以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき、図面を参照しつつ説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るシール構造を備えた半導体製造装置を模式的に示す断面図である。図2は、実施形態1に係るシール構造を模式的に示す断面図である。図1および図2は、回転部材3の回転中心軸Zrを含み、かつ回転中心軸Zrと平行な平面でシール構造1を切った断面を示している。なお、実施形態1において、軸方向とは、回転中心軸Zrと平行な方向であり、径方向とは、回転中心軸Zrに対して直交する方向である。図3は、図1のA−A断面図である。図4は、実施形態1に係るシール部材の周辺部分の拡大図である。シール構造1は、例えば、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境等の特殊環境下におかれる内部空間Vの密閉を保ちながら回転を伝達する機械要素である。内部空間Vと隔てられた外部空間Eは、内部空間Vに対して高圧である空間または大気雰囲気の空間である。シール構造1は、半導体製造または工作機械製造等の製造装置、搬送装置、回転駆動装置に適用される。ここでは、一例として、半導体製造のための製造装置において、スピンドルを回転軸として備える回転駆動装置(スピンドルユニット)にシール構造1を適用する場合を説明するが、シール構造1の適用対象はこれに限定されるものではない。
図1に示すように、例えば半導体製造に用いられる半導体製造装置100は、シール構造1と、筐体10と、電動機8と、電動機8を制御する制御装置91を含む。シール構造1と、電動機8とは、回転駆動装置6として、電動機8の回転を伝達して、搬送テーブルとしての可動部材37を回転させる。半導体製造装置100は、筐体10の内部空間Vを真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境にした上で、内部空間Vにある被搬送物(例えば、半導体基板、工作物または工具)を可動部材37に搭載して移動させる。被搬送物を移動させる場合、電動機8を内部空間Vに設置すると、電動機8の動作により異物が発生する可能性がある。そこで、半導体製造装置100は、内部空間Vに可動部材37を残したまま、電動機8を外部空間Eに設置する。そして、シール構造1は、内部空間Vと外部空間Eを隔てて密封性を高めながら、外部空間Eに設置された電動機8の動力を内部空間Vに伝える。電動機8は、例えば、ダイレクトドライブモータ、ベルトドライブを用いた駆動装置、リニアモータ、サーボモータなどである。制御装置91は、入力回路と、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置であるメモリと、出力回路とを含む。メモリに記憶させるプログラムに応じて、電動機8を制御し、内部空間Vにある被搬送物(例えば、半導体基板、工作物または工具)を搬送テーブル(可動部材)37に搭載して移動させ、半導体製造装置100は、所望の製品を製造することができる。
シール構造1は、ハウジング2と、回転部材3と、軸受4とを含む。ハウジング2は、軸受4を収容する部材である。実施形態1において、ハウジング2は、例えばアルミニウム合金、鉄またはステンレス鋼等の金属で形成されており、ハウジング本体としての筒状の部材である外側部材21と、外側部材21の内側に配置される筒状の部材である内側部材22と、を備える。外側部材21は、胴部211と、胴部211の一端部に設けられたフランジ部212と、を有する。実施形態1において、胴部211は筒形状(例えば円筒)の部材であり、軸方向に貫通する貫通孔21b、21cを有している。貫通孔21cは、貫通孔21bよりも内部空間V側に位置している。貫通孔21cの内周は、貫通孔21bの内周よりも大きい。内側部材22は、胴部221と、胴部221の一端部に設けられたフランジ部222とを有する。胴部221は筒形状(例えば円筒)の部材であり、軸方向に貫通する貫通孔22bを有している。胴部221の側面22cは、外側部材21の貫通孔21cの内壁に対向している。
フランジ部212は、板状の鍔部材である。実施形態1において、フランジ部212の形状は、平面視が円形であるが、これらの形状は円形に限定されない。外側部材21は、フランジ部212を筐体10の外部から筐体10の開口部10eを覆うようにあてがい、フランジ部212と筐体10の壁面とをボルト(不図示)で締結することで筐体10に固定されている。これにより、外側部材21は、筐体10の開口部10eを筐体10の外部から塞ぐことができる。このため、外側部材21の外壁は外部空間Eに曝されている。フランジ部212は、平面視で筐体10と重なり合う部分に環状溝があり、この環状溝にOリング11がはめ込まれている。Oリング11は、フランジ部212と筐体10との間の隙間を密封し、シール構造1の密封性を向上させている。
フランジ部222は、板状の鍔部材である。実施形態1において、フランジ部222の形状は、平面視が円形であるが、これらの形状は円形に限定されない。フランジ部222は、フランジ部212に対して平面視で重なり合っている。内側部材22は、フランジ部222を貫通するボルト27でフランジ部212に固定されている。フランジ部212には、平面視でフランジ部222と重なり合う部分に環状溝があり、この環状溝にOリング12がはめ込まれている。Oリング12は、フランジ部212とフランジ部222との間の隙間16を密封し、シール構造1の密封性を向上させている。
