以下、本発明の一実施形態にかかる表示装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる表示装置は、可視光に対して透過状態と散乱状態とを切り替え可能な第1表示部と、第1表示部に投影する映像と、第1表示部の散乱状態と、が同期するように制御する制御部と、第1表示部の観察者側に配置されて観察者の操作入力位置を検出するとともに可視光に対して透明な入力位置検出部と、第1表示部と離間して配置され、観察者が第1表示部を透過して視認可能な第2表示部と、を有している。このようにすることにより、第1表示部および入力位置検出部が第2表示部と離間しているので、2つの映像が離れて表示されることにより、奥行き感などの立体感を持たせることができる。また、観察者が入力位置検出部へ操作を入力することにより、第2表示部の表示が変化すれば、映像よりも手前で操作しているような仮想現実感を持たせることができる。
また、入力位置検出部の操作入力位置を第2表示部に合わせるように調整する調整部を有してもよい。このようにすることにより、離間している第2表示部の表示位置に合わせて入力位置検出部から入力操作をすることができるようになる。
また、第2表示部の複数の位置に位置合わせ用のマーカーを表示し、調整部は、観察者が入力位置検出部からマーカーの位置として入力した位置に基づいて調整を行ってもよい。このようにすることにより、例えば、第2表示部の四隅にマーカーを表示させ、そのマーカーの位置を入力位置検出部から操作を入力させることにより、入力位置検出部の操作入力位置を第2表示部に対応させるようにすることができる。
また、第1表示部の複数の位置に位置合わせ用の第1マーカーを表示するとともに、第2表示部の第1マーカーと対応する複数の位置に位置合わせ用の第2マーカーを表示し、調整部は、第1マーカーと第2マーカーとに基づいて調整を行ってもよい。このようにすることにより、2つのマーカーを合わせることによって調整をすることができる。
また、調整部は、第1マーカーを対応する第2マーカーと重なる位置に移動させる動作に基づいて調整を行ってもよい。このようにすることにより、観察者は、第1マーカーの移動を確認しながら調整をすることができ、調整処理時の操作性と精度を向上させることができる。
また、第1表示部と観察者との相対位置を調整することによって第1マーカーと第2マーカーとが重なるように合わせる調整を行ってもよい。このようにすることにより、観察者の視点位置の移動により調整をすることができる。
また、第1表示部には、第2表示部を操作するための画像が表示されてもよい。このようにすることにより、第1表示部の画像に基づいて第2表示部を操作することができる。したがって、映像よりも手前で操作しているような仮想現実感を持たせることができる。
また、第1表示部と第2表示部とは、互いの表示面が平行とならないように固定されていてもよい。このようにすることにより、第1表示部に投影する映像と第2表示部とが干渉しないように配置しながら、装置の奥行きを短くすることができる。
また、本発明の一実施形態にかかる表示装置の制御方法は、可視光に対して透過状態と散乱状態とを切り替え可能な第1表示部と、第1表示部の観察者側に配置されて観察者の操作入力位置を検出するとともに可視光に対して透明な入力位置検出部と、第1表示部と離間して配置され、観察者が第1表示部を透過して視認可能な第2表示部と、を有する表示装置の制御方法であって、第1表示部に投影する映像と、第1表示部の散乱状態と、が同期するように制御する制御工程と、前記入力位置検出部の操作入力位置を第2表示部に合わせるように調整する調整工程と、を含んでいる。このようにすることにより、第1表示部および入力位置検出部が第2表示部と離間しているので、2つの映像が離れて表示されることにより、奥行き感などの立体感を持たせることができる。また、例えば入力位置検出部へ操作を入力することにより、第2表示部の表示が変化すれば、映像よりも手前で操作しているような仮想現実感を持たせることができる。さらに、調整工程により、離間している第2表示部の表示位置に合わせて入力位置検出部から入力操作をすることができるようになる。
また、上述した表示装置の制御方法を、コンピュータにより実行させることを特徴とする表示制御プログラムとしてもよい。このようにすることにより、可視光に対して透過状態と散乱状態とを切り替え可能な第1表示部と、第1表示部の観察者側に配置されて観察者の操作入力位置を検出するとともに可視光に対して透明な入力位置検出部と、第1表示部と離間して配置され、観察者が第1表示部を透過して視認可能な第2表示部と、を有する表示装置をコンピュータを用いて制御することができる。
