JP2015222697A - 有機発光素子及びそれを用いた照明装置 - Google Patents

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【課題】有機発光素子における電極の抵抗に起因する輝度ムラを抑制する。【解決手段】有機発光素子101は、第1電極層20と、第1電極層20上に配置された、少なくとも発光層32を含む機能層30と、機能層30上に配置された第2電極層40とを備え、第1電極層20の法線方向から見たとき、発光層32のうち第1電極層20と第2電極層40との間に位置する部分で規定される発光領域を有し、発光領域は、発光層32からの光を外部に取り出す、少なくとも1つの光取り出し領域を含み、第1電極層20の機能層30側の表面は凹凸構造を有しており、第1電極層20の法線方向から見たとき、凹凸構造は、光取り出し領域の中央部と周縁部とで異なっている。【選択図】図1

Description

本発明は、有機材料の電界発光現象を利用した有機電界発光素子(以下「有機EL(Electroluminescence)素子」、「有機発光素子」ともいう)およびそれを用いた照明装置に関する。
近年、照明装置や表示装置等に用いられる次世代発光デバイスとして、面発光が可能、水銀レス、低温動作が可能、低コスト化が可能、軽量化が可能、フレキシブルな素子作製が可能、などの利点から、有機ELを発光材料に用いた発光素子が、大きな注目を集めている。
特許文献1は、ボトムエミッション型の有機EL発光装置を開示している。この有機EL発光装置は、図17に示すように、透光性基材111の表面に透明導電層112、有機発光層113および陰極層114がこの順で積層されている。有機発光層113で発光された光は透光性基材111を通して取り出される。
特許文献2は、トップエミッション型の有機発光素子を開示している。特許文献2の有機発光素子では、図18に示すように、基板204の表面に、電極(陰極)201、電子注入・輸送層205、発光層203、ホール注入・輸送層206および電極(陽極)202がこの順で積層されている。また、これらの層は、封止部材207で封止されている。発光層203で発光した光は、光透過性電極として形成される電極202、透明体で形成される封止部材207を通して放射される。
特開2008−181832号公報 特開2006−331694号公報 特開2007−173052号公報 特開2005−142002号公報 特開2006−253302号公報 特開2011−3592号公報 特開2010−80473号公報 特開2007−123865号公報
有機発光素子の電極層には、一般に、ITOなどの透明な導電材料が用いられる。このような導電材料は金属材料よりも電気抵抗が高い。このため、電極層の面内で電圧降下が生じ、発光層の面内に、明部と、それよりも発光輝度の低い暗部とが生じ得るという問題がある。明部は、発光層の中央部よりも、角部や周縁部に生じやすい。このため、有機発光素子を用いた照明装置や表示装置は、観る者に輝度ムラを感じさせる場合がある。
これに対し、有機発光素子を用いた照明装置において、有機発光素子の発光層で生じた輝度ムラを、減光層(特許文献3)や光散乱手段(特許文献4)で低減することが提案されている。また、有機発光素子内部に輝度ムラを低減するための手段を設けることも提案されている。例えば、特許文献5は、有機発光素子内に肉眼で確認できないサイズの非発光点を設けることを開示している。特許文献6および7は、発光層の抵抗値を面内で変化させることを開示している。また、特許文献8は、有機層領域に導入する副成分(ドーパント)の量を部分的に変化させることを開示している。しかしながら、これらの特許文献に開示された構成には一長一短があり、輝度ムラを改善し得る新規な構成が求められている。
本開示の一態様は、輝度ムラを低減することが可能な新規な有機発光素子を提供する。
上記課題を解決するために、本開示の一態様は、第1電極層と、前記第1電極層上に配置された、少なくとも発光層を含む機能層と、前記機能層上に配置された第2電極層とを備え、前記第1電極層の法線方向から見たとき、前記発光層のうち前記第1電極層と前記第2電極層との間に位置する部分で規定される発光領域を有し、前記発光領域は、前記発光層からの光を外部に取り出す、少なくとも1つの光取り出し領域を含み、前記第1電極層の前記機能層側の表面は凹凸構造を有しており、前記第1電極層の法線方向から見たとき、前記凹凸構造は、前記光取り出し領域の中央部と周縁部とで異なっている有機発光素子を含む。
本開示の一態様によると、輝度ムラを低減することの可能な新規な有機発光素子を提供できる。
第1の実施形態に係る有機発光素子101の構成の一部を示す模式的な断面図である。 第1の実施形態に係る他の有機発光素子102の構成の一部を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、有機発光素子101、102における凹凸構造の一例を示す模式図であり、それぞれ、柱状の凸部が周期的に配列された凹凸構造を例示する断面図および上面図である。 柱状の凸部が周期的に配列された凹凸構造の他の例を示す断面図である。 (a)および(b)は、有機発光素子101、102における凹凸構造のさらに他の例を示す模式図であり、それぞれ、不規則な凹凸構造を例示する断面図および上面図である。 回折格子を有する反射電極のサンプルの平面図である。 反射電極における凹凸構造のピッチPと全光束比との関係を示すグラフである。 (a)および(b)は、評価用素子の反射電極における凹部の深さと全光束比との関係を示すグラフである。 (a)および(b)は、それぞれ、凹部の面積割合Rが25%および50%の反射電極の凹凸構造を例示する上面図である。 凹部の面積割合Rと全光束比との関係を示すグラフである。 比較例の発光素子における電圧と全光束との関係を示すグラフである。 第2の実施形態に係る有機発光素子103の構成を説明するための模式図である。 (a)は、第2の実施形態に係る有機発光素子103を示す模式的な断面図であり、(b)は、有機発光素子103における第1電極層20を例示する拡大上面図である。 有機発光素子103のパターン電極42の一例を示す平面図である。 (a)は、表面処理を施した基板表面に形成した、凹凸構造を有する蒸着膜の拡大上面図であり、(b)は表面処理を施さずに形成した、略平坦な表面を有する蒸着膜の拡大上面図である。 凹凸構造のピッチPと、10mA/cm2の電流を流すのに必要な電圧との関係を示すグラフである。 従来のボトムエミッション型有機発光素子の断面図である。 従来のトップエミッション型有機発光素子の断面図である。
本願発明者が検討したところ、従来の有機発光素子では、発光領域の中央部における輝度は、周縁部の輝度よりも小さく(例えば周縁部の輝度の1/2以下)なることを確認した(後述する比較例2)。本願発明者は、また、輝度ムラを改善するために提案された従来の構成を検討し、以下のような知見を得た。
特許文献3および4に開示された構成によると、有機発光素子の発光層で生じた輝度ムラを、減光層または光散乱手段で低減することができる。しかしながら、これらの特許文献は、有機発光素子の発光層における輝度ムラの発生を抑制するものではない。つまり、輝度ムラを有する有機発光素子の輝度を、有機発光素子の光出射側に配置された透明部材によって改善しているに過ぎない。このため、有機発光素子の発光層において面内で均一に発光していないことに起因して素子寿命が低下することがある。また、輝度ムラの制御範囲が小さいために、比較的大きな輝度ムラを有する有機発光素子に対応できない場合がある。
さらに、特許文献3、4では、有機発光素子から出射して上記透明部材まで到達した光を制御する。しかしながら、有機発光素子の内部(透明電極を含む有機薄膜部分)には、発光層で生じた光の一部が閉じ込められるが、そのような閉じ込められた光を取り出して制御することについては、何ら言及されていない。
一方、有機発光素子内部で輝度ムラを低減する手段を設けると(特許文献5〜8)、有機発光素子の発光層における輝度の均一性を向上できる。しかしながら、非発光点を設ける構成(特許文献5)や発光層の抵抗値を面内で変化させる構成(特許文献6、7)によると、有機発光素子の明部の発光効率が低下する可能性がある。さらに、発光層の抵抗値やドーパント濃度を面内で変化させる構成(特許文献6、7、8)では、発光層の形成プロセスが煩雑になるという問題もある。
このように、輝度ムラを改善するための従来技術では、ニーズを十分に満たす有機発光素子を提供することが困難であり、さらなる改善が求められている。
そこで、本願発明者は、高い発光効率を確保しつつ、有機発光素子内部で輝度ムラを低減できる素子構成を検討した。この結果、電極の発光層側の表面に凹凸構造を導入することで、発光層を含む機能層(有機薄膜部)における輝度ムラを改善できることを見出した。
具体的には、一方の電極の機能層側の表面に、有機発光素子の発光領域における中央部と周縁部とで異なる凹凸構造を設ける。あるいは、発光領域が複数のサブ領域(光取り出し領域)を含む場合には、各サブ領域に、上記のような凹凸構造を設ける。これにより、キャリア注入性および機能層の見かけの抵抗値を発光領域内で変化させることができる。従って、有機発光素子を面内でより均一に発光させることが可能になる。また、有機発光素子内部(透明電極を含む有機薄膜部)に閉じ込められた光を輝度ムラの改善に利用できる。さらに、反射電極が凹凸構造を有する場合、金属表面で熱エネルギーとして失活する表面プラズモンポラリトンを伝搬光として取り出すこともできる。このため、発光効率を高めることができるとともに、上記の従来技術よりも、輝度ムラの制御範囲を拡大できる。
本開示は、以下の項目に記載の有機発光素子を含む。
[項目1]
第1電極層と、
前記第1電極層上に配置された、少なくとも発光層を含む機能層と、
前記機能層上に配置された第2電極層と
を備え、
前記第1電極層の法線方向から見たとき、前記発光層のうち前記第1電極層と前記第2電極層との間に位置する部分で規定される発光領域を有し、前記発光領域は、前記発光層からの光を外部に取り出す、少なくとも1つの光取り出し領域を含み、
