JP2015228828A - 貯穀チョウ目害虫を合成超音波で忌避せしめる方法 - Google Patents

貯穀チョウ目害虫を合成超音波で忌避せしめる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ノシメマダラメイガの防除に有効な新規技術の提供。
【解決手段】合成超音波を用いてノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫(特に既交尾メス成虫)の食物貯蔵施設への飛来を抑止する方法であって、下記の音響パラメータを有する合成超音波を前記食物貯蔵施設に適用し、前記ノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫(特に既交尾メス成虫)の飛翔行動を阻害することを含む方法。:
ア)構成周波数40〜60 kHz
イ)パルス長20〜40 ms
ウ)パルス間間隔(パルス間の静音部の長さ)30〜50 ms
エ)上記ア)〜ウ)のパルス3つ〜7つで1つのパルス・グループとし、パルス・グループ間間隔(パルス・グループ間の静音部の長さ)100〜140 ms
オ)音圧80〜120 dB SPL(測定距離1m;0 dB SPL = 20 μPa)。
【選択図】なし

Description

本発明は重要な貯穀害虫又は貯蔵食品害虫であるノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫の飛翔行動を合成超音波により阻害し、忌避せしめ、同害虫を防除する方法に関する。
汎世界種であり、我が国においても代表的な貯穀害虫であるノシメマダラメイガは、幼虫が多種多様な貯穀物を含む食物を加害するため、成虫・幼虫ともに加工食品における異物混入源となっている。また、同種の幼虫は製品外装に孔を開けるばかりでなく粗繭を形成するため、倉庫などの加工食品の流通現場においても重要な防除対象である。
一方ノシメマダラメイガの防除を要する環境においては食品が扱われているため、殺虫剤のような化学合成農薬を散布することはできない。
また合成性フェロモン剤を用いる交信攪乱により、ノシメマダラメイガの交尾を阻害すること自体は不可能ではない。しかしながらフェロモン剤を設置すると外部からの同種のオス成虫の飛来・侵入を促進するおそれがあるため、かかる防除方法も適用することはできない。
さらに、夜行性チョウ目害虫については黄色光を用いた防蛾灯により明順応を引き起こして行動を抑制することもできるが、ノシメマダラメイガは明期にも少なからず飛翔行動を行うため、同種にはかかる方法を適用することもできない。
近年においては、青色光により夜行性チョウ目害虫の行動を抑制する技術が開発されつつある。しかしながらかかる方法においては青色光を対象害虫に長時間暴露する必要があるため、移動性の高いノシメマダラメイガへの適用は検討さえされていない。
ところでコウモリが発する超音波を利用した害虫防除方法が、すでにいくつか提案されている。
農業害虫や園芸害虫においては、本邦においてコウモリの発する超音波を利用した害虫防除法又は関連技術がすでにいくつか報告されている(防虫装特許文献1、防虫用 特許文献2、特許文3)。
果樹栽培に対する害虫防除については、果実に穿孔被害をもたらす吸汁性ヤガ類の成虫のモモ園への飛来・侵入を抑えることについて報告されている(小池 2008 非特許文献1)。
また、モモ・クリ果実の重要害虫であるモモノゴマダラノメイガ、トウモロコシ害虫であるアワノメイガ、又はシソ害虫であるベニフキノメイガ等のノメイガ類については、モモノゴマダラノメイガのオス成虫が発する超音波に相当する超音波を園芸作物栽培圃場に適用し、前記ノメイガ類害虫のメス成虫及びオス成虫の飛翔行動を阻害することを含む方法の有効性が報告されている(中の非特許文献2、特許文献4及び5)。とくに特許文献2及び3においては合成超音波として音響パラメータがパルス長10〜50 ms、パルス間間隔(パルス間の静音部の長さ)10〜40 ms、構成周波数10〜100 kHz及び音圧80 dB SPL 以上(測定距離5 cm;0 dB SPL = 20 μPa)であるものにより、成虫の飛翔行動を顕著に阻害できることが示されている。