また、上述した表示制御プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
本発明の第1の実施例にかかる表示装置1を有する表示システム5を図1乃至図5を参照して説明する。表示システム5は、図1に示すように、プロジェクタ11と、スクリーン21と、タイミング制御装置31と、タッチパネル41と、不透明ディスプレイ51と、ミラー61と、筐体71と、を有している。表示装置1は、前記したスクリーン21と、タイミング制御装置31と、タッチパネル41と、不透明ディスプレイ51と、を有して構成されている。
図2に、光学状態を制御可能なスクリーン21およびタッチパネル41の模式的な断面図を示す。図2に示したスクリーン21は、一対の透明なガラス基板23、24の間に液晶を含む複合材料を挟み込んだ光学層である調光部25を有する。一方のガラス基板24の調光部25側には、全面に対向電極26が形成される。他方のガラス基板23の調光部25側には、全面に制御電極27が形成される。なお、電極26、27と調光部25との間に、絶縁体からなる中間層を形成してもよい。
スクリーン21は、電圧の印加により光学状態を変化できる素子や材料により構成された調光部25を備えている。調光部25の光学状態は、散乱状態が映像を表示する状態であり、それよりも入射光(可視光)の散乱が小さく且つ光線の直線透過率が高い透明な透過状態が映像を表示しない非映像表示状態である。調光部25は、対向電極26と制御電極27との間に配置される。即ち、調光部25は、2つの電極間に挟持され、2つの電極間に印加された電圧によって光学状態を透過状態と散乱状態とに切り替え可能である。したがって、スクリーン21が第1表示部として機能する。
調光部25には、光学状態を散乱状態と透明状態とを切り替えることができるもの、例えば、高分子中にネマティック液晶ドメインを分布させた所謂高分子分散液晶(PDLC)を用いることができる。また、電圧を印加しない状態において高分子ネットワークがドメインを形成する液晶分子の配向と関連付けられている複合材料を用いれば、より良好な光学状態を実現できる。
PDLCを用いた例としては、光重合性モノマー、ネマティック液晶及び重合開始材料を適量混合し、調光部材を構成するガラスや樹脂の5から50マイクロメートル程度の基板間に配置せしめ、モノマーと液晶が相分離する温度など条件において紫外線を照射することで、高分子中に液晶ドメインを分散させることができる。この場合、通常電圧を印加しない場合に高分子と液晶の屈折率差による散乱が大きく、電場により液晶を配列させた場合に基板法線方向の屈折率差が小さくなるように設計され、ノーマルモードと呼ばれる。この他、ネマティック液晶を含むカプセルをモノマー及び重合開始剤と混合したものを用いることもできる。
電圧を印加しない状態において高分子ネットワークがドメインを形成する液晶分子の配向と関連付けられている複合材料としては、光重合性モノマーが液晶の性質を保有している。基板はラビングなど配向処理がなされ、基板間に配置された混合材料は配向処理に基づいた配列をもつ。この状態で紫外線を照射することで、電圧を印加しない場合に上記初期配列となり、電圧を印加することで液晶ドメインと高分子との屈折率差が生じることで散乱を生じる。なお一方向配列とした場合はこの配向に依存した光学特性を有するが、カイラル材を添加し初期配列にねじれを与えることで、入射光の偏光に依存しない光学特性としたものを用いることもできる。この場合、通常電圧を印加しない場合に高分子と液晶の屈折率差による散乱が小さく、電場により液晶を配列させた場合に屈折率差が大きくなるように設計され、リバースモードと呼ばれる。
即ち、ノーマルモードでは、電極間に所定の電圧を印加した場合に透過状態となり、電極間に電圧を印加しない場合に散乱状態となる。また、リバースモードでは、電極間に所定の電圧を印加した場合に散乱状態となり、電極間に電圧を印加しない場合に透過状態となる。なお、本実施例では、基本的にリバースモードで説明するが、ノーマルモードでも適用できる。
対向電極26と制御電極27は、たとえばITO(酸化インジウム・スズ)により、透明電極として形成される。