前記第1電極層の前記機能層側の表面は凹凸構造を有しており、
前記第1電極層の法線方向から見たとき、前記凹凸構造は、前記光取り出し領域の中央部と周縁部とで異なっている、有機発光素子。
[項目2]
前記凹凸構造は複数の凸部および複数の凹部を含み、
隣接する凸部間の距離Pr、凸部の高さH、凸部の幅d、凹部の面積割合R、および凸部の形状の少なくとも1つが、前記光取り出し領域の前記中央部と前記周縁部とで異なっている、項目1に記載の有機発光素子。
[項目3]
単位面積当たり、かつ単位電圧当たりの発光効率Eは、前記光取り出し領域の前記中央部で前記周縁部よりも大きい、項目1または2に記載の有機発光素子。
[項目4]
前記第1および第2電極層のうち光を取り出す側に位置する電極層は、透明導電層と、前記透明導電層に接して形成された補助電極とを含み、
前記補助電極は、前記発光領域内において複数の開口部を有し、
前記少なくとも1つの光取り出し領域は、前記複数の開口部のそれぞれに対応する複数の光取り出し領域である、項目1から3のいずれかに記載の有機発光素子。
[項目5]
隣接する凸部間の距離Prは、前記光取り出し領域の前記中央部で、前記周縁部よりも小さい、項目1から4のいずれかに記載の有機発光素子。
[項目6]
凸部の高さHは、前記光取り出し領域の前記中央部で、前記周縁部よりも大きい、項目1から5のいずれかに記載の有機発光素子。
[項目7]
前記光取り出し領域の前記中央部における凹部の面積割合R(%)と50%との差の絶対値は、前記周縁部における凹部の面積割合R(%)と50%との差の絶対値よりも小さい、項目1から6のいずれかに記載の有機発光素子。
[項目8]
前記第1電極層は主成分として金属を含む、項目1から7のいずれかに記載の有機発光素子。
[項目9]
前記第1電極層の前記凹凸構造は、気相法により形成されている、項目8に記載の有機発光素子。
[項目10]
前記第1電極層は、凹凸を有する下地層上に配置され、前記凹凸構造は、前記下地層の前記凹凸を反映した形状を有している、項目1から9ののいずれか1項に記載の有機発光素子
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る有機発光素子101の構成の一部を示す模式的な断面図である。ここでは、トップエミッション型の有機発光素子を例に説明するが、後述するように、本実施形態の有機発光素子はボトムエミッション型であってもよい。
本実施の形態の有機発光素子101は、基板1に支持された第1電極層20と、第2電極層40と、第1電極層20上に配置された、少なくとも発光層32を含む機能層30と、機能層30上に配置された第2電極層40とを備える。光を取り出す側の電極(ここでは第2電極層40)は、可視光を透過し得る透明電極を含む。
有機発光素子101は発光領域を有している。発光領域は、第1電極層20の法線方向から見たとき、発光層32のうち第1電極層20と第2電極層40との間に位置する部分で規定される。また、発光領域は、発光層32からの光を外部に取り出す、少なくとも1つの光取り出し領域を含む。本実施形態では、発光領域が光取り出し領域となる。なお、「光取り出し領域」は、例えば、発光層の光取り出し側に位置する透明電極(ここでは第2電極層40)が、透明電極よりも電気抵抗の低い配線や補助電極と接する場合に、その配線や補助電極と接する部分によって規定され得る。この場合、光取り出し領域の周縁部は配線(給電部)や補助電極に近く、光取り出し領域の中央部は配線や補助電極から遠くなる。
第1電極層20の機能層30側の表面20aは凹凸構造を有している。凹凸構造は複数の凸部21および複数の凹部22を含んでいる。ここでは、機能層30側から見て突出している部分を凸部21とする。凹凸構造は周期性を有していてもよいし、不規則な凹凸形状であってもよい。
第1電極層20の法線方向から見たとき、凹凸構造は、光取り出し領域(ここでは発光領域)の中央部と周縁部とで異なっている。「凹凸構造が異なる」とは、例えば、隣接する凸部間の距離Pr、凸部の高さH、凸部の幅d、凹部の面積割合R、および凸部の形状の少なくとも1つが異なることを含む。凹凸構造については後で詳述する。
図示する例では、第1電極層20の表面に規則的な凹凸構造が形成されている。この凹凸構造のピッチは、発光領域の中央部で、周縁部よりも小さい。また、この例では、第1電極層20は機能層30と接している。なお、第1電極層20と機能層30との間に他の層が介在していてもよい。
前述したように、従来の有機発光素子では、電極層に生じる電圧降下により、発光領域の周縁部(給電部に近い側)で中央部よりも高い電圧が印加されるという問題がある。この結果、発光領域の周縁部の方が中央部よりも輝度が高くなる。これに対し、有機発光素子101では、第1電極層20側から出射する光の輝度ムラを低減することが可能である。また、従来よりも、素子全体としての発光効率を向上できる。
凹凸構造を導入することによって、発光効率を向上させるとともに、輝度むらを抑制できる理由を説明する。
まず光学的な観点からは、透明電極および機能層に「閉じ込められた光」を光として利用することが可能となる。また、反射電極に凹凸構造が付与されている場合は、金属表面に束縛される表面プラズモンエネルギーをも光として利用することが可能になる。発光された光の一部は、透明電極および機能層に導波光として閉じ込められ、出射できない(全反射ロスまたは吸収ロス)。また、注入したキャリアの再結合により生成した励起エネルギーの一部は、電極近傍に表面プラズモンを生成し、金属表面で熱として失活する(表面プラズモンロス)。凹凸構造を導入することによって、これらのロスを低減し、また、その程度を位置に応じて異ならせることができる。その結果、輝度の向上と、輝度の均一化を達成することができる。
さらに、電気的な観点からは、凹凸構造導入によって、機能層30(有機薄膜部)で電界分布が生じる。例えば、発光領域の明部である周縁部よりも、暗部である中央部で密に(より小さいピッチPで)凹凸を設ける。このため、発光層32の中央部で周縁部よりもキャリア注入が向上し、機能層30(発光層32)の見かけの抵抗値が低下する。これにより、発光領域の輝度を部分的に高めることが可能になる。この結果、発光領域の面内で生じる輝度ムラを抑制することができる。
図1(a)を参照しながら、発光層32で生じた光(閉じ込められた光を含む)が、発光領域(または光取り出し領域)の中央部で周縁部よりも出射しやすい理由を説明する。
図1(a)に示すように、発光層32を法線方向から見たとき、発光層32の周縁部近傍の点90aで生じた光90aのうち一部91aは第2電極層40側から出射する。他の一部92aは、第1電極層20側に進み、第1電極層20表面で反射して、その進行方向を変える。このとき、光92aの一部は、第1電極層20の表面と第2電極層40の表面との間で全反射を繰り返しながら、面内方向を進む。全反射を繰り返しながら面内方向を進む光の一部は、凹凸による回折や散乱効果により、第2電極層40側から出射する。同様に、発光層32の中央部近傍の点90bで生じた光90bも、その一部91bは第2電極層40側に出射し、他の一部92bは第1電極層20側で反射する。ここで、中央部近傍で周縁部よりも凹凸ピッチが小さく、凸部21がより高密度に配置されている。このため、光92bは、全反射を繰り返しながら面内方向に進みにくい。凹凸による回折や散乱効果により、発光層32の中央部近傍から第1電極層20側に出射するからである。このため、発光領域の中央部では、周縁部よりも第1電極層20側に出射する光の割合が高くなり、発光層32の輝度ムラが補償される。
本実施形態における凹凸構造は、図1に示す構造に限定されない。凹凸構造は、単位面積当たりおよび電圧当たりの発光効率(以下、「単位面積当たり発光効率」と称する。)Eが、光取り出し領域の中央部で周縁部よりも大きくなるように構成されていることが好ましい。本明細書では、「単位面積当たり発光効率E」はデバイスとしての発光効率ではなく、1つのデバイスの発光領域内における位置に依存した単位面積当たり、電圧当たりの発光効率をいう。ここでは、凹凸構造を異ならせることによって、場所に依存して(周縁からの距離に応じて)単位面積当たり発光効率Eは分布を有する。単位面積当たり発光効率Eは、例えば、正面輝度と配光分布の測定により求められる。正面輝度と配光分布の代わりに、全光束を測定してもよい。また、配光分布がランバーシャンに仮定できる場合は、正面輝度と全光束は比例関係にあり、凹凸構造を設けた場合の配光特性においても、凹凸構造に加えて光取出し側の透明ガラス基板の表面に導入される散乱層などの光取出し構成により緩和されることで、ランバーシャン配光に近くなる。よって、正面輝度を全光束で代用することが可能である。
第1電極層20は、その表面に、面内分布を有する凹凸構造を有していればよい。第1電極層20は、表面に周期性を有する凹凸構造が形成された導電膜であってもよい。あるいは、不規則な表面凹凸を有する導電膜であってもよい。例えば、後述するように、蒸着速度や基板温度に分布をもたせることによって形成された蒸着膜であってもよい。
本実施形態の有機発光素子は、ボトムエミッション型であってもよい。図2は、本実施形態の他の有機発光素子102を例示する模式的な断面図である。図2では、図1と同様の構成要素には同じ参照符号を付し、説明を省略している。
有機発光素子102では、基板1上に、第1電極層20、機能層30および第2電極層40をこの順で有している。第1電極層20は光取り出し側に位置しており、透明電極である。基板10の上面から光が取り出される。
図1を参照しながら前述したように、有機発光素子102でも、第1電極層20の機能層30側に凹凸構造が設けられている。凹凸構造は、光取り出し領域(ここでは発光領域)の中央部と周縁部とで異なっている。図示するように、基板10の第1電極層20側の表面が凹凸を有し、第1電極層20は、この凹凸を反映した凹凸構造を有していてもよい。