胴部221は、大径部223と、大径部223と一体に形成され、大径部223の外周よりも小さい外周を有する小径部224とを有する。大径部223は、外側部材21が有する貫通孔21bと貫通孔21cとの境界部分にある段差部21dに接している。段差部21dには回転中心軸Zrを中心とした環状溝があり、この環状溝にOリング13がはめ込まれている。Oリング13は、大径部223と外側部材21の胴部211との間の隙間を密封している。
胴部221の側面22cは、外側部材21が有する貫通孔21cの内壁に対向している。大径部223および小径部224の外周は、ともに貫通孔21cの内周よりも小さい。このため、外側部材21と内側部材22との間には、側面22cおよび貫通孔21cの内壁に囲まれた空間74が形成されている。図3に示すように、空間74は、回転中心軸Zrを中心とした環状の空間である。
外側部材21の胴部211には、軸方向で外部空間E側の一端部から段差部21dに向かって貫通する2つの貫通孔73、77が設けられている。図3に示すように、貫通孔73、77は、例えば回転中心軸Zrを中心として点対称の位置に開けられている。また、貫通孔73、77は、平面視で空間74に重なる位置に開けられており、空間74に繋がっている。シール構造1は、貫通孔73によって空間74に冷媒を導入し、貫通孔77によって空間74から冷媒を排出する。冷媒は、例えば純水である。なお、冷媒は、純水以外の液体であってもよいし、二酸化炭素等の気体であってもよい。上述したように、Oリング13が大径部223と外側部材21の胴部211との間の隙間を密封しているので、シール構造1は、冷媒の軸受4側への漏洩を防ぐことができる。
シール構造1は、例えば配管72および配管78を介して冷却装置71に接続されている。冷却装置71は、例えばコンプレッサーを備えており、冷媒を冷却することができる。配管72は、冷却装置71と貫通孔73とを接続している。配管78は、冷却装置71と貫通孔77とを接続している。冷却装置71にて冷却された冷媒は、配管72および貫通孔73を介して冷媒導入部79へ運ばれ、貫通孔76および配管73を介して冷却装置71に戻される。なお、冷却装置71は、必ずしもコンプレッサーを用いて冷媒を冷却しなくてもよく、ペルチェ素子等を用いて冷媒を冷却してもよい。
回転部材3は、例えばアルミニウム合金、鉄またはステンレス鋼等の金属で形成されており、シャフト31と、第1シール固定部材32と、第2シール固定部材33と、可動部材37とを備えている。シャフト31の一端部は、外側部材21の胴部211に挿入されている。シャフト31の他端部は、カップリング82を介して、電動機8の出力シャフト81に接続されている。可動部材37は、第1シール固定部材32および第2シール固定部材33を介して、シャフト31の一端部に固定されている。
第1シール固定部材32、第2シール固定部材33および可動部材37は、シャフト31とともに回転する。可動部材37は、第2シール固定部材33の一端部に接する円柱状の胴部371と、胴部371の第2シール固定部材33側とは反対側の一端部に設けられる載置部372とを有する。実施形態1において、載置部372は、胴部371と一体に形成される板状の部材であって、平面視が円形である。載置部372の外径は、胴部371の外径よりも大きく、例えばフランジ部222の外径と同程度となっている。載置部372の胴部371側とは反対側の面に被搬送物が載置される。なお、胴部371および載置部372は、別部材であってもよい。
なお、上述した本実施形態において、可動部材37は電動機8によって回転運動させられていたが、可動部材37の動作は必ずしも回転運動でなくてもよい。例えば、電動機8がリニアモータであって、可動部材37の動作がストロークを限定された軸方向の直線運動であってもよい。
軸受4は、実施形態1では、外側部材21の内部に設置されてシャフト31を回転可能に支持する。軸受4は、軸受41および軸受42を含み、2重の筒状である軸受スペーサ43を介して、回転中心軸Zrに沿って距離を離して配置されている。これにより、軸受4は、軸受41および軸受42の複数箇所でシャフト31を支持することで、シャフト31の振れ回りを抑制することができる。実施形態1において、シャフト31は、2個の軸受41、42によってハウジング2に支持されるが、軸受の数は2個に限定されない。
図2に示すように、軸受41、42は、外輪41a、42aと、転動体41b、42bと、内輪41c、42cと、を含む。内輪41c、42cは、外輪41a、42aの径方向内側に配置される。このように、実施形態1において、軸受41、42は、いずれも転がり軸受である。転動体41b、42bは、外輪41a、42aと内輪41c、42cとの間に配置される。外輪41a、42aは、外側部材21の胴部211が有する貫通孔21bの内壁に接している。内輪41c、42cは、シャフト31の側面31bに接している。