図2に示したスクリーン21は、映像光が投影されると、散乱状態に制御された調光部25で主に投影方向(入射方向)の前方に散乱(前方散乱)し映像として視認される。そのため、調光部25で投影方向に反射して散乱(反射散乱)される光は少ない。したがって、プロジェクタ11から投影された映像は、観察者101側からは視認できるが、その反対側からは殆ど視認することができない。
観察者101からは、スクリーン21の調光部25が散乱状態の場合は、スクリーン21は例えば白濁したように見える。一方、調光部25が透過状態の場合は、スクリーン21は透過状態のため、スクリーン21越しに背景を観察することができる。したがって、調光部25が散乱状態の場合にはスクリーン21にプロジェクタ11から投影される映像が表示され観察者101が視認することができ、透過状態の場合にはスクリーン21は背景を認識しうる透明さを有する。
スクリーン21は、制御電極27と対向電極26との間に電位差を生じるように電圧が印加される。駆動波形(駆動電圧波形)としては、たとえば、一方の電極を直流状態(基準電圧、例えば0ボルト)として、他方の電極に交流電圧を印加するようにしてもよいし、双方の電極に位相が反転した交流電圧を印加して電位差が生じるようにしてもよい。即ち、制御電極27と対向電極26との間に電位差を生じるように電圧が印加されると、スクリーン21がノーマルモードの場合は透過状態になり、リバースモードの場合は散乱状態になる。
入力位置検出部としてのタッチパネル41は、スクリーン21のガラス基板24に重ねて設けられている。タッチパネル41は、手指やペン等が触れた位置(操作入力位置)を検出することができる入力装置であり、可視光に対して透明なフィルムやガラス基板等に透明電極等が形成されている。タッチパネル41は、静電容量方式、抵抗膜方式、電磁誘導方式、赤外線方式等周知の方式を適宜選択して用いることができる。なお、タッチパネル41は、図2に記載した例ではガラス基板24に重ねられているが、スペーサなどを挟んで若干間隔を開けてもよい。即ち、後述するスクリーン21に表示された映像にタッチして操作する際に視差による影響が無視できる程度に近接して配置されていればよい。
なお、入力位置検出部としては、タッチパネル41に限らず、第1表示部の観察者側に配置されて観察者の入力操作位置を検出するとともに可視光に対して透明な部材(装置)であれば、近接センサにより手指等の接近を検出する方法等、他の方法であってもよい。
スクリーン21とタッチパネル41とは、筐体71から露出するように設けられている。また、スクリーン21とタッチパネル41とは、鉛直方向から斜め上方向に傾けて設けられている。
制御部としてのタイミング制御装置31は、筐体71内に配置されている。タイミング制御装置31は、例えばプロジェクタ11に入力される同期信号に基づいて、映像光が投影されるスクリーン21の調光部25を、透過状態または散乱状態に制御する。プロジェクタ11からタイミング制御装置31へ入力される同期信号は、例えばプロジェクタ11に入力される映像信号の映像フレーム周期に同期した同期信号を用いることができる。この同期信号によって、プロジェクタ11は、映像をスクリーン21が散乱状態のときに投影することができる。
なお、タイミング制御装置31は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を備え、メモリ等の記録装置に記録されたプログラムにより動作が制御されるコンピュータで構成されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などから構成された専用のハードウェアでもよい。
第2表示部としての不透明ディスプレイ51は、例えば周知の液晶ディスプレイやEL(Electro Luminescence)ディスプレイなどで構成されている。不透明ディスプレイ51は、スクリーン21と離間して配置され、スクリーン21を透過して視認可能となっている。即ち、スクリーン21の観察者側と反対側に設けられている。また、不透明ディスプレイ51は、通常プロジェクタ11から投影される映像とは異なる映像が表示されている。
なお、本実施例では第2表示部として不透明ディスプレイ51で説明するが、不透明な表示装置であれば、上述したスクリーン21とは異なる常時映像光を散乱するような周知のスクリーンであってもよい。また、不透明ディスプレイに限らず、上述したスクリーン21をもう1つ設けて第2表示部を構成してもよい(勿論対応するプロジェクタも設ける)。上述したスクリーン21をもう1つ設けた場合は、当該スクリーン21のさらに奥側にある背景も同時に観察することができる。
