JP2015212577A - 潤滑システムが設けられた遊星トランスミッション - Google Patents

Abstract

【課題】潤滑システムが設けられた遊星トランスミッションを提供する。【解決手段】遊星トランスミッションは、トランスミッション軸の周りに回転する太陽ギアと、太陽ギアと噛合った複数の遊星ホイールと、遊星ホイールを支持し、且つトランスミッション軸の周りに回転するキャリアと、を備えている。遊星トランスミッションは、固定位置に配置された少なくとも１つのノズルが設けられ、キャリアに対して固定された回収チャネルを備え、ノズルから噴出された潤滑油の噴流を受容するように構成され、且つキャリアに固定されたケーシングを備えた少なくとも１つのポンプを備えた潤滑システムを備えている。ポンプは、キャリアの回転に応じてトランスミッション手段を利用して作動され、潤滑油を回収チャネルから潤滑を必要とするキャリアの領域へ圧送する。【選択図】図１

Description

本発明は、潤滑システムが設けられた遊星トランスミッションに関する。

公知の通り、遊星トランスミッションは太陽ギアと、リングギアと、複数の歯付き遊星ホイールと、を具備し、遊星ホイールは太陽ギアとリングギアとの間に介在し、キャリアによって支持されている。そのようなタイプのトランスミッションは、異なった速度で回転した同軸のシャフト間の動作を伝達することが可能であり、そのような機能を提供するために非常に効果的であり、一方で軽量且つ小型を維持している。遊星トランスミッションは、概して例えばターボファンエンジン内のファンに動作を伝達する航空エンジンにも使用されている。

大部分の機器において、キャリアは固定タイプであり、可撓性要素を利用してエンジンの固定構造に連結されている。これらの状態の下では、キャリアによって支持された部品（遊星ホイールの歯車、可能なベアリング等）は、特に困難性無くエンジン構造およびキャリアに対して固定されたダクトを介して潤滑されている。

そうでなければ、所定の機器は、例えばキャリアが回転（駆動もしくは被駆動）シャフトに接続された場合、または太陽ギアとリングギアとの間の同じ回転方向を維持する必要がある場合に、回転キャリアを採用している。これらの場合においては、固定部（典型的にオイルタンク）から回転部、すなわちキャリアおよびキャリアによって支持された部品への効果的且つ信頼性の高い方式において潤滑油を移送する場合に、問題が発生する。

現段階で使用されている解決策は、キャリアに対して固定されたスリーブの周りの環状凹部に、潤滑油を圧力下で移送する１つ以上のポンプを含んでいる。潤滑油はスリーブの通路に径方向に進入し、ここから潤滑を必要とする部品に搬送される。環状凹部内の油圧は、固定部とスリーブとの間のとりわけ小さい径方向バックラッシュを維持するためのシール構造によって保証されている。そのようなバックラッシュの量は設計段階において正確に決定されており、潤滑油の移送のための体積効率を最大化している。

前述の既知のタイプの潤滑油移送システムは、前述の径方向バックラッシュを形成した部品の機械加工および組み付けの場合に必要とされる高い精度のために、満足のいくものではない。さらに、組み立て作業の際に、スリーブが軸方向に挿入されたときに、シールを損傷する無視できない危険性があり、これによって正確なシールが損なわれる。

さらに、前述の既知のタイプの潤滑油移送システムは、摩耗に関して補償すること、および（例えば、始動状態と稼働状態との間の温度差による）固定部と回転部との間の相対位置の必然的な変化が許容されていない。さらに、自動車のための現行の遊星トランスミッションにおいては、潤滑に必要な圧力および流速の数値、ならびにキャリアの周速の数値は、比較的高く、したがって特に部品が摩耗した場合に、所望のシールを損なうかもしれない。

本発明の目的は、潤滑システムが設けられた遊星トランスミッションを提供することであり、このトランスミッションは、前述の問題が単純な且つコスト効果の高い様式で解決されることを可能にしている。

本発明によれば、潤滑システムが備わった遊星トランスミッションは、請求項１に定義されたように提供される。

本発明は、その非限定的な実施形態を示した添付図を参照して、ここに記載される。

本発明による潤滑システムが設けられた遊星トランスミッションの好適な実施形態の縦断面を示した縦断図である。 図１の遊星トランスミッションの潤滑システムを示した斜視図であり、明確化のために部品が排除されている。 図１のＩＩＩ−ＩＩＩに沿った断面を示した断面図である。

図１を参照すると、参照符号１は、特に航空応用のための遊星トランスミッションを示しており、このトランスミッションは、軸３の周りに回転し、且つ角度をつけて固定される態様においてシャフト５に接続された太陽ギア２を具備している。