図2に示すように、外輪41aは、胴部211が有する貫通孔21bの内壁から径方向内側へ突出した位置決め部21aに軸方向の一端が接している。外輪42aは、胴部221が有する貫通孔22bの内壁が彫り込まれた段差部22aに軸方向の一端が接している。このため、位置決め部21aと段差部22aとは、軸受41、軸受スペーサ43および軸受42を軸方向に挟み込み固定する。このような構造により、軸受41、42は、ハウジング2に取り付けられる。実施形態1において、両方の軸受41、42は、いずれも玉軸受であるが、転がり軸受としての軸受41、42の種類は玉軸受に限定されない。また、実施形態1において、軸受41、42は、いずれも転がり軸受であるが、滑り軸受であってもよい。
図2に示すように、第1シール固定部材32は、シャフト31と同軸であり、円柱状の小径部321、323と、大径部322とを有する。大径部322は、小径部321、323の外周よりも大きな外周を有し、小径部321と小径部323との間に位置している。例えば、小径部321、323と、大径部322とは一体に形成されている。小径部321と大径部322との境界部分には、段差部32aが形成されている。大径部322と小径部323との境界部分には、段差部32bが形成されている。小径部321は、例えば、軸受4の径方向内側の位置でシャフト31の一端部と接している。小径部321の外周は、例えば、シャフト31の外周すなわち内輪42cの内周に等しい。大径部322は、軸方向で軸受42よりも可動部材37側に位置している。大径部322の外周は、シャフト31の外周すなわち内輪42cの内周よりも大きい。大径部322の側面32pは、内側部材22が有する貫通孔22bの内壁と所定の大きさの隙間15を有して対向する。
第2シール固定部材33は、シャフト31と同軸である円柱状の部材である。第2シール固定部材33は、第1シール固定部材32側の一端部に設けられる円柱状の窪みである凹部33aと、他端部に設けられる回転中心軸Zrを中心とした環状の切り欠きである凹部33bと、を備える。第2シール固定部材33の他端部は、可動部材37の胴部371と接している。凹部33aの内周が第1シール固定部材32の小径部323の外周に略等しくなっており、小径部323が凹部33aに嵌まっている。第2シール固定部材33の側面33pは、内側部材22が有する貫通孔22bの内壁と所定の大きさの隙間15を有して対向する。
図2に示すように、第1シール固定部材32は、軸方向に貫通する貫通孔32h1および貫通孔32h2を備えている。貫通孔32h1は、回転中心軸Zrと同軸に開けられている。貫通孔32h2は、回転中心軸Zrを中心として点対称の位置に複数開けられている。第2シール固定部材33は、軸方向に貫通する貫通孔33hを備えている。貫通孔33hは、回転中心軸Zrを中心として点対称の位置に複数開けられている。可動部材37は、軸方向に貫通する貫通孔37hを備えている。貫通孔37hは、回転中心軸Zrを中心として点対称の位置に複数開けられている。一方、シャフト31の一端31cの端面には、ねじ穴31h1およびねじ穴31h2が開けられている。ねじ穴31h1は、回転中心軸Zrと同軸に開けられている。ねじ穴31h2は、回転中心軸Zrを中心として点対称の位置に複数開けられている。
ボルト34は、貫通孔32h1を貫通し、ねじ穴31h1と締結して、第1シール固定部材32とシャフト31とを固定する。ボルト34のボルト頭は、第2シール固定部材33に設けられた凹部33cに収められる。そして、ボルト34で第1シール固定部材32とシャフト31とが固定された状態で、複数のボルト35は、貫通孔37h、貫通孔33hおよび貫通孔32h2を貫通し、ねじ穴31h2と締結して、可動部材37と第2シール固定部材33と第1シール固定部材32とシャフト31とを固定する。可動部材37と内側部材22との間には、図2、4で示すように内部空間Vに繋がる所定の隙間が設けられている。また、ボルト35には、環状のシールワッシャ36が嵌められている。シールワッシャ36は、ボルト35と貫通孔37hの内壁との間の隙間を密封し、シール構造1の密封性を向上させている。
図2に示すように、内輪41cは、シャフト31の側面31から径方向外側へ突出する位置決め部31aに軸方向の一端が接している。内輪42cは、第1シール固定部材32の段差部32aに軸方向の一端が接している。このため、位置決め部31aと第1シール固定部材32とは、軸受41、軸受スペーサ43および軸受42を軸方向に挟み込み固定する。このような構造により、軸受41、42は、シャフト31に取り付けられる。なお、ボルト34が第1シール固定部材32とシャフト31とを固定することで、第1シール固定部材32が適正な押圧力を内輪42cの軸方向へ加えることができる。
第1シール固定部材32および第2シール固定部材33には、シール部材5A、5Bが取り付けられている。シール部材5A、5Bは、例えば、樹脂またはゴム等の非金属材料で形成されている。シール部材5A、5Bは、図3に示すように回転中心軸Zrを中心とした環状の弾性部材であり、第1シール固定部材32および第2シール固定部材33の外周に嵌まっている。これにより、シール部材5A、5Bは、第1シール固定部材32および第2シール固定部材33とともに回転中心軸Zrを中心として回転する。シール部材5A、5Bは、内側部材22に接して隙間15を密封している。また、図1に示すように、シール部材5A、5Bは、軸受4よりも、圧力の異なる2つの空間のうち低圧側の内部空間V寄りに配置されている。この構造により、シール部材5A、5Bが、軸受4に用いられている潤滑剤などを内部空間V側に飛散させないようにしている。