有機発光素子102でも、図1を参照しながら前述したように、輝度ムラを低減することができる。すなわち、発光層32の周縁部近傍にある点90cで生じた光の一部91cは基板10側から出射する。他の一部92cは閉じ込められやすい。これに対し、発光層32の中央部近傍の点90dで生じた光は、その一部91dは基板10側から出射し、他の一部92dも凹凸による回折や散乱効果により、基板10側から出射しやすい。これにより、発光層32における輝度の面内分布を補償できるので、発光領域の輝度ムラを低減できる。また、素子内部に閉じ込められた光を利用できるので、輝度ムラを効果的に抑制でき、かつ、素子全体としての発光効率を高めることが可能である。
本実施形態では、有機発光素子における一対の電極層のうち少なくとも一方が、機能層30側の表面に凹凸構造を有していればよい。有機発光素子101、102では、基板10上の第1電極層20が凹凸構造を有するが、第2電極層40が凹凸構造を有していても同様の効果が得られる。
<凹凸構造のパラメータの検討>
第1電極層20の凹凸構造は、例えば隣接する凸部間の距離Pr、凸部の高さH、凸部の幅d、凹部の面積割合R、凸部または凹部の形状などのパラメータで規定され得る。これらのパラメータの少なくとも1つが面内で分布を有していればよい。なお、上記の「隣接する凸部間の距離Pr」は、例えば、隣接する凸部21の頂点間の距離である。凹凸構造が周期性を有する場合、距離Prは凹凸構造のピッチPで表される。
次に、本実施形態における凹凸構造のパラメータをより具体的に説明する。
図3〜図5は、凹凸構造を例示する模式図である。図3(a)および(b)は、柱状の凸部が周期的に配列された凹凸構造を例示する断面図および上面図である。図4は、柱状の凸部が周期的に配列された凹凸構造の他の例を示す断面図である。図5(a)および(b)は、不規則な凹凸構造を例示する断面図および上面図である。なお、断面図は、第1電極層20の法線方向に沿った断面構造を示す。
図3に示す例では、凹凸構造は周期性を有するので、隣接する凸部間の距離(以下、「凸部間距離」と略する。)Prは、凹凸構造のピッチPで表される。例えば凸部21の配列方向(列方向または行方向)における、隣接する凸部21の間隔Dと凸部の幅d2との和(D+d2)をピッチPとする。また、凹部22の底面から凸部21の頂点までの高さを、凸部の高さHとする。各凸部21の上面図において、凸部21の上面と等しい面積を有する円の直径を、面積相当円直径d1とする。凸部21の形状によっては、幅d2の代わりに、面積相当円直径d1を用いて凹凸構造を規定してもよい。凸部21および凹部22の形状や大きさが異なる場合には、所定の単位領域における平均値を算出してもよい。
各凸部21は、図4に示すように、テーパー形状を有していてもよい。この場合でも、凹部22の底面から凸部21の頂点までの高さを、凸部の高さHとする。また、凸部21の半値幅(FWHM)を凸部21の幅d2とする。図示する断面図において、隣接する凸部21の、高さが1/2となる点の間の距離を、隣接する凸部21の間隔Dとする。ピッチPは、隣接する凸部21の間隔Dと凸部21の幅d2との和で表される。また、凸部21の壁面と下面とのなす角度を、壁面の傾斜角度θとする。
一方、蒸着膜などでは、凹凸構造は不規則である。このような場合、凸部間の距離Prとして、隣接する凸部21の頂点間の距離を求めてもよい。また、例えば図5に示すように、任意の方向に沿った断面において、凹部22の底面から凸部21の頂点までの高さを、凸部の高さHとしてもよい。凸部21の半値幅(FWHM)を凸部21の幅d2、隣接する凸部21の、高さが1/2となる点の間の距離を、隣接する凸部21の間隔Dとしてもよい。凸部間距離Prは、隣接する凸部21の間隔Dと凸部21の幅d2との和に等しくなる。また、図示する断面において、凸部21の、高さが1/2となる点を通る接線と凸部21の下面とのなす角度を、壁面の傾斜角度θとする。幅d1の代わりに、凸部21の上面と等しい面積を有する円の直径(面積相当円直径)d1を用いてもよい。なお、これらの値として、所定の単位領域における凹凸構造の平均値を算出してもよい。
また、凹部の面積割合Rは、基板法線方向から見たときの、(凹部22の面積)/(凹部22の面積+凸部21の面積)で表される。
本実施形態では、単位面積当たり発光効率Eが光取り出し領域の中央部で周縁部よりも大きくなるように(すなわち局所的な輝度改善効果が中央部でより大きくなるように)、凹凸構造の平均的な凸部間距離Pr(またはピッチP)、凸部21の平均的な高さH、凹部の面積割合R、凹凸の平均的な大きさなどのパラメータのうち少なくとも1つが面内で分布を有していてもよい。隣接する凸部間の距離Prが、例えば、光取り出し領域の中央部で、周縁部よりも小さくてもよい。あるいは、凸部の高さHが、例えば、光取り出し領域の中央部で、周縁部よりも大きくてもよい。光取り出し領域の中央部における凹部の面積割合R(%)と50%との差の絶対値が、例えば、周縁部における凹部の面積割合R(%)と50%との差の絶対値よりも小さくてもよい。さらに、凹凸の平均的な大きさ(凹凸サイズ)が、発光領域の中央部で周縁部よりも大きくてもよい。ここでいう「凹凸サイズ」は、例えば、凸部の高さHだけでなく、上記の面積相当円直径d1、凸部の幅(FWHM相当)d2等で表すことができる。
また、単位面積当たり発光効率Eが光取り出し領域の中央部で周縁部よりも大きくなるように、凹凸形状が面内で分布を有していてもよい。凹凸の形状は、凸部21や凹部22の壁面の傾斜角度や、凸部21の断面形状などを含む。例えば、第1電極層20として、蒸着源(点)から蒸着面(面)への蒸着を行い、面内で蒸着速度に分布を持たせることによって形成された蒸着膜を用いる場合、発光領域の中央部に位置する凸部21の壁面の傾斜角度θ(略90°)は、周縁部に位置する凸部21の壁面の傾斜角度θよりも大きくなる。
<凹凸構造のパラメータの検討結果>
本願発明者は、凹凸構造における種々のパラメータを異ならせて、単位面積当たり発光効率Eの向上効果を調べたので、その方法および結果を説明する。
ここでは、まず、凹凸構造のピッチPを異ならせて、複数の評価用の有機発光素子(以下、評価用素子)を作製した。この評価用素子の発光領域における全光束を測定した。同様にして、凸部の高さH、凹部の面積割合Rをそれぞれ異ならせて、評価用素子を作製し評価を行った。なお、評価用素子では、第1電極層20の機能層30側の表面全体に、所定のパラメータを有するように制御された均一な凹凸構造を設けた。
(a)凹凸構造のピッチPと全光束との関係についての評価
電極層の凹凸構造の周期成分が全光束に与える影響について、回折格子を形成した反射電極を用いて評価用素子を作製し、評価を行った。
図6は、評価に用いた周期的な回折格子を有する反射電極のサンプルを平面視した図である。図6に示す供試サンプルでは、蒸着により形成したアルミニウム膜の表面に、行方向および列方向に、約1000nmのピッチPで複数の凹部22がエッチングにより形成されている。凹部22はxy方向に等間隔に周期的に配置された回折格子を構成している。回折格子において、凹部22が形成されていない領域を凸部21とする。凹部22の深さ(前述した凸部の高さHに相当)は約100nmである。凹部の面積割合R(凸部21の面積/(凸部21および凹部22の合計面積))は25%である。
このサンプルを、第1電極層20として用いた評価用素子を作製し、全光束を測定した全光束は、DC電源(ケースレイ社製の2400)から電流密度が10mA/cm2の定電流を流し、正面輝度と配光分布を輝度計(トプコン社製のSR−3)で測定することにより算出した。
同様にして、面積割合Rおよび凹部22の深さは上記と同じで、ピッチPの異なる反射電極のサンプルを用いた評価用素子を作製し、測定を行なった。また、凹部を形成せず、略平坦な表面を有する反射電極を用いた比較例の素子についても同様の測定を行なった。
図7は、評価用素子の反射電極における凹凸のピッチPと全光束比との関係を示すグラフである。図7の縦軸は、各評価用素子の全光束の、比較例の素子の全光束に対する比率(全光束比)をあらわす。
図7に示すように、全光束は、凹凸のピッチPが300nmを超え3500nm未満の範囲において、比較例の素子の全光束よりも大きい。ピッチPが600nm以上1000nm以下の範囲に全光束のピークを有する。この結果から、第1電極層20としてピッチPが300nm超3500nm未満の凹凸構造を用いることにより、全光束比が向上することがわかる。この理由は、以下のように考察できる。
電極に凹凸構造を導入することにより、透明電極を含む有機薄膜部に閉じ込められた光である薄膜導波光として吸収ロスとなる全反射ロスや電極近傍に束縛されて損失となる表面プラズモンロスを抑制することで全光束が向上すると考えられる。このため、凹凸構造の回折効率から輝度向上に寄与する凹凸ピッチは変化するため図7に示すような極大値を有すると考えられる。
図6に示すような凹凸構造(凹部の深さ:例えば0nm以上200nm以下)を用いる場合、例えば、光取り出し領域の中央部のピッチPを周縁部のピッチPよりも小さくし、かつ、中央部のピッチPを500nm以上1500nm以下、周縁部のピッチPを1000nm以上3500nm以下に設定してもよい。あるいは、光取り出し領域の中央部のピッチPを周縁部のピッチPよりも大きくし、かつ、中央部のピッチPを500nm以上1500nm以下、周縁部のピッチPを300nm以上600nm以下に設定してもよい。ただし、このようなピッチPの範囲は例示であり、凹部の深さや面積割合R、凹凸形状などにより異なり得る。
(b)凹部の深さ(凸部の高さHに相当)と全光束との関係についての評価
電極層の凹凸構造における凹部の深さが全光束に与える影響について、回折格子を形成した反射電極を用いて評価用素子を作製し、評価を行った。
図6に示す凹部22の深さ(=凸部の高さH)100nm、ピッチP1000nm、凹部の面積割合R25の反射電極を用いた評価用素子について、全光速を測定した。
同様にして、面積割合RおよびピッチPは上記と同じで、凹部22の深さが異なる反射電極のサンプルを用いた評価用素子を作製し、測定を行なった。また、凹部を有さない反射電極を用いた比較例の素子についても同様の測定を行なった。