トランスミッション１は複数の遊星ホイール１２も具備し、それらのホイールは太陽ギア２と噛合って、個々の軸１４の周りに回転する（図１においては、１つの遊星ホイールのみが示されている）。軸１４は軸３に対して平行であり且つ偏心しており、特に軸３の周りに互いに等角度だけ離間されている。各軸１４において、トランスミッション１は、好適に同軸の一対の遊星ホイール１２を備えている。

遊星ホイール１２はリングギア１５と径方向外向きに噛合っており、リングギア１５は角度をつけて固定される態様においてトランスミッションシャフト１６に接続され、シャフト１６は軸３に沿ってシャフト５と同軸であり、且つシャフト５に対して対向した軸側に配置されている。遊星ホイール１２は、詳細には記載されていない態様においてキャリア１７によって支持されており、キャリア１７は軸３の周りに回転し、且つ角度をつけて固定される態様においてトランスミッション部材１８に好適に接続されている。トランスミッション部材１８はシャフト５および１６と同軸であり、図示された特別な実施例においては、軸方向に中空のベル形状体によって形成されており、回転ベアリング２０を利用してシャフト１６の一部に連結されている。

キャリア１７は、太陽ギア２に同軸の環状部２１を具備した構造によって形成され、環状部２１は略プレート状であり、遊星ホイール１２およびリングギア１５と軸方向において面しており、シャフト５および太陽ギア２から離間されている。特に、環状部２１は、リングギア１５の周りに配置され且つベル形状体１８の対応したフランジに固定された外側フランジ２２を備えている。

キャリア１７は、複数のピン２３を具備している（図１においては、１つのピンのみが示されている）。ピン２３は、環状部２１から軸１４に沿って延び、好適に環状部２１と一体に形成されており、回転ベアリング２５を利用して遊星ホイール１２を支持している。

キャリア１７は、複数の中空部２６も具備している（図１においては、１つのピンのみが示されている）。中空部２６は、軸１４に平行な方向において環状部２１から突出するように、且つ軸３の周りに遊星ホイール１２の軸と交互となる角度位置において延びている。中空部２６も、環状部２１とともに単一部品として好適に形成されている。

管状部２１に対して反対の軸側において、キャリア１７は、ピン２３および中空部２６の軸端に固定された環状プレート２８を具備している。

中空部２６はプレート２１に個々の開口部２９を備え、これらの開口部には潤滑システム３１（図２）に属する個々のポンプ３０が係合している。このシステムは、潤滑油を固定構造３２（部分的に図示されている）から、潤滑を必要とするキャリア１７の領域（ベアリング、歯車間のカップリング等）へ移送している。

固定構造３２はシャフト５の周りに配置され、プレート２１と軸方向に面し、キャリア１７と同軸のリングギア３３と、ダクト３６を利用してタンク（図示略）から潤滑油をくみ上げるポンプ（図示略）と連通した少なくとも１つのノズル３５と、を具備している。図示された特定の例においては、径方向に対向した２つのノズル３５が含まれている。ノズル３５は、潤滑油を特に軸３に対して略接線方向である方向３７（図２）に沿ってスプレーする個々の出口を形成している。

潤滑システム３１は、環状部２１の内側環状端縁に配置され、キャリア１７に固定され、且つノズル３５によってスプレーされた潤滑油を受容するように構成された回収チャネル４０を形成した回転コレクタ３９を具備している。特に、チャネル４０は、軸３と径方向に面した連続環状開口部を備えた環状チャネルである。

図示された特定の例においては、回転コレクタ３９はキャリア１７に追加されたチャネルであり、略Ｕ字断面を備えている。それとは異なり、チャネル４０はキャリア１７の一部によって少なくとも部分的に形成され得る。

その回転により、回転コレクタ３９は回転部内に受容される潤滑油もくみ上げ、それによって回転部は、回転コレクタ３９自身の周速に略等しい周速に到達する。したがって、潤滑油は、チャネル４０の底面４１に対して径方向に潤滑油を維持する遠心慣性作用を受ける。

ノズル３５は、ノズル３５からの潤滑油の流出速度を所与の作動状態における表面４１の周速に等しくするような供給圧にしたがって、好適に設計されている。特に、流速が一定であることを考慮すると、ノズル３５のセクションは、潤滑油の噴射が所望の速度で生じるように、設計段階において決定されている。例えば、潤滑油供給パイプは、（比較的小さいテーパ角度を備え、荷重損失を小さく維持して）通過セクションを減少させ、出口において再度円筒形になるために、円筒形から円錐形に切り替わっている。