プロジェクタ11は、筐体71内に配置されている。プロジェクタ11は、走査周期中にスクリーン21上で黒状態(投射光が出ない状態)を順次シフトさせる透過型あるいは反射型液晶ライトバルブなどを使用できるが、これ以外の素子を用いてもよい。また、プロジェクタ11は、映像の走査周期においてラスター走査し、スクリーン21の表示面に映像光(画像光)を線順次で投射するものでもよい。つまり、映像光が所定の周期で間欠的に投射される。このプロジェクタ11では、強度変調された光ビームの照射方向を可動ミラーで反射して振るような、例えばレーザプロジェクタなどを用いることもできる。このプロジェクタ11は、映像光の照射位置がスクリーン21上の一方向に順次走査されているものと同様に考えることができる。
プロジェクタ11は、映像情報により変調された映像光を投影できるものであればよい。なお、映像情報は、プロジェクタ11に入力される映像信号から得られる。映像信号には、たとえば、NTSC(National Television Standards Committee)方式、PAL(Phase Alternation by Line)方式のようなアナログ方式の映像信号、MPEG−TS(Moving Picture Experts Group − Transport Stream)フォーマット、HDV(High-Definition Video)フォーマットのようなデジタルフォーマットの映像信号がある。プロジェクタ11には、動画の映像信号だけでなく、たとえばJPEG(Joint Photographic Experts Group)のような静止画の映像信号が入力されてもよい。この場合、プロジェクタ11aは、静止画を表示するための同じ映像光で、スクリーン21を繰り返し走査すればよい。
ミラー61は、筐体71内に配置され、プロジェクタ11から出射された映像光をスクリーン21に向けて反射する。なお、ミラー61を設けずにプロジェクタ11から直接スクリーン21に投影してもよいが、ミラー61を設けた方が筐体71の奥行きを短くしながらスクリーン21に投影する映像のサイズを大きくすることができる。
筐体71は、板金あるいは樹脂等により略箱状に形成され、上述したように、プロジェクタ11、タイミング制御装置31、不透明ディスプレイ51、ミラー61を収容している。筐体71の側面には断面略三角形状の凸部72が形成されている。凸部72を構成する傾斜面のうち、凸部72の先端から筐体71の天面71aに向かう傾斜面には開口72aが設けられている。したがって、開口72aは斜め上方向に開口している。そして、スクリーン21およびタッチパネル41は、当該開口72aを塞ぐように取り付けられている。即ち、スクリーン21およびタッチパネル41は、タッチパネル41を観察者101に向けた状態で筐体71の側面に表面が斜め上方向を向くように傾けて設けられている。したがって、不透明ディスプレイ51は、スクリーン21およびタッチパネル41を通して外部から観察できるようになっている。なお、不透明ディスプレイ51も筐体71内で表面が斜め上方向を向くように傾けて設けられているがスクリーン21およびタッチパネル41よりも鉛直に近い角度で設けられている。即ち、スクリーン21およびタッチパネル41と不透明ディスプレイ51とは互いの表面が平行にならないように固定されて設けられている。
図3は上述した構成のスクリーン21の状態と、調光部25の正透過率と、プロジェクタ11から投射される映像光の強度(光強度)と、を示したタイミングチャートである。
図3に示したように、スクリーン21は、1映像周期内に1回散乱状態と透過状態とに変化する。つまり、透過状態と散乱状態とを所定の周期で交互に切り替えている。1映像周期とは、プロジェクタ11に入力される映像信号の1フレーム期間などであり、周波数にすると例えば50〜60Hz程度である。したがって、スクリーン21は、1映像周期よりも短い期間で散乱状態と透過状態との切り替えが行われる。
スクリーン21(調光部25)が散乱状態となると、調光部25の光線の直線透過率は低下する。この期間にスクリーンに入射した光は散乱されるので、映像を表示することが可能となる。この期間にプロジェクタ11は映像光をスクリーン21に投影するので映像光強度が上昇し映像が表示される。即ち、タイミング制御装置31が、スクリーン21に投影される映像が散乱状態に投影されるようにスクリーン21を制御している。つまり、図3のような動作が制御工程に相当する。
