対的に変化しない場合、これらの位置は個別撮影の画像座標系において互いに相対的に直接使用することもできる。しかしこれは、視線方向が固定されもしくは制御されまたは測定されることを前提とする。視線方向が一定である場合、相対的データは直接使用することができる。個別撮影の間に視線方向が万一変化する場合、その作用は補償することができる。
視線方向を制御するのに主に、固視物体または固視標(すなわち、少なくとも1平面で指向した光領域)が援用される。視線方向の測定には公知の視線方向確認方法(例えばプルキンエ反射の測定)を使用することができる。
撮像機構に対する相対的頭部位置が個別測定の間で(例えば複数の機器を使用することによって)変化する場合、この変化は主に、眼球以外の少なくとも1つの内在的特徴または外在的特徴を頼りに頭部位置を確認することによって補償される。
他の好ましい1実施形態において、瞳孔位置の参照化は、同じ輝度で測定することによって行われる。例えば、好ましい1実施形態に特に従ってビデオ心取り装置とこれとは独立した本発明に係る別の測定装置とで測定するときに眼球の異なる特異特徴(例えばさまざまな内在的特徴、または異なる幾何学形状の照明装置での反射)を使用すべきである場合、‐必須精度の枠内で‐同じ諸条件において両方の装置でその都度少なくとも1回の撮影を行うことによって、参照化が実施され得る。これにより、眼球の当該特異特徴の位置に対して相対的な瞳孔位置を前記共通条件に関して求め、これらの瞳孔位置を介して各特異特徴の相互位置は求めることができる。この共通条件は必ずしも既知である必要はないが、しかし‐例えば経過中に付加的条件における撮影を避けるために‐後に使用される諸条件の1つとすることができる。
他の好ましい1実施形態では、瞳孔寸法から瞳孔位置が推定される。次に特に、主に本発明に係る測定装置によって、瞳孔寸法と瞳孔位置との間の個別的関係が求められる。主に、個別測定に調整可能な少なくとも1つの自由パラメータを有する解析(例えば線形)モデルがこの関係に従属させられる。その場合主に、求められたこの個別的関係は特に(例えばビデオ心取り装置内の)別の測定システムによる他の測定に応用される。次に例えば、輝度が予め既知でない場合でも、ビデオ心取り装置で求められる画像データから、瞳孔寸法の評価によって、画像撮像時に存在する輝度と、装用状況時に予想される輝度で正しく心取りするのに必要な瞳孔位置の補正とを逆推定することができる。
最も単純な事例において、瞳孔位置および/または瞳孔寸法はレンズの最適化もしくは心取りにとって望ましい諸条件、つまり後の装用状況に一致した諸条件のもとで測定される。しかし瞳孔位置および/または瞳孔寸法は、直接的測定を予定できない個別的諸条件について求めることもできる。主に、眼鏡レンズの少なくとも諸領域にわたって連続的分布が求められかつ使用されさえする。それとともに主に、累進屈折力レンズにおいて、距離に依存した輝度はそこから生じる距離依存瞳孔と共に近用点と遠用点との間の作用分布と同様に考慮される。
主に、瞳孔位置および/または瞳孔寸法の少なくとも1回の測定から、(例えば解析的に与えられた)モデル用のパラメータが取得される。このようなモデルは主に、個々に求められた少なくとも1つのパラメータと一緒に、瞳孔位置および/または瞳孔寸法に対する前記少なくとも片眼によって把握される光の輝度の個別的影響を記述する。好ましいモデルは例えば線形依存性または対数依存性、自由パラメータを有する依存性、そして少なくとも2つの支持値の間もしくは少なくとも2つの支持値にわたる補間もしくは外挿である。モデルが自由パラメータに含むよりも多くの測定がなされる場合、精度もしくは統計的信頼性を高めるために調整計算(例えば最小2乗偏差)を実行することができる。
好ましい1実施形態において、輝度(明るさB(mL))に依存した瞳孔寸法(半径d(mm))のモデルとして使用されるのは、log (d)=a - b (log(B) + c)3である。大多数の眼鏡装用者の平均値と見做すことができるのは、a=0.8558、b=0.000401、c=8.1の値である。ところで本発明の好ましい実施形態の枠内で、少なくとも1つの既知輝度における少なくとも1回の測定によってパラメータa、bおよび/またはcの値は調整することができ、または既知輝度における3回の測定以降に主に完全に特定することさえできる。
瞳孔位置モデルの好ましい1例として瞳孔位置と瞳孔寸法との間の一次関係が想定され、その係数は主に個々に特定される。主に、拡張(瞳孔の寸法変化)ミリメートル当り瞳孔移動約−0.07〜約0.14ミリメートルの係数が確定されもしくは求められる。正値は収縮時の鼻側移動を意味する。その際主に、上記モデルは瞳孔寸法に関して想定することができる。
主に、瞳孔位置および/または瞳孔寸法に影響することのある他の刺激(例えば調節と焦点合わせ、視線方向と離接運動等)も考慮される。これらの刺激は、単眼または両眼のいずれかに、そして任意に組合せて設定することができる。確定された個別的装用状況は、まず第一に少なくとも1つの輝度目標値を含み、こうして眼鏡の個別的計画応用における光条件を記述する。好ましい1実施形態において、明所視輝度の領域(約3cd/m〜約30cd/mの範囲内の明るさ)で測定が1回行われ、そして薄明視輝度の領域(約0.003cd/m〜約30cd/mの範囲内の明るさ)で測定が1回行われる。これらの測定は、上記諸領域と暗順応領域(約3・10−6cd/m〜約0.03cd/mの範囲内の明るさ)との間の境界での測定によって補うことができる。
調節と焦点合わせとを考慮して、例えば実物体(例えば固視物体または近方読取試料)または結像(例えばDIASまたはCCDをベースにして眼科光学機器内で利用される投影システム)を利用することができる。それとともに、所定の(例えば無限遠、近用領域、または「靄」、つまり調節不可能な)距離に対する眼球調節が制御され得る。
さらに、視線方向を制御するために、もしくは特殊な固視位置または離接運動位置を生じるために、実物体(例えば固視物体、近方読取試料)、結像または固視標(すなわち、少なくとも1平面で偏光した光領域)を利用することができる。その際、ローリングを考慮することもできる。
次に、こうして取得された瞳孔位置および/または瞳孔寸法に関する諸情報は特に眼鏡レンズの心取りおよび/または最適化に援用することができる。組合せることもできるいくつかの可能性を以下に述べる。
