JP2015230930A - 軟磁性粉末、コア、リアクトル、およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軟磁性粉末と、その0.2〜0.8wt%の縮合リン酸金属化合物とを混合し、この軟磁性粉末の周囲に縮合リン酸金属化合物の被覆を形成する。縮合リン酸金属化合物としては、縮合リン酸アルミニウム、特にトリポリリン酸アルミニウムを用いることが好ましい。縮合リン酸金属化合物に、アルミナなどの絶縁微粉末を混合することが好ましい。
【選択図】図1
Description
Kh:ヒステリシス損係数、Ke:渦電流損係数、f:周波数
Ke=k1(Bm2・t2)/ρ …式2
k1:係数、Bm:磁束密度、t:粒子径(板材の場合厚さ)、ρ:比抵抗
(1)前記絶縁微粉末は、前記軟磁性粉末に対し、0.1〜0.6wt%混合することが好ましい。この絶縁微粉末としては、Al2O3やSiO2を使用することができる。
(2)前記縮合リン酸金属化合物は、縮合リン酸アルミニウムであることが好ましい。
(3)縮合リン酸アルミニウムとしてトリポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウムの単体、若しくはその両方の混合物を用いることが好ましい。
(4)縮合リン酸金属化合物に、硬化促進剤として、塩基性物質を添加しても良い。この塩基性物質としては、Al2O3、SiO2、MgO、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2、石綿、タルク、フライアッシュの少なくとも1種類を用いることができる。また、硬化促進剤は、縮合リン酸金属化合物に対して10〜30wt%添加されていることが好ましい。
軟磁性粉末としては、センダスト(Fe−Si−Al合金)粉などが使用できる。
縮合リン酸金属化合物としては、縮合リン酸金属塩が適しており、特に縮合リン酸アルミニウムが適している。その中でも第一リン酸アルミを加熱して脱水反応させたトリポリリン酸アルミニウムやメタリン酸アルミニウム又はこれらの混合物が適している。特に、トリポリリン酸二水素アルミニウムが適している。その平均粒子径が1.5μ〜6.0μmであるとさらに好ましい。他にも縮合リン酸カルシウムや縮合リン酸マグネシウムなども同様の効果がある。軟磁性粉末に対する縮合リン酸金属化合物の添加量は、0.20〜0.80wt%が好ましい。この範囲にすることで、軟磁性粉末周囲の絶縁層を硬くすることができるとともに軟磁性粉末と絶縁層との密着強度を向上させることができる。そのため粉末の振動を抑制し、低騒音効果を得ることができる。添加量が0.2wt%未満であると騒音抑止効果が得られず、0.80wt%超であると、透磁率が低下することでリップル電流が大きくなり、振動が大きくなって騒音が増加する。
縮合リン酸金属化合物に、その硬化促進剤として、塩基性物質を添加することができる。塩基性物質としては、Al2O3、SiO2、MgO、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2、石綿、タルク、フライアッシュの少なくとも1種類が挙げられる。低騒音効果を得る観点からAl2O3を添加するのが特に好ましく、その粒子径を7n〜500nmとすると良い。さらに好ましくは、その粒子径を7n〜50nmとすると良い。MgOを添加する場合も同様に低騒音効果が得られ、その粒子径を0.2μ〜1.0μmとすると更に良い。硬化促進剤は、縮合リン酸金属化合物に対して、その10〜30wt%添加することが好ましい。10wt%未満では硬化剤としての効果が少なく、30wt%を超えると軟磁性粉末表面における縮合リン酸金属化合物の皮膜形成の妨げとなるからである。
結着性絶縁樹脂は、軟磁性粉末と縮合リン酸金属化合物の混合物に添加する。結着性絶縁樹脂としては、常温で軟磁性粉末と縮合リン酸金属化合物の混合物を加圧した場合に、ある程度緻密化された状態の成形体が得られ、しかも、その成形体に過大な力が加わらない限り、所定の形状を維持することのできる程度の粘性のある樹脂を用いる。
潤滑性樹脂として、ステアリン酸及びその金属塩ならびにエチレンビスステアラマイドなどのワックスが使用できる。これらを混合することにより、粉末同士の滑りを良くすることができるので、混合時の密度を向上させ成形密度を高くすることができる。さらに、成形時の上パンチの抜き圧低減、金型と粉末の接触によるコア壁面の縦筋の発生を防止することが可能である。潤滑性樹脂の添加量は、軟磁性粉末に対して、0.1〜1.0wt%程度が好ましく、一般的には、0.5wt%程度である。