スクリーン21が透過状態となると、調光部25の光線の直線透過率は上昇する。この期間にスクリーンに入射した光はそのまま透過する。したがって、プロジェクタ11は映像光をスクリーン21への投影を停止する。そのため、背景(不透明ディスプレイ51)をスクリーン21越しに(スクリーン21を通して)観察することができる。
スクリーン21には、1映像周期毎に全画面の映像を繰り返し投影しており、人間の目にはこの繰り返しは点滅として認識されないで、時間平均(積分)されることによって、スクリーン21に投影された映像と背景(不透明ディスプレイ51)とを、フリッカを感じることなく同時に観察することができる。
なお、図3では、散乱状態の全ての期間でプロジェクタ11から映像が投影されているが、例えば、散乱状態から透過状態に切り替える時間のマージンを設ける等、散乱状態の期間よりも映像が投射される期間が短くてもよい。即ち、散乱状態の期間内の任意の期間に映像を投影してもよい。或いは、過渡状態の期間にプロジェクタ11から映像を投影してもよい。この場合は、散乱されずに透過する映像光が発生するものの、短時間であるので影響は少ない。
また、図3のように投影するために、プロジェクタ11の光源としてレーザ光源やLED等の高速に点灯と消灯とを切り替えることができるものを使用してもよいし、プロジェクタ11の出射口等にシャッタなどを設置する構成でもよい。この場合、スクリーン21の散乱状態にスクリーン21に投影される映像が投影されるようにプロジェクタ11やシャッタを制御している。要するに、プロジェクタ11から出射される光を間欠的に(パルス状に)出射できる構成とできればよい。
以上の説明から明らかなように、スクリーン21に投影される映像と、スクリーン21の散乱状態と、が同期するとは、周期的に投影される映像にスクリーン21の散乱状態のタイミングを合わせることと、周期的に散乱状態となるスクリーン21にプロジェクタ11等からの投影タイミングを合わせることの双方を含むものである。
また、周期的とは、1映像周期の予め定めた期間に散乱状態または映像が投影されることを意味し、散乱状態の期間や映像が投影される期間が一定の期間ごとに発生することに限らない。例えば、1映像周期の先頭から10%〜20%の期間と80%〜90%の期間が散乱状態になる場合も、それが各映像周期で変わらず発生する場合は周期的に含まれる。つまり、1映像周期内の特定のタイミングであって、それが1映像周期ごとに繰り返えされていればよい。
上述した構成の表示システム5(表示装置1)は、操作する人(観察者101)がタッチパネル41を操作することによって、スクリーン21または不透明ディスプレイ51に表示された映像、あるいは各々に表示された映像の両方を変化させることができる(同時に音声信号にも反応があっても良い)。例えばタッチパネル41のどの位置を触ったかによって、その位置に対応した不透明ディスプレイ51上の位置の映像が変化させることができる。
或いは、スクリーン21に、不透明ディスプレイ51に表示されている映像を操作するアイコン等を表示するなどして、タッチパネル41で当該アイコン等を操作することで、不透明ディスプレイ51に表示されている映像を変化させることができる。このときにスクリーン21に表示されているアイコン等の表示も変化してもよい。即ち、スクリーン21(第1表示部)には、不透明ディスプレイ51(第2表示部)を操作するための画像が表示されている。
しかしながら、観察者101の目の位置(特に利き目の位置)によってタッチパネル41の座標系と不透明ディスプレイ51の座標系が大きく変化するため、観察者101がタッチパネル41の操作を開始する時点で、タッチパネル41上の座標と、不透明ディスプレイ51の表示座標と、を合わせるためのキャリブレーション(調整)を実行する必要がある。即ち、タイミング制御装置31が、タッチパネル41(入力位置検出部)の操作入力位置を不透明ディスプレイ51(第2表示部)に合わせるように調整する。
具体的には、不透明ディスプレイ51の周辺部の最低3か所(特に四隅に近い位置(4か所)が最も望ましい)に○、◎、×、+、↑などの記号やマーク等による位置合わせ用のマーカーを表示し、タッチパネル41上でそのマーカーが見えている位置を、観察者101にタッチさせることで、タッチパネル41のタッチ位置座標と不透明ディスプレイ51の表示座標との関係を検出する。即ち、タイミング制御装置31が、観察者101がタッチパネル41(入力位置検出部)からマーカーの位置として入力した位置に基づいて調整を行っている。