実位置の考慮は主に、直視点の幾何学的位置を特定するときに行われる。その際、最も単純な事例では、取得された瞳孔位置および/または瞳孔寸法に関する諸情報は、(近用基準点または遠用基準点等の)個別的基準点もしくは直視点の位置を特定するのに援用される。この援用は、別の仕方で求めたフィッティング高さ、単眼瞳孔間距離等の変量を補正することによって行うこともできる。好ましい1実施形態において、特定された輝度および/または調節状態が近用基準点もしくは遠用基準点に割り当てられる。
特に瞳孔位置および/または瞳孔寸法に対する輝度の影響を記述するモデルと合わせて、累進屈折力レンズにおいて主注視線の正確な(水平方向および垂直方向)軌跡が、局所的に予定された諸条件(例えば調節状態もしくは輝度)に従って各点で連続して完全に最適化され得る。特別好ましくは、眼鏡レンズの最適化のとき、予定された諸条件(例えば調節状態もしくは輝度)のもとで実際の瞳孔位置および/または瞳孔寸法を考慮することが行われる。
既に上で触れたように、本発明が他の1態様において提案するのは、眼鏡レンズの最適化時および製造時に瞳孔遊び(つまり特に、個別的装用状況に対する瞳孔位置および/または瞳孔寸法の主に個別的な依存性)とそれと結びついた眼球屈折変化(もしくはそれに依存した屈折)とを考慮する可能性であって、個別的眼球の高次収差(HOA)が既知である必要はなく、もしくは個々に測定する必要もない。最後に指摘した点は従来一般に、高価な波面測定機器で求められるが、この波面測定機器はしばしば利用可能でない。
個々に最適化された眼鏡レンズ、特に累進屈折力レンズの開発により、その後、眼鏡装用者の瞳孔間距離、角膜頂点間距離、個別的眼鏡装用位置等の個別的特徴を考慮することが可能である。最新世代の眼鏡レンズでは、眼鏡レンズと眼球との界面で光が屈折するときに生じる高次収差、いわゆる”higher order aberrations”(HOA)をレンズの最適化時に付加的に考慮することさえ可能である。
このような眼鏡レンズの最適化は、特に本発明の好ましい1実施形態において、各眼球について個別に特定された波面の伝搬と計算とを内容としており、この波面は主に個々に特定された瞳孔にわたって延び、高次収差(HOA)からも低次収差(LOA)からも構成される。眼鏡レンズのLOAもHOAも眼鏡レンズの装用位置によって影響を受け、最適化に含まれる。同様に、眼球のHOAとLOA、そして自覚的に求めた屈折が最適化に含まれる。
波面追跡は瞳孔寸法と不可分に結び付いているので、この波面追跡も眼鏡レンズの最適化に一緒に含まれる。その際、装用状況において生じる瞳孔寸法は、例えば光反応または瞳孔近方反応等の生理的現象に起因して、例えば視線方向、輻輳、検討するシーンおよび/または物体距離の輝度等の単数または複数の変量の関数とすることができる。なかんずくこれに関連して、瞳孔寸法および/または瞳孔位置を本発明により個々に考慮することによって、眼鏡レンズの調整改善が達成される。瞳孔寸法および/または瞳孔位置だけでなく波面も個々に特定するために、例えばアベロメータを使用することができよう。このような機器は確かに眼鏡商にとって一般に調達に費用がかかり、それゆえに広く普及しているのではないが、しかし眼球の個別的波面収差を特定するためのごく正確な可能性を提供する。
既に触れたように本発明は1態様において、アベロメータをどこでも利用可能とする必要もなしに最新眼鏡レンズ技術の諸利点を網羅的に提供できることを可能とする選択的端緒を提案する。既に触れたように、個別眼球の高次収差(HOA)は既知である必要がなく、もしくは個々に測定する必要がない。このことは特に、個別的波面測定を省き、レンズ最適化に必要な個々に求めた波面を、場合によっては個々に求めた瞳孔寸法も、モデル想定に取り替えることによって達成される。ここに述べる方法で使用されるモデル想定によって、個人に眼鏡レンズが良好に手配される確率を従来の眼鏡レンズと比較して高めることが同時に達成される。これにより、本発明のこの態様に係る方法によって1群の諸個人に眼鏡レンズを手配することが全体として改善される。
本発明のこの態様を詳細に述べるために、特に以下の如くに理解すべきである幾つかの用語が以下で使用される。
用語「データ」(1群の眼球もしくは単一眼球のデータ)は主に、下記データすなわち、波面データ、輝度、瞳孔データ、屈折データ、「その他のデータ」の少なくとも1種を意味する。個々のデータ種は以下で解説される。
「波面データ」は、特に波面測定時に(または本発明の如くにモデル想定を基礎として)特定された波面を記述する。波面データは主に、定義された瞳孔寸法におけるゼルニケ多項式の係数、いわゆるゼルニケ係数として存在し、特にプリズム、球面、非点収差等の低次収差(LOA)と、特に3つ葉クローバー形収差、コマ収差および/または球面収差等の高次収差(HOA)とを含む。ゼルニケ係数は、実際に(個々に)特定もしくは測定された瞳孔寸法とは異なることのある標準瞳孔寸法に関して示しておくことができる。
「輝度」は特に、眼球に衝突する光もしくは眼球によって把握される光の照度を表す。
「瞳孔データ」は眼球入射瞳を特徴付け、特に瞳孔パラメータの瞳孔寸法(例えば瞳孔半径または瞳孔直径)を含み、好ましくは単数または複数の下記データすなわち、瞳孔中心(例えば頂点に対する瞳孔面積重心の相対的位置)、瞳孔変動の振幅、周辺輝度変化時の瞳孔寸法の変化も含む。瞳孔寸法は、好ましくは瞳孔中心も、波面測定時に存在しなければならない。しかしこれらのデータと別の瞳孔データは別の測定機器で特定することもできる。瞳孔データ中にある瞳孔寸法は特に、波面データのゼルニケ係数を示す標準瞳孔寸法とは相違することがある。
「屈折データ」は主に、無限遠の注視距離に関するまたは屈折を起こした別の注視距離に関する球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸を内容とし、そして有限読取距離(例えば40cm)において特定される加入度数もしくは球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸を内容とする。その際、球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸は等価な表現においていわゆるパワーベクトルとしても存在し得よう。