潤滑システム３１は、底面４１およびキャリア１７を通り、且つポンプ３０の入り口４３と恒久的に連通したチャネル４０を維持した少なくとも１つの通路４２を具備している。遠心力場により、チャネル４０内に回収された潤滑油は、ポンプ３０にオイルを供給することを請け負ったヘッドを形成している。

ポンプ３０は、キャリア１７に固定された個別のケーシング４４を具備し、それらのケーシングは入口４３を形成し、分配回路４６（詳細には記載されていない）を通じて潤滑を必要とする領域と連通した個別の出口４５を備えている。

図３に示されたように、ポンプ３０は個別の作動シャフト４７をさらに具備し、それらのシャフトは軸３に対して平行且つ軸３から離間された個別の軸４８（図２）に沿って延びている。入口４３は軸３に対して好適に略放射状であり、一方で出口４５は軸４８に対して略平行である。

ポンプ３０の作動シャフトは、例えばケーシング４４の内部に配置された個別の噛合いタイプのポンプデバイス５０に接続されている。

図２に示されたように、作動シャフト４７はケーシング４４から軸方向に突出し、トランスミッションデバイス５１によって作動され、トランスミッションデバイスは、キャリア１７の回転に応じてそのシャフトを軸３の周りに回転させる。特に、トランスミッションデバイス５１は、リングギア３３と、各ポンプ３０に関して対応した歯車５２と、を具備し、この歯車は作動シャフト４７の軸端に固定的に取り付けられ且つ同軸位置であり、リングギア３３と噛合っている。

したがって、軸３の周りのキャリア１７の回転の際に、歯車５２はリングギア３３に沿って回転し、したがってそれぞれの軸４８の周りに回転する。歯車５２の歯とリングギア３３の歯との間のバックラッシュの正確な決定は、相対位置の標準変化を可能にし、キャリア１７と固定構造３２との間のバックラッシュが相殺される。

トランスミッション１の潤滑システム３１によってもたらされる利点は、前述の開示から明確になる。

第１に、システム３１は、固定構造３２とキャリア１７との間のシールを請け負わなければならない任意のシール要素を含んでおらず、それは潤滑油が噴射またはスプレーを利用して、すなわち部品と接触することなく回転コレクタ３９に移送されるためである。

潤滑油の「遠隔」移送のためのこの構造は、稼働状態における固定構造３２とキャリア１７との間の潤滑油の漏れの危険性が排除されることを可能にし、固定構造３２に対するキャリア１７のバックラッシュおよび位置変化が所与の限度内において無視されることを可能にしている。実際に、そのようなバックラッシュおよび相対位置の変化は、歯車５２とリングギア３３との間の噛合いのみに影響し、既知の技術は、適切な且つ容易な様式においてカップリングが設計されることを可能にしている。

始動段階における潤滑油の漏れを最小化するために、潤滑油はノズル３５に圧送され、その流速はトランスミッション１の回転速度に比例しており、潤滑油が過剰となっている場合、ノズル３５はトランスミッション１の外側に移動し、したがってその動作を損なわない。

かさねて、潤滑油の「遠隔」移送のための構造により、トランスミッション１を組み立てた場合、固定構造３２とキャリア１７との間において摺動接触するシール要素を含んだ既知の解決策と比較して、部品を損傷する危険性が減少されている。

次いで、追加の動力の補助無しにキャリア１７の回転によって、潤滑油が入口４３から出口４５へデバイス５０によって圧送されることが理解される。次いで、ポンプ３０を出る加圧された潤滑油は、前述の通り、分配回路４６を通じて潤滑されるすべての領域に到達する。

その結果、クレームされた解決策は比較的コンパクトであり、キャリア１７の回転バランスを損なうことなく、潤滑油を航空分野において必要とされた圧力および流速で流すことに成功している。

改良または変形が、添付の特許請求の範囲によって定義された保護の範囲から逸脱することなく、トランスミッション１を形成し得ることは、前述の議論から明らかである。

特に、潤滑油は、キャリア１７と固定構造３２との間の相対移動を巧みに利用する代わりに、ポンプ３０によってキャリア１７と遊星ホイール１２との間、キャリア１７とリングギア１５との間、キャリア１７と太陽ギア２との間の相対移動を巧みに利用して、加圧され得る。例えば、リングギア３３は、固定構造３２に固定される代わりに、シャフト５に固定され得る。別の解決策に対する１つの解決策の選択は、空間の入手可能性および／またはすでに設計されたトランスミッション内の部品を統合する機会に依存している。

デバイス５１は歯付きトランスミッションとは異なり、軸４８の周りに歯車５２を回転させることが可能であり、例えばそれは１つ以上の歯付きベルト、またはカムおよびタペットタイプとし得る。

