(第一実施形態)
図1は、第一の本実施形態のアンテナコイル部品の一例を示す模式平面図であり、具体的には、アンテナコイル部品の主要部について示す図である。なお、図1中において、両矢印で示されるX方向とY方向とは互いに直交する方向を意味し、X方向は、図1中に示す軸方向Cと平行を成す方向でもある。ここで、X方向の一方側(図中右側)を右側あるいは右方向と称し、他方側(図中左側)を左側あるいは左方向と称し、Y方向の一方側(図中上側)を上側あるいは上方向と称し、他方側(図中下側)を下側あるいは下方向と称する場合がある。なお、これらは図2以降においても同様である。
図1に示すアンテナコイル部品510は、絶縁材料から形成された筒状のボビン520と、ボビン520の外周側に巻回された巻線(絶縁皮膜に覆われた金属線。図中、不図示)と、ボビン520の少なくとも一端側に設けられ、かつ、絶縁材料から形成されたベース530と、導電性を有し且つベース530に固定された板状の金属端子540C(540)と、を備えている。そして、金属端子540Cには、コネクタピンを差し込んで金属端子540Cに固定するための差込穴600が4つ設けられている。なお、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510では、差込穴600は、少なくとも3つ以上設けられていればよいが、図1に例示したように4つ以上設けられていることが好ましい。また、金属端子540に設けられる差込穴600の数の上限は特に限定されるものでは無いが、実用上の観点からは、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
第一の本実施形態のアンテナコイル部品510では、少なくとも3つ以上の差込穴600の中からいずれか2つの差込穴600を選択して一対2個のコネクタピンを差し込むことができる。このため、2種類以上の取付け形態の中から所望の取付け形態を選択してコネクタピンを取り付け可能である。したがって、顧客から要求された新たなアンテナコイル部品の仕様が、従来のアンテナコイル部品に対してコネクタピンの取付け形態のみが変更されたものである場合、アンテナコイル部品を一から設計し直さなくても、単にコネクタピンを差し込む差込穴600を変更するだけよい。それゆえ、新たなアンテナコイル部品を開発する場合において、新規にベース530や金属端子540を設計する必要も無く、開発期間が短縮でき、新規の金型作製などの設備投資も大幅に抑制できる。これに加えて複数種類の異なる仕様のアンテナコイル部品510を作製するためにストックしておく在庫部品を減らすことも容易になる。
なお、図1に示す例では、コネクタピンが差込穴600に差込まれる前の状態を示したものであるが、アンテナコイル部品510は、コネクタピンが差し込まれた状態のものであってもよい。
また、ボビン520には、その軸方向Cに沿って、外周面522に対して凸部を形成する複数の鍔部524が設けられている。ここで、巻線は、軸方向Cにおいて互いに隣接する2つの鍔部524の間の外周面522に巻回される。なお、鍔部524は省略してもよい。そして、ボビン520の他端側(図中、左側端)には、不図示の開口部が設けられている。また、ボビン520とベース530とは一体的に形成された部材からなる。ここで、ベース530には、ベース530の厚み方向(図1中のXY平面と直交する方向)に貫通する5つの開口部532(中空部とも言う)が設けられている。そして、この開口部532内に金属端子540Cの一部分、すなわち、一対の搭載部610A、610Bや、差込穴600Aが設けられた部分の近傍等が露出している。また、金属端子540Cの他の部分、特に、開口部532内に露出していない部分は、ベース530内に埋め込まれることで、ベース530に支持固定されている。
なお、ボビン520およびベース530を構成する絶縁材料としては、第一の本実施形態ならびに後述する第二の本実施形態、第三の本実施形態および第四の本実施形態において、通常、樹脂材料が用いられる。樹脂材料としては、耐熱性樹脂および非耐熱性樹脂のいずれを用いてもよく、双方を混合して用いてもよく、さらにフィラー等の添加成分が分散含有されていてもよい。但し、いずれの実施形態においてもアンテナコイル部品510の製造上、許容されるのであれば出来る限り非耐熱性樹脂を採用することが好ましい。なお、本願明細書において、「非耐熱性樹脂」とは、リフロー炉を通せない樹脂(耐熱が低くリフロー炉を通すと寸法が変更したり、機能が低下するような樹脂)を意味し、具体例としてはポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。また、「耐熱性樹脂」とは、上述した非耐熱性樹脂以外の樹脂を意味し、一般的には、各種のエンジニアリングプラスチックが例示できる。
さらに、図1に示す例では、金属端子540Cの一部分を構成し、対向配置された1対の搭載部610A、610B上には、搭載部610Aと搭載部610Bとを架橋するようにチップコンデンサ550が配置されている。なお、金属端子540Cには、図1に例示したようにチップコンデンサ550等の種々の電子部品が半田等により接続されていてもよく、何らの電子部品が接続されていなくてもよい。また、ベース530の枠外に突出するように設けられた2つの巻線接続部612A、612B(金属端子540Cの一部分)の各々には、不図示の巻線の一端が各々接続される。
次に、アンテナコイル部品510を構成する金属端子540についてより詳細に説明する。図2は、第一の本実施形態のアンテナコイル部品の作製に用いられる金属端子の一例を示す模式平面図であり、具体的には、図1に示すアンテナコイル部品510において、コネクタピンやチップコンデンサ550等の電子部品が取り付けられる前の状態の金属端子540Cの変形例について示す図である。
金属端子540A(540)は、その主要部として、搭載部610A、搭載部610B、巻線接続部612A、巻線接続部612Bおよび4つの幅広部614(第一の幅広部614A、第二の幅広部614B、第三の幅広部614Cおよび第四の幅広部614D)を含む。なお、搭載部610Aおよび搭載部610Bは縦横の辺がXY方向に各々平行を成す矩形状を成しており、幅広部614は、縦横の辺がXY方向に各々平行を成す正方形または正方形に近い矩形状を成している。
ここで、第一の幅広部614A、第二の幅広部614B、第三の幅広部614Cおよび第四の幅広部614Dは、長方形の四隅に各々位置するように、この順に反時計回り方向に配置されている。すなわち、第一の幅広部614Aを基準として、第二の幅広部614Bは第一の幅広部614Aの右側に配置され、第三の幅広部614Cは第一の幅広部614Aの右上側に配置され、第四の幅広部614Dは第一の幅広部614Aの上側に配置されている。
そして、第一の幅広部614Aと第二の幅広部614Bとは、X方向に平行に伸びる帯状の連結部616Aにより接続され、第二の幅広部614Bと第三の幅広部614Cとは、Y方向に平行に伸びる帯状の連結部616Bにより接続され、第三の幅広部614Cと第四の幅広部614Dとは、X方向に平行に伸びる帯状の連結部616Cにより接続されている。
また、第四の幅広部614Dと第一の幅広部614Aとの間には、第四の幅広部614D側から第一の幅広部614A側へ向かう方向へと、搭載部610Aと搭載部610Bとがこの順に配置されている。ここで、第四の幅広部614Dと搭載部610Aとは、Y方向に平行に伸びる帯状の連結部616Dにより接続され、搭載部610Aと搭載部610Bとは、Y方向に平行に伸びる帯状の連結部616Eにより接続される。
さらに、Y方向に平行に伸びる帯状形状の巻線接続部612Aは、その一端が搭載部610Bの左上側部分に接続されており、他端は、Y方向において、第三の幅広部614Cおよび第四の幅広部614Dよりもさらに上方側に位置している。また、Y方向に平行に伸びる帯状形状の巻線接続部612Bは、その一端が第一の幅広部614Aの左側部分に接続されており、他端は、Y方向において、第一の幅広部614Aおよび第二の幅広部614Bよりもさらに下側に位置している。
差込穴600Aは、4つの幅広部614の各々の中央部に1つずつ、合計4つ設けられている。これら4つの差込穴600Aの開口形状は、長辺がX方向と平行を成す矩形状であり、4つの差込穴600Aの開口形状・サイズは全て同一である。
ここで、図2等に例示する金属端子540に取り付けるコネクタピンとしては、たとえば、図3に例示するコネクタピンを用いることができる。ここで、図3は、コネクタピンの一例を示す模式図であり、図3(A)が上面図を示し、図3(B)が側面図を示し、図3(C)が図3(B)中の符号A−A間の断面図を示す。
図3に示すコネクタピン570は、先端が尖った帯状のピン本体部572と、このピン本体部572の先端と反対側の他端側に、ピン本体部572と略直交する方向に伸びる取付部574とを備えている。コネクタピン570の取付部574の断面は、図3(C)に示すように矩形状であり、その形状・サイズは、図2に示す差込穴600Aと略一致するものである。ここで、取付部574の断面の短辺は、ピン本体部572の長手方向と平行を成す。このため、コネクタピン570の取付部574を、金属端子540Aの差込穴600Aに差し込むと、コネクタピン570の先端が一方の方向を向くように金属端子540Aに固定される。
それゆえ、図2に示す金属端子540Aに対して、2個のコネクタピン570を取り付ける場合、2種類の取付け形態が存在することになる。ここで、図4は、図2に示す金属端子540Aに対して、2個のコネクタピン570を取り付けた状態について説明する模式図である。図4に示すように、金属端子540Aにおけるコネクタピン570の取付け形態は、以下に説明する第一の取付け形態P1および第二の取付け形態P2の2種類から選択することができる。