眼球の上記「その他のデータ」とは、以下において下記データすなわち、屈折時(もしくは屈折特定時)に眼球に衝突する(もしくは眼球によって把握される)輝度、瞳孔データ測定時に眼球に衝突する(もしくは眼球によって把握される)輝度、眼球の調節状態、眼球(つまり眼鏡装用者)の年齢、の少なくとも1種を意味する。
それとともに本発明は1態様において、主に上記態様の1つに従って眼鏡装用者の少なくとも片眼用に眼鏡レンズを最適化しかつ製造する方法を提案する。その際この方法は、眼鏡装用者の前記少なくとも片眼を特に含まない多数の眼球のデータの分布、特に測定されたデータの分布を準備することを含む。それとともに多数の眼球のこれらのデータは特に、統計的モデルの基礎として異なる物理的および/または生理的パラメータの間の諸関係を記述する(統計的)データセットの少なくとも一部を形成する。それに加えて、データ分布内のデータもしくは多数の眼球の眼球は物理的および/または生理的パラメータの点で少なくとも部分的に相違している。データ分布はサンプリングとしてまたは解析モデルの形で存在し得る。
好ましい1実施形態において、データ分布の準備は、多数の眼球の高次収差(HOA)の分布を準備することを含み、この分布は主にパラメータの瞳孔データおよび/または屈折データおよび/またはその他のデータに依存している。
本発明のこの態様において、本方法はさらに、眼鏡装用者の少なくとも片眼に関する物理的および/または生理的データを準備(特に測定)もしくは特定することを含む。眼鏡装用者の少なくとも片眼に関する物理的および/または生理的データの準備もしくは特定は主に、主に本発明の他の態様の少なくとも幾つかの上記詳細に従って、特に少なくとも2つの異なる基準点に関して前記少なくとも片眼の屈折データを準備(特に測定)もしくは特定することを含む。その際、準備され(特に測定され)もしくは特定されたこれらの物理的および/または生理的データは、準備された多数の眼球のデータ分布が直接依存しているこのようなパラメータに直接関係することができ、もしくはそれらを含むことができる。或はこれらのパラメータは、好ましい実施形態に基づいて後になお詳しく述べるように、準備され(特に測定され)もしくは特定された物理的および/または生理的データから他の関数関係に基づいて求められる。
本発明のこの態様による本方法はさらに、少なくとも1つの物理的および/または生理的条件のもとで前記少なくとも片眼の最確データを求めることを含む。その際特に、眼鏡装用者の少なくとも片眼に関する準備され(特に測定され)もしくは特定された物理的および/または生理的データ(諸条件)から、および/または他の(特に個別的装用状況に関する)物理的および/または生理的諸条件から、これらのデータの最確値が逆推定され、これらの最確値は、少なくとも片眼に関する準備された(統計的)データ分布に従って最も確率の高い値である。その際好ましい1実施形態において、瞳孔データと調節状態とから成る少なくとも1対における眼鏡装用者の少なくとも片眼の最確波面データが逆推定される。このように求めた最確データは次に眼鏡レンズの計算時または最適時に直接または間接的に使用することができる。
データを個々に測定する代わりに1つの(統計)モデル(もしくは複数の統計モデル)を頼りとする本発明のこの態様に関して、なかんずく波面データの特定時に上記改善と簡素化が得られるとしても、本発明のこの態様は、波面データとの関係で利用されることに限定されていない。物理的および/または生理的データもしくはパラメータの間の別の(統計的)関係も、当該個別データを特定するのにこうして援用することができる。このことは特に、予想される個別的瞳孔位置を特定し、および/または少なくとも片眼の瞳孔位置に対する前記少なくとも片眼で把握された光の輝度の個別的影響を特定し、および/または確定された輝度目標値のもとでその都度現れまたは予想される個別的瞳孔寸法を特定することに関係している。特定すべきデータは、眼鏡装用者の眼球に関する個々に求めたパラメータから成る統計的データセットに基づいて特定される。
本発明の特別好ましい実施形態のその他の詳細は以下で添付図面を参考に例示的に述べられる。
図1は本発明の好ましい1実施形態による方法の略流れ図である。 図2は本発明の他の好ましい1実施形態による方法の略流れ図である。 図3は本発明の他の好ましい1実施形態による、特に図2による方法の他の細部の略流れ図である。
好ましい1実施形態において方法(特に、個別的眼鏡レンズを調整する方法もしくは眼鏡レンズを最適化しかつ製造する方法)は特に、図1に示す以下で説明する方法ステップを含む。
ステップA1a:物理的および/または生理的パラメータに依存した1群(多数)の眼球のデータの分布を準備する。1群の眼球のデータの分布は、サンプリングとしてまたは解析モデルの形で準備することができ、1群の眼球に関して既知の統計情報を表す。それゆえに、準備されたこのデータ分布は、ここでは統計データセットとも称する。1群の眼球の考えられるデータは例えば、波面データ、輝度、瞳孔データ、屈折データまたはその他の眼球データ、そしてそれらの組合せである。主に、これらのデータの少なくとも1構成要素と以下でパラメータと称する少なくとも1つの他の影響量との間の統計的関係が、やはり分布中に示されている。パラメータは物理的なものまたは生理的なものとすることができる。考えられるパラメータは瞳孔データ、屈折データ、輝度、その他のデータ、またはそれらの組合せである。
好ましい1実施形態によるこのような分布の考えられる解析モデルは、ベクトル値回帰関数と多変量正規分布回帰誤差とから成る。回帰関数も、回帰誤差の共分散行列も、パラメータのうち少なくとも1つのパラメータのベクトル値関数もしくは行列値関数である。回帰関数と共分散行列は代表的にはサンプリングの、共分散行列で重み付けされた2乗誤差を最小にすることによって得られる。
回帰関数の各成分は、パラメータの部分的に定義された多項式の形で存在することができ、これらの成分に割り当てられたデータ型式の平均的パラメータ依存性を示す。このような関数は特に、部分的にパラメータの定数関数、一次関数または二次関数とすることができる。多変量正規分布回帰誤差は、必ずしもではないが、非対角線状共分散行列を有することができ、この行列はやはりパラメータの関数とすることができる。このような関数(すなわち、共分散行列の各要素)は、回帰関数と同様にそれ自身部分的にパラメータの定数関数、一次関数または二次関数として近似しておくことができる。特に回帰誤差がパラメータに左右されない場合、共分散行列はパラメータの定数関数である。個々の成分の間に統計的関係が生じない場合、共分散行列は対角線状である。