米国においては、トウモロコシとワタのチョウ目害虫であるアメリカタバコガ、ヨーロッパアワノメイガ及びイラクザギンウワバを対象に、合成超音波を簡易提示することによりこれらの害虫による被害を軽減する試みが50年以上前からなされている(非特許文献3〜5)。また録音したコウモリの超音波(パルス長5 ms前後)を再生する手法も試験されているが、チョウ目害虫の飛来を効果的に抑止するには至っていない。
ノシメマダラメイガについても、周波数40〜70 kHzの超音波を忌避しやすいことが知られている(非特許文献7)。すなわち、ノシメマダラメイガは超音波を感知すると、メス成虫においては性フェロモン放出行動や産卵のための飛翔行動が、オス成虫においてはメス成虫への飛翔行動が停止する(中止される)。
しかしながらノシメマダラメイガメス成虫及びオス成虫について飛翔行動が停止されることが知られている上記方法においては、飛翔行動を停止する効果は一時的にすぎず、ノシメマダラメイガの行動を長期にわたり阻害する方法については、超音波を用いる方法も含め未だ知られていない(非特許文献7〜10)。
また、ノシメマダラメイガについては、オス成虫を誘引する性フェロモン化合物の濃度が高くなると、音圧の高い超音波を提示してもオス成虫の飛来を阻害できなくなることも報告されている(非特許文献11)。
上記のとおりノシメマダラメイガは世界的に重要な貯穀害虫であるにもかかわらず安全かつ有効な防除方法が確立されていない。したがって、ノシメマダラメイガを防除するための方法に対する需要が存在し続けている。
特開2003−304797号公報 特開2008−48717号公報 特開2011−205981号公報 特願2013−000110号明細書 特願2013−251035号明細書
小池、「超音波を利用した果樹のヤガ類被害防止技術の開発」、植物防疫、2008年10月、第62巻、第10号、p.549−552 中野、「チョウ目害虫における超音波を用いた行動制御技術」、植物防疫、2012年6月、第66巻、第6号、p.300−303 Belton, P. & Kempster, R. H., 1969, Entomo1. Exp. App1., 5: 281-288 Payne, T. L. & Shorey, H. H., 1968, J. Econ. Entomo1., 61: 3-7 Agee, H. R. & Webb, J. C., 1969, J. Econ. Entomo1., 62: 1322-1326 Gillam, E. H., Westbrook, J. K., Schleider, P. G. & McCracken,G. F., 2011, Southwest. Nat., 56: 103-133 Svensson, G. P, Loefstedt, C. & Skals, N., 2007, J. Insect Sci., 7: Article 59 Huang, F., Subramanyam, B. & Taylor, R.,2003, J. Stored Prod. Res., 39: 413-422 Huang, F.& Subramanyam, B.,2004, Entomo1. Exp. App1., 113: 157-164 Svensson , G. P., Skals, N. & Loefstedt, C., 2003, Entomo1. Exp. App1., 106: 187-192 Svensson, G. P, Loefstedt, C. & Skals, N., 2004, Oikos, 104: 91-97
上記のような背景の下、ノシメマダラメイガの防除に有効な新規技術の開発が渇望されている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、これまで検討されていなかった音響パラメータを採用し、最適化することにより資材を用いることにより、ノシメマダラメイガの行動を従来より効率的に抑制できる可能性があることを見出し、さらに研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