シール部材5A、5Bは、回転中心軸Zrと平行な方向で互いに異なる位置に配置されている。すなわち、シール部材5A、5Bは、隙間15を互いに異なる位置で密封している。これにより、シール部材5Aとシール部材5Bとの間に所定の大きさの空間が設けられている。このシール部材5Aとシール部材5Bとの間の空間は、内側部材22に設けられた径方向に貫通する貫通孔75、76により空間74と繋がっている。
実施形態1に係るシール構造1は、シール部材5Aとシール部材5Bとの間の空間である冷媒導入部79に冷媒を供給する流路として、貫通孔73、空間74および貫通孔75を含む冷媒供給路70を備える。冷却装置71で冷却された冷媒は、冷媒供給路70を通じて冷媒導入部79に供給される。すなわち、冷却装置71から搬送されてきた冷媒は、貫通孔73を通って空間74に流入したあと、図3に示すように貫通孔75を通って冷媒導入部79に流入する。また、実施形態1に係るシール構造1は、冷媒導入部79から冷媒を排出する流路として、貫通孔76、空間74および貫通孔77を含む冷媒排出路80を備える。冷媒導入部79でシール部材5A、5Bから熱を奪った冷媒は、冷媒排出路80を通じて冷媒導入部79から排出される。すなわち、冷媒導入部79にある冷媒は、図3に示すように貫通孔76を通じて空間74に流出したあと、貫通孔77を通って冷却装置71側へ排出される。このように、冷媒が冷却装置71および冷媒導入部79を循環することで、冷却された冷媒がシール部材5A、5Bに接する状態が保たれる。シール部材5A、5Bに直に接する冷媒により、シール部材5A、5Bが直接冷却される。
なお、回転部材3またはシール部材5A、5Bの冷却をさらに促進する必要がある場合は、貫通孔73を通ってきた冷媒のうち貫通孔75へ向かう冷媒の割合が多くなるように空間74の大きさが調整されてもよい。例えば、図2に示した胴部221の側面22cから外側部材21の貫通孔21cの内壁までの径方向の幅が、貫通孔73の径方向の幅すなわち直径以下になっていればよい。これにより、貫通孔73を通ってきた冷媒のうち空間74内で周方向に拡散する冷媒の割合が小さくなるので、貫通孔75へ向かう冷媒の割合が多くなる。または、例えば胴部221の側面22cが外側部材21の貫通孔21cの内壁に接触しており、かつ貫通孔73と貫通孔75とが直接繋がっていてもよい。これにより、貫通孔73を通ってきた冷媒のほぼ全てが貫通孔75へ向かうようになる。このように貫通孔73を通ってきた冷媒のうち貫通孔75へ向かう冷媒の割合が多くなることで冷媒導入部79内の冷媒の入れ替わりが促進されるので、回転部材3またはシール部材5A、5Bの冷却が促進される。
図4に示すように、シール部材5A、5Bは、弾性部材であり、リップ部51と、固定部52と、環状連結部53と、シールフランジ部54とを備える。リップ部51は、内側部材22が有する貫通孔22bの内壁に沿った環状部材であり、貫通孔22bの内壁に接する。固定部52は、第2シール固定部材33の側面33pに沿った環状部材であり、側面32pに接する。環状連結部53は、リップ部51と固定部52とを連結している。この構造により、リップ部51、固定部52および環状連結部53の一体としての断面形状が略U字形状となっている。これにより、リップ部51の弾性変形による圧力により、内側部材22に対するシール部材5A、5Bの押圧力が高められる。このため、隙間15の密封性が向上する。また、リップ部51と、環状連結部53と、固定部52とで囲まれる空間は、冷媒導入部79に向かって開口している。
シールフランジ部54は、固定部52から径方向内側に向かって突出する環状で板状の部材である。シール部材5Aのシールフランジ部54は、第1シール固定部材32の段差部32bに挿入されている。シール部材5Bのシールフランジ部54は、第2シール固定部材33の凹部33bに挿入されている。ボルト35によって可動部材37が第1シール固定部材32および第2シール固定部材33を介してシャフト31に固定されると、第1シール固定部材32および第2シール固定部材33は、段差部32bに挿入されたシール部材5Aのシールフランジ部54を挟み込み固定する。また、第2シール固定部材33および可動部材37は、凹部33bに挿入されたシール部材5Bのシールフランジ部54を挟み込み固定する。これにより、シール部材5A、5Bの第2シール固定部材33に対する相対的な回転が抑制される。すなわち、シール部材5A、5Bは、第2シール固定部材33とともに回転しやすくなる。このため、シール構造1は、シール部材5A、5Bが内側部材22との摩擦により滑る可能性を低減できる。よって、シール構造1は、シール部材5A、5Bと第2シール固定部材33との間に摩擦が生じる可能性を抑制することができる。
実施形態1において、可動部材37は、搬送テーブルであるとともに、シール押え部材でもある。この構造により、シール構造1は、部品点数を削減することができ、製造コストを抑制できる。なお、搬送テーブルとシール押え部材とは、別部材であってもよい。
図4に示すように、リップ部51と、環状連結部53と、固定部52とで囲まれる空間には、付勢部材56が配置されている。付勢部材56は、例えばステンレス鋼等であり、平板状の板状部56aおよび板状部56bを屈曲部56cで折り曲げた、断面視でV字状となる弾性体である。付勢部材56には、板状部56aおよび板状部56bの先端同士が広がるように弾性力が生じている。これにより、付勢部材56は、リップ部51をハウジング2の内側部材22に押し付けることができる。