図8(a)および(b)は、評価用素子の反射電極における凹部の深さと全光束比との関係を示すグラフである。図8の縦軸は、各評価用素子の全光束の、凹部を有さない比較例の素子の全光束に対する比率(全光束比)をあらわす。図8(a)および(b)は、横軸(凹部の深さ)の範囲は異なるが、同じ結果を示すグラフである。
図8(a)および(b)に示す結果から、凹凸構造を導入することにより、比較例の素子よりも全光束が大きくなることが分かる。この例では、凹部の深さが0nmを超え200nm未満、例えば50nm以上150nm以下の範囲で、比較例の素子よりも全光束が特に大きい。なお、有機発光素子はナノスケールの膜厚で作製されるため、電極層に凹部の深さがミクロンオーダーの凹凸構造を導入した評価用素子(凹部の深さ1000nm)では、リークが大幅に増加して発光しなかった。また、凹部の深さが小さい場合は、凹凸構造の回折効率が低くなるため、凹凸構造による効果は減少すると考えられる。このため、この例では、全光束比は、凹部の深さが50nm以上150nm以下の範囲で極大値を有すると考えられる。
図6に示すような凹凸構造(ピッチP:例えば300nm以上3500nm以下)を用いる場合、例えば、光取り出し領域の中央部の凸部の高さH(凹部の深さ)を周縁部の高さHよりも大きくし、かつ、中央部の高さHを75nm以上150nm以下、周縁部の高さHを0nm以上100nm以下に設定してもよい。あるいは、光取り出し領域の中央部の高さHを周縁部の高さHよりも小さくし、かつ、中央部の高さHを75nm以上150nm以下、周縁部の高さHを150nm以上200nm未満に設定してもよい。ただし、このような高さHの範囲は例示であり、ピッチPや面積割合R、凹凸形状などにより異なり得る。
(c)凹部の面積割合Rと全光束との関係についての評価
電極層の凹凸構造における凹部の面積割合Rが全光束に与える影響について、回折格子を形成した反射電極を用いて評価用素子を作製し、評価を行った。
ここでは、凹部22の深さ(=凸部の高さH)を100nm、ピッチPを1000nmとし、凹部の面積割合Rが25%の反射電極を作製した。同様にして、凹部22の深さおよびピッチPは上記と同じで、凹部の面積割合Rが50%の反射電極を作製した。図9(a)および(b)は、それぞれ、凹部の面積割合Rが25%および50%の反射電極の凹凸構造を示す上面図である。
図9に示す反射電極をそれぞれ用いた評価用素子を作製し、全光束を測定した。凹部を有さない(面積割合R:0%)反射電極を用いた比較例の素子についても同様の測定を行なった。
図10は、評価用素子の反射電極における凹部の面積割合Rと全光束比との関係を示すグラフである。図10の縦軸は、各評価用素子の全光束の、凹部を有さない比較例の素子の全光束に対する比率(全光束比)をあらわす。
図10に示す結果から、凹凸構造を導入することにより、比較例の素子よりも全光束が大きくなることが分かる。また、凹部の面積割合Rが50%のときに、25%のときよりも全光束が大きい。この例では、面積割合Rが50%近傍で、全光束比が極大値を有すると考えられる。これは、面積割合Rが50%のときに回折効率が高くなるからと考えられる。
従って、例えば、凹部の面積割合Rを、光取り出し領域の中央部で、周縁部よりも50%に近くなるように設定してもよい。例えば凹部の面積割合Rは、中央部で25%以上75%以下、周縁部で0%以上25%以下または75%以上100%以下に設定してもよい。なお、上述した凹部の深さの範囲は例示であり、ピッチPや凹部の深さ、凹凸形状などにより異なり得る。
なお、上記では、凹凸構造のパラメータ(ピッチP、凹部の深さ、凹部の面積割合Rなど)のうち1つのみを異ならせて、そのパラメータが輝度に与える影響を調べた。2つ以上のパラメータが異なると、その効果が複合的になるので、適宜調整することが好ましい。
(d)電圧と全光束との関係
図11は、凹凸構造を有さない反射電極を用いた比較例の素子における電圧と全光束との関係を示すグラフである。グラフの縦軸は、全光束の測定値を、電圧が4Vのときの全光束の値で規格化した値(a.u.)を表す。
この結果から、電圧によって全光束は制御可能であることが確認できる。また、輝度ムラが発生する有機発光素子において、明部と暗部との電位差から、調整が必要な全光束の大きさを導出できることが分かる。
以上の結果から、電極層で生じる電位降下を考慮して、発光領域の暗部(中央部)と明部(周縁部)とで凹凸構造の各パラメータを異ならせることにより、発光領域における輝度の均一性を向上できることが分かる。
<有機発光素子の各構成要素>
以下、上述した実施形態の有機発光素子101、102の各構成要素を詳細に説明する。
[基板10]
基板10は、平面視において、本実施の形態では、例えば矩形形状とした。しかしながら、基板10の平面視形状は、矩形形状に限られず、例えば、矩形形状以外の多角形状、円形状などでもよい。基板10の縦又は横の寸法は、例えば、数十ミリメートルから数十インチ程度で、必要な発光領域50の広さ、用途、製造設備のサイズ等に応じて適宜選択すればよい。
基板10には、ガラス基板を用いている。しかしながら、これに限らず、例えば、プラスチック板や、金属板などを用いてもよい。基板10は、リジッドなものでもよいし、フレキシブルなものでもよい。
ガラス基板を用いる場合、材料として、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどを用いることができる。
また、プラスチック板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネートなどを用いることができる。プラスチック板を用いる場合は、プラスチック板の表面にSiON膜、SiN膜などが成膜されたものを用いることで、水分の透過を抑えることが好ましい。
また、金属板の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼などを用いることができる。基板10として金属板や金属箔などの導電性を有するものを用いる場合には、基板10が第1電極層20の一部を構成してもよいし、基板10が第1電極層20を兼ねる構成としてもよい。
基板10として、透明なガラス基板、透明なプラスチック板に限らず、機械的強度が高く、低コストで、ガスバリア性、耐薬品性、耐熱性などを有するものを用いることができる。
[第1電極層20]
トップエミッション型の有機発光素子101において、第1電極層20が陰極を構成し、第2電極層40が陽極として構成することができる。この場合、第1電極層20から機能層30へ注入する第1キャリアは電子であり、第2電極層40から機能層30へ注入する第2キャリアは正孔である。第1電極層20である陰極は、機能層30中に第1電荷である電子(第1キャリア)を注入するための電極である。
陰極として機能する第1電極層20の材料としては、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、第1電極層20の仕事関数とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。
第1電極層20は、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム、金、銅、クロム、モリブデン、パラジウム、錫など、及びこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金で構成することができる。また金属や金属酸化物、及びこれらと他の金属との混合物、例えば酸化アルミニウムからなる極薄膜(例えばトンネル注入により電子を流すことが可能な膜厚1nm以下の薄膜)と、アルミニウムからなる薄膜との積層膜として構成することもできる。
第1電極層20は、真空蒸着法等の薄膜プロセスにより作製してもよく、また、スピンコート法、ディッピング法等の湿式プロセスにより作製してもよい。
有機発光素子101では、第1電極層20は反射電極として機能する。この場合の材料としては、機能層30の出射光に対して高い反射特性を有し、且つ低抵抗の材料であることが好ましい。具体的にはアルミニウムや銀等が好ましい。
第1電極層20は主成分として金属を含み、第1電極層20の機能層30側の主面20a上に配置された凹凸構造を有する。上述したように、凹凸構造は、面内に分布を有する。すなわち、主面20aは面内方向に分布を有する凹凸面である。さらに、主面20aの表面粗さ(十点平均粗さ)Rzは例えば1μm以下である。第1電極層20における凹凸構造の構成、作製方法、機能については後述する。
また、第1電極層20から光を取り出すボトムエミッション型の有機発光素子102の場合は、第1電極層20の材料として透光性材料を用いる。例えば、Alなど金属の透光性を有する薄膜や、CuI、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO2、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等の透明酸化物、カーボンナノチューブなどを挙げることができる。また、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリカルバゾールなどの導電性高分子材料を用いることができる。
第1電極層20が、機能層30中に第2電荷であるホール(第2キャリア)を注入するための電極である陽極を構成する場合、第1電極層20の材料としては、仕事関数の大きい金属を用いることが好ましく、第1電極層20の仕事関数とHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。
第1電極層20の厚さは、特に限定しないが、例えば80〜200nmに設定される。
[機能層30]
(1)積層構成
機能層30は、少なくとも発光層32を含んでいればよく、発光層32以外の、第1キャリア注入層、第1キャリア輸送層、インターレイヤー、第2キャリア輸送層、第2キャリア注入層などは適宜設ければよい。発光層32は、単層構造でも多層構造でもよい。例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよく、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。