(1)第一の取付け形態P1
2個のコネクタピン570の先端が下側を向くと共にY方向における先端の位置が一致するように、2個のコネクタピン570を、第一の幅広部614Aの差込穴600Aおよび第二の幅広部614Bの差込穴600Aに各々差し込んだ取付け形態。
(2)第二の取付け形態P2
2個のコネクタピン570の先端が上側を向くと共にY方向における先端の位置が一致するように、2個のコネクタピン570を、第三の幅広部614Cの差込穴600Aおよび第四の幅広部614Dの差込穴600Aに各々差し込んだ取付け形態。
なお、金属端子540Aに、巻線の末端を接続し、チップコンデンサ550等の電子部品およびコネクタピン570を取り付ける場合、巻線の末端が、巻線接続部612A、612Bの先端部近傍に各々接続され、チップコンデンサ550等の電子部品が配置される2つの搭載部610A、610B間を接続する連結部616Eが切断される。さらに、2個のコネクタピン570間に位置する連結部が切断される。たとえば、第一の取付け形態P1であれば、連結部616Aが切断され、第二の取付け形態P2であれば、連結部616Cが切断される。
次に、金属端子540のその他の例について説明する。図5は、本実施形態のアンテナコイル部品510の作製に用いられる金属端子540の他の例を示す模式平面図であり、具体的には、図2等に示す金属端子540Aの変形例について示す図である。
図5に示す金属端子540B(540)は、図2に示す金属端子540Aと比較して差込穴600の配置位置および開口形状が部分的に異なる以外は、図2等に示す金属端子540Aと同一の形状・構造を有するものである。ここで、図5に示す金属端子540Bでは、合計3つの差込穴600が設けられている。具体的には、第二の幅広部614Bの中央部に、長辺がY方向と平行を成すように開口形状が矩形状の差込穴600Aが1つ設けられ、第三の幅広部614Cの中央部に、差込穴600B(600)が1つ設けられ、第四の幅広部614Dの中央部に、長辺がX方向と平行を成すように開口形状が矩形状の差込穴600Aが1つ設けられている。なお、第三の幅広部614Cに設けられた差込穴600Bの開口形状は、矩形状の開口形状を有する差込穴600Aを十字形状を成すように2つ組み合わせた開口形状である。そして、この差込穴600Bは、十字形状の縦軸線と横軸線とが各々X方向とY方向とに一致するように配置されている。このため、この差込穴600Bに、コネクタピン570を差し込んで取り付ける場合、コネクタピン570の先端がX方向側を向く態様またはY方向側を向く態様のいずれかを選択してコネクタピン570を差込穴600Bに取り付けることができる。
それゆえ、図5に示す金属端子540Bに対して、2個のコネクタピン570を取り付ける場合、2種類の取付け形態が存在することになる。ここで、図6は、図5に示す金属端子540Bに対して、2個のコネクタピン570を取り付けた状態について説明する模式図である。図6に示すように、金属端子540Bにおけるコネクタピン570の取付け形態は、以下に説明する第一の取付け形態Q1および第二の取付け形態Q2の2種類から選択することができる。
(1)第一の取付け形態Q1
2個のコネクタピン570の先端が右側を向くと共にX方向における先端の位置が一致するように、2個のコネクタピン570を、第二の幅広部614Bの差込穴600Aおよび第三の幅広部614Cの差込穴600Bに各々差し込んだ取付け形態。
(2)第二の取付け形態Q2
2個のコネクタピン570の先端が上側を向くと共にY方向における先端の位置が一致するように、2個のコネクタピン570を、第三の幅広部614Cの差込穴600Bおよび第四の幅広部614Dの差込穴600Aに各々差し込んだ取付け形態。
なお、金属端子540Bに、巻線の末端を接続し、チップコンデンサ550等の電子部品およびコネクタピン570を取り付ける場合、巻線の末端が、巻線接続部612A、612Bの先端部近傍に各々接続され、チップコンデンサ550等の電子部品が配置される2つの搭載部610A、610B間を接続する連結部616Eが切断される。さらに、2個のコネクタピン570間に位置する連結部が切断される。たとえば、第一の取付け形態Q1であれば、連結部616Bが切断され、第二の取付け形態Q2であれば、連結部616Cが切断される。
図7は、本実施形態のアンテナコイル部品の作製に用いられる金属端子の他の例を示す模式平面図であり、具体的には、図1に示す金属端子540Cをより拡大して示す図である。
図7に示す金属端子540Cは、図2に示す金属端子540Aと比較して差込穴600の配置位置および開口形状が部分的に異なる以外は、図2に示す金属端子540Aと同一の形状・構造を有するものである。ここで、図7に示す金属端子540Cでは、合計4つの差込穴600が設けられている。具体的には、第一の幅広部614Aの中央部に、長辺がX方向と平行を成すように開口形状が矩形状の差込穴600Aが1つ設けられ、第二の幅広部614Bの中央部に、開口形状が十字形状の差込穴600Bが1つ設けられ、第三の幅広部614Cの中央部に、開口形状が十字形状の差込穴600Bが1つ設けられ、第四の幅広部614Dの中央部に、長辺がX方向と平行を成すように開口形状が矩形状の差込穴600Aが差込穴600Aが1つ設けられている。なお、第三の幅広部614Cおよび第四の幅広部614Dに設けられた差込穴600Bは、十字形状の縦軸線と横軸線とが各々X方向とY方向とに一致するように配置されている。このため、これら2つの差込穴600Bに、コネクタピン570を差し込んで取り付ける場合、コネクタピン570の先端がX方向側を向く態様またはY方向側を向く態様のいずれかを選択してコネクタピン570を差込穴600Bに取り付けることができる。
それゆえ、図7に示す金属端子540Cに対して、2個のコネクタピン570を取り付ける場合、3種類の取付け形態が存在することになる。ここで、図8は、図7に示す金属端子540Cに対して、2個のコネクタピン570を取り付けた状態について説明する模式図である。図8に示すように、金属端子540Cにおけるコネクタピン570の取付け形態は、以下に説明する第一の取付け形態R1、第二の取付け形態R2および第三の取付け形態R3の3種類から選択することができる。
(1)第一の取付け形態R1
2個のコネクタピン570の先端が下側を向くと共にY方向における先端の位置が一致するように、2個のコネクタピン570を、第一の幅広部614Aの差込穴600Aおよび第二の幅広部614Bの差込穴600Bに各々差し込んだ取付け形態。
(2)第二の取付け形態R2
2個のコネクタピン570の先端が右側を向くと共にX方向における先端の位置が一致するように、2個のコネクタピン570を、第二の幅広部614Bの差込穴600Bおよび第三の幅広部614Cの差込穴600Bに各々差し込んだ取付け形態。
(3)第三の取付け形態R3
2個のコネクタピン570の先端が上側を向くと共にY方向における先端の位置が一致するように、2個のコネクタピン570を、第三の幅広部614Cの差込穴600Bおよび第四の幅広部614Dの差込穴600Aに各々差し込んだ取付け形態。
なお、金属端子540Cに、巻線の末端を接続し、チップコンデンサ550等の電子部品およびコネクタピン570を取り付ける場合、巻線の末端が、巻線接続部612A、612Bの先端部近傍に各々接続され、チップコンデンサ550等の電子部品が配置される2つの搭載部610A、610B間を接続する連結部616Eが切断される。さらに、2個のコネクタピン570間に位置する連結部が切断される。たとえば、第一の取付け形態R1であれば、連結部616Aが切断され、第二の取付け形態R2であれば、連結部616Bが切断され、第三の取付け形態R3であれば、連結部616Cが切断される。
以上に説明したように、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510では、差込穴600が3つ以上設けられた金属端子540を用いるため、2種類以上の取付け形態の中から所望の取付け形態を選択してコネクタピン570を取り付けることができる。また、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510では、(1)図2に例示した差込穴600Aの開口形状ように、金属端子540に設けられる全ての差込穴600の開口形状が、コネクタピン570の先端が1種類の方向にのみに配向できるように金属端子540に差込み固定可能な開口形状を有するものであってもよい(なお、当該開口形状を有する差込穴600を「第一の差込穴」と称す)。あるいは、(2)図5および図7に例示した差込穴600Bのように、金属端子540に設けられる全ての差込穴600から選択される少なくとも1つの差込穴600の開口形状が、コネクタピンの先端が2種類(または2種類以上)の互いに異なる方向から選択されるいずれかの方向に配向できるように金属端子540に差込み固定可能な開口形状を有するものであってもよい(なお、当該開口形状を有する差込穴600を「第二の差込穴」と称す)。
なお、金属端子540に設けられる差込穴600の総数が少ない割に、より多種類のコネクタピン570の取付け形態を実現できる観点からは、図5に例示した金属端子540Bや図7に例示した金属端子540Cのように、金属端子540は、第一の差込穴と、第二の差込穴とを有することが特に好ましい。