シール部材5A、5Bは、リップ部51の弾性変形による圧力および付勢部材56の弾性変形による圧力により、内側部材22に押し付けられる。このため、シール構造1は、内側部材22に対するシール部材5A、5Bの押圧力を高めることができる。
また、図4に示すように、シール部材5A、5Bのリップ部51においては、先端部51aが内側部材22に接触している。一方、リップ部51の基部51bは、内側部材22に接触しておらず、内側部材22との間に隙間をあけて対向している。これにより、シール部材5A、5Bは、リップ部51の先端部51aにて線状に内側部材22に接触するので、密封性を向上させることができる。
また、リップ部51と、環状連結部53と、固定部52とで囲まれる空間は、冷媒導入部79に向かって開口しているので、冷媒導入部79に冷媒が流入することで当該空間が膨張する。このため、内側部材22に対するシール部材5A、5Bの押圧力が高められる。これにより、シール構造1は、隙間15の密封性を向上させることができる。
また、実施形態1における冷媒は上述したように純水である。これにより、シール部材5A、5Bと内側部材22との間に生じる可能性のある微小な隙間を冷媒が埋めることができる。このため、シール構造1は、隙間15の密封性を向上させることができる。
ところで、特許文献1のような従来技術においては、接触式シールは、ハウジングに固定されてシャフトに接している。このため、シャフトが回転すると、接触式シールとシャフトとの間で摩擦が生じることになる。したがって、摩擦熱によって接触式シールおよびシャフトの温度が上昇する。特に、シャフトの接触式シールと接触する面において、回転中心軸Zrに対して直交する接線方向の速度が0.5m/s以上である場合、接触式シールの温度が上昇しやすい。樹脂またはゴムで形成される接触式シールは、金属で形成される他の部材と比較して熱膨張係数が大きいため、接触式シールが熱膨張すると、接触式シールのシャフトに対する接触圧が大きくなる。これにより、接触式シールの摩耗が進みやすくなる可能性がある。このため、接触式シールの温度上昇は抑制されるのが望ましい。そのために、従来の技術のシール構造は、接触式シールとともに高温となるシャフトの温度上昇を抑える必要がある。しかし、シャフトの一端部は高真空環境であるプロセス室に位置しているため、シャフトに蓄積した熱は、プロセス室側に放熱されない。このため、シャフトに蓄積した熱は、駆動源側に伝熱するが、駆動源側も発熱しているため、駆動源側への放熱量も限定される。そして、シャフトの回転速度がさらに高速になる場合、または密封性を高めるために接触式シールの接触圧を高める場合、自然放熱では摩擦熱を十分に放熱できない可能性がある。
これに対して、実施形態1においては、シャフト31が回転すると、接触式シールであるシール部材5A、5Bとハウジング2の内側部材22との間で摩擦が生じる。シール部材5A、5Bは上述したように樹脂またはゴムで形成されているため、シール部材5A、5Bの熱伝導率は、金属で形成された他の部材と比較して1/1000から1/100程度である。したがって、シール部材5A、5Bおよび内側部材22の間で生じた摩擦熱の大部分は、内側部材22側に伝わり、回転部材3の温度上昇は抑制される。可動部材37と内側部材22との間には、高真空環境である内部空間Vに繋がる隙間が設けられているため、実施形態1における内側部材22の熱は、可動部材37側へ伝熱しにくくなっている。一方、空間74に冷媒が導入されているため、内側部材22の熱は、冷媒に伝熱する。または、ボルト27によって内側部材22と外側部材21とが固定されているため、内側部材22の熱は、フランジ部222から外側部材21に伝熱する。外部空間Eでは、高真空環境である内部空間Vと異なり空気の対流があるため、外部空間Eの空気と外側部材21の外表面との間で熱伝達が生じやすい。これにより、シール部材5A、5Bとの摩擦によって内側部材22に生じた熱の放熱が促進される。さらにシール構造1では、冷媒導入部79に導入された冷媒がシール部材5A、5Bを直接冷却する。これにより、内側部材22との摩擦によってシール部材5A、5Bに生じた熱の放熱が促進される。このため、シール部材5A、5Bの温度上昇が抑制されるので、シール部材5A、5Bの熱膨張が抑制される。したがって、シール部材5A、5Bの内側部材22に対する接触圧の増加が抑制されることで、シール部材5A、5Bの摩耗の進行が抑制される。よって、シール構造1は、接触式シールであるシール部材5A、5Bの交換頻度を低減することができる。
また、シール部材5A、5Bは、上述したようにリップ部51と、固定部52と、環状連結部53と、を備える。これにより、シール部材5A、5Bは、例えばOリング等である場合に比較して、内側部材22と第2シール固定部材33との間のヒートブリッジとなる部分が小さいため、内側部材22との間で生じる摩擦熱を第2シール固定部材33側へ熱伝導しにくくしている。これにより、シール構造1は、摩擦熱の外部空間E側への放熱をより促進することができる。このため、シール構造1は、シール部材5A、5Bの摩耗を抑制することができる。