(2)材料
A)発光層32
発光層32の材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体など、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したものなどや、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、及びこれらの誘導体、あるいは、1−アリール−2、5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、及びこれらの発光性化合物からなる基を分子の一部分に有する化合物などが挙げられる。また、上記化合物に代表される蛍光色素由来の化合物のみならず、いわゆる燐光発光材料、例えばイリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体、ユーロピウム錯体などの発光材料、又はそれらを分子内に有する化合物若しくは高分子も好適に用いることができる。
これらの材料は、必要に応じて、適宜選択して用いることができる。発光層32は、塗布法(例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することが好ましい。ただし、発光層32の成膜方法は、塗布法に限らず、例えば、真空蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって発光層32を成膜してもよい。発光層32の厚さは、特に限定しないが、例えば60〜200nmであってもよい。
B)ホール輸送層
ホール輸送層の材料としては、低分子材料や高分子材料を用いることができる。例えば、ポリビニルカルバゾール(PVCz)や、ポリピリジン、ポリアニリンなどの側鎖や主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体などの芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、ホール輸送層の材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNB、TFB(Poly[(9,9−dioctylfluorenyl−2,7−diyl)−co−(4,4’−(N−(4−sec−butylphenyl))diphenyl amine)])などを用いることが可能である。
C)ホール注入層
ホール注入層の材料としては、例えば、チオフェン、トリフェニルメタン、ヒドラゾリン、アミールアミン、ヒドラゾン、スチルベン、トリフェニルアミンなどを含む有機材料が挙げられる。具体的には、たとえば、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、TPDなどの芳香族アミン誘導体などで、これらの材料を単独で用いてもよいし、2種類以上の材料を組み合わせて用いてもよい。このようなホール注入層は、塗布法(スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することができる。
[第2電極層40]
第2電極層40の材料として、上述した第1電極層20の材料として例示した導電材料を用いることができる。ただし、トップエミッション型の有機発光素子101では、第2電極層40は、透明な導電材料を用いて形成される。また、第2電極層40における機能層30側の表面に、面内で分布を有する凹凸構造を有していてもよい。
(第2の実施形態)
次いで、有機発光素子の第2の実施形態を説明する。本実施形態の有機発光素子は、発光領域内に複数の光取り出し領域を有する。電極表面に設けられる凹凸構造は、各光取り出し領域の中央部と周縁部とで異なる。
図12は、本実施形態の有機発光素子103の構成を説明するための模式図である。図13(a)は、有機発光素子103の模式的な断面図、図13(b)は、有機発光素子103における第1電極層20を例示する拡大上面図である。図14は有機発光素子103のパターン電極42の一例を示す平面図である。図13および図14では、図1と同様の構成要素には同じ参照符号を付している。図1と同様の構成要素の説明を省略する。
有機発光素子103は、基板10上に、第1電極層20、発光層を含む機能層30および第2電極層40をこの順で備えている。この例では、第1電極層20、機能層30および第2電極層40は、基板10上に設けられた面状領域を区画するフレーム部80内に配置されている。フレーム部80の内部は、例えば、透光性を有する封止基板70で封止されている。封止基板70は、例えば、基板10の上面側に基板10に対向して配置され、枠状のフレーム部80は、基板10の周部と封止基板の周部との間に配置されている。
有機発光素子103は、第2電極層40側から光を取り出すトップエミッション型の発光素子である。なお、本実施形態の有機発光素子は、第1電極層20側から光を取り出すボトムエミッション型の発光素子であってもよい。
図13(a)に示すように、第1電極層20の第2電極層40側の上面20a、または、第2電極層40の第1電極層20側の下面40aは凹凸構造を有している。ここでは、第1電極層20の上面20aに、凹部22および凸部21を含む凹凸構造20bが設けられている。図13(a)では、凹凸構造20bを模式的に示すが、凹凸構造20bは、後述する光取り出し領域ごとに所定の面内分布を有する。
第2電極層40は、少なくとも、機能層30に接し光透過性を有する透光性導電層(透明導電層)39を備えている。これにより、発光素子6は、第2電極層40側から光を取り出すことが可能である。図示する例では、第2電極層40は、透光性導電層39と、透光性導電層39における機能層30側とは反対側に位置するパターン電極(「補助電極」ともいう。)42とを有している。パターン電極42は、機能層30からの光取り出し用の複数の開口部41を有している。
図14を参照しながら、パターン電極42の構成をより具体的に説明する。パターン電極42は、例えば、透光性導電層39における機能層30側とは反対側の表面を覆うように配置されている。パターン電極42は、図14に示すように、透光性導電層39よりも導電率が高い線状電極部42aと、透光性導電層39における機能層30側とは反対側の表面を露出させる複数の開口部41とを有している。これらの開口部41を介して、第2電極層40側から光を取り出すことが可能である。
有機発光素子103では、透光性導電層39は、平面視において、パターン電極42が配設されている領域全体に連続して配設されている。発光層32のうち第1電極層20(939)と第2電極層40との間に位置する領域50が、発光領域を構成する。また、パターン電極42の各開口部41で規定される、光を素子外部に取り出す領域を「光取り出し領域」とする。
第2電極層40の上面20aに設けられた凹凸構造20bは、上記の光取り出し領域のそれぞれにおいて、面内分布を有している。例えば、図13(b)に例示するように、隣接する凸部間の距離Pr(または凹凸構造のピッチP)が、各光取り出し領域における中央部で周縁部よりも小さくてもよい。図13(b)は凸部の面内分布の一例を模式的に示すものであり、凸部のサイズと光取り出し領域(開口部41)のサイズとの関係は、図示する関係とは異なり得る。また、開口部41に対応する全ての光取り出し領域において、凹凸構造20bが面内分布を有していなくてもよい。少なくとも1つの光取り出し領域において、所定の面内分布を有していればよい。
なお、第1電極層20から光を取り出すボトムエミッション型の発光素子を構成する場合には、第1電極層20が、少なくとも、機能層30に接し光透過性を有する透光性導電層と、複数の開口部を有するパターン電極とを有していてもよい。
有機発光素子103は、また、基板10の上面の周縁部において、第2電極層40(パターン電極42及び透光性導電層39)と電気的に接続された第2引出配線46と、第2端子部47とを備えている。第2引出配線46は、第2端子部47と電気的に接続されている。この例では、第2端子部47は、発光領域50の外側(図14に示す平面図では発光領域50の右側および左側)に位置している。図示しないが、有機発光素子103は、さらに、第1電極層20に電気的に接続された第1引出配線(不図示)と、第1引出配線に電気的に接続された第1端子部(不図示)とを備えている。第1端子部は、基板10の上面側に設けられていてもよい。
第2引出配線46は、機能層30及び第1電極層20と電気的に絶縁されている。この例では、有機発光素子103は、基板10の上面側外周部に、第2引出配線46と機能層30及び第1電極層20との間に介在して両者を電気的に絶縁する絶縁層60を備えている。絶縁層60の位置や形状は特に限定されない。ここでは、絶縁層60は、基板10の上面と、第1電極層20の側面及び/または上面と、機能層30の側面と、第2電極層40の側表面(外周部)と接するように形成されている。
<有機発光素子103の各構成要素>
有機発光素子103の各構成要素は、前述した有機発光素子101、102の各構成要素と同じであってもよい。以下の説明では、図1を参照しながら前述した構成要素の説明と重複する内容は省略する。
[機能層30]
有機発光素子103では、機能層30は、第1電極層20側から順に、発光層32、第2キャリア輸送層33、第2キャリア注入層34を含む積層構造を有している。ここで、第2キャリア輸送層33、第2キャリア注入層34は、それぞれ、ホール輸送層、ホール注入層である。なお、機能層30は、少なくとも発光層32を含んでいればよく、発光層32以外の、第1キャリア注入層、第1キャリア輸送層、インターレイヤー、第2キャリア輸送層、第2キャリア注入層などは適宜設ければよい。
発光層32の厚さは、例えば60〜200nm、第2キャリア輸送層33の厚さは、例えば5〜30nm、第2キャリア注入層34の厚さは、例えば10〜60nmにそれぞれ設定され得る。これらの数値は一例であって、特に限定するものではない。