また、差込穴600を設けることが可能な幅広部614の数は、少なくとも3つ以上であればよいが、図2、図5および図7に示すように4つであることが好ましく、5つ以上設けることもできる。また、金属端子540に設けられる幅広部614の上限数は特に限定されないが、実用上は10以下である。なお、幅広部614を5つ以上設ける場合、たとえば、図2、図5および図7に示す金属端子540であれば、(1)第二の幅広部614Bと第三の幅広部614Cとの間に1つまたは2つの新たな幅広部614を設けたり、(2)X方向における第一の幅広部614Aと第二の幅広部614Bとの間の間隔を広げた上で、第一の幅広部614Aと第二の幅広部614Bとの間に1つまたは2つの新たな幅広部614を設けたり、(3)X方向における第三の幅広部614Cと第四の幅広部614Dとの間の間隔を広げた上で、第三の幅広部614Cと第四の幅広部614Dとの間に1つまたは2つの新たな幅広部614を設けたりすることができる。
ここで、第一の差込穴の数αと第二の差込穴の数βとの組み合わせ;(α、β)は、たとえば、(2、1)、(3、1)、(4、1)、(2、2)あるいは(3、2)から選択することができる。また、金属端子540内における第二の差込穴の配置位置は、金属端子540がアンテナコイル部品510に取り付けられた状態において、ボビン520から最も離れた両角部分の一方または双方(具体例としては、図5または図7に例示したように第二の幅広部614Bおよび/または第三の幅広部614C)であることが好ましい。
なお、コネクタピン570は、図3に示すように、ピン本体部572の軸方向に対して、取付部574の軸方向が略直交するように予め折り曲げられた状態で、差込穴600に差し込んでもよい。あるいは、直線状に真っ直ぐに伸びたコネクタピン570を差込穴600に差し込んだ後に、直線状のコネクタピン570の途中部分を、図3に示すように90度折り曲げることより、先端を所定の方向に向けてもよい。直線状に真っ直ぐに伸びたコネクタピン570を使用する場合、差込穴600の軸方向から直線状のコネクタピン570に対して十分な押圧力を加えて、コネクタピン570を差込穴600に差し込むことが容易になる。なお、コネクタピン570を金属端子540に取り付ける場合、コネクタピン570を差込穴600に単に差し込んで固定するだけでもよいが、接続をより確実とする観点からはさらに半田付けなどの溶接処理を実施してもよい。
また、第一の差込穴の開口形状は、図2、図5および図7に例示した差込穴600Aのような矩形状に限定されず、第二の差込穴の開口形状は、図5および図7に例示した差込穴600Bのように(差込穴600Aの開口形状である)矩形状を2つ組み合わせて形成される十字形状あるいはL字形状などに限定されるものでは無く、使用するコネクタピン570の取付部574の断面形状に応じて適宜選択される。たとえば、コネクタピン570の取付部574の断面形状が、正三角形、正方形、正六角形、正八角形等の正多角形状であれば、差込穴600の開口形状もこれに略一致した形状・サイズを有する正多角形状とすることができる。なお、差込穴600の開口形状が正多角形状の場合は、コネクタピン570の先端を2種類以上の方向から選択されるいずれかの方向に配向させてコネクタピン570を取り付け可能である。
次に、ベース530についてより詳細に説明する。図9は、第一の本実施形態のアンテナコイル部品を構成するベースの一例を示す拡大上面図であり、具体的には、図1に示すベース530の構造を拡大してより詳細に示す図である。ここで、図9に示す例では、コネクタピン570や、チップコンデンサ550等の電子部品を取り付ける前の金属端子540Cがベース530に固定された状態について示してある。また、図9中の点線は、ベース530により覆われているため本来は見えない金属端子540Cの輪郭線を意味する。また、図10は、図9中の符号B−Bで示される部分の拡大断面図である。
ベース530には、ベース530の厚み方向に対して直交する方向に貫通する5つの開口部532が設けられている。すなわち、(1)ベース530の左下側部分に、縦横の辺がXY方向と平行を成す略正方形状の開口形状を有する第一の開口部532A(532)が設けられ、(2)ベース530の下側中央部分から右下側部分に、長辺がX方向と平行を成す矩形状の開口形状を有する第二の開口部532B(532)が設けられ、(3)ベース530の右上側部分に、長辺がY方向と平行を成す矩形状の開口形状を有する第三の開口部532C(532)が設けられ、(4)ベース530の上側中央部分から左上側部分に、長辺がX方向と平行を成す矩形状の開口形状を有する第四の開口部532D(532)が設けられ、(5)ベース530の左側中央部分に、長辺がY方向と平行を成す矩形状の開口形状を有する第五の開口部532E(532)が設けられている。
すなわち、第一の開口部532Aは、第一の幅広部614Aに対応して設けられており、第二の開口部532Bは、第二の幅広部614Bおよび連結部616Aの一部に対応して設けられており、第三の開口部532Cは第三の幅広部614Cおよび連結部616Bの一部に対応して設けられており、第四の開口部532Dは第四の幅広部614Dおよび連結部616Cの一部に対応して設けられており、第五の開口部532Eは、搭載部610A、610B、連結部616Dの一部および連結部616Eに対応して設けられている。
それゆえ、これら5つの開口部532内には金属端子540Cの主要部、すなわち、幅広部614の周縁部の一部または全部を除いた部分、連結部616A、616B、616C、616Dの一部分、搭載部610Aの全部、搭載部610Bの左端側近傍の一部を除く部分、連結部616Eの全部が露出している。このため、LC直列共振回路等の所望の電気回路を構成すると共に、アンテナコイル部品510を外部機器と接続可能とするために、これら開口部532を介して、連結部616A,616B、616C、616D、616Eから選択される所望の位置を切断したり、搭載部610Aと搭載部610Bとを架橋するようにチップコンデンサ550等の電子部品を半田付けにより接続したり、金属端子540Cにコネクタピン570を取り付けたりすることができる。
なお、幅広部614が露出する第一の開口部532A、第二の開口部532B、第三の開口部532Cおよび第四の開口部532Dの開口部のX方向の寸法およびY方向の寸法から選択される少なくとも一方の寸法は、幅広部614の周縁部をベース530中に埋め込むように固定するために、幅広部614のX方向の寸法およびY方向の寸法から選択される少なくとも一方の寸法よりも一回り小さくなっている。
また、ベース530の上面530Sのうち、幅広部614が露出する第一の開口部532A、第二の開口部532B、第三の開口部532Cおよび第四の開口部532Dの周囲には、これらの開口部532A、532B、532C、532D側からベース530の上面530Sの周縁部へと伸びるガイド溝534が設けられている。このガイド溝534は、図8に示す金属端子540Cの第一の取付け形態R1、第二の取付け形態R2および第三の取付け形態R3に対応する位置に設けられている。したがって、差込穴600にコネクタピン570を取り付ける際に、ピン本体部572をガイド溝534にはめ込むようにして取り付けることで、金属端子540Cに対してコネクタピン570をより安定して固定することができる。
なお、コネクタピン570をより安定して固定する観点からは、ガイド溝534の幅(図10中の長さWg)は、コネクタピン570の幅(図3中の長さWp)よりも若干狭いことが好ましい。ガイド溝534の深さDは、金属端子540の上面540Sからベース530の上面までの距離と同等またはこれよりも小さい範囲で適宜選択できる。また、ガイド溝534の左右の内壁面534L、534Rには、たとえば、上面530Sと平行な方向に伸びる切欠き溝あるいは突起などの引っ掛け部を、ガイド溝534の深さD方向に沿って1つ以上設けてもよい。この場合、この引っ掛け部を適宜利用することで、ガイド溝534の深さD方向の任意の位置にピン本体部572を引っ掛けてコネクタピン570をガイド溝534内に固定できる。したがって、ベース530の厚み方向の所望の位置に、コネクタピン570の先端が位置するようにコネクタピン570を固定することが容易になる。
また、コネクタピン570と金属端子540Cとの接続強度をさらに高め、かつ、防水性を向上させる観点からは、コネクタピン570を金属端子540Cに取り付けた後に、ベース530部分を、樹脂材料で覆ってもよい。
次に、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510を用いたアンテナ装置について説明する。図11は、第一の本実施形態のアンテナ装置の一例を示す分解平面図である。図11に示すアンテナ装置700は、図1に示すチップコンデンサ550を搭載した状態のアンテナコイル部品510と、このアンテナコイル部品510のボビン520内に配置された棒状の磁性体コア710と、筒状のグロメット720と、磁性体コア710を収納したアンテナコイル部品510およびグロメット720を収納する有底筒状のケース730とを備えている。但し、図11に示すアンテナコイル部品510は、図1とは異なりボビン520の外周面522に巻線560が巻回された状態が示されており、さらに、金属端子540Cには図8の第二の取付け形態R2でコネクタピン570が取り付けられており、2つの巻線接続部612A、612Bは、各々、巻線560の一端を絡げることで巻線560と接続されており、連結部616Bは開口部532C内で露出した部分において切断されている。さらに、図11中、連結部616Eは完全に切断除去されている。