ステップA1b:単一眼球の物理的および/または生理的データを準備する。このステップでは、それについて眼鏡レンズを計算しなければならない単一眼球の物理的または生理的データが準備される。
ステップA1c:場合によっては、ステップA1aにおける分布の単数または複数のパラメータに一致した片眼の最確データWD1を準備する。必要なら、それについて眼鏡レンズを計算しなければならない眼球の最確データWD1が準備される。眼球の最確データはステップA1aで準備される分布を左右する単数または複数のパラメータに一致している。
ステップA1d:場合によっては、ステップA1aで準備される分布のパラメータとステップA1bおよび/またはステップA1cで準備される片眼のデータとの間に、少なくとも1つの関数関係を準備する。ステップA1aで準備される分布の単数または複数のパラメータとステップA1bで準備される単数または複数の物理的および/または生理的データまたはステップA1cで準備される最確データとの間に、統計的関係が後続ステップA2において必要とされるが、しかし直接の統計的関係を準備することが可能でない限り、付加的に関数関係を準備しなければならない。その際この関数関係は付加的源から取得することができ、平均して存在する統計的関係を表す。
ステップA2:少なくとも1つの物理的および/または生理的条件において、片眼の最確データWD2を逆推定する。必要なら、まずステップA1dの(単数または複数の)関数関係は、ステップA1bもしくはA1cで眼球に関して準備されたデータおよび/または最確データWD1を、ステップA1aで準備された分布を左右するパラメータに換算するのに利用される。
主にまず、ステップA1dで準備された関数関係を頼りに場合によっては事前に計算されたデータであるステップA1bで準備された眼球データおよび/またはステップA1cで準備されたこの眼球の最確データWD1に関して、ステップA1aで準備されたデータ分布を評価することによって、1群の眼球のデータの条件付き分布が計算される。
1群の眼球のデータ分布がサンプリングとして与えられている場合、条件付き分布は、サンプリングのうちそのパラメータとステップA1bおよび/またはA1cで準備されたデータもしくは最確データWD1との違いが十分に僅かであるサンプリング部分である。1群の眼球のデータ分布が解析的近似式として存在する場合、条件付き分布は、最確データWD1および/または単一眼球の物理的/生理的データを解析的近似式に挿入することによって計算される。特に1群の眼球のデータ分布が回帰モデルとして与えられている場合、条件付きデータ分布は、前記眼球のデータもしくは最確データWD1を回帰関数と共分散行列とに挿入することによって得られる。
ステップA1aで準備されたデータの条件付き分布は主に、眼鏡レンズの計算時に必要とされる単数または複数の物理的および/または生理的諸条件のもとで同様に得られる。このため、事前に求めた条件付き分布は、各物理的および/または生理的諸条件のもとで評価される。これらの条件のもとでの単一眼球の最確データWD2は、この条件付き分布の極大によって与えられている。上で計算した最確データWD2は、単一眼球の最確データWD2に対してステップA1bとA1cで準備されたデータを考慮して補われ得る。
ステップA3:眼鏡レンズの計算時または最適化時にステップA2の片眼の最確データWD2を、直接または間接的に使用する。先行ステップで求めた片眼の最確データWD2は次に、眼鏡レンズの計算時に使用される。このことは、ステップA3が眼鏡レンズの計算を含むように直接行われ得る。最確データWD2の他に、例えば個々に求めた眼球屈折等の別の情報も計算に含まれる。或は、最確データWD2は、他の方法ステップにおいてステップA1cと同様にこの最確データを使用することによって眼鏡レンズの計算に間接的に含まれ得る。
特に図1に関連して述べた方法の好ましい特殊事例と見做すことのできる方法の他の好ましい1実施形態が、以下で図2を参考に述べられる。ここに述べる方法は特に、図2に示す方法ステップを含む。
ステップB1a:主にパラメータの瞳孔データおよび/または屈折データおよび/またはその他のデータに依存した1群の眼球のHOAの分布を準備する。この分布は、サンプリングとしてまたは解析モデルの形で存在し得る。この分布は、標準瞳孔に関して示された高次収差(HOA)のゼルニケ係数に関する統計情報を表すが、この統計情報は、1群の眼球に関して既知である。可能なら、標準瞳孔について示された少なくとも1つのゼルニケ係数と以下でパラメータと称する少なくとも1つの他の影響量との間の統計関係を、分布内で表しておくべきであろう。考えられるパラメータは瞳孔データ、屈折データおよび/またはその他のデータである。
このような分布の考えられる解析モデルは、ベクトル値回帰関数と多変量正規分布回帰誤差とから成る。回帰関数も、回帰誤差の共分散行列も、下記パラメータのうち少なくとも1つのパラメータのベクトル値関数もしくは行列値関数である。瞳孔パラメータ、パワーベクトル図の屈折データ、加入度数、年齢、調節状態、標準瞳孔にスケーリングされたゼルニケ係数のLOA。その際、屈折データは、自覚的に特定された屈折データ、或は、ゼルニケ係数および瞳孔寸法として好適に特定された他覚屈折データとすることができる。回帰関数と共分散行列は、代表的にはサンプリングの、共分散行列で重み付けされた2乗誤差を最小にすることによって得られる。
回帰関数の各成分は、上記パラメータの部分的に定義された多項式の形で存在することができ、これらの成分に割り当てられたゼルニケ係数の平均的パラメータ依存性を示す。ゼルニケ係数は、1つの標準瞳孔について示されている。特に、このような関数は部分的にパラメータの定数関数、一次関数または二次関数とすることができる。多変量正規分布回帰誤差は、必ずしもではないが、やはり上記パラメータの関数とすることのできる非対角線状共分散行列を有することができる。このような関数(すなわち、共分散行列の各要素)は、回帰関数と同様にそれ自身部分的にパラメータの定数関数、一次関数または二次関数として近似しておくことができる。特に回帰誤差がパラメータに左右されない場合、共分散行列は、パラメータの定数関数である。個々のゼルニケ係数の間に統計的関係が生じない場合、共分散行列は対角線状である。