さらに、潤滑システム３１は異なった遊星トランスミッション、例えば「遊星」タイプと称されるトランスミッション、および／または遊星ホイール１２のための異なった支持システムを使用したトランスミッションに適用され得る。

１ ・・・遊星トランスミッション
２ ・・・太陽ギア
３ ・・・軸
５ ・・・シャフト
１２ ・・・遊星ホイール
１４ ・・・軸
１５ ・・・リングギア
１６ ・・・トランスミッションシャフト
１７ ・・・キャリア
１８ ・・・トランスミッション部材
２１ ・・・環状部
２２ ・・・外側フランジ
２３ ・・・ピン
２６ ・・・中空部
２８ ・・・環状プレート
２９ ・・・開口部
３０ ・・・ポンプ
３１ ・・・潤滑システム
３２ ・・・固定構造
３３ ・・・リングギア
３５ ・・・ノズル
３６ ・・・ダクト
３９ ・・・回転コレクタ
４０ ・・・回収チャネル
４３ ・・・入口
４４ ・・・ケーシング
４５ ・・・出口
４６ ・・・分配回路
４７ ・・・作動シャフト
４８ ・・・軸
５０ ・・・ポンプデバイス
５２ ・・・歯車

Claims (9)

1. トランスミッション軸（３）の周りに回転する太陽ギア（２）と；
   該太陽ギア（２）と噛合った複数の遊星ホイール（１２）と；
   該遊星ホイール（１２）を支持し、且つ前記トランスミッション軸（３）の周りに回転するキャリア（１７）と；
   固定構造（３２）から、前記キャリア（１７）の潤滑を必要とした領域へと潤滑油を移送するように形成された潤滑システム（３１）と；を具備した遊星トランスミッション（１）において、
   前記潤滑システム（３１）は、
   固定位置に配置され且つ加圧された潤滑油を受容するように形成された少なくとも１つのノズル（３５）と；
   前記キャリア（１７）に対して固定されて且つ前記ノズル（３５）から噴出した潤滑油の噴流を受容するように構成された回収チャネル（４０）と；
   少なくとも１つのポンプ（３０）であって、
   ａ） 前記キャリア（１７）に固定されたケーシング（４４）；
   ｂ） 前記回収チャネル（４０）と連通した入口；
   ｃ） 前記潤滑を必要とする領域と連通した出口（４５）；および
   ｄ） 前記入口（４３）から前記出口（４５）へと潤滑油を圧送するためのポンプ手段（５０）；を具備したポンプ（３０）と、
   前記トランスミッション軸（３）の周りの前記キャリア（１７）の回転に応じて前記ポンプ手段（５０）を作動するためのトランスミッション手段（５１）と；を具備していることを特徴とする遊星トランスミッション。
2. 前記トランスミッション手段（５１）は、前記ポンプ（３０）の作動シャフト（４７）に固定して取り付けられ且つ同軸位置にあるトランスミッションホイール（５２）を具備していることを特徴とする請求項１に記載の遊星トランスミッション。
3. 前記トランスミッション手段（５１）は、前記キャリア（１７）に同軸の且つ前記トランスミッションホイール（５２）に連結されたリングギア（３３）を具備していることを特徴とする請求項２に記載の遊星トランスミッション。
4. 前記リングギア（３３）は固定されていることを特徴とする請求項３に記載の遊星トランスミッション。
5. 前記トランスミッションホイール（５２）は、前記リングギア（３３）と直接噛合う歯を備えていることを特徴とする請求項３または４に記載の遊星トランスミッション。
6. 前記ポンプ（３０）は、前記トランスミッション軸（３）に対して平行且つ前記トランスミッション軸から離間された回転軸（４８）を備えた作動シャフト（４７）を備えていることを特徴とする請求項１〜５のいずれか一項に記載の遊星トランスミッション。
7. 前記潤滑システム（３１）は、前記トランスミッション軸（３）の周りに配置された複数の前記ポンプ（３０）を具備していることを特徴とする請求項１〜６のいずれか一項に記載の遊星トランスミッション。
8. 前記回収チャネル（４０）は連続的な環状チャネルであり、前記トランスミッション軸（３）に対して径方向内向きに面した環状開口部を備えていることを特徴とする請求項１〜７のいずれか一項に記載の遊星トランスミッション。
9. 前記キャリア（１７）は、前記遊星ホイール（１２）に軸方向に面した環状プレート部（２１）を具備し、前記回収チャネル（４０）は、前記環状プレート部（２１）の環状端縁に沿って配置されていることを特徴とする請求項１〜８のいずれか一項に記載の遊星トランスミッション。

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