より具体的には、ノシメマダラメイガが忌避しやすい超音波のパルス構造(パルス長・パルス間間隔)を特定し、メスによる産卵のための飛来・侵入及びオスによる交尾のための飛来・侵入を抑制する方法を開発した。
すなわち本発明は、少なくとも以下の発明に関する:
(1)合成超音波を用いてノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫のうち特に既交尾メス成虫の食物貯蔵施設への飛来を抑止する方法であって、下記の音響パラメータを有する合成超音波を前記食物貯蔵施設に適用し、前記ノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫、特に既交尾メス成虫の飛翔行動を阻害することを含む方法:
ア)構成周波数40〜60 kHz
イ)パルス長20〜40 ms
ウ)パルス間間隔(パルス間の静音部の長さ)30〜50 ms
エ)上記ア)〜ウ)のパルス3つ〜7つで1つのパルス・グループとし、パルス・グループ間間隔(パルス・グループ間の静音部の長さ)100〜140 ms
オ)音圧80〜120 dB SPL(測定距離1m;0 dB SPL = 20 μPa)。
(2)メス成虫に既交尾メス成虫が含まれる、上記(1)に記載の方法。
(3)1つのパルス・グループが5つのパルスから構成される上記(1)又は(2)の方法。
(4)パルス長30〜100 msの合成超音波を適用し、ノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫の飛翔行動及び歩行を阻害することを含む上記(1)〜(3)のいずれかの方法。
(5)合成超音波が単一周波数成分からなる純音である上記(1)〜(4)のいずれかの方法。
(6)食物貯蔵施設におけるノシメマダラメイガによる該食物貯蔵施設に貯蔵された食物に対する加害を防ぐ方法であって、上記(1)〜(5)のいずれかの方法により前記食物貯蔵施設への前記ノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫のうち特に既交尾メス成虫の飛来を阻害することを含む方法。
(7)合成超音波の音響パラメータが下記ア)〜オ)に示されるパラメータである上記(6)の方法:
ア)構成周波数40〜60 kHz
イ)パルス長20〜40 ms
ウ)パルス間間隔(パルス間の静音部の長さ)30〜50 ms
エ)上記ア)〜ウ)のパルス3つ〜7つで1つのパルス・グループとし、パルス・グループ間間隔(パルス・グループ間の静音部の長さ)100〜140 ms
オ)音圧80〜120 dB SPL(測定距離1m;0 dB SPL = 20 μPa)。
本発明の方法によれば、貯穀害虫であるノシメマダラメイガを、従来の方法より高い効率により防除することができる。
ノシメマダラメイガの行動を阻害する超音波については、上記各文献のいくつかにも記載のとおりすでに知られている。しかしながら、同各文献に記載されているのはせいぜい同種の行動が一時的に(2秒間程度)阻害されることに留まり、より長期にわたり同種の行動を阻害する方法についてはこれまで知られていない。
これに対して本発明の方法は、ノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫の飛来・侵入行動および交尾行動を長期間(6時間以上)にわたり阻害する。そのため、本発明の方法は、従来技術を上回る効果を奏するのである。
本発明の方法において好適に用いられる合成超音波のパルス構造を模式的に示す図である。 ノシメマダラメイガ成虫の歩行の一時的な中止を引き起こすパルス(パルス・グループなし)のパルス長を示す図である。 ノシメマダラメイガ未交尾オス成虫の飛来を15分間阻害するパルス長(パルス・グループなし)について示す図である。 ノシメマダラメイガ既交尾メス成虫の飛来を15分間阻害するパルス長(パルス・グループなし)について示す図である。 ノシメマダラメイガ成虫の飛来を6時間阻害するパルス長(パルス・グループあり)について示す図である。
本発明は前記のとおり、合成超音波を用いてノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫(特に既交尾メス成虫)の食物貯蔵施設への飛来を抑止する方法であって、下記の音響パラメータを有する合成超音波を前記食物貯蔵施設に適用し、前記ノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫(特に既交尾メス成虫)の飛翔行動を阻害することを含む方法である:
ア)構成周波数40〜60 kHz
イ)パルス長20〜40 ms
ウ)パルス間間隔(パルス間の静音部の長さ)30〜50 ms
エ)上記ア)〜ウ)のパルス3つ〜7つで1つのパルス・グループとし、パルス・グループ間間隔(パルス・グループ間の静音部の長さ)100〜140 ms
オ)音圧80〜120 dB SPL(測定距離1m;0 dB SPL = 20 μPa)。
本明細書において、「パルス・グループ」とは、短い間隔で断続的に出力される複数のパルスの一群を意味する(図1)。
また本明細書において「食物貯蔵施設」の語は、穀物その他の食物及びそれらの加工品が貯蔵された倉庫や建造物を意味し、施設の内部および外部のいずれをも包含する。
本明細書において、合成超音波を指して単に「超音波」と記載することがある。
本発明の方法において用いられる合成超音波はノシメマダラメイガの行動を阻害する超音波であり、該合成超音波によりノシメマダラメイガのメス成虫及びオス成虫の飛翔行動が阻害される。
本発明の方法において、ア)超音波の構成周波数は40〜60 kHzであるところ、大気中における音の減衰を勘案すると同構成周波数として40〜50 kHzは好ましく、40 kHzはより好ましい。なお、本発明の方法においては、単一周波数成分からなる純音を用いてもよく、あるいは複数の周波数成分からなる超音波を用いてもよい。
超音波の構成周波数は、常に一定でなくてよく1つのパルス・グループにおいて、あるいはパルス・グループごとに、変化してよい。
本発明の方法において、イ)超音波のパルス長は20〜40 msであるところ、25〜40 msは好ましく、25〜35 msはより好ましい。
超音波のパルス長は、常に一定でなくてよく1つのパルス・グループにおいて、あるいはパルス・グループごとに、変化してよい。
本発明の方法において、ウ)超音波のパルス間間隔(パルス間の静音部の長さ)は、30〜50 msであるところ、35〜50 msは好ましく、35〜45 msはより好ましい。
なお、ある種の害虫においては、超音波を検知すると生殖に関する行動を一時的に中止するが、超音波の連続的な提示によりその効果は低下することが分かっている。本発明の方法においては超音波のパルス間間隔を設定し、さらに同間隔を上記のような間隔とすることにより、上記のような「慣れ」が生じるのを回避することができる。
また 超音波のパルス間間隔は、常に一定でなくてよく1つのパルス・グループにおいて、あるいはパルス・グループごとに、変化してよい。
本発明の方法において、エ)上記ア)〜ウ)のパルス3つ〜7つで1つのパルス・グループとし、パルス・グループ間間隔(パルス・グループ間の静音部の長さ)100〜140 msである。前記パルス・グループ間間隔として、110〜135 msは好ましく、110〜130 msはより好ましい。
1つのパルス・グループを構成するパルスの個数は、適宜改変してよく、パルスの個数として4つ〜7つは好ましく、5つは最も好ましい。
また1つのパルス・グループにおけるパルス・グループ間間隔は常に一定でなくてもよい。
本発明の方法においては超音波のパルス・グループ間間隔を設定し、さらに同間隔を上記のような間隔とすることにより、ノシメマダラメイガにおいて上記のような「慣れ」が生じるのを一層効果的に回避することができる。
本発明の方法において用いられる上記パルス・グループあたりのパルス個数を1秒間あたりのパルス出力回数に換算して表すと、例えば1秒間あたり11回〜20回である。本発明の方法においては、かかるパルス出力回数の範囲において、30〜50 msのパルス間間隔の一群をパルス・グループとし、パルス・グループ間における間隔を前記パルス間間隔より大きい100〜140 msとすることにより、所期の効果が奏されるのである(図1)。
本発明の方法において、オ)超音波の音圧は80〜120 dB SPL(測定距離1m;0 dB SPL = 20 μPa)であるところ、100〜120 dB SPLは好ましく、120 dB SPL以上はより好ましい。なお、ある測定距離における音圧の数値は、異なる測定距離における音圧の数値に換算することが可能である。