Figure 2015500513
このようなモデルは特に、Salmon et al.(例えば、所収”Normal-eye Zernike coefficients and root-mean-square wavefront errors”、J Catatact Refract Surg、第32巻、頁2064〜2074、2006年)によって公表されたデータから求めることができる。左眼は、垂線での反射によって右眼に転換された。平均値が右眼に適用される。ラジアル次数3〜5のゼルニケ係数は5mmの瞳孔直径と0ディオプトリの調節とに関して示されている。
Figure 2015500513
Figure 2015500513
Figure 2015500513
ここでゼルニケ係数の平均値はすべて調節状態の定数関数である。しかし当該ゼルニケ係数が眼球の調節状態に依存して存在する場合、モデルは問題なく拡張することができよう。
ステップB1b:或る眼球の屈折データと、この眼球の主にその他のデータとを準備する。標準的に例えば眼鏡商、眼科医、検眼士または機器によって把握される眼球屈折(球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸、遠用および/または近用、加入度数)が準備され、必要なら、パワーベクトル表記に換算される。必要なら、例えば眼球の調節状態および/または眼球の年齢等のその他のデータも調べられる。
ステップB1c:少なくとも1つの輝度における同じ眼球の最確瞳孔データを準備する。瞳孔寸法と主に頂点に対する相対的瞳孔位置を含む特定眼球の最確瞳孔データが、準備される。好ましくは、これは本明細書に示した方法で行われる(特に、以下で特に図3に関連して述べる好ましい実施形態による特定眼球の最確瞳孔データを特定するための当該詳細参照)。
最確瞳孔データは、極力、この眼球の測定に依拠している。このような測定が十分には存在していない場合、またはこれらの測定が過度に不正確である場合、最確瞳孔データは、眼球屈折データおよび/またはその他のデータに左右されることのある考えられる瞳孔データの分布から求められる(補助方法参照)。最確瞳孔データは、各個別的輝度に関する数値(瞳孔寸法と場合によっては頂点に対する相対的瞳孔位置)から成り、或は、輝度の関数として存在する。
考えられる瞳孔データの分布は、可能と見做される瞳孔データを表し、分布は、極力この眼球の測定に依拠している。その際、分布の幅(標準偏差)は、測定の標準誤差に一致している。測定が十分に正確でなくまたは少なすぎる場合、この眼球の考えられる瞳孔データの分布は、眼球の屈折データおよび/またはその他のデータに左右されることのある1群の眼球の瞳孔データの分布で補われる(特に、以下で特に図3に関連して述べられる好ましい実施形態に従って特定眼球の最確瞳孔データを特定するための当該詳述参照)。
最確瞳孔データは、後にステップB3で眼鏡レンズを最適化するときに必要とされる少なくとも1つの輝度もしくは前記眼球の屈折中に存在する少なくとも1つの輝度においてそれぞれ与えられている。特に、少なくとも1つの輝度とは輝度連続体を意味し、こうしてこれらの輝度における最確瞳孔データと主に、考えられる瞳孔データの分布は、任意の各輝度について示すことができる。
ステップB1d:場合によっては、B1aで準備された分布のパラメータとB1bで準備されたデータとの間に少なくとも1つの関数関係を準備する。特定された影響量(例えば加入度数)とHOAとの間の統計的関係が他のステップ(B2)において必要とされるが、しかし例えばこれらの影響量とHOAとの連結サンプリングが存在しないことからこれらの影響量とHOAとの間に直接の統計的関係を準備することが可能でない限り、前記影響量と別の影響量(例えば年齢)との間に関数関係を付加的に準備しなければならず、前記影響量と別の影響量との間に(例えば年齢と加入度数との間に)直接の統計的関係が存在していなければならない。
考えられる関数関係は、年齢と老視時の調節幅との関係、いわゆるデュエーン曲線である。この関係は例えばAtchisonとSmith("The aging eye”、所収:Optics of the Human Eye、Edinburgh、Elsevier Science Ltd.、200、頁221〜233)から読み取ることができる。加入度数を調節幅の2/3として選択する通常の実務を利用して、加入度数と年齢45才〜60才との間に関数関係が得られる。
年齢=59.2才+5.77才/ディオプトリ(加入度数+AN)
式中、ANは屈折距離の近似的逆数、一般に−2.5ディオプトリである。他の関数関係は、眼球の調節状態と屈折データとの関係である。
ステップB2:瞳孔データと調節状態とから成る少なくとも1対における片眼の最確波面データを逆推定する。必要なら、まずステップB1dの(単数または複数の)関数関係はステップB1bで眼球について準備されたデータを、ステップB1aで準備された分布を左右するパラメータに換算するのに利用される。例えば、年齢に依存した瞳孔データの分布がステップB1aに存在し、かつ屈折データに含まれた前記眼球の加入度数がステップB1bで準備されたなら、屈折データに含まれた加入度数は年齢に換算されねばならない。
次に、ステップB1dで準備された関数関係を頼りに、場合によっては事前に計算されたデータであるステップB1bで準備された片眼の屈折データおよび/またはこの眼球のその他のデータおよび/またはステップB1cで準備されたこの眼球の最確瞳孔データに関してB1aで準備されたHOA分布を評価することによって、1群の眼球の条件付きHOA分布が計算される。この条件付きHOA分布は一般に標準瞳孔について存在する。
1群の眼球のHOA分布がサンプリングとして与えられている場合、条件付き分布は、サンプリングのうちそのデータ(最確瞳孔データおよび/または屈折データおよび/またはその他のデータ)が片眼のデータの十分近傍にあるサンプリング部分である。1群の眼球のHOA分布が解析的近似式として存在する場合、条件付き分布は、前記眼球の最確瞳孔データおよび/または屈折データおよび/またはその他のデータを解析的近似式に挿入することによって計算される。特にHOA分布が回帰モデルとして与えられている場合、条件付きHOA分布は前記眼球のデータを回帰関数と共分散行列とに挿入することによって得られる。