[透光性導電層39]
透光性導電層39の材料としては、例えば、Alなど金属の透光性を有する薄膜や、CuI、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO2、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等の透明酸化物、カーボンナノチューブなどを挙げることができる。また、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリカルバゾールなどの導電性高分子材料を用いることができる。また、透光性導電層39の導電性高分子材料としては、導電性を高めるために、例えば、スルホン酸、ルイス酸、プロトン酸、アルカリ金属、アルカリ土類金属などのドーパントをドーピングしたものを採用してもよい。
なお、有機発光素子103では、透光性導電層39の厚さを200〜400nmに設定してあるが、これらの数値は一例であって、特に限定するものではない。
[パターン電極42]
(1)材料
パターン電極42は、金属の粉末と有機バインダとを含む電極からなる。この種の金属としては、例えば、銀、金、銅などを用いることができる。これにより、発光素子6は、第2電極層40が、導電性透明酸化物により形成された薄膜の場合に比べて、第2電極層40のパターン電極42の抵抗率及びシート抵抗を小さくすることが可能となり、輝度むらを低減することが可能となる。なお、第2電極層40のパターン電極42の導電性材料としては、金属の代わりに、合金や、カーボンブラックなどを用いることも可能である。
パターン電極42は、例えば、金属の粉末に有機バインダ及び有機溶剤を混合させたペースト(印刷インク)を、例えばスクリーン印刷法、グラビア印刷法などにより印刷して形成することができる。有機バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、その他の熱可塑性樹脂や、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(2)寸法及び形状
パターン電極42は、線状電極部42aと開口部41とから構成される。線状電極部42aは、所定の間隔を空けて離間して配置されている。パターン電極42は、例えば、図14に示すように、線状電極部42aが格子状(網状)に配置されており、複数(図14に示した例では、6×6=36)の開口部41を有している。ここでは、パターン電極42の各開口部41の各々の平面視形状は矩形である。
[引出配線、端子部]
第2電極層40と電気的に接続された第2引出配線46および第2端子部47、第1電極層20と電気的に接続された第1引出配線(図示せず)および第1端子部(図示せず)の材料は、第2電極層40のパターン電極42と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。パターン電極42と同じ材料を用いる場合には、これらの引出配線及び端子部と、パターン電極42とを、同じ導電膜を用いて同時に形成することが可能となる。第2端子部47および第1端子部は、単層構造に限らず、2層以上の積層構造としてもよい。
なお、第1電極層20において機能層30と第2電極層40とが積層されていない部分(不図示)を第1端子部としてもよい。また、基板10を金属板や金属箔により形成して、その露出部分を第1端子部としてもよい。この例では、第2引出配線46及び第2端子部47は、基板10の上面側に設けられているが、第2引出配線46及び第2端子部47は特に限定されない。例えば、基板10が金属箔により形成されている場合、第2端子部47を、絶縁層60及び基板10のそれぞれの一部とともに基板10の下面側に折り返してもよい。
[封止基板70]
封止基板70はカバー基板として機能する。本実施の形態では、封止基板70として、ガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、プラスチック板などを用いてもよい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどを採用することができる。また、プラスチック板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネートなどを採用することができる。なお、基板10が、ガラス基板により構成されている場合には、封止基板70を、基板10と同じ材料のガラス基板により構成することが好ましい。
また、本実施の形態では、封止基板70として、平板状のものを用いているが、これに限らず、基板10との対向面に、基板10上に形成された機能層30、第2電極層40等を含む積層体を収納する収納凹所を形成したものを用い、上記対向面における収納凹所の周部を全周に亘って基板10側と接合するようにしてもよい。この場合は、別部材のフレーム部80を用いる必要がなくなるという利点がある。一方、平板状の封止基板70と枠状のフレーム部80とを別部材により構成している場合には、封止基板70に要求される光学的な物性(光透過率、屈折率など)と、フレーム部80に要求される物性(ガスバリア性など)との両方の要求を各別に満たす材料を採用することが可能になるという利点がある。
[フレーム部80]
有機発光素子103は、基板10の周部と封止基板70の周部との間に介在する枠状のフレーム部80を備えた構成を有している。フレーム部80の材料としては、例えば、ポリイミド、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
フレーム部80と基板10の上面側とを接合する第1接合材料としては、エポキシ樹脂を用いているが、これに限らず、例えば、アクリル樹脂などを採用してもよい。第1接合材料として用いるエポキシ樹脂やアクリル樹脂は、例えば、紫外線硬化型のものでもよいし、熱硬化型のものでもよい。また、第1接合材料として、エポキシ樹脂にフィラー(例えば、シリカ、アルミナなど)を含有させたものを用いてもよい。ここで、フレーム部80は、基板10の上記一表面側に対して、フレーム部80における基板10側との対向面を全周に亘って気密的に接合してある。
また、フレーム部80と封止基板70とを接合する第2接合材料としては、エポキシ樹脂を用いているが、これに限らず、例えば、アクリル樹脂、フリットガラスなどを採用してもよい。第2接合材料として用いるエポキシ樹脂やアクリル樹脂は、例えば、紫外線硬化型のものでもよいし、熱硬化型のものでもよい。また、第2接合材料として、エポキシ樹脂にフィラー(例えば、シリカ、アルミナなど)を含有させたものを用いてもよい。ここで、フレーム部80は、封止基板70に対して、フレーム部80における封止基板70との対向面を全周に亘って気密的に接合してある。
[絶縁層60]
絶縁層60の材料としては、例えば、ポリイミド、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。このような絶縁層60は、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法などによって成膜することができる。または、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの光硬化性樹脂に吸湿剤を含有させたものを用いることができる。吸湿剤としては、アルカリ土類金属の酸化物や硫酸塩が好ましい。
絶縁層60は、引出配線46および端子部47と、第1電極層20および機能層30とを電気的に絶縁するように配置されている。絶縁層60の一部は、基板10と第2引出配線46及び第2端子部47との間に設けられていてもよい。
<有機発光素子103の製造方法>
次に、トップエミッョン型の有機発光素子103の製造方法を例に、本実施形態の有機発光素子の製造方法を説明する。なお、図1に示す有機発光素子101、有機発光素子102も、有機発光素子103と同様の方法で製造され得る。
まず、準備した基板10の一方の面に、例えば、真空蒸着法等の薄膜プロセス又は塗布法等の湿式プロセスに基づき、第1電極層20を形成する。
このとき、蒸着条件を制御することにより、上面に凹凸構造20bを有する第1電極層20を形成できる。第1電極層20表面の凹凸構造20bは、成膜する金属薄膜の成膜条件を制御することが可能である。蒸着法等の気相法により凹凸構造を形成する場合、例えば、蒸着速度、基板温度、基板の種類、基板の表面エネルギー制御、蒸着材料の種類、蒸着時の圧力、蒸着時のガス量、ガス種類によって凹凸の形状を制御することができる。
凹凸形状の制御手法は、基板10と蒸着材料の種類により異なる。例えば基板10と蒸着材料の表面エネルギー差が大きい場合(基板上での結晶成長が抑制される場合)は、蒸着速度を大きく、かつ、基板温度を高くすることにより、凹凸構造20bを構成する凸部21及び凹部22の大きさ(以下、「凹凸サイズ」と略称する。)を大きくすることができる。また、基板と蒸着材料の相互作用が比較的小さい場合は、基板温度が高いとき、凹凸サイズが小さくなる。凹凸サイズは、上述したように、例えば、凸部の高さH、凸部21の面積相当円直径d1、凸部の幅(FWHM相当)d2等で表すことができる。
ただし、凹凸サイズは、例えば圧力及び蒸着時のガス流入量など表面エネルギー差以外の要因によっても異なり、各条件が凹凸サイズに与える影響はこれらの関係により変化し得る。また、蒸着時の圧力及び蒸着時のガスによっては、蒸着材料の結晶性を制御することで凹凸サイズを制御することも可能となる。
また、スパッタ法を用いても、上面に凹凸構造20bを有する第1電極層20を形成できる。この場合、スパッタ条件により凹凸の形成を制御することができる。例えば、電源の種類(DC、RF)、ターゲット−サンプル距離、投入電力、成膜時のガス量、ガスの種類(Ar、O2など)、基板温度、基板の種類、成膜時の真空度、基板の表面エネルギー制御、ターゲット材料の種類、スパッタ時の圧力などによって凹凸サイズが変化する。