なお、製造過程では1つの連続した部材であった金属端子540Cは、図11に示すアンテナコイル部品510となった状態では、連結部616Bおよび連結部616Eにおいて切断されることにより物理的に分離独立した3つの部分(金属端子)から構成される。すなわち、アンテナコイル部品510中における金属端子540Cは、(1)巻線接続部612B、第一の幅広部614A、連結部616A、第二の幅広部614Bおよび連結部616Bの一部分から構成される金属端子と、(2)連結部616Bの一部分、第三の幅広部614C、連結部616C、第四の幅広部614D、連結部616Dおよび搭載部610Aから構成される金属端子と、(3)搭載部610Bおよび巻線接続部612Aから構成される金属端子と、から構成されている。
そして、アンテナコイル部品510は、ベース530部分を覆うようにグロメット220が取り付けられた状態で、ベース530側がケース730の開口部732側を向くようにグロメット720と共にケース730内に収納される。また、アンテナコイル部品510等を収納したケース730の開口部732は、樹脂材料等の封止部材により封止される。
第一の本実施形態のアンテナコイル部品510の製造方法については特に限定されず、公知の製造方法を適宜利用して製造できる。たとえば、図7に例示した金属端子540C、あるいは、外枠と外枠に接続された金属端子540Cとからなる金属部材を金型内に配置した後、金型内に樹脂を射出成形する。これにより、樹脂材料からなるベース530を形成すると同時に、図9および図10に例示したようにベース530中に金属端子540Cの一部分を埋設して固定する。なお、射出成形工程の実施に際して金属部材を用いている場合は、射出成形工程の実施後に金属端子540C以外の余分な部分(外枠)を切断して除去する。また、ベース530とボビン520とを別々に作製した後、両者を接合してもよいが、通常は、射出成形に際して、ベース530と共にボビン520も一体的に形成する。これにより必要最低限の構成を有するアンテナコイル部品510を得ることができる。
さらに、射出成形工程を終えた後に、巻線560をボビン520に巻回すると共に、巻線560の末端を巻線接続部612A、612Bに接続する。これに加えて、たとえば、連結部616Eを切断した後に、搭載部610Aと搭載部610Bとを架橋するようにチップコンデンサ550等の電子部品を半田付けし、さらに、連結部616Bの切断に前後して、図8に示す第二の取付け形態R2で、コネクタピンを金属端子540Cに取り付けてもよい。
なお、金属端子540A、540B、540Cのように、2種類以上の取付け形態の中から所望の取付け形態を選択してコネクタピンを取り付け可能な差込穴600を3つ以上有する金属端子540を用いるのであれば、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510の構造および製造方法は特に限定されるものではない。たとえば、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510の構造として、後述する第二の本実施形態のアンテナコイル部品の構造をさらに採用してもよく、その他公知のアンテナコイル部品の構造をさらに採用することもできる。また、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510の製造方法としては、後述する第二〜第四の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法を利用してもよく、その他公知のアンテナコイル部品の製造方法も採用できる。
(第二実施形態)
次に、第二の本実施形態について説明する。まず、アンテナコイル部品の作製に際しては、通常、樹脂材料から形成されたベースに固定された金属端子の搭載部に対して、チップコンデンサ等の電子部品をスポットリフロー法を利用して半田付けすることができる。このスポットリフロー法では、局所加熱により半田付けを行うことができるため、リフロー炉を使って半田付けするよりも製造効率が高い。スポットリフロー法の具体例としては、熱風をノズルから噴射して半田付けする熱風ノズル方式や、ハロゲンランプ等の光源の光を集光させて照射したり、レーザー光を照射することで半田付けする光ビーム方式などが知られている。しかしながら、スポットリフロー法による半田付けに際して、加熱が弱いと半田を溶かすまでに時間がかかり生産性が低下する。その一方で、半田の溶解を促進すべく、強く加熱すると金属端子の搭載部からベースへと熱が伝わる上に、電子部品も強く加熱されるために、ベースを構成する樹脂等の絶縁材料および/または電子部品が熱ダメージを蒙り易くなる。
第二の本実施形態はこのような事情に鑑みてなされたものであり、アンテナコイル部品を製造するに際して、スポットリフロー法により金属端子に対して電子部品を半田付けする際に、半田付けに要する時間を増加させることなく半田接続部周辺の部材への熱ダメージも抑制できるアンテナコイル部品の製造方法、これを用いたアンテナコイル部品およびアンテナ装置を提供することを課題とする。
このような課題を解決するために、第二の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法は、固定部と、固定部から離間した位置に設けられた板状の搭載部と、固定部と搭載部とを接続する頚部と、を少なくとも含む金属部材を、金型内に配置した後、金型内に樹脂材料を射出することにより、樹脂材料からなるベースを少なくとも成形すると同時に、ベース中に固定部を埋設する射出成形工程と、搭載部に対して電子部品を半田付けする半田付け工程と、を少なくとも経てアンテナコイル部品を製造する際に、(I)金属部材として、搭載部の厚みが頚部の厚みより薄くなるように予め加工された金属部材を使用するか、あるいは、(II)射出成形工程を経た後に、搭載部の厚みが頚部の厚みより薄くなるように搭載部をプレスする搭載部プレス工程を実施し、搭載部プレス工程を経た後に半田付け工程を実施することを特徴とする。
また、第二の本実施形態のアンテナコイル部品は、絶縁材料から形成された筒状のボビンと、ボビンの外周側に巻回された巻線と、ボビンの少なくとも一端側に設けられ、かつ、樹脂材料から形成されたベースと、ベース中に固定される固定部、ベースから離間した位置に設けられた搭載部および固定部と搭載部とを接続する頚部とを含み、かつ、導電性を有する金属端子と、を少なくとも備え、搭載部の厚みは、頚部の厚みよりも薄いことを特徴とする。
また、第二の本実施形態のアンテナ装置は、第二の本実施形態のアンテナコイル部品と、ボビン内に配置された磁性体コアと、金属端子の搭載部に半田付けされた電子部品と、アンテナコイル部品を収納するケースと、を少なくとも備えることを特徴とする。
第二の本実施形態のアンテナコイル部品を製造する場合、まず、金属部材を用いて射出成形工程を実施する。この金属部材としては、たとえば、図12に示す金属部材を用いることができる。
図12に示す金属部材800は、U字を左側に倒した形状の外枠810およびこの外枠810内に位置するように外枠810の両端近傍に接続された金属端子540D(540)からなる板状の部材である。なお、外枠810に接続された状態の金属端子540Dの板厚はいずれの部分でも同一である。ここで、金属端子540Dは、搭載部910A(910)、搭載部910B(910)および搭載部910Bと巻線接続部912Aとの接続部近傍の構造が異なる点を除けば、図7に示す金属端子540Cと同様の構造を有する部材である。この金属端子540Dは、巻線接続部912Aの先端と、巻線接続部912Bの先端とが、それぞれ外枠810に接続されている。そして、アンテナコイル部品を作製する過程で、巻線接続部912Aと外枠810との境界線CL1および巻線接続部912Bと外枠810との境界線CL2を切断線として、金属端子540Dと外枠810とが切り離される。なお、図12中に示す搭載部910A、搭載部910B、巻線接続部912A、巻線接続部912B、第四の幅広部914D、連結部916D、連結部916Eは、図7中に示す搭載部610A、搭載部610B、巻線接続部612A、巻線接続部612B、第四の幅広部614D、連結部616D、連結部616Eに各々対応する部材である。
ここで、図12に示す金属端子540Dは、図7に示す金属端子540Cと比べて、搭載部910A、910Bのサイズが一回り小さくなっている点と、巻線接続部912Aが搭載部910Bの下辺側に接続されている点とにおいて異なっている。
射出成形工程では、この金属部材800を、金型内に配置した後、金型内に樹脂材料を射出することにより、樹脂材料からなるベースを少なくとも成形すると同時に、ベース中に金属端子540Dの一部(固定部)を埋設する。この射出成形に際しては、たとえば図9に示すようなベース530を形成することができる。
図13は、図12に示す金属端子540Dが射出成形により図9に示すベース530に固定された場合において、金属端子540Dの搭載部910近傍における金属端子540Dとベース530との配置関係を説明する上面図であり、具体的には、開口部532E近傍における金属端子540Dの配置位置を拡大して説明する図である。図13に示すように開口部532E内には、搭載部910A、910B、連結部916E、連結部916Dの一部(頚部950A(950))および巻線接続部912Bの一部(頚部950B(950))が露出している。また、頚部950A以外の連結部916Dはベース530を構成する樹脂材料中に埋設して固定された部分(固定部960A(960))となっている。さらに、開口部532E近傍の巻線接続部912Bのうち、頚部950B以外の巻線接続部912Aもベース530を構成する樹脂材料中に埋設して固定された部分(固定部960B(960))となっている。