キャリブレーションの例を図4に示す。図4において、不透明ディスプレイ51の表示座標およびタッチパネル41の位置検出座標を左下角を起点(1,1)に、左上角を(1, 1080)、右下角を(1920,1)、右上角を(1920, 1080)としている。そして、不透明ディスプレイ51に表示される4か所のマーカー表示位置の中心をそれぞれマーカーA(192, 108)、マーカーB(192, 972)、マーカーC(1728, 108)、マーカーD(1728, 972)とし、それぞれのマーカーに対応してタッチ検出されたタッチパネル41上の位置検出座標をマーカーA´(596, 334)、マーカーB´(404,880)、マーカーC´(1364, 334)、マーカーD´(1556,880)としている。
図4の例におけるキャリブレーション動作は、不透明ディスプレイ51の表示座標(X,Y)がタッチパネル41上の位置検出座標(x,y)から、以下の調整式により行うことができる。
X=1.333x+0.4689y−759(x≦980)・・・(1)
X=1.333x−0.4689y+66 (x>980)・・・(2)
Y=1.5824y−421・・・(3)
上述したXの式が(1)式と(2)式の2つあるのは、図4に示したように、台形補正をするため、中心から左側と右側で分ける必要があるからである。また、図4に示した例は、タッチパネルの座標がx方向、y方向ともにオフセットしている。これは、観察者101の視点位置が必ずしも座標の中心と一致するわけではないために発生するものであり、図4の例においてもそれを加味している。
上述したキャリブレーション動作を図5のフローチャートに示す。図5に示したフローチャートはタイミング制御装置31で実行される。即ち、このフローチャートが調整工程に相当する。
まず、不透明ディスプレイ51に上述したマーカーを表示する(ステップS11)。次に、観察者101がタッチパネル41上のマーカー位置をタッチしたことを検出する(ステップS12)。タッチを検出した場合(ステップS12がYES)は、そのタッチ位置と不透明ディスプレイ51上のマーカー位置とに基づいて上述した調整式を求める(ステップS13)。調整式を求めるとは、xやyの係数および加算または減算される定数等を算出することである。
図5のフローチャート以降は、ステップS13で求めた調整式に基づいて、タッチパネル41にタッチされた位置に応じた動作が例えば不透明ディスプレイ51の表示に反映される。
また、このキャリブレーション動作は、タッチパネル41のタッチ位置の調整だけでなく、スクリーン21に表示する映像の位置の調整に用いてもよい。例えば、不透明ディスプレイ51の特定の位置に合わせてスクリーン21に特定の画像や文字等を表示させる場合にキャリブレーション動作で求めた調整式を適用することができる。
本実施例によれば、可視光に対して透過状態と散乱状態とを切り替え可能なスクリーン21と、スクリーン21に投影する映像とスクリーン21の散乱状態とが同期するように制御するタイミング制御装置31と、スクリーン21の観察者101側に配置されて観察者が操作入力する位置を検出するとともに可視光に対して透明なタッチパネルと、スクリーン21と離間して配置され、観察者101がスクリーン21を透過して視認可能な不透明ディスプレイ51と、を有している。このようにすることにより、スクリーン21およびタッチパネル41が不透明ディスプレイ51と離間しているので、2つの映像が離れて表示されることにより、奥行き感などの立体感を持たせることができる。また、例えばタッチパネル41へ入力することにより、不透明ディスプレイ51の表示が変化すれば、映像よりも手前で操作しているような仮想現実感を持たせることができる。
また、タイミング制御装置31が、タッチパネル41の入力位置を不透明ディスプレイ51に合わせてキャリブレーションしているので、離間している不透明ディスプレイ51の表示位置に合わせてタッチパネル41から入力できるようになる。
具体的には、不透明ディスプレイ51の四隅等の複数の位置に位置合わせ用のマーカーを表示し、タイミング制御装置31は、タッチパネル41から入力された当該マーカーの位置に基づいてキャリブレーションをする。このようにすることにより、例えば四隅にマーカーを表示させ、そのマーカーの位置をタッチパネル41から入力させることにより、タッチパネル41の入力位置を不透明ディスプレイ51に対応させるようにすることができる。