なお、蒸着条件やスパッタ条件で凹凸の形成を制御する場合、凹凸構造20bが面内で分布を有するように面内で一部の条件(基板温度、ターゲット−サンプル間の距離等)を変えてもよい。
第1電極層20の表面に凹凸構造20bを形成する方法は、蒸着法やスパッタ法に限らず、その他の方法であってもよい。例えば、縮小投影型露光装置やEB描画装置を用いたフォトリソグラフィー、ナノインプリント法、μコンタクトプリントなどで作製したレジストパターンをマスクとして、反応性イオンエッチングなどのドライエッチング手法を用いるなどのトップダウン手法や、有機材料の自己組織化やシリカ粒子の自己配列やバックリング手法などを用いたボトムアップ手法により凹凸を形成し、作製した凹凸テンプレートをの上に、反射電極を成膜することにより、電極層の凹凸面を作製してもよい。これらの方法では、第1電極層20表面は、下地のテンプレートの凹凸を保持し、凹凸面を形成することができる。また、粗化めっきや金属粒子及び金属ワイヤーの凝集構造をテンプレート或いは直接凹凸利用することにより、凹凸形状を作製してもよい。
凹凸構造20bの密度を制御する手法としては、凹凸構造20bをトップダウン形成する場合は、凹凸構造20bが面内で粗密制御されたモールドやフォトマスクを用いることで容易に実施することができる。例えば、EB描画などにより作製した面内で粗密制御したモールドやフォトマスクを用いてナノインプリント法や縮小投影露光装置により凹凸を作製することができる。また、ボトムアップ手法により凹凸を形成する場合は、凹凸形成時の基板条件や凹凸作製条件を制御することで面内の粗密制御が可能である。例えば、基板表面処理時にメタルマスクなどを用いて表面処理時間の粗密制御を行うことや、成膜時あるいは成膜後の基板加熱条件において面内で不均一な状態で実施することにより、凹凸形状の粗密制御を行うことができる。
次に、第1電極層20上に、塗布法(例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法など)のような湿式プロセスに基づきインクを塗布し溶媒を乾燥させて発光層32を形成する。さらに、同様な製法にて第2キャリア輸送層33(ホール輸送層)、第2キャリア注入層34(ホール注入層)を形成する。
次に、基板10の上面の周縁付近に、第1電極層20、発光層32、ホール輸送層33、ホール注入層34の外周と接触するように絶縁層60を、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法などに基づきインクを塗布し溶媒を乾燥させて形成する。
次に、ホール注入層34上に、塗布法に基づきインクを塗布し溶媒を乾燥させて透光性導電層39を形成する。
次に、透光性導電層39上に、例えば、塗布法に基づきインクを塗布し溶媒を乾燥させて格子状のパターン電極42を形成する。
次に、基板10の上面の左方周縁に、パターン電極42及び透光性導電層39と接触するように第2引出配線46を、例えば、塗布法に基づきインクを塗布し溶媒を乾燥させて形成する。併せて、基板10の上面の周縁に第2引出配線46と連続して第2端子部47を形成する。
次に、基板10の周部に枠状のフレーム部80を形成する。フレーム部80の材料は、例えば、ポリイミド、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂などを用い、エポキシ樹脂等からなる接合材料を用いてフレーム部80と基板10の上面とを接合する。さらに、ガラス基板又はプラスチック板などを用いた封止基板70を、エポキシ樹脂等からなる接合材料を用いてフレーム部80の上面と接合し、基板10を覆う封止基板70を配設する。このようにして、有機発光素子103が得られる。
<成膜条件制御による凹凸構造の作製例>
蒸着条件制御によって凹凸構造を作製したので、その一例を説明する。基板10の一表面上に、真空蒸着法により、厚さが100nmのアルミニウム膜からなる第1電極層(陰極)20を形成した(第1工程)。ガラス基板表面は、Hexamethyldisilazane(Sigma−Aldrich製)による表面処理を行うことで表面エネルギーを制御した。さらに、蒸着時の蒸着条件を制御することで、図15(a)に示すように、凹凸構造20bを形成した。基板温度は室温であり、蒸着速度は0.2nm/secとした。得られた凹凸構造の周期成分(ピッチP)は400nmとなった。
一方、基板の表面処理を実施せず、蒸着速度を0.01nm/sec、基板温度を室温、蒸着時の真空度を10-4以下の条件でアルミニウム膜の蒸着を行った。この結果、図15(b)に示すように、略平坦な表面を有する電極膜が得られた。
このように、表面処理や基板温度条件などの成膜条件を制御することで、凹凸構造の粗密や凹凸サイズ、凹凸形状などを制御することが可能となる。
なお、上記方法の代わりに、例えば、次のようにして凹凸構造を作製することもできる。まず、ガラス基板表面に、Hexamethyldisilazane(Sigma−Aldrich製)による表面エネルギーを制御に分布を持たせる。次に、蒸着時に、基板のうち各光取り出し領域の中央部に対応する部分の温度を100℃とし、光取り出し領域の周縁部に対応する部分にかけて温度が低くなるように温度傾斜を与える。これにより、光取り出し領域の端部で中央部よりもピッチPの大きい凹凸構造を得る。
<実施例1および比較例1>
[実施例1]
実施例1として、図12〜14に示す構成を有する発光素子を製造した。製造条件は、以下の通りである。
まず、基板10として、EB描画装置によるパターニングと反応性ドライエッチング装置によるドライエッチングにより0.7mmの石英基板に凹凸形状を作製した。はじめにHexamethyldisilazane(Sigma−Aldrich製)による表面処理を行った石英基板に、電子線レジスト(ZEP520A,日本電子製)をスピンコート法により成膜し、次に帯電防止剤(エスペイサー,昭和電工製)を20nm成膜した。次に、電子線描画装置(JBX5500,日本電子製)により所望の凹凸形状に露光した。凹凸形状は、暗部となるパターン形成した電極の1区切りの中央部においてピッチPを800nmとした。また、明部となる端部に近づくにつれて、凹凸ピッチPを10μmまで大きくした。さらに、帯電防止剤及び露光した電子線レジストを、それぞれ流水及び現像液(ZED−N50,日本ゼオン製)にて除去した。次に、ICPドライエッチング装置(RIE−200iP,サムコ株式会社)を用いて、エッチングを行った後、テトラヒドロフラン(和光純薬)によりレジストを除去した。このようにして、凹部の深さが70nmの、粗密(ピッチP)が制御された凹凸形状を作製した。
次に、凹凸形状が形成された基板10の一表面上に、真空蒸着法により、膜厚が100nmのアルミニウム膜からなる第1電極層(陰極)20を形成した(第1工程)。
第1工程の後には、機能層30を形成する第2工程を行った。第2工程では、発光層32、第2キャリア輸送層33であるホール輸送層、第2キャリア注入層34であるホール注入層を順次形成した。
発光層32の形成にあたっては、赤色高分子材料(アメリカンダイソース社製の「Light Emitting polymer ATS111RE」)をTHF溶媒に1wt%になるよう溶解した溶液を、第1電極層20上に膜厚が約200nmになるようにスピンコーターで塗布し、100℃で10分間の焼成を行うことによって発光層32を得た。なお、発光層32の屈折率は、約1.8である。
第2キャリア輸送層33であるホール輸送層の形成にあたっては、まず、TFB(アメリカンダイソース社製の「Hole Transport Polymer ADS259BE」)をTHF溶媒に1wt%になるよう溶解した溶液を発光層32上に膜厚が約12nmになるようにスピンコーターで塗布してTFB被膜を作製し、このTFB被膜を200℃で10分間の焼成を行うことによって、ホール輸送層を得た。なお、ホール輸送層の屈折率は、約1.8である。
第2キャリア注入層34として、ホール注入層を形成した。ホール輸送層上にPEDOT−PSS(HERAEUS社製の「CLEVIOUS P VP AI4083」、PEDOT:PSS=1:6)とイソプロピルアルコールを1:1で混合した溶液をPEDOT−PSSの膜厚が約100nmになるようにスピンコーターで塗布し、150℃で10分間の焼成を行った。これにより、第2キャリア注入層34としてのホール注入層を得た。なお、ホール注入層の屈折率は、約1.5とした。
第2工程の後には、絶縁層60を形成する第3工程を行った。この第4工程では、スクリーン版をマスクとして、イミド系樹脂(OPTMATE製の「HRI1783」で、屈折率が、1.78、濃度が18%)を塗布してから、130℃で30分間、窒素雰囲気下において熱処理することで、絶縁層60を成膜した。
第3工程の後には、導電性高分子層からなる透光性導電層39を形成する第4工程を行った。この第4工程では、高導電タイプのPEDOT−PSS(HERAEUS社製の「CLEVIOUS SHT」)をスクリーン印刷法により塗布してから、130℃で30分間、窒素雰囲気下において熱処理することで、透光性導電層39を得た。なお、透光性導電層39の屈折率は、約1.43である。
第4工程の後には、パターン電極42を形成する第5工程を行った。この第5工程では、線幅が50μm、スペース幅(開口部の幅、光取り出し領域の幅に相当)が10mmのスクリーン版をマスクとしてAgペーストを塗布してから、130℃で30分間、窒素雰囲気下において熱処理することで、パターン電極42を形成した。この第5工程では、絶縁層60とパターン電極42とが互いの厚み方向において重なるようにアライメントを行ってパターン電極42を形成した。なお、第5工程で用いるスクリーン版には、第1引出配線、第1端子部、第2引出配線46及び第2端子部47それぞれを形成するための開孔部が形成されている。そして、本実施例では、第5工程において、パターン電極42だけでなく、第1引出配線、第1端子部、第2引出配線46及び第2端子部47も形成した。なお、実施例1の発光素子では、透光性導電層39とパターン電極42とからなる第2電極層40が陽極を構成している。