また、リップ部51と、環状連結部53と、固定部52とで囲まれる空間は、冷媒導入部79に向かって開口しているので、当該空間の内部に冷媒が導入される。これにより、シール部材5A、5Bと冷媒との接触面積が大きくなる。このため、シール部材5A、5Bの温度上昇がより抑制されるので、シール部材5A、5Bの摩耗の進行がより抑制される。
なお、シール部材5A、5Bは、例えば、シールフランジ部54に相当する部分で第1シール固定部材32、第2シール固定部材33および可動部材37によって固定されるOリング等であってもよい。シール部材5A、5BがOリングである場合であっても、シール部材5A、5Bとハウジング2の内側部材22との間で摩擦が生じることに変わりない。また、シール部材5A、5BがOリングである場合であっても、冷媒導入部79に導入される冷媒によってシール部材5A、5Bが直接冷却されることに変わりはない。これにより、シール部材5A、5Bと内側部材22との摩擦に生じた熱の放熱は促進される。ただし、シール部材5A、5Bは、リップ部51と、固定部52と、環状連結部53と、を備える方が、上述したように摩擦熱を第2シール固定部材33側へ熱伝導しにくくできる点、およびシール部材5A、5Bと冷媒との接触面積が大きくなる点で好ましい。
また、実施形態1においては、リップ部51に摩耗が生じても、付勢部材56が接触圧を維持するように作用する。このため、シール構造1は、接触式シールであるシール部材5A、5Bの交換頻度を低減することができる。
シール部材5A、5Bの材質は、ポリエチレンまたはポリテトラフルオロエチレンであるとより好ましい。ポリエチレンまたはポリテトラフルオロエチレンは、シール部材5A、5Bの材質として、耐摩耗性、耐薬品性に優れ、内側部材22との潤滑に好適である。
シール部材5A、5Bが接触する第2シール固定部材33および内側部材22の材質は、高炭素クロム軸受鋼鋼材、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼、Siを3.4質量%以上含む析出硬化性ステンレスの高珪素合金のいずれか1つが好ましい。この構造により、シール部材5A、5Bの摩耗が抑制され、実施形態1においてシール構造1は、接触式シールであるシール部材5A、5Bの交換頻度を低減することができる。
以上説明したように、シール構造1は、圧力の異なる2つの内部空間Vと外部空間Eとを隔てることができる。シール構造1は、圧力の異なる2つの空間のうち高圧側である外部空間Eに配置される筒状のハウジング2と、ハウジング2に挿入されるシャフト31と、を備える。また、シール構造1は、シャフト31の一端部に別体として固定されシャフト31とともに回転する第1シール固定部材32および第2シール固定部材33を備える。第1シール固定部材32の側面32pおよび第2シール固定部材33の側面33pは、所定の大きさの隙間15を有してハウジング2が有する内側部材22の内壁22bと対向する。シール構造1は、第1シール固定部材32および第2シール固定部材33に固定されて第1シール固定部材32および第2シール固定部材33とともに回転し、ハウジング2が有する内側部材22の内壁22bに接して、隙間15を密封する環状の2つのシール部材5A、5Bとを備える。隙間15のうち2つのシール部材5A、5Bで挟まれる空間である冷媒導入部79に導入される冷媒により2つのシール部材5A、5Bが直接冷却される。
これにより、シャフト31が回転すると、シール部材5A、5Bとハウジング2の内側部材22との間で摩擦が生じる。上述したように、樹脂またはゴムで形成されたシール部材5A、5Bの熱伝導率は、金属で形成された他の部材と比較して小さい。したがって、シール部材5A、5Bおよび内側部材22の間で生じた摩擦熱の大部分は、内側部材22側に伝わり、回転部材3の温度上昇は抑制される。そして、内側部材22の熱は、外側部材21を介して外部空間E側に伝熱する。外部空間Eでは、高真空環境である内部空間Vと異なり空気の対流があるため、外部空間Eの空気と外側部材21の外表面との間で熱伝達が生じやすい。これにより、シール部材5A、5Bとの摩擦によって内側部材22に生じた熱の放熱が促進される。さらにシール構造1では、冷媒導入部79に導入された冷媒がシール部材5A、5Bを直接冷却する。これにより、内側部材22との摩擦によってシール部材5A、5Bに生じた熱の放熱が促進される。このため、シール部材5A、5Bの温度上昇が抑制されるので、シール部材5A、5Bの熱膨張が抑制される。したがって、シール部材5A、5Bの内側部材22に対する接触圧の増加が抑制されることで、シール部材5A、5Bの摩耗の進行が抑制される。よって、シール構造1は、接触式シールであるシール部材5A、5Bの交換頻度を低減することができる。
実施形態1に係るシール構造1において、シール部材5A、5Bは、第2シール固定部材33に接する固定部52と、ハウジング2が有する内側部材22の内壁に接するリップ部51と、固定部52とリップ部51とを連結する環状連結部53と、を備える。
これにより、リップ部51の弾性変形による弾性力により、シール部材5A、5Bはハウジング2の内側部材22に押し付けられる。このため、シール構造1は、内側部材22に対するシール部材5A、5Bの押圧力を高め、隙間15の密封性を向上させることができる。そして、シール部材5A、5Bは、例えばOリング等である場合に比較して、内側部材22と第2シール固定部材33との間のヒートブリッジとなる部分が小さいため、内側部材22との間で生じる摩擦熱をシャフト31側へ熱伝導しにくくしている。これにより、シール構造1は、摩擦熱の外部空間E側への放熱をより促進することができる。このため、シール構造1は、シール部材5A、5Bの摩耗を抑制することができる。