同様に、眼球の単数または複数の調節状態における条件付きHOA分布は、最適化のために後にステップB3で必要とされるが、当該調節状態における条件付きHOA分布を評価することによって得られる。各調節状態における最確HOAは、この分布の極大によって与えられている。
指定調節状態と瞳孔データとにおいて最確波面データを計算するには、各HOAを補足して低次収差(LOA)も求めねばならない。その際、各調節状態における最確HOAに関してLOAは、好適な測定法に基づいてLOAと最確HOAと屈折時に生じる最確瞳孔データとから計算した他覚屈折がステップB1bで準備された自覚屈折と同一になるように調整される。
こうして取得された最確波面データは最後に、眼鏡レンズの計算時または最適化時に必要とされる瞳孔データについて示される(ステップB3)。これらの瞳孔データは最確瞳孔データとしてステップB1cにおいて準備される。このステップは特に、ゼルニケ係数を所定の瞳孔寸法に再スケーリングすることを含む。最確波面データは瞳孔データと調節状態とから成る少なくとも1対について存在する。
ステップB3:屈折データと最確瞳孔データと最確波面データとを利用して眼鏡レンズを最適化する。このステップでは、屈折データと波面データと瞳孔データとを考慮して眼鏡レンズを最適化するために、通常の方法が用いられる。その際波面データは、ステップB2で求めた最確波面データによって与えられており、瞳孔データはステップB1cで求めた最確瞳孔データによって与えられている。こうして最適化された眼鏡レンズは、前記眼球が良好に眼科処置される確率を高め、これにより全体として1群の個人の眼科処置を改善する。
本発明の他の好ましい1実施形態は、単一眼球の最確瞳孔データを用いて眼鏡レンズを最適化する方法を提案する。好ましい1実施形態による特定眼球の最確瞳孔データの特定が図3に略示してある。この方法で特定された最確瞳孔データは主にステップB1cで再利用され、主に最終的にはステップB3における眼鏡レンズの最適化に含まれる。この方法は主に、単一眼球の最確データを用いて眼鏡レンズを最適化する方法の特殊事例である。図3によるこの好ましい方法の個々のステップを以下に述べる。
ステップC1a:パラメータの輝度と主に屈折データおよび/またはその他のデータとに依存した1群の眼球の瞳孔データの分布を準備する。主にまず、準備される1群の眼球の瞳孔データの分布は、パラメータの輝度に依存し、可能なら、屈折データおよび/またはその他のデータにも依存している。この分布はステップB1aと同様にサンプリングとしてまたは解析モデルの形で存在し得る。この分布は、1群の眼球の瞳孔データと屈折データおよび/またはその他のデータに関する、1群の眼球について既知の統計情報を表す。
このような分布の考えられる解析モデルは、ベクトル値回帰関数と多変量正規分布回帰誤差とから成る(ステップB1aにおけるゼルニケ係数の分布の解析モデルの項参照)。回帰関数も、回帰誤差の共分散行列も、下記パラメータすなわち、パワーベクトル図の屈折、加入度数、年齢、調節状態、特に輝度もしくは輝度対数のうち少なくとも1つのパラメータのベクトル値関数もしくは行列値関数である。回帰関数と共分散行列は主に、共分散行列で重み付けされたサンプリング2乗誤差を最小にすることによって得られる。回帰関数の各成分は、上記パラメータの部分的に定義された多項式の形で存在し得、これらの成分に割り当てられた各瞳孔データの平均的パラメータ依存性、例えば瞳孔寸法の輝度依存性および/または頂点に対する相対的瞳孔位置の輝度依存性を示す。特にこのような関数は部分的にパラメータの定数関数、一次関数または二次関数とすることができる。
多変量正規分布回帰誤差は、必ずしもではないが、やはり上記パラメータの1つの関数とすることのできる非対角線状共分散行列を有することができる。このような関数(すなわち、共分散行列の各要素)は、回帰関数と同様にそれ自身部分的にパラメータの定数関数、一次関数または二次関数として近似しておくことができる。特に回帰誤差がパラメータに左右されない場合、共分散行列はパラメータの定数関数である。瞳孔データの個々の成分の間に統計的関係が生じない場合、共分散行列は対角線状である。
Figure 2015500513
Figure 2015500513
Figure 2015500513
Figure 2015500513
この分布は、Winn et al.によれば、
Figure 2015500513
として、
Figure 2015500513
によって与えられている。
ステップC1b:少なくとも1つの輝度における或る眼球の屈折データおよび/または同じ眼球のその他のデータと主に同じ眼球の瞳孔データとを準備する。主にこのステップはステップB1bと同様に推移し、これは或る眼球の屈折データおよび/またはこの眼球のその他のデータを準備することに関係している。可能なら、少なくとも1つの輝度における眼球瞳孔データがやはり準備され、これは例えば1つの機器での測定または手動測定によって行うことができる。
ステップC1c:場合によっては、C1aで準備された分布のパラメータとC1bで準備されたデータとの間に少なくとも1つの関数関係を準備する。主にステップB1dと同様に、必要なら、瞳孔データではないがC1cで準備された分布パラメータと屈折データではないがステップC1bで用いられるデータとの間に関数関係が実現される。考えられる関数関係は、ステップB1dで指摘された年齢と加入度数との間の関係である。
ステップC2:少なくとも1つの輝度における片眼の最確瞳孔データを逆推定する。少なくとも1つの輝度における前記眼球の最確瞳孔データが推定される。その際、単数もしくは複数の前記輝度は少なくとも、屈折時に存在する輝度、そしてステップB3で眼鏡レンズの最適化時に必要とされるその他の輝度である。必要なら、まずステップC1cの(単数または複数の)関数関係はステップC1bで眼球について準備されたデータを、ステップC1aで準備された分布を左右するパラメータに換算するのに利用される。例えば、瞳孔データと年齢との分布がステップC1aに存在し、かつ屈折データに含まれた前記眼球の加入度数がステップC1bで準備されたなら、屈折データに含まれた加入度数は年齢に換算することができる。