すなわち、金属端子540Dは、アンテナコイル部品510を製造した際に、固定部960となる部分と、固定部960から離間した位置に設けられた板状の搭載部910となる部分と、固定部960と搭載部910とを接続する頚部950となる部分を含んでいる。
なお、本願明細書において、「頚部」とは、固定部と搭載部とを接続する部材を意味する。ここで、その平面形状は、固定部から搭載部へと向かう方向に対して略直交し且つ搭載部の表裏面と略並行を成す方向における最大長さ(たとえば図13および後述する図14に示す幅Wn)が、アンテナコイル部品として完成した状態の搭載部の幅(たとえば後述する図14に示す幅Wm)よりも狭くなるように設けられる。そして、この条件が満たされるのであれば、頚部の平面形状は特に限定されるものでは無い。
ここで、従来であれば、連結部916Eを切断した後に、チップコンデンサ550等の電子部品を、搭載部910Aと搭載部910Bとを架橋するように配置した状態でスポットリフロー法により搭載部910A、910Bに半田付けする半田付け工程を実施する。しかしながら、第二の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法では、射出成形工程を経た後に、搭載部910の厚みが頚部950の厚みより薄くなるように搭載部910をプレスする搭載部プレス工程を実施し、搭載部プレス工程を経た後に半田付け工程を実施する。なお、プレス方法は特に限定されない。プレス処理は、たとえば、搭載部910A、910Bの上面および下面側からパンチにより搭載部910A、910Bに圧力を加えることで実施できる。これにより、搭載部910A、910Bをその平面方向に薄く引き延ばす。この際、搭載部910Aの周縁部と、搭載部910Bの周縁部とが互いに接触しないようにする。
さらに、搭載部910A、910Bの周縁部は、開口部532Eの内壁面にも接触しないようにプレスすることが好ましい。これに加えて、搭載部910A、910Bは双方共に、プレス後の形状・サイズが略同一となるようにプレスされることが好ましい。また、搭載部プレス工程の実施に際しては、たとえば、予め連結部916Eをその両端で切断して除去してから搭載部プレス工程を実施してもよく、あるいは、搭載部プレス工程を実施後に、連結部916Eを切断除去してもよい。
図14は、図13に示す金属端子540Dに対して搭載部プレス工程を実施し終えた後の開口部532E近傍の一例について示す拡大上面図であり、具体的には、図13に示す搭載部910A、910Bに対して搭載部プレス工程を実施すると共に連結部916Eを切断除去した後の状態について示す図である。また、図15は、図14中の符号C−C間における金属端子540Dの断面構造の一例を示す断面図である。図14および図15に示されるように、搭載部910A、910Bは、平面形状がプレス前の縦横のサイズ(図14中の点線で示される形状)よりも広がっており、厚みも頚部950A、950Bと比べて薄くなっている。
したがって、スポットリフロー法を利用して半田付け工程を実施した場合、プレス前と比べてプレス後の搭載部910はより薄くより広がった形状を有する。このため、単位面積当たりの搭載部910の加熱効率は大幅に向上する。それゆえ、搭載部910をプレスしない従来のアンテナコイル部品の製造方法と比べて、第二の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法では、搭載部910近傍を長時間に渡って強く加熱しなくてもチップコンデンサ550等の電子部品を搭載部910に半田付けすることができる。よって、搭載部910と電子部品との半田接続部周辺に位置する部材への熱ダメージを従来よりも抑制することが容易になる。たとえば、頚部950と固定部960との境界近傍のベース530を構成する樹脂材料の劣化・変形を抑制したり、熱衝撃による電子部品の破損・性能劣化を抑制することができる。これに加えて、ベース530を構成する樹脂材料として、耐熱性に劣るものの一般的に安価である樹脂材料として非耐熱性樹脂を採用することも極めて容易になる。
なお、上述した効果の確保と、搭載部910の強度の確保とをバランス良く両立させる観点からは、アンテナコイル部品510として完成した状態の搭載部910の厚みTmは、頚部950の厚みTnの約1/3〜約2/3の範囲内であることが好ましい。たとえば、厚みTnが0.64mmであれば、厚みTmは0.21mm〜0.43mmとすることができる。
また、チップコンデンサ550等の電子部品の搭載安定性、特に電子部品と搭載部910との間の半田フィレットの面積を考慮した場合、アンテナコイル部品510として完成した状態において、頚部950の幅Wnに対する搭載部910の幅Wmの比(Wm/Wn)は、1.5〜4.5の範囲内であることが好ましい。
ここで搭載部910の幅Wmとは、固定部960から搭載部910へと向かう方向に対して略直交し且つ搭載部910の表裏面と略並行を成す方向における最大長さを意味し、言い換えれば、頚部950の幅方向と平行な方向を意味する。
なお、第二の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法においては、上述した搭載部プレス工程を実施する代わりに、アンテナコイル部品510の製造に利用する金属部材800として、搭載部910の厚みが頚部950の厚みより薄くなるように予め加工された金属部材を使用してもよい。また、半田付け工程は、スポットリフロー法などの公知の局所加熱方式の半田付け方法が適宜利用できる。
なお、以上に説明した点を除けば、第二の本実施形態のアンテナコイル部品510の製造は、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510の製造と同様に行うことができる。また、第二の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法では、後述する第三の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法、第四の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法あるいはその他公知のアンテナコイル部品を併用してもよい。
また、第二の本実施形態のアンテナコイル部品510の構造は、アンテナコイル部品として完成した状態において、搭載部910の厚みが頚部950よりも薄いのであれば、その他の部分の構造は、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510と同一でもよく、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510と異なっていてもよく、また、公知のアンテナコイル部品の構造も適宜採用できる。
すなわち、第二の本実施形態のアンテナコイル部品510は、絶縁材料から形成された筒状のボビン520と、ボビン520の外周側に巻回された巻線560と、ボビン520の少なくとも一端側に設けられ、かつ、樹脂材料から形成されたベース530と、ベース530中に固定される固定部960、ベース530から離間した位置に設けられた搭載部910および固定部960と搭載部910とを接続する頚部950とを含み、かつ、導電性を有する金属端子540Dと、を少なくとも備えるものであればよい。ここで、搭載部910の厚みTmは、頚部の厚みTnよりも薄い構成を有する。また、第二の本実施形態のアンテナ装置700は、第二の本実施形態のアンテナコイル部品510と、ボビン520内に配置された磁性体コア710と、金属端子540Dの搭載部910に半田付けされた電子部品(たとえば、チップコンデンサ550)と、アンテナコイル部品を収納するケース730と、を少なくとも備える。
(第三実施形態)
次に、第三の本実施形態について説明する。まず、アンテナコイル部品の製造に際しては、金属端子の搭載部に、チップコンデンサ等の電子部品が半田付けされる。この半田付けは、一般的に、アンテナコイル部品全体を加熱するリフロー炉が用いられる。このため、アンテナコイル部品を構成する樹脂材料としては、リフロー炉中での加熱によっても寸法変化や劣化が生じ難い耐熱性樹脂を用いる必要がある。しかし、耐熱性樹脂は一般的に非耐熱性樹脂と比べて高価であるため、結果的にアンテナコイル部品の製造コストが高くなる。
第三の本実施形態は、リフロー炉を用いずに電子部品と金属端子の搭載部とを半田付けするプロセスを利用したアンテナコイル部品の製造方法を提供することを課題とする。
このような課題を解決するために、第三の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法は、固定部と、固定部に直接接続または頚部を介して間接的に接続された板状の搭載部とを少なくとも含む金属部材を、金型内に配置した後、金型内に樹脂材料を射出することにより、樹脂材料からなるベースを少なくとも成形すると同時に、ベース中に固定部を埋設する射出成形工程と、搭載部に対して電子部品を半田付けする半田付け工程と、を少なくとも経てアンテナコイル部品を製造し、半田付け工程が、下記第一の製造プロセスまたは第二の製造プロセスから選択されるいずれかの製造プロセスを含むことを特徴とする。
<第一の製造プロセス>