超音波の超音波の音圧は、常に一定でなくてよく1つのパルス・グループにおいて、あるいはパルス・グループごとに、変化してよい。ただし、音圧が高いほど、ノシメマダラメイガの飛来をより遠距離から阻害することができるため好ましい。
上記合成超音波の音響パラメータ(ア)〜(オ)に示される数値は、本発明の方法が実施される間常に保持されていなくてもよく、本発明の方法の効果が奏される範囲において、例えばある時間帯においては別異の数値を採用してもよい。
また、本発明は、食物貯蔵施設におけるノシメマダラメイガによる該食物貯蔵施設に貯蔵された食物に対する加害を防ぐ方法であって、上記いずれかに記載の方法により前記食物貯蔵施設への前記ノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫のうち特に既交尾メス成虫の飛来を阻害することを含む方法に関する。この方法は、上記いずれかに方法により食物貯蔵施設へのノシメマダラメイガの飛来を阻害することにより、該施設に生息するノシメマダラメイガの密度を低減せしめるものである。本防除方法においては、上記食物貯蔵施設への飛来を抑止する方法のうち、好ましい方法を適宜用いることができる。
本発明の方法によりノシメマダラメイガの防除を行うためには、防除を要する食物貯蔵施設(精米所、貯蔵倉庫、製粉工場など)に前記合成超音波を発生する装置を設置するという極めて簡便な方法によって行うことができる。より具体的には、施設の入口部、すなわちノシメマダラメイガの侵入経路に、外側に向けて合成超音波の出力装置を設置し、対象害虫の施設内への飛来・侵入を阻害することにより、同対象害虫を防除することができる。設置される出力装置の種類はとくに限定されない。施設の規模及び貯蔵食物の量によって適宜調節することができる。設置される出力装置の個数は、施設の入口部の大きさに応じて適宜決定してよい。
出力装置の種類は限定されないところ、指向性の低い出力装置や広域を有する面において出力可能な装置は好ましく、例えば超音波出力面における圧電フィルムの利用は好ましい。
ノシメマダラメイガのオス成虫およびメス成虫は、特定の時間帯に活発に飛来する。したがって、この時間帯に前記合成超音波を出力することは、同種の省力的かつ効率的な防除を可能ならしめるため好ましい。
例えば交尾後のノシメマダラメイガメス成虫においては、暗期開始直後の1時間の時間帯における産卵基質への飛来が積極的に行われる。したがって、かかる時間帯に前記合成超音波を出力することは好ましい。
また、ノシメマダラメイガメス成虫においては、上記時間帯以外にも産卵基質に飛来する場合がある。したがって、オス成虫と同様に明期最後半2時間頃から全暗期中にわたり前記合成超音波を出力することはより好ましい。
一般にチョウ目害虫において、メス成虫がオス成虫を誘引するために性フェロモンを放出する時間帯も種特異的である。したがって、この時間帯にわたり前記合成超音波を出力することは、オス成虫の飛来を阻害する場合に好ましい。
例えばノシメマダラメイガの未交尾のメス成虫が性フェロモンを放散するのは暗期前半が中心であるため、かかる時間帯を含む時間帯に前記合成超音波出力することは好ましく、明期最後半2時間頃から全暗期中にわたり前記合成超音波を出力することはより好ましい。
一般に、チョウ目害虫にパルス間間隔の短い(30 ms未満)超音波を絶え間なく提示した場合、音に慣れて防除効果は低減する。そのため、ノシメマダラメイガの飛来時にのみ超音波を出力する手法と、「慣れ」を生じさせにくい本発明の方法とを組み合わせることは、より好ましい。
本発明を、以下の実施例及び参考例によりさらに詳細に説明する。当該実施例は、いかなる意味においても本発明を限定するものではない。
(参考例1)パルス・グループを含まない合成超音波の、ノシメマダラメイガ成虫(オス成虫)の歩行行動に対する影響
種々のパルス長を有する合成超音波のパルスを0.5秒間に1回の割合で1秒間(2パルス/秒)出力し、ノシメマダラメイガ成虫の歩行行動に対する影響を調べた。周波数は50 kHzであり、音圧は100 dB SPL(測定距離10 cm;成虫から10 cmの距離で出力)であった。