単一輝度における単数または複数の瞳孔データがC1bで準備されなかった場合、片眼の所定の屈折データおよび/またはその他のデータにおいてC1aで準備された分布を評価することによって、1群の眼球の輝度依存瞳孔データの条件付き分布がまず計算される。片眼の屈折データおよび/またはその他のデータは、場合によっては、C1cで準備される関数関係を頼りに計算しておくこともできる。
1群の眼球の輝度依存瞳孔データの分布がサンプリングとして与えられている場合、条件付き分布は、サンプリングのうち屈折データおよび/またはその他のデータに関して片眼の屈折データおよび/またはその他のデータとの違いが十分に僅かであるサンプリング部分である。1群の眼球の輝度依存瞳孔データの分布が解析的近似式として存在する場合、条件付き分布は、前記眼球の屈折データおよび/またはその他のデータを解析的近似式に挿入することによって計算される。
前記眼球の瞳孔データがC1bで準備されなかった場合、最確瞳孔データは、当該輝度において評価した条件付き瞳孔データ分布の極大と同一である。この分布が特に、回帰関数と正規分布回帰誤差とから成る解析的近似式として与えられている場合、最確瞳孔データは、前記眼球の屈折データおよび/またはその他のデータと当該輝度とを挿入された回帰関数の値によって与えられている。
しかし前記眼球の瞳孔データがC1bで準備されたなら、以下の諸事例を区別することができる。
事例1:2つ以上の輝度における瞳孔データを準備する。その場合最確瞳孔データは、準備された瞳孔データであるか、或は、別の輝度において最確瞳孔データを求めるべきである場合、準備された瞳孔データの補間および/または外挿によって計算される。その際、輝度の対数に依存した瞳孔データは線形となり、またはスプラインによって補間もしくは外挿される。ステップC1aで準備される分布は前記眼球の瞳孔データに関する情報をこの眼球に関する準備された瞳孔データよりもはるかに少なく含むので、この場合瞳孔データの条件付き分布は前記眼球の最確瞳孔データの計算に含まれない。
事例2:単一輝度における瞳孔データを準備する。準備された瞳孔データから別の輝度における瞳孔データを推定するために、1群の眼球の輝度依存瞳孔データの条件付き分布が、準備された瞳孔データと一緒に用いられる。その際、条件付き分布は、前記眼球について準備された瞳孔データに関して評価され、こうして少なくとも1つの輝度における瞳孔データの他の条件付き分布が得られる。少なくとも1つの輝度における最確瞳孔データは当該輝度における前記他の条件付き分布の極大によって与えられている。
ステップC3:ステップB1cで準備して眼鏡レンズを計算することに、C2で特定した片眼の最確瞳孔データを使用する。少なくとも1つの輝度においてこうして特定された前記眼球の最確瞳孔データは、ステップB1cでそれを準備するのに用いられる。これによりこの最確瞳孔データはステップB3における眼鏡レンズの最適化に含まれる。

Claims (18)

  1. 眼鏡装用者の少なくとも片眼用に個別的眼鏡レンズを調整する方法であって、
    前記少なくとも片眼によって把握される光の少なくとも1つの輝度目標値を含む個別的装用状況を確定することを含み、
    前記少なくとも片眼の少なくとも1つの視線方向において前記少なくとも1つの輝度目標値のもとで現れまたは予想される個別的瞳孔位置を特定することを含み、
    前記少なくとも1つの視線方向に関して必要とされる個別的屈折データの補正を前記眼鏡レンズが生じさせることになる眼鏡レンズ基準点を特定することを含み、
    前記特定された個別的瞳孔位置値に依存して前記眼鏡レンズの前記少なくとも1つの基準点が前記眼鏡装用者の前記少なくとも片眼の前に配置されるように前記眼鏡レンズを準備しかつ配置することを含む方法。
  2. 眼鏡装用者の少なくとも片眼用に個別的眼鏡レンズを最適化しかつ製造する方法であって、
    少なくとも片眼によって把握されるべき光の1つの輝度目標値を少なくとも2つの異なる眼鏡レンズの基準点についてそれぞれ確定する、個別的装用状況を確定することを含み、
    前記少なくとも2つの異なる基準点に関して前記少なくとも片眼の屈折データを特定することを含み、
    前記少なくとも片眼によって把握される光の輝度が前記少なくとも片眼の瞳孔位置に及ぼす個別的影響を特定することを含み、
    前記少なくとも片眼の複数の瞳孔位置において前記基準点について特定された屈折データの補正を生じさせる眼鏡レンズを、最適化しかつ製造することを含み、前記複数の瞳孔位置は、前記基準点について確定された輝度目標値に関して前記瞳孔位置に対する前記輝度の特定された影響から生じる方法。
  3. 前記方法は、前記確定された輝度目標値のもとでその都度現れまたは予想される個別的瞳孔寸法を特定することを含み、
    前記眼鏡レンズの最適化は、目的関数を最小にすることを含み、前記目的関数は、前記少なくとも2つの基準点に関して、前記各基準点についてそれぞれ特定された屈折データの補正に重み付けし、
    前記補正は、前記各基準点の周辺で前記眼鏡レンズによって引き起こされたものであり、
    前記各基準点の周辺の寸法は、前記各基準点について特定される個別的瞳孔寸法に依存して選択される、請求項2に記載の方法。
  4. 少なくとも1つの他の物理的および/または生理的パラメータの点で少なくとも部分的に相違する多数の眼球について少なくとも高次収差を記述する屈折データの分布を準備することをさらに含み、
    前記眼鏡装用者の前記少なくとも片眼に関する前記少なくとも1つの他の物理的および/または生理的パラメータの値を特定することを含み、
    前記少なくとも片眼に関する前記少なくとも1つの他の物理的および/または生理的パラメータの前記特定された値のもとで利用者の前記少なくとも片眼の前記高次収差の最確値を特定することを含み、前記最確値は、前記準備された屈折データ分布に従って最も確率の高い値であり、
    前記眼鏡レンズは、眼鏡レンズが前記高次収差を特定された前記最確値に従って少なくとも部分的に補正するように最適化される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記予想される個別的瞳孔位置の前記特定および/または前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法に対する前記輝度の個別的影響の前記特定は、
    前記少なくとも片眼によって把握される前記輝度が前記個別的装用状況において確定された少なくとも1つの輝度目標値に一致することになる測定条件を適合することと、