また、スクリーン21と不透明ディスプレイ51とは、互いの表示面が平行とならないように固定されているので、スクリーン21に投影する映像と不透明ディスプレイ51とが干渉しないように配置しながら、表示装置1の奥行きを短くすることができる。
また、スクリーン21には、不透明ディスプレイ51を操作するための画像が表示されていてもよい。このようにすることにより、スクリーン21の画像に基づいて不透明ディスプレイ51を操作することができる。したがって、映像よりも手前で操作しているような仮想現実感を持たせることができる。
次に、本発明の第2の実施例にかかる表示装置を図6および図7を参照して説明する。なお、前述した第1の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
本実施例の表示装置1は、構成は第1の実施例と同じであるが、キャリブレーションの方法が第1の実施例とは異なる。本実施例においては、マーカーを不透明ディスプレイ51だけでなく、スクリーン21にも表示してキャリブレーションを行う。
図6は、不透明ディスプレイ51とスクリーン21との両方にマーカーを表示させた例である。図6(a)は不透明ディスプレイ51におけるマーカー表示であり、E,F,G,H(黒丸)がマーカー、即ち第2マーカーである、図6(b)はスクリーン21におけるマーカー表示であり、E´,F´,G´,H´(白丸)がマーカー、即ち第1マーカーである。
キャリブレーション時には、観察者101は、スクリーン21に表示されているマーカーを不透明ディスプレイ51に表示されているマーカーに合わせるように移動させる。例えば右上同士の場合は、スクリーン21の右上に表示されているマーカーH´を不透明ディスプレイ51に表示されているマーカーHの位置まで移動させる。移動の方法は、タッチパネル41を利用して観察者101の手指等によるドラッグアンドドロップ操作でもよいし、図示しないジョイスティックやリモートコントローラー(リモコン)等により行ってもよい。即ち、タイミング制御装置31(調整部)が、第1マーカーを対応する第2マーカーと重なる位置に移動させる動作に基づいて調整を行っている。
このようにしてタッチパネル41のタッチ位置座標と不透明ディスプレイ51の表示座標との関係を検出した後は、第1の実施例と同様に、調整式を算出し、その調整式に基づいてタッチパネル41にタッチされた位置に応じた動作が不透明ディスプレイ51の表示に反映される。
また、キャリブレーションの例としては、スクリーン21に表示されたマーカーを移動させる操作するに限らず、図7に示したように、観察者101が座っている椅子111の座面の前後左右高さ位置を調整するようにしてもよい。つまり、座面を調整して、第1マーカーと第2マーカーとが重なって見えるようにする。これは、筐体71あるいはスクリーン21の前後左右高さ位置が調整できるようにしてもよい。即ち、タイミング制御装置31(調整部)が、スクリーン21(第1表示部)と観察者101との相対位置を調整することによって調整を行ってもよい。
本実施例によれば、スクリーン21の複数の位置に位置合わせ用のマーカーを表示するとともに、不透明ディスプレイ51の複数の位置に位置合わせ用のマーカーを表示し、タイミング制御装置31は、スクリーン21に表示されたマーカーと不透明ディスプレイ51に表示されたマーカーとに基づいてキャリブレーションをする。このようにすることにより、2つの表示部にそれぞれ表示されたマーカーを合わせることによってキャリブレーションすることができる。
具体的には、スクリーン21に表示されているマーカーを対応する不透明ディスプレイ51に表示されているマーカーに位置に移動させることに基づいてキャリブレーションをする。このようにすることにより、スクリーン21に表示されているマーカーの移動を確認しながらキャリブレーションすることができ、キャリブレーション処理時の操作性と精度を向上させることができる。
あるいは、スクリーン21と観察者101との相対位置を椅子111の座面の前後左右高さを調整することによってキャリブレーションをしてもよい。このようにすることにより、観察者101の視点位置の移動によりキャリブレーションすることができる。