なお前記のとおり合成超音波のパルスの出力は1秒間に2回の割合(0.5秒間に1回の割合で1秒間(2パルス/秒))で行われたため、パルス間間隔はパルス長によって相違した。すなわち、パルス長が長いほどパルス間間隔は必然的に小さくなった。より具体的には、例えばパルス長30 ms及び100 msにおいて、パルス間間隔はそれぞれ470 ms及び400 msであった。
その結果、パルス長30 ms以上において、合成超音波によりノシメマダラメイガ成虫の歩行が中止された(図2)。この結果から、パルスを0.5秒間に1回の割合で1秒間(2パルス/秒)出力した場合、パルス長が30 ms以上であればノシメマダラメイガ成虫の歩行行動を阻害することができることが明らかになり、かかる条件によりノシメマダラメイガ成虫の飛翔行動も阻害し得ると推察された。
また、パルス長が30 ms以上であればパルスを1秒間に2回の割合(0.5秒間に1回の割合で1秒間(2パルス/秒))より高い頻度で出力しても、ノシメマダラメイガ成虫の歩行行動及び飛翔行動を阻害することができることも推察された。
(参考例2)パルス・グループを含まない合成超音波の、ノシメマダラメイガオス成虫の飛翔行動に対する影響
種々のパルス長を有する合成超音波を15分間にわたり出力し、ノシメマダラメイガオス成虫の交尾のための飛翔行動に対する影響を調べた。周波数は50 kHzであり、パルス間間隔はパルス長5 msについては11 ms、パルス長30 msについては30 ms、パルス長339 msについては26 msであり、音圧は100 dB SPL(測定距離10 cm)であった。直径11.5 cm、全長66 cmのアクリル製の風洞内の風上(風速0.25 m/sec)に誘引源として市販の合成性フェロモン剤と縦、横それぞれ10 cmの粘着板を設置し、風下にオス成虫を放飼した。合成超音波は風洞外の風上から風下に向けて出力し、15分間で粘着板に捕獲されたオス成虫の数から誘引率を算出した。誘引率が低かった場合は、飛翔行動が阻害されたものと解釈した。
その結果、パルス長30 msにおいては合成超音波によりノシメマダラメイガオス成虫の飛翔行動が阻害されたのに対し、パルス長5 ms及びパルス長339 msのいずれについても、合成超音波によりノシメマダラメイガオス成虫の飛翔行動は阻害されなかった(図3)。
参考例1の試験においてはパルス長が30 msより長いパルスに対してノシメマダラメイガオス成虫の行動が阻害されたことを併せ考えると、パルス長が339 msのパルスにおける低い飛来阻害効果は、より長時間(15分間)にわたり合成超音波を適用したことにより、ノシメマダラメイガオス成虫に聴覚的な慣れが生じたものと考えられた。
(参考例3)パルス・グループを含まない合成超音波の、ノシメマダラメイガメス成虫の飛翔行動に対する影響
上記と同様の条件下で、種々のパルス長を有する合成超音波を15分間にわたり出力し、ノシメマダラメイガメス成虫の産卵のための飛翔行動に対する影響を調べた。ただし、誘引源として10 gの米ヌカを使用し、風洞外の風上に設置した。
その結果、パルス長30 msにおいては合成超音波によりノシメマダラメイガメス成虫の飛翔行動が阻害されたのに対し、パルス長5 ms及びパルス長339 msのいずれについても、合成超音波によりノシメマダラメイガメス成虫の飛翔行動は阻害されなかった(図4)。
参考例1の試験においてはパルス長が30 msより長いパルスに対してノシメマダラメイガメス成虫の行動が阻害されたことを併せ考えると、パルス長が339 msのパルスにおける低い飛来阻害効果は、より長時間(15分間)にわたり合成超音波を適用したことにより、ノシメマダラメイガメス成虫においても聴覚的な慣れが生じたものと考えられた。
(実施例1)