絶縁微粉末としては、アルミナ粉末(Al2O3)、SiO2、MgOなどを用いることができる。絶縁微粉末を添加することにより、軟磁性粉末周囲の絶縁層を硬くすることができ、軟磁性粉末の振動を抑制し、騒音抑制効果を得ることができる。騒音抑制効果の観点から絶縁微粉末の平均粒子径は、7n〜1.0μmとすることが好ましい。より好ましくは、その粒子径を7n〜500nmとすると良い。さらに好ましくは、その粒子径を7n〜50nmとすると良い。また絶縁微粉末は、その硬度が高いほど、より低騒音の効果を得ることができる。絶縁微粉末は、モース硬度が7以上のものを用いることが好ましい。例えば、モース硬度が7.0のSiO2、モース硬度が9.0のAl2O3を用いることができる。ただ、モース硬度が4.0のMgOを用いることでも低騒音の効果を得ることはできる。
本実施形態のコアの製造方法は、次のような各工程を有する。
(a)軟磁性粉末と縮合リン酸金属化合物と絶縁微粉末とを混合する第1混合工程。
(b)第1混合工程で得られた混合物に対し、結着性絶縁樹脂を混合する第2混合工程。
(c)第2混合工程で得られた混合物を、加圧成型する加圧成型工程。
(d)加圧成型工程で得られた成形体を熱処理する熱処理工程。
(a)第1混合工程
第1混合工程では、例えば、平均粒子径が20μ〜100μmの軟磁性粉末に対して、その0.20〜0.80wt%の縮合リン酸金属化合物と、軟磁性粉末に対して0.1〜0.6wt%の絶縁微粉末とを添加して混合する。例えば、前記の混合物を、V型混合機を使用して2時間程度混合する。縮合リン酸金属化合物を添加するタイミングは、必ずしもこの工程でなくとも良く、下記(b)の結着性樹脂の第2混合工程において、潤滑剤と共に添加混合することも可能である。但し、前工程で縮合リン酸金属化合物を混合しておいた方が、軟磁性粉末表面における皮膜形成が効果的に行われる。
軟磁性粉末と縮合リン酸金属化合物の混合物に対して、軟磁性粉末に対して0.75〜2.0wt%の結着性絶縁樹脂と、0.1〜1.0wt%の潤滑性樹脂とを添加して、更に混合する。前記(a)の縮合リン酸金属化合物の混合と、(b)の結着性樹脂及び潤滑性樹脂の混合を同時に行うことも可能である。
加圧成型工程では、第2混合工程を経た混合物を金型内に充填して、加圧成形する。その場合、金型温度は常温が好ましいが、80℃までの範囲であっても構わない。すなわち、ここでの常温とは、5〜35℃までの範囲をいうが、5〜80℃の範囲であっても構わない。成形圧力は、例えば、900M〜2000MPaである。
成形体に対する熱処理は、軟磁性粉末の種類に応じて所定雰囲気において所定温度で行う。加熱温度は500℃以上であり、加熱保持時間は2時間〜4時間程度である。熱処理雰囲気は、軟磁性粉末がFe−Si−Al合金粉末の場合は、窒素雰囲気若しくは大気雰囲気である。特に大気雰囲気の方が作製されたリアクトルの騒音が低くなるため好ましい。Fe−Si合金粉末、純鉄粉の場合は、窒素雰囲気、10〜30%水素ガスなどの還元雰囲気が好ましい。また、熱処理温度は、上げ過ぎると絶縁破壊を起こし、渦電流損失が増加する。そのため、鉄損の増加を抑制する観点からFe−Si−Al合金粉末及びFe−Si合金粉末の場合、600〜750℃が好ましく、特にFe−Si−Al合金粉末は650〜725℃がより好ましい。純鉄粉の場合は、500〜650℃が好ましい。これらの温度範囲にすることで作製されたリアクトルの騒音が低くなる。
測定項目は、透磁率、鉄損、及び騒音である。作製された各圧粉磁心のサンプルに対して、φ2.6mmの銅線で42ターンの巻線を施してリアクトルを作製した。このリアクトルの透磁率及び鉄損を下記の条件で算出し、下記の条件でリアクトルから発生する騒音について測定した。
透磁率及び鉄損の測定条件は、周波数100kHz、最大磁束密度Bm=50mTとした。透磁率は、鉄損Pcv測定時に最大磁束密度Bmを設定したときの振幅透磁率とした。鉄損については、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY−8232)を用いて算出した。この算出は、鉄損の周波数曲線を次の(1)〜(3)式で最小2乗法により、ヒステリシス損係数、渦電流損失係数を算出することで行った。
Ph =Kh×f …(2)
Pe =Ke×f2 …(3)
Pcv:鉄損
Kh :ヒステリシス損係数
Ke :渦電流損係数
f :周波数
Ph :ヒステリシス損失
Pe :渦電流損失
騒音測定について、その測定装置、測定環境、測定方法等を以下に示す。
[騒音評価装置とソフトウェア]
(1) 測定装置 SOUND LEBEL METER NL-31 …リオン株式会社製
(2) 測定環境 無響箱(暗騒音は25dB) KM-1…株式会社アコー製
(3) パワーアンプ(音源) HIGH SPEED POWER AMPLIFIER/BIPOLAR POWER SUPPLY 4025 …NF ELECTRONIC INSTRUMENTS社製