実施形態1に係るシール構造1において、リップ部51と、環状連結部53と、固定部52とで囲まれる空間は、冷媒導入部79に向かって開口している。
これにより、冷媒導入部79に冷媒が流入することで、リップ部51と、環状連結部53と、固定部52とで囲まれる空間が膨張する。このため、内側部材22に対するシール部材5A、5Bの押圧力が高められる。これにより、シール構造1は、隙間15の密封性を向上させることができる。そして、リップ部51と、環状連結部53と、固定部52とで囲まれる空間の内部に冷媒が導入されるので、シール部材5A、5Bと冷媒との接触面積が大きくなる。このため、シール部材5A、5Bの温度上昇がより抑制されるので、シール部材5A、5Bの摩耗の進行がより抑制される。
実施形態1に係るシール構造1において、冷媒は、液体である純水である。
これにより、シール部材5A、5Bと内側部材22との間に生じる可能性のある微小な隙間を冷媒が埋めることができる。このため、シール構造1は、隙間15の密封性を向上させることができる。
実施形態1に係るシール構造1は、冷媒導入部79に冷却された冷媒を供給する冷媒供給路70と、冷媒導入部79から冷媒を排出する冷媒排出路80と、を備える。
これにより、冷却された冷媒が冷媒供給路70を通じて冷媒導入部79に供給され、冷媒導入部79でシール部材5A、5Bから熱を奪った冷媒が冷媒排出路80を通じて冷媒導入部79から排出される。このように冷却された冷媒が冷媒導入部79を循環することで、冷却された冷媒がシール部材5A、5Bに接する状態が保たれる。このため、シール部材5A、5Bの温度上昇がより抑制されるので、シール部材5A、5Bの摩耗の進行がより抑制される。
実施形態1に係るシール構造1において、冷媒供給路70および冷媒排出路80はハウジング2に設けられる。
これにより、冷媒が外側部材21および内側部材22に接する。このため、シール部材5A、5Bと内側部材22との摩擦により内側部材22および外側部材21に伝わった熱は、外部空間Eに放熱されるとともに冷媒に対しても放熱される。このため、シール部材5A、5Bの温度上昇がより抑制されるので、シール部材5A、5Bの摩耗の進行がより抑制される。
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係るシール構造を模式的に示す断面図である。図6は、図5のB−B断面図である。上述した実施形態1と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。実施形態2に係るシール構造1は、上述した実施形態1に係る冷媒供給路70および冷媒排出路80とは異なる冷媒供給路70Aおよび2つの冷媒排出路80A1、80A2を備える。
図5に示すように、実施形態2に係るシャフト31Aは、軸方向に貫通する貫通孔31H1を備える。貫通孔31H1は、回転中心軸Zrと同軸に開けられている。実施形態2に係る第1シール固定部材32Aは、軸方向に貫通する貫通孔32H1を備える。貫通孔32H1は、回転中心軸Zrと同軸に開けられている。実施形態2に係る第2シール固定部材33Aは、軸方向に貫通する貫通孔33H1と、径方向に貫通する貫通孔33T1と、を備える。貫通孔33H1は、回転中心軸Zrと同軸に開けられている。貫通孔31H1、貫通孔32H1、貫通孔33H1および貫通孔33T1は、互いに繋がっている。そして図6に示すように、貫通孔33T1の一端部は、冷媒導入部79に繋がっている。貫通孔31H1の一端部は、配管72Aを介して冷却装置71に接続されている。実施形態2において、貫通孔73は、配管78Aaを介して冷却装置71に接続されており、貫通孔77は、配管78Abを介して冷却装置71に接続されている。
実施形態2に係るシール構造1は、冷媒導入部79に冷媒を供給する流路として、貫通孔31H1、貫通孔32H1、貫通孔33H1および貫通孔33T1を含む冷媒供給路70Aを備える。冷却装置71で冷却された冷媒は、冷媒供給路70Aを通じて冷媒導入部79に供給される。すなわち、冷却装置71から搬送されてきた冷媒は、貫通孔31H1、貫通孔32H1および貫通孔33H1を通過したあと、図6に示すように貫通孔33T1を通って冷媒導入部79に流入する。また、実施形態2に係るシール構造1は、冷媒導入部79から冷媒を排出する流路として、貫通孔75、空間74および貫通孔73を含む冷媒排出路80A1と、貫通孔76、空間74および貫通孔77を含む冷媒排出路80A2とを備える。冷媒導入部79でシール部材5A、5Bから熱を奪った冷媒は、冷媒排出路80A1および冷媒排出路80A2を通じて冷媒導入部79から排出される。すなわち、冷媒導入部79にある冷媒は、貫通孔75または貫通孔76を通って空間74に流出したあと、貫通孔73または貫通孔77を通って冷却装置71側へ排出される。
なお、上述した説明では、ハウジング2に冷媒排出路80A1、80A2が設けられており、シャフト31A、第1シール固定部材32Aおよび第2シール固定部材33Aに冷媒供給路70Aが設けられていたが、必ずしもこの配置でなくてもよい。例えば、ハウジング2に冷媒供給路が設けられ、シャフト31A、第1シール固定部材32Aおよび第2シール固定部材33Aに冷媒排出路が設けられていてもよい。