ノシメマダラメイガの人為的高密度発生条件下におけるパルス・グループを含む合成超音波による、同種成虫の加工食品への接近(飛翔)行動に対する影響を調べた。周波数は54.5 kHz、パルス長は22.5 ms、パルス間間隔は42.5 ms、一つのパルス・グループに含まれるパルスの個数は5つ、パルス・グループ間間隔は128 ms、音圧は79 dB SPL(測定距離150 cm)であり、この合成超音波を暗期開始から6時間にわたり前記ノシメマダラメイガ成虫に適用した。ケージの大きさは縦、横、高さがそれぞれ45、135、45 cmであり、ケージ内の長辺方向の一端の床部に縦、横が15、20 cmの粘着板を設置し、粘着板中央部に5 gの米ヌカを置いた(以下、米ヌカトラップ)。超音波スピーカを2つ搭載した合成超音波出力装置の試作機を1台用い、粘着板を置いた方のケージの一端の外側にケージから10 cmの距離に配置した。この時、ケージの長辺方向の内側に向けて超音波を出力した。
暗期開始直後に、米ヌカトラップを設置しなかった方のケージの一端からノシメマダラメイガ成虫を放飼し、米ヌカトラップへの誘引数を調べ、同誘引数によりノシメマダラメイガ成虫の飛翔行動に対する影響の有無を調べた。
その結果、前記合成超音波によりノシメマダラメイガ成虫の飛翔行動が顕著に阻害された(図5)。すなわち、本発明の方法によりノシメマダラメイガ成虫の飛翔行動が、長時間(少なくとも6時間)にわたって阻害されることが明らかになった。聴覚的な慣れは生じにくかったものと推定される。
ノシメマダラメイガに対する防除・被害抑制のための有効な技術が存在しないため、小麦粉や米粉を用いる加工食品工場や倉庫においてはかかる抑制対策を講じ得ないのが現状である。これに対し本発明によれば、ノシメマダラメイガを従来の方法より高い効率により防除することができるため、本発明は、害虫防除産業及び食物貯蔵産業並びにこれらの関連産業の発展に寄与するところ大である。

Claims (8)

  1. 合成超音波を用いてノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫の食物貯蔵施設への飛来を抑止する方法であって、下記の音響パラメータを有する合成超音波を前記食物貯蔵施設に適用し、前記ノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫の飛翔行動を阻害することを含む方法:
    ア)構成周波数40〜60 kHz
    イ)パルス長20〜40 ms
    ウ)パルス間間隔(パルス間の静音部の長さ)30〜50 ms
    エ)上記ア)〜ウ)のパルス3つ〜7つで1つのパルス・グループとし、パルス・グループ間間隔(パルス・グループ間の静音部の長さ)100〜140 ms
    オ)音圧80〜120 dB SPL(測定距離1m;0 dB SPL = 20 μPa)。
  2. メス成虫に既交尾メス成虫が含まれる、請求項1に記載の方法。
  3. 1つのパルス・グループが5つのパルスから構成される請求項1又は2に記載の方法。
  4. パルス長30〜100 msの合成超音波を適用し、ノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫の歩行を阻害することをさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 合成超音波が単一周波数成分からなる純音である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 食物貯蔵施設におけるノシメマダラメイガによる該食物貯蔵施設に貯蔵された食物に対する加害を防ぐ方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載の方法により前記食物貯蔵施設への前記ノシメマダラメイガのオス成虫及びメス成虫の飛来を阻害することを含む方法。
  7. 合成超音波の音響パラメータが下記ア)〜オ)に示されるパラメータである請求項6に記載の方法:
    ア)構成周波数40〜60 kHz
    イ)パルス長20〜40 ms
    ウ)パルス間間隔(パルス間の静音部の長さ)30〜50 ms
    エ)上記ア)〜ウ)のパルス5つで1つのパルス・グループとし、パルス・グループ間間隔(パルス・グループ間の静音部の長さ)100〜140 ms
    オ)音圧80〜120 dB SPL(測定距離1m;0 dB SPL = 20 μPa)。
  8. メス成虫に既交尾メス成虫が含まれる、請求項7に記載の方法。
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