(4) 発振器 80MHz Function/Arbitrary Waveform Generator 33250A…アジレント・テクノロジー株式会社製
(5) 分析処理ソフト SA-01 CATSYSSA Ver3.5…リオン株式会社製
(1) 太陽光発電用パワーコンディショナに接続
(2) マイク距離:測定サンプルから10mm
(3) 測定サンプルを無響箱内に設置し、騒音測定用のマイクの距離はサンプルから10mmとした。
圧粉磁心のサンプルは、軟磁性粉末としてFe―Si−Al合金粉末を用い、下記の作製方法で作成した。作製方法とその結果について下記に順に示す。
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
Claims (18)
- 軟磁性粉末と、前記軟磁性粉末に対し0.2〜0.8wt%の縮合リン酸金属化合物とを混合し、さらに絶縁微粉末を混合し、この軟磁性粉末の周囲に前記縮合リン酸金属化合物を含む被覆を形成したことを特徴とする軟磁性粉末。
- 前記絶縁微粉末は、前記軟磁性粉末に対し、0.1〜0.6wt%混合する、ことを特徴とする請求項1に記載の軟磁性粉末。
- 前記絶縁微粉末は、Al2O3またはSiO2である、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟磁性粉末。
- 前記縮合リン酸金属化合物は、縮合リン酸アルミニウムである、ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の軟磁性粉末。
- 前記縮合リン酸アルミニウムが、トリポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウムの単体、若しくはその両方の混合物である、ことを特徴とする請求項4に記載の軟磁性粉末。
- 前記縮合リン酸金属化合物に、硬化促進剤として、塩基性物質が添加されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の軟磁性粉末。
- 前記塩基性物質が、Al2O3、SiO2、MgO、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2、石綿、タルク、フライアッシュの少なくとも1種類であることを特徴とする請求項6に記載の軟磁性粉末。
- 前記硬化促進剤は、前記縮合リン酸金属化合物に対して10〜30wt%添加されている、ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の軟磁性粉末。
- 前記軟磁性粉末の周囲に形成される絶縁層には、前記絶縁微粉末若しくは前記硬化促進剤またはその両方が含まれていることを特徴とする請求項6から請求項8の何れか1項に記載の軟磁性粉末。
- 前記請求項1から前記請求項9に記載の何れかの軟磁性粉末を成型して構成されたコア。
- 軟磁性粉末を成型して構成されたコアであって、前記軟磁性粉末の表面は、前記軟磁性粉末に対し0.2〜0.8wt%の縮合リン酸金属化合物を含むシリカ層によって覆われていることを特徴とするコア。
- 前記請求項10または請求項11に記載のコアに対して、コイルを巻回して構成したことを特徴とするリアクトル。
- 軟磁性粉末と、前記軟磁性粉末に対し0.2〜0.8wt%の縮合リン酸金属化合物とを混合し、さらに前記軟磁性粉末に対し0.1〜0.6wt%の絶縁微粉末を混合し、この軟磁性粉末の周囲に前記縮合リン酸金属化合物を含む被覆を形成した後、所定の形状に成型することを特徴とするコアの製造方法。
- 前記絶縁微粉末は、Al2O3またはSiO2である、ことを特徴とする請求項13に記載のコアの製造方法。
- 前記縮合リン酸金属化合物は、縮合リン酸アルミニウムであることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載のコアの製造方法。
- 前記縮合リン酸アルミニウムが、トリポリリン酸アルミニウム又はメタリン酸アルミニウムの単体、若しくはその両方の混合物であることを特徴とする請求項15に記載のコアの製造方法。
- 前記縮合リン酸金属化合物に、硬化促進剤として、塩基性物質を添加し、前記塩基性物質が、Al2O3、SiO2、MgO、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2、石綿、タルク、フライアッシュの少なくとも1種類であることを特徴とする請求項13から請求項16の何れか1項に記載のコアの製造方法。
- 前記硬化促進剤は、前記縮合リン酸金属化合物に対して10〜30wt%添加することを特徴とする請求項17に記載のコアの製造方法。
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