(1)搭載部の一方の面を加熱する搭載部加熱工程と、
(2)搭載部の他方の面に半田を供給する半田供給工程と、
(3)半田が供給された他方の面に電子部品を配置する電子部品配置工程と、
をこの順に実施する製造プロセス。
<第二の製造プロセス>
(1)搭載部の一方の面に半田を供給する半田供給工程と、
(2)半田が供給された一方の面に電子部品を配置する電子部品配置工程と、
(3)搭載部の他方の面を加熱する搭載部加熱工程と、
をこの順に実施する製造プロセス。
まず、第三の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法では、たとえば、図16に例示する金属部材1000を用いて各工程を実施することができる、ここで、図16に示す金属部材1000は、U字を左側に倒した形状の外枠1010およびこの外枠1010内に位置するように外枠1010の両端近傍に接続された金属端子540E(540)からなる板状の部材である。ここで、金属端子540Eは、搭載部1110B(1110)と巻線接続部1112Aとの接続部近傍の構造が異なる点を除けば、図7に示す金属端子540Cと同様の構造を有する部材である。また、外枠1010の形状、外枠1010と金属端子540Eとの接続形態、外枠1010と金属端子540Eとの境界線については、図16に示す金属部材1000は図12に示す金属部材800と同様の構造を有する。なお、図16中に示す搭載部1110A(1110)、搭載部1110B、巻線接続部1112A、巻線接続部1112B、第四の幅広部1114D、連結部1116D、連結部1116Eは、図7中に示す搭載部610A、搭載部610B、巻線接続部612A、巻線接続部612B、第四の幅広部614D、連結部616D、連結部616Eに各々対応する部材である。
ここで、図16に示す金属端子540Eは、図7に示す金属端子540Cと比べて、巻線接続部1112Aが搭載部1110Bの下辺側に接続されている点でのみ異なっている。
射出成形工程では、この金属部材1000を、金型内に配置した後、金型内に樹脂材料を射出することにより、樹脂材料からなるベースを少なくとも成形すると同時に、ベース中に金属端子540Eの一部(固定部)を埋設する。この射出成形に際しては、たとえば図9に示すようなベース530を形成することができる。
図17は、図16に示す金属端子540Eが射出成形によりベース530に固定された場合において、金属端子540Eの搭載部1110近傍における金属端子540Eとベース530との配置関係を説明する拡大上面図であり、具体的には、開口部532E近傍における金属端子540Eの配置位置を拡大して説明する図である。但し、図17では、さらに、連結部1116Eがその両端で切断されることにより除去された後の状態について示してある。また、図18は、図17中の符号D−D間の断面構造の一例を示す模式断面図である。なお、説明の都合上、図18では、ベース530に対して金属端子540Eの厚みをより厚く描いてある。
図17および図18に示すように開口部532E内には、搭載部1110A、1110B、連結部1116Dの一部(頚部1150A(1150))および巻線接続部1112Bの一部(頚部1150B(1150))が露出している。また、頚部1150A以外の連結部1116Dはベース530を構成する樹脂材料中に埋設して固定された部分(固定部1160A(1160))となっている。さらに、開口部532E近傍の巻線接続部1112Aのうち、頚部1150B以外の巻線接続部1112Eもベース530を構成する樹脂材料中に埋設して固定された部分(固定部1160B(1160))となっている。
すなわち、金属部材1000を構成する金属端子540Eは、アンテナコイル部品510を製造した際に、固定部1160となる部分と、頚部1150と、頚部1150を介して間接的に接続された板状の搭載部1110となる部分と、を含んでいる。なお、金属部材1000は、頚部950を省いて、固定部1160に搭載部1110が直接接続された構造を有するものであってもよい。
次に、搭載部1110に対してチップコンデンサ550等の電子部品を半田付けする半田付け工程を行う。この半田付け工程は、以下に説明する第一の製造プロセスまたは第二
の製造プロセスのいずれかの製造プロセスで実施できる。なお、以下に説明する図19および図20は、図18に示す断面部分と同じ箇所について示してある。
<第一の製造プロセス>
第一の製造プロセスでは、まず、搭載部1110A、1110Bの一方の面(裏面1110Abt、1110Bbt)を加熱する搭載部加熱工程を実施する。搭載部加熱工程では、たとえば、図19(A)に示すように、局所加熱源として先端部の頂面1200Tが平坦な半田ごて1200を裏面1110Abt、1110Bbtに直接接触させることで、搭載部1110A、1110Bを直接加熱する。半田ごて1200の先端部の温度は、使用する半田の融点等に応じて適宜選択されるが、一般的には、220℃以上に設定することが好ましい。但し、ベース530を構成する樹脂材料の劣化・変形等の熱ダメージを抑制するためには、半田ごて1200の先端部の温度は必要以上に高くならないように制御することが望ましい。したがって、半田ごて1200の先端部の温度は220℃〜230℃程度の範囲内に制御することが好ましい。このような半田ごて1200の先端部の温度設定は、特に、ベース530を構成する樹脂材料として非耐熱性樹脂を用いる場合に好適である。また、搭載部加熱工程を実施する際に使用する半田ごて1200は、開口部532内に半田ごて1200を配置した際にその先端部と、開口部532の内壁面との間に一定の隙間が確保できるものを利用する。
次に、図19(B)に示すように、搭載部1110A、1110Bの他方の面(表面1110Atp、1110Btp)に半田1300を供給する半田供給工程を実施する。この際、搭載部1110A、1110Bは十分に加熱されているため、表面1110Atp、1110Btp上に供給された半田は溶融状態となる。なお、半田1300の供給方法は特に限定されず、たとえば、表面1110Atp、1110Btpに半田ディスペンサーなどによりクリーム半田を塗布する方法や、表面1110Atp、1110Btpに糸半田を押し付けながら糸半田を溶かすことで表面1110Atp、1110Btp上に半田1300を供給する方法などが挙げられる。
そして、図19(C)に示すように、半田1300が供給された他方の面(表面1110Atp、1110Btp)に、搭載部1110Aと搭載部1110Bとを架橋するようにチップコンデンサ550等の電子部品を配置する電子部品配置工程を実施する。
なお、搭載部加熱工程は、半田供給工程の実施前から電子部品配置工程が完了し終えた後までの期間の任意のタイミングで終了させることができる。しかしながら、通常は、図19(C)に示すように、チップコンデンサ550等の電子部品を搭載部1110A、1110Bに配置した後に半田ごて1200を裏面1110Abt、1110Bbtから離間させるなどして、電子部品配置工程の完了と略同時期に搭載部加熱工程を終了させることが望ましい。この場合、より低い加熱温度で半田付けが実施できる。
そして、電子部品配置工程を終えた後は、溶融状態となっていた半田1300が凝固することによって半田接続部が形成され、チップコンデンサ550等の電子部品と、搭載部1110A、1110Bとが半田付けされる。
<第二の製造プロセス>
一方、第二の製造プロセスでは、まず、図20(A)に示すように、搭載部1110A、1110Bの一方の面(表面1110Atp、1110Btp)に半田1300を供給する半田供給工程を実施する。なお、半田1300の供給方法は特に限定されず、たとえば、表面1110Atp、1110Btpに半田ディスペンサーなどによりクリーム半田を塗布する方法が採用できる。次に、図20(B)に示すように、非溶融状態の半田1300が供給された一方の面(表面1110Atp、1110Btp)に電子部品を配置する電子部品配置工程を実施する。そして、搭載部1110A、1110Bの他方の面(裏面1110Abt、1110Bbt)を加熱する搭載部加熱工程を実施する。ここで、搭載部加熱工程は、図20(C)に例示するように、局所加熱源として先端部の頂面1200Tが平坦な半田ごて1200を裏面1110Abt、1110Bbtに直接接触させることにより実施される。これにより、搭載部1110A、1110Bが半田ごて1200により直接加熱される。そして、加熱により非溶融状態の半田1300が十分に溶融したら、半田ごて1200を裏面1110Abt、1110Bbtから離間させるなどして搭載部加熱工程を終了する。これにより溶融状態となっていた半田1300が凝固することによって半田接続部が形成され、チップコンデンサ550等の電子部品と、搭載部1110A、1110Bとが半田付けされる。
なお、第二の製造プロセスは、第一の製造プロセスと比べて搭載部加熱工程、半田供給工程および電子部品配置工程が異なる点を除いて、その他は第一の製造プロセスと同様に実施できる。また、第二の製造プロセスは、局所加熱源として半田ごて1200を用い、かつ、搭載部1110A、1110Bの厚みが薄い場合に特に有効である。この場合、5秒以内という極めて短い時間内で半田付け工程を完了させることが可能である。なお、搭載部1110A、1110Bの厚みが薄い場合としては、たとえば、図15に例示する金属端子540Dのように、頚部950の厚みTnに対して搭載部910の厚みTmを薄くした場合、あるいは、金属端子540E全体の厚みが薄い場合などが挙げられる。搭載部1110A、1110Bの厚みのみまたは金属端子540E全体の厚みを薄くする場合、その厚みは、たとえば、0.21mm〜0.43mmの範囲が採用できる。