    前記適合された測定条件のもとで前記少なくとも片眼の前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法を把握することと、を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記予想される個別的瞳孔位置の前記特定および/または前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法に対する前記輝度の個別的影響の前記特定は、
    前記少なくとも片眼によって把握される前記輝度と前記瞳孔位置もしくは前記瞳孔寸法との間の関係を確定することを含み、前記確定された関係が少なくとも1つの個別的調整パラメータを有し、
    前記少なくとも片眼によって把握される輝度と一緒に前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法を求めることを含み、
    前記求めた瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法とこれと一緒に求められる前記輝度とから前記少なくとも1つの個別的調整パラメータを特定することを含み、そして
    前記少なくとも片眼によって把握される前記輝度と前記瞳孔位置もしくは前記瞳孔寸法との間の前記確定された関係から、前記特定された個別的調整パラメータを考慮して、前記所定の輝度目標値のもとで予想される前記個別的瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法を求めることを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法と一緒に求められ前記少なくとも片眼によって把握される前記輝度が、輝度センサによって測定される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記少なくとも片眼によって把握される輝度と一緒に前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法を求めることは、
    輝度参照物体が前記少なくとも片眼と同じ輝度に曝されているように前記輝度参照物体を前記少なくとも片眼の近傍に配置することを含み、
    前記輝度参照物体と一緒に前記少なくとも片眼の画像データを把握することを含み、そして
    前記画像データ内で前記輝度参照物体の図から前記輝度を特定することを含む、請求項6に記載の方法。
  9. 前記予想される個別的瞳孔位置の前記特定および/または前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法に対する前記輝度の前記個別的影響の前記特定は、頭部固定座標系に対する前記瞳孔の相対的位置を測定することを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記予想される個別的瞳孔位置の前記特定および/または前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法に対する前記輝度の前記個別的影響の前記特定は、前記少なくとも片眼の特異特徴に対する前記瞳孔の相対的位置を測定することを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記予想される個別的瞳孔位置の前記特定および/または前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法に対する前記輝度の前記個別的影響の前記特定は、固視物体および/または固視標によって1つの視線方向を設定することを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 約3cd/m〜約30cd/mの範囲内の第1明るさにおいて前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法の測定が1回行われ、そして約0.003cd/m〜約30cd/mの範囲内、好ましくは約0.003cd/m〜約3cd/mの範囲内、特に好ましくは約0.003cd/m〜約0.3cd/mの範囲内、大抵の場合好ましくは約0.003cd/m〜約0.03cd/mの範囲内の第2明るさにおいて前記瞳孔位置および/または前記瞳孔寸法の測定が1回行われる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 少なくとも片眼の少なくとも1つの瞳孔位置を確定する個別的利用者データを把握する測定装置であって、
    前記少なくとも片眼によって把握される輝度を特定するように設計された照明機構と、
    位置基準点と一緒に前記瞳孔の画像データを把握するように設計された撮像機構と、を含む、測定装置。
  14. 前記少なくとも片眼によって把握される前記輝度を測定するように設計された輝度センサを含む、請求項13に記載の測定装置。
  15. 少なくとも片眼の少なくとも瞳孔位置を確定する個別的利用者データを把握する測定装置であって、
    前記少なくとも片眼によって把握される輝度を測定するように設計された輝度センサと、
    位置基準点と一緒に前記瞳孔の画像データを把握するように設計された撮像機構と、を含む、測定装置。
  16. 少なくとも1つの輝度目標値の設定値を把握する装用データ把握インタフェースと、
    前記少なくとも片眼によって把握される光が、把握された輝度の目標値に一致するよう、前記照明機構の前記輝度を制御または調節するように設計された照明制御機構と、を含む、請求項13または14に記載の測定装置。
  17. 眼球の視線方向を制御するための固視標および/または固視物体および/または固視投影機構を含む、請求項13〜16のいずれか1項に記載の測定装置。
  18. ビデオ心取り装置として、および/または自動屈折計および/またはアベロメータおよび/またはケラトグラフおよび/またはトノグラフおよび/またはパキメータとして形成されている、請求項13〜17のいずれか1項に記載の測定装置。
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