以上説明したように、実施形態2に係るシール構造1において、冷媒排出路80A1、80A2がハウジング2に設けられ、冷媒供給路70Aがシャフト31、第1シール固定部材32Aおよび第2シール固定部材33Aに設けられる。
これにより、実施形態2に係るシール構造1は、冷媒供給路70Aおよび冷媒排出路80A1、80A2の両方を大きくすることができる。このため、実施形態2に係るシール構造1は、単位時間当たりに冷媒導入部79に導入する冷媒の量を多くすることができる。したがって、シール部材5A、5Bの温度上昇がより抑制されるので、シール部材5A、5Bの摩耗の進行がより抑制される。
(実施形態3)
図7は、実施形態3に係るシール構造を模式的に示す断面図である。図8は、図7のC−C断面図である。上述した実施形態1と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。実施形態3に係るシール構造1は、上述した実施形態1に係る冷媒供給路70および冷媒排出路80とは異なる冷媒供給路70Bおよび冷媒排出路80Bを備える。
図7に示すように、実施形態3に係る外側部材21Bは、実施形態1に係る外側部材21と比較して、胴部211Bに貫通孔73および貫通孔77(図2参照)を備えていない点が異なる。実施形態3に係る内側部材22Bは、実施形態1に係る内側部材22と比較して、胴部221Bに大径部223および小径部224(図2参照)を備えていない点が異なる。このため、内側部材22Bの側面22cBと外側部材21Bが有する貫通孔21cの内壁との間の隙間の大きさが一定となっている。また、実施形態3に係る内側部材22Bは、実施形態1に係る内側部材22と比較して、胴部221Bに貫通孔75および貫通孔76(図2参照)を備えていない点が異なる。これにより、冷媒導入部79は、シール部材5A、5Bおよび内側部材22Bで囲まれている。
図7に示すように、実施形態3に係るシャフト31Bは、軸方向に貫通する貫通孔31H2および貫通孔31H3を備える。実施形態3に係る第1シール固定部材32Bは、軸方向に貫通する貫通孔32H2および貫通孔32H3を備える。実施形態3に係る第2シール固定部材33Bは、軸方向に貫通する貫通孔33H2および貫通孔33H3と、径方向に貫通する貫通孔33T2および貫通孔33T3と、を備える。貫通孔31H2、貫通孔32H2、貫通孔33H2および貫通孔33T2は、互いに繋がっている。また貫通孔31H3、貫通孔32H3、貫通孔33H3および貫通孔33T3は、互いに繋がっている。そして図8に示すように、貫通孔33T2の一端部および貫通孔33T3の一端部は、冷媒導入部79に繋がっている。貫通孔31H2の一端部は、配管72Bを介して冷却装置71に接続されている。貫通孔31H3の一端部は、配管78Bを介して冷却装置71に接続されている。
実施形態3に係るシール構造1は、冷媒導入部79に冷媒を供給する流路として、貫通孔31H2、貫通孔32H2、貫通孔33H2および貫通孔33T2を含む冷媒供給路70Bを備える。冷却装置71で冷却された冷媒は、冷媒供給路70Bを通じて冷媒導入部79に供給される。すなわち、冷却装置71から搬送されてきた冷媒は、貫通孔31H2、貫通孔32H2、貫通孔33H2を通過したあと、図8に示すように貫通孔33T2を通って冷媒導入部79に流入する。また、実施形態3に係るシール構造1は、冷媒導入部79から冷媒を排出する流路として、貫通孔33T3、貫通孔33H3、貫通孔32H3および貫通孔31H3を含む冷媒排出路80Bを備える。冷媒導入部79でシール部材5A、5Bから熱を奪った冷媒は、冷媒排出路80Bを通じて冷媒導入部79から排出される。すなわち、冷媒導入部79にある冷媒は、図8に示すように貫通孔33T3を通過したあと、貫通孔33H3、貫通孔32H3および貫通孔31H3を通って冷却装置71側へ排出される。
なお、内側部材22Bの側面22cBと外側部材21Bが有する貫通孔21cの内壁との間の隙間には、放熱グリースが充填されていることが好ましい。放熱グリースは、例えば金属酸化物を含ませたシリコングリースであって、通常のグリースと比較して熱伝導率が高い。これにより、内側部材22Bの熱は、胴部221Bから放熱グリースを介して外側部材21Bの胴部211Bに伝熱しやすくなる。内側部材22Bと外側部材21Bとの間の熱伝導に寄与する部分が増加するため、内側部材22Bの熱がより効率的に外側部材21Bへ伝熱される。
以上説明したように、実施形態3に係るシール構造1において、冷媒供給路70Bおよび冷媒排出路80Bはシャフト31B、第1シール固定部材32Bおよび第2シール固定部材33Bに設けられる。
これにより、冷媒の詰まり等が発生した場合であっても、ハウジング2Bをそのまま使用し、シャフト21B、第1シール固定部材32Bおよび第2シール固定部材33Bのいずれかを取り外して交換することで、部品の交換作業が完了する。このため、実施形態3に係るシール構造1は、メンテナンスの労力を軽減することができる。
以上、実施形態1、実施形態2および実施形態3を説明したが、前述した内容により限定されるものではない。また、実施形態1、実施形態2および実施形態3の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換および変更のうち少なくとも1つを行うことができる。