第5工程までが終了した後に、第6工程を行った。第6工程では、まず、基板10を露点−80℃以下のドライ窒素雰囲気のグローブボックス内へ大気に暴露することなく搬送した。一方、封止基板70とフレーム部80とを一体に備えた無アルカリガラス製の封止キャップのフレーム部80に紫外線硬化型のエポキシ樹脂製のシール剤を塗布したものを用意する。そして、グローブボックス内で、封止キャップと基板10とで機能層30が形成された素子の部分を囲むように封止キャップを基板10にシール剤で張り合わせた。このようにして、実施例1の発光素子を得た。
[比較例1]
比較例1として、第1電極層が凹凸構造を有しない点で、実施例1と異なる発光素子を製造した。また、パターン電極におけるグリッド電極の間隔(開口部の幅)は10mmとした。比較例1の発光素子の製造は、凹凸構造を形成しないこと以外は、実施例1と同じ方法で行った。
[評価結果]
まず、比較例1の発光素子において、光取り出し領域内の輝度を局所的に測定した。
光取り出し領域内の各位置における輝度は、例えば、発光素子の第2端子部47と第1端子部との間に、DC電源(ケースレイ社製の2400)から電流密度が10mA/cm2の定電流を流し、正面輝度を輝度計(トプコン社製のSR−3)で測定することにより算出される。
この結果、基板の法線方向から見たとき、光取り出し領域における、パターン電極の線状電極部から2mm離れた部分の正面輝度は、パターン電極の線状電極部近傍(光取り出し領域の周縁部)の正面輝度の1/2以下であることが確認された。従って、平坦な表面を有する電極を用いた従来の素子構成によると、大きな輝度ムラが生じ得ることが分かった。
また、実施例1及び比較例1それぞれの発光素子について、輝度ムラを測定した。「輝度ムラ」は、面内で輝度値の高い正面輝度値と輝度値の低い中央部での正面輝度値の差を示している。ここでは、正面輝度値を測定する代わりに、全光束を測定し、輝度ムラの評価を行った。
この結果、実施例1の発光素子では、比較例1の発光素子よりも輝度ムラが抑制することが確認できた。実施例1の発光素子は、光取り出し領域の暗部(中央部)に、明部(周縁部)よりも凹凸が密に存在する。このため、単位面積当たり発光効率Eが中央部でより高くなり、輝度ムラが抑制されたと考えられる。
<シミュレーションによる検討結果>
続いて、シミュレーションを用いて凹凸構造による効果を検討したので、その結果を説明する。
ここでは、凹凸構造を有する反射電極を有する上記の実施例1の発光素子、および平坦電極を用いた上記の比較例1の発光素子のそれぞれについて、シミュレーションを行った。
上述したように、実施例1の発光素子の構成は、第1電極層として凹凸構造を有する凹凸電極を有する点以外は、比較例1の発光素子の構成と同じである。また、実施例1および比較例1の発光素子では、パターン電極(グリッド電極)において、グリッドで包囲された開口部のサイズ(すなわち光取り出し領域のサイズ)を10mm×10mmとする。
シミュレーションでは、各発光素子について、光取り出し領域の周縁部(グリット近傍)の点を含む単位領域S0、光取り出し領域の周縁(最も近接するグリッド)から2.5mm離れた点を含む単位領域S2.5、光取り出し領域の周縁から5.0mm離れた点を含む単位領域S5.0(光取り出し領域の中央部)の電圧、電流密度、凹凸ピッチP、正面輝度の検討を行った。
まず、透明電極(第1電極層)の抵抗による電位降下を計算する。印加電圧を5V、透明電極を構成する導電性高分子のシート抵抗を約100Ω/□と仮定する。この場合、光取り出し領域の周縁部(グリッド)から5.0mm離れた単位領域S5.0では、グリッド近傍の単位領域S0に対して0.25Vの電位低下が生じる。このため、電圧は4.75Vとなる。
電圧が5Vから4.75Vに低下すると、図11に示す電圧と輝度との関係を示すグラフより、正面輝度は周縁部(電位低下が生じていない部分)の輝度の0.78倍となる。したがって、平坦電極を有する比較例1の発光素子では、光取り出し領域における単位領域S5.0の輝度は、グリッド近傍の単位領域S0の輝度の0.78倍となる。
続いて、凹凸構造を設けることによる電気的効果と光学的効果とを分けて考察する。
図16は、凹凸構造のピッチPと、10mA/cm2の電流を流すのに必要な電圧との関係を示すグラフである。縦軸の電圧(駆動電圧)は、表面が平坦な電極を用いた素子における10mA/cm2の電流を流すのに必要な電圧で規格化した値である。
図16のグラフから、ピッチPを800nmとすると、凹凸構造を設けない場合に比べて、駆動電圧を6%程度低くできることが分かる。すなわち、ピッチPが800nmである凹凸構造を有する電極を用いることにより、平坦な電極を用いる場合よりも6%程度低い電圧でも同じ電流を流すことが可能である。したがって、ピッチPが800nmである凹凸構造を設けることにより、駆動電圧は平坦な電極の場合の約1.06倍となる。このときの電気的効果を「1.06」で表す。
前述したように、図7は、一定の電圧を印加した場合において、凹凸構造のピッチPと輝度との関係を示すグラフである。図7のグラフから、ピッチPが800nmである凹凸構造を設けることにより、輝度は約1.3倍になることが分かる。このときの光学的効果を「1.3」で表す。
したがって、実施例2の発光素子において、光取り出し領域における単位領域S5.0の輝度は、比較例2の発光素子のグリッド近傍の単位領域S0の輝度を基準とすると、
0.78×1.06×1.3=1.07
となる。
続いて、上記と同様に電気的効果および光学的効果を考慮して、実施例2の発光素子における光取り出し領域のグリッド近傍の単位領域S0、および、単位領域S2.5において、輝度が約1.07となる凹凸構造のピッチPを求めると、グリッド近傍の単位領域S0のピッチPは3μm、単位領域S2.5のピッチPは1.5μmとなる。このことから、光取り出し領域の周縁部以外の領域でも、凹凸構造のピッチPを上記値の設定することにより、輝度を周縁部と同程度(約1.07)まで高くできることが分かる。
上記のシミュレーション結果を表1にまとめて示す。
Figure 2015222697
このシミュレーション結果から、光取り出し領域内で、グリッドからの距離に応じて凹凸構造のピッチPを設定することにより、光取り出し領域内の輝度の均一性を向上できることが確認できる。なお、ピッチPの代わりに、またはピッチPに加えて、凹凸構造の他のパラメータを変化させる場合でも同様の効果が得られる。
本開示の有機発光素子は、携帯電話機用のディスプレイやテレビなどの表示素子、各種光源などに利用可能である。いずれの用途においても、低輝度から光源用途等の高輝度まで幅広い輝度範囲で低電圧駆動される有機発光素子として適用できる。このような高性能により、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種ディスプレイ装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ、照明光源等として、幅広い利用が可能である。
10 基板
20 第1電極層
21 凸部
22 凹部
30 機能層
32 発光層
33 第2キャリア輸送層
34 第2キャリア注入層
39 透光性導電層
40 第2電極層
41 開口部
42 パターン電極
42a 線状電極部
46 第2引出配線
47 第2端子部
50 発光領域
60 絶縁層
70 封止基板
80 フレーム部
101、102、103 有機発光素子

Claims (10)

  1. 第1電極層と、
    前記第1電極層上に配置された、少なくとも発光層を含む機能層と、
    前記機能層上に配置された第2電極層と
    を備え、
    前記第1電極層の法線方向から見たとき、前記発光層のうち前記第1電極層と前記第2電極層との間に位置する部分で規定される発光領域を有し、前記発光領域は、前記発光層からの光を外部に取り出す、少なくとも1つの光取り出し領域を含み、
    前記第1電極層の前記機能層側の表面は凹凸構造を有しており、
    前記第1電極層の法線方向から見たとき、前記凹凸構造は、前記光取り出し領域の中央部と周縁部とで異なっている、有機発光素子。
  2. 前記凹凸構造は複数の凸部および複数の凹部を含み、
    隣接する凸部間の距離Pr、凸部の高さH、凸部の幅d、凹部の面積割合R、および凸部の形状の少なくとも1つが、前記光取り出し領域の前記中央部と前記周縁部とで異なっている、請求項1に記載の有機発光素子。
  3. 単位面積当たり、かつ単位電圧当たりの発光効率Eは、前記光取り出し領域の前記中央部で前記周縁部よりも大きい、請求項1または2に記載の有機発光素子。
  4. 前記第1および第2電極層のうち光を取り出す側に位置する電極層は、透明導電層と、前記透明導電層に接して形成された補助電極とを含み、
    前記補助電極は、前記発光領域内において複数の開口部を有し、
    前記少なくとも1つの光取り出し領域は、前記複数の開口部のそれぞれに対応する複数の光取り出し領域である、請求項1から3のいずれかに記載の有機発光素子。
  5. 隣接する凸部間の距離Prは、前記光取り出し領域の前記中央部で、前記周縁部よりも小さい、請求項1から4のいずれかに記載の有機発光素子。
  6. 凸部の高さHは、前記光取り出し領域の前記中央部で、前記周縁部よりも大きい、請求項1から5のいずれかに記載の有機発光素子。
  7. 前記光取り出し領域の前記中央部における凹部の面積割合R(%)と50%との差の絶対値は、前記周縁部における凹部の面積割合R(%)と50%との差の絶対値よりも小さい、請求項1から6のいずれかに記載の有機発光素子。
  8. 前記第1電極層は主成分として金属を含む、請求項1から7のいずれかに記載の有機発光素子。
  9. 前記第1電極層の前記凹凸構造は、気相法により形成されている、請求項8に記載の有機発光素子。
  10. 前記第1電極層は、凹凸を有する下地層上に配置され、前記凹凸構造は、前記下地層の前記凹凸を反映した形状を有している、請求項1から9ののいずれかに記載の有機発光素子。
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