また、スクリーン21に対する投影方式は、図3に示した方式に限らない。例えば、スクリーン21を複数の領域に分割し、各分割領域を順次散乱状態にして、散乱状態になった分割領域に映像を投影するようにしてもよい。基本的な動作原理を図8を参照して説明する。プロジェクタ11は、映像情報で変調された映像光で、スクリーン21を上から下へ縦に走査する。プロジェクタ11は、走査の繰り返し期間(以下、走査周期ともいう。)毎に、スクリーン21を上から下へ縦に走査する。
図8(A)から(E)は、1回の走査周期中の各時点での走査状態を、走査順で示すものである。図8のスクリーン21は、5つの分割領域22を有する。5つの分割領域22は、映像光の走査方向に沿って縦に配列される。
タイミング制御装置31は、プロジェクタ11によるスクリーン21の一次元の縦方向の走査に同期させて、5つの分割領域22の光学状態を個別に制御する。各分割領域22は、映像光が投影されていない場合、非映像状態、すなわち入射光の散乱が小さい透明な透過状態に制御される。
映像光の走査が開始されると、プロジェクタ11の走査光は、まず、図8(A)のように、スクリーン21の最上部の分割領域22に照射される。以下、この説明において、走査光が照射される分割領域22について、走査されていない他の分割領域22から区別するために、符号221を使用する。タイミング制御装置31は、プロジェクタからの同期信号に基づいて、走査周期中での、この最上部の分割領域221が走査される期間を特定し、最上部の分割領域221を映像状態に制御する。最上部の分割領域221を走査する映像光は、散乱状態の分割領域221により散乱され、スクリーン21を透過する。
映像光の走査は、次に、図8(B)のように、スクリーン21の上から2番目の分割領域221に移動する。タイミング制御装置31は、走査周期中での、この上から2番目の分割領域221が走査される期間を特定し、上から2番目の分割領域221を映像状態に制御する。上から2番目の分割領域221を走査する映像光は、散乱状態の分割領域221により散乱され、スクリーン21を透過する。また、タイミング制御装置31は、上から2番目の分割領域221を映像状態に制御した後、最上部の分割領域22を非映像状態に制御する。その後も、図8(C)から(E)に示すように、タイミング制御装置31は、走査光により走査される分割領域221を映像状態に制御し、それ以外の分割領域22を非映像状態に制御する。
以上の同期制御により、スクリーン21についての走査光が照射される部位は、映像状態に維持される。これにより、スクリーン21を走査する映像光は、散乱状態のスクリーン21で散乱される。また、スクリーン21についての走査光が照射されない部位は、非映像状態に制御される。各分割領域22は、走査光により走査されていない殆どの期間において、非映像状態の透明な透過状態に制御される。映像光の投影期間中に、映像の視認性を保ちつつ、スクリーン21のシースルー特性が得られる。
図9は、スクリーン21の走査と駆動との模式的なタイミングチャートである。横軸は、時間である。縦軸は、スクリーンの縦方向の位置を示し、スクリーン21での複数の分割領域22に対応する。
スクリーン21の各分割領域22は、各々の領域を映像光が走査し始めるタイミングより前に、透明な透過状態から散乱状態に制御される。また、散乱状態の分割領域22は、当該領域についての走査が終了した後に、散乱状態から透明な透過状態に制御される。
複数の分割領域22は、各々の領域に映像光が走査により照射される部分走査期間TPに同期して映像状態(散乱状態)に制御されることにより、走査順で、時間をずらして、順次映像状態へ切り替えられる。スクリーン21を走査する映像光は、映像状態に維持された部分により、効率よく散乱され、明るく高い視認性を得ることができる。なお、図9中映像光走査が3本の矢印で表示されているが、これは赤緑青の光の3原色それぞれに対応する映像光を示している。
以上の同期制御により、スクリーン21は、映像光が照射されるタイミングを含む期間Tonにおいて、映像光が照射される部位が散乱状態に維持されるため、映像を表示できる。
しかも、スクリーン21は、映像光の投影期間中に、各部位が期間Ton以外の時間では透明な透過状態に制御されるので、スクリーン21を透視することができる。人間の目にはスクリーン21の透過光が平均(積分)化されて見えるので、十分短い走査周期の場合、フリッカを感じることのないシースルー特性が得られる。
また、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の表示装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。