なお、第一の製造プロセスおよび第二の製造プロセスにおける搭載部加熱工程では、図19および図20に例示した局所加熱源である半田ごて1200の代わりに、スポットリフロー法で用いられる各種の局所加熱源;たとえば、熱風をノズルから噴射して半田する熱風ノズル、ハロゲンランプ等の光源の光を集光させて照射する集光光源、レーザー光を照射するレーザー光源などの間接加熱方式の局所加熱源も利用できる。しかしながら、これらの間接加熱方式の局所加熱源は、搭載部1110から離間した位置に配置されるため、搭載部1110を間接的にしか加熱できない。このため、搭載部加熱工程の実施に際して、直接加熱方式の局所加熱源である半田ごて1200と比べると、開口部532の周辺部分のベース530を構成する樹脂材料に熱ダメージを与え易くなる。また、半田ごて1200は、加熱効率が高く、設備も安価である。したがって、搭載部加熱工程では、半田ごて1200を使用することが特に好ましい。
一方、使用する電子部品によっては、搭載部加熱工程における加熱によって、搭載部1110および半田1300を介して電子部品が熱ダメージを蒙る可能性がある。たとえば、電子部品がチップコンデンサ550、特に積層セラミックスコンデンサである場合、急激な温度変化(たとえば、昇温速度が350℃/秒以上の温度変化)によりクラックが発生し易くなる。たとえば、3216またはこれ以下のサイズの積層セラミックスコンデンサでは、加熱時の昇温速度および冷却時の冷却速度として一般的に150℃/秒以下が推奨されており、3225またはこれ以上のサイズの積層セラミックスコンデンサでは、昇温速度および冷却速度として一般的に130℃/秒以下が推奨されている。したがって、搭載部加熱工程における加熱によって電子部品が熱ダメージを蒙る可能性がある場合、第一の製造プロセスおよび第二の製造プロセスにおいて、電子部品配置工程を実施する前に、電子部品を予熱する電子部品予熱工程を実施することが好ましい。
電子部品予熱工程における加熱スケジュールは特に限定されないが、一般的に推奨される昇温速度以下の昇温速度にて、常温を超え、搭載部加熱工程における加熱温度未満の範囲内で設定される目標加熱温度にまで昇温させればよい。電子部品予熱工程における目標加熱温度は、たとえば、140℃±40℃の範囲内で選択することができる。このように電子部品を予め予熱しておけば、搭載部加熱工程において、電子部品の昇温速度を推奨昇温速度以下の昇温速度に制御することが極めて容易になる。
図21は、電子部品として積層セラミックスコンデンサタイプのチップコンデンサ550を用いた場合の加熱処理スケジュールの一例について示すグラフである。ここで、図21中、横軸が時間(秒)を表し、縦軸が温度(℃)を表し、区間1Hが電子部品予熱工程の実施中を意味し、区間2Hが搭載部加熱工程の実施中を意味し、区間Cが搭載部加熱工程を終了した後の冷却工程を意味する。図21に示す例では、まず、電子部品予熱工程(区間1H)において、室温RT(約25℃)から目標制御温度T(1H)まで一定の昇温速度ΔT(1H)で昇温し、目標制御温度T(1H)に達したら、この温度を暫く維持する。続いて、搭載部加熱工程(区間2H)において、目標制御温度T(1H)から目標制御温度T(2H)まで一定の昇温速度ΔT(2H)で昇温し、目標制御温度T(2H)に達したら、この温度を暫く維持する。その後、冷却工程にて一定の降温速度ΔT(C)にて室温RTまで降温する。この場合、たとえば、ΔT(1H)およびΔT(2H)は90〜130℃/秒、ΔT(C)は、10℃/秒〜130℃/秒、T(1H)は140±40℃、T(2H)は、240±20℃の範囲で適宜選択できる。また、冷却工程(C)は、自然放冷で実施してもよい。なお、昇温速度をより緩やかにするために、たとえば、目標制御温度T1を2水準設けてもよい。この場合、図21に示すように2段階で目標制御温度T2まで昇温するのではなく、3段階で目標制御温度T2まで昇温する。
また、電子部品予熱工程における加熱方法としては、図21に例示したような所望の加熱スケジュールが実現できるのであれば特に限定されない。たとえば、一方向に一定速度で移動するベルトコンベア上に電子部品を配置した状態で、ベルトコンベアの上方に配置した加熱源により時間をかけて加熱する方法が挙げられる。ここで、加熱源としては、たとえば、ハロゲンヒーターや、熱風ヒーターなどが利用できる。
なお、以上に詳述した工程以外のその他の工程については、従来公知の工程を必要に応じて適宜組み合わせて実施することができる。これによりアンテナコイル部品510を製造することができる。なお、第三の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法により製造されるアンテナコイル部品510の構造は、第三の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法が適用可能な構造、すなわち、搭載部1110が開口部532E内に露出している構造であれば特に限定されない。よって、搭載部1110が開口部532E内に露出している構造を有するアンテナコイル部品であれば、第三の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法は、第一の本実施形態のアンテナコイル部品510、第二の本実施形態アンテナコイル部品510あるいは従来公知のアンテナコイル部品の製造のいずれにも適用できる。
(第四実施形態)
次に、第四の本実施形態について説明する。まず、アンテナコイル部品の作製に際して、樹脂材料から形成されたベースに固定された金属端子の搭載部に対して、チップコンデンサ等の電子部品を半田付けする場合、リフロー炉により製造途中段階のアンテナコイル部品全体を加熱する全体加熱法以外にも、スポットリフロー法等の局所加熱法を利用することもできる。局所加熱法を利用して半田付けを行う場合には、搭載部を局所加熱する。しかし、半田付けに際して、搭載部を局所加熱すると、チップコンデンサ等の電子部品が熱ダメージを蒙る可能性がある。たとえば、チップコンデンサ、特に積層セラミックスコンデンサでは、クラックが発生し易くなる。
第四の本実施形態はこのような事情に鑑みてなされたものであり、アンテナコイル部品を製造するに際して、局所加熱法により金属端子に対して電子部品を半田付けする際に、電子部品への熱ダメージをより一層抑制できるアンテナコイル部品の製造方法を提供することを課題とする。
このような課題を解決するために、第四の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法は、固定部と、固定部に直接または間接的に接続されると共に、腕部が接続された板状の搭載部とを少なくとも含む金属部材を、金型内に配置した後、金型内に樹脂材料を射出することにより、樹脂材料からなるベースを少なくとも成形すると同時に、ベース中に固定部を埋設する射出成形工程と、搭載部に対して電子部品を半田付けする半田付け工程と、を少なくとも経てアンテナコイル部品を製造し、半田付け工程が、腕部の少なくとも一部を局所的に加熱することにより実施されることを特徴とする。
図22は、第四の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法の一例を示す拡大上面図であり、具体的には、金属端子の固定部がベース中に埋設された後の搭載部近傍の構造の一例を示す拡大上面図である。図22は、射出成形工程によって図16に示す金属端子540Eの一部をベース530中に埋め込むように固定した後、連結部1116Eを切断除去した後の状態(図17)と同一の構造を示している。ここで、図22中、金属端子540F(540)、搭載部1410A(1410)、搭載部1410B(1410)、連結部1416D、巻線接続部1412A、頚部1450A(1450)、頚部1450B(1450)、固定部1460A(1460)、固定部1460B(1460)は、形状および構造において図17中の金属端子540E、搭載部1110A、搭載部1110B、連結部1116D、巻線接続部1112A、頚部1150A、頚部1150B、固定部1160A、固定部1160Bと各々同一の部材である。
図22に示す例では、搭載部1410Aは、頚部1450Aを介して間接的に固定部1460Aに接続され、搭載部1410Bは、頚部1450Bを介して間接的に固定部1460Bに接続されている。ここで、図22に示す例では、半田付け工程に際して、たとえば、半田を搭載部1410A、1410Bに供給した後に、搭載部1410Aと搭載部1410Bとを架橋するようにチップコンデンサ550等の電子部品を配置する。そして、次に、頚部1450Aおよび頚部1450Bを各々局所加熱する。ここで、図22中の×印で示される位置が局所加熱される場所の中心点である。この場合、頚部1450Aを介して搭載部1410Aが加熱され、頚部1450Bを介して搭載部1410Bが加熱されるため、チップコンデンサ550等の電子部品が、搭載部1410A、1410Bに対して半田付けされる。すなわち、図22に示す例では、頚部1450を、局所加熱の対象となる腕部として活用する。言い換えれば、頚部1450は腕部の機能も兼ねる。
図22に例示したように、第四の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法では、搭載部1410を局所加熱するのではなく、搭載部1410に接続された腕部(図22に示す例では頚部1450)を局所加熱するため、搭載部1410を局所加熱する場合と比べて電子部品の昇温速度をより緩やかにしたり、および/または、電子部品の最大加熱温度をより小さくすることが容易になる。このため電子部品の熱ダメージを抑制できる。なお、腕部は、射出成形後において、ベース530の開口部532E内において、搭載部1410と共に露出すると共に少なくとも搭載部1410に接続された部材であれば、その平面形状・配置位置は特に限定されるものでは無い。しかしながら、腕部の平面形状は、図22に例示した頚部1450のように、基本的には、搭載部1410の縦横の長さよりも幅の狭い帯状の部材であることが好ましい。
なお、図22に示す例では、先に局所加熱を行なってから、半田1300および電子部品を配置することで半田付けしてもよい。なお、射出成形工程および半田付け工程以外のその他の工程については、特に制限されず、公知の工程あるいは既に説明した各種の工程が適宜実施できる。これにより第一の本実施形態のアンテナコイル部品510、第二の本実施形態のアンテナコイル部品510あるいは公知のアンテナコイル部品を得ることができる。また、半田付け工程を実施する場合、第二の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法と組み合わせて実施してもよく、第三の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法において、半田ごて1200を搭載部1410ではなく腕部に接触させて加熱してもよい。なお、これらの点は後述する図23〜図25に示す例においても同様である。
なお、図22に示す例では、腕部として機能する頚部1450は、固定部1460と隣接している上に、頚部1450の長さも短い。このため、頚部1450を局所加熱したとしても、頚部1450から固定部1460までの伝熱距離が短いため、周囲の部分も付随的に加熱され易い。それゆえ、固定部1460近傍のベース530を構成する樹脂材料が熱ダメージを蒙り易くなる上に、樹脂材料として、非耐熱性樹脂が利用し難しくなる場合がある。したがって、ベース530を構成する樹脂材料として非耐熱性樹脂の利用を容易とするためには、半田付け工程の実施に際して、固定部1460からの伝熱距離が出来る限り遠い位置にある腕部を加熱することが好ましい。
図23は、第四の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法の他の例を示す拡大上面図であり、具体的には、金属端子の固定部がベース中に埋設された後の搭載部近傍の構造の一例を示す拡大上面図である。図23に示す例では、図22に示す例に対して開口部532Eが右側に拡張されている。また、図23に示す例で用いている金属端子540G(540)は、搭載部1410Aの右辺側に末端が他の部材に接続・接触していない自由端となっている腕部1500Aが接続され、搭載部1410Bの右辺側に末端が他の部材に接続・接触していない自由端となっている腕部1500Bが接続されている点を除けば、図22に示す金属端子540Fと同一の構造を有する。なお、腕部1500A、1500Bの形状は、X方向と平行な方向に伸びる帯状形状である。
図23に示す例においては、半田付け工程に際して、腕部1500A、1500Bの末端部を局所加熱する。ここで、図23中の×印で示される位置が局所加熱される場所の中心点である。腕部1500Aから固定部1460Aの間には、搭載部1410Aおよび頚部1450Aが介在している。すなわち、図22に示す例と比べて図23に示す例では、腕部から1500Aから固定部1460Aまでの伝熱距離は非常に長くなっている。これは腕部1500Bについても同様である。
したがって、図23に示す例では、図22に示す例と比較してベース530への伝熱量を大幅に抑制できるため、ベース530を構成する樹脂材料の熱ダメージを抑制できる。このため、ベース530を構成する樹脂材料として非耐熱性樹脂を採用することもできる。しかしながら、図23に示す例では、腕部1500Aの末端部および腕部1500Bの末端部の2箇所を局所加熱する必要がある。この場合、頂面1200Tの形状を矩形状とした半田ごて1200を、頂面1200Tの長辺がY方向と平行を成すように配置した状態で腕部1500Aの末端部および腕部1500Bの末端部に接触させればよい。これにより、腕部1500Aの末端部および腕部1500Bの末端部の2箇所を同時に局所加熱することができる。しかし、使用する加熱源が熱風吐出ノズル、レーザー光源あるいはハロゲンランプの光を集光させる集光光源等である場合には、局所加熱を2回に分けて実施するか、あるいは、2つの加熱源を準備する必要がある。それゆえ、このような局所加熱プロセスの煩雑化あるいは加熱設備の肥大化を避けるためには、腕部1500Aの末端部と、腕部1500Bの末端部とが連結されていることが好ましい。
図24は、第四の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法の他の例を示す拡大上面図であり、具体的には、金属端子の固定部がベース中に埋設された後の搭載部近傍の構造の一例を示す拡大上面図である。図24に示す例は、開口部532内に配置される金属端子540H(540)の形状が図23に示す金属端子540Gと若干異なる点を除けば、図23に示す例と同一である。ここで、図24に示す金属端子540Hは、腕部1500A、1500Bの代わりに腕部1500Aの末端部と腕部1500Bの末端部とを接続した構造を有する連結部1416Fが設けられている点を除けば、図23に示す金属端子540Fと同一の構造を有する。なお、連結部1416Fは、U字を左側に倒した形状を有している。
図24に示す例では、連結部1416Fが腕部としても機能し、半田付け工程に際しては、連結部1416Fの任意の位置を局所加熱することができる。しかしながら、連結部1416Fを局所加熱する場合は、図24中の×印で示した位置(中間点)の近傍、すなわち搭載部1410Aまでの伝熱距離と搭載部1410Bまでの伝熱距離とが略等しくなる位置の近傍、を局所加熱することが特に好ましい。連結部1416Fの中間点近傍を局所加熱した場合、搭載部1410Aおよび搭載部1410Bを均等に加熱することがより容易になる。したがって、搭載部1410A側と搭載部1410B側とで、半田付けの状態に偏りが生じるのを防ぐこともより容易になる。また、半田付け工程が終了した後は、搭載部1410Aと、チップコンデンサ550等の電子部品と、搭載部1410Bと、からなる電気経路の迂回路となる連結部1416Fは切断される。
なお、腕部としても機能する連結部1416Fは、搭載部1410A、1410Bの平面方向において、搭載部1410Aと搭載部1410Bとの間の領域SP以外の領域に設けられることが特に好ましい。領域SP内に腕部としても機能する連結部1416Fを設けた場合には、連結部1416Fが配置された位置と、チップコンデンサ550等の電子部品を配置する位置とが重複する可能性が高くなるためである。また、連結部1416Fが配置された位置と、チップコンデンサ550等の電子部品を配置する位置とが重複する場合には、連結部1416Fを局所加熱した後に、連結部1416Fを切断除去してから電子部品と搭載部1410A、1410Bとを半田付けしなければならない。この場合、半田付け工程が極めて複雑で煩雑なものとなる。
図25は、第四の本実施形態のアンテナコイル部品の製造方法の他の例を示す拡大上面図であり、具体的には、金属端子の固定部がベース中に埋設された後の搭載部近傍の構造の一例を示す拡大上面図である。図25に示す例では、金属端子540I(540)の構造が図24に示す金属端子540Hと若干異なる点を除けば、図24に示す例と同一である。ここで、図25に示す金属端子540Iは、搭載部1410Aの上辺左側に連結部1416Dが接続され、搭載部1410Bの下辺左側に巻線接続部1412Aが接続され、搭載部1410A、1410Bの左辺側にも、搭載部1410Aと搭載部1410Bとを接続する連結部1416Gがさらに設けられた点を除けば、図24に示す金属端子540Hと同一の構造が示されている。なお、連結部1416Gは、U字を右側に倒した形状を有している。また、図25中の2つの×印は、各々、連結部1416F、1416Gの中間点を意味する。
図25に示す例では、連結部1416Fおよび連結部1416Gから選択されるいずれか一方または双方を腕部として利用することができる。また、この場合の局所加熱の位置は任意に選択できるが、図24に示す例と同様に、連結部1416Fの中間点近傍および/または連結部1416Fの中間点近傍を選択することが好ましい。この場合、図24に示す例と比べて、搭載部1410Aおよび搭載部1410Bをより均等に加熱することができる。
なお、連結部1416Gも、連結部1416Fと同様の理由から、領域SP以外の領域に配置されることが特に好ましい。また、搭載部1410Aおよび搭載部1410Bをより均等に加熱する観点からは、連結部1416Gと連結部1416Fとは、図25に例示したように、Y方向と平行を成し、搭載部1410Aおよび搭載部1410BをY方向に2等分する中心線Lに対して、一方の側と他方の側とに配置されることが好ましく、特に、中心線Lに対して、略線対称を成す位置に配置されることが好ましい。また、半田付け工程を終えた後は、連結部1416Gおよび連結部1416Fは共に切断される。
なお、図24に示す例では、完成したアンテナコイル部品510の金属端子540Hに、連結部1416Fを切断した切断痕が残り、図25に示す例では、完成したアンテナコイル部品510の金属端子540Iに、連結部1416Fおよび連結部1416Gを切断した切断痕が残ることになる。